説明

クレーン

【課題】クレーンの組み立て作業を容易化する。
【解決手段】案内部材70が、ターゲット60の当接部である受け部61の近傍で自重により回動可能に軸支されて、クレーン作業時にバックストップ50の他端52を受け部61に案内し、クレーンの分解時にバックストップ50の他端52が受け部61に当接しないように案内し、クレーンの組み立て時にバックストップ50の他端52を下方から支持して案内するように構成した。そして、マグネット81が、クレーンの組み立て時に、案内部材70を磁力で吸着して案内部材70の自重による回動を阻止するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックストップを有するクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンのブームやジブなどの回動範囲を制限するバックストップが知られている。たとえば、ブームの先端部にジブを枢着し、作業時にはブームを起立させて、ブーム側に装着したバックストップの先端をジブ側のターゲットにて支持するように形成したクレーンにおいて、前記ジブに固設したターゲットの近傍位置にジブの枢着ピン(ジブフートピン)と平行に軸を設け、この軸に案内部材を枢着して該案内部材を揺動自在にしたクレーンが知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日立住友重機械建機クレーン株式会社 クローラクレーン 取扱説明書 MODEL 6000SLX BOOK NO. 2ZC-J-CO-00-003 SERIAL NO. 06000 - 7008 2010年 p.7-1-(11/62)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した文献に記載のクレーンでは、リヤポストの基端部にはバックストップが取り付けられている。そのため、ブームの先端(ブームヘッド)にリヤポストの基端部を連結する際、案内部材がバックストップの他端を下方から支持しなければならない。しかし、ジブ(ジブベース)が地面に伏せられた状態では、案内部材は、その自重によってバックストップの他端を下方から支持するための姿勢とは異なる姿勢となってしまう。そのため、ブームヘッドにリヤポストの基端部を連結する際、バックストップの他端を案内部材に載せるために、組立作業者が案内部材の下方から案内部材を保持する作業が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明によるクレーンは、走行体と、走行体上に旋回可能に設けられる上部旋回体と、上部旋回体に基端が起伏可能に支持されるブームと、ブームの先端の連結部に回動可能に連結されて、ポストを介してブームに対して起伏されるジブとを備えるクレーンにおいて、連結部よりもブームおよびジブのいずれか一方側に一端が回動可能に軸支されて、ブームとジブとがなす相対角度を所定の範囲内に制限するバックストップと、クレーン作業時に相対角度が所定の角度に達すると、相対角度を所定の範囲内に制限するためにバックストップの他端が当接し、連結部よりもブームおよびジブのいずれか他方側に設けられた当接部と、当接部の近傍で自重により回動可能に軸支されて、クレーン作業時にバックストップの他端を当接部に案内し、クレーンの分解時にバックストップの他端が当接部に当接しないように案内して相対角度が所定の範囲を超えることを許容し、クレーンの組み立て時にバックストップの他端を下方から支持して案内する案内部材と、案内部材に磁力によって吸着可能な磁石を連結部よりもブームおよびジブのいずれか一方側に取り付ける取り付け部材とを備え、磁石は、クレーンの組み立て時に、案内部材に磁力で吸着されて案内部材の自重による回動を阻止し、案内部材は、磁石によって自重による回動が阻止された状態で、バックストップの他端を下方から支持して案内する過程において他端から受ける外力によって回転力が作用すると磁石の吸着力に抗して回動して磁石から釈放されることを特徴とする。
(2) 請求項2の発明によるクレーンは、走行体と、走行体上に旋回可能に設けられる上部旋回体と、上部旋回体に基端が起伏可能に支持されるブームと、ブームの先端に回動可能に連結されて、ポストを介してブームに対して起伏されるジブとを備えるクレーンにおいて、ブームとポストとを回動可能に連結する連結部よりもブームおよびポストのいずれか一方側に一端が回動可能に軸支されて、ブームとポストとがなす相対角度を所定の範囲内に制限するバックストップと、クレーン作業時に相対角度が所定の角度に達すると、相対角度を所定の範囲内に制限するためにバックストップの他端が当接し、連結部よりもブームおよびポストのいずれか他方側に設けられた当接部と、当接部の近傍で自重により回動可能に軸支されて、クレーン作業時にバックストップの他端を当接部に案内し、クレーンの分解時にバックストップの他端が当接部に当接しないように案内して相対角度が所定の範囲を超えることを許容し、クレーンの組み立て時にバックストップの他端を下方から支持して案内する案内部材と、案内部材に磁力によって吸着可能な磁石を連結部よりもブームおよびポストのいずれか一方側に取り付ける取り付け部材とを備え、磁石は、クレーンの組み立て時に、案内部材に磁力で吸着されて案内部材の自重による回動を阻止し、案内部材は、磁石によって自重による回動が阻止された状態で、バックストップの他端を下方から支持して案内する過程において他端から受ける外力によって回転力が作用すると磁石の吸着力に抗して回動して磁石から釈放されることを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のクレーンにおいて、取り付け部材は、チェーンまたはワイヤロープであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、案内部材が、当接部の近傍で自重により回動可能に軸支されて、クレーン作業時にバックストップの他端を当接部に案内し、クレーンの分解時にバックストップの他端が当接部に当接しないように案内し、クレーンの組み立て時にバックストップの他端を下方から支持して案内するように構成した。そして、磁石が、クレーンの組み立て時に、案内部材を磁力で吸着して案内部材の自重による回動を阻止し、案内部材が、磁石によって自重による回動が阻止された状態で、バックストップの他端を下方から支持して案内する過程においてバックストップの他端から受ける外力によって回転力が作用すると磁石の吸着力に抗して回動して磁石から釈放されるように構成した。これにより、クレーンの分解時にバックストップの他端が当接部と当接しなくなるので、クレーンの分解作業が容易となる。
また、クレーンの組み立て時に磁石によって案内部材を吸着して案内部材の自重による回動を阻止し、バックストップの他端を下方から案内部材で支持して案内するように構成した。これにより、クレーンの組み立て時にバックストップの他端を下方から支持して案内できるように案内部材の姿勢を保つことができる。したがって、クレーンの組み立て時に案内部材を所定の姿勢に保つべく案内部材を下方から支持する作業を無くしクレーンの組み立て作業が容易となる。
また、バックストップの他端を下方から案内部材で支持して案内する過程において他端から受ける外力によって案内部材に回転力が作用すると、磁石の吸着力に抗して回動して案内部材が磁石から釈放されるように構成した。これにより、クレーンの組み立て作業時に、磁石によって案内部材の自重による回動を阻止する必要がなくなった後に作業員が磁石を案内部材から取り外さなくても、バックストップの他端を下方から案内部材で支持して案内する過程において他端から受ける外力によって案内部材が磁石から釈放される。したがって、案内部材などを破損するおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】移動式クレーンの概略の構成を示す外観側面図である。
【図2】ブームの頂部(ブームヘッド)およびジブの基端部(ジブベース)の近傍の側面図である。
【図3】リヤポストを示す図であり、(a)は側面図であり、(b)および(c)は斜視図であり、(d)は基端部側から見た図である。
【図4】ブームヘッドおよびジブベースの近傍を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は背面から見た図であり、(c)は側面図である。
【図5】ターゲットおよび案内部材の近傍の側面図である。
【図6】ターゲットおよび案内部材の近傍の斜視図である。
【図7】ブームおよびジブを地面に倒伏させた際の案内部材の姿勢について説明する図である。
【図8】クレーンの組み立て時にブームヘッドにリヤポストの基端部を連結した直後、および、クレーンの分解時にブームヘッド30からリヤポストの基端部を外す直前のブームヘッドおよびジブベースの近傍を示す側面図である。
【図9】ブームヘッドにリヤポストの基端部を連結する際に、マグネットおよびチェーンを介してブームヘッドに対して案内部材を一時的に固定した状態を示す側面図である。
【図10】クレーンの組み立て作業の進行によってブームが起立されて、ブームに対して相対的にジブが前面側へ向かって倒伏する過程、および、クレーンの分解作業の進行によってブームを前方に倒伏させつつブームに対してジブを相対的に起立させる過程について説明する側面図である。
【図11】クレーンの組み立て作業の進行によってブームが起立されて、ブームに対して相対的にジブが前面側へ向かって倒伏する過程、および、クレーンの分解作業の進行によってブームを前方に倒伏させつつブームに対してジブを相対的に起立させる過程について説明する側面図である。
【図12】クレーンの組み立て作業の進行によってブームが起立されて、ブームに対して相対的にジブが前面側へ向かって倒伏する過程、および、クレーンの分解作業の進行によってブームを前方に倒伏させつつブームに対してジブを相対的に起立させる過程について説明する側面図である。
【図13】クレーンの組み立て作業の進行によってブームが起立されて、ブームに対して相対的にジブが前面側へ向かって倒伏する過程、および、クレーンの分解作業の進行によってブームを前方に倒伏させつつブームに対してジブを相対的に起立させる過程について説明する側面図である。
【図14】クレーン作業時においてターゲットおよび案内部材がバックストップの他端を案内する様子を説明する側面図である。
【図15】クレーン作業時においてターゲットおよび案内部材がバックストップの他端を案内する様子を説明する側面図である。
【図16】クレーン作業時においてターゲットおよび案内部材がバックストップの他端を案内する様子を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜16を参照して、本発明によるクレーンの一実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態に係る移動式クレーンの概略の構成を示す外観側面図である。図1で図示する移動式クレーンは、超大型クレーンであり、ブーム吊り用フックを備えた仕様である。移動式クレーンは、走行体1と、走行体上に旋回可能に搭載される上部旋回体(旋回体)2と、旋回体2の先端部に回動可能に軸支されたブーム3と、ブーム3の先端部に回動可能に軸支されたジブ4と、ジブ先端部から吊り下げられたジブ吊り用フック5(以下、ジブフック)と、ブーム先端部から吊り下げられたブーム吊り用フック6(以下、ブームフック)とを有する。
【0009】
旋回体2にはフロントドラム10と、リアドラム11と、起伏ドラム12とが搭載されている。フロントドラム10にはフロント用ワイヤロープ10a(以下、フロントロープ)が巻回され、フロントロープ10aはブーム頂部を経由してブームフック6に接続されている。フロントドラム10の駆動によりフロントロープ10aが巻き取りまたは繰り出され、ブームフック6が昇降する。リアドラム11にはリア用ワイヤロープ11a(以下、リアロープ)が巻回され、リアロープ11aはブーム頂部およびジブ先端部を経由してジブフック5に接続されている。リアドラム11の駆動によりリアロープ11aが巻き取りまたは繰り出され、ジブフック5が昇降する。
【0010】
旋回体2の前部には回動可能にマスト7が軸支され、マスト7の先端部とブーム3の頂部とはペンダントロープ15で接続されている。起伏ドラム12には起伏用ワイヤロープ12a(以下、起伏ロープ)が巻回され、起伏ロープ12aは、起伏ドラム12の後方に設けたシーブ21とマスト7の先端部に設けたシーブ22との間に複数回掛け回されている。起伏ドラム12の駆動により起伏ロープ12aが巻き取りまたは繰り出されてマスト7が回動し、ペンダントロープ15を介してブーム3が起伏する。
【0011】
ブーム3の背面側(図1において図示右側)には、オプション品である追加ドラム13が設けられ、追加ドラム13にはワイヤロープ13aが巻回されている。なお、図1において、ブーム3の図示左側の面を前面と呼ぶ。同様に、図1において、ジブ4の下側の面を前面と呼び、ジブ4の上側の面を背面と呼ぶ。ジブ4の基端部にはフロントポスト8が取り付けられ、フロントポスト8とジブ先端部とはペンダント16で接続されている。ブーム3の頂部にはリアポスト9が取り付けられ、ワイヤロープ13aは各ポスト8,9の先端に設けられたシーブ23,24の間に複数回掛け回されている。追加ドラム13の駆動によりワイヤロープ13aが巻き取りまたは繰り出され、リアポスト9に対してフロントポスト8が回動し、ペンダント16を介してジブ4が起伏する。
【0012】
図2は、ブーム3の頂部(ブームヘッド30)およびジブ4の基端部(ジブベース40)の近傍の側面図である。図2に示すように、ブームヘッド30とジブベース40とは、ジブフートピン45によって回動可能に連結されている。ブームヘッド30とジブベース40との間には、バックストップ50が設けられている。図3は、リヤポスト9を示す図であり、図3(a)は側面図であり、図3(b)および(c)は斜視図であり、図3(d)は基端部側から見た図である。バックストップ50は、ブーム30に対するジブ4の回動角度を制限するための部材であり、図3に示すように一端51がリヤポスト9の基端部にリンク9aを介して回動可能に軸支されている。なお、リヤポスト9の基端部がブームヘッド30に対して回動可能に軸支されるため、バックストップ50の一端51は、リヤポスト9を介してブームヘッド30に取り付けられたこととなる。
【0013】
バックストップ50は、クレーンの左右方向(図1、図2,図3(a)における紙面奥行き方向)に2本並べて設けられている。左右2本のバックストップ50は連結部材53で互いに連結されている(図3(c)参照)。バックストップ50の他端52には、後述する案内部材70で案内される際に案内部材70に当接して回転するローラ52aが取り付けられている。なお、図3において、9bは、ブームヘッド30の軸支部30a(図4参照)で軸支されるリヤポスト9の基端部の軸支部である。
【0014】
図4は、ブームヘッド30およびジブベース40の近傍を示す図であり、図4(a)は斜視図であり、図4(b)は背面から見た図であり、図4(c)は側面図である。図2,4に示すように、ジブベース40には、バックストップ50の他端52が当接するターゲット(ストッパ部)60が設けられている。また、ジブベース40のターゲット60の近傍には、案内部材70が回動可能に軸支されている。
【0015】
図4(c)の拡大図でもある図5に示すように、ターゲット60は、バックストップ50の他端52が当接して他端52を受ける受け部61と、受け部61よりもジブ4(ジブベース40)の前面側から(図示下方から)バックストップ50の他端52を受け部61に案内する案内部62とを備えている。図4(b)に示すように、ターゲット60は、2つ設けられており、ジブベース40の左右方向にそれぞれが離間した状態でジブベース40に固定されている。ターゲット60には、後述するように案内部材70を回動可能に軸支するための孔60aが設けられている(図5,6参照)。なお、図6は、ターゲット60および案内部材70の近傍の斜視図である。
【0016】
図5、図6に示すように、案内部材70は、移動式クレーンの分解および組み立て時にバックストップ50の他端52を案内してバックストップ50を所定の姿勢に導く第1案内部71と、移動式クレーンの作業時に他端52をターゲット60の受け部61に導く第2案内部72と、軸73と、ウエイト部74とを備えている。案内部材70は、2つのターゲット60のそれぞれの近傍にひとつずつ設けられている。この2つの案内部材70同士は、互いに連結された状態で、図5において紙面奥行き方向に突出する軸73がターゲット60に設けられた孔60aに回動可能に軸支されている。
【0017】
案内部材70は、ウエイト部74の重量によってジブベース40の起伏角度に関わらず軸73を中心として所定の絶対角度を保つ。すなわち、案内部材70のジブベース40に対する相対角度は、ジブベース40の起伏に応じて変化する。なお、案内部材70のジブベース40に対する相対角度がとりうる範囲は、ターゲット60に取り付けられたピン63,64(図4,6参照)によって制限される。したがって、ジブベース40(すなわちジブ4)の起伏角度(絶対角度)が所定の範囲内において、案内部材70が所定の絶対角度を保つ。
【0018】
第1案内部71は、ジブベース40の前面側から背面側に向かってバックストップ50の他端52を支持して案内する部位である。第2案内部72は、ジブベース40の背面側から前面側に向かってバックストップ50の他端52のローラ52aに当接して案内する部位である。第1案内部71および第2案内部72による他端52の案内については後述する。
【0019】
ブームヘッド30には、チェーン82を介してマグネット81が取り付けられている。マグネット81は、移動式クレーンの組み立て時に案内部材70に吸着させるものである。これにより、移動式クレーンの組み立て時にマグネット81およびチェーン82を介してブームヘッド30に対して案内部材70が一時的に固定される。この、マグネット81およびチェーン82を利用した案内部材70の固定については、後に詳述する。
【0020】
−−−組立作業における案内部材70の役割について−−−
このように構成される移動式クレーンでは、輸送の制約上、各部に分解されて輸送される。このとき、ブーム3およびジブ4は旋回体2から分離される。そして、作業現場に搬入された後、分解されたクレーンが再び組み立てられる。また、このとき、再びブーム3およびジブ4が旋回体2に取り付けられる。すなわち、分解されたクレーンが作業現場に搬入されると、ブーム3の基端が旋回体2に取り付けられ、ブームヘッド30にジブベース40がジブフートピン45によって回動可能に連結される。そして、ブームヘッド30にリヤポスト9の基端部が回動可能に連結される。ブームヘッド30にリヤポスト9の基端部を連結する作業は、ブーム3およびジブ4を倒して地面に伏せた状態で行われる。そのため、そのままでは、案内部材70の姿勢が図7に示すような状態となる。
【0021】
上述したように、リヤポスト9の基端部にはバックストップ50が取り付けられている。そのため、ブームヘッド30にリヤポスト9の基端部を連結する際、本来であれば、図8に示すように、案内部材70の第1案内部71がバックストップ50の他端52(ローラ52a)を下方から(ジブベース40の前面側から背面側に向かって)支持しなければならない。すなわち、ジブ4(ジブベース40)が地面に伏せられた状態では、図7に示すように、案内部材70は、第1案内部71がバックストップ50の他端52を下方から支持するための姿勢(図8)に比べて、図示反時計方向に回動した姿勢となってしまう。これは、後述するように、移動式クレーンの分解時に、ブーム3に対するジブ4の回動角度が制限されないように、バックストップ50の他端52がターゲット60の受け部61へ当接するのを回避する必要があるからである。
【0022】
そこで、本実施の形態では、ブームヘッド30にジブベース40をジブフートピン45によって回動可能に連結した後、作業員の手作業により、たとえば図5に示すように、重力に抗して案内部材70を図示時計方向に回動させた上でウエイト部74等にマグネット81を吸着させる。この作業によって、マグネット81およびチェーン82を介してブームヘッド30に対して案内部材70が図5に示す姿勢で一時的に固定される。すなわち、マグネット81およびチェーン82は、案内部材70を重力に抗して所定の姿勢に保つためのものである。
【0023】
その後、ブームヘッド30の軸支部30aにリヤポスト9の軸支部9bを連結すれば、図9に示すように、バックストップ50の他端52のローラ52aが下方から案内部材70の第1案内部71で支持される。なお、チェーン82は、マグネット81をウエイト部74等に吸着させたときに図5に示す姿勢で固定できるよう、適宜その長さが調節されている。
【0024】
その後、作業員の手作業により、マグネット81を案内部材70から取り外す。案内部材70から取り外したマグネット81は、チェーン82やマグネット81自体が揺れ動かないように、ブームヘッド30等の適当な場所へ適宜吸着させておけばよい。なお、マグネット81を案内部材70から取り外しても、軸73の位置よりも図9における図示右上方でローラ52aが第1案内部71を図示下方に押圧しているので、案内部材70には軸73を中心とする図示時計方向への回転モーメントが作用し、重力に抗して案内部材70が図9に示した姿勢を維持する。なお、このとき、案内部材70がターゲット60のピン64(図4,6参照)に当接することで、軸73を中心とする案内部材70の図示時計方向への回動が規制されている。
【0025】
詳細については省略するが、その後の移動式クレーンの組み立て作業の進行によってブーム3が起立されて、ブーム3に対して相対的にジブ4が前面側へ向かって倒伏すると、図10に示すように、ローラ52aが案内部材70の第1案内部71の上を転動してバックストップ50の他端52が図示左方(すなわちブームヘッド30側)へ移動する。
【0026】
ブーム3に対するジブ4の相対的な前面側への倒伏が進行すると、バックストップ50の他端52の図示左方への移動がさらに進み、図11に示すように、ローラ52aが軸73の位置よりも図11における図示左上方に移動する。これにより、案内部材70には軸73を中心とする図示反時計方向への回転モーメントが作用するので、案内部材70が図11に示すように軸73を中心として図示反時計方向へ回動する。なお、このとき、案内部材70がターゲット60のピン63(図4,6参照)に当接することで、軸73を中心とする案内部材70の図示反時計方向への回動が規制されている。さらにブーム3に対するジブ4の相対的な前面側への倒伏が進行すると、図12および図13に示すように、バックストップ50の他端52が案内部材70から離間する。
【0027】
仮に、マグネット81が案内部材70から取り外されなかったとしても、バックストップ50の他端52から受ける外力によって、案内部材70に軸73を中心とする図示反時計方向への回転モーメントが作用すると、案内部材70は、マグネット81の吸着力に抗して回動してマグネット81から釈放される。
【0028】
−−−クレーン作業における案内部材70の役割について−−−
図13に示す状態では、ブーム3(ブームヘッド30)は、クレーン作業における起立角度まで略起立している。その後、ジブ4を起立させると、図14に示すように、ターゲット60および案内部材70がバックストップ50の他端52に接近する。図13〜図15に順次示すように、ジブ4(ジブベース40)が徐々に起立していく過程で、ジブ4が所定の対地角度を超えると、ウエイト部74の重みによって案内部材70がジブベース40に対して相対的に図示時計方向に回動し始める。これにより、クレーン作業時において、バックストップ50の他端52のローラ52aをターゲット60の受け部61に導くように、案内部材70の第2案内部72がローラ52aの上方へ移動して他端52を案内する。また、このとき、ターゲット60の案内部62は、他端52の下側から他端52を受け部61に導くように案内する。これにより、図16に示すように、バックストップ50の他端52がターゲット60の受け部61に導かれて当接し、ブーム3(ブームヘッド30)に対するジブ4(ジブベース40)の起立角度が規制される。
【0029】
−−−分解作業における案内部材70の役割について−−−
クレーンの分解作業では、ブームヘッド30からジブベース40を取り外すため、ブーム3を倒伏させつつ、ブーム3に対してジブ4を起立させて、ブーム3およびジブ4を地面に伏せた状態とする必要がある。詳細な説明は省略するが、クレーンの分解作業の過程で、図16、図15に示す状態から図14、図13に示すように、一旦、ジブ4を次第に前方へ倒伏させる。その際、ジブ4(ジブベース40)を徐々に倒伏していく過程で、ジブ4を起立させていく場合とは逆に、バックストップ50の他端52はターゲット60の受け部61から離れ、案内部材70はウエイト部74の重みによってジブベース40に対して相対的に図示反時計方向に回動する。そして、案内部材70がターゲット60のピン63(図4,6参照)に当接することで、軸73を中心とする案内部材70の図示反時計方向への回動が規制される(図13)。
【0030】
ジブ4を一旦前方に倒伏させた後、ブーム3を前方に倒伏させるため、ジブ4の先端が地面と干渉しないようにブーム3に対してジブ4を起立させる(図12)。これにより、バックストップ50の他端52がターゲット60へ接近する。しかし、クレーンの分解作業の過程では、バックストップ50の他端52がターゲット60へ接近しても、図11に示すように、案内部材70はウエイト部74の重みによってジブベース40に対して相対的に図示反時計方向に回動したままとなっている。そのため、バックストップ50の他端52のローラ52aの図示斜め下方に案内部材70の第1案内部71が当接する。
【0031】
その後、さらにブーム3を前方に倒伏させつつブーム3に対してジブ4を起立させると、図10、そして図8に示すように、バックストップ50の他端52のローラ52aが案内部材70の第1案内部71の上を図示左方へ向かって転動しつつ移動する。以降、ブームヘッド30からリヤポスト9の基端部が取り外され、ブームヘッド30からジブベース40が取り外される。
【0032】
本実施の形態の移動式クレーンでは、次の作用効果を奏する。
(1) 案内部材70が、ターゲット60の当接部である受け部61の近傍で自重により回動可能に軸支されて、クレーン作業時にバックストップ50の他端52を受け部61に案内し、クレーンの分解時にバックストップ50の他端52が受け部61に当接しないように案内し、クレーンの組み立て時にバックストップ50の他端52を下方から支持して案内するように構成した。そして、マグネット81が、クレーンの組み立て時に、案内部材70を磁力で吸着して案内部材70の自重による回動を阻止し、案内部材70が、マグネット81によって自重による回動が阻止された状態で、バックストップ50の他端52を下方から支持して案内する過程においてバックストップ50の他端52から受ける外力によって回転力が作用するとマグネット81の吸着力に抗して回動してマグネット81から釈放されるように構成した。これにより、クレーンの分解時にバックストップ50の他端52が受け部61と当接しなくなるので、クレーンの分解作業が容易となる。
【0033】
(2) クレーンの組み立て時にマグネット81によって案内部材70を吸着して案内部材70の自重による回動を阻止し、バックストップ50の他端52を下方から案内部材70で支持して案内するように構成した。これにより、クレーンの組み立て時にバックストップ50の他端52を下方から支持して案内できるように案内部材70の姿勢を保つことができる。したがって、クレーンの組み立て時にバックストップ50の他端52を下方から支持して案内できるように案内部材70の姿勢を保つべく案内部材70を下方から支持するという作業を無くしクレーンの組み立て作業が容易となる。
【0034】
(3) バックストップ50の他端52を下方から案内部材70で支持して案内する過程において他端52(ローラ52a)から受ける外力によって案内部材70に回転力が作用すると、マグネット81の吸着力に抗して回動して案内部材70がマグネット81から釈放されるように構成した。これにより、クレーンの組み立て作業時に、マグネット81によって案内部材70の自重による回動を阻止する必要がなくなった後に、仮に作業員がマグネット81を案内部材70から取り外さなくても、バックストップ80の他端52を下方から案内部材70で支持して案内する過程において他端52から受ける外力によって案内部材70がマグネット81から釈放される。したがって、案内部材70などを破損するおそれがなくなる。
【0035】
(4) クレーンの組み立て作業時に、案内部材70の自重による回動を阻止するためにマグネット81を使用するように構成した。これにより、マグネット81を繰り返し使用できるので、経済的である。
【0036】
なお、上述の説明では、マグネット81がチェーン82を介してブームヘッド30に取り付けられているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、チェーン82に代えて、ワイヤロープ、ヒモ、途中で折れ曲がるように構成されたリンク、途中で折れ曲がらず単に端部で回動可能に軸支された棒状の部材などでもよい。
【0037】
また、上述の説明では、ブームヘッド30側にバックストップ50の一端51が取り付けられ、ジブベース40にターゲット60および案内部材70が設けられているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ジブベース40側にバックストップ50の一端51が取り付けられ、ブームヘッド30側にターゲット60および案内部材70が設けられていてもよい。なお、この場合には、マグネット81がチェーン82を介してジブベース40側に取り付けられていればよい。
【0038】
また、上述の説明では、ブーム3とジブ4との相対角度を規制するバックストップ50に関して説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ブーム3とリヤポスト9との相対角度を規制するバックストップに関して本発明を適用してもよい。すなわち、移動式クレーンについて、ブーム3とリヤポスト9とを回動可能に連結するブームヘッド30の軸支部30aよりもブーム3およびリヤポスト9のいずれか一方側に一端が回動可能に軸支されて、ブーム3とリヤポスト9とがなす相対角度を所定の範囲内に制限するバックストップ50と、クレーン作業時に当該相対角度が所定の角度に達すると、当該相対角度を所定の範囲内に制限するためにバックストップ50の他端52が当接し、軸支部30aよりもブーム3およびリヤポスト9のいずれか他方側に設けられたターゲット60と、ターゲット60の近傍で自重により回動可能に軸支されて、クレーン作業時にバックストップ50の他端52をターゲット60に案内し、クレーンの分解時にバックストップ50の他端52がターゲット60に当接しないように案内して当該相対角度が所定の範囲を超えることを許容し、クレーンの組み立て時にバックストップ50の他端52を下方から支持して案内する案内部材70と、案内部材70に磁力によって吸着可能なマグネット81を軸支部30aよりもブーム3およびリヤポスト9のいずれか一方側に取り付けるチェーン82とを備えるように構成し、マグネット81が、クレーンの組み立て時に、案内部材70に吸着されて案内部材70の自重による回動を阻止し、案内部材70が、マグネット81によって自重による回動が阻止された状態で、バックストップ50の他端52を下方から支持して案内する過程において他端52から受ける外力によって回転力が作用するとマグネット81の吸着力に抗して回動してマグネット81から釈放されるように構成してもよい。また、上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0039】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、走行体と、走行体上に旋回可能に設けられる上部旋回体と、上部旋回体に基端が起伏可能に支持されるブームと、ブームの先端の連結部に回動可能に連結されて、ポストを介してブームに対して起伏されるジブとを備えるクレーンにおいて、連結部よりもブームおよびジブのいずれか一方側に一端が回動可能に軸支されて、ブームとジブとがなす相対角度を所定の範囲内に制限するバックストップと、クレーン作業時に相対角度が所定の角度に達すると、相対角度を所定の範囲内に制限するためにバックストップの他端が当接し、連結部よりもブームおよびジブのいずれか他方側に設けられた当接部と、当接部の近傍で自重により回動可能に軸支されて、クレーン作業時にバックストップの他端を当接部に案内し、クレーンの分解時にバックストップの他端が当接部に当接しないように案内して相対角度が所定の範囲を超えることを許容し、クレーンの組み立て時にバックストップの他端を下方から支持して案内する案内部材と、案内部材に磁力によって吸着可能な磁石を連結部よりもブームおよびジブのいずれか一方側に取り付ける取り付け部材とを備え、磁石は、クレーンの組み立て時に、案内部材に磁力で吸着されて案内部材の自重による回動を阻止し、案内部材は、磁石によって自重による回動が阻止された状態で、バックストップの他端を下方から支持して案内する過程において他端から受ける外力によって回転力が作用すると磁石の吸着力に抗して回動して磁石から釈放されることを特徴とする各種構造のクレーンを含むものである。
また、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、走行体と、走行体上に旋回可能に設けられる上部旋回体と、上部旋回体に基端が起伏可能に支持されるブームと、ブームの先端に回動可能に連結されて、ポストを介してブームに対して起伏されるジブとを備えるクレーンにおいて、ブームとポストとを回動可能に連結する連結部よりもブームおよびポストのいずれか一方側に一端が回動可能に軸支されて、ブームとポストとがなす相対角度を所定の範囲内に制限するバックストップと、クレーン作業時に相対角度が所定の角度に達すると、相対角度を所定の範囲内に制限するためにバックストップの他端が当接し、連結部よりもブームおよびポストのいずれか他方側に設けられた当接部と、当接部の近傍で自重により回動可能に軸支されて、クレーン作業時にバックストップの他端を当接部に案内し、クレーンの分解時にバックストップの他端が当接部に当接しないように案内して相対角度が所定の範囲を超えることを許容し、クレーンの組み立て時にバックストップの他端を下方から支持して案内する案内部材と、案内部材に磁力によって吸着可能な磁石を連結部よりもブームおよびポストのいずれか一方側に取り付ける取り付け部材とを備え、磁石は、クレーンの組み立て時に、案内部材に磁力で吸着されて案内部材の自重による回動を阻止し、案内部材は、磁石によって自重による回動が阻止された状態で、バックストップの他端を下方から支持して案内する過程において他端から受ける外力によって回転力が作用すると磁石の吸着力に抗して回動して磁石から釈放されることを特徴とする各種構造のクレーンを含むものである。
【符号の説明】
【0040】
3 ブーム 4 ジブ
9 リヤポスト 30 ブームヘッド
40 ジブベース 45 ジブフートピン
50 バックストップ 52 他端
60 ターゲット(ストッパ部) 61 受け部
70 案内部材 71 第1案内部
72 第2案内部 73 軸
74 ウエイト部 81 マグネット
82 チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、
前記走行体上に旋回可能に設けられる上部旋回体と、
前記上部旋回体に基端が起伏可能に支持されるブームと、
前記ブームの先端の連結部に回動可能に連結されて、ポストを介して前記ブームに対して起伏されるジブとを備えるクレーンにおいて、
前記連結部よりも前記ブームおよび前記ジブのいずれか一方側に一端が回動可能に軸支されて、前記ブームと前記ジブとがなす相対角度を所定の範囲内に制限するバックストップと、
クレーン作業時に前記相対角度が所定の角度に達すると、前記相対角度を前記所定の範囲内に制限するために前記バックストップの他端が当接し、前記連結部よりも前記ブームおよび前記ジブのいずれか他方側に設けられた当接部と、
前記当接部の近傍で自重により回動可能に軸支されて、クレーン作業時に前記バックストップの前記他端を前記当接部に案内し、前記クレーンの分解時に前記バックストップの前記他端が前記当接部に当接しないように案内して前記相対角度が前記所定の範囲を超えることを許容し、前記クレーンの組み立て時に前記バックストップの前記他端を下方から支持して案内する案内部材と、
前記案内部材に磁力によって吸着可能な磁石を前記連結部よりも前記ブームおよび前記ジブのいずれか一方側に取り付ける取り付け部材とを備え、
前記磁石は、前記クレーンの組み立て時に、前記案内部材に磁力で吸着されて前記案内部材の自重による回動を阻止し、
前記案内部材は、前記磁石によって自重による回動が阻止された状態で、前記バックストップの前記他端を下方から支持して案内する過程において前記他端から受ける外力によって回転力が作用すると前記磁石の吸着力に抗して回動して前記磁石から釈放されることを特徴とするクレーン。
【請求項2】
走行体と、
前記走行体上に旋回可能に設けられる上部旋回体と、
前記上部旋回体に基端が起伏可能に支持されるブームと、
前記ブームの先端に回動可能に連結されて、ポストを介して前記ブームに対して起伏されるジブとを備えるクレーンにおいて、
前記ブームと前記ポストとを回動可能に連結する連結部よりも前記ブームおよび前記ポストのいずれか一方側に一端が回動可能に軸支されて、前記ブームと前記ポストとがなす相対角度を所定の範囲内に制限するバックストップと、
クレーン作業時に前記相対角度が所定の角度に達すると、前記相対角度を前記所定の範囲内に制限するために前記バックストップの他端が当接し、前記連結部よりも前記ブームおよび前記ポストのいずれか他方側に設けられた当接部と、
前記当接部の近傍で自重により回動可能に軸支されて、クレーン作業時に前記バックストップの前記他端を前記当接部に案内し、前記クレーンの分解時に前記バックストップの前記他端が前記当接部に当接しないように案内して前記相対角度が前記所定の範囲を超えることを許容し、前記クレーンの組み立て時に前記バックストップの前記他端を下方から支持して案内する案内部材と、
前記案内部材に磁力によって吸着可能な磁石を前記連結部よりも前記ブームおよび前記ポストのいずれか一方側に取り付ける取り付け部材とを備え、
前記磁石は、前記クレーンの組み立て時に、前記案内部材に磁力で吸着されて前記案内部材の自重による回動を阻止し、
前記案内部材は、前記磁石によって自重による回動が阻止された状態で、前記バックストップの前記他端を下方から支持して案内する過程において前記他端から受ける外力によって回転力が作用すると前記磁石の吸着力に抗して回動して前記磁石から釈放されることを特徴とするクレーン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のクレーンにおいて、
前記取り付け部材は、チェーンまたはワイヤロープであることを特徴とするクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−49499(P2013−49499A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187102(P2011−187102)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(503032946)日立住友重機械建機クレーン株式会社 (104)
【Fターム(参考)】