説明

クロピドグレルおよびスルホアルキルエーテルシクロデキストリンを含有する製剤ならびに使用方法

本発明は、遊離塩基またはその薬学的に許容される塩として存在するクロピドグレルとスルホアルキルエーテルシクロデキストリン(SAE-CD)とを含有する組成物を提供する。該組成物は、液体、懸濁液または固体組成物であり得る。それらは、経口、内用または非経口投与に適合され得る。SAE-CDは、水性媒体中におけるクロピドグレルの溶解および安定化を助けるのに役立つ。加水分解、熱的分解、および光分解に対するクロピドグレルの安定性が改善される。SAE-CDは、他のシクロデキストリン誘導体と比較して改善された結果を提供する。クロピドグレルのSAE-CD含有組成物は、液体形態、固体形態で、または再構成可能な粉末として提供され得る。使用準備済液体組成物および濃縮液体組成物の両方が作製され得る。液体組成物は、任意で透明溶液として利用可能である。本明細書に記載される組成物は、経口的または非経口的に投与され得、経口的に投与されかつSAE-CDを含まない錠剤組成物と比べて、実質的な薬物動態学的、薬力学的および/または治療的な利点を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、クロピドグレルおよびスルホアルキルエーテルシクロデキストリンを含有する組成物、クロピドグレルに治療応答性である障害および疾患の治療におけるその使用、ならびにその他の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
クロピドグレル重硫酸塩、メチル(+)-(S)-α-(2-クロロフェニル)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-アセテートスルフェート(1:1)は、その受容体へのアデノシン二リン酸(ADP)結合および続いての糖タンパク質GPIIb/IIIa複合体のADP媒介活性化の直接阻害によるADP惹起血小板凝集作用インヒビターである。クロピドグレルは、その血小板受容体へのアデノシン二リン酸(ADP)の結合、および続いての糖タンパク質GPIIb/IIIa複合体のADP媒介活性化を選択的に阻害し、それによって、血小板凝集を阻害する。クロピドグレルの生体内変化は、血小板凝集を阻害するために必要である。前記薬物の活性を担う活性代謝産物が単離された(Pereillo et al., Drug Metab. Disposition (2002), 30(11), 1288-1295)。クロピドグレルはまた、放出されたADPによる血小板活性化の増幅をブロックすることによって、ADP以外のアゴニストによって惹起される血小板凝集も阻害する。クロピドグレルは、ホスホジエステラーゼ活性を阻害しない。
【0003】
クロピドグレル重硫酸塩は、白色からオフホワイト色の粉末である。それは、中性pHでは水に事実上不溶性であるが、pH 1では制限なく可溶性である。米国特許第4,847,265号は、右旋性形態のクロピドグレルを開示している。米国特許第7,074,928号、第6767,913号、第6,504,030号、第6,429,210号、および第6,504,030号は、クロピドグレル硫酸水素塩の多形形態を開示している。米国特許第6,858,734号、第6,800,759号、および第6,737,411号は、クロピドグレルの種々の製造方法を開示している。クロピドグレルの塩形態、多形、および製造方法が、米国特許付与前公開第20060154957号、第20060100231号、第20060074242号、第20060047121号、第20060041136号、第20050256152号、第20050228012号、第20050203122号、第20050143414号、第20050049275号、および第20050049226号に開示されている。PCT国際公開公報第WO 03/66637号は、クロピドグレルの塩酸塩形態およびその製造方法を開示している。
【0004】
クロピドグレルは、現在、商標PLAVIX(Sanofi Aventis)で米国において市販されている。それは、クロピドグレル塩基の75 mg当量を含有する錠剤形態で供給されており、しかし、該薬物は重硫酸塩形態で存在する。それはまた、ジェネリック錠剤形態(Apotex, Inc.)で入手可能である。米国特許第6,914,141号は、クロピドグレル重硫酸塩を含有する錠剤製剤を開示している。
【0005】
PLAVIXは、以下においてアテローム血栓性事象を減少させると米国食品医薬品局によって認可された抗血小板薬である:1)最近の心筋梗塞(MI)、最近の脳卒中、または確立された末梢動脈疾患(PAD)の病歴を有する患者、ならびに2)医薬によって治療される患者、および経皮的冠状動脈インターベンション(経皮経管冠状動脈形成術(PTCA)、ステント、アテレクトミーなど)または冠状動脈バイパス移植(CABG)で治療される患者を含む、急性冠症候群(不安定狭心症/非Q波MI)を有する患者。PLAVIXは、毎日摂取されると、将来の心臓発作または脳卒中を有する危険性を低下するのに役立ち得る処方薬である。米国特許第5,576,328号は、原発性虚血事象の発症後のクロピドグレルの投与によって続発性虚血事象を予防する方法を開示している。米国特許第6,071,514号は、その必要がある被験体へのクロピドグレルの投与によって血栓障害を治療する方法を開示している。
【0006】
Von Beckerathら(Circulation (2005), 112, 2946-2950)は、粉砕されたPLAVIX(登録商標)錠剤から作製された経口的に投与される300 mg、600 mgおよび900 mgローディング用量のクロピドグレルの吸収、代謝および抗血小板効果を比較する臨床試験の結果を開示している。彼らは、最大のADP惹起血小板凝集が約4時間で生じることを報告している。PLAVIXは、5μM ADP惹起血小板凝集をおよそ23%(300mg用量)、34%(600mg用量)、39%(900mg用量)阻害し、抗血小板効果の最小の差異は600および900 mg用量の間にあった。これらの期間は、完全なPLAVIX(登録商標)錠剤の投与後に通常観察されるものと実質的に類似している(Weerakody et al. Am. J. Cardiol. 2007:100:331-336)。
【0007】
臨床設定において、PLAVIX(登録商標)錠剤は、患者の血小板凝集を減少させそれによって手術中または手術後の再閉塞または再狭窄の危険性を低下させるために、経皮的冠状動脈インターベンション(PCI)などの特定のインターベンション心臓学手術の前に経口投与される。患者へ投与されるクロピドグレルの量は、その患者についての手術までの予測時間に関連する。一般的に、投与されるクロピドグレルの量が多くなるほど、所望の治療効果(例えば、血小板凝集阻害)に達するまでの時間が短くなる。平均用量(PLAVIX(登録商標)錠剤中においてクロピドグレル300 mg)について、所望の効果(例えば、血小板凝集阻害)に達するまでの典型的な時間は、2時間から5時間まで異なる。手術について即座の必要性がある場合(例えば、PCIは2〜3時間未満)、手術が2、3時間またはそれ以上後に行われた場合に投与されたであろう用量よりも、より多い用量のクロピドグレルが投与される。例えば、クロピドグレルの投与後60〜180分で手術を受ける患者には、600 mgが投与され得る。クロピドグレルの投与の180分またはそれ以上後に始まる手術については、患者に300 mgが投与され得る。この投薬戦略が用いられる理由は、明白なインビボ用量飽和効果が存在することであり、それによって、用量を増加させることは薬物の全体的な効能を増加させないが、単に治療発現の速度を増加させ、即ち、血小板凝集のターゲット阻害が薬物の投与後に達成される速度を増加させる。使用される特定のプロトコル、ならびにより多いまたは少ない用量が使用される前後の時間は、種々の施設間で相違し、しかし、投薬後より迅速に手術が行われる場合は、大部分はより多い用量を使用する。
【0008】
しかし、不必要に大量のクロピドグレルを投与することは、その毒物学プロファイルに起因して、望ましくない。クロピドグレル副作用としては、出血、胃の不調/疼痛、下痢、便秘、頭痛、めまい、発疹、インフルエンザ様症状、背/関節痛、異常に長時間の出血、異常なまたは容易な挫傷/出血、黒色便、嘔吐、胸痛、腫脹、うつ病、発熱、持続性の咽喉痛、異常な衰弱、視力変化、不明瞭発語、錯乱、重い発疹、痒み、重いめまい、または呼吸困難が挙げられる。
【0009】
さらに、患者が重篤な心臓事象、例えば、ACS(急性冠症候群)を示す場合、時間と共に急速に増加する心筋損傷の危険性を最小限にするために、可能な限り迅速に患者を治療する必要がある。臨床医は、可能な限り速やかに適切な救急医学的処置を決定するために、可能な限り速やかに患者を診断することができなければならない。目標は、病院においてACSを示した後90分以内にPCIを必要とする患者を治療することであるが、この短い時間は、PLAVIX(登録商標)錠剤を使用した場合、非現実的であるかまたは信頼できない。さらに、クロピドグレルは、CABGなどの侵襲性が高い緊急外科手術には禁忌であるが、それは、PCIなどの低侵襲性緊急手術について適応される。現時点での1つの標準的な治療プロトコルは、以下の通りである:1)患者がACSを示しているかどうかを測定する;2)被験体を入室させることをカテーテル検査室に警告する;3)300〜600 mgのクロピドグレル(PLAVIX(登録商標)錠剤として)を経口投与する;4)患者をカテーテル検査室へ移送する;5)冠状動脈血管造影を行う;6)薬物療法のみ、PCIまたはCABGが最適であるかどうかを決定する;および7)薬物療法のみが適応される場合、患者を長期間(長期)クロピドグレル療法で治療する;または8)PCIが適応される場合、PCIを行い、患者を長期間(長期)クロピドグレル療法において維持する;または8)CABGが適応される場合、血小板凝集が患者について標準に戻るまで、CABGを遅らせる。患者が1用量のクロピドグレルを受容した後7日以内にCABGが行われる場合、大量出血、出血関連合併症、および輸血の必要性の危険性が高い(Pickard et al. Pharmacotherapy (2008), 23, 376-392)。残念なことに、CABGの代わりにPCIが適応されるとの決定後までPLAVIX(登録商標)錠剤の投与を遅らせると、PCIを受ける患者にとって再閉塞および再狭窄の危険性が増加する。さらに、鎮静状態の患者へ経口錠剤を投与することは困難であり、これは、しばしば、冠状動脈血管造影を受ける被験体に当てはまる。
【0010】
従って、現在投与されるような過剰な用量を必要とせずにより迅速な治療発現を提供する製剤を提供することは、この療法分野に非常に有益である。
【0011】
クロピドグレルは、被験体における障害または疾患を治療するために別の薬物と共に摂取され得る。クロピドグレルは、アスピリンと共に摂取される場合、心臓関連胸痛で入院したことがあるかまたはあるタイプの心臓発作(医者が急性冠症候群(ACS)と呼ぶ状態)を有した人に推奨される。米国特許第7,018,990号は、第Xa因子阻害剤とクロピドグレルとの併用投与を開示している。米国特許第6,509,348号は、ADP受容体遮断抗血小板薬とトロンボキサンA2受容体アンタゴニストとの併用投与、および該組み合わせで血栓形成を阻害するための方法を開示している。米国特許第6,248,729号は、脳梗塞を予防するためのADP受容体遮断抗血小板薬と抗高血圧薬との併用投与を開示している。米国特許第5,989,578号は、クロピドグレルと抗血栓剤との併用投与を開示している。クロピドグレルと他の薬物との併用は、米国特許付与前公開第20050043382号および第20040067995号、ならびに公開された文献、Wegertら(Int. J. Clin. Pharmacol. Ther. (2002), 40(4), 135-141)およびGurbelら(Circulation, (2005), 111(9):1153-1159)にも開示されている。
【0012】
種々の米国特許および特許出願公開、例えば、米国特許第6,923,988号、第6,761,903号、第6,720,001号、第6,569,463号、第6,451,339号、第6,429,210号、第6,383,471号、第6,294,192号、および特許出願公開第20060223845号、第20060003002号、第20040115287号、第20030104048号、第20020032149号が、クロピドグレルを含む製剤を開示している。
【0013】
シクロデキストリンは、デンプンから誘導された環状炭化水素である。未修飾シクロデキストリンは、円筒状構造において一緒に結合されたグルコピラノース単位の数が相違する。親シクロデキストリンは、6、7、または8個のグルコピラノース単位を含有し、それぞれ、α-、β-、およびγ-シクロデキストリンと呼ばれる。各シクロデキストリンサブユニットは、2位および3位に第2級ヒドロキシル基、ならびに6位に第1級ヒドロキシル基を有する。シクロデキストリンは、親水性外部表面および疎水性内部空洞を有する中空の切断された円錐体として描写され得る。水溶液中において、これらの疎水性空洞は、疎水性有機化合物に避難所を提供し、これらは、それらの構造の全部または一部をこれらの空洞中へはめ込み得る。包接錯体形成として公知のこのプロセスは、錯化される薬物についての見かけの水溶性および安定性を増加させ得;しかし、安定化の程度は薬物ごとに異なる。錯体は疎水性相互作用によって安定化され、共有結合の形成を伴わない。
【0014】
親シクロデキストリンの(通常、ヒドロキシル部分での)化学修飾によって、該シクロデキストリンの錯体形成能力を保持または改善させつつ、改善された安全性を時折有する誘導体が得られた。今まで作製された多数の誘導体化シクロデキストリンの中で、たった2つのみが商業的に実現可能であるようであり;中性分子である、2-ヒドロキシプロピル誘導体(HP-β-CDまたはHPCD)は、Janssenらによって商業的に開発され、スルホアルキルエーテル誘導体(SAE-β-CDまたはSAE-CD)は、CyDex Pharmaceuticals, Inc.によって開発された。

【0015】
SAE-CDは、負に帯電したシクロデキストリンの類であり、これらは、アルキルスペーサーの性質、塩形態、置換度、および出発親シクロデキストリンの点で異なる。1シクロデキストリン分子当たり平均約7個の置換基を有する、β-シクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体のナトリウム塩(SBE7-β-CD)は、CAPTISOL(登録商標)シクロデキストリンとしてCyDex Pharmaceuticals, Inc. (Kansas)によって市販されている。
【0016】
アニオン性スルホブチルエーテル置換基は、親シクロデキストリンの水溶性を劇的に改善する。薬物とCAPTISOL(登録商標)シクロデキストリンとの可逆的な非共有結合性の錯体形成は、一般的に、水溶液中におけるいくつかの薬物の溶解性および安定性を増加させる。しかし、特定の薬物への結合に関してHP-β-CDと比べてのSAE-CDの改善された性質は、いくぶん予測不可能である。多くの薬物がSAE-CDとよりよく結合することが公知である一方、他のものはHP-β-CDとよりよく結合することが公知である。さらに、CAPTISOL(登録商標)シクロデキストリンは、比較的新しく、クロピドグレルとのその併用は、先行技術において評価も示唆もされていない。
【0017】
任意で別の薬物の存在下で、クロピドグレルの種々の塩、アモルファス、結晶および/または多形形態を含有する組成物を開示する種々の特許参考文献が、クロピドグレルがシクロデキストリンとの錯体としてこのような組成物中に含まれ得ることを示唆している。しかし、それらの参考文献のいずれも、SAE-CDを明記も例示もしていない。
【0018】
Rudolf Rucman(DIAGEN D.O.O.)へ2005年10月31日に発行されたスロベニア特許第SI 21748号は、遊離塩基または塩形態としてのクロピドグレルと、シクロデキストリン、例えば、β-CD、γ-CD、メチルシクロデキストリンおよびヒドロキシアルキルシクロデキストリン(後者の2つが好ましい)との包接錯体を開示している。前記特許はまた、クロピドグレルを可溶化するために、シクロデキストリンの代わりに10,000〜40,000の分子量を有するポリ(ビニルピロリドン)を使用することを開示している。
【0019】
Kolbeら(J. Inclusion Phenomena and Macrocyclic Chemistry (2002 Dec.), 44(1-4), pg. 183-184)は、1:1モル比でのジメチルシクロデキストリンおよびクロピドグレル塩基の錯体の形成を開示している。錯体は冷溶液から沈殿する。
【0020】
Punらの米国特許出願公開第2004-0109888号は、ポリマー性シクロデキストリン材料を開示している。
【0021】
Fikstadらの米国特許出願公開第2005-0096296号は、「可溶化剤および薬物の放出が同期される、治療有効量の薬物;可溶化剤;および放出モジュレーターを含む薬学的組成物」を開示している。
【0022】
Davisらの米国特許出願公開第2005-0276841号は、「徐放性生分解性ポリマー薬物溶出繊維」を開示しており、ここで、薬物はシクロデキストリンで錯化され得る。
【0023】
クロピドグレルは、溶液中において低い化学安定性を有することが公知である。その分解は、加水分解的経路によって典型的に進行し、それによって、エステル形態が、カルボン酸誘導体へ変換される。加水分解に対するクロピドグレルの安定性は、pH依存し、0.1 Mリン酸緩衝液中37℃の温度で保管した場合にpH 5.6で約52.7日のt90を有する(Drug Metab. Disposition (2000), 28(12), 1405-1410)。クロピドグレルの化学的に安定な溶液製剤は、当技術分野において有用である。クロピドグレルは、インビボおよびインビトロでキラル反転を受けることが公知であり(Reist et al., Drug Metab. Dispos. (2000), 28(12), 1405-1410);しかし、クロピドグレルの(R)-エナンチオマーは、抗血栓活性を欠いており、動物において痙攣を引き起こし得る。
【0024】
クロピドグレルの毒物学プロファイルおよび臨床手術室環境における過剰に高い用量でのその典型的な投与に起因して、不必要に多い量のクロピドグレルの投与を回避し得ると同時に、治療発現速度の所望の増加、即ち、血小板凝集の所望の減少を達成するのに要する薬物投与後の時間の所望の短縮を提供し得る、製剤を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0025】
本発明は、クロピドグレル(またはその任意の薬学的に許容される塩)、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン(SAE-CD)、および任意で1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。SAE-CDは、主に、これら2つが水性媒体の存在下にある場合にクロピドグレルを可溶化および安定化することを担う。本発明の組成物は、溶液中におけるクロピドグレルの化学的分解を減少させる。それらはまた、(R)-クロピドグレルへの(S)-クロピドグレルのキラル反転速度を低下させる。クロピドグレルの塩形態が本製剤中に含まれ得るが、製剤は、強酸性条件へのクロピドグレルの曝露を必ずしも必要とせず、何故ならば、クロピドグレルの、塩形態ではなく、遊離塩基形態が、製剤中に使用され得るためである。
【0026】
本発明は、SAE-CD、クロピドグレル、および水性液体担体を含む水性(任意で透明)液体製剤を提供する。
【0027】
本発明の製剤は、単回投与または複数回投与製剤であり得る。特許請求される製剤はまた、いったん該製剤が微生物で汚染されると、SAE-CDが微生物増殖速度を低下または停止させるに十分な量で存在する場合、微生物増殖に対して自己防腐され得る。本製剤はまた、他のシクロデキストリンベースの製剤と比べてクロピドグレルの光化学および熱安定性を改善する。
【0028】
本発明はまた、薬学的に安定でありかつ投与前に希釈を必要としないクロピドグレルのSAE-CDベースの溶液を提供する。
【0029】
ある態様において、1)スルホアルキルエーテルシクロデキストリンは、透明溶液を提供するのに十分な量で存在する;2)SAE-CDは、約20〜600 mg/ml、50〜500mg/mlまたは100〜400 mg/ml(それぞれ、2〜60%、5〜50%または10〜40% wt./vol.)の濃度で存在する;3)SAE-CDはSBEx-β-CDであり、式中、xは6.0〜7.1または6.5〜7である;4)SAE-CDはSBEx-γ-CDであり、式中、xは約6〜8である;および/または5)SAE-CDは、式1(下記参照)の化合物またはそれらの化合物の混合物である。
【0030】
ある態様において、1)クロピドグレルは治療有効量で存在する;および/または2)クロピドグレルは、遊離塩基当量として、約1.5〜20 mg/ml(約4.7〜62 mM)または約0.15〜1.5 mg/ml(約0.47〜4.7 mM)の濃度で存在する。
【0031】
本発明はまた、以下である態様を含む:1)SAE-CD対クロピドグレルのモル比が、製剤のpHが約3.5、または約3.5よりも大きい場合、少なくとも約6:1、または約6:1〜約8:1の範囲内にある;2)SAE-CD対クロピドグレルのモル比が、製剤のpHが約3.5未満である場合、約6:1未満である;3)クロピドグレルが、pH約5.5で約37% wt/vまたはそれ以下のSAE-CDを含む水溶液中に約7.5 mg/mlまたはそれ以下の濃度で存在する;4)クロピドグレルが、pH約5.5で約2.5% wt/vまたはそれ以下のSAE-CDを含む水溶液中に約0.5 mg/mlまたはそれ以下の濃度で存在する;5)クロピドグレルが、遊離塩基当量として、約0.15〜20 mg/ml(約0.47〜62 mM)の濃度で存在する;および/または6)クロピドグレルが、重硫酸塩当量として、約0.2〜約26 mg/ml(約0.47〜約62 mM)、約0.2〜約2 mg/ml(約0.47〜約4.7 mM)、または約2〜約26 mg/ml(約4.7〜約62 mM)の濃度で存在する。
【0032】
ある態様において、製剤は、被験体への投与前に希釈を必要としない。別の態様において、液体製剤は、クロピドグレルの沈殿なしに、水ベースの希釈剤で希釈可能である。
【0033】
ある態様において、製剤は、可溶化剤、矯味矯臭剤、甘味剤、粘性誘導剤、抗酸化剤、緩衝剤、酸性化剤、錯体形成促進剤、凍結乾燥助剤(例えば、増量剤または安定化剤)、電解質、別の治療剤、アルカリ化剤、抗微生物剤、抗真菌剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む。
【0034】
一般的に、液体製剤は、異なるシクロデキストリンまたは誘導体化シクロデキストリンを含有する別の液体製剤と比較して、改善された光化学安定性を有し、蛍光灯へ曝露された場合により少ない光分解を受ける。
【0035】
ある態様において、製剤は、SAE-CDが等モル量の別のシクロデキストリン、例えばHP-β-CDで置き換えられている他の製剤と比較して、改善された化学安定性、例えば、クロピドグレルの加水分解に対する改善された安定性を有し、水性条件へ曝露された場合、クロピドグレルのより少ない加水分解を受ける。
【0036】
本発明はまた、再構成可能な固体から水性(任意で透明)液体製剤を製造する方法を提供し、該方法は、以下の工程を含む:
クロピドグレル、SAE-CD、および任意で少なくとも1つの他の薬学的賦形剤を含む再構成可能な固体を提供する工程、ここで、該固体は、水性液体で再構成可能であり、SAE-CD対クロピドグレルのモル比は、該水性液体のpHが約3.5に等しいかまたはそれより大きい場合、少なくとも約6:1、少なくとも約6:1〜8:1、または少なくとも約8:1である;および
該再構成可能な固体を少なくとも懸濁させるに十分である十分な量の水性液体担体で、該固体を再構成し、それによって、水性(任意で透明)液体製剤を形成させる工程。
【0037】
ある態様において、液体製剤は、水溶液で、少なくともSAE-CDおよびクロピドグレルを含む再構成可能な固体を再構成することによって作製されており、ここで、再構成可能な固体は、本明細書において定義される通りである。逆に、液体製剤は、再構成可能な固体を形成するために、凍結乾燥され得るかまたは他の方法で脱水され得る。
【0038】
本発明のある態様は、以下を含む:1)液体製剤が懸濁液である;2)添加される液体担体の量が、液体製剤を透明にするのに十分である;3)製剤が、約1.5〜20 mg/mlまたは約0.15〜1.5 mg/mlの範囲内のクロピドグレルの濃度を有する;4)製剤のpHが、クロピドグレルのpKaに近いかまたはそれ未満である;5)製剤のpHが、クロピドグレルのpKaに近いかまたはそれを超える;6)製剤のpHが、非経口または経口送達について約4〜8の範囲内にある;7)製剤のpHが、経口送達について約1〜3、1〜4、1〜8、4〜8、または4〜6の範囲内にある;8)SAE-CD対クロピドグレルのモル比が、製剤のpHが約3.5未満である場合、約6:1未満である;9)SAE-CD対クロピドグレルのモル比が、製剤のpHが約3.5、または約3.5よりも大きい場合、少なくとも約6:1、または約6:1〜8:1の範囲内にある;および/または10)モル比が、製剤のpHが約8、または約8よりも大きい場合、少なくとも約7.25:1または7.3:1であり;モル比が、製剤のpHが約5.5、または約5.5よりも大きい場合、少なくとも約6.5:1または6.6:1である。
【0039】
本発明のある態様は、以下を含む:1)前記方法が、再構成可能な固体および水性液体担体を混合する工程をさらに含む;および/または2)再構成後、液体製剤が、さらなる希釈を必要とすることなく、被験体への投与の準備ができている。
【0040】
本発明はまた、固体投薬形態を提供する。このような投薬形態は、経口、経腸、経頬、舌下、または固体投薬形態についての他の公知の投与様式によって投与され得る。固体投薬形態は、錠剤、カプセル剤、散剤、再構成可能な固体、および他のこのような投薬形態を含み得る。投薬形態の非経口投与が、水性液体担体中における該投薬形態の溶解後に行われ得る。経口投与される固体経口投薬形態は、胃腸管における放出の標的化領域に依存して、より少量のSAE-CDを必要とし得る。胃の領域において放出する固体経口投薬形態について、SAE-CD対クロピドグレルのモル比は、6:1未満、5:1未満、4:1未満、3:1未満、2:1未満、1:1未満、0.5:1未満、0.25:1未満、および/または少なくとも0.05:1であり得る。胃の後の領域において放出する固体経口投薬形態について、SAE-CD対クロピドグレルのモル比は、少なくとも0.2:1、少なくとも0.5:1、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、および/または多くとも100:1、多くとも75:1、多くとも50:1、多くとも40:1、多くとも35:1、多くとも30:1、多くとも20:1、多くとも15:1、多くとも12:1もしくは多くとも10:1であり得る。
【0041】
本開示において記載される、SAE-CD対クロピドグレルのモル比の種々の上限値および下限値の組み合わせは、本発明の異なる態様を提供するために使用され得る。
【0042】
本発明はまた、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンとクロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩とを含む使用準備済(ready-to-use)液体または固体経口投薬製剤を投与する工程を含む、クロピドグレルを投与する方法を提供する。
【0043】
本発明の方法のある態様は、以下を含む:1)液体製剤が、非経口、経腸、または経口的投与される;2)該方法が、投与の前に、水性液体担体で、本発明による濃縮物を希釈し、それによって、使用準備済液体製剤を提供する工程をさらに含む;3)該方法が、本発明による再構成可能な固体と水性液体担体とを混合することによって、液体製剤を形成する工程をさらに含む;または4)液体製剤が、本明細書に記載されるように製剤化される。
【0044】
本発明はまた、血小板凝集に関連する病因を有する疾患、障害または状態の、または、クロピドグレル療法に治療応答性である疾患、障害または状態の、治療、予防、発症の低減の方法であって、その必要がある患者へ本発明の製剤を投与する工程を含む方法を提供する。本発明のある態様は、血栓性疾患、障害、または状態が、心筋梗塞、脳卒中、確立された末梢動脈疾患(PAD)を有する患者における血管死、続発性虚血事象、急性冠症候群(不安定狭心症/非Q波MI、心臓発作、アンギナ)、一過性脳虚血発作、脳血管疾患 心臓血管疾患、狭心症、深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓症(PE)、鎌状赤血球クリーゼ、および心不整脈からなる群より選択される態様を含む。
【0045】
本発明はまた、クロピドグレルによって提供される、治療発現までの時間またはターゲット治療効果に達するのに必要とされる時間を短縮する方法であって、本発明による製剤をその必要がある被験体へ非経口投与する工程;または本発明による製剤をその必要がある被験体へ経口または経腸投与する工程を含む方法を提供する。本発明の製剤は、経口投与される固体経口投薬形態と比較して、治療発現までおよび/またはターゲット治療効果までの短縮された時間を提供する。本発明の製剤はまた、同一のターゲット治療効果を達成するための、SAE-CDを含まない参照固体経口投薬形態の投与と比較して、より少ない用量のクロピドグレルの投与がターゲット治療効果、例えば、ターゲット出血時間または血小板凝集のターゲット阻害を達成することを可能にする。
【0046】
本発明は、被験体における出血時間を増加させる方法であって、その必要がある被験体へ、SAE-CDと、900 mg、750 mg、675 mg、600 mg、450 mg、375 mg、300 mg、225 mg、200 mg、150 mg、100 mg、75 mg、50 mg、40 mg、30 mg、25 mg、20 mg、15 mg、12.5 mg、10 mg、7.5 mg、5 mg、2 mg、1 mg、0.75 mg、もしくは0.1 mg以下のクロピドグレル、または0.1〜900 mg、0.1〜100 mg、100〜300 mg、約300 mg、300〜600 mg、300〜900 mg、600〜900 mg、50〜600 mg、75〜600 mg、150〜600 mg、もしくは200〜450 mgの範囲内のクロピドグレルとを含む組成物を投与する工程を含み、それによって、被験体の出血時間が、製剤の投与後、200分、150分、120分、100分、90分、75分、60分、50分、45分、40分、30分、15分、10分、7.5分、5分、2.5分以下の、もしくは1分以下の、または少なくとも10秒の、または10秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分の期間の間、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも700%、少なくとも900%、または少なくとも1000%増加し、ここで、該増加が、該組成物の投与前の被験体の出血時間と比較することによって測定される方法を提供する。出血時間のパーセンテージ増加の上限値は、10,000%まで、9,000%まで、7,500%まで、5,000%まで、4,000%まで、2,500%まで、または1,000%までであり得る。前記方法は、その必要がある被験体へ、数日間、1週間、数週間、1ヶ月間、数ヶ月間、3〜12ヶ月間、または1年を超える間、毎日または長期的に投与することを含み得る。
【0047】
本発明はまた、被験体が医学的手技を受ける直前に、その必要がある被験体における出血時間を増加させる方法であって、被験体へ、SAE-CDと、900 mg、750 mg、675 mg、600 mg、450 mg、375 mg、300 mg、225 mg、200 mg、150 mg、100 mg、75 mg、50 mg、40 mg、30 mg、25 mg、20 mg、15 mg、12.5 mg、10 mg、7.5 mg、5 mg、2 mg、1 mg、0.75 mg、もしくは0.1 mg以下のクロピドグレル、または0.1〜900 mg、0.1〜100 mg、100〜300 mg、約300 mg、300〜600 mg、300〜900 mg、600〜900 mg、50〜600 mg、75〜600 mg、150〜600 mg、もしくは200〜450 mgの範囲内のクロピドグレルとを含む製剤を投与する工程を含み、ここで、該製剤が手技の前の200、150、100、75、60、50、40、30、15、10、7.5、5または2.5分以内に投与され、被験体の出血時間が、その時間の間、少なくとも10、15、20、25、30、40、50、75、100、150、200、250、300、400、500、700、900、または1000%増加する方法を提供する。前記方法は、被験体が医学的手技を受ける直前に、その必要がある被験体へ、1用量または複数用量を急性投与する工程を含み得る。前記方法はまた、被験体が医学的手技、例えば、インターベンションまたは非インターベンション手技を受ける直前に、その必要がある被験体へ、単回用量を急性投与する工程を含み得る。
【0048】
本発明は、その必要がある被験体の血液中における血小板凝集の程度(または可能性)を低下させる方法であって、被験体へ、SAE-CDと、900 mg、750 mg、675 mg、600 mg、450 mg、375 mg、300 mg、225 mg、200 mg、150 mg、100 mg、75 mg、50 mg、40 mg、30 mg、25 mg、20 mg、15 mg、12.5 mg、10 mg、7.5 mg、5 mg、2 mg、1 mg、0.75 mg、もしくは0.1 mg以下のクロピドグレル、または0.1〜900 mg、0.1〜100 mg、100〜300 mg、約300 mg、300〜600 mg、300〜900 mg、600〜900 mg、50〜600 mg、75〜600 mg、150〜600 mg、もしくは200〜450 mgの範囲内のクロピドグレルとを含む製剤を投与する工程を含み、それによって、被験体の血小板凝集のパーセンテージが、該製剤の投与後、200分、150分、120分、100分、90分、75分、60分、50分、45分、40分、30分、15分、10分、7.5分、5分、2.5分以下の、もしくは1分以下の、または少なくとも10秒の、または10秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分の期間の間、少なくとも5、10、15、30、40、50、60、70、80、90、96、98、または100%低下する方法を提供する。
【0049】
本発明はまた、その必要がある被験体において少なくとも5、10、15、30、40、50、60、70、80、90、96、98または100%、血小板凝集の程度(または可能性)を低下させる方法であって、SAE-CDと、900、750、675、600、450、375、300、225、200、150、100、75、50、40、30、25、20、15、12.5、10、7.5、5、2、1、0.75、もしくは0.1 mg以下のクロピドグレル;または0.1〜900 mg、0.1〜100 mg、100〜300 mg、約300 mg、300〜600 mg、300〜900 mg、600〜900 mg、50〜600 mg、75〜600 mg、150〜600 mg、もしくは200〜450 mgのクロピドグレルとを含む製剤を、毎日、被験体へ投与する工程を含む方法を提供する。
【0050】
血小板凝集の程度または可能性は、インビボまたはエクスビボ(インビトロ)で測定され得る。
【0051】
それは経口投与され得るが、本発明の透明液体製剤/投薬形態は、特に、非経口投与に適している。特に、製剤の経口投与が望ましくない可能性がある場合、即ち、手技前投与、手技後投与、および他のこのような投与様式などの場合、または、被験体が、液体または固体製剤の経口用量を受容することが不能であるかまたはそうでなければできない場合、非経口投与が望ましい場合がある。手技は、この特定の場合において、医学的手技である。本発明の製剤はまた、経口投与され得る。
【0052】
本発明はまた、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩の、SAE-CDベースの水溶液または固体投薬形態を製造する方法を提供する。
【0053】
本発明はまた、SAE-CDを含む第1の薬学的組成物と、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩を含む第2の薬学的組成物とを含むキットを提供する。
【0054】
本発明はまた、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン、クロピドグレル、薬学的に許容される担体、任意で1つまたは複数の他の賦形剤を含む、テイストマスクされた経口製剤を提供する。
【0055】
特に明記されない限り、「クロピドグレル」という用語は、該化合物の、遊離塩基または塩形態、およびラセミ形態、光学的に純粋な(R)形態、光学的に純粋な(S)形態、または光学的に濃縮された(optically enriched)形態を含む。それはまた、前記化合物の固体、懸濁、または溶解形態を含む。塩形態は、半水和物、水和物または無水形態として存在し得る。塩はまた、純粋な結晶形態または多形形態で存在し得る。
【0056】
本発明はまた、クロピドグレルを含む製剤中におけるクロピドグレルの安定性を改善する方法であって、該製剤中に存在するクロピドグレルの相当な部分と錯体形成するのに十分な量のSAE-CDを該製剤へ添加し、それによってクロピドグレルを安定化する工程を含む方法を提供する。
【0057】
本発明は、クロピドグレルおよび水性液体担体を含む液体製剤を安定化する方法であって、クロピドグレルの相当な部分と錯体形成するのに十分な量のSAE-CDを該製剤へ添加し、それによってクロピドグレルを安定化する工程を含む方法を含む。「安定化する」という用語は、溶液中のクロピドグレルの分解またはキラル反転の速度を低下させること、程度を減少させること、および/または阻害することを意味すると理解される。SAE-CD対クロピドグレルのモル比は、液体製剤のpHおよび製剤の所望の安定性に従って、本明細書に記載されるように、変化し得る。一般的に、SAE-CDで錯化されるクロピドグレルの部分が多くなると、クロピドグレルの安定化は大きくなる。従って、本発明はまた、(R)-クロピドグレルへのキラル反転に対して(S)-クロピドグレルを安定化する方法であって、光学的に純粋なまたはエナンチオマーとして濃縮された形態の(S)-クロピドグレルを含む組成物または製剤中にスルホアルキルエーテルシクロデキストリンを含める工程を含む方法を提供する。エナンチオマーとして濃縮されたとは、前記組成物が(R)-クロピドグレルよりも多い量の(S)-クロピドグレルを含むことを意味する。
【0058】
SAE-CDは溶液中のクロピドグレルを安定化するので、本発明の製剤または組成物はまた、「安定化製剤」または「安定化組成物」である。「安定化製剤」または「安定化組成物」は、SAE-CDを除くその他の点では同様の製剤と比較して、増強された安定性を有する。
【0059】
本発明はまた、SAE-CD、クロピドグレル、第2の治療剤、および薬学的に許容される担体を含む製剤を提供する。第2の治療剤は、非ステロイド性抗炎症薬、抗凝固剤、選択的第Xa因子阻害剤、直接トロンビン阻害剤、抗血小板剤、血小板凝集阻害剤、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤、抗鎌状化薬、ヘモレオロジック剤(hemorrheologic agent)、血栓溶解剤、血栓溶解酵素、組織プラスミノーゲン活性化因子、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0060】
本発明はまた、疾患、状態または障害を治療する方法であって、その必要がある被験体へ、本発明の組成物または製剤中の治療有効量のクロピドグレル、および治療有効量の第2の治療剤、例えば、本明細書に記載されるものを投与する工程を含む方法を提供する。第2の治療剤は、クロピドグレルと同一の組成物または製剤中に含まれる場合および含まれない場合がある。
【0061】
本発明はまた、クロピドグレル療法に対する応答性についてリスポンダー(responder)または非リスポンダー(non-responder)被験体を同定する方法であって、予想される治療有効量のクロピドグレルを含む組成物を被験体へ投与する工程、および、被験体への組成物の投与後、約10秒〜120分、30秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分、1分〜90分、5分〜60分、10分〜60分、5分〜45分、10分〜45分、15分〜30分、5分〜30分、5分〜15分、もしくは10分〜20分の期間内、または約10秒未満、約1分未満、約2.5分未満、約5分未満、約7.5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、約120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約50分未満、約45分未満、もしくは約40分未満以内に、クロピドグレルに対する被験体の応答性を測定する工程を含む方法を提供する。
【0062】
組成物は、経口的または非経口投与に適合され得る。クロピドグレルの予想される治療有効量は、一般的に、約50〜600 mg、0.1〜900 mg、1〜900 mg、10〜900 mg、0.1〜100 mg、25〜750 mg、50〜600 mg、75〜600 mg、75〜500 mg、100〜300 mg、100〜400 mg、150〜600 mg、もしくは200〜450 mg、200〜400 mg、300〜600 mg、300〜900 mg、600〜900 mg、約0.1 mg、約0.75 mg、約1 mg、約2 mg、約5 mg、約7.5 mg、約10 mg、約12.5 mg、約15 mg、約20 mg、約25 mg、約30 mg、約40 mg、約50 mg、約75 mg、約100 mg、約150 mg、約200 mg 約225 mg、約300 mg、約375 mg、約450 mg、約525 mg、約600 mg、約675 mg、約750 mg、約900 mgである。
【0063】
測定工程は、以下を含み得る:被験体の血液のサンプルを採取すること;および、凝集測定法、例えば、光透過率またはインピーダンス血小板凝集測定法によって被験体の血漿中の血小板凝集の程度を測定すること。投与工程は、経口的または非経口投与を含み得る。組成物は、クロピドグレルを可溶化するおよび/または安定化するのに十分な量のSAE-CDをさらに含み得る。
【0064】
本発明はまた、そこにおいてターゲット治療効果を達成するためにクロピドグレルの必要があるリスポンダー被験体において要する治療用量を減少させる方法であって、SAE-CDおよび第1の治療有効量のクロピドグレルを含む薬学的組成物を被験体へ非経口または経口的に投与する工程を含み、ここで、第1の治療有効量は、第2の治療有効量よりも少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.25倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍少なく、少なくとも15倍、少なくとも20倍、約1.1〜約20倍、約1.2倍〜約15倍、約1.25倍〜約10倍、約2倍〜約10倍、または約3倍〜約8倍少なく、第2の治療有効量は、SAE-CDを含まない参照固体薬学的組成物中においてクロピドグレルが被験体へ経口的に投与される場合に、実質的に同一の治療効果を提供するために要するクロピドグレルの量である方法を提供する。ある態様において、第1の治療有効量は、900 mg、750 mg、675 mg、600 mg、450 mg、375 mg、300 mg、225 mg、200 mg、150 mg、100 mg、75 mg、50 mg、40 mg、30 mg、25 mg、20 mg、15 mg、12.5 mg、10 mg、7.5 mg、5 mg、2 mg、1 mg、0.75 mg、もしくは0.1 mg以下のクロピドグレル、または0.1〜900 mg、0.1〜100 mg、50 mg〜600 mg、100〜300 mg、約300 mg、300〜600 mg、300〜900 mg、600〜900 mg、50〜600 mg、75〜600 mg、150〜600 mg、もしくは200〜450 mgの範囲内であり、第2の治療有効量は、固体経口錠剤、例えばPLAVIX錠剤について約300 mg〜900 mgであり、またはそれを超える。
【0065】
本発明はまた、クロピドグレルの経口投与に関して非リスポンダーである被験体をリスポンダーへ変換する方法であって、その必要がある被験体へクロピドグレルを非経口投与し、それによって被験体においてクロピドグレルに対する治療応答を提供する工程を含む方法を提供する。
【0066】
本発明はまた、被験体においてターゲット治療効果を達成するために、被験体における用量を漸増させる方法であって、10 mg〜600 mg、50 mg〜600 mg、50 mg〜300 mg、約50 mg、約75 mg、約100 mg、約150 mg、約225 mg、約300 mg、約375 mg、約450 mg、約525 mg、または約600 mgであり得る第1の量のクロピドグレルを被験体へ非経口投与する工程;非経口投与後120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約45分未満、約30分未満、約20分未満、約15分未満、約10分未満、約5分未満の、または30秒〜120分、30秒〜100分、1分〜100分、1分〜90分、5分〜90分、10分〜75分、10分〜60分、15分〜60分、15分〜45分、もしくは15分〜30分の期間内に、被験体において達成された第1の対応する治療効果を測定する工程;達成された治療効果の程度がターゲット治療効果(例えば、血小板凝集の阻害に関して)未満である場合、第2の量のクロピドグレルを被験体へ非経口投与する工程、ここで、第2の量は、第1の量の約0.5倍、約1倍、約1.25倍、約1.5倍、もしくは約2倍であるか、または第2の量は、0.1 mg〜1200 mg、1 mg〜1000 mg、5 mg〜900 mg、10 mg〜900 mg、25 mg〜750 mg、50 mg〜750 mg、50 mg〜600 mg、0.1 mg〜100 mg、1 mg〜75 mg、100 mg〜300 mg、300 mg〜600 mg、もしくは600 mg〜1200 mgである;第2の量の投与後に被験体において達成された第2の対応する治療効果を測定する工程;および、第2の対応する治療効果がターゲット治療効果未満である場合、ターゲット治療効果が達成されるまで、「第2の量のクロピドグレルを被験体へ非経口投与する」工程および「達成された第2の対応する治療効果を測定する」工程を繰り返すことを含む方法を提供する。
【0067】
測定工程は、以下を含み得る:被験体の血漿のサンプルを採取すること;および、凝集測定法によって被験体の血漿中の血小板凝集の程度を測定すること。採取工程は、以下を含み得る:患者の血液のサンプルを採取すること;および、血液から血漿を分離し、血漿サンプルを形成すること。クロピドグレルは、SAE-CDを含む組成物中に存在し得る。本発明はまた、クロピドグレルが経口的に投与される、代替の方法を提供する。
【0068】
本発明はまた、心臓血管の状態、疾患または障害を有する被験体のための治療プロトコルを提供し、任意で、ここで、被験体はクロピドグレル療法を最初に受けておらず、該プロトコルは、以下を含む:a)被験体がインターベンションまたは非インターベンション医学的処置を必要とするかどうかを測定する工程;および、b)被験体が低侵襲性インターベンション医学的処置を必要とする場合、120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約45分未満、約30分未満、約20分未満、約15分未満、約10分未満、約5分未満の、または30秒〜120分、30秒〜100分、1分〜100分、1分〜90分、5分〜90分、10分〜75分、10分〜60分、15分〜60分、15分〜45分、もしくは15分〜30分の期間内に患者においてターゲット治療効果を提供するのに十分な量の、クロピドグレルおよびSAE-CDを含む薬学的組成物を被験体へ投与し、低侵襲性インターベンション手技を行う工程;または、c)被験体が非インターベンション医学的処置を必要とする場合、10秒〜120分、30秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分、1分〜90分、5分〜60分、10分〜60分、5分〜45分、10分〜45分、15分〜30分、5分〜30分、5分〜15分、もしくは10分〜20分の期間内に、または約10秒未満、約1分未満、約2.5分未満、約5分未満、約7.5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、約120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約50分未満、約45分未満、もしくは約40分未満以内に患者においてターゲット治療効果を提供するのに十分な量のクロピドグレルおよびSAE-CDを含む薬学的組成物を被験体へ投与し、非インターベンション医学的処置を被験体へ提供する工程;または、d)被験体が侵襲性インターベンション医学的処置を必要とする場合、クロピドグレルを被験体へ投与しないこと。ある態様において、低侵襲性インターベンション手技は、PCIである。ある態様において、侵襲性インターベンション手技は、CABGである。ある態様において、前記プロトコルは、以下を含む:被験体がACSを示すかどうかを測定する工程;任意で、被験体を入室させることをカテーテル検査室に警告する工程;任意で、カテーテル検査室へ被験体を移送する工程;被験体について冠状動脈血管造影を行う工程;PCIまたはCABGが適応されるかどうかを測定する工程;および、PCIが適応される場合、クロピドグレルを含む液体組成物を非経口投与するか、またはクロピドグレルおよびSAE-CDを含む組成物を経口的に投与し、PCIを行い、任意で、長期間(長期)クロピドグレル療法に被験体を維持する工程;または、CABGが適応される場合、クロピドグレルの事前投与なしに、CABGを行う工程。本発明の方法は、必要に応じて、追加の工程、例えば、被験体を鎮静させること、および/または、担当臨床医/医師によって適応される任意の工程を含み得る。
【0069】
本発明は、クロピドグレルが投与されたリスポンダー被験体におけるピークまたはターゲット治療効果までの時間を短縮する方法を提供し、該方法は、SAE-CDとターゲット治療効果を達成するのに十分な治療有効量のクロピドグレルとを含む第1の組成物を、その必要がある被験体へ投与する工程を含み、それによって、第1の組成物の投与によって達成されるピークまたはターゲット治療効果までの時間が、SAE-CDを含まずかつ実質的に同一の治療有効量のクロピドグレルを含むその他の点では同様の参照組成物の同様の投与によって達成されるピークまたはターゲット治療効果までの時間よりも短くなる。ある態様において、ピークまたはターゲット治療効果までの時間は、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.25倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍少なく、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、少なくとも120倍、約1.1倍〜約120倍、約2倍〜約120倍、2倍〜100倍、2倍〜75倍、または2倍〜50倍、短縮される。
【0070】
本発明はまた、本明細書に詳述される本発明の態様および局面のコンビネーションを含む。従って、本発明はまた、本明細書に説明される本発明の態様および局面の個々の要素のコンビネーションおよびサブコンビネーションを含む。本発明の他の特徴、利点および態様は、以下の説明、付随の実施例によって当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
以下の図面は、本明細書の一部であり、本発明のある局面をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書に示される態様の概要および詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つまたは複数を参照することによってより十分に理解され得る。
【図1】pH約5.5で、水中において、クロピドグレル重硫酸塩、ならびに種々の異なるSAE-CD誘導体、非誘導体化シクロデキストリン、および2-ヒドロキシプロピル-β-CDを用いて行った室温相溶解度研究から得られたデータを表す。
【図2a】実施例19に従って作製された、pH 5.5および60℃のリン酸緩衝液(0.1および0.2 M)中において行われた、クロピドグレルと、SBE-β-CDまたはHP-β-CDのいずれかとの組み合わせについての熱安定性研究から得られたデータを表す。
【図2b】実施例19に従って作製された、pH 8.0および60℃のリン酸緩衝液(0.1および0.2 M)中において行われた、クロピドグレルと、SBE-β-CDまたはHP-β-CDのいずれかとの組み合わせについての熱安定性研究から得られたデータを表す。
【図3a】実施例19に従って作製された、pH 5.5および40℃のリン酸緩衝液(0.1または0.2 M)中において行われた、クロピドグレルと、SBE-β-CDまたはHP-β-CDのいずれかとの組み合わせについての熱安定性研究から得られた、((S)-クロピドグレルから(R)-クロピドグレルへの)キラル変換データを表す。
【図3b】実施例19に従って作製された、pH 8.0および40℃のリン酸緩衝液(0.1または0.2 M)中において行われた、クロピドグレルと、SBE-β-CDまたはHP-β-CDのいずれかとの組み合わせについての熱安定性研究から得られた、((S)-クロピドグレルから(R)-クロピドグレルへの)キラル変換データを表す。
【図4a】pH 5.5および29℃のリン酸緩衝液(0.1または0.2 M)中において行われた、クロピドグレルと、SBE-β-CDまたはHP-β-CDのいずれかとについての蛍光灯安定性研究から得られた、((S)-クロピドグレルから(R)-クロピドグレルへの)キラル変換データを表す。
【図4b】pH 8.0および29℃のリン酸緩衝液(0.1または0.2 M)中において行われた、クロピドグレルと、SBE-β-CDまたはHP-β-CDのいずれかとについての蛍光灯安定性研究から得られた、((S)-クロピドグレルから(R)-クロピドグレルへの)キラル変換データを表す。
【図5】周囲温度でのクロピドグレル重硫酸塩のpH溶解度プロファイルに関するデータを表す。
【図6a】pHが5.5に調節された水中における25℃での、SAE-CD(wt./vol %)の存在下でのクロピドグレル重硫酸塩(mg/ml)についての相溶解度ダイアグラムを表す。
【図6b】pHが5.5に調節された水中における25℃での、SAE-CD(M)の存在下でのクロピドグレル重硫酸塩(M)についての相溶解度ダイアグラムを表す。
【図7】実施例22に従って行われた、アスピリンの存在下におけるSAE-CDおよびクロピドグレル塩間の競合的結合アッセイの結果を表す。
【図8】実施例20に従って作製された透明液体製剤の投与(非経口および経口的)後のマウスにおける出血時間を測定するためのインビボ研究の結果を表す。評価は実施例21に従って行った。
【図9】SBE-β-CDおよびクロピドグレル重硫酸塩溶液を含む噴霧乾燥固体から作製された錠剤(ここで、SBE-β-CD対クロピドグレル重硫酸塩の重量比は、それぞれ、250 mg対98 mgである)、または同一比を使用してSBE-β-CDおよびクロピドグレル重硫酸塩の物理的混合物から作製された錠剤の溶解研究の結果を表す。これらを市販の錠剤PLAVIX(登録商標)と比較した。評価は実施例23に従って行った。
【図10】本発明の水性液体組成物中の0.1〜300 mgのクロピドグレルを受容する患者コホートにおける、IV投与後の時間に対する平均血漿クロピドグレル濃度の対数線形プロット。
【図11】図10の患者についての、投与後の時間に対する平均血漿クロピドグレルチオール活性代謝産物濃度の対数線形プロット。
【図12】図10の患者についての、投与後の時間に対する平均血漿クロピドグレルカルボン酸代謝産物濃度の対数線形プロット。
【図13】本発明の水性液体組成物中の0.1〜300 mgのクロピドグレルを受容する患者コホートにおける、IV投与後の時間に対する血小板凝集阻害の平均パーセンテージのプロットである。
【図14】図13の患者についての、投与後の時間に対する、15%以上の血小板凝集阻害を達成する患者のパーセンテージの推定値に関するKaplan-Meierプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0072】
発明の詳細な説明
使用準備済(即ち、投与準備済(ready-to administer))形態で作製される場合、本発明の液体製剤は、投与前に希釈を必要としない。濃縮物として存在する場合、本製剤はまた、沈殿物の形成なしに、広範囲の水ベースの希釈剤中に希釈可能である。製剤は、経口、経口的、経腸または非経口製剤であり得る。
【0073】
本明細書において使用される場合、特に明記されない限り、「クロピドグレル」という用語は、その中性、遊離塩基、塩、結晶、非結晶、アモルファス、光学的に純粋な、光学的に濃縮された、ラセミおよび/または多形形態の全てを含む。クロピドグレルは、本製剤中における使用前に無水または水和形態で存在し得る。クロピドグレルの塩は、薬学的に許容される塩であり得る。クロピドグレルの(S)-エナンチオマーは、米国特許第4,847,265号に従って作製され得る。クロピドグレルの(R)-エナンチオマーは、フランス特許第FR 2769313号に従って作製され得る。クロピドグレルのラセミ形態は、米国特許第4,529,596号に従って作製され得、Sigma-Aldrich (St. Louis, Missouri)から市販されている。
【0074】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、活性剤がそれと酸とを反応させることによって修飾され、必要に応じて、イオン結合対が形成されている、クロピドグレルの誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例としては、例えば、非毒性無機もしくは有機酸から形成される、親化合物の通常の非毒性塩または第4級アンモニウム塩が挙げられる。好適な非毒性塩としては、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルホン酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、および当業者に公知の他のものから誘導されるものが挙げられる。他の塩は、有機酸、例えば、アミノ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、および当業者に公知の他の酸から作製される。他の好適な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th. ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1985または1995において見られ、この関連の開示は、参照により本明細書に組み入れられる。クロピドグレルの特定の薬学的に許容される塩としては、重硫酸塩、臭化水素酸塩、ナプシル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、プロピルスルフェート、過塩素酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、塩酸塩、イソプロピルスルフェート、ヨウ化水素酸塩およびメシレートが挙げられる。
【0075】
本明細書において使用される場合、再構成可能な固体(再構成可能な組成物)という用語は、水性液体媒体に溶解し、再構成液体を形成することができる固体を意味すると理解され、ここで、溶解後、該液体媒体は、投与に適している。一態様において、再構成可能な固体は、該固体を水性担体と混合した場合に目で見て透明である液体製剤を形成する。本発明による再構成可能な薬学的製剤は、クロピドグレル、SAE-CD、および任意で少なくとも1つの他の薬学的賦形剤を含み、ここで、SAE-CD対クロピドグレルのモル比は、本明細書に定義される通りである。再構成可能な固体は、SAE-CDとクロピドグレルと任意で該固体を形成するための他の成分とを含む水性液体溶液から、液体媒体を除去することによって、作製され得る。再構成可能な固体組成物は、固体SAE-CDとクロピドグレル含有固体と任意で少なくとも1つの他の薬学的賦形剤との混合剤を含み得、その結果、クロピドグレルの大部分は、再構成前はSAE-CDで錯化されていない。または、前記組成物は、SAE-CDとクロピドグレルと任意で少なくとも1つの他の薬学的賦形剤との固体混合物を含み得、ここで、クロピドグレルの大部分は、再構成前にSAE-CDで錯化されている。再構成可能な固体は、一般的に、8%wt.未満の水を含む。この組成物は、水溶液で再構成され得、被験体へ投与され得るクロピドグレルおよび他の薬剤を含有する液体製剤が形成される。再構成可能な製剤の作製に使用される液体製剤は、希釈または濃縮液体製剤について本明細書において説明されるように作製され得る。それはまた、同一のSAE-CD対クロピドグレルモル比を維持しつつ、本発明の液体製剤において典型的に使用されるよりも高い濃度でSAE-CDおよびクロピドグレルを含有するように作製され得る。本出願人は、本発明による任意の組成物は、SAE-CDを含有する別の液体で溶解または希釈され得ることに言及する。
【0076】
再構成可能な組成物は、以下の方法のいずれによっても作製され得る。先ず、本発明の液体製剤が作製され、次いで、凍結乾燥(凍結−乾燥)、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、真空乾燥、反溶媒(antisolvent)沈殿、超臨界もしくは近超臨界流体を使用する種々の方法、または再構成について好適な粉末もしくは固体を作製するための液体製剤の当業者に公知の他の方法によって、固体が形成される。上述のように、再構成可能な固体は、乾燥成分の混合剤であり得、これは、過剰な湿気の非存在下で(即ち、湿気は約60%RH未満であるべきである)、成分を物理的にブレンドすることによって作製される。
【0077】
再構成可能な固体は、粉末、ガラス状固体、多孔性固体、顆粒(granulate)、ペレット、ビーズ、圧縮固体、微粒子または凍結乾燥物(lyophile)であり得る。
【0078】
本発明によるSAE-CD含有組成物または製剤に関して使用される場合、希釈可能という用語は、SAE-CDおよびクロピドグレルを含有する液体製剤を指し、ここで、該製剤は、好ましくは有意な沈殿なしに(即ち、沈殿が生じる場合、それはクロピドグレル約3%wt.に等しいかまたはそれ未満である)、室温、例えば、約20〜28℃の温度などの周囲温度で、透明水性液体担体でさらに希釈され得、また、約0.15〜10 mg/ml(遊離塩基当量)のクロピドグレル濃度へ希釈されると最終透明溶液を提供する。希釈可能なSAE-CDおよびクロピドグレル含有製剤が透明でない溶液で希釈される場合、得られる混合物は、透明である場合および透明でない場合がある。希釈可能なSAE-CDおよびクロピドグレル含有液体は、SAE-CDを含有しない別の溶液で希釈され得、得られる希釈溶液は、好ましくはクロピドグレルの有意な沈殿を生じさせることなく、より低い濃度の可溶化クロピドグレルを有する。
【0079】
本発明の経口製剤を希釈するための例示的な液体としては、市販の飲料、例えば、炭酸飲料、非炭酸飲料、およびジュースが挙げられる。例示的な炭酸飲料としては、風味付けされたおよび風味付けされていないソーダが挙げられ、ここで、フレーバーは、コーラ、レモン、ライム、ルートビヤ、バブルガム、チェリー、オレンジおよび他のフレーバー、またはそれらの混合物である。例示的なジュースとしては、リンゴ、レモン、ライム、オレンジ、ブドウ、チェリー、クランベリー、グレープフルーツ、ストロベリー、キウイ、ラズベリー、ブルーベリー、ブラックベリー、デューベリー、タンジェリン、パイナップル、スイカ、カンタロープ、ショウガ、グアバ、マンゴー、パパイヤ、プラム、アプリコット、西洋ナシ、モモ、ネクタリン、ザクロ、および他のジュース、またはそれらの混合物が挙げられる。従って、本発明による希釈可能でないSAE-CDおよびクロピドグレル含有溶液は、別の溶液で希釈した場合、顕著な量(活性剤の>3% wt.)の沈殿物を形成する。
【0080】
室温で水のみでは希釈可能でない製剤は、希釈された溶液中のクロピドグレル対SAE-CDの最終モル比が本明細書に記載されるような必要とされる範囲内にある限り、SAE-CDを含有する水溶液で希釈可能にされ得ることが、注意されるべきである。従って、本発明は、以前は希釈可能でない(本明細書に定義される通り)クロピドグレル含有溶液を希釈可能にする方法であって、希釈された溶液中のSAE-CD対クロピドグレルのモル比が本明細書に定義される通りとなるように、以前は希釈可能でない溶液をSAE-CDを含有する第2溶液で希釈する工程を含む方法を提供する。
【0081】
本明細書において使用される場合、薬学的に許容される液体担体は、非経口、経口または内用製剤の希釈または溶解のために製薬科学において使用される任意の水性液体媒体、例えば、水、水性緩衝液、水性有機溶媒、ならびに本明細書に記載されるかまたは製薬および/または食品産業において使用される他の液体である。
【0082】
本発明の製剤は、クロピドグレルおよび式1のスルホアルキルエーテルシクロデキストリンを含む:

式中:
nは、4、5、または6であり;
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9は、各々、独立して、-O-または-O-(C2-C6アルキレン)-SO3-基であり、ここで、R1〜R9基の少なくとも1つは、独立して、-O-(C2-C6アルキレン)-SO3-基、好ましくは、mが2〜6、好ましくは2〜4である-O-(CH2)mSO3-基(例えば、-OCH2CH2CH2SO3-、または-OCH2CH2CH2CH2SO3-)であり;
S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、およびS9は、各々、独立して、薬学的に許容される陽イオンであり、これは、例えば、H+、アルカリ金属(例えば、Li+、Na+、K+)、アルカリ土類金属(例えば、Ca+2、Mg+2)、アンモニウムイオン、ならびにアミン陽イオン、例えば、(C1-C6)-アルキルアミン、ピペリジン、ピラジン、(C1-C6)-アルカノールアミンおよび(C4-C8)-シクロアルカノールアミンの陽イオンなどを含む。
【0083】
特に好適なSAE-CD誘導体としては、nが5または6であるものが挙げられる。
【0084】
使用されるSAE-CDは、CyDex Pharmaceuticals, Inc. (Lenexa, KS)から入手可能であり、それはStellaらの米国特許第5,376,645号および第5,134,127号に記載されており、これらの全開示は参照により本明細書に組み入れられる。Parmerterらの米国特許第3,426,011号は、スルホアルキルエーテル置換基を有するアニオン性シクロデキストリン誘導体を開示している。Lammersら(Recl. Trav. Chim. Pays-Bas (1972), 91(6), 733-742);(Staerke (1971), 23(5), 167-171)およびQuら(J. Inclusion Phenom. Macro. Chem., (2002), 43, 213-221)は、スルホアルキルエーテル誘導体化シクロデキストリンを開示している。Shahらの米国特許第6,153,746号は、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体の製造方法を開示している。SAE-CDは、Stellaら、Parmerterら、Lammersら、またはQuらの開示に従って作製され得、非誘導体化親シクロデキストリンの大部分(>50%)を除去するように処理される場合、本発明に従って使用され得る。SAE-CDは、0%〜50%wt.未満の非誘導体化親シクロデキストリンを含有し得る。
【0085】
「アルキレン」および「アルキル」という用語は、本明細書において使用される場合(例えば、-O-(C2-C6-アルキレン)SO3-基またはアルキルアミンにおいて)、それぞれ、直鎖、環式、および分岐鎖、飽和および不飽和(即ち、1つの二重結合を含有する)二価アルキレン基および一価アルキル基を含む。本明細書における用語「アルカノール」は、同様に、直鎖、環式および分岐鎖、飽和および不飽和アルキル成分のアルカノール基を含み、ここで、ヒドロキシル基がアルキル部分の任意の位置に配置され得る。「シクロアルカノール」という用語は、非置換であるかまたは(例えば、メチルもしくはエチルによって)置換された環状アルコールを含む。
【0086】
本発明のSAE-CD誘導体の例示的な態様としては、「x」が1〜18の範囲内にある式II(SAEx-α-CD)の誘導体;「y」が1〜21の範囲内にある式III(SAEy-β-CD)の誘導体;および「z」が1〜24の範囲内にある式IV(SAEz-γ-CD)の誘導体、例えば、以下が挙げられる。

【0087】
「SAE」は、シクロデキストリン結合されたスルホアルキルエーテル置換基を示す。値「x」、「y」および「z」、は、CD 1分子当たりのスルホアルキルエーテル基の数に関して本明細書において定義されるような平均置換度を示す。
【0088】
他の例示的なSAE-CD誘導体としては、式SAEx-R-CD(式2)のものが挙げられ、式中、SAEは、スルホメチルエーテル(SME)、スルホエチルエーテル(SEE)、スルホプロピルエーテル(SPE)、スルホブチルエーテル(SBE)、スルホペンチルエーテル(SPtE)、またはスルホヘキシルエーテル(SHE)であり;R(親シクロデキストリンの環構造)がα、βまたはγである場合、それぞれ、x(平均または特定の置換度)は1〜18、1〜21、1〜24であり、CDはシクロデキストリンである。
【0089】
例示的なSAE-CD誘導体としては、SBE4-β-CD、SBE5.5-β-CD(Advasep(登録商標)シクロデキストリン)、SBE7-β-CD(CAPTISOL(登録商標)シクロデキストリン)、SPE5.6-β-CD、SBE6.1-γ-CDおよびSBE7.6-γ-CDが挙げられる。特に好適なSAE-CD誘導体としては、SAE-β-CDおよびSAE-γ-CDが挙げられる。
【0090】
本発明は、上記の式で表される構造を有するシクロデキストリン誘導体の混合物を含有する組成物を提供し、ここで、該組成物は、全体的に、1シクロデキストリン分子当たり平均して少なくとも1つ、最大で3n+6までのアルキルスルホン酸部分を含有する。本発明はまた、単一タイプのシクロデキストリン誘導体、または少なくとも50%の単一タイプのシクロデキストリン誘導体を含有する組成物を提供する。
【0091】
上記の式の他のSAE-CD化合物が本発明の液体製剤中において使用され得ることが理解されるべきである。これらの他のSAE-CD製剤は、スルホアルキル基によるそれらの置換度、スルホアルキル鎖中の炭素の数、それらの分子量、SAE-CDを形成するために使用されるベースのシクロデキストリン中に含有されるグルコピラノース単位の数、またはそれらの置換パターンの点で、SBE7-β-CDとは相違する。さらに、スルホアルキル基でのシクロデキストリンの誘導体化は、制御されるが厳密ではない様式で生じる。このため、置換度は、実際は、1シクロデキストリン当たりのスルホアルキル基の平均数を示す数である(例えば、SBE7-β-CDは、1シクロデキストリン当たり平均7個の置換を有する)。さらに、シクロデキストリンのヒドロキシル基の置換の位置化学は、ヘキソース環の特定のヒドロキシル基の置換に関して可変である。このため、異なるヒドロキシル基のスルホアルキル置換が、SAE-CDの製造の間に生じる可能性が高く、あるSAE-CDは、優先的な、しかし排他的または特異的ではない、置換パターンを有する。上記を考えると、あるSAE-CDの分子量は、バッチごとに変化し得、SAE-CDごとに変化する。これらの変化の全ては、錯体形成平衡定数の変化へ至り得、これは、今度は、SAE-CD対クロピドグレルの要求されるモル比に影響を与える。前記平衡定数はまた温度でいくぶん可変であり、製造、貯蔵、輸送、および使用の間に生じ得る温度変動の間、薬剤が可溶化された状態のままとなるように、前記比における許容が必要とされる。前記平衡定数はまたpHで可変であり、製造、貯蔵、輸送、および使用の間に生じ得るpH変動の間、薬剤が可溶化された状態のままとなるように、前記比における許容が必要とされる。前記平衡定数はまた、他の賦形剤(例えば、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤)の存在によって可変である。従って、SAE-CD/クロピドグレルの比は、上述の変数を補うために、本明細書に記載される比から変化(増減)させる必要があり得る。
【0092】
ある態様において、本発明のシクロデキストリン誘導体は、精製組成物として、即ち、存在するシクロデキストリンの総量に関してシクロデキストリン誘導体を少なくとも90 wt. %または95 wt. %含有し、シクロデキストリンの残りは未反応の親シクロデキストリンを含む組成物として、得られ得る。好ましい態様において、シクロデキストリン誘導体を少なくとも98 wt. %含有する精製組成物が得られる。本発明の組成物のいくつかにおいて、未反応のシクロデキストリンは実質的に除去されており、残りの不純物(即ち、組成物の<5 wt. %)は、シクロデキストリン誘導体含有組成物の性能に重要ではない。
【0093】
他の態様によれば、SAE-CD中に存在する未反応の親シクロデキストリンの量は、シクロデキストリンの総乾燥重量に基づいて、SAE-CDの約50% wt.までまたは約50% wt.未満、約40% wt.未満、30% wt.未満、または20% wt.未満である。
【0094】
「クロピドグレル/SAE-CD錯体」とは、一般的に、式(1)のスルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体とクロピドグレルとの包接化合物または包接錯体を意味する。該錯体は、二元または三元錯体であり得る(塩形態のクロピドグレルが錯化される)。分子錯体中に存在するSAE-CD:クロピドグレルの比は、モルに基づいて、約1:1の範囲内にある。しかし、SAE-CDが、必要ではないが一般的にクロピドグレルよりもモル過剰で存在するように、溶液中のクロピドグレルに対するSAE-CDのモル比は、全体として、より高いことが理解されるべきである。この過剰の量は、クロピドグレル形態の固有の溶解度、クロピドグレル形態の予想される用量、および特定のクロピドグレル形態と特定のSAE-CDとの包接錯体形成についての結合定数によって決定される。
【0095】
「大部分」とは、治療化合物の少なくとも約50重量%を意味する。種々の特定の態様において、50重量%、60重量%、75重量%、90重量%または95重量%を超えるクロピドグレルが、薬学的製剤中において、SAE-CDで錯化され得る。錯化される薬物の実際のパーセントは、クロピドグレルへの特定のSAE-CDの錯化を特徴付ける錯体形成平衡定数、ならびに錯化形成に利用可能なSAE-CDおよびクロピドグレルの濃度に応じて、変化する。
【0096】
図1は、モル濃度に基づくクロピドグレルとの結合について、HP-β-CDおよびα-CDと比較した、種々のシクロデキストリン(SBE6.6-β-CD、SBE5.5-β-CD、SBE7.6-γ-CD、SPE5.8-α-CD、SPE5.6-β-CD、SPE5.4-γ-CD、SBE3.9-α-CD、SPE5.0-β-CD、およびSBE2.4-α-CD)の溶解力を比較する、Higuchi et al., in Phase Solubility Techniques, in Advances in Analytical Chemistry and Instrumentation (Ed. C.N. Reilly, John Wiley & Sons Inc., Vol. 4 (1965), pg. 117-212)の方法による相溶解度研究の結果を表す。研究は、溶液のpHを約5.5に維持する滴定装置において行った。サンプルを、UV検出を備えるHPLCによって、クロピドグレル含有量について分析した。
【0097】
図1に詳述された結果は、SAE-CDが、HP-β-CDよりも一般的に性能が優れていることを示している。特に、SBE7-β-CDは、試験した条件下で、最も高い溶解度を提供する。SAE-β-CDおよびSAE-γ-CD誘導体は、クロピドグレルを可溶化するために特に有用である。種々のSAE-CD誘導体の性能は、試験条件および/または溶液特性を変化させることによって改善され得ることが注意されるべきである。
【0098】
本発明による水性液体製剤中におけるクロピドグレルの熱および加水分解安定性を、実施例19において詳述するように、種々の温度およびpHおよびリン酸緩衝液濃度で評価した。同様の評価を、SAE-CDではなくHP-β-CDを含有する液体製剤について行った。等モル量のシクロデキストリン誘導体を研究に用いたが、実質的により多くのクロピドグレルが、HP-β-CDによるよりも、SAE-CDによって可溶化され得た。これらの結果(図2a〜2b)は、HP-β-CDの存在下でのクロピドグレルの分解と比較して、SAE-CDの存在下でのクロピドグレルの熱的または加水分解の速度が、より遅いことを示している。
【0099】
クロピドグレルの安定性の別の尺度は、溶液中に存在する場合のそのキラル反転速度である。本発明による水性液体製剤中におけるクロピドグレルの安定性を、実施例19において詳述するように、種々の温度およびpHおよびリン酸緩衝液濃度で評価した。同様の評価を、SAE-CDではなくHP-β-CDを含有する液体製剤について行った。(S)-クロピドグレルから(R)-クロピドグレルへのキラル変換速度は、pH約5.5およびpH約8製剤中におけるエナンチオマーの比(R:S)を比較することによってわかるように、媒体のpHに依存する(図3a〜3b)。SAE-CDを有する製剤は、HP-β-CDを含有するものと比べてクロピドグレル安定化の顕著な改善、即ち、R-クロピドグレルへのS-クロピドグレルの変換が、実質的により少ないことを実証することが注意されるべきである。結果(図3a〜3b)は、溶液中におけるキラル反転に対してクロピドグレルを安定化することにおいて、HP-β-CDよりもSAE-CDが優れていることを確証する。
【0100】
2つのSAE-CDベース製剤およびHP-β-CDベース製剤の光化学安定性を、実施例19において詳述するように、評価した。各製剤の一部を、9日間にわたって蛍光灯へ曝露した。種々の時点で、溶液のアリコートを取り出し、HPLCによって分析し、それらの不純物プロファイルおよび異性体含有量を測定した。
【0101】
図4aおよび4bは、クロピドグレルのキラル反転に対する蛍光照射の影響を測定するための安定性アッセイの結果を表す。結果は、HP-β-CDによって提供される安定化の限定された程度と比較しての、キラル反転(および最終的なラセミ化)に対するSBE-β-CDによるクロピドグレルの予想外のより大きな安定化を確証する。
【0102】
沈殿物の形成に関しての、本発明の液体製剤の化学安定性は、液体担体のpHを調節することによって増強され得る。化学安定性はまた、液体製剤を固体または粉末製剤へ変換することによって増強され得る。
【0103】
本発明の組成物または製剤が再構成のために配置される水(蒸留水および/または脱イオン水について)のpHは、水が実質的な量の緩衝剤を含まないかまたは緩衝剤を排除する限り、一般的に1〜8の範囲内にあり得;しかし、より高いまたはより低いpH値を有する組成物または製剤も作製され得る。pHは、被験体への意図される投与様式に従って異なり得る。非経口製剤のpHは、一般的に、約pH 4〜約pH 8または約pH 4〜約pH 6の範囲内にあり得る。経口製剤のpHは、一般的に、約pH 1〜約pH 8、約pH 4〜約pH 8、約pH 4〜約pH 6、約pH 1〜約pH 3、または約pH 1〜約pH 4の範囲内にある。pH溶解度プロファイル(図5)は、クロピドグレルの溶解度(シクロデキストリン誘導体の非存在下における)は、pHに依存することを示している。約3の溶液pHで、クロピドグレル重硫酸塩の溶解度は、約5.0 mg/mlである。pH約3未満で、クロピドグレルの溶解度は劇的に増加し、pH約3を超えると、クロピドグレルの溶解度は以下のように減少する。

【0104】
pH約5.5でのSAE-CD中におけるクロピドグレルの相溶解度プロファイル(図6aおよび6b)は、クロピドグレルの溶解度は、シクロデキストリン含有量に依存することを示している。図6b中の線の傾きは約0.15であり、これは、pH 5.5でクロピドグレルを溶解するために必要とされるSBE-β-CD対クロピドグレルのおおよその最小モル比は少なくとも約6:1であることを示している。SAE-CDの濃度が増加するにつれて、より多くの量のクロピドグレルが溶解され得、より高い濃度のクロピドグレルの溶液が作製され得る。従って、クロピドグレルの濃縮製剤は、より高い濃度のSAE-CDを使用することによって、作製され得る。非経口適用について、濃縮溶液は、投与体積を減少させ、潜在的により速い投与を可能にする。濃縮溶液はまた、より少ない体積での用量の経口的投与を可能にし、必要とされるより高いSAE-CD濃度は、改善された抗微生物作用ならびに潜在的に改善されたテイストマスキングを提供する。さらに、希釈溶液もまた作製され得、必要とされるシクロデキストリンの量が減らされる。希釈溶液は、製剤のより遅い投与、および潜在的に、長時間にわたって投与される用量のよりよい制御を可能にする。
【0105】
本発明はまた、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン、クロピドグレル、薬学的に許容される担体、および任意で他の成分を含む、テイストマスクされた経口製剤を提供する。ある態様において、テイストマスクされた製剤は、SAE-CD、クロピドグレル、薬学的に許容される担体、および水性溶媒、懸濁化剤、緩衝剤、界面活性剤、共溶媒、および/または矯味矯臭剤、例えば、マンニトール、グルコース、スクロース、キシリトール、ならびに当業者に公知の他のものを含む。実施例15および17は、クロピドグレル重硫酸塩、SAE-CDおよび糖類、例えば、それぞれ、マンニトールまたはD-グルコースを含む、例示的なテイストマスクされた製剤を記載する。必要とされるSAE-CDおよびクロピドグレルモル比は、その投与様式、それらを含有する製剤のpH、意図される送達環境のpHに依存し得る。典型的に、前記モル比は、6:1〜8:1、6:1〜10:1、5:1〜12:1、4:1〜15:1、5:1〜14:1、6:1〜13:1、もしくは6:1〜12.5:1;および/または少なくとも0.05:1、少なくとも0.25:1、少なくとも0.2:1、少なくとも0.5:1、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、もしくは少なくとも8:1;および/または多くとも100:1、多くとも75:1、多くとも50:1、多くとも40:1、多くとも35:1、多くとも30:1、多くとも25:1、多くとも20:1、多くとも15:1、多くとも14:1、多くとも12.5:1、多くとも12:1、多くとも10:1、多くとも8:1、多くとも6:1、多くとも5:1、多くとも4:1、多くとも3:1、もしくは多くとも2:1の範囲内にあり得る。再構成された製剤pHは、低い場合があり、例えば、pH 1〜2であり得、これは経口使用に好適である。
【0106】
本発明の製剤は、第2の治療剤と組み合わせてクロピドグレルを含み得る。第2の治療剤は、以下からなる群より選択され得る:非ステロイド性抗炎症薬、例えば、ピロキシカムまたはアスピリン;抗凝固剤(例えば、ワルファリン、アンチトロンビンIII、未分画ヘパリン、ヘパリン類似物質、例えば、ダナパロイド、低分子量ヘパリン、例えば、エノキサパリン、選択的第Xa因子阻害剤、例えば、フォンダパリヌクス、ならびに直接トロンビン阻害剤、例えば、アルガトロバンおよびビバリルジン);抗血小板剤(例えば、アナグレリド、ジピリダモール、凝集阻害剤、例えば、シロスタゾールおよびカングレロール、ならびに糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤、例えば、エプチフィバチドおよびチロフィバン);抗鎌状化薬、例えば、ヒドロキシ尿素;ヘモレオロジック剤、例えば、ペントキシフィリン;ならびに血栓溶解剤(例えば、生物学的応答改変物質、例えば、ドロトレコギン・アルファおよびパキセリズマブ、血栓溶解酵素、例えば、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ、ならびに組織プラスミノーゲン活性化因子、例えば、アルテプラーゼおよびテネクテプラーゼ)。これは実施例24および25において実証され、ここで、クロピドグレルは、チロフィバン塩酸塩一水和物およびエノキサプリンナトリウム(enoxaprin sodium)と組み合わされて製剤化される。
【0107】
ある態様において、第2の治療剤が、鎌状赤血球症を治療するために使用される。このような第2の治療剤の例は、以下である:1)疼痛、熱−熱性疾患 急性胸部症候群、急性脾性ゼクエストレーション(acute splenic sequestration)、骨髄無形成発症、急性脳卒中または神経学的事象を経験する鎌状赤血球患者のためのマネージメントプロトコルに含まれる薬物;2)葉酸補給物、例えば、ヒドロキシ尿素治療プロトコルの一部として;3)NSAID、例えば、イブプロフェン、アセトアミノフェン、アスピリン、コデイン、モルヒネ、ヒドロモルホン、およびケトロラク;4)抗生物質、例えば、ペニシリン、ペニシリン誘導体、セファロスポリン(例えば、セフトリアキソン、セフォタキシム、および当業者に公知の他のもの)、マクロライド系抗生物質(例えば、アジスロマイシン、エリスロマイシン)、クリンダマイシンおよびバンコマイシン;5)デフェロキシミン(deferoximine)、例えば、慢性輸血要求に起因する鉄キレート化治療プロトコルの一部として;6)気管支拡張薬;7)利尿薬、例えば、フロセミド;8)抗不安薬、例えば、ロラゼパム、ミダゾラムまたはパモ酸ヒドロキシジン;9)α-アゴニスト、例えば、エチレフリン、フェニレフリン、エピネフリン、フェニルプロパノールアミン、プソイドエフェドリン、またはテルブタリン;10)ヒドララジン;11)ペントキシフィリン;12)ジルチアゼム;13)ゴナトロピン放出ホルモンアナログ、例えば、ロイプロリドまたはフルタミド;14)ジエチルスチルベストロール;ならびに15)それらの組み合わせ。
【0108】
存在する他の薬物の量、および従って、クロピドグレル対該存在する他の薬物の比は、所望の臨床効果に依存する。しかし、各薬物の相対用量についてのガイダンスは、米国食品医薬品局または以下の他の同様に承認された機関などの規制機関のリソースから得られ得る:カナダ(Health Canada)、メキシコ(Mexico Department of Health)、欧州(European Medicines Agency (EMEA))、南アメリカ(特に、アルゼンチン(Administracion Nacional de Medicamentos, Alimentos y Tecnologia Medica (ANMAT))およびブラジル(Ministerio da Saude))、オーストラリア(Department of Health and Ageing)、アフリカ(特に、南アフリカ(Department of Health)およびジンバブエ(Ministry of Health and Child Welfare))、またはアジア(特に、日本(厚生労働省)、台湾(Executive Yuans Department of Health)、および中国(Ministry of Health People's Republic of China))。
【0109】
クロピドグレルが、SAE-CDを含有する水溶液中に別の薬物と共に存在する場合、SAE-CDとのクロピドグレルおよび他の薬物の競合的結合についての可能性が存在する。競合的結合が生じ得る程度は、クロピドグレルの結合定数と他の薬物のそれとを比較することによってある程度予測され得る。ある特定のシクロデキストリンについての薬物の結合定数が大きくなるほど、薬物はシクロデキストリンへより固く結合され、シクロデキストリン誘導体によって可溶化され得る薬物の量が多くなる。他の薬物が、クロピドグレルが有するよりも、SAE-CDについて遥かに高い結合定数を有する場合、該他の薬物は、恐らく競合的にSAE-CDに結合する。他の薬物が、クロピドグレルが有するよりも、SAE-CDについて遥かに低い結合定数を有する場合、該他の薬物は、恐らく競合的にSAE-CDに結合しない。
【0110】
SAE-CDについての他の薬物の結合定数が、SAE-CDについてのクロピドグレルのそれに近い場合、競合的結合が生じる程度は、これら2つの薬物の結合定数によってよりも、これら2つの薬物の相対的モル比によってより決定される。換言すると、他の薬物がクロピドグレルよりも実質的により高いモル濃度で投与される場合、該他の薬物がクロピドグレルよりも実質的により低いモル濃度で投与される場合よりも、それは、より競合的にSAE-CDに結合する。
【0111】
SAE-CD、クロピドグレル重硫酸塩、水性緩衝液、およびアスピリンを含む例示的な製剤を、実施例22に従って作製した。この実施例において、過剰のクロピドグレル重硫酸塩を、固定量のSAE-CDおよび変動量のアスピリンを含有する溶液へ添加した。図7は、競合的結合研究の結果を表す。結果は、アスピリンが、SAE-CDおよびクロピドグレル塩を含有する溶液中に置かれた場合、SAE-CDに競合的に結合することを示している。従って、クロピドグレルおよびアスピリンの両方を含有する製剤において、該製剤は、いずれかの成分を個々に可溶化するために必要とされるものと比べて、両方の成分を可溶化するために追加のSAE-CDを必要とする場合および必要としない場合がある。
【0112】
必要というわけではないが、本発明の製剤は、抗酸化剤、酸性化剤、アルカリ化剤、緩衝剤、増量剤、凍結保護剤、密度調整剤、電解質、フレーバー、香料、グルコース、安定剤、可塑剤、溶解性増強剤、甘味料、表面張力調整剤、揮発性調整剤、粘度調整剤、薬学的製剤における使用について当業者に公知の他の賦形剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0113】
錯体形成促進剤が、本発明の水性液体製剤へ添加され得る。錯体形成促進剤は、SAE-CDでのクロピドグレルの錯化を増強する化合物である。錯体形成促進剤が存在する場合、SAE-CD対クロピドグレルの必要とされる比は、より少ないSAE-CDが必要とされるように変更される必要があり得る。好適な錯体形成促進剤としては、1つまたは複数の薬理学的に不活性の水溶性ポリマー、ヒドロキシ酸、およびシクロデキストリンでの特定薬剤の錯化を増強するために液体製剤において典型的に使用される他の有機化合物が挙げられる。好適な水溶性ポリマーとしては、水溶性天然ポリマー、水溶性半合成ポリマー(例えば、セルロースの水溶性誘導体)、および水溶性合成ポリマーが挙げられる。天然ポリマーとしては、多糖類、例えば、イヌリン、ペクチン、アルギン誘導体、および寒天、ならびにポリペプチド、例えば、カゼインおよびゼラチンが挙げられる。半合成ポリマーとしては、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、それらの混合エーテル、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および他の混合エーテル、例えば、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびカルボキシメチルセルロースおよびその塩、特に、カルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。合成ポリマーとしては、ポリオキシエチレン誘導体(ポリエチレングリコール)およびポリビニル誘導体(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリスチレンスルホネート)、ならびにアクリル酸の種々のコポリマー(例えば、カルボマー)が挙げられる。好適なヒドロキシ酸としては、例えば、非限定的に、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、および酒石酸、ならびに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0114】
親水性ポリマーが、シクロデキストリンを含有する製剤の性能を改善するために使用され得る。Loftssonは、シクロデキストリンの性能および/または特性を増強するための、シクロデキストリン(非誘導体化または誘導体化)との併用に好適な多数のポリマーを開示した。好適なポリマーが、以下に開示されている。

これらの全開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0115】
他の好適なポリマーは、薬学的製剤の分野において通常使用される周知の賦形剤であり、例えば、以下に含まれる。

本明細書において引用される参考文献の全開示は、参照により本明細書に組み入れられる。さらに他の好適なポリマーとしては、水溶性天然ポリマー、水溶性半合成ポリマー(例えば、セルロースの水溶性誘導体)、および水溶性合成ポリマーが挙げられる。天然ポリマーとしては、多糖類、例えば、イヌリン、ペクチン、アルギン誘導体(例えば、アルギン酸ナトリウム)、および寒天、ならびにポリペプチド、例えば、カゼインおよびゼラチンが挙げられる。半合成ポリマーとしては、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、それらの混合エーテル、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および他の混合エーテル、例えば、ヒドロキシエチルエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびカルボキシメチルセルロースおよびその塩、特に、カルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。合成ポリマーとしては、ポリオキシエチレン誘導体(ポリエチレングリコール)およびポリビニル誘導体(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリスチレンスルホネート)、ならびにアクリル酸の種々のコポリマー(例えば、カルボマー)が挙げられる。水溶性、薬学的許容性および薬理学的不活性の基準を満たす、本明細書に挙げられていない他の天然、半合成および合成ポリマーが、同様に本発明の範囲内にあると考えられる。
【0116】
溶解性増強剤が、本発明の水性液体製剤へ添加され得る。溶解性増強剤は、液体製剤中におけるクロピドグレルの溶解性を増強する化合物である。錯体形成促進剤が存在する場合、SAE-CD対クロピドグレルの比は、より少ないSAE-CDが必要とされるように変更される必要があり得る。好適な溶解性増強剤としては、特定の薬剤の溶解性を増強するために経口溶液製剤において典型的に使用される、1つまたは複数の有機溶媒、界面活性剤、石鹸、表面活性剤、および他の有機化合物が挙げられる。好適な有機溶媒としては、例えば、エタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポロクソマー、および当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0117】
溶解性増強剤と考えられる界面活性剤が、クロピドグレルの可溶化を増強し、クロピドグレルを溶解するために必要とされるSAE-CDの量を減少させるために使用され得る。SAE-CD、クロピドグレル重硫酸塩、水性緩衝液、および界面活性剤を含む例示的な製剤を、実施例14に従って作製した。ポリエチレングリコール-15-ヒドロキシステアレート(Solutol(登録商標))およびポリソルベート80(Tween 80(登録商標))の両方を使用した場合、クロピドグレルの溶解性が顕著に増加した。他の界面活性剤、例えば、これらに限定されないが、Cremophor(登録商標)、ポリソルベート20、40、60および80、Solutol(登録商標)、Labrasol(登録商標)、ポロキサマー、ポリエチレングリコール誘導体、コール酸(cholate acid)およびそれらの誘導体が使用され得、当業者に公知の他のものもSAE-CDと組み合わせて使用され得る。例示的な溶解性増強剤は、米国特許第6,451,339号に開示されており;しかし、製薬産業において使用される他の溶解性増強剤が、本発明の製剤において使用され得る。
【0118】
SAE-CDおよび界面活性剤の併用は、クロピドグレルの溶解性に対して、相乗、相加または負の効果を生じさせ得る。実施例14において実証されるように、同一の界面活性剤を異なる濃度で使用することによって異なる効果が生じ得る点で、観察される効果は、界面活性剤の濃度に依存し得る。
【0119】
表14aおよび14bに示されるように、Tween 80は、1〜2% (w/v)の濃度で使用されると相加効果を示すが、0.1、0.5、5および10% (w/v)で使用されると負の効果を示す。Solutol(表14cおよび14d)は、1〜5% (w/v)の濃度で、溶解性に相乗効果を示す。CAPTISOL有りまたは無しでSolutolの10% (w/v)の濃度で溶解性の変化はない。特定の機構に束縛されないが、界面活性剤をシクロデキストリンと共に使用する場合に観察された負の溶解性は、界面活性剤分子が錯化剤(今回の場合、シクロデキストリン)による薬物の可溶化において競合的阻害剤として作用することに起因し得る。同様に、錯化剤(シクロデキストリン)は、溶液から界面活性剤を「引き寄せ」、それが薬物の可溶化について利用不可能となる。
【0120】
本明細書において使用される場合、「フレーバー」という用語は、良い風味およびしばしば香りを薬学的調製物へ付与するために使用される化合物を意味するように意図される。例示的な矯味矯臭剤またはフレーバラント(flavorant)としては、合成フレーバーオイルおよびフレーバリング芳香族化合物および/または天然油、植物、葉、花、果実などからの抽出物、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。これらとしてはまた、桂皮油、ウインターグリーン油、ハッカ油、丁子油、ベイ油、アニス油、ユーカリ、タイム油、ゼダーリーフ油、ナツメグ油、セージ油、ビターアーモンド油、およびカッシア油が挙げられ得る。他の有用なフレーバーとしては、バニラ、シトラスオイル、例えば、レモン、オレンジ、グレープ、ライムおよびグレープフルーツ、ならびに果実エキス、例えば、リンゴ、西洋ナシ、モモ、ストロベリー、ラズベリー、チェリー、プラム、パイナップル、アプリコットなどが挙げられる。特に有用であるとわかっているフレーバーとしては、市販のストロベリー、オレンジ、グレープ、チェリー、バニラ、ミントおよびシトラスフレーバー、ならびにそれらの混合物が挙げられる。フレーバリングの量は、所望の感覚刺激効果を含む、多数の因子に依存し得る。フレーバーは、当業者によって望まれる任意の量で存在する。特に、フレーバーは、ストロベリーおよびチェリーフレーバー、ならびにシトラスフレーバー、例えば、オレンジである。
【0121】
本明細書において使用される場合、「甘味料」という用語は、調製物へ甘味を付与するために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例えば、非限定的に、アスパルテーム、デキストロース、グリセリン、マンニトール、サッカリンナトリウム、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、高果糖コーンシロップ、マルトデキストリン、スクラロース、スクロース、当業者に公知の他の物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0122】
本明細書において使用される場合、香料は、検出可能な芳香、香りまたは香気を生じさせる比較的揮発性の物質または物質の組み合わせである。例示的な香料としては、FD&Cとして一般的に受け入れられるものが挙げられる。
【0123】
本明細書において使用される場合、「アルカリ化剤」という用語は、アルカリ性媒体を提供するために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例えば、非限定的に、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、有機アミン塩基、アルカリ性アミノ酸およびトロラミン、ならびに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0124】
本明細書において使用される場合、「酸性化剤」という用語は、酸性媒体を提供するために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例えば、非限定的に、酢酸、酸性アミノ酸、クエン酸、フマル酸、および他のαヒドロキシ酸、塩酸、アスコルビン酸、リン酸、硫酸、酒石酸、および硝酸、ならびに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0125】
本明細書において使用される場合、「防腐剤」という用語は、微生物の増殖を防止するために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例えば、非限定的に、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、チメロサール、メタクレゾール、ミリスチルγピコリニウムクロリド、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チモール、およびメチル、エチル、プロピルもしくはブチルパラベン、ならびに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0126】
本明細書において使用される場合、「抗酸化剤」という用語は、酸化を阻害し、従って酸化プロセスによって調製物の劣化を防止するために使用される、薬剤を意味するように意図される。このような化合物としては、例えば、非限定的に、アセトン、硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ヒドロ亜リン酸(hydrophosphorous acid)、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオグリコール酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、EDTA(エデテート)、ペンテテートおよび当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0127】
本明細書において使用される場合、「緩衝剤」という用語は、酸もしくはアルカリの添加または希釈でのpH変化に耐えるために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例えば、非限定的に、酢酸、酢酸ナトリウム、アジピン酸、安息香酸、安息香酸ナトリウム、クエン酸、マレイン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、乳酸、酒石酸、グリシン、メタリン酸カリウム、リン酸カリウム、一塩基性酢酸ナトリウム(monobasic sodium acetate)、炭酸水素ナトリウム、酒石酸ナトリウム、およびクエン酸ナトリウム無水物および二水和物、ならびに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0128】
本明細書において使用される場合、「安定剤」という用語は、そうでなければ薬剤の治療活性を低下させる物理的、化学的、または生化学的プロセスに対して治療剤を安定化するために使用される化合物を意味するように意図される。好適な安定剤としては、例えば、非限定的に、アルブミン、シアル酸、クレアチニン、グリシン、および他のアミノ酸、ナイアシンアミド、アセチルトリプトファンナトリウム(sodium acetyltryptophonate)、酸化亜鉛、スクロース、グルコース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、カプリル酸ナトリウム、およびサッカリンナトリウム、ならびに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0129】
本明細書において使用される場合、「粘度調整剤」という用語は、液体製剤の粘度を増加または低下させることができる化合物または化合物の組み合わせを意味するように意図される。本明細書に開示されるポリマーのいくつかは、粘度調整剤として使用され得る。
【0130】
本明細書において使用される場合、「張性調節剤」という用語は、液体製剤の張性を調節するために使用され得る化合物を意味するように意図される。好適な張性調節剤としては、グリセリン、ラクトース、マンニトール、デキストロース、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ソルビトール、トレハロース、および当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0131】
本明細書において使用される場合、「消泡剤」という用語は、液体製剤の表面上に形成する発泡を防止するかまたは発泡の量を低下させる化合物を意味するように意図される。好適な消泡剤としては、例えば、非限定的に、ジメチコン、シメチコン、オクトキシノール、および当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0132】
本明細書において使用される場合、「増量剤」という用語は、再構成可能な固体へ嵩を加えるおよび/または作製の間、製剤の特性の制御を助けるために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例えば、非限定的に、デキストラン、トレハロース、スクロース、ポリビニルピロリドン、ラクトース、イノシトール、マンニトール、ソルビトール、ジメチルスルホキシド、グリセロール、アルブミン、ラクトビオン酸カルシウム、および当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0133】
本明細書において使用される場合、「凍結保護剤」という用語は、凍結乾燥の間、物理的または化学的分解から活性治療剤を保護するために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例えば、非限定的に、ジメチルスルホキシド、グリセロール、トレハロース、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0134】
製薬技術分野において使用される化合物は、一般的に、種々の機能または目的に役立つことが理解されるべきである。従って、本明細書に列挙される化合物が1回のみ記載されるかまたは本明細書における2個以上の用語を定義するために使用されるとしても、その目的または機能は、列挙される目的または機能にのみ限定されると解釈されるべきでない。
【0135】
本発明の液体製剤は、多数の異なる方法によって作製され得る。1つの方法によれば、SAE-CDを含有する第1水溶液を作製する。次いで、クロピドグレルを含む第2溶液を作製する。最後に、第1および第2溶液を混合し、液体製剤を形成する。第1および第2溶液は、独立して、本明細書に記載される他の賦形剤および薬剤を含み得る。さらに、第2溶液は、水および/または有機溶媒ベースの溶液であり得る。別の作製方法は、第2溶液を形成させずに、クロピドグレルを第1溶液へ直接添加すること以外、上述の方法と同様である。液体製剤の第3の作製方法は、第1溶液を形成させずに、クロピドグレルを含有する水性第2溶液へSAE-CDを直接添加すること以外、上述の第1方法と同様である。液体製剤の第4の作製方法は、クロピドグレルを含む水溶液を粉末化または粒状SAE-CDへ添加する工程、およびSAE-CDが溶解するまで該溶液を混合する工程を含む。液体製剤の第5の作製方法は、クロピドグレルを粉末化または粒状SAE-CDへ直接添加する工程、次いで水溶液を添加する工程、ならびにSAE-CDおよびクロピドグレルが溶解するまで混合する工程を含む。液体製剤の第6の作製方法は、第1溶液を加熱するかもしくは第2溶液を加熱するか、または上記方法に記載の任意の溶液のそれらの組み合わせを加熱する工程、続いて、それぞれ加熱された溶液を冷却する工程を含む。液体製剤の第7の作製方法は、第1溶液のpHを調節するかもしくは第2溶液のpHを調節するか、または上記方法のいずれかに記載のいずれかの溶液の組み合わせのpHを調節する工程を含む。第8の方法は、上述の方法のいずれかによって液体製剤を作製する工程、続いて、凍結乾燥、ドラム乾燥、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、真空乾燥、反溶媒沈殿、または超臨界もしくは近超臨界流体を使用する方法によって固体物質を単離する工程を含む。上記溶液のいずれも、本明細書に記載される他の薬学的賦形剤または成分を含有し得る。
【0136】
液体製剤の作製方法のある態様は、さらに以下の工程を含む:1)細孔サイズが約5μm以下である濾過媒体で製剤を濾過する工程;2)照射によって液体製剤を滅菌する工程;3)エチレンオキシドでの処理によって液体製剤を滅菌する工程;4)滅菌した液体製剤から滅菌粉末を単離する工程;5)液体を不活性ガスでパージし、液体中の溶存酸素の量を低下させる工程;および/または6)液体製剤を作製するために使用される溶液の1つまたは複数を加熱する工程。
【0137】
本発明は薬学的キットを提供する。ある態様において、薬学的キットは、液体ビヒクルを含有する第1のチャンバと、本明細書に記載される再構成可能な固体薬学的組成物を含有する第2のチャンバとを含む。第1および第2のチャンバは、一体化または結合またはアセンブルされており、少なくとも2つのチャンバを備える容器を形成し得、または、これらのチャンバは、分離しており、分離した容器を形成し得る。液体ビヒクルは、水性液体担体、例えば、水、デキストロース、食塩水、乳酸加リンゲル液、または、液体薬学的化合物の作製のための任意の他の薬学的に許容される水性液体ビヒクルを含む。ある態様において、キットは、再構成可能な固体薬学的組成物を含む容器と、液体担体を含む容器とを含む。別の態様において、キットは、少なくとも2つのチャンバを含む容器を含み、ここで、チャンバは再構成可能な固体薬学的組成物を含み、別のチャンバは液体担体を含む。
【0138】
ある態様において、キットは、SAE-CDを含む薬学的組成物を含む第1のチャンバと、クロピドグレルを含む薬学的組成物を含む第2のチャンバとを含む。第1および第2のチャンバは、一体化または結合またはアセンブルされており、少なくとも2つのチャンバを備える容器を形成し得、または、これらのチャンバは、分離しており、分離した容器を形成し得る。第1および第2組成物は、キットに含まれている場合および含まれていない場合がある液体担体と混合され、被験体への投与の前に液体投薬形態として製剤化され得る。第1および第2の薬学的組成物のいずれか一方または両方は、追加の薬学的賦形剤を含み得る。キットは、種々の形態で利用可能である。第1のキットにおいて、第1および第2の薬学的組成物は、分離した容器中に、または2以上のチャンバを有する容器の分離したチャンバ中に、提供される。第1および第2の薬学的組成物は、独立して、固体または粉末または液体形態のいずれかで提供され得る。例えば、SAE-CDは再構成可能な粉末形態で提供され得、クロピドグレルは粉末形態で提供され得る。一態様によれば、キットは、さらに、第1および/または第2の薬学的組成物を懸濁および溶解するために使用される薬学的に許容される液体担体を含む。または、液体担体は、独立して、第1および/または第2の薬学的組成物と共に含まれる。しかし、液体担体はまた、第1および第2の薬学的組成物とは分離した容器またはチャンバ中に提供され得る。上記のように、第1の薬学的組成物、第2の薬学的組成物、および液体担体は、独立して、防腐剤、抗酸化剤、緩衝剤、酸性化剤、電解質、別の治療剤、アルカリ化剤、抗微生物剤、抗真菌剤、溶解性増強剤、粘度調整剤、矯味矯臭剤、甘味剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0139】
キットのある態様は、以下を含む:1)第1および第2の薬学的組成物が、分離した容器中に、または、2個以上のチャンバを有する容器の分離したチャンバ中に含有される;2)キットが、分離した薬学的に許容される液体担体をさらに含む;3)液体担体が、それぞれ存在する場合に、独立して、第1および/または第2の薬学的組成物と共に含まれる;4)薬学的組成物のための容器が、それぞれ存在する場合に、真空容器、バッグ、ポーチ、バイアル、ボトル、または液体製剤の送達についての当業者に公知の任意の薬学的に許容されるデバイスから独立して選択される;5)第1の薬学的組成物および/または第2の薬学的組成物および/または液体担体が、抗酸化剤、緩衝剤、酸性化剤、可溶化剤もしくは溶解性増強剤、錯体形成促進剤、凍結乾燥助剤(例えば、増量剤または安定化剤)、電解質、別の治療剤、アルカリ化剤、抗微生物剤、抗真菌剤、粘度調整剤、矯味矯臭剤、甘味剤、またはそれらの組み合わせを、さらに含む;6)キットが、チルド状態で提供される;8)液体担体および/またはチャンバが、液体担体中に溶解された酸素の実質的に全てを除去するために、薬学的に許容される不活性ガスでパージされている;9)チャンバが、酸素を実質的に含まない;10)液体担体が、約2〜7のpHを維持することができる緩衝剤をさらに含む;11)チャンバおよび溶液が無菌である。
【0140】
「単位投薬形態」という用語は、ある量の有効成分および希釈剤または担体を含有する単回投薬形態を意味するように本明細書において使用され、該量は、1つまたは複数の所定の単位が、単回治療的投与に通常必要とされるものである。複数回投与形態、例えば、液体入りボトルである場合、前記所定の単位は、1フラクション、例えば、複数回投与形態の半分または4分の1である。患者についての特定の用量レベルは、治療される適応症、使用される治療剤、治療剤の活性、適応症の重篤度、患者の健康、年齢、性別、体重、食事、および薬理学的応答、使用される特定の投薬形態、ならびに他のこのような因子を含む種々の因子に依存することが理解される。
【0141】
「薬学的に許容される」という句は、合理的な利益/リスク比と釣り合いがとれ、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症がなく、ヒトおよび動物の組織との接触に好適であり、正しい医学的判断の範囲内にある、化合物、物質、組成物、および/または投薬形態を指すために本発明において使用される。
【0142】
本明細書において使用される場合、「患者」または「被験体」という用語は、温血動物、例えば、哺乳動物、例えば、ネコ、イヌ、マウス、モルモット、ウマ、ウシ、ヒツジ、非ヒト、およびヒトを意味すると理解される。
【0143】
本発明の液体製剤は、有効量のクロピドグレルを含む。「有効量」という用語によって、治療有効量が意図されることが理解される。治療有効量は、要求または所望の治療応答を誘発するのに十分であるクロピドグレルの含量または量、換言すると、被験体へ投与されると、認識できる生物学的応答を誘発するのに十分である量である。
【0144】
本発明はまた、治療有効量のクロピドグレル、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン(例えば、SBE7-β-CD)、および薬学的に許容される固体担体を含む薬学的固体投薬形態を提供し、ここで、SAE-CD対クロピドグレルのモル比は本明細書に定義される通りである。SAE-CDおよびクロピドグレルは、予め形成された錯体として、またはそれらのコンビネーションとして、混合剤で、投薬形態中に含まれ得る。固体投薬形態は、製薬科学における通常の方法を使用して作製され得る。混合剤中において、固体SAE-CDおよび固体クロピドグレルは、錯体形成を最小化するために低エネルギーミキサーを使用して物理的に混合される。固体の予め形成された錯体は、水性液体担体などの液体担体中においてSAE-CDおよびクロピドグレルを混合し、錯体を形成させ、続いて液体担体を除去し、それによって固体の予め形成された錯体が形成されることによって、作製され得る。または、錯体は、SAE-CDおよびクロピドグレルを用いて高エネルギーミリングプロセスを使用して作製され得、ここで、これら2つの成分の一方または両方は、独立して、固体または液体形態で提供される。
【0145】
本発明の組成物または製剤中のSAE-CD対クロピドグレルのモル比は、製剤のpHまたは製剤についての意図される使用環境のpHに従って変化する。例えば、前記モル比は、製剤または意図される使用環境のpHが約3.5未満である場合、約6:1未満であり得る。または、SAE-CD対クロピドグレルのモル比は、製剤または意図される使用環境のpHが約3.5、または約3.5よりも大きい場合、少なくとも約6:1、約6:1〜8:1、または少なくとも約8:1の範囲内にあり得る。製剤または意図される使用環境のpHが約5.5、または約5.5〜8である場合、前記モル比は、少なくとも約6.5:1、または少なくとも6.6:1であり得る。製剤または意図される使用環境のpHが約8である場合、前記モル比は、少なくとも約7.25:1、または少なくとも7.3:1であり得る。
【0146】
意図される使用環境は、薬学的製剤、または、該製剤が投与される被験体の部分、例えば、被験体の循環系もしくは消化管の部分であり得る。意図される使用環境が胃の領域である場合(SAE-CDおよびクロピドグレルが、胃の領域、例えば、胃または十二指腸へ送達されそこにおいて放出されることを意味する)、6:1未満または3:1未満のモル比が使用され得る。意図される使用環境が胃の領域の直ぐ下流である場合(SAE-CDおよびクロピドグレルが空腸または回腸へ送達されそこにおいて放出されることを意味する)、少なくとも6:1または少なくとも8:1のモル比が使用され得る。
【0147】
経口投与ならびに胃送達および放出について、SAE-CD、例えば、SBE7-β-CDと、クロピドグレルとのモル比は、実施例16および18に記載されるように約4:1またはそれ以下へ、または実施例23におけるように約0.5:1またはそれ以下へ、さらに低下され得、何故ならば以下のいずれかのためである:1)GI管のpHがクロピドグレルの固有の溶解性の増加に影響を与え、それによって、薬物の溶解についてクロピドグレルに対するSAE-CDのより低いモル比が要求されるため;または、2)製剤のpHが、少なくとも弱酸性であり得るため。実施例16および18における例示的な再構成可能な製剤のpHは、pH 1〜2の範囲内にある。
【0148】
本発明の液体製剤を透明にするために、SAE-CD対クロピドグレルのモル比は、製剤のpHに従って変化し得る。pH約8で、モル比は、少なくとも約7.25:1または少なくとも約7.3:1であるべきであり、pH約5.5で、モル比は、少なくとも約6.5:1または少なくとも約6.6:1であるべきである。このモル比は透明溶液を提供するのに十分である;しかし、より高いモル比は、SAE-CDによって結合されるクロピドグレルのパーセンテージを増加させることによって、加水分解、光分解、およびキラル反転に対して改善された安定性を生じさせる。
【0149】
下記の実施例に従って作製した製剤のSAE-CD対クロピドグレルモル比を測定した。液体製剤のpHも測定した。データを以下にまとめる。

【0150】
過剰のSAE-CDの存在はクロピドグレルをさらに安定化するのに単に役立つので、SAE-CD対クロピドグレルのモル比に上限値を提供する必要はない。しかし、本発明は、SAE-CD対クロピドグレルのモル比の上限値が、1000:1未満、500:1未満もしくは約500:1、250:1未満もしくは約250:1、100:1未満もしくは約100:1、75:1未満もしくは約75:1、50:1未満もしくは約50:1、40:1未満もしくは約40:1、30:1未満もしくは約30:1、20:1未満もしくは約20:1、17.5:1未満もしくは約17.5:1、15:1未満もしくは約15:1、12.5:1未満もしくは約12.5:1、10:1未満もしくは約10:1である態様を含む。これらの上限値は、本明細書に記載される他の下限値と組み合わせて使用され得る。
【0151】
本発明の組成物または方法についてのSAE-CD対クロピドグレルのモル比は、6:1〜8:1、6:1〜10:1、5:1〜12:1、4:1〜15:1、5:1〜14:1、6:1〜13:1、もしくは6:1〜12.5:1の範囲内;および/または、少なくとも0.05:1、少なくとも0.25:1、少なくとも0.2:1、少なくとも0.5:1、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、もしくは少なくとも8:1;および/または、多くとも100:1、多くとも75:1、多くとも50:1、多くとも40:1、多くとも35:1、多くとも30:1、多くとも25:1、多くとも20:1、多くとも15:1、多くとも14:1、多くとも12.5:1、多くとも12:1、多くとも10:1、多くとも8:1、多くとも6:1、多くとも5:1、多くとも4:1、多くとも3:1、もしくは多くとも2:1であり得る。
【0152】
実施例23に従って作製した錠剤を、1リットルのクエン酸/リン酸緩衝液中における溶解へ供した。PLAVIX(登録商標)錠剤を、コントロール/参照サンプルとして使用した。各錠剤は、75mg遊離塩基当量のクロピドグレルを含有した。図9に見られ得るように、SAE-CDを含有する予め形成された錯体および物理的混合物ベースの錠剤は両方とも、PLAVIX(登録商標)錠剤よりも速い溶解速度を有し、それらはまたより高い最終濃度を有する。このより速い溶解時間は、より速い吸収および従ってより速い/迅速な治療発現へ至り得る。
【0153】
クロピドグレルについての典型的な経口一日用量は、遊離塩基として表すと、75 mgである。特定の低侵襲性インターベンション手技、例えば、ステント留置術、血管形成術、血管内超音波法、アテレクトミー、頸動脈バルーン血管形成ステント留置術(carotid artery balloon angioplasty and stenting)(CBAS)、レーザー血栓溶解、近接照射療法、超音波検査法、動脈内吸引デバイスの使用、スネアの使用、または血餅回収デバイスの使用についてのローディング用量としては、より高い用量、例えば、900 mg、750 mg、675 mg、600 mg、450 mg、375 mg、300 mg、225 mg、200 mg、150 mg、100 mg、75 mg、50 mg、40 mg、30 mg、25 mg、20 mg、15 mg、12.5 mg、10 mg、7.5 mg、5 mg、2 mg、1 mg、0.75 mg、もしくは0.1 mgのクロピドグレル、または0.1〜900 mg、0.1〜100 mg、100〜300 mg、約300 mg、300〜600 mg、300〜900 mg、600〜900 mg、50〜600 mg、75〜600 mg、150〜600 mg、もしくは200〜450 mgの範囲内のクロピドグレルが投与され得る。用量の滴定はPLAVIX(登録商標)について示されないが、本製剤は、容易に分割可能であり、必要に応じて、注意深い用量滴定を容易にする。本製剤は、PLAVIX(登録商標)錠剤製剤についての添付文書において指示されるように投与され得、このことは、約75、約300または約75〜約300 mgであろう当量のクロピドグレルを含有する本製剤の用量が被験体へ投与され得ることを意味する。The Physician's Desk Reference 56th ed. (pp. 3084-3086; Eds. Lori Murray, Gwynned L. Kelly; Medical Economics Company, Inc., Montvale, NJ 07645-1742, 2002)は、PLAVIX(登録商標)についての添付文書、特に、該製剤の投薬量および投与を開示しており、この関連テキストは参照により本明細書に組み入れられる。
【0154】
本明細書において使用される場合、「出血時間」という用語は、哺乳動物の皮膚の制御され標準化された穿刺の後に、例えば、哺乳動物(または被験体)の耳たぶまたは前腕の制御され標準化された穿刺の後に、哺乳動物において出血が停止するために要する時間の量を指す。出血は、インビボにおいて、一部、血小板凝集によって停止され;従って、出血時間は、血小板凝集の速度または全体的な量が減少するにつれて増加し、出血時間は、血小板凝集の速度または全体的な量が増加するにつれて減少する。出血時間と血小板凝集との関係は、必ずしも線形ではない。出血時間は、血小板凝集の程度または可能性の間接的な尺度である。
【0155】
出血時間アッセイは、文献(Sramek, et al, Thrombosis and Haemostasis 67 (5) 514-518 (1992))に記載される標準化されたアッセイに従って、または実施例21に従って行われ得、ここで、被験体の皮膚の制御され標準化された穿刺の後に、出血時間が測定される。出血時間アッセイは、穿刺された後に小血管が閉じ出血を停止させるために要する時間を測定する。
【0156】
被験体の出血時間のパーセンテージ増加は、先ず、本発明の製剤または組成物の投与の前に被験体の「ベースライン出血時間」(BBT、秒)を測定することによって測定される。次いで、被験体に本発明の製剤または組成物を投与し、被験体の「処置出血時間」(TBT、秒)を測定する。次いで、パーセンテージ増加(δBT、%)を以下のように計算する。
δBT=((TBT−BBT)/BBT)*100
【0157】
公知の血小板凝集アッセイおよび標準ポイント・オブ・ケア装置が、エクスビボでの血小板凝集の程度または速度(または可能性)を測定するために使用され得る。大抵の測定は、光学に基づく方法またはインピーダンスに基づく方法(Dyszkiewicz-Korpanty, et al., Clinical and Applied Thrombosis/Hemostasis, Vol. 11, No. 1, 25-35 (2005);この全開示は、参照により本明細書に組み入れられる)のいずれかを使用して行われる。例示的な装置、システムおよびアッセイとしては、血小板凝集計(Chrono-log Corporation, Havertown, PA)、VerifyNow血小板凝集測定法(Accumetrics, San Diego, CA)、Platelet Aggregation Profiler(商標)(Bio/Data Corporation, Horsham, PA) Slide Platelet Aggregation Test(商標)(SPAT(商標), Analytical Control Systems, Inc., Fishers, IN)、ヘパリン誘発血小板凝集テスト、リストセチン滴定血小板凝集アッセイなどが挙げられる。前記アッセイは、一般的に、インピーダンスまたは光学的凝集測定法に基づく。一般的に、被験体の血液のサンプルが得られ、該サンプルから血漿が分離される。血漿が、本明細書に記載されるように、ADPで処理され、次いで、血漿中の血小板凝集の程度が測定される。アッセイは、クロピドグレルが被験体へ投与される前または後に行われ得る。
【0158】
被験体の血小板凝集の程度(または可能性)のパーセンテージ減少は、先ず、本発明の製剤または組成物の投与の前に被験体の「ベースライン血小板凝集」(BPA)を測定することによって測定される。次いで、被験体に本発明の製剤または組成物を投与し、被験体の「処置血小板凝集」(TPA)を測定する。次いで、パーセンテージ減少(δPA、%)を以下のように計算する。
δPA=((BPA−TPA)/BPA)*100
【0159】
実施例20に従って作製した透明液体製剤のマウスにおけるインビボ評価を、実施例21に従って行った。個々のマウスの出血時間を定期的に測定し、PLAVIX(登録商標)製剤(経口、粉砕化錠剤)、クロピドグレル重硫酸塩−SAE-CD(i.v.)、クロピドグレル重硫酸塩−SAE-CD(経口、溶液)間の性能の差異を測定した。増加された出血時間を達成するための時間の短縮は、治療発現までの時間の短縮と考えられ、何故ならば、出血時間の増加は、治療発現の開始を示すためである。結果(図8)は、本発明による製剤の使用がより迅速な治療発現を生じさせ、これによって、出血時間の所望の増加を達成するために必要とされる投与後の時間量が、PLAVIX(登録商標)固体(錠剤を破砕または粉砕することによって作製された粉末として投与した)の投与と比較して実質的に短縮されることを示している。本発明の製剤は、インターベンション心臓学手術について現在投与されているような過剰な用量を必要とすることなく、より迅速な治療発現を提供する。
【0160】
驚くべきことに、本発明の経口用量は、本発明の非経口i.v.用量が提供するのとほぼ同一の治療発現速度および治療効果レベルを提供し得、両方とも、等用量のクロピドグレルを含有する参照製剤、例えば経口錠剤、が提供するよりも実質的により迅速な治療利益発現およびより高い治療効果レベルを提供する。
【0161】
治療発現までの短縮された時間に関連して、本発明は、ピークまたはターゲット治療効果までの短縮された時間を提供する。ある態様において、本発明は、クロピドグレルが投与されたリスポンダー被験体においてピークまたはターゲット治療効果までの時間を短縮する方法を提供し、該方法は、その必要がある被験体へ、ターゲット治療効果を達成するのに十分な治療有効量のクロピドグレルおよびSAE-CDを含む第1の組成物を投与する工程を含み、それによって、該第1の組成物の投与によって達成されるピークまたはターゲット治療効果までの時間が、SAE-CDを含まずかつ実質的に同一の治療有効量のクロピドグレルを含む、その他の点では同様の参照組成物の同様の投与よって達成されるピーク治療効果までの時間よりも短くなる。参照組成物は錠剤であり得る。第1の組成物は、固体、懸濁液または液体であり得る。
【0162】
図10〜12は、化合物、クロピドグレル(図10)、クロピドグレルのチオール代謝物(図11)、およびクロピドグレルのカルボン酸代謝産物(図12)についての投与後の時間に対する化合物の平均血漿濃度の対数線形プロットである。データを、実施例27において詳述される臨床試験の一部として得た。図10は、0.1、1.0、10、30、100および300 mg用量についての、非経口、即ち、静脈内投与されたクロピドグレルについての明確な用量と血漿濃度との関係を表す。投与される用量が高くなるほど、クロピドグレルの血漿濃度は高くなる。ピーク血漿濃度までの時間は、約30秒または約1〜5分、または約10〜15分もしくはそれ未満であり、投与期間の終了時よりも長いかまたは同じぐらい、または投与の終了前までであった。ピーク血漿濃度までの時間は、非経口投与の速度によって影響され得る:投与の期間が長くなるほど、ピーク血漿濃度までの時間は長くなる。以下に記載するように、クロピドグレルを、約1分またはそれ未満(0.1 mg、1 mg、10 mg、または30 mgのクロピドグレルを含むサンプルについて)、約3〜5分または約4分(約100 mgのクロピドグレルを含むサンプルについて)、および約6〜10分または約8分(約300 mgのクロピドグレルを含むサンプルについて)の期間にわたって、ボーラスとしてi.v.投与した。
【0163】
図11は、クロピドグレルのチオール代謝産物についての用量と血漿濃度との関係を表す。データを、実施例27において詳述される臨床試験の一部として得た。一般的に、クロピドグレルの用量が高くなるほど、薬理学的に活性な代謝産物であると考えられる、前記代謝産物の対応血漿濃度は高くなる。チオール代謝産物の対応血漿濃度が、少なくとも本明細書において使用されるアッセイによって、その検出限界未満となり得るとしても、低用量のクロピドグレルが治療応答を提供し得ることに注意することが重要である。従って、本発明の方法にとって、チオール代謝産物が定量可能であることは、または検出可能であることさえ、必要ではない。チオール代謝産物へインビボで変換されるクロピドグレルの量が、特定の期間内に被験体において、対応する治療効果を提供するのに十分であることのみが必要である。
【0164】
図12は、クロピドグレルのカルボン酸代謝産物についての用量と血漿濃度との関係を表す。データを、実施例27において詳述される臨床試験の一部として得た。一般的に、クロピドグレルの用量が高くなるほど、薬理学的に不活性な代謝産物であると考えられる、前記代謝産物の対応血漿濃度は高くなる。
【0165】
図13は、実施例27に従う、クロピドグレルを投与された被験体についての平均用量−反応曲線を表す。反応を、エクスビボでの、被験体血漿のADP(5μM)への曝露後の血小板凝集阻害のパーセンテージとして測定した。一般的に、治療効果の発現までの時間は、15分未満または約15分であった。Weerakodyら2007(前述の引用を参照のこと)によって記載されるように、15%以上の最大血小板凝集阻害が、認識される治療効果であり、ACSの治療において有用であることが公知である種々の抗血小板薬を識別する。
【0166】
本発明の方法および組成物によって提供される、より迅速な治療発現、ピーク血漿濃度までのより迅速な時間、ピーク治療効果までのより迅速な時間、ターゲット治療効果までのより迅速な時間の結果として、いくつかの臨床的利益が、クロピドグレルの薬学的経口錠剤組成物ならびにその投与および使用と比較して、本発明の方法および組成物によって提供される。例えば、本発明の組成物および方法は、治療/応答時間を短縮することによって、例えば、ピーク治療までの時間、ピーク血漿濃度までの時間、ターゲット治療効果までの時間、および治療発現までの時間を短縮することによって、治療時間を短縮し、被験体において第二の心臓血管事象の発症の差し迫った危険性を低下させる。
【0167】
図14は、実施例27に従う、クロピドグレルの投与後の時間に対するリスポンダー被験体のパーセンテージのプロットを表す。本明細書において使用される場合、「リスポンダー」被験体は、クロピドグレルで処置した被験体であって、被験体の血漿を5μM ADPへエクスビボで曝露し、血小板凝集の程度を血小板凝集測定法によって測定すると、血漿が少なくとも15%血小板凝集阻害を示す、被験体である。血小板凝集測定の任意の公知の方法が、本発明に従って使用され得;しかし、好適な方法は本明細書に記載される。一般的に、被験体の群へ投与される用量が高くなるほど、その群において同定されるリスポンダー被験体のパーセンテージは高くなる。同様に、被験体の群へ投与される用量が高くなるほど、該群がリスポンダー被験体のその最大数に達するのがより迅速になる。本発明の組成物または製剤は、クロピドグレル療法に治療応答性である疾患、障害または状態の、治療、予防、改善、発症の低下、または発症の危険性の低下のために使用され得る。被験体の治療の方法に関して本明細書において使用される場合、「治療する」または「治療すること」という用語は、病因要素として過剰なまたは望ましくない血小板凝集を有する疾患、障害または状態に関連する症状の、緩和、改善、排除、重篤度の低下、発症の頻度の低下、または予防を意味する。本明細書において使用される場合、「クロピドグレルに治療応答性である」という用語は、治療有効量のクロピドグレルによる、このような疾患、障害または状態を有する被験体の治療が、被験体において臨床的利益または治療的利益を生じさせることを意味する。被験体においてクロピドグレル療法に治療応答性である疾患、障害または状態の、治療、予防、改善、発症の低下、または発症の危険性の低下の方法は、その必要がある被験体へ、本発明の製剤または組成物を投与する工程を含み、ここで、該製剤または組成物は、SAE-CDおよびある用量のクロピドグレルを含む。治療有効量のクロピドグレルは、1、2、またはそれ以上の用量のクロピドグレルを含み得る。
【0168】
ある態様において、疾患、障害または状態は、血栓性疾患、障害、または状態を含み、心筋梗塞、脳卒中、確立された末梢動脈疾患(PAD)、続発性虚血事象、急性冠症候群(ACS、例えば、不安定狭心症/非Q波MI)、一過性脳虚血発作、脳動脈硬化症、脳血管疾患、心臓血管疾患、狭心症、深部静脈血栓症、肺塞栓症(PE)、鎌状赤血球クリーゼ、および心不整脈からなる群より選択され得る。
【0169】
本発明の組成物、方法、および製剤は、心臓血管の状態、例えば、急性心筋虚血と併存する臨床症状の任意の群を指す、ACS(急性冠症候群)を示す被験体についてのインターベンションおよび非インターベンション治療プロトコルの両方において使用され得る。急性心筋虚血は、冠状動脈疾患から生じる心筋への不十分な血液供給に起因する胸痛である。それらは、低侵襲性インターベンション手技、例えば、PCI(ステント置換(replacement)またはバルーン血管形成)を必要とする医学的治療プロトコルにおいて、または侵襲性手技を必要としない医学的治療プロトコルにおいて、使用され得る。クロピドグレル療法から利益を得るためには、被験体は、必ず、本明細書に定義されるような、リスポンダーである。被験体は、ACSを示す前に、長期クロピドグレル療法を受けている場合および受けていない場合がある。その最も広い意味において、治療プロトコルは、組成物の投与後10秒〜120分、30秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分、1分〜90分、5分〜60分、10分〜60分、5分〜45分、10分〜45分、15分〜30分、5分〜30分、5分〜15分、もしくは10分〜20分の期間内に、または約10秒未満、約1分未満、約2.5分未満、約5分未満、約7.5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、約120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約50分未満、約45分未満、もしくは約40分未満以内に、被験体においてターゲット治療効果を提供するのに十分な量のクロピドグレルおよびSAE-CDを含む薬学的組成物を、その必要がある被験体へ投与する工程を含む。
【0170】
この点で、ターゲット治療効果は、PCIなどの低侵襲性インターベンション手技の実行を可能にするのに十分であると臨床医によってみなされるような出血時間または血小板凝集阻害のレベルである。ターゲット治療効果は、クロピドグレルを吸収および/またはその活性代謝産物へ代謝する能力に応じて被験体ごとに異なり得る。治療効果は、治療される疾患、疾患、障害または状態に応じて異なり得;しかし、本発明の方法に従っておよび/または組成物において被験体へ投与されると、クロピドグレルによって引き起こされる血小板凝集のインビボ阻害または増加された出血時間の結果として被験体において達成されるありとあらゆる臨床的に有益な治療効果が、意図される。
【0171】
前記治療プロトコルは、被験体がインターベンションまたは非インターベンション医学的処置を必要とするかどうかを決定するより前の工程をさらに含み得る。クロピドグレルの投与に続いて、被験体は、本発明のクロピドグレル含有組成物の非経口または経口的投与後、わずか10秒〜120分、30秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分、1分〜90分、5分〜60分、10分〜60分、5分〜45分、10分〜45分、15分〜30分、5分〜30分、5分〜15分、もしくは10分〜20分で、または約10秒未満、約1分未満、約2.5分未満、約5分未満、約7.5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、約120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約50分未満、約45分未満、もしくは約40分未満以内に、低侵襲性手技を受け得る。
【0172】
非インターベンション手技(医学的処置)およびクロピドグレル投与が被験体に適応される治療プロトコルについて、被験体に、本発明の組成物中のクロピドグレルおよび本明細書に記載されるような第2の治療剤が投与される。
【0173】
ある態様において、本発明は、心臓血管の状態、疾患または障害を有する被験体のための治療プロトコルを提供し、該方法は、以下を含む:a)被験体がインターベンションまたは非インターベンション医学的処置を必要とするかどうかを測定する工程;および、b)被験体が低侵襲性インターベンション医学的処置を必要とする場合、投与後、10秒〜120分、30秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分、1分〜90分、5分〜60分、10分〜60分、5分〜45分、10分〜45分、15分〜30分、5分〜30分、5分〜15分、もしくは10分〜20分の期間内に、または約10秒未満、約1分未満、約2.5分未満、約5分未満、約7.5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、約120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約50分未満、約45分未満、もしくは約40分未満以内に患者においてターゲット治療効果を提供するのに十分な量のクロピドグレルおよびSAE-CDを含む薬学的組成物を被験体へ投与し、低侵襲性インターベンション手技を行う工程;または、c)被験体が非インターベンション医学的処置を必要とする場合、10秒〜120分、30秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分、1分〜90分、5分〜60分、10分〜60分、5分〜45分、10分〜45分、15分〜30分、5分〜30分、5分〜15分、もしくは10分〜20分の期間内に、または約10秒未満、約1分未満、約2.5分未満、約5分未満、約7.5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、約120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約50分未満、約45分未満、もしくは約40分未満以内に被験体においてターゲット治療効果を提供するのに十分な量のクロピドグレルおよびSAE-CDを含む薬学的組成物を被験体へ投与し、被験体へ非インターベンション医学的処置を提供する工程;または、d)被験体が侵襲性インターベンション医学的処置(例えば、CABG)を必要とする場合、クロピドグレルを被験体へ投与しないこと。ある態様において、前記プロトコルは、以下を含む:1)任意で、症状を示している患者を鎮静させる工程;2)ACSの高い危険性について測定する工程;3)任意で、患者を入室させることをカテーテル検査室に警告する工程;4)任意で、患者をカテーテル検査室へ移送する工程;5)患者に対して1つまたは複数の診断的冠状動脈テストを行う工程;6)PCIまたはCABGが適応されるかどうかを測定する工程;および、7)PCIが適応される場合、クロピドグレルおよび任意でSAE-CDを含む液体組成物または製剤を非経口投与し、または、クロピドグレルおよびSAE-CDを含む組成物または製剤を経口的に投与し、PCIを行い、任意で患者を長期間(長期)クロピドグレル療法において維持する工程;または、8)CABGが適応される場合、クロピドグレルを投与せずに、CABGを行う工程。本発明の方法は、担当臨床医によって適応される任意の工程などの追加の工程を必要に応じて含み得る。鎮静させる方法は、抗不安薬、NSAID、非麻酔性鎮痛剤、麻酔性鎮痛剤、麻酔薬、鎮静薬、および/または抗炎症剤の投与を含み得る。
【0174】
好適な診断的冠状動脈テストとしては、冠状動脈血管造影、心電図記録法、EKG、心エコー検査法、CTスキャン血管造影、および、結果によりインターベンションまたは非インターベンション処置を必要とし得る、冠状動脈機能不全を測定するための当業者に公知の任意の他のテストが挙げられる。
【0175】
非インターベンション手技は、非外科的手技として定義される。非インターベンション手技は、被験体への1つまたは複数の他の治療剤の投与、または本明細書に記載されるような別の非外科的手技であり得る。インターベンション手技は、侵襲性または低侵襲性外科的手技と定義される。侵襲性手技はCABGであり得る。低侵襲性手技はPCIであり得る。
【0176】
クロピドグレル療法がリスポンダー被験体にのみ有用であることを考えると、本発明は、被験体がリスポンダーであるかまたは非リスポンダーであるかを速やかに決定する方法を提供する。該方法は、以下を含む:「予想される治療有効量」のクロピドグレルを含む組成物を被験体へ投与する工程、および、被験体への組成物の投与後、10秒〜120分、30秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分、1分〜90分、5分〜60分、10分〜60分、5分〜45分、10分〜45分、15分〜30分、5分〜30分、5分〜15分、もしくは10分〜20分の期間内に、または約10秒未満、約1分未満、約2.5分未満、約5分未満、約7.5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、約120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約50分未満、約45分未満、もしくは約40分未満以内に、クロピドグレルに対する被験体の応答性を測定する工程。「予想される治療有効量」とは、被験体に組成物を投与する時点で、被験体において治療効果を提供すると予想されるクロピドグレルの量を意味する。予想される治療有効量は、一般的に、900 mg、750 mg、675 mg、600 mg、450 mg、375 mg、300 mg、225 mg、200 mg、150 mg、100 mg、75 mg、50 mg、40 mg、30 mg、25 mg、20 mg、15 mg、12.5 mg、10 mg、7.5 mg、5 mg、2 mg、1 mg、0.75 mg、もしくは0.1 mgのクロピドグレル、または0.1〜900 mg、0.1〜100 mg、100〜300 mg、約300 mg、300〜600 mg、300〜900 mg、600〜900 mg、50〜600 mg、75〜600 mg、150〜600 mg、もしくは200〜450 mgの範囲内のクロピドグレルである。
【0177】
前記方法によれば、リスポンダー被験体は、予想される治療有効量の本発明の組成物または製剤の投与の後に、エクスビボアッセイで測定した場合、血小板凝集の15%以上の阻害を示すものである。非リスポンダー(そうでなければ、プアリスポンダー、ハイポリスポンダー、中間リスポンダー、低リスポンダーまたは耐性者として公知)被験体は、予想される治療有効量の本発明の組成物または製剤の投与の後に、エクスビボアッセイで測定した場合、血小板凝集の15%未満の阻害を示すものである。血小板凝集阻害は、エクスビボアッセイにおいて5 uMアデノシン二リン酸(ADP)によって誘導される血小板凝集のパーセンテージとして定義される。被験体を非リスポンダーと対比してリスポンダーと規定することにおいて使用するための好適な方法は、Weerakkodyら(J. Cardiovascular Pharmacol. Therap. (2007), 12(3), 205-212)によって開示されており、この全開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0178】
本発明の方法は、有利なことに、クロピドグレルが固体経口錠剤として投与されるその他の点では同様の方法によって達成され得るよりもより短い時間で行われる。換言すると、本発明の組成物または製剤中のクロピドグレルの被験体への非経口または経口的投与は、本発明のものではないが実質的に同量のクロピドグレルを含む固体経口投薬形態、例えば、PLAVIX(登録商標)錠剤の経口的投与が提供するよりも、リスポンダー被験体において治療応答のより迅速な発現を提供する。これは、臨床医が、被験体がリスポンダーであるかどうかを決定することができる時間が、被験体に本発明の組成物が投与される場合、被験体に本発明のものではない固体投薬形態、例えば、PLAVIX(登録商標)が経口投与される場合よりも短いことを意味する。本発明によるこのような決定のための時間は、一般的に、組成物の投与後、10秒〜120分、30秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分、1分〜90分、5分〜60分、10分〜60分、5分〜45分、10分〜45分、15分〜30分、5分〜30分、5分〜15分、もしくは10分〜20分の範囲内、または約10秒未満、約1分未満、約2.5分未満、約5分未満、約7.5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、約120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約50分未満、約45分未満、もしくは約40分未満以内である。
【0179】
クロピドグレルに対する被験体の応答性を測定する工程は、以下を含み得る:被験体の血液のサンプルを採取すること;および、被験体の血漿中の血小板凝集の程度を測定すること。被験体の血漿中の血小板凝集の程度を測定するための好適な方法としては、例えば、非限定的に、凝集測定法、例えば、光透過率またはインピーダンス凝集測定法が挙げられる。
【0180】
本発明の組成物および製剤は、クロピドグレル含有錠剤、例えば、PLAVIX(登録商標)の経口的投与に比べて1つまたは複数の利点を提供する。1つのこのような利点は、用量減少である。本発明の組成物または製剤中のある量のクロピドグレルを経口的にまたは非経口投与される被験体は、クロピドグレルから治療的利益を受けるために第1の治療有効量を必要とする。本発明によらない、錠剤投薬形態中のある量のクロピドグレルを経口的に投与される同一の被験体は、クロピドグレルから実質的に同一の治療的利益を受けるために第2の治療有効量を必要とする。その被験体について、第1の治療有効量は、第2の治療有効量より少ない場合があり、一般的には第2の治療有効量より少ない。従って、クロピドグレルの必要があるリスポンダー被験体において要する治療用量を減少させる方法であって、SAE-CDを含む薬学的組成物中の第1の治療有効量のクロピドグレルを被験体へ非経口または経口的に投与する工程を含み、ここで、第1の治療有効量は、第2の治療有効量よりも少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.25倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍少なく、少なくとも15倍、少なくとも20倍、約1.1〜約20倍、約1.2倍〜約15倍、約1.25倍〜約10倍、約2倍〜約10倍、または約3倍〜約8倍少なく、第2の治療有効量は、SAE-CDを含まない参照固体薬学的組成物中においてクロピドグレルが被験体へ経口的に投与される場合に、実質的に同一の治療効果を提供するために要するクロピドグレルの量である、方法。
【0181】
本発明による、その必要がある被験体へのクロピドグレルの非経口投与は、クロピドグレルの経口的投与に関して非リスポンダーである被験体についての治療の代替手段を提供し得る。例えば、クロピドグレルを含む錠剤(例えば、PLAVIX錠剤)を経口的に投与される被験体は、本明細書において定義されるような「リスポンダー」とみなされるのに十分に高い治療応答を示さない場合がある。しかし、同一の被験体は、クロピドグレルを非経口投与されることによって、リスポンダーとなり得る。1つの臨床試験において、被験体のグループにクロピドグレル(10〜300 mg)を経口的に投与し、それらの被験体は、「リスポンダー」とみなされるのに十分に高い治療応答を示さなかった。次いで、それら同一の被験体へクロピドグレルを非経口投与し、その後、被験体の9〜25%が、「リスポンダー」とみなされるのに十分に高い治療応答を示した。従って、本発明は、クロピドグレルの経口的投与に関しての非リスポンダー被験体をリスポンダー被験体へ変換する方法であって、その必要がある被験体へクロピドグレルを非経口投与し、それによって被験体においてクロピドグレルに対する治療応答を提供することを含み、ここで、治療応答は、被験体をリスポンダーとみなすに十分である、方法を提供する。
【0182】
別のこのような利点は、被験体においてターゲット治療効果を達成するために、クロピドグレル療法において現在可能であるよりもより短い時間内で、被験体へ投与される用量を臨床医が滴定できることである。ある量のクロピドグレルを含む組成物または製剤を被験体へ投与し、被験体における対応する治療効果を特定の時間内に測定する。その時間は、クロピドグレルが液体投薬形態として非経口投与される場合、それが錠剤投薬形態、例えば、PLAVIX(登録商標)錠剤として経口的に投与される場合よりも、より短い。この利点の重要性は、ACSを示す患者を、90分以内に、救急処置室または手術室への入室からPCI手技の開始まで持っていくこと、特に、冠状動脈血管造影の前にPLAVIXで処置しないことによってCABGの有用性を排除しないのと同時に、そのようにすることという、受け入れられている臨床的な目標による。
【0183】
従って、本発明は、被験体においてターゲット治療効果を達成するための被験体における用量を漸増させる方法を提供し、該方法は以下を含む:ある量のクロピドグレルを被験体へ非経口投与する工程;非経口投与後、10秒〜120分未満、30秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分、1分〜90分、5分〜60分、10分〜60分、5分〜45分、10分〜45分、15分〜30分、5分〜30分、5分〜15分、もしくは10分〜20分の、または約10秒未満、約1分未満、約2.5分未満、約5分未満、約7.5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、約120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約50分未満、約45分未満、もしくは約40分未満以内の遅延期間内に、被験体において達成された対応する治療効果を測定する工程;および、達成された治療効果の程度がターゲット治療効果未満である場合、ターゲット治療効果が達成されるまで、非経口投与工程および測定工程を繰り返すこと。前記工程は、ターゲット治療効果を達成するために、必要に応じて何回も繰り返され得る。投与されるクロピドグレルの量は、一般的に、以下の範囲内である:約50〜600 mg、0.1〜900 mg、1〜900 mg、10〜900 mg、0.1〜100 mg、25〜750 mg、50〜600 mg、75〜600 mg、75〜500 mg、100〜300 mg、100〜400 mg、150〜600 mg、もしくは200〜450 mg、200〜400 mg、300〜600 mg、300〜900 mg、600〜900 mg、約0.1 mg、約0.75 mg、約1 mg、約2 mg、約5 mg、約7.5 mg、約10 mg、約12.5 mg、約15 mg、約20 mg、約25 mg、約30 mg、約40 mg、約50 mg、約75 mg、約100 mg、約150 mg、約200 mg、約225 mg、約300 mg、約375 mg、約450 mg、約525 mg、約600 mg、約675 mg、約750 mg、約900 mg。遅延期間は、一般的に、10秒〜120分、30秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分、1分〜90分、5分〜60分、10分〜60分、5分〜45分、10分〜45分、15分〜30分、5分〜30分、5分〜15分、もしくは10分〜20分、または約10秒未満、約1分未満、約2.5分未満、約5分未満、約7.5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、約120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約50分未満、約45分未満、もしくは約40分未満以内である。クロピドグレルは、クロピドグレル SAE-CDを含む水性液体組成物または製剤中に存在し得る。
【0184】
前記測定工程は、以下を含み得る:被験体の血漿のサンプルを採取すること;および、凝集測定法によって被験体の血漿中の血小板凝集の程度を測定すること。採取工程は、以下を含み得る:患者の血液のサンプルを採取すること;および、血液から血漿を分離し、血漿サンプルを形成すること、次いで、血小板凝集測定法を行うこと。
【0185】
本発明はまた、被験体においてターゲット治療効果を達成するための被験体における用量を漸増させる方法を提供し、該方法は以下を含む:クロピドグレルおよびSAE-CDを含む組成物または製剤中のある量のクロピドグレルを被験体へ経口的に投与する工程;経口的投与後、10秒〜120分、30秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分、1分〜90分、5分〜60分、10分〜60分、5分〜45分、10分〜45分、15分〜30分、5分〜30分、5分〜15分、もしくは10分〜20分の、または約10秒未満、約1分未満、約2.5分未満、約5分未満、約7.5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、約120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約50分未満、約45分未満、もしくは約40分未満以内の遅延期間内に、被験体において達成された対応する治療効果を測定する工程;および、達成された治療効果の程度がターゲット治療効果未満である場合、ターゲット治療効果が達成されるまで、経口的投与工程および測定工程を繰り返すこと。前記工程は、ターゲット治療効果を達成するために、必要に応じて何回も繰り返され得る。投与されるクロピドグレルの量は、一般的に、以下の範囲内である:50〜600 mg、0.1〜900 mg、1〜900 mg、10〜900 mg、0.1〜100 mg、25〜750 mg、50〜600 mg、75〜600 mg、75〜500 mg、100〜300 mg、100〜400 mg、150〜600 mg、もしくは200〜450 mg、200〜400 mg、300〜600 mg、300〜900 mg、600〜900 mg、約0.1 mg、約0.75 mg、約1 mg、約2 mg、約5 mg、約7.5 mg、約10 mg、約12.5 mg、約15 mg、約20 mg、約25 mg、約30 mg、約40 mg、約50 mg、約75 mg、約100 mg、約150 mg、約200 mg、約225 mg、約300 mg、約375 mg、約450 mg、約525 mg、約600 mg、約675 mg、約750 mg、約900 mg。遅延期間は、一般的に、10秒〜120分、30秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分、1分〜90分、5分〜60分、10分〜60分、5分〜45分、10分〜45分、15分〜30分、5分〜30分、5分〜15分、もしくは10分〜20分、または約10秒未満、約1分未満、約2.5分未満、約5分未満、約7.5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、約120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約50分未満、約45分未満、または約40分未満以内である。
【0186】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、記載の値の+/- 10%を意味するように理解される。
【0187】
上記の説明および下記の実施例を考慮して、当業者は、過度の実験なしに、特許請求される本発明を実施することができる。前述の記載は、本発明による製剤の作製についてのある特定の手順を詳述する下記の実施例を参照して、より十分に理解される。これらの実施例に対してなされた全ての参照は、例示目的のためである。下記の実施例は、網羅的ではなく、しかし、本発明によって考えられる多くの態様のうちのほんの僅かを単に例示すると考えられるべきである。
【0188】
実施例1
クロピドグレル重硫酸塩の溶解性を、それぞれ、7.6、6.1、6.6、2.4、3.9、5.4、5、5.6、5.4、5.5、および0(非置換)のDS数を有する、約20% w/vのHP-β-CD、SBE-γ-CD、Captisol(登録商標)(SBE-β-CD)、SBE-α-CD、SBE-α-CD、SBE-α-CD、SPE-α-CD、SPE-β-CD、SPE-γ-CD、ADVASEP(SBE-β-CD)、およびα-CD中において測定した。これを当技術分野において周知の手順に従って行った(Higuchi et al. in Phase Solubility Techniques, in Advances in Analytical Chemistry and Instrumentation (Ed. C.N. Reilly, John Wiley & Sons Inc., Vol. 4 (1965), pg.117-212);この関連の開示は、参照により本明細書に組み入れられる)。結果を下記の表に詳述する。

【0189】
実施例2
クロピドグレル重硫酸塩の水溶液をpH 5.5で作製した。製剤は、Captisol(登録商標)(SBE-β-CD、DS=6.6)(39.0% wt./vol.)およびクロピドグレル重硫酸塩を含んだ。使用した量を下記の表に記載する。

【0190】
以下の手順を使用して製剤を作製した。39 gのSBE-β-CDを、およそ70 mlのリン酸二水素ナトリウム緩衝液へ添加し、室温で混合しながら溶解した。この溶液へ、300mgのクロピドグレル重硫酸塩を添加し、撹拌しながら溶液に溶解した。溶液のpHを必要に応じて水酸化ナトリウムでpH 5.5へ調節し、緩衝液の添加によって溶液を最終体積100 mlとした。
【0191】
実施例3
クロピドグレル重硫酸塩の水溶液を作製した。製剤は、SBE7-β-CD[DS=6.6](39% wt./vol.)を含有した。0.2 Mの代わりに0.1 Mリン酸二水素ナトリウム緩衝液を使用したこと以外、手順は実施例2のものと同一であった。最終pHは5.52であった。
【0192】
実施例4
クロピドグレル重硫酸塩の水溶液をpH 7.97で作製した。製剤は、Captisol(登録商標)(SBE-β-CD、DS=6.6)(39.0% wt./vol.)およびクロピドグレル重硫酸塩を含んだ。使用した量を下記の表に記載する。

【0193】
以下の手順を使用して製剤を作製した。39 gのSBE-β-CDを、およそ70 mlのリン酸二水素/水素ナトリウム緩衝液へ添加し、室温で混合しながら溶解した。この溶液へ、300mgのクロピドグレル重硫酸塩を添加し、撹拌しながら溶液に溶解した。溶液のpHを必要に応じて水酸化ナトリウムでpH 7.97へ調節し、溶液を緩衝液で最終体積100 mlとした。
【0194】
実施例5
クロピドグレル重硫酸塩の水溶液を作製した。製剤は、SBE-β-CD[DS=6.6](39% wt./vol.)を含有した。0.2 M緩衝液の代わりに0.1Mリン酸二水素/水素ナトリウム緩衝液を使用したこと以外、手順は実施例4のものと同一であった。最終pHは8.03であった。
【0195】
実施例6
クロピドグレル重硫酸塩の水溶液をpH 5.50で作製した。製剤は、HP-β-CD[DS=4.3](約25.0% wt./vol.)およびクロピドグレル重硫酸塩を含んだ。使用した量を下記の表に記載する。

【0196】
以下の手順を使用して製剤を作製した。25 gのHP-β-CDを、およそ70 mlのリン酸二水素ナトリウム緩衝液へ添加し、室温で混合しながら溶解した。この溶液へ、300mgのクロピドグレル重硫酸塩を添加し、撹拌しながら溶液に溶解した。溶液のpHを必要に応じて水酸化ナトリウムでpH 5.50へ調節し、溶液を緩衝液で最終体積100 mlとした。
【0197】
実施例7
クロピドグレル重硫酸塩の水溶液を作製した。製剤は、HP-β-CD[DS=4.3](25% wt./vol.)を含有した。0.2 Mの代わりに0.1Mリン酸二水素ナトリウム緩衝液を使用したこと以外、手順は実施例6のものと同一であった。最終pHは5.52であった。
【0198】
実施例8
クロピドグレル重硫酸塩の水溶液をpH約8.0で作製した。製剤は、HP-β-CD[DS=4.3](約25.0% wt./vol.)およびクロピドグレル重硫酸塩を含んだ。使用した量を下記の表に記載する。

【0199】
以下の手順を使用して製剤を作製した。25 gのHP-β-CDを、およそ70 mlのリン酸二水素/水素ナトリウム緩衝液へ添加し、室温で混合しながら溶解した。この溶液へ、300mgのクロピドグレル重硫酸塩を添加し、撹拌しながら溶液に溶解した。溶液のpHを必要に応じて水酸化ナトリウムでpH 7.97へ調節し、溶液を緩衝液で最終体積100 mlとした。
【0200】
実施例9
クロピドグレル重硫酸塩およびHP-β-CD[DS=4.3](25% wt./vol.)を含有する水溶液を作製した。0.2 M緩衝液の代わりに0.1Mリン酸二水素/水素ナトリウム緩衝液を使用したこと以外、手順は実施例8のものと同様であった。最終pHは8.05であった。
【0201】
実施例10
クロピドグレル重硫酸塩の水溶液をpH約5.50で作製した。製剤は、Captisol(登録商標)(SBE7-β-CD、DS=6.6)(37.0% wt./vol.)およびクロピドグレル重硫酸塩を含んだ。使用した量を下記の表に記載する。

【0202】
以下の手順を使用して製剤を作製した。SBE-β-CD(DS=6.6)(92.5 g)を、およそ200 mlのクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液(0.2M)へ添加し、室温で混合しながら溶解した。この溶液へ、2.45 gのクロピドグレル重硫酸塩を添加し、撹拌しながら溶液に溶解した。透明溶液を、緩衝液で最終体積250 mlとし、最終pHは5.50であった。
【0203】
実施例11
クロピドグレル重硫酸塩の水溶液を作製した。製剤は、SBE-β-CD[DS=6.6](37% wt./vol.)を含有した。溶液を2.5 ml充填体積で10 ml血清バイアル中へ充填したこと以外、手順は実施例10のものと同一であった。バイアルを、凍結乾燥機、例えば、Dura Dry II MPコンデンサーモジュールへ接続されたFTS SystemsのDura Dryトレイドライヤーへ移し、凍結乾燥した。次いで、凍結乾燥物を、滅菌水を使用して再構成し、透明溶液が得られた。
【0204】
実施例12
クロピドグレル重硫酸塩の水溶液をpH約5.50で作製した。製剤は、Captisol(登録商標)(SBE-β-CD、DS=6.6)(37.0% wt./vol.)およびクロピドグレル重硫酸塩を含んだ。使用した量を下記の表に記載する。

【0205】
以下の手順を使用して製剤を作製した。92.5 gのSBE-β-CDを、およそ200 mlのクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液(0.1 M)へ添加し、室温で混合しながら溶解した。この溶液へ、2.45 gのクロピドグレル重硫酸塩を添加し、撹拌しながら溶液に溶解した。透明溶液を、緩衝液で最終体積250 mlとし、pHは5.48であった。
【0206】
実施例13
クロピドグレル重硫酸塩の水溶液を作製した。製剤は、SBE-β-CD(DS=6.6)(37% wt./vol)を含有した。凍結乾燥機、例えば、Dura Dry II MPコンデンサーモジュールへ接続されたFTS SystemsのDura Dryトレイドライヤーを使用して溶液を凍結乾燥したこと以外、手順は実施例12のものと同一であった。凍結乾燥物を、滅菌水を使用して再構成し、透明溶液が得られた。
【0207】
実施例14
クロピドグレル重硫酸塩の水溶液を作製した。製剤は、20% wt./volの濃度のCaptisol(登録商標)(SBE-β-CD、DS=6.6)、過剰のクロピドグレル重硫酸塩、ならびに界面活性剤、ポリソルベート80(Tween 80(登録商標))およびポリエチレングリコール-15-ヒドロキシステアレート(Solutol(登録商標)を含んだ。Captisol(登録商標)(SBE-β-CD、DS=6.6)を含まない種々の濃度の界面活性剤(Tween 80(登録商標)およびSolutol(登録商標))のサンプルもまた、pH約5.5で製剤化した。約20〜25℃の室温で少なくとも24時間混合することによって平衡化した後、サンプルをクロピドグレル含有量について分析した。各成分の添加したモル量、および溶液中においてアッセイした得られたクロピドグレル量を、表14a、14b、14cおよび14dに記載する。
【0208】
(表14a)

【0209】
(表14b)

【0210】
(表14c)

【0211】
(表14d)

【0212】
実施例15
クロピドグレル重硫酸塩の甘味を付けた水溶液を作製した。製剤は、Captisol(登録商標)(SBE-β-CD、DS=6.6)(37.7% wt./vol.)、クロピドグレル重硫酸塩およびマンニトールを含んだ。使用した量を下記の表に記載する。

【0213】
以下の手順を使用して製剤を作製した。3.77gのSBE-β-CDを、およそ7 mlの滅菌濾過水へ添加した。この溶液へ、100 mgのクロピドグレル重硫酸塩および1.00 gのマンニトールを添加し、ボルテックスすることによって溶液に溶解した。溶液を最終体積10 mlとした。2 mlの溶液を10 ml滅菌バイアルに入れ、凍結乾燥機、例えば、Dura Dry II MPコンデンサーモジュールへ接続されたFTS SystemsのDura Stopトレイドライヤーを使用して凍結乾燥した。凍結乾燥物を、滅菌濾過水を使用して再構成し、最終pH 1.80の透明溶液が得られた。
【0214】
実施例16
製剤は、Captisol(登録商標)(SBE-β-CD、DS=6.6)(約37 %)、クロピドグレル重硫酸塩およびマンニトールを含んだ。200 mgのクロピドグレル重硫酸塩(152 mgクロピドグレル)を使用したこと以外、手順は実施例15のものと同様であった。再構成した凍結乾燥物は、pH 1.52の透明溶液であった。
【0215】
実施例17
クロピドグレル重硫酸塩の水溶液を作製した。製剤は、Captisol(登録商標)(SBE-β-CD、DS=6.6)(約37%)、クロピドグレル重硫酸塩およびD-グルコースを含んだ。マンニトールの代わりにD-グルコースを使用したこと以外、手順は実施例15のものと同様であり、再構成後の最終pHは1.81であった。再構成した溶液は透明であった。
【0216】
実施例18
製剤は、Captisol(登録商標)(SBE-β-CD、DS=6.6)(約37%)、クロピドグレル重硫酸塩およびD-グルコースを含んだ。200 mgのクロピドグレル重硫酸塩(152 mgクロピドグレル)を使用したこと以外、手順は実施例17のものと同様であった。再構成した凍結乾燥物は、pH 1.82の透明溶液であった。
【0217】
実施例19
クロピドグレル液体製剤の安定性を、熱または蛍光灯のいずれかによるストレスへの曝露後に測定した。製剤は、クロピドグレル重硫酸塩および等モル量の異なるシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体を含有した。全ての製剤は、2.29 mg/mlクロピドグレル遊離塩基に相当する、3.0 mg/mlクロピドグレル重硫酸塩、および0.18 Mのシクロデキストリンを含有した。好適な量のシクロデキストリンを70mlのリン酸二水素/水素ナトリウム緩衝液(0.1Mおよび0.2M)に溶解し、クロピドグレルを添加し、そして全てのクロピドグレルが溶解されるまで混合することによって、シクロデキストリン製剤を作製した。溶液をリン酸緩衝液で最終体積100mlとし、次いで、0.22ミクロンMillex-GV Duraporeフィルターを通過させた。溶液を、pH約5.5およびpH約8.0の両方で、ならびに2つの温度、60℃および40℃で評価した。各々の溶液を、クロピドグレルの含有量および分解生成物(degradant)の存在についてHPLCによって分析した。さらに、各溶液のアリコート(1.5ml)を、テフロンで裏打ちされたスクリューキャップを備える1ドラムのガラスバイアルに入れ、高輝度蛍光灯(Sylvania Cool White 15ワットランプの列から約25cm)へ9日間曝露した状態で保管した。9日保管期間の最後に、サンプルの各々をHPLC法によってアッセイし、主な分解生成物の各々の量を、クロマトグラムに出現したクロピドグレルピーク面積のパーセンテージとして計算した。
【0218】
0.7ml/分で流動するpH約4の65%メタノール:35% 0.1%トリエチルアンモニウムアセテート溶液を含有する移動相、およびβ-シクロデキストリンカラム200×4.0 mmを使用する、Perkin-Elmer HPLCシステムを使用して、サンプルを分析した。検出は230 nmでのUV吸収によって行った。クロピドグレル保持時間は、この分析システムを使用して約18分であった。
【0219】
実施例20
クロピドグレル重硫酸塩の水溶液を作製した。製剤は、Captisol(登録商標)(SBE-β-CD、DS=6.6)(19.0% wt./vol.)およびクロピドグレル重硫酸塩を含んだ。使用した量を下記の表に記載する。

【0220】
製剤を作製するために、9.52 gのSBE-β-CDを、およそ30 mlの滅菌濾過水へ添加し、室温で混合しながら溶解した。この溶液へ、150.8mgのクロピドグレル重硫酸塩を添加し、撹拌しながら溶液に溶解した。溶液を最終体積50 mlとし、pHを5.47へ調節した。溶液の密度は、1.011 g/ccであると測定された。溶液の2.5 mlのアリコートを10 ml Schottガラスバイアルに入れ、凍結乾燥した。次いで、サンプルを、実施例21に記載のインビボ出血研究のために使用した。
【0221】
実施例21
出血時間研究を、モデル動物としてマウスを使用して行った。20 gマウス当たり0.1 mlの用量の経口強制飼養または尾静脈中への注射のいずれかによって、マウスにクロピドグレル含有製剤を投与した。これは、6.5 mg/kgクロピドグレル重硫酸塩(5mg/kgクロピドグレル塩基に相当)の用量に相当する。投薬後の選択した時間で、各尾の先端(0.3 mm)の標準化切断を行い、次いで、マウスを直ぐに垂直に吊るし、37℃の食塩水を含有する試験管に各尾の末端2 cmを浸漬した。次いで、15秒間の出血停止が始まるために必要とされる時間を測定した。180秒の最大停止時間を使用した。
【0222】
実施例20由来のSBE-β-CD−クロピドグレル製剤を、5.1 ml注射用滅菌水(水および溶液の密度を使用して計算)で各バイアルを再構成することによって作製し、1.3mg/mlクロピドグレル重硫酸塩を含有する溶液が得られた。全ての固体が溶解するまで、溶液を十分に撹拌した。この溶液製剤を、静脈内および経口溶液投薬の両方について使用した。
【0223】
市販の薬品であるPLAVIX(登録商標)を、メチルセルロース中の経口懸濁液として送達した。1つの錠剤を粉砕し、37.5mlの0.5%w/vメチルセルロースに懸濁し、1.3mg/mlクロピドグレル重硫酸塩を含有する懸濁液が得られた。PLAVIX(登録商標)懸濁液を経口送達した。
【0224】
100mg/kgのアスピリンをポジティブコントロールとして使用した。
【0225】
サンプリングレジメンは、下記の表に示す通りである。

【0226】
実施例22
競合的結合研究を、クロピドグレル重硫酸塩およびアスピリン(ASA、アセチルサリチル酸)を使用して行った。水酸化ナトリウムを使用してpHが約5.5に維持されるように、研究を自動滴定装置において行った。先ず、必要量のSBE-β-CDおよびアスピリンを、0.2μm Millipore濾過水に可溶化し、次いで、自動滴定装置へ移した。この溶液へ、過剰のクロピドグレル重硫酸塩を添加し、撹拌しかつpH約5.5を維持しながら2時間平衡化させた。SBE-β-CDおよびアスピリンの量を下記の表に示す。

【0227】
平衡化した後、溶液をサンプリングし、クロピドグレル含有量について分析した。
【0228】
実施例23
SBE-β-CD−クロピドグレル重硫酸塩に基づく製剤の溶解を、市販のPLAVIX製剤と比較した。2つの形態のクロピドグレル製剤を作製した。
【0229】
第1の製剤において、Captisolおよびクロピドグレル重硫酸塩の予め形成された錯体を、SBE-β-CD(2.5 g)を100mlの滅菌濾過水に溶解することによって作製した。ここへ、クロピドグレル重硫酸塩(980 mg)を添加した。次いで、この溶液を、Buchi 190ミニ噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥した。
【0230】
第2の製剤は、SBE-β-CD(2.5 g)およびクロピドグレル重硫酸塩(980 mg)の物理的混合物を含み、ここで、2つの成分を計量し、打錠の直前に固体状態で一緒に徹底的に混合した。ステアリン酸マグネシウムを、打錠の前に、滑沢剤として前記製剤へ添加した。
【0231】
各錠剤は、ステアリン酸マグネシウム(0.5% wt/wt)、SBE-β-CD(250 mg)およびクロピドグレル重硫酸塩(98mg、遊離塩基クロピドグレル75mgに相当)を含有した。これは、75 mgの遊離塩基クロピドグレルを有する市販品PLAVIX(登録商標)に対応する。
【0232】
比較溶解分析を、Vankel vk7000溶解装置を使用して行った。パドル法を使用し、50 rpmで回転し、媒体温度を37℃で維持した。溶解媒体は、1000 mlのクエン酸/リン酸二ナトリウム緩衝液、pH約5.4であった。各錠剤を三つ組でテストし、サンプリング時間は5、15、30、45および60分であり、各サンプルを35 μmフィルターで濾過した。次いで、これらのサンプルを、クロピドグレル重硫酸塩含有量についてアッセイした。
【0233】
実施例24
クロピドグレル重硫酸塩およびチロフィバン塩酸塩一水和物の水溶液を、pH約5.5で作製する。製剤は、Captisol(登録商標)(SBE-β-CD、DS=6.6)(39.0% wt./vol.)、クロピドグレル重硫酸塩およびチロフィバン塩酸塩一水和物を含んだ。使用した量を下記の表に記載する。

【0234】
以下の手順を使用し、製剤を作製する。SBE-β-CD(3.90 g)を滅菌水(およそ7 ml)へ添加し、室温で混合しながら溶解させる。この溶液へ、クロピドグレル重硫酸塩(100 mg)を添加し、撹拌しながら溶液に溶解させる。次いで、チロフィバン塩酸塩一水和物(0.449 mg)を前記溶液に溶解し、pHを水酸化ナトリウムで必要に応じてpH約5.5へ調節する。溶液を、滅菌水の添加によって最終体積10.0 mlとする。
【0235】
実施例25
クロピドグレル重硫酸塩およびエノキサパリンナトリウムの水溶液を、pH約5.5で作製する。製剤は、Captisol(登録商標)(SBE-β-CD、DS=6.6)(39.0% wt./vol.)、クロピドグレル重硫酸塩およびエノキサパリンナトリウムを含む。使用される量を下記の表に記載する。

【0236】
以下の手順を使用し、製剤を作製する。SBE-β-CD(3.90 g)を滅菌水(およそ7 ml)へ添加し、室温で混合しながら溶解させる。この溶液へ、クロピドグレル重硫酸塩(100 mg)を添加し、撹拌しながら溶液に溶解させる。次いで、エノキサプリンナトリウム(enoxaprin sodium)(10.5 mg)を溶解し、pHを水酸化ナトリウムまたは塩酸で必要に応じてpH約5.5へ調節する。溶液を、滅菌水の添加によって最終体積10.0 mlとする。
【0237】
実施例26
新鮮な全血サンプルを被験体から採取し、血小板凝集をポイント・オブ・ケアMICROSセルカウンター(ABX Diagnostics)およびPlateletworksテストプラットフォーム(Helena Laboratories)で測定する。セルカウンターは、従来の電子インピーダンス細胞カウント原理を使用し、ここで、参照血小板カウントを、抗凝固剤としてK3-EDTAを含有するPlateletworksチューブ中の1 mLの新鮮な全血に対して行う。次いで、サンプルをセルカウンターに通過させ、血小板カウントを測定する。このプロセスを、シトレートおよび20 μmol/L ADP(アゴニストである、アデノシン-5'-二リン酸)の両方を含有するPlateletworksチューブ中の新鮮な全血の第2の1 mLサンプルで繰り返す。ADPの存在下において、血小板は、会合し、凝集する。凝集した血小板は血小板サイズについての閾値限界を超えるので、それらは、個々の血小板としてもはやカウントされない。アゴニストチューブと参照チューブとの血小板カウント比を、パーセント血小板凝集として計算する。
【0238】
実施例27
非盲検用量漸増臨床試験を健常成人ボランティアにおいて行い、本発明の水性液体製剤の血小板凝集阻害効果および薬物動態を以下のように測定した。この研究から得られたデータを図10〜14に詳述し、上記でさらに詳細に議論している。
【0239】
目的:
PM103 I.V.の単回漸増用量の安全性および許容性を評価すること。
ADP惹起される血小板凝集の阻害についてのPM103 I.V.の用量反応を測定すること。
血漿中の、クロピドグレル、クロピドグレルカルボン酸、およびクロピドグレルチオールの血漿濃度を測定すること。
【0240】
デザイン:
6つの計画単回静脈内用量のPM103 I.V.(0.1 mg、1.0 mg、10 mg、30 mg、100 mgおよび300 mg、クロピドグレル)の非盲検漸増用量漸増研究。
【0241】
治療:
治療:PM103 I.V.(クロピドグレル重硫酸塩);0.1、1.0、10、30 mg、100 mgまたは300 mg
【0242】
被験体:
18歳以上の72人の健康な男性または女性ボランティア(1コホート当たり12人)を、被験体許容性に基づいて以下の計画コホートへ登録した。
コホート1:PM103 I.V. 0.1 mg、単回用量
コホート2:PM103 I.V. 1.0 mg、単回用量
コホート3:PM 103 I.V. 10 mg、単回用量
コホート4:PM 103 I.V. 100 mg、単回用量
コホート5:PM 103 I.V. 30 mg、単回用量
コホート6:PM103 I.V. 300 mg、単回用量
【0243】
包含基準:
18歳以上の健康な男性または女性であること。妊娠の可能性のある女性は、試験期間の間、医学的に許容される形態の避妊を使用していなければならず、スクリーニング時および研究施設へのチェックイン時に陰性の血清妊娠検査を有さなければならない。
18〜35 kg/m2(両方の値を含む)の範囲内のBMIを有すること。
研究員と有効にコミュニケーションすることができること。
スクリーニング訪問時または病院への入院時に行われる、病歴、身体検査または実験室評価によって決定されるような、顕著な疾患または異常な検査値を有さないこと。
速度、リズムまたは伝導の臨床的に顕著な異常を伴わない、標準12誘導心電図を有すること。
投薬前の過去6ヶ月間喫煙していないと定義される非喫煙者であること。
研究医薬を受容する前に、研究の性質および危険性を十分に通知され、書面によるインフォームド・コンセントを提出すること。
≧125,000/μLの標準血小板カウントを有すること。
【0244】
手順:
PLAVIX(登録商標)プレスクリーン:
スクリーニング基準を首尾よく満たす被験体を、クロピドグレル用量有効性スクリーンのためにスケジューリングした。被験体に、単回経口用量のPLAVIX(登録商標)(300 mg)を受容させ、安全性および許容性についてモニタリングし、血小板凝集評価を投薬前(スクリーニングベースライン)および投薬後2時間で行った。
【0245】
主要研究:
コホート1、2、3、4および6は、2つのフェーズを含んだ。相1は、2人の被験体からなった。フェーズ2に、フェーズ1の24時間以上後に投薬し(安全性の懸念が無いと想定)、これは10人の被験体からなった。研究手順は、両方のフェーズについて同一であった。コホート5は、12人の被験体からなり、全ての被験体に同日に投薬した。この研究についての手順は以下の通りであった:
【0246】
14日のミニマム・ポスト・スクリーニング・ウォッシュアウト期間(アスピリン、他の非ステロイド性抗炎症薬、または血小板機能に影響を与えることが公知の他の薬物の使用を含まない)の後、各適格被験体は、第-1日の午後に病院へ戻った。第1日に、被験体はPM103 I.V.を受容する。
【0247】
投薬の約1時間前に、IVポートを、投薬のために使用される腕(腕番号1)の肘前領域中へ挿入した。0.1 mg(コホート1)、1.0 mg(コホート2)、10 mg(コホート3)、および30 mg(コホート5)について、時間=0で、PM103 I.V.を含有する注射器をIVポートへ接続し、研究製剤をボーラスプッシュ注射(IVプッシュ)として投与した。100 mg用量(コホート4)について、時間=0で、40 mL中にPM103 I.V 100 mgを含有するガラス瓶をIVポートへ接続し、研究薬を4分間(10 mL/分)にわたって注入液として投与した。300 mg用量(コホート6)について、時間=0で、120 mL中にPM103 I.V 300 mgを含有するガラス瓶をIVポートへ接続し、研究薬を8分間(15 mL/分)にわたって注入液として投与した。研究薬投与が完了した直後、IVポートを3 mLのNSSで洗い流し、腕に入れたままにし、その後、投薬開始の1時間後にポートを除去した。24時間血液サンプルの回収後、第2日に、被験体を病院から退院させた。有害事象の評価のために、投薬のおよそ36時間後に(第2日に)、被験体は病院に再び戻った。
【0248】
コホート1(0.1 mg)、コホート2(1.0 mg)およびコホート3(10 mg)における投薬は、次の投薬レベルヘ進む前に、安全性および有効性評価を可能にするために、少なくとも7日間間隔を置いた。コホート4(100 mg)には、コホート3の少なくとも14日後に投薬した。コホート5(30 mg)には、コホート4の少なくとも7日後に投薬した。コホート6(300 mg)には、コホート5の少なくとも7日後に投薬した。
【0249】
薬物動態:
クロピドグレル、クロピドグレルカルボン酸、およびクロピドグレルチオール濃度の測定のための血漿サンプルを、腕番号2(投薬のために使用しなかった腕)から、ベースライン(投薬前)、投薬開始後1、5、10、20および30分、ならびに1、2、3、4、6、8、12、および24時間において採取した。
【0250】
薬物動態変数を、標準非コンパートメント法を使用して、クロピドグレル、クロピドグレルカルボン酸、およびクロピドグレルチオールについて計算した。WinNonlin(バージョン5.0.1)を使用して計算を行った。標準変数は、Cmax、Tmax、およびAUCTを含むと予想された。濃度対時間曲線の末端部において十分な点が利用可能であった場合はいつでも、変数λz、T 1/2、およびAUCを計算した。
【0251】
薬力学:
インピーダンス法(上記のDyszkiewicz-Korpanty et. al.を参照のこと)を使用するADP惹起血小板凝集阻害の測定のための血液サンプルを、腕番号2(投薬のために使用しなかった腕)から、ベースライン(チェックイン、第-1日)、投薬開始後15および30分、ならびに2、5、および24時間において採取した。
【0252】
統計分析:
全ての薬物動態結果を、好適な記述統計学を使用して、治療群によってまとめた。用量比例性を、用量レベルによる平均AUC、AUCT、およびCmaxのプロットを使用して評価した。
【0253】
インピーダンス法を使用してのADP惹起血小板凝集阻害結果を、治療群および時点によってまとめた。最大血小板阻害(%)および血小板阻害(%)曲線下面積を、各個体について計算し、治療群によってまとめた。
【0254】
安全性評価:
全ての安全性変数(有害事象、バイタルサイン測定値、臨床検査結果、心電図結果、および他の安全性変数を含む)を、被験体およびドメインによって列挙した。全ての有害事象(AE)、治療により発現した有害事象、および治療に関連する有害事象の発生を、MedDRA(商標)基本語、器官別大分類、および治療群によって表にした。全ての検査結果、バイタルサイン測定値、および他の安全性変数を、好適な記述統計学を使用してまとめた。治療により発現した検査異常の発生をまとめ、検査テストによって列挙した。仮説検定は行わなかった。
【0255】
本明細書において引用された全ての参考文献は、参照により組み入れられる。
【0256】
上記は、本発明の特定の態様の詳細な説明である。本発明の特定の態様を例示のために本明細書において説明したが、種々の改変が本発明の精神および範囲を逸脱することなく行われ得ることが理解される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲によらない限り限定されない。本明細書において開示および特許請求される態様の全ては、本開示を考慮して過度の実験なしに作製および実施され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロピドグレルおよびスルホアルキルエーテルシクロデキストリン(SAE-CD)を含む組成物であって、SAE-CD対クロピドグレルのモル比が6:1〜500:1の範囲内にある、組成物。
【請求項2】
酸性化剤、アルカリ化剤、水性担体、抗真菌剤、抗微生物剤、抗酸化剤、第2の治療剤、緩衝剤、増量剤、錯体形成促進剤、凍結保護剤、密度調整剤、電解質、フレーバー、香料、凍結乾燥助剤、防腐剤、可塑剤、溶解性増強剤、安定化剤、甘味料、表面張力調整剤、揮発性調整剤、粘度調整剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
非ステロイド性抗炎症薬、抗凝固剤、選択的第Xa因子阻害剤、直接トロンビン阻害剤、抗血小板剤、血小板凝集阻害剤、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤、抗鎌状化薬、ヘモレオロジック剤(hemorrheologic agent)、血栓溶解剤、血栓溶解酵素、および組織プラスミノーゲン活性化因子からなる群より選択される第2の治療剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
緩衝剤が、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基、またはそれらの塩である、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
緩衝剤が、酢酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、ホウ酸、またはそれらの塩からなる群より選択される、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
界面活性剤、共溶媒、ポリマー、オイル、糖類、水性担体、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーをさらに含む、請求項2記載の組成物。
【請求項7】
フレーバーをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
経口、経腸または非経口投与に適合されている、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
液体組成物であり、そのpHが5以上の範囲内にある、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
液体担体をさらに含み、クロピドグレルが0.15〜20 mg/mlの濃度で存在する、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
液体担体をさらに含み、SAE-CDが20〜600 mg/mlの濃度で存在する、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
少なくともSAE-CDおよびクロピドグレルを含む再構成可能な固体を水溶液で再構築することによって作製された液体組成物である、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
液体担体をさらに含み、被験体への投与の前に希釈を必要としない使用準備済組成物である、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
液体担体をさらに含み、クロピドグレルの有意な沈殿なしに水性希釈剤で希釈可能である、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
水性液体担体をさらに含み、0.15〜20 mg/mlの量のクロピドグレル、20〜600 mg/mlの量で存在するSAE-CDを含む使用準備済透明水性液体組成物である、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項16】
水性液体担体をさらに含み、0.15〜20 mg/mlの量のクロピドグレル遊離塩基、20〜600 mg/mlの量で存在するSAE-CDを含む濃縮水性液体組成物である、請求項1〜14のいずれか一項記載の組成物。
【請求項17】
水性液体担体をさらに含み、pHが3.5以上であり、SAE-CD対クロピドグレルのモル比が6:1〜40:1の範囲内にある、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項18】
水性液体担体をさらに含み、pHが8以上であり、SAE-CD対クロピドグレルのモル比が7:1〜40:1の範囲内にある、請求項1〜16のいずれか一項記載の組成物。
【請求項19】
水性液体担体をさらに含み、pHが5.5〜8であり、SAE-CD対クロピドグレルのモル比が6.5:1〜12.5:1である、請求項1〜16のいずれか一項記載の組成物。
【請求項20】
クロピドグレルが、pH 5.5で37% wt/v以下のSAE-CDを含む水溶液中において7.5 mg/ml以下の濃度で存在する、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項21】
クロピドグレルが、pH 5.5で2.5% wt/v以下のSAE-CDを含む水溶液中において0.5 mg/ml以下の濃度で存在する、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項22】
SAE-CD対クロピドグレルのモル比が6対1未満であり、液体組成物であり、そのpHが3.5以下である、SAE-CDおよびクロピドグレルを含む組成物。
【請求項23】
SAE-CD対クロピドグレルのモル比が4対1以下である、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
水性液体担体を含む、請求項22記載の組成物。
【請求項25】
SAE-CD対クロピドグレルのモル比が5:1以下である、請求項22〜24のいずれか一項記載の組成物。
【請求項26】
液体担体をさらに含み、クロピドグレルが0.15〜20 mg/mlの濃度で存在する、請求項22〜25のいずれか一項記載の組成物。
【請求項27】
液体担体をさらに含み、SAE-CDが20〜600 mg/mlの濃度で存在する、請求項22〜26のいずれか一項記載の組成物。
【請求項28】
経口、内用または経腸投与に適合されている、請求項22〜27のいずれか一項記載の組成物。
【請求項29】
液体担体をさらに含み、被験体への投与の前に希釈を必要としない使用準備済組成物である、請求項22〜28のいずれか一項記載の組成物。
【請求項30】
水性液体担体をさらに含み、0.15〜20 mg/mlの量のクロピドグレル、20〜600 mg/mlの量で存在するSAE-CDを含む使用準備済透明水性液体組成物である、請求項22〜28のいずれか一項記載の組成物。
【請求項31】
水性液体担体をさらに含み、0.15〜20 mg/mlの量のクロピドグレル遊離塩基、20〜600 mg/mlの量で存在するSAE-CDを含む濃縮水性液体組成物である、請求項22〜28のいずれか一項記載の組成物。
【請求項32】
クロピドグレルのアナログまたは誘導体である薬物、チエノピリジンアナログ、アスピリン、ワルファリン、未分画ヘパリン、低分子量ヘパリン、合成五糖類、ヒルジン、アルガトロバン、イブプロフェン、ナプロキセン、スリンダク、インドメタシン、メフェナメート、ドロキシカム、ジクロフェナク、スルフィンピラゾン、ピロキシカム、チクロピジン、チロフィバン、エプチフィバチド、アブシキシマブ、メラガトラン、ジスルファトヒルジン、組織プラスミノーゲン活性化因子、修飾された組織プラスミノーゲン活性化因子、アニストレプラーゼ、ウロキナーゼ、シロスタゾール、ジピリダモール、およびストレプトキナーゼからなる群より選択される第2の治療剤を含む、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項33】
請求項1〜32のいずれか一項記載の組成物を含む、薬学的組成物。
【請求項34】
SAE-CDを含む第1の薬学的組成物とクロピドグレルを含む第2の薬学的組成物とを含む、キット。
【請求項35】
第1または第2の薬学的組成物が、独立して、それぞれ存在する場合に液体担体を含む、請求項34記載のキット。
【請求項36】
液体担体を含む第1のチャンバ;ならびにSAE-CDおよびクロピドグレルを含む固体薬学的組成物を含む第2のチャンバを含む、薬学的キット。
【請求項37】
第1および第2のチャンバが、一体化、結合またはアセンブルされており、少なくとも2つのチャンバを備える容器を形成する、請求項36記載のキット。
【請求項38】
第1および第2のチャンバが分離しており、分離した容器を形成する、請求項36記載のキット。
【請求項39】
固体薬学的組成物が、SAE-CDおよびクロピドグレルの予め形成された錯体を含む再構成可能な固体薬学的組成物である、請求項36〜38のいずれか一項記載のキット。
【請求項40】
固体薬学的組成物が、SAE-CDおよびクロピドグレルの混合剤を含む、請求項36〜38のいずれか一項記載のキット。
【請求項41】
液体担体が水性液体担体である、請求項35〜40のいずれか一項記載のキット。
【請求項42】
水性液体担体が、水、デキストロース、食塩水、乳酸加リンゲル液、緩衝液、薬学的に許容される水性液体ビヒクル、またはそれらの組み合わせを含む、請求項41記載のキット。
【請求項43】
請求項34〜42のいずれか一項記載のキットから作製された、薬学的組成物。
【請求項44】
クロピドグレルを含む組成物中におけるクロピドグレルの安定性を改善する方法であって、該組成物中に存在するクロピドグレルの相当な部分と錯体形成するのに十分な量のSAE-CDを該組成物へ添加し、それによってクロピドグレルを安定化する工程を含む、方法。
【請求項45】
組成物が、クロピドグレルおよび水性液体担体を含む液体組成物である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
SAE-CDの存在下でのクロピドグレルのキラル反転速度が、等モル量のHP-CDの存在下での速度と比較して低減される、請求項44または45記載の方法。
【請求項47】
SAE-CDの存在下でのクロピドグレルの分解速度が、等モル量のHP-CDの存在下での速度と比較して低減される、請求項44〜46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
分解が、加水分解または光分解である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
血小板凝集に関連する病因を有する疾患、障害もしくは状態、または、クロピドグレルに治療応答性である疾患、障害もしくは状態の、治療、予防、発症の低減、または発症の危険性の低減の方法であって、その必要がある患者へ請求項33または43記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項50】
疾患、障害または状態がクロピドグレルに治療応答性である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
疾患、障害または状態が、心筋梗塞、脳卒中、確立された末梢動脈疾患(PAD)を有する患者における血管死、続発性虚血事象、急性冠症候群(不安定狭心症/非Q波MI)、一過性脳虚血発作、脳血管疾患、心臓血管疾患、狭心症、深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓症(PE)、および心不整脈からなる群より選択される、請求項50記載の方法。
【請求項52】
疾患、障害または状態が鎌状赤血球クリーゼである、請求項50記載の方法。
【請求項53】
投与後のクロピドグレルの治療発現までの時間を短縮する方法であって、その必要がある被験体へ、請求項33または43記載の薬学的組成物を非経口投与する工程を含み、それにより、該組成物によって提供されるクロピドグレルの治療発現までの時間が、SAE-CDを含まずかつ等用量のクロピドグレルを含有する参照組成物の経口投与によって提供されるクロピドグレルの治療発現までの時間よりも短くなる、方法。
【請求項54】
投与後のクロピドグレルの治療発現までの時間を短縮する方法であって、その必要がある被験体へ、請求項33または43記載の組成物を経口投与する工程を含み、それにより、該経口投与された組成物によって提供されるクロピドグレルの治療発現までの時間が、SAE-CDを含まずかつ等用量のクロピドグレルを含有する参照組成物の経口投与によって提供されるクロピドグレルの治療発現までの時間よりも短くなる、方法。
【請求項55】
治療発現までの時間が、組成物の投与後、組成物が投与された被験体において出血時間の延長を達成するのに要する時間である、請求項53または54記載の方法。
【請求項56】
参照組成物が固体経口投薬形態である、請求項53〜55のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
組成物によって提供されるクロピドグレルのピークまたはターゲット治療効果までの時間が、経口投与される参照組成物によって提供されるクロピドグレルのピークまたはターゲット治療効果それぞれまでの時間よりも短い、請求項52、53または54のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
被験体におけるピークまたはターゲット治療効果までの時間が、10〜1000パーセント短縮される、請求項57記載の方法。
【請求項59】
被験体における出血時間を増加させる方法であって、その必要がある被験体へ、SAE-CDと、900 mg、750 mg、675 mg、600 mg、450 mg、375 mg、300 mg、225 mg、200 mg、150 mg、100 mg、75 mg、50 mg、40 mg、30 mg、25 mg、20 mg、15 mg、12.5 mg、10 mg、7.5 mg、5 mg、2 mg、1 mg、0.75 mg、もしくは0.1 mg以下のクロピドグレル、または0.1〜900 mg、0.1〜100 mg、100〜300 mg、約300 mg、300〜600 mg、300〜900 mg、600〜900 mg、50〜600 mg、75〜600 mg、150〜600 mg、もしくは200〜450 mgの範囲内のクロピドグレルとを含む組成物を投与する工程を含み、それによって、被験体の出血時間が、該組成物の投与後、120分、100分、90分、75分、60分、50分、45分、40分、30分、15分、10分、7.5分、5分、2.5分以下の、もしくは1分以下の、または少なくとも10秒の、または10秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分の期間の間、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも700%、少なくとも900%、または少なくとも1000%増加する、方法。
【請求項60】
その必要がある被験体へ、数日間、1週間、数週間、1ヶ月間、数ヶ月間、3〜12ヶ月間、または1年を超える間、毎日投与する工程を含む、請求項59記載の方法。
【請求項61】
その必要がある被験体が、医学的手技を受ける予定である、請求項59記載の方法。
【請求項62】
被験体が医学的手技を受ける直前に、その必要がある被験体へ1用量または複数用量を急性投与する工程を含む、請求項61記載の方法。
【請求項63】
被験体が医学的手技を受ける直前に、その必要がある被験体へ単回用量を急性投与する工程を含む、請求項61記載の方法。
【請求項64】
組成物が、同一のターゲット出血時間を達成するための固体経口投薬形態の投与と比較して、ターゲット出血時間を達成するための、より低い用量のクロピドグレルの投与を可能にする、請求項59〜63のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
その必要がある被験体の血液中における血小板凝集の程度または可能性を低下させる方法であって、被験体へ、SAE-CDと、900 mg、750 mg、675 mg、600 mg、450 mg、375 mg、300 mg、225 mg、200 mg、150 mg、100 mg、75 mg、50 mg、40 mg、30 mg、25 mg、20 mg、15 mg、12.5 mg、10 mg、7.5 mg、5 mg、2 mg、1 mg、0.75 mg、もしくは0.1 mg以下のクロピドグレル、または0.1〜900 mg、0.1〜100 mg、100〜300 mg、約300 mg、300〜600 mg、300〜900 mg、600〜900 mg、50〜600 mg、75〜600 mg、150〜600 mg、もしくは200〜450 mgの範囲内のクロピドグレルとを含む組成物を投与する工程を含み、それによって、被験体の血小板凝集のパーセンテージが、該組成物の投与後、120分、100分、90分、75分、60分、50分、45分、40分、30分、15分、10分、7.5分、5分、2.5分以下の、もしくは1分以下の、または少なくとも10秒の、または10秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分の期間の間、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも96%、少なくとも98%、または少なくとも100%低下する、方法。
【請求項66】
クロピドグレルが毎日投与される、請求項65記載の方法。
【請求項67】
(R)-クロピドグレルへのキラル反転に対して(S)-クロピドグレルを安定化する方法であって、光学的に純粋な、またはエナンチオマーとして濃縮された形態の(S)-クロピドグレルを含む組成物または組成物中にスルホアルキルエーテルシクロデキストリンを含める工程を含む、方法。
【請求項68】
組成物または組成物が水性である、請求項67記載の方法。
【請求項69】
組成物または組成物が液体である、請求項68記載の方法。
【請求項70】
疾患、状態または障害を治療する方法であって、その必要がある被験体へ、請求項33または43記載の組成物中の治療有効量のクロピドグレル、および治療有効量の第2の治療剤を投与する工程を含む、方法。
【請求項71】
第2の治療剤が前記組成物中に含まれている、請求項70記載の方法。
【請求項72】
第2の治療剤が前記組成物または組成物から分離している、請求項70記載の方法。
【請求項73】
心臓血管の状態、疾患または障害を有する被験体のための治療プロトコルであって、120分未満もしくは約120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約45分未満、約30分未満、約20分未満、約15分未満、約10分未満、約5分未満の、または30秒〜120分、30秒〜100分、1分〜100分、1分〜90分、5分〜90分、10分〜75分、10分〜60分、15分〜60分、15分〜45分、もしくは15分〜30分の期間内に被験体においてターゲット治療効果を提供するのに十分な量のクロピドグレルおよびSAE-CDを含む薬学的組成物を、その必要がある被験体へ急性投与する工程を含む、プロトコル。
【請求項74】
a.被験体がインターベンションまたは非インターベンション医学的処置を必要とするかどうかを測定する工程;および
b.被験体が低侵襲性インターベンション医学的処置を必要とする場合、120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約45分未満、約30分未満、約20分未満、約15分未満、約10分未満、約5分未満の、または30秒〜120分、30秒〜100分、1分〜100分、1分〜90分、5分〜90分、10分〜75分、10分〜60分、15分〜60分、15分〜45分、もしくは15分〜30分の期間内に患者においてターゲット治療効果を提供するのに十分な量のクロピドグレルおよびSAE-CDを含む薬学的組成物を被験体へ投与し、低侵襲性インターベンション手技を行う工程;または
c.被験体が非インターベンション医学的処置を必要とする場合、投与後120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約45分未満、約30分未満、約20分未満、約15分未満、約10分未満、約5分未満の、または30秒〜120分、30秒〜100分、1分〜100分、1分〜90分、5分〜90分、10分〜75分、10分〜60分、15分〜60分、15分〜45分、もしくは15分〜30分の期間内に患者においてターゲット治療効果を提供するのに十分な量のクロピドグレルおよびSAE-CDを含む薬学的組成物を被験体へ投与し、低侵襲性インターベンション手技を行う工程;または
d.被験体が侵襲性インターベンション医学的処置を必要とする場合、クロピドグレルを被験体へ投与しないこと
を含む、請求項73記載のプロトコル。
【請求項75】
低侵襲性インターベンション手技がPCIであり、かつ/または、侵襲性インターベンション手技がCABGである、請求項74記載のプロトコル。
【請求項76】
a.被験体がACSを示す、またはACSのさらに差し迫った危険性を有するかどうかを測定する工程;
b.患者に対して1つまたは複数の診断的冠状動脈テストを行う工程;
c.PCIまたはCABGを適応するかどうかを測定する工程;および
d.PCIを適応する場合、クロピドグレルを含む液体組成物を非経口投与するか、またはクロピドグレルおよびSAE-CDを含む組成物を経口投与し、投与後120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約45分未満、約30分未満、約20分未満、約15分未満、約10分未満、約5分未満の、または30秒〜120分、30秒〜100分、1分〜100分、1分〜90分、5分〜90分、10分〜75分、10分〜60分、15分〜60分、15分〜45分、もしくは15分〜30分の期間内にPCIを行う工程;または
e.CABGを適応する場合、クロピドグレルの事前投与なしにCABGを行う工程
を含む、請求項74または75記載のプロトコル。
【請求項77】
a.被験体を入室させることをカテーテル検査室に警告する工程;
b.カテーテル検査室へ被験体を移送する工程;
c.担当医によって適応される1つまたは複数の他の工程;
d.提示前にクロピドグレル療法を被験体に受けさせないこと;および/または
e.被験体を長期クロピドグレル療法において維持する工程
のうち1つまたは複数をさらに含む、請求項76記載のプロトコル。
【請求項78】
診断的冠状動脈テストが、冠状動脈血管造影、EKG、心電図記録法、心エコー検査法、またはCTスキャン血管造影のうち1つまたは複数である、請求項73〜77のいずれか一項記載のプロトコル。
【請求項79】
被験体においてターゲット治療効果を達成するために、被験体における用量を漸増させる方法であって、
a.10 mg〜600 mg、50 mg〜600 mg、50 mg〜300 mg、約50 mg、約75 mg、約100 mg、約150 mg、約225 mg、約300 mg、約375 mg、約450 mg、約525 mg、または約600 mgであり得る量のクロピドグレルを被験体へ非経口投与する工程;
b.該非経口投与後120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約45分未満、約30分未満、約20分未満、約15分未満、約10分未満、約5分未満の、または30秒〜120分、30秒〜100分、1分〜100分、1分〜90分、5分〜90分、10分〜75分、10分〜60分、15分〜60分、15分〜45分、もしくは15分〜30分の期間内に、被験体において達成された第1の対応する治療効果を測定する工程;および
c.達成された治療効果の程度がターゲット治療効果未満である場合、第2の量のクロピドグレルを被験体へ非経口投与する工程であって、第2の量が、第1の量の約0.5倍、約1倍、約1.25倍、約1.5倍、もしくは約2倍であるか、または第2の量が、0.1 mg〜1200 mg、1 mg〜1000 mg、5 mg〜900 mg、10 mg〜900 mg、25 mg〜750 mg、50 mg〜750 mg、50 mg〜600 mg、0.1 mg〜100 mg、1 mg〜75 mg、100 mg〜300 mg、300 mg〜600 mg、もしくは600 mg〜1200 mgである、工程;
d.第2の量の投与後に被験体において達成された第2の対応する治療効果を測定する工程;および
e.第2の対応する治療効果がターゲット治療効果未満である場合、ターゲット治療効果が達成されるまで、「第2の量のクロピドグレルを被験体へ非経口投与する」工程および「達成された第2の対応する治療効果を測定する」工程を繰り返すこと
を含む、方法。
【請求項80】
被験体においてターゲット治療効果を達成するために、被験体における用量を漸増させる方法であって、
a.10 mg〜600 mg、50 mg〜600 mg、50 mg〜300 mg、約50 mg、約75 mg、約100 mg、約150 mg、約225 mg、約300 mg、約375 mg、約450 mg、約525 mg、または約600 mgであり得る量のクロピドグレルを被験体へ経口的に投与する工程;
b.該経口的投与後120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約45分未満、約30分未満、約20分未満、約15分未満、約10分未満、約5分未満の、または30秒〜120分、30秒〜100分、1分〜100分、1分〜90分、5分〜90分、10分〜75分、10分〜60分、15分〜60分、15分〜45分、もしくは15分〜30分の期間内に、被験体において達成された第1の対応する治療効果を測定する工程;および
c.達成された治療効果の程度がターゲット治療効果未満である場合、第2の量のクロピドグレルを被験体へ経口的に投与する工程であって、第2の量が、第1の量の約0.5倍、約1倍、約1.25倍、約1.5倍、もしくは約2倍であるか、または第2の量が、0.1 mg〜1200 mg、1 mg〜1000 mg、5 mg〜900 mg、10 mg〜900 mg、25 mg〜750 mg、50 mg〜750 mg、50 mg〜600 mg、0.1 mg〜100 mg、1 mg〜75 mg、100 mg〜300 mg、300 mg〜600 mg、もしくは600 mg〜1200 mgである、工程;
d.第2の量の経口的投与後に被験体において達成された第2の対応する治療効果を測定する工程;および
e.第2の対応する治療効果がターゲット治療効果未満である場合、ターゲット治療効果が達成されるまで、「第2の量のクロピドグレルを被験体へ経口的に投与する」工程および「達成された第2の対応する治療効果を測定する」工程を繰り返すこと
を含む、方法。
【請求項81】
測定工程が、
a.被験体の血漿のサンプルを採取すること;および
b.凝集測定法によって被験体の血漿中の血小板凝集の程度を測定すること
を含む、請求項79または80記載の方法。
【請求項82】
「血漿のサンプルを採取する」工程が、
a.患者の血液のサンプルを採取すること;および
b.血液から血漿を分離し、血漿サンプルを形成すること
を含む、請求項81記載の方法。
【請求項83】
クロピドグレルが、SAE-CDおよびクロピドグレルを含む組成物中に存在する、請求項79〜82のいずれか一項記載の方法。
【請求項84】
リスポンダー被験体においてターゲット治療効果を達成するためにクロピドグレルの必要があるリスポンダー被験体において要する治療用量を減少させる方法であって、
a.SAE-CDおよびクロピドグレルを含む薬学的組成物中の第1の治療有効量のクロピドグレルを被験体へ非経口または経口的に投与する工程であって、第1の治療有効量が、第2の治療有効量よりも少なくとも1.25倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも7倍または少なくとも10倍少なく、第2の治療有効量が、クロピドグレルを含みかつSAE-CDを含まない参照錠剤組成物中においてクロピドグレルが被験体へ経口的に投与される場合に、実質的に同一のターゲット治療効果を提供するために要するクロピドグレルの量である、工程
を含む、方法。
【請求項85】
第1の治療有効量が、第2の治療有効量よりも少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.25倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍少なく、少なくとも15倍、少なくとも20倍、約1.1〜約20倍、約1.2倍〜約15倍、約1.25倍〜約10倍、約2倍〜約10倍、または約3倍〜約8倍少なく、第2の治療有効量が、SAE-CDを含まない参照固体薬学的組成物中においてクロピドグレルが被験体へ経口的に投与される場合に、実質的に同一の治療効果を提供するために必要とされるクロピドグレルの量である、請求項84記載の方法。
【請求項86】
第1の治療有効量が、900 mg、750 mg、675 mg、600 mg、450 mg、375 mg、300 mg、225 mg、200 mg、150 mg、100 mg、75 mg、50 mg、40 mg、30 mg、25 mg、20 mg、15 mg、12.5 mg、10 mg、7.5 mg、5 mg、2 mg、1 mg、0.75 mg、もしくは0.1 mg以下のクロピドグレル、または0.1〜900 mg、0.1〜100 mg、50 mg〜600 mg、100〜300 mg、約300 mg、300〜600 mg、300〜900 mg、600〜900 mg、50〜600 mg、75〜600 mg、150〜600 mg、もしくは200〜450 mgの範囲内であり、第2の治療有効量が、固体経口錠剤として300 mg〜900 mgである、請求項85記載の方法。
【請求項87】
クロピドグレルの経口投与に関して非リスポンダーである被験体をリスポンダーへ変換する方法であって、その必要がある被験体へクロピドグレルを非経口投与し、それによって該被験体においてクロピドグレルに対する治療応答を提供する工程を含む、方法。
【請求項88】
クロピドグレル療法に対する応答性についてリスポンダーまたは非リスポンダー被験体を同定する方法であって、
a.予想される治療有効量のクロピドグレルを含む組成物を被験体へ投与する工程、および
b.被験体への該組成物の投与後、10秒〜120分未満、30秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分、1分〜90分、5分〜60分、10分〜60分、5分〜45分、10分〜45分、15分〜30分、5分〜30分、5分〜15分、もしくは10分〜20分の期間内に、または約10秒未満、約1分未満、約2.5分未満、約5分未満、約7.5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、約120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約50分未満、約45分未満、もしくは約40分未満以内に、クロピドグレルに対する被験体の応答性を測定する工程
を含む、方法。
【請求項89】
組成物が経口的または非経口的に投与される、請求項88記載の方法。
【請求項90】
クロピドグレルの予想される治療有効量が、約50〜600 mg、0.1〜900 mg、1〜900 mg、10〜900 mg、0.1〜100 mg、25〜750 mg、50〜600 mg、75〜600 mg、75〜500 mg、100〜300 mg、100〜400 mg、150〜600 mg、もしくは200〜450 mg、200〜400 mg、300〜600 mg、300〜900 mg、600〜900 mg、約0.1 mg、約0.75 mg、約1 mg、約2 mg、約5 mg、約7.5 mg、約10 mg、約12.5 mg、約15 mg、約20 mg、約25 mg、約30 mg、約40 mg、約50 mg、約75 mg、約100 mg、約150 mg、約200 mg、約225 mg、約300 mg、約375 mg、約450 mg、約525 mg、約600 mg、約675 mg、約750 mg、もしくは約900 mgである、請求項89記載の方法。
【請求項91】
測定工程が、
a.被験体の血液のサンプルを採取すること;および
b.血小板凝集測定法によって被験体の血漿中の血小板凝集の程度を測定すること
を含む、請求項89記載の方法。
【請求項92】
組成物が、クロピドグレルを可溶化するおよび/または安定化するのに十分な量のSAE-CDをさらに含む、請求項88〜91のいずれか一項記載の方法。
【請求項93】
疾患、状態または障害を治療する方法であって、その必要がある被験体へ、請求項33または43記載の薬学的組成物中の治療有効量のクロピドグレル、および治療有効量の第2の治療剤を投与する工程を含む、方法。
【請求項94】
第2の治療剤がクロピドグレルと同一の薬学的組成物中に含まれる、請求項93記載の方法。
【請求項95】
第2の治療剤が別の薬学的組成物中に含まれる、請求項93記載の方法。
【請求項96】
疾患が鎌状赤血球クリーゼである、請求項93〜95のいずれか一項記載の方法。
【請求項97】
第2の治療剤が、1)疼痛、熱−熱性疾患、急性胸部症候群、急性脾性ゼクエストレーション(acute splenic sequestration)、骨髄無形成発症、持続勃起症、急性脳卒中または神経学的事象を経験する鎌状赤血球患者のためのマネージメントプロトコルに含まれる薬物;2)葉酸補給物;3)ヒドロキシ尿素;4)NSAID;5)抗生物質;6)鉄キレート剤;7)気管支拡張薬;8)利尿薬;9)抗不安薬;10)α-アゴニスト;11)ヒドララジン;12)ペントキシフィリン;13)ジルチアゼム;14)ゴナトロピン放出ホルモンアナログ;15)ジエチルスチルベストロール;および16)それらの組み合わせからなる群より選択される、請求項96記載の方法。
【請求項98】
第2の治療剤が、アセトアミノフェン、アスコルビン酸、アスピリン、アジスロマイシン、ブメタニド、セフォタキシム、セフトリアキソン、セファロスポリン、クリンダマイシン、コデイン、デフェラシロックス、デフェロキシミン、ジクロフェナク、ジエチルスチルベストロール、ジルチアゼム、エピネフリン、エリスロマイシン、エチレフリン、エトドラク、フェノプロフェン、フェンタニル、フルタミド、葉酸、フロセミド、ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ、ヒドララジン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシ尿素、パモ酸ヒドロキシジン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロラゼパム、メロキシカム、メペリジン、メタドン、ミダゾラム、モルヒネ、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、オキシコドン、ペニシリン誘導体、ペニシリン、ペントキシフィリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、プロポキシフェン、プソイドエフェドリン、レミフェンタニル、スリンダク、テルブタリン、トルメチン、トルセミド、およびバンコマイシンからなる群より選択される、請求項97記載の方法。
【請求項99】
クロピドグレルが投与されたリスポンダー被験体におけるピークまたはターゲット治療効果までの時間を短縮する方法であって、SAE-CDと、ピークまたはターゲット治療効果それぞれを達成するのに十分な治療有効量のクロピドグレルとを含む第1の組成物を、その必要がある被験体へ投与する工程を含み、それにより、第1の組成物の投与によって達成されるピーク治療効果までの時間が、SAE-CDを含まずかつ実質的に同一の治療有効量のクロピドグレルを含む、その他の点では同様の参照組成物の同様の投与によって達成されるピークまたはターゲット治療効果それぞれまでの時間よりも短くなる、方法。
【請求項100】
ピークまたはターゲット治療効果までの時間が、クロピドグレルの投与後、10秒〜120分、30秒〜120分、30秒〜100分、30秒〜90分、30秒〜60分、1分〜60分、1分〜45分、1分〜30分、1分〜20分、もしくは1分〜15分、1分〜90分、5分〜60分、10分〜60分、5分〜45分、10分〜45分、15分〜30分、5分〜30分、5分〜15分、もしくは10分〜20分、または約10秒未満、約1分未満、約2.5分未満、約5分未満、約7.5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、約120分未満、約100分未満、約90分未満、約75分未満、約60分未満、約50分未満、約45分未満、もしくは約40分未満以内である、請求項99記載の方法。
【請求項101】
参照組成物が錠剤であり、第1の組成物が固体、懸濁液または液体である、請求項99または100記載の方法。
【請求項102】
クロピドグレルが薬学的遊離塩基として提供される、前記請求項のいずれか一項記載の発明。
【請求項103】
クロピドグレルが薬学的に許容される塩として提供される、請求項1〜101のいずれか一項記載の発明。
【請求項104】
クロピドグレルが、光学的に純粋な、または光学的に濃縮された形態で提供される、前記請求項のいずれか一項記載の発明。
【請求項105】
クロピドグレルがラセミ体として提供される、請求項1〜103のいずれか一項記載の発明。
【請求項106】
SAE-CDが、式1の化合物または化合物の混合物である、前記請求項のいずれか一項記載の発明:

式中、
nは、4、5、または6であり;
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9は、各々、独立して、-O-または-O-(C2-C6アルキレン)-SO3-基であり、ここで、R1〜R9基の少なくとも1つは、独立して、-O-(C2-C6アルキレン)-SO3-基であり;
S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、およびS9は、各々、独立して、薬学的に許容される陽イオンである。
【請求項107】
式1の化合物が約4〜7の置換度を有する、請求項106記載の発明。
【請求項108】
SAE-CDが、式SAEx-R-CD(式2)の化合物または化合物の混合物であり、式中、
a.SAEは、スルホメチルエーテル、スルホエチルエーテル、スルホプロピルエーテル、スルホブチルエーテル、スルホペンチルエーテル、およびスルホヘキシルエーテルからなる群より選択され;
b.Rがα、βまたはγである場合、それぞれ、xは、約1〜18、1〜21または1〜24の範囲内にある、
請求項1〜105のいずれか一項記載の発明。
【請求項109】
SAE-CDがSBEx-β-CDであり、xが6.0〜7.1または6.5〜7である、請求項108記載の発明。
【請求項110】
クロピドグレルが治療有効量で存在する、前記請求項のいずれか一項記載の発明。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−525083(P2010−525083A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506549(P2010−506549)
【出願日】平成20年4月26日(2008.4.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/061697
【国際公開番号】WO2008/134600
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(501278788)サイデックス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】