説明

クロピドグレルの立体選択的な製造方法

本発明は、式(II)
【化1】



(II)
(式中、Xはハロゲン原子であり、Y及びZは、それぞれ独立して、脱離基を表す)の化合物を光学活性アミノアルコールと反応させてジアステレオマーの第1混合物を生成させることを特徴とする、一般式(Ia)
【化2】


(Ia)
(式中、Xは上記した通りである)の化合物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的に純粋な(2−ハロフェニル)(6,7−ジヒドロ−4H−チエノ[3,2−c]ピリジン−5−イル)酢酸メチルエステル類、特にクロピドグレル(Clopidogrel)の製造方法、及び該製造方法で使用する中間体化合物に関する。驚くべきことに、本発明の製造方法は熟練した技術者が光学的に純粋な最終化合物をより容易に、且つより好収率で得ることを可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
(2−ハロフェニル)(6,7−ジヒドロ−4H−チエノ[3,2−c]ピリジン−5−イル)酢酸メチルエステル類、及びそれらの塩は、よく知られた血小板凝集阻害剤である。特に、クロピドグレルは、例えばEP−A−99802に開示されており、式
【化1】

で表され、非常に有効な医薬物質である。クロピドグレルは、硫酸水素塩として市販されている右旋性の(+)−(S)−(2−クロロフェニル)−(6,7−ジヒドロ−4H−チエノ[3,2−c]ピリジン−5−イル)酢酸メチルエステルである。
【0003】
多数のクロピドグレルの製造方法が、公知である。例えば、EP−A−99802及びEP−A−420706に開示されている初期の製造方法では、
化合物
【化2】

又は
化合物
【化3】

を、チエノピリジン
【化4】

と反応させている。
【0004】
しかしながら、これらの製法は、その後の開発では不都合と見なされ、開示された製造条件下では収率も比較的、低いものであった。
【0005】
このため、クロピドグレル合成の改良を主題とする多数の文献が報告されている。例えば、WO95/51681には、開放鎖(open−chained)中間体を経由する製法が開示されている。
【化5】

【0006】
目的とする分子は、右旋性分子であるから、クロピドグレル製造の全ての製法において、ある製造段階では、エナンチオマーの分離が必要であり、それ以降の全ての製造工程は、純粋なエナンチオマーを用いて実施しなければならない。クロピドグレルを合成する場合、エナンチオマーの分離は、通常、製法の比較的、後の段階で実施され、しばしば最終工程の後に初めて実施されるので、種々の困難に満ちている。特に、エナンチオマーの分離が、ラセミ混合物を純粋なエナンチオマー化合物と反応させ、次いで生成したジアステレオマーの1方を析出させる場合には、選択的な析出が起こらないことが多い。希望するエナンチオマーが、低収率、あるいは劣った光学純度のもののみが得られるので、更に追加の精製工程が必要である。従って、エナンチオマーをWO98/51681の実施例で分離すると、光学的に挟雑した物質がしばしば得られ、希望する光学純度を達成するためには更に処置を必要とする。
【0007】
ピリジン環が既に閉環している化合物について、ラセミ体の分離をする場合には、それが特に困難である。従って、WO98/51681の製法によるエナンチオマーの分離は、オープンチェーン型中間体、例えば、以下の中間体
【化6】

で実施される。より最近の多くの製法では、ピリジン環の閉環を、エナンチオマーの分離後の最終段階まで延期することを提案している。
【0008】
WO03/035652は、 式
【化7】

(式中、A及びAは、独立して水素原子又はC−C−アルキル基を形成してもよく、あるいは環を形成してもよい。)の中間体化合物の製造を経由して進行するクロピドグレルの製造方法を開示している。クロピドグレルは、最初はラセミ体として製造され、次いで個々のエナンチオマーに分割される。例えば、メタノール及び硫酸と反応させることにより、クロピドグレルは光学的に活性な酸アミドから得られる。
【0009】
本発明は、式
【化8】

(Ia)
(式中、Xは、ハロゲン原子である。)の化合物の新規な製造方法を提供することを目的とし、該製造方法は、経済的であり、数工程で実施することができる。
【0010】
本発明の目的は、式(II)
【化9】

(II)
(式中、Xはハロゲン原子であり、Y及びZは独立して脱離基を表す。)の化合物を光学活性アミノアルコールと反応させてジアステレオマーの第1混合物を生成させることを特徴とする、一般式(Ia)
【化10】

(Ia)
(式中、Xは上記で定義した通りである)の化合物の製造方法により達成される。
【0011】
本発明によれば、式(II)
【化11】

(II)
の化合物と光学活性アミノアルコールとの反応において、ジアステレオマーの第1混合物が形成され、その際2つのジアステレオマーの1つが富化される;特にジアステレオマー混合物が形成されて、第2ジアステレオマーに対する第1ジアステレオマーの比率が2:1又はそれより大きいことが、驚くべきことに見出された。好ましくは、他方のジアステレオマーに対する1方のジアステレオマーの比率が3:1又はそれより大きく、特に約4:1又はそれより大きい。本発明によれば、第1ジアステレオマー混合物からでさえ所望のジアステレオマーを分離することは可能であり、その後のクロピドグレル合成をこの1方のジアステレオマーのみを用いて行うことができる。しかしながら、本発明によれば、そのような第1ジアステレオマー混合物を処理することが好ましい。
【0012】
驚くべきことに、このジアステレオマーの第1混合物と、式(V)
【化12】

(V)
の化合物又は式(VII)
【化13】

(VII)
の化合物との反応において、ジアステレオマーの第2混合物が生成され、その際、2つのジアステレオマーの1方は、ジアステレオマーの第1混合物におけるよりもすっと多く富化されている、ことも又見出された。ジアステレオマーの第2混合物中では、第2ジアステレオマーに対する1方のジアステレオマーの比率は、3:1又はそれより大きく、特に4:1又はそれより大きく、最も好ましくは9:1又はそれより大きい。特に好ましい実施態様では、ジアステレオマーの第2混合物は、所望のジアステレオマーを95%以上及び所望でないジアステレオマーをわずか5%以下の比率で含有し、より好ましくは、所望のジアステレオマーを98%以上及び所望でないジアステレオマーをわずか2%以下の比率で含有し、そして所望でないジアステレオマーに対する所望のジアステレオマーの比率が、約99.5:0.5もしくはそれより上であってもよい。
【0013】
第2ジアステレオマー混合物における、所望でないジアステレオマーに対する所望のジアステレオマーの比率は、第1ジアステレオマー混合物中における比率よりも大きいのが好ましい。
【0014】
光学活性アミノアルコールの光学活性を適宜、選択することにより、1方の、又は他方のジアステレオマーのいずれかを過剰に得ることができる。
【0015】
式(II)
【化14】

(II)
の化合物を、光学活性アミノアルコールと反応させることにより、その結果、所望のジアステレオマーを過剰に含むジアステレオマー混合物を、既出の製造工程の極く初期の段階で得ることができる。次に、この混合物を更に反応させて、式(Ia)
【化15】

(Ia)
の化合物を形成させる。
【0016】
この反応の終了時点では、所望の立体的配置を有するクロピドグレル、あるいは所望のエナンチオマー(クロピドグレル)が既に大過剰に存在しているエナンチオマー混合物のいずれかが得られる。ラセミ体の分離は必要ではなく、あるいはラセミ体の分離はより容易に、且つより好収率で実施することができる。
【0017】
本発明によれば、Xは、ハロゲン原子であり、特に弗素、塩素、臭素又は沃素原子であり、特に好ましいのは塩素原子である。
【0018】
本発明によれば、Y及びZは、当該分野でよく知られた通常の脱離基であり、例えば、Peter Sykes,“Reaktionsmechanismen der organischen Chemie”(有機化学における反応機構),第9版,Weinheim 1988年に記載されている。好ましい脱離基は、ハロゲン原子、特に沃素、塩素、臭素又は弗素原子、トシレート基、トリフレート基又はブロシレート基である。
【0019】
光学活性アミノアルコールは、特に限定はされない。光学活性アミノアルコールが好ましく、そこでは少なくとも1つの光学活性中心が、式IIの化合物と結合している水酸基に近接して位置しており、好ましくは1個以下、2個以下又は3個以下の結合手により該水酸基から隔たっている。
【0020】
式(III)
【化16】

(III)
の光学活性アミノアルコールが、使用するのに特に好ましい。
【0021】
上記式中(III)、Aは、1乃至30の炭素原子を有する炭化水素基を表し、該炭化水素基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びハロゲン原子から選択される5個までのヘテロ原子を含有していてもよく、また水酸基、オキソ基、シアノ基及びニトロ基から選択される最大5個までの置換基で置換されていてもよく、そして1以上の光学活性ユニットを有しており、及び
及びRは、独立して、水素原子又は炭素原子1乃至20の炭化水素基を表し、該各炭化水素基は、それぞれ、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びハロゲン原子から選択される最大4個までのヘテロ原子を含有していてもよく、そして水酸基、オキソ基、シアノ基及びニトロ基から選択される最大5個までの置換基で置換されていてもよく、あるいは
及びRの一方又は両方は、Aで表される基の炭素原子又はヘテロ原子と共に5員乃至10員の飽和又は不飽和の環を形成し、該窒素原子に加えて、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される更に1乃至3個のヘテロ原子を環原子として含有してもよく、またC−C−アルキル基、C−C−アルケニル基、C−C−アルコキシ基、C−C10−アリール基(好ましくはC−C10−アリール基)、C−C10−ヘテロアリール基、C−C−シクロアルキル基、C−C−ヘテロシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、シアノ基及びニトロ基から選択される最大5個までの置換基で置換されていてもよい。
【0022】
本発明に従って使用することができる光学活性アミノアルコールは、式(II)の化合物との反応の間の競合反応を回避するために、1個だけの水酸基を有しているのが好ましい。
【0023】
本発明によれば、好ましくは、R及びRは、独立してC−C−アルキル基、C−C10−アリール基(好ましくは、C−C10−アリール基)、C−C10−ヘテロアリール基、C−C−シクロアルキル基又はC−C−ヘテロシクロアルキル基を表し、あるいはR及びRが結合している窒素原子と共に、炭素原子2乃至8個の飽和または不飽和の環を形成し、該環はC−C−アルキル基又はハロゲン原子で任意に置換されていてもよく、そして該窒素原子に加えて、硫黄原子、窒素原子及び酸素原子から選択される1個又は2個のヘテロ原子を更に含有していてもよい。
【0024】
本明細書において、分子の基に付いている星印*は、当該分子の基が光学的に活性であることを意味する。
【0025】
本出願においては、以下の基が好ましい。
【0026】
好ましいC−C−アルキル基は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基である。
【0027】
好ましいアリール基は、フェニル基又はナフチル基であり、特にフェニル基が好ましく、これらは、1乃至3個のC−C−アルキル基で置換されていてもよい。
【0028】
好ましいC−C10−ヘテロアリール基は、1個以上の、好ましくは1個又は2個のヘテロ原子、特に窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子を有する。その例示としては、イミダゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、1,2,3−トリアゾリル基、ピリジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、及び1H−ピラゾニル基が挙げられる。
【0029】
好ましいC−C−シクロアルキル基は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基である。
【0030】
好ましいC−C−ヘテロシクロアルキル基は、1個又はそれ以上のヘテロ原子を有する炭素原子2乃至8個のシクロアルキル基である。好ましいヘテロシクロアルキル基は、1個以上の、好ましくは1個又は2個のヘテロ原子を、特に窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子を有する。そのような例示としては、オキシラニル基、アジリジニル基、アゼチジニル基、テトラヒドロフラニル基、ピロリル基、及びピラニル基が挙げられる。
【0031】
好ましいC−C−アルケニル基は、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、及びペンテニル基である。
【0032】
好ましいC−C−アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、及びプロポキシ基であり、特にメトキシ基である。
【0033】
アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、及びヘテロシクロアルキル基は、置換されていなくても、あるいは置換されていてもよい。これらの基が置換されている場合は、C−C−アルキル基、C−C−アルコキシ基及びハロゲン原子から選択される1乃至3個の置換基で好ましく置換される。
【0034】
シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、飽和又は不飽和であってもよい。該不飽和基は、好ましくは、1個又は2個の二重結合を有する。
【0035】
式(II)
【化17】

(II)
の化合物を、式(III)
【化18】

(III)
の好ましい光学活性アミノアルコールと反応させることにより、ジアステレオマー(IVa)
【化19】

(IVa)
とジアステレオマー(IVb)
【化20】

(IVb)
との混合物を生成する。式中、X、Z、A、R及びRは、上記で定義したとおりである。これを、第1ジアステレオマー混合物と称する。
【0036】
この第1ジアステレオマー混合物は、好ましくは、過剰の式(IVa)
【化21】

(IVa)
のジアステレオマーを含み、その過剰比率は一般に2:1又はそれより大きい。
【0037】
第1ジアステレオマー混合物は、好ましくは、式(V)
【化22】

(V)
の化合物、又は式(VII)
【化23】

(VII)
の化合物と反応させて、式(VIa)
【化24】

(VIa)
のジアステレオマーと、式(VIb)
【化25】

(VIb)
のジアステレオマーとの混合物を生成するか、あるいは、式(VIIIa)
【化26】

(VIIIa)
のジアステレオマーと、式(VIIIb)
【化27】

(VIIIb)
のジアステレオマーとの混合物をそれぞれ生成する。
【0038】
これらの各ジアステレオマー混合物は、第2ジアステレオマー混合物と称する。式(VIb)のジアステレオマーに対する式(VIa)のジアステレオマーの比率、あるいは式(VIIIb)のジアステレオマーに対する式(VIIIa)のジアステレオマーの比率は、好ましくは約3又はそれより大きく、より好ましくは約4又はそれより大きく、特に好ましくは、9まであるいはもっと大きい。特に好ましい実施態様では、ジアステレオマーの第2混合物は、所望のジアステレオマーを95%以上の、そして所望でないジアステレオマーをわずかに5%未満の比率で含有している。より好ましくは、所望のジアステレオマーは98%以上の比率で存在し、所望でないジアステレオマーはわずかに2%未満の比率で存在し、そして所望でないジアステレオマーに対する所望のジアステレオマーの比率は、約99.5:0.5又はそれより大きい値を得ることができる。
【0039】
上記式中、X、Z、A、R及びRで表される基は、上記で定義したとおりである。
【0040】
好ましい実施態様において、式HO−Aの基は、式
【化28】

(式中、R〜Rの各基は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1乃至20の炭化水素基であり、各基は窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びハロゲン原子から選択される最大4個までのヘテロ原子を有することができ、また水酸基、オキソ基、シアノ基及びニトロ基から選択される最大5個までの置換基を有していてもよい、あるいは、
〜Rの1つ又は2つの基は、RあるいはRと共に5員乃至10員の飽和又は不飽和の環を形成してもよく、該環は、該窒素原子に加えて、更に窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1乃至3個のヘテロ原子を任意に環構成員として含んでもよく、また該環は、C−C−アルキル基、C−C−アルケニル基、C−C−アルコキシ基、C−C10−アリール基(好ましくは、C−C10−アリール基)、C−C−シクロアルキル基、C−C−ヘテロシクロアルキル基、C−C10−ヘテロアリール基、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、シアノ基及びニトロ基から選択される最大5個までの置換基で置換されていてもよく、そしてnは1乃至3の整数である。)で表される基である。
【0041】
上記式中、R及びRは、独立して水素原子及びC−C−アルキル基から選択され、好ましいC−C−アルキル基は上記したものと同一である。最も好ましいのは、R及びRの1方だけが、水素原子ではなく、そして最も好ましい実施態様においては、R及びRの全てが水素原子である場合である。nは好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。Rは、好ましくは、C−C−アルキル基、C−C−アルコキシ基、C−C10−アリール基(好ましくは、C−C10−アリール基)、C−C10−ヘテロアリール基、C−C−ヘテロシクロアルキル基又はC−C−シクロアルキル基であり、これらのアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロシクロアルキル基及びシクロアルキル基は、上記で定義したのと同じものが好ましい。最も好ましくは、Rは、C−C−アルキル基である。
【0042】
また、本発明にとって好ましいのは、RがRと一緒になって環を形成し、該環が5乃至10の環原子を含むことである。この環はRが結合している窒素原子に加えて、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選択される更に1乃至3個のヘテロ原子を含有し、また飽和あるいはモノ−またはジ−不飽和であってもよい。該環は、C−C−アルキル基、C−C−アルコキシ基、C−C10−アリール基(好ましくは、C−C10−アリール基)、C−C−シクロアルキル基、C−C−ヘテロシクロアルキル基、C−C10−ヘテロアリール基及びハロゲン原子から選択される1乃至3個の置換基を有していてもよい。
【0043】
特に好ましいのは、Rが水素原子又はC−C−アルキル基であり、最も好ましいのは水素原子である。
【0044】
とRは、好ましくは異なっており、そのため光学活性中心が水酸基を有する炭素原子上に位置している。しかしながら、RとRは同一であってもよく、例えば両方が水素原子であり、そして、光学活性中心は、RとRがこの炭素原子上で異なっている理由から、別の炭素原子上に位置することができる。この置換パターンは、上記したHO−A基、すなわち
【化29】

が、R−配置で存在するように選択するのが好ましい。その理由は、その後の反応工程でジアステレオマー混合物を生成し、この際、所望の立体配置でクロピドグレルを生成する関連ジアステレオマーが、過剰に存在するからである。
【0045】
式(II)の化合物を、本発明にとって好ましい式(III)の光学活性アミノアルコールと反応させた場合、式(IVa)
【化30】

(IVa)
のジアステレオマーと、式(IVb)
【化31】

(IVb)
のジアステレオマーとの第1混合物が生成する。
【0046】
HO−A基が、
【化32】

である特に好ましい態様では、式
【化33】

(IVa−1)
R,(R,S)
の化合物と、式
【化34】

(IVb−1)
S,(R,S)
の化合物とのジアステレオマー混合物が生成する。式中、X、Z、R〜R及びnは、上記で定義したとおりである。この混合物は、第1ジアステレオマー混合物と称する。
【0047】
次式
【化35】

の立体配置(R−配置)を有する光学活性アミノアルコールを本発明で使用した場合、式(IVb−1)のS,(R,S)−化合物に対して、式(IVa−1)のR,(R,S)−化合物が過剰に形成され、R,(R,S)−化合物とS,(R,S)−化合物との比率は、好ましくは2:1又はそれより大きく、より好ましくは3:1又はそれより大きく、特に好ましいのは約4:1又はそれより大きい。
【0048】
本発明においては、第1ジアステレオマー混合物に既に存在しているエナンチオマーを分離し、式(IVa−1)のR,(R,S)−ジアステレオマーだけを用いて更にクロピドグレル合成を続けることが可能である。該ジアステレオマーの分離は、それ自体公知の方法、例えば結晶化あるいはクロマトグラフィーにより行ってもよい。しかしながら、本発明では、第1ジアステレオマー混合物を、式
【化36】

(V)
の化合物、あるいは式
【化37】

(VII)
の化合物と反応させるのが好ましい。
【0049】
式(V)
【化38】

(V)
の化合物とのそのような反応は、以下のジアステレオマー混合物
【化39】

(VIa−1) (VIb−1)
S,(R,S)−1 R,(R,S)−1
(式中、X,R〜R及びnは、上記で定義したとおりである)を与える。これは、第2ジアステレオマー混合物と称する。それは、
【化40】

(VIa)
及び
【化41】

(VIb)
(式中、−O−Aは、式
【化42】

の基である)のジアステレオマーの混合物である。式(VIa−1)のS,(R,S)−化合物は、式(VIb−1)のR,(R,S)−化合物に対して、好ましくは過剰に存在する。驚くべきことに、ジアステレオマー過剰率は、式(V)
【化43】

の化合物との反応の結果、更に再び増加し、式(VIa−1)の化合物の、式(VIb−1)の化合物に対する比率が、好ましくは3:1又はそれより大きく、より好ましくは4:1又はそれより大きい。本発明の最も好ましい実施態様においては、9:1又はそれより大きいジアステレオマーの比率でさえ達成される。特に好ましい実施態様では、第2ジアステレオマー混合物は、所望のジアステレオマーを95%以上含んでおり、そして所望でないジアステレオマーはわずか5%以下の比率で含まれる。より好ましくは、所望のジアステレオマーは、98%以上の比率で存在し、また所望でないジアステレオマーはわずか2%以下で存在し、そして所望でないジアステレオマーに対する所望のジアステレオマーの比率は、約99.5:0.5またはそれより大きい比率が達成され得る。
【0050】
ジアステレオマーの混合物(第1ジアステレオマー混合物)
【化44】

(IVa−1) (IVb−1)
R,(R,S) S,(R,S)
を、式(VII)
【化45】

(VII)
の化合物と反応させた場合、ジアステレオマーの混合物(第2ジアステレオマー混合物)がそれに応じて生成する:
【化46】

VIIIa−1) (VIIIb−1)
S,(R,S) R,(R,S)
【0051】
このジアステレオマー混合物において、式(VIIIa−1)のS,(R,S)−ジアステレオマーは、式(VIIIb−1)のR,(R,S)−ジアステレオマーに対して好ましくは過剰に存在する(但し、アミノアルコールの“正しい”エナンチオマーが使用されたと仮定してのことである。さもないと、ジアステレオマーの比率は異なってくる)。式(VIIIb−1)のジアステレオマーに対する、式(VIIIa−1)のジアステレオマーの過剰率は、驚くべきことに増大し、好ましくは3:1又はそれより大きく、より好ましくは4:1又はそれより大きく、さらに9:1又はそれより大きい。特に好ましい実施態様においては、ジアステレオマーの第2混合物は、所望のジアステレオマーを95%以上と、所望でないジアステレオマーを5%以下だけ含んでいる。より好ましくは、所望のジアステレオマーは98%以上の比率で存在し、所望でないジアステレオマーは、わずか2%以下の比率で存在し、そして所望でないジアステレオマーに対する所望のジアステレオマーの比率は、約99.5:0.5又はそれより大きい値が達成され得る。
【0052】
以下のジアステレオマー混合物(第2ジアステレオマー混合物)
【化47】

(VIIIa−1) (VIIIb−1)
S,(R,S) R,(R,S)
を通常の方法で反応させて、以下のジアステレオマー混合物(第2ジアステレオマー混合物)
【化48】

(VIa−1) (VIb−1)
S,(R,S) R,(R,S)
を当該分野で一般的に公知の方法で製造する。
【0053】
この反応に関しては、導入部で記述した刊行物及び以下のテトラヒドロチエノピリジンの閉環反応についての観察を参照されたい。
【0054】
最も好ましい光学的に活性なアミノアルコールは、(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロパノール((R)−ジメプラノール)である。この光学活性アミノアルコールは、市販されているが、本発明に関して言えば、関連するラセミ体のアミノアルコールをジ−O−ベンゾイル−L−(−)酒石酸で光学分割することにより容易に得ることができることが知見された。このことは、本発明の製造方法の有益性を増すものである。本発明の製造方法で使用し得る他の光学的に活性なアルコール類も、この様にして関連するラセミ体のアルコールから取得することが可能である。
【0055】
本発明にとって好ましい光学的に活性なアミノアルコールである(R)−ジメプラノールを使用して、第1ジアステレオマー混合物及び第2ジアステレオマー混合物に対して、以下の式で示される結果:
第1ジアステレオマー混合物:
【化49】

(IVa−2) (IVb−2)
R,R S,R
第2ジアステレオマー混合物:
【化50】

又は、それぞれのオープンチェーン型化合物:
【化51】

が得られる。
【0056】
本発明に好ましい、さらに別の光学活性アミノアルコール類としては、式(立体化学を示すことなく下記に記載):
【化52】


(式中、R及びRは、上記で定義したとおりであり、“Sub”は、環がC−C−アルキル基により任意の位置で置換されていてもよいことを意味する)で表される化合物である。
【0057】
化合物
【化53】

は、置換スチレンオキサイド又は置換シクロヘキセンオキサイドから容易に製造され、“Optical Resolution via Diastereoisomeric Salts Formation(ジアステレオマー塩の生成を経由する光学分割)”, David Kozma, Ed., CRC Press, London, New York, Washington D.C.に記載されているように個々のエナンチオマーに分離することができる。
【0058】
本発明において、好ましくは、HO−A基は、式
【化54】

又は
【化55】

(式中、Yは、
【化56】

であり、そしてYは、
【化57】

である(式中、R及びR10は、独立して、水素原子及びC−C−アルキル基から選択され、R及びRは、二つのフェニル基がお互いに自由に回転するのを妨げる基であり、R11及びR12は、独立して、水素原子、C−C−アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、C−C−アルコキシカルボニル基又はC−C−アルキル基であり、あるいはR11及びR12は、それらが結合しているベンゼン環と共に、1,3−ベンゾジオキソリル構造、α−ナフチル構造、β−ナフチル構造、テトラヒドロナフチル構造、ベンズイミダゾリル構造及びベンズトリアゾリル構造から選択される縮合環構造を形成してもよく、mは0乃至2の整数であり、そしてpは1又は2である))である。
【0059】
特に好ましいのは、RとR10の両方が水素原子であるか、あるいは一方だけが水素原子ではなく、且つC−C−アルキル基、好ましくはC−C−アルキル基である。
【0060】
特に好ましいのは、R及びRのうちの一つが、C−C−アルキル基、ハロゲン原子及びシアノ基から選択され、他方はC−Cの分枝アルキル基、好ましくはtert−ブチル基、ハロゲン原子及びシアノ基から選択される。沃素原子のような嵩張るハロゲン原子が好適である。
【0061】
この基において、光学活性はR及びRの少なくとも1つにより、好ましくはR及びRの両方により発生するが、R及びRは、アルキル基(特に分枝したC−C−アルキル基)、ハロゲン原子又はシアノ基などの嵩張る基であり、それにより2つのベンゼン環の回転が妨げられる。
【0062】
本発明の好ましい別の実施態様では、式
【化58】

の化合物は、式
【化59】

(式中、Yは、上記で定義したとおりであり、Rは、上記で定義したとおりであって、好ましくは水素原子又は炭素原子1乃至20の炭化水素基であり、該炭化水素基は窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びハロゲン原子から選択される最大4個までのヘテロ原子を含有していてもよく、また水酸基、オキソ基、シアノ基及びニトロ基から選択される最大5個までの置換基を含有していてもよく、基
【化60】

は、5員乃至10員の飽和又は不飽和環であり、該環は該窒素原子に加えて、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1乃至3個のヘテロ原子を環原子として任意に含有していてもよく、またC−C−アルキル基、C−C−アルコキシ基、C−C−アルケニル基、C−C10−アリール基(特に、C−C10−アリール基)、C−C10−ヘテロアリール基、C−C−シクロアルキル基、C−C−ヘテロシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、シアノ基及びニトロ基から選択される最大5個までの置換基で置換されていてもよい)の化合物である。
【0063】
好ましくは、基
【化61】

は、基
【化62】

である。
【0064】
上記した光学活性アミノアルコールと式(II)の化合物とを反応させて第1ジアステレオマー混合物を形成させて得られる反応生成物、及び第1ジアステレオマー混合物と式(V)
【化63】

(V)
の化合物、又は式(VII)
【化64】

(VII)
の化合物と反応させて第2ジアステレオマー混合物を形成させて得られる反応生成物は、いずれも新規化合物であり、本発明は、個々のジアステレオマーを任意の比率で有する対応するジアステレオマー混合物、及びこれらのジアステレオマー混合物から個別に単離されたジアステレオマーにも関する。
【0065】
式(Ia)
【化65】

(Ia)
の最終生成物、特にクロピドグレル
【化66】

を得るために第2混合物を更に処理する工程は、当業者にはそれ自体公知の方法で行われる。以下に示す連続工程が一般的には可能であり、以下に示す構造式は式(III)
【化67】

(III)
の好ましい光学的に活性なアミノアルコールを用いて示されているが、他のアミノアルコール類もまた使用してもよい。特に、本出願に記載されている他のアミノアルコール類を使用することができる。
【0066】
式(VIIIa)
【化68】

(VIIIa)
及び式(VIIIb)
【化69】

(VIIIb)
のジアステレオマー混合物が存在する場合、式(VIa)
【化70】

(VIa)
及び式(VIb)
【化71】

(VIb)
のジアステレオマー混合物を形成する閉環反応を最初に実施することができる。この混合物は次いで更に下記するように反応させる。また、最初に、ジアステレオマー(VIIIa)及びジアステレオマー(VIIIb)の混合物からジアステレオマーを、例えば、結晶化(これが好ましい)あるいはクロマトグラフィーにより分離し、式(VIIIa)
【化72】

(VIIIa)
のジアステレオマーだけを更に反応に付すことができる。
【0067】
式(VIIIa)
【化73】

(VIIIa)
の個々のジアステレオマーは、次いで、式(VIa)
【化74】

(VIa)
の化合物に、当該分野で類似化合物に対して示されている立体化学を維持しながらの閉環反応により、まず変換し、そして下記するエステル交換反応に付する。あるいは、式(VIIIa)の化合物を最初にエステル交換反応に付して、式
【化75】

の化合物を製造してもよく、この化合物は次いで、式(Ia)
【化76】

(Ia)
の化合物、好ましくはクロピドグレルに、先行技術として例えばEP466,569に記載されている閉環反応によって変換される。
【0068】
その側鎖が既に閉環している、式(VIa)
【化77】

(VIa)
のジアステレオマー及び式(VIb)
【化78】

(VIb)
(式中、式(VIa)
【化79】

のジアステレオマーは、好ましくは少なくとも3:1以上の過剰率で、より好ましくは4:1以上の過剰率で、最も好ましくは9:1以上の過剰率で存在している(あるいはジアステレオマーの第2混合物は、所望のジアステレオマーを95%以上の比率で、そして所望でないジアステレオマーを僅か5%以下の比率で含有しており、より好ましくは、所望のジアステレオマーを98%以上の比率で、そして所望でないジアステレオマーを僅か2%以下の比率で含有し、特に所望でないジアステレオマーに対する所望のジアステレオマーの比率は、約99.5:0.5又はそれより大きい))のジアステレオマーとの第2ジアステレオマー混合物を、最初にジアステレオマーの分離工程に付してもよく、これが本発明にとっては好適である。その結果、式(VIa)
【化80】

(VIa)
のジアステレオマーが分離される。このジアステレオマーの分離は、当該分野でそれ自体公知の、先行技術として記載された方法で実施することができ、より詳細には、実施例に記載されている。次いで、式(VIa)
【化81】

(VIa)
のジアステレオマーは、立体化学を維持しながらエステル交換反応に付されて、式(Ia)
【化82】

(Ia)
の化合物を与える。
【0069】
代替法として、式(VIa)
【化83】

(VIa)
の化合物と式(VIb)
【化84】

(VIb)
の化合物とのジアステレオマー混合物は、予め分離することなく、エステル交換反応に付してもよい。この変法は、式(VIa)
【化85】

(VIa)
のジアステレオマーが大過剰に存在する場合、あるいは引き続くエステル交換反応が立体化学を維持しながら完了させることができない場合には、特に好ましい。次いで、エステル交換反応により、化合物(Ia)
【化86】

(Ia)
及び化合物(Ib)
【化87】

(Ib)
(式中、化合物(Ia)は、式(Ib)の化合物に対してかなり過剰に存在する)の混合物が生成する。必要に応じて、この混合物は、次いで、先行技術としてこれまた公知のエナンチオマーの分離工程に付してもよい。
【0070】
エステル交換反応は、好ましくは、チタニウム触媒又はシリコン触媒を用いて実施され、特に、チタニウム(IV)アルコキサイドが好ましく、具体的にはチタニウム(IV)イソプロポキサイド(テトライソプロピルオルソチタネート)又はチタニウム(IV)エトキサイドが、例えばFluka社から商業的に入手可能である。このチタニウムアルコキサイドは、適当なアルコール、例えばエチレングリコールとの反応により活性化される。別の触媒もまた使用することができ、例えば必要により五塩化リン中でのシリカと塩化チオニルの反応により、あるいはシリカとヘキサン、クロロホルム、クロロベンゼン又はジクロロメタンなどの適切な不活性溶媒中での五塩化リンだけとの反応により製造しうる塩素化シリカが挙げられる。
【0071】
ジアステレオマー混合物が既に所望のジアステレオマーを非常な高過剰率で含有している場合、特に好ましい実施態様として、エステル交換反応は、元素周期律表の第1又は第2サブグループの遷移金属のハライドを用いて実施される。適当なそのような触媒としては、例えば、ZnX、Cu、CuX、AgX、AuX、AuX、CdX、Hg、HgX、CoXが挙げられ、Xは、ハライドカウンターイオン、特にフルオライド、クロライド、ブロマイド又はアイオダイドイオンであり、特にクロライドイオンである。最も好ましくは、遷移金属が亜鉛又はコバルトであり、最も好ましい本発明の触媒はZnX又はCoXである。
【0072】
一般的に、元素周期律表の第3乃至第8遷移金属の他の金属のハライドもまた、使用してもよいが、原則としてこれらのハライドは、ラセミ化の危険性を増す酸性溶媒を必要とする。また、これらの触媒としての性質は劣っていることが多く、これらの触媒は本発明には好適ではない。
【0073】
遷移金属ハライド触媒、特に塩化亜鉛の特別に有利な点は、反応をアルカリ性条件下で実施してもよく、またエステル交換反応の間に起こるラセミ化の程度は、せいぜい非常に少ないことである。例えば、所望のジアステレオマーを98%以上の比率で、より好ましくは99%以上の比率で含み、所望でないジアステレオマーを僅か2%以下の比率で、特に1%以下の比率で含む、本発明の特に好ましい第2ジアステレオマー混合物の1方を使用する場合、念入りに工程管理することにより、エステル交換反応後、式(Ia)
【化88】

(Ia)
(即ち、XがClのときはクロピドグレル)の所望のエナンチオマーを80%以上、特に90%以上、好ましくは約95%以上、より好ましくは約98%以上を含む生成物を与えるであろうし、残りは式(Ib)
【化89】

(Ib)
の所望でないエナンチオマーである。
【0074】
式(Ia)
【化90】

(Ia)
の所望のエナンチオマー、即ちクロピドグレルの比率を増加させるために、クロピドグレル混合物の更なる精製は、実施例で示したように酸処理することにより、達成することができる。
【0075】
一般に、エステル交換反応は、触媒を使用することなく実施することもできる。しかしながら、この場合、反応時間が長くなることを受け入れなければならない。
【0076】
エステル交換反応を実施するには、溶媒としてメタノール中で行うのが最も有利である。その理由は、目的がメチルエステルの製造にあるからである。
【0077】
本発明方法について、2−クロロフェニル酢酸と(R)−ジメプラノールとの反応及び引き続く2−(2−チエニル)エチルアミンとの反応を例として用い、以下に詳細に説明する。しかし、もし別の光学活性アミノアルコールが(R)−ジメプラノールの代わりに使用される場合、あるいはもし別の2−ハロフェニル酢酸が2−クロロフェニル酢酸の代わりに使用される場合、及び後の工程で閉環反応に付されるオープンチェーン型の関連化合物が、2−(2−チエニル)エチルアミンの代わりに使用される場合には、反応はそれに応じて進行するであろう。
【0078】
一般に、反応は以下に示す反応スキームに従って進行する:
【化91】

R,R S,R
【化92】

【0079】
光学活性なアミノアルコールである(R)−ジメプラノロールは、商業的に入手可能であるが、ラセミ体のアミノアルコールから簡単に安価に製造できる方法が、本発明で発見された。このためには、0.5当量のジベンゾイル−L−酒石酸を1当量のラセミ体アルコールと共に、例えばC−C−アルカノール、特にエタノール、より好ましくはメタノール又はエタノールとイソプロピルアルコールとの約1:1の混合物などの適当な溶媒中に溶解することによりR(−)−ジメプラノロールの対応するジベンゾイル−L−酒石酸誘導体が生成する。次いで、この溶液をアキラルな鉱酸、例えば塩酸で酸性する。これにより、ジメプラノールの反対のエナンチオマー、即ちS(+)−ジメプラノールとの塩(例えば塩酸塩)が形成され、その結果この塩は溶液中に保たれる。種晶を必要に応じて加えた後、R(−)−ジメプラノールのジベンゾイル−L−酒石酸誘導体が結晶性の生成物として析出する一方で、S(+)−ジメプラノールの塩は溶液中に残る。遊離の(R)−ジメプラノール塩基は、アルコール、特にエタノールなどの適当な溶媒中で水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどの適当な塩基と反応させるそれ自体公知の方法で、析出した塩から取り出すことができる。別の実施態様では、R(−)−ジメプラノールのジベンゾイル−L−酒石酸誘導体は、例えば、R−ジメプラノール塩酸塩に、乾燥塩化水素で処理することにより変換することができる。この塩はそのまま、あるいはアルカリ型の適当な塩基で処理した後で使用してもよい。
【0080】
本発明の製造方法により、ジベンゾイル−L−酒石酸の必要量は減少し、これにより製法が非常に経済的となる。更に、得られた生成物は、高い光学的純度を有し、繰り返し再結晶する必要がない。
【0081】
2,α−ジクロロフェニルアセチルクロライド
【化93】

は、それ自体公知の方法、例えば、以下の反応スキーム:
【化94】

により製造することができる。
【0082】
工程(a)は、化合物
【化95】

を、金属マグネシウムと、例えばエーテル(即ちジエチルエーテル)、ジブチルエーテル又は高級エーテル、テトラヒドロフラン又は他の環状エーテル、トルエンなど、好ましくはエーテルの適当な溶媒中、還流させながら反応させることにより実施される。この反応は、通常のグリニア反応である。工程(b)では、中間の炭酸ガスは、好ましくはドライアイスの形態で反応混合物に激しく攪拌しながら、無溶媒で、あるいは好ましくはテトラヒドロフランのような炭酸ガスを溶解することができる溶媒中で、添加することができる。ガス状の炭酸ガスが逃げ出して、化合物
【化96】

が得られる。その後、工程(c)では加水分解を行う。このため、希塩酸などの希鉱酸を、工程(b)で得た反応混合物に冷却攪拌しながら加えると二層混合液が得られる。適当な塩基、例えば、水酸化アンモニウム水溶液あるいは炭酸アルカリ水溶液あるいは炭酸アンモニウム水溶液などの塩基の水溶液を加えて、次に中和してハロフェニル酢酸の塩の水溶液を得る。必要に応じて、追加的に水を加えてもよい。次に有機層を分離し、2−ハロフェニル酢酸の塩を含む水層を、所望の2−ハロフェニル酢酸、特に2−クロロフェニル酢酸が析出するまで、例えば希鉱酸と混合する。
【0083】
該酸を分離し、例えば、クロロホルムなどの適当な溶媒中に溶解し、水で抽出し、クロロホルム層を硫酸ナトリウムあるいは硫酸マグネシウムで乾燥し、そして溶媒を留去するなどの適当な方法で処理する。この操作により、2−ハロフェニル酢酸が有利な収率及び95%以上の純度で、特に98%以上の純度で得られる。
【0084】
この2−ハロフェニル酢酸は、例えば、工程(d)に示される通常の方法で酸クロライドに変換し、加熱しながら塩化チオニルに溶かして式
【化97】

の化合物とする。
【0085】
所望の基Yに依存して、次いで臭素化又は塩素化が工程(e)で実施される。臭素化は、液体臭素を赤燐の存在下、還流するまで加熱しながら加えることにより実施される。反応液を一晩、放置し、次いで未反応の塩化チオニルと臭素を留去して、式
【化98】

の化合物を得る。
【0086】
塩素化された化合物を製造するためには、塩化スルフリル(SOCl)を反応混合物に攪拌加熱下、工程(e)で加える。次に、残存しているSOCl及びSOClを留去し、式
【化99】

の化合物を得る。
【0087】

【化100】

の化合物、及び式
【化101】

の化合物は、それ自体公知の方法、例えば、以下の反応スキーム:
【化102】

に従って得ることができる。
【0088】
例えば、原料化合物2−チエニルアセタミドは、2−チエニルアセトニトリル又は2−チエニルアセチルクロライドから、周知の方法で製造することができる。例えば、ジメトキシエタンを2−チエニルアセタミドに、冷却しながら水素化ホウ素ナトリウムと共に加える。次いで、酢酸を更に冷却し、攪拌しながら加える。この混合物を攪拌しながら加熱し、水を加えて必要に応じて冷却しながら加水分解を行う。ジメトキシエタンを留去した後、溶液を例えば水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムなどの適当な塩基を加えて塩基性にし、エーテルなどの適当な溶媒を加える。水層は分離する。有機層を洗い、例えば、鉱酸で酸性にし、1回以上抽出する。有機層は分離する。水層を、例えば、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムを加えて塩基性とし、エーテルを加える。有機層は、所望の2−(2−チエニル)エチルアミンを含有しており、溶媒を留去したのち、2−(2−チエニル)エチルアミンが、好ましくは95%以上の、より好ましくは98%以上の純度で得られる。
【0089】
こうして得られた2−(2−チエニル)エチルアミンは、例えば、ホルムアルデヒド水溶液と一緒に攪拌しながら加熱する。次いで、これを冷却し、ジクロロメタンなどの適当な有機溶媒を加える。例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、具体的には10%水酸化ナトリウム水溶液などの塩基を加えた後、抽出を行う。水層を分離し、有機層を蒸発乾固する。残渣を、例えば、ジメトキシエタンに溶解し、酸性にする。次に、これを攪拌しながらシッフ塩基で環化する。冷却、濾過、及び洗浄した後、所望の4,5,6,7−テトラヒドロ[3,2−c]チエノピリジンを得る。
【0090】
化合物
【化103】

を製造する本反応は、例えば、EP−A−439404及びArkiv fuer kemi, 32,(19),217−227(1971)にも開示されている。これら刊行物の全内容が参照される。
【0091】
式(II)
【化104】

(II)
の化合物と、式(III)
【化105】

(III)
の化合物との反応は、それ自体、公知の方法で行われる。例えば、2,α−ジクロロフェニルアセチルクロライドを、(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロパノールと適当な溶媒中、特に双極性の非プロトン性溶媒中、例えばTHFなどのエーテル中で、好ましくは4−(4−ジメチルアミノ)ピリジンのようなピリジン化合物などのアミンの存在下、特にトリエチルアミンなどの三級アミンの存在下に、反応させる。こうして得られるアミノエステルの結晶性塩酸塩が析出し、これを分離してもよい。特に好ましい態様においては、混合物はまず適当なケトン、特にアセトンと共に加熱還流され、これにより所望のR,R−ジアステレオマーの含量が増加する。従って、この態様は、所望のジアステレオマーを製造工程の非常に早い段階で高過剰率で得るのに特に有利である。
【0092】
トリエチルアミンなどの三級アミンを、第1ジアステレオマー混合物の製造に使用すると、濾取した結晶性の生成物は、所望のジアステレオマーとトリエチルアミンとの混合物を含んでいる。また、このジアステレオマー混合物は三級アミンを含んでいるため、通常は容易に濾過され、驚くべきことに、第2ジアステレオマー混合物を製造するためのその後の工程でのラセミ化が減少する。
【0093】
処理操作と必要に応じた精製操作は、例えば、再結晶及び/又はクロマトグラフィーの公知の方法で行われる。しばしば、粗製混合物を直接、処理することも可能である。使用に適した溶媒としては、特に限定はされないが、メタノールやエタノールなどの1級アルコールは、エステル交換の危険を避けるために使用すべきではない。2−プロパノールなどの2級アルコール又は3級アルコールは、使用してもよい;特に再結晶の場合には、2−プロパノールなどの2級アルコールは有利である。
【0094】
こうして得られる混合物中の2つのジアステレオマー
【化106】

R,R S,R
の比率は、例えばキラルHPLCで測定することができる。好ましくは、その比率は、2:1以上、より好ましくは3:1以上、特に4:1以上である。
【0095】
ジアステレオマー混合物
【化107】

R,R S,R
は、好ましくは、式(V)
【化108】

(V)
の化合物、又は式(VII)
【化109】

(VII)
の化合物と、好ましくは式(V)の化合物と個々のジアステレオマーに分離することなく反応させる。
【0096】
例えば、4、5、6、7−テトラヒドロ―[3,2−c]−チエノピリジン塩酸塩を、2,α−ジクロロフェニル酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)―2−プロピルエステル塩酸塩と共に、適当な溶媒中、特に双極性の非プロトン性溶媒、例えばジメチルホルムアミド、DMSO又は1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)―ピリミジノンなどの溶媒中、適当な塩基、特に炭酸塩、炭酸水素塩、トリエチルアミンのようなアミン及び/又は炭酸リチウムの存在下、好ましくは0℃〜100℃の範囲の温度で、通常数時間の適切な時間、攪拌する。特に好ましい実施態様では、この反応工程は、シリカの存在下で行なわれる。これにより最終生成物の光学純度を一層、増加させることが証明された。
【0097】
生成物は有機層と水層の分配により単離され、その後、溶媒は留去される。適当な鉱酸により塩酸塩あるいは臭化水素塩に変換することにより、結晶性の塩が生成し得る。得られたジアステレオマー
【化110】

の混合物は、好ましくは4:1以上の、より好ましくは約9:1以上のS,R−ジアステレオマーを過剰に含んでいる。
【0098】
驚くべきことに、ジアステレオマーを対応する塩に変換するための無機酸の代わりにジカルボン酸が、非常に有利に使用し得ることが証明された。ジカルボン酸を鉱酸の代わりに使用することにより、所望でないジアステレオマーに対する所望のジアステレオマー の比率がさらに増加し、そして所望のジアステレオマーを95%以上と所望でないジアステレオマーを5%以下含むジアステレオマーの混合物が、特に所望のジアステレオマーが98%以上の比率で存在し、所望でないジアステレオマーが2%以下の比率で存在する、ジアステレオマーの混合物が得られる。所望のジアステレオマーを99.5%以上の比率で、そして所望でないジアステレオマーを0.5%以下の比率で含むジアステレオマー混合物さえ得ることが可能である。
【0099】
適当なジカルボン酸は特に制限されないが、マレイン酸、蓚酸、及びフマル酸が好ましい。マレイン酸が最も好まれ、本発明の特に好ましい態様における第2ジアステレオマー混合物はマレイン酸塩として存在する。
【0100】
ジアステレオマーの混合物(ジアステレオマー混合物2)が、その後の反応がクロピドグレルを形成するのになお不十分であると見なされる、(R,R)−エナンチオマーに対する(S,R)−エナンチオマーの比率を有する場合には、所望の(S,R)−ジアステレオマーの含量は、例えば、過剰の適当な極性プロトン溶媒中、例えば、イソプロパノールのような適当なアルコール中で、ジアステレオマーの混合物を加熱還流することによって増加させることができる。この様にして、所望の(S,R)−ジアステレオマーを98%以上、特に99.5%以上の比率で含み、従って所望でない(R,R)−ジアステレオマーを2%以下、好ましくは0.5%以下の量を含むジアステレオマー混合物が得られる。また、この製造方法により、ジアステレオマー混合物中の他の不純物が減少し得る。
【0101】
ジアステレオマー
【化111】

の混合物、又は任意の塩として、特にマレイン酸塩、蓚酸塩、又はフマル酸塩として分離されたジアステレオマー
【化112】

は、エステル交換反応により、S−エナンチオマーに富んだクロピドグレルのS−エナンチオマーとR−エナンチオマーとの混合物に変換される、あるいは純粋なクロピドグレルに変換される。このため、上記したチタニウム触媒あるいはシリカ触媒が好ましく用いられる。上記したように、エステル交換反応は塩基性の溶媒中、元素周期律表の第1又は第2サブグループの遷移金属のハライド、例えばCu、CuX、AgX、AuX、AuX、CdX、Hg、HgX、CoX又はZnX、特にZnX又はCoXを用いて実施するのが好ましい。ここにXは、ハライドカウンターイオンであり、特にクロライドイオンである。
【0102】
エステル交換反応は、好ましくは、式
【化113】

の化合物、あるいはジアステレオマー混合物
【化114】

を、メタノール中、触媒を用いて加熱することにより実施される。ジアステレオマー混合物、または遊離の塩基もしくは直接に塩、最も好ましくはマレイン酸塩として特にジカルボン酸との塩の形態でそれぞれ分離した化合物を反応に使用することができる。遊離塩基を使用する場合、その反応速度は塩を使用する場合よりも早い;しかしながら、塩の使用はエステル交換反応の間、ラセミ化が起きるのが非常に低い。上記した遷移金属のハライドを用いる特に好ましいエステル交換反応は、好ましくは弱アルカリ性条件下、適当な非有機塩基あるいは好ましくはジイソプロピルアミン、トリエチルアミンやピロリジン(例えば、N−メチルピロリジン)などの有機塩基を用いて実施される。エステル交換反応に、ジアステレオマー混合物の塩あるいは好ましいジアステレオマーを使用する場合、トリエチルアミン又はジイソプロピルアミンなどの強塩基を使用するのが、反応速度を増大させるのには有利であるが、これはエステル交換反応の間のラセミ化の危険性をも増加させる。したがって、ジアステレオマー混合物の適当な塩を使用するのが好ましく、そのようなジアステレオマー混合物は、既に所望のジアステレオマーを95%以上、より好ましくは98%以上、特に99.5%以上を含む程まで富化されている。最も好ましくは、該塩は蓚酸塩、フマル酸塩またはマレイン酸塩であり、特にマレイン酸塩であり、反応は弱アルカリ性条件下で実施され、それによりエステル交換反応の間のラセミ化が、できるだけ低く抑えられる。
【0103】
反応が終了した後に、塩基を、実施例で示したように、反応混合物に添加し、濾過し、再び実施例に示したように常法により処理する。最終生成物が、なお、式
【化115】

の化合物を含んでいる場合には、所望のクロピドグレルのエナンチオマーは、通常の方法により分離することができる。再び、上記引例が参考にされる。
【0104】
しかしながら、所望でないクロピドグレルのエナンチオマーは、適当な溶媒、好ましくはケトン、特に好ましくはアセトンなどの双極性非プロトン性溶媒中に溶解し、この溶液を例えば、濃硫酸で酸性にすることにより最も好ましく分離される。ラセミ体のクロピドグレル硫酸水素塩は、溶液から析出し、クロピドグレルの所望のエナンチオマーは母液に残り、それから高い純度で回収され得る。所望でないエナンチオマーの含量が低い場合は、化学量論的な量の硫酸を加えても、直ちにはラセミ体のクロピドグレル硫酸水素塩の結晶化は起こらず、硫酸の量を更に増加しなければならない。もし結晶化がすぐに起きない場合は、ラセミ体のクロピドグレル硫酸水素塩の種結晶を加えることが推奨される。
【0105】
本明細書に別に記載のない限り、また記載から自明でない限り、“部”及び“パーセント”は、常に重量基準である。
【0106】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0107】
実施例1
2,α−ジクロロフェニルアセチルクロライド
2−クロロフェニル酢酸(171g)を塩化チオニル(300ml)に加え、混合物を30分間60℃で攪拌した。ヨウ素の結晶に続いて塩化スルフリル(300ml)を数回に分けて加えた。混合物を、合計7時間、加熱還流した。過剰の試薬を減圧留去した。残渣(228g)は、2,α−ジクロロフェニルアセチルクロライドを82〜84%、α位が塩素化されていない2−クロロフェニルアセチルクロライドを5〜6%、及び2,4,(2,6),α−トリクロロフェニルアセチルクロライドを約10%含んでいた。この粗製のアシルクロライドは、更に精製することなく次の反応に使用した。
実施例2
【0108】
(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロパノール((R)−ジメプラノール)
ジベンゾイル−L−酒石酸(190g)のエタノール溶液(1,200ml)を、1−(ジメチルアミノ)−2−プロパノール(103g)と混合した。得られた溶液を36%塩酸(36ml)で酸性にし、種結晶を加えた。一夜放置した後、結晶生成物を濾過し、冷エタノールとジエチルエーテルで洗い、乾燥した。粗製の(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロパノールのジベンゾイル−L−酒石酸塩を熱エタノール(2,700ml)から再結晶して、純粋なジアステレオマー塩を187gの収量で得た。この塩を冷20%水酸化ナトリウム溶液(1000ml)に溶かし、ジクロロメタンで抽出した。抽出液を乾燥し、濾過し、濃縮し、得られた油状の残渣を大気圧下で蒸留して精製した。生成物を122〜124℃で蒸留し、(R)−ジメプラノール(46g)(ラセミ体原料に対して45%)、[α]20 −27°を得た。
実施例3
【0109】
2,α−ジクロロフェニル酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステル
2,α−ジクロロフェニルアセチルクロライド(8.6g)をテトラヒドロフラン(30ml)に溶かし、4−(ジメチルアミノ)−ピリジン(1.2g)を加えて混合した。次に、(R)−ジメプラノール(4.1g)のテトラヒドロフラン溶液(30ml)を攪拌、冷却しながら急速に加えた。結晶性のアミノエステル塩酸塩が分離した。次に混合物を55℃まで加熱し、この温度で20分間、攪拌し、冷却した後、更に室温で2時間、攪拌した。ジエチルエーテル(2ml)を加え、結晶性の生成物を濾過し、洗い室温で乾燥した。 粗製のこのエステル塩酸塩をイソプロパノールから再結晶した。収量は10.0gであった。精製されたエステル塩酸塩を、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液とジエチルエーテルに分配した。溶媒を留去したのち、アミノエステルが遊離塩基として得られた。収率は、8.1 g(72.5%)であり、(R、R)−ジアステレオマー(65〜80%)が優勢であった。
実施例4
【0110】
2,α−ジクロロフェニル酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステル塩酸塩(好ましい製法)
2,α−ジクロロフェニルアセチルクロライド(19.2g,86mmol)をテトラヒドロフラン(80ml)に溶かし、この溶液を氷浴中、攪拌しながら10〜15℃に冷却して、(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロパノール塩酸塩(12g,86mmol)の、トリエチルアミン(12ml,8.9g,88mmol)を含んだテトラハイドロフラン溶液(80ml)に45分間で滴下した。混合物を室温で3時間、攪拌すると2時間以内に結晶性のアミノエーテルの塩酸塩が析出した。混合物を2時間加熱還流した。次いで、これを50℃に冷却し、アセトン(60ml)を加え、混合物を更に2時間加熱還流した。混合物を冷却した後、一夜、冷却(冷蔵庫)した。結晶性の生成物を窒素雰囲気下、濾過し、アセトン(20ml)で洗った。その後、それを室温で乾燥した。粗製のエステル塩酸塩とトリエチルアミン塩酸塩の混合物が得られたが、これは約24gのジアステレオマーエステルを含んでいた。ジアステレオマーエステル混合物中の表題化合物の含量は、HPLCで測定され、このジアステレオマーエステル混合物は、約80%の表題化合物を含み、所望のR,R−ジアステレオマーの所望しないジアステレオマーに対する比率は4:1に相当した。
【0111】
トリエチルアミン塩酸塩を含んだこうして得られたジアステレオマー混合物は、更に精製することなく、その後の反応工程に使用された。しかしながら、必要な場合には、この混合物は、ジアステレオマーアミノエステル塩酸塩とトリエチルアミン塩酸塩との粗製混合物を、2.5倍量(v/w)の沸騰した2−プロパノールに溶かし、同量の熱い酢酸プロピルを加え、混合物を冷却し、それを一晩、冷蔵庫に静置することにより精製することもできる。その翌日、結晶性の生成物を窒素雰囲気下、濾過し、25mlの冷たい(約5℃)2−プロピルアセテートで洗い、乾燥した。
実施例5
【0112】
1−フェニル−2−(1−ピロリジニル)−エタノール塩酸塩
攪拌しながら、水(10ml)をスチレンオキサイド(24.0g)とピロリジン(21.3g)の混合物に加えた。混合物の温度はおよそ100℃まで上昇した。水と過剰なピロリジンは、得られた透明な溶液から蒸留して除いた。残渣を1,2−ジメトキシエタン(60ml)に溶かし、得られた溶液を1,2−ジメトキシエタン中、塩化水素の5.5M 溶液で酸性にした。析出した塩酸塩を濾過し、1,2−ジメトキシエタンで洗い、乾燥した。濾液を一晩、冷蔵庫で放置し、生成物の2回目の収量が得られた。結晶性1−フェニル−2−(1−ピロリジニル)−エタノール塩酸塩の合計の収量は35.9gであった。
実施例6
【0113】
(R)−1−フェニル−2−(1−ピロリジニル)−エタノール
ジ−O−ベンゾイル−L−酒石酸(35.8g)のメタノール溶液(150ml)と1−フェニル−2−(1−ピロリジニル)−エタノール(19.1g)のメタノール溶液(100ml)とを混合し、混合液を2日間、冷蔵庫に静置した。結晶性の生成物を濾過し、少量の冷メタノールとジエチルエーテルで洗い、乾燥した。生成物を繰り返し熱エタノールから再結晶して光学的に純粋なジアステレオマー塩(15.0g)を得た。これの遊離塩基は、該塩を冷20%水酸化ナトリウム水溶液(100ml)に溶かし、ジクロロメタンで抽出することにより得られた。溶媒を留去して1−フェニル−2−(1−ピロリジニル)−エタノールの油状の(R)−エナンチオマーが得られたが、このものは冷蔵庫に保管しておくと固化して結晶性物質となった。生成物は[α]20が−40°(メタノール)であった。
実施例7
【0114】
2,α−ジクロロフェニル酢酸−(R)−2−(1−ピロリジニル)−1−フェニルエチルエステル
(R)−1−フェニル−2−(1−ピロリジニル)−エタノール(5.7g)のテトラヒドロフラン溶液(25ml)を、2,α−ジクロロフェニルアセチルクロライド(6.5g)の、4−ジメチルアミノピリジン(0.9g)含有テトラヒドロフラン溶液(25ml)に加えた。実施例3と同様の方法で、(R,R)体72%及び(R,S)体28%を含むジアステレオマーエステル混合物の生成物が、8.4g(74%)の収率で得られた。
実施例8
【0115】
2−ジメチルアミノ−1−フェニルエタノール
水酸化ナトリウム(12g)の水溶液(60ml)を、エタノール(100ml)とジメチルアミン塩酸塩(24.0g)とに混合した。スチレンオキサイド(24.0g)を加え、混合物を室温で2時間、攪拌した。析出した塩化ナトリウムを濾去し、エタノールを減圧留去し、水酸化ナトリウム(8.0g)を残っている水溶液に加えた。アミノアルコールをジエチルエーテルで抽出し、抽出液を乾燥し、濃縮して油状の生成物(26.7g)が得られた。この生成物は、HPLC分析によると、2−ジメチルアミノ−1−フェニルエタノールを87%含んでいた。
実施例9
【0116】
(R)−2−ジメチルアミノ−1−フェニルエタノール
ラセミ体の2−ジメチルアミノフェニル−1−フェニルエタノールを、実施例8に記載の粗製アミノアルコール(16.5g)を用い、2−ピロリジニル−1−フェニルエタノール(参照:実施例6)の場合と同様に、分割した。[α]20が、−45.5°(メタノール)である油状の(R)−2−ジメチルアミノ−1−フェニルエタノールの収量は8.9gであった。
実施例10
【0117】
2,α−ジクロロフェニル酢酸−(R)−2−ジメチルアミノ−1−フェニルエチルエステル
(R、R)−エステル体が優勢であるジアステレオマーエステルの混合物が、実施例3及び7と同様に、(R)−2−ジメチルアミノ−1−フェニルエタノール(5.0g)から製造され、収量は7.7gであった。
実施例11
【0118】
トランス−2−ジメチルアミノシクロヘキサン−1−オール
該アミノアルコールは、スチレンオキサイドの代わりにシクロヘキセンオキサイド(19.6g)を用いて、実施例8と同様にして製造された。油状のトランス−2−ジメチルアミノシクロヘキサン−1−オールが、22.0g(76%)の収率で得られた。
実施例12
【0119】
トランス−2−(S)−ジメチルアミノ−1−(R)−ヒドロキシシクロヘキサン
実施例11のラセミ体のアミノアルコールを、実施例3,5及び8に従ってジ−O−ベンゾイル−L−酒石酸を使用し、モル比1:1(35.8gのジ−O−ベンゾイル−L−酒石酸と14.5gのラセミ体トランス−2−ジメチルアミノシクロヘキサン−1−オール)で溶媒としてアセトンを使用して分割した。油状のトランス−(S,R)−2−ジメチルアミノシクロヘキサン−1−オールが5.2gの収量で得られた。[α]20は、−23°(メタノール)であった。
実施例13
【0120】
2,α−ジクロロフェニル酢酸―トランス―(S,R)−2−ジメチルアミノシクロヘキシルエステル
トランス−2−(S)−ジメチルアミノ−1−(R)−ヒドロキシシクロヘキサンの2,α−ジクロロフェニル酢酸とのエステルが、アミノアルコール(4.4g)及びアシルクロライド(6.5g)から、テトラヒドロフラン中、6.7gの収量で得られた。HPLC分析によると、生成物はα−(R)−塩素酸のエステルのジアステレオマーを68%含有していた。
実施例14
【0121】
(S)−(2−クロロフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ[3,2−c]チエノピリジン−5−イル−酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステル2塩酸塩
実施例3で得た2,α−ジクロロフェニル酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステル(5.8g)の遊離塩基を、ジメチルホルムアミド(30ml)に溶かし、4,5,6,7−テトラヒドロ[3,2−c]チエノピリジン塩酸塩(3.6g)と固体の炭酸水素リチウム(3.4g)と混合した。次に混合物を45分間80℃で攪拌した。室温に冷却後、懸濁液をクロロホルム(100ml)と水(100ml)とに混合した。有機層を分離し、水洗し、乾燥し、クロロホルムを留去した。残渣を2−プロパノール(40ml)に溶かし、活性炭で脱色した。気体の塩化水素(1.5g)をこの溶液に導入すると結晶状の塩酸塩が析出した。この塩を濾過し、冷イソプロパノール(10ml)で洗った。乾燥後、所望の(R,S)−ジアステレオマーを85%含む生成物が、収率7.7g(83%)で得られた。
実施例15
【0122】
(S)−(2−クロロフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−[3,2−c]チエノ−ピリジン−5−イル−酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステル 2臭化水素酸塩
2,α−ジクロロフェニル酢酸−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステル塩酸塩(20.0g)の(R,S)−ジアステレオマー及び(R,R)−ジアステレオマーの約3:1混合物を、攪拌しながら、4回に分けて、4,5,6,7−テトラヒドロ−[3,2−c]−チエノピリジン塩酸塩(10.5g)の、トリエチルアミン(40ml)含有ジメチルホルムアミド懸濁液(150ml)に加えた。混合液を45℃に加温し、同温度で2時間攪拌した。ついで、これにメチルt−ブチルエーテル(150ml)及び水(300ml)を加え、よく混合した。有機層を分離し、水で2回洗い、乾燥し、濃縮した。(R,S)−ジアステレオマーを85%(HPLC)含有するジアステレオマーアミノエステルの遊離塩基の混合物が、20.0gの収量で得られた。残渣を15倍過剰の酢酸イソプロピルに溶かし、溶液を氷浴中、5℃に冷却した。臭化水素ガスを5〜10℃で攪拌しながら、8.5gのHBrが吸収されるまで混合液に導入した。更に、10℃で2時間攪拌を続け、次いで冷却することなく室温に達するまで攪拌した。種結晶を反応液に加え、一晩、冷蔵庫に放置した。アミノエステルの2臭化水素酸塩を濾過し、冷酢酸イソプロピルで洗い、乾燥した。収量は20.2gであり、(R,S)−ジアステレオマー含量は92%であった。
実施例16
【0123】
(S)−(2−クロロフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−[3、2−c]チエノピリジン−5−イル−酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステルノマレイン酸塩(好ましい製法)
1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジノン(要するにN,N’−ジメチルプロピレン尿素)(180ml,191.4g)、4,5,6,7−テトラヒドロ−[3,2−c]チエノピリジン塩酸塩(18.0g,100mmol)、トリエチルアミン(60ml,43.5g,425mmol)及び炭酸リチウム(21g,250mmol)を1L−フラスコに入れた。実施例4で得た、アミノエステル(31.38g,96mmol)を含む粗製の生成物を攪拌しながら加えた。次いで、12.0gのシリコンジオキサイド(シリカ,60Å)を加えた。混合物を35℃に加温し、同温度で4時間攪拌した。その後、温度を50℃まで上げ、攪拌を更に30分間続けて反応を完了した。反応液を室温にまで冷却し、ジイソプロピルエーテル(300ml)を加え、混合液を15分間攪拌し、グラスフリットで濾過した。シリカと固体の塩を300mlのジイソプロピルエーテル(濾過器中)に再懸濁し、溶媒を留去した。濾液を合わせ、2回、水(150ml)で抽出し、そしてホウ酸塩緩衝液(pH6.5,150ml)で2回抽出した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾去した。ジイソプロピルエーテルの二回の洗液(15ml)を濃縮した。遊離塩基が油状物質(37.4g)として得られた。生成物の純度は、HPLCにより95%と決定され、所望の(R,S)−ジアステレオマーを82〜85%含有していた。
【0124】
粗製の生成物を注意深く加熱し、2−プロパノール(300ml)中、マレイン酸(11.1g、96mmol)溶液と混合した。混合液を透明な溶液が得られるまで50℃で加熱攪拌した。次に、混合液を室温にまで冷却し、攪拌した。まもなく、所望の生成物が結晶化した。更に4時間攪拌を続け、生成物を焼結ガラスフィルター上で分離し、2回、2−プロパノール(10ml)で洗い、自然乾燥した。
【0125】
収率は、38.8g(粗製原料中における(S)−(2−クロロフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−[3,2−c]チエノピリジン−5−イル酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステルを基準として97.5%、そして出発原料中におけるジアステレオマー混合物の合計量を基準として80%)であった。生成物の融点は、DSC測定で173℃であり、表題化合物を98%(HPLC)より多く含有していた。所望しない(R,R)−ジアステレオマーの含量は、1%未満であった。母液及び洗液は、両方のジアステレオマーを15:85の比率で含んでいた。このジアステレオマーの比率は、キラルクロマトグラフィーで測定した。
【0126】
最終生成物中の所望の(R、S)−ジアステレオマー含量は、非常に大きいので、更に精製することなく、また所望の(R,S)−ジアステレオマーを更に富化させることなく、生成物を直接反応させてクロピドグレルを製造することができる。
実施例17
【0127】
(2−クロロフェニル)−α−2−[(2−チエノ)エチル]アミノ酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステル
(R,R)−ジアステレオマーを約80%及び(R,S)−ジアステレオマーを約20%含む遊離塩基として、2,α−ジクロロフェニル酢酸−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステル(2.9g)のアセトニトリル溶液(20ml)を、2−チエニルエチルアミン(1.3g)及びトリエチルアミン(4ml)と混合し、混合物を2時間攪拌しながら加熱還流した。アセトニトリル及び過剰のトリエチルアミンを留去し、残渣をクロロホルムと水に分配した。有機層を分離し、水で洗って乾燥した後、溶媒を留去した。残渣(3.2g)は、(R,S)−ジアステレオマーエステル85%及び(R,R)−ジアステレオマーエステル15%の混合物を含み、これは更に精製することなく次の工程で使用された。
実施例18
【0128】
(2−クロロフェニル)−α−4,5,6,7−テトラヒドロ−[3,2−c]チエノ−ピリジン−5−イル−酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステル 2臭化水素酸塩
実施例17で得た(R、S)−及び(R、R)−α−(2−クロロフェニル)−α−2−[(2−チエノ)エチル]アミノ酢酸−(1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステル(3.1g)の粗製混合物を2M 塩酸(10ml)に取り、36%ホルムアルデヒド水溶液(5ml)を攪拌しながら加えた。混合物を50℃で2時間攪拌した。反応液をジイソプロピルエーテルと10%炭酸水素ナトリウム水溶液に分配した。有機層を分離し、水洗し、乾燥して減圧濃縮した。残渣を2−プロパノールと酢酸2−プロピルとの1:1混合物(30ml)に溶かした。臭化水素ガス(1.6g)を攪拌しながら10℃に冷却して該混合液に導入した。析出した塩を濾過し、酢酸2−プロピルで洗い、乾燥し、(R,S)−ジアステレオマーを約92%及び(R,R)−ジアステレオマーを8%(キラルHPLCで測定)含有する結晶性生成物(2.85g)を得た。
実施例19
【0129】
(S)−(2−クロロフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−[3,2−c]チエノピリジン−5−イル−酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステル塩酸塩のオルソチタネートの触媒作用によるエステル交換反応
エチレングリコール(1.36g)をチタニウム(IV)イソプロポキサイド(12.6g)に加え、両成分を充分によく混合した。続いて発熱反応が起こり、エチレンービス−(トリイソプロピル)オルソ−チタネートが形成され、これは、混合物を冷却後、エステル交換反応の触媒として使用された。該触媒を(S)−(2−クロロフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−[3,2−c]チエノピリジン−5−イル−酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステル塩酸塩(7.43g)のメタノール溶液(70ml)に加え、混合液を48時間加熱還流し、そして室温まで冷却した。次いで、炭酸水素ナトリウム(6.3g)を加え、混合物を30分間攪拌した。生成した固体を濾過し、濾液を濃縮した。残渣をジエチルエーテル(200ml)に懸濁し、懸濁液を30分間攪拌した。触媒は水(1.6ml)をゆっくり加えて分解した。固形の無水硫酸ナトリウム(10g)を、得られた水素化チタニウムオキサイドの嵩高い白色沈殿物の懸濁液に加え、混合物を更に20分間攪拌した。次いで固体を濾過し、ジエチルエーテルを用いてフィルター上で数回洗った。濾液及び水洗液を濃縮し、(R)−エナンチオマー約15%及び(S)−エナンチオマー85%を含むクロピドグレル(3.9g)の遊離塩基を得た。
実施例20
【0130】
(S)−(2−クロロフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−[3,2−c]チエノピリジン−5−イル−酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステルの塩素化シリカの触媒作用によるエステル交換反応
平均細孔径60Åの乾燥(120℃,20トル,2時間)シリカ(20g)を塩化チオニル(60ml)に懸濁し、懸濁液を46時間加熱還流した。この修飾シリカを濾取し、減圧下、真空乾燥器中125℃で2時間乾燥し、次いで360℃で30分間加熱して活性化した。(S)−(2−クロロフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−[3,2−c]チエノピリジン−5−イル−酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステル(10.0g)の遊離塩基をメタノール(150ml)に溶かした。次いで、活性化された修飾シリカ(20g)を加え、混合物を48時間攪拌しながら加熱還流した。シリカを濾取し、メタノール(100ml)で数回洗い、濾液と水洗液とを合わせ、濃縮した。濃縮残渣(7.1gの(S)−クロピドグレルを含む10.0g)を(S)−クロピドグレルの薬学的に許容される塩に変換した。
実施例21
【0131】
(S)−(2−クロロフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−[3,2−c]チエノピリジン−5−イル−酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステル2塩酸塩の塩素化シリカの触媒作用によるエステル交換反応
平均細孔径100Åの乾燥(120℃,20トル,2時間)シリカ(20g)を五塩化リン(14g)のヘキサン溶液(80ml)に懸濁し、懸濁液を10時間加熱還流した。
冷却後、懸濁液を一夜、放置し、濾過し、ヘキサン(20ml)で2回洗った後、窒素雰囲気下、2時間乾燥した。引き続き、減圧下、真空乾燥器中125℃で2時間乾燥した。次いで360℃で30分間加熱して触媒を活性化した。この触媒は、密閉容器に保存すると数ケ月間にわたりその性能を保持する。
【0132】
(S)−(2−クロロフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−[3,2−c]チエノピリジン−5−イル−酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステル2塩酸塩(10.0g)をメタノール(150ml)に溶かした。次いで、活性化された修飾シリカ(20g)を加え、混合物を46時間攪拌しながら加熱還流した。シリカを濾過し、メタノールで洗い(3×25ml)、濾液と水洗液とを合わせ、濃縮した。濃縮残渣を、炭酸水素ナトリウムの冷飽和水溶液とメチルtert−ブチルエーテルとで抽出した。有機層を分離し、遊離されたジメプラノールを水で抽出した。有機層からメチルtert−ブチルエーテルを留去した後、得られた残渣は遊離塩基の(S)−クロピドグレル(6.5g)を含んでおり、これを薬学的に許容される塩に変換し、結晶化して精製した。
実施例22
【0133】
(S)−クロピドグレル(エステル交換反応生成物の精製とエナチオマー富化 − 変法A)
エステル交換反応で得た、(R)−エナンチオマー8%及び(S)−エナンチオマー92%を含むクロピドグレル(16.0g)の粗製遊離塩基をアセトン(240ml)に溶かした。溶液を15℃に冷却し、攪拌しながら96%硫酸(0.43ml,0.78g)のアセトン溶液(10ml)を加えた。約2.5時間後に、ラセミ体のクロピドグレル硫酸塩2水和物が生成し、このものを濾過した。一方、(S)−エナンチオマーは、溶液中に残った。濾液を減圧濃縮し、残渣をメチルtert−ブチルエーテルと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液とで抽出した。有機層を乾燥し、濃縮した。(S)−クロピドグレルが、遊離塩基として、99.0%の光学純度、11.2gの収量で得られた。
実施例23
【0134】
(S)−クロピドグレル(エステル交換反応生成物の精製とエナチオマー富化 − 変法B)
ラセミ体のクロピドグレル硫酸塩を沈殿させる前に、(S)−クロピドグレルのエナンチオマー過剰率に相当する量のトリエチルアミン又は別の適当な揮発性第3級アミンを用いた以外は、実施例20と同様にエステル交換反応生成物の精製を行った。該アミンは(S)−クロピドグレルと硫酸複塩を形成し、このものは溶解度が増加し、生成物の光学純度の増加に貢献する。揮発性アミンは、該塩を分解し、遊離塩基を有機溶媒で抽出し、濃縮した後に容易に除去することができる。
実施例24
【0135】
(S)−(2−クロロフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−[3,2−c]チエノピリジン−5−イル−酢酸 (R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステルのマレイン酸塩の塩基性媒体中における塩化亜鉛触媒作用を用いたエステル交換反応によるクロピドグレルの製造(好ましい製法)
【化116】

無水塩化亜鉛(25.2g,0.185mol)と27mlのN−メチルピロリジン(21.6g、0.25 Mol)とを550mlの熱メタノール(最大水分含有量:0.1%)に溶かした。(S)−(2−クロロフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−[3、2−c]チエノピリジン−5−イル−酢酸−(R)−1−(ジメチルアミノ)−2−プロピルエステルのマレイン酸塩を約98.0%、そして対応する(R,R)−エナンチオマーを約0.5%(残りの1.5%は同定されていない不純物)含んでいる、実施例16で得た生成物(65g,0.128mol)を上記溶液に還流下、加えた。混合液を反応が実質的に完了(HPLCで測定してエステル交換が97.5〜98.5%完了)するまで、水浴中で加熱還流した。エステル交換反応が終了後、反応液を冷却し、メタノールをロータリーエバポレーターで減圧下、留去し、残渣を10%炭酸水素ナトリウム水溶液(160ml)とジイソプロピルエーテル(200ml)とに混合した。25%アンモニア水溶液を、水酸化亜鉛と塩基性炭酸亜鉛との懸濁液が溶ける(約70ml)までゆっくりと加えた。有機層を分離し、水層をジイソプロピルエーテル(40ml)で2回抽出した。抽出の間、温度は12〜15℃に維持し、水層におけるクロピドグレル含量はHPLCで追跡した。有機層を合わせ、生理食塩水(60ml)で3回、洗った。有機層を硫酸ナトリウウムで乾燥し、濾過し、濃縮した。粗製のクロピドグレル塩基の収量は定量的(41g)であった。
【0136】
こうして得たクロピドグレルは、所望のS−(+)−クロピドグレルを93〜96%及び所望しないS−(−)−クロピドグレルを4〜7%含んでいた。これをアセトン(4〜8ml/g)に溶かし、濃硫酸のモル当量で20%をゆっくりと冷却(15℃)しながら加えた。ラセミ体のクロピドグレル硫酸水素塩が、徐々に溶液から析出した。反応混合物を一晩、攪拌し、ラセミ体の固形物を濾過して分離した。クロピドグレル硫酸水素塩の所望のS−(+)−エナンチオマーは、母液に残った。S−(+)−エナンチオマーの濃度を約25%に調節し、1.05当量になるまで濃硫酸を冷却しながら滴下した。この溶液にクロピドグレルの所望のS−(+)−エナンチオマー種結晶を加えると、結晶化が直ちに起こった。混合物を室温で5〜6時間、攪拌し、次いで焼結フィルターS2で濾過し、アセトン(50ml)で洗い、そして最初は自然乾燥で次いで50℃、22トルの真空乾燥器で乾燥した。もし硫酸添加の始めに濁りが生じ、次いでこれが褐色の無定形固体に凝集する場合には、この無定形物質は、反応混合物から除かなければならない。それは、不純物の無定形硫酸塩あるいは多形の硫酸水素塩のその後の結晶化に影響を与える出発原料から成る。
【0137】
本工程の収率は、78〜63%(純粋な原料を基準として)であった。融点は182〜184℃であり、所望しないR−(−)−クロピドグレル含量は0.5〜1.2%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】

(II)
(式中、Xはハロゲン原子を表し、Y及びZは、それぞれ独立して脱離基を表す。)で表される化合物を、光学的活性アミノアルコールと反応させてジアステレオマーの第1混合物を生成させる製造工程から成ることを特徴とする、式(Ia):
【化2】

(Ia)
(式中、Xは上記で定義した通りである)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の製造方法。
【請求項2】
ジアステレオマーの第1混合物を、更に式(V):
【化3】

(V)
で表される化合物又は式(VII):
【化4】

(VII)
で表される化合物と反応させて、ジアステレオマーの第2混合物を生成させ、一方のジアステレオマー分離した後、所望により更に反応させて上記の式(Ia)の化合物を製造することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記の式(Ia)で表される化合物を製造するための、ジアステレオマーの第2混合物の反応が、チタニウム触媒又は珪素触媒の存在下におけるエステル交換から成ることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
該チタニウム触媒が、エチレングリコールとチタニウム(IV)アルコキシドとの反応生成物であり、珪素触媒が塩素化珪素であることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
上記の式(Ia)の化合物を製造するためのジアステレオマーの第2混合物の反応が、元素周期律表の第1又は第2サブグループの遷移金属のハライドである触媒の存在下でのエステル交換から成ることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
該触媒が、ZnX、Cu、CuX、AgX、AuX、AuX、CdX、Hg、CoX及びHgXから選択される触媒であり、Xが、フルオライド、クロライド、ブロマイド及びヨーダイドから選択されるハライドイオンであることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
該触媒が、塩化亜鉛であることを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
該エステル交換が、有機塩基の存在下に行われることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
ジアステレオマーの第1混合物における、第2ジアステレオマーに対する一方のジアステレオマーの比率が、2:1又はそれより大きいことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
ジアステレオマーの第1混合物における、第2ジアステレオマーに対する一方のジアステレオマーの比率が、3:1又はそれより大きいことを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
式II:
【化5】

(II)
で表される化合物と光学活性アミノアルコールとの反応生成物が、ケトン中で加熱還流されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項12】
ジアステレオマーの第2混合物における、第2ジアステレオマーに対する一方のジアステレオマーの比率が、3:1又はそれより大きいことを特徴とする、請求項2乃至11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
ジアステレオマーの第2混合物における、第2ジアステレオマーに対する一方のジアステレオマーの比率が、9:1又はそれより大きいことを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
ジアステレオマーをジアステレオマーの第2混合物から分離し、次いでこれを更に反応させて式(Ia)の化合物を製造することを特徴とする、請求項2乃至13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
ジアステレオマーの第2混合物を、ジアステレオマーを予め分離することなく反応させて、化合物(Ia):
【化6】

(Ia)
(式中、Xは上記で定義した通りである)と化合物(Ib):
【化7】

(Ib)
(式中、Xは上記で定義した通りである)との混合物を生成させ、次いで、式(Ia)の化合物を式(Ia)及び式(Ib)の化合物の混合物から単離し、所望により、その薬学的に許容される塩に変換することを特徴とする、請求項2乃至13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
式(Ia)及び式(Ib)の化合物の混合物からの式(Ia)の化合物の単離が、無機酸を混合物に加え、式(Ia)及び式(Ib)の化合物のラセミ体の塩を析出させ、分離し、母液に更に無機酸を加え、そして式(Ia)の化合物の塩を析出させ、分離することから成ることを特徴とする、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
第2ジアステレオマー混合物のジアステレオマーを、ジカルボン酸の塩に変換し、次いでこれをエステル交換に付して、式(Ia)の化合物及び式(Ib)の化合物との混合物を生成させることを特徴とする、請求項2乃至16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
該ジカルボン酸が、マレイン酸であることを特徴とする、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
Xが、塩素原子であることを特徴とする、請求項1乃至18のいずれかに記載の製造方法。
【請求項20】
該光学活性アミノアルコールが、式(III):
【化8】

(III)
(式中、Aは、1乃至30の炭素原子を有する炭化水素基を表し、該炭化水素基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びハロゲン原子から選択される最大5個までのヘテロ原子を含有していてもよく、また水酸基、オキソ基、シアノ基及びニトロ基から選択される最大5個までの置換基で置換されていてもよく、そして1以上の光学活性ユニットを有しており、及び
及びRは、独立して、水素原子又は炭素原子1乃至20の炭化水素基を表し、該各炭化水素基は、それぞれ、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びハロゲン原子から選択される最大4個までのヘテロ原子を含有してもよく、また水酸基、オキソ基、シアノ基及びニトロ基から選択される最大5個までの置換基で置換されていてもよく、あるいはR及びRの一方又は両方は、基Aの炭素原子又はヘテロ原子と共に5員乃至10員の飽和又は不飽和の環を形成し、該窒素原子に加えて、更に窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1乃至3個のヘテロ原子を任意に環原子として含有していてもよく、またC−C−アルキル基、C−C−アルケニル基、C−C−アルコキシ基、C−C10−アリール基、C−C10−ヘテロアリール基、C−C−シクロアルキル基、C−C−ヘテロシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、シアノ基及びニトロ基から選択される最大5個までの置換基で置換されていてもよい)で表されることを特徴とする、請求項1乃至19のいずれかに記載の製造方法。
【請求項21】
及びRは、独立してC−C−アルキル基、C−C10−アリール基、C−C10−ヘテロアリール基、C−C−シクロアルキル基又はC−C−ヘテロシクロアルキル基を表し、あるいはR及びRが結合している窒素原子と共に、炭素原子3乃至8個の飽和またはモノ不飽和の環を表し、該環はC−C−アルキル基又はハロゲン原子で任意に置換されていてもよく、そして該窒素原子に加えて、硫黄原子、窒素原子及び酸素原子から選択される1個又は2個のヘテロ原子を更に含有していてもよいことを特徴とする、請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
HO−Aが、式:
【化9】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子1乃至20の炭化水素基であり、該各炭化水素基は窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びハロゲン原子から選択される最大4個までのヘテロ原子を有していてもよく、そして水酸基、オキソ基、シアノ基及びニトロ基から選択される最大5個までの置換基を有していてもよく、あるいは
〜Rの1つ又は2つは、5員乃至10員の飽和又は不飽和の環をR又はRと共に形成してもよく、該環は、該窒素原子に加えて、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を更に環原子として任意に含有してもよく、そして該環は、C−C−アルキル基、C−C−アルケニル基、C−C−アルコキシ基、C−C10−アリール基、C−C10−ヘテロアリール基、C−C−シクロアルキル基、C−C−ヘテロシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、シアノ基及びニトロ基から選択される最大5個までの置換基で置換されていてもよく、そしてnは1乃至3の整数である。)で表される基であることを特徴とする、請求項20又は21に記載の製造方法。
【請求項23】
およびRが、独立して、水素原子およびC−C−アルキル基から選択されることを特徴とする、請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
及びRのうちの1つだけが、水素原子でないことを特徴とする、請求項23に記載の製造方法。
【請求項25】
及びRの全てが、水素原子であることを特徴とする、請求項24に記載の製造方法。
【請求項26】
nが1又は2であることを特徴とする、請求項22乃至25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
が、C−C−アルキル基、C−C10−アリール基、C−C10−ヘテロアリール基、C−C−ヘテロシクロアルキル基又はC−C−シクロアルキル基であることを特徴とする、請求項22乃至26のいずれかに記載の製造方法。
【請求項28】
が、C−C−アルキル基であることを特徴とする、請求項27に記載の製造方法。
【請求項29】
が、水素原子であることを特徴とする、請求項22乃至28のいずれかに記載の製造方法。
【請求項30】
が、Rと共に環を形成し、該環は5乃至10個の環原子を有し、Rが結合している窒素原子に加えて、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選択される1乃至3個のヘテロ原子を更に含有していてもよく、また該環は、飽和又はモノ−もしくはジ−不飽和であってもよく、そして、C−C−アルキル基、C−C10−アリール基、C−C10−ヘテロアリール基、C−C−シクロアルキル基、C−C−ヘテロシクロアルキル基及びハロゲン原子から選択される1乃至3個の置換基を有していてもよいことを特徴とする、請求項22に記載の製造方法。
【請求項31】
HO−Aが、式
【化10】

又は
【化11】

(式中、Yは、
【化12】

を、そしてYは、
【化13】

(R及びR10は、独立して水素原子及びC−C−アルキル基から選択され、R及びRは、2つのフェニル基が互いに自由に回転するのを防止する基であり、R11及びR12は、独立して、水素原子、C−C−アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、C−C−アルコキシカルボニル基又はC−C−アルキル基であり、又はR11及びR12は、結合しているベンゼン環と共に、1,3−ベンゾジオキソリル、α−ナフチル、β−ナフチル、テトラヒドロナフチル、ベンズイミダゾリル及びベンズトリアゾリル構造から選択され、mは、0乃至2の整数であり、そしてpは1又は2である。)を表す)を表すことを特徴とする、請求項20又は21に記載の製造方法。
【請求項32】
及びRの一方が、C−C−アルキル基、ハロゲン原子及びシアノ基から選択され、他方はC−C−分枝アルキル基、好ましくはtert−ブチル基、ハロゲン原子及びシアノ基から選択されることを特徴とする、請求項31に記載の製造方法。
【請求項33】
式(III)
【化14】

(III)
の化合物が、式
【化15】

(式中、Yは、請求項31で定義した通りであり、Rは、請求項20で定義した通りであり、基
【化16】

は、5員乃至10員の飽和又は不飽和環であり、該窒素原子の他に、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1乃至3個のヘテロ原子を環原子として任意に含有していてもよく、また、C−C−アルキル基、C−C−アルケニル基、C−C−アルコキシ基、C−C10−アリール基、C−C10−ヘテロアリール基、C−C−シクロアルキル基、C−C−ヘテロシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、シアノ基及びニトロ基から選択される最大5個までの置換基で置換されていてもよい)の化合物であることを特徴とする、請求項20に記載の製造方法。
【請求項34】
該基
【化17】

が、基
【化18】

であることを特徴とする、請求項33に記載の製造方法。
【請求項35】
ジアステレオマー(IVa)
【化19】

(IVa)
及びジアステレオマー(IVb)
【化20】

(IVb)
(式中、X及びZは、請求項1で定義した通りであり、A,R及びRは、請求項20乃至33のいずれかで定義した通りである)の混合物。
【請求項36】
ジアステレオマー(IVa)とジアステレオマー(IVb)との比率が、2:1又はそれより大きいことを特徴とする、請求項35に記載の製造方法。
【請求項37】
ジアステレオマー(IVa)とジアステレオマー(IVb)との比率が、3:1又はそれより大きいことを特徴とする、請求項36に記載の製造方法。
【請求項38】
式(IVa)
【化21】

(IVa)
(式中、X、Z、A、R及びRは、請求項35で定義した通りである)の化合物。
【請求項39】
ジアステレオマー(VIa)
【化22】

(VIa)
及び
ジアステレオマー(VIb)
【化23】

(VIb)
(式中、Xは請求項1で定義した通りであり、A、R及びRは、請求項20乃至34のいずれかで定義した通りである)の混合物、又はその塩の混合物。
【請求項40】
該ジアステレオマーが、マレイン酸塩、フマル酸塩、又は蓚酸塩であることを特徴とする、請求項39に記載の混合物。
【請求項41】
ジアステレオマー(VIa)とジアステレオマー(VIb)との比率が、3:1又はそれより大きいことを特徴とする、請求項40に記載の混合物。
【請求項42】
ジアステレオマー(VIa)を98%以上、及びジアステレオマー(VIb)を2%以下、含有することを特徴とする、請求項41に記載の混合物。
【請求項43】
式(VIa)
【化24】

(VIa)
(式中、X、A、R及びRは、請求項39で定義した通りである)の化合物、又はその塩。
【請求項44】
マレイン酸塩、フマル酸塩、又は蓚酸塩であることを特徴とする、請求項43に記載の化合物。
【請求項45】
ジアステレオマー(VIIIa)
【化25】

(VIIIa)
及び
【化26】

(VIIIb)
(式中、Xは、請求項1で定義した通りであり、A、R及びRは、請求項20乃至34のいずれかで定義した通りである)の混合物、又はその塩の混合物。
【請求項46】
ジアステレオマーが、マレイン酸塩、フマル酸塩、又は蓚酸塩であることを特徴とする、請求項45に記載の混合物。
【請求項47】
ジアステレオマー(VIIIa)とジアステレオマー(VIIIb)との比率が、3:1又はそれより大きいことを特徴とする、請求項46に記載の混合物。
【請求項48】
ジアステレオマー(VIIIa)が98%以上、及びジアステレオマー(VIIIb)を2%以下、存在することを特徴とする、請求項47に記載の混合物。
【請求項49】
式(VIIIa)
【化27】

(VIIIa)
(式中、X、A、R及びRは、請求項45で定義した通りである)の化合物、又はその塩。
【請求項50】
マレイン酸塩、フマル酸塩、又は蓚酸塩の形態であることを特徴とする、請求項49に記載の化合物。
【請求項51】
化合物
【化28】

及び
化合物
【化29】

の混合物を、まずL−(−)−ジ−O−ベンゾイル−L−(−)−酒石酸(L−(−)−DBTA)と反応させ、次いでアキラルな鉱酸と反応させて、
化合物
【化30】

のL−(−)−DBTA塩を分離することを特徴とする、
化合物
【化31】

の製造方法。

【公表番号】特表2007−533671(P2007−533671A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508735(P2007−508735)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013773
【国際公開番号】WO2005/113559
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(501249043)ラティオファルム ゲー・エム・ベー・ハー (7)
【Fターム(参考)】