説明

クロロトキシンポリペプチドおよびコンジュゲートならびにその使用

クロロトキシンの単一種のコンジュゲートを生成するために使用することができる低リジンクロロトキシンポリペプチド。そのようなクロロトキシンポリペプチドを含むコンジュゲートおよびその医薬組成物。そのような組成物および/またはコンジュゲートの使用方法。一実施形態において、コンジュゲートするための部位として利用可能なリジンを1つ以下有するクロロトキシンポリペプチドが提供される。別の実施形態において、このクロロトキシンポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも65%の全体的な配列同一性を有し、両端値を含め、24アミノ酸から40アミノ酸の間の長さを有するという点で、配列番号1のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
クロロトキシンは、腫瘍細胞に特異的に結合することが示されている、サソリLeiurius quinquestriatus由来の毒液のペプチドコンポーネントである。クロロトキシンは、細胞傷害性薬剤および/またはイメージング剤を、転移性腫瘍および悪性神経膠腫などの脳腫瘍を含めた種々の腫瘍に送達するためのターゲティング薬剤として使用されてきた。例えば、クロロトキシンは、放射性同位元素であるヨウ素131とコンジュゲートされており、そのようなクロロトキシンコンジュゲートは、有効な抗腫瘍治療剤であることが示されている。サポリンに付着したクロロトキシン−GST融合タンパク質などのタンパク質融合物を含めた他のクロロトキシンコンジュゲートによっても、腫瘍細胞が有意かつ選択的に死滅することが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
クロロトキシンは、潜在的に、細胞傷害性薬剤および/またはイメージング剤を含めた任意の多種多様な作用剤とコンジュゲートすることができる。現在利用可能なクロロトキシンコンジュゲートは、抗腫瘍性が実証されているが、本発明は、クロロトキシンコンジュゲートのレパートリーがより多ければ、より多くの利点がもたらされ得るという理解を包含する。一例を挙げると、異なるクロロトキシンコンジュゲートは、所与の腫瘍型および/または患者に対して特に望ましい可能性があるそれらの独特な薬物動態的性質のセットを有し得る。さらに、本発明は、野生型クロロトキシンポリペプチド(およびそのポリペプチドの多くの変異体)は、コンジュゲーションが起こり得る部位を2つ以上含有するという現実から生じる、特定の種類のクロロトキシンコンジュゲートに伴う、以前に文書で証明されていない、潜在的な問題の原因を特定する。したがって、本発明は、クロロトキシンとのコンジュゲートを生成するための化学反応の結果、多くの場合、コンジュゲート種の混合物が生じるという洞察を提供する。少なくとも一部の実施形態では、そのような異なる種は、異なる性質を有し得る。さらに、そのようなクロロトキシンコンジュゲート混合物を用いてなされた発見を再現する試みは、調製物内の異なる種の分布を再現するという難題に妨害される恐れがある。品質管理、および分析さえも、難しい、または不可能である可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、新型のクロロトキシンコンジュゲートを提供し、他のクロロトキシンコンジュゲートを用いると遭遇する可能性のある問題の原因を特定する。すなわち、本発明は、多くの以前のクロロトキシンコンジュゲートは、対象の部分または実体をクロロトキシンポリペプチドに化学的にコンジュゲートすることによって調製されることを理解する。本発明に従って、少なくともいくつかの例では、そのような手法により、対象の部分または実体が異なるポイントまたは場所でクロロトキシンとコンジュゲートしているコンジュゲートの混成集団が生成することが理解される。本発明は、そのような混成集団は、特徴付けること、および/または再現することが難しく、異なる性質(例えば、薬物動態的性質)を示す可能性があり、差異は予測不可能であり得るという理解を包含する。本発明は、例えば、治療への適用および/または診断への適用において、単一種のクロロトキシンコンジュゲートのみを含有する調製物が、コンジュゲートの混合物を含有する調製物よりも望ましいという理解を包含する。
【0004】
本発明は、この特定された問題の原因に対する解も提供する。例えば、本発明は、単一種のコンジュゲートを生成することができる低リジンクロロトキシンポリペプチドを提供する。ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドが提供される。種々の態様において、コンジュゲートするための部位として利用可能なリジンを1つ以下有するクロロトキシンポリペプチドを含むクロロトキシンコンジュゲート(「モノリジンクロロトキシンコンジュゲート」)、そのようなコンジュゲートを含む医薬組成物、およびそのようなコンジュゲートの使用方法が提供される。一部の実施形態では、リジン残基を有さない低リジンクロロトキシンポリペプチドが提供される。
【0005】
ある特定の実施形態では、本発明は、低リジンクロロトキシンポリペプチドおよびそのコンジュゲートの作製方法および使用方法を提供する。一部の実施形態では、提供される低リジンクロロトキシンポリペプチドおよび/またはそのコンジュゲートは、医薬(例えば、種々の治療的状況および/または診断的状況において)において使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義
本明細書で使用される場合、「約」および「およそ」という用語は、数に関しては、本明細書では、別段の指定のない限り、または文脈から明らかでない限り、その数のいずれかの方向(それよりも大きい方向、または小さい方向)に20%、10%、5%、または1%の範囲内に入る数を含めるために使用される(そのような数が可能性のある値の100%を超える場合を除く)。
【0007】
本明細書で使用される場合、「特有の配列エレメント」または「配列エレメント」という用語は、別のポリペプチドに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を示す連続したアミノ酸、一般には、少なくとも5アミノ酸、例えば、少なくとも5〜50アミノ酸、5〜25アミノ酸、5〜15アミノ酸または5〜10アミノ酸のひと続きを指す。一部の実施形態では、特有の配列エレメントは、ポリペプチドの機能に関与する、またはポリペプチドに機能を付与する。一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、特有の配列エレメントを含む。いくつかのそのような実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、TTDHQMAR(配列番号29)である特有の配列エレメントを含む。
【0008】
「化学療法薬」、「抗癌剤」および「抗癌薬」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、癌または癌による状態を治療するために使用される薬物療法を指す。抗癌薬は、慣習的に、以下の群のうちの1つに分類される:放射性同位元素(例えば、ヨウ素131、ルテチウム177、レニウム188、イットリウム90)、毒素(例えば、ジフテリア、シュードモナス、リシン、ゲロニン)、酵素、プロドラッグを活性化するための酵素、放射線感作薬、干渉RNA、スーパー抗原、抗血管新生薬、アルキル化剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、植物アルカロイド、インターカレーティング抗生物質(intercalating antibiotics)、アロマターゼ阻害剤、代謝拮抗薬、有糸分裂阻害剤、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的反応修飾物質(biological response modifier)、抗ホルモン薬および抗アンドロゲン薬。そのような抗癌剤の例としては、これらに限定されないが、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、パクリタキセル、テモゾロミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカルバジン、デカルバジン、アルトレタミン、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン、リン酸フルダラビン、クラドリビン、ペントスタチン、シタラビン、アザシチジン、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン(bleomysin)、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルチミド(aminogluthimide)、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトタンおよびアミホスチンが挙げられる。
【0009】
本明細書で使用される場合、「クロロトキシン」という用語は、アミノ酸配列(配列番号1)を有する長さが36アミノ酸のペプチドを指す。「クロロトキシン」という用語は、本明細書で使用される場合、サソリLeiurius quinquestriatusまたはクロロトキシンを見いだすことができる他の生物体の毒液から単離されたクロロトキシン、ならびに組換えクロロトキシンおよび合成クロロトキシンを包含する。
【0010】
本明細書で使用される場合、「クロロトキシンコンジュゲート」という句は、1つまたは複数の対象の実体または部分と共有結合しているクロロトキシンポリペプチドを指す。一部の実施形態では、対象の実体は、ポリペプチドではなく、かつ/またはポリペプチド鎖内に連結していない。一部の実施形態では、対象の実体は、アミノ酸の側鎖に連結している。一部の実施形態では、対象の実体は、リジン残基を介してクロロトキシンポリペプチドに連結している。
【0011】
本明細書で使用される場合、「クロロトキシンポリペプチド」という句は、クロロトキシン(配列番号1)に対して少なくとも45%の全体的な配列同一性を示し、両端の値を含め、24アミノ酸から40アミノ酸の間の長さを有するポリペプチドを指す。一部の実施形態では、クロロトキシンポリペプチドは、配列番号1に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の全体的な配列同一性を有する。一部の実施形態では、クロロトキシンポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも65%の全体的な配列同一性を有する。一部の実施形態では、クロロトキシンポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも91%の全体的な配列同一性を有する。一部の実施形態では、クロロトキシンポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも94%の全体的な配列同一性を有する。一部の実施形態では、クロロトキシンポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも97%の全体的な配列同一性を有する。一部の実施形態では、クロロトキシンポリペプチドは、さらに配列番号1と少なくとも1つの特有の配列エレメントを共有する。一部の実施形態では、特有の配列エレメントはTTDHQMAR(配列番号29)である。一部の実施形態では、クロロトキシンポリペプチドは、両端値を含め、24アミノ酸から40アミノ酸の間の長さを有する。一部の実施形態では、「クロロトキシンポリペプチド」は、一般には、C末端および/もしくはN末端における、ならびに/または配列内に挿入された別個のブロックアミノ酸の1つまたは複数の追加的なひと続きを含む。一般には、そのような追加的なひと続きは、約3〜約1000アミノ酸長である。一部の実施形態では、追加的なひと続きは、約3〜100アミノ酸長、3〜90アミノ酸長、3〜80アミノ酸長、3〜70アミノ酸長、3〜60アミノ酸長、3〜50アミノ酸長、3〜40アミノ酸長、3〜30アミノ酸長または3〜20アミノ酸長である。一部の実施形態では、追加的なひと続きは、約20アミノ酸長または20アミノ酸長未満、約15アミノ酸長または15アミノ酸長未満、または約10アミノ酸長または10アミノ酸長未満である。一部の実施形態では、追加的なひと続きは、1つまたは複数の公知のタグを含む。一部の実施形態では、追加的なひと続きは、細胞傷害性薬剤を含む。
【0012】
本明細書で使用される場合、「併用療法」という句は、2種以上の活性薬剤を同じ被験体に、被験体が両方の作用剤に同時に曝露されるように投与することを指す。当業者は、任意の個々の作用剤を、単回投与で、または、多数回の投与、例えば、所定の間隔にわたって間隔を空けて、または所定のパターンで投与することが望ましい場合があることを理解されよう。併用療法は、投薬を受ける被験体が両方の作用剤に同時に曝露される限りは、2種以上の活性薬剤の個々の投薬を同時に施す必要はない。併用療法では、2種以上の活性薬剤を同じ経路で投与する必要もない。一部の実施形態では、併用療法において投与される少なくとも2種の活性薬剤の一方または両方を、単独で投与した場合のその用量または頻度と比較して低い用量および/または頻度で投与する。
【0013】
「対応する」という句は、本明細書においてアミノ酸配列またはヌクレオチド配列の位置または部位について記載するために使用される場合、当技術分野で理解されている通り使用される。当技術分野で周知の通り、2つ以上のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列は、例えば、BLAST、ClustalX、Sequencherなどのプログラムを含めた標準のバイオインフォマティクスツールを用いてアラインメントすることができる。たとえ2つ以上の配列が正確に一致せず、かつ/または同じ長さを有さなくても、なお配列のアラインメントを行い、望ましい場合、「コンセンサス」配列を生成することができる。実際に、アラインメントのために使用されるプログラムおよびアルゴリズムは、一般には、定義できるレベルの挿入、欠失、逆位、多型、点突然変異などを含めた差異を許容する。そのようなアラインメントは、一方のヌクレオチド配列のどの位置が、他方のヌクレオチド配列のどの位置に対応するかを決定する助けになり得る。
【0014】
本明細書で使用される場合、「投薬レジメン」という句は、期間を隔てて個別に投与される単位用量(一般には、2つ以上の)のセットを指す。特定の医薬品または組成物に対して推奨される用量のセット(すなわち、量、タイミング、投与経路など)がその投薬レジメンを構成する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「有効量」および「有効用量」という用語は、その意図された目的(複数可)、すなわち、許容できる損益比で、組織または被験体における所望の生物学的反応または治療効果のある反応を果たすために十分な、化合物または組成物の任意の量または用量を指す。例えば、本発明のある特定の実施形態では、目的(複数可)は、:血管新生を阻害すること、新脈管構造(neovasculature)の退縮を引き起こすこと、別の生理活性分子の活性に干渉すること、腫瘍の退縮を引き起こすこと、転移を阻害すること、転移の程度を低下させることなどであり得る。関連する意図された目的は、客観的(すなわち、いくつかの試験またはマーカーによって測定可能な)または主観的(すなわち、被験体により効果の指標または感じが示される)であり得る。一般に、治療有効量を、多数の単位用量を含み得る投薬レジメンで投与する。任意の特定の医薬品について、治療有効量(および/または有効な投薬レジメン内の適切な単位用量)は、例えば、投与経路に応じて、他の医薬品との組み合わせに応じて変動し得る。一部の実施形態では、任意の特定の患者に対する特異的な治療有効量(および/または単位用量)は、治療されている障害および障害の重症度;使用する特異的な医薬品の活性;使用する特定の組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康、性別および食事;投与時間、投与経路、および/または使用する特異的な医薬品が排出される速度または代謝される速度;治療の持続時間;および医学の分野で周知の同様の因子を含めた種々の因子に左右され得る。
【0016】
本明細書で使用される場合、「フルオロフォア」、「蛍光部分」、「蛍光標識」、「蛍光色素」および「蛍光標識用部分」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、溶液中で、適切な波長の光で励起されると、光を放出し返す分子を指す。多種多様な構造および特性の多数の蛍光色素が、本発明の実施において使用するために適している。同様に、核酸を蛍光標識するための方法および材料が公知である(例えば、R.P.Haugland、「Molecular Probes:Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals 1992〜1994年」、第5版、a 1994年、Molecular Probes,Inc.を参照されたい)。フルオロフォアの選択では、多くの場合、蛍光分子は、高効率(すなわち、それぞれ高モル吸収係数および高蛍光量子収率で)光を吸収し、蛍光を放出し、光安定性である(すなわち、分析を行うために必要な時間内に光励起で著しい分解を受けない)ことが望ましい。
【0017】
本明細書で使用される場合、「阻害する」という用語は、何かが起こるのを妨げること、何かが起こることの発生を遅らせること、および/または何かが起こる程度または可能性を低下させることを意味する。したがって、「血管新生を阻害すること」および「新脈管構造の形成を阻害すること」は、血管新生が起こる可能性を妨げること、遅らせること、および/または低下させること、ならびに新生血管の数、成長速度、サイズなどを低下させることを包含するものとする。
【0018】
「標識した」および「検出可能な作用剤または部分で標識した」という用語は、本明細書では、実体(例えば、低リジンクロロトキシンポリペプチドまたはクロロトキシンコンジュゲート)を、例えば、別の実体(例えば、新生物腫瘍組織)に結合させた後に可視化することができることを明示するために互換的に使用される。検出可能な作用剤または部分は、測定することができ、その強度が結合した実体の量に関連する(例えば、比例する)シグナルを生成するように選択することができる。タンパク質およびペプチドを標識し、かつ/または検出するための多種多様なシステムが当技術分野で公知である。標識タンパク質および標識ペプチドは分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段、化学的手段または他の手段によって検出可能な標識に組み入れること、またはそれとコンジュゲートすることによって調製することができる。標識または標識用部分は、直接検出可能であってよい(すなわち、検出可能にするためのさらなる反応または操作はいかなるものも必要としない。例えば、フルオロフォアは、直接検出可能である)または、間接的に検出可能であってよい(すなわち、検出可能な別の実体と反応することによって、またはそれに結合することによって検出可能になる。例えばハプテンは、フルオロフォアなどのレポーターを含む適切な抗体と反応させた後に免疫染色することによって検出可能である)。適切な検出可能な作用剤としては、これらに限定されないが、放射性核種、フルオロフォア、化学発光剤、微小粒子、酵素、比色標識、磁気標識、ハプテン、分子ビーコン、アプタマービーコンなどが挙げられる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「黄斑変性症」という用語は、網膜が損傷することによって視野の中央(斑)の視力喪失が生じる医学的状態を指す。黄斑変性症にはいくつかの形態が存在することが公知であり、指定がなければ、「黄斑変性症」という用語は、全形態を含む。「滲出型黄斑変性症」(新生血管型または滲出型(exudative form)としても公知である)とは、網膜の後ろの脈絡膜からの血管の成長を伴う黄斑変性症を指す。滲出型黄斑変性症では、時には網膜が剥離する場合がある。「萎縮型黄斑変性症(dry macular degeneration)」(非滲出型(non−exudative form)としても公知である)では、ドルーゼンと称される細胞の壊死組織片が網膜と脈絡膜の間に蓄積するが、血管形成は起こらない。「加齢黄斑変性」(ARMD)とは、黄斑変性症の最も一般的な形態を指し、一般には、高齢期に始まり、斑内に特徴的な黄色の沈着物を伴う。ARMDは、黄斑変性症の滲出型(wet form)または萎縮型(dry form)のいずれでも起こり得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、「転移(metastasis)」(時には「mets」と省略される;複数形「転移」)という用語は、ある器官または組織から別の場所に腫瘍細胞が拡散することを指す。この用語は、転移の結果として新しい場所に形成される腫瘍組織も指す。「転移性癌」は、その元の、または最初の場所から拡散する癌であり、「二次癌」または「二次腫瘍」とも称することができる。一般に、転移性腫瘍の名称はそれらが由来する原発腫瘍の組織に由来する。したがって、肺に転移した乳癌は、いくつかの癌細胞が肺内に位置するにもかかわらず、「転移性乳癌」と称することができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「モノリジンクロロトキシンポリペプチド」という句は、コンジュゲートするための部位として利用可能なリジン残基を1つのみ有するクロロトキシンポリペプチドを指す。一部の実施形態では、モノリジンクロロトキシンポリペプチドは、リジン残基を1つのみ有する。一部の実施形態では、モノリジンクロロトキシンポリペプチドは、2つ以上のリジン残基を有するが、リジン残基の1つのみがコンジュゲートするための部位として利用可能である。そのような一部の実施形態では、いくつかのリジン上の1つまたは複数のブロック基により、それらをコンジュゲートするための部位として利用できないようにする。
【0022】
本明細書で使用される場合、「新脈管構造」という用語は、まだ完全に成熟していない、すなわち、細胞のタイトジャンクションを伴う完全に形成された内皮の内層または平滑筋細胞を囲む完全な層を有さない新しく形成された血管を指す。本明細書で使用される場合、「新生血管」という用語は、新脈管構造内の血管を指すために使用される。
【0023】
「医薬品」、「治療剤」および「薬物」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、疾患、障害、または臨床的状態の治療、阻害、および/または検出において有効な物質、分子、化合物、作用剤、因子または組成物を指す。
【0024】
「医薬組成物」は、本明細書では、有効量の少なくとも1種の活性成分(例えば、標識されていてもよく、されていなくてもよい低リジンクロロトキシンポリペプチドまたはクロロトキシンコンジュゲート)、および少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む組成物と定義される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「予防すること」という用語は、プロセス(例えば、血管新生、転移、癌の進行など)に対する作用剤の作用を指すために使用される場合、そのプロセスに関連する1つまたは複数の症状または特質が発症する前に作用剤(例えば、クロロトキシンコンジュゲートなどの治療剤)を投与すると、そのようなプロセスの程度を低下させることおよび/またはその開始を遅らせることを意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「原発腫瘍」という用語は、腫瘍が最初に生じた元の部位にある腫瘍、すなわち、そこに拡散しているのではない腫瘍を指す。
【0027】
「プロドラッグ」という用語は、in vivo投与された後、代謝されて、またはその他の方法で変換されて、その化合物の生物学的、薬剤的、または治療的に活性な形態になる化合物を指す。プロドラッグは、副作用または毒性を遮蔽するため、化合物の風味を改善するため、および/または化合物の他の特性または性質を変化させるために、化合物の代謝安定性または輸送特性を変化させるように設計することができる。in vivoにおける薬力学的プロセスおよび薬物代謝の知見によって薬学的に活性な化合物が同定されたら、医薬分野の当業者は、一般には、化合物のプロドラッグを設計することができる(Nogrady、「Medicinal Chemistry A Biochemical Approach」、1985年、Oxford University Press:N.Y.、388〜392頁)。適切なプロドラッグを選択し、調製するための手順も当技術分野で公知である。一部の実施形態では、プロドラッグは、その活性型への変換(in vivo投与後の)に、酵素の触媒作用を必要とする化合物である。
【0028】
「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語は、本明細書では互換的に使用され、中性の(非荷電)形態または塩としての、グリコシル化、側鎖の酸化またはリン酸化によって修飾されていない、または修飾された、種々の長さのアミノ酸配列を指す。ある特定の実施形態では、アミノ酸配列は全長のネイティブなタンパク質である。他の実施形態では、アミノ酸配列は、全長のタンパク質のより小さな断片である。さらに他の実施形態では、アミノ酸配列は、グリコシル単位、脂質、またはリン酸などの無機イオンなどのアミノ酸の側鎖に付着した追加的な置換基、ならびにスルフヒドリル基の酸化などの鎖の化学変換に関する修飾によって修飾されている。したがって、「タンパク質」という用語(または それと等価の用語)は、その特定の性質を変化させない修飾に供される全長のネイティブなタンパク質のアミノ酸配列を含むものとする。特に、「タンパク質」という用語は、タンパク質アイソフォーム、すなわち、同じ遺伝子によってコードされるが、それらのpIまたはMW、またはその両方が異なる変異体を包含する。そのようなアイソフォームは、それらのアミノ酸配列が異なり得る(例えば、代替のスライシングまたはタンパク質限定加水分解の結果として)、あるいは、示差的な翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、アシル化またはリン酸化)から生じ得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「低リジンクロロトキシンポリペプチド」という句は、リジン残基がクロロトキシン(配列番号1)よりも少なく、かつ/または、コンジュゲートするための部位として利用可能なリジン残基がクロロトキシンよりも少ないクロロトキシンポリペプチドを指す。ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、リジン残基を1つ以下有する。一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、リジン残基を1つのみ有する。ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、コンジュゲートするための部位として利用可能なリジン残基を1つ以下有する。一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドのリジン残基のうち1つを除いて全てがコンジュゲートするための部位として利用不可能になるように修飾されている。一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドのリジン残基の全てが、コンジュゲートするための部位として利用不可能になるように修飾されている。一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、コンジュゲートするために利用可能な単一の部位を含有する。
【0030】
「退行する」という用語は、本明細書において血管および/または脈管構造(新脈管構造および/または新生血管を含む)を指すために使用される場合、後退、縮小などを意味するように使用される。
【0031】
「被験体」および「個体」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、疾患または障害(例えば、癌、黄斑変性症など)を患っている可能性がある、またはそれにかかりやすいが、疾患または障害を有していても有していなくてもよいヒトまたは別の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊長類)を指す。多くの実施形態では、被験体は、ヒトである。多くの実施形態では、被験体は、患者である。別段の指定のない限り、「個体」および「被験体」という用語は、特定の年齢を意味せず、したがって、成体、小児、および新生児を包含する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「かかりやすい」という用語は、何か、すなわち、一般的な集団において観察される疾患、障害、または状態(例えば、癌、転移性癌、黄斑変性症、関節リウマチなど)になる危険性が増していること、および/またはその傾向を有すること(一般には、遺伝的素因、環境因子、個人の病歴、またはそれらの組み合わせに基づいて)を意味する。この用語は、状態に「かかりやすい」個体が、その状態であると決して診断されない可能性があることを考慮に入れる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「全身投与」という用語は、作用剤を、その作用剤が、有意な量で体内の広範囲に分布し、血液中で生物学的効果、例えば、その所望の効果を有し、かつ/または、脈管系を介してその所望の作用部位に到達するように投与することを指す。典型的な全身投与経路としては、(1)作用剤を直接脈管系に導入することによる投与、または(2)経口投与、肺への投与、または筋肉内投与が挙げられ、前記作用剤は、吸着され脈管系に入り、血液によって1つまたは複数の所望の作用部位に運ばれる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「治療すること」という用語は、特定の疾患、障害、および/または状態の1つまたは複数の症状または特徴を、部分的にまたは完全に緩和すること、回復させること、軽減すること、その開始を遅らせること、その進行を阻害すること、その重症度を低下させること、および/またはその発生率を低下させることを指す。例えば、癌を「治療すること」とは、腫瘍細胞の生存、成長、および/または拡散を阻害すること;転移および/または再発が発生する可能性を予防すること、遅らせること、および/または低下させること;および/または転移の数、成長速度、サイズなどを低下させることを指し得る。治療は、疾患、障害、および/もしくは状態の徴候を示していない被験体、ならびに/または、疾患、障害、および/または状態の初期の徴候のみを示す被験体に、その疾患、障害、および/または状態に関連する病態が発症する危険性を低減するために施すことができる。一部の実施形態では、治療は、被験体に医薬組成物を送達することを含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、「単位用量」という句は、所定量の活性成分(例えば、治療剤)を含む医薬組成物の別個の量を指す。活性成分の量は、一般に、被験体に投与されることになる活性成分の投与量、および/またはそのような投与量の都合のよい一部分、例えば、そのような投与量の2分の1または3分の1などと等しい。
【0036】
I.低リジンクロロトキシンポリペプチド
表1に示され、配列番号1に列挙されているように、クロロトキシンは、配列番号1の15位、23位および27位に3つのリジン残基を有する36アミノ酸のペプチドである。ある特定の実施形態では、本発明は、リジン残基の数を減らしたクロロトキシンポリペプチド(「低リジンクロロトキシンポリペプチド」)を提供する。ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも45%の全体的な配列同一性を有し、両端値を含め、24アミノ酸残基から40アミノ酸残基の間の長さを有するという点で、配列番号1のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、配列番号1に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の全体的な配列同一性を有する。一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも65%の全体的な配列同一性を有する。一部の実施形態では、クロロトキシンポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも91%の全体的な配列同一性を有する。例えば、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、クロロトキシンと、36アミノ酸残基のうち33アミノ酸残基でアミノ酸配列が同一であってよい(すなわち、約91.7%の配列同一性)。一部の実施形態では、クロロトキシンポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも94%の全体的な配列同一性を有する。例えば、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、クロロトキシンと、36アミノ酸残基のうち34アミノ酸残基でアミノ酸配列が同一であってよい(すなわち、約94.4%の配列同一性)。一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも97%の全体的な配列同一性を有する。例えば、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、クロロトキシンと、36アミノ酸残基のうち35アミノ酸残基でアミノ酸配列が同一であってよい(すなわち、約97.2%の配列同一性)。一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、その配列が、クロロトキシンの配列に対応する、またはクロロトキシンの配列に対して少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の全体的な配列同一性を示す33アミノ酸、34アミノ酸、35アミノ酸、36アミノ酸、37アミノ酸、または38アミノ酸のひと続きである、および/または、それを含有する。
【0037】
表1は、クロロトキシンの配列および例示的な低リジンクロロトキシンポリペプチドの配列を示す。表1は、限定的なものではなく、本発明によって提供される特定の例示的な低リジンクロロトキシンポリペプチドを例示するために用いられる。
【0038】
【表1−1】

【0039】
【表1−2】

ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、コンジュゲートするための部位として利用可能なリジンを1つ以下有する。いくつかのそのような実施形態では、1つのリジンが利用可能であり、それは、クロロトキシンにおいてリジンが存在する位置(すなわち、配列番号1の15位、23位または27位)に対応するクロロトキシンポリペプチドの位置にある。一部の実施形態では、利用可能な単一のリジンは、配列番号1の15位にある。一部の実施形態では、利用可能な単一のリジンは、配列番号1の23位にある。一部の実施形態では、利用可能な単一のリジンは、配列番号1の27位にある。一部の実施形態では、単一のリジンは、本発明の低リジンクロロトキシンポリペプチドの、クロロトキシンのリジン残基を含有しない部位に対応する位置に存在する(すなわち、配列番号1の15位、23位または27位のいずれに対応する位置にも存在しない)。
【0040】
ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、配列番号1の15位、23位または27位に対応する少なくとも1つのアミノ酸残基を欠く。
【0041】
ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、リジン残基を完全に欠く(例えば、配列番号2、5、6、24、25および26を参照されたい)。一部の実施形態では、通常クロロトキシンにおいてリジン残基が見いだされるところのアミノ酸が欠けている。一部の実施形態では、通常クロロトキシンにおいて見いだされる1つまたは複数のリジン残基が、別のアミノ酸残基および/またはアミノ酸誘導体で置き換えられている。言い換えれば、配列番号1の15位、23位または27位に対応するポリペプチド(polyeptide)の少なくとも1つのアミノ酸残基は、リジンではない。一般にポリペプチドを構成する他の天然に存在する19種のアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシン、トリプトファン、およびバリン)に加えて、種々の置換を用いることができる。置換の非限定的な例としては、他の天然に存在するアミノ酸、D−アミノ酸などの天然に存在しないアミノ酸、およびアミノ酸誘導体が挙げられる。他の天然に存在するアミノ酸の非限定的な例としては、ベータアラニン、カルニチン、シトルリン、シスチン、ガンマ−アミノ酪酸、ヒドロキシプロリン、オルニチン、およびタウリンが挙げられる。(天然に存在するアミノ酸およびアミノ酸誘導体のさらなる例については、例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、WagnerおよびMusso(1983年)、「New Naturally Occuring Amino Acids」、Agnew. Chem. Int. Ed. Engl.、22巻:816〜828頁を参照されたい)。一部の実施形態では、1つまたは複数のリジン残基は、アルギニンおよび/またはアラニンで置き換えられている。
【0042】
低リジンクロロトキシンポリペプチドがリジン残基を完全に欠く一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドの末端の一方または両方(すなわち、N末端および/またはC末端)が、化学的にコンジュゲートするための部位としての機能を果たし得る。末端の一方または両方の利用可能性は、使用する特定のコンジュゲート化学反応に左右され得る。低リジンクロロトキシンポリペプチドがリジン残基を完全に欠く一部の実施形態では、N末端のアルファアミノ基のみがコンジュゲートするための部位として利用可能である。
【0043】
2つ以上のリジン残基を置き換える複数の実施形態では、リジン残基と置き換えるために、同じまたは異なるアミノ酸残基(複数可)またはアミノ酸誘導体(複数可)を使用することができる。同じアミノ酸残基を使用してリジン残基を置き換えた非限定的な例については、例えば、配列番号17〜22を、また、異なるアミノ酸残基を使用してリジン残基を置き換えた非限定的な例については、配列番号23を参照されたい。
【0044】
一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、配列内にリジンを1つのみ有する(「モノリジンクロロトキシンポリペプチド」)。一部の実施形態では、そのようなクロロトキシンポリペプチドは、クロロトキシンにおいてリジン残基が通常存在するところ、例えば、配列番号1の15位、23位または27位に対応する位置にリジン残基を有する(例えば、非限定的な例について、配列番号14〜23を参照されたい)。一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、クロロトキシンにおいてリジン残基が通常存在するところ(すなわち、配列番号1の15位、23位および27位)にリジン残基を1つも有さないが、配列番号1の15位、23位および27位のいずれにも対応しない位置にリジン残基を有する。リジンを全く有さないクロロトキシンポリペプチドと同様に、モノリジンクロロトキシンポリペプチドは、配列番号1の15位、23位および27位に対応する1つまたは複数の位置のアミノ酸が欠けていてよく、かつ/または、配列番号1の15位、23位および27位に対応する1つまたは複数の位置にアミノ酸またはアミノ酸誘導体の置換を有してよい。
【0045】
一部の実施形態では、提供される低リジンクロロトキシンポリペプチドは、1つ以上のリジン残基を含むが、それにもかかわらず、クロロトキシンと比較してコンジュゲートするために利用可能なリジンの数が減少したアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、本発明で提供される低リジンクロロトキシンポリペプチドにおける1つまたは複数のリジン残基は、クロロトキシンポリペプチドに存在するにもかかわらず、コンジュゲートするための部位として利用できなくなっている。例えば、1つまたは複数のリジン残基は、コンジュゲートするための部位として利用可能な3つ未満、2つ未満または1つ未満(すなわち、「低」リジン)のリジン残基を残して、1つまたは複数のリジン残基が化学的なコンジュゲート反応に関与することからブロックされるように、共有結合的に、または非共有結合的に修飾することができる。このように使用することができるリジン残基に対する共有結合性の修飾の非限定的な例としては、ペグ化(すなわち、ポリエチレングリコールポリマーを付着させることによる修飾)、メチル化(ジメチル化およびトリメチル化を含む)、および他のアルキル基(複数可)の付着が挙げられる。ある特定の実施形態では、イプシロンNH基において1つまたは複数のリジン残基を修飾する。例えば、リジン残基を共有結合的に修飾するために所与のR基(例えば、ブチル、プロピル、またはエチル基)を使用する場合、イプシロンNH基を修飾してNR基またはNR基にすることができる。
【0046】
表2は、低リジンクロロトキシンポリペプチドを作出するために使用することができる修飾スキームのいくつかの非限定的な例を提示する。
【0047】
【表2】

ある特定の実施形態では、特定のリジン残基のブロックは、低リジンクロロトキシンポリペプチドを合成する間の適切なステップ中に、修飾されたリジン(コンジュゲートするために利用可能な部位がすでにブロックされている)を組み入れることによって実現する。修飾されたリジンは、商業的に容易に入手可能であり、当技術分野で公知の常套的な方法によって合成することができる。このように使用することができる修飾されたリジンの非限定的な例としては、これらに限定されないが、二置換リジンまたは三置換リジン(例えば、N,N−R−リジンまたはN,N,N−R−リジン、Rはブロック基である)および短いPEG分子が付着したリジンが挙げられる。Rは、リジンに共有結合的に付着すると、リジン残基を、化学的なコンジュゲート反応に関与することからブロックする機能を果たす任意の基であってよい。例えば、アルキル基(例えば、ブチル、メチル、およびエチル)がブロック基としての機能を果たし得る。例えば、N,N−ジメチル−リジンおよび/またはN,N,N−トリメチル−リジンを合成の間に使用する。
【0048】
ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドの末端の一方または両方(すなわち、N末端および/またはC末端)を、末端の一方または両方が化学的なコンジュゲート反応に関与することを妨げるために、ブロックする。例えば、一部の実施形態では、ブロックされていなければ少なくとも1つの末端がコンジュゲート反応に関与するコンジュゲート化学反応を使用する。ポリペプチドのN末端および/またはC末端をブロックする種々の方法は、これらに限定されないが、アミンにアルキル基を付加すること(例えば、メチル化)による共有結合性の修飾を含め、当技術分野で公知である。
【0049】
本明細書に記載の低リジンクロロトキシンポリペプチドの合成方法は、当技術分野で公知である。いくつかのペプチド合成方法では、1つのアミノ酸(またはアミノ酸誘導体)のアミノ基を、別のアミノ酸(またはアミノ酸誘導体)の、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などの試薬と反応させることによって活性化したカルボキシル基に連結させる。遊離のアミノ基が活性化されたカルボキシル基を攻撃すると、ペプチド結合が形成され、ジシクロヘキシルウレアが遊離する。そのような方法では、他の潜在的な反応性基(例えば、N末端アミノ酸またはアミノ酸誘導体のα−アミノ基およびC末端アミノ酸またはアミノ酸誘導体のカルボキシル基など)を化学反応に関与することからブロック(「保護」)することができる。したがって、特定の活性基のみが、所望の生成物が形成されるように反応する。この目的のために有用なブロック基としては、これらに限定することなく、アミン基を保護するためのtert−ブトキシカルボニル基(t−Boc)およびベンジルオキシカルボニル(benzoyloxycarbonyl)基;ならびにカルボキシル基を保護するための単純なエステル(例えばメチル基およびエチル基など)およびベンジルエステルが挙げられる。ブロック基は、一般には、その後、ペプチド結合はインタクトなままに残す処理(例えば、希酸を用いた処理)で除去することができる。反応すべきでない反応性基を保護するこのプロセスでは、カップリングしてペプチド結合を形成すること、および反応性基を脱保護することを繰り返すことができる。ペプチドは、成長しているペプチド鎖にアミノ酸を逐次的に加えることによって合成することができる。液相ペプチド合成方法および固相ペプチド合成方法はどちらも、本発明に従って用いるために適している。固相ペプチド合成方法では、成長しているペプチド鎖を、一般には、不溶性のマトリックス(例えば、ポリスチレンビーズなど)に、カルボキシ末端のアミノ酸をマトリックスに連結することによって連結する。合成の終わりに、フッ化水素酸(HF)などのペプチド結合を破壊しない切断試薬を使用して、マトリックスからペプチドを遊離させることができる。保護基は、一般には、この時に除去することもできる。自動化された、ハイスループットな、かつ/または平行のペプチド合成方法も、本発明に従って使用することができる。ペプチド合成方法に関するより多くの情報については、例えば、そのそれぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれる、Merrifield(1969年)「Solid−phase peptide synthesis」Adv Enzymol Relat Areas Mol Biol.、32巻:221〜96頁;Fridkinら(1974年)Annu Rev Biochem.、43巻(0号):419〜43頁;Merrifield(1997年)「Concept and Early Development of Solid Phase Peptide Synthesis」、Methods in Enzymology、289巻:3〜13頁;Sabatinoら(2009年)「Advances in automatic, manual and microwave−assisted solid−phase peptide synthesis」Curr Opin Drug Discov Devel.、11巻(6号):762〜70頁、を参照されたい。
【0050】
一部の実施形態では、リジン残基に対する修飾を本明細書に記載の他の手段(例えば、リジン残基を別のアミノ酸またはアミノ酸誘導体で置き換えること、および/またはクロロトキシンにおいて通常1つが見いだされるリジン残基を欠くこと)と組み合わせて使用する。
【0051】
一部の実施形態では、合成の終わりにN末端の保護基を除去しない。保護基を残すことは、例えば、N末端がブロックされた低リジンクロロトキシンポリペプチドを生成し、したがって、特定の化学的なコンジュゲートスキームにおいてコンジュゲートするために利用可能な部位を限定するために役立つ。
【0052】
II.クロロトキシンコンジュゲート
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の実体または部分が結びついた低リジンクロロトキシンポリペプチドを含むクロロトキシンコンジュゲートが提供される。本発明のクロロトキシンコンジュゲートは、本明細書に記載の低リジンクロロトキシンポリペプチドを含む任意の長さのポリペプチドを含んでよい。
【0053】
A.コンジュゲーション
一部の実施形態では、1つまたは複数の実体または部分を、低リジンクロロトキシンポリペプチドのリジン残基および/または末端を介して低リジンクロロトキシンポリペプチドに結びつける。いくつかのそのような実施形態では、実体または部分を低リジンクロロトキシンポリペプチドに付着させることができる位置(複数可)は、コンジュゲートするための部位として利用可能なリジン残基の数によって限定される。例えば、実体または部分は、モノリジンクロロトキシンポリペプチドにおける単一の利用可能なリジン残基に付着させることができる。
【0054】
一部の実施形態では、実体または部分を、低リジンクロロトキシンポリペプチドのN末端に、またはC末端に結びつける。いくつかのそのような実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、クロロトキシンの「ネイティブな」位置(例えば、15位、23位および27位に対応する位置)のいずれにおいても、コンジュゲートするために利用可能なリジン残基を1つも有さない。
【0055】
一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドを、1つまたは複数の実体または部分に共有結合的に結びつける。当業者には理解されるように、低リジンクロロトキシンポリペプチドおよび1つまたは複数の実体および/または部分は、直接的に、または間接的に(例えば、リンカーを通じて)付着させることができる。
【0056】
種々のコンジュゲート化学反応が当技術分野で公知であり、本発明の実施において使用することができる。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の実体または部分を、リジン残基のイプシロンアミノ基に付着させる。一部の実施形態では、コンジュゲート化学反応は、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)/EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)化学反応に基づく。一部の実施形態では、コンジュゲート化学反応は、チオ化化学反応に基づく、すなわち、トラウト試薬(Traut’s reagent)および/または2−イミノチオランなどのチオ化剤を使用する。
【0057】
ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドおよび1つまたは複数の実体または部分を、互いに直接的に共有結合的に連結する。そのような直接的な共有結合は、種々のやり方のいずれかで、例えば、アミド結合、エステル結合、炭素−炭素結合、ジスルフィド結合、カルバメート結合、エーテル結合、チオエーテル結合、尿素結合、アミン結合、または炭酸結合によって実現することができる。そのような共有結合は、例えば、1つの実体/複数の実体または1つの部分/複数の部分、および/または低リジンクロロトキシンポリペプチドに存在する官能基を利用することによって実現することができる。使用することができる適切な官能基としては、これらに限定されないが、アミン、酸無水物、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオールなどが挙げられる。ある特定の実施形態では、将来のコンジュゲートの一方の部分の官能基を、将来のコンジュゲートの他方の部分とカップリングさせるために活性化する。例えば、カルボジイミドなどの活性化剤を使用して、そのようなカップリングに影響を及ぼすことができる。多種多様な活性化剤が当技術分野で公知であり、提供されるコンジュゲートを形成するために適している。
【0058】
一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドおよび1つまたは複数の実体または部分は、リンカー基を介して間接的に互いに共有結合的に連結させる。そのような間接的な共有結合性の連結は、同種官能性(homofunctional)作用剤および異種官能性(heterofunctional)作用剤を含めた当技術分野で周知のいくつもの安定な二官能性作用剤の任意のものを使用することによって実現することができる。そのような作用剤の非限定的な例については、例えば、Pierce Catalog and Handbookを参照されたい。二官能性作用剤によると、生じたコンジュゲートに連結性部分が存在することになるが、一方、活性化剤によると、反応に関与する2つの部分間が直接カップリングするという点で、二官能性作用剤の使用と活性化剤の使用は異なる。二官能性作用剤の役割は、そうでなければ不活性な2つの部分間の反応を可能にすることであり得る。その代わりに、またはそれに加えて、反応生成物の一部になる二官能性作用剤は、コンジュゲートにある程度のコンフォメーションの柔軟性が付与されるように選択することができる。例えば、二官能性作用剤は、いくつかの原子、例えば、2個から10個の間の炭素原子を含有する直鎖アルキル鎖を含んでよい。その代わりに、またはそれに加えて、二官能性作用剤は、低リジンクロロトキシンポリペプチドと、1つまたは複数の実体または部分との間に形成される連結が切断可能である、例えば、加水分解性であるように選択することができる。(そのようなリンカーの非限定的な例については、例えば、そのそれぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,773,001号;同第5,739,116号および同第5,877,296号を参照されたい。)そのようなリンカーは、例えば、低リジンクロロトキシンポリペプチドとコンジュゲートしている実体または部分が、低リジンクロロトキシンポリペプチドから加水分解された後により高い活性を有することが観察される治療的部分である場合に使用することができる。切断を実現するための例示的な機構としては、リソソームの酸性のpHにおける加水分解(ヒドラゾン、アセタール、およびシスアコニット酸様アミド)、リソソーム酵素(例えば、カテプシンおよび他のリソソーム酵素)によるペプチド切断、およびジスルフィドの還元が挙げられる。追加的な切断機構としては、細胞外または細胞内の生理的なpHにおける加水分解が挙げられる。この機構は、1つまたは複数の実体または部分を低リジンクロロトキシンポリペプチドとカップリングさせるために使用する架橋剤が、例えばポリデキストランなどの生物分解性/生物侵食性の(bioerodible)実体である場合に適用することができる。
【0059】
例えば、1つまたは複数の治療的部分を含むコンジュゲートについて、ヒドラゾンを含有するコンジュゲートは、所望の薬物放出の性質をもたらす導入されたカルボニル基を用いて作製することができる。コンジュゲートは、一方の末端にジスルフィド基を有し、他方の末端にヒドラジン誘導体を有するアルキル(alkul)鎖を含むリンカーを用いて作製することもできる。
【0060】
ヒドラゾン以外の官能基を含有するリンカーも、リソソームの酸性の環境で切断される潜在性を有する。例えば、コンジュゲートは、エステル、アミド、およびアセタール/ケタールなどの、ヒドラゾン以外の細胞内で切断可能な基を含有するチオール反応性リンカーから作製することができる。酸素原子の一方が実体または部分に付着し、他方が低リジンクロロトキシンポリペプチドに付着させるためのリンカーに付着した5〜7員環のケトンから作製されたケタールも使用することができる。
【0061】
pH感受性リンカークラスの別の例は、アミド基と並列したカルボン酸基を有するシスアコニット酸である。カルボン酸は、酸性リソソームにおけるアミドの加水分解を加速する。いくつかの他の種類の構造を有する同じような型の加水分解速度の加速を実現するリンカーも使用することができる。
【0062】
リソソーム酵素によるペプチドの酵素的な加水分解は、コンジュゲートから実体または部分を遊離させるためにも使用することができる。例えば、低リジンクロロトキシンポリペプチドを、アミド結合によってパラアミノベンジルアルコールに付着させ、次いで、ベンジルアルコールと実体または部分との間でカルバミン酸エステルまたは炭酸エステルを作製することができる。低リジンクロロトキシンポリペプチドを切断することにより、アミノベンジルカルバメート(amino benzyle carabamate)またはアミノベンジルカーボネートが崩壊し、実体または部分が遊離する。別の例として、リンカーを崩壊させることによってカルバミン酸エステルの代わりにフェノールを切断することができる。さらに別の例として、ジスルフィド反応を用いてパラメルカプトベンジルカルバメート(para−meraptobenzyl carbamate)またはパラメルカプトベンジルカーボネートの崩壊を開始させる。
【0063】
多くの治療的部分、特に抗癌剤の水溶性は、あったとしてもわずかであり、それにより、治療的部分が凝集するので、その薬物のコンジュゲートへの負荷量が限定される。これを克服するための1つの手法は、可溶化基を、例えば、低リジンクロロトキシンコンジュゲートに付着したPEG二酸チオール酸、またはマレイミド酸、ジペプチドスペーサー、および実体または部分に結合したアミドを有するものを含めた、使用することができるPEG(ポリエチレングリコール)およびジペプチドからなるリンカーで作製されたリンカーコンジュゲートに付加することである。PEG基を組み入れる手法は、凝集および薬物負荷量の限定を克服することにおいて有益であり得る。
【0064】
クロロトキシンコンジュゲート内の実体または部分がタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドである複数の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートは、融合タンパク質であってよい。融合タンパク質は、個々のペプチド骨格を介して共有結合によって連結した2つ以上のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを含む分子である。本発明の方法において使用する融合タンパク質は、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって作出することができる。例えば、融合タンパク質は、ポリペプチド合成機を使用した直接的なタンパク質合成方法によって作出することができる。あるいは、2つの連続した遺伝子断片間に相補的なオーバーハングを生じさせるアンカープライマーを使用して遺伝子断片のPCR増幅を行うことができ、その後、それをアニーリングし再増幅してキメラ遺伝子配列を生成することができる。融合タンパク質は、標準の組換え方法によって得ることができる(例えば、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる、Maniatisら「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、1989年、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring、N.Y.を参照されたい)。これらの方法は、一般には、(1)所望の融合タンパク質をコードする核酸分子を構築すること;(2)その核酸分子を組換え型の発現ベクターに挿入すること;(3)その発現ベクターを用いて適切な宿主細胞を形質転換すること;および(4)宿主細胞において融合タンパク質を発現させることを含む。そのような方法によって作出される融合タンパク質は、当技術分野で公知の通り、培地から直接、または細胞を溶解させることによって回収し、単離することができる。形質転換された宿主細胞によって産生されるタンパク質を精製するための多くの方法が当技術分野で周知である。それらとしては、これらに限定されないが、沈殿、遠心分離、ゲル濾過、およびカラムクロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィー)が挙げられる。他の精製方法が記載されている(例えば、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれるDeutscherら「Guide to Protein Purification」、Methods in Enzymology、1990年、192巻、Academic Pressを参照されたい)。
【0065】
ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドを、1つまたは複数の実体または部分と非共有結合的に結びつける。非共有結合性の結びつきの例としては、これらに限定されないが、疎水性の相互作用、静電気的な相互作用、双極子相互作用、ファンデルワールス相互作用、および水素結合が挙げられる。
【0066】
毒素部分と治療剤との間の結びつきの本質に関係なく、結びつきは、一般には、コンジュゲートが、細胞に、およびその中に輸送される前またはその間に解離しないために十分に選択的、特異的、かつ強力である。低リジンクロロトキシンポリペプチドと、1つまたは複数の実体または部分との間の結びつきは、当業者に公知の任意の化学的カップリング、生化学的カップリング、酵素的カップリング、または遺伝子のカップリングを用いて実現することができる。
【0067】
当業者には容易に理解され得るように、本発明のコンジュゲートは、任意の数の異なるやり方によって互いに結びつく、任意の数の低リジンクロロトキシンポリペプチドと任意の数の実体または部分とを含んでよい。コンジュゲートの設計は、その意図された目的(複数可)およびそれを使用する特定の状況において望ましい性質の影響を受ける。低リジンクロロトキシンポリペプチドと実体または部分を結びつける、または結合させてコンジュゲートを形成するための方法の選択は、当業者の知識の範囲内であり、一般に、所望の結びつきの本質(すなわち、共有結合性か非共有結合性か、および/または切断可能であるか切断不可能であるか)、低リジンクロロトキシンポリペプチドおよび実体/部分の本質、官能性化学基の存在および本質などに左右される。
【0068】
B.実体/部分
上記の通り、ある特定の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートは、1つまたは複数のクロロトキシンではない実体を含む。種々のそのような実体または部分の任意のものを使用することができる。
【0069】
1.治療的な実体/部分
ある特定の実施形態では、提供されるコンジュゲートは、下記の通り、また、その内容全体について、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許公報WO2009/021136A1に記載の通り、1つまたは複数の治療的な実体または部分を含む。
【0070】
a.抗癌剤
一部の実施形態では、1つまたは複数の治療的な実体または部分は、抗癌剤を含む。適切な抗癌剤としては、例えば、細胞傷害性薬剤を含めた、癌細胞に対して直接的にまたは間接的に毒性または有害である多種多様な物質、分子、化合物、作用剤または因子の任意のものが挙げられる。本発明の実施において使用するために適した抗癌剤は、合成または天然であってよい。抗癌剤は、単一分子または異なる分子の複合体を含んでよい。
【0071】
適切な抗癌剤は、これらに限定されないが、小分子、ペプチド、糖類、ステロイド、抗体、融合タンパク質、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、低分子干渉RNA、ペプチド模倣薬などを含めた種々のクラスの化合物のいずれに属してもよい。同様に、適切な抗癌剤は、これらに限定されないが、アルキル化剤、代謝拮抗薬、抗有糸分裂抗生物質、アルカロイド系抗腫瘍剤、ホルモンおよび抗ホルモン薬、インターフェロン、非ステロイド性抗炎症薬、および種々の他の抗腫瘍剤を含めた任意の種々のクラスの抗癌剤の中に見いだすことができる。
【0072】
特に適切な抗癌剤は、癌細胞に対する選択性/特異性が乏しいことに起因して望ましくない副作用を引き起こす作用剤;細胞による取り込みおよび/または保持を全く受けない、またはそれが乏しい作用剤;細胞の薬物耐性を伴う作用剤;および、難水溶性、凝集などに起因して、癌患者に投与するために容易に製剤化することができない作用剤である。
【0073】
本発明のコンジュゲートにおいて使用することができる適切な抗癌剤の例を、以下により詳細に記載する。
【0074】
難水溶性抗癌薬
ある特定の実施形態では、本発明のコンジュゲート内の抗癌剤は、難水溶性化合物である。当業者には理解されるように、多種多様な難水溶性抗癌剤が、本発明において使用するために適している。
【0075】
例えば、抗癌剤は、他の抗悪性腫瘍薬に対しては難治性の多くの固形腫瘍の治療において有効な作用剤として理解されているタキサンの中から選択することができる。現在承認されている2種のタキサンは、パクリタキセル(TAXOL(商標))およびドセタキセル(TAXOTERE(商標))である。パクリタキセル、ドセタキセル、および他のタキサンは、紡錘体微小管の形成に不可欠なタンパク質であるチューブリンの重合を増強することによって作用する。チューブリンの重合により、細胞の複製を阻害し、細胞死を導く非常に安定な、非機能性の細管の形成がもたらされる。
【0076】
パクリタキセルは非常に難水溶性であり、したがって、静脈内投与するために水を用いて実際に製剤化することができない。注射または静脈内注入するためのTAXOL(商標)のいくつかの製剤が、薬物担体としてCREMOPHOR EL(商標)(ポリオキシエチル化されたヒマシ油)を使用して開発されてきた。しかし、CREMOPHOR(商標)ELは、それ自体が毒性であり、少なくとも一部において、そのような調製物の投与に伴う過敏症反応(重度の皮膚発疹、蕁麻疹(hives)、紅潮、呼吸困難、頻脈(tacchycardia)およびその他)の原因であると考えられている。そのような副作用を回避するために、多くの場合、CREMOPHOR(商標)を含有するパクリタキセル製剤と一緒に前投薬を処方する。パクリタキセルの類似体であるドセタキセルは、パクリタキセルと同様に難水溶性である。医薬用途のためにドセタキセルを溶解するために使用される現在最も好ましい溶媒は、ポリソルベート80(TWEEN80)である。患者において過敏症反応を引き起こすことに加えて、TWEEN80は、毒性が強いフタル酸ジエチルヘキシルを浸出する傾向があるので、PVC送達装置と一緒に使用することができない。
【0077】
タキサンおよびクロロトキシンポリペプチドを含む本発明によるコンジュゲートは、患者において有害反応を誘導する溶媒および担体の使用を回避するための改善された送達方法として使用することができる。
【0078】
一部の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲート内の抗癌剤は、抗生物質のエンジインファミリーに属してよい。ファミリーとして、エンジイン抗生物質は特に強力な抗腫瘍剤である。いくつかのメンバーは、最も有効な、臨床的に使用される抗腫瘍抗生物質の1つであるアドリアマイシンよりも1000倍強力である(Y.S. Zhenら、J. Antibiot.、1989年、42巻:1294〜1298頁)。例えば、本発明のコンジュゲート内の抗癌剤は、カリチアマイシンのエンジインファミリーのメンバーであってよい。土壌微生物であるMicromonospora echinospora種calichensisのブロス抽出物から最初に単離されたカリチアマイシンが、強力なDNA損傷剤についてのスクリーニングにおいて検出された(M.D. Leeら、J. Am. Chem. Soc.、1987年、109巻:3464〜3466頁;M.D. Leeら、J. Am. Chem. Soc.、1987年、109巻:3466〜3468頁;W.M. Maieseら、J. Antibiot.、1989年、42巻:558〜563頁;M.D. Leeら、J. Antibiot.、1989年、42巻:1070〜1087頁)。
【0079】
カリチアマイシンは、グリコシル結合によってオリゴ糖鎖に連結した複雑な剛体の二環式のエンジインアリルトリスルフィドコア構造を特徴とする。オリゴ糖部分は、いくつもの置換された糖誘導体、および置換されたテトラヒドロピラン環を含有する。カリチアマイシンのコアを含有するエンジイン部分(またはアグリコン)および炭水化物部分は、これらの分子の生物活性において異なる役割を行うことが報告されている。一般に、コア部分は、DNAを切断し、一方、カリチアマイシンのオリゴ糖部分は、認識および送達系としての機能を果たし、また、薬物を、薬物をつなぎ留める二本鎖DNAの副溝に導くと考えられている(「Enediyne Antibiotics as Antitumor Agents」、DoyleおよびBorders、1995年、Marcel−Dekker:New York)。二本鎖DNAの切断は、通常は細胞が修復することができない、または容易に修復することができない損傷の一種であり、ほとんどの場合、致死的である。
【0080】
それらの化学的性質および生物学的性質に起因して、カリチアマイシンのいくつかの類似体が、前臨床モデルにおいて潜在的な抗腫瘍剤として試験されている。それらの単剤療法としての開発は、遅延毒性により治療の治療量域を限定されるので、追求されてこなかった。しかし、それらの効力は、それらを標的化学療法に特に有用なものにする。
【0081】
適切な難水溶性抗癌剤の他の例としては、タモキシフェンおよびBCNUが挙げられる。タモキシフェンは、乳癌、子宮内膜癌、前立腺癌、卵巣癌、腎癌、黒色腫、結腸直腸腫瘍、デスモイド腫瘍、膵癌、および下垂体腫瘍などの種々のエストロゲン受容体陽性の細胞腫を治療することの成功の程度に変動を伴って使用されてきた。難水溶性によって限定されることに加えて、タモキシフェンを使用した化学療法は、細胞の薬物耐性などの副作用を引き起こす恐れがある。BCNU(1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア)は、その抗腫瘍性について周知であり、1972年から、国立がん研究所(National Cancer Institute)により、脳腫瘍、結腸癌、ホジキン病、肺癌および多発性骨髄腫に対する使用についてチャート化されている。しかし、この抗癌薬の効率的な使用も、その低溶解性によって損なわれる。
【0082】
薬物耐性を伴う抗癌剤
本発明のある特定の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートは、薬物耐性を伴う抗癌剤を含む。本明細書で使用される場合、「薬物耐性を伴う抗癌剤」という用語は、癌細胞が耐性である、または耐性になり得る任意の化学療法薬を指す。すでに上記されている通り、抗癌剤に対する耐性は、多くの因子に起因する可能性があり、異なる機構によって操作することができる。低リジンクロロトキシンポリペプチドおよび薬物耐性を伴う抗癌剤を含む本発明のコンジュゲートを投与することにより、抗癌剤の細胞内取り込みを増強し、それを腫瘍細胞、例えば、耐性の腫瘍細胞に運ぶことができる。
【0083】
薬物耐性を伴う多種多様な抗癌剤はいずれも本発明において使用するために適している。例えば、薬物耐性を伴う抗癌剤は、メトトレキサートであってよい。広く使用されている制癌剤であるメトトレキサートは、葉酸の類似体であり、それ自体が特異的な構成単位であるチミジル酸の合成に利用される化合物の重大な供給源であり、したがって、DNA合成に特に重大であるテトラヒドロ葉酸の合成における重要なステップを遮断する。メトトレキサートに誘導される薬物耐性は、その薬物の細胞内取り込みの欠乏に関連づけられる。
【0084】
適切な抗癌剤の他の例としては、酵素活性の喪失により薬物が不適切に細胞内活性化されることによる薬物耐性を伴うプリン類似体およびピリミジン類似体が挙げられる。そのようなプリン類似体の例は、6−メルカプトプリン(6−MP)である。腫瘍細胞の6−MPに対する耐性の一般的な原因は、6−MPを、この薬物の致死的な形態である、対応するヌクレオチドの6−メルカプトホスホリボシルプリン(6−MPRP)に活性化する酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)が喪失することである。理論に拘束されることなく、耐性は、6−MPRP自体を細胞に導入することができれば克服することができると仮定される。この化合物は市販されているが、生細胞に適切に輸送されないので癌治療において治療的には未だ使用されていない。6−MPRPを本発明による低リジンクロロトキシンポリペプチドに結びつけることにより、細胞膜を渡るその能力が劇的に増大する。チオグアニンは、酵素HGPRTの欠乏による薬物耐性を伴う抗癌剤の別の例である。
【0085】
不適切に細胞内活性化されることによる薬物耐性を伴うピリミジン類似体の例としては、酵素デオキシシチジンキナーゼ(DOCK)によって、致死的な形態、それぞれシトシン二リン酸およびアデノシン二リン酸に活性化されるシトシンアラビノシドおよびアデノシンアラビノシドが挙げられる。低リジンクロロトキシンポリペプチドは、そのようなピリミジン類似体の活性型にカップリングしてそれらの細胞内取り込みを増強し、細胞の薬物耐性を克服することができる。
【0086】
薬物耐性を伴う抗癌剤の他の例としては、これらに限定されないが、5−フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、シトシン、アラビノシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、アクチノマイシン、およびブレオマイシンが挙げられる。
【0087】
他の抗癌剤
一部の実施形態では、抗癌剤は、2、3挙げると、アルキル化薬(例えば、メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド)、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート)、プリンアンタゴニストおよびピリミジンアンタゴニスト(例えば、6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビン(cytarabile)、ゲムシタビン)、紡錘体阻害剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(例えば、アスパラギナーゼ)、およびホルモン(例えば、タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメゲストロール)からなる群から選択される。最新の癌療法のより包括的な考察については、これによりその内容全体が参照により組み込まれる、「http://」のすぐ後に「www.cancer.gov/」が続くアドレスのウェブサイト、「http://」のすぐ後に「www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htm」が続くアドレスのウェブサイトにあるFDAに承認された抗腫瘍薬の一覧、およびThe Merck Manual、第17版、1999年を参照されたい。
【0088】
核酸薬剤(nucleic acid agent)
ある特定の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートは、核酸薬剤を含む。
【0089】
多数の癌および腫瘍は、さまざまな程度の遺伝子の機能障害、例えば、点突然変異、遺伝子欠失、または複製などを伴うことが示されている。「アンチセンス」、「アンチジーン」および「RNA干渉」と称されているものなどの、癌を治療するための多くの新しい戦略が開発されて、遺伝子の発現が調節されている(A. Kalotaら、Cancer Biol. Ther.、2004年、3巻:4〜12頁;Y. Nakataら、Crit. Rev. Eukaryot. Gene Expr.、2005年、15巻:163〜182頁;V. WacheckおよびU. Zangmeister−Wittke、Crit. Rev. Oncol. Hematol.、2006年、59巻:65〜73頁;A. Kolataら、Handb. Exp. Pharmacol.、2006年、173巻:173〜196頁)。これらの手法では、例えば、アンチセンス核酸、リボザイム、三重化剤(triplex agent)、または低分子干渉RNA(siRNA)を利用して、標的遺伝子の特定のmRNAまたはDNAの転写または翻訳を、アンチセンス核酸を用いてmRNAを遮蔽すること、または三重化剤を用いてDNAを遮断することによって、リボザイムを用いてヌクレオチド配列を切断することによって、またはRNA干渉に関与する複雑な機構を通じてmRNAを破壊することによって遮断する。これらの戦略の多くでは、主にオリゴヌクレオチドが活性薬剤として使用されるが、小分子および他の構造も適用されている。遺伝子発現を調節するためのオリゴヌクレオチドベースの戦略は、いくつかの癌を治療するための莫大な潜在性を有するが、オリゴヌクレオチドを薬理学的に適用することは、主に、これらの化合物の、癌細胞内のそれらの作用部位への送達が効果的でないことによって妨げられてきた(P. Herdewijnら、Antisense Nucleic Acids Drug Dev.、2000年、10巻:297〜310頁;Y. ShojiおよびH. Nakashima、Curr. Charm. Des.、2004年、10巻:785〜796頁;A.W Tongら、Curr. Opin. Mol. Ther.、2005年、7巻:114〜124頁)。
【0090】
ある特定の実施形態では、提供されるクロロトキシンコンジュゲートは、低リジンクロロトキシンポリペプチドおよび治療剤(例えば、抗癌剤)として有用な核酸分子を含む。核酸の種々の化学種および構造的な形態が、そのような戦略に適し得る。これらの非限定的な例としては、一本鎖DNA(ssDNA)および二本鎖DNA(dsDNA)を含めたDNA;これらに限定されないが、ssRNA、dsRNA、tRNA、mRNA、rRNA、酵素的なRNAを含めたRNA;RNA:DNAハイブリッド、三重鎖DNA(例えば、短いオリゴヌクレオチドと結びついたdsDNA)などが挙げられる。
【0091】
一部の実施形態では、核酸薬剤は、長さが約5ヌクレオチドから2000ヌクレオチドの間である。一部の実施形態では、核酸薬剤は、長さが少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50ヌクレオチドまたはそれ以上である。一部の実施形態では、核酸薬剤は、長さが約2000、1900、1800、1700、1600、1500、1400、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600、500、450、400、350、300、250、200、150、100、50、45、40、35、30、25、20ヌクレオチド未満である、またはそれよりも短い。
【0092】
一部の実施形態では、核酸薬剤は、プロモーターおよび/または転写を制御する他の配列を含む。一部の実施形態では、核酸薬剤は、複製開始点および/または複製を制御する他の配列を含む。一部の実施形態では、核酸薬剤は、プロモーターおよび/または複製開始点を含まない。
【0093】
本発明の実施において使用するために適した核酸抗癌剤(nucleic acid anti−cancer agent)としては、腫瘍形成および細胞の成長または細胞形質転換に関連する遺伝子(例えば、細胞分裂を刺激するタンパク質をコードする癌原遺伝子)、血管新生遺伝子/抗血管新生遺伝子、腫瘍抑制因子遺伝子(細胞分裂を抑制するタンパク質をコードする)、腫瘍の成長および/または腫瘍の移動に関連するタンパク質をコードする遺伝子、および自殺遺伝子(アポトーシスまたは他の形態の細胞死を誘導する)、特に、急速に分裂している細胞において最も活性である自殺遺伝子を標的とする作用剤が挙げられる。
【0094】
腫瘍形成および/または細胞形質転換に関連する遺伝子の例としては、MLL融合遺伝子、BCR−ABL、TEL−AML1、EWS−FLI1、TLS−FUS、PAX3−FKHR、Bc1−2、AML1−ETO、AML1−MTG8、Ras、Fos PDGF、RET、APC、NF−1、Rb、p53、MDM2など;多剤耐性遺伝子などの過剰発現された遺伝子;サイクリン;ベータカテニン;テロメラーゼ遺伝子;c−myc、n−myc、Bc1−2、Erb−B1およびErb−B2;およびRas、Mos、Raf、およびMetなどの突然変異した遺伝子が挙げられる。腫瘍抑制因子遺伝子の例としては、これらに限定されないが、p53、p21、RB1、WT1、NF1、VHL、APC、DAPキナーゼ、p16、ARF、ニューロフィブロミン、およびPTENが挙げられる。抗癌療法において有用な、核酸薬剤の標的とすることができる遺伝子の例としては、インテグリン、セレクチン、およびメタロプロテイナーゼなどの腫瘍の移動に関連するタンパク質をコードする遺伝子;新しい血管の形成を促進するタンパク質をコードする抗血管新生遺伝子、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)またはVEGFrなど;新血管形成を阻害するタンパク質をコードする抗血管新生遺伝子、例えば、エンドスタチン、アンジオスタチン、およびVEGF−R2など;ならびに、インターロイキン、インターフェロン、線維芽細胞成長因子(α−FGFおよび(β−FGF)、インスリン様成長因子(例えば、IGF−1およびIGF−2)、血小板由来の成長因子(PDGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、形質転換成長因子(例えば、TGF−αおよびTGF−β、上皮成長因子(EGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、幹細胞因子およびその受容体c−Kit(SCF/c−Kit)リガンド、CD40L/CD40、VLA−4 VCAM−1、ICAM−1/LFA−1、hyalurin/CD44などのタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。当業者には理解される通り、前述の実施例は排他的なものではない。
【0095】
本発明において使用するために適した核酸薬剤は、例えば、抗癌剤または他の治療剤、プローブ、プライマーなどとしての使用を含めた種々の使用のいずれも有し得る。核酸薬剤は、酵素活性(例えば、リボザイム活性)、遺伝子発現を阻害する活性(例えば、アンチセンス薬剤またはsiRNA薬剤などとして)、および/または他の活性を有してよい。核酸薬剤は、それ自体が活性であってよい、または、活性な核酸薬剤を送達するベクターであってよい(例えば、送達される核酸の複製および/または転写によって)。本明細書の目的上、そのようなベクター核酸は、たとえそれら自体に治療的活性がなくとも、治療的に活性な作用剤をコードする、またはそうでなければそれを送達する場合、「治療剤」とみなされる。
【0096】
ある特定の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートは、アンチセンス化合物を含む、またはそれをコードする核酸治療剤(nucleic acid therapeutic agent)を含む。「アンチセンス化合物またはアンチセンス作用剤」、「アンチセンスオリゴマー」、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」および「アンチセンスオリゴヌクレオチド類似体」という用語は、本明細書では互換的に使用され、アンチセンス化合物が、RNA内の標的配列にワトソンクリック塩基対合によってハイブリダイズして標的配列内にRNAオリゴマーヘテロ二本鎖を形成することを可能にするヌクレオチド塩基の配列およびサブユニット間の骨格(subunit−to−subunit backbone)を指す。オリゴマーは、標的配列内に正確な配列相補性またはそれに近い相補性を有し得る。そのようなアンチセンスオリゴマーにより、標的配列を含有するmRNAの翻訳が遮断または阻害され得る、または遺伝子の転写が阻害され得る。アンチセンスオリゴマーは、二本鎖または一本鎖の配列に結合することができる。
【0097】
本発明の実施において使用するために適したアンチセンスオリゴヌクレオチドの例としては、例えば、以下の概説に記載されているものが挙げられる:R.A Stahelら、Lung Cancer、2003年、41巻:S81〜S88頁;K.F. Pirolloら、Pharmacol. Ther.、2003年、99巻:55〜77頁;A.C. StephensおよびR.P. Rivers、Curr. Opin. Mol. Ther.、2003年、5巻:118〜122頁;N.M. DeanおよびC.F. Bennett、Oncogene、2003年、22巻:9087〜9096頁;N. Schiavoneら、Curr. Pharm. Des.、2004年、10巻:769〜784頁;L. Vidalら、Eur. J. Cancer、2005年、41巻:2812〜2818頁;T. Aboul−Fadl、Curr. Med. Chem.、2005年、12巻:2193〜2214頁;M.E. GleaveおよびB.P. Monia、Nat. Rev. Cancer、2005年、5巻:468〜479頁;Y.S. Cho−Chung、Curr. Pharm. Des.、2005年、11巻:2811〜2823頁;E. Rayburnら、Lett. Drug Design & Discov.、2005年、2巻:1〜18頁;E.R. Rayburnら、Expert Opin. Emerg. Drugs、2006年、11巻:337〜352頁;I. TammおよびM. Wagner、Mol. Biotechnol.、2006年、33巻:221〜238頁(そのそれぞれについて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0098】
適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドの例としては、例えば、bc1−2 mRNAの開始コドン領域を標的とするホスホロチオエートオリゴマーであるオブリメルセンナトリウム(Genasense(商標)またはG31239としても公知であり、Genta、Inc.、Berkeley Heights、NJによって開発された)が挙げられる。Bc1−2は、アポトーシスの強力な阻害剤であり、濾胞性リンパ腫、乳癌、結腸癌、前立腺癌、および中悪性度/高悪性度のリンパ腫を含めた多くの癌において過剰発現される(C.A. Steinら、Semin. Oncol.、2005年、32巻:563〜573頁;S.R. Frankel、Semin. Oncol.、2003年、30巻:300〜304頁)。他の適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、cAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)を対象とする混合型骨格オリゴヌクレオチドであるGEM−231(HYB0165、Hybridon、Inc.、Cambridge、MA)(S. Goelら、Clin. Cancer Res.、203、9巻:4069〜4076頁);Affinitak(ISIS 3521またはアプリノカルセン(aprinocarsen)、ISIS pharmaceuticals、Inc.、Carlsbad、CA)、PKC−アルファのアンチセンス阻害剤;細胞周期の制御、組織リモデリング、脂質輸送、および細胞死に関係づけられる糖タンパク質であり、乳癌、前立腺癌および結腸癌において過剰発現されるクラステリンに対する2’−メトキシエチル修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチドであるOGX−011(Isis 112989、Isis Pharmaceuticals、Inc.);c−raf−1 mRNAの3’−非翻訳領域の配列と相補的なホスホロチオエートオリゴヌクレオチドであるISIS 5132(Isis 112989、Isis Pharmaceuticals、Inc.)(S.P. Henryら、Anticancer Drug Des.、1997年、12巻:409〜420頁;B.P. Moniaら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1996年、93巻:15481〜15484頁;C.M. Rudinら、Clin. Cancer Res.、2001年、7巻:1214〜1220頁);ヒトH−ras mRNAの発現のホスホロチオエートオリゴヌクレオチドアンチセンス阻害剤であるISIS 2503(Isis Pharmaceuticals、Inc.)(J. Kurreck、Eur. J. Biochem.、2003年、270巻:1628〜1644頁);アポトーシス経路のかなりの部分を遮断するX連鎖アポトーシス抑制タンパク(XIAP)を標的とするオリゴヌクレオチド、例えば、GEM 640(AEG 35156、Aegera Therapeutics Inc.およびHybridon,Inc.)など、または、アポトーシスタンパク質の阻害剤(IAP)であるターゲティングサバイビンを標的とするオリゴヌクレオチド、例えば、2’−O−メトキシエチルキメラオリゴヌクレオチドであるISIS 23722(Isis Pharmaceuticals、Inc.)など;DNAメチルトランスフェラーゼを標的とするMG98;ならびにヒトリボヌクレオチド還元酵素のR2小サブユニットコンポーネントのmRNA内のコード領域と相補的な20−merのオリゴヌクレオチドであるGTI−2040(Lorus Therapeutics、Inc. Toronto、Canada)が挙げられる。
【0099】
他の適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、Her−2/neu、c−Myb、c−Myc、およびc−Rafに対して開発されているアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる(例えば、A. Biroccioら、Oncogene、2003年、22巻:6579〜6588頁;Y. Leeら、Cancer Res.、2003年、63巻:2802〜2811頁;B. Luら、Cancer Res.、2004年、64巻:2840〜2845頁;K.F. Pirolloら、Pharmacol. Ther.、2003年、99巻:55〜77頁;およびA. Raitら、Ann. N. Y. Acad. Sci.、2003年、1002巻:78〜89頁を参照されたい)。
【0100】
ある特定の実施形態では、本発明のクロロトキシンコンジュゲートは、干渉RNA分子を含む、またはそれをコードする核酸抗癌剤を含む。「干渉RNA」および「干渉RNA分子」という用語は、本明細書では互換的に使用され、遺伝子発現を阻害または下方制御すること、または遺伝子を配列特異的に、例えば、RNA干渉(RNAi)を媒介することによってサイレンシングすることができるRNA分子を指す。RNA干渉(RNAi)は、二本鎖RNA(dsRNA)によって誘発される進化的に保存された配列特異的な機構であり、相補的な標的一本鎖mRNAの分解および対応する翻訳配列の「サイレンシング」を誘導する(McManusおよびSharp、2002年、Nature Rev. Genet.、2002年、3巻:737頁)。RNAiは、長いdsRNA鎖を、生物活性のある長さが約21〜23ヌクレオチドの「低分子干渉RNA」(siRNA)配列に酵素的に切断することによって機能する(Elbashirら、Genes Dev.、2001年、15巻:188頁)。RNA干渉は、癌の療法のための有望な手法として現れた。
【0101】
本発明の実施において使用するために適した干渉RNAは、いくつかの形態のいずれでも提供することができる。例えば、干渉RNAは、単離された低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または低分子ヘアピン型RNA(shRNA)の1つまたは複数として提供することができる。
【0102】
本発明において使用するために適した干渉RNA分子の例としては、例えば、以下の概説において引用されているiRNAが挙げられる:O. Milhavetら、Pharmacol. Rev.、2003年、55巻:629〜648頁;F. Biら、Curr. Gene. Ther.、2003年、3巻:411〜417頁;P.Y. Luら、Curr. Opin. Mol. Ther.、2003年、5巻:225〜234頁;I. Friedrichら、Semin. Cancer Biol.、2004年、14巻:223〜230頁;M. Izquierdo、Cancer Gene Ther.、2005年、12巻:217〜227頁;P.Y. Luら、Adv. Genet.、2005年、54巻:117〜142頁;G.R. Devi、Cancer Gene Ther.、2006年、13巻:819〜829頁;M.A. Behlke、Mol. Ther.、2006年、13巻:644〜670頁;およびL.N. Putralら、Drug News Perspect.、2006年、19巻:317〜324頁(そのそれぞれの内容について、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0103】
適切な干渉RNA分子の他の例としては、これらに限定されないが、p53干渉RNA(例えば、T.R. Brummelkampら、Science、2002年、296巻:550〜553頁;M.T. Hemmanら、Nat. Genet.、2003年、33巻:396〜400頁);慢性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病の発症に関連するbcr−abl融合を標的とする干渉RNA(例えば、M. Scherrら、Blood、2003年、101巻:1566〜1569頁;M.J. Liら、Oligonucleotides、2003年、13巻:401〜409頁)、未分化大細胞リンパ腫の75%に見いだされ、腫瘍形成に関連する構成的に活性なキナーゼの発現を導くタンパク質であるNPM−ALKの発現を阻害する干渉RNA(U. Ritterら、Oligonucleotides、2003年、13巻:365〜373頁);Raf−1(T.F. Louら、Oligonucleotides、2003年、13巻:313〜324頁)、K−Ras(T.R. Brummelkampら、Cancer Cell、2002年、2巻:243〜247頁)、erbB−2(G. Yangら、J. Biol. Chem.、2004年、279巻:4339〜4345頁)などの癌遺伝子を標的とする干渉RNA;過剰発現すると、結腸直腸癌における主要な形質転換事象であると考えられているT細胞因子標的遺伝子のトランス活性化が導かれるb−カテニンタンパク質を標的とする干渉RNA(M. van de Weteringら、EMBO Rep.、2003年、4巻:609〜615頁)が挙げられる。
【0104】
ある特定の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートは、リボザイムである核酸治療剤を含む。本明細書で使用される場合、「リボザイム」という用語は、他のRNA分子を標的特異的に切断することができる、触媒作用のあるRNA分子を指す。リボザイムを使用して、対象の遺伝子の任意の望ましくない産物の発現を下方制御することができる。本発明の実施において使用することができるリボザイムの例としては、これらに限定されないが、ヒト、マウス、およびラットの血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)−1のmRNAの保存された領域を標的とするリボザイムであるANGIOZYME(商標)(RPI.4610、Sima Therapeutics、Boulder、CO)、およびHerzyme(Sima Therapeutics)が挙げられる。
【0105】
光増感剤
ある特定の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲート内の実体または部分は、光線力学的療法(PDT)において使用される光増感剤を含む。PDTでは、患者に光増感剤を局所投与または全身投与した後、治療される組織または器官において光増感剤によって吸収される光を照射する。光増感剤によって光が吸収されることにより、細胞に対して有害な反応性種(例えば、ラジカル)が生成する。効力を最大にするために、光増感剤は、一般には、投与するために適した形態であり、また、多くの場合、正常組織に対するある程度の選択性を伴って、標的部位において容易に細胞の内部移行を受けることができる形態でもある。
【0106】
いくつかの光増感剤(例えば、Photofrin(登録商標)、QLT、Inc.、Vancouver、BC、Canada)が単純な水溶液の一部として首尾よく送達されているが、そのような水溶液は、テトラピロールまたはポリピロールに基づく構造を有するものなどの疎水性の光増感薬に適さない場合がある。これらの薬物は、分子が積み重なることによって凝集する固有の傾向があり、その結果、光増感プロセスの効力が著しく低下する(Siggelら、J. Phys. Chem.、1996年、100巻:2070〜2075頁)。凝集を最小限にするための手法としては、リポソーム製剤(例えば、ベンゾポルフィリン誘導体一酸A、BPDMA、Verteporfin(登録商標)、QLT、Inc.、Vancouver、Canada;および亜鉛フタロシアニン、CIBA−Geigy、Ltd.、Basel、Switzerland)、および光増感剤を生体適合性ブロック共重合体とコンジュゲートし(Petersonら、Cancer Res.、1996年、56巻:3980〜3985頁)かつ/または抗体とコンジュゲートすること(Omelyanenkoら、Int. J. Cancer、1998年、75巻:600〜608頁)が挙げられる。
【0107】
光増感剤と結びついた低リジンクロロトキシンポリペプチドを含むクロロトキシンコンジュゲートは、PDTにおける新しい送達系として使用することができる。光増感剤の凝集を低下させることに加えて、本発明による光増感剤を送達することにより、その他の利点、例えば、標的組織/器官に対する特異性の増加および光増感剤の細胞の内部移行などが示される。
【0108】
本発明において使用するために適した光増感剤としては、PDTにおいて有用な光感作性を有する種々の合成分子および天然に存在する分子の任意のものが挙げられる。ある特定の実施形態では、光増感剤の吸収スペクトルは、可視範囲であり、一般には、350nmから1200nmの間であり、400nmから900nmの間、例えば、600nmから900nmの間であることが好ましい。本発明に従って毒素とカップリングすることができる適切な光増感剤としては、これらに限定されないが、ポルフィリンおよびポルフィリン誘導体(例えば、クロリン、バクテリオクロリン、イソバクテリオクロリン、フタロシアニン、およびナフタロシアニン);メタロポルフィリン、メタロフタロシアニン、アンゲリシン、カルコゲナピリリウム(chalcogenapyrrillium)色素、クロロフィル、クマリン、フラビンおよび関連する化合物、例えば、アロキサジンおよびリボフラビンなど、フラーレン、フェオホルビド、ピロフェオホルビド、シアニン(例えば、メロシアニン540)、フェオフィチン、サフィリン、テキサフィリン、プルプリン、ポルフィセン、フェノチアジニウム、メチレンブルー誘導体、ナフタルイミド、ナイルブルー誘導体、キノン、ペリレンキノン(例えば、ヒペリシン、ヒポクレリン、およびセルコスポリン)、プソラレン、キノン、レチノイド、ローダミン、チオフェン、バーディン(verdin)、キサンテン色素(例えば、エオシン、エリスロシン、ローズベンガル)、ポルフィリンの二量体の形態およびオリゴマーの形態、ならびに5−アミノレブリン酸などのプロドラッグが挙げられる(R.W. RedmondおよびJ.N. Gamlin、Photochem. Photobiol.、1999年、70巻:391〜475頁)。
【0109】
本発明において使用するために適した例示的な光増感剤としては、米国特許第5,171,741号;同第5,171,749号;同第5,173,504号;同第5,308,608号;同第5,405,957号;同第5,512,675号;同第5,726,304号;同第5,831,088号;同第5,929,105号;同第および5,880,145号(そのそれぞれの内容について、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のものが挙げられる。
【0110】
放射線増感剤
ある特定の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートは、放射線増感剤を含む。本明細書で使用される場合、「放射線増感剤」という用語は、腫瘍細胞の放射線療法(radiation therapy)に対する感受性を高める分子、化合物または作用剤を指す。放射線療法を受けている患者に放射線増感剤を投与することにより、一般に、放射線療法の効果が増強される。理想的には、放射線増感剤は、標的細胞に対してのみその機能を発揮する。使いやすさのために、放射線増感剤は、全身投与された場合にさえ、標的細胞を見つけることができるべきである。しかし、現在利用可能な放射線増感剤は、一般には、腫瘍に対して選択的ではなく、哺乳動物の体内に拡散することによって分布する。本発明のクロロトキシンコンジュゲートは、放射線増感剤のための新しい送達系として使用することができる。
【0111】
種々の放射線増感剤が当技術分野で公知である。本発明において使用するために適した放射線増感剤の例としては、これらに限定されないが、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、カルボプラチン、シスプラチン、およびオキサリプラチン(Amorinoら、Radiat. Oncol. Investig. 1999年;7巻:343〜352頁;Choy、Oncology、1999年、13巻:22〜38頁;Safranら、Cancer Invest.、2001年、19巻:1〜7頁;Dionetら、Anticancer Res.、2002年、22巻:721〜725頁;Cividalliら、Radiat. Oncol. Biol. Phys.、2002年、52巻:1092〜1098頁);ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))(Choy、Oncology、2000年、14巻:7〜14頁;MornexおよびGirard、Annals of Oncology、2006年、17巻:1743〜1747頁);エタニダゾール(Nitrolmidazole(登録商標))(Inanamiら、Int. J. Radiat. Biol.、2002年、78巻:267〜274頁);ミソニダゾール(Tamuleviciusら、Br. J. Radiology、1981年、54巻:318〜324頁;Palcicら、Radiat. Res.、1984年、100巻:340〜347頁)、チラパザミン(Masunagaら、Br. J. Radiol.、2006年、79巻:991〜998頁;Rischinら、J. Clin. Oncol.、2001年、19巻:535〜542頁;Shulmanら、Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys.、1999年、44巻:349〜353頁);ならびに核酸塩基誘導体、例えばハロゲン化プリンまたはハロゲン化ピリミジン、例えば5−フルオロデオキシウリジンなど(Buchholzら、Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys.、1995年、32巻:1053〜1058頁)が挙げられる。
【0112】
放射性同位元素
ある特定の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートは、放射性同位元素を含む。適切な放射性同位元素の例としては、腫瘍部位に局在すると細胞の破壊をもたらす任意のα−エミッター、β−エミッターまたはγ−エミッターが挙げられる(S.E. Order、「Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy、R.W. Baldwinら(編)、Academic Press、1985年)。そのような放射性同位元素の例としては、これらに限定されないが、ヨウ素131(131I)、ヨウ素125(125I)、ビスマス212(212Bi)、ビスマス213(213Bi)、アスタチン211(211At)、レニウム186(186Re)、レニウム188(188Re)、リン32(32P)、イットリウム90(90yY)、サマリウム153(153Sm)、およびルテチウム177(177Lu)が挙げられる。
【0113】
スーパー抗原
ある特定の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートは、スーパー抗原またはその生物学的に活性な部分を含む。スーパー抗原は、T細胞集団の大部分を活性化することにおいて非常に効率的である細菌のタンパク質およびウイルスのタンパク質の一群を構成する。スーパー抗原は、プロセシングされることなく主要組織適合性複合体(MHC)に直接結合する。実際、スーパー抗原は、MHCクラスII分子上のプロセシングされていない外側の抗原結合溝に結合し、それによって、従来のペプチド結合部位における多型の大部分を回避する。
【0114】
固形腫瘍を治療するために、スーパー抗原ベースの、腫瘍を治療する手法が開発されてきた。この手法では、ターゲティング部分、例えば、抗体または抗体断片をスーパー抗原とコンジュゲートし、標的化スーパー抗原をもたらす。抗体または抗体断片が、腫瘍に関連する抗原を認識すると、腫瘍細胞に結合した標的化スーパー抗原が、スーパー抗原によって活性化される細胞傷害性T細胞を誘発し、スーパー抗原依存性の細胞媒介性細胞傷害によって腫瘍細胞を直接死滅させる。(例えば、その内容の全てが参照により本明細書に組み込まれるSogaardら(1996年)「Antibody−targeted superantigens in cancer immunotherapy」Immunotechnology、2巻(3号):151〜162頁を参照されたい)。
【0115】
スーパー抗原ベースの腫瘍治療薬はいくつか成功している。例えば、野生型ブドウ球菌のエンテロトキシンA(SEA)との融合タンパク質が、結腸直腸癌および膵癌の臨床試験において調査されており(そのそれぞれの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Giantonioら、J. Clin. Oncol.、1997年、15巻:1994〜2007頁;Alpaughら、Clin. Cancer Res.、1998年、4巻:1903〜1914頁;Chengら、J. Clin. Oncol.、2004年、22巻:602〜609頁);エンテロトキシン遺伝子クラスター(egc)のブドウ球菌のスーパー抗原が、非小細胞肺癌を治療するために研究されており(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれるTermanら、Clin. Chest Med.、2006年、27巻:321〜324頁)、また、ブドウ球菌のエンテロトキシンBが、表在性膀胱癌の膀胱内の免疫療法のために評価されている(その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれるPeraboら、Int. J. Cancer、2005年、115巻:591〜598頁)。
【0116】
スーパー抗原、またはその生物学的に活性な部分を、低リジンクロロトキシンポリペプチドに結びつけて、本発明によるクロロトキシンコンジュゲートを形成し、療法、例えば、本明細書に記載の抗癌療法において使用することができる。
【0117】
本発明において使用するために適したスーパー抗原の例としては、これらに限定されないが、ブドウ球菌のエンテロトキシン(SE)(例えば、ブドウ球菌のエンテロトキシンA(SEA)またはブドウ球菌のエンテロトキシンE(SEE))、Streptococcus pyogenesの外毒素(SPE)、Staphylococcus aureusの毒素性ショック症候群毒素(TSST−1)、連鎖球菌の分裂促進性外毒素(SME)、連鎖球菌のスーパー抗原(SSA)、およびエンテロトキシン遺伝子クラスターのブドウ球菌のスーパー抗原が挙げられる。当業者に公知の通り、上で列挙されているスーパー抗原の三次元構造は、Protein Data Bankから得ることができる。同様に、上で列挙されているスーパー抗原および他のスーパー抗原の核酸配列およびアミノ酸配列は、GenBankから得ることができる。
【0118】
プロドラッグ活性化酵素
ある特定の実施形態では、本発明のクロロトキシンコンジュゲートは、指向性酵素プロドラッグ療法において使用することができる。指向性酵素プロドラッグ療法の手法では、指向性/標的化酵素およびプロドラッグを被験体に投与し、標的化酵素は、被験体の体の、プロドラッグを活性な薬物に変換する部分に特に局在する。プロドラッグは、一段階で(標的化酵素によって)、または二段階以上で活性な薬物に変換することができる。例えば、プロドラッグは、標的化酵素によって活性な薬物の前駆物質に変換することができる。次いで、前駆物質を、例えば、1種または複数種の追加的な標的化酵素、被験体に投与された1種または複数種の非標的化酵素、被験体内に、または被験体の標的部位に天然に存在する1種または複数種の酵素(例えば、プロテアーゼ、ホスファターゼ、キナーゼまたはポリメラーゼ)の触媒活性によって、被験体に投与される作用剤によって、および/または酵素的に触媒されない化学的なプロセス(例えば、酸化、加水分解、異性化、エピマー化など)によって、活性な薬物に変換することができる。
【0119】
対象の部位に酵素を差し向ける/ターゲティングするために、異なる手法が用いられている。例えば、ADEPT(抗体指向性酵素プロドラッグ療法)では、腫瘍抗原に対して設計/開発された抗体を、酵素に連結させ、被験体に注射し、それにより腫瘍に酵素を選択的に結合させる。腫瘍の酵素レベルと正常な組織の酵素レベルの識別が十分であれば、被験体にプロドラッグを投与する。プロドラッグは、腫瘍内のみで酵素によってその活性型に変換される。選択性は、抗体の腫瘍特異性によって、および腫瘍の酵素レベルと正常な組織の酵素レベルとの間に大きな格差が出るまでプロドラッグの投与を遅らせることによって実現する。初期の臨床試験では、見込みがあり、ADEPTがその腫瘍に関連する抗体または腫瘍に特異的な抗体が公知である全ての固形癌に対する有効な治療になり得ることが示されている。プロドラッグ活性化酵素をコードする遺伝子も腫瘍にターゲティングされている。この手法は、ウイルス指向性酵素プロドラッグ療法(VDEPT)、またはより一般的には、GDEPT(遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法と称されており、実験室系において良い結果が示されている。指向性酵素プロドラッグ療法の他のバージョンとしては、PDEPT(ポリマー指向性酵素プロドラッグ療法)、LEAPT(レクチン指向性酵素活性化プロドラッグ療法)、およびCDEPT(クロストリジウム指向性酵素プロドラッグ療法)が挙げられる。低リジンクロロトキシンポリペプチドに結びついたプロドラッグ活性化酵素を含む本発明によるコンジュゲートを同様に使用することができる。
【0120】
本発明において使用するために適した酵素/プロドラッグ/活性な薬物の組み合わせの非限定的な例は、例えば、Bagshaweら、Current Opinions in Immunology、1999年、11巻:579〜583頁;Wilman、「Prodrugs in Cancer Therapy」、Biochemical Society Transactions、14巻:375〜382頁、第615回会議、Belfast、1986年;Stellaら、「Prodrugs:A Chemical Approach To Targeted Drug Delivery」、「Directed Drug Delivery」、Borchardtら、(編)、247〜267頁(Humana Press、1985年)に記載されている。酵素/プロドラッグ/活性な抗癌薬の組み合わせの非限定的な例は、例えば、Rooseboomら、Pharmacol. Reviews、2004年、56巻:53〜102頁に記載されている。
【0121】
プロドラッグ活性化酵素の例としては、これらに限定されないが、ニトロレダクターゼ、チトクロムP450、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、チミジンキナーゼ、アルカリホスファターゼ、β−グルクロニダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、ペニシリンアミダーゼ、β−ラクタマーゼ、シトシンデアミナーゼ、およびメチオニンγ−リアーゼが挙げられる。
【0122】
プロドラッグをプロドラッグ活性化酵素によって活性化することによりin vivoで形成することができる抗癌薬の例としては、これらに限定されないが、5−(アジリジン−1−イル(y1))4−ヒドロキシル−アミノ−2−ニトロ−ベンズアミド、イソホスホルアミドマスタード、ホスホルアミドマスタード、2−フルオロアデニン、6−メチルプリン、ガンシクロビル三リン酸ヌクレオチド、エトポシド、マイトマイシンC、p−[N,N−ビス(2−クロロエチル)アミノ]フェノール(POM)、ドキソルビシン、オキサゾリジノン、9−アミノカンプトテシン、マスタード、メトトレキサート、安息香酸マスタード、ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノマイシン、カルミノマイシン、ブレオマイシン、エスペラミシン、メルファラン、パリトキシン、4−デスアセチルビンブラスチン−3−カルボン酸ヒドラジド、フェニレンジアミンマスタード、4’−カルボキシフタラト(1,2−シクロヘキサン−ジアミン)白金、タキソール、5−フルオロウラシル、メチルセレノール、およびカルボノチオニックジフルオリド(carbonothionic difluoride)が挙げられる。
【0123】
b.抗血管新生薬
ある特定の実施形態では、本発明のクロロトキシンコンジュゲート内の治療剤(例えば、抗癌剤)は、抗血管新生薬を含む。本発明において使用するために適した抗血管新生薬としては、血管新生のプロセス、または既存の血管から発達することによって新しい血管が形成されるプロセスを遮断する、阻害する、減速する、または低下させる任意の分子、化合物、または因子が挙げられる。そのような分子、化合物、または因子は、これらに限定されないが、(1)発生している血管の膜が溶解されるステップ、(2)内皮細胞が移動し、増殖するステップ、および(3)細胞が移動することにより新しい脈管構造が形成されるステップを含めた血管新生に関与するステップのいずれかを遮断すること、阻害すること、減速させること、または低下させることによって血管新生を遮断することができる。
【0124】
抗血管新生薬の例としては、これらに限定されないが、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、セレコキシブ(CELEBREX(登録商標))、エンドスタチン、サリドマイド、EMD121974(シレンジタイド)、TNP−470、スクアラミン、コンブレタスタチンA4、インターフェロン−α、抗VEGF抗体、SU5416、SU6668、PTK787/2K22584、マリミスタール(Marimistal)、AG3340、COL−3、ネオバスタット(Neovastat)、およびBMS−275291が挙げられる。
【0125】
抗血管新生薬は、これらに限定されないが、抗癌療法および黄斑変性症に対する療法を含めた種々の治療的な状況において使用することができる。
【0126】
当業者には理解される通り、本明細書において引用されている治療剤特定の例は、本発明の実施において使用するために適した治療剤のうちの非常に少数のみを示している。
【0127】
2.検出可能な実体/部分
ある特定の実施形態では、提供されるコンジュゲートは、1つまたは複数の検出可能な実体または部分を含む、すなわち、コンジュゲートは、そのような実体または部分で「標識されている」。いくつかのそのような実施形態では、そのようなコンジュゲートは、診断への適用において有用である。
【0128】
多種多様な検出可能な作用剤はいずれも、本発明の実施において使用することができる。適切な検出可能な作用剤としては、これらに限定されないが、種々のリガンド、放射性核種;蛍光色素;化学発光剤(例えば、アクリジニウム(acridinum)エステル、安定化されたジオキセタンなど);生物発光剤;スペクトル分解可能な無機蛍光半導体ナノ結晶(すなわち、量子ドット);微小粒子;金属ナノ粒子(例えば、金、銀、銅、白金など);ナノクラスター;常磁性金属イオン;酵素;比色標識(例えば、色素、コロイド金など);ビオチン;ジゴキギゲニン(dioxigenin);ハプテン;およびそれに対する抗血清またはモノクローナル抗体が入手可能なタンパク質が挙げられる。
【0129】
a.放射性の同位元素またはイオンおよび/または常磁性の同位元素またはイオン
ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドを、放射性の同位元素またはイオンおよび/または常磁性の同位元素またはイオンで標識する。例えば、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、同位体で標識することができる(すなわち、自然界に通常見いだされる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子で置き換えられた1つまたは複数の原子を含有してよい)または同位元素を、低リジンクロロトキシンポリペプチドに付着させることができる。低リジンクロロトキシンポリペプチドに組み込むことができる同位元素の非限定的な例としては、水素、炭素、フッ素、亜リン酸、銅、ガリウム、イットリウム、テクネチウム、インジウム、ヨウ素、レニウム、タリウム、ビスマス、アスタチン、サマリウム、およびルテチウムの同位元素(すなわち、H、13C、14C、18F、32P、35S、64Cu、67Ga、90Y、99MTc、111In、125I、123I、129I、131I、135I、186Re、187Re、201Tl、212Bi、211At、153Sm、177Lu)が挙げられる。
【0130】
ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドは、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)またはポジトロン放出断層撮影法(PET)によって検出可能な放射性同位元素を含む。そのような放射性核種の例としては、これらに限定されないが、ヨウ素131(131I)、ヨウ素125(125I)、ビスマス212(212Bi)、ビスマス213(213Bi)、アスタチン221(221At)、銅67(67Cu)、銅64(64Cu)、レニウム186(186Re)、レニウム188(188Re)、リン32(32P)、サマリウム153(153Sm)、ルテチウム177(177Lu)、テクネチウム99m(99mTc)、ガリウム67(67Ga)、インジウム111(11lIn)、およびタリウム201(201Tl)が挙げられる。
【0131】
ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドを、ガンマカメラによって検出可能な放射性同位元素で標識する。そのような放射性同位元素の例としては、これらに限定されないが、ヨウ素131(131I)、およびテクネチウム99m(99mTc)が挙げられる。
【0132】
ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドを、磁気共鳴画像法(MRI)における優良なコントラスト増強剤である常磁性金属イオンで標識する。そのような常磁性金属イオンの例としては、これらに限定されないが、ガドリニウム(III)(Gd3+)、クロム(III)(Cr3+)、ジスプロシウム(III)(Dy3+)、鉄(III)(Fe3+)、マンガン(II)(Mn2+)、およびイッテルビウム(III)(Yb3+)が挙げられる。ある特定の実施形態では、標識化部分は、ガドリニウム(III)(Gd3+)を含む。ガドリニウムは、FDAに承認されたMRI用のコントラスト剤であり、異常な組織に蓄積し、これらの異常な領域を磁気共鳴の画像上で非常に明るくする(増強する)。ガドリニウムにより、体の種々の領域、特に脳において、正常な組織と異常な組織との間に大きなコントラストがもたらされることが公知である。
【0133】
ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドを、核磁気共鳴分光法(MRS)によって検出可能な安定な常磁性の同位元素で標識する。適切な安定な常磁性の同位元素の例としては、これらに限定されないが、炭素13(13C)およびフッ素19(19F)が挙げられる。
【0134】
一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンコンジュゲートに金属同位元素をキレート化によって非共有結合的に付着させる。キレート化の例としては、金属同位元素の、低リジンクロロトキシンポリペプチドに融合したポリHis領域へのキレート化が挙げられる。
【0135】
一部の実施形態では、ガドリニウム(Gd)などの金属を、上記の通り、共有結合によって、またはキレート化によって低リジンクロロトキシンポリペプチドに組み込む。
【0136】
b.蛍光色素
ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドを、蛍光色素で標識する。多種多様な化学構造および物理的特性の多数の公知の蛍光色素が、本発明の実施において使用するために適している。適切な蛍光色素としては、これらに限定されないが、フルオレセインおよびフルオレセイン色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanine)またはFITC、ナフトフルオレセイン、4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセインまたはFAMなど)、カルボシアニン、メロシアニン、スチリル色素、オキソノール色素、フィコエリトリン、エリスロシン、エオシン、ローダミン色素(例えば、カルボキシテトラメチルローダミンまたはTAMRA、カルボキシローダミン6G、カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、リサミンローダミンB、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミン(TMR)など)、クマリンおよびクマリン色素(例えば、メトキシクマリン、ジアルキルアミノクマリン、ヒドロキシクマリン、アミノメチルクマリン(AMCA)など)、Oregon Green色素(例えば、Oregon Green 488、Oregon Green 500、Oregon Green 514など)、Texas Red、Texas Red−X、SPECTRUM RED(商標)、SPECTRUM GREEN(登録商標)、シアニン色素(例えば、CY−3(商標)、CY−5(商標)、CY−3.5(商標)、CY−5.5(商標)など)、ALEXA FLUOR(商標)色素(例えば、ALEXA FLUOR(商標)350、ALEXA FLUOR(商標)488、ALEXA FLUOR(商標)532、ALEXA FLUOR(商標)546、ALEXA FLUOR(商標)568、ALEXA FLUOR(商標)594、ALEXA FLUOR(商標)633、ALEXA FLUOR(商標)660、ALEXA FLUOR(商標)680など)、BODIPY(商標)色素(例えば、BODIPY(商標)FL、BODIPY(商標)R6G、BODIPY(商標)TMR、BODIPY(商標)TR、BODIPY(商標)530/550、BODIPY(商標)558/568、BODIPY(商標)564/570、BODIPY(商標)576/589、BODIPY(商標)581/591、BODIPY(商標)630/650、BODIPY(商標)650/665など)、IRDyes(例えば、IRD40、IRD 700、IRD 800など)などが挙げられる。適切な蛍光色素のさらなる例および蛍光色素をタンパク質およびペプチドなどの他の化学的な実体にカップリングさせるための方法については、例えば、「The Handbook of Fluorescent Probes and Research Products」、第9版、Molecular Probes、Inc.、Eugene、ORを参照されたい。蛍光標識剤の好都合な性質としては、高いモル吸収係数、高い蛍光量子収率、および光安定性が挙げられる。一部の実施形態では、標識化フルオロフォアは、スペクトルの紫外線領域内(すなわち、400nm未満)ではなく可視の(すなわち、400nmから750nmの間の)吸収波長および放出波長を示す。
【0137】
c.酵素
ある特定の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドを、酵素で標識する。適切な酵素の例としては、これらに限定されないが、ELISAにおいて使用されるもの、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ベータガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼなどが挙げられる。他の例としては、ベータグルクロニダーゼ、ベータ−D−グルコシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼなどが挙げられる。酵素は、カルボジイミド、ジイソシアネート、グルタルアルデヒドなどのリンカー基を使用して低リジンクロロトキシンポリペプチドとコンジュゲートすることができる。
【0138】
一部の実施形態では、クロロトキシンではない特定の実体または部分が2つ以上の目的を果たし得ることが当業者には理解されよう。例えば、部分は、治療目的と診断目的の両方を有し得る。一例を挙げると、131Iなどの放射性ヨウ素は、悪性神経膠腫を含めた種々の腫瘍の治療においてクロロトキシンコンジュゲート内の放射標識と細胞傷害性治療剤の両方として使用されてきた。
【0139】
III.医薬組成物
本明細書に記載のクロロトキシンコンジュゲートは、それ自体で、かつ/または医薬組成物の形態で投与することができる。一部の実施形態では、有効量の少なくとも1つのクロロトキシンコンジュゲートおよび少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0140】
クロロトキシンコンジュゲート、またはその医薬組成物は、本発明に従って、少なくとも1つの所望の結果を実現するために必要な、またはそのために十分な量および時間で投与することができる。例えば、本発明の医薬組成物は、癌細胞を死滅させる、腫瘍サイズを低下させる、腫瘍の成長または転移を阻害する、種々の白血病を治療する、かつ/またはそれらの疾患を有する哺乳動物(ヒトを含む)の生存時間を延長する、またはそうでなければ、臨床的利益をもたらすような量および時間で投与することができる。
【0141】
本発明の医薬組成物は、所望の治療効果を実現するために有効な任意の量および任意の投与経路を用いて投与することができる。
【0142】
投与する医薬組成物の正確な量は、被験体間で、被験体の種、年齢、および全身状態、状態の重症度などに応じて変動する(以下を参照されたい)。
【0143】
最適な医薬製剤は、投与経路および所望の投与量に応じて変動し得る。そのような製剤は、投与された化合物の物理的な状態、安定性、in vivo放出の速度、およびin vivoクリアランスの速度に影響を及ぼす可能性がある。
【0144】
本発明の医薬組成物は、投与を容易にし、かつ投与量を均一にするために、単位剤形で製剤化することができる。「単位剤形」という表現は、本明細書で使用される場合、クロロトキシンコンジュゲート(1種または複数種の追加的な作用剤を伴う、または伴わない)の、治療される患者に対する物理的に別個の単位を指す。しかし、本発明の組成物の1日の総使用量は、主治医によって良好な医学的判断の範囲内で決定されることが理解されよう。
【0145】
1つまたは複数の適切な生理的に許容される担体または賦形剤を所望の投与量で製剤化した後、本発明の医薬組成物を、ヒトまたは他の哺乳動物に任意の適切な経路によって投与することができる。錠剤、カプセル剤、注射用溶液などを含めた種々の送達系が公知であり、それを使用してそのような組成物を投与することができる。投与方法としては、これらに限定されないが、経皮経路、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、肺経路、硬膜外経路、眼経路、および経口経路が挙げられる。組成物は、任意の都合のよい経路またはその他の適切な経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜の内層(例えば、経口、粘膜、直腸および腸粘膜など)を通じた吸収によって投与することができ、また、他の生物学的に活性な作用剤と一緒に投与することができる。投与は、全身的かつ/または局所的であってよい。
【0146】
注射可能な調製物、例えば、滅菌された注射可能な水性または油性の懸濁液は、公知の技術に従って、適切な分散剤または湿潤剤、および懸濁化剤を使用して製剤化することができる。滅菌された注射可能な調製物は、無毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の滅菌された注射可能な溶液、懸濁液またはエマルション、例えば、2,3−ブタンジオール中溶液であってもよい。使用することができる許容できるビヒクルおよび溶媒の主なものは、水、リンゲル液、U.S.P.および等張食塩水である。さらに、滅菌された不揮発性油が溶液または懸濁媒体として慣習的に使用される。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含めた任意の無刺激性の不揮発性油を使用することができる。オレイン酸などの脂肪酸も、注射製剤の調製において使用することができる。滅菌液体担体は、非経口投与するための組成物由来の滅菌液体において有用である。
【0147】
注射製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通して濾過することによって、または、使用する前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体に溶解または分散させることができる滅菌固体組成物の形で滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。滅菌された液剤または懸濁剤である液体の医薬組成物は、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射または皮下注射によって投与することができる。注射は、単回のプッシュによるもの、または段階的な注入(例えば、30分の静脈内注入)によるものであってよい。必要な場合、組成物は、注射部位の疼痛を和らげるための局所麻酔薬を含んでよい。
【0148】
薬物の効果を長引かせるために、多くの場合、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることが望ましい。これは、難水溶性の結晶性材料または非結晶性材料の液体懸濁液を使用することによって実現することができる。このとき、薬物の吸収速度はその溶解速度に左右され、その溶解速度は同様に、結晶サイズおよび結晶形に左右され得る。あるいは、非経口的に投与した薬物形態の遅延吸収は、油状のビヒクルに薬物を溶解または懸濁させることによって実現される。注射可能なデポ剤の形態は、ポリ乳酸−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中の薬物というマイクロカプセルに封入したマトリックスを形成することによって製造される。薬物のポリマーに対する比率および使用する特定のポリマーの本質に応じて薬物放出の速度を調節することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が挙げられる。デポ剤注射製剤は、薬物を体組織と適合するリポソーム(脂質小胞としても公知である)またはマイクロエマルションに閉じ込めることによって調製することもできる。
【0149】
経口投与するための液体剤形としては、これらに限定されないが、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルション、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、および加圧組成物が挙げられる。活性成分(すなわち、コンジュゲート)に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般に使用される不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などを含有してよい。不活性な希釈剤に加えて、経口用組成物は、アジュバント、例えば、湿潤剤、懸濁化剤、保存料、甘味料、調味料、および香料、増粘剤、着色料、粘度調節剤、安定剤または浸透圧調節剤なども含んでよい。経口投与するための適切な液体担体の例としては、水(上記の添加物を部分的に含有する;例えば、セルロース誘導体、カルボキシメチル(caboxymethyl)セルロースナトリウム液剤など)、アルコール(一価アルコールおよびグリコールなどの多価アルコールを含む)およびそれらの誘導体、および油(例えば、精留したヤシ油および落花生油))が挙げられる。
【0150】
経口投与用の固体剤形としては、例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が挙げられる。そのような固体剤形では、活性成分を、少なくとも1つの不活性な生理的に許容される賦形剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなど、および:(a)増量剤(filler)または増量剤(extender)、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸など;(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアラビアゴムなど;(c)保湿剤、例えば、グリセロールなど;(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなど;(e)溶解遅延剤、例えば、パラフィンなど;(f)吸収促進剤、例えば、四級アンモニウム化合物など;(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなど;(h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土など;および(i)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなど、ならびにそれらの混合物の1つまたは複数と混合する。固形製剤用に適した追加的なまたは代替の賦形剤としては、非イオン性表面修飾剤および陰イオン性表面修飾剤などの表面修飾剤が挙げられる。表面修飾剤の代表的な例としては、これらに限定されないが、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、およびトリエタノールアミンが挙げられる。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合では、剤形は、緩衝剤も含んでよい。固体剤形当たりの固体担体の量は、広範に変動する。一部の実施形態では、固体剤形当たりの固体担体の量は、約25mgから約1gまでである。
【0151】
同種の固体組成物は、例えばラクトースまたは乳糖ならびに高分子量のポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して軟充填ゼラチンカプセルおよび硬充填ゼラチンカプセル中に充填するものとしても使用することができる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤である固体剤形は、腸溶コーティング、制御放出コーティングなどのコーティングおよびシェルおよび製剤の技術分野で周知の他のコーティングを用いて調製することができる。これらの剤形は、場合によって、乳白剤を含有してよく、活性成分(複数可)が、腸管のある特定の一部分にのみ、またはそこに優先的に、場合によって、遅延して放出される組成物であってよい。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0152】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物を、治療を必要とする領域に局部的に投与することが望ましい場合がある。これは、例えば、とりわけ、外科手術の間に局所的に注入することによって、局部的に塗布すること、注射によって、カテーテルを用いて、坐薬を用いて、または皮膚パッチ剤またはステントまたは他の移植片によって実現することができる。
【0153】
局部的に投与するためのいくつかの組成物は、ゲル剤、軟膏剤、ローション剤、またはクリーム剤として製剤化することができ、それは、水、グリセロール、アルコール、プロピレングリコール、脂肪アルコール、トリグリセリド、脂肪酸エステル、または鉱油などの担体を含んでよい。他の局部用担体としては、流動石油、パルミチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール、エタノール(95%)、水中ポリオキシエチレンモノラウレート(5%)、または水中ラウリル硫酸ナトリウム(5%)が挙げられる。必要に応じて、抗酸化剤、保湿剤、粘度安定剤、および同様の作用剤などの他の材料を加えることができる。アゾンなどの経皮浸透増強剤も含めることができる。
【0154】
さらに、特定の例では、組成物は、皮膚の上、皮内または皮下に設置した経皮デバイスの内部に配置することができる。そのようなデバイスとしては、化合物を皮膚の上に、受動的放出機構または能動的放出機構のいずれかによって放出するパッチ剤、移植片、および注射が挙げられる。経皮投与は、上皮組織および粘膜組織を含めた体の表面および体の通路の内層を渡る投与の全てを含む。そのような投与は、ローション剤、クリーム剤、泡剤、パッチ剤、懸濁剤、液剤、および坐剤(直腸用および膣用)において本組成物を使用して行うことができる。
【0155】
経皮投与は、例えば、活性成分(複数可)および皮膚に対して無毒性の担体を含有する経皮パッチ剤を使用し、活性成分(複数可)の少なくともいくつかを全身的に吸収させるために皮膚を介して血流中に送達させることによって実現することができる。担体は、クリーム剤および軟膏剤、ペースト剤、ゲル剤、および閉塞デバイスなどの任意の数の形態をとってよい。クリーム剤および軟膏剤は、粘性の液体または水中油型または油中水型のいずれかの半固体のエマルションであってよい。活性成分(複数可)を含有する、石油または親水性の石油に分散した吸収性の粉末で構成されるペースト剤も適切であり得る。活性成分(複数可)を含有する貯蔵器を覆う半透性膜などの種々の閉塞デバイスを使用して、活性成分(複数可)を担体、または活性成分を含有するマトリックスと一緒に、またはそれなしで血流中に放出させることができる。
【0156】
坐薬製剤は、カカオバターを含めた伝統的な材料から、坐薬の融点を変化させるためのワックス、およびグリセリンを添加して、または添加せずに、作製することができる。種々の分子量のポリエチレングリコールなどの水溶性の坐薬基剤も使用することができる。
【0157】
種々の製剤を作出するための材料および方法は、当技術分野で公知であり、本発明の実施に適応させることができる。
【0158】
カプセル封入剤
一部の実施形態では、本発明によって提供される組成物は、1つまたは複数のカプセル封入剤を含む。一般に、カプセル封入剤は、コンジュゲートまたは部分などの実体を閉じ込めるために使用することができる任意の生理的に許容できる作用剤であってよい。「閉じ込められた」とは、カプセル封入剤が実体を取り囲む、またはそれを封入し得ることを意味する、または、「閉じ込められた」実体は、カプセル封入剤を含む材料の内部に部分的にまたは完全に埋め込むことができる。
【0159】
一部の実施形態では、カプセル封入剤は、部分(治療的部分などの)の一部であり、低リジンクロロトキシンポリペプチドをカプセル封入剤とコンジュゲートする。いくつかのそのような実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドをカプセル封入剤の外面とコンジュゲートする。いくつかのそのような実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドをカプセル封入剤の外部の環境に露出させる。低リジンクロロトキシンポリペプチドは、カプセル封入剤と、直接的な相互作用(非共有結合性または共有結合性であってよい)によってコンジュゲートすることができる、または、カプセル封入剤と、リンカーを介してとコンジュゲートすることができる。
【0160】
一部の実施形態では、低リジンクロロトキシンポリペプチドおよび部分(例えば、治療的部分)を含むコンジュゲートをカプセル封入剤によって封入することができる。コンジュゲートは、定義済みの空間または環境(例えば、水性の環境)および/またはカプセル封入剤によって創出される空間または環境(例えば、水性の環境)の内部に部分的または完全に封入することができる。一部の実施形態では、コンジュゲートをカプセル封入剤の内部に少なくとも部分的に埋め込む。例えば、カプセル封入剤が、脂質膜を含む場合、コンジュゲートは、膜内の脂質分子の内部またはその間に少なくとも部分的に埋め込むことができる。一部の実施形態では、コンジュゲートをカプセル封入剤の内部に完全に埋め込む。
【0161】
カプセル封入剤の種々の型が当技術分野で公知であり、同様に、薬物、生体分子などを閉じ込めるためにそのような作用剤を使用する方法も当技術分野で公知である。ある特定の実施形態では、カプセル封入剤は、コアおよび表面を有する小粒子を含む。そのようなカプセル封入剤としては、これらに限定されないが、リポソーム、ミセル、微小粒子、ナノ粒子などが挙げられる。
【0162】
リポソームは、一般には、だいたい球形状の二重層構造または小胞であり、天然または合成のリン脂質膜で構成される。リポソームは、コレステロールおよびタンパク質などの他の膜コンポーネントをさらに含んでよい。リポソームの内部のコアは、一般には、水溶液を含有する。治療剤および/またはコンジュゲートは、水溶液に溶解させることができる。前記の通り、治療剤およびコンジュゲートは、リポソームの膜の内部に埋め込むことができる。リポソームは、siRNAなどの阻害性RNAを含めた核酸薬剤(例えば上記のものなど)などの作用剤を送達するために特に有用であり得る。
【0163】
ミセルは、一般に、リン脂質の単層で形成され、内部の水溶液を欠く以外はリポソームと同様である。内部の水溶液を含むように作製された逆ミセルも、本発明に従って使用することができる。
【0164】
一部の実施形態では、粒子は、その寸法の少なくとも1つの平均が約1μmよりも小さい微小粒子である。例えば、粒子の最小の寸法は、平均で約100nm、約120nm、約140nm、約160nm、約180nm、約200nm、約220nm、約240nm、約260nm、約280nm、約300nm、約320nm、約340nm、約360nm、約380nm、約400nm、約420nm、約440nm、約460nm、約480nm、約500nm、約550nm、約600nm、約650nm、約700nm、約750nm、約800nm、約850nm、約900nm、または約950nmであってよい。
【0165】
一部の実施形態では、粒子は、その寸法の少なくとも1つの平均が約100μmよりも小さいナノ粒子である。例えば、粒子の最小の寸法は、平均で約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約22nm、約24nm、約26nm、約28nm、約30nm、約32nm、約34nm、約36nm、約38nm、約40nm、約42nm、約44nm、約46nm、約48nm、約50nm、約55nm、約60nm、約65nm、約70nm、約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm、または約99nmであってよい。
【0166】
一部の実施形態では、粒子のコアは、診断への適用および/または治療への適用において有利であり得る磁気共鳴活性を有する材料を含む。磁気共鳴活性を有する材料としては、金属およびそれらの酸化物、例えば、アルミニウム−、コバルト−、インジウム−、鉄−、銅−、ゲルマニウム−、マンガン−、ニッケル−、スズ−、チタン−、パラジウム−、白金−、セレン−、ケイ素−、銀−、亜鉛−などを含有する金属などが挙げられる。
【0167】
一部の実施形態では、治療剤は、核酸を含む。核酸は、カプセル封入剤の内部に完全に封入することができる。一部の実施形態では、核酸薬剤をカプセル封入剤の内部に埋め込む。例えば、カプセル封入剤は、リポソームであってよく、核酸薬剤(nucleic agent)をリポソームの内部に封入することができる。核酸薬剤は、リポソームの脂質分子の内部に少なくとも部分的に埋め込むことができる。
【0168】
医薬パックまたは医薬キット
別の態様では、本発明は、本発明のクロロトキシンコンジュゲートの投与を可能にする、本明細書に記載の医薬組成物の1つまたは複数の成分を含有する1つまたは複数の容器(例えば、バイアル、アンプル、試験管、フラスコまたはビン)を含む医薬パックまたは医薬キットを提供する。
【0169】
IV.クロロトキシンコンジュゲートの使用方法
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のクロロトキシンコンジュゲートを含む組成物を、腫瘍を有するか、または腫瘍を有する疑いがある個体に、コンジュゲートが腫瘍に特異的に結合するように投与するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、そのような方法は、癌の治療および/または診断において有用である。一部の実施形態では、そのような方法は、個体が腫瘍を発症する可能性、個体における1つまたは複数の腫瘍のサイズが増大する可能性、個体における1つまたは複数の腫瘍が転移する可能性、および/または任意の他の測定(例えば、臨床的病期など)で癌が進行する可能性を低下させることにおいて有用である。
【0170】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のクロロトキシンコンジュゲートを含む組成物を、異常な血管新生を特徴とする疾患または状態を有するか、または有する疑いがある個体に、クロロトキシンコンジュゲートによって血管新生の程度が低下するように投与するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートにより、新脈管構造の形成が妨げられる。一部の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートにより、現存する新脈管構造の退行が引き起こされる。
【0171】
A.投与量および投与
本発明による組成物は、ある期間にわたって、単回用量または複数の用量からなるレジメンに従って投与することができる。
【0172】
クロロトキシンコンジュゲート、またはその医薬組成物は、所望の効果(例えば、治療的効果、診断的効果など)を実現するために有効な任意の投与経路を用いて投与することができる。本発明のある特定の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲート(またはその医薬組成物)を全身に送達する。典型的な全身投与経路としては、これらに限定されないが、筋肉内経路、静脈内経路、肺経路、および経口経路が挙げられる。全身投与は、例えば、注入またはボーラス注射によって、または上皮または皮膚粘膜の内層(例えば、経口、粘膜、直腸および腸粘膜など)に吸収させることによって行うこともできる。ある特定の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートは、静脈内に投与する。
【0173】
その代わりに、またはそれに加えて、他の投与経路も用いることができる。ある特定の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートは、静脈内、頭蓋内(腔内を含む)、筋肉内、腫瘍内、皮下、眼内、眼周囲、局部的適用からなる群から選択される経路によって、またはそれらの組み合わせによって投与する。
【0174】
以下で考察されているように、眼の新血管形成疾患における血管新生の程度を低下させることが望ましい。一部の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートを眼に送達することができる。眼への送達は、例えば、硝子体内の注射、結膜下注射などなどの眼内経路および/または眼周囲の経路を用いて実現することができる。クロロトキシン作用剤の眼への局部適用は、点眼剤を用いても実現することができる。
【0175】
投与の眼経路は、黄斑変性症などの眼の新血管形成疾患を治療するために特に有用であり得る。
【0176】
投与は、毎日1回または多数回、週に1回(または、いくつかの他の複数日の間隔)、または断続的なスケジュールによるものであってよい。例えば、組成物は、数週間(例えば、4〜10週間)にわたって、週に1回の頻度で1日当たり1回または複数回投与することができる。あるいは、組成物は、数日(例えば、1〜10日間)にわたって毎日投与した後に数日(例えば、1〜30日間)投与せず、このサイクルを所与の回数(例えば、2〜10サイクル)繰り返すことができる。一部の実施形態では、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、または少なくとも6回の投薬を施す。一部の実施形態では、少なくとも2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間にわたって、週に1回、組成物を投与する。
【0177】
投与は、注射(皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射など)、経口投与、および/または腔内投与によってなど、任意の都合のよい様式で、または様式の任意の組み合わせで行うことができる。
【0178】
投与経路に応じて、有効用量は、臓器機能、体重、または治療される被験体の体表面積に従って算出することができる。当業者は、ヒト臨床試験において観察された薬物動態データに照らして、適切な投与量の最適化を容易に行うことができる。最後の投薬レジメンは、主治医が、薬物の作用、例えば、薬物の特異的活性、損傷の重症度および患者の反応性、患者の年齢、状態、体重、性別および食事、存在する任意の感染症の重症度、投与時間、並行療法の使用(または不使用)、および他の臨床的因子を考慮して決定することができる。
【0179】
典型的な投与量は、体重1kg当たり約1.0pgから体重1kg当たり約100mgまでにわたる。(投与量は、本明細書では、コンジュゲートの低リジンクロロトキシンポリペプチド部分の重量単位で提示されている。)
例えば、全身投与するための典型的な投与量は、体重1kg当たり約100.0ngから体重1kg当たり約10.0mgまでにわたる。例えば、クロロトキシンコンジュゲートを静脈内に投与するある特定の実施形態では、作用剤の投薬は、約0.001mg/kgから約5mg/kgまで、例えば、約0.001mg/kgから約5mg/kgまで、約0.01mg/kgから約4mg/kgまで、約0.02mg/kgから約3mg/kgまで、約0.03mg/kgから約2mg/kgまで、または約0.03mg/kgから約1.5mg/kgまでのクロロトキシンを含む1つまたは複数の用量を投与することを含んでよい。例えば、一部の実施形態では、それぞれが、約0.002mg/kg、約0.004mg/kg、約0.006mg/kg、約0.008mg/kg、約0.009mg/kg、約0.01mg/kg、約0.02mg/kgまたは0.02mg/kgを超えるクロロトキシンを含有するクロロトキシンコンジュゲートの1つまたは複数の用量を投与することができる。一部の実施形態では、それぞれが、約0.03mg/kg、約0.04mg/kg、約0.05mg/kg、約0.06mg/kg、約0.07mg/kg、約0.09mg/kg、約1.0mg/kgまたは1.0mg/kgを超えるクロロトキシンを含有するクロロトキシンコンジュゲートの1つまたは複数の用量を投与することができる。一部の実施形態では、それぞれが、約0.05mg/kg、約0.10mg/kg、約0.15mg/kg、約0.20mg/kg、約0.25mg/kg、約0.30mg/kg、約0.35mg/kg、約0.40mg/kg、約0.45mg/kg、約0.50mg/kg、約0.55mg/kg、約0.60mg/kg、約0.65mg/kg、約0.70mg/kg、約0.75mg/kg、約0.80mg/kg、約0.85mg/kg、約0.90mg/kg、約0.95mg/kg、約1.0mg/kg、または約1mg/kgを超えるクロロトキシンを含有するクロロトキシンコンジュゲートの1つまたは複数の用量を投与することができる。さらに他の実施形態では、それぞれが、約1.0mg/kg、約1.05mg/kg、約1.10mg/kg、約1.15mg/kg、約1.20mg/kg、約1.25mg/kg、約1.3mg/kg、約1.35mg/kg、約1.40mg/kg、約1.45mg/kg、約1.50mg/kg、または約1.50mg/kgを超えるクロロトキシンを含有するクロロトキシンコンジュゲートの1つまたは複数の用量を投与することができる。そのような実施形態では、治療において、単回用量のクロロトキシンコンジュゲートを投与すること、または2回用量、3回用量、4回用量、5回用量、6回用量または6回を超える用量を投与することを含んでよい。2つの連続した用量は、1日間隔、2日間隔、3日間隔、4日間隔、5日間隔、6日間隔、7日間隔、または7日を超える間隔(例えば、10日間、2週間、または2週間超)で投与することができる。
【0180】
微量注入によって部位に直接投与するための典型的な投与量は、体重1kg当たり約1ngから体重1kg当たり約1mgまでにわたる。
【0181】
クロロトキシンコンジュゲートを局所的に投与するある特定の実施形態、特に、脳に腔内投与する場合では、コンジュゲートの投薬は、約0.01mgから約100mgまでのクロロトキシンポリペプチド、例えば、約0.05から約50mgまで、約0.1mgから約25mgまで、約0.1mgから約10mgまで、約0.1mgから約5mgまで、または約0.1mgから約1.0mgまでを含む1つまたは複数の用量を投与することを含んでよい。例えば、ある特定の実施形態では、それぞれが、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、約3mg、約3.5mg、約4mg、約4.5mgまたは約5mgの低リジンクロロトキシンポリペプチドを含有するクロロトキシンコンジュゲートの1つまたは複数の用量を投与することができる。一部の実施形態では、それぞれが、約0.1mg、約0.15mg、約0.2mg、約0.25mg、約0.3mg、約0.35mg、約0.4mg、約0.45mg、約0.5mg、約0.55mg、約0.6mg、約0.65mg、約0.7mg、約0.75mg、約0.8mg、約0.85mg、約0.9mg、約0.95mgまたは約1mgの低リジンクロロトキシンポリペプチドを含有するクロロトキシンコンジュゲートの1つまたは複数の用量を投与することができる。一部の実施形態では、治療は、単回用量のクロロトキシンコンジュゲートを投与すること、または2回用量、3回用量、4回用量、5回用量、6回用量または6回を超える用量を投与することを含んでよい。2つの連続した用量は、1日間隔、2日間隔、3日間隔、4日間隔、5日間隔、6日間隔、7日間隔、または7日を超える間隔(例えば、10日間、2週間、または2週間超)で投与することができる。一部の実施形態では、多数回の投与を施し、投与する低リジンクロロトキシンポリペプチドの量は、投与ごとに異なる。例えば、一部の実施形態では、用量は、担当臨床医によって決定された通りに、ある用量から別の用量に調整する(例えば、段階的に増やす、または減らす)ことができる。
【0182】
本発明の医薬の組み合わせを、追加的な療法と組み合わせて使用することができる(すなわち、本発明に従った治療は、1つまたは複数の所望の治療法または医学的手順と同時に、その前に、またはその後に施すことができる)ことが理解されよう。そのような併用レジメンにおいて使用するための療法(治療法および/または手順)の特定の組み合わせには、所望の治療法および/または手順の適合性ならびに実現される所望の治療効果を考慮に入れる。
【0183】
例えば、本発明の方法および組成物は、外科手術、放射線療法(radiotherapy)(例えば、γ−放射、陽子線放射線療法(radiotherapy)、電子ビーム放射線療法(radiotherapy)、陽子治療、密封小線源治療、および全身的な放射性同位元素)、内分泌療法、温熱療法および寒冷療法を含めた他の手順と一緒に使用することができる。
【0184】
その代わりに、またはそれに加えて、本発明の方法および組成物は、任意の有害作用(例えば、制吐薬)を弱毒化するため他の作用剤と一緒に、かつ/または、これらに限定されないが、2、3挙げると、アルキル化薬(メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド)、代謝拮抗薬(メトトレキサート)、プリンアンタゴニストおよびピリミジンアンタゴニスト(6メルカプトプリン、5フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン)、紡錘体阻害剤(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソウレア(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、およびホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメゲストロール)を含めた他の承認された化学療法薬と一緒に使用ことができる。最新の癌療法のより包括的な考察については、これによりその内容全体が参照により組み込まれる、http://www.cancer.gov/、http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htmにあるFDAに承認された抗腫瘍薬の一覧、およびThe Merck Manual、第17版、1999年を参照されたい。
【0185】
本発明の方法および組成物は、治療レジメンの一部として、細胞傷害性薬剤の1つまたは複数の別の組み合わせと一緒に使用することもできる。一部の実施形態では、細胞傷害性薬剤の別の組み合わせは、CHOPP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン);CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン);COP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびプレドニゾン);CAP−BOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、プロカルバジン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン);m−BACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾン、およびロイコボリン);ProMACE−MOPP(プレドニゾン、メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、ロイコボリン、メクロレタミン(mechloethamine)、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン);ProMACE−CytaBOM(プレドニゾン、メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、ロイコボリン、シタラビン、ブレオマイシン、およびビンクリスチン);MACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン、およびロイコボリン);MOPP(メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン);ABVD(アドリアマイシン/ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、およびダカルバジン);MOPP(メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾンおよびプロカルバジン)とABV(アドリアマイシン/ドキソルビシン、ブレオマイシン、およびビンブラスチン)を交互に;MOPP(メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)とABVD(アドリアマイシン/ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、およびダカルバジン)を交互に;Ch1VPP(クロラムブシル、ビンブラスチン、プロカルバジン、およびプレドニゾン);IMVP−16(イホスファミド、メトトレキサート、およびエトポシド);MIME(メチル−gag、イホスファミド、メトトレキサート、およびエトポシド);DHAP(デキサメタゾン、高用量のシタラビン、およびシスプラチン);ESHAP(エトポシド、メチルプレドニゾロン、高用量のシタラビン、およびシスプラチン);CEPP(B)(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾン、およびブレオマイシン);CAMP(ロムスチン、ミトキサントロン、シタラビン、およびプレドニゾン);CVP−1(シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)、ESHOP(エトポシド、メチルプレドニゾロン、高用量のシタラビン、ビンクリスチンおよびシスプラチン);EPOCH(エトポシド、ビンクリスチン、およびドキソルビシンを96時間にわたって、シクロホスファミドおよび経口的なプレドニゾンのボーラス用量と一緒に)、ICE(イホスファミド、シクロホスファミド、およびエトポシド)、CEPP(B)(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾン、およびブレオマイシン)、CHOP−B(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびブレオマイシン)、CEPP−B(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、およびブレオマイシン)、ならびにP/DOCE(エピルビシンまたはドキソルビシン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、およびプレドニゾン)から選択される。
【0186】
B.指標
本発明の組成物および方法は、疾患または状態を治療および/または診断するために、種々の抗増殖性の状況および/または抗血管新生の状況において使用することができる。
【0187】
1.抗増殖性の状況
ある特定の実施形態では、原発癌および/または転移性癌などの、制御されていない細胞増殖を伴う状態および他の癌による状態を治療および/または診断するために本発明の組成物および方法を使用する。例えば、本発明の組成物および方法は、固形腫瘍のサイズを縮小するため、腫瘍の成長または転移を阻害するため、種々のリンパの癌を治療するため、および/またはこれらの疾患に罹患している哺乳動物(ヒトを含む)の生存時間を延長するために有用であるべきである。
【0188】
本発明に従って治療および/または診断することができる癌および癌の状態の例としては、これらに限定されないが、脳および中枢神経系の腫瘍(例えば、髄膜、脳、脊髄、脳神経およびCNSの他の部分の腫瘍、例えば、神経膠芽腫または髄芽腫など);頭部癌および/または頸部癌、乳房腫瘍、循環系(例えば、心臓、縦隔および胸膜、および他の胸腔内器官、血管腫瘍、および腫瘍に関連する血管の組織)の腫瘍;血液およびリンパ系の腫瘍(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、AIDS関連リンパ腫、悪性の免疫増殖性疾患、多発性骨髄腫、および悪性血漿細胞新生物、リンパ性白血病、骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病または慢性リンパ球性白血病、単球性白血病、他の特定の細胞型の白血病、細胞型の詳細が不明の白血病、リンパ系、造血組織および関連組織の詳細不明の悪性新生物、例えば、びまん性大細胞型リンパ腫、T細胞リンパ腫または皮膚のT細胞リンパ腫など);排泄系(例えば、腎臓、腎盂、尿管、膀胱、および他の泌尿器)の腫瘍;胃腸管(例えば、食道、胃、小腸、結腸、結腸直腸、直腸S状部接合部、直腸、肛門、および肛門管)の腫瘍;肝臓および肝内胆管、胆嚢、ならびに胆道、膵臓、および他の消化器の他の部分に関わる腫瘍;口腔(例えば、唇、舌、歯肉、口腔底、口蓋、耳下腺、唾液腺、扁桃腺、中咽頭、上咽頭、梨状陥凹、下咽頭、および口腔の他の部位)の腫瘍;生殖系(例えば、外陰部、膣、子宮頸部、子宮、卵巣、および女性生殖器に関連する他の部位、胎盤、陰茎、前立腺、睾丸、および男性生殖器に関連する他の部位)の腫瘍;気道の腫瘍(例えば、鼻腔、中耳、副洞、喉頭、気管、気管支および肺、例えば、小細胞肺癌および非小細胞肺癌など);骨格系(例えば、肢の骨および関節軟骨、骨関節軟骨および他の部位)の腫瘍;皮膚の腫瘍(例えば、皮膚の悪性黒色腫、非黒色腫皮膚癌、皮膚の基底細胞癌、皮膚の扁平上皮癌、中皮腫、カポジ肉腫);ならびに末梢神経および自律神経系、結合組織および軟組織、後腹膜および腹膜、眼および付属器、甲状腺、副腎、および他の内分泌腺および関連する構造体を含めた他の組織に関わる腫瘍、リンパ節の続発性悪性新生物および詳細不明の悪性新生物、呼吸器系および消化系の続発性悪性新生物、および他の部位の続発性悪性新生物が挙げられる。
【0189】
一部の実施形態では、腫瘍は、皮膚黒色腫または眼内黒色腫である。一部の実施形態では、腫瘍は転移性黒色腫である。一部の実施形態では、腫瘍は非小細胞肺癌である。いくつかの実施形態では、腫瘍は結腸癌または結腸直腸癌である。
【0190】
一部の実施形態では、組成物および方法は、神経外胚葉性腫瘍の治療および/または診断において有用である(例えば、米国特許第6,667,156号を参照されたい;その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。一部の実施形態では、神経外胚葉性腫瘍は神経膠腫である(例えば、米国特許第5,905,027号;同第6,028,174号;同第6,319,891号;同第6,429,187号;および同第6,870,029号;および国際特許出願公開WO03/101475A2、WO09/021136A1、およびWO 2009/140599を参照されたい;そのそれぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれる)。本発明の組成物および方法が有用である神経膠腫の種類としては、これらに限定されないが、多形神経膠芽腫(WHOグレードIV)、未分化星状細胞腫(WHOグレードIII)、低悪性度の神経膠腫(WHOグレードII)、毛様細胞性星状細胞腫(pliocytic astrocytoma)(WHOグレードI)、乏突起神経膠腫、神経節腫、髄膜腫、および上衣腫が挙げられる。一部の実施形態では、神経外胚葉性腫瘍は、髄芽腫、神経芽細胞腫、褐色細胞腫、黒色腫、末梢性未分化神経外胚葉性腫瘍、小細胞肺癌、ユーイング肉腫、および脳における転移性腫瘍からなる群から選択される。
【0191】
本発明のある特定の実施形態では、肉腫の治療および/または診断において組成物および方法を使用する。一部の実施形態では、本発明の組成物および方法を、膀胱癌、乳癌、慢性リンパ腫白血病、頭頸部癌、子宮体癌、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵癌、および前立腺癌の治療および/または診断において使用する。一部の実施形態では、肉腫は、前立腺癌または乳癌からなる群から選択される。(例えば、そのそれぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれる、国際特許出願公開WO03/101474A1、WO03/10475A2、およびWO 2009/140599を参照されたい。)一部の実施形態では、肉腫(sarcome)は膵癌である。
【0192】
本発明のある特定の実施形態では、組成物および方法は、骨髄増殖性疾患(例えば、骨髄起源の腫瘍)および/またはリンパ球増殖性障害(例えば、リンパ起源の腫瘍)の治療および/または診断において有用である。(例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開WO05/099774を参照されたい。)
本発明の組成物および方法が有用である骨髄増殖性疾患の種類としては、これらに限定されないが、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血症(ET)、特発性骨髄化生(AMM)(特発性骨髄線維症(IMF)とも称される)、および慢性骨髄性白血病(CML)が挙げられる。
【0193】
一部の実施形態では、リンパ球増殖性障害を治療および/または診断するために本発明の組成物および方法を使用する。一部の実施形態では、リンパ球増殖性障害は非ホジキンリンパ腫である。一部の実施形態では、リンパ球増殖性障害は、例えば、前駆B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫または成熟B細胞新生物などのB細胞新生物である。成熟B細胞新生物の非限定的な種類としては、B細胞性慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞性前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾臓辺縁帯B細胞リンパ腫、有毛細胞白血病、節外周辺帯B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、結節性辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、形質細胞腫、および形質細胞骨髄腫が挙げられる。
【0194】
一部の実施形態では、T細胞新生物を治療するために本発明の組成物および方法を使用する。T細胞新生物の非限定的な種類としては、T細胞性前リンパ球性白血病、T細胞性大顆粒リンパ球性白血病、NK細胞性白血病、節外性NK/T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、腸症型腸管T細胞リンパ腫、肝脾ガンマデルタT細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、および成体T細胞リンパ腫が挙げられる。
【0195】
本発明の組成物および方法を使用して治療することができる腫瘍は、他の化学療法薬を用いた治療に対して難治性であってよい。「難治性」という用語は、本明細書において腫瘍に関して使用される場合、腫瘍(および/またはその転移)が、本発明の組成物以外の少なくとも1つの化学療法薬を用いて治療すると、そのような化学療法剤で治療した後、抗増殖反応を示さない、または弱い抗増殖反応のみを示す(すなわち、腫瘍の成長に対して阻害を示さない、または弱い阻害のみを示す)−すなわち、他の(好ましくは標準の)化学療法薬を用いると腫瘍を全く治療することができない、または不満足な結果のみが伴うこと意味する。本発明は、難治性の腫瘍などの治療について言及する場合、(i)患者を治療する間に、1つまたは複数の化学療法薬がすでに失敗している腫瘍だけでなく、(ii)他の手段、例えば、生検材料および培養により、化学療法薬の存在下で難治性であることを示すことができる腫瘍も包含すると理解されるべきである。
【0196】
2.抗血管新生の状況
クロロトキシンは、抗血管新生の性質を発揮することが示されている。例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開WO2009/117018を参照されたい。ある特定の実施形態では、例えば、癌(上記の通り転移性癌を含む)、眼の新血管形成(例えば、黄斑変性症など)、炎症性疾患(例えば、関節炎など)などの疾患または状態を治療、診断、および/または改善するために本発明の組成物および方法を使用する。一部の実施形態では、状態または疾患は、脈絡膜血管新生を特徴とする。そのような状態または疾患の例としては、これらに限定されないが、黄斑変性症(滲出型黄斑変性症、加齢黄斑変性などを含む)、近視、眼の外傷、弾力線維性仮性黄色腫、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0197】
黄斑変性症は、65歳以上の米国人における視力喪失および失明の主な原因である。黄斑変性症(macular dengeration)は、一般には、加齢性の形態で起こる(多くの場合、AMDまたはARMDと称される)が、若年性の黄斑変性症も同様に起こる。AMD/ARMDでは、鋭い、中心視力に関与する網膜の一部である斑が変性する。黄斑変性症は、一般には、萎縮型(非血管新生性)または滲出型(新生血管性)のいずれかとして診断される。
【0198】
萎縮型黄斑変性症では、ドルーゼンとして公知の黄色がかった斑点が、主に斑の周りの劣化している組織由来の沈着物または壊死組織片から蓄積し始める。通常、中心視力の低下が徐々に起こり、それは滲出型黄斑変性症における視力喪失ほど重度ではない。
【0199】
滲出型黄斑変性症は、「新生血管」という名称により示される通り、例えば、斑において異常に成長している新しい血管を特徴とする。そのような新しい血管は、血液および体液を漏出しながら網膜の真下に成長する恐れがある。そのような漏出により、感光性の網膜細胞に恒久的な損傷が引き起こされ、その細胞が死に、中心視力に盲点が生じる。滲出型黄斑変性症は、さらに2つのカテゴリーにグループ分けすることができる。肉眼で見えない形態の滲出型黄斑変性症は、網膜の真下への新しい血管成長は明白ではなく、漏出は明らかに少なく、一般には、視力低下の重症度が低い。典型的な形態の滲出型黄斑変性症では、血管成長および瘢痕は非常に明らかであり、網膜の真下に観察可能な輪郭が描かれる。典型的な滲出型黄斑変性症は、典型的な脈絡膜血管新生としても公知であり、通常、より重度の視力喪失に至る。
【0200】
多くのAMD/ARMDの症例を含む滲出型黄斑変性症における血管新生の役割を考慮すると、本発明の組成物および方法は、そのような障害を治療すること、診断すること、および/または回復させることにおいて有用であり得る。滲出型黄斑変性症に対する現在の療法は、Lucentis(商標)、Macugen(商標)、および/またはVisudyne(商標)などの血管新生阻害剤を伴い、場合によって、光線力学的療法(PDT)と組み合わせて薬物を特定の細胞にターゲティングする。異常な血管を伴う網膜の領域に小さな熱傷を創出するために高エネルギーレーザー光を使用する光凝固も、滲出型黄斑変性症を治療するために使用される。
【0201】
一部の実施形態では、滲出型黄斑変性症および/または加齢黄斑変性に罹患している被験体に、クロロトキシンコンジュゲート(またはその医薬組成物)を投与する。滲出型黄斑変性症に罹患している被験体の中で、被験体は肉眼で見えない形態に罹患していても、典型的な形態に罹患していてもよい。一部の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートにより、現存する新脈管構造の退縮が引き起こされる。一部の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートにより、新しい血管の急な成長が妨げられる。ある特定の実施形態では、クロロトキシンコンジュゲートは、滲出型黄斑変性症に対する他の治療、例えば、光凝固、他の血管新生阻害剤を用いた治療、光線力学的療法などと組み合わせる。
【0202】
一部の実施形態では、本明細書に記載のクロロトキシン作用剤は、血管新生に関連する疾患、障害、または状態を治療するために推奨される1つまたは複数の治療レジメンを伴う治療レジメンと組み合わせて、またはその一部として投与する。いくつか例を挙げると、癌を治療するために推奨されるレジメンは、国立がん研究所(National Cancer Institute)のウェブサイトであるURLがwww.cancer.govのウェブサイトにおいて見いだすことができる。黄斑変性症を治療するために推奨されるレジメンは、URLがwww.mayoclinic org/macular−degeneration/treatment.htmlのウェブサイトにおいて見いだすことができる。治療レジメンは、化学療法、外科手術、および/または放射線療法を含んでよい。
【実施例】
【0203】
(実施例1)
低リジンクロロトキシンポリペプチドの合成
表1および表2に示されている配列番号1〜28のアミノ酸配列を有する低リジンクロロトキシンポリペプチドは、固相ペプチド合成(SPPS)を使用して合成することができる。小さな固体の多孔質のビーズを、合成されたポリペプチドが、合成の間にそれを通じてビーズに共有結合的に付着するリンカーで処理する。したがって、発生期のポリペプチドは固相上に固定し、洗浄ステップの間保持する。
【0204】
カップリングおよび脱保護のサイクルの繰り返しを用いて、配列番号1〜28の配列を有するポリペプチドを生成する。カップリングおよび脱保護の各サイクルにおいて、固相に付着したペプチドまたはポリペプチドの遊離のN末端アミンを、そのN末端がFmoc(9H−(フルオレン−9−イルメトキシカルボニル)保護基で保護された単一のアミノ酸単位とカップリングさせる。次いで、成長しているペプチド/ポリペプチド鎖のこの単位をジメチルホルムアミド中20%のピペリジンなどの塩基性条件で脱保護して、カップリング−脱保護の次のラウンドにおいて別のアミノ酸に付着させることができる新しいN末端アミンを生成する。
【0205】
全てのサイクルが所望の通り完了した後、ポリペプチドを、トリフルオロ酢酸を用いてビーズから切断する。
【0206】
追加的な低リジンクロロトキシンポリペプチドを生成するために、配列番号1、11、12および13のアミノ酸配列を有するポリペプチドを、表2に従ってリジンにおいてペグ化することによって修飾する。
【0207】
(実施例2)
低リジンクロロトキシンポリペプチドの結合活性についてのアッセイ
クロロトキシンは、U251神経膠腫細胞およびPC3前立腺癌細胞を含めた多くの異なる腫瘍型に選択的に結合することが示されている。本実施例では、実施例2に記載の通り生成した低リジンクロロトキシンポリペプチドをビオチンで標識し、結合活性についてアッセイする。ビオチン化した低リジンクロロトキシンポリペプチドのそれぞれを、半集密(subconfluent)の細胞培養物から得たU251神経膠腫細胞と一緒に、およびそれとは別に半集密の細胞培養物から得たPC3前立腺癌細胞と一緒にインキュベートする。インキュベートした後、市販のキットを製造者の説明書に従って使用して、細胞をアビジン−HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)で染色する。クロロトキシンを陽性染色対照として使用し、ポリペプチドを伴わないインキュベーション反応を陰性染色対照として使用する。クロロトキシンのアミノ酸配列と比較してスクランブルされたアミノ酸配列を有するペプチドも、陰性染色対照として使用することができる。HRPの有色の反応生成物が存在することによって証明される陽性染色を、ビオチン化した低リジンクロロトキシンポリペプチドが結合したことの指標として用いる。
【0208】
次いで、U251細胞またはPC3細胞への結合を示す低リジンクロロトキシンポリペプチドを(標識した形態で)、標識していないクロロトキシンを競合剤として使用する競合結合アッセイにおいて試験する。量を増加させたクロロトキシンの存在下で結合のレベルの減少を示す低リジンクロロトキシンポリペプチドを同定する。
【0209】
結合した細胞の百分率を定量化するために、ビオチン化したポリペプチドと一緒にインキュベートした後に細胞を染色するために、アビジン−HRPの代わりにFITCまたはTexas Redなどの蛍光色素とカップリングしたアビジンを使用し、細胞をFACS(蛍光活性化細胞選別)によって分析する。
【0210】
(実施例3)
低リジンクロロトキシンポリペプチドの結合活性についての追加的なアッセイ
実施例2の細胞において、クロロトキシンと競合的にU251および/またはPC3に結合することが同定された低リジンクロロトキシンポリペプチドを、より包括的な結合プロファイルを得るために、より広い範囲の細胞型に対する結合活性についてさらにアッセイする。
【0211】
表3には、そのいずれも、またはその組み合わせのいずれも低リジンクロロトキシンポリペプチドを用いた結合アッセイにおいて試験することができる細胞株および初代培養細胞が列挙されている。表3に列挙されている細胞株および初代培養細胞は、ヒト、ラット、およびマウス由来の神経膠腫細胞株と非神経膠腫細胞株の両方を含む。
【0212】
【表3−1】

【0213】
【表3−2】

(実施例4)
モノリジン(monolsyine)クロロトキシンポリペプチドとパクリタキセルのコンジュゲーション
実施例1において合成され、場合によって、実施例2および/または実施例3におけるける知見についてアッセイされた1つまたは複数のモノリジンクロロトキシンポリペプチドを、単独では水不溶性の抗癌治療剤であるパクリタキセルとコンジュゲートする。パクリタキセルは、有糸分裂阻害剤である。
【0214】
低リジンクロロトキシンポリペプチドを、パクリタキセルエステルリンカーカルボキシ実体(例えば、NHS/EEDQ)とPBS中で反応させ、インキュベートした。精製された最終生成物由来の試料を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および質量分析(MS)によって分析して、単一種のコンジュゲートが生成されたことを確認する。生じたコンジュゲートを、溶液の飽和濃度および飽和速度を決定することによって水溶性について試験する。水溶性のコンジュゲートを、さらなる解析のために薬物候補として同定する。
【0215】
(実施例5)
低リジンクロロトキシンポリペプチドとゲムシタビンのコンジュゲーション
リジン残基を全く有さない低リジンクロロトキシンポリペプチド(例えば、配列番号2、5および6を参照されたい)を、実施例1に記載の通り合成し、場合によって、実施例2および/または3において結合についてアッセイする。低リジンクロロトキシンポリペプチドを、ヌクレオシド類似体であるゲムシタビン(Gemzar(商標))と、N末端を介してコンジュゲートする。
【0216】
(実施例6)
クロロトキシンコンジュゲートのin vitro結合アッセイ
実施例4および5からのクロロトキシンコンジュゲートは、実施例2および3に記載の低リジンクロロトキシンポリペプチドについて記載されている通り、腫瘍細胞株への結合について個別に試験することができる。
【0217】
(実施例7)
クロロトキシンコンジュゲートのin vitro細胞毒性アッセイ
実施例4および5から得られ、場合によって、実施例6に記載の通り結合について試験したクロロトキシンコンジュゲートを、表3に列挙されている1つまたは複数の細胞株における細胞傷害性について試験する。培養物中の細胞をクロロトキシンコンジュゲートの濃度を変動させてインキュベートすることによってクロロトキシンコンジュゲートに曝露させる。曝露させた1.5時間後に、細胞の生存能力を測定し、クロロトキシンコンジュゲートのモル濃度に対する生存細胞の百分率のプロットを算出する。比較のために、細胞を別々に単独の細胞傷害性薬剤(例えば、実施例4からのパクリタキセルまたは実施例5からのテモゾロミド)と一緒にインキュベートし、生存能力について同様の用量反応曲線を算出する。
【0218】
(実施例8)
クロロトキシンコンジュゲートのin vivo取り込み
本発明のクロロトキシンコンジュゲートのin vivo取り込みは、in situ放射標識ペプチド(13C、H、または15Nなどで標識)および/または放射標識した実体/部分を用いたイメージング;ナノ粒子および磁気共鳴画像法;および/または近赤外の色素およびバイオフォトンイメージング(biophotonicimagine)によって評価することができる。抗クロロトキシンポリペプチド抗体も、組織への取り込みを検出するために使用することができる。
【0219】
(実施例9)
低リジンクロロトキシンポリペプチドの、細胞浸潤を阻害する生物活性
低リジンクロロトキシンポリペプチド(またはそのコンジュゲート)の腫瘍細胞の浸潤を阻害する能力について、トランスウェル移動アッセイを用いて試験する。このアッセイでは、腫瘍細胞をトランスウェルの上部のチャンバ−に、低リジンクロロトキシンポリペプチド(またはそのコンジュゲート)と一緒に、またはそれなしで播き、細胞の移動をVEGFまたはPDGFなどの増殖因子を用いて刺激する。細胞培養培地中でおよそ24時間インキュベートした後、トランスウェルフィルターの上部側面上の移動していない残りの細胞を取り出し、下部側面上の移動した細胞を可視化するために染色する。移動した細胞を浸潤の指数として計数する。クロロトキシンと同様の生物活性を有する修飾されたクロロトキシン変異体を、機能活性を保持するとみなす。
【0220】
(実施例10)
in vivo乳癌腫瘍モデルにおけるクロロトキシンコンジュゲート
クロロトキシンコンジュゲートの治療的活性を、in vivo乳癌モデルにおいて試験する。本実施例では、MDA−MB−468乳癌細胞をレシピエントマウスに異種移植することによって創出したマウス腫瘍モデルを使用して、実施例4において生成したパクリタキセル−クロロトキシンコンジュゲートの、腫瘍の成長に対する影響について試験する。
【0221】
側腹部の腫瘍を担持するマウスに、3.7mg/kgのパクリタキセル用量を、1週間当たり3回、合計8用量、静脈内注射する。これらの実験において使用するコンジュゲートの濃度は、コンジュゲートしていないパクリタキセルを用いた同じ投薬レジメンが治療効果を有するのに十分でないという点で「治療量以下」である。マウスの1つの群には、対照として生理食塩水を単独で注射する。マウスの別の群には、パクリタキセルを3.7mg/kgの用量で注射する。治療の間隔の間、またはその後に、腫瘍の長さおよび幅を測定するためにカリパスを使用して、腫瘍の成長をモニターする。ある期間にわたる腫瘍の成長を時間に対する元の腫瘍サイズの百分率としてプロットする。
【0222】
他の実施形態
本明細書を考察すること、または本明細書に開示されている本発明を実施することにより、本発明の他の実施形態が当業者に明らかになるであろう。本明細書および実施例は、単に例示とみなされるものとし、真の本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンジュゲートするための部位として利用可能なリジンを1つ以下有するクロロトキシンポリペプチド。
【請求項2】
配列番号1に対して少なくとも65%の全体的な配列同一性を有し、両端値を含め、24アミノ酸から40アミノ酸の間の長さを有するという点で、配列番号1のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のクロロトキシンポリペプチド。
【請求項3】
クロロトキシンにおいてリジンが存在する位置に対応する位置にリジンを含む、請求項1に記載のクロロトキシンポリペプチド。
【請求項4】
前記リジンが、配列番号1の15位、配列番号1の23位、および配列番号1の27位からなる群から選択される位置に対応する位置にある、請求項3に記載のクロロトキシンポリペプチド。
【請求項5】
前記リジンが、配列番号1の27位に対応する位置にある、請求項3に記載のクロロトキシンポリペプチド。
【請求項6】
配列番号1の15位、23位および27位に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つがリジンではない、請求項1に記載のクロロトキシンポリペプチド。
【請求項7】
配列番号1の15位、23位および27位に対応する少なくとも1つのアミノ酸残基がアラニンである、請求項6に記載のクロロトキシンポリペプチド。
【請求項8】
配列番号1の15位、23位および27位に対応する少なくとも1つのアミノ酸残基がアルギニンである、請求項6に記載のクロロトキシンポリペプチド。
【請求項9】
配列番号1の15位、23位または27位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を欠く、請求項1に記載のクロロトキシンポリペプチド。
【請求項10】
リジン残基を有さない、請求項1に記載のクロロトキシンポリペプチド。
【請求項11】
少なくとも1つの治療的部分を伴う少なくとも1つのクロロトキシンポリペプチドを含むコンジュゲートであって、前記クロロトキシンポリペプチドが、リジンを1つ以下有するクロロトキシンポリペプチドを含み、前記治療的部分が、前記クロロトキシンポリペプチドと、前記クロロトキシンポリペプチドの単一の前記リジンまたはN末端を介して共有結合している、コンジュゲート。
【請求項12】
前記クロロトキシンポリペプチドおよび前記治療的部分が、直接的に共有結合している、請求項11に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
前記クロロトキシンポリペプチドおよび前記治療的部分が、リンカーを通じて共有結合している、請求項11に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
前記治療的部分が抗癌剤を含む、請求項11に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
前記抗癌剤が、癌細胞に対する選択性/特異性が乏しい抗癌剤;癌細胞による取り込みが乏しい抗癌剤;癌細胞における保持が乏しい抗癌剤;難水溶性を示す抗癌剤;癌細胞において時期尚早な不活性化を受ける抗癌剤;癌細胞において活性化不全が生じる抗癌剤;大規模な細胞性分解を受ける抗癌剤;および薬物耐性を伴う抗癌剤からなる群のメンバーである、請求項14に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
前記抗癌剤が難水溶性を示す、請求項15に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
前記抗癌剤がタキサンである、請求項16に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
前記タキサンが、パクリタキセル、ドセタキセル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載のコンジュゲート。
【請求項19】
前記治療的部分が、放射性同位元素、酵素、プロドラッグ活性化酵素、放射線増感剤、干渉RNA、スーパー抗原、抗血管新生薬、アルキル化剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、植物アルカロイド、インターカレーティング抗生物質、アロマターゼ阻害剤、代謝拮抗薬、有糸分裂阻害剤、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的反応修飾物質、抗ホルモン薬および抗アンドロゲン薬からなる群のメンバーである、請求項14に記載のコンジュゲート。
【請求項20】
前記クロロトキシンポリペプチドが、ネイティブなクロロトキシンにおいてリジンが存在する位置に対応する位置にリジンを含む、請求項11に記載のコンジュゲート。
【請求項21】
前記クロロトキシンポリペプチドが、配列番号1の15位、配列番号1の23位、および配列番号1の27位からなる群から選択される位置に対応する位置にリジンを含む、請求項20に記載のコンジュゲート。
【請求項22】
前記クロロトキシンポリペプチドが、配列番号1の27位に対応する位置にリジンを含む、請求項21に記載のコンジュゲート。
【請求項23】
配列番号1の15位、23位および27位に対応する、前記クロロトキシンポリペプチドのアミノ酸の少なくとも1つがリジンではない、請求項11に記載のコンジュゲート。
【請求項24】
配列番号1の15位、23位または27位に対応する、前記クロロトキシンポリペプチドの前記少なくとも1つのアミノ酸がアラニンである、請求項23に記載のコンジュゲート。
【請求項25】
配列番号1の15位、23位または27位に対応する、前記クロロトキシンポリペプチドの前記少なくとも1つのアミノ酸がアルギニンである、請求項23に記載のコンジュゲート。
【請求項26】
前記クロロトキシンポリペプチドが、配列番号1の15位、23位または27位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を欠く、請求項11に記載のコンジュゲート。
【請求項27】
前記クロロトキシンポリペプチドが、ポリマーを含む部分に共有結合的に付着している、請求項11に記載のコンジュゲート。
【請求項28】
前記ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項27に記載のコンジュゲート。
【請求項29】
前記ポリエチレングリコールが、前記クロロトキシンポリペプチドのアミノ末端を介して付着している、請求項28に記載のコンジュゲート。
【請求項30】
有効量の、請求項11から29までのいずれか一項に記載の少なくとも1つのコンジュゲートまたは生理的に許容できるその塩、および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項31】
請求項11に記載のコンジュゲートを含む組成物を、腫瘍を有するか、または腫瘍を有する疑いがある個体に、前記コンジュゲートが前記腫瘍に特異的に結合するように投与するステップを含む、方法。
【請求項32】
前記腫瘍が神経外胚葉性腫瘍である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記神経外胚葉性腫瘍が神経膠腫である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記神経膠腫が、多形神経膠芽腫(WHOグレードIV)、未分化星状細胞腫(WHOグレードIII)、低悪性度の神経膠腫(WHOグレードII)、毛様細胞性星状細胞腫(WHOグレードI)、乏突起神経膠腫、神経節腫、髄膜腫、および上衣腫からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記神経外胚葉性腫瘍が、髄芽腫、神経芽細胞腫、褐色細胞腫、黒色腫、末梢性未分化神経外胚葉性腫瘍、小細胞肺癌、ユーイング肉腫、および脳における転移性腫瘍からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記腫瘍が、前立腺癌および乳癌からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記腫瘍が皮膚黒色腫または眼内黒色腫である、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記腫瘍が転移性腫瘍である、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記腫瘍が転移性黒色腫である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記腫瘍が非小細胞肺癌である、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記腫瘍が結腸癌または結腸直腸癌である、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
前記腫瘍が膵癌である、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
請求項11に記載のクロロトキシンコンジュゲートを含む組成物を、異常な血管新生を特徴とする疾患または状態を有するか、または有する疑いがある個体に、前記クロロトキシンコンジュゲートが血管新生の程度を低下させるように投与するステップを含む、方法。
【請求項44】
前記クロロトキシンコンジュゲートにより、新脈管構造の形成が妨げられる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記クロロトキシンコンジュゲートにより、現存する新脈管構造の退行が引き起こされる、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記疾患または状態が黄斑変性症である、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記疾患または状態が炎症性疾患である、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記疾患または状態が関節リウマチである、請求項47に記載の方法。

【公表番号】特表2013−518905(P2013−518905A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552126(P2012−552126)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/023823
【国際公開番号】WO2011/097533
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(512203975)モルフォテック, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】