説明

グラビア製版ロール及びその製造方法

【課題】毒性がなくかつ公害発生の心配も皆無な表面強化被覆層を具備するとともに耐刷力並びに印刷性能に優れた新規なグラビア製版ロール及びその製造方法を提供する。
【解決手段】中空ロール10と、該中空ロール10の表面に設けられかつ表面に多数のグラビアセル14が形成された銅メッキ層12と、該銅メッキ層12の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜20とを含むグラビア製版ロール10aであって、前記ダイヤモンドライクカーボン被膜20によって被覆されたグラビアセル14aの深度が5μm以上10μm未満であるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロムメッキを用いることなく、充分な強度を有する表面強化被覆層を具備するとともに極めて浅い深度のグラビアセルを有するグラビア製版ロール及びその製造方法に関し、特にクロム層に替わる表面強化被覆層としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)層を設けるとともにグラビア印刷において充分なる印刷濃度(光学濃度、透過率濃度)並びに隠蔽性を達成することができるようにしたグラビア製版ロール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のグラビア製版ロールは、一般的に、1インチ当たり175本のスクリーン線を有し、かつ、最シャドウ部のセルの深さが25μm〜30μmである版が用いられ、そして、2、3μm以上の粒子径のものが90%以上を占めている無機顔料及び有機顔料を含むグラビアインキを使用してグラビア印刷が行われている。
【0003】
インキの基本組成は、主剤としてインキに色をつける物質である顔料と、顔料を被印刷物に固着させ均一に分散させる物質である樹脂と、インキの流動性・転移性・乾燥性等を調整する物質である溶剤:ベヒクルと、助剤として泡消しや静電気防止などのいろいろな効果を加える添加剤の四つから成り立っている。
【0004】
油性インキの溶剤は、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、MEK、MIBK、IPA、エタノール、n−プロパノール等が使用されており、水性インキの溶剤は、エタノール、n−プロパノール、IPA、水が使用されている。
【0005】
トルエン・MEKなど油性インキで使われている化学物質は、(1)刺激臭が強い。(2)引火点が低く、揮発性も高い為、充満した際に引火・爆発しやすい。(3)人体に吸引されると健康被害を及ぼす。(4)環境にも影響がある。(5)炭酸ガス排出量削減にマイナスである。
【0006】
印刷工程で蒸発する溶剤等の有機化合物(VOC)は、(1)工場外へ排出して大気汚染や工場周辺の悪臭問題につながっている。(2)排出しきれないものは工場内に充満して引火・爆発の危険性や作業員の健康被害など、作業環境の危険性がある。(3)蒸発しきれない溶剤は、フィルムに残り、印刷された袋の特有の臭いの原因となる。特に食品業界で問題である。
【0007】
残留溶剤問題は、商品のイメージを低下するだけでなく、食品の場合、風味を損なったり、臭いを吸着しやすいものにいたっては味が変化する場合がある。
【0008】
水性インキは、基本的に水とアルコールを使用することにより、油性インキの諸問題を解決しているが、エタノールが残留する問題は残る。しかし、エタノール+水は、強い刺激臭もなく、内容物の風味を変化することはない。エタノールが与える影響は、環境や健康上影響を与える許容範囲よりもかなり低い。工場内はエタノールで充満しているが、臭いは殆ど無い。しかし、アルコールであるので引火の危険がない訳ではないが、有機溶剤に比べれば、危険度はかなり低いものとなる。
【0009】
従来のレーザー製版により作られるグラビア版は、一般的に、1インチ当たり175本のスクリーン線を有し、かつ、最シャドウ部のセルの深さが25μm〜30μmである版が用いられる。この条件で水性グラビア印刷を行うと、インクの乾燥速度が遅いので、版かぶりが生じ易い。インクの乾燥速度が遅いので、油性インキ使用のグラビア印刷に比して印刷速度が低くする必要があり、印刷効率(生産効率)が悪くなる。
【0010】
水性グラビア印刷に使用される版は、インクの乾燥速度を速くするために、油性グラビア印刷と比較すると、セルが浅く、スクリーン線数が多いことが特徴である。これによって、油性とは違う風合いの印刷が出来上がる。一般的に、色合いが明るくなり、また、網点再現性(細かいところ)が良くなり、ハイライト性が良くなり、浅版化することにより、インキ使用量が減り、インキ使用量が減ることで更に溶剤による影響は少なくなる。特許文献9及び10によれば、水性グラビアインキを用い、メッシュの線数が200〜400線、版深が10〜17μmの版を用いるグラビア印刷方法が提案されている。
【0011】
また、グラビア印刷では、グラビア製版ロール(グラビアシリンダー)に対し、製版情報に応じた微小な凹部(グラビアセル)を形成して版面を製作し当該グラビアセルにインキを充填して被印刷物に転写するものである。一般的なグラビア製版ロールにおいては、アルミニウムや鉄などの金属製中空ロールの表面に版面形成用の銅メッキ層(版材)を設け、該銅メッキ層にエッチングによって製版情報に応じ多数の微小な凹部(グラビアセル)を形成し、次いでグラビア製版ロールの耐刷力を増すためのクロムメッキによって硬質のクロム層を形成して表面強化被覆層とし、製版(版面の製作)が完了する。しかし、クロムメッキ工程においては毒性の高い六価クロムを用いているために、作業の安全維持を図るために余分なコストがかかる他、公害発生の問題もあり、クロム層に替わる表面強化被覆層の出現が待望されているのが現状である。
【0012】
一方、グラビア製版ロール(グラビアシリンダー)の製造について、セルを形成した銅メッキ層にダイヤモンドライクカーボン(DLC)を形成し、表面強化被覆層として用いる技術(特許文献1〜3)や、銅メッキ層にDLC層を形成した後、セルを形成し印刷版を製造する技術(特許文献4)は知られているが、DLC層は銅との密着性が弱く、剥離し易いという問題があった。また、本願出願人は、中空ロールにゴム又は樹脂層を形成し、その上にダイヤモンドライクカーボン(DLC)の被膜を形成した後、セルを形成し、グラビア印刷版を製造する技術をすでに提案している(特許文献5〜7)。
【特許文献1】特開平4−282296号公報
【特許文献2】特開2002−172752号公報
【特許文献3】特開2000−10300号公報
【特許文献4】特開2002−178653号公報
【特許文献5】特開平11−309950号公報
【特許文献6】特開平11−327124号公報
【特許文献7】特開2000−15770号公報
【特許文献8】特開2003−145952号公報
【特許文献9】特開2001−30611号公報
【特許文献10】特開2002−178622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者は、上記した従来技術の問題点に鑑み、クロムメッキ層に替わる表面強化被覆層について鋭意研究を続けたところ、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄層(例えば、1μmの厚さ)を用いることによってクロムメッキの厚い層(例えば、8μm)に匹敵する強度を有しかつ毒性はなく公害発生の心配も全くない表面強化被覆層を得ることができることを見出した。
【0014】
そして、このダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜(例えば、1μm)を用いることによってグラビアセルの深度の浅いグラビア製版ロールを容易に製造することができ、かつこの深度の浅いグラビアセルを有するグラビア製版ロールを用いて印刷を行うことによって、必要な印刷濃度(光学濃度、透過率濃度)を確保できるとともに高精細なグラビア印刷が得られ、かつ隠蔽性を向上させることができ、インクの膜厚が小さくて乾燥負荷が小さく、印刷速度を増大でき、さらには版かぶりを解消でき、インキ使用量が少なくて済み、印刷コストを低減できることを見出し、本発明を完成したものである。
【0015】
本発明は、毒性がなくかつ公害発生の心配も皆無な表面強化被覆層を具備するとともに耐刷力並びに印刷性能に優れた新規なグラビア製版ロール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明のグラビア製版ロールの第1の態様は、中空ロールと、該中空ロールの表面に設けられかつ表面に多数のグラビアセルが形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜とを含むグラビア製版ロールであって、前記ダイヤモンドライクカーボン被膜によって被覆されたグラビアセルの深度が5μm以上10μm未満であるようにしたことを特徴とする。
【0017】
本発明のグラビア製版ロールの第2の態様は、中空ロールと、該中空ロールの表面に設けられかつ表面に多数のグラビアセルが形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面に設けられた金属層と、該金属層の表面に設けられた当該金属の炭化金属層と、該炭化金属層の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜とを含むグラビア製版ロールであって、前記ダイヤモンドライクカーボン被膜によって被覆されたグラビアセルの深度が5μm以上10μm未満であるようにしたことを特徴とする。
【0018】
本発明のグラビア製版ロールの製造方法の第1の態様は、中空ロールを準備する工程と、該中空ロールの表面に銅メッキ層を形成する銅メッキ工程と、該銅メッキ層の表面に多数のグラビアセルを形成するグラビアセル形成工程と、該銅メッキ層の表面にダイヤモンドライクカーボン被膜を形成するダイヤモンドライクカーボン被膜形成工程とを含むグラビア製版ロールの製造方法であって、前記ダイヤモンドライクカーボン被膜によって被覆されたグラビアセルの深度が5μm以上10μm未満であるようにしたことを特徴とする。
【0019】
本発明のグラビア製版ロールの製造方法の第2の態様は、中空ロールを準備する工程と、該中空ロールの表面に銅メッキ層を形成する銅メッキ工程と、該銅メッキ層の表面に多数のグラビアセルを形成するグラビアセル形成工程と、該銅メッキ層の表面に金属層を形成する金属層形成工程と、該金属層の表面に当該金属の炭化金属層を形成する炭化金属層形成工程と、該炭化金属層の表面にダイヤモンドライクカーボン被膜を形成するダイヤモンドライクカーボン被膜形成工程とを含むグラビア製版ロールの製造方法であって、前記ダイヤモンドライクカーボン被膜によって被覆されたグラビアセルの深度が5μm以上10μm未満であるようにしたことを特徴とする。
【0020】
前記炭化金属層が、好ましくは炭化金属傾斜層であって、該炭化金属傾斜層における炭素の組成比が前記金属層側から前記ダイヤモンドライクカーボン被膜方向に対して炭素の比率が徐々に増大するように設定されている。なお、前記金属層及び炭化金属層を介在させることによって、銅メッキ層に対するダイヤモンドライクカーボン被膜の密着性が向上する。
【0021】
前記銅メッキ層の厚さが50〜200μm、前記金属層の厚さが0.001〜1μm、好ましくは0.001〜0.05μm、前記炭化金属層の厚さが0.1〜1μm、及び前記ダイヤモンドライクカーボン被膜の厚さが0.1〜2μmであることが好ましい。前記ダイヤモンドライクカーボン被膜に被覆されたグラビアセルの深度としては、5μm以上10μm未満が用いられるが、好ましくは6μm以上9μm以下、さらに好ましくは7μm以上8.5μm以下が使用できる。前記ダイヤモンドライクカーボン被膜の厚さとしては、0.1〜2μmが用いられるが、0.5〜1.5μmが好ましく、0.8〜1.2μmがさらに好ましい。
【0022】
前記金属層、前記炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層及び前記ダイヤモンドライクカーボン被膜をスパッタリング法によってそれぞれ形成することが好適である。
【0023】
前記金属としては、炭化可能でありかつ銅と親和性の高い金属を用いるのが好ましい。
【0024】
前記金属が、タングステン(W)、珪素(Si)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、及びジルコニウム(Zr)からなる群から選ばれる一種又は二種以上の金属であることが好適である。
【0025】
前記グラビアセルの形成は、エッチング法又は電子彫刻法によって行えばよいが、エッチング法が好適である。ここでエッチング法はグラビアシリンダーの版胴面に感光液を塗布して直接焼き付けた後、エッチングしてグラビアセルを形成する方法である。電子彫刻法は、デジタル信号によりダイヤモンド彫刻針を機械的に作動させグラビアシリンダーの銅表面にグラビアセルを彫刻する方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、表面強化被覆層としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜を用いることにより、クロムメッキ工程を省略することができるので、毒性の高い六価クロムを用いることがなくなり、作業の安全性を図るための余分なコストが不要で、公害発生の心配も全くなく、しかもダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜はクロム層に匹敵する強度を有し耐刷力にも優れるという大きな効果を奏するものである。
【0027】
ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜は、薄層(例えば、0.1〜2μm)であってもクロムメッキ層の厚い層(例えば、8μm)に匹敵する強度を有しているため、このダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜(例えば、0.1〜2μm)を用いることによってグラビアセルの深度の浅いグラビア製版ロールを容易に製造することができ、かつこの深度の浅いグラビアセルを有するグラビア製版ロールを用いて印刷を行うことによって、必要な印刷濃度(光学濃度、透過率濃度)を確保できるとともに高精細なグラビア印刷が得られ、かつ隠蔽性を向上させることができ、インクの膜厚が小さくて乾燥負荷が小さく、印刷速度を増大でき、さらには版かぶりも解消でき、インキ使用量も少なくて済み、印刷コストを低減でき、また油性インキを用いる場合にはVOCの排出量も低減するという大きな効果が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0029】
図1は本発明のグラビア製版ロールの製造工程を模式的に示す説明図で、(a)は中空ロールの全体断面図、(b)は中空ロールの表面に銅メッキ層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(c)は中空ロールの銅メッキ層にグラビアセルを形成した状態を示す部分拡大断面図、(d)は中空ロールの銅メッキ層表面に金属層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(e)は中空ロールの金属層表面に炭化金属層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(f)は中空ロールの炭化金属層表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜を被覆した状態を示す部分拡大断面図である。図2は本発明のグラビア製版ロールの製造方法を示すフローチャートである。図3は本発明のグラビア製版ロールの要部の拡大断面図である。
【0030】
本発明方法を図1〜図3を用いて説明する。図1(a)及び図3において、符号10は版母材で、アルミニウム又は鉄等からなる金属製又は炭素繊維強化樹脂(CFRP)等の強化樹脂製の中空ロールが用いられる(図2のステップ100)。該中空ロール10の表面には銅メッキ処理によって銅メッキ層12が形成される(図2のステップ102)。
【0031】
該銅メッキ層12の表面には多数の微小な凹部(グラビアセル)14が形成される(図2のステップ104)。グラビアセル14の形成方法としては、エッチング法(版胴面に感光液を塗布して直接焼き付けた後、エッチングしてグラビアセル14を形成する)や電子彫刻法(デジタル信号によりダイヤモンド彫刻針を機械的に作動させ銅表面にグラビアセル14を彫刻する)等の公知の方法を用いることができるが、エッチング法が好適である。
【0032】
次に、グラビアセル14を形成した銅メッキ層12(グラビアセル14を含む)の表面に金属層16を形成する(図2のステップ106)。さらに、この金属層16の表面に当該金属の炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層18を形成する(図2のステップ108)。金属層16及び炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層18の形成方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法(エレクトロンビーム法)、イオンプレーティング法、MBE(分子線エピタキシー法)、レーザーアブレーション法、イオンアシスト成膜法、プラズマCVD法等の公知の方法を適用できるが、スパッタリング法が好適である。
【0033】
前記金属としては、炭化可能でありかつ銅と親和性の高い金属が好ましい。この金属としては、タングステン(W)、珪素(Si)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、及びジルコニウム(Zr)等を用いることができる。
【0034】
前記炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層18における金属は前記金属層16と同一の金属を用いる。炭化金属傾斜層18における炭素の組成比は金属層16側から後述するダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜20方向に対して炭素の比率が徐々に増大するように設定する。つまり、炭素の組成比は0%〜徐々に(段階状もしくは無段階状に)比率を増し、最後はほぼ100%となるように成膜を行う。
【0035】
この場合、炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層18中の炭素の組成比の調整方法は公知の方法を用いればよいが、例えば、スパッタリング法(固体金属ターゲットを用い、アルゴンガス雰囲気で炭化水素ガス、例えば、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス、アセチレンガス等の注入量を階段状又は無段階状に徐々に増大する)によって、炭化金属層18中の炭素の割合が銅メッキ層12の側からダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜20方向に対して段階状又は無段階状に徐々に増大するように炭素及び金属の両者の組成割合を変化させた炭化金属層、即ち炭化金属傾斜層18を形成することができる。
【0036】
このように炭化金属層18の炭素の割合を調整することによって金属層16及びダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜20の双方に対する炭化金属層18の密着度を向上させることができる。また、炭化水素ガスの注入量を一定とすれば、炭素及び金属の組成割合を一定とした炭化金属層とすることができ、炭化金属傾斜層と同様の作用を行わせることができる。
【0037】
続いて、前記炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層18の表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜20を被覆形成する(図2のステップ110)。ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜20の形成方法としては、金属層16及び炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層18の形成と同様に、スパッタリング法、真空蒸着法(エレクトロンビーム法)、イオンプレーティング法、MBE(分子線エピタキシー法)、レーザーアブレーション法、イオンアシスト成膜法、プラズマCVD法等の公知の方法を適用できるが、スパッタリング法が好適である。
【0038】
上記したダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜20を被覆し、このダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜20を表面強化被覆層として作用させることによって、毒性がなくかつ公害発生の心配も皆無となるとともに耐刷力に優れたグラビア製版ロール10aを得ることができる。
【0039】
ここで、スパッタリング法は、薄膜にしたい材料(ターゲット材料)にイオンをぶつけると材料がはね飛ばされるが、このはね飛ばされた材料を基板上に堆積させ薄膜を作製する方法であり、ターゲット材料の制約が少なく、薄膜を大面積に再現性よく作製できるなどの特徴がある。
【0040】
真空蒸着法(エレクトロンビーム法)は、薄膜にしたい材料に電子ビームを照射し加熱蒸発させ、この蒸発させた材料を基板上に付着(堆積)させ、薄膜を作製する方法であり、成膜速度が速く基板へのダメージが少ない等の特徴がある。
【0041】
イオンプレーティング法は、薄膜にしたい材料を蒸発させた後、高周波(RF)(RFイオンプレーティング法)又はアーク(アークイオンプレーティング法)によりイオン化させた基板上に堆積させ薄膜を作製する方法であり、成膜速度が速い、付着強度が大きい等の特徴がある。
【0042】
分子線エピタキシー法は、超高真空中で原料物質を蒸発させ、加熱した基板上へ供給し薄膜を形成する方法である。
【0043】
レーザーアブレーション法は、ターゲットに高密度化したレーザーパルスを入射することによりイオンを放出させ、対向の基板上に薄膜を形成する方法である。
【0044】
イオンアシスト成膜法は、真空容器内に蒸発源とイオン源とを設置し、イオンを補助的に利用して成膜する方法である。
【0045】
プラズマCVD法は、減圧下でCVD法を行う際により低温で薄膜形成を行う目的から、プラズマ励起を利用して原料ガスを分解させ、基板上で反応堆積させる方法である。
【0046】
なお、上記実施の形態ではダイヤモンドライクカーボン被膜の密着性を向上させるために、金属層16及び炭化金属層18を銅メッキ層12とダイヤモンドライクカーボン被膜20の間に介在させる構成を説明したが、金属層16及び/又は炭化金属層18を設けない場合でも、ダイヤモンドライクカーボン被膜20の形成に起因する本発明の作用効果が達成されることはいうまでもない。
【0047】
本発明の特徴は、得られたグラビア製版ロール10aにおけるダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜によって被覆されたグラビアセル14aの深度を5μm以上10μm未満、好ましくは6μm以上9μm以下、さらに好ましくは7μm以上8.5μm以下と、従来に比較して極めて浅く形成した点にある。このような極めて浅い深度のグラビアセルの形成は、ダイヤモンドライクカーボン被膜が薄い層(例えば、0.1〜2μm)であっても、従来のクロムメッキの厚い層(例えば、8μm)に匹敵する強度を有するという優れた特徴を有するために達成できるものであるが、このような極めて浅い深度のグラビアセルの実現によって次のような多くの利点が得られる。
【0048】
すなわち、この深度の浅いグラビアセルを有するグラビア製版ロールを用いて印刷を行うことによって、必要な印刷濃度(光学濃度、透過率濃度)を確保できるとともに高精細なグラビア印刷が得られ、かつ隠蔽性を向上させることができ、インキの膜厚が小さくて乾燥負荷が小さく、印刷速度を増大でき、さらには版かぶりも解消でき、インキ使用量も少なくて済み、印刷コストを低減できる。
【0049】
以下に、図4〜図7を用いて従来のクロムメッキ被覆層(例えば、8μm)の場合と本発明のダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜層(例えば、1μm)の場合のグラビアセル14aの構造を比較して、薄いダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜層(例えば、1μm)が厚いクロムメッキ被覆層(例えば、8μm)に比べて優れた構造であることを説明する。
【0050】
図4はグラビアセルの一つの形成例を示す断面概略図で、(a)は本発明に係るダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜による被覆を行った場合、(b)は従来のクロムメッキ層による被覆を行った場合を示す。図5(a)は図4(a)の上面図、及び図5(b)は図4(b)の上面図である。図6はグラビアセルの他の形成例を示す断面概略図で、(a)は本発明に係るダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜による被覆を行った場合、(b)は従来のクロムメッキ層による被覆を行った場合を示す。図7は本発明に係るダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜による被覆を行ったグラビアセルの別の形成例を示す断面概略図である。なお、銅メッキ層12とDLC被膜20の間には金属層16及び炭化金属層18を設けるのが好適であるが、図4(a)、図5、図6(a)及び図7では上記層の設置を省略した構造を示している。
【0051】
図4(b)において銅メッキ層12の表面にはクロム(Cr)メッキ層21が被覆され、従来構造のグラビアセル14bが形成されている。この従来構造のグビアセル14bは、銅メッキ層12に形成したベアなグラビアセル12(ベアな隔壁13の厚さ:8μm、開口部:94μm×94μm、深さ12μm)に厚さ8μmのクロムメッキ層21を被覆して形成されている、このように形成された従来の構造のグラビアセル14bの開口部は78μm×78μm、深度12μmとなり、クロムメッキ層21によって被覆された隔壁13bの厚さは24μmとなっている(図4(b)及び図5(b))。
【0052】
図4(b)に示した断面積部分を実測すると914.9μm2であり、これに奥行78μmを掛けて得た71362μm3が容積の実測値となる。したがって、この容積のインキ11がグラビアセル14bには貯留することとなる。
【0053】
一方、図4(a)において銅メッキ層12の表面にはダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜20が被覆され、本発明の構造のグラビアセル14aが形成されている。この本発明の構造のグラビアセル14aは銅メッキ層12に形成したベアなグラビアセル14(ベアな隔壁13の厚さ:8μm、開口部:94μm×94μm、深さ:8μm)に厚さ1μmのダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜20を被膜して形成されている。このように形成された本発明の構造のグラビアセル14aの開口部は92μm×92μm、深度8μmとなり、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜20によって被覆された隔壁13aの厚さは10μmとなっている(図4(a)及び図6(a))。
【0054】
図4(a)に示した断面積部分を実測すると789.9μm2であり、これに奥行92μmを掛けて得た72670μm3が実測値となる。したがって、この容積のインキ11がグラビアセル14aには貯留することになる。
【0055】
上記した従来構造のグラビアセル14bと本発明の構造のグラビアセル14aとを比べると、両者は隔壁の中心から測定した上面四角形は102μm×102μmと同一面積であり、深度は従来構造のグラビアセル14bでは12μmであるのに対し、本発明構造のグラビアセル14aでは8μmと極めて浅い深度にもかかわらず、略同量(グラビアセル14aの方がやや多いが)のインキ11を貯留でき、したがって印刷した際に同等の印刷濃度(光学濃度、透過率濃度)を達成することができる。
【0056】
しかも、図5(a)(b)によく示されるごとく、本発明構造のグラビアセル14aでは、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜20によって被覆された隔壁部13aの厚さが10μmであり、これは従来構造のグラビアセル14bの隔壁部13bの厚さ24μmに比較してはるかに薄くなっているために印刷時のインキのロスが減り、隠蔽性が極めて向上することとなる。
【0057】
また、上述したような極めて浅い深度のグラビアセル14aを用いて印刷することによって、インキの膜厚が小さくなって乾燥負荷が小さく、印刷速度を増大でき、さらには版かぶりも解消でき、インキ使用量も少なくて済み印刷コストを低減できるというメリットを享有することができる。
【0058】
図6は従来構造のグラビアセル(図6(b))と本発明構造のグラビアセル(図6(a))の他の形成例を示す。図6(b)に示した従来構造のグラビアセル14bは銅メッキ層12に形成したベアなグラビアセル14(開口部:30μm×30μm、深さ:12μm)に厚さ8μmのクロムメッキ層21を被覆して形成されている。このように形成された従来構造のグラビアセル14bの開口部は14μm×14μm、深度12μmとなっている。図6(b)に示した断面積部分を実測すると148.232μm2であり、これに奥行14μmを掛けて得た2075.248μm3が実測値となる。したがって、この容積のインキがグラビアセル14bには貯留することとなる。
【0059】
一方、図6(a)に示した本発明構造のグラビアセル14aは、銅メッキ層12に形成したベアなグラビアセル14(開口部:30μm×30μm、深さ:8μm)に厚さ1μmのダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜20を被覆して形成されている。このように形成された本発明構造のグラビアセル14aの開口部は28μm×28μm、深度8μmとなっている。図6(a)に示した断面積部分を実測すると216.91μm2であり、これに奥行28μmを掛けて得た6073.48μm3が実測値となる。したがってこの容積のインキがグラビアセル14aに貯留することとなる。
【0060】
上記した従来構造のグラビアセル14bと本発明の構造のグラビアセル14aとを比較すると明らかなように、本発明構造のグラビアセルを採用することにより、開口部が小さい場合には深度を浅くしてもインキの貯留量は従来構造のグラビアセルより大幅に増大するというメリットが存在する。
【0061】
図7は本発明構造のグラビアセルの別の形成例を示す。図7に示した本発明構造のグラビアセル14aは極めて小さい開口部を有している。このグラビアセル14aは銅メッキ層12に形成したベアなグラビアセル14(開口部:7μm×7μm、深さ:8μm)に厚さ1μmのダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜20を被覆して形成されている。このように形成された本発明構造のグラビアセル14aの開口部は5μm×5μm、深度8μmとなっている。
【0062】
図7に示した断面積部分を実測すると37.25μm2であり、これに奥行5μmを掛けて得た186.25μm3が実測値となる。したがって、この容積のインキがグラビアセル14aに貯留することとなる。本発明によれば、このように極めて小さい開口部を有するグラビアセル14aをも容易に作製することができるという利点がある。
【実施例】
【0063】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0064】
(実施例1)
円周600mm、面長1100mmのグラビアシリンダー(アルミ中空ロール)をメッキ槽に装着し、陽極室をコンピューターシステムによる自動スライド装置で20mmまで中空ロールに近接させ、メッキ液をオーバーフローさせ、中空ロールを全没させて18A/dm2、6.0Vで80μmの銅メッキ層を形成した。メッキ時間は20分、メッキ表面はブツやピットの発生がなく、均一な銅メッキ層を得た。
【0065】
上記形成した銅メッキ層に感光膜をコートして画像をレーザー露光し現像しバーニングしてレジスト画像を形成し、次いでプラズマエッチング等のドライエッチングを行ってグラビアセルからなる画像を彫り込み、その後レジスト画像を取り除くことにより印刷版を形成した。このとき、グラビアセルの深度を8μm(実施例1)とした中空ロールを作製した。
【0066】
このグラビアセルを形成した銅メッキ層の上面にスパッタリング法によってタングステン(W)層を形成した。スパッタリング条件は次の通りである。タングステン(W)試料:固体タングステンターゲット、雰囲気:アルゴンガス雰囲気、成膜温度:200〜300℃、成膜時間:60分、成膜厚さ:0.03μm。
【0067】
次に、タングステン層(W)の上面に炭化タングステン層を形成した。スパッタリング条件は次の通りである。タングステン(W)試料:固体タングステンターゲット、雰囲気:アルゴンガス雰囲気で炭化水素ガスを徐々に増加、成膜温度:200〜300℃、成膜時間:60分、成膜厚さ:0.1μm。
【0068】
さらに、炭化タングステン層の上面にスパッタリング法によってダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜を被覆形成した。スパッタリング条件は次の通りである。DLC試料:固体カーボンターゲット、雰囲気:アルゴンガス雰囲気、成膜温度:200〜300℃、成膜時間:150分、成膜厚さ:1μm。このようにして、グラビア製版ロール(グラビアシリンダー)を完成した。
【0069】
上記したグラビアシリンダーを用いて、水性インキを適用し、OPP(Oriented Polypropylene Film:2軸延伸ポリプロピレンフィルム)を用いて印刷テスト(印刷速度:100m/分、OPPフィルムの長さ:4000m)を行った。得られた印刷物は版かぶりがなく、転移性が良好であった。この結果として、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜は従来のクロム層に匹敵する性能を有し、クロム層代替品として充分使用できることを確認した。
【0070】
また、極めて浅い深度のグラビアセルを有するグラビアシリンダーであっても、必要な印刷濃度(光学濃度、透過率濃度)を確保でき(OD値で2.00であった)、かつ隠蔽性を向上させることができ、インキの膜厚が小さくて乾燥負荷が小さくインキ使用量も少なくて済み、印刷コストを低減できることを確認した。
【0071】
(実施例2)
実施例1と同様にしてグラビアセルの深度を8μmとした中空ロールを作製した。上記中空ロールに対してタングステン(W)試料を珪素(Si)試料に変更した以外は実施例1と同様に処理してグラビア製版ロールを完成し、同様に印刷テストを行ったところ、同様に版かぶりがなく、転移性が良好な印刷物を得ることができた。これらの実施例においてもダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜は従来のクロム層に匹敵する性能を有し、クロム層代替品として充分使用できることを確認した。また、その他の印刷性能についても実施例1と同様の結果が得られることを確認した。なお、金属試料として、チタン(Ti)、クロム(Cr)を用いて同様の実験を行い、同様の結果が得られることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明のグラビア製版ロールの製造工程を模式的に示す説明図で、(a)は中空ロールの全体断面図、(b)は中空ロールの表面に銅メッキ層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(c)は中空ロールの銅メッキ層にグラビアセルを形成した状態を示す部分拡大断面図、(d)は中空ロールの銅メッキ層表面に炭化タングステン層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(e)は中空ロールの金属層表面に炭化金属層を形成した状態を示す部分拡大断面図、(f)は中空ロールの炭化金属層表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜を被覆した状態を示す部分拡大断面図である。
【図2】本発明のグラビア製版ロールの製造方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明のグラビア製版ロールの要部の拡大断面図である。
【図4】グラビアセルの一つの形成例を示す断面概略図で、(a)は本発明に係るダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜による被覆を行った場合、(b)は従来のクロムメッキ層による被覆を行った場合を示す。
【図5】図4の上面図で、(a)は図4(a)の上面図、(b)は図4(b)の上面図である。
【図6】グラビアセルの他の形成例を示す断面概略図で、(a)は本発明に係るダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜による被覆を行った場合、(b)は従来のクロムメッキ層による被覆を行った場合を示す。
【図7】本発明に係るダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜による被覆を行ったグラビアセルの別の形成例を示す断面概略図である。
【符号の説明】
【0073】
10:版母材(中空ロール)、10a:グラビア製版ロール、11:インキ、12:銅メッキ層、13,13a,13b:隔壁部、14:グラビアセル、14a:DLC被膜で被覆した本発明構造のグラビアセル、14b:クロムメッキ層で被覆した従来構造のグラビアセル、16:金属層、18:炭化金属層、好ましくは炭化金属傾斜層、20:ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜、21:クロムメッキ層。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空ロールと、該中空ロールの表面に設けられかつ表面に多数のグラビアセルが形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜とを含むグラビア製版ロールであって、前記ダイヤモンドライクカーボン被膜によって被覆されたグラビアセルの深度が5μm以上10μm未満であるようにしたことを特徴とするグラビア製版ロール。
【請求項2】
中空ロールと、該中空ロールの表面に設けられかつ表面に多数のグラビアセルが形成された銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面に設けられた金属層と、該金属層の表面に設けられた当該金属の炭化金属層と、該炭化金属層の表面を被覆するダイヤモンドライクカーボン被膜とを含むグラビア製版ロールであって、前記ダイヤモンドライクカーボン被膜によって被覆されたグラビアセルの深度が5μm以上10μm未満であるようにしたことを特徴とするグラビア製版ロール。
【請求項3】
前記炭化金属層が、炭化金属傾斜層であって、該炭化金属傾斜層における炭素の組成比が前記金属層側から前記ダイヤモンドライクカーボン被膜方向に対して炭素の比率が徐々に増大するように設定されていることを特徴とする請求項2記載のグラビア製版ロール。
【請求項4】
前記銅メッキ層の厚さが50〜200μm、前記金属層の厚さが0.001〜1μm、前記炭化金属層の厚さが0.1〜1μm、及び前記ダイヤモンドライクカーボン被膜の厚さが0.1〜2μmであることを特徴とする請求項2又は3項記載のグラビア製版ロール。
【請求項5】
前記金属が炭化可能でありかつ銅と親和性の高い金属であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載のグラビア製版ロール。
【請求項6】
前記金属が、タングステン(W)、珪素(Si)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、及びジルコニウム(Zr)からなる群から選ばれる一種又は二種以上の金属であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項記載のグラビア製版ロール。
【請求項7】
中空ロールを準備する工程と、該中空ロールの表面に銅メッキ層を形成する銅メッキ工程と、該銅メッキ層の表面に多数のグラビアセルを形成するグラビアセル形成工程と、該銅メッキ層の表面にダイヤモンドライクカーボン被膜を形成するダイヤモンドライクカーボン被膜形成工程とを含むグラビア製版ロールの製造方法であって、前記ダイヤモンドライクカーボン被膜によって被覆されたグラビアセルの深度が5μm以上10μm未満であるようにしたことを特徴とするグラビア製版ロールの製造方法。
【請求項8】
中空ロールを準備する工程と、該中空ロールの表面に銅メッキ層を形成する銅メッキ工程と、該銅メッキ層の表面に多数のグラビアセルを形成するグラビアセル形成工程と、該銅メッキ層の表面に金属層を形成する金属層形成工程と、該金属層の表面に当該金属の炭化金属層を形成する炭化金属層形成工程と、該炭化金属層の表面にダイヤモンドライクカーボン被膜を形成するダイヤモンドライクカーボン被膜形成工程とを含むグラビア製版ロールの製造方法であって、前記ダイヤモンドライクカーボン被膜によって被覆されたグラビアセルの深度が5μm以上10μm未満であるようにしたことを特徴とするグラビア製版ロールの製造方法。
【請求項9】
前記炭化金属層が、炭化金属傾斜層であって、該炭化金属傾斜層における炭素の組成比が前記金属層側から前記ダイヤモンドライクカーボン被膜方向に対して炭素の比率が徐々に増大するように設定することを特徴とする請求項8記載のグラビア製版ロールの製造方法
【請求項10】
前記銅メッキ層の厚さが50〜200μm、前記金属層の厚さが0.001〜1μm、前記炭化金属層の厚さが0.1〜1μm、及び前記ダイヤモンドライクカーボン被膜の厚さが0.1〜2μmであることを特徴とする請求項8又は9記載のグラビア製版ロールの製造方法。
【請求項11】
前記金属層、前記炭化金属層及び前記ダイヤモンドライクカーボン被膜をスパッタリング法によってそれぞれ形成することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項記載のグラビア製版ロールの製造方法。
【請求項12】
前記金属が炭化可能でありかつ銅と親和性の高い金属であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項記載のグラビア製版ロールの製造方法。
【請求項13】
前記金属が、タングステン(W)、珪素(Si)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、及びジルコニウム(Zr)からなる群から選ばれる一種又は二種以上の金属であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項記載のグラビア製版ロールの製造方法。
【請求項14】
前記グラビアセルの形成をエッチング法又は電子彫刻法によって行うことを特徴とする請求項7〜13のいずれか1項記載のグラビア製版ロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−130996(P2007−130996A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275191(P2006−275191)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000131625)株式会社シンク・ラボラトリー (52)
【出願人】(591124765)ジオマテック株式会社 (35)
【Fターム(参考)】