説明

グラファイト複合フィルムの製造方法

【課題】極めて低い平均引裂荷重を示すグラファイトフィルムを加工工程での不具合を生じにくくして、加工する方法を提供する。
【解決手段】ロールに巻きつけたグラファイトフィルム(111)を巻き出して、他のロールで巻取るまでの間に、該グラファイトフィルムをラミネートする工程を含み、グラファイトフィルムが第一ロール(112)と接触開始する点と第一ロールの中点と第一ロール/第二ロールの接点のなす角度(113)bが5度以上であるグラファイト複合フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均引裂荷重が低いグラファイトフィルム、グラファイト複合フィルム及びグラファイト抜き加工品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般のプラスチックフィルム等に比べて、グラファイトフィルムは引き裂き強度が弱いという特徴があり、グラファイトフィルムには、エキスパンド法により製造されたグラファイトフィルム(天然黒鉛シートともいう。)と高分子熱分解法により製造されたグラファイトフィルム(高分子焼成グラファイトフィルムともいう)がある。
【0003】
天然黒鉛シートの場合、通常はグラファイトフィルム分子構造が平面方向と平行に規則正しく配向する程度が大きくないために0.1N程度の引裂き強度(平均引裂荷重)を有していることが多いが、高分子焼成グラファイトフィルムの場合には、グラファイトフィルムの平面方向の性能が向上するようなフィルム設計を行うに伴って、グラファイトの分子構造がより平面方向と平行に規則正しく配向するために、せん断方向の応力に対応できずに引裂き強度(平均引裂荷重)が小さくなっていく傾向にある。
【0004】
グラファイトフィルムは粘着材層や絶縁フィルムその他の保護フィルム層などとの複合品等に加工して使用されるケースがあり、このような加工工程では平均引裂強度が低いフィルムは裂けや巻きずれなどの不具合が発生するという欠点を有する。
【0005】
すなわち、グラファイトフィルムは、グラファイトフィルムを高性能化するに伴って、加工工程の不具合が増大するという課題を有している。特に、平均引裂荷重が0.08N以下という極めて脆弱なグラファイトフィルムにおいては大きな課題であった。
【0006】
所定の軟化点を有する熱可塑性重合体の薄膜を天然黒鉛シート上に重ね、温度を制御した2個のカレンダーロール間に連続法で供給してラミネートを形成して、天然黒鉛シートを補強する方法が開示されているが(特許文献1)、この技術を平均引裂荷重が0.08N以下のグラファイトフィルムに適用した場合には、2本のロール間への供給の手前で、図18のように高分子焼成グラファイトフィルムが端部から裂けてしまい、貼り合せすることができない。
【0007】
また、枚葉タイプの高分子焼成グラファイトフィルム(1枚毎のシート状の原料高分子フィルムから生産される高分子焼成グラファイトフィルムを意味する。長尺巻物原料高分子フィルムから生産される高分子焼成グラファイトフィルムと区別するために用いる。)と粘着材を有するシートをラミネーターにて貼り合わせて補強する方法が開示されているが(特許文献2)、この技術を平均引裂荷重が0.08N以下であり、かつ長さ1000mm以上のグラファイトフィルムに適用した場合には、2本のロール間への供給の手前で、図18のように高分子焼成グラファイトフィルムが端部から裂けてしまい、貼り合せすることができない。
【0008】
このように平均引裂荷重が0.08N以下という極めて脆弱なグラファイトフィルムにおいては加工工程での不具合(例えば、裂け、巻きずれ、シワ等の発生)が大きな課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−024872号公報
【特許文献2】特開2007−261087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような極めて低い平均引裂荷重を示すグラファイトフィルムを加工工程での不具合を生じにくくして、加工することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)ロールに巻きつけたグラファイトフィルムを巻き出して、他のロールで巻取るまでの間に、該グラファイトフィルムをラミネートする工程を含み、グラファイトフィルムが第一ロールと接触開始する点と第一ロールの中点と第一ロール/第二ロールの接点のなす角度bが5度以上であるグラファイト複合フィルムの製造方法。
(2)前記グラファイト複合フィルムがグラファイトフィルムと粘着層又は接着層を有するシートを貼り合わせて製造され、粘着層又は接着層を有するシートの厚みが60μm以下である(1)に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0012】
(3)粘着層又は接着層を有するシートからセパレーターを剥がしながら、前記第一ロールと第二ロールの間に連続供給するグラファイトシート複合品の製造方法であって、シートからセパレーターを引き剥がす角度が90度以下である(1)又は(2)に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0013】
(4)(粘着層又は接着層を有するシートのTD方向の長さ)が(グラファイトフィルムのTD方向の長さ)よりも5mm以上長い、(1)〜(3)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0014】
(5)前記第一ロールおよび第二ロールが、クラウンロールとフラットロールの組み合わせである(1)〜(4)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0015】
(6)(第二ロールと粘着層又は接着層を有するシートの接触開始点)−(第二ロールの中心点)−(第一ロール/第二ロールの接点)のなす角度cが5度以上である(1)〜(5)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のグラファイトフィルムの巻き替え方法によれば、グラファイトフィルムが裂けることなく巻き替えることができる。
また、本発明のグラファイトフィルムの巻き替え方法によれば、グラファイトフィルムが巻きずれを起こすことなく巻き替えることができる。
また、本発明のグラファイトフィルムの製造方法によれば、グラファイトフィルムが裂けることなく、グラファイトフィルムを製造することができる。
また、本発明のグラファイトフィルムの製造方法によれば、グラファイトフィルムが巻きずれを起こすことなく、グラファイトフィルムを製造することができる。
また、本発明のグラファイトフィルムの製造方法によれば、グラファイトフィルムがエッジの不具合を生じることなく、グラファイトフィルムを製造することができる。
また、本発明のグラファイトフィルム複合フィルムの製造方法によれば、グラファイトフィルムと粘着材層などの積層対象物と貼り合わせる際にシワの発生を抑制できる。
また、本発明のグラファイトフィルム複合フィルムの製造方法によれば、グラファイトフィルムと粘着材層などの積層対象物と貼り合わせる際に巻きずれの発生を抑制することができる。
また、本発明のグラファイトフィルム複合フィルムの製造方法によれば、グラファイトフィルムと粘着材層などの積層対象物と貼り合わせる際に裂けの発生を抑制できる。
また、本発明のグラファイトフィルム抜き加工品の製造方法によれば、裂けの発生を抑制することができる。
また、本発明のグラファイトフィルム抜き加工品の製造方法によれば、寸法精度不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】巻き替えする方法の模式図。
【図2】スリットする工程の模式図。
【図3】単板連続プレスの模式図。
【図4】ロール圧延工程の模式図。
【図5】ラミネートする工程の模式図。
【図6】抜き加工する工程の模式図。
【図7】JIS C2151記載のたるみ測定の模式図。
【図8】a値の模式図。
【図9】JIS C2151記載の曲がり測定の模式図。
【図10】グラファイトフィルムの第一ロールへの供給方法の模式図。
【図11】(第一ロールとグラファイトフィルムの接触開始点)−(第一ロールの中心点)−(第一ロール/第二ロールの接点)のなす角度bの説明図。
【図12】2辺封止グラファイト複合品フィルムの模式図。
【図13】クラウン形状のロールの模式図。
【図14】グラファイト抜き加工品 その1
【図15】グラファイト抜き加工品 その2
【図16】グラファイト抜き加工品 その3
【図17】グラファイト抜き加工品の商品形態。
【図18】グラファイトフィルムの裂け不良の概観写真。
【図19】グラファイトフィルムの巻きずれ不良の概観写真。
【図20】グラファイトフィルムのエッジのバリ不良の概観写真。
【図21】グラファイトフィルムの折れシワ不良の概観写真。
【図22】貼り合わせシワの概観写真。
【図23】製造条件の違いによるグラファイトフィルムのたるみの違い。
【図24】たるみの説明。
【図25】熱処理温度とポリイミドフィルムの収縮膨張の関係。
【図26】円筒容器にポリイミドフィルムを巻き付けた状態での炭化の一例。
【図27】円筒容器にポリイミドを巻き付けた状態での黒鉛化の一例。
【図28】グラファイトフィルムの平均引裂荷重、厚みの測定ポイントの説明。
【図29】長尺のグラファイトフィルムをラミネーターへ連続供給し、連続的にラミネートする方法。
【図30】高分子フィルムの反り。
【図31】中央のたるみと端部のたるみの概略図。
【図32】グラファイトフィルムのエッジの反り。
【図33】ポリイミドフィルムの製造装置の概略図。
【図34】グラファイトフィルムを引き伸ばした際の裂け。
【図35】本発明の黒鉛化工程の炉に縦置きでセットした状態。
【図36】黒鉛化工程後のグラファイトフィルムの円筒形状の崩れ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、1)JIS K7128によるトラウザー引裂試験における平均引裂荷重が0.08N以下、2)JIS C2151によるフィルムの巻取り性評価におけるたるみが5mm以上80mm以下、の条件を満たすグラファイトフィルムを巻き替える方法、及びグラファイトフィルムの製造方法、並びに該グラファイトフィルムを用いたグラファイト複合フィルムの製造方法及びグラファイト抜き加工品の製造方法に関するものである。
【0019】
グラファイトフィルムがJIS K7128によるトラウザー引裂試験における平均引裂荷重が0.08N以下と非常に裂けやすいフィルムであっても、JIS C2151によるフィルムの巻取り性評価におけるたるみが5mm以上80mm以下の条件を満たすことによって、以下に示す各態様(本願では、これらを総称する場合に「5態様」と称する)において、不具合を抑制することができる。
【0020】
まず、本発明のグラファイトフィルムを巻き替えする方法においては、例えば図1のように、グラファイトフィルムを一方のロールから巻き出し、他方のロールで巻取りながら巻き替えることができる。フィルムのパスラインは図1のように直接巻き取る方法には限定されず、フリーロールなどを経て折り返しながら巻き替えてもよい。
【0021】
グラファイトフィルムが前記1)及び2)の条件を満たすことによって、図18のようなグラファイトフィルムの裂け不良、図19のような巻きずれ不良などの不具合を抑制できる。
【0022】
次に、本発明のグラファイトフィルムの製造方法において、グラファイトフィルムをスリットする工程とは、例えば図2のようにフィルムを所定の幅に切り分けるものである。
【0023】
グラファイトフィルムが前記1)及び2)の条件を満たすことによって、図18のようなグラファイトフィルムの裂け不良、図19のような巻きずれ不良、図20のエッジのバリ不良、などの不具合を抑制できる。
【0024】
グラファイトフィルムを圧縮する工程とは、発泡グラファイトを圧縮し、柔軟性を付与するものである。特に、高分子フィルムを熱処理して製造されるグラファイトフィルムでは効果が大きい。圧縮する方法としては、例えば図3のような搬送しながら単板を連続的にフィルムに押し付ける単板連続プレスや、図4のような回転しているロールの間を通して圧縮するロール圧延を挙げることができる。
【0025】
グラファイトフィルムが前記1)及び2)の条件を満たすことによって、図18のようなグラファイトフィルムの裂け不良、図19のような巻きずれ不良、図21のような折れシワ不良などの不具合を抑制できる。
【0026】
次に、本発明のグラファイト複合フィルムの製造方法において、グラファイトフィルムをラミネートする工程とは、例えば図5のようにグラファイトフィルムと、粘着層又は接着層を有するシートを貼り合わせるものである。互いに平行に並んだ、第一ロールと第二ロールの間にグラファイトフィルムと粘着層又は接着層を有するシートを連続供給しながら貼り合わせることができる。また、ロールに熱を加えて樹脂を溶融させて貼り合わせる熱ラミネートも挙げることができる。
【0027】
グラファイトフィルムが前記1)及び2)の条件を満たすことによって、図18のようなグラファイトフィルムの裂け不良、図22のような貼り合わせシワ不良などの不具合を抑制できる。
【0028】
次に、本発明のグラファイト抜き加工品の製造方法において、グラファイトフィルム又は当該グラファイト複合フィルムを抜き加工する工程とは、例えば図6のようにピナクル型などを用いてフィルムを所定の形状に切り抜くことができる。グラファイトフィルム単体を切り抜いてもよいし、ラミネート工程により得られたグラファイト複合フィルムを打ち抜いてもよい。また、打ち抜く深さを調節することで、積層体の特定の層だけを残して打ち抜く、ハーフカットも実施できる。
【0029】
グラファイトフィルムが前記1)及び2)の条件を満たすことによって、図18のようなグラファイトフィルムの裂け不良、打ち抜いたフィルムの寸法の精度が悪くなる、寸法精度不良などの不具合を抑制できる。
【0030】
<グラファイトフィルムの平均引裂荷重とたるみ>
本発明のグラファイトフィルムのJIS K7128によるトラウザー引裂試験における平均引裂荷重は0.08N以下である。特に、熱伝導性、電気伝導性に優れたグラファイトフィルムの場合には、グラファイトの結晶子がフィルム面方向に高度に配向しているため、平均引裂荷重が0.08N以下になりやすい。
【0031】
本発明のグラファイトフィルムの平均引裂荷重が0.08N以下、更には0.05N以下、特には0.03N以下であっても、JIS C2151によるフィルムの巻取り性評価におけるたるみが5mm以上80mm以下、の条件を満たすことによって、5態様での不具合を抑制することができる。
【0032】
ここで、JIS C2151記載のフィルムの“たるみ”のあるフィルムとは、フィルムを引っ張ったとき、フィルムの一部がその範囲で通常のフィルムの高さ以下にたるむ。その測定は、ある一定の長さのフィルムを巻き戻し、図7のように1500mm離れた2本の平行な棒に直角方向に載せ、中央部で均一な懸垂線からの偏差を測定する。例えばフィルムのMD方向に均一に張力を加えた場合、フィルムにたるみがあるとたるみ部分には力が加わりにくい。即ち、フィルムの端部にたるみをあるとたるみ部分に力が加わりにくいために裂けを抑制できる。
【0033】
本発明のグラファイトフィルムのJIS C2151によるフィルムの巻取り性評価におけるたるみは、5mm以上80mm以下である。たるみの最適な範囲は、5mm以上80mm以下、好ましくは20mm以上70mm以下、さらに好ましくは30mm以上50mm以下である。たるみが5mm以上であると、捩れや張力に対して応力が分散されるために裂け不良を抑制できる。一方、たるみが80mm以下であると、巻きずれ不良、シワ不良、グラファイト抜き加工品の寸法精度不良を抑制できる。本発明では、グラファイトフィルムのa値や曲がりを特定の範囲に制御することによって、更に裂け等の不具合を抑制することができる。
【0034】
<グラファイトフィルムの(TD方向の最端部におけるたるみ)から(TD方向の最端部から30mm地点におけるたるみ)を引いたa値>
本発明のグラファイトフィルムは、(TD方向の最端部におけるたるみ)から(TD方向の最端部から30mm地点におけるたるみ)を引いたa値が、5mm以上50mm以下であることがグラファイトフィルムの裂け抑制の視点から好ましい。図8にa値の模式図を示した。フィルムの裂け不良はフィルムの端部から発生するため、フィルムの裂け易さは端部のたるみであるa値に影響される。a値は、より好ましくは10mm以上45mm以下、さらに好ましくは20mm以上40mm以下である。a値が5mm以上であると、捩れや張力に対して端部へかかる応力が分散されるために5態様での裂け不良を抑制できる。a値が50mm以下であると、巻きずれ不良や、貼り合わせシワ不良、グラファイト抜き加工品の寸法精度不良が抑制できる。
【0035】
<グラファイトフィルムの曲がり>
本発明のグラファイトフィルムのJIS C2151によるフィルムの巻取り性評価における曲がりは、10mm以下であることが好ましい。図9に曲がりの模式図を示した。本発明のグラファイトフィルムの曲がりは、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは3mm以下である。曲がりが10mm以下であると、捩れや張力に対して応力が分散されるために5態様での裂け不良を抑制できる。また、巻きずれ不良、シワ不良、グラファイト抜き加工品の寸法精度不良を抑制できる。
【0036】
<グラファイトフィルムの長さ>
グラファイトフィルムの長さとは、フィルムの長編方向の長さである。たるみの程度が同等でも、グラファイトフィルムの長さが短くなると、巻き替えが容易になる。グラファイトフィルムの長さが180mm程度の枚葉サイズであれば取り扱いが非常に容易である。グラファイトフィルムの長さが1000mmを超えるとフィルム端部に応力が集中し、フィルムが裂ける等の不具合が発生しやすくなる。本発明では、特にグラファイトフィルム長さが1000mm以上の非常に取り扱いにくいフィルムであっても、たるみ、a値、曲がりを適切に制御することで裂けることなく作業を実施できる。
【0037】
<巻き替え張力>
本発明のグラファイトフィルムの巻き替え方法において、フィルムの巻き替え張力と、裂け不良、巻きずれ不良との間には関連性がある。張力が弱いと、巻きずれ不良が発生しやすくなるため、張力を強める必要があるが、巻き替え張力の高張力化は、裂け不良を助長してしまう。巻き替え張力は、好ましくは3g/cm以上400g/cm以下、より好ましくは10g/cm以上200g/cm以下、更に好ましくは20g/cm以上80g/cm以下である。3g/cm以上400g/cm以下であると、裂けや巻きずれのような不具合を生じずに巻き替えを行うことができる。
【0038】
<巻き替え速度>
本発明のグラファイトフィルムの巻き替え方法において、巻き替え速度の高速化は生産性の観点から重要であるが、本願発明のグラファイトフィルムでは、巻き替え速度の高速化は裂けや巻きずれのような不具合を助長してしまう。
【0039】
本発明のグラファイトフィルムの巻き替え速度は、好ましくは1m/min以上50m/min以下、より好ましくは3m/min以上30m/min以下、更に好ましくは5m/min以上20m/min以下の速度で巻き替えるとよい。
【0040】
巻き替え速度が1m/min以上であると生産性がよくなり、50m/min以下であると裂けや巻きずれのような不具合を生じずに巻き替えを行うことができる。
【0041】
<グラファイトフィルムの厚み>
本発明のグラファイトフィルムの厚みは、好ましくは5μm以上200μm以下、より好ましくは10μm以上100μm以下、更に好ましくは20μm以上50μm以下である。5μm以上200μm以下であると裂けや巻きずれを抑制して巻き替えを行うことができる。
【0042】
<グラファイトフィルムの幅>
本発明のグラファイトフィルムの幅(TD方法の長さ)は、たるみの程度が同等でも、グラファイトフィルムの幅が狭くなると巻き替えが容易になる。幅が200mm以上、さらに300mm以上、特には400mm以上になると、端部に応力が集中しやすく裂け不良が発生しやすいが、本発明のたるみ、a値、曲がりの要因を制御することによって、5態様での裂けや巻きずれなどの不具合を抑制することができる。
【0043】
<スリット刃>
グラファイトフィルムは結晶子がフィルム面方向に高度に配向しており、フィルムの切断性は悪い。このため、本発明のグラファイトフィルムの製造方法におけるスリット工程では、フィルムに負担のかからないロール刃が適している。
【0044】
<圧縮方法>
本発明のグラファイトフィルムの製造方法における圧縮工程では、例えば、搬送しながら単板を連続的にフィルムに押し付ける単板連続プレスや、回転しているロールの間を通して圧縮するロール圧延を用いることができる。単板連続プレスは、フィルムの平坦性に関わらずシワを発生させることなく圧縮できるが、単板を連続的にフィルムに押し付けるためフィルムにかかる張力が安定せず裂け不良が発生しやすいという傾向がある。本発明の単板連続プレスを用いた圧縮工程では、たるみ、a値、曲がりなどの要因を制御することによって裂けや巻きずれを抑制することができる。また、ロール圧延は、張力を一定にできるためフィルムが裂けにくいが、フィルムのたるみが大きいとロールでの巻き込みシワが発生する傾向がある。本発明のロール圧延を用いた圧縮工程では、たるみ、a値、曲がりなどの要因を制御することによって、裂けや巻きずれ、巻き込みシワを抑制することができる。
【0045】
<粘着層又は接着層を有するシート>
本発明のグラファイト複合フィルムにおいて、グラファイトフィルムと貼り合わせる粘着層又は接着層を有するシートは特に限定されない。粘着層を有するシートの構成は、例えば粘着層からなるフィルム、粘着層/基材からなるフィルム、粘着層/基材/粘着層などを挙げることができる。粘着層としては、シリコーン系、アクリル系、合成ゴム系などの粘着材を使用することができる。基材としては、ポリイミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、ポリエステル系樹脂や、アルミ箔や銅箔などの金属シートなどを使用することができる。接着層を有するシートの構成としては、例えば、接着層からなるフィルム、接着層/基材からなるフィルム、接着層/基材/接着層などを挙げることができる。接着層としては、ポリイミド系、エポキシ系などの熱硬化型の樹脂接着材を使用することができる。接着層として溶融状態で接着させる熱可塑性樹脂なども用いることができる。基材としては、ポリイミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、ポリエステル系樹脂や、アルミ箔、銅箔などの金属シート、CFRP(カーボンファイバー強化材料)、炭素繊維フェルト、及び他の炭素材料などを用いることができる。
【0046】
<第一ロール、第二ロール>
本発明のグラファイト複合フィルムの製造方法において用いる第一ロール及び第二ロールは、ラミネーター装置などに取り付けられたグラファイトフィルムと粘着層又は接着層を有するシートを貼り合わせるためのロールである。第一ロールとはグラファイトフィルム側のロールで、第二ロールとは粘着層又は接着層を有するシート側のロールである。第一ロールと第二ロールの位置関係は特に限定されず、いずれが上側にあっても構わない。本発明の第一ロール、第二ロールは、温度制御ができるタイプのものであっても構わない。
【0047】
第一ロールと第二ロールの間に供給されるグラファイトフィルム及び貼り合わせる材料は連続的に供給される。連続供給する方法としては、例えば長尺シートの巻き物を巻き出しロールに設置して、巻き出しながら2本のロール間に供給する方法を挙げることができる。巻き出しロールにトルクをかけて張力をコントロールしながら供給することもできる。
【0048】
本発明のグラファイトフィルムのロール間(第一ロールと第二ロールの間)への供給方法としては、第一ロールにグラファイトフィルムを接触させながら供給するとよい。図10の101に示すように、コシがなくフラットな状態で供給できないフィルムやたるみが大きいフィルムの場合にはこれをロール間に供給するとロールがフィルムの凹凸を巻き込んでしまって貼り合わせシワが発生する。図10の102のように、ロールに接触させながらフィルム等を供給することで、凹凸ができずにシワ不良を発生させないように貼り合わせることが可能である。
【0049】
<本発明のグラファイトフィルムが第一ロールと接触開始する点と第一ロールの中点と第一ロール/第二ロールの接点のなす角度b>
本発明のグラファイトフィルムが第一ロールと接触開始する点と第一ロールの中点と第一ロール/第二ロールの接点のなす角度bとは、図11に示すように、第一ロールに対するグラファイトフィルムの巻き角度のことである。第一ロールとグラファイトフィルムの接触開始点とは、図11の114であり、第一ロールの中心点は115で、第一ロール/第二ロールの接点は116である。グラファイトフィルムを第一ロールに接触させながら、ロール間に連続供給する際、bを制御することが重要である。例えば、たるみやa値の大きいグラファイトフィルムを使用する場合はbが大きくすることで貼り合わせシワを抑制できる。本発明のbとしては、好ましくは5度以上、より好ましくは45度以上、更に好ましくは90度以上である。5度以上であれば貼り合わせシワがなく貼り合わせることができる。
【0050】
<(第二ロールと粘着層又は接着層を有するシートの接触開始点)−(第二ロールの中心点)−(第一ロール/第二ロールの接点)のなすである角度c>
本発明のグラファイトフィルムを厚みの薄いシート(粘着層又は接着層を有するシート)と貼り合わせる場合には、(第二ロールと粘着層又は接着層を有するシートの接触開始点)−(第二ロールの中心点)−(第一ロール/第二ロールの接点)のなすである角度cを制御することが重要である。
【0051】
本発明のcとしては、好ましくは5度以上、より好ましくは45度以上、更に好ましくは90度以上である。5度以上であれば貼り合わせシワがなく貼り合わせることができる。
【0052】
<セパレーター>
本発明で使用される粘着層又は接着層を有するシートには、粘着面又は接着面にセパレーターが貼り付けられているとよい。セパレーター付きの粘着材を有するシートを巻き戻す力がわずかで良いために、グラファイトフィルムとの貼り合わせを行いやすい。例えば、図5のように、バーをセパレーターの剥離の起点として、90度以内の角度で、セパレーターを剥しながら、ロール間に粘着層又は接着層を有するシートを供給するとよい。
【0053】
<粘着層又は接着層を有するシートの幅>
本発明で使用する粘着層又は接着層を有するシートの幅は、図5のように、貼り合わせるグラファイトフィルムの幅より狭いことが望ましい。粘着層又は接着層を有するシートがグラファイトフィルムより狭いことによって、粘着層又は接着層が第一ロールあるいは第二ロールに貼りついてシートが巻き込まれる不具合を抑えることができる。
【0054】
一方、図12のようにグラファイトフィルムと、グラファイトフィルムより広幅の粘着層又は接着層を有するシートを貼り合わせ、グラファイトフィルムの長編方向の端部を封止するラミネート方法も、グラファイトフィルムの粉落ちを抑制する観点で有効である。
【0055】
<ロールの形状>
本発明のグラファイト複合フィルムの製造方法において用いられるロールの形状は特に制限されないが、例えば、クラウンロールやフラットロールを用いることができる。
【0056】
クラウンロールとは、図13に示すようにクラウン状を呈しており、圧を加えたときにロール中央の浮きを緩和する工夫がなされている。
【0057】
本発明においては、ロールの少なくとも一方は、フラットロールを使用することが好ましい。特に、グラファイトフィルムが接する第一ロールはフラットロールが適している。ロールの少なくとも一方がフラットロールであると、端部の貼り合わせシワを抑制できる。特に、第一ロールがフラットであると、グラファイトフィルムをロール間に供給する際に、グラファイトフィルムがロールに密着しやすく、シワの発生を抑制できる。
【0058】
なお、本発明では、ロールの中央の径と、端部から4分の1の径の差が、50μm以上あるロールをクラウンロール、50μm未満をフラットロールと定義する。
【0059】
本発明で使用するクラウンロールのロールの中央の径と、端部から4分の1の径の差は、50μm以上500μm以下、好ましくは100μm以上300μm以下、さらに好ましくは150μm以上250μm以下である。
【0060】
<長尺のグラファイトフィルムをラミネーターへ連続供給し、連続的にラミネートする方法>
本発明において、図29のように、所望の形状にカットしながら長尺のグラファイトフィルムをラミネーターへ連続供給し、連続的にラミネートする間欠ラミネートも可能である。
【0061】
<グラファイト抜き加工品の例>
本発明のグラファイト抜き加工品とは、図14のように、グラファイトフィルムに保護テープや両面テープなどの粘着層又は接着層を有するシートを貼り合わせた後に、所望の形状に抜き出してステッカー状に加工したものである。図14に示すステッカーはセパレーターに載っており、セパレーターからステッカーを剥がして使用される。
【0062】
グラファイト抜き加工品の一例を示す。グラファイトフィルムの片面にセパレーター/両面テープを貼り合わせて、更にPETテープなどの保護テープを貼り合わせた後、所望の形状にハーフカットすることで、図14のような抜き加工品を得ることが出来る。両面テープとPETテープを貼り合わせる順番は反対であっても良い。ここでハーフカットとは、積層品を最後まで打ち抜かず、所定の層まで切り抜くことを指す。
【0063】
本発明のグラファイト抜き加工品の製造方法において、グラファイトフィルムと粘着層又は接着層を有するシートとの貼り合わせや、それらの複合シートを抜き加工を行う。長尺のグラファイトフィルムであれば連続的に行うことができる。
【0064】
例えば、図14のように、長尺グラファイトフィルムの片面に両面テープを貼り合わせて更にPETテープを貼り合わせた後、所望の形状にハーフカットすることで抜き加工品を得ることが出来る。両面テープとPETテープを貼り合わせる順序はいずれが先でもよい。また、図15のように、長尺グラファイトフィルムの片面に両面テープを貼り合わせて更に所望の形状にハーフカットし、PETテープを貼り合わせてからグラファイトシートよりひと回り大きな形状にハーフカットすることによって抜き加工品を得ることも出来る。また、図16のように、長尺グラファイトフィルムを微粘着フィルムに貼り合わせて更にグラファイトシートを所望の形状にハーフカットして不要なグラファイトシートを剥がし、次いでグラファイトシートの微粘着フィルム面に両面テープに貼り合わせてから微粘着フィルムを剥がす。更に両面テープ側にPETテープを貼り合わせてから、粘着テープが外周すべてに残るような形状で、グラファイトフィルムよりひと回り大きくハーフカットすることで、図16のような抜き加工品を得ることが出来る。両面テープとPETテープを貼り合わせる順序はいずれが先であってもよい。
【0065】
グラファイト抜き加工品は、数列を同時に加工し、図17に示す形態にすれば生産性の視点から好ましい。
【0066】
<本発明で使用されるグラファイトフィルムの製造方法>
本発明のグラファイトシートは、1)JIS K7128によるトラウザー引裂試験における平均引裂荷重が0.08N以下、2)JIS C2151によるフィルムの巻取り性評価におけるたるみが5mm以上80mm以下、の条件を満たすグラファイトフィルムであれば、天然グラファイトを酸発泡、ロール圧延成型して製造される天然黒鉛シート、高分子フィルムを原料として2000℃以上の温度で製造される熱分解グラファイトのいずれであっても構わない。
【0067】
本発明のグラファイトフィルムの平均引裂荷重は0.08N以下である。
【0068】
以下に、その一例として、高分子焼成グラファイトフィルムの製造方法を記載する。
【0069】
ポリイミドフィルムを黒鉛製の円筒状の芯(φ100mm)などに巻き付けて(500mm幅×50m程度)円筒状にし、1000℃程度まで熱処理する炭化工程、炭化工程で得られた炭化フィルムを2500以上まで熱処理する黒鉛化工程を経て、グラファイトフィルムを製造できる。従来の炭素質芯に原料フィルムを巻きつける方法では、円筒状の履歴(巻き癖)を引き伸ばす(展開する)ことが可能なグラファイトフィルムは得られていたが、より品質レベルの高い、最適なたるみ、a値、曲がりをもつグラファイトフィルムは得られておらず、5態様において、裂け不良、巻きずれ不良、折れシワ不良、貼り合わせシワ不良、寸法精度不良などが非常に多く発生した。
【0070】
図23には、たるみが異なる3種類のグラファイトフィルムを示す。図23の231のフィルムのたるみは10mm、232のフィルムのたるみは40mm、233のフィルムのたるみは80mmであると異なっている。製造条件を最適化することで、本発明のグラファイトフィルムように、たるみ、a値を最適な範囲に調整し、引裂けにくく、その他の不良も発生しにくいものを準備できる。
【0071】
本発明のグラファイトフィルムのたるみを制御する方法について説明する。図24の示すように、たるみは、TD方向のいくつかのポイントでフィルムのMD方向の長さが違うことに起因する。たるんでいる箇所ではフィルムが長くなっている(242)。つまり、本発明のグラファイトフィルムのたるみは、TD方向の各ポイントのフィルムの長さを制御することで得られる。以下にたるみを制御する方法を列挙する。
【0072】
(1)熱処理によるたるみ制御
図25に、熱処理温度とポリイミドフィルムの収縮膨張の関係を示す。ポリイミドフィルムから炭化フィルムを経てグラファイトフィルムへ変化する過程でフィルムは収縮及び膨張を生じる。収縮及び膨張は炭化フィルムやグラファイトフィルムに変化する過程で分子構造が転換するためである。例えば、ポリイミドフィルムの場合には600℃付近までにフィルムが80%まで収縮する。このような特性を利用すれば、熱処理の条件によってフィルムの大きさを調節し、たるみを制御することができる。
【0073】
(1−1)円筒に巻きつけた状態での熱処理
ポリイミドフィルムは、黒鉛製の円筒容器に巻きつけて熱処理する。フィルムを円筒状に巻いて熱処理すると、フィルムを展開したときのフィルム端部側から、熱が加えられて、熱がより加えられた端部でグラファイト化がより進行するために面方向に伸びやすくなり、グラファイトフィルムの端部にたるみを形成することができる。
【0074】
(1−2)昇温速度制御
昇温速度を最適化することでもたるみの大小を制御できる。例えば、昇温速度を遅くするとフィルム全体の温度が均熱的に上昇するために、フィルム全体のグラファイト化の進行度が均一となってたるみを小さくすることができる。
【0075】
(2)分解ガスのガス圧を利用してたるみを形成する方法。
【0076】
高分子フィルムをグラファイト化する過程で分解ガスが発生する。この分解ガスは、熱処理時に円筒芯に高分子フィルムを巻きつけておけばフィルム面に平行な方向に逃げようとする。その際、フィルムの端部が受けるガス圧は非常に大きいため、フィルム端部は引き伸ばされる。この結果、得られるグラファイトフィルムの端部はたるみが大きくなる傾向がある。このように、発生する分解ガスの圧力(ガス圧)を調整することで、たるみの大きさを制御することができる。
【0077】
ガス圧の調整の方法として、例えば、容器に通気口を設け、分解ガスがスムーズ端部に向かうように、流れを作ることができる。特に図26の264のように、フィルムの端部側に通気口を設けると効果が大きい。
【0078】
分解ガスの流れをスムーズにする工夫として、NやArなどの不活性ガスを導入しながら、ガスの出口からはガスが抜けやすいように、−0.08MPa〜0.01kPaの範囲で減圧する方法も挙げることができる。
【0079】
(3)高分子フィルムのたるみを制御
たるみを制御した高分子フィルムを使用すれば、高分子フィルムに由来したたるみを有するグラファイトフィルムを得ることができる。
【0080】
(4)平坦性矯正
グラファイトフィルムは室温ではほとんど伸びがない。しかしながら、平坦性が悪いグラファイトフィルムを2500℃以上の温度に保持した状態でフィルムを引っ張ったり、押さえつけたりして、たるみを矯正することもできる。
【0081】
グラファイトフィルムを矯正する一例としては、黒鉛芯とグラファイトフィルムの線膨張の差を利用する方法がある。具体的には、黒鉛製の円筒芯にグラファイトフィルムをきつく巻きつけて2600℃以上まで熱処理することが挙げられる。2600℃以上では黒鉛芯の方がグラファイトフィルムより伸びるために、グラファイトフィルムは芯に締め付けられてより平坦な状態に矯正される。円筒芯に締め付ける程度を調整したり、熱処理最高温度を調整したりすることで、フィルムのたるみの程度を矯正することができる。
【0082】
<ポリイミドフィルム>
高分子焼成グラファイトフィルムの原料として使用される高分子フィルムとして、(1)フィルムの炭化、グラファイト化が容易に進行して良好な結晶性、良好な熱拡散性を有するグラファイトフィルムが得られやすい、(2)原料モノマーを種々選択できて、容易な分子設計によって様々な構造および特性を有するものを得ることができる、という理由から、ポリイミドフィルムが好ましい。前駆体であるポリアミド酸を脱水剤とアミン類を併用してイミド転化するケミカルキュア法を用いて得られるポリイミドフィルムは、さらに好ましい。
【0083】
<高分子フィルムの反りの方向、反り量>
本発明で使用するグラファイトフィルムは、高分子フィルムの第1面が内巻き、外巻きのいずれであっても構わないが、グラファイトフィルムが、高分子フィルムの第1面が内巻きになるように巻いた状態(以下、巻物ともいう)で、2000℃以上の温度で熱処理をおこなったものであることがより好ましい。高分子フィルムの第1面が巻物の内側になるように巻くことで、熱処理後の円筒形状の崩れや、フィルムを巻き替える際の裂け不良を抑制することができる。
【0084】
本発明で使用する高分子フィルムは反りを有するとよい。反りは、JIS C2151によるフィルムの巻取り性評価におけるたるみ測定にて確認できる。詳細は、実施例の項に記載した。反りの方向は、図30の301、302のようにフィルムエッジを確認することでわかる。301は上面側に反り、302は下面側に反っている。
高分子フィルムの反り量とは、JIS C2151によるフィルムの巻取り性評価におけるたるみ測定にて測定できる。幅は100mm(TD方向)、長さが3000mm(MD方向)の試験片を用いる。詳細は、実施例の項に記載した。
【0085】
本発明で使用する高分子フィルムの反り量は、0.5mm以上16mm以下、好ましくは1.0mm以上16mm以下、より好ましくは1.5mm以上10mm以下、更に好ましくは、2mm以上8mm以下である。0.5mm以上16mm以下であれば、第1面を内巻きになるように巻いた状態で熱処理することで、焼成後のグラファイトフィルムの円筒形状が崩れず、引き伸ばしても端部からの裂けが少なく、また、巻き替えても裂け不良が発生しないグラファイトフィルムが得られる。
【0086】
<高分子フィルムの第1面、第2面の定義>
本発明において第2面とは、図31のようにフィルムが反る側の面をいう。第2面の反対側の面を第1面と定義する。高分子フィルムの第1面を内巻きになるように巻いた状態で熱処理することで、焼成後のグラファイトフィルムの円筒形状が崩れず、引き伸ばしても端部からの裂けが少なく、また、巻き替えても裂け不良が発生しないグラファイトフィルムが得られる。
【0087】
<グラファイトフィルムの製造方法>
本発明で使用されるグラファイトフィルムの製造方法は、高分子フィルムを熱処理してグラファイトフィルムを製造する方法であり、1)準備工程、2)炭化工程、3)黒鉛化工程を含むとよい。フィルムの形状が崩れや巻き替え時の裂け不良を抑制するためには、高分子フィルムの第1面であった面を巻物の内側にある状態にして黒鉛化工程を行うことが好ましい。
【0088】
1)準備工程では、ポリイミドフィルムなどの高分子フィルムを、シート状にカットして角型冶具内に板やシートで挟んで保持する方法や、長尺の高分子フィルムを内芯冶具に巻き付けて保持する方法などがある。このとき使用する冶具は黒鉛材のように耐熱性があるものが好ましい。また、高分子フィルムを巻き付ける内芯は円筒形状が好ましい。
本発明のグラファイトフィルムの製造方法では、高分子フィルムの第1面を内巻きになるように巻いた状態で熱処理することを特徴とする。したがって、準備工程の段階で、高分子フィルムの第1面が内巻きになるように準備すると、炭化工程、黒鉛化工程で巻き替えなどを行うことなく製造することができる。
【0089】
2)炭化工程は、冶具に保持された高分子フィルムを少なくとも800℃程度の温度まで予備加熱する工程であり、高分子フィルムを加熱分解し、炭化フィルムを得る工程である。得られる炭化フィルムは、高分子フィルムの6割程度の重さとなり、ガラス状のフィルムである。
【0090】
3)黒鉛化工程とは、炭化工程で作成された炭化フィルム、あるいは高分子フィルムを2000℃以上の温度で加熱し、黒鉛化する工程である。黒鉛化最高温度は、2000℃以上、好ましくは2700℃以上、より好ましくは2800℃以上、更に好ましくは2900℃以上である。2000℃以上であると、グラファイト化が進行し、裂けにくく良質のグラファイトフィルムへ転換できる。
【0091】
高分子フィルムの連続体を巻き替えながら搬送し、その途中で炉内を通し、連続的に炭化処理を実施してもよい。巻き取りの際、元の高分子フィルムの第1面が内巻きになるように巻き取ることで、そのまま黒鉛化を実施できる。
黒鉛化工程ではフィルムを冶具に保持しなくてもよいが、フィルムの形状が崩れることを抑制するため、高分子フィルムの第1面が内側になるように巻かれた状態で熱処理することが好ましい。したがって、準備工程で、高分子フィルムの第1面が内側になるように巻いておくと作業性の観点から好ましいが、炭化フィルムを、高分子フィルムの第1面であった面が内側になるように巻きなおして黒鉛化処理を実施してもよい。
また、炭化工程と黒鉛化工程は連続しておこなっても、炭化工程を終了させて、その後黒鉛化工程のみを単独で行っても構わない。
【0092】
<選別する工程>
本発明の選別する工程とは、黒鉛化工程において、高分子フィルムの第1面であった面が巻物の内側に巻かれるにように、面を選別して準備する工程である。選別は、黒鉛化工程前であれば、高分子フィルムの段階、炭化フィルムの段階を問わない。
【0093】
<ポリイミドフィルムの製膜方法>
グラファイトフィルムの焼成後の形状の崩れ、円筒形状を引き伸ばしたときに発生する裂け不良、巻き替え作業時に発生する裂け不良は、原料であるポリイミドフィルムの反りに影響を受ける。このポリイミドフィルムの反りは製膜工程で発生する。
ポリイミド前駆体をイミド化し、最終的にポリイミドフィルムの製品とするための製造装置は、流延塗布しケミカルキュアを行う加熱手段を備えたドラム室あるいはベルト室と熱キュアを行うテンター室とに大きく分けられる。
本発明にかかるポリイミドフィルムの製造工程の1例を図33により示すと、まずベルト室3310での工程は、ミキサーで混合したポリイミド前駆体をTダイ3312によりフィルム状に押し出す工程を行い、反応硬化室においてはTダイより押し出されたフィルム状のポリイミド前駆体をエンドレスベルトあるいはキャスティングドラム3314上にフィルム状に形成する。フィルム状に形成された前駆体は、ベルトあるいはドラムの回転により移動させられながら、加熱手段により加熱されてイミド化される。このベルト室内においては反応に伴って生成した生成物、主として酢酸や有機溶媒等の可燃性の揮発成分が蒸発する。
【0094】
ベルト室での温度条件を例示すると、ベルト1室が100℃、ベルト2室120℃、ベルト3室130℃、及び冷却プーリー3326が、80℃等の温度条件により、キャストされたフィルムに自己支持性が付与される。メカニズムの詳細はわかっていないが、ベルト室の温度条件、冷却プーリーの温度条件、ベルトの回転速度が、ポリイミドフィルムの反りに影響を与えている。
【0095】
これらの工程により、ポリイミド前駆体のフィルムをイミド化しながら、フィルムが自己支持性を有するゲルフィルムとし、エンドレスベルトから引き剥がす。
前記ゲルフィルム3316は端部を固定されテンター室3318にて加熱処理される。例えば、テンター室3318は、加熱炉3320及び徐冷炉3322で構成され、図33においては、ピンでフィルムを固定したピンシートをピンコンベアの回転駆動により可動させることにより、フィルムがテンター室内を移動する。熱キュアを行う加熱炉3320内において徐々に加熱することによりゲルフィルムをさらにイミド化する。
たとえば、加熱炉3320として熱風炉、遠赤外線ヒーターを用いて、加熱炉3320内を徐々に昇温して、ポリイミドへのイミド化を完了させる。
熱処理の温度は、初期設定温度はフィルムの膜厚、またポリイミド前駆体の反応に用いる有機溶媒の種類等との関係により、乾燥の程度が異なる。具体的には、初期設定温度は、例えば、最終膜厚25μmのフィルムにおいては、200℃から250℃、最終膜厚125μmのフィルムにおいては、150℃〜200℃が好ましい。この段階で、ゲルフィルムの乾燥が効果的に行われ同時にイミド化反応が進行すると考えられる。
その後、徐々に加熱し最高温度500℃以上630℃以下の温度範囲とすることが好ましい。さらに好ましくは、540℃以上580℃以下の範囲が好ましい。最高温度に達する温度勾配については、前記の温度範囲で熱処理を施せば、特に制限されない。 熱処理時間は、数秒から数十分、好ましくは1分から5分であり、熱処理温度との関係で適宜設定される。
【0096】
温度勾配は、フィルム厚や乾燥の度合い等フィルムの状態に適応して設定され、特に限定されない。具体的に例をあげて説明すると、25μmの膜厚のフィルムでは、200℃以上250℃以下の温度範囲で30秒、さらに300℃以上350℃以下の温度範囲で30秒、400℃以上450℃以下の温度範囲で30秒、さらに500℃以上580℃以下の温度範囲で60秒である。
前記加熱炉3320内での熱キュアの工程において、完全にイミド化されたポリイミドフィルムは、除冷炉3322において徐々に冷却される。
【0097】
<ベルト面、エアー面>
本発明では、高分子フィルムをキャスト法にて製膜する際、ゲルフィルムがエンドレスベルトと接していた面をベルト面と呼び、反対の面をエアー面と呼ぶ。通常、ベルト面が第1面である。
【0098】
また、本発明には以下の発明が含まれていてもよい。
【0099】
(1)ロールに巻きつけた下記1)2)の特徴を有するグラファイトフィルムを巻き出して、他のロールで巻取るグラファイトフィルムを巻き替えする方法。
1)JIS K7128によるトラウザー引裂試験における平均引裂荷重が0.08N以下、2)JIS C2151によるフィルムの巻取り性評価におけるたるみが5mm以上80mm以下。
【0100】
(2)グラファイトフィルムの(TD方向の最端部におけるたるみ)から(TD方向の最端部から30mm地点におけるたるみ)を引いたa値が、5mm以上50mm以下である(1)に記載のグラファイトフィルムを巻き替えする方法。
【0101】
(3)グラファイトフィルムのJIS C2151によるフィルムの巻取り性評価における曲がりが10mm以下である(1)〜(2)のいずれかに記載のグラファイトフィルムを巻き替えする方法。
【0102】
(4)ロールに巻きつけた下記1)2)の特徴を有するグラファイトフィルムを巻き出して、他のロールで巻取るまでの間に、スリット刃を用いて該グラファイトフィルムをスリットする工程を含むグラファイトフィルムの製造方法。
1)JIS K7128によるトラウザー引裂試験における平均引裂荷重が0.08N以下、2)JIS C2151によるフィルムの巻取り性評価におけるたるみが5mm以上80mm以下。
【0103】
(5)グラファイフィルムの(TD方向の最端部におけるたるみ)から(TD方向の最端部から30mm地点におけるたるみ)を引いたa値が、5mm以上50mm以下である(4)に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0104】
(6)グラファイトフィルムのJIS C2151によるフィルムの巻取り性評価における曲がりが10mm以下である(4)〜(5)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0105】
(7)前記グラファイトフィルムが、巻芯に高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て製造されたグラファイトフィルムであって、該炭化工程において、該巻芯と、巻芯を収納する外筒とにより構成される容器を備え、該容器が通気性を有する、(4)〜(6)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0106】
(8)前記グラファイトフィルムが、巻芯に高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て製造されたグラファイトフィルムであって、該炭化工程の少なくとも一部、不活性ガスを導入しながら−0.08MPa〜0.01kPaの範囲で減圧する(4)〜(6)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0107】
(9)前記グラファイトフィルムが、巻芯に炭化した高分子フィルムからなる熱処理フィルムを巻き付けた状態で、2000℃以上の温度で熱処理を行うグラファイト化工程を有するグラファイトフィルムの製造方法によって得られるグラファイトフィルムであって、前記グラファイト化工程は、前記熱処理フィルムの巻き締めを行う巻き締め工程を含む、(4)〜(6)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0108】
(10)ロールに巻きつけた下記1)2)の特徴を有するグラファイトフィルムを巻き出して、他のロールで巻取るまでの間に、該グラファイトフィルムを圧縮する工程を含む、グラファイトフィルムの製造方法。
1)JIS K7128によるトラウザー引裂試験における平均引裂荷重が0.08N以下、2)JIS C2151によるフィルムの巻取り性評価におけるたるみが5mm以上80mm以下。
【0109】
(11)グラファイトフィルムの(TD方向の最端部におけるたるみ)から(TD方向の最端部から30mm地点におけるたるみ)を引いたa値が、5mm以上50mm以下である、(10)に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0110】
(12)グラファイトフィルムのJIS C2151によるフィルムの巻取り性評価における曲がりが10mm以下である、(10)〜(11)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0111】
(13)前記グラファイトフィルムの幅が200mm以上である、(10)〜(12)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0112】
(14)前記グラファイトフィルムが、巻芯に高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て製造されたグラファイトフィルムであって、該炭化工程において、該巻芯と、巻芯を収納する外筒とにより構成される容器を備え、該容器が通気性を有する、(10)〜(13)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0113】
(15)前記グラファイトフィルムが、巻芯に高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て製造されたグラファイトフィルムであって、該炭化工程の少なくとも一部、不活性ガスを導入しながら−0.08MPa〜0.01kPaの範囲で減圧する(10)〜(13)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0114】
(16)前記グラファイトフィルムが、巻芯に炭化した高分子フィルムからなる熱処理フィルムを巻き付けた状態で、2000℃以上の温度で熱処理を行うグラファイト化工程を有するグラファイトフィルムの製造方法によって得られるグラファイトフィルムであって、前記グラファイト化工程は、前記熱処理フィルムの巻き締めを行う巻き締め工程を含む、(10)〜(13)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0115】
(17)ロールに巻きつけた下記1)2)の特徴を有するグラファイトフィルムを巻き出して、他のロールで巻取るまでの間に、該グラファイトフィルムをラミネートする工程を含む、グラファイト複合フィルムの製造方法。
1)JIS K7128によるトラウザー引裂試験における平均引裂荷重が0.08N以下、2)JIS C2151によるフィルムの巻取り性評価におけるたるみが5mm以上80mm以下。
【0116】
(18)グラファイトフィルムの(TD方向の最端部におけるたるみ)から(TD方向の最端部から30mm地点におけるたるみ)を引いたa値が、5mm以上50mm以下である、(17)に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0117】
(19)グラファイトフィルムのJIS C2151によるフィルムの巻取り性評価における曲がりが10mm以下である、(17)〜(18)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0118】
(20)前記グラファイトフィルムの幅が200mm以上である、(17)〜(19)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0119】
(21)グラファイトフィルムが第一ロールと接触開始する点と第一ロールの中点と第一ロール/第二ロールの接点のなす角度bが5度以上である(17)〜(20)に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0120】
(22)前記グラファイト複合フィルムがグラファイトフィルムと粘着層又は接着層を有するシートを貼り合わせて製造され、粘着層又は接着層を有するシートの厚みが60μm以下である、(17)〜(21)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0121】
(23)粘着層又は接着層を有するシートからセパレーターを剥がしながら、前記第一ロールと第二ロールの間に連続供給するグラファイトシート複合品の製造方法であって、シートからセパレーターを引き剥がす角度が90度以下である、(17)〜(22)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0122】
(24)(粘着層又は接着層を有するシートのTD方向の長さ)が(グラファイトフィルムのTD方向の長さ)よりも5mm以上長い、(17)〜(23)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0123】
(25)前記第一ロールおよび第二ロールが、クラウンロールとフラットロールの組み合わせである、(17)〜(24)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0124】
(26)前記グラファイトフィルムが、巻芯に高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て製造されたグラファイトフィルムであって、該炭化工程において、該巻芯と、巻芯を収納する外筒とにより構成される容器を備え、該容器が通気性を有する、(17)〜(25)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0125】
(27)前記グラファイトフィルムが、巻芯に高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て製造されたグラファイトフィルムであって、該炭化工程の少なくとも一部、不活性ガスを導入しながら−0.08MPa〜0.01kPaの範囲で減圧する(17)〜(25)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0126】
(28)前記グラファイトフィルムが、巻芯に炭化した高分子フィルムからなる熱処理フィルムを巻き付けた状態で、2000℃以上の温度で熱処理を行うグラファイト化工程を有するグラファイトフィルムの製造方法によって得られるグラファイトフィルムであって、前記グラファイト化工程は、前記熱処理フィルムの巻き締めを行う巻き締め工程を含む、(17)〜(25)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0127】
(29)ロールに巻きつけた下記1)2)の特徴を有するグラファイトフィルムを用いたグラファイトフィルム、又はロールに巻きつけた請求項17〜請求項25のいずれか1項に記載のグラファイト複合フィルムを巻き出して、他のロールで巻取るまでの間に、該グラファイトフィルム又は該グラファイト複合フィルムを抜き加工する工程を含む、グラファイト抜き加工品の製造方法。
1)JIS K7128によるトラウザー引裂試験における平均引裂荷重が0.08N以下、2)JIS C2151によるフィルムの巻取り性評価におけるたるみが5mm以上80mm以下。
【0128】
(30)前記(29)に記載のグラファイトフィルムが(TD方向の最端部におけるたるみ)から(TD方向の最端部から30mm地点におけるたるみ)を引いたa値が、5mm以上50mm以下であるグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0129】
(31)前記(29)又は(30)のいずれかに記載のグラファイトフィルムがJIS C2151によるフィルムの巻取り性評価における曲がりが10mm以下であるグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0130】
(32)前記(29)〜(31)のいずれかに記載のグラファイトフィルムが少なくとも片面に粘着層又は接着層を有するシートが形成する工程と、ハーフカットする工程を含むグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0131】
(33)前記(29)〜(32)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの周辺端部の一部が、粘着層又は接着層を有するシートで被覆する工程を含むグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0132】
(34)前記(29)〜(33)のいずれかに記載のグラファイトフィルムが、巻芯に高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て製造されたグラファイトフィルムであって、該炭化工程において、該巻芯と、巻芯を収納する外筒とにより構成される容器を備え、該容器が通気性を有するグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0133】
(35)前記(29)〜(33)のいずれかに記載のグラファイトフィルムが、巻芯に高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て製造されたグラファイトフィルムであって、該炭化工程の少なくとも一部、不活性ガスを導入しながら−0.08MPa〜0.01kPaの範囲で減圧するグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0134】
(36)前記(29)〜(33)のいずれかに記載のグラファイトフィルムが、巻芯に炭化した高分子フィルムからなる熱処理フィルムを巻き付けた状態で、2000℃以上の温度で熱処理を行うグラファイト化工程を有するグラファイトフィルムの製造方法によって得られるグラファイトフィルムであって、前記グラファイト化工程は、前記熱処理フィルムの巻き締めを行う巻き締め工程を含むグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0135】
(37)前記(29)に記載のグラファイト複合フィルムに用いるグラファイトフィルムが(TD方向の最端部におけるたるみ)から(TD方向の最端部から30mm地点におけるたるみ)を引いたa値が、5mm以上50mm以下であるグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0136】
(38)前記(29)又は(30)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムに用いるグラファイトフィルムがJIS C2151によるフィルムの巻取り性評価における曲がりが10mm以下であるグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0137】
(39)前記(29)〜(31)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムに用いるグラファイトフィルムが少なくとも片面に粘着層又は接着層を有するシートが形成する工程と、ハーフカットする工程を含むグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0138】
(40)前記(29)〜(32)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムに用いるグラファイトフィルムの周辺端部の一部が、粘着層又は接着層を有するシートで被覆する工程を含むグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0139】
(41)前記(29)〜(33)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムに用いるグラファイトフィルムが、巻芯に高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て製造されたグラファイトフィルムであって、該炭化工程において、該巻芯と、巻芯を収納する外筒とにより構成される容器を備え、該容器が通気性を有するグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0140】
(42)前記(29)〜(33)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムに用いるグラファイトフィルムが、巻芯に高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て製造されたグラファイトフィルムであって、該炭化工程の少なくとも一部、不活性ガスを導入しながら−0.08MPa〜0.01kPaの範囲で減圧するグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0141】
(43)前記(29)〜(33)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムに用いるグラファイトフィルムが、巻芯に炭化した高分子フィルムからなる熱処理フィルムを巻き付けた状態で、2000℃以上の温度で熱処理を行うグラファイト化工程を有するグラファイトフィルムの製造方法によって得られるグラファイトフィルムであって、前記グラファイト化工程は、前記熱処理フィルムの巻き締めを行う巻き締め工程を含むグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0142】
(44)巻き替えに使用するグラファイトフィルムが、高分子フィルムの第1面が内巻きになるように巻いた状態で、2000℃以上の温度で熱処理をおこなって得られたグラファイトフィルムである(1)〜(3)のいずれかに記載のグラファイトフィルムを巻き替えする方法。
【0143】
(45)スリットに使用するグラファイトフィルムが、高分子フィルムの第1面が内巻きになるように巻いた状態で、2000℃以上の温度で熱処理をおこなって得られたグラファイトフィルムである(4)〜(9)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0144】
(46)圧縮に使用するグラファイトフィルムが、高分子フィルムの第1面が内巻きになるように巻いた状態で、2000℃以上の温度で熱処理をおこなって得られたグラファイトフィルムである(10)〜(16)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0145】
(47)ラミネートに使用するグラファイトフィルムが、高分子フィルムの第1面が内巻きになるように巻いた状態で、2000℃以上の温度で熱処理をおこなって得られたグラファイトフィルムである(17)〜(28)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【0146】
(48)抜き加工に使用するグラファイトフィルムが、高分子フィルムの第1面が内巻きになるように巻いた状態で、2000℃以上の温度で熱処理をおこなって得られたグラファイトフィルムである(29)〜(36)のいずれかに記載のグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0147】
(49)抜き加工に使用するグラファイト複合フィルムに用いるグラファイトフィルムが、高分子フィルムの第1面が内巻きになるように巻いた状態で、2000℃以上の温度で熱処理をおこなって得られたグラファイトフィルムである(37)〜(43)のいずれかに記載のグラファイト抜き加工品の製造方法。
【0148】
(50)JIS K7128によるトラウザー引裂試験における平均引裂荷重が0.08N以下、JIS C2151によるフィルムの巻取り性評価におけるたるみが5mm以上80mm以下、であるグラファイトフィルム。
【実施例】
【0149】
以下において、本発明の種々の実施例をいくつかの比較例と共に説明する。なお、本願明細書においては、グラファイトフィルムをGSと略す場合がある。
<グラファイトフィルム1〜20>
・グラファイトフィルム1(GS1)
厚さ50μm、幅500mm、長さ50mのカネカ製ポリイミドフィルム(アピカルAV)を、図26のように、外径100mm、長さ600mmの円筒状の黒鉛製内芯に巻き付け、内径130mmの外筒を被せた。容器には264のように通気性を持たせるための穴が数箇所開いている。この容器を電気炉内に横向きにセットした。ガスの流れをよくするため、窒素を5l/min導入しながら、炉出口から、−0.05MPaで減圧した。1400℃まで2℃/minの昇温条件で炭化処理を行った。次に、得られたロール状の炭化フィルムを外径100mmの内芯に、図27のようにセットして、この容器を、横向きにグラファイト化炉内にセットし(支えにより内芯を浮かせた状態)、2900℃まで5℃/minの昇温条件で黒鉛化処理を実施した。さらに得られたグラファイトフィルムをφ100の円筒状の芯に巻き直して、再び2900℃まで加熱して、2回目の黒鉛化処理を実施した。巻き直す程度を調節し、たるみ=10mm、a値=5mm、曲がり=<1mm、厚み=25μm、幅=450mm、長さ=35m、面積=15.75m、平均引裂荷重=0.01NのGS1を調製した。
【0150】
・グラファイトフィルム2(GS2)
巻き直す程度を調節し、a値=2mmとなるように調製したこと以外は、GS1と同様にして、GS2を準備した。
【0151】
・グラファイトフィルム3(GS3)
巻き直す程度を調節し、たるみ=20mm、a値=10mmとなるように調製したこと以外は、GS1と同様にして、GS3を準備した。
【0152】
・グラファイトフィルム4(GS4)
巻き直す程度を調節し、たるみ=40mm、a値=30mmとなるように調製したこと以外は、GS1と同様にして、GS4を準備した。
【0153】
・グラファイトフィルム5(GS5)
巻き直す程度を調節し、たるみ=40mm、a値=30mm、平均引裂荷重=0.05Nとなるように調製したこと以外は、GS1と同様にして、GS5を準備した。
【0154】
・グラファイトフィルム6(GS6)
巻き直す程度を調節し、たるみ=40mm、a値=2mmとなるように調製したこと以外は、GS1と同様にして、GS6を準備した。
【0155】
・グラファイトフィルム7(GS7)
巻き直す程度を調節し、たるみ=70mm、a値=50mmとなるように調製したこと以外は、GS1と同様にして、GS7を準備した。
【0156】
・グラファイトフィルム8(GS8)
巻き直す程度を調節し、たるみ=70mm、a値=60mmとなるように調製したこと以外は、GS1と同様にして、GS8を準備した。
【0157】
・グラファイトフィルム9(GS9)
厚さ75μmのカネカ製ポリイミドフィルム(アピカルAV)を原料に用いたこと、巻き直す程度を調節し、たるみ=40mm、a値=30mm、厚み=40μmとなるように調製したこと以外は、GS1と同様にして、GS9を準備した。
【0158】
・グラファイトフィルム10(GS10)
幅275mmのカネカ製ポリイミドフィルム(アピカルAV)を原料に用いたこと、巻き直す程度を調節し、たるみ=10mm、a値=5mm、幅250mmとなるように調製したこと以外は、GS1と同様にして、GS10を準備した。
【0159】
・グラファイトフィルム11(GS11)
幅140mmのカネカ製ポリイミドフィルム(アピカルAV)を原料に用いたこと、巻き直す程度を調節し、たるみ=10mm、a値=5mm、幅120mmとなるように調製したこと以外は、GS1と同様にして、GS11を準備した。
【0160】
・グラファイトフィルム12(GS12)
巻き直す程度を調節し、曲がり=5mmとなるように調製したこと以外は、GS12と同様にして、GS12を準備した。
【0161】
・グラファイトフィルム13(GS13)
巻き直す程度を調節し、曲がり=10mmとなるように調製したこと以外は、GS12と同様にして、GS13を準備した。
【0162】
・グラファイトフィルム14(GS14)
巻き直す程度を調節し、たるみ=2mm、a値=2mmとなるように調製したこと以外は、実施例1と同様にして、GS14を準備した。
【0163】
・グラファイトフィルム15(GS15)
巻き直す程度を調節し、たるみ=100mm、a値=60mmとなるように調製したこと以外は、実施例1と同様にして、GS15を準備した。
【0164】
・グラファイトフィルム16(GS16)
巻き直す程度を調節し、たるみ=40mm、a値=30mm、平均引裂荷重=0.12Nとなるように調製したこと以外は、実施例1と同様にして、GS16を準備した。
【0165】
・グラファイトフィルム17(GS17)
天然黒鉛粉を酸発泡させ、圧延ロールで圧縮成型し、厚み50μmのGS17を作製した。たるみ=2mm、a値=2mm、曲がり=<1mm、厚み=50μm、幅=450mm、長さ=35m、面積=15.75m、平均引裂荷重=0.12Nであった。
【0166】
・グラファイトフィルム18(GS18)
長さ20m・幅250mm・厚さ75μmのポリイミドフィルム(カネカ製ポリイミドアピカルAH)を外径150mmの円筒状炭素質芯に巻きつけ、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、1000℃まで昇温された後、1000℃で1時間熱処理して炭化処理(炭素化)が行われた。引き続いて、超高温炉を用いてアルゴン雰囲気下で2800℃まで昇温され、その最高温度で1時間保持された。その後、冷却され、GS18が得られた。たるみ=85mm、a値=60mm、曲がり=<1mm、厚み=40μm、幅=225mm、長さ=18m、面積=4.05m、平均引裂荷重=0.06Nであった。
【0167】
・グラファイトフィルム19(GS19)
長さ30m・幅250mm・厚さ75μmのポリイミドフィルム(カネカ製ポリイミドアピカルAH)を外径250mmの円筒状炭素質芯に巻きつけたこと以外は、グラファイトフィルム18と同様にGS19を作製した。たるみ=86mm、a値=55mm、曲がり=<1mm、厚み=40μm、幅=225mm、長さ=27m、面積=6.075m、平均引裂荷重=0.06Nであった。
【0168】
・グラファイトフィルム20(GS20)
厚さ50μm、幅500mm、長さ50mのカネカ製ポリイミドフィルム(アピカルAV)を、外径250mmの円筒状炭素質芯に巻きつけたこと以外は、グラファイトフィルム18と同様にGS20を作製した。たるみ=120mm、a値=70mm、曲がり=<1mm、厚み=25μm、幅=450mm、長さ=35m、面積=15.75m、平均引裂荷重=0.06Nであった。
【0169】
<各種物性測定条件>
<たるみ及び曲がりの評価の測定原理>
JIS C2151に記載のフィルムの巻取り性評価に準じておこなう、曲がり及びたるみの評価の測定方法を以下に説明する。
【0170】
巻取り性は、ロール状で供給するフィルムに現れた“歪み”で評価する。フィルムには、適切な巻取り性を損なう可能性があるゆがみが次の二つの形で現れる。
【0171】
1)“曲がり”を示すフィルムは、フィルムエッジが真っすぐでない。
【0172】
2)“たるみ”をもつフィルムは、フィルムを引っ張ったとき、フィルムの一部がその範囲の通常のフィルムのレベル以下にたるむ。
【0173】
曲がり及びたるみの測定法はA法及びB法の二つの方法が規定されているが、本発明のグラファイトフィルムのたるみ及び曲がりの評価は、A法に準じて実施する。
【0174】
<グラファイトフィルムのJIS C2151記載のたるみの測定>
ある一定の長さのフィルムを巻き戻し、規定の条件の下で2本の平行な棒に直角方向に載せ、均一な懸垂線からの偏差を測定する。たるみの評価のための装置として巻取り機のロールを用いることができるが、結果に疑義がある場合は、次に説明する装置を用いる。
【0175】
(装置) 装置について次に説明する(図7)。
【0176】
a)ロールを取り付けた架台
自由に回転する2本の金属製ロール及びこの2本のロールを平行に支える堅固な架台。各ロールは、直径が100mm±10mmで、長さが試験するフィルムの最大幅が十分に載せられるもの。2本のロールの軸は同一水平面にあり、互いに1500mm±15mmの間隔を置いて0.1度以内(すなわち、ロールの長さ1mについて1.8mm以内)で平行な状態に固定する。ロールは、円筒度0.1mm以内の円筒状とし、表面は適切ななし地仕上げ(研磨仕上げではない)ものとする。架台には、一方のロール(第一ロール)のすぐ下に試験するフィルムロールを載せるための装置(脱着軸)を取り付ける。この装置は次による。
【0177】
1)フィルムを載せる脱着軸は、第一ロールの軸と1度以内で平行とする。
【0178】
2)フィルムの側部の位置が自由に調整できる。
【0179】
3)巻き戻し張力を調整しながらフィルムロールからフィルムを引き出せるようにする。
【0180】
b)フィルムに張力を加える装置
架台の反対側の端で、2本目のロール(第2ロール)から自由に垂れ下がったフィルムにおもり又はばね付きクランプを固定できるようにする。おもり又はばね荷重は、フィルムの幅1cm当たり50gをかけ、フィルムの幅方向にできるだけ均一に張力を加えられるように調節できるものとする。あるいは、テンションロールに巻きつけて、幅1cm当たり50gの、均一な張力を加えてもよい。
【0181】
c)寸法測定器具
2本のロール間の中央部でロールに平行な線に沿って、2本のロール間の平面と下に下がったフィルムとの距離を測定するための器具。測定に用いる器具は、長さ1525mm以上の鋼製直定規及び1mm目盛りの付いた長さ150mmの鋼製物差しとする。又は、フィルムの位置を自動的に又は半自動的に示すような複雑な器具を用いてもよい。
【0182】
(試験片) 試験片は、巻き戻すのに必要な最小限の張力でゆっくりとロールから新しく約2mの長さを引き出したものとする。このとき試験片を取り出す場所は、ロールの巻きの中央付近からとする。つまり、100mの巻きであれば、巻き終わりから50m付近から試験片を3枚取り出す。
【0183】
(測定手順) 図7のように、装置の2本のロール上に試験片を長さ方向に載せる。フィルムの自由端には張力を加える。フィルムの第2のロールを通過する最終的な位置は、フィルムが2本のロールの中央でほぼ水平になるように調節する。
【0184】
鋼製直定規及び目盛り付きの鋼製物差し、又は他の適切な器具を用いて、2本のロールの中央部で幅方向に沿ってフィルムを確認し、周辺の通常のフィルムより下がっている、すべてのたるみの中での最大深さを1mmまで測定し、その試験片のたるみの値として報告する。
【0185】
(結果) たるみの値は、3個の測定値の中央値とする。
【0186】
<グラファイトフィルムのa値の測定>
グラファイトフィルムのa値の測定も、前述したJIS C2151記載のたるみ測定と同様の状態にフィルムをセットしてから実施した。図8のように、最端部の懸垂線からのたるみの長さを測定し、次に、最端部から30mm地点の懸垂線からのたるみの長さを測定した。その後、(最端部のたるみ)から(最端部から30mm地点のたるみ)を引いた。左右に対して同様の計測を実施し、その平均値を1回の測定値とした。端部のたるみの値は、3枚の試験片に対して実施し、その中央値した。試験片は、巻き戻すのに必要な最小限の張力でゆっくりとグラファイトフィルムのロールから新しく約2mの長さを引き出したものとした。このとき試験片を取り出す場所は、ロールの巻きの中央付近からとした。つまり、100mの巻きであれば、巻き終わりから50m付近から試験片を3枚取り出す。
【0187】
<グラファイトフィルムの曲がりの測定>
ある一定の長さのフィルムを巻き戻して平面上に置き、そのフィルムの両エッジについて直線からの偏差をそれぞれ測定する。
【0188】
(装置)装置について次に説明する。(図9)
a)テーブル
幅が試験するフィルムの最大幅より十分大きく、長さが1500mm±15mmで、両端の平行度が0.1度以内(又は、テーブルの幅1m当たり1.8mm以内)のものを使用する。適切な材質で表面を(梨)地仕上げをした(研磨仕上げしていない)平らで水平なものを使用する。テーブルの長さがこれより長い場合は、テーブルの表面に1500mm±15mm間隔で平行な2本の標線を明確に描く。標線の平行度は0.1度以内(標線の長さ1m当たり1.8mm以内)とする。
【0189】
b)ブラシ
テーブル表面に載せたフィルムを平らにするための柔らかいブラシ。
【0190】
c)直定規
長さが1525mm以上の鋼製のもの。
【0191】
d)物差し
長さが150mmで1mm間隔の目盛りが付いた鋼製のもの。
【0192】
(試験片) 試験片は、ロールから新しく長さ約2mのものを3枚とる。試験片を取り出すときは、巻き戻すのに必要な最小限の張力でゆっくり引き出す。このとき試験片を取り出す場所は、ロールの巻きの中央付近からとする。つまり、100mの巻きであれば、巻き終わりから50m付近から試験片を3枚取り出す。
【0193】
(測定手順) 試験片を、図9に示すようにテーブルの上に長手方向に置く。一方の端から、フィルムに軽い力で柔らかくブラシをかけ、テーブルとフィルムとの間に空気だまりができるだけ残らないように密着させる。
【0194】
直定規のエッジをフィルムの一方のエッジに添わせて置き、直線からフィルムエッジまえの偏差がよく観察できるようにする。鋼製の直定規は、テーブルの両端(又は、標線上)でフィルムのエッジに一致するように調節する。基準位置の間のおよそ中央で、鋼製の物差しを用いて鋼製の直定規とフィルムのエッジとの偏差dを1mmまで測定する。
【0195】
同じ方法で、フィルムのもう一方のエッジと直定規との偏差dを測定する。
【0196】
試験片の曲がりの値は、基準線の間隔の中央で、フィルムの両側におけるミリメートルで表した直定規のエッジとフィルムのエッジとの偏差の和(d+d)とする。さらに、他の2枚の試験片についてこの方法を繰り返す。(d+d)=Rgsである。
【0197】
(結果) 曲がりは、3個の測定値の中央値とする。
【0198】
<高分子フィルムの反りの方向の確認と反り量の測定>
高分子フィルムの反りの方向の確認と反り量の評価は、JIS C2151に記載のフィルムの巻取り性評価に基づくたるみ測定で、フィルム端部の反りの大きさを、室温(23℃)にて測定した。
(試験片の作製方法)1)高分子フィルムのロールから新しく約3mの長さを引き出す。2)中央付近からカッターナイフを使用し、幅は100mm(TD方向)、長さが3000mm(MD方向)の試験片を切り出す。このとき、元のロールのTD方向、MD方向が試験片のTD方向、MD方向と一致するように注意する。同様の方法で、手順1)2)を実施し試験片を3枚の試験片を作製する。
(装置について) 装置については図7と同様のものを使用する
(反りの方向の確認方法)図31の311のように、上面側に反っている場合は、上面が第2面、312のように下面側に反っている場合は下面が第2面である。
(反り量の測定方法)図31の311のように、上面が第2面の場合は、フィルムを裏返し、312のように下面に第2面を配置して測定する。図31の314のように、最短部の懸垂線からのたるみを測定する。左右のたるみを測定し、平均値を、その試験片の反り量として報告する。
(結果) 反り量は、3個の測定値の中央値とする。
【0199】
<グラファイトフィルムの面積の測定>
グラファイトフィルムの面積は、フィルムの幅と、長さを測定した値の積で評価することができる。ただし、形が歪で長さの測定が困難である場合や、フィルムが破損し易く長さの測定が困難である場合には、ロール状のグラファイトフィルムの全重量を測定し、一部(100mm×100mm)を切り出した重量との比で、面積を算出してもよい。
【0200】
<グラファイトフィルムの厚み測定>
グラファイトフィルムの厚みの測定方法としては、ハイデンハイン(株)から入手可能な厚みゲージ(HEIDENHAIN−CERTO)を用い、室温25℃の恒温室にて測定した。測定箇所は、図28のように、ロール状の高分子フィルム及びグラファイトフィルムの外(フィルムの巻き始め281)から500mmのポイント1〜3、フィルムの内(フィルムの巻き終わり282)から500mmのポイント7〜9、その中点であるポイント4〜6の9ポイントを測定した(ポイント2はポイント1とポイント3の中点、ポイント5はポイント2とポイント8の中点である)。
【0201】
<グラファイトフィルムの幅の測定>
グラファイトフィルムの幅は、フィルムの長さ方向と直角方向のフィルムの長さである。測定ポイントは、図28のように、ロール状のグラファイトフィルムの外(フィルムの巻き終わり281)から500mm、内(フィルムの巻き始め282)から500mm、その中間とする。3点の平均値を幅とする。
【0202】
<グラファイトフィルムの平均引裂荷重の測定>
グラファイトフィルムの平均引裂荷重の測定は、JISK7128記載のトラウザー引裂試験法により実施した。実際の測定では、図28の9点から、150mm×50mmの試験片を抜き出した。各サンプルに75mmの切れ目を入れ、オートグラフを用い、試験速度200mm/minにて試験を実施し、平均引裂荷重を測定した。9点の測定の平均値を測定値とした。平均引裂荷重は、SIMAZU製のオートグラフ(型番:AG−10TB)を使用し、50Nのロードセル(型番:SBL−50N)を使用した。
【0203】
<(1)〜(5)のテスト>
実施例では、以下の(1)〜(5)のテストを実施した。
(1)巻き替えテスト
(2)スリットテスト
(3)圧縮テスト
(4)ラミネートテスト
(5)抜き加工テスト
<(1)〜(5)のテストにおけるグラファイトフィルムの裂け不良の評価>
(1)〜(5)のテストにおけるグラファイトフィルムの裂け不良の評価方法を説明する。ロールの全領域にわたり、長さ5mm以上の裂け不良を数え、単位長さ(1m)あたりの裂け不良の数として換算した。1mあたりの裂け不良が、0.05個/m未満はA、0.05個/m以上0.2/m未満はB、0.2個/m以上〜1個/m未満はC、1個/m以上〜2個/m未満はD、2個/m以上はEとした。
【0204】
<(1)〜(3)のテストにおける巻きずれの評価>
(1)〜(3)のテストにおける、巻きずれ(端部の揃いの程度)を評価した。テスト終了後のグラファイトフィルムの巻きの端部を確認し、最大5mm未満しかずれていないものをA、5mm以上10mm未満ずれるものはB、10mm以上20mm未満のものはC、20mm以上30mm未満のものはD、30mm以上はEとした。
【0205】
<(2)のテストのグラファイトフィルムのエッジのバリの評価>
グラファイトフィルムのスリット面のバリの発生の程度を評価した。ロールの全領域にわたり、目視で確認できるバリの個数を数え、単位長さ(1m)あたりのバリの個数として換算した。1mあたりのシワの個数が、0.05個/m未満はA、0.05個/m以上0.2個/m未満はB、0.2個/m以上1個/m未満はC、1個/m以上2個/m未満はD、2個/m以上はEとした。
【0206】
<(3)のテストのグラファイトフィルムの折れシワの評価>
圧縮テスト後のグラファイトフィルムの折れシワについて、以下のように評価した。ロールの全領域にわたり、長さ5mm以上の折れシワの個数を数え、単位長さ(1m)あたりのシワの個数として換算した。1mあたりのシワの個数が、0.05個/m未満はA、0.05個/m以上0.2個/m未満はB、0.2個/m以上1個/m未満はC、1個/m以上2個/m未満はD、2個/m以上はEとした。
【0207】
<(4)のテスト後のグラファイト複合フィルムの貼り合わせシワの評価>
図22のような、貼り合わせ工程後のグラファイト複合フィルムの貼り合わせシワについて、以下のように評価した。ロールの全領域にわたり、長さ5mm以上の貼り合わせシワの個数を数え、単位長さ(1m)あたりのシワの個数として換算した。1mあたりのシワの個数が、0.05個/m未満はA、0.05個/m以上0.2個/m未満はB、0.2個/m以上〜1個/m未満はC、1個/m以上〜2個/m未満はD、2個/m以上はEとした。
【0208】
<(5)のテストのグラファイト抜き加工品の寸法精度評価>
グラファイト抜き加工品の寸法精度を評価した。得られたグラファイト抜き加工品全数に対し、4辺の長さを測定し、50mm±0.5mmを合格と判断した。合格個数と全数から、合格率を算出した。合格率が、98%以上をA、95%以上98%未満をB、90%以上95%未満をC、85%以上90%未満をD、85%未満をEとした。
【0209】
<(1)〜(5)のテストで使用されるグラファイトフィルムの面方向の熱拡散率測定>
グラファイトフィルムの面方向の熱拡散率は、熱拡散率は、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な「LaserPit」)を用いて、グラファイトフィルムを4×40mmのサンプル形状に切り取り、20℃の雰囲気下、10Hzにて測定した。実際の測定では、図28の9点から、150mm×50mmの試験片を抜き出した。
【0210】
面方向の熱拡散率が8.0×10−4/s以上をA、6.0×10−4/s以上8.0×10−4/s未満をB、4.0×10−3/s以上6.0×10−4/s未満をC、6.0×10−4/s以上3.0×10−4/s未満をD、3.0×10−4/s未満をEとした。
【0211】
実施例、比較例、参考例で使用されるグラファイトフィルムのパラメーラーと、(1)〜(5)のテストの条件を表1〜5にまとめた。また、表1〜5に記載した各種パラメーターを下記に示し、その意味も併せて示した。
【0212】
a=(最端部のたるみ)−(最端部から30mm地点のたるみ)
b=(第一ロールとグラファイトフィルムの接触開始点)−(第一ロールの中心点)−(第一ロール/第二ロールの接点)のなす角度
c=(第二ロールと粘着層又は接着層を有するシートの接触開始点)−(第二ロールの中心点)−(第一ロール/第二ロールの接点)のなす角度
(1)巻き替えテストについて
[実施例1]
図1のように、巻き替えテストを実施した。より詳細には、紙製の径が3インチの紙管にまかれたGS1を、平行に配置された別の3インチの紙管に巻き替えた。紙管同士の距離は1000mmで実施した。グラファイトフィルムのMD方向に加える張力を30g/cm、巻き替え速度を5m/minで実施した。グラファイトフィルムの裂けの程度と、巻きずれの程度を評価した。
【0213】
[実施例2]
MD方向に加える張力を5g/cmと変更したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0214】
[実施例3]
MD方向に加える張力を100g/cmと変更したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0215】
[実施例4]
MD方向に加える張力を400g/cmと変更したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0216】
[実施例5]
巻き替え速度を20m/minと変更したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0217】
[実施例6]
GS2を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0218】
[実施例7]
GS3を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0219】
[実施例8]
GS4を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0220】
[実施例9]
MD方向に加える張力を5g/cmと変更したこと以外は実施例8と同様に巻き替えテストを実施した。
【0221】
[実施例10]
MD方向に加える張力を100g/cmと変更したこと以外は実施例8と同様に巻き替えテストを実施した。
【0222】
[実施例11]
MD方向に加える張力を400g/cmと変更したこと以外は実施例8と同様に巻き替えテストを実施した。
【0223】
[実施例12]
巻き替え速度を20m/minと変更したこと以外は実施例8と同様に巻き替えテストを実施した。
【0224】
[実施例13]
GS5を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0225】
[実施例14]
GS6を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0226】
[実施例15]
GS7を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0227】
[実施例16]
GS8を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0228】
[実施例17]
GS9を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0229】
[実施例18]
GS10を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0230】
[実施例19]
GS11を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0231】
[実施例20]
GS12を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0232】
[実施例21]
GS13を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0233】
[比較例1]
GS14を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0234】
[比較例2]
GS15を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0235】
[比較例3]
GS16を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0236】
[参考例1]
GS17を使用したこと以外は実施例1と同様に巻き替えテストを実施した。
【0237】
【表1】

【0238】
(2)スリットテストについて
[実施例22]
図2のようなスリットテストを実施した。より詳細には、紙製の径が3インチの紙管にまかれたGS1を、平行に配置された別の3インチの紙管に巻き替えながら、ロールカッターにてグラファイトフィルムの幅が半分になるようにスリットした。紙管同士の距離は1000mmで実施した。スリットする刃の位置は、紙管の中央に配置した。グラファイトフィルムのMD方向に加える張力を30g/cm、巻き替え速度を5m/minで実施した。グラファイトフィルムの裂けの程度と、巻きずれの程度、エッジのバリの程度を評価した。
【0239】
[実施例23]
シェザー刃を使用したこと以外は、実施例22と同様にしてスリットテストを実施した。
【0240】
[実施例24]
GS2を使用したこと以外は、実施例22と同様にしてスリットテストを実施した。
【0241】
[実施例25]
GS3を使用したこと以外は、実施例22と同様にしてスリットテストを実施した。
【0242】
[実施例26]
GS4を使用したこと以外は、実施例22と同様にしてスリットテストを実施した。
【0243】
[実施例27]
シェザー刃を使用したこと以外は、実施例26と同様にしてスリットテストを実施した。
【0244】
[実施例28]
GS5を使用したこと以外は、実施例22と同様にしてスリットテストを実施した。
【0245】
[実施例29]
GS6を使用したこと以外は、実施例22と同様にしてスリットテストを実施した。
【0246】
[実施例30]
GS7を使用したこと以外は、実施例22と同様にしてスリットテストを実施した。
【0247】
[実施例31]
GS8を使用したこと以外は、実施例22と同様にしてスリットテストを実施した。
【0248】
[実施例32]
GS11を使用したこと以外は、実施例22と同様にしてスリットテストを実施した。
【0249】
[実施例33]
GS12を使用したこと以外は、実施例22と同様にしてスリットテストを実施した。
【0250】
[実施例34]
GS13を使用したこと以外は、実施例22と同様にしてスリットテストを実施した。
【0251】
[比較例4]
GS14を使用したこと以外は、実施例22と同様にしてスリットテストを実施した。
【0252】
[比較例5]
GS15を使用したこと以外は、実施例22と同様にしてスリットテストを実施した。
【0253】
[比較例6]
GS16を使用したこと以外は、実施例22と同様にしてスリットテストを実施した。
【0254】
[参考例2]
GS17を使用したこと以外は、実施例22と同様にしてスリットテストを実施した。
【0255】
【表2】

【0256】
(3)圧縮テストについて
[実施例35]
図3のような単板連続プレスを使用し、圧縮テストを実施した。より詳細には、より詳細には、紙製の径が3インチの紙管にまかれたGS1を、平行に配置された別の3インチの紙管に巻き替えながら、その中間地点で、30mm幅×500mmの金型を用いて、グラファイトフィルムを連続プレスした。プレスの回数は60回/minとした。グラファイトフィルムのMD方向に加える張力は30g/cm、巻き替え速度は1m/minとした。グラファイトフィルムの裂けの程度と、巻きずれの程度、圧縮後のシワの程度を評価した。
【0257】
[実施例36]
図4のようなロール圧延を使用し、圧縮テストを実施した。より詳細には、より詳細には、紙製の径が3インチの紙管にまかれたGS1を、平行に配置された別の3インチの紙管に巻き替えながら、その中間地点で、外径300mmの金属製圧延ロールと外径280mmの樹脂製圧延ロールの間にグラファイトフィルムを通して圧縮テストを実施した。グラファイトフィルムのMD方向に加える張力は30g/cm、巻き替え速度は1m/minとした。グラファイトフィルムの裂けの程度と、巻きずれの程度、圧縮後のシワの程度を評価した。
【0258】
[実施例37]
グラファイトフィルムのMD方向に加える張力を100g/cmとしたこと以外は、実施例36と同様にして、圧縮テストを実施した。
【0259】
[実施例38]
GS2を使用したこと以外は、実施例35と同様にして圧縮テストを実施した。
【0260】
[実施例39]
GS3を使用したこと以外は、実施例35と同様にして圧縮テストを実施した。
【0261】
[実施例40]
GS4を使用したこと以外は、実施例35と同様にして圧縮テストを実施した。
【0262】
[実施例41]
GS4を使用したこと以外は、実施例36と同様にして圧縮テストを実施した。
【0263】
[実施例42]
GS4を使用したこと以外は、実施例37と同様にして圧縮テストを実施した。
【0264】
[実施例43]
GS5を使用したこと以外は、実施例35と同様にして圧縮テストを実施した。
【0265】
[実施例44]
GS6を使用したこと以外は、実施例35と同様にして圧縮テストを実施した。
【0266】
[実施例45]
GS7を使用したこと以外は、実施例35と同様にして圧縮テストを実施した。
【0267】
[実施例46]
GS8を使用したこと以外は、実施例35と同様にして圧縮テストを実施した。
【0268】
[実施例47]
GS11を使用したこと以外は、実施例35と同様にして圧縮テストを実施した。
【0269】
[実施例48]
GS12を使用したこと以外は、実施例35と同様にして圧縮テストを実施した。
【0270】
[実施例49]
GS13を使用したこと以外は、実施例35と同様にして圧縮テストを実施した。
【0271】
[比較例7]
GS14を使用したこと以外は、実施例35と同様にして圧縮テストを実施した。
【0272】
[比較例8]
GS15を使用したこと以外は、実施例35と同様にして圧縮テストを実施した。
【0273】
[比較例9]
GS16を使用したこと以外は、実施例35と同様にして圧縮テストを実施した。
[参考例3]
GS17を使用したこと以外は、実施例35と同様にして圧縮テストを実施した。
【0274】
【表3】

【0275】
(4)ラミネートテストについて
[実施例50]
図5のようなラミネートテストを実施した。より詳細には、紙製の径が3インチの紙管にまかれたGS1を、互いに平行に並んだ、外径50mm長さ635mmの第一ロールと第二ロールの間に、bが120度となるように、連続的に供給して、厚み10μm、幅430mmのPETテープと貼り合わせた。PETテープは寺岡製作所から入手できる633Kのセパレーター付きを使用し、セパレーターを80度の角度で剥がしながら第二ロールに、cが120度となるように供給した。このとき第一ロールはフラットロール(図13の中央と1/4の位置の径の差が20μm以下)を使用し、第二ロールはクラウンロール(図13の中央と1/4の位置の径の差が200μm)を使用した。グラファイトフィルムのMD方向に加える張力は30g/cm、巻き替え速度は1m/minとした。グラファイトフィルムの裂けの程度、貼り合わせシワの程度を評価した。
【0276】
[実施例51]
グラファイトフィルムのMD方向に加える張力は100g/cmと変更したこと以外は、実施例50と同様にしてラミネートテストを実施した。
【0277】
[実施例52]
GS2を使用したこと以外は、実施例50と同様にして、ラミネートテストを実施した。
【0278】
[実施例53]
GS3を使用したこと以外は、実施例50と同様にして、ラミネートテストを実施した。
【0279】
[実施例54]
GS4を使用したこと以外は、実施例50と同様にして、ラミネートテストを実施した。
【0280】
[実施例55]
グラファイトフィルムのMD方向に加える張力は5g/cmと変更したこと以外は、実施例54と同様にしてラミネートテストを実施した。
【0281】
[実施例56]
グラファイトフィルムのMD方向に加える張力は100g/cmと変更したこと以外は、実施例54と同様にしてラミネートテストを実施した。
【0282】
[実施例57]
bが0度と変更したこと以外は、実施例54と同様にしてラミネートテストを実施した。
【0283】
[実施例58]
bが5度と変更したこと以外は、実施例54と同様にしてラミネートテストを実施した。
【0284】
[実施例59]
bが45度と変更したこと以外は、実施例54と同様にしてラミネートテストを実施した。
【0285】
[実施例60]
cが0度と変更したこと以外は、実施例54と同様にしてラミネートテストを実施した。
【0286】
[実施例61]
cが45度と変更したこと以外は、実施例54と同様にしてラミネートテストを実施した。
【0287】
[実施例62]
第一ロールをクラウンロールに変更したこと以外は、実施例54と同様にしてラミネートテストを実施した。
【0288】
[実施例63]
第一ロールをクラウンロール、第二ロールをフラットロールに変更したこと以外は、実施例54と同様にしてラミネートテストを実施した。
【0289】
[実施例64]
PETテープをセパレーターが付いていないものを使用したこと以外は、実施例54と同様にしてラミネートテストを実施した。
【0290】
[実施例65]
PETテープの幅が470mmであること以外は、実施例54と同様にしてラミネートテストを実施した。
【0291】
[実施例66]
GS5を使用したこと以外は、実施例50と同様にして、ラミネートテストを実施した。
【0292】
[実施例67]
GS6を使用したこと以外は、実施例50と同様にして、ラミネートテストを実施した。
【0293】
[実施例68]
GS7を使用したこと以外は、実施例50と同様にして、ラミネートテストを実施した。
【0294】
[実施例69]
GS8を使用したこと以外は、実施例50と同様にして、ラミネートテストを実施した。
【0295】
[実施例70]
GS10を使用したこと、PETテープの幅が230mmであること以外は、実施例50と同様にして、ラミネートテストを実施した。
【0296】
[実施例71]
GS11を使用したこと、PETテープの幅が110mmであること以外は、実施例50と同様にして、ラミネートテストを実施した。
【0297】
[実施例72]
GS12を使用したこと以外は、実施例71と同様にして、ラミネートテストを実施した。
【0298】
[実施例73]
GS13を使用したこと以外は、実施例71と同様にして、ラミネートテストを実施した。
【0299】
[比較例10]
GS14を使用したこと以外は、実施例50と同様にして、ラミネートテストを実施した。
【0300】
[比較例11]
GS15を使用したこと以外は、実施例50と同様にして、ラミネートテストを実施した。
【0301】
[比較例12]
GS16を使用したこと以外は、実施例50と同様にして、ラミネートテストを実施した。
【0302】
[参考例4]
GS17を使用したこと以外は、実施例50と同様にして、ラミネートテストを実施した。
【0303】
【表4】

【0304】
(5)抜き加工テストについて
[実施例74]
図6のよう抜き加工テストを実施した。より詳細には、より詳細には、紙製の径が3インチの紙管にまかれたGS1を、平行に配置された別の3インチの紙管に巻き替えながら、その中間地点で、50mm角のピナクル型を8列並べた型を用いて、グラファイトフィルムを打ち抜いた。打ち抜きの回数は100回/minとした。グラファイトフィルムのMD方向に加える張力は30g/cm、巻き替え速度は6m/minとした。グラファイトフィルムの裂けの程度、打ち抜き品の寸法精度を評価した。
【0305】
[実施例75]
GS2を使用したこと以外は、実施例74と同様にして、抜き加工テストを実施した。
【0306】
[実施例76]
GS3を使用したこと以外は、実施例74と同様にして、抜き加工テストを実施した。
【0307】
[実施例77]
GS4を使用したこと以外は、実施例74と同様にして、抜き加工テストを実施した。
【0308】
[実施例78]
GS5を使用したこと以外は、実施例74と同様にして、抜き加工テストを実施した。
【0309】
[実施例79]
GS6を使用したこと以外は、実施例74と同様にして、抜き加工テストを実施した。
【0310】
[実施例80]
GS7を使用したこと以外は、実施例74と同様にして、抜き加工テストを実施した。
【0311】
[実施例81]
GS8を使用したこと以外は、実施例74と同様にして、抜き加工テストを実施した。
【0312】
[実施例82]
GS10を使用したこと、ピナクル形を4列並べたこと以外は、実施例74と同様にして、抜き加工テストを実施した。
【0313】
[実施例83]
GS11を使用したこと、ピナクル形を2列並べたこと以外は、実施例74と同様にして、抜き加工テストを実施した。
【0314】
[実施例84]
GS12を使用したこと以外は、実施例83と同様にして、抜き加工テストを実施した。
【0315】
[実施例85]
GS13を使用したこと以外は、実施例83と同様にして、抜き加工テストを実施した。
【0316】
[比較例13]
GS14を使用したこと以外は、実施例74と同様にして、抜き加工テストを実施した。
【0317】
[比較例14]
GS15を使用したこと以外は、実施例74と同様にして、抜き加工テストを実施した。
【0318】
[比較例15]
GS16を使用したこと以外は、実施例74と同様にして、抜き加工テストを実施した。
【0319】
[参考例5]
GS17を使用したこと以外は、実施例74と同様にして、抜き加工テストを実施した。
【0320】
【表5】

【0321】
[実施例86]
4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ピロメリット酸二無水物の1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18.5重量%)を得た。
【0322】
この溶液を冷却しながら、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸基に対して、1当量の無水酢酸、1当量のイソキノリン、およびDMFを含むイミド化触媒を添加し脱泡した。
【0323】
重合工程で作られたポリアミド酸のDMF溶液はミキサーで硬化剤(無水酢酸、イソキノリン)と一定の比率で混合して、Tダイスからエンドレスベルト(表面粗さRaが10μm)上、連続的に約600μmの厚さで流延塗布し、ベルトを回転させながら熱風乾燥した。この時、ベルト室の温度条件は、ベルト温度120℃×4分、冷却プーリーの温度70℃とした。この混合ワニスは加熱される事により分子内の脱水が起こり、イミド化反応が進行した。また、溶媒が蒸発する事によりベルト室出口での残溶媒量が約46%となった自己支持性を有するフィルム(ゲルフィルム)をベルトから引き剥がし、ピン枠に固定し、テンター室で300℃〜580℃で合計4分の熱処理をおこなった。その後、冷却室で室温まで降温し、ピンから引き剥がし巻き取った。厚み50μmのポリイミドフィルムAを製造した。得られたポリイミドフィルムAの反り量は5mmであり、第1面が製膜時のベルト面、第2面がエアー面であった。第1面の表面粗さRaは43μm、第2面が36μmであった。
厚さ50μm、幅250mm、長さ50mのポリイミドフィルムAを、第1面が内側になるように、図26のような、外径100mm、長さ300mmの円筒状の黒鉛製内芯に巻き付け、内径130mmの外筒を被せた。容器には264のように通気性を持たせるための穴が数箇所開いている。この容器を電気炉内に横向きにセットした。1400℃まで2℃/minの昇温条件で炭化処理を行った。次に、得られたロール状の炭化フィルムを外径100mmの内芯に、図35のようにセットして、この容器を、縦向きに黒鉛化炉内の架台に置いてセットした。2900℃まで5℃/minの昇温条件で黒鉛化処理を実施した。
炉から取り出したとき、黒鉛化フィルムの円筒形状が図36の362のように大きく崩れているものをC、少しだけ崩れているものをB、図36の361のように崩れていないものをAとした。炉から取り出したときの黒鉛化フィルムの円筒形状に係るこの評価項目を形状崩れという。
また、実施例8、26、40、54、77と同様の方法で、(1)巻き替えテスト、(2)スリットテスト、(3)圧縮テスト、(4)ラミネートテスト、(5)抜き加工テストをそれぞれ実施した。
[実施例87]
第2面が内側になるように巻き付けたこと以外は実施例86と同様に実施した。
【0324】
【表6】

【0325】
【表7】

【0326】
<結果>
(1)巻き替えテストついて
<巻き替えする方法でのグラファイトフィルムのたるみについて>
実施例1、7、8、15、比較例1、2を比較する。
【0327】
比較例1は、グラファイトフィルムのたるみが5mmより小さいため、フィルムの端部に応力が集中し、裂け不良が多発した。一方、比較例2は、裂け不良は発生しなかったものの、たるみが80mmより大きいために、巻き取り時に巻きずれ不良が発生した。
【0328】
実施例1、7、8、15は、グラファイトフィルムのたるみが5mm以上80mm以下の適切な範囲にあるため、裂け不良および巻きずれが発生しにくかった。特に、実施例8は、裂け不良および巻きずれが全く発生しなかった。
<巻き替えする方法でのグラファイトフィルムの(TD方向の最端部におけるたるみ)から(TD方向の最端部から30mm地点におけるたるみ)を引いたa値について>
実施例1、7、8、15、比較例1、2を比較する。
【0329】
比較例1は、グラファイトフィルムのa値が5mm未満であるため、端部に応力がかかりやすく、裂け不良が多発した。
【0330】
実施例1、7、8、15は、グラファイトフィルムのa値が5mm以上50mm以下と適度な範囲にあるため、裂け不良が発生しにくかった。特に、実施例8は、裂け不良が全く発生しなかった。
【0331】
また、実施例1と6、実施例8と14を、それぞれ比較する。
【0332】
実施例1、実施例8は、a値が5mm以上と大きいため、同じたるみを持つ実施例6、14と比較して裂け不良が抑制できた。
【0333】
<巻き替えする方法でのグラファイトフィルムの曲がりについて>
実施例19〜20を比較する。
【0334】
実施例19〜20の比較から、グラファイトフィルムの曲がりが10、5、<1mmと小さくなると、裂け不良および巻きずれが発生しにくかった。特に、実施例19は、裂け不良および巻きずれが全く発生しなかった。
【0335】
<巻き替えする方法での引裂き強度について>
実施例1、7、8、13、15、比較例1、3、参考例1を比較する。
【0336】
比較例1との対比から判るように、具体的には、実施例1、7、8、13、15のような低引き裂き強度のグラファイトフィルムであっても、たるみを5mm以上80mm以下、a値を5mm以上50mm以下とすることで、裂けや巻きずれのような不具合を生じずに巻き替えを行うことができる。
【0337】
なお、参考例1や比較例3は、引き裂き強度が低いという課題がないグラファイトフィルムであるが、本願発明のグラファイトフィルムと比較して、熱拡散率が低いものである。
【0338】
<巻き替えする方法での巻き替え張力について>
実施例1〜4、実施例8〜11を比較する。
【0339】
実施例1〜4、8〜11の比較から判るように、巻き替え張力を5、30、100、400g/cmと強めることで、巻きずれ不良が抑制できた。また、実施例1〜4と実施例8〜11との対比からわかるように、たるみ、a値が大きいほど、張力の増大によって増加する裂け不良も抑制できた。
【0340】
<巻き替えする方法での巻き替え速度について>
実施例1と5、実施例8と12をそれぞれ比較する。実施例1と5、実施例8と12の比較から判るように、巻き替え速度を5、20m/minと速めても、たるみ、a値が大きいほど、裂け不良や巻きずれ不良が発生しにくかった。
【0341】
<巻き替えする方法でのグラファイトフィルムの厚みについて>
実施例8、17を比較する。たるみの程度が同様であれば、厚みが25μmでも40μmでも、同様に巻き替えることができた。
【0342】
<巻き替えする方法でのグラファイトフィルムの幅について>
実施例1、18、19を比較する。450mm幅の広幅であってもたるみとa値の選定で良好な結果が得られているが、実施例1、18、19の比較からわかるように幅が250mm、120mmになると同じたるみ、a値であっても裂け不良が少なくなる。
(2)スリットテストについて
<スリットする工程でのグラファイトフィルムのたるみについて>
実施例22、25、26、30、比較例4、5を比較する。比較例4は、グラファイトフィルムのたるみが5mmより小さいため、フィルムの端部に応力が集中し、裂け不良が多発した。一方、比較例5は、裂け不良は発生しなかったものの、たるみが80mmより大きいために、巻きずれ不良が発生した。
【0343】
実施例22、25、26、30は、グラファイトフィルムのたるみが5mm以上80mm以下の適切な範囲にあるため、裂け不良および巻きずれが発生しにくかった。特に、実施例26は、裂け不良および巻きずれが全く発生しなかった。
【0344】
<スリットする工程でのグラファイトフィルムの(TD方向の最端部におけるたるみ)から(TD方向の最端部から30mm地点におけるたるみ)を引いたa値について>
実施例22、25、26、30、比較例4、5を比較する。
【0345】
比較例4は、グラファイトフィルムのa値が5mm未満であるため、端部に応力がかかりやすく、裂け不良が多発した。
【0346】
実施例22、25、26、30は、グラファイトフィルムのa値が5mm以上50mm以下と適度な範囲にあるため、裂け不良が発生しにくかった。特に、実施例26は、裂け不良が全く発生しなかった。
【0347】
また、実施例22と24、実施例26と29を、それぞれ比較する。
【0348】
実施例22、実施例26は、a値が5mm以上と大きいため、同じたるみを持つ実施例24、29と比較して裂け不良が抑制できた。
【0349】
<スリットする工程でのグラファイトフィルムの曲がりについて>
実施例32〜34を比較する。
【0350】
実施例32〜34の比較から、グラファイトフィルムの曲がりが10、5、<1mmと小さくなると、裂け不良および巻きずれが発生しにくかった。特に、実施例32は、裂け不良および巻きずれが全く発生しなかった。
【0351】
<スリットする工程での引裂き強度について>
実施例22、25、26、28、30、比較例4、6、参考例2を比較する。比較例4との対比から判るように、具体的には、実施例22、25、26、28、30のような低引き裂き強度のグラファイトフィルムであっても、たるみを5mm以上80mm以下、a値を5mm以上50mm以下とすることで、裂けや巻きずれのような不具合を生じずにスリットする工程を実施できた。
なお、参考例2や比較例6は、引き裂き強度が低いという課題がないグラファイトフィルムであるが、本願発明のグラファイトフィルムと比較して、熱拡散率が低いものである。
【0352】
<スリットする工程でのスリット刃の種類について>
実施例22、23および実施例26、27を比較する。実施例22、26では、同じ条件でシェザー刃を使用した場合よりも、裂け不良が減少し、また、エッジのバリの発生も少なかった。これは、ロール刃はスリットする場合、回転するため、グラファイトフィルムに負担がかかりにくかったためである。
【0353】
(3)圧縮テストについて
<圧縮する工程でのグラファイトフィルムのたるみについて>
実施例35、39、40、45、比較例7、8を比較する。
【0354】
比較例7は、グラファイトフィルムのたるみが5mmより小さいため、フィルムの端部に応力が集中し、裂け不良が多発した。一方、比較例8は、裂け不良は発生しなかったものの、たるみが80mmより大きいために巻きずれ不良が発生した。
【0355】
実施例35、39、40、45は、グラファイトフィルムのたるみが5mm以上80mm以下の適切な範囲にあるため、裂け不良および巻きずれが発生しにくかった。特に、実施例40は、裂け不良および巻きずれが全く発生しなかった。
【0356】
<圧縮する工程でのグラファイトフィルムの(TD方向の最端部におけるたるみ)から(TD方向の最端部から30mm地点におけるたるみ)を引いたa値について>
実施例35、39、40、45、比較例7、8を比較する。
【0357】
比較例7は、グラファイトフィルムのa値が5mm未満であるため、端部に応力がかかりやすく、裂け不良が多発した。
【0358】
実施例35、39、40、45は、グラファイトフィルムのa値が5mm以上50mm以下と適度な範囲にあるため、裂け不良が発生しにくかった。特に、実施例40は、裂け不良が全く発生しなかった。
【0359】
また、実施例35と38、実施例40と44を、それぞれ比較する。
【0360】
実施例35、実施例40は、a値が5mm以上と大きいため、同じたるみを持つ実施例38、44と比較して裂け不良が抑制できた。
【0361】
<圧縮する工程でのグラファイトフィルムの曲がりについて>
実施例47〜49を比較する。
【0362】
実施例47〜49の比較から、グラファイトフィルムの曲がりが10、5、<1mmと小さくなると、裂け不良および巻きずれが発生しにくかった。特に、実施例47は、裂け不良および巻きずれが全く発生しなかった。
【0363】
<圧縮する工程での引裂き強度について>
実施例35、39、40、43、45、比較例7、9、参考例3を比較する。
【0364】
比較例7との対比から判るように、具体的には、実施例35、39、40、43、45のような低引き裂き強度のグラファイトフィルムであっても、たるみを5mm以上80mm以下、a値を5mm以上50mm以下とすることで、裂けや巻きずれのような不具合を生じずに圧縮工程を実施できる。
【0365】
なお、参考例3や比較例9は、引き裂き強度が低いという課題がないグラファイトフィルムであるが、本願発明のグラファイトフィルムと比較して、熱拡散率が低いものである。
【0366】
<圧縮する工程での圧縮方法について>
実施例35、36および実施例40、41を比較する。実施例36では、ロール圧延を使用したため、グラファイトフィルムに負担がかかりにくく、同じ条件で単板連続プレスした実施例35と比較して、裂け不良が発生しにくかった。一方、たるみ、a値の大きい実施例40では、単板連続プレスでも裂け不良が抑制できた。
【0367】
実施例36、37および実施例41、42を比較する。実施例37、42では、張力が大きいため、その他の条件が同じである実施例36、41と比較して巻き込みシワが改善された。たるみ、a値が適切な範囲であるため、高張力でも裂け不良が発生しなかった。
(4)ラミネートテストについて
<ラミネートする工程でのグラファイトフィルムのたるみについて>
実施例50、53、54、68、比較例10、11を比較する。
【0368】
比較例10は、グラファイトフィルムのたるみが5mmより小さいため、フィルムの端部に応力が集中し、裂け不良が多発した。一方、比較例11は、裂け不良は発生しなかったものの、たるみが80mmより大きいために貼り合わせ時に、シワが発生した。
【0369】
実施例50、53、54、68は、グラファイトフィルムのたるみが5mm以上80mm以下の適切な範囲にあるため、裂け不良および貼り合わせシワが発生しにくかった。特に、実施例54は、裂け不良および貼り合わせシワが全く発生しなかった。
【0370】
<ラミネートする工程でのグラファイトフィルムの(TD方向の最端部におけるたるみ)から(TD方向の最端部から30mm地点におけるたるみ)を引いたa値について>
実施例50、53、54、68、比較例10、11を比較する。
【0371】
比較例10は、グラファイトフィルムのa値が5mm未満であるため、端部に応力がかかりやすく、裂け不良が多発した。
【0372】
実施例50、53、54、68は、グラファイトフィルムのa値が5mm以上50mm以下と適度な範囲にあるため、裂け不良が発生しにくかった。特に、実施例54は、裂け不良が全く発生しなかった。
【0373】
また、実施例50と52、実施例54と67を、それぞれ比較する。
実施例50、実施例54は、a値が5mm以上と大きいため、同じたるみを持つ実施例52、67と比較して裂け不良が抑制できた。
【0374】
<ラミネートする工程でのグラファイトフィルムの曲がりについて>
実施例71〜73を比較する。
【0375】
実施例71〜73の比較から、グラファイトフィルムの曲がりが10、5、<1mmと小さくなると、裂け不良および貼り合わせシワが発生しにくかった。特に、実施例71は、裂け不良および貼り合わせシワが全く発生しなかった。
<ラミネートする工程での引裂き強度について>
実施例50、53、54、66、68、比較例10、12、参考例4を比較する。比較例10との対比から判るように、具体的には、実施例50、53、54、66、68のような低引き裂き強度のグラファイトフィルムであっても、たるみを5mm以上80mm以下、a値を5mm以上50mm以下とすることで、裂けや巻きずれのような不具合を生じずにラミネート工程を実施できる。
【0376】
なお、参考例4や比較例12は、引き裂き強度が低いという課題がないグラファイトフィルムであるが、本願発明のグラファイトフィルムと比較して、熱拡散率が低いものである。
【0377】
<グラファイトフィルムが第一ロールと接触開始する点と第一ロールの中点と第一ロール/第二ロールの接点のなす角度bについて>
実施例54、57〜59を比較する。実施例59のように、bが0度と、グラファイトフィルムを第一ロールに接触させずに、そのまま供給した場合には、貼り合わせシワが多く発生した。実施例58、59、54のように、bを大きくすると、貼り合わせシワを抑制できた。特にbを45度以上にすると、貼り合わせシワが少なくなった。これは、ロールに接触させながら、供給することで、グラファイトフィルム凹凸を緩和した状態で、貼り合わせポイントにフィルムを供給できたためである。
<(第二ロールと粘着層又は接着層を有するシートの接触開始点)−(第二ロールの中心点)−(第一ロール/第二ロールの接点)のなす角度cについて>
実施例54、60、61を比較する。実施例60のように、cが0度と、粘着層又は接着層を有するシートを第二ロールに接触させずに、そのまま供給した場合には、貼り合わせシワが多く発生した。実施例60、54のように、cを大きくすると、貼り合わせシワを抑制できた。これは、ロールに接触させながら、供給することで、粘着層又は接着層を有するシートを引き伸ばした状態で、貼り合わせポイントにフィルムを供給できるためである。
【0378】
<セパレーターの有無について>
実施例54、64を比較する。実施例54のようにセパレーターが付いた粘着層又は接着層を有するシートからセパレーターを剥がしながら貼り合わせをおこなうと、実施例64のセパレーターレスのシートを用いた場合と比較して、貼り合わせシワが少ないことがわかった。
【0379】
<粘着層又は接着層を有するシートの幅について>
実施例54、65を比較する。実施例54では、粘着層又は接着層を有するシートの幅が、貼り合わせるグラファイトフィルムの幅より狭いため、安定して貼り合わせができた。
【0380】
<ラミネートする工程での張力について>
実施例50、51、実施例54〜56を比較する。実施例50、51では、たるみが小さいために、張力を強めると、裂け不良が発生しやすくなった。一方、実施例54〜56は、たるみがある程度大きいため、張力を強めても、裂け不良はほとんど発生しなかった。
【0381】
また、実施例50、51、実施例54〜56において張力を大きくすると、シワ不良発生しにくくなる傾向があった。
【0382】
<ロールの形状について>
実施例54、62、63を比較する。実施例54、63のように一方のロールがフラットであると、実施例62のクラウン−クラウンと比較して、貼り合わせシワが抑制できた。特に実施例54のグラファイトフィルムと接する第一ロールがフラットロールの場合、シワが非常に少なく貼り合わせができた。
(5)抜き加工テストについて
<抜き加工する工程でのグラファイトフィルムのたるみについて>
実施例74、76、77、80、比較例13、14を比較する。
【0383】
比較例13は、グラファイトフィルムのたるみが5mmより小さいため、フィルムの端部に応力が集中し、裂け不良が多発した。一方、比較例14は、裂け不良は発生しなかったものの、たるみが80mmより大きいために打ち抜きの精度が低下した。
【0384】
実施例74、76、77、80は、グラファイトフィルムのたるみが5mm以上80mm以下の適切な範囲にあるため、裂け不良およびグラファイト抜き加工品の寸法精度不良が発生しにくかった。特に、実施例77は、裂け不良およびグラファイト抜き加工品の寸法精度不良が全く発生しなかった。
<抜き加工する工程でのグラファイトフィルムの(TD方向の最端部におけるたるみ)から(TD方向の最端部から30mm地点におけるたるみ)を引いたa値について>
実施例74、76、77、80、比較例13、14を比較する。
【0385】
比較例13は、グラファイトフィルムのa値が5mm未満であるため、端部に応力がかかりやすく、裂け不良が多発した。
【0386】
実施例74、76、77、80は、グラファイトフィルムのa値が5mm以上50mm以下と適度な範囲にあるため、裂け不良が発生しにくかった。特に、実施例77は、裂け不良が全く発生しなかった。
【0387】
また、実施例74と75、実施例77と79を、それぞれ比較する。
実施例74、実施例77は、a値が5mm以上と大きいため、同じたるみを持つ実施例75、79と比較して裂け不良が抑制できた。
【0388】
<抜き加工する工程でのグラファイトフィルムの曲がりについて>
実施例83〜85を比較する。
【0389】
実施例83〜85の比較から、グラファイトフィルムの曲がりが10、5、<1mmと小さくなると、裂け不良およびグラファイト抜き加工品の寸法精度不良が発生しにくかった。特に、実施例83は、裂け不良およびグラファイト抜き加工品の寸法精度不良が全く発生しなかった。
【0390】
<抜き加工する工程での引裂き強度について>
実施例74、76、77、78、80、比較例13、15、参考例5を比較する。比較例13との対比から判るように、具体的には、実施例74、76、77、78、80のような低引き裂き強度のグラファイトフィルムであっても、たるみを5mm以上80mm以下、a値を5mm以上50mm以下とすることで、裂けやグラファイト抜き加工品の寸法精度の低下のような不具合を生じずに抜き加工を実施できた。
なお、参考例5や比較例15は、引き裂き強度が低いという課題がないグラファイトフィルムであるが、本願発明のグラファイトフィルムと比較して、熱拡散率が低いものである。
【0391】
GS18〜20については、たるみ、a値が大きすぎて、巻き替えテスト、スリットテスト、圧縮テスト、ラミネートテスト、抜き加工テストにおいて、裂け不良、巻きずれ不良、折れシワ不良、貼り合わせシワ不良、寸法精度不良などが非常に多く発生した。
<高分子フィルムの第1面であった面が巻物の内側に巻かれるように選別してから作製されたグラファイトフィルム>
高分子フィルムの第1面が内側になるように巻いた状態で熱処理して作製されたグラファイトフィルムを用いた実施例86と、第2面が内側になるように巻いた状態で熱処理して作製されたグラファイトフィルムを用いた実施例87を比較する。
表1に示すように、高分子フィルムの第1面が内側になるように巻いた状態で熱処理した、実施例86では、熱処理後のグラファイトフィルムの円筒形状は崩れなかった。また、各種テストにおいてもほとんど裂け不良は発生しなかった。一方、高分子フィルムの第2面が内側になるように巻いた状態で熱処理した実施例87では、図36の362のように熱処理後の円筒形状は大きく崩れ、引き伸ばしただけでフィルムの端部から裂けが発生した。また、各種テストにおいても裂け不良が多発し、ハンドリング性が非常に悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0392】
本発明は、極めて低い平均引裂荷重を示すグラファイトフィルムを加工工程での不具合を生じにくくして、加工するためのものである。
【0393】
本発明のグラファイトフィルムの巻き替え方法によれば、グラファイトフィルムが裂けることなく巻き替えることができる。
また、本発明のグラファイトフィルムの巻き替え方法によれば、グラファイトフィルムが巻きずれを起こすことなく巻き替えることができる。
また、本発明のグラファイトフィルムの製造方法によれば、グラファイトフィルムが裂けることなく、グラファイトフィルムを製造することができる。
また、本発明のグラファイトフィルムの製造方法によれば、グラファイトフィルムが巻きずれを起こすことなく、グラファイトフィルムを製造することができる。
また、本発明のグラファイトフィルムの製造方法によれば、グラファイトフィルムがエッジの不具合を生じることなく、グラファイトフィルムを製造することができる。
また、本発明のグラファイトフィルム複合フィルムの製造方法によれば、グラファイトフィルムと粘着材層などの積層対象物と貼り合わせる際にシワの発生を抑制できる。
また、本発明のグラファイトフィルム複合フィルムの製造方法によれば、グラファイトフィルムと粘着材層などの積層対象物と貼り合わせる際に巻きずれの発生を抑制することができる。
また、本発明のグラファイトフィルム複合フィルムの製造方法によれば、グラファイトフィルムと粘着材層などの積層対象物と貼り合わせる際に裂けの発生を抑制できる。
また、本発明のグラファイトフィルム抜き加工品の製造方法によれば、裂けの発生を抑制することができる。
また、本発明のグラファイトフィルム抜き加工品の製造方法によれば、寸法精度不良の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0394】
11.グラファイトフィルム
12.巻き出しロール
13.巻き取りロール
14.ロール間の距離
21.スリット用のロール刃(上刃)
22.スリット用のロール刃(下刃)
31.単板連続プレス金型(上)
32.単板連続プレス金型(下)
41.圧延ロール(上)
42.圧延ロール(下)
51.粘着層又は接着層を有するシート
52.粘着層又は接着層を有するシートの巻き出しロール
53.第一ロール
54.第二ロール
55.セパレーター
56.セパレーター巻取りロール
57.セパレーターを剥がしはじめるきっかけとなるバー
58.セパレーター付きPETテープ
59.グラファイトフィルムの幅
510.粘着層又は接着層を有するシートの幅
61.抜き加工用の金型
62.ピナクル刃
71.ロール1
72.ロール2
73.グラファイトフィルム
74.懸垂線
75.たるみ
81.最端部のたるみ
82.最端部から30mm地点のたるみ
91.テーブル
92.グラファイトフィルム
93.定規の位置
101.第一ロールへ接触させずに供給
102.第一ロールへ接触させながら供給
103.第一ロール
104.コシがなくフラットな状態で供給できないフィルムや、たるみが大きいフィルム111.グラファイトフィルム
112.第一ロール
113.(第一ロールとグラファイトフィルムの接触開始点)−(第一ロールの中心点)−(第一ロール/第二ロールの接点)のなす角度
114.第一ロールとグラファイトフィルムの接触開始点
115.第一ロールの中心点
116.第一ロール/第二ロールの接点
131.クラウンロール
132.ロール中央の径
133.ロールの1/4部分の径
141.PETテープ(保護テープ)
142.グラファイトフィルム
143.両面テープ(粘着テープ)
144.セパレーター
171.グラファイト抜き加工品
172.ステッカーが載っているセパレーター
181.グラファイトフィルムの裂け不良
191.グラファイトフィルムの巻きずれ不良
201.グラファイトフィルムのエッジのバリ不良
211.グラファイトフィルムの折れシワ
221.グラファイト複合フィルム
222.拡大図
223.貼り合わせシワ
231.たるみ10mmのグラファイトフィルム
232.たるみ40mmのグラファイトフィルム
233.たるみ80mmのグラファイトフィルム
241.短い
242.長い
261.円筒状の黒鉛製円筒芯
262.外筒
263.円筒芯に巻かれたポリイミドフィルム
264.通気性を持たせるための開口部
271.炭化フィルム
272.支え
281.巻きの内芯側
282.巻きの外側
291.打ち抜き刃
292.土台
293.送りローラ
294.単離されたグラファイトフィルム
301.上面への反り
302.下面への反り
311.中央がたるむ場合
312.端部がたるむ場合
313.中央のたるみ
314.端部のたるみ
321.巻きの外側への反り
322.巻きの内側への反り
3310.ベルト室
3312.Tダイ
3314.エンドレスベルト
3316.ゲルフィルム
3318.テンター室
3320.加熱炉
3322.除冷炉
3324.ポリイミドフィルム
3326.冷却プーリー
341.裂け不良
351.炭化フィルム
352.架台
361.円筒形状が崩れていないグラファイトフィルム
362.円筒形状が崩れたグラファイトフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールに巻きつけたグラファイトフィルムを巻き出して、他のロールで巻取るまでの間に、該グラファイトフィルムをラミネートする工程を含み、
グラファイトフィルムが第一ロールと接触開始する点と第一ロールの中点と第一ロール/第二ロールの接点のなす角度bが5度以上であることを特徴とするグラファイト複合フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記グラファイト複合フィルムがグラファイトフィルムと粘着層又は接着層を有するシートを貼り合わせて製造され、粘着層又は接着層を有するシートの厚みが60μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【請求項3】
粘着層又は接着層を有するシートからセパレーターを剥がしながら、前記第一ロールと第二ロールの間に連続供給するグラファイトシート複合品の製造方法であって、シートからセパレーターを引き剥がす角度が90度以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【請求項4】
(粘着層又は接着層を有するシートのTD方向の長さ)が(グラファイトフィルムのTD方向の長さ)よりも5mm以上長いことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第一ロールおよび第二ロールが、クラウンロールとフラットロールの組み合わせであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
【請求項6】
(第二ロールと粘着層又は接着層を有するシートの接触開始点)−(第二ロールの中心点)−(第一ロール/第二ロールの接点)のなす角度cが5度以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2013−6763(P2013−6763A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−160023(P2012−160023)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【分割の表示】特願2012−500496(P2012−500496)の分割
【原出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ピナクル
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】