説明

グラファイト複合フィルム

【課題】 グラファイトが層間剥離を起こすことなく電子機器の筐体などから引き剥がすことが可能なグラファイト複合フィルムを提供することを課題としている。
【解決手段】 グラファイトフィルムの少なくとも片面に、少なくとも粘着層を有するグラファイト複合フィルムであって、(1)前記粘着層の粘着力を1N/20mm以上11N/20mm以下とし、グラファイトフィルムの表面粗さRaが0.2μm以上3.0μm以下とする。前記グラファイトフィルムにおけるフィルム面方向の熱伝導度が200W/mK以上であり、フィルム面に垂直方向の熱伝導度が20W/mK以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、精密機器などの放熱フィルムおよびヒートスプレッダ材料として使用されるグラファイト複合フィルムに関し、特にリワーク性の優れたグラファイト複合フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の半導体素子は、高性能化が進む一方でサイズは小型化が進み、小スペース、小サイズで熱を拡散できる材料が必要とされている。そのような材料として重要な位置づけを占めているのが、軽量で熱伝導性に優れるグラファイトフィルムである。この様なグラファイトフィルムはフィルムの面方向に層状のグラファイト構造が高度に発達したものであり、この様な構造の異方性に基づく熱伝導度や電気伝導度の異方性がある。熱拡散用途では面方向の高い熱伝導性を利用するのであるが、グラファイト層間は剥がれ易いと言う特徴がある。
一般に入手できる高熱伝導性のグラファイトフィルムの製造法として、膨張黒鉛を圧延してシート状にするエキスパンド法、または高分子熱分解法による製造方法がある。ポリイミドフィルム等の高分子フィルムを熱処理及び圧延処理する高分子熱分解法では、高品質で折れ曲げに強く柔軟性に富んだグラファイトフィルムを得ることができる。また、このようにして作成されたグラファイトフィルムは、結晶性や電気伝導性、熱伝導性も非常に優れている(特許文献1)。そのため、電子機器の放熱部材としての用途が高まっている。
【0003】
しかし、グラファイトフィルムを放熱部材として使用する場合、グラファイトフィルムが電気伝導性を有するため、電子部品間の電気的ショートを防ぐ必要がある。そこで、グラファイト表面をエポキシ樹脂、アクリル樹脂、PET樹脂等で保護し、絶縁処理を行う方法が用いられている。
【0004】
また、グラファイトフィルムの優れた熱伝導性を発揮させるためには、グラファイトフィルムをエポキシ樹脂やアクリル樹脂のような接着剤、粘着剤を用いて筐体と接合させることも知られている。例えば、グラファイト層の表面に粘着剤を点状に塗布したグラファイト複合フィルム(特許文献2)では、グラファイトフィルムと発熱体との接触部の抵抗値を小さくし、グラファイトフィルムの高い熱伝導性を発現させることができる。しかし、このように点状に粘着剤が形成されたものでは、発熱体と十分に固定することができず、剥がれやすいという問題があった。また、接着層を全面に設け、筐体等と接着させる特許もある(特許文献3、4)。
【0005】
一方、電子機器の組み立て工程等において、粘着層を介してグラファイトフィルムの接合を行った際、貼り間違え等が発生した場合、一旦グラファイトフィルムを剥がし再度貼りつける作業を行なう必要がある。これをリワーク性と定義する。しかしグラファイトを引き剥がす際、グラファイトはグラフェン層が積み重なった構造のため薄片上に剥がれやすく、グラファイトが層間剥離を起こしてしまい、従来のグラファイト複合フィルム(特許文献3、4)の場合リワークすることができないという問題が起こっていた。
【特許文献1】特開昭61−275116号公報
【特許文献2】特開2002−319653公報
【特許文献3】特開平11−317480号公報
【特許文献4】特開2007−261087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決し、グラファイトが層間剥離を起こすことなく電子機器の筐体などから引き剥がすことが可能な、リワーク性に優れたグラファイト複合フィルムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の第一は、グラファイトフィルムの少なくとも片面に、少なくとも粘着層を有するグラファイト複合フィルムにおいて、JIS Z 0237に基づいて測定された前記粘着層の粘着力を1N/20mm以上11N/20mm以下である様にする事である。
(2)本発明の第二は、前記グラファイトフィルムにおけるフィルム面方向の熱伝導度が200W/mK以上であり、フィルム面に垂直方向の熱伝導度が20W/mK以下であるグラファイト複合フィルムである。熱伝導用途にはグラファイトフィルムの面方向の熱伝導が200W/mK以上である事が好ましく、この様なグラファイトフィルムではフィルム面と平行にグラファイト層構造が発達したものである。
(3)本発明の第三は、グラファイトフィルムの少なくとも片面に、少なくとも粘着層を有するグラファイト複合フィルムにおいて、JIS Z 0237に基づいて測定された前記粘着層の粘着力が1N/20mm以上11N/20mm以下であることを特徴とするグラファイト複合フィルムであり、前記グラファイトフィルムの表面粗さRaが0.2μm以上3.0μm以下である(1)〜(2)に記載のグラファイト複合フィルムである。
(4)本発明の第四は、前記グラファイトフィルムを圧縮し、該圧縮の過程でグラファイト表面に表面粗さRaが0.2μm以上3.0μm以下の凹凸を設ける事を特徴とする、(3)に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法である。本発明の目的で使用されるグラファイトフィルムは柔軟なものあり、その表面に凹凸を形成するには、グラファイトを圧縮処理し、その過程でグラファイト表面に凹凸を設けることが好ましい。
(5)本発明の第五は、前記グラファイトフィルムの凹凸形成の方法が、圧縮過程で合紙の凹凸をグラファイトに転写するものである、(4)に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法である。合紙を挟んで圧縮処理を行う事でグラファイトの表面に容易に望ましい凹凸を設ける事ができる。
(6)本発明の第六は、前記粘着層が、アクリル系粘着材及び/又はシリコーン系粘着材を含む材料であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムである。本発明の目的には粘着力が重要であり、本発明の微粘着性を実現するためにはアクリル粘着材、及び/又はシリコーン系粘着材である事が好ましい。
(7)本発明の第七は、前記粘着層の厚みが30μm以下であることを特徴とする(1)(2)(3)、(6)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムである。本発明の範囲の微粘着力を実現するためには粘着層の厚さを薄くする事がその一つの方法である。前記アクリル系粘着材及び/又はシリコーン系粘着材を用い、粘着層の厚さを30μm以下にする事によって本発明の範囲の微粘着力を実現できる。
(8)本発明の第八は、前記粘着層を少なくとも接着層/高分子層/接着層からなる三層構造以上としたグラファイト複合フィルムとする事である。接着層/高分子層/接着層の三層構造とする事でリワーク作業を著しく容易にする事が出来る。
【0008】
(9)本発明の第九は、前記高分子層が、ポリイミド系樹脂、ポリエチレンテ レフタレート(PET)系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)系樹 脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、ポリエステル系樹脂の群か らなる少なくとも1種類を含むことを特徴とする(1)〜(8)に記載のグラ ファイト複合フィルムである。
(10)本発明の第十は、本発明のグラファイト複合フィルムに用いられるグラファイトフィルムとして膨張黒鉛を用いて作製されたものを用いる事である。膨張黒鉛を用いて作製されたグラファイトフィルムは、本発明の目的に使用されるグラファイトフィルムとして好ましい。
(11)本発明の第十一は、前記グラファイトフィルムが、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾール、およびポリチアゾールからなる群から選択される少なくとも一種類以上の高分子の熱処理によって得られたものである事を特徴とする、(1)〜(9)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムである。これらの高分子は熱処理によって優れた熱伝導性を有するグラファイトになり、本発明の目的のグラファイトとして好ましい。
【発明の効果】
【0009】
グラファイトが層間剥離を起こすことなく、電子機器の筐体などから引き剥がすことが可能なグラファイト複合フィルムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<グラファイトフィルム>
本発明のグラファイトフィルムは、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛粉末をシート化して得られるグラファイトフィルム、高分子フィルムを熱処理して得られるグラファイトフィルムが挙げられる。グラファイトフィルムは、面方向に高い熱伝導性を有し、面方向の熱伝導性と厚み方向の熱伝導性に大きな異方性があり、電子機器・精密機器などのようにスポットで熱が高くなる電子部材において、有効に熱を拡散することができる。
【0011】
本発明で用いられるグラファイトフィルムの第一の製法はグラファイト粉末をシート状に押し固めたグラファイトフィルムである。グラファイト粉末がフィルム状に成型されるためには粉末がフレーク状、あるいはリン片状になっている必要がある。この様なグラファイト粉末の製造のための最も一般的な方法がエキスパンド(膨張黒鉛)法と呼ばれる方法である。これはグラファイトを硫酸などの酸に浸漬し、グラファイト層間化合物を作製し、しかる後にこれを熱処理、発泡させてグラファイト層間を剥離するものである。剥離後、グラファイト粉末を洗浄して酸を除去し薄膜のグラファイト粉末を得る。この様な方法で得られたグラファイト粉末をさらに圧延ロール成型してフィルム状のグラファイトを得る。この様な手法で得られた、膨張黒鉛を用いて作製されたグラファイトフィルムは柔軟性にとみ、フィルム面方向に高い熱伝導性を有するので本発明の目的に好ましく用いられる。
【0012】
本発明の目的に好ましく用いられるグラファイトフィルムの第二の製造方法は、フィルム状グラファイトがポリイミド樹脂などの高分子フィルムの熱処理によって作製されたものである。
【0013】
第二の方法で用いられるグラファイトフィルムの原料フィルムは、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾール、ポリチアゾールのうちから選ばれた少なくとも一種類以上の高分子フィルムである。
【0014】
特に、本願発明のグラファイトフィルムの原料フィルムとして好ましいのは、ポリイミドフィルムである。ポリイミドフィルムは、他の有機材料を原料とする原料フィルムよりもフィルムの炭化、黒鉛化が進行しやすいため、フィルムの熱拡散率、熱伝導率、電気伝導度が低温で均一に高くなりやすく、かつ熱拡散率、熱伝導率、電気伝導度そのものも高くなりやすい。また、厚みが薄い場合に加え、厚い場合においても熱伝導性の高いグラファイトとなる。また、出来上がるグラファイトの結晶性が優れ、耐熱性、折り曲げ性に優れ、保護フィルムと貼り合わせた場合に、表面から黒鉛が落ちにくいグラファイトフィルムが得られやすい。
【0015】
高分子からグラファイトフィルムを得るには、まず、出発物質である高分子フィルムを減圧下もしくは不活性ガス中で予備加熱処理して炭素化する。この炭素化は通常1000℃程度の温度で行い、例えば10℃/分の速度で昇温した場合には1000℃の温度領域で30分程度の温度保持を行うことが望ましい。グラファイト化工程は、減圧下もしくは不活性ガス中でおこなわれるが、不活性ガスとしてはアルゴン、ヘリウムが適当である。本願発明のグラファイトフィルムの製造方法においてその熱処理温度としては、最低でも2000℃以上が必要で、最終的には2400℃以上、より好ましくは、2600℃以上さらに好ましくは2800℃以上であり、このような熱処理温度にすることにより、熱伝導性に優れたグラファイトを得ることができる。熱処理温度が高いほど良質のグラファイトへの転化が可能であるが、経済性の観点からはできるだけ低温で良質のグラファイトに転化できることが好ましい。2500℃以上の超高温を得るには、通常はグラファイトヒーターに直接電流を流して、そのジュ−ル熱を利用した加熱が行なわれる。
<グラファイトフィルムの熱伝導性>
本発明に用いられるグラファイトフィルムは、フィルムの面方向の熱伝導度が200W/mK以上であり、フィルム面に対して垂直方向の熱伝導度が20W/mK以下であることが好ましい。フィルムの面方向の熱伝導率は、200W/m・K以上であると、粘着層や保護フィルム層を形成した複合品としても、グラファイト複合フィルムの熱伝導性は高くなる。また、発熱部品からの熱を速やかに移動させるためには、グラファイトフィルムの厚み方向の熱伝導率が十分小さい必要がある。例えば、面方向と厚み方向の熱伝導性の異方性が無くその熱伝導性も劣る場合、および面方向と厚み方向の熱伝導性の異方性があっても面方向に比べて厚み方向の熱伝導性が優れる場合、発熱部分からの熱を十分に拡散することができないために、発熱部分のスポットで熱が高くなった状態であるヒートスポットを生じてしまう。このヒートスポットが生じると、例えばノートパソコンや携帯電話などで生じた場合、低温火傷の原因となる。しかしながら、グラファイトフィルムは、面方向と厚み方向で熱伝導性の異方性を有し、また面方向が厚み方向よりも熱伝導性に優れるという特徴を持つことから、発熱部分からの熱を優先的に面方向に拡散することが可能となり、ヒートスポットを抑制できる。したがって、発熱部分からの速やかな熱拡散を達成するためには、(1)面方向の高い熱伝導性、(2)厚み方向の十分に小さい熱伝導性、が必要であることがわかる。 そのため、本発明の厚み方向の熱伝導率は、20W/mK以下であることが好ましい。このようにグラファイトは、異方性を有しており、グラファイトの面方向に熱伝導度が大きく、厚み方向に対しては小さいという特徴を有している。そのため、熱を面方向に拡散する能力が高く、特に、面方向の熱伝導度を高くするほど厚み方向の熱伝導度は低くなり、熱を拡散する能力もより高くなる。しかし一方でグラファイトは、グラフェン層が積み重なった構造のため薄片上に剥がれやすく、グラファイトが層間剥離を起こしやすいという問題もあった。
本発明のグラファイトフィルムの面方向の熱拡散率は、7.5×10-42/s以上であると良い。7.5×10-42/s以上になると、熱伝導性が高いために、発熱機器から熱を逃がしやすくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることが可能となる。また、粘着層、保護フィルム層を形成したグラファイト複合フィルムにした場合も、十分高い熱伝導性を発揮することができる。熱拡散率は、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な(商品名)「LaserPit」)を用いて、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定できる。
<粘着層>
本発明は、グラファイトフィルムの少なくとも片面に、少なくとも粘着層を有するグラファイト複合フィルムであって、JIS Z 0237に基づいて測定された前記粘着層の粘着力は、1N/20mm以上11N/20mm以下であるが、より好ましくは1N/20mm以上10N/20mm以下であり、さらに好ましくは1N/20mm以上8N/20mmである。一方、粘着層の粘着力が11N/20mmより強い場合は、引き剥がす際にグラファイトが層間剥離を起こしやすく、リワーク性が悪くなる。また、1N/20mmより弱い場合は、接着力が弱すぎるために筐体などにうまく接着しなかったり、使用中に剥がれ落ちる。さらに接着性が悪いために発熱源の熱がグラファイトにうまく伝わらず、放熱効果が失われてしまう。
【0016】
この様な微粘着を実現する粘着層の材料としては、アクリル系粘着材、シリコーン系粘着材等が挙げられ、これら材料は、耐熱性に優れ、発熱部品や放熱部品と複合化して使用した場合にも、十分な長期信頼性が得られる。また、これらの材料は、繰り返し使用や長期信頼性に優れるため、再利用性、再剥離性にも優れる。
粘着層の厚みは、30μm以下、好ましくは10μm以下である。一般的に粘着層の厚みが厚くなると粘着力は強くなり、厚みが30μmより厚くなると、粘着力が強くなるために、筐体などからうまく引き剥がすことができず、グラファイトが層間剥離を起こしやすくなる。
<粘着層の基材>
粘着層は基材を含む事が好ましい。ここで基材を含むとは、前記粘着層を少なくとも接着層/高分子層/接着層からなる三層構造以上とする事である。この様な構造を有するグラファイト複合フィルムとする事でリワーク作業を著しく容易にする事が出来る。基材を含むことにより、グラファイト複合フィルムのコシが増え、一度取り付けたグラファイトフィルムを再剥離する際に、グラファイトフィルムが層間剥離する事を抑制することができる。特に、本発明のように非常に、結晶性、熱拡散性が優れたグラファイトフィルムにおいては、フィルムが層状に剥離しやすい場合があるが、基材がある事により、剥離性を改善することが可能となる。
本願発明の基材の材質は高分子フィルムであるとよい。一例として、ポリイミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、ポリエステル系樹脂の群からなる少なくとも1種を含む高分子フィルムなどが挙げられる。
なかでもポリイミド、ポリエチレンテレフタレートは、耐熱性、強度、寸法安定性に優れ、複合した際に、熱伝導性を落とすことなく、剥離性、傷つき防止性にも優れるグラファイト複合フィルムとなる。
<グラファイトの表面粗さ>
本発明の目的はリワーク性に優れたグラファイト複合フィルムを提供する事であり、その目的の達成には(1)微粘着の接着層を用いる事、(2)接着層を薄くする事、(3)粘着層に高分子基材を加える事、の3方法に加えて、(4)グラファイト表面の粗さを制御することも有益である。グラファイトフィルムの少なくとも片面に、少なくとも粘着層を有するグラファイト複合フィルムにおいては、JIS Z 0237に基づいて測定された前記粘着層の粘着力が1N/20mm以上11N/20mm以下であるときに、グラファイトの表面粗さRaは、0.2μm〜3.0μmであることが好ましい。さらに好ましくは、粘着層の粘着力が8N/20mm以上である場合、好ましいグラファイトの表面粗さはRaが1.2μm以上3.0μm以下である。粘着層の粘着力が8N/20mm以上の場合、筐体等との接着力が強すぎるために、表面粗さRaが1.2μmより小さいと、接着させた際の密着性が良すぎるために引き剥がす際、粘着層‐筐体間は剥がれず、グラファイトが層間剥離を起こし易い。しかし、グラファイトの表面粗さを1.2μm以上にすることで筐体‐粘着層間の密着性が多少低くなり、引き剥がしが可能となる。一方、グラファイトの表面粗さRaが3.0μm以上では、表面が粗すぎるために筐体などに接着した場合密着性が悪く、発熱源の熱がグラファイトにうまく伝わらず、放熱効果が失われてしまう。
グラファイト表面に凹凸を設けるための方法としては、グラファイトフィルムを圧縮し、該圧縮の過程でグラファイト表面に表面粗さRaが0.2μm以上3.0μm以下の凹凸を設ける事ができる。本発明の目的で使用されるグラファイトフィルムは柔軟なものであり、その表面に凹凸を形成するには、グラファイトを圧縮処理し、その過程でグラファイト表面に凹凸を設けることが好ましい。さらに、前記グラファイトフィルムの凹凸形成の方法が、圧縮過程で合紙の凹凸をグラファイトに転写するものである。合紙を挟んで圧縮処理を行う事でグラファイトの表面に容易に望ましい凹凸を設ける事ができる。
【実施例】
【0017】
以下に実施例により発明の実施態様、効果を示すが、本願発明はこれに限られるものではない。
<グラファイトフィルム>
実施例として6種類のグラファイトフィルムA、B、C、D、E、Fを用いた。
[グラファイトフィルムA]
4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ビロメリット酸二無水物の1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18.5wt%)を得た。この溶液を冷却しながら、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸基に対して、1当量の無水酢酸、1当量のイソキノリン、およびDMFを含むイミド化触媒を添加し脱泡した。次にこの混合溶液が、乾燥後に所定の厚さになるようにアルミ箔上に塗布した。アルミ箔上の混合溶液層を、熱風オーブン、遠赤外線ヒーターを用いて乾燥した。以上のようにして、厚さ50μmのポリイミドフィルムA(弾性率3.1GPa、吸水率2.5%、複屈折0.10、線膨張係数3.0×10-5/℃)を製造した。
【0018】
厚さ50μmのポリイミドフィルムを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで昇温して炭化処理(炭素化処理)をおこなった。この炭素化フィルムを炭素化フィルムAとした。炭素化処理により得られた炭素化フィルムAを黒鉛板に挟み、黒鉛化炉を用いて、2900℃以上に昇温して黒鉛化処理をおこなった。熱処理後のグラファイトを、単板プレスで、表面粗さRaが0.3μmの合紙で挟み、厚み方向に圧縮して、グラファイトフィルムA(厚み25μm、密度1.86g/cm3、熱拡散率9.1cm2/s、熱伝導率1200W/m・K、表面粗さRa0.3μm)を得た。
[グラファイトフィルムB]
表面粗さRaが1.2μmの合紙を用いて圧縮したこと以外はグラファイトフィルムAと同様にしてグラファイトフィルムB(厚み25μm、密度1.86g/cm3、熱拡散率9.1cm2/s、熱伝導率1200W/m・K、表面粗さRa1.2μm)を得た。
[グラファイトフィルムC]
表面粗さRaが3.0μmの合紙を用いて圧縮したこと以外はグラファイトフィルムAと同様にしてグラファイトフィルムC(厚み25μm、密度1.86g/cm3、熱拡散率9.1cm2/s、熱伝導率1200W/m・K、表面粗さRa3.0μm)を得た。
[グラファイトフィルムD]
出来上がり厚みが厚さ75μmとなるようにポリイミドフィルムDを得た。得られたポリイミドフィルムを同様の方法で炭素化、グラファイト化してグラファイトフィルムDを作製し、表面粗さRaが0.3μmの合紙を用いて圧縮したグラファイトフィルムD(厚み40μm、密度1.86g/cm3、熱拡散率9.5cm2/s、熱伝導率1200W/m・K、表面粗さRa0.3μm)を得た。
[グラファイトフィルムE]
表面粗さRaが3.0μmの合紙を用いて圧縮したこと以外はグラファイトフィルムDと同様にしてグラファイトフィルムE(厚み40μm、密度1.86g/cm3、熱拡散率9.5cm2/s、熱伝導率1200W/m・K、表面粗さRa3.0μm)を得た。
【0019】
[グラファイトフィルムF]
酸化剤(過酸化水素、過塩素酸等)の存在下、天然鱗状黒鉛の層間に硫酸、硝酸等を挿入し、形成された層間化合物を900〜1200℃程度の5高温で急激に加熱することで分解ガス化し、このときのガス圧によって黒鉛の層間を拡げて黒鉛を膨張させた。以上のようにして得られた膨張黒鉛を圧縮予備成形し、その後ロールで圧延する事によりグラファイトフィルムF(厚み75μm、密度1.67g/cm3、熱拡散率3.0cm2/s、熱伝導率400W/m・K、表面粗さRa1.0μm)を得た。

<グラファイトフィルムの物性測定>
グラファイトフィルムの厚みの測定方法としては、50mm×50mmのフィルムを厚みゲージ(ハイデンハイン(株)社製、HEIDENHAIN−CERTO)を用い、室温25℃の恒温室にて、任意の10点を測定し、平均して測定値とした。
【0020】
グラファイトフィルムの密度は、グラファイトフィルムの重量(g)をグラファイトフィルムの縦、横、厚みの積で算出した体積(cm3)の割り算により算出した。なお、グラファイトフィルムの厚みは、任意の10点で測定した平均値を使用した。密度が高いほど、グラファイト化が顕著であることを意味している。
グラファイトフィルムの熱拡散率は、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な「LaserPit」)を用いて、グラファイトフィルムを4×40mmのサンプル形状に切り取り、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定した。グラファイト化の進行状況を、フィルム面方向の熱拡散率を測定することによって判定した。熱拡散率が高いほどグラファイト化が顕著であることを意味している。グラファイトフィルムの熱伝導率は、下式のように熱拡散率・密度・比熱より算出した。
λ=αdC
λ:熱伝導率(W/mK)
α:熱拡散率(m2/s)
d:密度(kg/m3
C:比熱(J/kg・K)
実施例、比較例で使用するグラファイトフィルムの熱伝導率、厚みのデータ表1にまとめた。グラファイトフィルムの表面粗さRaは、JIS B 0601に準拠して得られる値である。具体的には、表面粗さ 測定器SE3500((株)小坂研究所製)を使用し、表面粗さRaを測定した。グラファイトフィルムの表面粗さRaはグラファイトフィルムを長さ100mm×巾3mmのサイズに切り取り、カットオフ0.8mmおよび送り速度2mm/sとしてチャートを描かせ、基準長さLの部分を切り取り、その切り取り部分の中心線をX軸、縦方向をY軸として、粗さ 曲線をY=f(X)で表したとき、次の式で得られた値をμmで表したものである。
【0021】
【数1】

この測定は、基準長(L)を80mmとして、3個行ないその平均値を算出したものを記載している。以下、本明細書で「表面粗さ Ra」というときはこの測定値のことをいう。

<粘着層>
アクリル系粘着材を用いその成分と厚さを制御する事で粘着力の異なる5種類の両面テープを準備した。両面テープの構成は、粘着層/PET(1μm)/粘着層、である。各サンプルを、20mm幅でカットし、ステンレス板に2kgのローラーを1往復させて貼り付け、23℃で30分放置後、引っ張り速度300mm/分、剥離角度180°の条件で引っ張り試験機にて粘着力を測定した。(JIS Z 0237)各両面テープの接着層の厚さと粘着力は以下の通りである。
[両面テープA] 粘着力2N/20mm、PET厚み1μm
[両面テープB] 粘着力5N/20mm、PET厚み1μm
[両面テープC] 粘着力8.3N/20mm、PET厚み2μm、総厚み10μm
[両面テープD] 粘着力10.4N/20mm、PET厚み12μm、総厚み30μm
[両面テープE] 粘着力20N/20mm、PET厚み25μm、総厚み100μm

(実施例1)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムB(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープAとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(実施例2)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムA(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープAとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(実施例3)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムB(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープBとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(実施例4)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムA(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープBとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(実施例5)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムB(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープCとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(実施例6)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムA(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープCとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(実施例7)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムC(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープDとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(実施例8)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムB(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープDとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(実施例9)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムA(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープDとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(実施例10)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムD(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープAとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(実施例11)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムD(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープBとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(実施例12)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムD(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープCとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(実施例13)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムE(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープDとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(実施例14)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムD(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープDとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(実施例15)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムF(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープBとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(比較例1)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムA(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープEとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(比較例2)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムD(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープEとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
(比較例3)
PET(ポリエチレンテレフタレート)テープ(寺岡製作所(株)631S:PET12μm/アクリル系18μm)の粘着面にグラファイトフィルムC(20mm幅)をのせた。つぎに、この複合フィルムと両面テープEとをラミネーターで貼り合せ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、幅20.5mm×長さ20.5mm(グラファイトフィルムの周囲0.5mmを絶縁層と粘着層で被服する)の形状のサンプルを切り取った。結果を表1にまとめた。
【0022】
【表1】

<リワーク性の評価>
各サンプルを、ステンレス板に貼り付けた後、引き剥がし、その際にグラファイトフィルムが層間剥離を起こしたかどうか目視にて確認した。試験は5回行い、グラファイトが層間剥離を起こすことなく、4回以上リワークできた場合を「◎」、三回の場合を「○」、二回の場合を「△」、一回以下の場合を「×」とした。
実施例1〜6、実施例10〜12は優れたリワーク性を示した。一方、比較例1〜3ではリワーク時にグラファイトが層間剥離を起こしてしまい、リワークすることが出来なかった。このことから筐体などからグラファイト複合フィルムを引き剥がす際、粘着層の粘着力が強すぎると、筐体‐粘着層間が剥がれる強さよりも、グラファイトの層間が剥がれる強さのほうが弱くなってしまうために、筐体‐粘着層間が剥がれる前に、グラファイトが層間剥離を起こしてしまうといえる。
また、実施例9及び、実施例14はリワーク性が若干劣る結果となった。一方、これらと同じ両面テープを用い、グラファイトフィルムを表面粗さRaが1.2以上と表面の粗いものを用いた実施例7、8、13は、リワーク性に向上がみられた。これは、表面を粗くすることで、粘着層の筐体などへの接着面積が多少少なくなり、これにより接着性も低くなることで、引き剥がしが改善されたと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトフィルムの少なくとも片面に、少なくとも粘着層を有するグラファイト複合フィルムにおいて、JIS Z 0237に基づいて測定された前記粘着層の粘着力が1N/20mm以上11N/20mm以下であることを特徴とするグラファイト複合フィルム。
【請求項2】
前記グラファイトフィルムにおけるフィルム面方向の熱伝導度が200W/mK以上であり、フィルム面に垂直方向の熱伝導度が20W/mK以下である請求項1に記載のグラファイト複合フィルム。
【請求項3】
グラファイトフィルムの少なくとも片面に、少なくとも粘着層を有するグラファイト複合フィルムにおいて、JIS Z 0237に基づいて測定された前記粘着層の粘着力が1N/20mm以上11N/20mm以下であることを特徴とするグラファイト複合フィルムであり、前記グラファイトフィルムの表面粗さRaが0.2μm以上3.0μm以下である請求項1〜2に記載のグラファイト複合フィルム。
【請求項4】
前記グラファイトフィルムを圧縮し、該圧縮の過程でグラファイト表面に表面粗さRaが0.2μm以上3.0μm以下の凹凸を設ける事を特徴とする、請求項3に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法
【請求項5】
前記グラファイトフィルムの凹凸形成の方法が、圧縮過程で合紙の凹凸をグラファイトに転写するものである、請求項4に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法
【請求項6】
前記粘着層が、アクリル系粘着材及び/又はシリコーン系粘着材を含む材料で あることを特徴とする請求項1、2、3、のいずれかに記載のグラファイト複 合フィルム。
【請求項7】
前記粘着層の厚みが、30μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のグラファイト複合フィルム。
【請求項8】
前記粘着層が、少なくとも接着層/高分子層/接着層からなる三層構造以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のグラファイト複合フィルム。
【請求項9】
前記高分子層が、ポリイミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、ポリエステル系樹脂の群からなる少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1〜8に記載のグラファイト複合フィルム。
【請求項10】
前記グラファイトフィルムが、膨張黒鉛を用いて作製されたものである事を特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のグラファイト複合フィルム。
【請求項11】
前記グラファイトフィルムが、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾール、およびポリチアゾールからなる群から選択される少なくとも一種類以上の高分子の熱処理によって得られたものである事を特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のグラファイト複合フィルム。

【公開番号】特開2010−1191(P2010−1191A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162183(P2008−162183)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】