説明

グラフェン分散液およびグラフェン−イオン性液体高分子複合物

【課題】本発明は、グラフェン分散液の製造方法およびこれにより製造されるグラフェン-イオン性液体高分子複合物、並びにその製造方法に関する。
【解決手段】本発明は、黒鉛をイオン性液体に入れて分散させることにより製造されたグラフェン分散液を用いてグラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン分散液およびグラフェン-イオン性液体高分子複合物、並びにその製造方法に関し、特に、黒鉛をイオン性液体に入れて分散させることにより製造されるグラフェン分散液およびグラフェンとイオン性液体高分子とが結合されたグラフェン-イオン性液体高分子複合物、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェン(graphene)又はカーボンナノプレート(以下、グラフェンとする。)は、層状構造を有する黒鉛の各層を言い、電荷の移動度が約20,000〜50,000cm/Vsと高く、比表面積が2,630m/gと非常に高いので、近年、これを超高容量のスーパーキャパシタ又は電気二重層キャパシタのような電気化学装置に応用しようとする研究が進められている。
【0003】
グラフェンは、化学気相蒸着法(chemical vapor deposition、CVD)により基板の表面に直接グラフェンを形成する場合もあるが(参考文献:非特許文献1および非特許文献2)、量産のためには主に黒鉛から各層を分離して製造する。
【0004】
黒鉛の各層を分離するための既存の技術としては、黒鉛を強酸溶液で処理して各層の物質が酸化された形態に分離して水などの溶媒に分散させた後、これを再度還元させてグラフェン分散液を得る方法と、膨張可能な黒鉛(expandable graphite)を約1,000℃程度の高い温度で熱処理してグラフェンを得る方法などが提案されている(参考文献:非特許文献3および非特許文献4)。
【0005】
これらの方法は、黒鉛の各層を分離させるために黒鉛の層間結合力を弱化させるか、若しくは気体を膨張させて各層を分離する技術である。先ず、高い温度で加熱する方法は、黒鉛を高い温度で加熱して層間長さを膨張させた後、ここに気体を注入して層間結合力を低下させて分離する方法であり、強酸溶液を用いる方法は、強酸で黒鉛を処理することで各層の表面を酸素を有する物質に改質させ、これにより、各層の電荷状態が変更されて各層が容易に分離される。一応、各層を分離させた後、すなわち表面に酸化されたグラフェンを製造した後、表面の酸化状態を還元させると中性のグラフェンを得ることができる。
【0006】
この方法は、グラフェン分散液を直接得ることができるものの、溶媒系が変わる場合には、すなわち水系溶媒から有機系溶媒に、又は有機系溶媒から水系溶媒に変換する場合には、別途の溶媒系変更のための複雑な処理過程を経なければならない。
【0007】
これらの方法は、結局、約1,000℃程度の高い温度で加熱したり、若しくは一旦酸化させた後再度還元させる複雑な工程を経なければならないという欠点、このような酸化還元過程を経ることで、グラフェンの表面にかなり多い欠陥が発生し、又、一旦作製されたグラフェンを溶媒に再度分散させたり、溶媒系変換のためには複雑な別途の過程を経なければならないなどの欠点があり、量産には適していない方法であり、したがって、応用性の面で非常に制限的である。
【0008】
なお、グラフェンを用いるためには黒鉛から各層を大量に分離する必要があるが、今まで知られている溶液状態でグラフェン又はグラフェン分散液を製造する方法としては、黒鉛を先に酸化させた後再度還元させる酸化還元法、溶液状態で界面活性剤などの化合物を用いて加熱撹拌してグラフェンを製造する方法、溶液状態で黒鉛に電圧を加えてグラフェンを製造する方法など様々な方法が考案されている。
【0009】
酸化還元法は、黒鉛を予め酸化させた後これを再度還元させるといった複雑な過程を経るものの、ナノ物質の層数が1個〜数個の層からなっており、面積が比較的広いグラフェンに最も近い構造を有する物質を製造できることで知られている。また、一般黒鉛を原材料として使用するので最も経済的な方法でもある。
【0010】
酸化還元法によるグラフェンを製造する一般的な方法は、いわゆるHummer法(Hummer method)として知られている方法であって、一般黒鉛をKnO、HSO、HNO等の混合溶液を用いて処理すると、黒鉛内各層の表面が酸化されて炭素の一部が酸素と結合してカルボニル基を有するようになる。これは、水などの水系溶媒への分散性が非常に良く、水系溶媒に分散されている酸化グラフェン分散液を作製することができる。その後、この分散液にヒドラジンなどの還元剤化合物を添加して常温又は加熱しながら撹拌すると還元反応が起こってグラフェンが作製される。
【0011】
しかしながら、前記のような酸化還元法の場合、酸化グラフェンを水などの沸点が比較的低い溶媒に分散し、ヒドラジンハイドレートのような還元剤を用いるため、反応温度を大きく高めることができず、多量の還元剤を用いるか、若しくは還元時間を長くしなければならないという欠点がある。なお、還元反応後グラフェンの表面にヒドラジンのような粒子が残っているので、これを洗浄して除去しなければならないという面倒もある。この際、ヒドラジン系還元剤の含有量を増加させると還元工程をある程度短縮させることはできるものの、結局、溶媒が水のような水系溶媒であるため、沸点が低く還元時間を大きく高めることができず、還元時間の短縮に限界がある。この還元時間は、グラフェンの量産にかなり制約となるものであり、黒鉛からグラフェンを短い時間に大量に生産するためには還元時間が顕著に短くならなければならない。
【0012】
なお、前記の方法は、酸化グラフェンを還元する過程でグラフェンが分散液中に再度凝集する現象が発生するので、電気化学反応のためのグラフェンの使用可能な比表面積が減る問題があり得、グラフェン分散液に再度バインダー物質を混合する必要があるので、工程が煩わしいという欠点がある。
【0013】
よって、前記の問題点を解決しイオン性液体を含む電解質との相溶性が高い新しいグラフェン-イオン性液体高分子複合物の製造方法の開発が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Science 3012、1191、2006
【非特許文献2】Nature Materials 7,406、2008
【非特許文献3】Carbon、45、1558、2007
【非特許文献4】Nature Nanotechnology、3,101、2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、黒鉛をイオン性液体に入れて分散させることによりグラフェン分散液を製造し、グラフェン分散液の製造時、イオン性液体が単量体である場合、これを重合させるか、高分子のイオン性液体を用いてグラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造できるグラフェン分散液の製造方法およびこれにより製造されるグラフェン-イオン性液体高分子複合物、並びにその製造方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような目的を達成するために、本発明は、黒鉛をイオン性液体に入れて分散されたグラフェン分散液を製造することができる。
【0017】
なお、本発明は、黒鉛から作られたグラフェンに、イオン性液体高分子が結合されたグラフェン-イオン性液体高分子複合物を提供する。
【0018】
前記黒鉛は、例えば、一般黒鉛、酸化と還元処理された黒鉛、高温で熱処理された黒鉛、又はこれらを併用して処理された黒鉛である。
【0019】
前記分散は撹拌によりなされ、そして前記イオン性液体は陽イオンおよび陰イオンの組み合わせで構成された化合物であり、単量体(monomer)形態や高分子(polymer)形態であり、これらの成分のうちいずれか1つを用いるか、若しくは2以上を混合して用いることができる。
【0020】
前記イオン性液体は、陽イオンとして下記の一般式(1)で表わすいずれかを用いるか、
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、R〜R10は、互いに独立して次の群から選ばれるいずれか1つである。i)水素、ii)ハロゲン、iii)C〜C25の炭化水素で構成されたアルキル、アルケニル、アルキニル、ベンジル、フェニルであって、O、N、SiおよびSを異種原子として含むことができ、又、選択的にCl、Br、F、I、OH、NH、SHの群を含むことができる。)
【0023】
陰イオンとして、[CHCO]-、[HSO]-、[CHOSO]-、[COSO]-、[AlCl]-、[CO]-、[HCO]-、[NO]-、[NO]-、[SO]-、[PO]-、[HPO]-、[HPO]-、[HSO]-、[CuCl]-、Cl-、Br-、I-、[BF]-、[PF]-、[SbF]-、[CFSO]-、[HCFCFSO]-、[CFHFCCFSO]-、[HCClFCFSO]-、[(CFSO)N]-、[(CFCFSO)N]-、[(CFSO)C]-、[CFCO]-、[CFOCFHCFSO]-、[CFCFOCFHCFSO]-、[CFCFHOCFCFSO]-のうちいずれかを用いるか、あるいは前記陽イオンと陰イオンとを含んだものを用いることができる。
【0024】
前記イオン性液体高分子の分子量は例えば1,000〜2,000,000g/molである。
【0025】
前記分散液に重合開始剤を添加してイオン性液体を高分子量化することができる。
【0026】
前記分散液におけるイオン性液体の陰イオン成分をイオン交換して溶媒系を変換させることができる。
【0027】
前記イオン性液体における陰イオン成分のイオン交換時、イオン交換反応を容易にするために、ゲル状態のグラフェン分散液生成物にプロピレンカーボネート、1-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、アセトン、テトラヒドロフラン溶媒をさらに添加して粘度が低い状態に変えることが可能である。
【0028】
前記イオン性液体は、前記酸化グラフェンが1重量部である場合、1重量部以上を添加することができる。
【0029】
前記グラフェン分散液の製造方法において、添加されるイオン性液体が単量体である場合、これを重合させるか、前記イオン性液体を高分子として用いるグラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造することができる。
【0030】
前記グラフェン5〜95重量%および前記イオン性液体高分子5〜95重量%を使用して構成することができる。
【0031】
前記イオン性液体を重合するための重合開始剤として2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ABCN)、過酸化ベンゾイル(BP)のうちいずれか1つ以上を用いることができる。
【0032】
前記重合開始剤は前記イオン性液体100重量部に対し0.1〜3重量部を用いることができる。
【0033】
前記複合物は、バインダー、炭素材料、金属粒子および電気伝導性高分子を1つ以上さらに含むことができる。
【0034】
前記バインダーは、ポリペルフルオロスルホン酸、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド共重合物のうちいずれか1つであり、前記炭素材料は、活性炭素、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンのうちいずれか1つ以上であり、前記電気伝導性高分子は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンおよびこれらの誘導体のうちいずれか1つ以上である。
【0035】
グラフェン分散液の製造方法において、添加されるイオン性液体が単量体である場合、これを重合させるか、前記イオン性液体を高分子として用いてグラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によると、黒鉛をイオン性液体に入れて分散させることにより、グラフェン分散液を製造し、グラフェン分散液の製造時に用いられるイオン性液体が単量体である場合、これを重合させるか、高分子であるイオン性液体を用いてグラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造できる効果がある。
【0037】
なお、常温で黒鉛をイオン性液体に入れることでグラフェン分散液を容易に得、このグラフェン分散液からグラフェン-イオン性液体高分子複合物を得ることができ、イオン性液体の陰イオン成分をイオン交換法によって置換すると、溶媒系を容易に変換できる効果がある。
【0038】
また、酸化されたグラフェンを還元させる時間が短縮され、還元後粒子状の異物が発生しない。したがって本発明の還元技術を利用すると、純粋なグラフェン分散液及びグラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造できるのみでなく、還元時間、すなわち製造時間が短縮され、グラフェン分散液およびグラフェン-イオン性液体高分子複合物を大量に製造することが可能となる。
【0039】
なお、酸化グラフェンにイオン性液体高分子を用いるか、若しくは、イオン性液体単量体を用いて還元工程を経た後、適宜時点でイオン性液体高分子を製造するための重合開始剤を添加して加熱すると、イオン性液体が高分子化されると共に、別途の処理過程が必要なく、容易にグラフェン-高分子複合物を製造できるという利点がある。
【0040】
なお、本発明に係るグラフェン分散液およびグラフェン-イオン性液体高分子複合物は、イオン性液体によるグラフェンの表面状態の変化、すなわち、親水性および疏水性への変化が容易になる。
【0041】
本発明に係るグラフェン-イオン性液体高分子複合物は、グラフェンが必要な分野において活用可能であり、特に、バッテリ、燃料電池、キャパシタ又はこれらの複合装置、スーパーキャパシタ、ウルトラキャパシタ、又は、電気二重層キャパシタなどの電気化学装置において電極材料として活用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1におけるイオン性液体を用いて製造したグラフェンの透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図2】実施例3におけるイオン性液体を用いて製造したグラフェン-イオン性液体高分子複合物の透過電子顕微鏡(TEM)にて観察した写真である。
【図3】実施例3におけるイオン性液体を用いて製造したグラフェン-イオン性液体高分子複合物の透過電子顕微鏡(TEM)にて観察した写真である。
【図4】実施例3におけるイオン性液体を用いて製造したグラフェン-イオン性液体高分子複合物の原子顕微鏡(AFM)にて観察した結果の写真およびグラフである。
【図5】実施例13におけるグラフェン-イオン性液体高分子複合物の電子走査顕微鏡にて観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明に係るグラフェン分散液は、非常に簡単な工程により製造することが可能であり、黒鉛をイオン性液体に入れて分散させる、単純に撹拌する方法を用いることができる。この際、イオン性液体はそのまま使用するか、又は、イオン性液体に重合開始剤を入れ加熱してイオン性液体高分子を作製することで、分散安定性に優れたグラフェン分散液を作製することができる。その後、グラフェン分散液から溶媒を除去して乾燥させるとグラフェン粒子を得ることができ、溶媒系変換のためにはイオン性液体の陰イオン成分を所望の陰イオンにイオン交換する方法を用いる。この際、得られたグラフェン粒子は、表面にイオン性液体が結合されている形態のグラフェン-イオン性液体複合物である。
【0044】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0045】
本発明に係るグラフェン分散液の製造方法は、非常に簡単な工程であって、黒鉛をイオン性液体に入れて分散させる、単純に撹拌する方法を用いることができる。
【0046】
そして、イオン性液体はそのまま使用するか、又は、イオン性液体に重合開始剤を入れて加熱してイオン性液体高分子を作製することで、分散安定性に優れたグラフェン分散液を作製することができる。この際、溶媒系変換のためにはイオン性液体の陰イオン成分を所望の陰イオンにイオン交換する方法を用いる。この際、得られたグラフェン粒子は、表面にイオン性液体が結合されている形態のグラフェン-イオン性液体複合物である。
【0047】
先ず、本発明に使用可能な黒鉛は黒鉛自体を使用するか、若しくは層状分離を助けるために予め処理された黒鉛などをいずれも使用することが可能である。層状分離を助けるために予め処理する代表的な方法には、黒鉛を硝酸、硫酸水溶液に浸して処理したり、又は高い温度で(例えば、1,000℃の温度)加熱して黒鉛を膨張させたり、又はこれらの方法を併行するなど様々な方法が可能である。
【0048】
本発明に使用可能なイオン性液体は、陽イオンおよび陰イオンの組み合わせで構成された化合物であり、単量体(monomer)形態や高分子(polymer)形態であり、これらの成分のうちいずれか1つを用いるか、若しくは2以上を混合して用いることができる。本発明のイオン性液体を構成する代表的な陽イオンの例としては一般式(1)で表わすものである。
【0049】
【化1】

【0050】
式中、R〜R10は、互いに独立して次の群から選ばれるいずれか1つである。i)水素、ii)ハロゲン、iii)C〜C25の炭化水素で構成されたアルキル、アルケニル、アルキニル、ベンジル、フェニルであって、O、N、SiおよびSを異種原子として含むことができ、又、選択的にCl、Br、F、I、OH、NH、SHの群を含むことができる。
【0051】
前記イオン性液体高分子を構成する陰イオンは、無機又は無機元素からなる化合物であり、特に限定されず、これらの具体的な例としては、[CHCO]-、[HSO]-、[CHOSO]-、[COSO]-、[AlCl]-、[CO]-、[HCO]-、[NO]-、[NO]-、[SO]-、[PO]-、[HPO]-、[HPO]-、[HSO]-、[CuCl]-、Cl-、Br-、I-、[BF]-、[PF]-、[SbF]-、[CFSO]-、[HCFCFSO]-、[CFHFCCFSO]-、[HCClFCFSO]-、[(CFSO)N]-、[(CFCFSO)N]-、[(CFSO)C]-、[CFCO]-、[CFOCFHCFSO]-、[CFCFOCFHCFSO]-、[CFCFHOCFCFSO]-がある。
【0052】
この際、還元反応の促進剤および酸化グラフェンの分散剤として用いるイオン性液体の含有量は、酸化グラフェンの重さに対してイオン性液体の重さが1倍以上にならなければならない。イオン性液体の含有量がこれより低いと還元は可能であるものの、還元されたグラフェンの再分散に相当時間がかかったり、又は粒子状態に沈殿して再分散がされないという問題点が発生して良くない。しかしながら、イオン性液体の最大含有量は特に制限されない。これはイオン性液体の含有量がグラフェン重さの1倍以上、すなわち、酸化グラフェンを1にした時イオン性液体を1重量部以上含有すると、還元も良好に行われ還元されたグラフェンの再分散も良好に行われるためである。
【0053】
上述した方法により得たグラフェン分散液を遠心分離して大きい粒子状の黒鉛を除去して用いることができる。
【0054】
以下、膨張性黒鉛(expandable graphite)を利用する溶媒の変換方法などについて説明する。
【0055】
先ず、膨張性黒鉛を高温で熱処理して用いることが望ましいが、約600〜1,200℃程度の温度で10〜300秒間熱処理することが望ましい。このように熱処理された膨張性黒鉛をイオン性液体に分散させることが望ましい。この際、膨張性黒鉛をイオン性液体に簡単に撹拌して分散させることができる。
【0056】
前記グラフェン分散液に重合開始剤を添加してイオン性液体を高分子量化すると、分散安定性に非常に優れたグラフェン分散液を得ることができる。イオン性液体を重合してイオン性液体高分子を作製するための開始剤としては、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1'-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ABCN)、過酸化ベンゾイル(BP)等を用いると良い。重合開始剤の含有量は、イオン性液体含有量に対して0.1〜3重量部を用いると良く、重合反応は50〜80℃の温度で5〜72時間程度反応させると良い。
【0057】
前記反応の重合開始剤の含有量、温度および反応時間の場合、下限値未満であると反応速度が非常に遅くなり、又は反応が起こり難く、高分子量化への進行が難くて良くなく、上限値を超えると不必要に多い量又は長時間反応させたり、又は、温度が非常に高くなるためイオン性液体高分子を劣化させるか、又は溶媒の蒸発が多くて良くない。
【0058】
前記反応条件は、最終的に重合されたイオン性液体高分子の分子量が1,000〜2,000,000g/molの範囲にあるように調節することが望ましい。分子量が1,000g/mol未満であるとグラフェン分散液の長期安定性が良くなく、2,000,000g/molを超えると分子量が非常に高く、溶解度が低下して良くない。
【0059】
上述した方法で作製されたグラフェン分散液は、有機溶媒によく分散するグラフェン分散液であり、この際、イオン性液体の有機溶媒への分散を容易にするために使用できる陰イオンの例としては、[BF]-、[PF]-、[SbF]-、[CFSO]-、[HCFCFSO]-、[CFHFCCFSO]-、[HCClFCFSO]-、[(CFSO)N]-、[(CFCFSO)N]-、[(CFSO)C]-、[CFCO]-、[CFOCFHCFSO]-、[CFCFOCFHCFSO]-、[CFCFHOCFCFSO]-が挙げられる。
【0060】
上記のように有機溶媒に分散したグラフェン溶液の溶媒を変更しようとする場合には、イオン性液体の陰イオン成分を置換することにより、水又は水系溶媒によく分散するように構成することが可能である。
【0061】
上述したように、黒鉛をイオン性液体に入れて撹拌することにより、イオン性液体にグラフェンが分散されているグラフェン分散液を得る。この溶液に重合開始剤を添加した後反応させることで、イオン性液体を高分子重合すると粘度が高くなりつつゲル状のグラフェン分散液が得られる。
【0062】
このゲル状のグラフェン分散液は、プロピレンカーボネート、1-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、アセトン、テトラヒドロフランのような極性有機溶媒に非常によく分散するので、前記有機溶媒に均一に分散されたグラフェン溶液を得ることができる。
【0063】
前記分散されたグラフェン溶液から水分散グラフェン分散液を得る方法には、前記溶液のイオン性液体の陰イオンを、水分散させ易い陰イオンに交換する方法がある。例えば、前記重合反応を経たゲル状態又は有機溶媒がさらに添加された状態のグラフェン分散液にテトラブチルアンモニウムブロマイド又はテトラブチルホスホニウムブロマイドなどのブロム基を有する化合物を添加すると、グラフェンを囲んでいるイオン性液体高分子の陰イオン成分がブロム基に置換される(イオン交換反応)。
【0064】
このように作製されたブロム系陰イオンに置換されたグラフェン/イオン性液体複合物は、水系溶媒に分散する形態に変わりながらグラフェンは沈殿する。これを洗浄した後再度水系溶媒に再分散させると、水系溶媒に均一に分散されているグラフェン分散液を得ることができる。
【0065】
これらの方法のうち一次重合反応によって作られたゲル状の生成物をテトラブチルアンモニウムブロマイド又はテトラブチルホスホニウムブロマイドにイオン交換時、イオン交換反応を容易にするためにはゲル状の生成物にプロピレンカーボネート、1-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、アセトン、テトラヒドロフランなどの溶媒をさらに添加して粘度が低い状態に変えると、より容易にテトラブチルアンモニウムブロマイド又はテトラブチルホスホニウムブロマイドを用いた陰イオン交換反応を行うことができる。
【0066】
なお、テトラブチルアンモニウムブロマイド又はテトラブチルホスホニウムブロマイドは常温で固体であるので、このブロマイド化合物をプロピレンカーボネート、1-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、アセトン、テトラヒドロフランなどの溶媒に予め溶かして使用すればより効果的である。
【0067】
その反面、酸化及び還元過程を経たグラフェンは、主に水系溶媒によく分散するので、このように処理されたグラフェンを水系溶媒に分散させると水分散グラフェン分散液を得ることができる。この水系グラフェン分散液は、常温でかなり長い期間安定するものの、長期間が過ぎると結局グラフェン粒子が沈殿してしまうという問題点がある。従って、この水系グラフェン分散液にイオン性液体高分子を添加すると、分散安定性が顕著に向上して長い期間放置してもグラフェンが沈殿することはない。
【0068】
ここに用いられるイオン性液体高分子は、水系溶媒に溶解可能な陰イオンを有するイオン性液体高分子を重合開始剤を添加して高分子量化したものであり、分子量が1,000〜2,000,000g/molであるイオン性液体高分子を用いると良い。
【0069】
この際、分子量が1,000g/mol未満であるとイオン性液体の分子量が低く、分散安定性が殆どなくて良くなく、分子量が2,000,000g/molを超えると分子量があまりにも大きいため、水系溶媒に溶解し難くて良くない。この場合に使用可能なイオン性液体の陰イオンとしては、[CHCO]-、[HSO]-、[CHOSO]-、[COSO]-、[AlCl]-、[CO]-、[HCO]-、[NO]-、[NO]-、[SO]-、[PO]-、[HPO]-、[HPO]-、[HSO]-、[CuCl]-、Cl-、Br-、I-などがある。
【0070】
前記言及した内容を実施例により具体的に説明する。しかしながら、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0071】
1,000℃の温度で1分間熱処理した膨張性黒鉛1mgをイオン性液体である1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェイト(1-vinyl-3-ethyl imidazolim hexafluorophosphate) 3gに入れ800rpmで20分間撹拌した。この過程を通じて濃い灰色のイオン性液体分散液が得られ、前記サンプルの一部を採取して透過電子走査顕微鏡にて観察した結果、単一層に分離されたグラフェンが図1の写真のように観察された。
【実施例2】
【0072】
1,000℃の温度で1分間熱処理した膨張性黒鉛1mgをイオン性液体である1-ビニル-3-エチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホニルイミド(1-vinyl-3-ethyl imidazolim trifluoromethylsulfonylimide)3gに入れ700rpmで撹拌した。その後、前記グラフェン分散液に重合開始剤である2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)
0.03gを投入し、65℃の温度で6時間反応させることによりイオン性液体を重合した。この過程を経たグラフェン分散液はゲル状となり、ここにプロピレンカーボネート20gをさらに添加して撹拌すると、濃い灰色のグラフェン分散液が得られるが、この溶液が有機溶媒に均一に分散されているグラフェン分散液である。
【実施例3】
【0073】
実施例3は、酸化及び還元過程によりイオン性液体高分子で安定化させたグラフェン分散液に関し、これの具体的な製造方法は次のとおりである。
【0074】
先ず、黒鉛5gをKMnO
25g、NaNO 3.75g、HSO 170mlの溶液に撹拌して反応させることにより酸化黒鉛を製造し、前記酸化黒鉛は水で30分間撹拌し遠心分離することにより黄色の酸化グラフェン水分散液が得られる。前記酸化グラフェン水分散液19mlにイオン性液体高分子として、ポリ(1-ビニル-3-エチルイミダゾリウム)ブロマイド400mgを混合して撹拌することにより、イオン性液体高分子で安定化された酸化グラフェン水分散液を収得した。
【0075】
その後、ヒドラジン3.2mmolを添加して約90℃の温度で1時間還元反応をさせると、溶液が黄色から黒色に変わりながら、イオン性液体高分子で安定化されたグラフェン水分散液を得ることができた。前記グラフェン水分散液は5ヶ月以上放置しても沈殿が起こらない安定した分散液であることを確認した。このサンプルの一部を採取して透過電子顕微鏡(transmission electron microscope)にて観察した結果、凝集現象が起こらず、単一層に分離されたグラフェン-イオン性液体高分子複合物として存在することを図2および図3の写真から確認した。図2および図3は、同じ試料を倍率を別にして撮った写真である。この溶液が水に分散されたグラフェン分散液であって、この溶液の一部を採取して原子顕微鏡(atomic force microscope)にて観察した結果は図4のAFM写真と厚さプロファイルを示すグラフから、高さ1〜2ナノメートル程度のグラフェン-イオン性液体高分子複合物であることを確認した。
【実施例4】
【0076】
実施例4は、実施例2で得たグラフェン分散液をイオン交換法により水分散性に変換する過程についての実施例である。
【0077】
実施例2で得たグラフェン分散液20gにテトラブチルアンモニウムブロマイドを3.6g添加して10分間撹拌すると濃い灰色の沈殿物が発生する。この沈殿物を収得して乾燥した後、これを再度水に分散して水系分散したグラフェンを得る。
【0078】
一方、前記グラフェン分散液の製造方法において、黒鉛に添加されるイオン性液体が単量体である場合、これを重合させるか、イオン性液体を高分子として用いるグラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造できる。
【0079】
この際、イオン性液体単量体の陽イオンは重合反応を誘導できる官能基を有しており、陰イオンはグラフェン-イオン性液体高分子複合物の効果的な分離のために[BF]-、[PF]-、[CFSO)N]-、[(CFCFSO)N]-を有しているイオン性液体単量体を用いる場合、還元反応後イオン性液体の重合反応のための重合開始剤を入れ反応させることでイオン性液体を高分子化すると、グラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造することができる。ここで、グラフェン-イオン性液体高分子複合物はグラフェンとイオン性液体高分子とを含む物質を意味する。
【0080】
この際、イオン性液体を重合するための開始剤としては、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ABCN)、過酸化ベンゾイル(BP)のうちいずれか1つ又は2つ以上を混合して用いると良い。重合開始剤の含有量は、イオン性液体100重量部対して0.1〜3重量部を用い、重合反応は、50〜80℃の温度で5〜72時間程度反応させると良い。前記反応の開始剤の含有量、温度および反応時間の場合、下限値未満であると反応速度が非常に遅くなり、又は反応が起こり難く、高分子量化への進行が難くて良くなく、上限値を超えると不必要に多い量又は長時間反応させたり、又は、温度が非常に高くなるためイオン性液体高分子を劣化させるか、又は溶媒の蒸発が多くて良くない。
【0081】
しかしながら、上述したように、イオン性液体を用いて酸化グラフェンを還元させた後、ここに重合開始剤を入れて重合する代わりに、予め重合したイオン性液体高分子を用いて酸化グラフェンを還元させても構わない。すなわち、酸化処理されたグラフェンをプロピレンカーボネートなどの溶媒に入れ、ここにイオン性液体高分子を入れ100℃以上の温度で加熱して還元反応を経れば良い。この際、イオン性液体高分子は、グラフェンと結合して安定化させる効果を奏し、グラフェンが還元過程中に再度凝集する現象を防止する役割をする。
【0082】
このようにイオン性液体高分子を用いる方法は、還元工程後別途の重合化過程がなく還元反応を起こしながら、グラフェン-イオン性液体高分子複合物を直接作製できるのでより一層効果的である。すなわち、還元工程中にイオン性液体高分子がグラフェンと結合して自然にグラフェン-イオン性液体高分子複合物が得られる。
【0083】
前記二種の方法によりグラフェン-イオン性液体高分子複合物が製造できるが、この際、前記複合物中のイオン性液体高分子は、重量平均分子量が1,000〜2,000,000g/molの範囲にあるように調節することが望ましい。分子量が1,000g/mol未満であると、グラフェン分散液の長期安定性が良くなく、2,000,000g/molを超えると分子量が非常に高く、溶解度が低下して良くない。
【0084】
なお、本発明に係るグラフェン-イオン性液体高分子複合物は、イオン性液体高分子に結合された陰イオンを一般的な陰イオン交換反応により交換させることにより、水系、有機系、又はイオン性液体電解質との相溶性を容易に変化させることができる。例えば、前記複合物中のイオン性液体高分子の陰イオンとして、Cl-、Br-、[NO]-、[CHSO]-が結合されている場合、水系電解質との相溶性に優れるが、これを陰イオン置換して[BF]-、[PF]-、[CFSO)N]-、[(CFCFSO)N]-が結合されると有機系電解質との相溶性に優れる。
【0085】
本発明のグラフェン-イオン性液体高分子複合物は、濾過などの過程を経てスラリー状に得られ、これを乾燥して粉末形態で作ったり、若しくは他の形態で加工して用いることができる。
【0086】
前記の言及した内容を実施例を用いてより具体的に説明する。但し、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0087】
(比較例1)
Hummer方法(Hummers W,Offeman R., "Preparation
of graphite oxide", Jounal of the American Chemical
Society, 80, 1958, 1339)を用いて黒鉛(SP-1, Bay Carbon社製)を酸処理して酸化グラファイトを製造した。前記酸化グラファイトをプロピレンカーボネートを溶媒にして約1時間撹拌することによって、1.0mg/ml濃度の酸化グラフェンが分散された有機溶媒分散液を得る。
【0088】
前記酸化グラフェン分散液を約150℃の温度で約12時間撹拌すると酸化グラフェンが還元されながら黒色のグラフェン-イオン性液体高分子複合物が製造されることを確認した。なお、上記の還元反応中にグラフェンが溶液中で凝集するものの、還元反応が終了した後にはグラフェンが沈殿することを確認した。
【0089】
前記のように熱を利用した酸化グラフェンの還元反応において、還元反応時間に応じて製造されたグラフェン-イオン性液体高分子複合物試料の電気抵抗を標準4端子法(CMT series、Jandel Probe)により測定し、電気抵抗が4端子法により測定できないほど低い場合には2端子法を用いて測定した。還元時間が0、0.5、1、2、6、12時間である場合、電気抵抗はそれぞれ1012、1010、10、10、10、10Ohm/sq以上であった。前記比較例により一般的な熱還元方法で10Ohm/sqの電気抵抗を有するグラフェン-イオン性液体高分子複合物を得るためには、還元反応時間は約12時間程度が必要であることが分かる。
【実施例5】
【0090】
Hummer方法(Hummers W,Offeman
R., "Preparation of graphite oxide", Jounal of the American Chemical Society, 80, 1958, 1339)を用いて黒鉛(SP-1, Bay
Carbon社製)を酸処理して酸化グラファイトを製造した。酸化グラファイトを製造した後、プロピレンカーボネートを溶媒にしてこれを約1時間撹拌することによって、1.0mg/ml濃度の酸化グラフェンが分散された有機溶媒分散液を得る。
【0091】
前記酸化グラフェン分散液20mlにイオン性液体である1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルアミド[1-butyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethyl)sulfonylamide]70mgを混合し約150℃の温度で撹拌した。前記の場合、還元時間が約0.5時間経過しながら、反応物の色が黒色に変わり還元反応が進行されることを観察でき、又、還元反応以降もグラフェンの沈殿が起こらず安定的に分散したグラフェン分散液を製造することができた。約1時間の還元反応後に濾過紙を利用して濾過させた後、濾過紙上に残っているグラフェン-イオン性液体高分子複合物の電気抵抗を確認した結果、電気抵抗は10Ohm/sqであって、速い時間内に酸化グラフェンの還元が進行されたことを確認することができた。
【実施例6】
【0092】
実施例6は、酸化グラフェン有機溶媒分散液にイオン性液体として1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルアミド[1-octyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethyl)sulfonylamide]70mgを混合したことを除いては実施例5と同一である。実施例6の場合にも、還元反応以降にグラフェン-イオン性液体高分子複合物の沈殿が起こらず、約1時間以内に還元反応が速く進行され、電気抵抗が10Ohm/sqであるグラフェン-イオン性液体高分子複合物が製造されることを確認した。
【実施例7】
【0093】
実施例7は、イオン性液体として1-ブチル-3-メチルピロリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルアミド[1-octyl-3-methylpyrrolidiniumbis(trifluoromethyl)sulfonylamide]70mgを混合したことを除いては実施例5と同一である。実施例7の場合にも、還元反応以降にグラフェン-イオン性液体高分子複合物の沈殿が起こらず、約1時間以内に還元反応が速く進行され、電気抵抗が10Ohm/sqであるグラフェン-イオン性液体高分子複合物が製造されることを確認した。
【実施例8】
【0094】
実施例8は、イオン性液体として1-ブチル-3-メチルピロリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルアミド[1-octyl-3-methylimidazoliumbis(trifluoromethyl)sulfonylamide]70mgを混合し、還元反応の温度を200℃にしたことを除いては実施例3と同一である。実施例8の場合、還元反応が約0.5時間内に進行されることを確認し、この際、電気抵抗は約10Ohm/sqであることを確認した。
【0095】
(比較例2)
比較例2は、イオン性液体として1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルアミド[1-butyl-3-methylimidazoliumbis(trifluoromethyl)sulfonylamide]15mgを混合したことを除いては実施例5と同一である。比較例2の場合、還元反応時間が2時間である時、電気抵抗が約10Ohm/sqであるグラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造することができたが、還元反応中にグラフェン-イオン性液体高分子複合物が溶液中で凝集する現象が発生した。
【実施例9】
【0096】
実施例9は、イオン性液体として1-ビニル-3-エチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルアミド[1-vinyl-3-ethylimidazoliumbis(trifluoromethyl)sulfonylamide]70mgを混合し、約150℃の温度で1時間撹拌することによって、グラフェン分散液を製造した。前記の方法で処理したグラフェン分散液に重合開始剤として2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をイオン性液体に対して約2重量%投入し、65℃の温度で6時間反応させてイオン性液体を重合することにより、グラフェン-イオン性液体高分子複合物を形成した。前記グラフェン-イオン性液体高分子複合物を濾過した後乾燥して電気抵抗を測定した結果、10Ohm/sqの値を有することを確認した。
【実施例10】
【0097】
実施例10は、実施例1により製造した酸化グラファイトをイオン性液体である1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルアミド[1-ethyl-3-methylimidazoliumbis(trifluoromethyl)sulfonylamide]に直接入れて1時間撹拌することによって、1.0mg/ml濃度の酸化グラフェンがイオン性液体に分散された溶液を得る。前記酸化グラフェン分散液を約300℃の温度で撹拌すると、約10分以内に反応物の色が黒色に変わりながら還元反応が進行されることを観察した。前記反応物の電気抵抗を確認した結果、10Ohm/sqであって、速い時間内に酸化グラフェンの還元が進行されたことを確認することができた。
【実施例11】
【0098】
実施例11は、イオン性液体として1-ビニル-3-エチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルアミド[1-vinyl-3-ethylimidazoliumbis(trifluoromethyl)sulfonylamide]を重合してポリ(1-ビニル-3-エチルイミダゾリウム)ビストリフルオロメチルスルホニルアミドを先に製造した後、これを酸化グラフェン分散液に添加して還元反応を誘導した。
【0099】
前記イオン性液体の重合反応のために、1-ビニル-3-エチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルアミド[1-vinyl-3-ethylimidazoliumbis(trifluoromethyl)sulfonylamide]をジメチルホルムアミド(DMF)に約5重量%溶解させた後、重合開始剤として2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をイオン性液体に対して約2重量%を投入し、65℃の温度で6時間反応させることによって、ポリ(1-ビニル-3-エチルイミダゾリウム)ビストリフルオロメチルスルホニルアミドを製造し、これを乾燥して収得した。
【0100】
前記ポリ(1-ビニル-3-エチルイミダゾリウム)ビストリフルオロメチルスルホニルアミド100mgをプロピレンカーボネートに分散された酸化グラフェン分散液に添加し、約150℃の温度で1時間還元反応させることによって、グラフェン-イオン性液体高分子複合物を形成した。前記グラフェン-イオン性液体高分子複合物を濾過して乾燥した後、電気抵抗を測定した結果、10Ohm/sqであることを確認した。
【0101】
以下、本発明のグラフェン-イオン性液体高分子の複合物を製造する方法について下記のようにより詳細に説明する。
【0102】
(i) 一般黒鉛(pristine graphite)を酸化して各層を分離した酸化グラフェン(graphene oxide)をイオン性液体高分子に混合して酸化グラフェン-イオン性液体高分子を形成し、これを還元剤又は熱を利用して酸化グラフェンを還元させることによりグラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造する。
【0103】
(ii) 酸が黒鉛の各層に挿入されている膨張性黒鉛(expandable graphite)を高温熱処理したり、アルカリ金属を黒鉛の各層に挿入させた黒鉛(intercalated graphite)をマイクロ波で処理したり、若しくは黒鉛を電気化学的方法で処理した後、これをイオン性液体単量体に入れ分散させてグラフェン-イオン性液体単量体を形成し、前記イオン性液体を重合することによりグラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造する。
【0104】
先ず、前記(i)の方法を用いたグラフェン-イオン性液体高分子複合物の製造方法は次の通りである。一般黒鉛をHummer方法で、KMnO、HSO、HNOなどの混合溶液を用いて酸化させ、水又は有機溶媒に分散させることにより酸化グラフェン分散液を得る。その後、前記溶液にイオン性液体高分子を混合して酸化グラフェン-イオン性液体高分子を形成する。
【0105】
この際、酸化グラフェンが水に分散されている場合、親水性イオン性液体高分子、例えば、イオン性液体高分子の陰イオンとして[NO]-、Cl-、Br-、I-、[CHSO]-が結合されているイオン性液体高分子を用いることが望ましく、酸化グラフェンがプロピレンカーボネートのような有機溶媒に分散されている場合、疏水性イオン性液体高分子、例えば、イオン性液体高分子の陰イオンとして、[(CFSO)N]-、[(CFCFSO)N]-、[(CFSO)C]-、[CFCO]-、[CFOCFHCFSO]-、[CFCFOCFHCFSO]-、[CFCFHOCFCFSO]-などが結合されているイオン性液体高分子を用いることが望ましい。
【0106】
その後、前記酸化グラフェン-イオン性液体高分子分散液に、ヒドラジン(hydrazine)、ハイドロキノン(hydroquinone)、水素化ホウ素ナトリウム(sodium borohydride)等を含む還元剤を投入して還元させるか、前記分散液の温度を100℃〜300℃にして熱を利用した還元過程を通じてグラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造する。
【0107】
本発明の酸化グラフェンを還元させてグラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造する過程において、イオン性液体高分子は、グラフェンと結合して安定化させる効果を奏することから、グラフェンが還元過程中に再度凝集する現象を防止することができ、これにより、グラフェン-イオン性液体高分子複合物中のグラフェンは高い使用可能な比表面積を有する効果がある。
【0108】
本発明のグラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造する又他の方法として前記(ii)に提示された方法について説明する。酸が黒鉛の各層に挿入されている膨張性黒鉛(expandable
graphite)を高温熱処理したり、アルカリ金属を黒鉛の各層に挿入させた黒鉛(intercalated graphite)をマイクロ波で処理したり、若しくは黒鉛を電気化学的方法で処理することにより、黒鉛の各層間引力を減少させる。
【0109】
その後、これをイオン性液体単量体溶液に入れて分散させることにより、グラフェン-イオン性液体単量体分散液を形成する。この際、イオン性液体単量体は、陽イオンに重合反応を誘導できる官能基を有しており、陰イオンは、グラフェン-イオン性液体高分子複合物の効果的な分離のために、[BF]-、[PF]-、[CFSO)N]-、[(CFCFSO)N]-を有していることが望ましい。
【0110】
その後、前記グラフェン-イオン性液体単量体溶液にイオン性液体の重合反応のための重合開始剤を投入して反応することにより、グラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造する。この際、イオン性液体単量体を重合するための開始剤としては、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1'-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ABCN)、過酸化ベンゾイル(BP)のうちいずれか1つ又は2つ以上を混合して用いる。
【0111】
重合開始剤の含有量は、イオン性液体含有量に対して0.1〜3重量部を用いると良く、重合反応は50℃〜80℃の温度で5〜72時間程度反応させると良い。前記反応において開始剤の含有量、温度および反応時間が、下限値未満であると反応速度が非常に遅くなり、又は反応が起こり難く、高分子量化への進行が難くて良くなく、上限値を超えると不必要に多い量又は長時間反応させたり、又は、温度が非常に高くなるためイオン性液体高分子を劣化させるか、又は溶媒の蒸発が多くて良くない。
【0112】
前記(i)又は(ii)の方法でグラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造するが、この際、前記複合物中のイオン性液体高分子は、重量平均分子量が1,000〜2,000,000g/molの範囲にあるように調節することが望ましい。分子量が1,000g/mol未満であるとグラフェン分散液の長期安定性が良くなく、2,000,000g/molを超えると分子量が非常に高く、溶解度が低下して良くない。
【0113】
なお、グラフェン-イオン性液体高分子で構成された複合物は、グラフェン5〜95wt%およびイオン性液体高分子5〜95wt%で構成されることを特徴とする。グラフェンの含有量が5wt%未満であると複合物の電気伝導度が非常に低く、電解質と電気二重層を形成し得るグラフェンの量があまりにも少ないので、十分な静電容量を確保し難く、グラフェンの含有量が95wt%を超えるとグラフェン複合物の加工性が低下する問題点が生じる。
【0114】
なお、本発明に係るグラフェン-イオン性液体高分子複合物は、イオン性液体高分子に結合された陰イオンを一般的な陰イオン交換反応により交換させることにより、水系、有機系、又はイオン性液体電解質との相溶性を容易に変化させることができる。例えば、前記複合物中におけるイオン性液体高分子の陰イオンとしてCl-、Br-、[NO]-、[CHSO]-が結合されている場合、水系電解質との相溶性に優れるが、これを陰イオン置換して[BF]-、[PF]-、[CFSO)N]-、[(CFCFSO)N]-が結合されると、有機系電解質との相溶性に優れるようになる。
【0115】
本発明のグラフェン-イオン性液体高分子複合物は、濾過などの過程を経てスラリー状に得られ、これを各種電気化学装置の材料として活用することができる。
【0116】
この際、グラフェン-イオン性液体高分子複合物の機械的性質を補完するか、又は他の電気的性質を補完するために別途の有無機材料、例えば、バインダー、炭素材料、金属粒子および電気伝導性高分子を選択的に混合して使用することができる。
【0117】
バインダーとしては、ポリペルフルオロスルホン酸(Nafion)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド共重合物などがあり、炭素材料としては、活性炭素、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンなどがあり、電気伝導性高分子としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンおよびこれらの誘導体などがある。
【0118】
通常、バインダー物質の含有量範囲は、グラフェン含有量に対して1〜20wt%であって、含有量が1wt%未満であると機械的性質の補完効果が非常に僅かであるため良くなく、20wt%を超えると電気的絶縁体であるバインダーが非常に多く入るため、電気化学装置としての性能が低下して良くない。ここで前記電気化学装置は、バッテリ、燃料電池、キャパシタ又はこれらの複合装置、スーパーキャパシタ、ウルトラキャパシタ、又は電気二重層キャパシタなど様々な装置を言う。すなわち、静電容量が従来より非常に優れるので様々な電気化学装置に用いることができる。
【0119】
上述した内容を次の実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
【実施例12】
【0120】
Hummer方法(Hummers W,Offeman R., "Preparation
of graphite oxide", Jounal of the American Chemical
Society, 80, 1958, 1339)を用いて黒鉛(SP-1、Bay Carbon社製)を酸処理して酸化グラファイトを製造し、これを水に入れ30分間撹拌することによって、1.0mg/ml濃度の酸化グラフェンが分散された水分散液を得る。
【0121】
前記酸化グラフェン水分散液20mlにイオン性液体高分子として、ポリ(1-ビニル-3-エチルイミダゾリウム)ブロマイド[poly(1-vinyl-3-ethylimidazolium)bromide]100mgを混合して撹拌することにより、酸化グラフェン-イオン性液体高分子を収得した。その後、還元剤としてヒドラジンハイドレート6.4mmolを添加して約90℃の温度で1時間還元反応させることにより、グラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造した。
【0122】
(比較例3)
比較例3は、イオン性液体高分子を用いず、還元反応により収得したグラフェンにバインダー物質としてポリテトラフルオロエチレンを3wt%混合したことを除いては実施例12と同一である。
【実施例13】
【0123】
実施例12の酸処理方法により製造された酸化グラファイトを有機溶媒であるプロピレンカーボネートに入れて超音波分散することにより、有機溶媒に1.0mg/ml濃度の酸化グラフェンが分散された溶液を得る。前記溶液20mlにイオン性液体高分子としてポリ(1-ビニル-3-エチルイミダゾリウム)ビストリフルオロメチルスルホニルアミド[poly(1-vinyl-3-ethylimidazoliumbis(trifluoromethyl)sulfonylamide]50mgを混合して撹拌することにより、酸化グラフェン-イオン性液体高分子を収得した。その後、前記溶液の温度を150℃に上げて1時間反応させることにより、グラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造した。本実施例13におけるグラフェン-イオン性液体高分子複合物は、図5の電子走査顕微鏡にて観察した写真におけるものと同一である。
【0124】
(比較例4)
比較例4は、イオン性液体高分子を用いずグラフェンを製造することを除いては実施例13と同一である。
【実施例14】
【0125】
SOおよびHNOが黒鉛の各層に挿入されている膨張性黒鉛(expandable graphite、Grafguard社製)を1,000℃の温度で1分間熱処理した後、1mgをイオン性液体である1-ビニル-3-エチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェイト[1-vinyl-3-ethylimidazolium
hexafluorophosphate]3gに入れて乳鉢でグラインドした後、再度30分間超音波分散してグラフェン-イオン性液体単量体を形成した。その後、前記溶液に重合開始剤として2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03gを投入し、65℃の温度で6時間反応させることにより、グラフェン-イオン性液体高分子複合物を形成した。
【0126】
このように本発明に係るグラフェン分散液の製造方法およびこれにより製造されるグラフェン-イオン性液体高分子複合物およびその製造方法は、黒鉛をイオン性液体に入れて分散させることにより製造されたグラフェン分散液を用いて、グラフェン-イオン性液体高分子複合物を製造することができる。
【0127】
なお、このように製造されたグラフェン-イオン性液体高分子複合物をスーパーキャパシタ又は電気二重層などの電気化学装置の電極材料として利用できる効果がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛がイオン性液体に分散されているグラフェン分散液。
【請求項2】
前記黒鉛は、一般黒鉛、酸化と還元処理された黒鉛、高温で熱処理された黒鉛、又はこれらを併用して処理された黒鉛であることを特徴とする請求項1に記載のグラフェン分散液。
【請求項3】
前記分散は撹拌によりなされ、そして前記イオン性液体は陽イオンおよび陰イオンの組み合わせで構成された化合物であって、単量体(monomer)形態や高分子(polymer)形態であり、これらの成分のうちいずれか1つを用いるか、若しくは、2以上を混合して用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグラフェン分散液。
【請求項4】
前記イオン性液体は、陽イオンとして下記一般式(1)で表わすいずれかを用いるか、
【化1】

(式中、R〜R10は、互いに独立して次の群から選ばれるいずれか1つである。i)水素、ii)ハロゲン、iii)C〜C25の炭化水素で構成されたアルキル、アルケニル、アルキニル、ベンジル、フェニルであって、O、N、SiおよびSを異種原子として含むことができ、又、選択的にCl、Br、F、I、OH、NH、SHの群を含むことができる。)陰イオンとして、[CHCO]-、[HSO]-、[CHOSO]-、[COSO]-、[AlCl]-、[CO]-、[HCO]-、[NO]-、[NO]-、[SO]-、[PO]-、[HPO]-、[HPO]-、[HSO]-、[CuCl]-、Cl-、Br-、I-、[BF]-、[PF]-、[SbF]-、[CFSO]-、[HCFCFSO]-、[CFHFCCFSO]-、[HCClFCFSO]-、[(CFSO)N]-、[(CFCFSO)N]-、[(CFSO)C]-、[CFCO]-、[CFOCFHCFSO]-、[CFCFOCFHCFSO]-、[CFCFHOCFCFSO]-のうちいずれかを用いるか、あるいは、前記陽イオンと陰イオンとを含んだものを用いることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のグラフェン分散液。
【請求項5】
前記イオン性液体高分子の分子量は1,000〜2,000,000g/molであるものを併用することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のグラフェン分散液。
【請求項6】
前記分散液に重合開始剤を添加してイオン性液体を高分子量化することを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のグラフェン分散液。
【請求項7】
前記分散液におけるイオン性液体の陰イオン成分をイオン交換して溶媒系を変換することを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項に記載のグラフェン分散液。
【請求項8】
前記イオン性液体の陰イオン成分のイオン交換時にイオン交換反応を容易にするために、ゲル状のグラフェン分散液生成物にプロピレンカーボネート、1-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、アセトン、テトラヒドロフラン溶媒をさらに添加することを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項に記載のグラフェン分散液。
【請求項9】
前記イオン性液体は、前記酸化グラフェンの重さに対して1倍以上添加されることを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項に記載のグラフェン分散液。
【請求項10】
グラフェンにイオン性液体高分子が結合されたグラフェン-イオン性液体高分子複合物。
【請求項11】
前記グラフェン-イオン性液体高分子複合物は、請求項1〜9のうちいずれか1項記載のグラフェン分散液での添加されるイオン性液体が単量体である場合、これを重合させるか、若しくは前記イオン性液体を高分子として用いて製造されることを特徴とする請求項10に記載のグラフェン-イオン性液体高分子複合物。
【請求項12】
前記グラフェン5〜95重量%および前記イオン性液体高分子5〜95重量%で構成されることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載のグラフェン-イオン性液体高分子複合物。
【請求項13】
イオン性液体を重合するための重合開始剤として、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ABCN)、過酸化ベンゾイル(BP)のうちいずれか1つ以上を用いることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のグラフェン-イオン性液体高分子複合物。
【請求項14】
前記重合開始剤は、前記イオン性液体100重量部に対して0.1〜3重量部を用いることを特徴とする請求項11〜13のうちいずれか1項に記載のグラフェン-イオン性液体高分子複合物の製造方法。
【請求項15】
前記複合物は、バインダー、炭素材料、金属粒子および電気伝導性高分子を1つ以上さらに含むことを特徴とする請求項10〜14のうちいずれか1項に記載のグラフェン-イオン性液体高分子複合物。
【請求項16】
前記バインダーは、ポリペルフルオロスルホン酸、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド共重合物のうちいずれか1つであり、
前記炭素材料は、活性炭素、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンのうちいずれか1つ以上であり、
前記電気伝導性高分子は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンおよびこれらの誘導体のうちいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項15に記載のグラフェン-イオン性液体高分子複合物。
【請求項17】
請求項1〜9に記載のグラフェン分散液の製造方法は、
前記黒鉛を酸化処理して酸化グラフェンを製造するステップと、
前記酸化グラフェンを溶媒に分散してイオン性液体を添加するか、若しくは前記酸化グラフェンに直接イオン性液体を添加してグラフェン分散液を作製するステップと、
前記分散液を100℃以上の温度で加熱したり還元剤を用いて還元させるステップと、
を含むことを特徴とするグラフェンの製造方法。
【請求項18】
請求項1〜9に記載のグラフェン分散液の製造方法は、
膨張性黒鉛(expandable graphite)を高温熱処理したり、アルカリ金属を黒鉛の各層に挿入させた黒鉛(intercalated graphite)をマイクロ波で処理したり、若しくは黒鉛を電気化学的方法で処理した後、これをイオン性液体に入れて分散させることを特徴とするグラフェンの製造方法。
【請求項19】
請求項17又は請求項18に記載のグラフェンの製造方法において、前記グラフェン分散液に添加されるイオン性液体が単量体である場合、これを重合させたり、あるいは前記イオン性液体を高分子として用いて製造されることを特徴とするグラフェン-イオン性液体高分子複合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−514963(P2013−514963A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545833(P2012−545833)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005401
【国際公開番号】WO2011/078462
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(508137992)
【Fターム(参考)】