説明

グラフェン被覆物体の作製方法、炭素系被膜を用いた二次電池の負極、及びそれを用いた二次電池

【課題】凹凸形状や複雑な形状を表面に有する物体、特に複雑な凹凸形状により表面に三次元構造を有する物体、又は曲面を有する物体にグラフェンを実用的に均一な厚さで形成する方法を提供する。
【解決手段】酸化グラフェン溶液中に、物体と電極を浸漬し、前記物体と前記電極間に電圧を加える。この際、物体が陽極となるようにする。酸化グラフェンは負に帯電するので、陽極に引き寄せられ、物体の表面に実用的に均一な厚さで付着する。酸化グラフェンが付着した部分は他の酸化グラフェンが付着しにくくなる。このため付着した酸化グラフェンをグラフェンに還元することで、複雑な凹凸形状を有する物体の表面にも実用的に均一な厚さのグラフェンを形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π結合を有する1原子層の炭素分子のシートである単層グラフェンあるいは2枚以上100枚以下の単層グラフェンが積層した多層グラフェンを用いたグラフェン被覆物体の作製方法に関し、さらに多層グラフェンとその作製方法に関する。なお、本明細書では、単層グラフェンと多層グラフェンを総称して、単にグラフェンという。
【0002】
また本発明は、炭素系被膜を用いた二次電池の負極、及びそれを用いた二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
グラフェンは高い導電率や移動度という優れた電気特性、柔軟性や機械的強度という物理的特性のためにさまざまな製品に応用することが試みられている(特許文献1乃至特許文献3参照)。
【0004】
ここで、製品として販売されている充電可能な蓄電装置である二次電池においては、その負極として、黒鉛(グラファイト)などの炭素材料が用いられている。黒鉛は、sp混成軌道を持つ炭素が規則正しく平面状に配列し、積層した結晶構造を有する。正極からのリチウムイオンが、積層した結晶構造の層間に吸蔵されることを利用して二次電池の充放電が行われる。
【0005】
また、黒鉛以外にも、リチウムイオン二次電池負極材料として好適な炭素材料について研究されている(特許文献4)。このような炭素材料は、リチウムイオン二次電池負極材料として、高いリチウム吸蔵放出容量を有し、連続充放電を行っても破損しにくいという課題を解決するために、内部に空隙があり、リチウムと合金を形成する金属を含有する炭素粒子を含有している。
【0006】
電池反応に直接関わって電力を発生させる起電力物質を、電池の活物質と呼ぶ。二次電池の高出力化の観点から電極の活物質の粒子径を減少させることが好ましいが、粒子径が減少すると導電ネットワークを効率的に構築させるため、導電助剤やバインダが必要となる。しかしながら、導電助剤やバインダによって、電極の体積当たりの容量が低下する問題がある。そのため、導電助剤やバインダを用いることなく、活物質層と集電体の表面にウィスカを用いて保持する電池が検討されている(特許文献5)。特許文献5では、活物質の材質として、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、チタン酸リチウム、グラファイト、及びハードカーボンが記載され、ウィスカの材質としてカーボン、チタン酸カリウム、炭化チタン、炭化珪素、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化錫、及び酸化インジウムが記載されている。
【0007】
負極において、正極から放出されたリチウムの吸蔵が行われると、膨張し、ひいては粉砕することが知られている。これを解決するため、リチウム合金を形成する金属又は半金属の粒子を核として、粒子の核を炭素で被覆する構成が提案されている(特許文献6)。特許文献6では、核となる粒子として、珪素が好ましいこと記載され、炭素を被覆する方法として化学蒸着処理法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許公開2011/0070146号公報
【特許文献2】米国特許公開2009/0110627号公報
【特許文献3】米国特許公開2007/0131915号公報
【特許文献4】特開2011−57541号公報
【特許文献5】特開2008−103118号公報
【特許文献6】特開2000−215887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1乃至3に記載されるように、グラフェンの作製方法には、大きく分けて気相成長(CVD)法と塗布法がある。CVD法は、例えば、特許文献1あるいは特許文献2に記載されているように、触媒となる金属を加熱し、そこに炭化水素ガスを通すことで、触媒上にグラフェンを成長させるものである。
【0010】
また、塗布法は、特許文献3に記載されているように、グラファイトを酸化して得られる酸化グラフェンを溶液に分散させ、これを塗布することにより酸化グラフェン膜を形成し、さらに、これを還元して、グラフェンを得るものである。
【0011】
いずれの方法も平坦な表面にグラフェンを得ることは可能である。しかしながら、表面が凹凸形状や複雑な形状である物体、特に複雑な凹凸形状により表面に三次元構造を有する物体、又は表面が曲面である物体上にグラフェンを形成することは困難である。CVD法では、グラフェンは触媒上にのみ形成されるため、形成されたグラフェンは剥離して目的とする物体に転置する必要があり、その際、凹凸形状や複雑な形状を表面に有する物体や曲面を有する物体に転置することは不可能であった。また、塗布法では、凹凸がある物体において、凹部と凸部に実用的に均一な厚さのグラフェンを形成することは困難であり、複雑な凹凸形状により三次元構造を有する表面の場合には、その構造の内部にまで十分にグラフェンを形成することが困難であった。一般に凸部では、グラフェンは薄くなり、場合によってはグラフェンを形成することができない。また、凹部では、グラフェンは過剰に厚くなるか、凹部の内部にまでグラフェンが形成されず、グラフェンと凹部の間に空間が形成されてしまう。
【0012】
本発明は、そのような凹凸形状や複雑な形状を表面に有する物体、特に複雑な凹凸形状により表面に三次元構造を有する物体、又は曲面を有する物体上に形成されたグラフェンを提供することを課題の一とする。また、そのような物体上にグラフェンを形成する方法を提供することを課題の一とする。また、そのような物体上に形成されたグラフェンを有する機器を提供することを課題の一とする。
【0013】
また二次電池において、特許文献4の構成では、内部に空隙があるため、炭素粒子数の配置に無駄が生じる。特許文献4から6の構成では、活物質は粒子状であり、リチウムイオンの吸蔵放出に限りがある。
【0014】
そこで本発明は、電極材料に球状でない材料、特に膜状の炭素系材料を用いることを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様を説明する。まず、適切な溶液に酸化グラフェンを分散させる。酸化グラフェンは、1原子層の炭素分子のシートである単層あるいは積層した多層のグラフェンシートであって、ある大きさのグラフェンシートの端の一部がカルボキシル基(−COOH)で終端されている。このため、水等の溶液中では、カルボキシル基から水素イオンが離脱し、酸化グラフェン自体は負に帯電する。この性質を利用して、電気泳動法により物体表面に酸化グラフェンの被膜を形成する。すなわち、陽極とするグラフェンを形成する物体と陰極とを酸化グラフェンの分散液に浸し、陽極陰極間に電位差を与えることで、負に帯電した酸化グラフェンが陽極に引き寄せられて物体表面に付着し、物体表面を覆う酸化グラフェンを形成する。
【0016】
電気泳動により酸化グラフェンを物体表面に形成する際に、酸化グラフェンは、物体表面においてすでに酸化グラフェンが付着した部分以外の部分に付着する。別言すると、すでに酸化グラフェンが付着した部分には、他の酸化グラフェンは付着しにくい。図1(A)〜(C)に物体表面に酸化グラフェンが付着する様子を模式的に示す。適切な溶液100に浸漬した柱状の物体101の表面上にすでに酸化グラフェン102が付着している場合、他の酸化グラフェン103はすでに付着した酸化グラフェン102の上には付着せず、未だ酸化グラフェンが付着していない物体表面の部分に付着する(図1(A)、(B)参照)。これは酸化グラフェンが、グラフェンと比較して導電率が十分に低い絶縁体であるため、物体表面に付着した部分においては電気泳動電着が進行しないためである。また、酸化グラフェンは負に帯電しており、酸化グラフェン同士が静電気的に反発するためである。酸化グラフェンが物体表面と付着した面は、水素イオンが離脱したカルボキシル基と、物体とが付着する。水素イオンが離脱したカルボキシル基と、物体とは結合することもあり、中性化することができる。一方で、付着した酸化グラフェンの溶液側の面、つまり露出している面のカルボキシル基は、未だ水素イオンが離脱しており、負に帯電している。そのため、物体が完全に酸化グラフェンにより被覆された後は、他の酸化グラフェンによってさらに被覆はされにくい(図1(C)参照)。
【0017】
このような過程を経て酸化グラフェンによる被覆が行われるため、物体の表面に形成される酸化グラフェンの厚さは実用的に均一な厚さになる。概略均一な厚さとなる。さらに、物体表面が凹凸形状や複雑な形状を表面に有する物体、又は曲面を有する物体であっても原理的に有効に酸化グラフェンを付着させることが可能である。特に、物体が複雑な凹凸形状により表面に三次元構造を有する場合においても、酸化グラフェンの大きさが構造を形成する物体の大きさよりも十分小さいため、複雑な三次元構造間を移動することが可能であるから、構造内部まで酸化グラフェンを付着させることが可能である。構造内部に進入した酸化グラフェンは、すでに酸化グラフェンが付着した部分を除いた他の部分に付着することになる。
【0018】
その後、真空中あるいは還元性雰囲気中等の適切な雰囲気で酸化グラフェンを加熱することで、酸化グラフェンを還元し、グラフェンを物体表面に形成することができる。なお、グラフェンには15原子%以下の炭素及び酸素以外の元素が含まれていても良く、また、30原子%以下の炭素以外の元素が含まれていても良い。被覆する物体の形状や大きさにも寄るが、用いる酸化グラフェンの一辺の長さは10μm以下であることが好ましい。凹凸形状や複雑な形状を有する物体の表面を、より緻密にかつ確実に被覆することができるためである。
【0019】
なお、グラフェンの形成の対象となる物体の表面は導電性を呈しても良いし、電気泳動法による電着が可能な程度において、物体の表面に非導電性の物質が存在していても良い。
【0020】
また、本発明の一態様は、二次電池の電極材料として、膜状の炭素系材料(炭素系被膜)を用いる。膜状の炭素系材料は凹凸形状の凸部に着接され前記凹凸形状を被覆するように設けられる。つまり膜状の炭素系材料は凸部と凸部にわたって設けることができる。凹凸形状は集電体に形成された凹凸形状であっても、活物質で構成される凹凸形状であってもよい。
【0021】
本発明は、二次電池の電極材料として、凸部に密着する炭素系被膜を設けることができる。つまり、凸部の周囲に炭素系被膜を設けることができる。
【0022】
膜状の炭素系材料は2枚以上1000枚以下、好ましくは100枚以上300枚以下のグラフェンを有する。膜状の炭素系材料の膜厚は、2枚から3枚のグラフェンが積層されると、1nmから2nmの膜厚となる。膜状の炭素系材料は、非晶質であっても、結晶質であってもよい。
【0023】
凸部において、直径に対する長さは2〜10000倍、好ましくは10〜100倍となる。柱状である。長いと、凸部は集電体に対して垂直に形成されることは難しく、凸部が曲がったり、集電体に対して横たわることとなる。また凸部の材質によって、凸部が曲がることもある。このような様子から、ウィスカ状(髭状)と表現することができる。
【発明の効果】
【0024】
従来の方法では困難であった、表面が凹凸形状や複雑な形状である物体、特に複雑な凹凸形状により表面に三次元構造を有する物体、又は表面が曲面である物体の表面上にグラフェンを形成することが可能となる。
【0025】
また、表面が凹凸形状や複雑な形状である物体、特に複雑な凹凸形状により表面に三次元構造を有する物体、又は表面が曲面である物体においても、構造内部にまで実用的に均一な厚さでグラフェンを形成することができる。
【0026】
また、表面が実用的に均一な厚さのグラフェンで覆われた物体は、物体が何らかの要因で膨張しても、グラフェンが十分な柔軟性を有しているため物体が破砕してしまうことを防止できる。
【0027】
また、膜状の炭素系材料を二次電池の電極材料に用いる場合には、負極活物質としては、活物質中のリチウムの拡散パスが短い利点がある。導電助剤としては、広範囲に導電ネットワークを構築できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一形態であるグラフェンの作製方法を説明する図。
【図2】実施の形態に用いる装置を説明する図。
【図3】Siウィスカの平面SEM写真。
【図4】Siウィスカの平面SEM写真及び断面TEM写真。
【図5】CV測定の結果を示す図。
【図6】電池のサイクル特性を説明する図。
【図7】Siウィスカとこれを被覆するグラフェンの断面TEM写真。
【図8】コイン型の二次電池の構造を説明する図。
【図9】電気機器の一例を説明する図。
【図10】Siウィスカのラマン分光測定によるプロファイル。
【図11】本発明の電極を示す図。
【図12】本発明の電極を示す図。
【図13】本発明の電池を示す図。
【図14】実施例に用いた作製装置を示す図。
【図15】本発明の膜状の炭素系材料を示す図。
【図16】本発明の膜状の炭素系材料を示す図。
【図17】本発明の膜状の炭素系材料を示す図。
【図18】本発明の膜状の炭素系材料を用いた電池のサイクル特性を示す図。
【図19】酸化グラフェンを分散させた水溶液を用いた電池のサイクル特性を示す図。
【図20】本発明のシリコンウィスカを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施の形態について説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0030】
(実施の形態1)
本実施の形態では、物体表面にグラフェンを形成する方法について説明する。酸化グラフェンは、グラファイトを酸化して、酸化グラファイトを作製し、これに超音波振動を加えることで得られる。詳細は特許文献3を参照すればよい。また、市販の酸化グラフェンを利用してもよい。
【0031】
酸化グラフェンを水、クロロホルム、N,N−dimethylformamide(DMF)、又はN−methylpyrrolidone(NMP)等の溶媒に分散させる。溶媒は極性溶媒であることが好ましい。酸化グラフェンの濃度は1リットル当たり0.1g乃至10gとすればよい。
【0032】
図2に本実施の形態で用いる装置の図を示す。容器200に酸化グラフェンを分散させた溶液201を入れ、そこにグラフェンを付着させる物体202を入れ、これを陽極とする。また、溶液に陰極となる導電体203を入れ、陽極と陰極の間に適切な電圧(例えば、5V乃至20V)を加えて電気泳動電着を行う(このような電着方法を、以下においては電気泳動法という。)。なお、電圧は一定でなくてもよい。陽極と陰極の間を流れる電荷量を測定することで、物体に付着した酸化グラフェンの厚さを見積もることができる。酸化グラフェンの陽極への付着は、陽極が全体的に被覆された段階で進まなくなる。このため、陽極を酸化グラフェンで完全に被覆するために必要な時間を予め把握しておくことで、最短の時間で完全な被覆を完了することができる。
【0033】
酸化グラフェンの付着が完了したら、物体を溶液から引き上げ、乾燥させる。さらに、真空中あるいは不活性ガス(窒素あるいは希ガス等)中等の還元性の雰囲気で150℃以上、好ましくは200℃以上の温度で加熱する。加熱する温度が高いほど、また、加熱する時間が長いほど、酸化グラフェンがよく還元され、純度の高い(すなわち、炭素以外の元素の濃度の低い)グラフェンが得られる。酸化グラフェンは100℃以上の加熱温度で還元されることがわかっている。より高温で加熱する程好ましいが、加熱温度は物体との反応性も考慮して決定されるべきである。
【0034】
なお、得られるグラフェンの電子伝導性を高めるために、上記加熱処理は高温での処理が好ましい。例えば、ガラス基板上の酸化グラフェンを加熱してグラフェンに還元したところ、加熱温度100℃(1時間)では多層グラフェンの抵抗率は240MΩcm程度であるが、加熱温度200℃(1時間)では4kΩcmとなり、300℃(1時間)では2.8Ωcm(いずれも8試料の平均値)となる。
【0035】
このようにして物体の表面に付着した酸化グラフェンは還元され、グラフェンとなる。その際、隣接するグラフェン同士が結合し、全体として、より巨大なシート状あるいは網目状のネットワークを形成する(以下、このようなグラフェンにより形成されたネットワークをグラフェンネットとよぶ。)。このようにして形成されたグラフェンは、物体に凹凸があっても、その凹部にも凸部にもほぼ均一な厚さで形成される。物体に曲面がある場合も同様である。
【0036】
(実施の形態2)
本実施の形態では、膜状の炭素系材料を有する電極について説明する。
【0037】
図11に示すように、電極は、集電体1100と、膜状の炭素系材料1102を有する。膜状の炭素系材料1102は、集電体1100上に設けてもよいが、表面積を広げるように保持されているとよい。例えば、集電体1100上の複数の凸部1101(それぞれを1101a〜1101eとする)で保持する。つまり、膜状の炭素系材料1102は、複数の凸部1101にわたって設けることができる。
【0038】
膜状の炭素系材料1102は1枚以上1000枚以下、好ましくは100枚以上300枚以下の層が積層されたグラフェン1104を有する。グラフェンネットはグラファイトと以下に示すいずれかの点で異なる。
・積層方向(Z軸方向)において、ファンデルワールス力で結合している点。
・積層数が多い点。
・層の端部がふぞろいである点。
・一層を構成する炭素の環員数が多く、例えば9以上であり、間隙が広い点。
【0039】
上記いずれか一の特徴を備えたグラフェンネットは、リチウムイオンの吸蔵率を高めることができる。さらに膜状であるため、リチウムイオンの吸蔵放出に有利である。
【0040】
膜状の炭素系材料の膜厚は、2枚から3枚の層が積層されると、1nmから2nmの膜厚となる。膜状の炭素系材料は、非晶質であっても、結晶質であってもよい。
【0041】
このような膜状の炭素系材料は導電性を有する。膜状の炭素系材料を負極の導電助剤に用いることができる。膜状の炭素系材料は表面積が広いため、導電助剤として効果的である。
【0042】
膜状の炭素系材料を負極の活物質に用いることができる。膜状の炭素系材料にリチウムが吸蔵される。グラフェンの枚数は、1枚以上1000枚以下、好ましくは100枚以上300枚以下が望ましい。グラフェンの枚数が多いほど、効率的にリチウムを吸蔵することができるからである。
【0043】
膜状の炭素系材料であれば、球状の場合と比較して、導電ネットワークを自身で構築することができる。バインダや導電助剤としての機能も有するため、バインダや導電助剤の添加を低減し、または省略することができる。このため、活物質の量を増やすことができる。
【0044】
膜状の炭素系材料は、複数の凸部1101の表面を覆うように、つまり複数の凸部1101a〜1101eに沿って設けてもよい。隣接する凸部の間に空間が生じることなく設けてもよい。例えば、凸部1101aと、凸部1101bとの間に空間が生じないように設ける。グラフェンの量を増やすことができる。
【0045】
膜状の炭素系材料を複数の凸部1101に沿って設けるには、電気泳動法を用いる。酸化グラフェンを分散させた水溶液を用いて、一定の時間電圧をかける方法である。以下の実施例で作製条件等を説明する。
【0046】
また、電気泳動法とは異なる方法として、浸漬法を用いて、複数の凸部1101に沿った膜状の炭素系材料を設けることもできる。浸漬法とは、酸化グラフェンを分散させた水溶液に、電圧をかけることなく、複数の凸部が設けられた集電体を漬ける方法である。この場合、複数の凸部1101と、膜状の炭素系材料との間に空間が生じることがある。
【0047】
このような複数の凸部1101は、集電体1100の表面に形成することができる。また複数の凸部1101は、集電体1100の表面を削って形成することができる。
【0048】
複数の凸部1101a〜1101eは、直径が50nm以上10μm以下、好ましくは500nm以上3μm以下である。凸部の軸における長さは0.5μm以上1000μm以下、好ましくは1μm以上100μm以下である。直径に対する長さは2〜10000倍、好ましくは10〜100倍を満たすとよい。その形状を、柱状と呼ぶ。凸部の側面は丸みを有するとよい。その形状を、円柱と呼ぶ。さらに凸部の先端は丸みを有すると好ましい。丸みにより、膜状の炭素系材料に亀裂が生じたり、破壊されることを防止する。凸部は、球状や半球状(ドーム型)でもよい。
【0049】
複数の凸部の形状は、ウィスカ状(髭状)とすることもできる。この場合、複数の凸部の形状は互いに異なる。ウィスカ状の凸部は長いため、集電体に対して垂直に形成されることは難しく、ウィスカ状の凸部は曲がったり、集電体に対して横たわったり、近くのウィスカ状の凸部同士で絡まること、近くのウィスカ状の凸部同士で架橋することもある。また一つのウィスカ状の凸部で円を描いたりする。
【0050】
ウィスカ状の凸部にはシリコンを有するシリコンウィスカを用いることができる。シリコンウィスカをはじめとして、複数の凸部は、非晶質であっても、結晶質であってもよい。非晶質であれば、結晶質の場合と比較して、折れにくい。またシリコンウィスカであれば、芯部が結晶性を有し、芯部の周りは非晶質であるとよい。一定の強度に加えて、折れにくさを備えることができる。
【0051】
シリコンウィスカと、膜状の炭素系材料とを有する負極であれば、両者を活物質とすることができる。シリコンのリチウム吸蔵の特性と、炭素のリチウム吸蔵の特性を合わせた負極を提供することができる。すなわち、シリコンのリチウム吸蔵の能力に、炭素のリチウム吸蔵の能力を加えた、リチウム吸蔵能力の高い負極を提供することができる。
【0052】
また複数の凸部1101a〜1101eの形状やこれらの配置は、膜状の炭素系材料を支持することができれば、特に限定されない。一つの凸部であっても、膜状の炭素系材料を支持することはできる。一つの凸部に支持された、膜状の炭素系材料であれば、集電体に向かって垂れ下がることとなる。膜状の炭素系材料は、集電体に向かって垂れ下がった方が、表面積を広く取ることができる。
【0053】
上述したとおり、凸部において、長いと折れる恐れがある。凸部にリチウムが吸蔵されると、折れる危険性がより高まる。このような凸部の折れを、膜状の炭素系材料によって防止できる。
【0054】
このような膜状の炭素系材料を二次電池の負極に用いると、球状の場合と比較して、リチウムイオンの吸蔵放出に有利である。さらに、2枚以上1000枚以下、好ましくは100枚以上300枚以下の層構造を有するグラフェンであれば、層間にリチウムが吸蔵されるため、球状の活物質より、効率的にリチウムを吸蔵することができる。
【0055】
(実施の形態3)
本実施の形態では、複数の凸部1101の周囲に炭素系材料を設けた構造について説明する。
【0056】
図12に示すように、複数の凸部1101を被覆する炭素系材料1103を有する。炭素系材料1103は、1枚以上1000枚以下、好ましくは100枚以上300枚以下のグラフェン1104を有する。炭素系材料の膜厚は、2枚から3枚のグラフェンが積層されると、1nmから2nmの膜厚となる。炭素系材料は、非晶質であっても、結晶質であってもよい。
【0057】
その他の構成は、実施の形態2を参照することができ、膜状の炭素系材料1102を設けることができる。
【0058】
炭素系材料は導電性を有する。従って、負極の導電助剤に用いることができる。実施の形態2で示したような膜状の炭素系材料1102を設けると、炭素系材料1103とあわせて、を複数の炭素系材料を設けたこととなり、導電助剤としての機能が高まる。
【0059】
また、炭素系材料は、活物質として用いることができる。実施の形態2で示したような膜状の炭素系材料1102を設けると、膜状の炭素系材料1102とともに、炭素系材料1103を活物質として用いることができる。また炭素系材料1103を活物質として用いたとき、膜状の炭素系材料1102は導電助剤として機能することもできる。いずれにしても、炭素系材料を複数設けたことにより、電極としての機能が向上する。
【0060】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明に係る負極を有するラミネート型の二次電池の形態について説明する。
【0061】
図13(A)は、ラミネート型の二次電池1301の平面図であり、図13(A)の一点鎖線A−Bの断面図を図13(B)に示す。図13(A)に示すラミネート型の二次電池1301は、外装部材1303の内部に蓄電セル1305を有する。また、蓄電セル1305に接続する端子部1307及び端子部1309を有する。外装部材1303は、ラミネートフィルム、高分子フィルム、金属フィルム、金属ケース及びプラスチックケースなどを用いることができる。
【0062】
図13(B)に示すように、蓄電セル1305は、負極1313と、正極1315と、セパレータ1317と、電解液1319と、を有する。セパレータ1317は、負極1313と正極1315の間に設けられている。外装部材1303は、電解液1319で満たされている。
【0063】
負極1313は、上記実施の形態を参照にして構成され、少なくとも負極集電体1321、負極活物質層1323を有する。正極1315は、少なくとも正極集電体1325、正極活物質1327を有する。負極活物質層1323は、負極集電体1321の一方または両方の面に設けることができる。すなわち、負極集電体1321の一方の面に膜状の炭素系材料を形成してもよいし、両方の面に膜状の炭素系材料を形成してもよい。正極活物質層1327は、正極集電体1325の一方または両方の面に設けられている。
【0064】
また、負極集電体1321は、端子部1309に接続される。また、正極集電体1325は、端子部1307に接続される。また、端子部1307及び端子部1309は、それぞれ一部が外装部材1303の外側に導出されている。
【0065】
なお、本実施の形態では、ラミネート型の二次電池1301の外部形態として密封された薄型の二次電池を示しているが、これに限定されず、二次電池の外部形態としては、ボタン型、円筒型または角型など様々な形状を用いることができる。また、本実施の形態では、正極、負極及びセパレータが積層された構造を示したが、正極、負極及びセパレータが捲回された構造であってもよい。
【0066】
正極集電体1325の材料としては、アルミニウムまたはステンレスなどを用いる。正極集電体1325の形状は、箔状、板状または網状などにすることができる。
【0067】
正極活物質層1327は、LiFeO、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO、V、Cr、MnO、その他のリチウム化合物を材料として用いることができる。なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ベリリウムイオンまたはマグネシウムイオンの場合には、正極活物質層1327として、前記リチウム化合物におけるリチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムまたはカリウムなど)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムなど)、ベリリウムまたはマグネシウムを用いてもよい。
【0068】
電解液1319の溶質としては、キャリアイオンであるリチウムイオンを有する材料を用いる。電解液1319の溶質として例えば、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、Li(CSONなどのリチウム塩がある。なお、キャリアイオンが、リチウム以外のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンの場合には、電解液1319の溶質として、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、ストロンチウム塩またはバリウム塩など)、ベリリウム塩またはマグネシウム塩などを用いることができる。
【0069】
また、電解液1319の溶媒としては、リチウムイオンの移送が可能な材料を用いる。電解液1319の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン及びテトラヒドロフランなどが挙げられ、これらの一または複数を用いることができる。また、電解液1319の溶媒としては、ゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性を含めた安全性が高まり、二次電池1301の薄型化及び軽量化が可能となる。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドまたはフッ素系ポリマーなどが挙げられる。
【0070】
電解液1319としては、LiPOなどの固体電解液を用いることができる。
【0071】
セパレータ1317は、絶縁性の多孔体を用いる。セパレータ1317の材料としては、例えば、セルロース(紙)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0072】
本発明の膜状の炭素系材料を負極の電極材料として用いると、二次電池のリチウム吸蔵効率を高めることができる。
【0073】
(実施の形態5)
本発明の一態様に係る二次電池の一例として、コイン型の二次電池の構造を、図8を用いて説明する。
【0074】
図8に示すように、コイン型の二次電池は、負極804、正極832、セパレータ810、電解液(図示せず)、筐体806および筐体844を有する。このほかにはリング状絶縁体820、スペーサー840およびワッシャー842を有する。
【0075】
負極804は、負極集電体800上に負極活物質層802を有する。負極活物質層802として、表面をグラフェンで十分かつ均一に被覆したウィスカ状構造物を有するシリコンを用いる。すなわち、本発明の膜状の炭素系材料を負極の電極材料として用いると、二次電池のリチウム吸蔵効率を高めることができる。また負極集電体800としては、例えば銅を用いるとよい。
【0076】
正極集電体828の材料としては、アルミニウムを用いるとよい。正極活物質層830は、正極活物質の粒子をバインダーや導電助剤ともに混合したスラリーを正極集電体828上に塗布して、乾燥させたものを用いればよい。
【0077】
正極活物質の材料としては、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、珪酸マンガンリチウム、珪酸鉄リチウム等を用いることができるが、これに限らない。活物質粒子の粒径は20nm乃至100nmとするとよい。また、焼成時にグルコース等の炭水化物を混合して、正極活物質粒子にカーボンがコーティングされるようにしてもよい。この処理により導電性が高まる。
【0078】
電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒にLiPFを溶解させたものを用いるとよいが、これに限られない。
【0079】
セパレータ810には、空孔が設けられた絶縁体(例えば、ポリプロピレン)を用いてもよいが、リチウムイオンを透過させる固体電解質を用いてもよい。
【0080】
筐体806、筐体844、スペーサー840およびワッシャー842は、金属(例えば、ステンレス)製のものを用いるとよい。筐体806および筐体844は、負極804および正極832を外部と電気的に接続する機能を有している。
【0081】
これら負極804、正極832およびセパレータ810を電解液に含浸させ、図8に示すように、筐体806を下にして負極804、セパレータ810、リング状絶縁体820、正極832、スペーサー840、ワッシャー842、筐体844をこの順で積層し、筐体806と筐体844とを圧着してコイン型の二次電池を作製する。
【0082】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0083】
(実施の形態6)
本発明の一態様に係る二次電池は、電力により駆動する様々な電気機器の電源として用いることができる。
【0084】
本発明の一態様に係る二次電池を用いた電気機器の具体例として、表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画または動画を再生する画像再生装置、携帯電話、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、エアコンディショナーなどの空調設備、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、透析装置などが挙げられる。また、二次電池からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電気機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車、内燃機関と電動機を併せ持った複合型自動車(ハイブリッドカー)、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車などが挙げられる。
【0085】
なお、上記電気機器は、消費電力の殆ど全てを賄うための二次電池(主電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る二次電池を用いることができる。或いは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電気機器への電力の供給を行うことができる二次電池(無停電電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る二次電池を用いることができる。或いは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電気機器への電力の供給と並行して、電気機器への電力の供給を行うための二次電池(補助電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る二次電池を用いることができる。
【0086】
図9に、上記電気機器の具体的な構成を示す。図9において、表示装置5000は、本発明の一態様に係る二次電池5004を用いた電気機器の一例である。具体的に、表示装置5000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体5001、表示部5002、スピーカー部5003、二次電池5004等を有する。本発明の一態様に係る二次電池5004は、筐体5001の内部に設けられている。表示装置5000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池5004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池5004を無停電電源として用いることで、表示装置5000の利用が可能となる。
【0087】
表示部5002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0088】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0089】
図9において、据え付け型の照明装置5100は、本発明の一態様に係る二次電池5103を用いた電気機器の一例である。具体的に、照明装置5100は、筐体5101、光源5102、二次電池5103等を有する。図9では、二次電池5103が、筐体5101及び光源5102が据え付けられた天井5104の内部に設けられている場合を例示しているが、二次電池5103は、筐体5101の内部に設けられていても良い。照明装置5100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池5103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池5103を無停電電源として用いることで、照明装置5100の利用が可能となる。
【0090】
なお、図9では天井5104に設けられた据え付け型の照明装置5100を例示しているが、本発明の一態様に係る二次電池は、天井5104以外、例えば側壁5105、床5106、窓5107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
【0091】
また、光源5102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0092】
図9において、室内機5200及び室外機5204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る二次電池5203を用いた電気機器の一例である。具体的に、室内機5200は、筐体5201、送風口5202、二次電池5203等を有する。図9では、二次電池5203が、室内機5200に設けられている場合を例示しているが、二次電池5203は室外機5204に設けられていても良い。或いは、室内機5200と室外機5204の両方に、二次電池5203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池5203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機5200と室外機5204の両方に二次電池5203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池5203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
【0093】
なお、図9では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る二次電池を用いることもできる。
【0094】
図9において、電気冷凍冷蔵庫5300は、本発明の一態様に係る二次電池5304を用いた電気機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫5300は、筐体5301、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303、二次電池5304等を有する。図9では、二次電池5304が、筐体5301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫5300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池5304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池5304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫5300の利用が可能となる。
【0095】
なお、上述した電気機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電気機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る二次電池を用いることで、電気機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
【0096】
また、電気機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、二次電池に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫5300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303の開閉が行われない夜間において、二次電池5304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303の開閉が行われる昼間において、二次電池5304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
【0097】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0098】
本実施例では、ウィスカ状のシリコン表面に実施の形態1で示した電気泳動法によりグラフェンを形成した試料(以下、試料Aという)について説明する。本実施例に示すウィスカ状のシリコン300はチタンシート上に複数形成され、図3(A)に示すように様々な方向に延在する円柱状を有している。このためグラフェンを形成する試料表面は、複数のウィスカ状のシリコン300の存在により複雑な3次元構造を呈している。
【0099】
酸化グラフェンを分散させた水溶液は以下のように作製した。グラファイト(鱗片カーボン)と濃硫酸を混合したものに、過マンガン酸カリウムを加えた後、2時間撹拌した。その後、純水を加え、加熱して15分撹拌し、さらに過酸化水素水を加えることで、酸化グラファイトを含む黄褐色の溶液を得た。さらに、これを濾過し、沈殿物に塩酸を加え洗浄した後、純水で洗浄した。そして、超音波処理を2時間行い、酸化グラファイトを酸化グラフェンにし、酸化グラフェンを分散させた水溶液を得た。
【0100】
この水溶液に、上記のウィスカ状のシリコンをチタンシートごと浸漬し、また、他方の電極としてステンレス板を浸漬した。ここでは、チタンシートとステンレス板との距離を1cmとした。そして、チタンシートを陽極、ステンレス板を陰極として、10Vの電圧を30秒かけた。この間に流れた電荷量は0.089Cであった。図2に装置の模式図を示す。
【0101】
その後、チタンシートを取り出し、乾燥させ、さらに、真空中(0.1Pa以下)、300℃で10時間加熱した。このようにして試料Aを作製した。得られたウィスカ状のシリコンの表面を観察したものを図3(B)に示す。一見するとグラフェンを形成する前の図3(A)と目立った違いが認められないが、ウィスカ表面の所々に黒い部分が斑模様のように確認される。これは多層グラフェンを構成するグラフェンシートの積層数が多いため厚くなった部分であると考えられる。一方このグラフェンシートの積層数の違いは、実用的な均一性に影響を与える程度のものではない。また、写真の中央部には糸状あるいは膜状の物体が、ウィスカ間にかかっている様子が認められる。
【0102】
ラマン分光法より、グラフェンの特徴であるDバンドとGバンドのピークがウィスカのどの箇所を測定しても認められたことから、ウィスカ表面のほぼ全面がグラフェンで覆われていると考えられる。図10(A)はグラフェンによる被覆を行っていないウィスカ状のシリコンについてのラマン分光測定の結果である。これに対して、図10(B)はグラフェンで被覆したウィスカ状のシリコンについてラマン分光測定を行った結果である。図10(B)において1340cm−3付近及び1580cm−3付近で、図10(A)では見られないピークが確認される。1340cm−3付近に観測されるピークはDバンドに由来するピークで、グラフェンに欠陥や不純物があると観測される。また、1580cm−3付近に観測されるピークは、Gバンドに由来する。
【0103】
図7にグラフェンで被覆したウィスカの断面観察写真を示す。図7(A)は円柱状のウィスカを輪切りにし透過型電子顕微鏡により観察したものである。円状に見える部分がシリコンからなるウィスカ700であり、その周囲に極めて薄いグラフェンが形成されている。また観察のため、最表面に厚くカーボン蒸着膜701を設けている。図7(A)の一部の拡大を図7(B)に示す。左側がウィスカ700の一部であり、その端部に極めて薄いグラフェン702が形成されている。その厚さは約1〜2nmであり、単層グラフェンの2〜3層分である。なお、観察した試料においてはウィスカ状のシリコンとグラフェンとの間に自然酸化膜703を形成している。シリコン上に非導電性の自然酸化膜703があった場合でも、電気泳動法において十分にグラフェンを形成することができることがわかる。
【0104】
図7(A)に示すウィスカは、円状の断面において芯となる中心部分704は結晶質のシリコン(結晶シリコン)で構成される。一方中心部分704の周辺を厚く覆う外殻部分705は非晶質のシリコン(アモルファスシリコン)で構成される。結晶質のシリコンと非晶質のシリコンは図7(A)で示すように、透過型電子顕微鏡写真においてコントラストの違いとして判別することができる。本実施例の構成を二次電池の電極に適用した場合に、結晶質のシリコンのみからなるウィスカを活物質として用いる場合よりも、キャリアとなるリチウム等のイオンの吸蔵と放出に伴う電極の体積変化に強く、電極の破壊が生じにくい。特に、キャリアは結晶質よりも非晶質の方が吸蔵されやすいため、外殻部分705を厚く形成することで二次電池の容量を向上させることができる。
【0105】
比較例として、ウィスカ状のシリコン表面に塗布法によりグラフェンを作製した(試料B)。試料Bでは、試料Aと同じ酸化グラフェンを分散させた溶液にチタンシートごと浸漬した後、これを引き上げた。その後、試料Aと同じ条件で試料Bを乾燥および加熱した。この加熱工程で、酸化グラフェンは還元されてグラフェンとなる。
【0106】
図4(A)は試料Bの表面の状態を示す。図4(A)に示されるように、ウィスカ状のシリコンの凸部と凸部の間をつなぐようにグラフェンが膜状に形成されていることが確認できる。しかしこの膜状のグラフェンの存在により、膜下のウィスカ状のシリコンがどのような状態となっているか認められない。また、膜状のグラフェンも部分的には形成されていない箇所もあり、同一試料内においてもグラフェンの厚さが大きくばらついていることが考えられる。
【0107】
図4(A)の凹部の状態を確認するため、断面を観察すると、図4(B)に示されるように、グラフェンを含む膜状の層400とウィスカ状のシリコン401の凹部の間には空間402が形成されていることがわかった。この空間に接するウィスカ状のシリコン401の表面には、グラフェンが形成されていないことがわかった。なお、試料観察のため、このグラフェンの上にカーボンの蒸着膜を形成したため、図4(B)ではグラフェンの上にカーボンの蒸着膜があることに注意する必要がある。
【0108】
このように、塗布法では、複雑な形状や構造の物体表面を十分に被覆するグラフェンを形成することは困難であった。また、グラフェンの厚さの試料間のばらつきや、試料内のばらつきが大きく、グラフェンの厚さを制御することが困難であった。
【0109】
これに対し、電気泳動法では、一旦酸化グラフェンが付着した部分には他の酸化グラフェンが付着しにくくなるため、極めて再現性よく均一な被膜を形成することができた。このように、実施の形態1で示される電気泳動法によるグラフェンの形成は、塗布法に比較して、極めて均一性、確実性が高いことが示された。
【実施例2】
【0110】
本実施例では、ウィスカ状のシリコン表面にグラフェンを形成し、これをリチウムイオン二次電池の負極として用いた場合と、表面に何の処理も施さなかった場合とを比較する。リチウムイオン二次電池に用いられる電解液は、電極(特に負極)と反応して、電極表面に電解液を分解した化合物膜が形成されることが知られている。
【0111】
このような化合物膜はSEI(Solid Electrolyte Interface)と呼ばれ、電極と電解質の反応を和らげ、安定化させるために必要であると考えられている。しかしながら、その厚さは電極と電解質の組み合わせによって決定されるため、必要以上に厚くなることもある。
【0112】
SEI形成に伴う悪影響としては、クーロン効率の低下、電極と電解液間のリチウムイオン伝導性の低下、電解液の消耗などが挙げられる。従来、このようなSEIの生成を抑制するためには、蒸着法やCVD法により電極表面を被覆することが試みられてきた。
【0113】
しかし、リチウムイオン二次電池の電極は表面積が大きい方が好ましいため、例えば、ウィスカ状のシリコンのような複雑な形状を用いることが好ましい。ところが、従来の蒸着法やCVD法では十分に複雑な形状の物体表面を被覆することはできない。一方で、実施の形態1あるいは実施例1で示した方法であれば、複雑な形状を有する複数のウィスカ状のシリコンを有する物体表面であっても適切に被覆できる。これによりSEIの過度の生成を抑制しつつ、電極の表面積を増大させることが可能となる。
【0114】
本実施例では、試料Cと試料Dの2種類の試料を用意した。試料Cは表面に何の処理も施さなかったウィスカ状のシリコンを複数有するものであり、初期の表面の状態は図3(A)に示されるものと同等である。試料Dは実施例1に示した方法で表面にグラフェンを形成したウィスカ状のシリコンを複数有するもので、初期の表面の状態は図3(B)に示されるものと同等である。
【0115】
次に、グラフェンによる被覆処理を施した試料と、何の処理も施さなかった試料のそれぞれについて、CV(サイクリックボルタンメトリー)測定を行った。測定には三極式のセルを使用し、作用極にウィスカ状のシリコンを、参照極と対極には金属リチウムを、電解液にはエチレンカーボネート(EC)溶液とジエチルカーボネート(DEC)の混合液(体積比1:1)に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1mol/Lの濃度で溶かしたものを用い、走査速度0.1mV/秒、走査範囲0V〜1V(vs.Li/Li)で10サイクル行った。ただし第1サイクルは開回路電位から走査を開始している。
【0116】
CV測定結果から、第1サイクルの高電位での還元電流に着目したグラフを図5に示す。0.20V(vs.Li/Li)付近から急激に還元電流が増加しているが、これはシリコンとリチウムとの合金化反応が起きていることを示している。0.20V(vs.Li/Li)より高い電位での還元電流は、電池としては不要な分解反応に由来し、この分解反応により電極表面に表面被膜が形成されることが知られている。この表面被膜は薄いほうが望ましい。図5に示されるように、グラフェン被膜処理を施した試料の方が高い電位において還元電流が小さかった。これはグラフェンがあることにより電極(ここではウィスカ状のシリコン)表面での被膜形成が抑制されていることを示している。
【0117】
上記の試料Cあるいは試料Dを正極、金属リチウムを負極、電解液にはエチレンカーボネート(EC)溶液とジエチルカーボネート(DEC)の混合液(体積比1:1)に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1mol/Lの濃度で溶かしたものを用い、セパレータとして、微細な穴のあいたポリプロピレンを用いたコインセルを作製した。そしてコインセルの充放電をおこない、リチウムの放出と吸収に伴う容量の変化を測定した。充放電に際しては、1サイクル目の電流値は50μA、2サイクル目以降は4mAとした。電位範囲は0.03〜1.0V(vs.Li/Li)で行った。
【0118】
図6(A)に示すように、リチウムの放出と吸収を繰り返すと、試料C、試料Dとも容量が低下するが、10サイクル以降は試料Dの方では容量が増加し、試料Cよりも大きくなった。図6(B)には、30サイクル目のリチウムの放出(あるいは吸収)に伴う電位の変動と容量の関係を示す。試料Dの方が試料Cよりも容量が大きいことから、試料Dの方がより多くのリチウムを放出でき、また、より多くのリチウムを吸収できることがわかる。これは、試料Dの方が、SEIが厚く形成されなかったことによるものと考えられる。
【実施例3】
【0119】
本実施例では、凸部としてシリコンウィスカを用い、電気泳動法で膜状の炭素系材料を形成する場合を説明する。
【0120】
集電体として、純度99.5%、厚さ100μmのチタンシートを用意した。集電体上に、シリコンウィスカを形成する。シリコンウィスカは、LPCVD(Low Pressure CVD)法により形成する。材料ガスとしてシランガス及び窒素ガスの流量をSiH/N=300sccm/300sccmとして反応室内に導入し、反応室内の圧力を150Paとし、反応室内の温度を550℃として行った。集電体の昇温時には、アルゴンを反応室内に導入した。シリコンウィスカの直径は700nmとなった。図20に示すように、シリコンウィスカの中心部Aは結晶性を有し、中心部以外の外周部Bは非晶質であった。シリコンウィスカが形成されたチタンシートを0.5%のフッ酸で10分間洗浄した。
【0121】
図14に示すように、シリコンウィスカが形成されたチタンシート1601を、酸化グラフェンを分散させた水溶液1602に漬けた。水溶液は以下のように作製した。グラファイト(鱗片カーボン)と濃硫酸を混合したものに、過マンガン酸カリウムを加えた後、2時間撹拌した。その後、純水を加え、加熱して15分撹拌し、さらに過酸化水素水を加えることで、酸化グラファイトを含む黄褐色の溶液を得た。さらに、これを濾過し、塩酸を加えた後、純水で洗浄した。そして、超音波処理を2時間おこない、酸化グラファイトを酸化グラフェンにし、酸化グラフェンを分散させた水溶液を得た。
【0122】
この水溶液に、上記のウィスカ状のシリコンをチタンシート1601ごと浸漬し、また、電極としてステンレス鋼の板(ステンレス板)1603を浸漬した。ここでは、チタンシートとステンレス板との距離を1cmとした。そして、チタンシートを陽極、ステンレス板を陰極として、電源1605を用いて10Vの電圧を15分間かけた。この間に流れた電荷量は0.223Cである。
【0123】
その後、チタンシートを取り出し、乾燥させ、さらに、真空中(0.1Pa以下)、300℃で10時間加熱した。このようにして試料Eを作製した。得られた試料Eの表面を観察したTEM像を図15に示す。図15(A)の中央部には膜状の炭素系材料が、ウィスカ間にかかっている様子が認められる。図15(B)は図15(A)をさらに拡大したものである。これらから、膜状の炭素系材料が、凸部をなすシリコンウィスカの丸みを帯びた先端部から、近くのシリコンウィスカにわたって設けられていることがわかる。シリコンウィスカの先端部からみると、テント状に炭素系材料が設けられているようにみえる。
【0124】
電気泳動法を用いると、膜状の炭素系材料の状態を電荷量で制御できるため、再現性が高い。また大きい面積に対して、膜状の炭素系材料を形成することができる。また膜状の炭素系材料の厚みを制御しやすい。
【0125】
図16には、図15(A)における点線での断面のTEM像を示す。膜状の炭素系材料の厚みは、4.6nm以上5.6nm以下である。8層〜10層が積層されている。
【実施例4】
【0126】
電気泳動法の条件として、10Vの電圧を5分間かけた場合の試料FのTEM像を図17に示す。一部に膜状の炭素系材料を確認することができる。この間に流れた電荷量は0.113Cである。
【実施例5】
【0127】
実施例3のように作製した試料Eのサイクル試験を行った。サイクル試験の条件は、試料Eを正極に、金属リチウムを負極に用い、電解液としてエチレンカーボネート(EC)溶液とジエチルカーボネート(DEC)の混合液(体積比1:1)に対して1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を溶解させたものを用い、セパレータとして、微細な穴のあいたポリプロピレンを用いたコインセルを作製した。そしてコインセルの充放電をおこない、リチウム吸蔵放出の容量変化を測定した。充放電に際しては、1サイクル目のレートは0.2C、2サイクル目以降のレートは0.5Cとした。電位範囲は0.03〜1.0V(vs.Li/Li)で行った。
【0128】
サイクル特性を図18に示す。図18において、X軸はサイクル数(回)、Y軸は容量(mAh/g)を示し、リチウムの吸蔵時の容量変化を示す。リチウムの吸蔵放出が可能であることがわかる。
【0129】
(参考例)
酸化グラフェンを熱処理還元して作成した試料を正極とし、金属リチウムを負極としてサイクル試験を行った。酸化グラフェン水溶液を乾燥させ、さらに、真空中(0.1Pa以下)、300℃で10時間加熱することで正極を作製した。充放電に際しては、電流値を1μAで、電位範囲は0〜1V(vs.Li/Li)で行った。その他の条件は、実施例4と同様である。
【0130】
サイクル特性を図19に示す。図19において、X軸はサイクル数(回)、Y軸は容量(mAh/g)を示す。
【0131】
図19の結果から、熱処理還元して得られた酸化グラフェンを用いて作製された膜状の炭素系材料であっても、活物質としての機能があることがわかる。
【符号の説明】
【0132】
100 溶液
101 物体
102 酸化グラフェン
103 酸化グラフェン
200 容器
201 溶液
202 物体
203 導電体
300 ウィスカ状のシリコン
400 グラフェンを含む膜状の層
401 ウィスカ状のシリコン
402 空間
700 ウィスカ
701 カーボン蒸着膜
702 グラフェン
703 自然酸化膜
704 中心部分
705 外殻部分
800 負極集電体
802 負極活物質層
804 負極
806 筐体
810 セパレータ
820 リング状絶縁体
828 正極集電体
830 正極活物質層
832 正極
840 スペーサー
842 ワッシャー
844 筐体
1100 集電体
1101 凸部
1101a 凸部
1101b 凸部
1101c 凸部
1101d 凸部
1101e 凸部
1102 膜状の炭素系材料
1103 炭素系材料
1104 グラフェン
1301 二次電池
1303 外装部材
1305 蓄電セル
1313 負極
1315 正極
1317 セパレータ
1319 電解液
1321 負極集電体
1323 負極活物質層
1325 正極集電体
1327 正極活物質層
5000 表示装置
5001 筐体
5002 表示部
5003 スピーカー部
5004 二次電池
5100 照明装置
5101 筐体
5102 光源
5103 二次電池
5104 天井
5105 側壁
5106 床
5107 窓
5200 室内機
5201 筐体
5202 送風口
5203 二次電池
5300 電気冷凍冷蔵庫
5301 筐体
5302 冷蔵室用扉
5303 冷凍室用扉
5304 二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化グラフェンを含む溶液に、凹凸形状の表面を有する物体と、電極とを浸漬し、
前記物体を陽極とし前記電極を陰極として電圧加えることにより、前記物体の前記凹凸形状の表面に概略均一な厚さで化グラフェンを付着させ、
前記物体の表面に付着した前記酸化グラフェンを、真空中又は還元性雰囲気中で加熱することで還元しグラフェンとすることを特徴とするグラフェン被覆物体の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記物体の前記凹凸形状はウィスカ状であることを特徴とするグラフェン被覆物体の作製方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記グラフェンに含まれる炭素以外の元素は30原子%以下であることを特徴とするグラフェン被覆物体の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記物体はシリコンを材料とした物体であることを特徴とするグラフェン被覆物体の作製方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記物体はリチウムイオン二次電池の電極に用いられることを特徴とするグラフェン被覆物体の作製方法。
【請求項6】
表面に凹凸形状を有し、前記凹凸形状の凸部に着接され前記凹凸形状を被覆するように設けられた炭素系被膜を有し、前記炭素系被膜は100枚以上300枚以下の層でなるグラフェンを有する
こと特徴とする二次電池の負極。
【請求項7】
集電体と、
前記集電体上に設けられた、表面に凹凸形状を有する負極活物質と、前記凹凸形状の凸部に着接され前記凹凸形状を被覆するように設けられた炭素系被膜とを有し、
前記炭素系被膜は100枚以上300枚以下の層でなるグラフェンを有すること特徴とする二次電池の負極。
【請求項8】
集電体と、
前記集電体上に設けられた、表面に凹凸形状を有する負極活物質と、前記凹凸形状の凸部を被覆するように設けられた第1の炭素系被膜と、前記凹凸形状を被覆するように設けられた第2の炭素系被膜とを有し、
前記第1及び第2の炭素系被膜は100枚以上300枚以下の層でなるグラフェンを有すること特徴とする二次電池の負極。
【請求項9】
請求項7又は8において、前記負極活物質はシリコンを有することを特徴とする二次電池の負極。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか一項に記載の二次電池の負極を有する二次電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−60355(P2013−60355A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176218(P2012−176218)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】