説明

グラフトされた表面官能基を有する高熱伝導性材料

一つの実施態様において、本発明は高熱伝導性材料(30)を提供し、この場合、この材料は、これにグラフトされた表面官能基を有する。これらのグラフトされた表面官能基はその後に、ホスト樹脂マトリックス(32)との連続性結合を形成し、この場合、このマトリックスは高熱伝導性材料(30)が添加されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年7月11日に提出したスミス(Smith)らによるUS出願10/618,125の一部継続出願であり、これを参照して本明細書中に取り入れることとする。さらに本出願は、2004年6月15日に提出したスミス(Smith)らによる仮US出願60/580,023に優先権を主張するものであり、これを参照して本明細書中に取入れることとする。本出願は、さらに米国特許明細書"樹脂内に導入した高熱伝導性材料"、"樹脂の範囲内にアライメントした高熱伝導性材料"および"高熱伝導性充填剤を有する構造化樹脂系"にも関連し、これらは、全てスミスらにより提出されたものである。よって、本明細書中に全てを参照して取入れることとする。
【0002】
本発明の分野は、樹脂中に含浸された表面グラフトされた官能基を有する高熱伝導性材料に関する。
【0003】
どのような形の電気器具の使用でも、電気絶縁コンダクターが必要である。全ての電気系と電子系の大きさを常に減少させ、かつ合理化させる後押しにより、より良好で、かつよりコンパクトな絶縁体ならびに絶縁系を相応して見出す必要がある。
【0004】
容易に表面に接着できる丈夫かつ柔軟な電気絶縁材料のその実用的利便性により、種々のエポキシ樹脂が電気絶縁系において広範に使用されてきた。マイカフレークやガラス繊維のような従来の電気絶縁材料は、表面コーティングでき、かつこれらのエポキシ樹脂に結合して、増大した機械強度、耐薬品性および電気絶縁特性を有する混成材料を製造できる。多くの場合に、エポキシ樹脂は従来のワニスの析出物と置き換わっており、このような材料は幾つかの高電圧電気装置において利用され続けてきた。
【0005】
良好な電気絶縁体は、その性質により良好な断熱材になる傾向があるが、これは望ましくない。断熱挙動は、特に空冷電気機器ならびに部材に関しては、部材ならびに装置の効率と耐久性を全体的に下げてしまう。最大の電気絶縁性と最小の断熱特性を備えた電気絶縁系を作ることが望ましい。
【0006】
電気絶縁材は、大抵は絶縁テープの形で生じ、これ自体は種々の層を有する。これらのタイプのテープに共通しているものは、繊維層の境界で結合した紙の層である。両方の層は樹脂で含浸される傾向がある。絶縁材料の好ましいタイプは、マイカテープである。マイカテープへの改善には、米国特許第6103882号に教示されているような触媒添加マイカテープが含まれる。マイカテープはコンダクターの回りに巻かれて、著しく良好な電気絶縁材を提供する。この例は、図1に記載されている。ここでは記載されているものは、コイル13であり、コンダクター14の多数の折り返しから成り、これは実施例に記載されるように組立てられて焼結コイルになる。ターン絶縁材15は、繊維状材料、例えばガラスまたはガラスと熱処理されたダクロンから製造される。コイル用のグランド絶縁材は、焼結コイル14の回りに、複合材料マイカテープ16の1つ以上の層の巻付けることにより提供される。このような複合材料テープは、例えば、ガラス繊維布またはポリエチレングリコールテレフタレートマットのような柔軟なバッキングシート18と組合わさった紙または小さなマイカフレークのフェルトであってよく、マイカの層20は、これに液体樹脂結合剤により結合している。一般に、複合材料テープ16の多数の層は、電圧の要求に応じてコイルの回りに巻付けられる。丈夫な繊維状材料、例えば、ガラス繊維の外周テープ21の巻付けをコイルに適用してもよい。
【0007】
一般的に、マイカテープ16の多数の層は、通常高電圧コイルに使用される16以上の層でコイルの回りに巻付かれる。次に樹脂がテープ層に含浸される。樹脂は、絶縁テープとは独立に絶縁体としても使用できる。意外にも、絶縁材のこの量は、放散熱の厄介な問題を更に加えることになる。必要なものは、通常の方法のものよりも高い熱を導電でき、電気絶縁材ならびに機械的機能および加熱能力を含めた他の性能因子を妥協しない電気絶縁材である。
【0008】
従来技術を用いる他の欠点も存在するが、そのうちの幾つかを更なる記載の中で明らかにする。
【0009】
発明の概略
上記のことを念頭において、方法と装置は、本発明のものと一致する。これは特に高熱伝導性(HTC)含浸媒体を通るフォノンの輸送を容易にして、HTC材料間の距離を平均フォノン行程の長さ以下に下げる。これはフォノン散乱を減少し、熱源から離れて、より大きなフォノンの正味のフローまたはフラックスを生じる。従って、樹脂は多層絶縁テープのようなホストマトリックス媒体に含浸される。
【0010】
高熱伝導性(HTC)有機−無機ハイブリッド材料は、不連続の(discrete)2相の有機−無機複合材料から、分子合金をベースとする有機−無機連続相材料から、および不連続の有機−デンドリマー複合材料から形成することができ、その際、有機−無機界面はデンドリマー型コア−シェル構造の範囲内で不連続ではない。連続相材料構造は、構造エレメントの長さスケールが熱輸送に重要なフォノン分布よりも短く、または釣り合うことを保証することにより、および/またはマトリックスの全体の構造配列を増強することによりフォノン散乱中心の数を減らすことにより、および/または複合材料内での界面フォノン散乱を効果的に除去または減少することにより、フォノン輸送を増大し、フォノン散乱を減少させて形成してもよい。連続した有機−無機ハイブリッドは、無機、有機または有機−無機ハイブリッドナノ粒子を、線状または架橋ポリマーおよび熱硬化性樹脂中に組込むことにより形成してもよく、その際、ナノ粒子寸法はポリマーまたはネットワークセグメントの長さの大きさないし未満(通常1〜50nmまたはそれ以上)である。これらの種々のタイプのナノ粒子は、反応性表面を含有し、密接に共有結合したハイブリッドの有機−無機均質材料を形成する。類似した要求は、無機−有機デンドリマーに関しても存在し、これは共に反応するか、またはマトリックスポリマーもしくは反応性樹脂と反応して連続材料を形成してもよい。不連続および不連続ではない有機−無機ハイブリッドの両方の場合に、ゾル−ゲル化学を利用して連続分子合金を形成してもよい。結果として得られる材料は、通常の電気絶縁材料よりも高い熱伝導を示し、かつ通常のマイカガラステープ製造において結合樹脂として使用してもよく、未反応の真空含浸樹脂として、および独立材料として利用する場合には回転および静電発電装置ならびに高電圧(約5kV以上)および低電圧(約5kV以下)両方の電気装置、部材および製品において電気絶縁用途を満たす。
【0011】
規定した物理特性と性能特性を有し、かつ有機ホスト材料の存在でのナノからマイクロの大きさの無機充填剤の使用に基づく工学的電気絶縁材料の形成は、有機ホストと密接な界面を形成できる粒子表面の製造を必要とする。このことは、充填剤の表面へ化学基がグラフトし、ホストマトリックスとの表面化学的および物理的適合性を可能にするか、または表面が有機ホストと反応する化学的反応性官能基を含有して、粒子とホストの間で共有結合を形成することにより達成できる。有機ホスト材料の存在でのナノからマイクロの大きさの無機充填剤の使用は、バルク誘電率および電気特性および熱伝導の他に、規定された表面化学を有する粒子の製造を必要とする。殆どの無機材料は、形状、大きさおよび特性のような構造特性の独立した選択を可能せず、種々の電気絶縁用途に適応しないか、または適切なバランスの特性と性能を有する複合材料を達成しない。このことは、適切なバルク特性と形状および大きさの特性を有する粒子を選択することにより達成してもよく、よって表面と界面特性ならびに他の特性を変更し、電気絶縁用途に必要な複合材料特性や性能を更にコントロールしてもよい。このことは、金属および非金属無機酸化物、窒化物、炭化物ならびに混合系の製造を含む粒子の適切な表面被覆剤により、および電気絶縁系においてホスト材料として働く適切な有機マトリックスと反応できる反応性表面基を含有する有機被覆剤により達成してもよい。結果として得られる未反応または部分的に反応した形のハイブリッド材料および複合材料は、マイカガラス製造において結合樹脂として、通常のマイカテープ製造用の未反応の真空含浸樹脂として、他のガラス繊維、カーボン繊維およびplyタイプならびに織物複合材料において、および独立した材料として使用して、回転および静電発電装置、高電圧および低電圧両方の電気装置、部材および製品における電気絶縁用途を満たしてもよい。
【0012】
一つの実施態様では、本発明は、ホスト樹脂マトリックスと高熱伝導性充填剤を有する連続性高熱伝導性樹脂を提供する。高熱伝導性充填剤は、高熱伝導性充填剤に対してグラフトされた表面官能基を介してホスト樹脂マトリックスとの連続した有機−無機複合材料を形成し、かつ、ホスト樹脂マトリックスとの共有結合を形成する。
【0013】
他の実施態様では、本発明は、ホスト樹脂ネットワークと、前記ホスト樹脂ネットワーク中に均一に分散し、ほぼ完全にホスト樹脂ネットワークと共反応する無機高熱伝導性充填剤とを有する、有機−無機境界を架橋するグラフトされた官能基を有する、連続性有機−無機樹脂を提供する。高熱伝導性充填剤は、1〜1000nmの長さと10〜50のアスペクト比を有する。高熱伝導性充填剤は、少なくとも1種の酸化物、窒化物および炭化物から選択され、かつ、連続性有機−無機樹脂は、高熱伝導性充填剤を最大で60体積%有し、他の実施態様では少なくとも35体積%有する。特に、高熱伝導性充填剤は、高熱伝導性充填剤に対してグラフトされた表面官能基を有し、かつ表面官能基は、ほぼ上完全にホスト樹脂ネットワークと共反応することができる。
【0014】
関連する実施態様において、官能基は、1種またはそれ以上のヒドロキシル基、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、シラン基およびビニル基を含有する。1種またはそれ以上の酸化物、窒化物および炭化物は、Al、AIN、MgO、ZnO、BeO、BN、Si、SiCおよびSiOを、混合化学量論的および非化学量論的組み合わせで含む。ホスト樹脂ネットワークはエポキシ、ポリイミド、ポリイミドエポキシ、液晶エポキシ、ポリブタジエン、ポリエステルおよびシアネートエステルを含む。さらに連続性有機−無機樹脂は、架橋剤を含有してもよく、かつ完全な樹脂を多孔性媒体中に含浸することができる。
【0015】
さらに他の実施態様において、本発明は、ホスト樹脂マトリックスを提供し、かつ高熱伝導性材料を集めることを含む、高熱伝導性樹脂の製造方法を提供し、この場合、この方法は、その後に高いエネルギー反応中で、反応性表面官能基で表面処理することによって、表面官能基が高熱伝導性材料に対してグラフトされる。その後に、高い熱伝導性材料をホスト樹脂マトリックスと混合し、高熱伝導性材料を本質的にホスト樹脂マトリックスの範囲内に均一に分散させ、その後に、高熱伝導性材料に対してグラフトされた表面官能基と、ホスト樹脂マトリックスとを反応させ、高熱伝導性樹脂を製造する。高熱伝導性樹脂中の高熱伝導性樹脂材料の量は、最大60体積%であり、かつ高エネルギー反応は、約200〜500kJ/モルの結合強度を生じる。
【0016】
本発明の他の実施態様はさらに、詳細な説明の記載から明らかになる。
【0017】
図面の簡単な説明
本発明を以下の図面を引用する例によって詳細に説明する。
【0018】
図1は、ステーターコイルの回りに巻かれた絶縁テープの使用を示す図である。
【0019】
図2は、本発明の充填された樹脂を介してのフォノン移動を示す図である。
【0020】
本発明の詳細な説明
高熱伝導性複合材料(HTC)は、2相の有機−無機ハイブリッド材料である、充填剤と組合わさった樹脂様ホストネットワークを含む。有機−無機ハイブリッド材料は、2相の有機−無機複合材料から、分子合金をベースとする有機−無機連続相材料から、ならびに不連続の有機−デンドリマー複合材料から形成することができ、その際、有機−無機界面は、デンドリマー型コア−シェル構造とは不連続ではない。構造エレメントの長さスケールが熱輸送に重要なフォノン分布よりも短いか、または釣り合うことを保証することにより、フォノン輸送が増大し、フォノン散乱が減少する。
【0021】
2相の有機−無機ハイブリッドは、線状または架橋ポリマー(熱硬化性樹脂)および熱硬化性樹脂中に無機マイクロ、メソまたはナノ粒子を組込むことにより形成してもよい。ホストネットワークには、ポリマーおよび他のタイプの樹脂が含まれ、この定義は以下に挙げてある。一般に、ホストネットワークとして作用する樹脂は、粒子と相溶性であり、必要な場合には、充填剤の表面で導入される基と反応できるいずれかの樹脂であってよい。ナノ粒子の寸法は、一般にポリマーネットワークのセグメント長さの大きさ、またはこれ未満であり、例えば1〜30nmである。無機粒子は、反応性表面を含有し、共有結合したハイブリッドの有機−無機均一材料を形成する。粒子は、酸化物、窒化物、炭化物ならびに酸化物、窒化物、炭化物のハイブリッドの化学量論的および非化学量論的混合物であってよい。この更なる例は、以下に挙げてある。
【0022】
無機粒子は表面処理されて、ホストネットワークとの反応に参加できる種々の表面官能基が導入される。表面官能基には、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、シラン基およびビニル基が含まれるが、これに限定されることはない。基は、湿式化学法、非平衡プラズマ法、化学蒸着法および物理蒸着法、スパッタイオンメッキ法および電子ならびにイオンビーム蒸着法を用いて付与してもよい。
【0023】
不連続の有機−デンドリマー複合材料は、共に反応するか、または樹脂マトリックスと反応して単一の材料を形成してもよい。デンドリマーの表面は、上記のようなものに類似した反応性基を含有でき、これはデンドリマーとデンドリマーまたはデンドリマーと有機マトリックスとの反応を生じさせることを可能にする。デンドリマーは、興味のある反応性基を含有する無機コアと有機シェルを有するようになる。通常のゾル−ゲル化学に含まれるものに類似した無機反応に参加できるヒドロキシル基またはシラン基のような反応性基を含有する無機シェルと、有機コアを有することもできる。
【0024】
不連続ではない有機−無機ハイブリッドの使用に関しては、ゾル−ゲル化学を使用して、連続した分子合金を形成できる。水性および非水性反応に関わるゲル−ゾル化学を使用してもよい。有機−無機ハイブリッドを形成するための他の化合物には、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)およびテトラブチルオルトチタネート(TBOT)ならびに有機官能化無機化合物である関連するモノマーおよびオリゴマーのハイブリッド化合物が含まれる。POSSの例では、分子はR−SiO1.5[式中、R基は他の有機化合物ならびにホストネットワークと相溶化するように、かつ/または反応するように選択される]の構成単位の回りで形成される。ベース化合物は、組合わさってポリマーセグメントとコイル構造の大きさに比例した大きな分子を生じてもよい。POSSを使用して有機−無機ハイブリッドを形成してもよく、かつ存在するポリマーおよびネットワーク中にグラフトして、熱伝導を含めた特性をコントロールしてもよい。材料は、AldrichTM Chemical Co., Hybrid PlasticsTM Inc.およびGelestTM Inc.のような供給元から得ることもできる。
【0025】
上記のように、材料の構造形をコントロールしてフォノン散乱を減らすことが重要である。このことは、そのマトリックスが高い熱伝導を示し、かつ粒度および樹脂とのその界面特性がこの効果を維持するのに十分であることを保証し、さらにはフォノン散乱を減少させるのに必要な長さスケールを充足することが知られている、ナノ粒子を使用することにより更に補助できる。より高次に配列された構造の選択はこれに関して有利であってもよく、この場合、これは、短い範囲および長い範囲の周期性の双方を有する反応されたデンドリマー格子ならびにラダー構造もしくは配列したネットワーク構造を含み、この場合、これは、液晶エポキシドおよびポリブタジエンのようなホスト樹脂から形成されてもよい。
【0026】
充填樹脂は、回路基板や絶縁テープのような様々な工業で結合樹脂として使用してもよい。絶縁テープの特殊な種類は、発電装置の分野で使用されるマイカ−ガラステープである。これらのタイプのテープを有する樹脂は、結合樹脂として、またはこの分野で知られているような含浸樹脂として使用できる。充填樹脂は、テープを用いずに発電機の分野で使用して、回転および静電発電装置の部材において電気絶縁用途を満たしてもよい。
【0027】
テープは、電気的対象物に適用する前または後に樹脂で含浸してもよい。樹脂含浸法には、以下に記載するようなVPIとGVPIが含まれる。VPIでは、一度テープが巻付かれて含浸されると、圧縮される。所定の位置に一旦つくと、圧縮テープ中の樹脂が硬化し、これがHTC材料の位置を効果的に固定する。幾つかの実施態様では、この分野の通常の当業者に明らかであるように、樹脂は2工程プロセスで硬化される。しかし、装填HTC材料の最適圧縮は、圧縮工程の間は完全に硬化しない樹脂を好む。
【0028】
図2には、本発明の1実施態様が示されている。ここでは、樹脂様マトリックス32に装填されたHTC材料30が記載されている。マトリックスを介して移動するフォノン34は、平均行程長さnを有するが、これがフォノン平均自由行程である。この行程長さは樹脂マトリックスの正確な組成物に依存して変化できるが、これは一般にエポキシ樹脂のような樹脂に関しては2〜100nm、より一般には5〜50nmである。従って、装填HTC材料間の平均距離は、平均してこの距離未満であるべきである。HTC材料間の距離は、テープの横断方向に対する厚さで変えることができ、かつこれは一般にスペーシングを最適化するのに必要な厚さ方向であることに留意されたい。
【0029】
フォノン34が樹脂32を通って移動するにつれて、これらのフォノンは組込まれたHTC材料30に沿って通って行く傾向がある。このことは、局所のフォノンフラックスを増大させる。それというのも、約0.1〜0.5W/mKである樹脂とは対照的に、未処理のHTC材料が10〜1000W/mKの間の熱伝導を有するようになるからである。フォノンが装填HTC材料に沿って通るにつれて、材料間の距離がn未満である場合には、フォノン36は次のHTC材料を通るようになり、従ってHTC材料は相互に連結したネットワークを形成する。図2は、理想的な行程を示している。実際には、材料間の距離が短くなるにもかかわらず、フォノンが樹脂とHTC材料の間を通るにつれてフォノン散乱があり、かつHTC材料と樹脂の間のフォノン伝播特性の適合が良いほど、散乱が少なくなる。
【0030】
樹脂中に装填されるHTC材料の量は、実際に極めて少なくてもよい。例えば、図2に記載されているように約10%でよい。従って、装填HTC材料間の平均距離、または長さのスケールは、僅かにnよりも大きくてよい。しかし、多くのパーセンテージはn未満であるので、本発明の実施態様の範囲内におさまる。特殊な実施態様では、次のHTC材料からの距離がn未満であるパーセンテージ材料は50%以上であり、特殊な実施態様では75%以上である。特殊な実施態様では、HTC材料の平均長さはn以上であり、これは更にフォノン輸送を補助する。
【0031】
nが短いほど、装填HTC材料の濃度は大きくなり、逆に粒度が大きいほど、必要なHTC材料は減る。特殊な実施態様では、樹脂と充填剤の全体体積の5〜60%の装填HTC材料を使用し、より特別な実施態様では25〜40%である。樹脂がテープに含浸される場合には、これはテープ繊維と基質の間の空間を埋める。しかし、この時点でのテープ内のHTC分布は、大抵は最適化されておらず、むしろn以上のHTC材料間の平均距離を有する。よって、本発明の実施は、樹脂を含浸したテープを圧縮して装填HTC材料間の距離を減らす。
【0032】
装填樹脂がテープに含浸される場合には、特に樹脂の30%以上が充填剤である場合には、テープの繊維または粒子はHTC材料の幾つかをブロックするように働く。しかし、テープを圧縮することにより、逆のことが生じ、HTC材料自体が全体の構造の不可動部分に結合するので、より多くの充填剤がテープ内に閉じこめられる。HTC充填剤は、互いに固定される。特定の実施態様では、充填剤は樹脂マトリックスとは反応しないことが示されてきたが、幾つかの実施態様では、充填剤は樹脂と共有結合を形成し、より均一なマトリックスを形成する。均一なマトリックス中では、充填剤に結合した樹脂分子は結合していない樹脂分子よりも良好に圧縮の間に保持されるであろう。
【0033】
樹脂は、多くの工業で使用されており、かつ多数の用途がある。樹脂の様々な特性は、それらの用途に影響するだけではなく、共に使用される製品の品質と効率にも影響する。例えば、樹脂を電気絶縁用途で使用する場合には、それらの絶縁耐力と電圧耐久特性は、熱安定性と熱耐久性のように高くなる必要がある。しかし、大抵はこの目的とは異なり、樹脂は一般に低い熱伝導を有する。本発明は、通常の電気絶縁材料よりも高い熱伝導を有する系を製造するために導入される樹脂と絶縁系の様々な物理特性のバランスを取り、その際に、絶縁強度、電圧耐久特性、熱安定性および熱耐久性、機械的強度および粘弾性応答のような重要な物理特性は適切に、むしろ増大して維持される。熱および機械的サイクリング効果が原因で起こる応力により生じる層割れおよび微細間隙の形成は、減少または除去される。ここで使用されているように、樹脂という用語は、変性エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド、ビスマレイミド、シリコーン、ポリシロキサン、ポリブタジエン、シアネートエステル、炭化水素などを含めた全ての樹脂とエポキシ樹脂ならびにこれらの樹脂の均一なブレンドを意味する。この樹脂の定義には、架橋剤、促進剤およびその他の触媒および加工助剤のような添加剤が含まれる。液晶熱硬化性樹脂(LCT)や1,2−ビニルポリブタジエンのような特定の樹脂は、低分子量特性と良好な架橋特性を兼ね備えている。この樹脂は、ヘテロ原子含有または不含の炭化水素のような有機マトリックスであるか、シリケートおよび/またはアルミノケイ酸塩成分含有の無機マトリックス、ならびに有機および無機マトリックスの混合物であることができる。有機マトリックスの例には、ポリマーまたは反応性熱硬化性樹脂が含まれ、これは必要な場合には無機粒子表面上に導入された反応性基と反応できる。架橋剤を樹脂に添加して最終的な架橋ネットワークの構造やセグメントの長さ分布を操作することもでき、これは熱伝導においてプラスの効果を有することができる。この熱伝導の強化は、触媒、促進剤ならびに他の加工助剤のような他の樹脂添加剤による変性により得ることもできる。液晶熱硬化性樹脂(LCT)や1,2−ビニルポリブタジエンのような特定の樹脂は、低分子量特性と良好な架橋特性を兼ね備えている。これらのタイプの樹脂は、それらの下部構造のマイクロおよびマクロ配列が向上し、これが改善されたフォノン輸送を生じる結果、強化された熱伝導を導くことができるので、良好に熱を伝える傾向がある。
【0034】
本発明の高熱伝導性充填剤を樹脂と混合する場合には、これらは連続性生成物を形成するが、その際、樹脂と充填剤の間には界面が存在しない。幾つかの場合には、充填剤と樹脂の間に共有結合が形成される。しかしながら、連続性は幾分主体的であり、かつ観測者が使用するスケールに依存する。マクロスケールでは、生成物は連続性であるが、ナノスケールでは、充填剤と樹脂ネットワークの間でなお明確な相がある。従って、高熱伝導性充填剤を樹脂と混合することは、マクロスケールではこれらは連続した有機−無機複合材料を形成するのに対して、マイクロスケールでは同じ混合物をハイブリッドと称することができる。
【0035】
上記のように、充填樹脂はテープを用いずに発電装置の分野で使用して、回転および静電装置部材において電気絶縁用途を満たしてもよい。発電装置における高熱伝導性材料の使用は多重である。ステーターコイル内では、設計を最適化するために高熱伝導を有すべきであるグランドウォール以外に部材材料がある。他の部材のように、コイルと関連させて熱の除去を最大化させる。ステーターの設計を改善すると、発電装置の効率を最大化できるようにローターの設計も改善する必要がある。
【0036】
種々の無機および有機成分との界面が、化学的および物理的に密接し、それによって異なる層間の物理的連続性の高いレベルを保証し、および、機械的に強くかつ破損のしにくい界面を提供することは重要である。これは、前記の電気絶縁の実施態様の操作中において、たとえば、高電圧および低電圧の両方の適用のための電気絶縁系において、特に重要である。増強された界面完全性(integrity)は、増強された電力定格、高い電圧応力、減少した絶縁体の厚さおよび高い熱輸送を可能にする。
【0037】
充填剤に対する表面処理とは、充填剤無機表面と有機樹脂マトリックスとの相溶性を可能にする種々の表面官能基を導入することである。典型的な表面処理は、表面官能基を導入して、表面を物理的に処理し(たとえば、金属酸化物上のシラン溶液)、反応性基を生じさせることである。粒子表面、たとえばHTC充填剤、表面およびシラン層間の界面は、物理的結合によって、たとえば極性引力およびH結合によってのみ保持されうる。シラン表面は、その中に混合された樹脂と反応するが、実際には、粒子表面とシランとの間に形成される化学結合は本物ではなく、すなわち、本質的に非反応性のカップリングである。基質表面がOH基に富む場合、たとえば潜在的にシランと反応しうる水和アルミナである場合であっても、顕著な化学的結合を形成することはありえない。前記HTC充填剤の場合には、実際に化学的結合を形成することはない。
【0038】
HTC材料(粒子)表面と化学的に結合する官能基を得るために、本発明は反応性グラフトを使用する。官能基が、反応プロセス、たとえば化学反応によって、ナノ粒子表面と化学的に結合する場合に、反応性グラフトが生じる。他の方法は、プラズマおよび放射線(たとえばUV、γ、電子線等)誘導による方法を含み、この場合、これらは、適切な環境を必要とし、かつ多段工程で実施されうるものである。この方法において、強力な化学結合が、ナノ粒子表面と、結合された官能基(たとえばOH、COOH、NHおよびビニル)との間に生じ、すなわち反応性カップリングが生じる。これは、反応性官能基グラフトの定義、すなわち、粒子上への直接的な官能基の化学結合であるといえる。これらの反応性グラフト方法は、従来技術の物理的結合と比較して高エネルギーであり、かつ、たとえば、非平衡プラズマ法、化学蒸着法および物理蒸着法、スパッタイオンメッキ法、レーザー、電子ビームおよびイオンビーム蒸着法を使用して、HTC材料のより不活性な表面を、化学的に改質し、後に樹脂と反応して連続性HTC材料を生じる化学的に結合された官能種(たとえば、OH、COOH、NH、ビニル)を生じさせる。
【0039】
この特別な例は、水蒸気の存在下で、電子ビームを用いての窒化ホウ素(BN)ナノ粒子の処理を含み、これによって後に、LCTエポキシ樹脂と反応しうる反応性N−OH基を生じさせる。反応基の窒素は、直接的に窒化ホウ素粒子から直接生じ、かつ粒子と結合したままである。したがって、式は:
B−N−OH
[式中、ホウ素は、より大きいナノ粒子の一部である]である。ヒドロキシル(OH)基は、後に樹脂あるいはさらに他の介在官能基と直接的に反応しうる。他の例は、水素に富む蒸気中で、窒化アルミニウムナノ粒子の表面を改質化し、後にLCTエポキシまたはポリイミド樹脂と反応しうる表面NH反応基を生じさせることである。さらに他の特別な例では、プラズマ重合法を使用し、その際、炭化珪素ナノ粒子を用いて、後にビニルモノマーまたはポリブタジエン樹脂と反応しうる表面グラフトビニル基を生じさせる。
【0040】
別の態様において、本発明は、HTCマトリックス材料と表面官能基との間の選択的反応の湿式化学的技術を含む、低エネルギー反応性グラフト法が、グラフトされたナノサイズHTCマトリックス材料を含むオリゴマーを有する均一なLCT−エポキシポリマーを生じさせることを含む。
【0041】
これらの別の態様の1において、本発明は、グラフトされたナノ−ナイズHTC−材料を含有するオリゴマー(HTCオリゴマー)を含む、均一なLCT−エポキシ樹脂を製造する方法に関する。これらのポリマーの絶縁耐力は、少なくとも1.2kV/ミリである。これらポリマーを製造するための工程は、少なくとも1種の官能化された有機基を、ナノ−サイズのHTC−材料上にグラフトし、HTC−オリゴマーを製造することを含む。HTC−オリゴマーはその後に、少なくとも1種のLCT−エポキシ樹脂と、均一な分散およびHTC−オリゴマーとLCT−エポキシ樹脂とのほぼ完全な共反応性を形成するのに十分な条件下で反応させる。この反応は、中間的な樹脂様混合物を形成し、この場合、この混合物は、その後に硬化し、HTC−オリゴマーを含む均一なLCT−エポキシポリマーを生じる。
【0042】
本発明のこの態様において、HTC−オリゴマーの量はLCT−エポキシ樹脂の量に対して、1:4〜3:1質量%の比を含む。湿式化学的グラフト技術の特に好ましい態様において、HTC−オリゴマーを含む均一なLCT−エポキシポリマーのHTC−オリゴマーの割合は、20〜50質量%である。
【0043】
LCT−エポキシ樹脂を製造するための種々の方法が存在するにもかかわらず、特別な方法は、試料を約60℃でLCT−エポキシ樹脂が透明になるまで加熱するものである。同様に、LCT−エポキシ樹脂およびHTC−オリゴマーを混合する場合には、1の方法は、約60℃で透明になるまで加熱する。ナノサイズHTC−材料は、1種またはそれ以上のアルミナ、シリカおよび金属酸化物であってもよい。湿式化学的グラフト技術の特に好ましい態様において、金属酸化物は酸化マグネシウムである。他の適切なHTC−材料は、いわゆる当業者には明らかである。
【0044】
湿式化学的グラフト技術の他の実施態様において、ナノサイズ−HTC−材料上の1種またはそれ以上の官能化有機基のグラフトは、シラングラフトまたはラジカルグラフトによって実施する。湿式化学的グラフト技術のさらに好ましい態様において、シラングラフトは、4−トリメトキシシリルテトラ−ヒドロフタル酸無水物(TSPA)および3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MOTPS)から選択された反応体を含む。湿式化学的グラフト技術の他の好ましい態様において、ラジカルグラフトは、反応体窒化セリウムアンモニウムを含む。
【0045】
湿式化学的グラフト技術の他の態様において、方法はさらに、少なくとも1種の無水化剤と、1種またはそれ以上のLCT−エポキシ樹脂とHTC−オリゴマーのいずれか一方または双方とを混合させることを含み、その際、HTC−オリゴマーを含む均一なLCT−エポキシポリマーは、HTC−オリゴマーを含む均一なLCT−エポキシ無水物ポリマーである。
【0046】
湿式化学的グラフト技術の特別な態様において、無水化剤は、1−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物と1−メチルテトラヒドロフタル酸無水物とから成る群から選択される。湿式化学的グラフト技術の他の好ましい態様において、無水化剤は、HTC−オリゴマーを含む、均一なLCT−エポキシ無水物の約20〜40質量%である。湿式化学的グラフトの他の態様において、方法は、さらに少なくとも1種のビニル化剤と、1種または複数種のLCT−樹脂およびHTC−オリゴマーのいずれか一方または双方と混合することを含み、その際、HTC−オリゴマーを含む均一なLTC−エポキシポリマーは、HTC−オリゴマーを含む均一なLCT−エポキシビニルポリマーである。
【0047】
他の態様において、本発明は、少なくとも1.2kV/ミリの絶縁耐力を有する、HTC−オリゴマーを含む均一なLCT−エポキシポリマーを製造するための方法を提供し、この場合、これは、少なくとも1種の電気絶縁体上に被覆される。この方法は、少なくとも1種の官能化された有機基を、ナノサイズHTC−材料上にグラフトする工程を含み、これによってHTC−オリゴマーを生じる。HTC−オリゴマーは、その後に少なくとも1種のLCT−エポキシ樹脂と反応させ、その際、中間的な樹脂様混合物が形成される。その後に、この混合物は、均一な分散およびHTC−オリゴマーと1種または複数種のLCT−エポキシ樹脂とのほぼ完全な共反応性を形成するのに十分な条件下で加熱する。混合物をその後に、電気絶縁体上に含浸させ、かつ硬化することによって、HTC−オリゴマーを含む均一なLCT−エポキシポリマーを生じる。この態様において、HTC−ポリゴマーの量は、少なくとも1種のLCT−エポキシ樹脂に対して、1:4〜3:1の質量比で含まれる。
【0048】
湿式化学的グラフト技術の1実施態様において、方法はさらに、少なくとも1種の無水化剤と、1種または複数種のLCT−エポキシ樹脂およびHTC−オリゴマーのいずれか一方または双方とを混合する方法を含み、その際、HTC−オリゴマーを含む均一なLCT−エポキシポリマーは、HTC−オリゴマーを含む均一なLCT−エポキシ無水物ポリマーである。湿式化学的グラフト技術の他の実施態様において、方法はさらに、少なくとも1種のビニル化剤と、少なくとも1種のLCT−エポキシ樹脂およびHTC−オリゴマーのいずれか一方または双方とを混合することを含み、その際、HTC−オリゴマーを含む均一なLCT−エポキシポリマーは、HTC−オリゴマーを含む均一なLCT−エポキシビニルポリマーである。
【0049】
他の態様において、本発明は、HTC−オリゴマーを含む均一なLCT−エポキシポリマーを提供する。これは、グラフトされた少なくとも1種のナノサイズHTC−材料を含む、少なくとも1種のHTC−オリゴマー下部構造および少なくとも1種のLCT−エポキシ下部構造を含有し、その際、HTC−オリゴマー下部構造は、本来、LCT−エポキシ下部構造と結合している。横断方向の熱伝導性は、少なくとも0.50W/mKであり、かつ厚さ方向では、25℃の環境中で少なくとも0.99W/mKである。HTC−オリゴマーを含む均一なLCT−エポキシポリマーは、少なくとも1.2kV/ミリの絶縁耐力を有し、かつほぼ粒子濡れおよび微細間隙の形成がない。さらにHTC−オリゴマーを含む均一なLCT−エポキシポリマーの約20〜75質量%は、HTC−オリゴマー下部構造である。
【0050】
HTC−オリゴマーを有する均一なLCT−エポキシポリマーまたはHTC−オリゴマーを含む均一なLCT−エポキシ無水物/ビニルポリマーのいずれか一方を、絶縁材料、たとえばマイカ/ガラス絶縁テープ上の被覆として製造することができる。ここで使用されるHTC−オリゴマーとは、本発明によれば、グラフトされたナノサイズ高熱伝導性(HTC)材料を含む任意のオリゴマーである。
【0051】
HTC−オリゴマーの特別なタイプ、あるいは、LCT−エポキシ樹脂と反応させる目的のためにHTC−オリゴマーを合成するための特別な方法に制限されることはないが、使用される特別なナノサイズHTC−材料は、アルミナ、シリカおよび金属酸化物であってもよく、この場合、これらは、酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛を含む。さらに、これらの材料は、種々の異なる方法で処理されてもよく、この場合、これらは、HTC−オリゴマーの異なる種類において、より多くの多様性を生じさせる。これらの例は、
【化1】

[式中、XはHTC−材料を示し、かつRは有機官能基を示す。]のベース構造を有する金属酸化物(またはアルミナまたはシリカ)HTC−オリゴマーを含む。
【0052】
前記のように、HTC−材料は、多くの可能なHTC−オリゴマーを生じる種々の方法によってポリマー構造で、化学的にグラフトされていてもよい。この特別な例は、ラジカルグラフトであり、その際、反応体、たとえば窒化セリウムアルミニウムを使用することができる。他の特別な例は、シラングラフトである。この例において、官能基を生じるために使用される反応体は、4−トリメトキシシリルテトラ−ヒドロフタル酸無水物(TSPA)および3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MOTPS)を含む。これらの反応体を使用する場合には、X基中で示されていてもよいものを超えて付加的なシリカ基が存在していてもよい:
【化2】

【0053】
したがって、TSPA官能基を有するアルミナX基は:
【化3】

であってもよい。すべての場合において、官能基、Rはその後に、得られた基質と反応させるために使用され、好ましい生成物を生じる。
【0054】
湿式化学的グラフトの1態様において、官能基はLCT−エポキシ樹脂のエポキシ基と反応させ、HTC−オリゴマーを含むLCT−エポキシを生じる。しかしながら、官能基とLCT−エポキシ基とを反応させる前、反応と同時または反応後であっても、さらに官能基は他の基質と反応することができ、LCT−エポキシおよび/または最終的なポリマー構造との反応を改善させる。たとえば、無水物基またはビニル基またはその双方を、HTC−オリゴマーの製造において、あるいは、HTC−オリゴマーとLCT−エポキシ樹脂とを反応させる際に、LCT−エポキシ樹脂と一緒に添加してもよい。このような反応において、最終的な生成物は、HTC−オリゴマーを含むLCT−エポキシ無水物ポリマーまたはHTC−オリゴマーを含むLCT−エポキシビニルポリマー、あるいはさらには、HTC−オリゴマーを含むLCT−エポキシ無水物−ビニルポリマーであってもよい。HTC−オリゴマーは、無水物含有試薬を用いて形成されてもよいが、その際、使用される用語無水物は、付加的な無水物試薬の添加を含む本発明の樹脂およびポリマーを示すものであることを強調すべきである。
【0055】
以下は、グラフトされたナノサイズHTC−材料を含むオリゴマーを含む、均一なLCT−エポキシポリマー(HTC−オリゴマーを含むLCT−エポキシポリマー)の合成において使用される、適したHTC−オリゴマーを製造するための方法に関する:
グラフト重合反応は、撹拌機、ガス挿入管および温度計を備えた、丸底の、3首フラスコ中で実施する。2.0gのナノサイズ酸化マグネシウムを、蒸留水25ml中に分散させ、かつグラフト反応は、反応混合物中のガス起泡により窒素下で実施した。開始剤溶液の必要量を、その後に添加し(10mlの1N硝酸中に溶解された窒化セリウムアルミニウム0.55g)、引き続いてメチルメタクリレート6.0mlを添加した。反応を40℃で3時間に亘って実施した。グラフト生成物をソックスレー抽出器中で抽出し、ポリマーを除去した。
【0056】
以下の例は、粉末化されたHTC−オリゴマーを使用しているが、これは、いわゆる当業者には、HTC−材料が他の形態、たとえば溶液の形で反応中に導入されてもよいことは明らかである。
【0057】
本発明によるHTC−オリゴマーを有するLCT−エポキシポリマーの合成は、本明細書中に含まれる方法をレビューした後に当業者に明らかになりうる種々の方法によって、同様に実施することができる。しかしながら、特別な方法は以下のものを含む:
アルミナ−グラフトされたTSPA−オリゴマー(HTC−オリゴマー)(2.5g)を微細な粉末にポーセラインモーター中で粉砕した。LCT−エポキシ樹脂RSS−1407(4.0g)を、小さいガラス容器中で60℃に加熱した。HTC−オリゴマー粉末を樹脂に添加し、かつ混合物を約30分に亘って、溶液が透明になるまで撹拌した。ナフテン酸亜鉛0.1gを硬化触媒として添加し、かつ、付加的に5分に亘って混合した。液体を、その後に小さいアルミニウム皿中に注ぎ入れ、かつ150℃で炉中に4時間に亘って硬化するまで置いた。
【0058】
この反応は、以下のようにまとめることができる:
【化4】

【0059】
R官能基を有する2個のHTC−オリゴマーを、n個の反復するビフェノール単位を含むビフェノールLCT−エポキシ鎖と一緒に反応させる。結果、架橋されたHTC−オリゴマーを含むLCT−エポキシ樹脂を生じる。HTC−オリゴマー粒子は、本来LCT−エポキシ鎖と結合するようになる。この例はビフェノールLCT−エポキシを使用するが、この反応は、任意の異なるLCTと一緒に実施されるか、単独でかまたは組み合わせて実施されてもよい。他のLCTsの例は、US特許5904984中で見いだすことができる(この場合、この文献は参考のために引用される)。
【0060】
この例による、HTC−オリゴマーを含むLCT−エポキシ無水物ポリマーの合成は、約38質量%のHTC−オリゴマーを有するポリマーを生じる。残りの%は、先ず少量の促進剤および他の材料を有するLCT−エポキシである。これは、本発明の湿式化学的グラフト技術の1態様であるが、HTC−オリゴマー含量は、いずれの箇所においても約20〜75質量%であってもよい。その際、湿式化学的グラフト技術の特別な態様は30〜55質量%であり、かつさらに好ましくは、35〜50質量%である。
【0061】
HTC−オリゴマーを有するLCT−エポキシポリマーの合成と同様に、HTC−オリゴマーを有するLCT−エポキシ−無水物ポリマーの合成は、以下のものを含む:
ビフェノールLCT−エポキシ樹脂RSS−1407(4.0g)を、1−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(4.0g)に添加し、小さいガラス容器中で撹拌し、ホットプレート上で60℃に加熱した、溶液が透明になった後に、アルミナ−グラフト−TSPA−オリゴマー(HTC−オリゴマー)(3.0g)を添加し、かつ、撹拌した溶液をさらに60℃で、溶液が再度透明になるまで撹拌した。ナフテン酸亜鉛0.1gを硬化促進剤として添加し、かつさらに5分に亘って混合した。その後に液体を小さいアルミニウム皿上に注ぎ入れ、かつ150℃で4時間に亘って硬化するまでオーブン上に置いた。
【0062】
無水物成分の使用は、この反応に付加的な反応性を与え、HTC−オリゴマーのLCT−エポキシドとの共反応性を獲得した。さらに、生じるポリマーはより流動性であり、その際、改善された絶縁特性を有する。この実施例において、無水物は、最終LCT−エポキシ−無水物ポリマーの約36質量%までになった。これは、本発明の湿式化学的グラフト技術の1態様であるが、無水物含量は、いずれの箇所においても約20〜40質量%であってもよい。この例において、HTC−オリゴマーの全%は前記例よりも低い。これは、常に生じることではなく、かつ無水物の添加は、得られるポリマー中のHTC−材料の全%を減少させるものではないだろう。
【0063】
前記実施例の双方において、HTC−オリゴマーを有するLCT−エポキシポリマーはさらにビニル基を含有していてもよい。ビニル基を含む種々の方法は、いわゆる当業者に明らかである。しかしながら、HTC−オリゴマーを有するLCT−エポキシビニルポリルポリマーまたはHTC−オリゴマーを有するLCT−エポキシ無水物−ビニルポリマーを製造するための特別な方法は、前記例に従うが、TSPA−オリゴマーの代わりにMOTPS−オリゴマーを用いて開始した。前記例に引き続いて、硬化促進剤を添加する場合には、ビニル基を含有する反応体、たとえば二官能性モノマー、p−ビニルフェニルグリシジルエーテル(この場合、これらは、前記試料の大きさを維持し、約1.0gであってもよい)を添加する。
【0064】
反応へのビニル基の添加は、どのタイプの試薬を使用するか、かつ、どの条件下で使用するかに依存する。たとえば、いくつかのLCT−エポキシ樹脂はスチレンを含有する。したがって、ビニル基は、LCT−エポキシ樹脂およびHTC−オリゴマーの反応をより完全なものとすることができ、したがって、良好かつより均一なポリマーを生じる。ビニル基を添加する場合には、その約%は、最終的なポリマー中で4〜16質量%であってもよい。
【0065】
本発明の1実施態様は、樹脂に高い熱伝導性(HTC)材料を添加することにより、樹脂の熱伝導性を改善させることである。いくつかの態様において、樹脂の他の物理的性質が、高い熱伝導性と引き替えに減少するが、しかしながら、他の態様においては、いくつかの物理的性質はあまり影響を受けることはなく、かつ、いくつかの態様において、これらの他の性質は改善されうる。特別な実施態様において、HTC材料を樹脂、たとえば、規則的な下部構造を有するLCTエポキシ樹脂に添加する。これらのタイプの樹脂に添加する場合には、使用されたHTC材料の量は、規則的な下部構造なしの樹脂中での使用とは対照的に、減少させることができる。
【0066】
樹脂中に導入されたHTC材料は、物理的および/または化学的に樹脂と干渉するかまたは反応し、熱伝導性を改善するために添加することができる種々の物質である。1実施態様において、HTC材料はデンドリマーであり、かつ他の態様において、これらは、アスペクト比(横方向寸法平均の縦方向寸法平均に対する比)3:100またはそれ以上、より好ましくは10〜50を有する、高いアスペクト比を有する粒子を含む、定められた大きさまたは形状を含むナノまたはマイクロ無機充填剤である。
【0067】
関連する態様において、HTC材料は、定められた大きさおよび形状分布を有していてもよい。双方の場合において、充填剤粒子の濃度および相対濃度は、バルク連結(またはいわゆるパーコレーション)構造が達成可能なように選択され、この場合、これは、容量装填(volume filling)をするかまたはしないで高い熱伝導性を付与し、増強された熱伝導性を有する不連続の2相複合材料の構造的安定性を達成する。他の関連する態様において、HTC−材料の配向は熱伝導性を増加させる。さらに他の態様において、HTC材料の表面被覆は、フォノン輸送を増加させる。これらの態様は、他の実施態様とは別個に存在するものであるか、あるいは全体として関連するものである。たとえば、デンドリマーは、高ストラクチャード材料、たとえば熱硬化性または熱可塑性材料の他の形と一緒に組み合わされる。これらは、樹脂マトリックス中に均一に分散されることで、HTC材料はフォノン散乱を減少させ、かつHTC材料間の良好な熱伝導界面を生じさせるマイクロスケールの架橋を提供する。高ストラクチャード材料は、熱伝導性を、一方向または局所的またはバルクの非等方性電気絶縁材料を生じさせる方向に沿って増加させるためにアライメントする。他の態様において、HTCは、高熱伝導性を有する金属酸化物、炭化物または窒化物および混合系を用いての、低い熱伝導性充填剤の表面被覆によって達成され、この場合、これらは、定義されたバルク特性を有する充填剤に、物理的または化学的に結合され、その際、このような結合は、方法、たとえば化学蒸着法および物理蒸着法およびさらにはプラズマ処理によって達成されている。
【0068】
関連する態様において、HTC材料は、樹脂を含む本質的に均一な混合物を形成し、この場合、これは本質的に望ましくない微視的界面、可変の粒子の濡れおよび微細間隙形成を含むことはない。これらの均一な材料は、連続相材料を形成し、この場合、これらは、常用の電気絶縁材料中でのフォノン波長またはフォノン平均自由行程よりも短い長さのスケールで、不連続性ではない。いくつかの態様において、固有の界面は、樹脂構造中で、絶縁破壊をコントロールするよう配置することができる。絶縁材料中で、絶縁破壊は、与えられた適切な条件を生じうる。2相系中の界面の性質および空間的分散を制御することによって、絶縁破壊耐力および長期電気的耐久性を増強させることができる。絶縁耐力の増加は、増加した高密度化、微細間隙の除去および高レベルの内部機械的圧縮強度により、部分的に生じうる。
【0069】
本発明の樹脂は、他の複合材料構造、たとえばマイカテープおよびガラスおよびポリエステルテープの含浸のために使用することができる。電気絶縁のために典型的に使用される標準的なマイカ(白雲母、金雲母)とは別に、さらに黒雲母マイカならびに種々の他のマイカ様のアルミノシリケート材料、たとえばカオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイトおよび緑泥石を使用することができる。モンモリロナイトは、その構造中に格子を有し、この場合、これらはポリマー樹脂、金属カチオンおよびナノ粒子と一緒に容易に挿入することができ、高い絶縁耐力複合材料を提供する。
【0070】
他の態様において、本発明は、絶縁が好ましい表面上に、連続性被覆として使用され;ここで「連続性被覆」とは、マクロスケール適用を意味する。連続性被覆において、樹脂は材料上で、テープまたは他の基質を必要とすることなく被覆を形成する。基質を一緒に使用する場合には、HTC材料は、樹脂と一緒に、種々の方法によって組み合わせることができる。たとえば、これらは、樹脂を添加する前に基質に添加することができるか、あるいは、HTC材料を、樹脂が含浸される前に基質に添加してもよいか、あるいは、樹脂を最初に添加し、引き続いてHTC材料を添加し、その後に、樹脂の付加的な含浸をおこなう。他の二次加工および方法は当業者に明らかである。
【0071】
1実施態様において、本発明は新規の有機無機材料を使用し、この場合、この材料は高い熱伝導性を提供し、さらには他の重要な性質および性能特性を保持または増強させる。このような材料は、特に高電圧および低電圧の電気絶縁状態中での適用を有し、その際、高い熱伝導性は、増強された電力定格、減少した絶縁体の厚さ、より圧縮された電気的デザインおよび高い熱輸送の点における利点を付与する。本発明は、ナノ、メソおよびマイクロ無機HTC材料、たとえばアルミナ、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛およびダイヤモンド等を添加し、より高い熱伝導性を生じる。これらの材料は、種々の結晶学的および形態学的形状を有していてもよく、かつこれらは、マトリックス材料と一緒に、直接的またはキャリア液体として作用する溶剤を介して加工することができる。溶剤混合物は、HTC−材料をマトリックス中に混合し、種々の基質、たとえばマイカテープに使用することができる。対照的に、本発明の他の態様を形成する分子ハイブリッド材料は、不連続な界面を含有するものではなく、かつ、有機の範囲内の無機相によって付与される利点を有する。これらの材料は、さらに他の物理的性質、たとえば熱安定性、引っ張り強度、曲げ強度および衝撃強度、機械的モジュールおよび損失に依存する可変の周波数および温度、および一般的な粘弾応答等に対する増強を付与してもよい。
【0072】
さらに1実施態様において、本発明は、不連続的な有機−デンドリマー複合材料を含み、その際、有機−無機界面は、デンドリマーコア−シェル構造とは不連続ではない。デンドリマーは、三次元のナノスケールの中心コア上に形成されるコア−シェル構造である。コアは、有機または無機材料から成っていてもよい。中心コア上に形成する場合には、デンドリマーは、同心シェルの順次の付加によって形成される。シェルは、分枝の分子基を含有し、かつそれぞれの分枝のシェルは世代(generation)と呼称される。典型的には、使用される世代の数は1〜10であり、かつ分子基の数は、外側シェル中で、世代により指数関数的に増加する。分子基の組成は、正確に合成することができ、かつ外側の基は、反応性官能基であってもよい。デンドリマーは、樹脂マトリックスと一緒にならびに互いに結合する能力を有する。したがって、これらは、樹脂にHTC材料として添加してもよいか、あるいは、他の態様において、従来の樹脂に添加することなくマトリックス自体を形成してもよい。
【0073】
分子基は、互いのまたは樹脂とのその反応性により選択することができる。しかしながら、他の態様において、デンドリマーのコア構造は、その熱導電性を獲得するためのそれ自体の能力に関して選択することができ、たとえば、以下に記載するような金属酸化物である。
【0074】
一般に、デンドリマーが大きければ大きいほど、フォノン輸送要素として機能するその能力は大きくなる。しかしながら、その材料を浸透させるための能力およびそのパーコレーションポテンシャルは、そのデンドリマーの大きさによって悪影響を受けうるものであり、したがって、最適な大きさは、必要とされる構造および性質のバランスを達成することが求められる。他のHTC材料と同様に、溶剤は、基質、たとえばマイカまたはガラステープのその含浸を獲得するために、デンドリマーに添加することができる。多くの態様において、デンドリマーは、種々の世代と一緒に、種々の異なる分子基を用いて使用することができる。
【0075】
市販されている有機デンドリマーポリマーは、ポリアミド−アミンデンドリマー(PAMAM)およびポリプロピレン−イミンデンドリマー(PPI)およびPAMAM−OSを含み、この場合、これらは、PAMAM内部構造および有機−珪素外部構造を有するデンドリマーである。前者の2種については、Aldrich Chemical TMおよび後者の1種については、Dow-CorningTMから入手可能である。
【0076】
有機−無機デンドリマーに関して同様の要求が存在し、この場合、これは、一緒に、あるいは、マトリックスポリマーまたは反応性樹脂と反応することができ、単一の材料を形成することである。この場合において、デンドリマーの表面は、前記と同様の反応性基を有するものであってもよく、この場合、これらは、デンドリマー−デンドリマー、デンドリマー−有機、デンドリマー−ハイブリッド、およびデンドリマー−HTC材料反応を生じさせる。この場合において、デンドリマーは、無機コアおよび有機シェルを有していてもよいか、あるいはその反対であって、この場合、これらは有機または無機反応性基を含有するまたは重要なリガンドを含有する。したがって、無機シェルを有する有機コアを有することも可能であり、この場合、これは、さらに反応性基、たとえばヒドロキシル、シラノール、ビニル−シラン、エポキシ−シランおよび他の基を有し、この場合、これらは、通常のゾル−ゲル化学に含まれるものと同様、無機反応中において使用することができるものである。
【0077】
すべての場合において、フォノン輸送が増強され、かつ構造要素の長さのスケールを保証することにより減少するフォノン散乱は、熱輸送の原因となるフォノン分布よりも短いか、あるいは、これと釣り合う。より大きいHTC粒子材料は、フォノン輸送そのものを実際に増加させることができるが、より小さいHTC材料は、樹脂マトリックスの性質を変化させることができ、それによってフォノン散乱の変更に作用する。これらは、さらに、ナノ粒子を使用することによって補助されてもよく、この場合、このマトリックスは、高熱伝導性を示し、かつ粒度および界面特性がこの効果を維持するために十分であることを保証し、さらには、減少したフォノン散乱のための長さのスケールの要求を充足することが知られているものである。さらに、高次に配列された構造の選択を考慮することが必要であり、この場合、この構造は、短いおよび長い範囲の周期性の双方を有する反応されたデンドリマー格子およびラダーまたは配列されたネットワーク構造を含み、この場合、これらは、マトリックス、たとえば液相エポキシ樹脂およびポリブタジエンから形成することができる。従来技術の樹脂マトリックスは、最大約0.15W/mKの熱伝導性を有していてもよい。本発明は、0.5〜5W/mKまたはそれ以上の熱伝導性を有する樹脂を提供する。
【0078】
連続する有機−無機ハイブリッドは、無機ナノ粒子を、線状ポリマーまたは架橋ポリマーおよび熱可塑性樹脂中に混入させることによって形成することができ、その際、ナノ粒子デンドリマーは、ポリマーまたはネットワークセグメント長の大きさであるかまたはそれ未満である(典型的には1〜50nm)。これは、制限されることなく、3種の経路または機序を含み、この場合、これは、(i)側鎖グラフト、(ii)非排他的グラフト、たとえば2個のポリマー鎖末端間のもの、(iii)少なくとも2個および典型的には複数個のポリマー分子を含む架橋グラフト、を生じさせることができる。これらの無機ナノ粒子は、反応性表面を含有していてもよく、ハイブリッドの有機−無機均一材料と密接な共有結合を形成する。これらのナノ粒子は、金属酸化物、金属窒化物および金属炭化物であってもよく、ならびに、いくつかの非金属酸化物、窒化物および炭化物であってもよい。たとえば、アルミナ、酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛および他の金属酸化物、窒化ホウ素および窒化アルミニウムおよび他の金属窒化物、炭化ケイ素および他の炭化物、天然または合成由来のダイヤモンド、および、それぞれの型の種々の任意の物理的形態および他の金属炭化物およびハイブリッド化学量論的および非化学量論的金属酸化物、窒化物および炭化物である。これらのより特別な例は、Al、AIN、MgO、ZnO、BeO、BN、Si、SiCおよびSiOを含み、その際、混合化学量論的および非化学量論的組み合わせである。さらに、これらのナノ粒子は、表面処理されていてもよく、種々の官能基を導入し、この場合、これらは、ホスト有機ポリマーまたはネットワークとの反応中に参加する能力を有するものである。さらに非HTC−材料、たとえばシリカおよび他のバルク充填剤を、HTC材料で被覆することが可能である。これは、より高価なHTC材料を使用する場合には任意であってもよい。
【0079】
樹脂中のHTC材料の体積%は、約60体積%まで、またはそれ以上であってもよく、より好ましくは約35体積%までであってもよい。より高い容積装填量は、より高い構造的安定性をマトリックスに生じさせる。しかしながら、サイズおよび形状分布、粒子結合の度合いおよびアライメントを制御する場合には、HTC材料は、1体積%またはそれ未満を占めるものであってもよい。しかしながら構造的安定性の理由から、パーコレーションを生じさせるのに必要な最小値よりも大きい量を添加するのは有利であってもよい。したがって、樹脂は、パーコレーション構造およびHTC特性にダメージを与えることなく、物理的歪みおよび変形に耐えうる。
【0080】
表面官能基の添加は、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、シラン基またはビニル基を含むものであってもよく、この場合、これらは、ホスト有機ポリマーまたはネットワーク形成樹脂系との化学的反応が可能なものであってもよい。これらの官能基は、天然に無機充填剤の表面に存在していてもよいか、あるいは、湿式化学的方法、たとえば非平衡プラズマ蒸着法、この場合、これらはプラズマ重合を含み、化学的蒸着法および物理的蒸着法、スパッタイオンメッキ法および電子およびイオンビーム蒸着法を使用することによって適用されてもよい。マトリックスポリマーまたは反応性樹脂は任意の系であってもよく、この場合、これらはナノ粒子と相溶性であり、かつ必要である場合には、ナノ粒子表面で導入される反応基と反応することが可能であってもよい。これらはエポキシ、ポリイミドエポキシ、液晶エポキシ、シアネート−エステルおよび他の低分子量ポリマーおよび種々の架橋剤を有する樹脂であってもよい。
【0081】
不連続ではない有機−無機ハイブリッドの場合には、ゾル−ゲル化学を用いて、連続性な分子合金を形成することが可能である。この場合において、水性および非水性反応を含むゾル−ゲル化学が考慮されてもよい。
【0082】
本発明の生成物は、通常の電気絶縁材料よりも高い熱伝導性を示し、かつマイカテープ構造中で結合する樹脂として、通常のマイカテープ構造のための未反応の真空圧力含浸樹脂として、および、回転および静電発電装置および高電圧および低電圧の双方の電気装置および電子装置、部材および製品中での電気絶縁用途を充足する独立型材料として使用することができる。本発明の生成物は、互いにならびにHTC−材料および従来技術の他の材料と組み合わされてもよい。
【0083】
マイクロおよびナノHTC粒子は、好ましい構造形態、たとえばフィラメントおよび分枝のデンドリマーへの自己凝集(self-aggregate)能力について選択されてもよい。粒子は、本来ならば、その自己結合(self-assemble)能力について選択されてもよいが、もっとも、この方法は、さらに外的応力、たとえば電界、磁界、音波、超音波、pH制御によって、表面活性剤の使用によって、かつ、粒子の粒子表面電荷状態の変更(電荷分布を含む)に影響を与える他の方法によって改変することができる。特別な態様において、粒子、たとえば窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンドは、好ましい形状に自己結合される。この方法において、好ましい凝集構造は、最初に高熱伝導性材料から製造されてもよいか、あるいは、ホストマトリックスへの混合中に結合されてもよい。
【0084】
多くの態様において、HTC−材料のサイズおよび形状は同様の用途の範囲内において可変である。サイズおよび形状の範囲は、同様の製品中で使用される。長いまたは短い可変のアスペクト比のHTC−材料の多様性は、樹脂マトリックスの熱伝導性を増強すると同時に潜在的に増強された物理的特性および性能を提供する。しかしながら、観察すべき一つの点は、粒子の長さは、基質/絶縁体の間の架橋を生じさせる限りにおいては問題とはならないことである。さらに、種々の形状および長さは、HTC−材料のパーコレーション安定性を、より均一な容積装填量およびパッキング密度を提供することによって改善させることができ、その結果としてより均一なマトリックスを生じる。サイズおよび形状を混合する場合には、1の実施態様において、粒子が長ければ長いほど、よりロッド形状となり、他方で粒子が小さければ小さいほど、より球状、平板上または円盤状およびさらには立方体となる。たとえば、HTC材料を含有する樹脂は、約55〜65体積%の10〜50nm直径の球および15〜25体積%の10〜50μmの長さのロッドを、10〜30体積%の樹脂と一緒に含有していてもよい。
【0085】
他の態様において、本発明は、有機−無機複合材料をベースとする新規電気絶縁体材料を提供する。熱伝導性は、他の絶縁特性、たとえば誘電特性(誘電率および誘電損失)、導電性、絶縁耐力および電圧耐久性、熱安定性、引っ張り強度、曲げ強度、衝撃強度および熱耐久性、さらに他の要因、たとえば粘弾性および熱膨張係数、および全絶縁性に悪影響を与えることなく最適化される。有機および無機相は、性質および性能の適切な均衡を達成するために構成され、かつ、選択される。
【0086】
1実施態様において、好ましい形状および粒度分布および選択された表面特性およびバルク充填剤特性を有するナノ、メソおよびマイクロ無機充填剤の表面被覆は、互いに補われる。これは、有機ホスト中の充填剤相のパーコレーション構造および相互結合特性を、要求されるバルク特性を維持しながら、別個に制御することを可能にする。さらに有機および無機被覆を、単一被覆または第2被覆として、粒子表面と有機マトリックスとの相溶性を保証するために使用してもよく、かつホスト有機マトリックスを用いて化学的反応を生じさせることが可能である。
【0087】
形状に関して、本発明は、増強されたパーコレーションのために天然のロッドおよび平板になる傾向のある個々の粒子形状を使用し、その際、ロッドは最も好ましい態様であり、これらの天然に形成されたものに加えて合成的に加工された材料を含む。ロッドは、約5またはそれ以上の平均アスペクト比で、好ましくは10またはそれ以上であるが、特に好ましくは100を上廻ることない粒子として定義されている。1実施態様において、ロッドの軸方向長さは約10nm〜100μmである。ロッドが小さいほど樹脂マトリックスを良好に凝集させ、かつ樹脂の粘度上での悪影響が少ない。
【0088】
多くのマイクロおよびナノ粒子は球状および円盤状の形状を形成し、この場合、これらは一定の条件下で、減少した均一分散能力を示し、かつ、したがってパーコレーション生じる濃度を減少させる凝集したフィラメント構造を導きうる。パーコレーションを増加させることによって、樹脂の熱的性質は増加させることができるか、あるいは二者択一的に、樹脂に添加することが要求されるHTCの材料の量を、減少させることができる。さらに、増強されたパーコレーションは、回避すべき凝集よりもむしろ、樹脂の範囲内でのHTC材料のより均一な分散を生じさせ、望ましくない界面、不完全な粒子濡れおよび微細間隙形成をめったに有することのない、より均一な生成物を生じる。同様に、凝集されたフィラメント状またはデンドリマー状の構造は、高いアスペクト比の粒子から形成される、球状の(密な)凝集または凝塊よりもむしろ、増強された熱伝導性を付与する。
【0089】
付加的に、流れ場および電場および磁場が、HTC材料に適用されてもよく、エポキシ樹脂の内部にこれらを分散し、かつ構造的に整理することができる。交番電場または静電場を使用することによって、ロッドおよび平板状の形状は、マイクロスケール上でアライメントされてもよい。これらは、異なる熱的性質を異なる方向で有する材料を生じる。電場の生成は、種々の従来技術から明らかであり、たとえば、絶縁されたコンデンサーの両端を電極と結合させることによってか、あるいは、コンデンサーを材料または絶縁系の中心で使用することによって生じさせてもよい。
【0090】
有機表面被覆および無機表面被覆、たとえば金属酸化物、窒化物、炭化物および混合系が製造されてもよく、この場合、これらは、選択された粒径と形状分布と組み合わせる場合には、絶縁系のバルク熱伝導性および導電性の制御を備えた定めたパーコレーション構造を提供するのに対して、他方で、粒子誘電率を、系の誘電率を制御するために選択することができる。被覆のもう一つのタイプは、マイクロ粒子およびナノ粒子のダイヤモンド被覆であり、かつ天然および合成起源のものである。多結晶および単結晶のナノ粒子形態において、粒子は担体粒子、たとえばシリカの表面と結合していてもよい。シリカ自体は、強力な熱伝導性材料ではないが、しかしながら、表面被覆の添加によってより高い熱伝導性材料となりうる。しかしながら、シリカおよび他のこのような材料は、前記のようにロッド状粒子に容易に成形されるといった有利な性質を有する。この方法において、種々のHTC特性は、組み合わされて一つの生成物になってもよい。これらの被覆は、さらにマイカテープ構造に適用されてもよく、この場合、この構造は、マイカおよびガラス成分の双方を含み、その際、樹脂の含浸は含むかまたは含まない。
【0091】
反応性表面官能基は、無機被覆に対して内在性の表面基から形成されてもよいか、あるいは、付加的な有機被覆を適用することによって達成することができ、この場合、これらの双方はヒドロキシル基、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、シラン基、ビニル基および他の基を含んでいてもよく、この場合、これらは、ホスト有機マトリックスとの化学的反応に使用することが可能である。これらの単一または複数種の表面被覆および表面官能基は、湿式化学的方法、非平衡プラズマ法、この場合、プラズマ重合を含む、および化学蒸着法および物理蒸着法、スパッタイオンメッキ法および電子およびイオンビーム蒸着法を使用して適用されてもよい。
【0092】
他の態様において、本発明は、有機−無機複合材料をベースとする新規の電気絶縁系を提供する。種々の無機および有機成分間の界面は、化学的および物理的に密接し、異なる相間の高いレベルの物理的連続性を保証し、かつ、機械的に強く、高電圧および低電圧の双方の適用における使用時において電気絶縁系の操作中に破損しにくい界面を提供する。このような材料は、高電圧および低電圧の電気絶縁状態における適用を有し、その際、増強された界面完全性は、増強した電力定格、絶縁系の高い電圧応力、減少した絶縁体の厚さの点での利点を付与し、かつ高い熱輸送を達成しうる。
【0093】
特別な実施態様は、種々の表面処理、ナノ、メソおよびマイクロ無機充填剤を使用して、有機マトリックスに対して無機表面を相溶化することが可能であるか、あるいは、ホスト有機マトリックスとの化学反応を生じさせる種々の表面官能基を導入する。これらの表面官能基は、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、シラン基またはビニル基を含んでいてもよく、この場合、これらはホスト有機マトリックスとの化学反応が可能なものであってもよい。これらの官能基は、湿式化学的方法、非平衡プラズマ法、化学蒸着法および物理蒸着法、スパッタイオンメッキ法および電子およびイオンビーム蒸着法を用いて適用させることができる。
【0094】
多くの態様において、表面処理された材料は、マイカガラステープ構造中の結合樹脂中で、通常のマイカテープ構造のための未反応の真空圧力含浸(GVPI&VPI)樹脂中で、および、回転および静電発電装置および高電圧および低電圧の双方の電気装置および電子装置、部材および製品中での電気絶縁用途または導電適用を充足する独立型電気絶縁被覆またはバルク材料中で使用することができる。さらに、すべての化学的反応は、添加の結果とすべきであり、かつ揮発性副生成物を回避するための凝縮反応ではない。
【0095】
エポキシ樹脂中での改善は、近年、液晶ポリマーを使用することによって製造されることにある。エポキシ樹脂と液晶モノマーとの混合によってか、あるいは、液晶メソゲンをエポキシ樹脂分子、たとえばDGEBAに混合することによって、液晶熱硬化性(LCT)エポキシ樹脂が製造され、この場合、これは、顕著に改善された機械的性質を有する配列されたネットワークを形成するために架橋することができるポリマーまたはモノマーを含有する。本明細書中において参考のために記載するUS特許5904984を参照して欲しい。LCTsの他の利点は、標準的なエポキシ樹脂を超える改善された熱伝導性を有するのに加えて、より低い熱膨張係数(CTE)を有することである。
【0096】
LCTエポキシ樹脂についてさらに挙げられる点は、標準的なエポキシ樹脂よりも、熱を良好に伝導することである。US特許6261481では、この場合、本明細書中において参考のために記載されるものであるが、LCTエポキシ樹脂が、通常のエポキシ樹脂よりも高い熱伝導性で製造することができることを教示している。たとえば、標準的なビスフェノールAエポキシは、横断方向(プレーン)および厚さの方向の双方において、メートルケルビン(W/mK)当たり、0.18〜0.24ワットの熱伝導性を有することが示されている。これとは対照的に、LCTエポキシ樹脂は、実際の使用において、横断方向で0.4W/mK以下であって、かつ厚さ方向で0.9W/mKまでの熱伝導性を有することが示された。
【0097】
HTC材料に関する使用として、紙に適用する場合には、用語「基質」はホスト材料と呼称し、この場合、これから、絶縁紙が製造されるのに対し、紙マトリックスは、基質から製造されるより完全な紙成分に関する。これら2個の用語は、本発明の実施態様を説明する上で多少兌換性のあるものである。熱伝導性の増加は、電気的特性、たとえば、損失係数または基質の物理的特性、たとえば引っ張り強度および付着特性を顕著に損なうことなしに達成されるべきである。物理的特性は、いくつかの態様においてさらに改善することはでき、たとえば表面被覆に関する特性である。さらに、いくつかの実施態様において、ホスト紙マトリックスの電気抵抗性はさらに、HTC材料の添加によって増強させることができる。
【0098】
電気絶縁体のために典型的に使用される標準的なマイカ(白雲母、金雲母)に加えて、さらに黒雲母マイカならびに種々の他のマイカ様のアルミノシリケート材料、たとえばカオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイトおよび緑泥石を使用することができる。モンモリロナイトは、その構造中に格子を有し、この場合、これらはHTC材料、たとえば金属カチオン、有機化合物およびモノマーおよびポリマーと一緒に容易に挿入することができ、高い絶縁耐力複合材料を提供する。
【0099】
絶縁紙は、本発明の樹脂と含浸させてもよい多孔性の媒体の一つの型にすぎない。多くの他の材料および構成部品が、多くの工業においてこれから製造され、これらのいくつかについては以下に挙げられており、この場合、種々の型の多孔性媒体を、樹脂を含浸させるために使用することができる。たとえば、ガラス繊維マトリックスまたは繊維、およびポリマーマトリックスまたは繊維であり、ここで繊維は典型的にクロス、マットまたはフェルトであってもよい。回路板は、この場合、平板積層での、ガラス繊維積層物であって、本発明の樹脂の使用により有利な一つの製品であってもよい。
【0100】
ステーラーコイルと一緒に使用される樹脂の含浸の型は、VPIおよびGVPIである。テープをコイルの周囲に巻き、その後に低粘度の液体絶縁樹脂で、真空圧力含浸(VPI)によって含浸した。この方法は、マイカテープ中にトラップされた空気および湿分を除去するために、コイルを含むチャンバーを排気し、その後に絶縁樹脂を、圧力下で、マイカテープに空隙を排除するために完全に含浸させ、マイカホスト中の樹脂様絶縁体を製造することから成る。約20%の圧縮は、VPI方法に対して、いくつかの実施態様において特別である。これが完了した後に、コイルを加熱して樹脂を硬化させる。この樹脂は促進剤を含有していてもよいか、あるいは、テープがこれを有していてもよい。この、包括的なVPI(GVPI)の変法は、乾燥絶縁コイルを巻き、その後に個々のコイルではなくむしろ、全ステーターを真空含浸させる。GVPI方法では、コイルを樹脂で含浸する前に圧縮し、それというのも乾燥コイルは含浸前にその最終的な位置に挿入されるためである。種々の圧縮方法を前記に示すけれども、本発明の実際の圧縮工程のためにVPI/GVPI含浸法を使用することも可能である。
【0101】
特別な実施態様において、本発明は、ホスト樹脂マトリックスおよび熱伝導性充填剤を含有する、連続性な高熱伝導性樹脂を提供する。高い熱伝導性充填剤は、高熱伝導性充填剤に対してグラフトされた表面官能基を介してホスト樹脂マトリックスとの連続性な有機−無機複合材料を形成し、かつ、ホスト樹脂マトリックスとの共有結合を形成する。関連する実施態様において、高熱伝導性充填剤は1〜1000nmの長さで、かつ3〜100のアスペクト比を有する。より好ましいアスペクト比は10〜50である。
【0102】
他の関連する態様において、高熱伝導性充填剤は、1種またはそれ以上の酸化物、窒化物、炭化物およびダイヤモンドから選択され、その一方で、表面官能基は、1種またはそれ以上のヒドロキシル基、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、シラン基およびビニル基から選択される。
【0103】
他の好ましい実施態様において、本発明は、グラフトされた官能基架橋を有する連続性有機−無機樹脂のための架橋する有機−無機境界を提供し、この場合、この境界は、ホスト樹脂ネットワークおよびホスト樹脂ネットワーク中に均一に分散され、かつホスト樹脂ネットワークとほぼ完全に共反応された無機高熱伝導性充填剤を含有する。高熱伝導性充填剤は1〜1000nmの長さおよび10〜50のアスペクト比を有する。高熱伝導性充填剤は、1種またはそれ以上の酸化物、窒化物および炭化物から選択され、かつ連続性な有機−無機樹脂は最大60体積%の高熱伝導性充填剤を含有し、かつ他の実施態様においては、最大35%である。特に、高熱伝導性充填剤は、高熱伝導性充填剤とグラフトされた表面官能基を有し、かつ表面官能基は、ホスト樹脂ネットワークとのほぼ完全な共反応を可能にする。
【0104】
関連する実施態様において、官能基は、1種またはそれ以上のヒドロキシル基、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、シラン基およびビニル基を含有する。1種またはそれ以上の酸化物、窒化物および炭化物は、Al、AIN、MgO、ZnO、BeO、BN、Si、SiCおよびSiOを含み、その際、混合化学量論的および非化学量論的組合せで有する。ホスト樹脂ネットワークは、エポキシ、ポリイミドエポキシ、ポリイミド、液晶エポキシ、ポリブタジエン、ポリエステルおよびシアネートエステルを含む。さらに連続性な有機−無機樹脂は、架橋剤を含有し、かつ完全な樹脂は多孔性媒体中に含浸することができる。
【0105】
他の実施態様において、本発明は、ホスト樹脂マトリックスを提供し、かつ高熱伝導性材料を集めることを含む、高熱伝導性樹脂の製造方法を提供し、この場合、この方法はその後に、反応性表面官能基で、高いエネルギー反応中で表面処理されることにより、表面官能基は、熱伝導性材料に対してグラフトされる。その後に、処理された高熱伝導性材料とホスト樹脂マトリックスとを混合して、高熱伝導性材料が、ホスト樹脂マトリックスの範囲内にほぼ均一に分散し、その後に、高熱伝導性材料に対してグラフトされた表面官能基を、ホスト樹脂マトリックスと一緒に反応させ、高熱伝導性樹脂を製造する。高熱伝導性樹脂中の高熱伝導性材料の量は、最大60体積%であり、かつ高エネルギー反応は、約200〜500kJ/モルの範囲の結合強度を生じる。
【0106】
関連する実施態様において、方法はさらに架橋剤を挿入することを含む。他の関連する実施態様において、表面官能基は、1種またはそれ以上のヒドロキシル基、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、シラン基およびビニル基を含有し、かつ高エネルギー反応は、非平衡プラズマ照射法、化学蒸着法および物理蒸着法、スパッタイオンメッキ法、レーザービーム、電子ビーム蒸着法およびイオンビーム蒸着法の一つを含む。
【0107】
他の特別な実施態様において、高熱伝導性材料は、1種またはそれ以上のダイヤモンド、AIN、BN、SiおよびSiCを含む。HTC材料のこの群は、特に約200〜500kJ/モルの結合強度を形成するのに適しているが、それというのも、材料の内部結合が極めて強いためである。
【0108】
本発明は最初に電気工業における使用において説明したが、本発明は、他の領域において等しく適用することが可能である。熱伝導を必要とする工業はしたがって、本発明から等しく有利であってもよい。たとえば、エネルギーおよび化学、オイルおよびガスを含む加工および製造業および自動車および航空機産業において使用される。本発明の他の注目点には、パワーエレクトロニックス、通常のエレクトロニックスならびに集積回路が含まれ、そこでは部材の密度を高めようとする絶え間ない要求が、局所的に、かつ大部分の領域で熱を効率的に取り除く必要性を生じる。本発明の特殊な実施態様が詳細に記載されている一方で、開示の全体的な教示に鑑みて、これらの詳細な説明に対して様々な修正や代案が生じ得ることが当業者には理解されるであろう。従って、開示された特殊なアレンジは、単に例示的なものを意味するのであって、本発明の範囲として限定されるわけではない。これは添付されている請求項の全ての範囲ならびにこれと同等のものに挙げられている。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】ステーターコイルの回りに巻かれた絶縁テープの使用を示す図(従来技術)
【図2】本発明の充填された樹脂を介してのフォノン移動を示す図
【符号の説明】
【0110】
13 コイル、 14 コンダクター、 15 ターン絶縁体、 16 複合材料テープ、 18 バッキングシート、 20 マイカ層、 21 外周テープ、 30 HTC材料、 32 樹脂様マトリックス、 34 フォノン、 36 フォノン、 n 平均行程長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト樹脂マトリックスおよび高熱伝導性充填剤を含有する連続性高熱伝導性樹脂において、高熱伝導性充填剤が、高熱伝導性充填剤に対してグラフトされた表面官能基を介してホスト樹脂マトリックスとの連続性な有機−無機複合材料を形成し、かつ前記ホスト樹脂マトリックスとの共有結合を形成する、ホスト樹脂マトリックスおよび高熱伝導性充填剤を含有する連続性高熱伝導性樹脂。
【請求項2】
高熱伝導性充填剤が、酸化物、窒化物、炭化物およびダイヤモンドの少なくとも1種から選択される、請求項1に記載の樹脂。
【請求項3】
高熱伝導性充填剤が、1〜1000nmの長さである、請求項1に記載の樹脂。
【請求項4】
高熱伝導性充填剤が、3〜100のアスペクト比を有する、請求項1に記載の樹脂。
【請求項5】
高熱伝導性充填剤が、10〜50のアスペクト比を有する、請求項4に記載の樹脂。
【請求項6】
高熱伝導性樹脂が、多孔性媒体中に含浸されている、請求項1に記載の樹脂。
【請求項7】
表面官能基が、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、シラン基およびビニル基の少なくとも1種から選択される、請求項1に記載の樹脂。
【請求項8】
ホスト樹脂ネットワーク;および前記ホスト樹脂ネットワーク中に均一に分散され、かつ前記ホスト樹脂ネットワークとほぼ完全に共反応する無機高熱伝導性充填剤;を含有する、有機−無機境界を架橋するグラフトされた官能基を有する連続性有機−無機樹脂において、その際、前記高熱伝導性充填剤が、1〜1000nmの長さおよび10〜50のアスペクト比を有し、その際、前記高熱伝導性充填剤が、酸化物、窒化物および炭化物の少なくとも1種から選択され;その際、前記高熱伝導性充填剤が、前記高熱伝導性充填剤に対してグラフトされた表面官能基を有し、かつ、その際、前記表面官能基が、前記ホスト樹脂ネットワークとのほぼ完全な共反応を可能にし;その際、前記連続性有機−無機樹脂は、最大60体積%の前記高熱伝導性充填剤を含有する、有機−無機境界を架橋するグラフトされた官能基を有する連続性有機−無機樹脂。
【請求項9】
連続性有機−無機樹脂が、多孔性媒体中に含浸されている、請求項8に記載の連続性有機−無機樹脂。
【請求項10】
酸化物、窒化物および炭化物の少なくとも1種が、Al、AIN、MgO、ZnO、BeO、BN、Si、SiCおよびSiOを、混合化学量論的および非化学量論的組合せで含有する、請求項8に記載の連続性有機−無機樹脂。
【請求項11】
連続性有機−無機樹脂が、最大35体積%の前記高熱伝導性充填剤を含有する、請求項8に記載の連続性有機−無機樹脂。
【請求項12】
官能基が、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、シラン基およびビニル基の少なくとも1種を含有する、請求項8に記載の連続性有機−無機樹脂。
【請求項13】
ホスト樹脂ネットワークが、エポキシ、ポリイミドエポキシ、ポリイミド、ポリエステル、ポリブタジエン、液晶エポキシおよびシアネートエステルを含む、請求項8に記載の連続性有機−無機樹脂。
【請求項14】
連続性有機−無機樹脂がさらに架橋剤を含有する、請求項8に記載の連続性有機−無機樹脂。
【請求項15】
高熱伝導性樹脂を製造するための方法において、ホスト樹脂マトリックスを提供し;高熱伝導性材料を集め;前記高熱伝導性材料を表面処理して、高エネルギー反応中で反応性表面官能基を形成することにより、前記表面官能基が、前記高熱伝導性材料に対してグラフトされ;前記処理された高熱伝導性材料を前記ホスト樹脂マトリックスと混合することで、前記高熱伝導性材料がホスト樹脂マトリックスの範囲内でほぼ均一に分散し;かつ、前記高熱伝導性材料に対してグラフトされた前記表面官能基と、前記ホスト樹脂マトリックスとを反応させて、前記高熱伝導性樹脂を製造し;
その際、前記高熱伝導性樹脂中の高熱伝導性材料の量が、最大60体積%であり;
その際、前記高エネルギー反応は、約200〜500kJ/モルの結合強度を生じる、
ことを特徴とする、高熱伝導性樹脂を製造するための方法。
【請求項16】
架橋剤の導入を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
表面官能基が、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、シラン基およびビニル基の少なくとも1種を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
高熱伝導性材料が、ダイヤモンド、AIN、BN、SiおよびSiCの少なくとも1種を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
高エネルギー反応が、非平衡プラズマ法、化学蒸着法および物理蒸着法、スパッタイオンメッキ法、レーザー、電子ビームおよびイオンビーム蒸着法の1種を含む、請求項15に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−502779(P2008−502779A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516676(P2007−516676)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/021115
【国際公開番号】WO2005/123825
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(505428721)シーメンス パワー ジェネレーション インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Power Generation Inc.
【住所又は居所原語表記】4400Alafaya Trail,Orlando,Florida 32826,USA
【Fターム(参考)】