グラフトへの血管内ステントの改良密封取付け
本発明の血管内人工器官は、拡張可能なステムと、管状グラフトをステムのルーメン内でステムに密封可能に取り付ける手段とを有する。グラフトを密封可能に取り付ける手段は、メンブレン、フォーム、ポリマー材料及びこれらの組合せを含む。加うるに、本発明は、血管内人工器官を形成する方法及び血管内人工器官を血管内に植え込んでステムのルーメン内に管状グラフトを密封可能に固定する方法を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管腔内運搬が可能な血管内人工器官及び大動脈の修復のために血管内人工器官を植え込む方法に関する。特に、本発明は、ステント及びグラフト(graft/移植片)をステントに密封可能に取り付ける手段を有し、血管又は分枝器官系、例えば総腸骨動脈に枝分かれするところの腹大動脈内に用いられる血管内人工器官に関する。
【背景技術】
【0002】
腹部大動脈瘤(“AAA”)は、腹腔を通る大動脈の付近における大動脈の動脈壁の異常拡張である。この病態は最も一般的には、アテローム硬化疾患に起因している。腹部大動脈瘤は典型的には、解離性動脈瘤であり、かかる解離性動脈瘤は、動脈の内張り又は壁に裂離又は亀裂が生じた場合に形成される動脈瘤であり、かかる裂離又は亀裂中に血液が押し込められて最終的には凝固し、血管を膨潤させてこれを脆弱化する血栓症を発生させる。腹部大動脈瘤は典型的には、痛みを引き起こさず、身体検査により容易に発見される。動脈瘤は、発見されず、治療されなければ破裂する場合があり、それにより大規模な内出血が生じ、これは患者にとって致命的になる恐れがある。
【0003】
AAAの治療は典型的には、一般に「トリプルA」手技と呼ばれている或る形態の動脈再建術を含む。かかる一方法は、バイパス手術であり、この手術においては、切開部を腹腔に入れ、大動脈を動脈瘤の部位の上下で閉鎖し、動脈瘤を切除し、正常な動脈の直径にほぼ等しい寸法の合成グラフト又は管を血管に縫合して動脈瘤に取って代わるようにし、そして大動脈を通る血液の流れを復旧させることができる。
【0004】
しかしながら、かかるAAAに罹患している多くの患者は、年齢が65歳を超えており、多くの場合、術前又は術後合併症の発生のリスクを増大させる他の慢性疾患を有している。かくして、かかる患者は、トリプルA手技の理想的な候補者ではない。さらに、この手技は一般に、動脈瘤が手術の規模及び患者を手術のために前処置するのに必要な時間に起因して動脈瘤がいったん破裂すると首尾良く行われない。このように動脈瘤が破裂した患者の死亡率は、65%を超える。
【0005】
従来型手術法の上述の欠点の結果として、低侵襲法がAAAの修復のために開発された。かかる方法では、ステント−グラフトを導入器と呼ばれているカテーテルによって動脈瘤の部位のところに配置し、このカテーテルは、配備装置として役立つ。典型的には、ステント−グラフト及びその配備システムを経皮的に血液の流れ中へ導入し、ステントが半径方向に拡張するようになる動脈瘤の部位のところまでガイドワイヤを用いてナビゲートする。かかる手技は、局所麻酔を用いて実施でき、患者をトリプルA手技と関連した上述のリスクのうちの多くにさらさないので望ましい。しかしながら、腹大動脈の分枝状構造及び環境並びに先行技術のステント−グラフトの技術は、長期間安定性と関連した問題に悩まされ続けている。
【0006】
かかる低侵襲修復手技では、腹大動脈弓の分枝状構造に対しては、独特の構造をした分枝状ステント−グラフトを用いる必要がある。典型的には、動脈瘤、閉塞又は狭窄は、大動脈弓が腸骨動脈に枝分かれする場所で生じ、更に又、腸骨動脈のところで生じる場合がある。この領域へのステント−グラフトの現場位置決めは、非分枝状血管の管腔内へのかかる装置の位置決めとはかなり異なっている。分枝状ステント−グラフトの両方の脚部を大腿動脈系の単一の側枝中に挿入してこれを通って送り進めるので、ステント−グラフトの脚部のうち一方を、ステント−グラフトが大動脈瘤と関連の総腸骨動脈瘤の両方を横切って適切に位置決めされて下肢の各々への血液循環を供給するよう最終的には対側の側枝内へ引き入れ又は引っ張り込まなければならない。
【0007】
分枝状ステント−グラフトはあまりにも嵩張っている場合が多いので、特にステント−グラフトの対側の側枝のための脚部を同側の側枝のための脚部と一緒に挿入しなければならないことに鑑みて、単一の腸骨動脈を通って前進することはできない。加うるに、ステント−グラフトを対側動脈中に配置するとき、ステント−グラフトをねじったりよじったりしないよう注意を払う必要がある。グラフトの尾側部分は、内部腸骨動脈の口を横切って延伸してはならず、もし延伸すると、その結果としてその動脈の偶発的な閉塞が生じる。ステント−グラフトの一方の脚部を一方の大腿動脈から同側の大腿動脈に引き入れる手技では、ステント−グラフトの挿入に先立って、閉鎖可能なワイヤバスケットを用いて交差大腿カテーテルの配置が必要になる。
【0008】
この手技では、しばしば動脈瘤腔内での相当多くの且つ技量の要るワイヤカテーテルの操作が必要である。したがって、血栓又は塞栓物質を乱し又はかかる物質を動脈瘤嚢内から脱落させないよう注意を払う必要がある。追加の要因、例えば、腸骨動脈のひどい蛇行度や腹大動脈が動脈瘤形成中尾側に伸長する傾向に起因する大動脈腸骨動脈接合部の著しい角形成が組み合わさって、管腔内分枝状グラフトの配備を時間のかかるものにすると共に手技に起因する合併症及び不全症のリスクの増大を招く。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
分枝状血管で生じる動脈瘤の修復において一体形ステント−グラフトを用いることと関連した上述のリスクを解決するため、現場で組立て可能な2コンポーネント型分枝状設計方式が開発された。第1のコンポーネントは、腎動脈のすぐ下に位置決めされる上側幹部、基部及び腸骨動脈用脚部から成る。この場合、第2のコンポーネントを基部内に配備し、装置を同側の腸骨動脈用脚部に連結する。これら装置には多くの問題があり、かかる問題としては、ファブリックの摩耗、キンク、上側頸部及び基部接合部のところでの体内漏洩が挙げられ、加うるに、これら装置の中には、製造するのが困難であり、血管壁に固定できず、又は現場で組み立てるのが困難であることが判明したものがある。
【0010】
管腔内修復が成功しない主な理由として、一般に血管系においては、動脈瘤嚢内ではより明白であるように、形態学的特徴が変化し続けているということがクローズアップされている。かかる形態学的環境が原因となって、予想も予期もしていない応力が疾患の治療に用いられるステント−グラフトにかかる。かかる摩耗及び体内漏洩が生じると、これら装置の補修が必要になり、装置の交換を含む場合のある追加の外科手技が必要となる。このために、一般に動脈瘤、特にAAAの修復に有用なステント及びこれに取り付けられるグラフト並びに技術の開発が要望され続けている。
上述のことに鑑みて、本発明の目的は、血管内人工器官及び血管内人工器官を血管内に植え込む方法を提供することにあり、血管内人工器官は、管状グラフトを血管内人工器官内に密封可能に取り付ける手段を備える。加うるに、本発明は、形態学的環境に適合するよう融通性があって且つ耐久性があり、しかも現場で組立て可能な人工器官を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、内部ルーメンを備えた拡張可能なステント及び管状グラフトをステントのルーメン内に密封可能に取り付ける手段を有する血管内人工器官を含む。グラフトを密封可能に取り付ける手段は、メンブレン(membrane/膜)、フォーム、ポリマー材料及びこれらの組合せを含む。本発明の別の実施形態では、拡張可能なステント及びステントによって支持されていて、ルーメンを横切って延びるメンブレンを有する血管内人工器官が提供される。メンブレンは、少なくとも1つの管状グラフトを挿通状態で密封可能に受け入れるグラフト受入れ部材を更に有する。
【0012】
本発明は、上述した血管内人工器官を更に提供すると共に少なくとも1つの管状グラフトを挿通状態で密封可能に受け入れるグラフト受入れ開口部を備えた静電紡糸材料を更に含むメンブレンを提供する。
【0013】
本発明の実施形態によれば、第1の人工器官コンポーネント及び第2のコンポーネントを有する分枝状血管内人工器官が提供される。第1のコンポーネントは、上述した人工器官に類似しており、ステント、ステントの内部ルーメンを横断方向に横切って延びていて、ステントに取り付けられたメンブレンを有する。メンブレンは、開口部を更に有する。第2の人工器官コンポーネントは、実質的に流体密状態で開口部に通される。第2のコンポーネントは、1つ以上のグラフトを更に有する。
【0014】
本発明の別の実施形態では、2つの人工器官及び管状グラフトを有するマルチコンポーネント型血管内人工器官システムが提供される。各人工器官は、拡張可能なステント及びステントの内部ルーメンを横断方向に横切って延びていて、ステントに取り付けられたメンブレンを有する。各メンブレンは、グラフト受入れ開口部を更に有する。管状グラフトは、流体を管状グラフト中に差し向ける各人工器官のグラフト受入れ開口部に密封可能に通される。
【0015】
本発明の別の実施形態では、内部ルーメン、遠位端部及び近位端部を備えたステントを有し、遠位端部が開口部を備え、近位端部が遠位端部の開口部と反対側に2つの開口部を有し、更に、近位端部の開口部の各々を横切って延びる穿刺可能なメンブレンを有する血管内人工器官が提供される。
【0016】
本発明の別の特徴では、拡張可能なステント、第1のグラフト及び第2のグラフトを有する血管内人工器官が提供される。拡張可能なステントは、遠位端部、近位端部及びこれら端部を貫通した開口部を有する。第1のグラフトは、開口部内でステントの遠位端部に取り付けられ、この第1のグラフトは、これを貫通して延びる内部ルーメンを有する。第2のグラフトは、開口部内でステントの近位端部に取り付けられていて、第1のグラフトから間隔を置いて位置する。第2のグラフトは、第2のグラフトを貫通して延びる少なくとも2つの内部ルーメンを有し、メンブレンが、第2のグラフトの内部ルーメンの各々を横断方向に横切って延びている。
【0017】
本発明の別の実施形態では、拡張可能なステント及びステントの内部ルーメン内に挿入される管状グラフトを有する血管内人工器官組立体が提供される。グラフトは、グラフトの外面に取り付けられた拡張可能なフォームを有する。拡張可能なフォームは、管状グラフトをステントに密封可能に固定する。
【0018】
本発明の一特徴では、血管内人工器官システム内に組み込み可能な部品のキットが提供される。キットは、体内血管内に挿入可能な拡張可能なステント、ステント内に挿入されるようになった管状グラフトであって、体液を流通させる外面及び内面を備えた管状グラフト、管状グラフトの外面に設けられた拡張可能なフォームを含む。拡張可能なフォームは、ステント内で拡張して管状グラフトをステントに密封可能に固定するようになっている。
【0019】
本発明の別の実施形態では、ステント、ステント内に延びる管状グラフト及び管状グラフトをステントに対して密封可能に支持するポリマー材料を有する血管内人工器官組立体が提供される。
【0020】
本発明の別の特徴では、血管内人工器官システム内に組み込み可能な部品のキットが提供される。キットは、ステントの内面に被着された一次反応性物質、内部ルーメン内に延びるようになった管状グラフトであって、外面に被着された一次物質を有する管状グラフト、一次物質と反応する二次物質を含む。二次物質は、内部ルーメン内へのグラフトの挿入時に一次物質に付着するようになっており、二次物質は、一次物質と反応してグラフトとステントとの間にシールを形成する。
【0021】
本発明の別の特徴では、本発明の種々の血管内人工器官を形成する方法及びかかる血管内人工器官を血管内に植え込む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、図1〜図21に示すように管腔内運搬可能な血管内人工器官に関する。この人工器官は、血管用人工器官として用いるのに特に適している。本発明の人工器官は、管状人工器官とステントとの間の漏れ及び摩耗を含む先行技術の上述の問題を解決する。加うるに、本発明の人工器官は、血管環境の形態学的特徴に適合するよう融通性をもたらす。本発明の人工器官は、現場で簡単な組立てを可能にする最小限のコンポーネントを有する。
【0023】
本発明の一実施形態は、図1〜図3に示すような人工器官1である。人工器官1は、ステント2及びメンブレン3を含む全体として管状の構造体である。
【0024】
本発明のステント2は、当該技術分野において知られているステントに類似している。ステント2は、大動脈壁と直接的な接触状態にある連続気泡状又は多孔質のものであるのがよい。これにより、植え込み状態の体内人工器官の安定化のための細胞の内方成長及び器具の固定が可能になる。ステントを当該技術分野において知られているような種々の材料で更に被覆するのがよく、それによりかかる材料を通る細胞の成長が促進される。加うるに、ステント2は、血液の流れを通るのを阻止する被覆材又はグラフト複合材(図示せず)を有するのがよい。ステント2の外面、内面又はこれら両方を用途に応じて覆い又は被覆するのがよい。
【0025】
当該技術分野において知られているように、ステントは、2つの直径、即ち圧縮状態の直径及び拡張状態の直径を有し、圧縮直径は、拡張直径よりも実質的に小さい。ステントの圧縮直径は、ステントの構成材料及び構造に応じて様々である。一般に、圧縮直径は、低侵襲配備又は展開システム(図示せず)により脈管構造中への植え込みを可能にするに足るほど小さくなければならない。拡張直径は、交換又は修復対象の脈管構造と実質的に同一の直径であることが必要である。拡張直径は、血管を拡張し又は拡大させる駆動力として働かずに、ステントは大動脈壁に十分に固定できるようにするほど大きいことが必要である。
【0026】
種々のステントタイプ及びステント構造を本発明において採用することができる。ステントは、半径方向に収縮も可能であり、この意味では、これを半径方向拡張可能、変形可能又は順応可能なステントというのが最善である。ステントは、バルーン拡張型又は自己拡張型のものであるのがよい。バルーン拡張型ステントとしては、加えられた力により半径方向に拡張されるステントが挙げられる。自己拡張型ステントとしては、ステントを半径方向に拡張させるばねのような作用を持つステント又は或る特定の温度範囲で或る特定の形態が得られるようステント材料のあらかじめ設定された形状記憶特性に起因して拡張するステントが挙げられる。ニチノール(Nitinol )は、ばねのような弾性モードと運動に基づく形状記憶モードの両方で良好に働くことができる材料の1つである。他の材料、例えばステンレス鋼、タンタル、白金、金、チタン及び他の生体適合性金属、並びに形状記憶ポリマー又はポリマーを主成分とするステント、或いはもっとはっきりと言えば上述の複合材が、当然のことながら想定されている。
【0027】
ステントの形態もまた、多くの幾何学的形状から選択可能である。例えば、ワイヤステントをワイヤ中に波状又はジグザグを設け又は設けないで、連続螺旋パターンの状態に締結して半径方向変形可能なステントを形成してもよい。個々のリング又は円形部材を例えばストラット、縫合糸、溶接、リングの織編又は係止により互いに連係させて管状ステント構造を形成してもよい。本発明でいうような管状ステントは、管からパターンをエッチングし又は切断することにより形成されたステントをも含む。かかるステントは、スロット付きステントと呼ばれることが多い。さらに、パターンを材料又は金型にエッチングし、ステント材料を例えば化学気相成長法等によりこのパターン中に堆積させることによりステントを形成することができる。
【0028】
図1及び図2に示すように、ステント2は1対の互いに間隔を置いた端部、即ち遠位端部と近位端部5及びこれら端部相互間に位置する管状壁構造を有する。管状壁構造は、外面及びステント2の内部ルーメン6を構成する内面を有する。メンブレン3は、ステント2によって支持され、ステント2の内部ルーメン6を横切って延びている。メンブレン3は、少なくとも1つの管状ステントを挿通状態で密封可能に受け入れる1つ以上のグラフト受入れ部材7を有する。グラフト受入れ部材7は、弱め(られた)部分、即ち、スリット、穴、穿通可能な材料、内向き部、穿刺部、弁等として構成されている。
【0029】
一般に、メンブレン3は、血液に対して不透過性であり、又は、メンブレン材料は、血液に対して透過性であるが、現場において不透過性であるよう又は不透過性になるようこれを被覆してもよい。メンブレン3は、所要の強度特性及び生体適合性を備える限り、種々の周知の材料で作られたものであってよい。メンブレン3は、可撓性及び圧縮性材料から作られている。加うるに、メンブレン3は、合成であってもよく又は天然のものであってもよい。かかる材料の例としては、ポリマー、エラストマー、ゴム、ろう、シリコーン、パリレン、ポリウレタン、ビニルポリカプロラクトン、ポリテトラフルオロエチレン(TEFLON:登録商標)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ダクロン(DACRON:登録商標)、アログラフ(allograph)、ゼノ−グラフ(zeno-graph)材料、ラテックス並びに上述した材料の複合材である。市販の材料の例は、Corethane(コルビタ社)、Carbothane(サーメディックス社)、Silastic、Pellethane及びParylene(スペシャリティ・コーティング・システムズ社)である。材料は、押し出し成形材料、編成材料、織成材料又は静電紡糸材料であってよい。
【0030】
加うるに、メンブレン3を生体侵食性材料、生分解性材料、又は分解性材料、例えばポリマー、アルブミン、コラーゲン、ヘパリン又はこれらに似た被覆材料で被覆し又はメンブレン3に今述べた材料を含浸させるのがよい。メンブレンは、生物学的に不活性の材料、例えばPTFE又は多孔質ポリウレタンの被膜を有してもよい。被膜を当該技術分野において知られている方法、例えば、浸漬法、吹き付け法又は材料への蒸着法によりメンブレンに付加するのがよい。
【0031】
メンブレン3の厚さは、メンブレン3の用途及び構成材料に応じて様々であってよい。一般に、メンブレンの厚さは、ステント2の遠位端4と近位端5との間の距離よりも小さい。したがって、ステント2の何割かの部分は、メンブレン3の上及び(又は)下に延びる。例えば、血管用途では、メンブレン3の厚さは、0.001mm〜0.6mm、好ましくは、0.1mm〜0.4mmであるのがよい。
【0032】
メンブレン3は、用途に応じて平らな表面又は種々の形状のものであってよい。メンブレン3は、メンブレン3をステント2に結合するのを助けるよう且つ(或いは)管状グラフトをメンブレン3に密封可能に固定できるよう形作られたものであるのがよい。例えば、図1は、ピーク形成部3a,3bを有するメンブレン3を示しており、これらピーク形成部3a,3bの頂部のところにはグラフト受入れ部材が設けられている。ピーク形成部3a,3bは、図5にピーク形成部13a,13b及び管状グラフト18として示された2つの表面相互間のより広い表面接触をもたらすことにより管状グラフトとメンブレン助3との間の密封を助ける。カップ状又はソックス状のメンブレンが、このメンブレンをステントに結合するための広い表面積をもたらすことによりメンブレンをステントルーメン内に取り付けるのを助ける。
【0033】
図1及び図3は、ステント2の内部ルーメン6に取り付けられると共にこれによって支持されたメンブレン3を示している。メンブレン3を接着剤、例えばシリコーン又はポリウレタンによる結合、機械的取付け手段、例えば縫合糸又はステープル、熱結合、貼り合わせ又は化学的結合によりステント2に取り付けることができる。加うるに、ステント2の内面をエラストマー又はポリマーで被覆するのがよく、そして溶剤を用いてこの被覆内面をメンブレンに結合するのがよい。メンブレン3をステント2に沿う任意の場所でステント2の内部ルーメン6を横切って、例えば、ステント2の遠位端部4、近位端部5又はこれら端部相互間を横切って位置決めするのがよい。
【0034】
図1〜図3に示すように、メンブレン3は、ピーク形成部3a,3bがメンブレン3の中央に設けられた状態でステント2の内部ルーメンを横断方向に横切って延びている。グラフト受入れ部材7が、各ピーク形成部3a,3bの頂部のところに設けられている。図2は、ピーク形成部3a,3bを頭側方向に差し向けられた状態で示しているが、所望の用途に応じて、ピーク形成部3a,3bを逆さまにしてピークの頂部が尾側方向に差し向けられるようにしてもよいことが理解できる。管状グラフトをメンブレン3に密着させるのを助けることに加えて、ピーク形成部3a,3bは、流体がメンブレン3を横切って一方向に流れることができるようにする逆止弁として働き、流体の流れをその方向に生じさせないときには閉じる。加うるに、ピーク形成部3a,3bは、メンブレン3中を通る逆方向の流体の逆流を阻止する。
【0035】
上述の本発明の人工器官を1つ以上のグラフトと組み合わせて用いることができる。図4及び図5に示すように、人工器官10は、図1の人工器官1に類似しており、グラフト受入れ部材17を貫通して密封可能に延びるグラフト18を更に有している。ピーク形成部13a,13bのメンブレン13の材料は、グラフト18周りの形状に一致し、グラフト18を密封可能に固定するグラフト18の一部と同一の広がりを持つようになる。グラフト18中を通る血液の流れは、グラフト18を介してメンブレン13、より詳細には、ピーク形成部13a,13bに外向きの半径方向圧力を加える。メンブレン13は、ステント12へのメンブレン13の固定により得られる逆向きの力をグラフト18に及ぼしてグラフト18の運動を制限し、メンブレン13は更に、メンブレン13のグラフト受入れ部材17を介するグラフト18の接近を制限する。このような逆向きの力は、グラフト18とメンブレン13との間にシールを形成する。理解できるように、用途に応じて1つ以上のピークをメンブレン13の材料に形成するのがよい。
【0036】
任意の公知のグラフト材料又は管状人工器官及び構造を用いて本発明のグラフトを形成することができる。グラフトは好ましくは、全体として管状の形態を有している。グラフトは、所要の強度特性及び生体適合性を備える限り、種々の周知の材料で作られたものであってよい。かかる材料の例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、発泡ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、DACRON(登録商標)、TEFLON(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、PTFE被覆DACRON、並びに上述した材料の複合材である。材料は、押し出し成形材料、編成材料、織成材料又は静電紡糸材料であってよい。グラフトを生体侵食性材料又は分解性材料、例えばアルブミン、コラーゲン、ヘパリン又はこれらに似た被覆材料で被覆し又はグラフトに今述べた材料を含浸させるのがよい。加うるに、グラフトは、生物学的に不活性の材料、例えば多孔質ポリウレタンの被膜を有してもよい。
【0037】
一般に、グラフト18の直径は、用途に応じて様々であるが、一般に、グラフト18(又は、多数のグラフトが用いられている場合には複数個のグラフト)の少なくとも一部が、グラフト受入れ部材17と実質的に同一の直径のものであるべきである。一般に、グラフト18の直径は、妨げられない血液の流れを可能にし、長期間の固定の場合にはメンブレン13に対する十分に大きな牽引力を維持しながら血液の流れ中に逆行する圧力の増大を阻止するほど大きいものであるべきである。円筒形管状形態が示されているが、他の管状形態を使用してもよい。
【0038】
本発明のもう1つの実施形態は、図6に示すような分枝状人工器官20である。図6は、図1の人工器官1に類似した第1の人工コンポーネント21を示しており、この第1の人工コンポーネントは、拡張可能なステント22及びステント22の内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共にステント22に取り付けられたメンブレン23を有している。メンブレン23は、1つ以上のグラフト受入れ開口部27又は部材を有している。分枝状人工器官20は、分枝状グラフト28を含む第2のコンポーネント26を更に有している。一実施形態では、分枝状グラフト28は、1つの幹部分28cに収斂する2つの脚部分28a,28bを備えた逆“Y”字形のものである。幹部分28cは、メンブレン17のグラフト受入れ部材27内へ延びてグラフト28の外面とメンブレン23との間に実質的に流体密のシールを形成している。2つの脚部分28a,28bは、それぞれ各腸骨動脈8(8a,8b)中へ延びている。脚部分(28a,28b)は、これらを通って流れ、脚部分(28a,28b)を各腸骨動脈(8a,8b)内に押し込む圧力により定位置に位置したままである。追加の繋留ステント24,25を図6に示すように脚部分(28a,28b)と組み合わせて用いて腸骨動脈壁へのグラフト17の固定具合を一段と高めるのがよい。
【0039】
本発明の別の分枝状実施形態が、図7に示されており、この実施形態は、図6の上述の分枝状人工器官20に類似しており、ステント32、ステント32の内部ルーメンを横断方向に横切って延びるメンブレン33、グラフト受入れ部材37及びグラフト38を有している。しかしながら、図7の分枝状人工器官30は、図6の分枝状グラフト28に代えて、2つの別々のグラフト38(38a,38b)を有している。図7に示すように、グラフト38は、別々のグラフト受入れ部材37(37a,37b)内へ延び、グラフト38とメンブレン33との間に実質的に流体密のシールを形成している。グラフト38を腸骨血管壁(8a,8b)に固定する追加の繋留ステント34,35を追加するのがよい。
【0040】
本発明の別の実施形態が、図9及び図10に示されており、この実施形態は、図1の人工器官1に類似しており、拡張可能なステント42及びステント42に取り付けられていて、ステント42のルーメンを横断方向に横切って延びるメンブレン43を有している。図9のメンブレン43は、静電紡糸材料を含む。図9は、図9のピーク形成部に代えて、平らな円板の形状に形作られた静電紡糸材料を示している。静電紡糸材料は、図1のグラフト受入れ部材7に類似していて、少なくとも1つの管状グラフトを挿通状態で密封可能に受け入れるグラフト受入れ開口部47を有している。理解できるように、上述したように用途に応じて種々の形状のメンブレン43及びステント42に対するかかるメンブレンの配設場所を利用できる。
【0041】
一般に、静電紡糸材料は、血管用グラフトに用いられる当該技術分野において知られている材料に類似している。メンブレンの紡糸構造は、多孔質支承構造を提供し、それにより血液がこの中で凝固し、密封可能な材料となる。基本的な静電紡糸法は、当該技術分野において周知である。この方法では、静電荷を強い磁界の存在下で、ポリマー融液又は溶液の流れに導入する。おおかたの動作形態は、単純な金属又はガラス毛管紡糸口金内での高電圧電極との接触による流体中への電荷の導入を含む。電界中で増速して薄くなり、最終的に接地装置、代表的にはプレート又はベルト上に集まる電荷ジェットが作られる。或る特定の動作条件下においては、流体ジェットは、これがコレクタに達する前においては不安定になる。低分子量流体では、不安定状態が生じると、典型的にはその結果として、「電気紡糸法」と呼ばれる方法において小さな荷電液滴のスプレーが生じる。粘弾性力が、ポリマー流体でジェットを安定化させ、小径の荷電フィラメントの形成を可能にし、かかるフィラメントは、「エンベロープ」又は円錐状分散流体として見え、又、凝固して不織布の形態でコレクタ上に堆積する。これら条件下において、0.1μm台の平均繊維直径を観察するのが普通であり、かかる平均直径は、不安定な領域に入るジェットの直径(10〜100μm)の1/1000倍である。静電紡糸法は、米国特許第4,044,404号明細書及び米国特許第4,323,525号明細書に記載されており、これら米国特許明細書の記載内容を参照によりここに引用する。加うるに、この材料は、透過性である。この材料の孔径は通常、0.001μm〜500μmであろう。材料が表面層中への細胞の入り込みを可能にするほど十分多孔質のものであるようにするため、平均表面細孔寸法は、5μm〜25μm台であることが好ましく、より好ましくは、7μm〜15μmである。ただし、材料のバルクにおける孔径は、平均約1μmであってもよい。加うるに、メンブレンを、凝固を促進し又は流体の流れを阻止する不透過性材料となる物質、例えばコラーゲン又はエラストマー、例えばCorethaneで被覆するのがよい。加うるに、人工器官40は、メンブレンを形成する多数の材料層、例えば、シリコン層に被着された電気紡糸層を有するのがよい。
【0042】
人工器官40を種々のグラフトと組み合わせて用いると、図10に示すようなマルチコンポーネント型システム、分枝状システム、ステント−グラフト人工器官等を構成することができる。人工器官40は、グラフト受入れ開口部47を貫通して延び、これにより密封可能に支持される少なくとも1つの管状人工器官48と組み合わせて用いられている。一般に、管状人工器官48は、グラフト受入れ開口部47を貫通して圧縮状態で位置決めされるグラフトから成る。グラフト48は、所望の用途に応じて寸法形状が様々であってよい。例えば、グラフト受入れ開口部47の各側に延びるグラフト48の一部は、メンブレン43へのグラフト48の固定具合を一段と高めるようグラフト受入れ開口部47を貫通して延びる部分よりも大きな直径の開口部を有するのがよい。いったん定位置に配置されると、グラフト48は、グラフト受入れ開口部47内で拡張するようになる。グラフト48中を通る血液からの圧力により、グラフト48は、図1の人工器官1に関して上述したのと類似した仕方で静電紡糸メンブレンに固定される。
【0043】
図1〜図10に示すような上述の人工器官を体腔内への配備又は展開できるよう運搬システム内に装填するのがよい。用いられる運搬システムは、当該技術分野において知られたシステムに類似している。典型的には、運搬システムは、人工器官を圧縮状態で受け入れる導入器具又はシースを有する。所望の血管部位にいったん到達すると、シースを取り外し、後に、ステント及びこれに取り付けられたメンブレンを管腔内に残す。追加のコンポーネントを上述の配備された人工器官、例えば管状グラフトと組み合わせて用いるのがよい。最初の人工器官の配備後に、追加のシース又は別個の器具を備えた同一の運搬装置を用いて管状グラフトを配備する。
【0044】
一般に、図1の人工器官1に関し、運搬システムは、人工器官1を圧縮状態で支持する細長い外側シースを有する。外側シースは、人工器官1を長手方向に取り囲む細長い全体として管状の構造体である。外側シースの直径は、体内管腔内への挿入が容易なほど十分小さい。
【0045】
配備システムは、当該技術分野において知られているガイドワイヤ、多数のシース、拡張器具、即ち、バルーン、ノーズキャップ及びプッシャを更に有するのがよい。
【0046】
運搬システムを体内管腔内の所望の部位に位置決めすると、外側シースを人工器官1に対して引っ込める。外側シースの引っ込みにより、ステント2がその長手方向(軸方向)広がりに沿って漸次放出され、ステント2が半径方向に拡張できる。ステント2が更に拡張すると、ステント2内に位置決めされているメンブレン3が配備される。メンブレン3は、取付け状態のステント2の半径方向拡張力によって半径方向に展開する。
【0047】
図9に示すような人工器官40は、上述したのと同一の方法であって当該技術分野において知られている方法を用いて配備できる。
【0048】
上述の人工器官をグラフトと組み合わせて配備する方法は、多段階配備法である。初期段階は、上述したステント及びこれに取り付けられたメンブレンを有する第1の人工器官を配備する段階である。
【0049】
一般に、第1の人工器官を位置決めして配備した後、当該技術分野において知られている種々のシステムを用いて管状人工器官を用いて配備する。例えば、追加のシースを上述した第1の運搬装置に追加して第1の人工器官の配備後に管状グラフトを配備するのがよい。第1の人工器官及び管状人工器官を運搬するのに有用な多段階運搬装置の一例が、コンヤに付与された米国特許第6,123,723号明細書に記載されており、この米国特許明細書の記載内容を参照によりここに引用する。変形例として、第2の別個の運搬システムを用いて管状人工器官を配備してもよい。最初の人工器官を上述したように配備した後、追加の配備装置を用いて管状人工器官をメンブレンのグラフト受入れ部材内に位置決めする。追加の配備装置がいったん定位置に位置すると、シースを引っ込めそれにより管状人工器官をグラフト受入れ部材内に配置することができる。管状人工器官は、血液がこの管状人工器官中を流れ、管状人工器官を半径方向に拡張させてこれをメンブレンに当てることによりメンブレンに固定可能に密着する。加うるに、ステントを配備して管状人工器官を動脈に固定するのがよい。
【0050】
同様に、分枝状システムは、上述したのと同一の多段階運搬法を用いる。追加のシース及び(又は)配備装置を用いて管状人工器官を上述したように配備する。例えば、図8は、ステント32a及びこれに取付け状態のメンブレン33aを含む最初の人工器官30aを配備した後に管状人工器官が植え込まれている分枝状システムを示している。管状人工器官38a,38bを腹部までナビゲートする。これは、管状人工器官38a,38bをカテーテル36,39に取り付け、しかる後、経皮的にカテーテルを大腿動脈に刺入し、そして管状人工器官を標的部位までナビゲートすることにより達成される。ガイドワイヤを用いて標的部位へのカテーテルの運搬を助けるのがよい。カテーテルをヒトの動脈系内でナビゲートすることが、当該技術分野において周知である。バルーンカテーテルの一例が、1994年4月19日にピンチャック等に付与された米国特許第5,304,197号明細書に記載されており、この米国特許明細書の記載内容を参照によりここに引用する。標的部位は、上述したように、メンブレン33aのグラフト受入れ部材37a,37b中に位置している。カテーテルのシースを取り外し、管状人工器官38a,38bをグラフト受入れ部材37a,37b内に配置する。カテーテルを抜去することにより、血液が管状人工器官38a,38bを通って流れることができ、それによりかかる人工器官38a,38bをグラフト受入れ部材37a,37b内に更に固定し、最終的に管状人工器官38a,38bをステント32aに密封可能に固定する。遠位側繋留ステント(図示せず)を用いて管状人工器官38a,38bを腸骨動脈の壁に固定するのがよい。遠位側繋留ステントを管状人工器官38a,38bを運搬するのに用いたのと同一のカテーテルに取り付けてこれを用いて配備するのがよい。変形例として、管状人工器官38a,38bの配置の完了後、別個の配備装置を用いて繋留ステントを配備してもよい。
【0051】
図7は、ステント32、これに取り付けられたメンブレン33、グラフト38及び繋留ステント34,35を含む分枝状人工器官30を配備した後にシステム全体がどのように見えるかを示している。
【0052】
図6の分枝状グラフト28を含む人工器官20の運搬法は、図8の人工器官30の運搬法に類似している。
当初、スタッド22及びこれに取り付けられたメンブレン23を含む人工器官20を上述したように所望の部位まで運搬する。第2の運搬システムを用いて分枝状グラフト28を圧縮状態でメンブレン23のグラフト受入れ部材27内に植え込む。いったん定位置に位置すると、シースを取り外し、グラフト28がグラフト受入れ部材27内で拡張できるようにし、グラフト28の一方の脚部28aが定位置に位置すると、これを繋留ステント24で繋留するのがよい。第3の運搬装置を用いて分枝状グラフト28の他方の脚部28bを正しく位置決めし更に繋留ステント24を追加してグラフトを腸骨動脈内に固定する。図6は分枝状グラフト28を含む人工器官20を配備した後にシステム全体がどのように見えるかを示している。
【0053】
大動脈壁への人工器官の固定具合を更に高めることが望ましい場合がある。多数の人工器官を上述したように組み合わせて用いて腎動脈の頭側への人工器官の固定を行うのがよい。例えば、図11は、第1の拡張可能な第1の拡張可能な人工器官51及び第2の拡張可能な人工器官61を含む本発明のマルチコンポーネント型血管内人工器官50を示している。人工器官51,61は、図1の人工器官に類似していて、ステント及びステントの内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共にステントに取り付けられたメンブレンを有し、このメンブレンは、1つ以上のグラフト受入れ部材を有している。第1の拡張可能な人工器官51及び第2の拡張可能な人工器官61は、それぞれ、拡張可能なステント(52,62)と、グラフト受入れ開口部(57,67)を備えたメンブレン(53,63)とを有している。図11は、流体がメンブレン53を通って流れるようにするための出口となる流体の流れ開口部54を更に含む第1の拡張可能な人工器官51を示している。流体の流れ開口部54は、スリット、穴、流体透過性材料等を含む。図11は、管状グラフト58(これは、58a,58bを含む)を有する分枝状システムを示しており、これら管状グラフトは、管状グラフト58を通る流体を差し向けるためのグラフト受入れ開口部(57,67)のところで各人工器官(51,61)を密封可能に貫通している。加うるに、図11は、第1の拡張可能な人工器官51と第2の拡張可能な人工器官61との間でグラフト58に設けられた多孔質部分59(これは、59a,59bを含む)を有するグラフト58を示しており、それによりグラフト58の多孔質部分59を通る流体の交換が可能になる。多孔質部分59は、ステント、スリット、流体透過性材料等を含む。 人工器官50の配備の仕方は、上述したような人工器官の配備の仕方に類似している。腹部大動脈瘤用途の場合、第1の拡張可能な人工器官51を上述したのと同じ仕方で運搬装置により腎動脈9(9a,9bを含む)の頭側に位置決めして配備する。追加のシース又は第2の運搬装置を用いる上述したのと同一の運搬装置を用いて第2の拡張可能な人工器官61を腎動脈9と腹部大動脈瘤との間に植え込む。追加の運搬装置を用いてグラフト受入れ開口部(57,67)を通ってグラフト58を運搬する。グラフト58aをそれぞれ各人工器官(51,61)のグラフト受入れ開口部(57,67)中へ通す。第2のグラフト58bをグラフト受入れ開口部(57,67)中へ通す。グラフト58a,58bをグラフト受入れ開口部(57,67)中へ密封可能に通し、グラフト受入れ開口部は、これを通る流体を差し向ける。上述したのと同一の配備手技を用いて当該技術分野において知られているように人工器官50を運搬する。
【0054】
本発明の別の実施形態は、図12の血管内人工器官70であり、これは、図1の人工器官1に類似しており、ステント及びメンブレンを有している。図12は、内部ルーメン76、遠位端部74及び近位端部75を備えた“M”字形ステント72を示している。遠位端部74は、開口部を有し、近位端部75は、遠位側開口部と反対側の2つの開口部を有している。穿刺可能なメンブレン73が、穿刺可能にグラフトを受け入れる近位端部75の開口部の各々を横切って延びている。図12のステント72は、上述したステントに類似しているが、好ましくは、ステントフィラメントのウィーブ又は編組である。図13に示すように、代表的な編組ステントは、第1の螺旋方向に(図13で見て左側に)巻回された第1の組をなすフィラメント71L及びこれとは逆の第2の螺旋方向に(図13で見て右側に)巻回された第2の組をなすフィラメント71Rを有し、複数のオーバーラップ部79が形成されている。フィラメント71L,71Rは、ワイヤ、例えばニチノール又はステンレス鋼であってもよく、或いは、ポリマー又は当該技術分野において知られている任意種類のフィラメントから成っていてもよい。人工器官70は、互いに織成され又は結合された2つの材料、例えばPTFE及びダクロン(Dacron:登録商標)を有するハイブリッド型材料であるのがよく、この場合、ダクロンは、PTFEの外部に結合されている。
【0055】
本明細書で用いる「編組」ステントという用語は、パターンをなして織編され、かくして図13に示すようにオーバーラップ部79を形成する少なくとも2種類の連続フィラメントで作られたステントを意味している。各オーバーラップ部のところには、一方のフィラメントが他方のフィラメントに対し半径方向外方に位置決めされている。一連の連続オーバーラップ部を通る螺旋経路に沿う各フィラメントに続き、そのフィラメントは例えば、一オーバーラップ部において半径方向内方の位置にあり、そして次のオーバーラップ部においては半径方向外方の位置にあるのがよく、或いは、2つのオーバーラップ部に関して内方位置にあり、次の2つのオーバーラップ部に関し外方位置にあるのがよく、以下同様である。例示の編組ステントは、ハンス・アイ・ウォールステンに付与された米国特許第4,655,771号明細書に開示されており、この米国特許明細書の開示内容を参照によりここに引用する。血管内人工器官70は、ステントが、不透過性グラフト材料が取り付けられた開放構造であるステント−グラフト複合材を含むのがよい。ステント−グラフト複合材は、遠位端部に1つの開口部を備えると共に近位端部にクリンプ状態の開口部を備えたステントを更に有するのがよく、このステントは、近位端部75のところに2つの開口部を形成するグラフトを支持している。
【0056】
図12の血管内人工器官は、穿刺可能なメンブレン73を更に有し、この穿刺可能なメンブレンは、上述した図1のメンブレン3に類似しており、グラフトを挿通状態で受け入れる弱め部分、開口部、スリット又は穴を有している。メンブレン73は、機械的取付け手段、熱的取付け手段、化学的取付け手段及び接着剤による取付け手段により上述したようにステント72に同様に取り付けられている。メンブレン73及び(又は)グラフト受入れ開口部77は、近位端部75のところで管状人工器官78とステント72との間に流体シールを形成する。
【0057】
図12の血管内人工器官70は、管状人工器官78と組み合わせた状態で示されている。任意の数の管状グラフトを用途に応じて用いることができる。図12は、人工器官70の近位端部74を貫通して伸び、そして穿刺可能にメンブレン73を貫通して延びる管状人工器官78を示しており、それにより近位端部75のところで管状人工器官78とステント72との間に流体シールが形成されている。血液の流れは、管状人工器官78を通って差し向けられる。管状人工器官78は、各腸骨動脈内に位置決めされていて、血液が管状人工器官78から出て各腸骨動脈(8a,8b)内に流れるようになっている。
【0058】
人工器官70の配備の仕方は、図1の人工器官1について説明した配備の仕方に類似している。一般に、運搬システムを体内管腔内に位置決めし、外側シースを人工器官70に対して引っ込める。外側シースの引っ込みにより、ステント72がその長手方向(軸方向)広がりに沿って漸次放出され、ステント72が半径方向に拡張できる。ステントルーメン76を横切って位置決めされたメンブレン73を、取付け状態のステント72の半径方向拡張力により半径方向に配備する。
【0059】
加うるに、上述したのと類似した補助運搬装置を用いて管状人工器官78をグラフト受入れメンブレン77中に配備する。植え込まれた分枝状システムが、図12に示されている。
【0060】
図12に類似した本発明の別の実施形態が、図14に示されており、この実施形態は、腎動脈9(9a,9bを含む)の頭側への人工器官の固定具合を一段と高める。図14は、血管内人工器官80を示しており、この場合、腎動脈9の尾側に位置し、図12の実施形態70に類似した人工器官80の一部が、一端部に開口部を備えると共に反対側の端部に2つの開口部84を備える“M”字形形態を有している。図14の血管内人工器官80は、ステント82、グラフト86及びメンブレン83を含むグラフト−ステント複合材である。ステント82は、遠位端部87,近位端部88及びこれら端部を貫通して延びる開口部を有する人工器官80の全長にわたって延びている。図14に示すように、腎動脈9の頭側の血管内人工器官80の一部は、内部ルーメンが貫通して設けられたステント82の遠位端部87に取り付けられた第1のグラフト81を有している。腎動脈9の尾側の人工器官80の一部は、ステント82の近位端部88に取り付けられていて、図14の人工器官80に類似した“M”字形を形成する第2のグラフト86を有している。第2のグラフト86は、ステント82の開口部内に2つの小径のルーメン84を形成している。メンブレン83は、第2のグラフト86の2つのルーメン84の各々を横断方向に横切って延びている。メンブレン83は、図1の人工器官1の場合について説明した構成材料とほぼ同じ構成材料のものである。メンブレン83を接着、例えばシリコーン又はポリウレタン、機械的取付け手段、例えば縫合糸又はステープル、熱結合、貼り合わせ又は化学的結合によって上述したような仕方でグラフト86に取り付けるのがよい。2つのグラフト81,86をステント82及び腎動脈9を通る血液の交換を可能にするよう互いに離隔させる。第1のグラフト81と第2のグラフト86との間のステント82の部分は、連続気泡構造であってもよく、又は血液透過性の被覆ステントであってもよい。図14は、ステント82が血管内人工器官80を動脈壁に固定する遠位端部87及び近位端部88のところに幅の広い断面を有すると共にこれら端部相互間に幅の狭い断面を有する血管内人工器官80を示している。理解できるように、血管内人工器官80は、人工器官80の長さ全体を通じて一様な断面のものであってよく又は2つの端部が動脈への固定を可能にすると共にこれら端部を通る妨げられない血液の流れを可能にする限り、漸変断面のものであってよい。
【0061】
人工器官80を図14に示すように管状人工器官89と組み合わせて用いることができる。管状人工器官89は、それぞれのメンブレン83の各々を貫通して延び、グラフト86と管状人工器官89との間に密封可能な取付け部を形成している。血液を各管状人工器官89内に逸らす。管状人工器官89は、当該技術分野において知られていて、図4の人工器官10を参照して上述したものである。
【0062】
人工器官80を配備するため、当該技術分野において知られているように且つ上述したように、代表的には人工器官80を半径方向圧縮状態で運搬装置内に押し込む。次に、人工器官80を配備されるべきルーメン内に導入し、ルーメンを通って配備場所、代表的には、疾患のある動脈、例えば大動脈までナビゲートする。人工器官80を当該技術分野において知られているように配備場所で半径方向拡張状態に拡張させる。図14は、人工器官80の連続気泡構造又は多孔質部分が肝動脈9a,9b相互間に位置する肝動脈9a,9bを横切って配備された人工器官80を示している。かくして、本発明の管状人工器官89(89a,89b)の配備は、当該技術分野において知られているように別個の運搬装置又は追加のシース又はステージを備えた同一の運搬装置を用いて上述したのと類似した方法により行われる。管状人工器官89をメンブレン83を通って穿刺可能に運搬する。管状人工器官は、これを通って流れる血液からの外向きの力及びルーメン84の寸法の減少によりグラフト86に密封可能に固定される。
【0063】
図1の人工器官1に類似しているが、管状人工器官をステントに密封可能に固定するメンブレンを用いることはない本発明の別の実施形態では、フォーム93を用いて管状人工器官98を図15に示すようにステント92にしっかりと取り付ける。図15の体内人工器官90は、ステント92と、拡張状態のフォーム93が取り付けられた管状人工器官98とを有している。ステント92は、上述したステントに類似しており、遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた拡張可能なステント92である。図16に示すように、ステント92は、内面94及び外面を有している。管状人工器官98は、上述した人工器官に類似しており、内面及び外面99を有している。拡張フォーム93は、管状人工器官98の外面99に取り付けられている。管状人工器官98は、ステント92のルーメン91内に配置され、拡張フォーム93は、管状人工器官98をステント92に密封可能に固定している。
【0064】
拡張可能なフォーム93は、生体適合性でなければならず、しかも所要の強度特性を備えていなければならない。このフォームは、当該技術分野において知られているフォームに類似しており、例えば、ゼラチン海綿、コラーゲン海綿、セルロース海綿、ヒアルロン酸及び鼻手術に用いられるフォームである。拡張可能なフォーム93は、多孔質であってもよく、非多孔質であってもよい。拡張可能なフォーム93は、ステント92内への配置に先立って圧縮状態にされる。いったん定位置に位置すると、拡張可能なフォーム93は、ステント92のマトリクス中に拡張して管状人工器官98をステントルーメン91内に固定可能に取り付ける。
【0065】
拡張可能なフォームの中には植え込み時に不透過性のものがあれば、凝血形成のための支承構造となるものもある。幾つかの支承構造フォームは、経時的に分解して、後に密封可能な凝血形成を残す。適当な市販のフォームとしては、Spongostern、Surgifoam(ジョンソン・アンド・ジョンソン社によって販売されているFerrosan)、Gelfoam(ファーマシア・アンド・アップジョン・カンパニー)、Avitene Ultrofoam(バード/ダーボル)、MeroGel Nasal Dressing、Sinus Stent及びOtologic Packing、HYAFF(フロリダ州ジョンソンビル所在のメドトロニック・クォムド社)が挙げられる。
【0066】
拡張可能なフォーム93は、機械的取付け、接着剤による取付け、熱による取付け又は化学的取付けにより管状人工器官98の外面99に取り付けられている。図16に示すように、フォーム93で覆われたグラフト98をステント92のルーメン91内に配置し、拡張可能なフォーム93が血管環境内の反応、例えば加水分解又は外部からの力、例えばシースを取り外すことにより拡張するようにする。拡張可能なフォーム93は、拡張してステント92に当たり、そしてステント92の構造中へ入り込み、管状人工器官98を密封可能な仕方で定位置に固定する。図16に示すように、1つ以上の管状人工器官98を用途に応じて用いることができる。
【0067】
加うるに、図17に示すように、図16の拡張可能なフォーム93で被覆された管状人工器官98を図1の人工器官1と組み合わせて用いることができる。人工器官90aは、ステント92aと、グラフト受入れ部材97aを備えたメンブレン97を有し、図1の人工器官1に類似している。拡張可能なフォーム93で被覆された管状人工器官98aをグラフト受入れ部材97a中へ通す。拡張可能なフォーム93aは、グラフト受入れ部材97内で拡張して図17に示すようにメンブレン97への管状人工器官98aの密封可能な固定を可能にする。
【0068】
本発明の別の実施形態は、血管内人工器官内への組み込み可能な部品のキットである。このキットは、拡張可能なステント92及び管状人工器官98を含む。拡張可能なステント92は、遠位端部、近位端部及び内部ルーメン91を有し、体内の血管内へ挿入可能である。管状人工器官98は、ステント92の内部ルーメン91内に挿入されるようになっている。管状人工器官98は、体液の流れを可能にする内面及び外面を有する。加うるに、拡張可能なフォーム93は、管状人工器官98の外面に取り付けられている。拡張可能なフォーム93は、ステント92内で拡張して管状人工器官98をステント92に密封可能に固定するようになっている。
【0069】
人工器官90の配備の仕方は、図7の人工器官30の配備方法に類似している。人工器官90の配備は、上述したような多段階による方法である。当該技術分野において知られているように、代表的にはステント92を半径方向圧縮状態で運搬装置内に押し込む。次に、ステント92を配備されるべきルーメン内に導入し、ルーメンを通って配備場所までナビゲートし、次に当該技術分野において知られているように配備場所で半径方向拡張状態に拡張させる。また、拡張可能なフォーム93で被覆された管状人工器官98を半径方向圧縮状態で運搬装置内に押し込む。管状人工器官98がいったんステントルーメン91内に位置決めされると、運搬装置の拘束要素、例えばシースを取り外すことにより管状人工器官98を配備する。拡張可能なフォーム93は、拡張してステントルーメン91内の空間を満たし、そしてステント92の構造中へ入り込んで管状人工器官98をステント92内に密封可能に固定する。上述した別個の運搬装置を用いて人工器官90の各コンポーネントを配備してもよく、又は多段階方式運搬装置を用いてもよい。
【0070】
加うるに、図16のステント92に代えて第1の人工器官91aを用いることを除き、図16の人工器官90について上述したのと同一の運搬システムを用いて図17の人工器官90aを配備する。当初、第1の人工器官91aを運搬装置内に押し込み、ルーメン内の標的部位まで運搬し、そしてこの部位で展開するようにする。拡張可能なフォーム93aで被覆された管状人工器官98aを、運搬装置により圧縮状態でグラフト受入れ部材97aに送り込む。運搬装置を所望の場所でグラフト受入れ部材97a内に配置した後、運搬装置を取り外して拡張可能なフォーム93aがグラフト受入れ部材97a内で拡張できるようにする。拡張可能なフォーム93aは、グラフト受入れ部材97aと組合せ状態で、管状人工器官98aを第1の人工器官91aに密封可能に固定する。
【0071】
本発明の別の実施形態は、図18及び図19に示す血管内人工器官組立体100であり、この血管内人工器官組立体は、図15の人工器官90に類似しているが、グラフトに設けられていて、グラフトをステントに固定する拡張可能なフォームを用いず、ポリマー材料130が用いられている。図19は、上述したのと類似したステント120及び管状人工器官180を含む血管内人工器官組立体100を示している。血管内人工器官組立体100は、管状人工器官180をステント120に対して密封可能に支持するポリマー材料130を更に有している。ポリマー材料130は、現場で形成されるモノマー材料の実質的に均質の反応生成物である。図18に示すように、管状人工器官180の外面及びステント120のルーメンの内面は、一次反応性物質110であらかじめ被覆されている。管状人工器官180をステント120の内部ルーメン内に位置決めする。一次物質110と反応する二次物質(図示せず)を管状人工器官180及びステント120の内部ルーメンの付近に導入する。一次物質110及び二次物質は、反応してポリマー材料110を形成し、このポリマー材料は、管状人工器官180をステント120に対して密封可能に支持する。
【0072】
一般に、ポリマー材料130は、生体適合性であって僅かに血栓性であり、且つ非毒性である。ポリマー材料130は、フォーム又はヒドロゲルであるのがよい。有用なヒドロゲルは、ポリマーとモノマーの混合物及び反応促進剤、例えば化学活性剤又は光活性剤(局在性治療薬)から作られたものである。ヒドロゲルを形成するよう反応する適当な材料の例としては、ポリエチレングリコールと鉄、又はポリエチレングリコールと過酸化物であってこれに光活性剤又は化学活性剤が添加されたものが挙げられる。追加の適当なヒドロゲル及び調製方法に関しては、ソーニに付与された米国特許第6,379,373号を参照されたい。なお、この米国特許明細書の記載内容を参照によりここに引用する。
【0073】
加うるに、1つ以上の管状人工器官180を用途に応じて用いることができる。人工器官100は、キットの形態で提供できる。血管内人工器官100内へ組み込み可能な部品のキットは、ステント120、一次反応性物質110、管状人工器官180及び二次反応性物質を含む。ステント120は、内面、外面及び内部ルーメンを有する。一次反応性物質110は、ステント120の上述の内面に被着されている。管状人工器官180は、ステント120の内部ルーメン中に挿通するようになっている。管状人工器官180は、内面及び外面を有し、一次物質110は、管状人工器官180の上述の外面に被着されている。二次物質は、一次物質110と反応し、この二次物質は、ステント180の内部ルーメン内への管状人工器官180の挿入時に、一次物質110に施されるようになっている。二次物質は、一次物質110と反応して、管状人工器官180とステント120との間にシールを形成する。
【0074】
人工器官100の配備の仕方は、図15の人工器官90の配備方法に類似している。人工器官100の配備も又、上述したような多段階による方法である。当該技術分野において知られているように、代表的にはステント120を半径方向圧縮状態で運搬装置内に押し込む。次に、ステント120を配備されるべきルーメン内に導入し、ルーメンを通って配備場所までナビゲートし、次に当該技術分野において知られているように配備場所で半径方向拡張状態に拡張させる。次に、管状人工器官180を半径方向圧縮状態で運搬装置内に押し込む。管状人工器官180をステント120のルーメン内に位置決めする。ステント120のルーメン内に位置決めされた管状人工器官180の部分の周りのシース又は運搬装置を取り外すことにより管状人工器官180を部分的に配備する。二次物質を管状人工器官180及びステント120の付近に注入する。二次物質は、管状人工器官180の外面及びステント120の内面上の一次物質110と反応するようになる。これら2つの物質からのポリマー反応生成物130は、管状人工器官180をステント120に密封可能に固定する。上述したように、別個の運搬装置を用いて人工器官100の各コンポーネントを配備してもよく、或いは、当該技術分野において知られているように多段階方式運搬装置を用いてもよい。
【0075】
加うるに、図18及び図19に示すような技術と図1の人工器官1を組み合わせることにより、図20及び図21に示すような人工器官200が構成される。この組合せにおいて、メンブレン230及び管状人工器官280は、上述したように一次物質210であらかじめ処理する。図20に示すように、管状人工器官280をメンブレン230のグラフト受入れ部材270を通ってステントルーメン内に配置する。二次物質を導入し、この二次物質は、管状人工器官280及びメンブレン230上の一次物質210と反応する。ポリマー材料240が形成され、このポリマー材料は、図21に示すように管状人工器官280をステント220に密封可能に固定する。
【0076】
ステント120に代えてステント220及びステント220に取り付けられていて、グラフト受入れ部材270を備えたメンブレン230を含む第1の人工器官219を用いることを除き、人工器官200を図18の人工器官100について上述したのと同一の仕方で配備する。上述したような運搬装置を用いて第1の人工器官290を標的部位のところに配備する。管状人工器官280を運搬装置内に押し込み、次にグラフト受入れ部材270を通ってこれを位置決めする。管状人工器官280をグラフト受入れ部材270内に配備する。二次反応性物質をメンブレン230及び管状人工器官280の付近に導入する。二次反応性物質は、管状人工器官280及びメンブレン230上の一次物質210と反応するようになる。反応生成物210の結果として、管状人工器官280をメンブレン230に密封可能に固定するポリマー材料が得られる。この方法の変形例を公知の技術に従って用いることができる。
【0077】
本明細書において本発明の特定の構成を説明したが、当業者であれば、本発明の意図した範囲から逸脱することなく、かかる構成の改造例を想到できる。したがって、本明細書において説明した構成は、例示であって本発明を限定するものではなく、本発明の真の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】ステム及びグラフト受入れ部材を備えた取付け状態のメンブレンを含む本発明の血管内人工器官の拡大平面図である。
【図2】腹大動脈内に植え込まれた図1の血管内人工器官の平面図である。
【図3】グラフト受入れ部材を示す図1の血管内人工器官の平面図である。
【図4】グラフトを更に含む図1の血管内人工器官を示す図である。
【図5】グラフトを挿通させた図3の血管内人工器官の平面図である。
【図6】分枝状グラフトを含む図2の分枝状血管内人工器官を示す図である。
【図7】分枝状器官系用の管状人工器官を含む図2の血管内人工器官を示す図である。
【図8】分枝状器官系用の管状人工器官の展開状態を示す図7の血管内人工器官を示す図である。
【図9】ステント及びメンブレンを示す本発明の血管内人工器官の平面図である。
【図10】管状グラフトを更に含む図9の血管内人工器官を示す図である。
【図11】本発明のマルチコンポーネント型血管内人工器官系を示す図である。
【図12】管状グラフトと組み合わされた本発明の血管内人工器官を示す図である。
【図13】ステント及びこれに取り付けられたメンブレンを含む図12の血管内人工器官の拡大平面図である。
【図14】ステント、グラフト及び管状グラフトと組合せ状態のメンブレンを示す本発明の血管内人工器官の平面図である。
【図15】拡張状態にある拡張可能なフォームを示す本発明の血管内人工器官系の平面図である。
【図16】拡張可能なフォームを示す図15の血管内人工器官組立体を示す図である。
【図17】拡張可能なフォームと組み合わされる取付け状態のメンブレンを有するステントを示す本発明の血管内人工器官の平面図である。
【図18】管状グラフトをステントに対して密封可能に支持するポリマー材料を示す本発明の血管内人工器官系の平面図である。
【図19】グラフト及びステント上の一次反応性材料を示す図18の血管内人工器官系を示す図である。
【図20】メンブレン及びグラフト上の一次材料を示す本発明の血管内人工器官の平面図である。
【図21】管状グラフトをメンブレンに密封可能に固定するポリマー材料を示す図20の血管内人工器官を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、管腔内運搬が可能な血管内人工器官及び大動脈の修復のために血管内人工器官を植え込む方法に関する。特に、本発明は、ステント及びグラフト(graft/移植片)をステントに密封可能に取り付ける手段を有し、血管又は分枝器官系、例えば総腸骨動脈に枝分かれするところの腹大動脈内に用いられる血管内人工器官に関する。
【背景技術】
【0002】
腹部大動脈瘤(“AAA”)は、腹腔を通る大動脈の付近における大動脈の動脈壁の異常拡張である。この病態は最も一般的には、アテローム硬化疾患に起因している。腹部大動脈瘤は典型的には、解離性動脈瘤であり、かかる解離性動脈瘤は、動脈の内張り又は壁に裂離又は亀裂が生じた場合に形成される動脈瘤であり、かかる裂離又は亀裂中に血液が押し込められて最終的には凝固し、血管を膨潤させてこれを脆弱化する血栓症を発生させる。腹部大動脈瘤は典型的には、痛みを引き起こさず、身体検査により容易に発見される。動脈瘤は、発見されず、治療されなければ破裂する場合があり、それにより大規模な内出血が生じ、これは患者にとって致命的になる恐れがある。
【0003】
AAAの治療は典型的には、一般に「トリプルA」手技と呼ばれている或る形態の動脈再建術を含む。かかる一方法は、バイパス手術であり、この手術においては、切開部を腹腔に入れ、大動脈を動脈瘤の部位の上下で閉鎖し、動脈瘤を切除し、正常な動脈の直径にほぼ等しい寸法の合成グラフト又は管を血管に縫合して動脈瘤に取って代わるようにし、そして大動脈を通る血液の流れを復旧させることができる。
【0004】
しかしながら、かかるAAAに罹患している多くの患者は、年齢が65歳を超えており、多くの場合、術前又は術後合併症の発生のリスクを増大させる他の慢性疾患を有している。かくして、かかる患者は、トリプルA手技の理想的な候補者ではない。さらに、この手技は一般に、動脈瘤が手術の規模及び患者を手術のために前処置するのに必要な時間に起因して動脈瘤がいったん破裂すると首尾良く行われない。このように動脈瘤が破裂した患者の死亡率は、65%を超える。
【0005】
従来型手術法の上述の欠点の結果として、低侵襲法がAAAの修復のために開発された。かかる方法では、ステント−グラフトを導入器と呼ばれているカテーテルによって動脈瘤の部位のところに配置し、このカテーテルは、配備装置として役立つ。典型的には、ステント−グラフト及びその配備システムを経皮的に血液の流れ中へ導入し、ステントが半径方向に拡張するようになる動脈瘤の部位のところまでガイドワイヤを用いてナビゲートする。かかる手技は、局所麻酔を用いて実施でき、患者をトリプルA手技と関連した上述のリスクのうちの多くにさらさないので望ましい。しかしながら、腹大動脈の分枝状構造及び環境並びに先行技術のステント−グラフトの技術は、長期間安定性と関連した問題に悩まされ続けている。
【0006】
かかる低侵襲修復手技では、腹大動脈弓の分枝状構造に対しては、独特の構造をした分枝状ステント−グラフトを用いる必要がある。典型的には、動脈瘤、閉塞又は狭窄は、大動脈弓が腸骨動脈に枝分かれする場所で生じ、更に又、腸骨動脈のところで生じる場合がある。この領域へのステント−グラフトの現場位置決めは、非分枝状血管の管腔内へのかかる装置の位置決めとはかなり異なっている。分枝状ステント−グラフトの両方の脚部を大腿動脈系の単一の側枝中に挿入してこれを通って送り進めるので、ステント−グラフトの脚部のうち一方を、ステント−グラフトが大動脈瘤と関連の総腸骨動脈瘤の両方を横切って適切に位置決めされて下肢の各々への血液循環を供給するよう最終的には対側の側枝内へ引き入れ又は引っ張り込まなければならない。
【0007】
分枝状ステント−グラフトはあまりにも嵩張っている場合が多いので、特にステント−グラフトの対側の側枝のための脚部を同側の側枝のための脚部と一緒に挿入しなければならないことに鑑みて、単一の腸骨動脈を通って前進することはできない。加うるに、ステント−グラフトを対側動脈中に配置するとき、ステント−グラフトをねじったりよじったりしないよう注意を払う必要がある。グラフトの尾側部分は、内部腸骨動脈の口を横切って延伸してはならず、もし延伸すると、その結果としてその動脈の偶発的な閉塞が生じる。ステント−グラフトの一方の脚部を一方の大腿動脈から同側の大腿動脈に引き入れる手技では、ステント−グラフトの挿入に先立って、閉鎖可能なワイヤバスケットを用いて交差大腿カテーテルの配置が必要になる。
【0008】
この手技では、しばしば動脈瘤腔内での相当多くの且つ技量の要るワイヤカテーテルの操作が必要である。したがって、血栓又は塞栓物質を乱し又はかかる物質を動脈瘤嚢内から脱落させないよう注意を払う必要がある。追加の要因、例えば、腸骨動脈のひどい蛇行度や腹大動脈が動脈瘤形成中尾側に伸長する傾向に起因する大動脈腸骨動脈接合部の著しい角形成が組み合わさって、管腔内分枝状グラフトの配備を時間のかかるものにすると共に手技に起因する合併症及び不全症のリスクの増大を招く。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
分枝状血管で生じる動脈瘤の修復において一体形ステント−グラフトを用いることと関連した上述のリスクを解決するため、現場で組立て可能な2コンポーネント型分枝状設計方式が開発された。第1のコンポーネントは、腎動脈のすぐ下に位置決めされる上側幹部、基部及び腸骨動脈用脚部から成る。この場合、第2のコンポーネントを基部内に配備し、装置を同側の腸骨動脈用脚部に連結する。これら装置には多くの問題があり、かかる問題としては、ファブリックの摩耗、キンク、上側頸部及び基部接合部のところでの体内漏洩が挙げられ、加うるに、これら装置の中には、製造するのが困難であり、血管壁に固定できず、又は現場で組み立てるのが困難であることが判明したものがある。
【0010】
管腔内修復が成功しない主な理由として、一般に血管系においては、動脈瘤嚢内ではより明白であるように、形態学的特徴が変化し続けているということがクローズアップされている。かかる形態学的環境が原因となって、予想も予期もしていない応力が疾患の治療に用いられるステント−グラフトにかかる。かかる摩耗及び体内漏洩が生じると、これら装置の補修が必要になり、装置の交換を含む場合のある追加の外科手技が必要となる。このために、一般に動脈瘤、特にAAAの修復に有用なステント及びこれに取り付けられるグラフト並びに技術の開発が要望され続けている。
上述のことに鑑みて、本発明の目的は、血管内人工器官及び血管内人工器官を血管内に植え込む方法を提供することにあり、血管内人工器官は、管状グラフトを血管内人工器官内に密封可能に取り付ける手段を備える。加うるに、本発明は、形態学的環境に適合するよう融通性があって且つ耐久性があり、しかも現場で組立て可能な人工器官を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、内部ルーメンを備えた拡張可能なステント及び管状グラフトをステントのルーメン内に密封可能に取り付ける手段を有する血管内人工器官を含む。グラフトを密封可能に取り付ける手段は、メンブレン(membrane/膜)、フォーム、ポリマー材料及びこれらの組合せを含む。本発明の別の実施形態では、拡張可能なステント及びステントによって支持されていて、ルーメンを横切って延びるメンブレンを有する血管内人工器官が提供される。メンブレンは、少なくとも1つの管状グラフトを挿通状態で密封可能に受け入れるグラフト受入れ部材を更に有する。
【0012】
本発明は、上述した血管内人工器官を更に提供すると共に少なくとも1つの管状グラフトを挿通状態で密封可能に受け入れるグラフト受入れ開口部を備えた静電紡糸材料を更に含むメンブレンを提供する。
【0013】
本発明の実施形態によれば、第1の人工器官コンポーネント及び第2のコンポーネントを有する分枝状血管内人工器官が提供される。第1のコンポーネントは、上述した人工器官に類似しており、ステント、ステントの内部ルーメンを横断方向に横切って延びていて、ステントに取り付けられたメンブレンを有する。メンブレンは、開口部を更に有する。第2の人工器官コンポーネントは、実質的に流体密状態で開口部に通される。第2のコンポーネントは、1つ以上のグラフトを更に有する。
【0014】
本発明の別の実施形態では、2つの人工器官及び管状グラフトを有するマルチコンポーネント型血管内人工器官システムが提供される。各人工器官は、拡張可能なステント及びステントの内部ルーメンを横断方向に横切って延びていて、ステントに取り付けられたメンブレンを有する。各メンブレンは、グラフト受入れ開口部を更に有する。管状グラフトは、流体を管状グラフト中に差し向ける各人工器官のグラフト受入れ開口部に密封可能に通される。
【0015】
本発明の別の実施形態では、内部ルーメン、遠位端部及び近位端部を備えたステントを有し、遠位端部が開口部を備え、近位端部が遠位端部の開口部と反対側に2つの開口部を有し、更に、近位端部の開口部の各々を横切って延びる穿刺可能なメンブレンを有する血管内人工器官が提供される。
【0016】
本発明の別の特徴では、拡張可能なステント、第1のグラフト及び第2のグラフトを有する血管内人工器官が提供される。拡張可能なステントは、遠位端部、近位端部及びこれら端部を貫通した開口部を有する。第1のグラフトは、開口部内でステントの遠位端部に取り付けられ、この第1のグラフトは、これを貫通して延びる内部ルーメンを有する。第2のグラフトは、開口部内でステントの近位端部に取り付けられていて、第1のグラフトから間隔を置いて位置する。第2のグラフトは、第2のグラフトを貫通して延びる少なくとも2つの内部ルーメンを有し、メンブレンが、第2のグラフトの内部ルーメンの各々を横断方向に横切って延びている。
【0017】
本発明の別の実施形態では、拡張可能なステント及びステントの内部ルーメン内に挿入される管状グラフトを有する血管内人工器官組立体が提供される。グラフトは、グラフトの外面に取り付けられた拡張可能なフォームを有する。拡張可能なフォームは、管状グラフトをステントに密封可能に固定する。
【0018】
本発明の一特徴では、血管内人工器官システム内に組み込み可能な部品のキットが提供される。キットは、体内血管内に挿入可能な拡張可能なステント、ステント内に挿入されるようになった管状グラフトであって、体液を流通させる外面及び内面を備えた管状グラフト、管状グラフトの外面に設けられた拡張可能なフォームを含む。拡張可能なフォームは、ステント内で拡張して管状グラフトをステントに密封可能に固定するようになっている。
【0019】
本発明の別の実施形態では、ステント、ステント内に延びる管状グラフト及び管状グラフトをステントに対して密封可能に支持するポリマー材料を有する血管内人工器官組立体が提供される。
【0020】
本発明の別の特徴では、血管内人工器官システム内に組み込み可能な部品のキットが提供される。キットは、ステントの内面に被着された一次反応性物質、内部ルーメン内に延びるようになった管状グラフトであって、外面に被着された一次物質を有する管状グラフト、一次物質と反応する二次物質を含む。二次物質は、内部ルーメン内へのグラフトの挿入時に一次物質に付着するようになっており、二次物質は、一次物質と反応してグラフトとステントとの間にシールを形成する。
【0021】
本発明の別の特徴では、本発明の種々の血管内人工器官を形成する方法及びかかる血管内人工器官を血管内に植え込む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、図1〜図21に示すように管腔内運搬可能な血管内人工器官に関する。この人工器官は、血管用人工器官として用いるのに特に適している。本発明の人工器官は、管状人工器官とステントとの間の漏れ及び摩耗を含む先行技術の上述の問題を解決する。加うるに、本発明の人工器官は、血管環境の形態学的特徴に適合するよう融通性をもたらす。本発明の人工器官は、現場で簡単な組立てを可能にする最小限のコンポーネントを有する。
【0023】
本発明の一実施形態は、図1〜図3に示すような人工器官1である。人工器官1は、ステント2及びメンブレン3を含む全体として管状の構造体である。
【0024】
本発明のステント2は、当該技術分野において知られているステントに類似している。ステント2は、大動脈壁と直接的な接触状態にある連続気泡状又は多孔質のものであるのがよい。これにより、植え込み状態の体内人工器官の安定化のための細胞の内方成長及び器具の固定が可能になる。ステントを当該技術分野において知られているような種々の材料で更に被覆するのがよく、それによりかかる材料を通る細胞の成長が促進される。加うるに、ステント2は、血液の流れを通るのを阻止する被覆材又はグラフト複合材(図示せず)を有するのがよい。ステント2の外面、内面又はこれら両方を用途に応じて覆い又は被覆するのがよい。
【0025】
当該技術分野において知られているように、ステントは、2つの直径、即ち圧縮状態の直径及び拡張状態の直径を有し、圧縮直径は、拡張直径よりも実質的に小さい。ステントの圧縮直径は、ステントの構成材料及び構造に応じて様々である。一般に、圧縮直径は、低侵襲配備又は展開システム(図示せず)により脈管構造中への植え込みを可能にするに足るほど小さくなければならない。拡張直径は、交換又は修復対象の脈管構造と実質的に同一の直径であることが必要である。拡張直径は、血管を拡張し又は拡大させる駆動力として働かずに、ステントは大動脈壁に十分に固定できるようにするほど大きいことが必要である。
【0026】
種々のステントタイプ及びステント構造を本発明において採用することができる。ステントは、半径方向に収縮も可能であり、この意味では、これを半径方向拡張可能、変形可能又は順応可能なステントというのが最善である。ステントは、バルーン拡張型又は自己拡張型のものであるのがよい。バルーン拡張型ステントとしては、加えられた力により半径方向に拡張されるステントが挙げられる。自己拡張型ステントとしては、ステントを半径方向に拡張させるばねのような作用を持つステント又は或る特定の温度範囲で或る特定の形態が得られるようステント材料のあらかじめ設定された形状記憶特性に起因して拡張するステントが挙げられる。ニチノール(Nitinol )は、ばねのような弾性モードと運動に基づく形状記憶モードの両方で良好に働くことができる材料の1つである。他の材料、例えばステンレス鋼、タンタル、白金、金、チタン及び他の生体適合性金属、並びに形状記憶ポリマー又はポリマーを主成分とするステント、或いはもっとはっきりと言えば上述の複合材が、当然のことながら想定されている。
【0027】
ステントの形態もまた、多くの幾何学的形状から選択可能である。例えば、ワイヤステントをワイヤ中に波状又はジグザグを設け又は設けないで、連続螺旋パターンの状態に締結して半径方向変形可能なステントを形成してもよい。個々のリング又は円形部材を例えばストラット、縫合糸、溶接、リングの織編又は係止により互いに連係させて管状ステント構造を形成してもよい。本発明でいうような管状ステントは、管からパターンをエッチングし又は切断することにより形成されたステントをも含む。かかるステントは、スロット付きステントと呼ばれることが多い。さらに、パターンを材料又は金型にエッチングし、ステント材料を例えば化学気相成長法等によりこのパターン中に堆積させることによりステントを形成することができる。
【0028】
図1及び図2に示すように、ステント2は1対の互いに間隔を置いた端部、即ち遠位端部と近位端部5及びこれら端部相互間に位置する管状壁構造を有する。管状壁構造は、外面及びステント2の内部ルーメン6を構成する内面を有する。メンブレン3は、ステント2によって支持され、ステント2の内部ルーメン6を横切って延びている。メンブレン3は、少なくとも1つの管状ステントを挿通状態で密封可能に受け入れる1つ以上のグラフト受入れ部材7を有する。グラフト受入れ部材7は、弱め(られた)部分、即ち、スリット、穴、穿通可能な材料、内向き部、穿刺部、弁等として構成されている。
【0029】
一般に、メンブレン3は、血液に対して不透過性であり、又は、メンブレン材料は、血液に対して透過性であるが、現場において不透過性であるよう又は不透過性になるようこれを被覆してもよい。メンブレン3は、所要の強度特性及び生体適合性を備える限り、種々の周知の材料で作られたものであってよい。メンブレン3は、可撓性及び圧縮性材料から作られている。加うるに、メンブレン3は、合成であってもよく又は天然のものであってもよい。かかる材料の例としては、ポリマー、エラストマー、ゴム、ろう、シリコーン、パリレン、ポリウレタン、ビニルポリカプロラクトン、ポリテトラフルオロエチレン(TEFLON:登録商標)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ダクロン(DACRON:登録商標)、アログラフ(allograph)、ゼノ−グラフ(zeno-graph)材料、ラテックス並びに上述した材料の複合材である。市販の材料の例は、Corethane(コルビタ社)、Carbothane(サーメディックス社)、Silastic、Pellethane及びParylene(スペシャリティ・コーティング・システムズ社)である。材料は、押し出し成形材料、編成材料、織成材料又は静電紡糸材料であってよい。
【0030】
加うるに、メンブレン3を生体侵食性材料、生分解性材料、又は分解性材料、例えばポリマー、アルブミン、コラーゲン、ヘパリン又はこれらに似た被覆材料で被覆し又はメンブレン3に今述べた材料を含浸させるのがよい。メンブレンは、生物学的に不活性の材料、例えばPTFE又は多孔質ポリウレタンの被膜を有してもよい。被膜を当該技術分野において知られている方法、例えば、浸漬法、吹き付け法又は材料への蒸着法によりメンブレンに付加するのがよい。
【0031】
メンブレン3の厚さは、メンブレン3の用途及び構成材料に応じて様々であってよい。一般に、メンブレンの厚さは、ステント2の遠位端4と近位端5との間の距離よりも小さい。したがって、ステント2の何割かの部分は、メンブレン3の上及び(又は)下に延びる。例えば、血管用途では、メンブレン3の厚さは、0.001mm〜0.6mm、好ましくは、0.1mm〜0.4mmであるのがよい。
【0032】
メンブレン3は、用途に応じて平らな表面又は種々の形状のものであってよい。メンブレン3は、メンブレン3をステント2に結合するのを助けるよう且つ(或いは)管状グラフトをメンブレン3に密封可能に固定できるよう形作られたものであるのがよい。例えば、図1は、ピーク形成部3a,3bを有するメンブレン3を示しており、これらピーク形成部3a,3bの頂部のところにはグラフト受入れ部材が設けられている。ピーク形成部3a,3bは、図5にピーク形成部13a,13b及び管状グラフト18として示された2つの表面相互間のより広い表面接触をもたらすことにより管状グラフトとメンブレン助3との間の密封を助ける。カップ状又はソックス状のメンブレンが、このメンブレンをステントに結合するための広い表面積をもたらすことによりメンブレンをステントルーメン内に取り付けるのを助ける。
【0033】
図1及び図3は、ステント2の内部ルーメン6に取り付けられると共にこれによって支持されたメンブレン3を示している。メンブレン3を接着剤、例えばシリコーン又はポリウレタンによる結合、機械的取付け手段、例えば縫合糸又はステープル、熱結合、貼り合わせ又は化学的結合によりステント2に取り付けることができる。加うるに、ステント2の内面をエラストマー又はポリマーで被覆するのがよく、そして溶剤を用いてこの被覆内面をメンブレンに結合するのがよい。メンブレン3をステント2に沿う任意の場所でステント2の内部ルーメン6を横切って、例えば、ステント2の遠位端部4、近位端部5又はこれら端部相互間を横切って位置決めするのがよい。
【0034】
図1〜図3に示すように、メンブレン3は、ピーク形成部3a,3bがメンブレン3の中央に設けられた状態でステント2の内部ルーメンを横断方向に横切って延びている。グラフト受入れ部材7が、各ピーク形成部3a,3bの頂部のところに設けられている。図2は、ピーク形成部3a,3bを頭側方向に差し向けられた状態で示しているが、所望の用途に応じて、ピーク形成部3a,3bを逆さまにしてピークの頂部が尾側方向に差し向けられるようにしてもよいことが理解できる。管状グラフトをメンブレン3に密着させるのを助けることに加えて、ピーク形成部3a,3bは、流体がメンブレン3を横切って一方向に流れることができるようにする逆止弁として働き、流体の流れをその方向に生じさせないときには閉じる。加うるに、ピーク形成部3a,3bは、メンブレン3中を通る逆方向の流体の逆流を阻止する。
【0035】
上述の本発明の人工器官を1つ以上のグラフトと組み合わせて用いることができる。図4及び図5に示すように、人工器官10は、図1の人工器官1に類似しており、グラフト受入れ部材17を貫通して密封可能に延びるグラフト18を更に有している。ピーク形成部13a,13bのメンブレン13の材料は、グラフト18周りの形状に一致し、グラフト18を密封可能に固定するグラフト18の一部と同一の広がりを持つようになる。グラフト18中を通る血液の流れは、グラフト18を介してメンブレン13、より詳細には、ピーク形成部13a,13bに外向きの半径方向圧力を加える。メンブレン13は、ステント12へのメンブレン13の固定により得られる逆向きの力をグラフト18に及ぼしてグラフト18の運動を制限し、メンブレン13は更に、メンブレン13のグラフト受入れ部材17を介するグラフト18の接近を制限する。このような逆向きの力は、グラフト18とメンブレン13との間にシールを形成する。理解できるように、用途に応じて1つ以上のピークをメンブレン13の材料に形成するのがよい。
【0036】
任意の公知のグラフト材料又は管状人工器官及び構造を用いて本発明のグラフトを形成することができる。グラフトは好ましくは、全体として管状の形態を有している。グラフトは、所要の強度特性及び生体適合性を備える限り、種々の周知の材料で作られたものであってよい。かかる材料の例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、発泡ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、DACRON(登録商標)、TEFLON(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、PTFE被覆DACRON、並びに上述した材料の複合材である。材料は、押し出し成形材料、編成材料、織成材料又は静電紡糸材料であってよい。グラフトを生体侵食性材料又は分解性材料、例えばアルブミン、コラーゲン、ヘパリン又はこれらに似た被覆材料で被覆し又はグラフトに今述べた材料を含浸させるのがよい。加うるに、グラフトは、生物学的に不活性の材料、例えば多孔質ポリウレタンの被膜を有してもよい。
【0037】
一般に、グラフト18の直径は、用途に応じて様々であるが、一般に、グラフト18(又は、多数のグラフトが用いられている場合には複数個のグラフト)の少なくとも一部が、グラフト受入れ部材17と実質的に同一の直径のものであるべきである。一般に、グラフト18の直径は、妨げられない血液の流れを可能にし、長期間の固定の場合にはメンブレン13に対する十分に大きな牽引力を維持しながら血液の流れ中に逆行する圧力の増大を阻止するほど大きいものであるべきである。円筒形管状形態が示されているが、他の管状形態を使用してもよい。
【0038】
本発明のもう1つの実施形態は、図6に示すような分枝状人工器官20である。図6は、図1の人工器官1に類似した第1の人工コンポーネント21を示しており、この第1の人工コンポーネントは、拡張可能なステント22及びステント22の内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共にステント22に取り付けられたメンブレン23を有している。メンブレン23は、1つ以上のグラフト受入れ開口部27又は部材を有している。分枝状人工器官20は、分枝状グラフト28を含む第2のコンポーネント26を更に有している。一実施形態では、分枝状グラフト28は、1つの幹部分28cに収斂する2つの脚部分28a,28bを備えた逆“Y”字形のものである。幹部分28cは、メンブレン17のグラフト受入れ部材27内へ延びてグラフト28の外面とメンブレン23との間に実質的に流体密のシールを形成している。2つの脚部分28a,28bは、それぞれ各腸骨動脈8(8a,8b)中へ延びている。脚部分(28a,28b)は、これらを通って流れ、脚部分(28a,28b)を各腸骨動脈(8a,8b)内に押し込む圧力により定位置に位置したままである。追加の繋留ステント24,25を図6に示すように脚部分(28a,28b)と組み合わせて用いて腸骨動脈壁へのグラフト17の固定具合を一段と高めるのがよい。
【0039】
本発明の別の分枝状実施形態が、図7に示されており、この実施形態は、図6の上述の分枝状人工器官20に類似しており、ステント32、ステント32の内部ルーメンを横断方向に横切って延びるメンブレン33、グラフト受入れ部材37及びグラフト38を有している。しかしながら、図7の分枝状人工器官30は、図6の分枝状グラフト28に代えて、2つの別々のグラフト38(38a,38b)を有している。図7に示すように、グラフト38は、別々のグラフト受入れ部材37(37a,37b)内へ延び、グラフト38とメンブレン33との間に実質的に流体密のシールを形成している。グラフト38を腸骨血管壁(8a,8b)に固定する追加の繋留ステント34,35を追加するのがよい。
【0040】
本発明の別の実施形態が、図9及び図10に示されており、この実施形態は、図1の人工器官1に類似しており、拡張可能なステント42及びステント42に取り付けられていて、ステント42のルーメンを横断方向に横切って延びるメンブレン43を有している。図9のメンブレン43は、静電紡糸材料を含む。図9は、図9のピーク形成部に代えて、平らな円板の形状に形作られた静電紡糸材料を示している。静電紡糸材料は、図1のグラフト受入れ部材7に類似していて、少なくとも1つの管状グラフトを挿通状態で密封可能に受け入れるグラフト受入れ開口部47を有している。理解できるように、上述したように用途に応じて種々の形状のメンブレン43及びステント42に対するかかるメンブレンの配設場所を利用できる。
【0041】
一般に、静電紡糸材料は、血管用グラフトに用いられる当該技術分野において知られている材料に類似している。メンブレンの紡糸構造は、多孔質支承構造を提供し、それにより血液がこの中で凝固し、密封可能な材料となる。基本的な静電紡糸法は、当該技術分野において周知である。この方法では、静電荷を強い磁界の存在下で、ポリマー融液又は溶液の流れに導入する。おおかたの動作形態は、単純な金属又はガラス毛管紡糸口金内での高電圧電極との接触による流体中への電荷の導入を含む。電界中で増速して薄くなり、最終的に接地装置、代表的にはプレート又はベルト上に集まる電荷ジェットが作られる。或る特定の動作条件下においては、流体ジェットは、これがコレクタに達する前においては不安定になる。低分子量流体では、不安定状態が生じると、典型的にはその結果として、「電気紡糸法」と呼ばれる方法において小さな荷電液滴のスプレーが生じる。粘弾性力が、ポリマー流体でジェットを安定化させ、小径の荷電フィラメントの形成を可能にし、かかるフィラメントは、「エンベロープ」又は円錐状分散流体として見え、又、凝固して不織布の形態でコレクタ上に堆積する。これら条件下において、0.1μm台の平均繊維直径を観察するのが普通であり、かかる平均直径は、不安定な領域に入るジェットの直径(10〜100μm)の1/1000倍である。静電紡糸法は、米国特許第4,044,404号明細書及び米国特許第4,323,525号明細書に記載されており、これら米国特許明細書の記載内容を参照によりここに引用する。加うるに、この材料は、透過性である。この材料の孔径は通常、0.001μm〜500μmであろう。材料が表面層中への細胞の入り込みを可能にするほど十分多孔質のものであるようにするため、平均表面細孔寸法は、5μm〜25μm台であることが好ましく、より好ましくは、7μm〜15μmである。ただし、材料のバルクにおける孔径は、平均約1μmであってもよい。加うるに、メンブレンを、凝固を促進し又は流体の流れを阻止する不透過性材料となる物質、例えばコラーゲン又はエラストマー、例えばCorethaneで被覆するのがよい。加うるに、人工器官40は、メンブレンを形成する多数の材料層、例えば、シリコン層に被着された電気紡糸層を有するのがよい。
【0042】
人工器官40を種々のグラフトと組み合わせて用いると、図10に示すようなマルチコンポーネント型システム、分枝状システム、ステント−グラフト人工器官等を構成することができる。人工器官40は、グラフト受入れ開口部47を貫通して延び、これにより密封可能に支持される少なくとも1つの管状人工器官48と組み合わせて用いられている。一般に、管状人工器官48は、グラフト受入れ開口部47を貫通して圧縮状態で位置決めされるグラフトから成る。グラフト48は、所望の用途に応じて寸法形状が様々であってよい。例えば、グラフト受入れ開口部47の各側に延びるグラフト48の一部は、メンブレン43へのグラフト48の固定具合を一段と高めるようグラフト受入れ開口部47を貫通して延びる部分よりも大きな直径の開口部を有するのがよい。いったん定位置に配置されると、グラフト48は、グラフト受入れ開口部47内で拡張するようになる。グラフト48中を通る血液からの圧力により、グラフト48は、図1の人工器官1に関して上述したのと類似した仕方で静電紡糸メンブレンに固定される。
【0043】
図1〜図10に示すような上述の人工器官を体腔内への配備又は展開できるよう運搬システム内に装填するのがよい。用いられる運搬システムは、当該技術分野において知られたシステムに類似している。典型的には、運搬システムは、人工器官を圧縮状態で受け入れる導入器具又はシースを有する。所望の血管部位にいったん到達すると、シースを取り外し、後に、ステント及びこれに取り付けられたメンブレンを管腔内に残す。追加のコンポーネントを上述の配備された人工器官、例えば管状グラフトと組み合わせて用いるのがよい。最初の人工器官の配備後に、追加のシース又は別個の器具を備えた同一の運搬装置を用いて管状グラフトを配備する。
【0044】
一般に、図1の人工器官1に関し、運搬システムは、人工器官1を圧縮状態で支持する細長い外側シースを有する。外側シースは、人工器官1を長手方向に取り囲む細長い全体として管状の構造体である。外側シースの直径は、体内管腔内への挿入が容易なほど十分小さい。
【0045】
配備システムは、当該技術分野において知られているガイドワイヤ、多数のシース、拡張器具、即ち、バルーン、ノーズキャップ及びプッシャを更に有するのがよい。
【0046】
運搬システムを体内管腔内の所望の部位に位置決めすると、外側シースを人工器官1に対して引っ込める。外側シースの引っ込みにより、ステント2がその長手方向(軸方向)広がりに沿って漸次放出され、ステント2が半径方向に拡張できる。ステント2が更に拡張すると、ステント2内に位置決めされているメンブレン3が配備される。メンブレン3は、取付け状態のステント2の半径方向拡張力によって半径方向に展開する。
【0047】
図9に示すような人工器官40は、上述したのと同一の方法であって当該技術分野において知られている方法を用いて配備できる。
【0048】
上述の人工器官をグラフトと組み合わせて配備する方法は、多段階配備法である。初期段階は、上述したステント及びこれに取り付けられたメンブレンを有する第1の人工器官を配備する段階である。
【0049】
一般に、第1の人工器官を位置決めして配備した後、当該技術分野において知られている種々のシステムを用いて管状人工器官を用いて配備する。例えば、追加のシースを上述した第1の運搬装置に追加して第1の人工器官の配備後に管状グラフトを配備するのがよい。第1の人工器官及び管状人工器官を運搬するのに有用な多段階運搬装置の一例が、コンヤに付与された米国特許第6,123,723号明細書に記載されており、この米国特許明細書の記載内容を参照によりここに引用する。変形例として、第2の別個の運搬システムを用いて管状人工器官を配備してもよい。最初の人工器官を上述したように配備した後、追加の配備装置を用いて管状人工器官をメンブレンのグラフト受入れ部材内に位置決めする。追加の配備装置がいったん定位置に位置すると、シースを引っ込めそれにより管状人工器官をグラフト受入れ部材内に配置することができる。管状人工器官は、血液がこの管状人工器官中を流れ、管状人工器官を半径方向に拡張させてこれをメンブレンに当てることによりメンブレンに固定可能に密着する。加うるに、ステントを配備して管状人工器官を動脈に固定するのがよい。
【0050】
同様に、分枝状システムは、上述したのと同一の多段階運搬法を用いる。追加のシース及び(又は)配備装置を用いて管状人工器官を上述したように配備する。例えば、図8は、ステント32a及びこれに取付け状態のメンブレン33aを含む最初の人工器官30aを配備した後に管状人工器官が植え込まれている分枝状システムを示している。管状人工器官38a,38bを腹部までナビゲートする。これは、管状人工器官38a,38bをカテーテル36,39に取り付け、しかる後、経皮的にカテーテルを大腿動脈に刺入し、そして管状人工器官を標的部位までナビゲートすることにより達成される。ガイドワイヤを用いて標的部位へのカテーテルの運搬を助けるのがよい。カテーテルをヒトの動脈系内でナビゲートすることが、当該技術分野において周知である。バルーンカテーテルの一例が、1994年4月19日にピンチャック等に付与された米国特許第5,304,197号明細書に記載されており、この米国特許明細書の記載内容を参照によりここに引用する。標的部位は、上述したように、メンブレン33aのグラフト受入れ部材37a,37b中に位置している。カテーテルのシースを取り外し、管状人工器官38a,38bをグラフト受入れ部材37a,37b内に配置する。カテーテルを抜去することにより、血液が管状人工器官38a,38bを通って流れることができ、それによりかかる人工器官38a,38bをグラフト受入れ部材37a,37b内に更に固定し、最終的に管状人工器官38a,38bをステント32aに密封可能に固定する。遠位側繋留ステント(図示せず)を用いて管状人工器官38a,38bを腸骨動脈の壁に固定するのがよい。遠位側繋留ステントを管状人工器官38a,38bを運搬するのに用いたのと同一のカテーテルに取り付けてこれを用いて配備するのがよい。変形例として、管状人工器官38a,38bの配置の完了後、別個の配備装置を用いて繋留ステントを配備してもよい。
【0051】
図7は、ステント32、これに取り付けられたメンブレン33、グラフト38及び繋留ステント34,35を含む分枝状人工器官30を配備した後にシステム全体がどのように見えるかを示している。
【0052】
図6の分枝状グラフト28を含む人工器官20の運搬法は、図8の人工器官30の運搬法に類似している。
当初、スタッド22及びこれに取り付けられたメンブレン23を含む人工器官20を上述したように所望の部位まで運搬する。第2の運搬システムを用いて分枝状グラフト28を圧縮状態でメンブレン23のグラフト受入れ部材27内に植え込む。いったん定位置に位置すると、シースを取り外し、グラフト28がグラフト受入れ部材27内で拡張できるようにし、グラフト28の一方の脚部28aが定位置に位置すると、これを繋留ステント24で繋留するのがよい。第3の運搬装置を用いて分枝状グラフト28の他方の脚部28bを正しく位置決めし更に繋留ステント24を追加してグラフトを腸骨動脈内に固定する。図6は分枝状グラフト28を含む人工器官20を配備した後にシステム全体がどのように見えるかを示している。
【0053】
大動脈壁への人工器官の固定具合を更に高めることが望ましい場合がある。多数の人工器官を上述したように組み合わせて用いて腎動脈の頭側への人工器官の固定を行うのがよい。例えば、図11は、第1の拡張可能な第1の拡張可能な人工器官51及び第2の拡張可能な人工器官61を含む本発明のマルチコンポーネント型血管内人工器官50を示している。人工器官51,61は、図1の人工器官に類似していて、ステント及びステントの内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共にステントに取り付けられたメンブレンを有し、このメンブレンは、1つ以上のグラフト受入れ部材を有している。第1の拡張可能な人工器官51及び第2の拡張可能な人工器官61は、それぞれ、拡張可能なステント(52,62)と、グラフト受入れ開口部(57,67)を備えたメンブレン(53,63)とを有している。図11は、流体がメンブレン53を通って流れるようにするための出口となる流体の流れ開口部54を更に含む第1の拡張可能な人工器官51を示している。流体の流れ開口部54は、スリット、穴、流体透過性材料等を含む。図11は、管状グラフト58(これは、58a,58bを含む)を有する分枝状システムを示しており、これら管状グラフトは、管状グラフト58を通る流体を差し向けるためのグラフト受入れ開口部(57,67)のところで各人工器官(51,61)を密封可能に貫通している。加うるに、図11は、第1の拡張可能な人工器官51と第2の拡張可能な人工器官61との間でグラフト58に設けられた多孔質部分59(これは、59a,59bを含む)を有するグラフト58を示しており、それによりグラフト58の多孔質部分59を通る流体の交換が可能になる。多孔質部分59は、ステント、スリット、流体透過性材料等を含む。 人工器官50の配備の仕方は、上述したような人工器官の配備の仕方に類似している。腹部大動脈瘤用途の場合、第1の拡張可能な人工器官51を上述したのと同じ仕方で運搬装置により腎動脈9(9a,9bを含む)の頭側に位置決めして配備する。追加のシース又は第2の運搬装置を用いる上述したのと同一の運搬装置を用いて第2の拡張可能な人工器官61を腎動脈9と腹部大動脈瘤との間に植え込む。追加の運搬装置を用いてグラフト受入れ開口部(57,67)を通ってグラフト58を運搬する。グラフト58aをそれぞれ各人工器官(51,61)のグラフト受入れ開口部(57,67)中へ通す。第2のグラフト58bをグラフト受入れ開口部(57,67)中へ通す。グラフト58a,58bをグラフト受入れ開口部(57,67)中へ密封可能に通し、グラフト受入れ開口部は、これを通る流体を差し向ける。上述したのと同一の配備手技を用いて当該技術分野において知られているように人工器官50を運搬する。
【0054】
本発明の別の実施形態は、図12の血管内人工器官70であり、これは、図1の人工器官1に類似しており、ステント及びメンブレンを有している。図12は、内部ルーメン76、遠位端部74及び近位端部75を備えた“M”字形ステント72を示している。遠位端部74は、開口部を有し、近位端部75は、遠位側開口部と反対側の2つの開口部を有している。穿刺可能なメンブレン73が、穿刺可能にグラフトを受け入れる近位端部75の開口部の各々を横切って延びている。図12のステント72は、上述したステントに類似しているが、好ましくは、ステントフィラメントのウィーブ又は編組である。図13に示すように、代表的な編組ステントは、第1の螺旋方向に(図13で見て左側に)巻回された第1の組をなすフィラメント71L及びこれとは逆の第2の螺旋方向に(図13で見て右側に)巻回された第2の組をなすフィラメント71Rを有し、複数のオーバーラップ部79が形成されている。フィラメント71L,71Rは、ワイヤ、例えばニチノール又はステンレス鋼であってもよく、或いは、ポリマー又は当該技術分野において知られている任意種類のフィラメントから成っていてもよい。人工器官70は、互いに織成され又は結合された2つの材料、例えばPTFE及びダクロン(Dacron:登録商標)を有するハイブリッド型材料であるのがよく、この場合、ダクロンは、PTFEの外部に結合されている。
【0055】
本明細書で用いる「編組」ステントという用語は、パターンをなして織編され、かくして図13に示すようにオーバーラップ部79を形成する少なくとも2種類の連続フィラメントで作られたステントを意味している。各オーバーラップ部のところには、一方のフィラメントが他方のフィラメントに対し半径方向外方に位置決めされている。一連の連続オーバーラップ部を通る螺旋経路に沿う各フィラメントに続き、そのフィラメントは例えば、一オーバーラップ部において半径方向内方の位置にあり、そして次のオーバーラップ部においては半径方向外方の位置にあるのがよく、或いは、2つのオーバーラップ部に関して内方位置にあり、次の2つのオーバーラップ部に関し外方位置にあるのがよく、以下同様である。例示の編組ステントは、ハンス・アイ・ウォールステンに付与された米国特許第4,655,771号明細書に開示されており、この米国特許明細書の開示内容を参照によりここに引用する。血管内人工器官70は、ステントが、不透過性グラフト材料が取り付けられた開放構造であるステント−グラフト複合材を含むのがよい。ステント−グラフト複合材は、遠位端部に1つの開口部を備えると共に近位端部にクリンプ状態の開口部を備えたステントを更に有するのがよく、このステントは、近位端部75のところに2つの開口部を形成するグラフトを支持している。
【0056】
図12の血管内人工器官は、穿刺可能なメンブレン73を更に有し、この穿刺可能なメンブレンは、上述した図1のメンブレン3に類似しており、グラフトを挿通状態で受け入れる弱め部分、開口部、スリット又は穴を有している。メンブレン73は、機械的取付け手段、熱的取付け手段、化学的取付け手段及び接着剤による取付け手段により上述したようにステント72に同様に取り付けられている。メンブレン73及び(又は)グラフト受入れ開口部77は、近位端部75のところで管状人工器官78とステント72との間に流体シールを形成する。
【0057】
図12の血管内人工器官70は、管状人工器官78と組み合わせた状態で示されている。任意の数の管状グラフトを用途に応じて用いることができる。図12は、人工器官70の近位端部74を貫通して伸び、そして穿刺可能にメンブレン73を貫通して延びる管状人工器官78を示しており、それにより近位端部75のところで管状人工器官78とステント72との間に流体シールが形成されている。血液の流れは、管状人工器官78を通って差し向けられる。管状人工器官78は、各腸骨動脈内に位置決めされていて、血液が管状人工器官78から出て各腸骨動脈(8a,8b)内に流れるようになっている。
【0058】
人工器官70の配備の仕方は、図1の人工器官1について説明した配備の仕方に類似している。一般に、運搬システムを体内管腔内に位置決めし、外側シースを人工器官70に対して引っ込める。外側シースの引っ込みにより、ステント72がその長手方向(軸方向)広がりに沿って漸次放出され、ステント72が半径方向に拡張できる。ステントルーメン76を横切って位置決めされたメンブレン73を、取付け状態のステント72の半径方向拡張力により半径方向に配備する。
【0059】
加うるに、上述したのと類似した補助運搬装置を用いて管状人工器官78をグラフト受入れメンブレン77中に配備する。植え込まれた分枝状システムが、図12に示されている。
【0060】
図12に類似した本発明の別の実施形態が、図14に示されており、この実施形態は、腎動脈9(9a,9bを含む)の頭側への人工器官の固定具合を一段と高める。図14は、血管内人工器官80を示しており、この場合、腎動脈9の尾側に位置し、図12の実施形態70に類似した人工器官80の一部が、一端部に開口部を備えると共に反対側の端部に2つの開口部84を備える“M”字形形態を有している。図14の血管内人工器官80は、ステント82、グラフト86及びメンブレン83を含むグラフト−ステント複合材である。ステント82は、遠位端部87,近位端部88及びこれら端部を貫通して延びる開口部を有する人工器官80の全長にわたって延びている。図14に示すように、腎動脈9の頭側の血管内人工器官80の一部は、内部ルーメンが貫通して設けられたステント82の遠位端部87に取り付けられた第1のグラフト81を有している。腎動脈9の尾側の人工器官80の一部は、ステント82の近位端部88に取り付けられていて、図14の人工器官80に類似した“M”字形を形成する第2のグラフト86を有している。第2のグラフト86は、ステント82の開口部内に2つの小径のルーメン84を形成している。メンブレン83は、第2のグラフト86の2つのルーメン84の各々を横断方向に横切って延びている。メンブレン83は、図1の人工器官1の場合について説明した構成材料とほぼ同じ構成材料のものである。メンブレン83を接着、例えばシリコーン又はポリウレタン、機械的取付け手段、例えば縫合糸又はステープル、熱結合、貼り合わせ又は化学的結合によって上述したような仕方でグラフト86に取り付けるのがよい。2つのグラフト81,86をステント82及び腎動脈9を通る血液の交換を可能にするよう互いに離隔させる。第1のグラフト81と第2のグラフト86との間のステント82の部分は、連続気泡構造であってもよく、又は血液透過性の被覆ステントであってもよい。図14は、ステント82が血管内人工器官80を動脈壁に固定する遠位端部87及び近位端部88のところに幅の広い断面を有すると共にこれら端部相互間に幅の狭い断面を有する血管内人工器官80を示している。理解できるように、血管内人工器官80は、人工器官80の長さ全体を通じて一様な断面のものであってよく又は2つの端部が動脈への固定を可能にすると共にこれら端部を通る妨げられない血液の流れを可能にする限り、漸変断面のものであってよい。
【0061】
人工器官80を図14に示すように管状人工器官89と組み合わせて用いることができる。管状人工器官89は、それぞれのメンブレン83の各々を貫通して延び、グラフト86と管状人工器官89との間に密封可能な取付け部を形成している。血液を各管状人工器官89内に逸らす。管状人工器官89は、当該技術分野において知られていて、図4の人工器官10を参照して上述したものである。
【0062】
人工器官80を配備するため、当該技術分野において知られているように且つ上述したように、代表的には人工器官80を半径方向圧縮状態で運搬装置内に押し込む。次に、人工器官80を配備されるべきルーメン内に導入し、ルーメンを通って配備場所、代表的には、疾患のある動脈、例えば大動脈までナビゲートする。人工器官80を当該技術分野において知られているように配備場所で半径方向拡張状態に拡張させる。図14は、人工器官80の連続気泡構造又は多孔質部分が肝動脈9a,9b相互間に位置する肝動脈9a,9bを横切って配備された人工器官80を示している。かくして、本発明の管状人工器官89(89a,89b)の配備は、当該技術分野において知られているように別個の運搬装置又は追加のシース又はステージを備えた同一の運搬装置を用いて上述したのと類似した方法により行われる。管状人工器官89をメンブレン83を通って穿刺可能に運搬する。管状人工器官は、これを通って流れる血液からの外向きの力及びルーメン84の寸法の減少によりグラフト86に密封可能に固定される。
【0063】
図1の人工器官1に類似しているが、管状人工器官をステントに密封可能に固定するメンブレンを用いることはない本発明の別の実施形態では、フォーム93を用いて管状人工器官98を図15に示すようにステント92にしっかりと取り付ける。図15の体内人工器官90は、ステント92と、拡張状態のフォーム93が取り付けられた管状人工器官98とを有している。ステント92は、上述したステントに類似しており、遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた拡張可能なステント92である。図16に示すように、ステント92は、内面94及び外面を有している。管状人工器官98は、上述した人工器官に類似しており、内面及び外面99を有している。拡張フォーム93は、管状人工器官98の外面99に取り付けられている。管状人工器官98は、ステント92のルーメン91内に配置され、拡張フォーム93は、管状人工器官98をステント92に密封可能に固定している。
【0064】
拡張可能なフォーム93は、生体適合性でなければならず、しかも所要の強度特性を備えていなければならない。このフォームは、当該技術分野において知られているフォームに類似しており、例えば、ゼラチン海綿、コラーゲン海綿、セルロース海綿、ヒアルロン酸及び鼻手術に用いられるフォームである。拡張可能なフォーム93は、多孔質であってもよく、非多孔質であってもよい。拡張可能なフォーム93は、ステント92内への配置に先立って圧縮状態にされる。いったん定位置に位置すると、拡張可能なフォーム93は、ステント92のマトリクス中に拡張して管状人工器官98をステントルーメン91内に固定可能に取り付ける。
【0065】
拡張可能なフォームの中には植え込み時に不透過性のものがあれば、凝血形成のための支承構造となるものもある。幾つかの支承構造フォームは、経時的に分解して、後に密封可能な凝血形成を残す。適当な市販のフォームとしては、Spongostern、Surgifoam(ジョンソン・アンド・ジョンソン社によって販売されているFerrosan)、Gelfoam(ファーマシア・アンド・アップジョン・カンパニー)、Avitene Ultrofoam(バード/ダーボル)、MeroGel Nasal Dressing、Sinus Stent及びOtologic Packing、HYAFF(フロリダ州ジョンソンビル所在のメドトロニック・クォムド社)が挙げられる。
【0066】
拡張可能なフォーム93は、機械的取付け、接着剤による取付け、熱による取付け又は化学的取付けにより管状人工器官98の外面99に取り付けられている。図16に示すように、フォーム93で覆われたグラフト98をステント92のルーメン91内に配置し、拡張可能なフォーム93が血管環境内の反応、例えば加水分解又は外部からの力、例えばシースを取り外すことにより拡張するようにする。拡張可能なフォーム93は、拡張してステント92に当たり、そしてステント92の構造中へ入り込み、管状人工器官98を密封可能な仕方で定位置に固定する。図16に示すように、1つ以上の管状人工器官98を用途に応じて用いることができる。
【0067】
加うるに、図17に示すように、図16の拡張可能なフォーム93で被覆された管状人工器官98を図1の人工器官1と組み合わせて用いることができる。人工器官90aは、ステント92aと、グラフト受入れ部材97aを備えたメンブレン97を有し、図1の人工器官1に類似している。拡張可能なフォーム93で被覆された管状人工器官98aをグラフト受入れ部材97a中へ通す。拡張可能なフォーム93aは、グラフト受入れ部材97内で拡張して図17に示すようにメンブレン97への管状人工器官98aの密封可能な固定を可能にする。
【0068】
本発明の別の実施形態は、血管内人工器官内への組み込み可能な部品のキットである。このキットは、拡張可能なステント92及び管状人工器官98を含む。拡張可能なステント92は、遠位端部、近位端部及び内部ルーメン91を有し、体内の血管内へ挿入可能である。管状人工器官98は、ステント92の内部ルーメン91内に挿入されるようになっている。管状人工器官98は、体液の流れを可能にする内面及び外面を有する。加うるに、拡張可能なフォーム93は、管状人工器官98の外面に取り付けられている。拡張可能なフォーム93は、ステント92内で拡張して管状人工器官98をステント92に密封可能に固定するようになっている。
【0069】
人工器官90の配備の仕方は、図7の人工器官30の配備方法に類似している。人工器官90の配備は、上述したような多段階による方法である。当該技術分野において知られているように、代表的にはステント92を半径方向圧縮状態で運搬装置内に押し込む。次に、ステント92を配備されるべきルーメン内に導入し、ルーメンを通って配備場所までナビゲートし、次に当該技術分野において知られているように配備場所で半径方向拡張状態に拡張させる。また、拡張可能なフォーム93で被覆された管状人工器官98を半径方向圧縮状態で運搬装置内に押し込む。管状人工器官98がいったんステントルーメン91内に位置決めされると、運搬装置の拘束要素、例えばシースを取り外すことにより管状人工器官98を配備する。拡張可能なフォーム93は、拡張してステントルーメン91内の空間を満たし、そしてステント92の構造中へ入り込んで管状人工器官98をステント92内に密封可能に固定する。上述した別個の運搬装置を用いて人工器官90の各コンポーネントを配備してもよく、又は多段階方式運搬装置を用いてもよい。
【0070】
加うるに、図16のステント92に代えて第1の人工器官91aを用いることを除き、図16の人工器官90について上述したのと同一の運搬システムを用いて図17の人工器官90aを配備する。当初、第1の人工器官91aを運搬装置内に押し込み、ルーメン内の標的部位まで運搬し、そしてこの部位で展開するようにする。拡張可能なフォーム93aで被覆された管状人工器官98aを、運搬装置により圧縮状態でグラフト受入れ部材97aに送り込む。運搬装置を所望の場所でグラフト受入れ部材97a内に配置した後、運搬装置を取り外して拡張可能なフォーム93aがグラフト受入れ部材97a内で拡張できるようにする。拡張可能なフォーム93aは、グラフト受入れ部材97aと組合せ状態で、管状人工器官98aを第1の人工器官91aに密封可能に固定する。
【0071】
本発明の別の実施形態は、図18及び図19に示す血管内人工器官組立体100であり、この血管内人工器官組立体は、図15の人工器官90に類似しているが、グラフトに設けられていて、グラフトをステントに固定する拡張可能なフォームを用いず、ポリマー材料130が用いられている。図19は、上述したのと類似したステント120及び管状人工器官180を含む血管内人工器官組立体100を示している。血管内人工器官組立体100は、管状人工器官180をステント120に対して密封可能に支持するポリマー材料130を更に有している。ポリマー材料130は、現場で形成されるモノマー材料の実質的に均質の反応生成物である。図18に示すように、管状人工器官180の外面及びステント120のルーメンの内面は、一次反応性物質110であらかじめ被覆されている。管状人工器官180をステント120の内部ルーメン内に位置決めする。一次物質110と反応する二次物質(図示せず)を管状人工器官180及びステント120の内部ルーメンの付近に導入する。一次物質110及び二次物質は、反応してポリマー材料110を形成し、このポリマー材料は、管状人工器官180をステント120に対して密封可能に支持する。
【0072】
一般に、ポリマー材料130は、生体適合性であって僅かに血栓性であり、且つ非毒性である。ポリマー材料130は、フォーム又はヒドロゲルであるのがよい。有用なヒドロゲルは、ポリマーとモノマーの混合物及び反応促進剤、例えば化学活性剤又は光活性剤(局在性治療薬)から作られたものである。ヒドロゲルを形成するよう反応する適当な材料の例としては、ポリエチレングリコールと鉄、又はポリエチレングリコールと過酸化物であってこれに光活性剤又は化学活性剤が添加されたものが挙げられる。追加の適当なヒドロゲル及び調製方法に関しては、ソーニに付与された米国特許第6,379,373号を参照されたい。なお、この米国特許明細書の記載内容を参照によりここに引用する。
【0073】
加うるに、1つ以上の管状人工器官180を用途に応じて用いることができる。人工器官100は、キットの形態で提供できる。血管内人工器官100内へ組み込み可能な部品のキットは、ステント120、一次反応性物質110、管状人工器官180及び二次反応性物質を含む。ステント120は、内面、外面及び内部ルーメンを有する。一次反応性物質110は、ステント120の上述の内面に被着されている。管状人工器官180は、ステント120の内部ルーメン中に挿通するようになっている。管状人工器官180は、内面及び外面を有し、一次物質110は、管状人工器官180の上述の外面に被着されている。二次物質は、一次物質110と反応し、この二次物質は、ステント180の内部ルーメン内への管状人工器官180の挿入時に、一次物質110に施されるようになっている。二次物質は、一次物質110と反応して、管状人工器官180とステント120との間にシールを形成する。
【0074】
人工器官100の配備の仕方は、図15の人工器官90の配備方法に類似している。人工器官100の配備も又、上述したような多段階による方法である。当該技術分野において知られているように、代表的にはステント120を半径方向圧縮状態で運搬装置内に押し込む。次に、ステント120を配備されるべきルーメン内に導入し、ルーメンを通って配備場所までナビゲートし、次に当該技術分野において知られているように配備場所で半径方向拡張状態に拡張させる。次に、管状人工器官180を半径方向圧縮状態で運搬装置内に押し込む。管状人工器官180をステント120のルーメン内に位置決めする。ステント120のルーメン内に位置決めされた管状人工器官180の部分の周りのシース又は運搬装置を取り外すことにより管状人工器官180を部分的に配備する。二次物質を管状人工器官180及びステント120の付近に注入する。二次物質は、管状人工器官180の外面及びステント120の内面上の一次物質110と反応するようになる。これら2つの物質からのポリマー反応生成物130は、管状人工器官180をステント120に密封可能に固定する。上述したように、別個の運搬装置を用いて人工器官100の各コンポーネントを配備してもよく、或いは、当該技術分野において知られているように多段階方式運搬装置を用いてもよい。
【0075】
加うるに、図18及び図19に示すような技術と図1の人工器官1を組み合わせることにより、図20及び図21に示すような人工器官200が構成される。この組合せにおいて、メンブレン230及び管状人工器官280は、上述したように一次物質210であらかじめ処理する。図20に示すように、管状人工器官280をメンブレン230のグラフト受入れ部材270を通ってステントルーメン内に配置する。二次物質を導入し、この二次物質は、管状人工器官280及びメンブレン230上の一次物質210と反応する。ポリマー材料240が形成され、このポリマー材料は、図21に示すように管状人工器官280をステント220に密封可能に固定する。
【0076】
ステント120に代えてステント220及びステント220に取り付けられていて、グラフト受入れ部材270を備えたメンブレン230を含む第1の人工器官219を用いることを除き、人工器官200を図18の人工器官100について上述したのと同一の仕方で配備する。上述したような運搬装置を用いて第1の人工器官290を標的部位のところに配備する。管状人工器官280を運搬装置内に押し込み、次にグラフト受入れ部材270を通ってこれを位置決めする。管状人工器官280をグラフト受入れ部材270内に配備する。二次反応性物質をメンブレン230及び管状人工器官280の付近に導入する。二次反応性物質は、管状人工器官280及びメンブレン230上の一次物質210と反応するようになる。反応生成物210の結果として、管状人工器官280をメンブレン230に密封可能に固定するポリマー材料が得られる。この方法の変形例を公知の技術に従って用いることができる。
【0077】
本明細書において本発明の特定の構成を説明したが、当業者であれば、本発明の意図した範囲から逸脱することなく、かかる構成の改造例を想到できる。したがって、本明細書において説明した構成は、例示であって本発明を限定するものではなく、本発明の真の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】ステム及びグラフト受入れ部材を備えた取付け状態のメンブレンを含む本発明の血管内人工器官の拡大平面図である。
【図2】腹大動脈内に植え込まれた図1の血管内人工器官の平面図である。
【図3】グラフト受入れ部材を示す図1の血管内人工器官の平面図である。
【図4】グラフトを更に含む図1の血管内人工器官を示す図である。
【図5】グラフトを挿通させた図3の血管内人工器官の平面図である。
【図6】分枝状グラフトを含む図2の分枝状血管内人工器官を示す図である。
【図7】分枝状器官系用の管状人工器官を含む図2の血管内人工器官を示す図である。
【図8】分枝状器官系用の管状人工器官の展開状態を示す図7の血管内人工器官を示す図である。
【図9】ステント及びメンブレンを示す本発明の血管内人工器官の平面図である。
【図10】管状グラフトを更に含む図9の血管内人工器官を示す図である。
【図11】本発明のマルチコンポーネント型血管内人工器官系を示す図である。
【図12】管状グラフトと組み合わされた本発明の血管内人工器官を示す図である。
【図13】ステント及びこれに取り付けられたメンブレンを含む図12の血管内人工器官の拡大平面図である。
【図14】ステント、グラフト及び管状グラフトと組合せ状態のメンブレンを示す本発明の血管内人工器官の平面図である。
【図15】拡張状態にある拡張可能なフォームを示す本発明の血管内人工器官系の平面図である。
【図16】拡張可能なフォームを示す図15の血管内人工器官組立体を示す図である。
【図17】拡張可能なフォームと組み合わされる取付け状態のメンブレンを有するステントを示す本発明の血管内人工器官の平面図である。
【図18】管状グラフトをステントに対して密封可能に支持するポリマー材料を示す本発明の血管内人工器官系の平面図である。
【図19】グラフト及びステント上の一次反応性材料を示す図18の血管内人工器官系を示す図である。
【図20】メンブレン及びグラフト上の一次材料を示す本発明の血管内人工器官の平面図である。
【図21】管状グラフトをメンブレンに密封可能に固定するポリマー材料を示す図20の血管内人工器官を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内人工器官であって、
(a)遠位端部と、近位端部と、内部ルーメンとを備えた拡張可能なステントと、
(b)該ステントによって支持され、前記ルーメンに亘って延びるメンブレンとを有し、該メンブレンは、少なくとも1つの管状グラフトを密封自在に受け入れるためのグラフト受入れ部材を備える、
血管内人工器官。
【請求項2】
前記グラフト受入れ部材がスリットを有する、請求項1記載の血管内人工器官。
【請求項3】
前記グラフト受入れ部材が静電紡糸材料である、請求項2記載の血管内人工器官。
【請求項4】
前記グラフト受入れ部材が弁を含む、請求項1記載の血管内人工器官。
【請求項5】
前記グラフト受入れ部材が弱め部分を有する、請求項1記載の血管内人工器官。
【請求項6】
前記グラフト受入れ部材が穿刺可能な材料から成る、請求項1記載の血管内人工器官。
【請求項7】
第2のグラフト受入れ部材を更に有する、請求項1記載の血管内人工器官。
【請求項8】
請求項1記載の血管内人工器官と、前記グラフト受入れ部材を密封可能に貫通して延びる管状グラフトとの組合せ。
【請求項9】
前記管状グラフトは、内面、外面及び前記外面に設けられた拡張可能なフォームを備え、前記フォームは、前記グラフト受入れ部材内で拡張して前記管状グラフトを前記グラフト受入れ部材に密封可能に固定する、請求項8記載の組合せ。
【請求項10】
前記管状グラフトを前記メンブレンに密封可能に固定するポリマー材料を更に有する、請求項8記載の血管内人工器官。
【請求項11】
血管内人工器官を形成する方法であって、
a.ルーメンが設けられていて、遠位端部及び近位端部を備えた拡張可能なステントを用意する工程と、
b.少なくとも1つの管状グラフトを挿通状態で密封可能に受け入れるグラフト受入れ部材を有するメンブレンを用意する工程と、
c.前記メンブレンを前記ステントに取り付ける工程とを有し、前記メンブレンは、前記ルーメンを横切って延びると共に前記ルーメンによって支持される、方法。
【請求項12】
分枝状血管内人工器官であって、
(a)第1の人工器官コンポーネントを有し、前記第1の人工器官コンポーネントは、
(i)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを有する拡張可能なステントと、
(ii)前記内部ルーメンを横断方向に横切って延び、前記ステントに取り付けられたメンブレンとを有し、前記メンブレンは、開口部を有し、
(b)前記開口部内へ実質的に流体密状態で延びる第2の人工器官コンポーネントを有し、前記第2のコンポーネントは分枝状グラフトを有する、
分枝状血管内人工器官。
【請求項13】
前記メンブレンは、第1の開口部及び第2の開口部を有し、前記分枝状グラフトは、実質的に流体密状態で、前記第1の開口部内へ延びる第1のグラフト及び前記第2の開口部内へ延びる第2のグラフトから成る、請求項12記載の分枝状血管内人工器官。
【請求項14】
前記第1の開口部及び前記第2の開口部は各々、弁を有する、請求項13記載の分枝状血管内人工器官。
【請求項15】
分枝状血管内人工器官を形成する方法であって、
a.第1の人工器官コンポーネントを用意する工程を有し、前記第1の人工器官コンポーネントは、
(i)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた拡張可能なステントと、
(ii)前記内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共に前記ステントに取り付けられたメンブレンとを有し、前記メンブレンは、開口部を有し、
b.分枝状グラフトを含む第2の人工器官コンポーネントを用意する工程を有し、
c.前記第2の人工器官コンポーネントを前記メンブレンの前記開口部内へ通す工程を有し、前記メンブレンは、前記第2のコンポーネントと実質的に流体密シールを形成する、方法。
【請求項16】
分枝状血管内人工器官を形成する方法であって、
a.人工器官コンポーネントを用意する工程を有し、前記人工器官コンポーネントは、
(i)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた拡張可能なステントと、
(ii)前記内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共に前記ステントに取り付けられたメンブレンとを有し、前記メンブレンは、第1の開口部及び第2の開口部を有し、
b.第1の内部ルーメンを構成する第1の内面及び第1の外面を備えた第1のグラフトを用意する工程を有し、
c.第2の内部ルーメンを構成する第2の内面及び第2の外面を備えた第2のグラフトを用意する工程を有し、
d.前記第1のグラフトを前記メンブレンの前記第1の開口部内へ通す工程を有し、前記メンブレンは、前記人工器官コンポーネント及び前記第1のグラフトとの間に実質的に流体密シールを形成し、
e.前記第2のグラフトを前記メンブレンの前記第2の開口部内へ通す工程を有し、前記メンブレンは、前記人工器官コンポーネントと前記第2のグラフトとの間に実質的に流体密シールを形成する、方法。
【請求項17】
マルチコンポーネント型血管内人工器官システムであって、
(a)第1の拡張可能な人工器官を有し、前記第1の拡張可能な人工器官は、
(i)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた第1の拡張可能なステントと、
(ii)前記内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共に前記第1のステントに取り付けられた第1のメンブレンとを有し、前記第1のメンブレンは、第1のグラフト受入れ開口部を有し、
(b)前記第1の人工器官から間隔を置いて位置する第2の拡張可能な人工器官を有し、前記第2の拡張可能な人工器官は、
(i)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた第2の拡張可能なステントと、
(ii)前記内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共に前記第2のステントに取り付けられた第2のメンブレンとを有し、前記第2のメンブレンは、第2のグラフト受入れ開口部を有し、
(c)管状グラフトを有し、前記管状グラフトは、流体が前記管状グラフト中へ差し向けられるよう前記第1のグラフト受入れ開口部及び前記第2のグラフト受入れ開口部を密封可能に貫通する、マルチコンポーネント型血管内人工器官システム。
【請求項18】
前記管状グラフトは、多孔質部分を有し、前記多孔質部分は、前記多孔質部分を通る流体の流れを可能にするよう前記第1の拡張可能な人工器官と前記第2の拡張可能な人工器官との間に設けられている、請求項17記載のマルチコンポーネント型血管内人工器官システム。
【請求項19】
前記多孔質部分は、ステント、スリット、流体透過性材料及びこれらの組合せから成る群から成る、請求項18記載のマルチコンポーネント型血管内人工器官システム。
【請求項20】
前記第1のメンブレンは、1対の第1のグラフト受入れ開口部を有し、前記グラフト受入れ開口部は各々、管状グラフトを挿通状態で受け入れる、請求項17記載のマルチコンポーネント型血管内人工器官システム。
【請求項21】
前記第1のメンブレンは、流体の流れ開口部を有する、請求項20記載のマルチコンポーネント型血管内人工器官システム。
【請求項22】
前記第2のメンブレンは、1対の第2のグラフト受入れ開口部を有し、前記第2のグラフト受入れ開口部は各々、管状グラフトを挿通状態で受け入れる、請求項21記載のマルチコンポーネント型血管内人工器官システム。
【請求項23】
マルチコンポーネント型血管内人工器官を形成する方法であって、
a.第1の拡張可能な人工器官を用意する工程を有し、前記第1の拡張可能な人工器官は、
(i)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた第1の拡張可能なステントと、
(ii)前記内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共に前記第1のステントに取り付けられた第1のメンブレンとを有し、前記第1のメンブレンは、第1のグラフト受入れ開口部を有し、
b.前記第1の拡張可能な人工器官から間隔を置いて位置した第2の拡張可能な人工器官を用意する工程を有し、前記第2の拡張可能な人工器官は、
(i)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた第2の拡張可能なステントと、
(ii)前記内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共に前記第2のステントに取り付けられた第2のメンブレンとを有し、前記第2のメンブレンは、第2のグラフト受入れ開口部を有し、
c.内部ルーメンを構成する内面及び外面を備えた管状グラフトを用意する工程を有し、
d.前記管状グラフトを、流体を前記管状グラフト中へ差し向ける前記第1のグラフト受入れ開口部及び前記第2のグラフト受入れ開口部に通す工程を有する、方法。
【請求項24】
血管内人工器官であって、
(a)内部ルーメン、遠位端部及び近位端部を備えたステントを有し、前記遠位端部は、開口部を有し、前記近位端部は、前記遠位端部の前記開口部と反対側に2つの開口部を有し、
(b)前記近位端部の前記開口部の各々を横切って延びる穿刺可能なメンブレンを有する、血管内人工器官。
【請求項25】
請求項24記載の血管内人工器官と、前記遠位端部の前記開口部を貫通して延びると共に前記近位端部のところで前記メンブレンのうちの1つを穿刺可能に貫通して延びる少なくとも1つの管状グラフトとの組合せであって、前記近位端部のところで前記管状グラフトと前記ステントとの間に流体シールが形成されている、組合せ。
【請求項26】
血管内人工器官を形成する方法であって、
a.内部ルーメン、遠位端部及び近位端部を備えた拡張可能なステントを用意する工程を有し、前記遠位端部は、開口部を有し、前記近位端部は、前記遠位端部の前記開口部と反対側に2つの開口部を有し、
b.穿刺可能なメンブレンを用意する工程を有し、
c.前記メンブレンを前記近位端部の前記開口部の各々を横断方向に横切って前記ステントに取り付ける工程を有する、方法。
【請求項27】
血管内人工器官であって、
(a)遠位端部、近位端部及び前記端部を貫通する開口部を備えた拡張可能なステントを有し、
(b)前記開口部内で前記ステントの前記遠位端部に取り付けられた第1のグラフトを有し、前記第1のグラフトは、前記第1のグラフトを貫通して延びる内部ルーメンを有し、
(c)前記開口部内で前記ステントの前記近位端部に取り付けられていて、前記第1のグラフトから間隔を置いて位置する第2のグラフトを有し、前記第2のグラフトは、前記第2のグラフトを貫通して延びる少なくとも2つの内部ルーメンを有し、
(d)前記第2のグラフトの前記内部ルーメンの各々を横断方向に横切って延びるメンブレンを有する、血管内人工器官。
【請求項28】
請求項27記載の血管内人工器官と、少なくとも2つの管状人工器官との組合せであって、前記管状人工器官の各々は、前記メンブレンの各々をそれぞれ穿刺可能に貫通して延びる、組合せ。
【請求項29】
血管内人工器官を形成する方法であって、
a.遠位端部、近位端部及び前記端部を貫通する開口部を備えた拡張可能なステントを用意する工程と、
b.内部ルーメンが貫通して延びる第1のグラフトを用意する工程と、
c.少なくとも2つの内部ルーメンが貫通して延びる第2のグラフトを用意する工程と、
d.メンブレンを用意する工程と、
e.前記第1のグラフトを前記開口部内で前記ステントの前記遠位端部に取り付ける工程と、
f.前記第2のグラフトを前記第1のグラフトから間隔を置いた状態で前記開口部内で前記ステントの前記近位端部に取り付ける工程と、
g.前記メンブレンを前記第2のグラフトの前記内部ルーメンの各々を横断方向に横切って取り付ける工程とを有する、方法。
【請求項30】
血管内人工器官であって、
(a)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた拡張可能なステントと、
(b)管状グラフトを前記ルーメン内で前記ステントに密封可能に取り付ける手段とを有する、血管内人工器官。
【請求項31】
前記手段は、前記ステントによって支持されていて、前記ルーメンを横切って延びるメンブレンから成り、前記メンブレンは、少なくとも1つの管状グラフトを挿通状態で密封可能に受け入れるグラフト受入れ部材を有する、請求項30記載の血管内人工器官。
【請求項32】
前記手段は、管状グラフトに結合された拡張可能なフォームから成る、請求項30記載の血管内人工器官。
【請求項33】
前記手段は、ポリマー材料から成り、前記ポリマー材料は、前記ステントの前記ルーメン及び前記管状グラフトに被着された一次物質と二次物質との反応生成物から成り、それにより、前記管状グラフトと前記ステントとの間に密封取付け部が形成される、請求項30記載の血管内人工器官。
【請求項1】
血管内人工器官であって、
(a)遠位端部と、近位端部と、内部ルーメンとを備えた拡張可能なステントと、
(b)該ステントによって支持され、前記ルーメンに亘って延びるメンブレンとを有し、該メンブレンは、少なくとも1つの管状グラフトを密封自在に受け入れるためのグラフト受入れ部材を備える、
血管内人工器官。
【請求項2】
前記グラフト受入れ部材がスリットを有する、請求項1記載の血管内人工器官。
【請求項3】
前記グラフト受入れ部材が静電紡糸材料である、請求項2記載の血管内人工器官。
【請求項4】
前記グラフト受入れ部材が弁を含む、請求項1記載の血管内人工器官。
【請求項5】
前記グラフト受入れ部材が弱め部分を有する、請求項1記載の血管内人工器官。
【請求項6】
前記グラフト受入れ部材が穿刺可能な材料から成る、請求項1記載の血管内人工器官。
【請求項7】
第2のグラフト受入れ部材を更に有する、請求項1記載の血管内人工器官。
【請求項8】
請求項1記載の血管内人工器官と、前記グラフト受入れ部材を密封可能に貫通して延びる管状グラフトとの組合せ。
【請求項9】
前記管状グラフトは、内面、外面及び前記外面に設けられた拡張可能なフォームを備え、前記フォームは、前記グラフト受入れ部材内で拡張して前記管状グラフトを前記グラフト受入れ部材に密封可能に固定する、請求項8記載の組合せ。
【請求項10】
前記管状グラフトを前記メンブレンに密封可能に固定するポリマー材料を更に有する、請求項8記載の血管内人工器官。
【請求項11】
血管内人工器官を形成する方法であって、
a.ルーメンが設けられていて、遠位端部及び近位端部を備えた拡張可能なステントを用意する工程と、
b.少なくとも1つの管状グラフトを挿通状態で密封可能に受け入れるグラフト受入れ部材を有するメンブレンを用意する工程と、
c.前記メンブレンを前記ステントに取り付ける工程とを有し、前記メンブレンは、前記ルーメンを横切って延びると共に前記ルーメンによって支持される、方法。
【請求項12】
分枝状血管内人工器官であって、
(a)第1の人工器官コンポーネントを有し、前記第1の人工器官コンポーネントは、
(i)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを有する拡張可能なステントと、
(ii)前記内部ルーメンを横断方向に横切って延び、前記ステントに取り付けられたメンブレンとを有し、前記メンブレンは、開口部を有し、
(b)前記開口部内へ実質的に流体密状態で延びる第2の人工器官コンポーネントを有し、前記第2のコンポーネントは分枝状グラフトを有する、
分枝状血管内人工器官。
【請求項13】
前記メンブレンは、第1の開口部及び第2の開口部を有し、前記分枝状グラフトは、実質的に流体密状態で、前記第1の開口部内へ延びる第1のグラフト及び前記第2の開口部内へ延びる第2のグラフトから成る、請求項12記載の分枝状血管内人工器官。
【請求項14】
前記第1の開口部及び前記第2の開口部は各々、弁を有する、請求項13記載の分枝状血管内人工器官。
【請求項15】
分枝状血管内人工器官を形成する方法であって、
a.第1の人工器官コンポーネントを用意する工程を有し、前記第1の人工器官コンポーネントは、
(i)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた拡張可能なステントと、
(ii)前記内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共に前記ステントに取り付けられたメンブレンとを有し、前記メンブレンは、開口部を有し、
b.分枝状グラフトを含む第2の人工器官コンポーネントを用意する工程を有し、
c.前記第2の人工器官コンポーネントを前記メンブレンの前記開口部内へ通す工程を有し、前記メンブレンは、前記第2のコンポーネントと実質的に流体密シールを形成する、方法。
【請求項16】
分枝状血管内人工器官を形成する方法であって、
a.人工器官コンポーネントを用意する工程を有し、前記人工器官コンポーネントは、
(i)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた拡張可能なステントと、
(ii)前記内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共に前記ステントに取り付けられたメンブレンとを有し、前記メンブレンは、第1の開口部及び第2の開口部を有し、
b.第1の内部ルーメンを構成する第1の内面及び第1の外面を備えた第1のグラフトを用意する工程を有し、
c.第2の内部ルーメンを構成する第2の内面及び第2の外面を備えた第2のグラフトを用意する工程を有し、
d.前記第1のグラフトを前記メンブレンの前記第1の開口部内へ通す工程を有し、前記メンブレンは、前記人工器官コンポーネント及び前記第1のグラフトとの間に実質的に流体密シールを形成し、
e.前記第2のグラフトを前記メンブレンの前記第2の開口部内へ通す工程を有し、前記メンブレンは、前記人工器官コンポーネントと前記第2のグラフトとの間に実質的に流体密シールを形成する、方法。
【請求項17】
マルチコンポーネント型血管内人工器官システムであって、
(a)第1の拡張可能な人工器官を有し、前記第1の拡張可能な人工器官は、
(i)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた第1の拡張可能なステントと、
(ii)前記内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共に前記第1のステントに取り付けられた第1のメンブレンとを有し、前記第1のメンブレンは、第1のグラフト受入れ開口部を有し、
(b)前記第1の人工器官から間隔を置いて位置する第2の拡張可能な人工器官を有し、前記第2の拡張可能な人工器官は、
(i)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた第2の拡張可能なステントと、
(ii)前記内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共に前記第2のステントに取り付けられた第2のメンブレンとを有し、前記第2のメンブレンは、第2のグラフト受入れ開口部を有し、
(c)管状グラフトを有し、前記管状グラフトは、流体が前記管状グラフト中へ差し向けられるよう前記第1のグラフト受入れ開口部及び前記第2のグラフト受入れ開口部を密封可能に貫通する、マルチコンポーネント型血管内人工器官システム。
【請求項18】
前記管状グラフトは、多孔質部分を有し、前記多孔質部分は、前記多孔質部分を通る流体の流れを可能にするよう前記第1の拡張可能な人工器官と前記第2の拡張可能な人工器官との間に設けられている、請求項17記載のマルチコンポーネント型血管内人工器官システム。
【請求項19】
前記多孔質部分は、ステント、スリット、流体透過性材料及びこれらの組合せから成る群から成る、請求項18記載のマルチコンポーネント型血管内人工器官システム。
【請求項20】
前記第1のメンブレンは、1対の第1のグラフト受入れ開口部を有し、前記グラフト受入れ開口部は各々、管状グラフトを挿通状態で受け入れる、請求項17記載のマルチコンポーネント型血管内人工器官システム。
【請求項21】
前記第1のメンブレンは、流体の流れ開口部を有する、請求項20記載のマルチコンポーネント型血管内人工器官システム。
【請求項22】
前記第2のメンブレンは、1対の第2のグラフト受入れ開口部を有し、前記第2のグラフト受入れ開口部は各々、管状グラフトを挿通状態で受け入れる、請求項21記載のマルチコンポーネント型血管内人工器官システム。
【請求項23】
マルチコンポーネント型血管内人工器官を形成する方法であって、
a.第1の拡張可能な人工器官を用意する工程を有し、前記第1の拡張可能な人工器官は、
(i)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた第1の拡張可能なステントと、
(ii)前記内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共に前記第1のステントに取り付けられた第1のメンブレンとを有し、前記第1のメンブレンは、第1のグラフト受入れ開口部を有し、
b.前記第1の拡張可能な人工器官から間隔を置いて位置した第2の拡張可能な人工器官を用意する工程を有し、前記第2の拡張可能な人工器官は、
(i)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた第2の拡張可能なステントと、
(ii)前記内部ルーメンを横断方向に横切って延びると共に前記第2のステントに取り付けられた第2のメンブレンとを有し、前記第2のメンブレンは、第2のグラフト受入れ開口部を有し、
c.内部ルーメンを構成する内面及び外面を備えた管状グラフトを用意する工程を有し、
d.前記管状グラフトを、流体を前記管状グラフト中へ差し向ける前記第1のグラフト受入れ開口部及び前記第2のグラフト受入れ開口部に通す工程を有する、方法。
【請求項24】
血管内人工器官であって、
(a)内部ルーメン、遠位端部及び近位端部を備えたステントを有し、前記遠位端部は、開口部を有し、前記近位端部は、前記遠位端部の前記開口部と反対側に2つの開口部を有し、
(b)前記近位端部の前記開口部の各々を横切って延びる穿刺可能なメンブレンを有する、血管内人工器官。
【請求項25】
請求項24記載の血管内人工器官と、前記遠位端部の前記開口部を貫通して延びると共に前記近位端部のところで前記メンブレンのうちの1つを穿刺可能に貫通して延びる少なくとも1つの管状グラフトとの組合せであって、前記近位端部のところで前記管状グラフトと前記ステントとの間に流体シールが形成されている、組合せ。
【請求項26】
血管内人工器官を形成する方法であって、
a.内部ルーメン、遠位端部及び近位端部を備えた拡張可能なステントを用意する工程を有し、前記遠位端部は、開口部を有し、前記近位端部は、前記遠位端部の前記開口部と反対側に2つの開口部を有し、
b.穿刺可能なメンブレンを用意する工程を有し、
c.前記メンブレンを前記近位端部の前記開口部の各々を横断方向に横切って前記ステントに取り付ける工程を有する、方法。
【請求項27】
血管内人工器官であって、
(a)遠位端部、近位端部及び前記端部を貫通する開口部を備えた拡張可能なステントを有し、
(b)前記開口部内で前記ステントの前記遠位端部に取り付けられた第1のグラフトを有し、前記第1のグラフトは、前記第1のグラフトを貫通して延びる内部ルーメンを有し、
(c)前記開口部内で前記ステントの前記近位端部に取り付けられていて、前記第1のグラフトから間隔を置いて位置する第2のグラフトを有し、前記第2のグラフトは、前記第2のグラフトを貫通して延びる少なくとも2つの内部ルーメンを有し、
(d)前記第2のグラフトの前記内部ルーメンの各々を横断方向に横切って延びるメンブレンを有する、血管内人工器官。
【請求項28】
請求項27記載の血管内人工器官と、少なくとも2つの管状人工器官との組合せであって、前記管状人工器官の各々は、前記メンブレンの各々をそれぞれ穿刺可能に貫通して延びる、組合せ。
【請求項29】
血管内人工器官を形成する方法であって、
a.遠位端部、近位端部及び前記端部を貫通する開口部を備えた拡張可能なステントを用意する工程と、
b.内部ルーメンが貫通して延びる第1のグラフトを用意する工程と、
c.少なくとも2つの内部ルーメンが貫通して延びる第2のグラフトを用意する工程と、
d.メンブレンを用意する工程と、
e.前記第1のグラフトを前記開口部内で前記ステントの前記遠位端部に取り付ける工程と、
f.前記第2のグラフトを前記第1のグラフトから間隔を置いた状態で前記開口部内で前記ステントの前記近位端部に取り付ける工程と、
g.前記メンブレンを前記第2のグラフトの前記内部ルーメンの各々を横断方向に横切って取り付ける工程とを有する、方法。
【請求項30】
血管内人工器官であって、
(a)遠位端部、近位端部及び内部ルーメンを備えた拡張可能なステントと、
(b)管状グラフトを前記ルーメン内で前記ステントに密封可能に取り付ける手段とを有する、血管内人工器官。
【請求項31】
前記手段は、前記ステントによって支持されていて、前記ルーメンを横切って延びるメンブレンから成り、前記メンブレンは、少なくとも1つの管状グラフトを挿通状態で密封可能に受け入れるグラフト受入れ部材を有する、請求項30記載の血管内人工器官。
【請求項32】
前記手段は、管状グラフトに結合された拡張可能なフォームから成る、請求項30記載の血管内人工器官。
【請求項33】
前記手段は、ポリマー材料から成り、前記ポリマー材料は、前記ステントの前記ルーメン及び前記管状グラフトに被着された一次物質と二次物質との反応生成物から成り、それにより、前記管状グラフトと前記ステントとの間に密封取付け部が形成される、請求項30記載の血管内人工器官。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2007−500571(P2007−500571A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532790(P2006−532790)
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/014016
【国際公開番号】WO2004/103219
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(505424055)ボストン サイエンティフィック リミテッド (17)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/014016
【国際公開番号】WO2004/103219
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(505424055)ボストン サイエンティフィック リミテッド (17)
【Fターム(参考)】
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