説明

グラフトコポリマー

本発明は、無水マレイン酸と主鎖ポリマーの反応生成物を含むグラフトコポリマーであって、前記グラフトコポリマーが0.50〜5.0重量%の間の無水マレイン酸を含むとともに(190℃、2.16kgで)50dg/分を上回るMFIを有し、前記主鎖ポリマーがポリオレフィンおよびエチレンと炭素原子数3〜8のα−オレフィンのコポリマーからなる群から選択され、グラフトコポリマー鎖の25%超が鎖末端不飽和を有するグラフトコポリマーに関する。これらのグラフトポリマーは、例えば、高分子量ポリマーの押出における加工助剤として適する。本発明は、無水マレイン酸をポリマーにグラフトする方法であって、同方向回転二軸スクリュー押出機のポリマー充填加圧部分に無水マレイン酸およびラジカル開始剤を注入しつつ、この押出機内でエチレンポリマーを加熱し下方剪断することによりエチレンポリマーを溶融させる工程と、無水マレイン酸をグラフトするのに十分な時間にわたり押出機内でこのポリマーと無水マレイン酸を混合する工程とを含み、モノクロロベンゼン中で240℃で測定した場合、ラジカル開始剤が1秒を上回る半減期(t1/2)を有する有機過酸化物である方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、無水マレイン酸と主鎖ポリマーの反応生成物を含むグラフトコポリマーであって、前記グラフトコポリマーの0.50〜4.0重量%の間が無水マレイン酸を含むとともにこのコポリマーが190℃および2.16kgで測定して50dg/分を上回るMFIを有し、前記主鎖ポリマーがポリオレフィンおよびエチレンと炭素原子数3〜8のα−オレフィンのコポリマーからなる群から選択されるグラフトコポリマーに関する。
【0002】
こうしたグラフトコポリマーは、例えば、油潤滑剤のためのイミド化コポリマーを製造する方法における中間生成物として米国特許第5,075,383号明細書から知られている。上述したMFIを有するグラフトコポリマーは高分子量ポリマーとの混合物中で加工助剤としても利用してよい。
【0003】
加工助剤としての既知のグラフトコポリマーの欠点は、高分子量ポリマーおよびその加工助剤から製造された部品の表面に既知のグラフトコポリマーが移行する傾向があることである。
【0004】
本発明の目的は、グラフトポリマーが混合される相手のポリマーに結合され得るグラフトコポリマーを提供し、よって表面に移行するより低い傾向を与えることである。
【0005】
この問題はグラフトコポリマー鎖の25%超が鎖末端不飽和を有するので解決される。
【0006】
25%を上回る鎖末端不飽和を有するグラフトポリマーは鎖末端不飽和を介した化学架橋によって高分子量ポリマーに容易に結合され得る。本発明のグラフトポリマーの利点は、高分子量ポリマーへの結合が他の官能基のために利用できる無水マレイン酸基の量を減らさないことである。
【0007】
本発明における鎖末端不飽和は、NMRによって測定したとき、コポリマー鎖当たりのビニル基、ビニリデン基、イソブテニル基およびシス−2ブテニル基の合計数として定義される。ビニル鎖末端は、鎖末端官能化および後の重合反応における挿入に飽和鎖末端より反応性であることが一般に認められている。あるいは、ブテニル不飽和を含有するベータ水素は硫黄加硫プロセスのためにより反応性である。従って、鎖末端不飽和の組み合わせは好ましい。
【0008】
本発明によるグラフトポリマーは、EPDMの硫黄硬化中に鎖末端不飽和を介してグラフトポリマーがEPDMに結合されるので、高分子量を有するEPDMの加工における興味深い特定の加工助剤である。
【0009】
本発明によるグラフトポリマーは、VI改善剤、分散剤および酸化防止剤、油添加剤および油添加剤を含有する油組成物の製造における中間体生成物として用いることも可能である。
【0010】
本発明は、無水マレイン酸をコポリマーにグラフトする方法であって、同方向回転二軸スクリュー押出機のポリマー充填加圧部分に無水マレイン酸およびラジカル開始剤を注入しつつ、この押出機内でエチレンポリマーを加熱し下方剪断することによりエチレンポリマーを溶融させる工程と、無水マレイン酸をグラフトするのに十分な時間にわたり押出機内でこのポリマーと無水マレイン酸を混合する工程とを含む方法に更に関する。こうした方法は、例えば、米国特許第4,762,890号明細書から知られている。
【0011】
米国特許第4,762,890号明細書には、無水マレイン酸をポリマーにグラフトする方法であって、同方向回転二軸スクリュー押出機内でポリマーを加熱し下方剪断することによりポリマーを溶融させる工程と、押出機のポリマー充填加圧部分に無水マレイン酸およびラジカル開始剤を注入する工程と、無水マレイン酸をポリマーにグラフトするのに十分な時間にわたり押出機内でポリマーと無水マレイン酸を混合する工程とを含む方法が記載されている。無水マレイン酸およびラジカル開始剤は、好ましくは、押出機に注入する前に溶媒系内で混合される。グラフトポリマーの揮発分除去は、好ましくは、押出機の1つ以上の減圧部分において起きる。
【0012】
問題は、既知の方法が、高いMFIと無水マレイン酸のある量および25%を上回る鎖末端不飽和の量とを兼ね備える生成物に結局なっていないことである。
【0013】
この問題は、モノクロロベンゼン中で240℃で測定した場合、前記ラジカル開始剤が1秒を上回る半減期(t1/2)を有する有機過酸化物である点で本発明により解決される。
【0014】
モノクロロベンゼン中で240℃で測定した場合、1秒を上回る半減期(t1/2)を有する有機過酸化物は、例えば、それぞれTrigonox311およびTrigonox301という商品名で市販されている3,3,5,7,7−ペンタメチル1,2,4−トリオキセパンおよび3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキソナンである。
【0015】
モノクロロベンゼン中で240℃で測定した場合、1秒を上回る半減期(t1/2)を有する有機ヒドロ過酸化物は、例えば、それぞれTrigonox M、Trigonox KおよびTrigonox Aという商品名で市販されているジイソプロピルベンゼンモノヒドロ過酸化物、クミルヒドロ過酸化物およびt−ブチルヒドロ過酸化物である。
【0016】
モノクロロベンゼン中で240℃で測定した場合、1秒を上回る半減期(t1/2)を有する有機過酸化物または有機ヒドロ過酸化物により、50dg/分を上回るMFI、0.50〜4.0重量%の間の無水マレイン酸および25%を上回る鎖末端不飽和を有する下方剪断されたグラフトコポリマーを得ることが可能である。
【0017】
250℃〜290℃の間の温度で第1の反応域において無水マレイン酸および有機過酸化物の合計量の第1の半分を注入し、250℃〜320℃の間の温度で第2の反応域において無水マレイン酸および有機過酸化物の合計量の第2の半分を注入することにより、50〜100%の間の鎖末端不飽和を得ることが可能である。
【0018】
無水マレイン酸は、好ましくは、溶融物としてあるいはアセトンなどの溶媒中の室温溶液としてその純粋形態で投入される。過酸化物は、好ましくは、高度純度鉱油中で溶液として扱われるが、その純粋な形態で、または低沸点溶媒中の溶液としても投入され得る。
【0019】
本発明は本発明によるグラフトコポリマーを含むゴム部品に更に関する。混合され高分子量ポリマー上で硬化された本発明によるグラフトコポリマーを含む部品の利点は、部品を高速で加工することが可能であるが、部品の表面へのグラフトポリマーの移行の問題がなく、それでもなお良好な機械的特性を有することである。
【0020】
[用いられたハードウエア]
同方向回転二軸スクリュー押出機:ZSK4048D
押出機に装備されたもの:
−溶融部分
−第1の反応域
−第2の反応域
−真空域
ゴムフィーダー:K−tron S210
MZA注入:2×注入装置
過酸化物注入:2×注入装置
【0021】
[実施例]
[実施例1]
グラフト化および下方剪断プロセスは両方の反応域において同時に行われる。グラインダー−フィーダー兼用機を用いることによりKeltan3200A(76kg/モルのMnを有するDSMの商用EPMグレード)を押出機に投入した。EPMが溶融域を通過するとき、溶融温度は、適切なスクリュー速度および第1の反応域における下方剪断およびグラフト化プロセスを開始する設計によって約265℃で確立された。この域で、1.35重量%のMAHおよび0.25重量%のTrigonox311を注入によって溶融物に添加した。第2の反応域において、1.35重量%のMAHおよび0.25重量%のTrigonox311を再び注入した。第2の反応域の始めにおける溶融温度は300℃であった。最後の工程において、溶融物を真空に供して、残留過酸化物分解生成物および未反応無水マレイン酸を除去する。得られたポリマー(ポリマーI)のMnは20kg/モルであった。(190℃、2.16kgでの)MFIは200dg/分であった。ポリマー上にグラフトされた無水マレイン酸レベル2.0重量%をIRによって定量化した。
【0022】
[比較例A]
比較ポリマーAを以下の手順により製造した。エチレンとプロピレンを共重合するチーグラーナッタ重合プロセスを介してベースポリマーを得た。15kg/モルの分子量および48重量%のエチレンレベルを有するこのコポリマーをヘキサン異性体混合物中で68重量%溶液として溶解させ、加圧容器内で窒素下で170℃に加熱した。15分間隔で2回、1.35重量%の無水マレイン酸および0.4重量%の過酸化ジクミルを激しい攪拌下の反応器に添加した。ヘキサンおよび反応残留物の真空蒸発によってポリマーを冷却溶液から単離し、2.0重量%の無水マレイン酸および16kg/モルの分子量を有する無水マレイン酸グラフトコポリマー(ポリマーA)をもたらした。
【0023】
[不飽和のNMRによる決定]
1HスペクトルをBruker DRX500NMR分光分析計で記録した。サンプルを100℃でCClに溶解させた。
【0024】
ポリマーIおよびポリマーAをNMR測定に供して、鎖末端不飽和の量を決定した。
【0025】
ポリマーIにおいて、不飽和からの種々の信号を観察した。ポリマーAにおいて、方法の検出限界にある不飽和の非常に低いレベルが見られる。表1は見られた不飽和の概要を示している。
【0026】
【表1】

【0027】
低い粘度(50dg/分を上回るMFI)を有する米国特許第5,078,353号明細書で示されたすべての実施例は溶媒中でグラフト化されており(例えば、比較ポリマーA)、それは、米国特許第5,075,383号明細書で記述されたすべての中間体無水マレイン酸グラフトコポリマーが25%より遙かに低い鎖末端不飽和を有することを意味することに留意されたい。
【0028】
グラフト化が押出機内で行われた米国特許第5,078,383号明細書における唯一の実施例は実施例IIである。最終生成物の粘度は23.008cStであり、それは約45kg/モルの分子量および(190℃、2.16kgでの)約3dg/分のMFIに相当する。
【0029】
[実施例2]
実施例1下で記載されたのと類似の実験を繰り返したが、ラジカル開始剤としてクミルヒドロ過酸化物を利用した。反応域における温度分布は、それぞれ2計量点で275℃と309℃であった。グラフト化学の化学量論および真空条件を同じにしておいた。回収されたポリマー(ポリマーII)は14kg/モルであった。(190℃、2.16kgでの)MFIは360dg/分であった。ポリマー上にグラフトされた無水マレイン酸レベル1.0重量%はIRによって定量化した。グラフト化効率はポリマーIに比べて低いが、ポリマーIIは本発明の範囲の一部である。低いグラフト化効率は、ラジカル開始剤のヒドロ過酸化物の特性に起因する、より低い活性ラジカル効率によって容易に説明され得る。C原子100,000個当たりの不飽和の数は113であった。
【0030】
[比較例B]
実施例1に関するようなポリマーとグラフト化および下方剪断装置を安定なプロセス条件下で到達される溶融温度の調節と合わせて用いて、米国特許第5,078,353号明細書に記載された過酸化物2,5−ジメチル−ヘクス−3−イン−2,5−ビス−t−過酸化ブチルの分解窓に適合させた。減速したスクリュー速度で、211℃の第2の反応域の始めにおける溶融温度を測定した。未反応生成物のガス抜きを、真空域を介して行った。押出機ヘッド内の溶融物の最終圧縮は最終溶融温度298℃を与えた。
【0031】
得られた無水マレイン酸グラフトポリマーは、(190℃、2.16kgで)4.8dg/分のメルトフローインデックス(MFI)、0.06重量%のゲルレベルおよびIR法によって測定された1.95重量%の無水マレイン酸官能レベルを有する透明淡黄色ポリマーであった。C原子100,000個当たりの不飽和の数は35であった。
【0032】
[比較例C]
実験1下で記載された作業を繰り返したが、ラジカル開始剤として米国特許第5,078,353号明細書で開示された2,5−ジメチル−ヘキサ−3−イン−2,5−ビス−t−過酸化ブチルを利用した。温度分布および化学量論を同じにしておき、36dg/分の(190℃、2.16kgでの)MFIを有するポリマーをもたらした。ポリマー上にグラフトされた無水マレイン酸レベル0.6重量%をIRによって定量化した。明らかに、こうした非効率的なグラフト化収率および低すぎるMFIは本発明の範囲を逸脱している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水マレイン酸と主鎖ポリマーの反応生成物を含むグラフトコポリマーであって、前記グラフトコポリマーが0.50〜5.0重量%の間の無水マレイン酸を含むとともに(190℃、2.16kgで)50dg/分を上回るMFIを有し、前記主鎖ポリマーがポリオレフィンおよびエチレンと炭素原子数3〜8のα−オレフィンのコポリマーからなる群から選択されるグラフトコポリマーにおいて、前記グラフトコポリマー鎖の25%超が鎖末端不飽和を有することを特徴とするグラフトコポリマー。
【請求項2】
鎖末端不飽和鎖のレベルが50〜100%の間である請求項1に記載のグラフトコポリマー。
【請求項3】
前記主鎖ポリマーがエチレンとプロピレンのコポリマーである請求項1に記載のグラフトコポリマー。
【請求項4】
エチレンおよびプロピレンがそれぞれ20〜80重量%の間および80〜20重量%の間の量で存在する請求項3に記載のグラフトコポリマー。
【請求項5】
MFIが(190℃、2.16kgで)100dg/分を上回る請求項1に記載のグラフトコポリマー。
【請求項6】
無水マレイン酸をポリマーにグラフトする方法であって、同方向回転二軸スクリュー押出機のポリマー充填加圧部分に無水マレイン酸およびラジカル開始剤を注入しつつ、前記押出機内でエチレンポリマーを加熱し下方剪断することにより前記エチレンポリマーを溶融させる工程と、
前記無水マレイン酸をグラフトするのに十分な時間にわたり前記押出機内で前記ポリマーと前記無水マレイン酸を混合する工程とを含む方法において、モノクロロベンゼン中で240℃で測定した場合、前記ラジカル開始剤が1秒を上回る半減期(t1/2)を有する有機過酸化物であることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記有機過酸化物がTrigonox311またはTrigonox301である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のグラフトコポリマーを含むゴム部品。
【請求項9】
添加剤または添加剤の中間体として請求項1〜5のいずれか一項に記載のグラフトポリマーを含む油溶液。

【公表番号】特表2010−519341(P2010−519341A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549380(P2009−549380)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001227
【国際公開番号】WO2008/101647
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】