説明

グラフト化フッ素ポリマーを含む複合ポリマーマトリクスを連続繊維に含浸させる方法

(a)少なくとも一種のカルボン酸極性官能基がグラフトされた少なくとも一種のフッ素化ポリマーと、(b)任意成分としての少なくとも一種の非グラフト化フッ素化ポリマーとを含むポリマーマトリクスで連続繊維を被覆することを特徴とする連続繊維の含浸方法と、この方法で得られる複合繊維と、その使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)少なくとも一種のカルボン酸極性官能基がグラフトされた少なくとも一種のフッ素ポリマーと、任意成分としての(b)少なくとも一種の非グラフト化フッ素ポリマーとを含むポリマーマトリクスで連続繊維を被覆して、連続繊維を含浸する方法に関するものである。
本発明はさらに、この方法で得られる複合繊維と、その使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複合材料は極めて多くの用途で金属を代替可能な多くの機能上の利点(軽量、機械強度および耐薬品性、形態の自由度)を有している材料で、研究が集中している。
【0003】
近年では航空機または自動車の種々の部品を複合繊維を用いて製造している。優れた熱機械強度と耐薬品性とを有する複合繊維は、材料に機械強度を与える骨格を形成するフィラメント強化材と、応力を分散させ(曲げ強度または圧縮強度を与え)、材料に耐化学性と形状とを与える上記フィラメント強化材を結合・被覆するマトリクスとから成る。
【0004】
被覆繊維から複合材料製の部品を製造する方法は種々あり、例えば、接触成形、吹付け成形、レイアップ成形または低圧成形がある。
【0005】
中空部品を製造する一つの方法はフィラメントワインディング法で、この方法では乾燥繊維に樹脂を含浸し、被製造部品に合った形状を有する、骨格を形成するマンドレル上に上記繊維を巻き付けた後、巻き付けて得られた部品を熱硬化する。
【0006】
このフィラメントワインディング法で用いる現在の被覆組成物は熱硬化性ポリマーを含むポリマーマトリクスか、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)またはポリフェニルスルホン(PPSU)等の熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリクスを有する。
【0007】
この中で熱可塑性樹脂は熱成形が容易で、種々の形状を有する複合材料部品を製造できるという利点を有するが、この被覆材料はコスト的に問題があるため、その使用は制限される。さらに、上記被覆材料は200℃以下では溶融できないため、加工に問題が生じる。また、上記被覆材料は複合材料の凝固に高温度を必要とし、高いエネルギーを必要とし、工程の経済性に問題がある。
【0008】
本発明者は、多くの実験をした結果、上記熱可塑性ポリマーの代わりにガラス転移温度が100℃以下の半結晶熱可塑性ポリマーにナノチューブ、特にカーボンナノチューブを混合することによって公知方法よりも経済的に連続繊維を被覆でき、航空および自動車用途で必要な適切な機械特性、特に高温クリープ強度を与えることができるということを見出した。
【0009】
しかし、フッ素ポリマーはそれが接着する連続繊維との相溶性に問題がある。フッ素ポリマーと連続繊維との界面に凝集力がないため、ポリマーマトリクスが応力を受けた時に顕微鏡スケールで弱い所が生じる。さらに、フッ素ポリマー中へのナノチューブの分散性は必ずしも十分ではないため、ナノチューブの凝集体が形成され、複合材料にとって望ましい特性が損なわれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、航空機、航空宇宙または自動車業界の部品の製造で用いるのに最適な機械特性を有する均一性に優れかつ凝集性(cohesifs)に優れた複合繊維の経済的な製造方法に対するニーズが依然としてある。
本発明者は、必要に応じて非グラフト化フッ素化ポリマーおよび/またはナノチューブ、特にカーボンナノチューブと混合した、少なくとも一種のカルボン酸極性官能基をグラフトしたフッ素化ポリマーを被覆材料として使用することによって上記ニーズを満足させることができるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の対象は、(a)少なくとも一種のカルボン酸極性官能基がグラフトされた少なくとも一種のフッ素化ポリマーと、(b)任意成分としての少なくとも一種の非グラフト化フッ素化ポリマーとを含むポリマーマトリクスで連続繊維を被覆することを特徴とする連続繊維の含浸方法にある。
本発明の別の対象は、この方法で得られる複合繊維にある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で「〜」という表現は両限界値を含む。
本発明方法は連続繊維の含浸方法に関するものである。
上記繊維の構成材料の例としては下記が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
(1)延伸ポリマー繊維、特に下記材料をベースにしたもの:ポリアミド、例えばポリアミド6(PA−6)、ポリアミド11(PA−11)、ポリアミド12(PA−12)、ポリアミド6,6(PA−6,6)、ポリアミド4,6(PA−4,6)、ポリアミド6,10(PA−6,10)またはポリアミド6,12(PA−6,12)、ポリアミド/ポリエーテルブロックコポリマー(ペバックス(Pebax、登録商標))、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリエステル、例えばポリヒドロキシアルカノエートおよびデュポン(DU PONT)社から商品名ハイトレル(Hytrel、登録商標)で市販のポリマー、
(2)炭素繊維、
(3)ガラス繊維、特にE、RまたはS2ガラス繊維、
(4)アラミド繊維(Kevlar(登録商標))、
(5)ホウ素繊維、
(6)シリカ繊維、
(7)天然繊維、例えば亜麻、麻またはサイザル、
(8)上記の混合物、例えばガラス繊維と炭素繊維とアラミド繊維との混合物。
【0013】
本発明で用いる被覆組成物は、特にカルボン酸極性官能基がグラフトされた少なくとも一種のフッ素化ポリマー(以下、簡単に、グラフト化フッ素化ポリマー)を含むポリマーマトリクスである。
【0014】
このグラフト化フッ素化ポリマーは、例えば少なくとも一種のカルボン酸または無水カルボン酸官能基を有する少なくとも一種のカルボン酸極性モノマーをフッ素化ポリマーにグラフトして得ることができる。
【0015】
具体的には、このグラフト化フッ素化ポリマーは下記(a)〜(d)を含む方法で調製できる:(a)フッ素化ポリマーと、カルボン酸または無水カルボン酸官能基を有する極性モノマーとを例えば押出機またはミキサーで好ましくは溶融状態で混合し、(b)必要に応じて、この混合物を顆粒、粉末、フィルムまたはシートにし、(c)この混合物に、場合によっては酸素の非存在下で(例えばポリエチレン袋の中で)光子線または電子線を1〜15Mradで照射して極性モノマーをフッ素化ポリマーにグラフトし、(d)必要に応じてフッ素化ポリマーと反応しなかった残留極性モノマーを除去する。この種の調製方法は下記文献に記載されている。
【特許文献1】欧州特許出願第1,484,346号公報
【0016】
グラフト化フッ素化ポリマーの製造で使用可能なフッ素化ポリマーの例としては下記が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
(1)ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、好ましくはα型のもの、
(2)フッ化ビニリデンと例えばヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン(VF3)およびテトラフルオロエチレン(TFE)とのコポリマー、
(3)トリフルオロエチレン(VF3)のホモポリマーおよびコポリマー、
(4)フルオロエチレン/プロピレン(FEP)コポリマー、
(5)エチレンとフルオロエチレン/プロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ぺルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)またはヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー、
(6)上記の混合物。
これらのポリマーのいくつかはアルケマ社から商品名カイナー(Kyner、登録商標)で市販されている。
【0017】
本発明の一つの好ましい実施例では、グラフト化フッ素化ポリマーの製造で用いるフッ素化ポリマーはVDFホモポリマー(PVDFともよばれる)である。
カルボン酸官能基を有する極性モノマーとしては、特に、2〜20個、特に4〜10個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸とジカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリル琥珀酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、x−メチルビシクロ[2,2,1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、ウンデシレン酸、およびこれらの無水物が挙げられる。
【0018】
従って、グラフト化フッ素化ポリマーはこれらのモノマーの少なくとも一種から得ることができる。フッ素化ポリマーは無水マレイン酸がグラフトされるのが好ましい。
グラフト化フッ素化ポリマーの製造で用いるフッ素化ポリマーと極性モノマーとの重量比率は通常90:10〜99.9:0.1である。
このようなグラフト化フッ素化ポリマーは特にアルケマ社から商品名カイナー(Kynar、登録商標)ADX 710、711、720または721で市販されている。
【0019】
本発明で用いられるポリマーマトリクスは、上記のグラフト化フッ素化ポリマー以外に、少なくとも一種の非グラフト化フッ素化ポリマー、特に上記のフッ素化ポリマーの中から選択できるものを含むことができる。
本発明の一つの好ましい実施例では、このポリマーが存在する場合、それは好ましくは少なくとも50重量%のVDF単位を含むVDFホモポリマー(PVDF)またはVDF/HFPコポリマーである。
【0020】
好ましい非グラフト化フッ素化ポリマーは射出成形または押出し成形に適したグレードのもの、好ましくは細管レオメターを用いて100s-1の剪断速度で230℃で測定した粘度が100Pa.s〜2000Pa.s、さらに好ましくは300Pa.s〜1200Pa.sの範囲のものである。PVDFの例は、カイナー(Kynar、登録商標)710、711または720(射出成形グレード)またはカイナー(Kynar、登録商標)740、760、50HDおよび400HD(押出しグレード)で市販されている。VDF/HFPコポリマーの例はカイナー(Kynar、登録商標)2800および3120〜50の名称でアルケマ社から市販されている。
【0021】
グラフト化フッ素化ポリマーとポリマーマトリクスとの重量比は5〜100%、好ましくは10〜50%にすることができる。
フッ素化ポリマーとグラフト化フッ素化ポリマーとを粉末状態で混合するか、配合後に造粒し、顆粒を粉砕することができる。
【0022】
ポリマーマトリクスは、上記のグラフト化フッ素化ポリマー、および任意成分としての非グラフト化フッ素化ポリマーの他に、少なくとも一種の強化剤、特に下記の中から選択されるものを含むことができる:周期表のIIIa、IVaおよびVa族元素の中から選択される少なくとも一つの化学元素のナノチューブ、カーボンブラック、ガラス繊維、ホウ素繊維、シリカ繊維、アラミド繊維、延伸ポリマー繊維(特にポリアミド、ポリオレフィンまたはポリエステル繊維)および/または天然繊維、例えば、亜麻、麻および/またはサイザルおよびこれらの混合物。
【0023】
本発明ではナノチューブを用いるのが好ましい。このナノチューブは炭素、ホウ素、リンおよび/または窒素をベースにすることができ(ホウ化物、窒化物、炭化物、リン化物)、例えば窒化炭素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、リン化ホウ素、窒化リンまたは窒化ホウ素炭素で構成することができる。本発明ではカーボンナノチューブ(以下、CNT)を用いるのが好ましい。
【0024】
本発明で使用可能なナノチューブは単一壁、二重壁または多重壁型にすることができる。二重壁ナノチューブは非特許文献に記載の方法に従って製造でき、多重壁ナノチューブは特許文献2に記載の方法に従って製造できる。
【非特許文献1】Flahaut et al. in Chem. Com.(2003),1442
【特許文献2】国際特許第03/02456号公報
【0025】
ナノチューブは一般に平均直径が0.1〜200nm、好ましくは0.1〜100nm、さらに好ましくは0.4〜50nm、さらに好ましくは1〜30nmで、長さは0.1〜10μmであるのが有利である。長さ/直径比は10以上、大抵は100以上であるのが好ましい。比表面積は例えば100〜300m2/gで、見掛け密度は特に0.05〜0.5g/cm3、さらに好ましくは0.1〜0.2g/cm3にすることができる。多重壁ナノチューブは例えば5〜15枚、さらに好ましくは7〜10枚のシートを含むことができる。
【0026】
粗カーボンナノチューブの例としては特にアルケマ(ARKEMA)社から商品名グラフィストレングス(Graphistrength、登録商標)C100で市販のものが挙げられる。
ナノチューブは、本発明の方法で用いる前に精製および/または酸化および/または粉砕および/または官能化することができる。
【0027】
ナノチューブの粉砕は特に高温または低温で行なうことができ、ボールミル、ハンマーミル、パグミル、ナイフミル、ガスジェットミルや、絡み合ったナノチューブ網の寸法を縮小できるその他任意の粉砕設備で公知の方法を用いて実施できる。この粉砕はガスジェット粉砕、特にエアジェットミルで行なうのが好ましい。
【0028】
粗ナノチューブまたは粉砕済みナノチューブの精製は硫酸の溶液を用いて洗浄することで製造プロセスで生じる可能性のある残留無機および金属不純物をナノチューブから除去することで行なうことができる。ナノチューブの硫酸に対する重量比は特に1:2〜1:3にすることができる。精製操作は90〜120℃の温度で例えば5〜10時間行なうことができる。この操作の後に精製ナノチューブを水で洗浄し、乾燥する段階を行なうのが有利である。
【0029】
ナノチューブの酸化は0.5〜15重量%のNaOCl、好ましくは1〜10重量%のNaOClを含む次亜塩素酸ナトリウム溶液と接触させて行なうのが有利である。ナノチューブの次亜塩素酸ナトリウムに対する重量比は例えば1:0.1〜1:1にする。この酸化は60℃以下の温度、好ましくは室温で数分〜24時間行なうのが有利である。この酸化操作の後に酸化したナノチューブを濾過および/または遠心分離、洗浄および乾燥する段階を行なうのが有利である。
【0030】
ナノチューブの官能化はナノチューブの表面に反応性単位、例えばビニルモノマーをグラフトして行なうことができる。ナノチューブの構成材料を酸素を含まない無水媒体中で900℃以上で熱処理してその表面から酸素化基を除去した後に、ラジカル重合開始剤として用いる。従って、特にPVDFまたはポリアミド中の分散を容易にするために、カーボンナノチューブの表面でメチルメタクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレートを重合することができる。
【0031】
本発明では、粗ナノチューブ、必要に応じて粉砕したナノチューブ、すなわち、酸化も精製も官能化もせず、且つその他の任意の化学的処理をしていないナノチューブを用いるのが好ましい。
ナノチューブはポリマーマトリクスの重量の0.5〜30%、好ましくは0.5〜10%、さらに好ましくは1〜5%にすることができる。
ナノチューブが存在する場合には、それとグラフト化フッ素化ポリマー、任意成分として存在する非グラフト化フッ素化ポリマーとを一般的な装置、例えば二軸押出機またはコニーダを用いて混合するのが好ましい。この方法では、一般にポリマー顆粒をナノチューブと溶融混合する。
【0032】
変形例では、溶剤中の溶液にしたポリマー中に任意の適当な手段によってナノチューブを分散することができる。この場合、特定の分散システムまたは特定の分散剤を使用して分散を本発明の一つの有利な実施例に従って改善することができる。
本発明方法は超音波またはロータ−ステータシステムによってポリマーマトリクス中にナノチューブを分散する予備段階を含むことができる。
【0033】
このようなロータ−ステータシステムは特にシルバーソン(Silverson)社から商品名Silverson(登録商標)L4RTで市販されている。別のタイプのロータ−ステータシステムがイケベルケ(Ika-Werke)社から商品名Ultra-Turrax(登録商標)で市販されている。
さらに別のロータ−ステータシステムにはコロイドミル、解膠タービンおよびロータ−ステータタイプの高せん断ミキサー、例えばイケベルケ(Ika-Werke)社またはアドミックス(Admix)社から市販されている機器が含まれる。
【0034】
分散剤は特に下記(a)〜(k)からなる群の中から選択できる可塑剤の中から選択できる:
(a)ヒドロキシ安息香酸(1〜20個の炭素原子を含む直鎖のアルキル基が好ましい)、ラウリン酸、アゼライン酸またはペラルゴン酸のホスフェートアルキルエステル、
(b)フタレート、特にジアルキルまたはアルキルアリールフタレート、特に各々が1〜12個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖のアルキル基を有するアルキルベンジルフタレート、
(c)アジペート、特にジアルキルアジペート、
(d)セバケート、特にジアルキルセバケート、特にジオクチルセバケート(
特にポリマーマトリクスがフルオロポリマーを含む場合)、
(e)グリコールベンゾエートまたはグリセリルベンゾエート、
(f)ジベンジルエーテル、
(g)クロロパラフィン、
(h)プロピレンカーボネート、
(i)スルホンアミド、特にポリマーマトリクスがポリアミド、特にアリールスルホンアミド(アリール基は1〜6個の炭素原子を含む少なくとも一種のアルキル基で置換されていてもよい)、例えば1〜20個の炭素原子を含む好ましくは直鎖の少なくとも一種のアルキル基でN−置換またはN,N−二置換されていてもよいベンゼンスルホンアミドおよびトルエンスルホンアミド、
(j)グリコール、
(k)上記の混合物。
【0035】
変形例では、分散剤は少なくとも一種のアニオン性親水性モノマーと、少なくとも一種の芳香族環を含む少なくとも一種のモノマーとを含むコポリマー、例えば特許文献3に記載のコポリマーにすることができ、分散剤とナノチューブとの重量比は0.6:1〜1.9:1である。
【特許文献3】フランス国特許第2,766,106号公報
【0036】
別の実施例では、分散剤はビニルピロリドンのホモポリマーまたはコポリマーにすることができ、ナノチューブと分散剤の重量比は好ましくは、この場合は0.1〜2以下である。
さらに別の実施例では、ナノチューブを少なくとも一種の化合物Aと接触させることでポリマーマトリクス中のナノチューブの分散を改善することができる。この化合物Aは種々のポリマー、モノマー、可塑剤、乳化剤、カップリング剤および/またはカルボン酸の中から選択でき、2つの成分(ナノチューブと化合物A)を固体状態で混合するか、混合物を微粉状にして混合することができる(必要な場合には溶剤除去後に)。
【0037】
本発明で用いるポリマーマトリクスは可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、着色剤、衝撃改質剤、静電防止剤、難燃剤、潤滑剤およびこれらの混合物の中から選択される少なくとも一種の添加剤をさらに含むことができる。
【0038】
連続繊維とポリマーマトリクスとの容積比は50%以上、好ましくは60%以上であるのが好ましい。
【0039】
繊維をポリマーマトリクスで被覆する方法は種々あり、特にマトリクスの物理的形状(微粉状または多少液状)および繊維の物理的形状に応じて選択できる。繊維はそのままの形または一方向に揃えた繊維糸の形または織成して繊維を二方向に揃えたファブリックの形で使用できる。ポリマーマトリクスが粉末の場合には繊維の被覆を流動床含浸法で行なうのが好ましい。ポリマーマトリクスを溶融状態で収容した含浸浴中に通して繊維の被覆を行うことは上記ほどではないが好ましい変形例である。ポリマーマトリクスは繊維の周りで凝固し、予備含浸された繊維ストリップまたは予備含浸ファブリックから成る繊維半製品と成る。これは巻き取ることができる。
【0040】
次に、この半製品を所望複合材料部品の製造で用いる。同一または異なる組成物の互いに異なる繊維予備含浸ファブリックを積層してブロックまたは積層材料に形成でき、また、他の変形例では、熱形成プロセスで加工できる。繊維ストリップはフィラメントワインディング法で使用でき、略無限の長さの中空部品にすることができる。この方法では、製造される部品の形状を有するマンドレル上に繊維を巻き付ける。いずれの場合でも、繊維を固定し、フィラメントワインディング法では繊維のストリップを取り付けるための領域を作るために、ポリマーマトリクスを局部的に溶融し、凝固して最終部品にする段階を含む。
【0041】
別の変形例では、ポリマーマトリクスから押出またはカレンダー加工法で例えば厚さが約100μmのフィルムを作り、このフィルムを繊維の2つのマットの間に入れ、得られた組立体をホットプレスし、繊維の含浸と複合材料の製造とを行なうことができる。
【0042】
上記で得られた複合繊維は高弾性(一般に50GPa以上)および高強度(23℃で200MPa以上の引張強度で表される)によって種々の用途で注目されている。
【0043】
本発明の一つの対象は、特にロケットまたは航空機の機首、翼またはキャビン、オフショアフレキシブルパイプ用強化材、自動車の車体部品、エンジンシャーシまたは自動車用支持部品または橋および道路の建設分野での骨組部品の製造での上記複合繊維の使用にある。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
実施例1
カーボン繊維を用いたフィラメントワインディング法
VDFのホモポリマー(アルケマ社の製品カイナー(Kynar、登録商標)710)と、無水マレイン酸をグラフトしたフッ素化ポリマー(アルケマ社の製品カイナー(Kynar、登録商標)ADX 120)とを、PVDFとグラフト化フッ素化ポリマーとの重量比率を75:25にして混合した。次いで、カーボンナノチューブ(CNT)(アルケマ社の製品グラフィストレングス(Graphistrength、登録商標)C100)をポリマー混合物の重量の2%重量の比率でこの混合物に添加した。
得られた複合マトリクスを用いて連続炭素繊維を流動床中で被覆した。得られた予備含浸した繊維をガイド装置を用いて積層複合ブロックの製造プレスへ送り、予備含浸ファブリックをホットプレス(約180〜190℃の温度)し、複合材料を凝固させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも一種のカルボン酸極性官能基がグラフトされた少なくとも一種のフッ素化ポリマーと、(b)任意成分としての少なくとも一種の非グラフト化フッ素化ポリマーとを含むポリマーマトリクスで連続繊維を被覆することを特徴とする、連続繊維の含浸方法。
【請求項2】
連続繊維が下記(1)〜(7)の中から選択される請求項1に記載の方法:
(1)延伸ポリマー繊維、特に下記材料をベースにした延伸ポリマー繊維:ポリアミド、例えばポリアミド6(PA−6)、ポリアミド11(PA−11)、ポリアミド12(PA−12)、ポリアミド6,6(PA−6,6)、ポリアミド4,6(PA−4,6)、ポリアミド6,10(PA−6,10)またはポリアミド6,12(PA−6,12)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリエステル、
(2)炭素繊維、
(3)ガラス繊維、特にE、RまたはS2ガラス繊維、
(4)アラミド繊維、
(5)ホウ素繊維、
(6)シリカ繊維、
(7)天然繊維、例えば亜麻、麻またはサイザルおよびこれらの混合物。
【請求項3】
グラフト化フッ素化ポリマーがフッ素化ポリマーに少なくとも一種のカルボン酸極性モノマーをグラフトして得られる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
フッ素化ポリマーが下記をから成る請求項3に記載の方法:
(1)ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、好ましくはα型のもの、
(2)フッ化ビニリデンと例えばヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロエチレン(VF3)およびテトラフルオロエチレン(TFE)とのコポリマー、
(3)トリフルオロエチレン(VF3)のホモポリマーおよびコポリマー、
(4)フルオロエチレン/プロピレン(FEP)コポリマー、
(5)エチレンとフルオロエチレン/プロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ぺルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)またはヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー、
(6)上記の混合物。
【請求項5】
フッ素化ポリマーがVDFホモポリマー(PVDF)である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
カルボン酸極性モノマーが下記の中から選択される請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法:2〜20個、特に4〜10個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリル琥珀酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、x−メチルビシクロ[2,2,1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、ウンデシレン酸およびこれらの無水物。
【請求項7】
非グラフト化フッ素化ポリマーが請求項4に記載のフッ素化ポリマーの中から選択される請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
非グラフト化フッ素化ポリマーがVDFのホモポリマー(PVDF)またはVDF/HFPコポリマーである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
周期表のIIIa、IVaおよびVa族元素の中から選択される少なくとも一つの化学元素のナノチューブ、カーボンブラック、ガラス繊維、ホウ素繊維、シリカ繊維、アラミド繊維、延伸ポリマー繊維および/または天然繊維、例えば、亜麻、麻および/またはサイザルおよびこれらの混合物の中から選択される少なくとも一種の強化剤をさらに含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
強化剤が窒化炭素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、リン化ホウ素、窒化リンまたは窒化ホウ素炭素から成るナノチューブを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ナノチューブがカーボンナノチューブである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ナノチューブがポリマーマトリクスの重量の0.5〜30重量%、好ましくは0.5〜10重量%である請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
ポリマーマトリクスに対する連続繊維の容量比が50%以上、好ましくは60%以上である請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法で得られる複合繊維。
【請求項15】
ロケットまたは航空機の機首、翼またはキャビン、オフショアフレキシブルパイプの被覆材料、自動車の車体部品、エンジンシャーシまたは自動車用支持部品、橋および道路の建設分野での骨組部品の製造での請求項14に記載の複合繊維の使用。

【公表番号】特表2010−531396(P2010−531396A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514070(P2010−514070)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051186
【国際公開番号】WO2009/007616
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】