説明

グラブボックス

【課題】急制動時に乗員の体が衝突した際の衝撃を緩和でき、安価に製造でき、軽量であり意匠性に優れるグラブボックスを提供する。
【解決手段】グラブボックスのボックス本体1とドアパネル5とを樹脂で形成し、ボックス本体1のなかでドアパネル5に対面する部分であるパネルインナ壁部2を、ドアパネル5に向けて隆起する隆起部20と、ドアパネル5の逆側に向けて陥没する陥没部21とが交互に配列する波板状にする。波板状のパネルインナ壁部2は、衝突時に変形して衝撃を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に取り付けられるグラブボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
グラブボックスは、車両用内装品の一種である。グラブボックスは、一般に、箱状をなし自動車に取り付けられるボックス本体と、ボックス本体に取り付けられボックス本体の車室内側の表面を覆うドアパネルと、を持ち、ボックス本体の内部に種々の荷物を収納する。グラブボックスは、一般に、インストルメントパネルのなかで助手席の前側に相当する位置に取り付けられる。
【0003】
ところで、急制動時に乗員の体が車両進行方向前側に飛び出すと、乗員の体(例えば膝など)がグラブボックスに衝突する場合がある。この衝撃を吸収するために、グラブボックスにエネルギ吸収材を設ける技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に紹介されているグラブボックスは、樹脂製のボックス本体と樹脂製のドアパネルとの間隙に、ボックス本体およびドアパネルとは別体のエネルギ吸収材が配設されている。急制動時に乗員の体がグラブボックスに衝突すると、エネルギ吸収材が変形して衝撃を吸収する。
【0005】
ところでエネルギ吸収材は、ボックス本体およびドアパネルとは別体であり、一般には金属製である。このため、エネルギ吸収材を設けることで、グラブボックスの質量が増大する。したがってこの技術によると、近年要求されている車両の軽量化に対応できない問題があった。また、ボックス本体およびドアパネルとは別体のエネルギ吸収材を必要とするために、特許文献1に紹介されているグラブボックスは部品点数が多く、製造コストが高くなる問題もあった。
【0006】
エネルギ吸収材にかえて樹脂製の破断リブをボックス本体に一体成形する技術もある(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に紹介されているグラブボックスによると、急制動時に乗員の体が衝突すると、破断リブが破断して衝撃を吸収する。また、破断リブはボックス本体と一体成形され、かつ樹脂製であるため、特許文献1に紹介されているグラブボックスに比べて軽量である。
【0007】
しかし、この種のグラブボックスにおいては、ボックス本体のなかで破断リブが設けられている部分と、破断リブが設けられていない部分とで、肉厚が大きく異なる。このため、グラブボックスにおける破断リブの裏面側には、ヒケが発生する。よって特許文献2に紹介されているグラブボックスは、意匠性に劣る問題がある。
【0008】
また、破断リブはボックス本体からドアパネルに向けて突出する。このため、ボックス本体を成形する成形型にはリブを成形するためのスライドコアが必要になる。破断リブを持つグラブボックスの一例を模式的に表す分解斜視図を図4に示し、図4に示すグラブボックスを図4中A−A位置で切断した様子を模式的に表す断面図を図5に示す。
【0009】
図4に示すグラブボックスにおいて、ボックス本体100は樹脂製であり上方に開口する略箱状をなす。ボックス本体100の車室内側(図4中後側)表面は、樹脂製のドアパネル150で覆われている。ボックス本体100のなかで、ドアパネル150に対面する壁部(パネルインナ壁部120)には、ドアパネル150に向けて突起する破断リブ125(図4中点線で示す)が形成されている。破断リブ125は樹脂製であり、ボックス本体100に一体成形されている。このため、パネルインナ壁部120の表面127を成型するための成形型の型開き方向(以下、第1の型開き方向aと呼ぶ)と、パネルインナ壁部120と対面する前壁部130の表面137を成型するための成形型の型開き方向(以下、第2の型開き方向bと呼ぶ)とは、破断リブ125の突出方向に応じた方向に設定する必要がある。破断リブ125の突出方向が、第1の型開き方向および第2の型開き方向と一致すれば、同一の成形型の型面でボックス本体100の表面を成型できる。
【0010】
ところで、グラブボックスは内部に荷物を収容するための装置である。したがってグラブボックスには、比較的大きな剛性が要求される。グラブボックスの剛性を高めるためには、破断リブ125を、パネルインナ壁部120およびドアパネル150と直交する(あるいは直角に近い角度で交わる)方向に突出させるのが有効である。しかしこの場合には、図5に示すように、破断リブ125の突出方向が、第1の型開き方向aと第2の型開き方向bとの両方とは一致しない。したがってこの場合には、ボックス本体100を成型する成形型を、ボックス本体100の内面170を成型するための成形型と、パネルインナ壁部120の表面127を成型するための成形型と、前壁部130の表面137を成型するための成形型と、の3つに型割する必要がある。そして、パネルインナ壁部120の表面127を成型するための成形型と、前壁部130の表面137を成型するための成形型との一方をスライドコアにする必要があった。
【特許文献1】特開平7−237504号公報
【特許文献2】特開平7−61307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、急制動時に乗員の体が衝突した際の衝撃を緩和でき、安価に製造でき、軽量であり意匠性に優れるグラブボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明のグラブボックスは、箱状をなし自動車に取り付けられる樹脂製のボックス本体1と、ボックス本体1に取り付けられボックス本体1の車室内側の表面を覆う樹脂製のドアパネル5と、を持ち、ボックス本体1のなかでドアパネル5に対面するパネルインナ壁部2は、ドアパネル5に向けて隆起する隆起部20と、ドアパネル5の逆側に向けて陥没する陥没部21とが交互に配列する波板状をなすことを特徴とする。
【0013】
本発明のグラブボックスは、下記の(1)〜(2)の少なくとも一方を備えるのが好ましい。
(1)上記隆起部20の頂部200と上記陥没部21の頂部210とは湾曲している。
(2)上記パネルインナ壁部2は、部分的に肉厚の薄い薄肉部を持つ。
【発明の効果】
【0014】
本発明のグラブボックスにおけるパネルインナ壁部は、波板状をなすため、変形可能である。このため本発明のグラブボックスにおけるパネルインナ壁部は、急制動時に乗員の体が衝突すると(以下、衝突時と略する)、変形して衝撃を吸収する。また、パネルインナ壁部はボックス本体の一部であり、ボックス本体を成形する際に、ボックス本体の他の壁部(一般壁部と呼ぶ)と同時に成形される。このため、本発明のグラブボックスは安価に製造できる。さらに、パネルインナ壁部は波板状をなすため、隆起部や陥没部の一部がパネルインナ壁部およびドアパネルとは直交しない方向に隆起(または陥没)していても、充分な剛性を確保できる。このため、一般壁部のなかでパネルインナ壁部と対面する部分の表面と、パネルインナ壁部の表面と、を同じ成形型で成型できる。よって、本発明のグラブボックスは、破断リブを持つ従来のグラブボックスとは異なり、成形型にスライドコアを要さないために非常に安価に製造できる。
【0015】
上記(1)を備える本発明のグラブボックスにおけるパネルインナ壁部は、隆起部の頂部と陥没部の頂部とが湾曲しているため、衝突時に容易に変形する。このため、上記(1)を備える本発明のグラブボックスは、衝突時により確実に衝撃を吸収できる。
【0016】
上記(2)を備える本発明のグラブボックスにおけるパネルインナ壁部は、衝突時に、薄肉部を起点として容易に変形する。このため、上記(2)を備える本発明のグラブボックスは、より確実に衝撃を吸収できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のグラブボックスを図面を基に説明する。
【実施例】
【0018】
(実施例1)
実施例1のグラブボックスは、上記(1)を備える。実施例1のグラブボックスを模式的に表す分解斜視図を図1に示す。実施例1のグラブボックスを図1中A−A位置で切断した様子を模式的に表す断面図を図2に示す。以下、実施例1において上、下、左、右、前、後とは図1に示す上、下、左、右、前、後を指す。
【0019】
実施例1のグラブボックスは、ボックス本体1とドアパネル5とを持つ。ボックス本体1は、上方に開口する箱状をなす。ボックス本体1は、パネルインナ壁部2と一般壁部3とを持つ。パネルインナ壁部2は後述するドアパネル5に対面する壁部であり、一般壁部3はそれ以外の壁部である。
【0020】
パネルインナ壁部2は波板状である。詳しくは、パネルインナ壁部2は、ドアパネル5に向けて隆起する隆起部20とドアパネル5の逆側に陥没する陥没部21とが上下方向に配列する横波板状をなす。隆起部20と陥没部21とは、それぞれ左右方向に延びている。パネルインナ壁部2の肉厚は略一定である。図2に示すように、隆起部20の頂部である隆起頂部200は湾曲している。陥没部21の頂部である陥没頂部210もまた湾曲している。パネルインナ壁部2の肉厚は略一定(2mm)である。一般壁部3は略平板状である。一般壁部3の肉厚もまた略一定(2mm)である。
【0021】
ドアパネル5は板状をなし、ボックス本体1のパネルインナ壁部2の表面を覆う。ドアパネル5の肉厚は略一定(2.5mm)である。
【0022】
実施例1のグラブボックスにおけるパネルインナ壁部2は、波板状である。このため、パネルインナ壁部2は衝突時に変形して、衝撃を吸収する。また、実施例1のグラブボックスでは、ボックス本体1の一部であるパネルインナ壁部2自身が変形して衝撃吸収するため、質量の大きなエネルギ吸収材を必要としない。よって実施例1のグラブボックスは、軽量化できる。また、ボックス本体1とは別体のエネルギ吸収材を必要としないため、グラブボックスの部品点数を低減できる。よって、実施例1のグラブボックスは安価に製造できる。
【0023】
さらに、実施例1のグラブボックスは、パネルインナ壁部2自身の変形によって衝撃を吸収するため、破断リブを必要としない。このため、パネルインナ壁部2には肉厚が大きく異なる部分がない。よって実施例1のグラブボックスでは、ボックス本体1にヒケが生じない。よって、実施例1のグラブボックスは意匠性に優れる。さらに、実施例1のグラブボックスでは、パネルインナ壁部2の肉厚が略一定であるため、ボックス本体1に生じるヒケをより確実に防止できる。よって、実施例1のグラブボックスは、より一層意匠性に優れる。
【0024】
さらに、実施例1のグラブボックスにおけるパネルインナ壁部2は、波板状をなすため、隆起部20や陥没部21の一部がパネルインナ壁部2およびドアパネル5とは直交しない方向に隆起(または陥没)していても、充分な剛性を確保できる。このため、一般壁部3のなかでパネルインナ壁部2と対面する部分(前壁部30)の表面と、パネルインナ壁部2の表面と、を同じ成形型で成型できる。よって、実施例1のグラブボックスは、成形型にスライドコアを要さないために、非常に安価に製造できる。なお、実施例1のグラブボックスでは、前壁部30の表面およびパネルインナ壁部2の表面(すなわちボックス本体1の表面)を成形する成形型の型開き方向は図2中矢印c方向であり、ボックス本体1の内面を成形するための成形型の型開き方向は図2中矢印d方向である。パネルインナ壁部2の隆起部20と陥没部21とは、この型開き方向cおよびdに対してアンダーカットにならない形状に形成されている。
【0025】
(実施例2)
実施例2のグラブボックスは、上記(1)および(2)を備える。実施例2のグラブボックスは、パネルインナ壁部の形状以外は実施例1のグラブボックスと同じである。実施例2のグラブボックスを図1中A−A位置と同位置で切断した様子を模式的に表す要部拡大断面図を図3に示す。
【0026】
実施例2のグラブボックスにおけるパネルインナ壁部2は、隆起頂部200が他の部分よりも薄肉である。すなわち、実施例2のグラブボックスにおける隆起頂部200は、上記(2)の薄肉部に相当する。隆起頂部200の肉厚w1は1.5mmであり、陥没頂部210の肉厚w2は2.0mmである。隆起頂部200と陥没頂部210とを連絡する部分の肉厚は、陥没頂部210から隆起頂部200にかけて徐変している。
【0027】
実施例2のグラブボックスにおけるパネルインナ壁部2は薄肉部(すなわち隆起頂部200)を持つ。薄肉部は、薄肉部以外の部分に比べて変形し易い。このため、実施例2のグラブボックスにおけるパネルインナ壁部2は、衝突時に薄肉部を起点として変形する。したがって、実施例2のグラブボックスによると、パネルインナ壁部2がより確実に変形するため、より確実に衝撃を吸収できる。
【0028】
ところで、隆起頂部200は、衝突時にドアパネル5を介して衝撃が直接伝達する部分である。実施例2のグラブボックスでは、薄肉部がこの隆起頂部200からなるため、パネルインナ壁部2は衝突時により一層確実に変形する。したがって、実施例2のグラブボックスは、より一層確実に衝撃を吸収する。
【0029】
なお、実施例2のグラブボックスでは薄肉部が隆起頂部200からなるが、薄肉部の位置はこれに限定されない。パネルインナ壁部2の形状や要求される意匠性に応じて、パネルインナ壁部2の他の部分を薄肉部にしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1のグラブボックスを模式的に表す分解斜視図である。
【図2】実施例1のグラブボックスを図1中A−A位置で切断した様子を模式的に表す断面図である。
【図3】実施例2のグラブボックスを図1中A−A位置と同位置で切断した様子を模式的に表す断面図である。
【図4】従来のグラブボックスを模式的に表す分解斜視図である。
【図5】従来のグラブボックスを図4中A−A位置で切断した様子を模式的に表す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1:ボックス本体 2:パネルインナ壁部 3:一般壁部
5:ドアパネル 20:隆起部 21:陥没部
200:隆起頂部 210:陥没頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状をなし自動車に取り付けられる樹脂製のボックス本体と、該ボックス本体に取り付けられ該ボックス本体の車室内側の表面を覆う樹脂製のドアパネルと、を持ち、
該ボックス本体のなかで該ドアパネルに対面するパネルインナ壁部は、該ドアパネルに向けて隆起する隆起部と、該ドアパネルの逆側に向けて陥没する陥没部とが交互に配列する波板状をなすことを特徴とするグラブボックス。
【請求項2】
前記隆起部の頂部と前記陥没部の頂部とは湾曲している請求項1に記載のグラブボックス。
【請求項3】
前記パネルインナ壁部は、部分的に肉厚の薄い薄肉部を持つ請求項1に記載のグラブボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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