説明

グリコロニトリルの合成のための方法

水性溶媒中で実質的に純粋なグリコロニトリルを調製する方法が、シアン化水素およびホルムアルデヒドを反応させることによって提供される。ホルムアルデヒド供給流れはシアン化水素と反応させる前に加熱され、結果として、他の方法によって得られるよりも不純物がわずかの、特に未反応ホルムアルデヒドが少ないグリコロニトリル水溶液が生じる。この方法は、グリコロニトリルをグリコール酸へ酵素的に変換する前に(仮にあったとしても)反応後精製の必要がほとんどないグリコロニトリル水溶液の製造を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年12月22日に出願された米国仮特許出願第60/638127号明細書の利益を主張する。
【0002】
本発明は、ホルムアルデヒドおよびシアン化水素からグリコロニトリルを合成する化学方法に関する。より具体的には、実質的に純粋なグリコロニトリルを製造する方法が、予熱ホルムアルデヒドをシアン化水素と反応させることによって提供される。
【背景技術】
【0003】
グリコロニトリル(HOCH2CN、CAS登録番号107−16−4)は、ニトリラーゼ活性またはニトリルヒドラターゼおよびアミダーゼ活性の組合せを有する触媒を使用するグリコール酸に酵素的に変換されうるα−ヒドロキシニトリルである。グリコール酸(HOCH2CO2H、CAS登録番号は79−14−1)は、カルボン酸のα−ヒドロキシ酸ファミリーの最も単純なメンバーである。その特性は、井戸改修、皮革工業、およびオイルやガス工業、洗濯および繊維工業における使用、およびスキンクリームのようなパーソナルケア製品の成分としての使用を含む広範囲の消費者および工業用途のために理想的である。グリコール酸は、さまざまな工業(乳および食品加工器具洗浄剤、家庭および工業用洗浄剤、工業洗浄剤[輸送器具、石造、プリント基板、ステンレス鋼ボイラーおよび加工器具、冷却塔/熱交換器用]、および金属加工[金属酸洗い、銅光沢、エッチング、電気メッキ、電気研磨用]における洗浄剤の主成分でもある。
【0004】
グリコロニトリルはアミノニトリルの調製における多用途の中間体でもあるが、アミノニトリルも同様に、アミノカルボン酸化合物の調製において有用である。例えば、米国特許公報(特許文献1)は、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)の製造のためのアミノニトリル前駆体の調製におけるグリコロニトリルの使用を開示し、米国特許公報(特許文献2)は、2−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HEIDA)の合成におけるグリコロニトリルの使用を開示している。EDTAおよびHEIDAは界面活性剤組成物の成分としてのキレート化剤として有用である。(特許文献3)は、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩の合成におけるグリコロニトリルの使用を記載している。また、グリコロニトリルは、米国特許公報(特許文献4)に開示されたグリシンへ変換されうるグリシノニトリルの前駆体として使用されうる。グリシンは加工肉および飲料における添加剤として、かつ市販の重要な除草剤、N−(ホスホノメチル)グリシンの原材料として広く使用され、また米国特許公報(特許文献5)に記載されている通り、その一般名グリホサートによって周知である。
【0005】
微生物触媒は、対応するアミドの中間生成はないニトリラーゼ(EC3.5.5.7)を使用し(式1)、または、ニトリルヒドラターゼ(NHase)が最初にニトリルをアミドに変換し、次いでアミドがその後にアミダーゼによって対応するカルボン酸に変換されるニトリルヒドラターゼ(EC4.2.1.84)とアミダーゼ(EC3.5.1.4)との酵素の組合せによって(式2)、ニトリル(例えば、グリコロニトリル)を直接、対応するカルボン酸(例えば、グリコール酸)に加水分解しうる。
【0006】
【化1】

【0007】
グリコール酸の酵素合成は、グリコロニトリルの実質的に純粋な形態を必要とする。ホルムアルデヒドおよびシアン化水素の水溶液を反応させることによってグリコロニトリルを合成する方法が以前に報告されている(米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、および米国特許公報(特許文献4)、式3)。
(3)HCN+HCHO → HOCH2CN
【0008】
ホルムアルデヒドの濃縮水溶液(例えば、商業的にホルマリンとして周知の37wt%溶液)は一般に、遊離ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒドのさまざまなオリゴマー(例えば、パラホルムアルデヒドおよびトリクスオキシメチレン)からなる。ホルムアルデヒドオリゴマーの存在は、グリコロニトリルへの全体的な変換に影響を及ぼしうる。したがって、ホルムアルデヒドオリゴマーをシアン化水素と反応させる前に供給流れにおいてより遊離したホルムアルデヒドへ変換するホルムアルデヒドを前処理する方法が、グリコロニトリルの収量を増加させ、オリゴマーから生成される望ましくない二次生成物の変換を減少させる。
【0009】
ヤコブソン(Jacobson)(米国特許公報(特許文献6))は、酸性化合物の存在下にシアン化水素およびホルムアルデヒドを反応させた後、減圧下の蒸留(約125℃下に行われる真空蒸留ステップ)によって純粋なグリコロニトリルを得る方法を開示している。反応物質は、好ましくは、「低温で」(すなわち、液体の形でシアン化水素を維持する26℃未満)で混合される。また、米国特許公報(特許文献6)には1)グリコロニトリルが周囲温度下に分解し、かつ2)塩基と接触したグリコロニトリルは周囲温度下に数時間以内に激しく分解する。ヤコブソンは、シアン化水素と反応させる前に濃縮水性ホルムアルデヒド供給の前処理を開示していない。
【0010】
セクストン(Sexton)(米国特許公報(特許文献7))は、ホルムアルデヒドがHCNの水溶液に供給されるグリコロニトリルを調製する方法を開示している。反応は「有効な還流または閉鎖圧力系により、100℃の高温を可能にする反応により」実行される。しかし、ヤコブソン(Jacobson)に記載されている通り、グリコロニトリルは室温下に分解する。100℃という高温で実行される反応は、結果としてグリコロニトリルの分解の増大をもたらすことが予想される。ヤコブソン(Jacobson)と同様、セクストン(Sexton)は、シアン化水素と反応させる前にホルムアルデヒドを前処理する方法を記載していない。
【0011】
クレン(Cullen)ら(米国特許公報(特許文献8))は、グリコロニトリルからイミノジアセトニオリルを製造する方法を開示している。本引例は、適切な酸および塩基により、ホルムアルデヒドのpHを約3超、好ましくは、約5−7、最も好ましくは、約5.5に維持することによって方法(バッチまたは連続的のいずれか)においてグリコロニトリルがいかに形成されうるかを記載している。次いで、ホルムアルデヒドは、約20〜80℃の温度範囲、好ましくは、約30℃下にシアン化水素と反応させ、グリコロニトリルを形成する。しかし、本実施例において示されている通り、クレン(Cullen)らで規定された条件内で実行される反応は、結果として反応時間の2時間後に大量の未反応ホルムアルデヒドをもたらす。
【0012】
上記の方法のすべてにより、二次生成物(不純物)の一部を除去する蒸留精製など一般的に大規模な加工ステップを必要とするグリコロニトリルの純度が得られる。未反応ホルムアルデヒドなどグリコロニトリルに存在する不純物の多くは、酵素触媒を不活性化することによるグリコール酸への酵素変換を阻害することが報告されている(本明細書で全体として参照により援用される、米国特許公報(特許文献9)、米国特許公報(特許文献10)、および米国特許公報(特許文献11))。
【0013】
解決すべき課題は、実質的に純粋な反応生成物を製造する条件下にホルムアルデヒドおよびシアン化水素を反応させることによってグリコロニトリルを製造する方法の欠如である。具体的には、未反応ホルムアルデヒド(グリコロニトリルをグリコール酸に変換する場合に酵素不活性化と関連した不純物の1つ)の量を削減し、反応後精製ステップの数を最小限に抑える方法が欠如していることである。
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,208,363号明細書
【特許文献2】米国特許第5,817,613号明細書
【特許文献3】フランス特許第1575475号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0040085号明細書
【特許文献5】米国特許第6,759,549号明細書
【特許文献6】米国特許第2,175,805号明細書
【特許文献7】米国特許第2,890,238号明細書
【特許文献8】米国特許第5,187,301号明細書
【特許文献9】米国特許第5,756,306号明細書
【特許文献10】米国特許第5,508,181号明細書
【特許文献11】米国特許第6,037,155号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(a)測定可能な時間に約90℃〜約150℃の温度に加熱される水性ホルムアルデヒドを供給する流れを提供するステップと、
(b)(a)の加熱された水性物を供給する流れをグリコニロトリル合成に適切な温度でシアン化水素を接触させ、それによってグリコロニトリルが製造されるステップと
を含むグリコロニトリルの調製方法が提供される。
【0016】
1つの実施形態において、本方法によって製造されるグリコロニトリルは回収される。
【0017】
水性ホルムアルデヒドを供給する流れが加熱される時間の量は、ポリマーアルデヒド不純物が、加熱水性流れをシアン化水素と反応させる前にモノマーホルムアルデヒドへ実質的に分解される限り変動しうる。1つの実施形態において、水性ホルムアルデヒドを供給する流れは、約10秒〜約24時間の時間、約90℃〜約150℃の温度に加熱される。別の実施形態において、加熱の期間は約30秒〜約6時間でありうる。この方法はさらに、NaOHまたはKOHなど塩基の触媒量の付加を含んで成り、高分子量ポリマーホルムアルデヒドの低分子量およびモノマーのホルムアルデヒドへの変換を加速させる。さらなる実施形態において、加熱ホルムアルデヒドは直ちに反応器に供給され、シアン化水素と反応される。
【0018】
加熱水性ホルムアルデヒドを供給する流れは、グリコロニトリル合成のために適切な温度でシアン化水素を前充填した反応室に直ちに供給される。1つの実施形態において、反応温度は、グリコロニトリル分解を最小限に抑えるために一般的に約70℃以下である。別の実施形態において、反応温度は約−20℃〜約70℃、好ましくは、約0℃〜約70℃、より好ましくは、約0℃〜約55℃、さらにより好ましくは、約10℃〜約30℃、かつ最も好ましくは、約20℃〜約25℃である。
【0019】
本発明の追加の実施形態は、約0.1wt%〜約15wt%メタノール、または約3wt%〜約8wt%メタノールをさらに含む水性ホルムアルデヒドを供給する流れを含む。この方法はさらに、グリコール酸を水性グリコロニトリルに添加し、グリコロニトリルのpHを7未満に維持するステップを含む。結果として生じる生成物は回収、単離、および/または精製されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
上記の課題は、他の方法によって得られるよりも不純物、特に未反応遊離ホルムアルデヒドが大幅に少ないグリコロニトリルを含む水溶液を製造する方法を提供することによって解決されている。具体的には、水性ホルムアルデヒドを供給する流れは、シアン化水素との反応前に加熱処理される。反応によりきわめて高いホルムアルデヒド変換および少ない付随不純物がもたらされる。
【0021】
濃縮水性ホルムアルデヒド溶液は一般的にモノマーホルムアルデヒド(反応のために所望の基質である「遊離ホルムアルデヒド」)およびホルムアルデヒドのオリゴマーからなる。ホルムアルデヒド供給流れの予熱は、結果として生じるグリコロニトリル生成物の純度を改善する。ホルムアルデヒドのシアン化水素との反応は温度制御され、グリコロニトリル分解を最小限に抑える。形成される反応生成物は、水性ホルムアルデヒドを供給する流れを予熱せずに得られる反応生成物と比べると、グリコロニトリルおよび大幅に少ない未反応ホルムアルデヒドを含む。
【0022】
結果として生じるグリコロニトリル溶液は(蒸留精製など)少ない反応後精製ステップを必要とし、グリコール酸の酵素合成など純度の一定レベルを必要とする使用に適切であるグリコロニトリルを製造する費用を削減する。また、グリコール酸の酵素合成に使用されるグリコロニトリル水溶液における未反応ホルムアルデヒドの量の削減は、酵素触媒の寿命(すなわち、リサイクル反応の数)を拡大する。これは触媒の生産性を改善し、グリコール酸を調製する費用を削減する。本発明は、精製なしに酵素変換のために直接使用されうるグリコロニトリル生成物をもたらし、グリコール酸を製造する費用を大幅に削減する。
【0023】
水性ホルムアルデヒド(濃度が約5wt%〜約70wt%、好ましくは、約20wt%〜約55wt%)は、約35℃〜約200℃、好ましくは、約90℃〜約150℃に加熱される。加熱水性ホルムアルデヒドを供給する流れは、グリコロニトリル合成に適切な温度でシアン化水素を前充填した反応室に直ちに供給される。本明細書で使用される「グリコロニトリル合成に適切な温度」という語は、シアン化水素および加熱処理ホルムアルデヒドを反応させるために適切な範囲の反応温度を記載するために使用される。1つの実施形態において、反応温度は、一般的にグリコロニトリルの分解を最小限に抑えるために約70℃以下である。別の実施形態において、反応温度は、約−20℃〜約70℃、好ましくは、約0℃〜約70℃、より好ましくは、約0℃〜約55℃、さらにより好ましくは、約10℃〜約30℃、かつ最も好ましくは、約20℃〜約25℃である。
【0024】
加熱水性ホルムアルデヒドおよびシアン化水素は、確実に1)シアン化水素がわずかに過剰であり(添加されたホルムアルデヒドの量と比べて少なくとも1%過剰、好ましくは、少なくとも10%過剰)、かつ2)全体的な反応温度がグリコロニトリル合成に適切な温度で維持される速度で反応混合物に添加される。グリコロニトリルの結果として生じる水溶液は相当に純粋であり(すなわち、未反応ホルムアルデヒドがあまりない)、反応後精製をあまり必要としない。
【0025】
別の実施形態において、形成される水性グリコロニトリル反応生成物は、グリコール酸への酵素変換前に反応後精製を必要としない。
【0026】
(定義)
本開示において、多くの用語および略語が使用される。以下の定義が、別段の規定がない限り適用される。
【0027】
本明細書で使用される「を含む」は、請求の範囲において言及された規定された特徴、整数、ステップ、または成分の存在を意味するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、成分、またはそれのグループの存在または付加を排除することはない。
【0028】
本明細書で使用される、使用される発明の成分または反応物質の量を修正する「約」という語は、例えば、現状で濃縮物製造または溶液使用のために使用される典型的な測定および液体処理手順を通じて、これらの手順における不注意による誤りを通じて、組成物を製造し、または方法を実行するなどために使用される成分の製造、供給源、または純度の差異を通じて生じる数量のばらつきを指す。「約」という語は、特定の初期混合物に由来する組成物に対する異なる平衡条件により異なる量をも包含する。「約」という語によって修正されているかどうかに関係なく、請求の範囲は、量の同等物を含む。1つの態様において、「約」という語は、記載された数値の20%以内、さらに好ましくは、5%以内を意味する。
【0029】
「グリコロニトリル」という語は「GLN」と略され、ヒドロキシアセトニトリル、2−ヒドロキシアセトニトリル、ヒドロキシメチルニトリル、およびCAS登録番号107−16−4の他のすべての同義語と同義である。
【0030】
「グリコール酸」という語は「GLA」と略され、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシエタン酸と同義であり、CAS登録番号79−14−1の他のすべての同義語である。本方法によって製造されるグリコール酸は、プロトン化したカルボン酸および/または対応するアンモニウム塩の形でありうる。
【0031】
本明細書で使用される「ホルムアルデヒド」という語は「FA」と略され、ギ酸アルデヒド、メチルアルデヒド、オキソメタンと同義であり、CAS登録番号50−00−0の他のすべての同義語である。市販のホルムアルデヒドは一般的にモノマーホルムアルデヒド(「遊離ホルムアルデヒド」)およびホルムアルデヒドのさまざまなオリゴマーからなる。本明細書で使用される「遊離ホルムアルデヒド」は、モノマーホルムアルデヒドを指す。
【0032】
「シアン化水素」という語は、青酸、シアン化水素酸、およびCAS登録番号200−821−6の他のすべての同義語である。
【0033】
本明細書で使用される「熱処理」、「加熱処理」、「ホルムアルデヒド供給流れの加熱」、「予熱ホルムアルデヒド」、および「加熱される水性ホルムアルデヒドを供給する流れ」という語は、ホルムアルデヒド水溶液をシアン化水素と反応させる前に測定可能時間、所定温度にかける方法を記載するために使用される。熱処理の温度および期間は、加熱ホルムアルデヒド供給流れにおけるモノマーホルムアルデヒドの量を最適化するために選択される。1つの実施形態において、水性ホルムアルデヒド溶液は、約35℃〜約200℃,好ましくは、約75℃〜約150℃、より好ましくは、約90℃〜約150℃、かつ最も好ましくは、約100℃〜約125℃の温度で、約10秒〜約24時間、好ましくは、約10秒〜約6時間、より好ましくは、約10秒〜約20分、かつ最も好ましくは、約2分〜約10分の測定可能な時間、加熱処理される。1つの実施形態において、塩基触媒の存在下、熱処理時間は約2分〜約10分である。加熱ホルムアルデヒド直ちに反応器に供給され、シアン化水素と反応される。
【0034】
本明細書で使用される「直ちに反応器に供給される」および「加熱ホルムアルデヒドを直ちに添加する」という語は、熱処理期間の終了とシアン化水素との反応の開始との時間、一般的に約24時間未満、好ましくは、約1時間未満、より好ましくは、約15分未満、最も好ましくは、約5分未満を記載するために使用される。場合により、熱処理期間の終了とシアン化水素反応の開始との間の時間は約24時間を上回りうる。
【0035】
(適切な反応条件)
本方法では、ホルムアルデヒドおよびシアン化水素を反応させることによって水性グリコロニトリルを製造する方法が記載される。ホルムアルデヒドはシアン化水素と反応させる前に加熱され、グリコロニトリルを製造する。ホルムアルデヒドの開始濃度は一般に約5wt%〜約70wt%の水溶液である。1つの実施形態において、ホルムアルデヒド供給流れは、約20wt%〜約55wt%ホルムアルデヒドからなる。別の実施形態において、ホルムアルデヒド供給流れは約37wt%ホルムアルデヒドからなる。ホルムアルデヒド供給流れは、場合により、約0.1wt%〜約15wt%(一般的に6−8wt%)メタノール(一般的に約37wt%溶液で存在する添加剤[すなわち、ホルマリン]として)から成りうる。
【0036】
塩基触媒(KOH、NaOH等)は、水性ホルムアルデヒドを供給する流れを加熱する前にホルムアルデヒド水溶液に添加されうる。本明細書で例示される通り、水酸化ナトリウムは、ホルムアルデヒド供給流れを加熱する前に水性ホルムアルデヒドを供給する流れに添加されうる。1つの実施形態において、加熱水性ホルムアルデヒドを供給する流れにおけるNaOH:ホルムアルデヒドのモル比は約1:50〜約1:2000である。別の実施形態において、加熱水性ホルムアルデヒドを供給する流れにおけるNaOH;HCHOのモル比は約1:100〜約1:2000である。
【0037】
ホルムアルデヒド供給流れは、測定可能な時間、約35℃〜約200℃の温度に加熱される。1つの実施形態において、ホルムアルデヒド供給流れは約75℃〜約150℃の温度に加熱される。別の実施形態において、ホルムアルデヒド供給流れは約90℃〜約150℃の温度に加熱される。さらに別の実施形態において、ホルムアルデヒド供給流れは約100℃〜約125℃の温度に加熱される。本明細書で使用される「測定可能な時間」という語は、ホルムアルデヒド供給流れが規定温度に過熱される時間の量を指示するために使用される。ホルムアルデヒドが加熱処理される時間の最適な長さは容易に決定されうるとともに、熱処理システムおよび反応器の特定のデザインと組合せて選択温度によって調節されうる。熱処理の長さは、加熱供給流れにおけるモノマーホルムアルデヒドの量を最大限にするように選択される。モノマーホルムアルデヒドはシアン化水素と反応し、実質的により少ない不純物(すなわち、未反応ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒドのポリマー形態と関連した不純物)を有するグリコロニトリル溶液を生成する。一般的に、熱処理期間は約10秒〜約24時間、好ましくは、約10秒〜約6時間、より好ましくは、約10秒〜約20分、かつ最も好ましくは、約2分〜約10分でありうる。1つの実施形態において、熱処理時間は塩基触媒の存在下に約2分〜約10分である。次いで、加熱ホルムアルデヒドは直ちに反応室に供給される。
【0038】
シアン化水素供給流れは一般的に反応室へのホルムアルデヒド添加量に対してシアン化水素のわずかなモル過剰を維持するのに十分な速度で添加される。1つの実施形態において、ホルムアルデヒドに対するシアン化水素のモル比は、少なくとも約1.01:1、好ましくは、約10:1以下である。別の実施形態において、ホルムアルデヒドに対するHCNのモル比は、約1.01:1、より好ましくは、約2:1以下である。さらなる実施形態において、ホルムアルデヒドに対するHCNのモル比は約1.05:1〜約1.15:1である。
【0039】
反応室の温度は、グリコロニトリル分解を最小限に抑えるために一般的に約70℃以下である。別の実施形態において、反応温度は、約−20℃〜約70℃、好ましくは、約0℃〜約70℃、より好ましくは、約0℃〜約55℃、さらにより好ましくは、約10℃〜約30℃、かつ最も好ましくは、約20℃〜約25℃である。
【0040】
大気圧はホルムアルデヒドおよびシアン化水素の反応を行うために十分であり、したがって約0.5〜約10大気圧(50.7kPa〜1013kPa)が好ましい。20,000kPa以上の高い圧力は必要に応じて使用されうるが、それによって得られる利点はおそらくかかる操作の費用増大を正当化しないであろう。
【0041】
グリコロニトリル合成反応室におけるpHは約3〜約10、好ましくは、約5〜約8である。
【0042】
本グリコロニトリル合成反応は連続的、バッチ、またはフェドバッチ様式で実行されうる。フェドバッチ反応は一般的に約10秒〜約24時間、好ましくは、約30分〜約8時間、より好ましくは、約0.5時間〜約4時間実行される。
【0043】
(分析方法)
いくつか例を挙げれば、沈殿、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GS)、質量分析(MS)、量的13C核磁気共鳴(NMR)、およびキャピラリー電気泳動(CE)を含むが、これらに限定されない、さまざまな分析方法が本方法において使用され、反応物質および生成物を分析することができる。
【0044】
(反応後回収、単離、および/または精製)
本方法では、遊離(モノマー)ホルムアルデヒドが大幅に少ないグリコロニトリルが製造される。1つの実施形態において、グリコロニトリルは、酵素的にグリコール酸へ変換される(一般的にグリコール酸アンモニウムの形で)前に追加の精製/単離/回収ステップを必要としない。別の実施形態において、本方法によって製造されるグリコロニトリルは、蒸留、結晶化、および溶媒抽出を含むが、これらに限定されない方法を使用して精製、単離、および/または回収されうる。
【0045】
(酸性条件下のグリコロニトリルの安定化)
1つの実施形態において、鉱酸(例えば、HCl、H2SO4、またはH3PO4)が、本発明によって得られるグリコロニトリル混合物に添加され、グリコロニトリルのpHを7未満に維持する(グリコロニトリルは塩基条件下に分解することが報告されている)。別の実施形態においては、グリコール酸が本方法によって得られるグリコロニトリル混合物に添加され、グリコロニトリルのpHを7未満に維持する。さらなる実施形態において、グリコール酸添加の量は、約6未満、好ましくは、約5未満、より好ましくは、約4未満、かつ最も好ましくは、約3.5未満のグリコロニトリルのpHを維持するために十分である。グリコール酸による安定化は、グリコロニトリルがその後に酵素触媒を使用してグリコール酸に変換される場合に好ましい実施形態である。この場合にpHを調節するグリコール酸の使用は、鉱酸の添加を回避し、ここで、グリコロニトリルのグリコール酸への変換とともに、鉱酸の存在および/または対応する鉱酸塩の製造は、グリコール酸生成物から鉱酸および/または対応する塩を除去する精製ステップを必要としうる。1つの実施形態において、酸安定化グリコロニトリル溶液のpHは、グリコロニトリルのグリコール酸への酵素変換(一般的にグリコール酸のアンモニウム塩の形で)前に塩基でより中性のpH範囲(すなわち、約6〜約8のpH)に調節される。
【0046】
(一般方法)
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために提供されている。当業者によって評価されるように、以下の実施例で開示された方法は、本発明の実施において十分に機能するために発明者によって発見された方法を表し、したがって、その実施のための好ましい様態であるとみなされうる。しかし、当業者は、本開示を踏まえて、開示され、かつ本発明の精神および範囲を逸脱せずに類似または同様の結果をさらに得る特定の実施形態において多くの変更がなされうることを評価する。
【0047】
すべての試薬および材料は、特に明記しない限り、アルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI))、DIFCOラボラトリーズ(Laboratories)(ミシガン州デトロイト(Detroit,MI))、GIBCO/BRL(メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg,MD))、またはシグマ/アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Sigma/Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis,MO))から入手した。
【0048】
明細書における略語は、測定単位、方法、特性、または化合物に以下の通り対応する。すなわち、「sec」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」または「hr」は時間を意味し、「cm」はセンチメートルを意味し、「mm」はミリメートルを意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「mM」はミリモルを意味し、「M」はモルを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「wt」は重量を意味し、「wt%」は重量パーセントを意味し、「g」はグラムを意味し、「d」はg/mLでの密度を意味し、「kPa」はキロパスカルを意味し、「ID」は内径を意味し、「OD」は外径を意味し、かつ「HPLC」は高性能クロマトグラフィーを意味する。
【0049】
(分析方法)
(HPLC分析)
反応生成物混合物を以下のHPLC法によって分析した。反応混合物のアリコート(0.01mL)を水1.50mLに添加し、HPLC(HPX 87Xカラム、30cm×7.8mm、0.01 NH2SO4移動相、50℃下、流量1.0mL/分、10μL注入体積、RI検出器、分析時間20分)によって分析した。アルドリッチ(Aldrich)から購入した市販のグリコロニトリルを使用して一連の濃度でのグリコロニトリルについて方法を較正した。
【0050】
(量的13C NMR分析)
量的13C NMRスペクトルを400MHzで作動するバリアン・ユニティー・イノバ(Varian Unity Inova)分光計(バリアン社(Varian Inc.))、カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto、CA))を使用して得た。D2O 0.5mLとともに反応生成物3.0mLを10mmNMR管に取ることによって試料を調製した。13C NMRスペクトルは一般的に100ppm、128Kポイント、および90度パルス(pw90=56dbのトランスミッタ出力で10.7マイクロ秒)で配置したトランスミッタで26kHzのスペクトル幅を使用して獲得された。最長の13C T1(23秒)は、GLNニトリル炭素と関連し、総リサイクル時間はこの値の10倍以上にセットされた(リサイクル遅延d1=240秒、捕捉時間=2.52秒)。360スキャンの信号加算平均は26.3時間の総実験時間を示した。核オーバーハウザー効果(NOE)は、捕捉時間(at)中のみ切断するワルツ(Waltz)変調1Hで開閉することによって抑制された。
【実施例】
【0051】
(比較例A)
(予熱0%のホルムアルデヒド)
52wt%のホルムアルデヒド水溶液(<1%メタノール、本願特許出願人、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE))およそ10.18gを水12.81gと混合し、混合物が透明な均一の液体溶液になるまで約40分間約76℃にスラリーを加熱した。溶液を周囲温度に冷却させ、均一の液体を残した。次いで、16.7wt%水性NaOH溶液0.14mLをホルムアルデヒド溶液に添加した。結果として生じる溶液(23wt%ホルムアルデヒド)1.56gを反応管に配置し、残りを連続的ホルムアルデヒド供給に使用した。
【0052】
攪拌器を備えた反応管を55℃で維持した油槽内に配置した。次いで、反応物質を各々連続的に約2.0時間にわたって反応管へ以下の通り注ぎ込んだ。
50wt%の水性HCN溶液(d=0.86g/mL)を4.41mL/時
23wt%の水性ホルムアルデヒド、上記(d=1.07g/mL)を7.00mL/時。
【0053】
約2.0時間後、供給を停止し、反応管を油槽から除去し、反応混合物を37wt%の水性HClを0.07mL付加して急冷した。
【0054】
図1は、質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す。13C NMRスペクトルは、δ48および119ppm前後で主なグリコロニトリル13C共鳴を示す。未反応ホルムアルデヒドにはδ80−90ppm前後、および未反応ホルムアルデヒド由来の他の副産物種にはδ60ppm前後の実質的な共鳴も認められる。
【0055】
(実施例1)
(予熱90%のホルムアルデヒド)
52wt%のホルムアルデヒド水溶液(<1%メタノール、本願特許出願人)およそ10.18gを水12.81gと混合し、混合物が透明な均一の液体溶液になるまで約40分間約76℃にスラリーを加熱した。溶液を周囲温度に冷却させ、均一の液体を残した。次いで、16.7wt%水性NaOH溶液0.16mLをホルムアルデヒド溶液に添加した。結果として生じる溶液(23wt%ホルムアルデヒド)1.56gを反応管に配置し、残りを連続的ホルムアルデヒド供給に使用した。
【0056】
攪拌器を備えた反応管を55℃で維持した油槽内に配置した。反応フラスコへの入口に直接先行するおよそ12インチ断面のホルムアルデヒド供給ライン(1/16’’OD(約1.6mm)×0.040’’ID(約1.02mm))を120℃に加熱し、次いで反応物質を各々連続的に約2.0時間にわたって反応管へ以下の通り注ぎ込んだ。
50wt%の水性HCN溶液(d=0.86g/mL)を4.41mL/時
23wt%の水性ホルムアルデヒド、上記(d=1.07g/mL)を7.00mL/時。
【0057】
約2.0時間後、供給を停止し、反応管を油槽から除去し、反応混合物を37wt%の水性HClを0.08mL付加して急冷した。
【0058】
図2は、質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す。再度、δ48および119ppm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴が確認される。しかし、未反応ホルムアルデヒドに対する図1で明らかなδ80−90ppm前後の共鳴は図2において著しく低下している。しかし、未反応ホルムアルデヒド由来の副産物に対するδ60ppm前後の共鳴が残存しているが、それはおそらく初期ホルムアルデヒド反応器装填による。
【0059】
(実施例2)
(予熱100%のホルムアルデヒド連続的供給)
52wt%のホルムアルデヒド水溶液(<1%メタノール、本願特許出願人)およそ10.18gを水12.81gと混合し、混合物が透明な均一の液体溶液になるまで約40分間約76℃にスラリーを加熱した。溶液を周囲温度に冷却させ、均一の液体を残した。次いで、16.7wt%水性NaOH溶液0.14mLをホルムアルデヒド溶液に添加した。結果として生じる溶液(23wt%ホルムアルデヒド)を連続的ホルムアルデヒド供給に使用した。
【0060】
攪拌器を備えた反応管に水3.4g中HCN0.18gの混合物を充填し、次いで55℃で維持した油槽内に配置した。反応フラスコへの入口に直接先行するおよそ12インチ断面のホルムアルデヒド供給ライン(1/16’’OD×0.040’’ID)を120℃に加熱し、次いで反応物質を各々連続的に約2.0時間にわたって反応管へ以下の通り注ぎ込んだ。
50wt%の水性HCN溶液(d=0.86g/mL)を4.41mL/時
23wt%の水性ホルムアルデヒド、上記(d=1.07g/mL)を7.67mL/時。
【0061】
約2.0時間後、供給を停止し、反応管を油槽から除去し、反応混合物を37wt%の水性HClを0.07mL付加して急冷した。
【0062】
図3は、質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す。δ48および119ppm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴が図3で明らかであるが、不純物のレベルは実質的に図1および図2で確認されるレベルから削減されている。
【0063】
(実施例3)
(予熱100%のホルムアルデヒド)
37wt%のホルムアルデヒド水溶液(10−15%メタノール、アクロス・オルガニクス(Acros Organics)、ニュージャージー州モリスプレーンズ(Morris Plains,NJ))およそ14.20gを水8.78gおよび16.7wt%の水性NaOH 0.14mLと混合した。結果として生じる溶液(23wt%ホルムアルデヒド)を連続的ホルムアルデヒド供給に使用した。
【0064】
攪拌器を備えた反応管に水3.4g中HCN0.18gの混合物を充填し、次いで55℃で維持した油槽内に配置した。反応フラスコへの入口に直接先行するおよそ12インチ断面のホルムアルデヒド供給ライン(1/16’’OD×0.040’’ID)sを120℃に加熱し、次いで反応物質を各々連続的に約2.0時間にわたって反応管へ以下の通り注ぎ込んだ。
50wt%の水性HCN溶液(d=0.86g/mL)を4.21mL/時
23wt%の水性ホルムアルデヒド、上記(d=1.07g/mL)を7.67mL/時。
【0065】
約2.0時間後、供給を停止し、反応管を油槽から除去し、反応混合物を37wt%の水性HClを0.07mL付加して急冷した。
【0066】
図4は、質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す。再び、δ48および119ppm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴が図4で明らかであるが、不純物のレベルは実質的に図1および図2で確認されるレベルから削減されている。図4は、実施例3において使用されたホルマリン供給からメタノールに対してδ49ppmでの共鳴も明らかに示す。
【0067】
(実施例4−8)
(予熱100%のホルムアルデヒド)
実施例4−8において、以下のグリコロニトリル合成手順を別々に5回反復した。
【0068】
16.7wt%の水性NaOH溶液およそ0.56mLを(7wt%〜8wt%のメタノールを含有する)37wt%のホルムアルデヒド水溶液218.0gに添加した。結果として生じる溶液を連続的ホルムアルデヒド供給ために使用した。
【0069】
磁気攪拌バーを備えた反応管に最初、水35.5g中HCN3.3gの混合物を充填し、より低い位置の攪拌プレートおよびラボジャックアセンブリの上部の20℃前後で維持した水槽内に配置した。反応フラスコへの入口に直接先行するおよそ36インチ断面のホルムアルデヒド供給ライン(1/8’’OD(約3.18mm)×0.085’’ID(約2.16mm))をホルムアルデヒド供給ラインの充填後に120℃に加熱し、加熱ホルムアルデヒド供給の流れを最初にホルムアルデヒド供給ラインの出口からの2相の流れを観察することによって確立した。ホルムアルデヒド供給ラインからの2相の流れの確立後、反応管を上げてホルムアルデヒド供給を直接、液体反応混合物へ導入した。次いで、攪拌プレート、水槽、およびラボジャックアセンブリを適宜に上げて反応混合物を提供し、反応温度を20−25℃前後に維持したが、これは氷および/またはドライアイスを外部水槽に定期的に添加することによって達成された。
【0070】
反応物質を各々連続的に約2.0時間にわたって反応管へ以下の通り注ぎ込んだ。
50wt%の水性HCN溶液(d=0.86g/mL)を82.4mL/時
37wt%の水性ホルムアルデヒド、上記(d=1.09g/mL)を92.7mL/時。
【0071】
2.0時間後、供給を停止し、反応管、水槽、攪拌プレート、およびラボジャックアセンブリを下げてホルムアルデヒド供給ラインを反応生成物から除去した。反応混合物を反応管から除去し、次いで70%グリコール酸(70%Glypure(登録商標))、本願特許出願人、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE))の水溶液1.3mLの添加によって急冷し、結果としてpH3でのグリコロニトリル生成物溶液が生じた。
【0072】
各々のグリコロニトリル反応生成物溶液を個別に濃縮し、過剰な未反応HCNおよびメタノールをホルムアルデヒドの市販供給源から除去した。濃縮ステップを60−70℃で外部油槽を使用して軽い加熱で真空下に実行した。
【0073】
各々の濃縮グリコロニトリル生成物溶液の重量を記録し、グリコロニトリル濃度をHPLCによって測定した。
【0074】
実施例4−8で使用した条件、および結果として生じるGLN収量が表1に報告されている。
【0075】
【表1】

【0076】
実施例4−8で製造された5つの濃縮グリコロニトリル生成物溶液を複合生成物試料へ複合し、量的13CNMR分析を複合試料で実行し、製造されたグリコロニトリルの純度を測定した。図5は、複合試料の13CNMRスペクトルを示す。量的13CNMR分析は、グリコロニトリル生成物の純度が複合試料において99.9%を上回ることを示した。
【0077】
(実施例9)
(予熱100%のホルムアルデヒド)
16.7wt%の水性NaOH溶液およそ0.27mLを(7%〜8wt%のメタノールを含有する)37wt%のホルムアルデヒド水溶液54.5gに添加した。結果として生じる溶液を連続的ホルムアルデヒド供給ために使用した。
【0078】
磁気攪拌バーを備えた反応管に最初、水10.3g中HCN0.29gの混合物を充填し、攪拌プレートの上部の25℃前後で維持した水槽内に配置した。反応フラスコへの入口に直接先行するおよそ12インチ断面のホルムアルデヒド供給ライン(1/8’’OD×0.085’’ID)をホルムアルデヒド供給ラインの充填後に150℃に加熱し、加熱ホルムアルデヒド供給の流れを最初にホルムアルデヒド供給ラインの出口からの2相の流れを観察することによって確立した。ホルムアルデヒド供給ラインからの2相の流れの確立後、ホルムアルデヒド供給ラインの末端を液体反応混合物へ直接配置した。反応温度を20−25℃前後に維持したが、これは氷および/またはドライアイスを外部水槽に定期的に添加することによって達成された。反応物質を各々連続的に約2.0時間にわたって反応管へ以下の通り注ぎ込んだ。
50wt%の水性HCN溶液(d=0.86g/mL)を7.02mL/時
37wt%の水性ホルムアルデヒド、上記(d=1.09g/mL)を7.67mL/時。
【0079】
2.0時間後、供給を停止し、ホルムアルデヒド供給ラインを反応生成物から除去した。反応混合物を反応管から除去し、次いで70%Glypure(登録商標)グリコール酸0.060mLの添加によって急冷し、結果としてpH3でのグリコロニトリル生成物溶液が生じた。
【0080】
図6は、質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す。
【0081】
(実施例10)
(予熱100%のホルムアルデヒド)
16.7wt%の水性NaOH溶液およそ0.40mLを(7%〜8%のメタノールを含有する)37wt%のホルムアルデヒド水溶液58.0gに添加した。結果として生じる溶液を連続的ホルムアルデヒド供給のために使用した。
【0082】
磁気攪拌バーを備えた反応管に最初、水10.3g中HCN0.29gの混合物を充填し、攪拌プレートの上部の25℃前後で維持した水槽内に配置した。反応フラスコへの入口に直接先行するおよそ24インチ断面のホルムアルデヒド供給ライン(1/8’’OD×0.085’’ID)をホルムアルデヒド供給ラインの充填後に90℃に加熱した。反応管の外側で加熱ホルムアルデヒド供給の確立後、ホルムアルデヒド供給ラインの末端を液体反応混合物へ直接配置した。反応温度を20−25℃前後に維持したが、これは氷および/またはドライアイスを外部水槽に定期的に添加することによって達成された。反応物質を各々連続的に約2.0時間にわたって反応管へ以下の通り注ぎ込んだ。
50wt%の水性HCN溶液(d=0.86g/mL)を7.02mL/時
37wt%の水性ホルムアルデヒド、上記(d=1.09g/mL)を7.67mL/時。
【0083】
2.0時間後、供給を停止し、ホルムアルデヒド供給ラインを反応生成物から除去した。反応混合物を反応管から除去し、次いで70%Glypure(登録商標)グリコール酸0.10mLの添加によって急冷し、結果としてpH3−4でのグリコロニトリル生成物溶液が生じた。図7は、質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、比較例Aから結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す図である。13C NMRスペクトルは、δ48および119ppm前後で主なグリコロニトリル13C共鳴を示す。未反応ホルムアルデヒドにはδ80−90ppm前後、および未反応ホルムアルデヒド由来の他の副産物種にはδ60ppm前後の実質的な共鳴も認められる。
【図2】質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、実施例1から結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す図である。δ48および119pm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴が確認される。未反応ホルムアルデヒドに対する図1で明らかなδ80−90ppm前後の共鳴は図2において著しく低下している。しかし、未反応ホルムアルデヒド由来の副産物に対するδ60ppm前後の共鳴が残存しているが、それはたぶん初期ホルムアルデヒド反応器装填による。
【図3】質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、実施例2から結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す図である。δ48および119pm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴が確認される。δ48および119ppm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴は図3において明らかであるが、不純物のレベルは図1および図2において確認されるレベルから実質的に削減される。
【図4】質的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、実施例3から結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す図である。δ48および119pm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴が確認される。δ48および119ppm前後でのグリコロニトリルに対する主な共鳴は図4において明らかであるが、不純物のレベルは図1および図2において確認されるレベルから実質的に削減される。図4は、実施例3において使用されるホルマリン供給からのメタノールに対するδ49ppmでの共鳴をも明らかに示す。
【図5】量的にグリコロニトリル生成物の純度を示す、実施例4−8で調製された5つの濃縮グリコロニトリル試料を混合することによって製造される複合試料の13C NMRスペクトルを示す図である。量的13C NMR分析を複合試料で行い、製造されたグリコロニトリルの純度を測定した。
【図6】実施例9において製造されるグリコロニトリル生成物の純度を質的に示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す図である。
【図7】実施例10において製造されるグリコロニトリル生成物の純度を質的に示す、結果として生じるグリコロニトリル溶液の13C NMRスペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコロニトリルの調製方法であって、
(a)測定可能な時間に約90℃〜約150℃の温度に加熱される水性ホルムアルデヒドを供給する流れを提供するステップと、
(b)(a)の加熱された水性物を供給する流れをグリコニロトリル合成に適切な温度でシアン化水素を接触させ、それによってグリコロニトリルが製造されるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップ(b)で製造されるグリコロニトリルを回収するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一定量の水酸化ナトリウムが水性ホルムアルデヒドを供給する流れを加熱する前に水性ホルムアルデヒドを供給する流れに添加され、ここで水酸化ナトリウムのホルムアルデヒドに対するモル比が約1:50〜約1:2000であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)で製造されるグリコロニトリルに酸を添加し、安定化グリコロニトリル溶液を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸がグリコール酸であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記安定化グリコロニトリル溶液が7未満のpHを有することを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記安定化グリコロニトリル溶液が約4未満のpHを有することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
シアン化水素のホルムアルデヒドに対するモル比が少なくとも1.01:1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
シアン化水素のホルムアルデヒドに対するモル比が少なくとも1.01:1〜約1.15:1であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記水性ホルムアルデヒドを供給する流れが、さらに約0.1wt%〜約15wt%メタノールを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記水性ホルムアルデヒドを供給する流れが、さらに約3wt%〜約8wt%メタノールを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
グリコロニトリル合成に適切な前記温度が約0℃〜約70℃であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
グリコロニトリル合成に適切な前記温度が約10℃〜約30℃であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記水性ホルムアルデヒドを供給する流れが約10秒〜約24時間の時間加熱されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記時間が約10秒〜約20分であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記水性ホルムアルデヒドを供給する流れが約2分〜約10分の時間加熱されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
結果として生じるグリコロニトリルの水溶液が、シアン化水素と反応させる前に水性ホルムアルデヒドを供給する流れを加熱せずに得られる反応生成物と比べて少ない未反応ホルムアルデヒドを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
製造されるグリコロニトリルが精製なしにグリコール酸アンモニウムへの酵素変換に使用されうることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−525467(P2008−525467A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548418(P2007−548418)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/046300
【国際公開番号】WO2006/071663
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】