説明

グリシジルオキシアルキルトリアルコキシシランの製造方法

本発明は、一般式(I)
(R″)O−Cn2nSi(R′)m(OR)3-m
[式中、基R及びR′は独立して、1〜4個の炭素原子を有する線状の又は分枝したアルキル基であり、nは、1、2、3、4、5、6、7又は8であり、そしてmは0、1、2又は3であり、そしてR″は基H2C(O)CH−又はH2C(O)CHCH2−である]
のグリシジルオキシアルキルアルコキシシランの製造方法であって、
(i)一般式(II)
(R″)O−Cn2n-1
[式中、R″は、基H2C(O)CH−又はH2C(O)CHCH2−であり、nは1、2、3、4、5、6、7又は8である]
の官能化したアルケンを、
(ii)一般式(III)
HSi(R′)m(OR)3-m (III)
[式中、基R及びR′は、独立して、1〜4個の炭素原子を有する線状の又は分枝したアルキル基であり、かつ、mは0、1、2又は3である]の少なくとも1つの水素アルコキシシランと、
(iii)少なくとも1の均一系触媒
(iv)少なくとも1種の溶媒及び/又は少なくとも1種の希釈剤及び
(v)少なくとも1種の促進剤の存在下で反応させる、製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の存在下でのオレフィングリシドエーテルのヒドロシリル化による、グリシジルオキシアルキルトリアルコキシシランの製造方法に関する。
【0002】
エポキシ官能性シランは、オルガノシラン化学において、重要な技術的な中間生成物又は終生成物である。これらは、複合材料での付着促進剤として、例えば、塗料産業及びガラス繊維産業において、鋳造物技術及び接着剤産業において使用され、また、光学的ガラスのコーティングの際にも重要な役割を果たす化合物として使用される。
【0003】
グリシジルオキシアルキルアルコキシシランの製造は、例えば、水素原子を有するトリアルコキシシランを、アリルグリジシルエーテルと、ヒドロシリル化触媒の存在下で反応させることにより行われ、かつ、以下の一般的な反応式により記載できる:
CH2(O)CHCH2OCH2CH=CH2+HSi(OR)3
CH2(O)CHCH2OC36Si(OR)3[式中、R=アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル]。従って、R=メチルを有する場合には、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの製造が、R=エチルを有する場合には、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランの製造が記載される。副生成物としては、この際、異性体、CH2(O)CHCH2OCH2CH(Si(OR)3)CH3並びに相応する8員複素環、更にグリシジルオキシトリアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、プロペニルグリシジルエーテル及びテトラアルコキシシランが、高沸性成分の他に生じる。特に、蒸留により分離することが困難な化合物、異性体のグリシジルアルコキシプロピルトリアルコキシシラン及び8員複素環は、蒸留塔における高い分離能及び長い蒸留時間必要とする。プロペニルグリシジルエーテルの形成及びテトラアルコキシシランの形成は、高い選択率損失を提示する。
【0004】
Hシランと、C=C二重結合を含有する化合物とのヒドロシリル化反応は、不連続的にも又は連続的にも実施され、その際、このヒドロシリル化反応は通常は、貴金属により触媒作用される。3−グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシランの製造は、通常は、均一系触媒作用して、Speier触媒、H2PtCl6又はKarstedt触媒、ジビニルテトラメチルジシロキサン−Pt(EP 0 277 023, EP 0 288 286, JP 128763及びDE 2 159 991)を用いて行われ、しかしながら、貴金属を用いて不均一系触媒作用して行われることもできる(EP 0 548 974, US-特許公報 4 736 049)。
【0005】
均一系Pt触媒の存在下でアリルグリシジルエーテルとトリメトキシシランとのヒドロシリル化を実施すると、使用されるアリルグリシジルエーテルのなおざりにされない部分が異性体化し、従って、ヒドロシリル化はもはや提供されないことが観察される。これは、通常は、少なからぬ選択率損失を引き起こす。
【0006】
これまでの均一系触媒の更なる欠点は、コロイド状Ptの形成であり、これは同様に、高められた副生成物形成を生じる。特に、Karstedtタイプの均一系触媒では、コロイド状Ptの形成が観察される。目的生成物選択率の低下の他に、使用されるオレフィンの異性体化が生じ、これは、ヒドロシリル化のための異性体化のあとにもはや提供されない。
【0007】
EP 0 985 675は、アルキルシランの製造のためのオレフィンのヒドロシリル化の際の促進剤としての酸の使用を開示する。
【0008】
SU 415268は、アリルアミンのヒドロシリル化によりアミノアルキルシランを製造することを教示し、その際この反応も、触媒の存在下で、及び、促進剤としての酸の添加下で実施される。
【0009】
一般的に公知であるのは、オキシラン環が通常は、酸の影響下において開環し、この結果、極めて反応性の種が提供されることである。このオキシラン環の開環は、この際、酸触媒によっても、また同様に、任意の他の求核性試薬によっても行われる。(S. Hauptmann, Organische Chemie", 第1版. 1985, VEB Verlag fuer Grundstoffindustrie, Leipzig, 558頁〜)。
【0010】
本発明の基礎となる課題は、更なる、改善した、グリシジルオキシアルキルアルコキシシランの製造方法を提供することにある。特に、前述した欠点及びこれに関連した経済的な損失を回避する。
【0011】
この課題は、本発明により、相応して、特許請求の範囲中の特徴部により解決される。
【0012】
従って、意外にも、均一系Pt触媒、特にヘキサクロロ白金酸並びにKarstedt触媒が、酸性促進剤、特にモノカルボン酸又はジカルボン酸の存在下で、アリルグリシジルエーテルのエポキシド環開環も、生成物グリシジルオキシアルキルアルコキシシランのエポキシド開環も、引き起こさないことが見出された。従って、均一系触媒、特に、促進剤と適した溶剤又は希釈剤との組み合わせた均一系触媒又は相応する混合物が有利に使用されることができ、その際、溶媒又は希釈剤としてとりわけ有利には、それぞれの相応する目的生成物が使用される。更に、この促進剤−方法により、この選択率は有利に高められることができる。従って、本発明による教示により、有利には、コロイド状Prの形成及び副生成物形成が減少されることができる。特に、異性体化した生成物の割合、異性体化したオレフィンの割合及びテトラアルコキシシランの割合は、顕著に減少されることができる。この作用は、本発明による方法の際には、特に、促進剤との前述の組み合わせにあるSpeier触媒又はKarstedt触媒の使用の際に生じる。特に有利には、水素トリアルコキシシランに対して過剰量のオレフィン性成分を使用する場合に、この生成物選択率は上昇し、異性体の並びに副生成物の形成は抑制される。従って、本発明では、目的生成物の選択率>87%が、同時に、トリアルコキシシラン成分のほとんど完全な変換率(>98%)で維持されることができた。
【0013】
同様に、反応器中での断熱性の反応実施及びこれに関連した促進剤の高温にもかかわらず、促進剤はその選択率を上昇させる作用を反応経過において示し、この際、高温にもかかわらず、促進剤が酸活性性を提供するが、特に有利な様式でオキシラン環が維持されることが見出された。
【0014】
意外にも、更に、促進剤中の水含量は、選択率を、実質的に不利には影響しないことが見出された。反応器の断熱性運転様式は、特に有利な短い滞留時間及び減少された割合の副生成物を生じる。
【0015】
本発明の主題は、従って、一般式(I)
(R″)O−Cn2nSi(R′)m(OR)3-m (I)
[式中、基R及びR′は独立して、1〜4個の炭素原子を有する線状の又は分枝したアルキル基、有利にはメチル、エチル並びにプロピルであり、nは、1、2、3、4、5、6、7又は8であり、そしてmは0、1、2又は3であり、そしてR″は基H2C(O)CH−又はH2C(O)CHCH2−である]
のグリシジルオキシアルキルアルコキシシランの製造方法であって、
(i)一般式(II)
(R″)O−Cn2n-1 (II)
[式中、R″は、基H2C(O)CH−又はH2C(O)CHCH2−であり、nは1、2、3、4、5、6、7又は8である]の官能化したアルケンを、
(ii)一般式(III)
HSi(R′)m(OR)3-m (III)
[式中、基R及びR′は、独立して、1〜4個の炭素原子を有する線状の又は分枝したアルキル基であり、かつ、mは0、1、2又は3である]の少なくとも1の水素アルコキシシラン
と、
(iii)少なくとも1の均一系触媒、
(iv)少なくとも1種の溶媒及び/又は少なくとも1種の希釈剤及び
(v)少なくとも1種の促進剤の存在下で反応させる、製造方法である。
【0016】
本発明による方法では、オレフィン成分(i)として有利にはアリルグリシジルエーテルが使用される。
【0017】
水素アルコキシシラン(ii)として使用されるのは、本発明の方法では有利にはトリメトキシシラン又はトリエトキシシランである。
【0018】
この際、成分(i)オレフィン及び(ii)水素アルコキシシランは有利には、モル比1.8〜1.0:1.0、有利には1.3〜1.1:1.0で使用される。
【0019】
更に、本発明による方法では、ヒドロシリル化は、Speier触媒又はKarstedt触媒の系列からの(iii)少なくとも1種の均一系触媒の存在下で実施される。
【0020】
Speier触媒とは、本発明の方法により使用できるとおり、当業者には、通常は、ヘキサクロロ白金酸又はイソプロパノール中に溶解したヘキサクロロ白金酸が理解される。この触媒系のためには、当業者にはしかしながら、他の溶媒、例えばアセトン又はメタノール、又は溶媒混合物が公知である。
【0021】
Karstedt触媒は、溶解性のPt(0)−錯体触媒であり、これは例えば、US 3,775,452, DE-OS 19 41 411又はMarciniec, B.,"Compregensive Handbook of Hydrosilylation", Pergamon Press, New York (1992),中に記載されている。特に、本発明の方法では、Pt(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサンを使用し、その際、この錯体は、通常は、錯化剤中に溶解され、濃縮物の形態で存在する。錯体触媒又は触媒系としてのジビニルテトラメチルジシロキサン中のPt(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサンの濃縮物は、更に、有利には、キシレン及び/又は本方法の目的生成物、即ち、有利には3−グリジジルオキシプロピルトリメトキシシラン又は3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン中に溶解して使用される。更に、このようにして得られる触媒組成物の1つに有利には促進剤成分(v)が添加される。
【0022】
従って、本発明の方法では、有利には少なくとも1種の溶媒、特にジビニルテトラメチルジシロキサン、及び/又は、少なくとも1種の希釈剤、有利には、ヒドロシリル化生成物中に希釈された、即ち、目的化合物、特に3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン又は3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン中に溶解された触媒が使用される。この際、使用される溶媒又は希釈剤は同時に、本発明の方法に存在する反応混合物のための希釈剤として使用できる。
【0023】
有利には、触媒(iii)(金属に対して)対オレフィン成分(i)が、モル比1:1000000〜1:25000、有利には1:500000〜1:100000で使用される。
【0024】
従って、本発明による方法では、反応(ヒドロシリル化)を、有利には、パラフィン、トルエン、キシレン、触媒の有機錯化剤、例えばジビニルテトラメチルジシロキサン、ヒドロシリル化生成物(目的生成物)又は前述の物質の少なくとも2種からの混合物の系列からの(iv)少なくとも1種の溶媒及び/又は少なくとも1種の希釈剤の存在下で実施する。従って、溶媒及び/又は希釈剤対触媒(Pt金属として算出)を、有利には、質量比100000〜10:1、特に有利には10000〜50:1、特に5000〜100:1で使用する。これにより、この使用物質は出発材料混合物中で、そしてこの方法の更なる経過において、十分に一定であり、これにより有利な様式において混合して計量供給されることができる。
【0025】
更に、この反応は有利には、モノカルボン酸及びジカルボン酸、有利にはモノ酸、例えばギ酸、酢酸及びプロピオン酸、及び他のH酸性化合物、例えばフェノール又はフェノール誘導体の系列からの(v)少なくとも1種の酸性促進剤の存在下で実施される。この際、この促進剤中の水含有量は、0〜3000質量ppmであることができる。
【0026】
有利には、本発明の方法では、触媒(iii)及び促進剤(v)が、モル比(触媒又は金属)1:250〜1:25000、有利には1:1000〜1:5000で使用される。
【0027】
特に、本発明の方法では、(iii)触媒及び促進剤(v)は、(iv)少なくとも1種の溶媒及び/又は少なくとも1種の希釈剤、有利にはヒドロシリル化生成物中で一緒になって希釈して、使用される。この際、有利には、溶媒及び/又は希釈剤対促進剤の質量比は、1000〜0.001:1、特に有利には100〜0.01:1、特に10〜0.1:1で使用される。
【0028】
本発明の方法の実施のためには、(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)の成分を、有利にはタンジェンシャルミキサー(Tangentialmischer)中で、周囲温度で、有利には0〜40℃で計量供給し、混合し、この際、この成分及びこの混合物を直接的に反応器に導く。計量供給のためにはこの際、成分(iii)、(iv)及び(v)を既に、混合物又は溶液として使用することができる。
【0029】
特に有利には、反応器は、断熱性に運転される管型反応器、気泡塔反応器として、又は、撹拌したか又は撹拌していない撹拌槽反応器として構成されている。この反応器は、適したように、加熱可能及び冷却可能であり、この結果、このプロセスの開始のために反応器は予備加熱されることができ、発熱性に経過する反応が開始すると、この加熱は停止されるか又は所望の運転温度に調節される。特に有利には、反応器は停止制御(standgeregelt)して運転されていて、その際、この反応混合物は、上昇性のガス吹き込みにより、例えば気泡塔中で混合され、この結果、反応器系は、高い逆混合下で運転されることができる。この反応器系の利点は、反応器の付加的なコンディショニングが開始のために必要でないことである。更に、本発明の方法では、有利には、予備反応器並びに反応器中での内部構造体、例えば充填剤が断念されることができる。
【0030】
従って、本発明の方法の実施のためには有利には、管型反応器、気泡塔反応器又は撹拌されたか又は撹拌されていない撹拌槽反応器が使用される。
【0031】
反応器材料として、通常は、全てのステンレス鋼が使用され、有利にはインコネル、ハステロイC4、ニッケル、金属上のエナメル、即ち、特に反応領域中でエナメル化された反応器、又は、ガラス、例えば相応する温度抵抗性のガラス又は石英ガラスが適する。特に、本発明の反応のためには、5〜20cm、有利には10cmの直径と、100〜400cmの長さを有する管型反応器が使用される。この際、複数の反応器が並列に又は直列に接続されることができる。
【0032】
有利には、本発明の方法では、この反応は反応器中で反応温度40〜200℃、特に有利には60〜160℃、圧力0.5〜20bar abs.、特に周囲圧力、即ち、1barで、そして、空間速度3〜30[1/h]、特に5〜10[1/h](記載は、通常状態)実施される。反応器中の反応混合物の平均滞留時間は、有利には1〜20分間、特に有利には3〜9分間、特に5〜8分間である。
【0033】
このようにして得られる反応生成物は、通常は、後処理される。このためには、反応器を去る反応生成物は適したように、中間貯蔵庫中に捕捉され、引き続き蒸留に供給されることができる。蒸留の際には、適したように、過剰量で使用されるオレフィン成分並びに場合により使用される溶媒が分離され、かつ、これらは有利には返送されることができる。更に、有利な様式で、目的生成物又は終生成物が得られ、特に、有利な様式で、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン又は3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランが獲得される。
【0034】
本発明による方法は、時に、工程、終生成物の混合及び計量供給、反応(ヒドロシリル化)及び後処理は、バッチ式に又は連続的に実施可能である。
【0035】
一般的には、本発明の方法は以下のように構成される:
官能化したアルケン、水素アルコキシシラン、均一系触媒は、その溶媒、希釈剤及び促進剤中で、通常は、ミキサー(Miashstufe)を介して、反応器で理想的に混合され、連続的に導通される。適したように、使用物質成分(i)〜(v)は、タンジェンシャルミキサー中に計量供給され、混合され、この反応混合物は運転温度にある反応器系に供給され、反応される。このためには、触媒又は触媒系は、溶媒、希釈剤又は溶媒と希釈剤とからなる混合物並びに促進剤と混合され、混合物として計量供給される。しかしながら、触媒も溶媒又は希釈剤と混合でき、このようにして得られる混合物はミキサー中に計量供給される。この際、促進剤は、触媒−/溶媒−又は希釈剤混合物とは別個に、ミキサー中に計量供給されることができる。更に、促進剤を、溶媒又は希釈剤と一緒に混合物として計量供給できる。反応(ヒドロシリル化)の開始後に、反応器中では、有利には、この外側のエネルギー導入を停止し、この反応熱を、この反応混合物の内側加熱のために利用することができる。この反応器は有利には連続的に、そして、高い逆混合及び短い滞留時間と共に運転される。従って、本発明による方法では、特に傑出して、テトラアルコキシシラン成分の高い変換率98〜100%が達成される。
【0036】
反応(ヒドロシリル化)で得られる生成物混合物は、引き続き、蒸留を用いて後処理される。この際、この蒸留は、減圧下で実施されることができ、例えば塔系、薄層蒸発器又は短路蒸発器(Kurzwegverdampfer)中で実施されることができる。過剰に使用され、かつ後処理において分離されるオレフィン成分並びにここで分離される溶媒又は希釈剤並びに促進剤は、返送されることができる。目的生成物は通常は、塔底で生じ、そして、この後処理の範囲内において付加的な精製蒸留にかけられることができる。
【0037】
従って、本発明の方法は、特に、その比較的高い選択率のために、さらに顕著に改善された経済性により優れている。この選択率の増加は、本発明により、少なくとも1種の促進剤並びに溶媒又は希釈剤との組み合わせにおけるこの特殊に選択された触媒系の使用によりうまくいき、これにより有利には、副生成物形成、特に異性体化したオレフィン、異性体化した目的生成物及びテトラアルコキシシランの抑制が、引き起こされることができる。特に有利であるのは、トリアルコキシシラン成分のほぼ完全な反応率での、この高い目的生成物選択率である。
【0038】
本発明による方法は、以下の実施例により詳説され、この場合に本発明の主題は限定されない。
【0039】
実施例
実施例においては、アリルグリシジルエーテルとトリメトキシシランを、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランへと反応させた。この反応を連続的に、酢酸(全体の反応質量に対して0.05質量%)の存在下での、Pt−Karstedt触媒と一緒での、原料(アリルグリシジルエーテル:9.6kg/h、及び、トリメトキシシラン:8kg/h)の管型反応器中への計量供給により行った。金属の白金に対する触媒の濃度は、この際2ppmであった。この際、Pt−Karstedt触媒を3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン中に溶解した。この反応温度は、約160℃であった。この反応を、アリルグリシジルエーテルの過剰量と共に実施した(モル比、アリルグリシジルエーテル:トリメトキシシラン=1.28:1)。この生じた反応混合物は、以下の組成からなった:
【表1】

TMOS=トリメトキシシラン
DYNM=テトラメトキシシラン
AGE=アリルグリシジルエーテル
cis−イソ−AGE=cis−プロペニルグリシジルエーテル
trans−イソ−AGE=trans−プロペニルグリシジルエーテル
イソ−GLYMO=2−グリシジルオキシ−1−メチル−エチルトリメトキシシラン
シクロ−GLYMO=1−ジ−メトキシ−シラ−2,5−ジオキサ−3−メトキシ−メチル−シクロオクタン
GLYMO=3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
HS=高沸性化合物
この生成物混合物の組成の測定を、ガスクロマトグラフィを用いて行った。
【0040】
この前記した方法が促進剤としての酢酸の使用無しに実施される場合には、以下の反応組成が達成される。
【表2】

【0041】
溶媒又は希釈剤としての目的生成物の使用と組み合わせた、有機酸の存在下における、均一系Pt触媒の利点は、目的生成物に関して上昇した選択率、特にイソ生成物及びシクロ生成物の割合の減少、及び、使用されるオレフィン性化合物の異性体化の抑制である。
【0042】
減少した副生成物形成は、更に、容易になった、原料の蒸留能と、品質上昇とを生じ、即ち、イソ生成物及びシクロ生成物がより少ない量で存在する場合に蒸留バッチ中でのより少ない分離出力及びより短い蒸留時間が必要である。この目的生成3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの純度も、従って、上昇されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
(R″)O−Cn2nSi(R′)m(OR)3-m (I)
[式中、基R及びR′は独立して、1〜4個の炭素原子を有する線状の又は分枝したアルキル基であり、nは、1、2、3、4、5、6、7又は8であり、そしてmは0、1、2又は3であり、そしてR″は基H2C(O)CH−又はH2C(O)CHCH2−である]
のグリシジルオキシアルキルアルコキシシランの製造方法であって、
(i)一般式(II)
(R″)O−Cn2n-1 (II)
[式中、R″は、基H2C(O)CH−又はH2C(O)CHCH2−であり、nは1、2、3、4、5、6、7又は8である]の官能化したアルケンを、
(ii)一般式(III)
HSi(R′)m(OR)3-m (III)
[式中、基R及びR′は独立して、1〜4個の炭素原子を有する線状の又は分枝したアルキル基であり、かつ、mは0、1、2又は3である]の少なくとも1の水素アルコキシシラン
と、
(iii)少なくとも1の均一系触媒、
(iv)少なくとも1種の溶媒及び/又は少なくとも1種の希釈剤及び
(v)少なくとも1種の促進剤の存在下で反応させる、製造方法。
【請求項2】
官能性オレフィン成分(i)としてアリルグリシジルエーテルを使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
水素アルコキシシラン(ii)としてトリメトキシシラン又はトリエトキシシランを使用することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
成分(i)オレフィン及び(ii)水素アルコキシシランを、モル比1.8〜1.0対1.0で使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ヒドロシリル化を、Speier触媒又はKarstedt触媒の系列からの(iii)少なくとも1の均一系触媒の存在下で実施することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
溶媒及び/又は希釈剤中で、有利にはヒドロシリル化生成物中で希釈して、(iii)触媒を使用することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
触媒(iii)対オレフィン成分(i)を、モル比1:1000000〜1:25000で使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
反応を、パラフィン、トルエン、キシレン、触媒の有機錯化剤、ヒドロシリル化生成物又は前述の物質の少なくとも2種からの混合物の系列からの(iv)少なくとも1種の溶媒及び/又は少なくとも1種の希釈剤の存在下で実施することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
反応を、モノカルボン酸及びジカルボン酸及び他のH酸性化合物の系列からの(v)少なくとも1種の酸性促進剤の存在下で実施することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
触媒(iii)及び促進剤(v)を、モル比1:250〜1:25000で使用することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
(iii)触媒及び促進剤(v)を一緒に溶媒及び/又は希釈剤中で、有利にはヒドロシリル化生成物中で希釈して、使用することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
成分(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)を、タンジェンシャルミキサー中に計量供給し、混合し、反応器に供給することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
反応器中での反応を40〜200℃の反応温度、0.5〜20barの圧力及び空間速度3〜30[1/h]で実施することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
反応を、管型反応器、気泡塔反応器又は撹拌したか又は撹拌していない撹拌槽反応器中で実施することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の方法において、反応生成物を後処理することを特徴とする方法。
【請求項16】
反応及び後処理をバッチ式に又は連続的に実施することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン又は3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランを獲得することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2010−518031(P2010−518031A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548590(P2009−548590)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064281
【国際公開番号】WO2008/095570
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】