説明

グリシル−2−メチルプロリルグルタミン酸塩の経口製剤

【解決手段】G−2MePEのマイクロエマルジョン、粗エマルジョン、液晶、錠剤およびカプセル形態でのG−2MePEの経口製剤は、従来の水溶性製剤よりも生物利用効率を改善した。とりわけ、微小粒子、ナノ粒子およびマイクロエマルジョンは、経口投与後に、すばらしい神経保護効果を示すことができる。マイクロエマルジョン製剤では、G−2MePEは、脳卒中が起こった後でさえ、動物の脳卒中モデルにおいて、脳の梗塞をほぼ完全に阻害することができる。したがって、改善された経口製剤は、様々な神経変性状態を治療するために、便宜性および効能を向上させて好適に用いられることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、合衆国法典第35編119条(e)に基づき、米国仮特許出願60/782,148号(2006年3月14日出願、名称「グリシル−2−メチルプロリルグルタミン酸塩の製剤」、発明者Jingyuan Wen他)への優先権を主張する。この仮出願は、本願中に参照することにより完全に盛り込まれている。
本発明は、グリシル−2−メチルプロリルグルタミン酸塩(G−2MePE)の経口利用可能な製剤に関する。とりわけ、本発明は、神経保護剤であるG−2MePEのマイクロエマルジョン、液晶およびカプセル剤と、これらの製造方法と、これらを含有する医薬組成物と、神経障害を治療する上でのこれらの使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許7,041,314号(名称「GPE類似体およびペプチド模倣体」、2002年5月24日出願、合衆国法典第35編119条(e)に基づき、米国仮出願60/293,853号(2001年3月24日出願)への優先権を主張)は、インビトロで、有害な神経損傷から神経細胞を保護するための、G−2MePEおよびその他の合成GPE類似体の物質の組成と、水溶調製液の使用とを開示している。
【0003】
米国特許出願11/314,424号(名称「神経変性に対するG−2MePEの効果」、2005年12月20日出願)および米国特許出願11/315,784号(名称「G−2MePEを用いた認知促進および認知治療」、2005年12月21日出願)は、脳卒中および外傷性脳損傷により誘発された神経損傷から動物を守るために、G−2MePEの水溶性調製液を使用する方法を開示している。
【0004】
米国特許出願11/398,032号(名称「脳損傷におけるG−2−メチルプロリルグルタミン酸塩を用いた非痙攣性発作の治療」、2006年4月4日出願)には、貫通弾道のような脳損傷を受けた動物の脳における非痙攣性発作の治療するために、G−2MePEの水溶性製剤を用いる方法が開示されている。
【0005】
しかし、当該分野では、現在のG−2MePEの水溶液よりも生物利用効率を改善し、効能も高い、改善された経口活性製剤を提供する必要性がある。
【発明の開示】
【0006】
本発明の1つの観点は、生物活性および経口効能を改善した、錠剤、カプセル、エマルジョンおよび液晶として、G−2MePEの経口製剤を作る方法を提供することである。製剤によっては、微小粒子、ナノ粒子および/または透過促進剤を含むものもある。本発明の別の観点は、神経変性状態を治療するために、G−2MePEの経口製剤を用いる方法を提供することである。G−2MePEのマイクロエマルジョンおよび微小粒子製剤は、水溶性溶液よりも実質的に改善された神経保護効果を提供することができ、G−2MePEの調製液に所望の薬物速度論的特性を与えることができ、したがって治療効果およびその持続性を改善することができる。
【0007】
本発明を、特定の実施形態を参照して説明する。本発明の実施形態のこれ以外の特徴は、図面より理解されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
定義
投与量または時間に関して用いる場合の「約」という用語は、特定の変数とその周囲の範囲、すなわち、この変数の値の通常の測定誤差内またはこの変数の値の約20%内にある範囲とを指す。
【0009】
「動物」という用語は、ヒトおよびヒト以外の動物であって、例えば、家畜(猫、犬など)と、畜産家畜(牛、馬、羊、ヤギ、豚など)を含む。
【0010】
「疾病」という用語は、動物の任意の非健康的な状態を含み、これには、とりわけ、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、糖尿病、運動障害、発作、および、加齢による認知機能障害を含む。
【0011】
「損傷」という用語は、動物の任意の急性損傷を含み、これには、脳出血発作、外傷性脳損傷、周生期仮死(早期剥離、へその緒閉塞などに続く胎児仮死に関連する仮死、または子宮内発育遅延に関連する仮死)、適切な蘇生または呼吸が出来なかったために起こる周生期仮死、ほぼ溺死またはほぼ乳幼児突然死と関連する重度の中枢神経系外傷、一酸化炭素吸入、アンモニアまたはその他のガス中毒、心不全、昏睡、髄膜炎、低血糖および癲癇重積症、冠状動脈バイパス手術に関連する脳仮死の発現、低血圧症状の発現および高血圧性クリーゼ、脳外傷、ならびに毒性障害を含む。
【0012】
「記憶障害」または「認知障害」とは、情報を学習、記憶、思い出すことに関する、永久的または一時的な機能障害または能力の欠如である。記憶障害は、通常の加齢、脳への損傷、腫瘍、神経変性病、血管疾患、遺伝子状態(ハンチントン病)、水頭、これ以外の疾病(ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病、AIDS、髄膜炎)、有毒物質、栄養失調、生化学的障害、心理的機能障害、または、精神機能障害より生じうる。ヒトにおいて記憶障害があることの立証は、患者病歴の調査、身体検査、臨床検査、想像力検査、神経心理テストにより行われうる。標準的な神経心理テストは、特に限定されないが、以下を含む。すなわち、修正短時間視覚記憶検査(Brief Visual Memory Test−Revised)(BVMT−R)、ケンブリッジ神経心理学自動検査(Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery(CANTAB))、子供用記憶検査(Children's MEMORY Scale(CMS))、文脈記憶検査(Contextual MEMORY Test)、連続認識記憶検査(Continuous Recognition Memory Test(CMRT))、管理された口頭単語連想検査および記憶機能質問書(Controlled Oral Word Association Test and Memory Functioning Questionnaire)、デンマン神経心理記憶検査(Denman Neuropsychology Memory Scale)、ウェクスラー成人知能検査−IIIの桁長さおよび文字数字列サブ検査(Digit Span and Letter Number Sequence sub−test of the Wechsler Adult Intelligence Scale−III)、フルト物体記憶評価(Fuld Object Memory Evaluation(FOME))、グラハム−ケンダールデザイン用の記憶検査(Graham−Kendall Memory for Designs Test)、ギルド記憶検査(Guild Memory Test)、ホプキンス言語学習検定(Hopkins Verbal Learning Test)、 学習および記憶検査(Learning and Memory Battery)(LAMB)、記憶評価臨床自己評価検査(Memory Assessment Clinic Self−Rating Scale)(MAC−S)、記憶評価検査(Memory Assessment Scales)(MAS)、ラント記憶検査(Randt Memory Test)、認知記憶検査(Recognition memory Test)(RMT)、レイ聴覚および言語学習検査(Rey Auditory and Verbal Learning Test)(RAVLT)、ライバーミード行動記憶検査(Rivermead Behavioural Memory Test)、ウェクスラー成人記憶検査のラッセル版(Russell's Version of the Wechsler Memory Scale)(RWMS)、空間作業記憶(Spatial Working Memory)、記憶および学習検査(Test of Memory and Learning)(TOMAL)、バーモント記憶検査(Vermont Memory Scale)(VMS)、ウェクスラー記憶検査(Wechsler Memory Scale)、記憶および学習の広範囲評価(Wide RangeAssessment of Memory and Learning)(WRAML)である。
【0013】
「医薬的に容認可能な賦形剤」という用語は、全般的に安全で、毒性がなく、好ましい医薬組成物を調製するのに有用である賦形剤を意味し、かつ、獣医用やヒトの医薬的使用として容認可能な賦形剤を含む。このような賦形剤は、固体、液体、半固体、または、エアゾール組成物の場合は気体である。
【0014】
「医薬的に容認可能な塩」という用語は、医薬的に容認可能であり、所望の医薬特性を有する塩を意味する。このような塩は、化合物中にある酸性タンパク質が、無機または有機塩基と反応した際に形成されうる塩を含む。適切な無機塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよびアルミニウムなどのアルカリ金属と共に形成される塩を含む。適切な有機塩は、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタシン、N−メチルグルカミン他のアミンなどの有機塩基と共に形成されるものを含む。また、アミン基または化合物中にある基が酸と反応することにより形成される酸付加塩も含む。適切な酸には、無機塩(たとえば、塩酸および臭化水素酸)および有機塩(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、ならびに、メタンスルホン酸やベンゼンスルホン酸などのアルカンおよびアレーンのスルホン酸)が含まれる。化合物中に2つの酸性基がある場合、医薬的に容認可能な塩は、一酸の単塩またはジ塩であってもよい。同様に、2つを上回る酸性基がある場合、いくつかの基または全ての基が塩化されうる。同様のことが、化合物中に2つ以上のアミン基がある場合に考えられる。
【0015】
「治療効果のある量」とは、疾病を治療するために動物に薬剤を投与する際に、その分野で認知されているテスト系を用いて測定した場合に、その疾病の治療に対して十分効果を奏する薬剤の量を意味する。
【0016】
「治療する」または「治療」という用語は、その疾病にかかりやすくなっているかもしれないが、まだその疾病にかかっていないまたはその症状を呈していない動物において、その疾病が生じることを防ぐ(予防治療)こと、その疾病を阻害する(疾病の進行速度を遅くするまたは阻む)こと、その疾病の症状または副作用を癒すこと(緩和治療を含む)、および、その疾病を取り除く(その疾病を退化させる)ことを含む。
【0017】
「機能障害」という用語は、神経障害に関連する行動欠陥を意味する。このような欠陥には、パーキンソン病の患者に見られるような歩行障害や、ハンチントン病の患者に見られるような運動異常も含まれる。機能障害には、足位置の異常や本願中に記載する記憶障害も含まれる。
【0018】
「G−2MePE」または「NNZ−2566」という用語は、トリペプチドの類似体であるグリシル−2−メチルプロリルグルタミン酸塩を意味する。
【0019】
「発作」という用語は、異常な動きを生じさせる、運動障害または運動調節の欠陥を引き起こす、脳における神経作用の異常パターンを意味し、痙攣性動作を含む。「発作」とは、異常な運動活動を伴うあるいは伴わない脳波異常を含む。
【0020】
神経障害の治療
神経細胞の変性および神経細胞の死を含む神経障害は、治療が困難であると考えられてきた。最近まで、神経細胞の変性を覆す、または、神経変性をうまく治療する方法は存在しなかった。このような疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病およびこれ以外の周知の慢性疾患などの慢性疾患を含む。さらに、神経変性を伴う急性疾患には、外傷性脳損傷またはTBI(貫通弾道のような脳損傷またはPBBI、および鈍器でなぐられてできた傷を含む)、脳卒中、心筋梗塞(MI)、心臓動脈バイパス移植手術(CABG)、低酸素症/虚血(HI)およびこれ以外の周知の疾患を含む。
【0021】
最近、神経変性を治療する新たな方策がいくつか現れている。これらには、インシュリン様成長因子I(IGF−1)、IGF−1のN−末端トリペプチドすなわちグリシルプロリルグルタミン酸塩(GPE)、GPEの類似体、および、GPEの合成類似体が含まれる。この中の1つであるグリシル−2−メチルプロリルグルタミン酸塩(G−2MePE)は、米国特許7,041,314号(名称「GPE類似体およびペプチド模倣体」、2006年5月9日発行)に記載され、この特許は、本願中に参照することにより明示的に盛り込まれているが、この特許は、GPEの合成類似体の合成と使用とについて記載している。
【0022】
また、米国特許出願11/315,784号(公開番号米国2007/0004641号、名称「グリシル−2−メチルプロリルグルタミン酸塩を用いた認知促進および認知治療」、2005年12月21日出願)は、インビボでのラットの認知を改善するG−2MePEの効果について記載している。
【0023】
米国特許出願11/314,424号(名称「神経変性に対するグリシル−2−メチルプロリルグルタミン酸塩の効果」)は、以下に対するG−2MePEの効果を記載している。すなわち、ラットにおいて、エンドセリン−1により誘発された外傷性脳損傷および脳卒中モデル、毒物により引き起こされたインビトロでの神経保護作用、インビボでの低酸素性虚血損傷、インビボでの多発性硬化症、実験的な自己免疫脳症(EAE)のモデルに対する効果を記載している。
【0024】
米国特許出願11/398,032号、(2006年4月4日出願、名称「G−2−メチルプロリルグルタミン酸塩を用いた、脳損傷における非痙攣性発作の治療」)は、「静かな」発作、すなわち、明らかな運動の要素を持たない発作を治療する目的でのG−2MePEの使用に関して記載している。このような非痙攣性発作は、外傷性脳損傷、脳卒中、低酸素症/虚血および毒性損傷に関連しうる。
【0025】
上述の複数の特許出願は、G−2MePEの製造および有用性を示しているが、薬物速度論的特性(PK)または薬理学的特性(PD)を改善した製剤を作ることが望まれている。本発明の製剤は、この必要性を満足している。
【0026】
ここで記述するG−2MePEに加えて、組成物は、本発明による化合物に加えて、随意選択的に、以下より選択される少なくとも1つの追加的な神経保護剤を含有してもよい。すなわち、例えば、成長因子およびこれに関連する誘導体(インシュリン様成長因子−I(IGF−I))、インシュリン様成長因子−II(IGF−II)、形質転換成長因子−β1、アクティビン、成長ホルモン、神経成長因子、成長ホルモン結合タンパク質、IGF結合タンパク質(特に、IGFBP−3)、塩基性線維芽細胞成長因子、酸性線維芽細胞成長因子、hst/Kfgk遺伝子産物、FGF−3、FGF−4、FGF−6、ケラチン成生細胞成長因子、男性ホルモン誘導成長因子)から選択される少なくとも1つの追加的な神経保護剤を含有してもよい。FGFファミリーのこれ以外の構成員には、例えば、int−2,線維芽細胞成長因子同種因子−1(FHF−1)、FHF−2、FHF−3およびFHF−4、ケラチン成生細胞成長因子2、グリア活性化因子、FGF−10およびFGF−16、毛様体神経栄養因子、脳由来成長因子、ニュートロフィン3、ニュートロフィン4、骨形態形成タンパク質2(BMP−2)、グリア細胞株由来神経栄養因子、活性依存神経栄養因子、サイトカイン白血病阻害因子、オンコスタチンM,インターロイキン、α−インターフェロン、β−インターフェロン、γ−インターフェロン、コンセンサスインターフェロン、ならびに、TNF−αが含まれる。これ以外の形態の神経防護作用治療薬には、例えば、クロメチアゾール; キヌレン酸、セマックス(Semax)、タクロリムス、L−トレオ−1−フェニル−2−デカノイルアミノ−3−モルホリノ−1−プロパノール、副腎皮質刺激ホルモン−(4−9)類似体(ORG 2766)およびジゾシルピン(MK−801)、セレギリン; NPS1506、GV1505260、MK−801およびGV150526などのグルタミン酸塩阻害因子; 2,3−ジヒドロキシ−6−ニトロ−7−スルファモイルベンゾ(f)キノキサリン(NBQX)、LY303070およびLY300164などのAMPA阻害因子; 抗MAdCAM−1mAbMECA−367(ATCC受入番号、HB−9478)などの、アドレシンMAdCAM−1および/またはそのインテグリンα4レセプタ(α4β1およびα4β7)に向けた抗炎症薬が含まれる。これらの薬剤のほとんど、特に、成長因子などのペプチドは、経口では活性がなく、注射、点滴による投与または本発明の経口活性製剤に取り込むことにより有益となることができる。
【0027】
投与
本発明の製剤は、神経変性またはその兆候をもたらしうる状態の発現の前または後に投与可能である。例えば、低酸素症/虚血は、冠状動脈バイパス移植手術(CABG)中におこりうることが知られている。したがって、体外酸素吸入システムをつける前に、患者に、本発明の化合物で予め治療されうる。実施形態によっては、手術の4時間前、または、外傷性神経損傷もしくはこれ以外の神経損傷に至りうる出来事の前に、本発明の化合物を投与することが望ましい場合もありうる。実施形態によっては、脳卒中、TBI、CABGまたはこれ以外の神経障害ゆえに神経変性またはその兆候を起こし、回復しつつある患者に本発明の製剤を、亜急性に投与することができる。さらに別の実施形態では、このような製剤を、認知障害に苦しむ患者に投与することができる。さらに別の実施形態では、このような製剤を、神経損傷に関連して機能障害に苦しむ患者に投与することができる。
【0028】
G−2MePEの経口投与
薬物デリバリーにおいて、経口デリバリーは、最も安全で、最も便利で、かつ経済的な方法である。今日の経口デリバリーされる製品の治療上の利点は、有効成分に関して、予測可能性が極めて高く、デリバリーの管理が極めてよくできることに集中し、その結果、治療効能を高め、副作用を減らすことができる。この点と、投与の頻度を減らすこととを組み合わせることにより、患者の薬剤服用遵守力を改善し、したがって、治療の結果も改善する。経口薬物デリバリーは、通常、感染の危険性を減らすことができるが、これは、この投与方法での投与中は、体内の自然の防衛機構が破られないからである。
【0029】
所望の治療効果を得るために、神経保護剤特にペプチドまたはペプチド類似体が、薬物安定性を維持し、かつ最適の目標組織へのデリバリーが可能となる、製剤およびデリバリーシステムを用いて投与されることが好ましい。適切な製剤戦略が用いられない場合、吸収を制限する生化学障壁および物理的障壁のために、経口投与ペプチドの生体利用効率は低くなりうる。さらに、血液脳関門(BBB)も、抹消投与に次いで脳まで薬物をデリバリーする上で、手ごわい障害となりうる。BBBは、特別な微小血管内皮細胞網からなり、全身から中枢神経系(CNS)への分子の輸送を選択的に行う部分である。
【0030】
多くの生化学的、生理学的および物理化学的因子、ならびに、製剤投与形態が、経口投与後の薬物の吸収の度合い、生体内分布および薬理学的効果を決める。とりわけ、ペプチドでは、これらの因子には、腸内透過性、酵素安定性、デリバリーシステムの種類、および、製剤の輸送時間が含まれる。これらの因子の中で、生化学的障壁および物理的障壁は、経口投与ペプチドの効能に影響を与えるという意味合いで、重要になりうる。これらの2つの障壁は、目標のペプチドがBBBを通る前に、合理的なデリバリーシステムを用いて、克服せねばならない。経口活性ペプチド製剤の合理的な設計は、以下の1つまたは複数の戦略に基づくべきである。すなわち、(a)ペプチドを分解するタンパク質分解作用を阻害または調節すること、(b)ペプチドの細胞間隙輸送または細胞間輸送を増進させること、(c)粘膜障壁を通るペプチド透過を改善させること、(d)治療効能のために持続的に存在することが要求されるペプチドに関して、循環内でのペプチドの半減期を長くすること、(e)生物活性を保持する抗プロテアーゼペプチド類似体を開発すること、および/または、(f)担体分子との結合により、または、カプセル化によりペプチドを安定させること、の戦略の1つまたは複数である。
【0031】
この点を頭において、保存中に安定性を最大限にし、腸管中でタンパク質分解酵素からG−2MePEを保護し、吸収に好適な胃腸管でペプチド部位を放出し、かつ、腸上皮に渡って薬物の吸収を改善するのに適切なG−2MePEの製剤戦略を設計した。
【0032】
予想外に、マイクロエマルジョン、粗エマルジョン、液晶および錠剤に製剤したG−2MePEが、所望の特性を提供することを見出し、これらは、神経変性または神経の死の特徴を有する状態を治療するのに有用な製剤になった。
【0033】
特定の実施形態では、本発明は、油中水滴エマルジョンを有する医薬調製を提供する。
【0034】
G−2MePE含有エマルジョン
油中水滴エマルジョンが、長鎖カルボン酸、または、これのエステルもしくはアルコールからなる油相と、界面活性剤または表面活性剤と、主に水およびG−2MePEを含有する水相とを含有する実施形態もある。
【0035】
脂質とアルコール
長鎖カルボン酸は、C16〜C22の範囲のものであり、3つまでの不飽和結合(分岐も)を有するものである。飽和直鎖酸の例として、n−ドデカン酸、n−テトラデカン酸、n−ヘクサドデカン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸およびメリシン酸が挙げられる。不飽和モノオレフィン直鎖モノカルボン酸も有用である。この例は、オレイン酸、ガドレイン酸およびエルカ酸である。不飽和(ポリオレフィン)直鎖モノカルボン酸も有用である。この例は、リノール酸、リシノール酸、リノレン酸、アラキドン酸およびベヘノール酸である。有用な分岐鎖酸には、例えば、ジアセチル酒石酸が含まれる。
【0036】
長鎖カルボン酸エステルの例は、限定されるわけではないが、以下の群からの物質、すなわち、グリセリルモノステアリン酸エステル;グリセリルモノパルミチン酸エステル;グリセリルモノステアリン酸エステルとグリセリルモノパルミチン酸エステルとの混合物;グリセリルモノリノール酸エステル;グリセリルモノオレイン酸エステル;グリセリルモノパルミチン酸エステルと、グリセリルモノステアリン酸エステルと、グリセリルモノオレイン酸エステルと、グリセリルモノリノール酸エステルとの混合物;グリセリルモノリノレン酸エステル;グリセリルモノガドレイン酸エステル;グリセリルモノパルミチン酸エステルと、グリセリルモノステアリン酸エステルと、グリセリルモノオレイン酸エステルと、グリセリルモノリノール酸エステルと、グリセリルモノリノレン酸エステルと、グリセリルモノガドレイン酸エステルとの混合物;希釈されたアセチル化されたモノグリセリドなどのアセチル化されたグリセリド;プロピレングリコールモノエステルと、希釈されたモノグリセリド、ステアロイル乳酸ナトリウムと、二酸化ケイ素との混合物;d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000琥珀酸エステル;アトムル(Atmul)などのモノグリセリドと、ジグリセリドエステルとの混合物;ステアロイル乳酸カルシウム;エトキシル化されたモノグリセリドおよびジグリセリド;乳酸加モノグリセリドおよびジグリセリド;グリセロールおよびプロピレングリコールの乳酸カルボン酸エステル;長鎖カルボン酸の乳酸エステル;長鎖カルボン酸のポリグリセロールエステル、長鎖カルボン酸のプロピレングリコールモノエステルおよびジエステル;ステアロイル乳酸ナトリウム;モノオレイン酸ソルビタン;長鎖カルボン酸のこれ以外のソルビタンエステル;コハク酸化モノグリセリド;ステアリルモノグリセリルクエン酸エステル;ステアリルヘプタン酸エステル;蝋のセチルエステル;ステアリルオクタン酸エステル;C10、C30コレステロール/ラボステロールエステル;およびショ糖長鎖カルボン酸エステルが含まれる。
【0037】
自己乳化長鎖カルボン酸エステルの例には、ステアリン酸エステル、パルミチン酸エステル、リシノール酸エステル、オレイン酸エステル、ベヘン酸エステル、リシノール酸エステル、ミリスチン酸エステル、ラウリン酸エステル、カプリル酸エステルおよびカプロン酸エステルの群からのものが含まれる。
【0038】
本発明中で有用なアルコールの例としては、上で例示したカルボン酸のヒドロキシ形態およびステアリルアルコールが挙げられる。
【0039】
実施形態によっては、油相は、2つ以上の長鎖カルボン酸、または、これらのエステルもしくはアルコールの組み合わせを含みうる。
【0040】
実施形態によっては、この油相は、カプリル/カプリントリグリセリドと、カプリル酸のC8/C10モノグリセリド/ジグリセリドとの混合物を有しうる。
【0041】
表面活性剤
表面活性剤または界面活性剤は、親水性/疎水性(水/油)界面に蓄積することができ、かつ、この界面での界面張力を低くすることができる長鎖分子である。この結果、これらは、エマルジョンを安定化することができる。本発明のいくつかの実施形態では、界面活性剤は、以下を有してもよい。すなわち、ツイーン(Tween)80(登録商標)(ポリオキシエチレンソルベート)界面活性剤群、スパン(Span)80(登録商標)(ソルビタン長鎖カルボン酸エステル)界面活性剤群、プルロニック(Pluronic)(登録商標)(エチレンまたはプロピレンオキシド・ブロックコポリマー)界面活性剤群、ラブラゾル(Labrasol)(登録商標)、ラブラフィル(Labrafil)(登録商標)およびラブラファック(Labrafac)(登録商標)(各々、ポリ加グリコール分解されたグリセリド)界面活性剤群、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸もしくはこれ以外の長鎖カルボン酸のソルビタンエステル、ポロクサマー(ポリエチレン−ポリプロピレングリコール・ブロックコポリマーもしくはプルロニック(Pluronic)(登録商標))、これ以外のソルビタンもしくはショ糖の長鎖カルボン酸エステル、モノグリセリドまたはジグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドのPEG誘導体およびこれらの混合物、または、上述の2つ以上の混合物を有してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、界面活性剤相は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(ツイーン(Tween)80(登録商標))と、ソルビタンモノオレエート(スパン(Span)80(登録商標))との混合物を有してもよい。
【0043】
水溶性相は、水および緩衝液に懸濁されたG−2MePEを有してもよい。G−2MePEが、水溶性相中に、1mg:300mg/mlの濃度で存在している実施形態もある。
【0044】
いくつかの実施形態では、このようなエマルジョンは、粗エマルジョン、マイクロエマルジョンおよび液晶エマルジョンである。このようなエマルジョンが随意選択的に透過促進剤を有しうる実施形態もある。G−2MePEのような水溶性薬剤では、薬物をエマルジョンの水相中に含めることがとりわけ望ましい。このような「油中水滴」製剤は、薬物にとって適した生物理学的環境を提供し、薬物を分解しうるpHまたは酵素の弊害から薬物を保護することができる油水界面を提供することができる。さらに、このような油中水滴製剤は、脂質層を提供することができ、この脂質層が、体内細胞の脂質と好適に相互作用することができ、細胞膜上の製剤の仕切りを増やすことができる。このような仕切りは、このような製剤での薬物の循環への吸収を増進させ、したがって、薬物の生物利用効率を向上させることができる。
【0045】
微小粒子またはナノ粒子を含有するカプセル化したマイクロエマルジョン、粗エマルジョンまたは液晶が、有利に用いられることができる実施形態もある。G−2MePEおよび結合剤、賦形剤、ならびに、随意選択的に腸溶コーティングを含有する錠剤が有利に用いられることができる実施形態もある。これらの製剤は、G−2MePEが胃で分解されないよう、これを保護し、吸収が行われうる胃腸管の部位まで、薬物の輸送を支援することができる。
【0046】
驚くべきことに、G−2MePEの特定の製剤は、他のより周知の神経保護剤に比較して予想しない特性を有することを見出した。さらに、予想しなかったことであるが、G−2MePEは、G−2MePEの水溶性溶液を含む通常の水溶性溶質とは異なる挙動を行うことを見出した。
【実施例】
【0047】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例証するためのもので、特定の実施例に範囲を限定する意図はない。当業者は、本願の教示および開示が、これ以外の明らかな変型例を開発するための教示を提供していることを、容易に理解できる。これらの変型例は、本発明の一部であると考えられる。
【0048】
実施例1
ヒトの結腸癌から取ったCaco−2細胞株
化合物の経口デリバリーの適性を検査するために、インビトロでのモデルを設けた。最初の目的は、消化管からの神経保護ペプチドの吸収を改善するために、酵素障壁および物理的な障壁に打ち勝つことにあった。
【0049】
Caco−2細胞株は、腸の挙動を模倣するために広く用いられてきた(米港特許5,824,633号参照)。Caco−2株は、成功裡に作られ、組織培養研究室で日常的に維持されていた。この20年の間で、Caco−2細胞培養システムは、腸での薬物吸収を迅速に選別する上での適切なインビトロでのモデルとして認められてきた。Caco−2細胞は、もとはヒトの結腸腺癌から分離されたが、密集細胞として、トランスウェル(Transwell)細胞培養プレート中で、日常的に培養された。培養における差別化において、これは、正しい形態を呈し、ヒトの腸上皮に典型的である刷子縁加水分解酵素、イオン輸送特性、搬送システムの多くを示す。さらに、成長した無傷のCaco−2細胞培養物は、特徴的な経上皮電気抵抗(TEER)を示すが、これは、隣接する細胞間での密接な結合複合体の存在と、腸細胞の本来的なイオン輸送機能とを反映したものである。正常なヒトの腸粘膜と同様、Caco−2細胞は、第1相薬物代謝酵素(すなわち、シトクロムP450 1A1および1A2)および第2相薬物代謝酵素(すなわち、UDG−グルクロノシルトランスフェラーゼ)、ならびに、Pタンパク質などの薬物輸送体などを顕著な量有する。したがって、Caco−2細胞培養系は、小さい分子量の(親水性および親油性薬物)および治療用ペプチドの輸送、およびそのメカニズムを研究するために、幅広く使用されてきた。したがって、Caco−2細胞培養物を用いて得られた結果は、ヒトの腸による薬物吸収を予測している。
【0050】
実施例2
Caco−2細胞の存在下でのGPEおよびG−2MePEの安定性
目的
本研究の目的は、Caco−2培養物中でペプチダーゼの存在下での、GPEおよびG−2MePEの酵素安定性を調査することである。
【0051】
方法
Caco−2結腸癌細胞は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手し、10%ウシ胎仔血清およびペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep)を加えた、高グルコースDMEM中で、37℃、5%のCO2中で培養、維持した。細胞は、約5〜7日継代培養した。50〜100μg/mlのGPEおよび50〜100μg/mlのG−2MePEそれぞれを、Caco−2単層と共に、T75フラスコ中のハンクス平衡塩類溶液(HBSS)緩衝液(pH 7.4)中、37℃で培養し、空気中の5%のCO2にさらした。標本を、0、15、30、45、60、120、150、180、210、240、360および1440分で採取した。
【0052】
標本をそれぞれ50μlずつ含有する試験管に、0.04Mの硫酸を400μl加えることにより、採取した標本を抽出した。試験管を、氷上に5分間放置し、ボルテックスした。各試験管に、10%タングステン酸ナトリウムを50μl加え、直後に各試験管をボルテックスし、氷上に10分間放置し、再びボルテックスし、氷上にさらに10分間放置した。細胞を、4℃で20分間、20,000gで遠心分離機にかけた。試験用に上澄みを採取した。
【0053】
無傷のGPE、G−2MePEおよびその代謝産物を、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。この高圧液体クロマトグラフィーでの分析は、アクア(Aqua) 5μ、250×4.6mm、C18カラム(フェノメネックス(Phenomenex)、ニュージーランド、オークランド在)を、ウォーターズ(Waters) 2695アライアンス(Alliance)分離モデル、および、ウォーターズ(Waters)2996PDA検出器に接続し、200nmにセットした吸収で行った。標本のタンパク質含有量は、ローリー(Lowry)検定を用いて、測定した。
【0054】
結果
Caco−2細胞の存在下で、GPEの分解からは4つの代謝産物が特定された。G−2MePEは、GPEよりも、Caco−2細胞の酵素による酵素分解に対して、より耐性があった(図1)。G−2MePE類似体には、代謝産物が見つからず、Caco−2細胞の存在下での、G−2MePE類似体の安定性が確認された。
【0055】
結論
腸上皮細胞に接触した際に、G−2MePEは酵素的に安定であるとの結論に達した。
【0056】
実施例3
異なるpHにおける、Caco−2細胞存在下でのG−2MePE酵素安定性
目的
本研究の目的は、Caco−2細胞によるG−2MePEの分解におけるpHの効果を決めることである。
【0057】
方法
異なるpH状態のCaco−2細胞の密集培養物の尖端側に、100μg/mlのG−2MePEを加えた。標本を、0、15、30、45、60、90、120、150、180、210および240分後に採取した。標本を、15分間、20,000gで遠心分離機にかけた。50μlの上澄みをHPLCのカラムに投入した。G−2MePEおよび代謝産物の分析は、アクア(Aqua) 5u、250×4.6mm、C18カラム(フェノメネックス(Phenomenex)、ニュージーランド、オークランド在)を、ウォーターズ(Waters) 2695アライアンス(Alliance)分離モデル、および、ウォーターズ(Waters)2996PDA検出器に接続し、210nmでの吸収を測定して行った。異なるpHにおけるG−2MePEのペプチド分解作用および半減期を決めた。
【0058】
結果
G−2MePEのペプチド分解作用の最高値は、pH6.5において見られた。G−2MePEのペプチド分解作用の最低値は、pH5.5未満の酸性条件において見られた(図2)。中程度のG−2MePEの分解は、塩基性条件(pH7〜9.5)にも見られた。
【0059】
結論
G−2MePEは、pH≦5.5において安定している。したがって、G−2MePEは、胃の比較的酸性である環境(例えば、pH<3.0)では保護されうるが、十二指腸、回腸または結腸のより中性環境においては、おそらくは、保護の程度はより低いであろう。
【0060】
実施例4
阻害剤の存在下でのGPEの酵素分解
目的
本研究の目的は、Caco−2細胞ペプチダーゼまたはプロテアーゼが、GPEを分解できるか否かを決定することである。この論拠は、GPEがCaco−2細胞により酵素的に分解されうるならば、G−2MePEも酵素分解の対象になるであろうということであった。このような分解を阻害することにより、G−2MePEの生物利用効率を改善することができる。
【0061】
方法
酵素阻害剤であるSDA(胆汁塩)およびEDTAの存在下または非存在下で、GPEを、Caco−2細胞の密集培養物で、4時間培養した。標本を、異なる時点で採取した。無傷のGPEを、HPLCで分析し、標本のタンパク質含有量をローリー検定により推定した。阻害百分率を用いて、GPEの分解の阻害における胆汁塩およびEDTAの効果を評価した。
【0062】
結果
図3に、培養Caco−2細胞の存在下での、GPEのペプチド分解に対する胆汁塩(SDA)およびEDTAの効果について示す。GPEの分解は、SDA(≧5mM)およびEDTA(≧20mM)において、有意に阻害された。Caco−2の存在下でGPEのペプチド分解を妨げる効果の序列は、SDA(20mM)>SDA(10mM)>EDTA(20mM)>SDA(5mM)>SDA(2mM)であった。GPEのペプチド分解の阻害は、用いたSDAの投与量に比例した。
【0063】
結論
このインビトロでの研究により、アミノペプチダーゼおよびエンドペプチダーゼを含むペプチダーゼが、Caco−2細胞によるGPEの分解に関与できることが示された。SDA(5〜20mM)およびEDTA(20mM)は、このような分解を防ぐように、有意に阻害することが示された(図3)。したがって、ペプチダーゼ阻害剤またはプロテアーゼ阻害剤は、G−2MePEの生物利用効率を改善することができる。
【0064】
実施例5
GPEおよびG−2MePEの細胞毒性
目的
本研究の目的は、GPEおよび/またはG−2MePEが、細胞の成長を阻害しうるか否かを決めることである。この論拠は、もしG−2MePEが腸の細胞成長を阻害するのであれば、このような成長の阻害は、許容可能なG−2MePEの投与量を限定しうるからである。スルホローダミンB(SRB)を用い、Caco−2細胞の成長を阻害するのに必要な50%阻害濃度(IC50)を決めた。Caco−2細胞単層を通過する輸送研究のために安全な投与量を決定したいと考えた。
【0065】
方法
スルホローダミンB(SRB)は、培養細胞の細胞タンパク質の定量化に用いる際に有用なタンパク質染料であると判明している。この染料は、細胞内タンパク質の塩基性アミノ酸に結合すると考えられている。したがって、結合染料の比色分析測定をすることにより、推定細胞数を得ることができる。この検定方法は、単純で再現性があり、この終点測定では、時間は問題とはならず、テトラゾリウム誘導体を用いた検定に対して、有意な利点がある。
【0066】
Caco−2細胞は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から購入し、10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリン・ストレプトマイシン・グルタミン酸塩、1%の非必須アミノ酸およびトリプシンEDTAを含有する殺菌したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で培養された。殺菌したT75フラスコ、24ウェル培養プレート、96ウェルマイクロタイタープレート、遠心分離管および先端部は、ライフ・テクノロジーズ社(Life Technologies Inc.)(ニュージーランド、オークランド在から)から購入した。スルホローダミンB(SRB)、トリクロロ酢酸(TCA)、酢酸、非緩衝トリス塩基(pH10.5)およびDグルコースは、シグマ・アルドリッチ・ケミカルズ社(Sigma−Aldrich Chemicals Co.)(ニュージーランド、オークランド在)から購入した。トリパンブルー、および、N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N'−[4−ブタンスルホン酸](HEPES)は、ギブコ(Gibco)から入手した。12ウェルのトランスウェルインサート(透過性のポリカーボネート膜24mm径および12mm径、細孔径0.4μm)およびプレートは、コーニング・コスター社(Corning Costar Corp.(アメリカ合衆国、ニューヨーク州在))から購入した。
【0067】
GPEおよびG−2MePEを、Caco−2細胞と共に、96ウェルプレートで、24、48、72、96および120時間培養した。細胞は、TCAにより固定され、SRBが、各ウェルに加えられた。細胞結合染料が、トリス塩基緩衝液を用いて抽出され、この染料を可溶化し、吸収度は、プレートリーダーを用いて570nmで決められた。成長の阻害は、相対的な生存能力(% 対照)として表され、IC50は、対数/プロビット変換後の濃度反応曲線から算出された。
【0068】
結果
Caco−2細胞成長に関するG−2MePE(24〜120時間)のIC50は1〜4.6mMであると見出した。GPEは15mMの濃度でさえも、Caco−2細胞の成長を35%しか阻害せず、したがってCaco−2細胞成長のIC50は≧15mMであった(表1)。
【0069】
表1: G−2MePEの存在下でのCaco−2細胞の成長のIC50

【0070】
米国特許7,041,314号中で、われわれは、G−2MePEが10nm〜1mMの範囲の濃度において、効果的なインビトロでの神経保護化合物であり、10nM〜10μMという効果的な濃度の範囲が広範囲に渡って水平状態であると見出した(米国特許7,041,314号図15参照)。
【0071】
結論
G−2MePEのIC50は、インビトロで神経保護を行うと知られているG−2MePEの濃度よりも高い。したがって、インビトロで有効であると見出されたのと等価の濃度で、インビボでG−2MePEを使用することは、腸上皮細胞に対して毒性を有さないであろうと結論づけた。
【0072】
実施例6
フルオレセインのCaco−2細胞透過性
目的
本研究の目的は、通常の親水性材料がCaco−2上皮細胞の密集培養物を通過することにより引き起こされる、みかけの透過係数(Papp)および経上皮電気抵抗(TEER)を決めることである。
【0073】
方法
Caco−2細胞培養の完全性は、密集培養物を通るTERRおよび14Cマンニトールまたはフルオレセインの漏れを測定することにより評価した。密集細胞培養物を有するインサートおよび300Ω/cm2の電気抵抗が、本研究には適切であると考えられた。フルオレセインまたは0.5μCi/50μl14Cマンニトールが、頂端細胞に加えられ、1〜4時間培養された。容認可能な漏れは、0.5〜1%未満であると考えられた。優良な完全性を持つ6つのインサートが選択されて、輸送緩衝液で洗浄された。全ての頂端細胞および全ての基底外側ウェルの培地は除去された。細胞培養物は、37℃の暖かい輸送緩衝液で洗浄された。
【0074】
透過促進剤の効果を決めるために、様々な透過促進剤の存在下または非存在下で、Caco−2細胞を含有するトランスウェルのドナー側(膜上方で)で、フルオレセインナトリウム(MW=376)を培養した。標本(0.4ml)を、レセプター側(膜の下の側)から、15、30、45、60、90、120、150、180、210、240および360分にそれぞれ採取した。次に、トランスウェルのレセプター側の溶液を、0.4mlの新鮮なHBBSと置き換え、ドナー側から0.1ml採取し、(次に、0.1mlの同じ濃度のフルオレセインナトリウムと置き換えた。)。反応は、ドナー側から、各標本に同じ量のHCL(0.2M)を加えるか、2%の酢酸と共に3:1でアセトニトリル/メタノールを加えることにより終了した。標本を、15分間、3000gで遠心分離機にかけた。上澄みを採取し、スピードバキューム(Speed Vacuum)で乾燥し、移動相で希釈し、結果として生じた標本を、分光蛍光光度計で分析した。みかけの透過係数を用いて、対照群と処理群との間の透過性を比較した(図4)。ミリポア(Millipore)電圧計を用いて、様々な時点での経上皮電気抵抗(TEER)を測定した。30〜180分の間のTEER値の平均値を、対照群と処理群との間で比較した(図5)。
【0075】
結果
カプリン酸ナトリウム(10mMまたは20mM)、タウロコール酸ナトリウム(30mM)、EDTA(40mM)およびSDA(1mM)は、それぞれ、3時間の輸送実験中で、Caco−2上皮細胞のフルオレセインに対する透過性を有意に高め(P<0.05)、TEERを低減した(図4および図5)。しかし、カプリン酸ナトリウム(20mM)の効果は、同じ濃度のタウロコール酸塩の効果よりも大きかった(図4)。
【0076】
結論
タウロコール酸ナトリウム(≧20mM)、カプリン酸ナトリウム(≧10mM)、EDTA(40mM)またはSDA(1mM)を用いて、細胞間経路および細胞間隙経路に影響を与えることにより、Caco−2上皮細胞膜を通過する親水性化合物(フルオレセイン)の透過性を改善することができた。
【0077】
実施例7
Caco−2細胞のG−2MePEの取り込み
目的
本研究の目的は、Caco−2細胞によるG−2MePEの取り込みを評価し、腸細胞を通過するペプチドの能動活性を探索し、Caco−2細胞によるG−2MePEの取り込みに関して、培養培地のpH、時間、温度および基材の濃度の効果を決めることである。
【0078】
方法
Caco−2培養物(5mlのDMEM培地中に5×105個の細胞)を、60mmのプラスチック培養ディッシュで成長させた。2〜3日毎に、新鮮な培地に取り替えた。取り込み検定研究のために、細胞を37℃で12〜14日間培養した。取り込み検定研究は、細胞が密集状態になった後、すなわち、12〜14日間培養した後に開始した。各ディッシュを、HEPES(pH7.4)で洗浄した。G−2MePEを、各60mmの培養ディッシュに加え、37℃で培養した。G−2MePEを加えた後、5秒、15秒、30秒、45秒、1分、2分、5分、10分、15分、30分および120分の時点で標本を採取した。セルスクレーパーで細胞を擦り取った後、抽出溶液中にいれ、20分間、20,000gで遠心分離機にかけた。上澄みをHPLCで分析し、G−2MePEとその代謝産物を識別した。ペレットは、NaOHで希釈され、ローリー検定によりタンパク質含有量を決めた。
【0079】
結果および議論
この研究は、G−2MePEが、Caco−2細胞により取り込まれたことを示す(すなわち、1.3%、図6)。G−2MePEの取り込みは、時間に依存し、投与量に依存した。
【0080】
実施例8
Caco−2細胞を通過するG−2MePEの透過性、透過促進剤の効果
目的
本研究の目的は、透過促進剤が、Caco−2細胞膜を通過するG−2MePEの輸送を増加させることができるか否かを決めることである。
【0081】
方法
細胞培養の完全性は、実施例6で記載したように確認された。様々な透過促進剤の存在下または非存在下で、Caco−2細胞を含むトランスウェルのドナー側に、G−2MePEが、3回または6回繰り返して加えられた(図4)。1.5mlの輸送緩衝液が、レセプター側に加えられた。その後、トランスウェルは、培養のために放置された。標本(各0.4ml)は、レセプター側で、異なる時点(15、30、45、60、90、120、150、180、210、240および360分)で採取された。各標本の採取後、0.4mlの新鮮な緩衝液を、トランスウェルの側に加え、そこから標本を取った。続いて、0.1mlのドナー溶液を採取して、無傷のG−2MePEの濃度を測定した。各サンプリングの後、0.1mlの同じ濃度のG−2MePEで置き換えられた。
【0082】
ペプチド分解は、各標本に同じ量のHCL(0.2M)を加えることにより終了した。結果として得られた標本は、15分間、3000gで遠心分離機にかけた。上澄みを採取し、スピードバキューム(Speed Vacuum)で乾燥させ、移動相で希釈し、分光蛍光光度計で分析した。みかけの透過係数を算出し、これを用いて、対照群と処理群との間の透過性を比較した(図7)。ミリポア(Millipore)電圧計を用いて、様々な時点での経上皮電気抵抗(TEER)を測定した。30〜180分間のTEER値の平均値を、対照群と処理群との間で比較した。
【0083】
結果
EDTA(30mM)、カプリン酸ナトリウム(20mM)、タウロコール酸ナトリウム(20mMおよび30mM)、クエン酸(30mM)およびバシトラシン(3.5mM)は、それぞれ、G−2MePEに対するCaco−2上皮細胞の透過性を有意に高めた(図7)。TEERは、EDTA(30mM)、カプリン酸ナトリウム(20mM)、タウロコール酸ナトリウム(20mMおよび30mM)、クエン酸(30mM)を用いることにより、有意に低減した(データ不図示)。
【0084】
結論
タウロコール酸ナトリウム(≧20mM)、カプリン酸ナトリウム(≧10mM)、EDTA(40mM)またはSDA(1mM)を用いて、おそらくは細胞間経路および細胞間隙経路に影響を与えることにより、Caco−2上皮細胞膜を通過するG−2MePEの透過性を改善することができた(図7)。
【0085】
顕著なことに、および、全く予期しなかったことであるが、カプリル酸塩およびタウロコール酸塩のフルオレセインおよびG−2MePEの取り込みに関する効果は、相当異なっていた。フルオレセインに関しては上述したように(図4)、20mMカプリル酸塩の効果は、20mMのタウロコール酸塩の効果よりも大きかった。しかし、驚くべきことに、G−2MePEの取り込みに関しては、20mMのタウロコール酸塩は、20mMのカプリル酸塩よりも、はるかに大きい効果があった(図7)。この観察のメカニズムについてはわかっていないが、フルオレセインとは異なる、G−2MePEの予期せぬ特性を示している。
【0086】
実施例9
インビトロでのGPEおよびG−2MePEのタンパク質結合
目的
本研究の目的は、GPEおよびG−2MePEに対する血清タンパク質結合が、インビボでのこれらの薬物の生物利用効率を変えうるか否かに関する。この論拠は、もしこれらの薬物が、血漿タンパク質により結合されるのであれば、遊離(結合されない)薬物を低減し、神経保護効能を低減することになりうる。
【0087】
方法
限外ろ過法を用いて、ウシ血清アルブミン(BSA)(シグマ(Sigma)社、アメリカ合衆国在)の存在下での遊離GPEおよびG−2MePEの画分測定する。異なる分量のGPEおよびG−2MePE(1g/L)を、アルブミン(88g/L)またはミリQ(MilliQ)水と共に混合し、各システムを3部(全体量は10ml)調製した。各システムの結合分画および未結合分画を、ウシ血清アルブミンから、限外ろ過ユニット(セントリザルト(Centrisart) I(登録商標),分子量10,000ダルトンを除去、ザルトリウス・バイオラボ(Sartorius Biolab))を用いて分離した。
【0088】
システム1(図8および図9中の、左の3つの棒)は、5mlのGPEまたは5mlのG−2MePEを、それぞれ5mlアルブミンと1:88の割合で混合して調製した。
【0089】
システム2(図8および図9中の、中央の3つの棒)は、5mlアルブミンと、2.5mlのGPEまたは2.5mlのG−2MePEと、2.5mlのミリQ水とを、薬物対アルブミンの割合がそれぞれ1:176になるように混合して調製した。
【0090】
システム3(図8および図9中の、右の3つの棒)は、2.5mlアルブミンと、5mlのGPEまたは5mlのG−2MePEと、2.5mlのミリQ水とを、薬物対アルブミンの割合がそれぞれ1:44になるように混合して調製した。非特定的な対照は、様々なシステムの存在下での、最初のGPEまたはG−2MePEの全量として、2.5mlまたは5mlのGPEまたはG−2MePEと、7.6mlまたは5mlの水と混合して調製した。全システムともに、よく混ぜ合わせ、4℃で1.5時間放置した。
【0091】
各システムから2mlの標本を取り、別の限外ろ過ユニットに移した。全標本を、遠心分離する前に25℃で平衡させた。3部にした標本を5分間、1000gで予め遠心分離し、標本とユニットの膜とを十分接触させた。予めの遠心分離の後、全標本を、30分間、2500gで遠心分離した。限外ろ過液(Cu)中の、各システムの非結合のGPEまたはG−2MePE(ろ過された液体)を、注意して、ラベルをつけた乾燥管中に除去し、HPLCにより、アクア(Aqua)5u、250×4.6mm、C18カラム(フェノメネックス(Phenomenex)、ニュージーランド、オークランド在)を、ウォーターズ(Waters) 2695アライアンス(Alliance)分離モデル、および、ウォーターズ(Waters)2996PDA検出器に接続し、210nmにおける吸収を測定して、分析した。GPEまたはG−2MePEの結合百分率を、以下の式により決めた。
GPEまたはG−2MePEの結合百分率=[1−Cu/ct]×100
ここで、Ctは、アルブミンでの培養前に限外ろ過ユニット中に存在する、全GPEまたはG−2MePEの濃度を示し、
ここで、Cuは、アルブミンでの培養後に限外ろ過ユニット中に存在する、全GPEまたはG−2MePEの濃度を示す。
【0092】
結果
図8の各システムの左側の棒は、アルブミンでの培養前のシステム1、2および3の各システム中にあるGPEの量(単位 mg)を示す。図8の各システムの中央の棒は、GPEでの培養前のシステム1、2および3の各システム中にあるアルブミンの量(単位 mg)を示す。図8の各システムの右側の棒は、アルブミンへのGPEの結合百分率を示す。
【0093】
図9の各システムの左側の棒は、アルブミンでの培養前のシステム1、2および3の各システム中にあるG−2MePEの量(単位 mg)を示す。図9の各システムの中央の棒は、G−2MePEでの培養前のシステム1、2および3の各システム中にあるアルブミンの量(単位 mg)を示す。図9の各システムの右側の棒は、アルブミンへのG−2MePEの結合百分率を示す。
【0094】
G−2MePEは、GPEよりもタンパク質結合が少なく、結合レベルは、用いたタンパク質の量に比例した(図8および図9)。
【0095】
結論
予想外であるが、G−2MePEはGPEよりもたんぱく質結合が低く、したがって、G−2MePEはインビボでの使用に適していると見出した。図8と図9とを比較すると認識できるように、薬物対タンパク質の割合が最高値である(1:88および1:44)であるときに、G−2MePEのアルブミンへの結合はより少なかった。これに対して、薬物対タンパク質の割合が同じ場合で(1:88および1:44)、より多いGPEが結合されたままの状態であった。この驚くべき現象のメカニズムの説明はつかないが、薬物と血漿タンパク質との結合は、薬物の薬物速度論的特性および薬理学的特性に、著しく影響を与えることができる。これは、分子量が小さいことにより、非結合の薬物は、血管壁をより容易に通り抜けることができ、タンパク質結合薬物は、分子量が大きいためこれができないという事実による。さらに、ヒトの血清アルブミン(HSA)やα−1−酸−グリコタンパク質(AGP)などの血漿タンパク質の本来的なキラリティにより、薬物と血漿タンパク質との結合は、立体選択的な性質も有する。さらに、多くの治療用分子は、タンパク質と結合している間は、それほど活性がない。
【0096】
したがって、タンパク質結合が多いほど、薬剤の有効濃度が小さくなり、したがって、治療効能も小さくなる。G−2MePEは、生物利用効率が高いので、G−2MePEはインビボにおける経口使用において、有効な神経保護剤でありえる。
【0097】
実施例10
腸溶コーティング錠剤は、G−2MePEの安定性を改善する
目的
本研究の目的は、腸溶コーティング錠剤が、G−2MePEの生物利用効率を高めることができるか否かを決定することである。
【0098】
方法
錠剤調製
G−2MePE、クエン酸錠剤分解物質、ポリビニルピロリドン、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびラクトースを含有する0.14〜0.2gの粉末の混合物を、錠剤空洞に充填し、直接錠剤に圧縮した。オイドラギット(EUDRAGIT)(登録商標)L100−55、ジブチルフタレート、タルクおよびイソプロパノールを含有するコーティング溶液を用いて、錠剤をコーティングした。コーティング工程は、特定のコーティング施設を用いて行った。コーティング材料は、錠剤重量の約1%であった。
【0099】
BP崩壊試験
崩壊試験は、ビーカーを11個と、30rpmで上下に動き、かつ、錠剤用のラックアセンブリを含む硬いバスケットを運ぶ電動式シャフトとを用いて行った。アセンブリは、各管からなる。崩壊アセンブリのそれぞれに、6つの錠剤を入れた。各アセンブリは、0.1Mの塩酸を含有するビーカー内でつるされ、120分間ディスクなしで作動された。次に、アセンブリを液体から取り出し、これを調べた。コーティングの破片以外、含有物が出たことを示す割れ目の兆候や、崩壊の兆候を示した錠剤はなかった。ビーカー中の0.1Mの塩酸をpH7のリン酸塩緩衝液に置き換えて、各管にディスクを付け加えた。さらに60分間30rpmで、装置を作動した。錠剤は、6つの錠剤全てが崩壊しなかった場合に、試験合格とした。
【0100】
結果と結論
腸溶コーティング錠剤を製剤し、これらがBP崩壊試験に合格した。腸溶コーティング錠剤は、G−2MePEの経口投与にとって適切な製剤になることができるとの結論に至った。
【0101】
実施例11
G−2MePE微小粒子
目的
本研究の目的は、微小粒子が、G−2MePEを胃内のペプシンなどの酵素分解から保護することができるか否かを決めることである。このために、インビトロで、様々なpHの溶液中で一連の実験を行った。
【0102】
方法
様々な量のG−2MePEまたはフルオレセインナトリウムを、オイドラギット(EUDRAGIT)(登録商標)FS30Dの30%分散液で溶かし、遠心分離機の管に移した。標本を含有する管を、−80℃で凍結し、標本を一晩乾燥させるために乾燥凍結機に移した。乾燥後、遠心分離管の重量を測定した。微小粒子の調製液各20mg(ポリマーと薬物の割合は、約20:1、10:1、1:5および1:2.5)を0.1M塩酸200mlまたは0.2Mのリン酸塩緩衝液(pH7)200mlを含有する溶液に加えた。様々な時点で標本を採取した。
【0103】
フルオレセインナトリウムを分析するために、96ウェルプレート中に、3部にした標本を加えた。このプレートを、蛍光マイクロプレートリーダー(ワラック(Wallac)1420、ビクター(Victor)、複数のリーダー)の495nmの励起波長を用いて、および、520nmでの蛍光読み取りすることにより、読み取った。G−2MePEの標本3部の分析は、HPLCにより、アクア(Aqua)5μ、250×4.6mm、C18カラム(フェノメネックス(Phenomenex)、ニュージーランド、オークランド在)を、ウォーターズ(Waters) 2695アライアンス(Alliance)分離モデル、および、ウォーターズ(Waters)2996PDA検出器に接続し、210nmにセットした吸収で行った。
【0104】
結果と結論
微小粒子を調製し、インビトロで、酸性培地と中性培地とで試験を行った。腸溶コーティングポリマーであるオイドラギット(EUDRAGIT)(登録商標)を含む微小粒子は、胃の酸に対して耐性があり、腸管の至る所で放出された。親水性化合物のモデルであるフルオレセインナトリウムの微小粒子からの放出は、pH7において、pH1の培地中の放出よりも、約4倍速かった。この結果により、腸溶コーティングポリマーが、経口投与後にG−2MePEの治療効率を高めることができることが確認された。微小粒子は、持続放出が可能である物質の放出時間の制御も行った。(図10Aおよび図10B)。
【0105】
腸溶コーティングは、pHが小さい(例えば、<3.0)胃中でのG−2MePEの放出を遅らせることができ、pHが中性により近い十二指腸、空腸、回腸または結腸においては、この放出を高めることができるとの結論に至った。
【0106】
実施例12
G−2MePEマイクロエマルジョン
目的
本研究の目的は、G−2MePEを含有する油中水滴マイクロエマルジョンの製剤を行うことである。
【0107】
材料および方法
オイル: カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(クロダモル(Crodamol) GTCC(登録商標))は、ケムカラー・インダストリーズ(NZ)社(Chemcolor Industries (NZ)Ltd)(ニュージーランド、オークランド在)から供給を受けた。C8/C10のモノ/ジグリセリドは、アビテック社(Abitec Corporation)(ウィスコンシン州、ジェーンズヴィル在)から供給を受けた。
【0108】
界面活性剤: ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(ツイーン(Tween)80(登録商標))、ソルビタンモノオレエート(スパン(Span)80(登録商標))は、ジグマ−アルドリッヒ・ヒェミー(ドイツ、シュタインハイム在)から入手した。
【0109】
薬物およびその他の化学物質: G−2MePEは、米国特許7,041,314号(本願中に参照することにより完全に盛り込まれている)に記載された方法で、製造された。リン酸二水素カリウム、塩化カリウムおよびオルトリン酸は、シャルラウ・ケミー(Scharlau Chemie)(スペイン、バルセロナ在)から購入した。
【0110】
擬三次ダイアグラムの構成: クロダモル(Crodamol) GTCC(登録商標)およびカプマルMCM(登録商標)を、別々に重量測定し、それぞれ3:1の割合(45g:15g)で混合し、完全に混合するためにボルテックスした。界面活性剤であるツイーン(Tween)80(登録商標)およびスパン(Span)80(登録商標)を、別々に重量測定し、それぞれ3:2の重量割合(36g:24g)で混合した。この混合は、十分に行った。300mg/mlのG−2MePE原液の調製を900mgのG−2MePEを3mlの生理食塩水中で懸濁させて、さらにこの溶液を、G−2MePEの濃度(150mg/ml)になるように、3mlのリン酸塩緩衝液pH3(イオン強度は0.1モル/リットルに等しい)(1:1)に希釈することにより行った。G−2MePEを含有する水相を、一晩室温で放置し、平衡させた。オイル(クロダモル(Crodamol) GTCC(登録商標)およびカプマルMCM(登録商標)の、3:1の割合での混合物)と、非イオン性界面活性剤(ツイーン(Tween)80(登録商標)とスパン(Span)80(登録商標)との、3:2の割合での混合物)と、G−2MePEを150ml/mlの濃度で含有する水相とを含む、多くの標本(250を上回る標本)を調製し、一晩室温で放置し、平衡させた。通常光の顕微鏡検査および偏光顕微鏡検査を用いて、マイクロエマルジョン、液晶または粗エマルジョンを生じさせる組み合わせを特定した。
【0111】
G−2MePEを含有するマイクロエマルジョンの調製: クロダモル(Crodamol)GTCC(登録商標)およびカプマルMCM(登録商標)を上述の割合で混合した。非イオン性界面活性剤を、上述の割合で混合した。G−2MePE含有原液を、上述のように調整した。クロダモルとカプマルとの混合物(7.6g)を、小さなビーカーに加え、続いて、ツイーン(Tween)80(登録商標)とスパン(Span)80(登録商標)との混合物(2g)を加え、10分間1000rpmで攪拌する磁石を用いて、2つの成分を完全に混合した。
【0112】
G−2MePE溶液(0.4g)を、上述の混合物に、滴として加えた。(滴毎に10μl)10gのマイクロエマルジョンシステム中の、クロダモルおよびカプマル:ツイーン(Tween)80(登録商標)およびスパン(Span)80:G−2MePEの割合は、7.6:2:0.4であった。1リットル毎に6mgのG−2MePEを含有するマイクロエマルジョンは、視覚的に、等方性がある透明な溶液として特定され、熱力学的に安定していた。粗エマルジョンは、その濁度と等方性とにより特定された。液晶は、その特徴的な複屈折性(すなわち、等方性がないこと)および偏光中の干渉パターンの外観により特定された。液晶のこのような特性は、大きなクラスタ中で互いに平行である分子の方向性にも関連付けられることができ、これは顕微鏡下で見ることができる。
【0113】
結果および結論
成分の擬三次ダイアグラム(図11)を作り、異なる領域の境界を特定した。MEはマイクロエマルジョン、LCは液晶、coarseは、粗エマルジョンである。三角内の点線領域は、粗エマルジョンを提供する割合である。レンガ模様で示した領域は、液晶製剤を示し、チェック模様で示した領域は、マイクロエマルジョンを示す。
【0114】
G−2MePEマイクロエマルジョンは、200nm未満の均一な滴サイズを持つことが観察された。脂質ベースのマイクロエマルジョンは、酵素分解に対して薬物を保護し、かつ界面活性剤により膜流動性の増進が誘発され、薬物の吸収が増進されるので、薬物の安定性を向上させることができ、ペプチドを含む薬物の経口デリバリーには有利である。マイクロエマルジョン、粗エマルジョンおよび液晶製剤を用いて、経口利用可能なG−2MePEをデリバリーすることができるとの結論に至った。
【0115】
実施例13
ポリマーナノカプセル(Nac)中のG−2MePE
目的
本研究の目的は、化合物を分解しないように保護し、腸上皮を通じた輸送を容易にする、G−2MePEのナノカプセル・デリバリーシステムを開発することである。
【0116】
方法
界面重合法を用いて、ポリマーナノカプセル(Nac)を調製した。まず、実施例12で記載した方法を用いて、マイクロエマルジョンを調製した。次に、マイクロエマルジョン2(MC2)10gを、以下の実施例14で記載する方法で調製した。ECA(エチル−2−シアノアクリレート)モノマー(シグマ社、ミズーリ州、セントルイス在)100mg、150mgまたは300mgを、300gのクロロホルムと共に、エッペンドルフチューブ中で混合し、ボルテックスした。約800rpmで4℃での磁性攪拌中に、このモノマー溶液をMC2に滴として加え、一晩放置し、ポリマー重合を生じさせた。
【0117】
結果として得られた生成物を、25℃で60分間、51,500gで遠心分離機(ベックマン(Beckman) L−70遠心分離機、70Tiロータ)にかけて、Nacを単離した。上澄みを除去した後、沈殿物を空気乾燥し、続いてボルテックスによりエタノール中で分散させ、次に、過剰なオイルと界面活性剤とを除去するために超音波処理した。これを、次に25℃で15分間、〜1600xgで遠心分離機にかけた(シグマ 1〜13マイクロ遠心分離機)。洗浄工程を3度繰り返し、各標本から、全ての残留物が確かに除去されるようにした。
【0118】
その後、結果として得られた生成物を、ミリQ水中で再分散させ、一晩−20℃で凍結させ(レオナルド(Leonard)大型冷凍庫、フィッシャーアンドパイケル社(Fischer and Paykel Ltd.)、ニュージーランド在)、続いて、1日間−52℃で、バルク・トレイ・ドライヤー・システム(Bulk Tray Dryer System)(ラブコンコ社、アメリカ合衆国在)を用いて、30×10-3ミリバールの真空で、凍結乾燥させた。
【0119】
結果および結論
G−2MePEマイクロエマルジョン含有ポリマーナノカプセルは、小さい球面のカプセルで、概して径が100〜200nmの範囲の大きさのものである(図12Aおよび図12B)。ナノカプセルは、ペプチドの経口生物利用効率を高めるために使われてきたが、これはナノカプセルが、タンパク質分解からペプチドを保護することができるからである。さらに、ナノカプセルは、腸粘膜を通過し、したがって、腸管腔からのペプチドの吸収を容易にすることができる。ナノ粒子は、3つの異なる経路で、腸粘膜を通って移動することがわかっている。この3つの経路とは、GALTのパイエル板、細胞内経路および細胞間経路である。
【0120】
G−2MePE含有ナノカプセルを、G−2MePEの有効な経口デリバリーとして用いることができるとの結論に達した。
【0121】
実施例14
マイクロエマルジョン、液晶および粗エマルジョンからのG−2MePEの放出
目的
本研究の目的は、本発明の異なる相システムからのG−2MePEの放出特性を決めることである。
【0122】
方法
薬物放出研究は、垂直型フランツ細胞(モデル VTC−200)を用いて行われた。実施例12に基づいて調製された3つの異なる相システムのそれぞれから、1つの製剤を選択した。マイクロエマルジョン1(MC1)は、リン酸塩緩衝液pH3中の、GTCC:MCM(3:1)を60%と、界面活性剤(ツイーン(Tween)80(登録商標):スパン(Span)80(登録商標))(3:2)を30%と、150mg/mlのG−2MePEを10%とからなる。マイクロエマルジョン2(MC2)は、リン酸塩緩衝液pH3中の、GTCC:MCM(3:1)を45%と、界面活性剤(ツイーン(Tween)80(登録商標):スパン(Span)80(登録商標))(3:2)を25%と、150mg/mlのG−2MePEを30%とからなる。液晶は、リン酸塩緩衝液pH3中の、GTCC:MCM(3:1)を15%と、界面活性剤(ツイーン(Tween)80(登録商標):スパン(Span)80(登録商標))(3:2)を70%と、150mg/mlのG−2MePEを15%とからなる。粗エマルジョンは、リン酸塩緩衝液pH3中の、GTCC:MCM(3:1)を16%と、界面活性剤(ツイーン(Tween)80(登録商標):スパン(Span)80(登録商標))(3:2)を14%と、150mg/mlのG−2MePEを70%とからなる。上述の様々な量の製剤のG−2MePE標本0.25gを三部、フランツ細胞に移し、薬物放出研究を行った。
【0123】
セルロース膜透析管を、実験開始前に24時間水に浸した。この膜は、G−2MePEの透過を選択的に許容し、MC成分がドナーコンパートメント中に分散するのを回避する。この研究中、垂直型フランツ細胞を用いて、薬物放出曲線を得た。垂直型フランツ細胞は、上部がドナー室からなり、その下にレセプター室があり、これが、透析膜により分離されている。周期的に、標本を、サンプリングポートを通じて、レセプター室から採取した。レセプター室の壁は、加熱器に連結されたウォータージャケットにより取り囲まれ、細胞中の温度が一定に保たれた。
【0124】
各フランツ細胞のレセプターコンパートメントを、pH7.4のリン酸塩緩衝液で充填した。一方、ドナーコンパートメントは、選択したG−2MePEの製剤を含有させた。ドナーコンパートメントは、密閉フィルム(パラフィルム(Parafilm)「M」、ペシニー・プラスチック・パッケージング社(Pechiney Plastic Packaging)、イリノイ州、シカゴ在)で密閉した。この実験を通じて、3つのフランツ細胞を、上述のように調製した各製剤に割り当てた。ここでレセプター培地は、〜37℃の温度に保たれた。標本(400μl)を、0、2、5、10、15、20、30、45、60、90、120、180、240、300、480、600、720および1440分でレセプターコンパートメントから採取し、同量の新鮮な緩衝液をレセプターに再充填した。各標本の吸収度を、UV分光光度計(バイオクロム リブラ(Biochrom Libra) S32PC)を用いて、波長210nmで測定した。各標本のG−2MePEの濃度を算定するために、標準的な曲線を用いた。薬物放出曲線を、図13に示した。
【0125】
結果
薬物放出曲線は、マイクロエマルジョンおよび液晶製剤が、持続的にG−2MePEを放出することを示したが、予想外に、粗エマルジョンは、G−2MePEをかなり迅速に放出した(図13)。MC2は、実施例17および実施例18に記載するインビボ研究用に選択した。
【0126】
結論
これらの研究から、これら3つの相システムはいずれも、G−2MePEを用いた治療に有益であるとの結論に達した。まず、マイクロエマルジョンおよび液晶は、比較的ゆっくりとしたG−2MePEの持続放出が望ましい状況下で用いることができる。次に、粗エマルジョンは、比較的迅速なG−2MePEの放出が望ましい時に用いることができる。最後に、マイクロエマルジョンと粗エマルジョンとの組み合わせ、または、液晶と粗エマルジョンとの組み合わせは、G−2MePEの迅速な放出と持続放出との両方が望まれるときに、用いられるのが望ましい。
【0127】
実施例15
経口投与されたG−2MePEの生物利用効率
目的
本研究の目的は、インビボでの様々なデリバリーシステムからのG−2MePEの放出を調べることである。
【0128】
方法
実験には、7〜9週齢の雄のウィスターラット(Wistar Rat)を用いた。この動物に、5%のハロタン/酸素混合物を用いて麻酔にかけ、実験を通して、3%のハロタン/酸素混合物下においた。首の正中線に沿って、10mmの切開を行った。先端が丸い鉗子を用いて、気管の右側に沿って筋肉を分離し、右側頸静脈を露出させた。ポリエチレンカテーテル(外形1.5mm、内径0.6mm)を頸静脈に挿入し、縫合により、適所に保った。このカテーテルにより、G−2MePEの薬物速度論的研究用に、選択した複数の時点で、標本(100μl)を採取することができた。カテーテルを、ヘパリン化された生理食塩水(40IU/ml)で充填し、血栓による閉塞を防いだ。サンプリングは、ラットが完全な全身麻酔下にある間に行い、ラットは、実験終了時に安楽死させた。
【0129】
脳脊髄液からのサンプリング
脳脊髄液(CSF)サンプリングされるラットに、5%のハロタン/酸素で麻酔をかけた。ラットの頭部を、固定フレームに載せた。切開は、頭頂を横切る形で行い、頭蓋底を露出させた。29ゲージの超細針と注射器とを用いて、大槽からCSFをサンプリングした。その後、これらの動物は、ペントバルビタールを過剰投与して(すなわち、180mg/kg)、心臓を介して、0.9%の生理食塩水を灌流し、安楽死させた。組織は、分析のために採取した。
【0130】
インビボでのG−2MePE薬物速度論および生物利用効率
様々な製剤でのG−2MePEを選別し、経口生物利用効率の効果を評価した。以下の製剤をテストした。
製剤1(G−2MePEを、35.3mMのタウロコール酸(TA)に溶解させ、10mg/kg n=6に投与)
製剤2(G−2MePEを、微小粒子(MP)に製剤し、35.3mMのタウロコール酸(TA)に分散させ、10mg/kg n=6に投与)
製剤3(G−2MePEを、MPに製剤し、5mMのバシトラシンを含有する35.3mMのタウロコール酸(TA)に分散させ、30mg/kg n=6に投与)
製剤4(G−2MePEを、マイクロエマルジョン(MC)として製剤し、30mg/kg n=6に投与)
製剤5(G−2MePEを、5mMのバシトラシンを含有するMCとして製剤し、30mg/kg n=6に投与)
製剤6(G−2MePEを、35.3mMのTAに溶解させ、MCを製剤し、次に、実施例13のように、このマイクロエマルジョンにECAを加え、30mg/kg n=6に投与)
製剤7(G−2MePEを、35.3mMのTAに溶解させ、まずMCを製剤し、次にECAモノマーを加え、5mMのバシトラシンを加え、30mg/kg n=6に投与)。対照群(n=6)もテストし、これには、生理食塩水に溶解したG−2MePEを、30mg/kgの投与量で投与した。
【0131】
採取した血液標本を、15分間、3300gで遠心分離機にかけた血漿を得た。血漿標本を−80℃で保存した。その後、血漿標本を解凍し、液体クロマトグラフ/質量分析法(LCMS)で分析した。異なる製剤による、G−2MePEの生物利用効率および経口投与後の半減期を算出した(表2および図14)。
【0132】
結果
生理食塩水中のG−2MePEを投与した場合に比べて、製剤1〜7で投与した場合、G−2MePEの生物利用効率は有意に増加した(P>0.05)。7つの製剤中、マイクロエマルジョン中のG−2MePEおよび微小粒子中のG−2MePEが、最高の生物利用効率を示した(図14)。
【0133】
表2:G-2MePE 半減期および生物利用効率

** は P < 0.01を表す
【0134】
結論
水溶性の製剤1に比べて、製剤2〜7で、G−2MePEの生物利用効率は有意に増加した。G−2MePEの最高の生物利用効率は、マイクロエマルジョンおよび微小粒子を用いた際に見られた(図14)。したがって、G−2MePEのエマルジョンおよびカプセル形態が、有効な経口投与型の神経保護剤の製剤であることができるとの結論に達した。
【0135】
実施例16
エンドセリン−1誘発中大脳動脈閉塞症
目的
本研究の目的は、経口投与されたG−2MePEが、神経損傷状態を治療する上で有効でありえるか否かを決めることである。
【0136】
このために、我々は、ラットに人工的に認識される脳卒中モデルすなわちエンドセリン−1により誘発される中大脳動脈閉塞症(MCAO)を引き起こし、一連の研究を行った。このシステムは、ヒトの脳卒中における神経および行動の、兆候および症状を模倣することで知られており、したがって、得られた結果は、脳卒中を起こしたヒトでの治療効果を予測するものである。梗塞の大きさ、および、MCAOが誘発された日と、MCAO誘発の3日後との重量の変化を測定した。
【0137】
材料および方法
エンドセリン−1誘発中大脳動脈閉塞症
本研究中で行われた全ての手術および実験手順は、オークランド大学動物倫理委員会によって認証されている。動物の苦痛を最小限に抑えるあらゆる努力がなされ、用いた動物の数を最小限に抑える努力がなされた。雄の成獣であるスプレーグ・ドーリー(Sprague Dawley)ラット(280〜350g)を用いた。
【0138】
吸入麻酔剤(ハロタン)を、酸素と共に投与し、ラットに麻酔をかけた。始めに、5%のハロタン/酸素混合物を用いて動物に麻酔にかけ、その後、2.5%のハロタンを用いて麻酔状態を維持した。麻酔にかかった後、ガイドカニューレを麻酔がかかったラットの頭蓋骨に埋め込み、歯科用セメントを用いてカニューレを適所に保った。この埋め込み後に、動物の頸静脈にもカニューレを挿入した。2〜3日後に、ラットを再度上述のように麻酔にかけ、シャーキーおよびその同僚による方法(Sharkey et al、1993年)により、MCAOにかからせた。この方法には、各ラットの頭部を固定フレームに載せ、適所に固定することも含まれている。動物は、加熱パッドにも載せた。この加熱パッドは、手術中に、体温を生理的範囲内に維持するよう設計されている。
【0139】
頭皮上の毛髪は、はさみで短く刈り取られ、スポンジでふき取られ、ベタジン(Betadine)(登録商標)(アイオダイン)で拭い取って乾燥させた。これに続き、頭皮を通る正中線皮膚切開を行い、頭蓋骨の頭蓋幹線(ブレグマ)を露出させた。その後、以下の座標、すなわちブレグマより前方に0.2mm、および、ブレグマより側方5.2mmの座標で、頭蓋骨を通る形で小さい開口を設けた。ガイドカニューレを通って、28ゲージ点滴針を、3μlの生理食塩水中に100ρモルのブタのエンドセリン−1(Et−1,シグマ−アルドリッチ社、アメリカ合衆国、ミズーリ州、セントルイス在)を含有する10μlの注射器に連結し、これを頭蓋骨の表面下8.7mmの深さに垂直に挿入した。
【0140】
中大脳動脈を収縮させるため、エンドセリン含有溶液を、毎分1μlの速度で3分間注入した。この点滴後、針を脳から引き抜く前に、さらに5分間適所に保った。皮膚の切開は縫合され、動物は手術からの回復のために加熱された培養器(37℃)に移された。動物は覚醒すると、ケージに移され、そこで餌および水を自由に摂取できた。MCAO誘発後第2日目に、1匹の動物を研究から除外したが、これは、容認できないほどの体重減少が激しかった(15%)ためである。
【0141】
組織学的手順
薬物での治療後3日目に、これらの動物は、ペントバルビタールナトリウムを過剰投与して犠牲にし、神経細胞の生存を組織学的に評価するために、脳を採取した。ラットには、動脈を通じて0.9%の生理食塩水を灌流させ、続いて10%のホルマリンを灌流させた。脳を頭蓋骨から除去し、同じ固定液中で少なくとも24時間保存した。げっ歯類の脳マトリックス(RBM−3000C/RBM−4000C、ASIインストゥルメンツ、アメリカ合衆国在)を用いて、3つの2mmの冠状断面を切り取った。断面Aは、視神経交差の直前、断面Bは、視神経交差の直後で断面Aの直後、Cは、断面Bの直後の部分である。これらの断面を、10%のホルマリン中に、少なくとも24時間保持し、より高い%のアルコールおよびクロロホルム中で処理し、さらに切断するためにパラフィン中に埋め込んだ。冠状切片は、ライカ(Leica)(登録商標)マイクロトーム(ライカ インスツルメント(Leica Instruments)、ヌスロッホ、ドイツ在)上で、8μmの厚さに切断され、ポリサイン(Polysine)(登録商標)顕微鏡用被覆スライド(バイオラボ・サイエンティフィック(BioLab Scientific)、ニュージーランド在)に載せられ、顕微鏡検査の前にチオニン酸フクシンで染められた。
【0142】
重量測定
重量変化百分率は、以下の式を使って算出された。
w2−w1/w1×100%
ここで、w2は、エンドセリン注入後3日目の体重であり、w1は、エンドセリン注入の時点での体重である。
【0143】
統計的分析
統計的分析は全て、グラフパッド・プリズム(GraphPad Prism)(登録商標)ソフトウェア(バージョン3.02、グラフパッド・ソフトウェア社(Graphpad Software Inc.)、アメリカ合衆国、カリフォルニア州、サンディエゴ在)を用いて行われた。データは平均値±標準誤差を用いて示され、優位性は、p<0.05で定義された。
【0144】
実施例17
G−2MePEのマイクロエマルジョンを経口投与することによりMCAOを治療
材料および方法
エンドセリン−1誘発中大脳動脈閉塞症
実施例16で記載したMCAO誘発方法を用いた。24匹の動物にカニューレを挿入し、全動物が、2時間、その後4時間で、エンドセリン−1注入を受けた。12匹の動物が、G−2MePE含有マイクロエマルジョンで経口投与治療を受け、残りの12匹は、賦形剤で治療を受けた。
【0145】
マイクロエマルジョンの調製
G−2MePE含有マイクロエマルジョンは、実施例12に記載の方法で調製された。
【0146】
G−2MePE治療
ラットには、MCAO後2時間および4時間の時点で、ミリQ水(n=12)またはG−2MePE含有マイクロエマルジョン(G−2MePEの分量は、マイクロエマルジョン1ml当り12mgに相当する)、全体でラット一匹当り80mg/kgが投与された。
【0147】
組織学的手順、重量測定および統計学的分析
組織学的測定および重量測定は、実施例16に記載の方法で行った。
【0148】
結果
図15Aに、G−2MePEのマイクロエマルジョン製剤が、梗塞サイズを減少させたことを示す。全投与量は、80mg/kgであった。賦形剤(n=12):G−2MePE(n=11)。対応のないt検定、p<0.0001。
【0149】
図15Bに、G−2MePEのマイクロエマルジョン製剤が、MCAOに関連する体重減少を低減させたことを示す。賦形剤(n=12):G−2MePE(n=11)。G−2MePEで治療された動物は、賦形剤で治療された動物よりも、体重減少が少なかった。p=0.0035。
【0150】
結論
この研究から、G−2MePEのマイクロエマルジョンは、経口投与後、ラットにおけるMCAOに対する有効な治療であることができるとの結論に至った。この実験システムは、ヒトにおける脳卒中で見られる効果を予測しているので、G−2MePEのマイクロエマルジョンは、脳卒中にかかったヒトを治療するためにも、経口で活性であることができるとの結論にも達した。
【0151】
実施例18
G−2MePEマイクロエマルジョンの経口での用量反応研究
目的
本研究の目的は、マイクロエマルジョン1mlあたり6mgのG−2MePEを含有するマイクロエマルジョンの、用量反応曲線を確立させることである。
【0152】
材料および方法
エンドセリン−1誘発中大脳動脈閉塞症
上述の実施例16で記載したMCAO誘発方法を用いた。39匹の動物にカニューレを挿入し、全動物が、エンドセリン−1注入を受けた。MCAO後3日の生存期間の終了前に7匹が死に、または犠牲になった。
【0153】
マイクロエマルジョンの調製
マイクロエマルジョンは、実施例12に記載の方法で調製された。
【0154】
G−2MePEでの治療
動物には、MCAO誘発後3時間の時点で治療を行った。動物は、6mgのG−2MePE含有マイクロエマルジョン、または、賦形剤としてのミリQ水で治療された。薬物は、体重にあわせた分量が与えられ、15、30または60mg/kgがデリバリーされた。
【0155】
組織学的手順、重量測定および統計学的分析
梗塞サイズの測定、体重測定および統計学的分析は、実施例16に記載の方法で行った。
【0156】
結果
経口投与G−2MePEは、投与量に依存して、脳の梗塞サイズを減少させた。G−2MePEの最高投与量では、阻害の程度は94.5%であった(図16A)。経口投与されたG−2MePEが、MCAOに関連づけられる体重減少を低減させたことも見出した(図16B)。
【0157】
結論
経口投与されたG−2MePE含有マイクロエマルジョン製剤は、ラットにおける脳卒中の有害効果を覆すのに有効であることができるとの結論に至った。これ以外の本発明のG−2MePE製剤も、MCAOの有害効果を覆すのに有効であることができるとの結論に至った。さらに、ここで研究したMCAOシステムは、ヒトにおいて見られる治療効果を予測しているので、本発明のG−2MePE含有製剤は、慢性および/または急性の神経障害にかかったヒトを治療するためにも、有効であることができるとの結論にも達した。この神経障害には、脳卒中またはこれ以外の脳損傷および疾患(低酸素症/虚血、アルツハイマー病、パーキンソン病およびこれ以外の慢性的な神経変性疾患など)が含まれる。最後に、本発明のG−2MePE製剤は、急性の損傷(外傷性脳損傷、心筋梗塞、急性の低酸素症もしくは虚血、または、神経変性または細胞死により特徴づけられるこれ以外の障害を含む)に関連する神経変性効果を治療するのにも有用であることができるとの結論に至った。
【0158】
実施例19
G−2MePEの水溶性製剤の経口投与
目的
G−2MePE含有マイクロエマルジョンと、G−2MePE含有水溶性製剤との効能を比較する根拠を提供するために、上述に匹敵する研究を行った。しかし、マイクロエマルジョン製剤の代わりに、生理食塩水に溶解されたG−2MePEを用いた。
【0159】
材料および方法
エンドセリン−1誘発中大脳動脈閉塞症
上述の実施例16で記載したMCAO誘発方法を用いた。
【0160】
G−2MePE治療
凍結乾燥させたG−2MePEを、10mg/mlの水で溶解した。エンドセリン−1後5時間の時点で、2mlのG−2MePE製剤、すなわち、60mg/kg(n=11)、または、2mlのミリQ水(賦形剤治療群、n=13)を、MCAO後3時間の時点で経口チューブで、各動物に投与した。
【0161】
組織学的手順、重量測定および統計学的分析
組織学的手順、体重測定および統計学的分析は、実施例16に記載の方法で行った。
【0162】
結果
G−2MePE水溶性溶液の梗塞サイズへの効果
G−2MePEの水溶性溶液(60mg/kg)の経口投与により、賦形剤治療群(n=13、*P<0.05)に比較して、梗塞領域が有意に減少した(図17A)。水溶性G−2MePEによる阻害は、賦形剤治療動物の約63%であった(図17A)。これに対して、G−2MePEのマイクロエマルジョン製剤による阻害は、水溶性製剤によるそれと比べて大きかった(図16A参照。すなわち、94%の阻害)。
【0163】
体重変化百分率に関する、G−2MePEの水溶性溶液の効果
G−2MePEの水溶性溶液(60mg/kg)の経口投与により、MCAOにかかった動物での体重減少が、約4分の3低減したが、この効果は統計学的には有意ではなかった(P<0.2)(図17B)。しかし、G−2MePEで治療した動物では、体重変化が、統計学的に0ではなかった。
【0164】
結論
この研究から、G−2MePEのエマルジョン製剤は、単なる水溶性溶液に比べて、薬物の生物利用効率を改善することができ、動物中の薬物濃度を持続し、その結果、これらの製剤は、ヒトおよびこれ以外の動物のインビボでの使用で有用であるとの結論に至った。
【0165】
驚くべきことに、経口デリバリーされたマイクロエマルジョンによる神経保護の程度(95%)は、梗塞サイズの測定によれば、ほぼ完全であると見出した。G−2MePEの水溶性溶液を経口投与した場合(63%)に比較して、この効果が予想外により大きいことは、本発明のG−2MePE製剤が、水溶性調製液に対して有利となりうること意味する。したがって、G−2MePEのカプセル調製液またはマイクロエマルジョン調製液は、神経変性に特徴付けられる様々な状態(脳卒中、低酸素症/もしくは虚血、TBI、CABGおよび慢性的な神経変性状態を含む)の治療に関連する神経変性効果を治療するのにも有用であることができる。
【0166】
実施例20
G−2MePEの静脈注射と経口投与との比較
目的
本研究の目的は、G−2MePEの水溶性溶液の静脈投与の効果と、マイクロエマルジョン製剤形態でG−2MePEを用いた上述の研究中で観察された効果(図16A)とを比較することである。
【0167】
方法
実施例16と同様に準備した動物を用い、エンドセリン−1誘発MCAOを起こした。この場合は、しかし、G−2MePEを、水溶性溶液として、1.2mg/kg、12mg/kgおよび120mg/kgの投与量で、静脈から、MCAO後4時間に渡って投与した。
【0168】
12匹の動物を、賦形剤(生理食塩水)で治療し、11匹をG−2MePEの水溶性溶液(静脈)で治療した。
【0169】
結果
この研究の結果を図18に示すが、この図は、エンドセリン−1誘発MCAO後に見られた平均的な梗塞範囲を示しているグラフである。静脈投与されたG−2MePEの水溶性溶液は、投与量に依存して、梗塞サイズを減少させ、最大の効果は、G−2MePEの全投与量が120mg/kgの場合に見られた。この水溶性G−2MePEの投与量による神経保護の程度は、賦形剤で治療した対照動物と比較して約74.4%であった。データは、一元配置分散分析法とダネットの事後解析テストを用いて(**p<0.01)、平均値±標準誤差を用いて示された。
【0170】
驚くべきことに、この投与量の半分の投与量(すなわち、60mg/kg)のG−2MePEエマルジョン製剤を経口投与することにより、G−2MePEの水溶性溶液で見られたのよりも、実質的に大きい梗塞サイズの阻害がなされた(94.5%阻害)ことを見出した。この結果は、G−2MePEの効果に関するこれ以前の理解に基づくと、全くの予想外であった。
【0171】
この研究から、我々の新規のG−2MePEの製剤は、急性および/または慢性の神経障害による神経変性を治療する際、ヒトを含む動物にインビボで経口投与するのに有益であることができるとの結論に達した。したがって、これらの製剤は、従来治療が困難であった神経疾患および損傷の治療に進歩をもたらす。
【0172】
本願中の記載、実施例および図は、本発明の特定の実施形態を示すために用いられていることを理解されたい。当業者は、これらの開示および本願の教示を用いて、本発明の範囲から離れることなく、自明の変型例、修正例およびこれに代わる実施例を作ることができる。これら全ての変型例、修正例およびこれに代わる実施例は、本発明の一部分であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】Caco−2細胞単層の存在下でのGPEおよびG−2MePE(G−2MePE)の安定性を示したグラフである。
【図2】Caco−2細胞の存在下でのG−2MePEの安定性に関してpHの効果を示したグラフである。
【図3】Caco−2細胞によるGPEの分解における酵素阻害剤効果について示すグラフである。
【図4】Caco−2細胞培養を通過するフルオレセインナトリウムの輸送に関して、透過性促進剤の効果を示すグラフである。
【図5】Caco−2細胞培養の経上皮電気抵抗(TEER)に関して、透過促進剤の効果を示すグラフである。
【図6】Caco−2細胞によるG−2MePEの取り込みを示すグラフである。
【図7】Caco−2細胞を通過するG−2MePEの輸送に関する透過促進剤の効果を示すグラフである。
【図8】インビトロでのアルブミンによるGPEのタンパク質結合を示すグラフである。
【図9】インビトロでのアルブミンによるG−2MePEのタンパク質結合を示すグラフである。
【図10A】pH1の培地における、微小粒子からのフルオレセインナトリウムの放出を示すグラフである。
【図10B】pH7の培地における、微小粒子からのフルオレセインナトリウムの放出を示すグラフである。
【図11】G−2MePEを含有するマイクロエマルジョンの擬三次ダイアグラムのグラフである。
【図12A】本発明のナノカプセルの、凍結破断透過型電子顕微鏡の顕微鏡写真である。
【図12B】ナノカプセル中に取り込まれた薬物を示す概略図である。
【図13】G−2MePEの異なる製剤から放出された薬物の曲線を示すグラフである。
【図14】G−2MePEを含有するいくつかの製剤を経口治療した後のラットの血漿中での薬物速度論的グラフである。
【図15A】ラットにおける中大脳動脈閉塞症(MCAO)後、2時間および4時間の時点でG−2MePE含有マイクロエマルジョン製剤を経口投与した時の、梗塞サイズへの効果を示すグラフである。G−2MePEの全投与量は、80mg/kgであった。賦形剤(n=12):G−2MePE(n=11)。賦形剤で治療した動物と、G−2MePEで治療した動物との差は、スチューデントの対応のないt検定、p<0.0001を用いて検査したところ統計的に有意な差を示した。
【図15B】中大脳動脈閉塞症後における、G−2MePE含有マイクロエマルジョンの体重変化への効果を示すグラフである。G−2MePEは、MCAO後、2時間および4時間後に経口投与した。G−2MePEの全投与量は、80mg/kgであった。賦形剤(n=12):G−2MePE(n=11)。G−2MePEで治療した動物は、賦形剤で治療した対照動物よりも体重減少が少なかった。スチューデントの対応のないt検定によりp=0.0035。
【図16A】MCAO後3時間の時点で経口投与した場合の、異なる投与量のG−2MePEを含有するマイクロエマルジョンの、梗塞サイズへの効果を示すグラフである。データは、ダネットの事後解析テストと共に、一元配置分散分析法を用いて分析した。データは平均値±標準誤差として示された。賦形剤(n=9)、15mg/kg(n=8)、30mg/kg(n=8)、60mg/kg(n=7)。*、p≦0.05; **、p≦0.01; ***、p≦0.001。
【図16B】MCAO後3時間の時点で経口投与した場合の、異なる投与量のG−2MePEを含有するマイクロエマルジョンの、体重変化への効果を示すグラフである。データは、ダネットの事後解析テストと共に、一元配置分散分析法を用いて分析した。データは平均値±標準誤差として示された。賦形剤(n=8)、15mg/kg(n=7)、30mg/kg(n=7)、60mg/kg(n=7)。*、p≦0.05;**、p≦0.01;***、p≦0.001である。
【図17A】MCAOを引き起こすためのエンドセリン−1(Et−1)の注入に続いて、G−2MePEの水溶性溶液を経口投与しまたは賦形剤で治療し、これによる梗塞範囲(単位、mm2)への効果を示すグラフである。エンドセリン−1注入の3時間後、G−2MePE(60mg/kg)(n=11)または賦形剤(ミリQ水)(n=13)をラットに経口投与した。データは、平均値±標準誤差として示す。優位性は、P<0.05で定義した。
【図17B】ラットにおいて、Et−1により誘発されたMCAOに続いて、G−2MePEの水溶性溶液を経口投与しまたは賦形剤で治療し、これによる体重変化への効果を示すグラフである。
【図18】エンドセリン−1により誘発されたMCAOに関する、静脈投与されたG−2MePEの水溶性溶液の効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの油を含む連続疎水性相、
少なくとも1つの界面活性剤、及び
グリシル−2−メチルプロリルグルタミン酸塩(G−2MePE)を含有する不連続で親水性の水相、
を含む油中水滴エマルジョンを含有する医薬組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(ツイーン(Tween)80(登録商標))、ソルビタンモノオレエート(スパン(Span)80(登録商標))およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに、カプリン酸ナトリウムおよびタウロコール酸ナトリウムからなる群から選択される透過促進剤をさらに有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
マイクロエマルジョンである請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
粗エマルジョンである請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
液晶である請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
さらに、微小粒子またはナノ粒子を有し、前記微小粒子またはナノ粒子は、コーティングにより周囲を取り囲まれたG−2MePEを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
さらに、酵素阻害剤を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項4または請求項6に記載の1つまたは複数の組成物を、請求項5に記載の組成物と組み合わせて含有する製剤を有する医薬組成物。
【請求項10】
G−2MePEと、
結合剤と、
腸溶コーティングと
を有する錠剤。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物と、
追加的な神経保護剤と
を有する、神経障害を治療するための経口組成物。
【請求項12】
神経障害を治療するための薬剤を製造するために、請求項1〜11のいずれか1項に記載のものの使用。
【請求項13】
前記障害は、外傷性脳損傷、脳卒中、低酸素症/虚血、心臓動脈バイパス手術、心筋梗塞、アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病からなる群から選択される、請求項12に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【公表番号】特表2009−538269(P2009−538269A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500480(P2009−500480)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/006528
【国際公開番号】WO2007/106555
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(309033275)
【出願人】(309033286)
【出願人】(309033297)
【出願人】(508280254)ニューレン ファーマシューティカルズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】