説明

グリセリンの脱水用触媒の再生法

本発明は、グリセリンからのアクロレインの製造に際して使用される、タングステン含有化合物、酸特性および少なくとも1つの助触媒を有する触媒の再生法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセリンからのアクロレインの製造に際して使用される、タングステン含有化合物、酸特性および少なくとも1つの助触媒を有する触媒の再生法に関する。
【0002】
アクロレインは重要な中間生成物であり、かつアクリル酸、D,L−メチオニンおよびメチオニン−ヒドロキシ−類似体の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸(MHA)の作製のために経済的に大きな意義を持つ。メチオニンは必須アミノ酸であり、それらは、なかでも飼料中のサプリメントとして使用される。栄養改善性飼料添加物は、今日では動物栄養の不可欠な構成成分である。それらは栄養供給品のより良好な利用に役立ち、成長を刺激し、かつタンパク質形成を促す。これらの添加物の最も重要なものの1つは、なかでも家禽飼育において、飼料添加剤として際立った位置を占める必須アミノ酸メチオニンである。この分野では、しかし、いわゆるメチオニン代替物質、例えばメチオニン−ヒドロキシ−類似体(略称MHA)も些細ではない意味を持つ。それというのも該類似体は、似たような成長刺激性特性を、それに関して公知のアミノ酸と同じように有するからである。アクリル酸は、例えばその吸水力に基づき超吸収体として使用されるポリマーの製造のための重要な出発物質である。
【0003】
従来技術により、アクロレインの合成は、混合酸化物触媒を用いた不均一系触媒作用によるプロペンの選択的酸化によって行われる。EP417723は、錯体多金属混合酸化物触媒を用いた、300〜380℃の温度と1.4〜2.2barの圧力とでの合成を記載する。Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry,6.Auflage,1999には、複数の副生成物を分離する後処理を含めた全体の方法が記載されている。プロペン、空気および水からの出発物質混合物が、少なくとも部分的に触媒を用いて反応させられた後に、まず、高沸点副生成物、例えばポリマー、アクリル酸および酢酸を分離するための急冷が行われる。後続の吸収装置中で、アクロレインが洗浄抽出される。吸収剤の回収のための脱着後に、得られた粗アクロレインが、多段階で蒸留により精製される。
【0004】
グリセリンが酸性物質の存在下で様々な生成物へと脱水され得ることは公知である。Organic Synthesis I,15〜18 (1964)によれば、粉末状の硫酸水素カリウム、硫酸カリウムおよびグリセリンとからの混合物の190〜200℃での処理によって、アクロレインが33〜48%の収率で獲得される。しかしながら、低い収率と高い塩負荷とに基づき、この方法は工業的規模においては適していない。
【0005】
バイオマス熱分解油のモデル物質の調査の枠内で、H−ZSM5−ゼオライトを用いた350〜500℃でのグリセリンの接触処理も調査されていた−Dao,Le H.et al.ACS Symp.Ser.:376 (Pyrolysis Oils Biomass) 328〜341 (1988)を参照のこと。炭化水素が僅かな収率でのみ形成される。
【0006】
そのうえ、EP0598229、US5387720には、気相中および液相中でのグリセリンからアクロレインへの酸触媒反応が記載されている。その中では、ただ酸強度(ハメットの酸度関数)のみが触媒としての適性を決定する。DE4238492は、高い収率を伴うグリセリンの脱水による1,2−および1,3−プロパンジオールの合成に関する。
【0007】
WO2006/087083から、酸触媒を用いたグリセリンからのアクロレインの製造法が公知であり、その際、反応混合物に酸素が添加される。
【0008】
類似した方法が、WO2006/087084の中で記載される。その中で使用される触媒は、−9〜−18の範囲内のハメット酸度H0を有する。
【0009】
化学工学において使用される触媒は、ほとんど例外無しに失活させられ、その結果、触媒は、経済的な空時収率を維持するために周期的な間隔で交換されなければならない。その際、触媒の可使時間は、反応系に応じて非常に様々であり、かつ数時間から数年にまで及び得る。その際、触媒の周期的な再生によって、失活は少なくとも部分的に抑制され、かつ触媒の活性が再び明らかに高められる。これは工業的に、合成に際して頻繁に、触媒上で、活性サイトを覆う炭素含有付着物が形成される場合に使用される。反応系に応じて、これらの付着物は様々である。触媒の本発明による選択および再生可能性を改善する助触媒の添加によって、グリセリンの脱水に際して空時収率を改善することができる。
【0010】
本発明の課題は、グリセリンの脱水用に適している触媒の再生のための方法を提供することであり、その際、該触媒は、比較的僅かな炭化傾向を示し、かつ容易に再生可能である。
【0011】
金、銀、銅、バナジウム、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、サマリウム、セリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、亜鉛、マグネシウム、鉄、コバルトまたはニッケルを含有する、有利にはそれらから成る元素の群の化合物および場合により元素のリチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムの化合物および/またはモンモリロナイトまたは酸性ゼオライトから選択される1つ以上の助触媒を含有する、タングステン化合物を含有する<+2のハメット酸度H0を有する固体触媒がこの問題を解決することがわかった。
【0012】
最後に挙げられた二つの化合物は、助触媒として、場合により0.1〜30質量%、有利には5〜25質量%の量で触媒中に含有されている。
【0013】
有利なのは、<+2〜−20のハメット酸度H0を有する触媒である。
【0014】
グリセリンは、特に高い温度で2つ以上のグリセリン分子が互いに反応することによって比較的高沸点の化合物を形成する傾向にある反応性分子であるので、触媒は表面上への炭素含有分子の付着によって炭化される。これは活性減少につながる。
【0015】
高い空時収率を得るために、ハメットに従う触媒の酸強度だけでなく、再生可能性および炭化傾向も重要である。
【0016】
本発明により使用される触媒は、触媒の再生を促進する少なくとも1つの助触媒を含有する。同様に、可使時間および空時収率も明らかに増大する。それというのも、特に炭化による失活が、これらの触媒の場合、少なくとも大部分がなくされ、かつ活性が明らかに高められるからである。従って、グリセリンの変換率およびアクロレインの収率を、時間に依存して高い水準で維持することができる。これは合成の工業的な実施において特に重要である。それというのも、触媒の交換ひいてはそれと結び付いたプラント停止状態が高いコストを招くと考えられるからである。
【0017】
ブレンステッド酸基の他に、その際、ヒドロキシル基またはルイス酸サイトも活性および選択性に影響を及ぼし得る。同様に、該助触媒の他に、ケイ素、リン、ニオブ、亜鉛、スズ、マグネシウム、アルミニウム、モリブデンまたはバナジウムまたは活性炭を含有する群から選択される1つ以上の元素の化合物を、タングステン化合物を含有する触媒に添加することにより、触媒の表面を変性させることができるか、または活性サイトの濃度を減少させることができ、その結果、収率がさらに改善される。2つ以上の隣接した吸着されるグリセリン分子または中間化合物から生じる、固定吸着される高沸点物またはコークス前駆体の形成が、特にそれによって軽減される。
【0018】
固体触媒として、殊にUS5,387,720(EP0598229A1)から公知のタイプも、該触媒がタングステン化合物および付加的に1つ以上の上記の助触媒を含有する場合に適している。それは+2より小さい、好ましくは−3より小さいH0値を有する、固体の、反応媒体中で本質的に不溶性の単相または多相構造の物質である。H0値はハメットによる酸度関数に相当し、かつ指示薬を用いた、いわゆるアミン滴定によってか、またはガス状塩基の吸着によって算出され得る−Studies in surface science and catalysis,Vol.51,1989:"New solid acids and bases,their catalytic properties",K.Tanabe他,第2章,殊に第5頁〜第9頁を参照のこと。上記の文献の第1章(第1頁〜第3頁)は、当業者が場合によりH0値の測定に従って本発明による変性用の適した触媒を選択することができる多数の固体酸を挙げている。本発明による脱水触媒のための塩基として、好ましくは(i)天然および合成のケイ酸塩物質、例えば、殊にモルデン沸石、酸性ゼオライトおよび活性炭;(ii)一塩基、二塩基または多塩基の無機酸または無機酸の酸性塩でコーティングされた担体物質、例えば酸化物またはケイ酸塩の物質、例えばAl23、SiO2、ZrO2、TiO2;(iii)酸化物および混合酸化物、例えばγ−Al23およびZnO−Al23−、SiO2−Al23−、ZrO2−SiO2、ZrO2−HfO2−混合酸化物またはヘテロポリ酸が適している。
【0019】
活性タングステンサイトを提供するのに適した化合物は、例えばタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、タングステン酸、タングストケイ酸、タングストリン酸または構成成分としてタングステンを有するヘテロポリ酸であってよい。次いで、これらの化合物またはその混合物は、触媒として直接使用されるか、または触媒前駆体として用いられる。さらに別の元素が添加される場合、有利には、溶液中または溶融物中で、粉末として事前の混合が行われる。本発明の一実施態様において、触媒活性化合物は担体上に結合される。
【0020】
担体材料として、例えば酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、活性炭またはそれらの混合物を使用することができる。担体は、主として比表面積を高めるためにか、または活性サイトを固定するために用いられる。
【0021】
本発明により使用される触媒の製造は、当業者に公知の方法に従って行われる。活性成分が担体上に施与される場合、これは有利には担体の含浸によって、例えば噴霧によるポアフィリング法を用いて行われる。活性成分は、溶液からの沈殿または抽出によっても取得することができる。引き続き、次いで触媒の形状付与を、場合により担体、接着促進剤または細孔形成剤の添加下で、圧縮、押出、コーティングまたは集成によって行ってよい。触媒は、通常、0.04mm〜20mm、有利には0.1〜10mm、殊に0.5〜7mmの粒径を有する。活性化合物は、シェルの形でも施与されていてよい。担体が使用されない場合、触媒は、ペレットの押出、圧縮または集成によるビルドアップによって製造するのが有利である。
【0022】
気相中での脱水のために、−3〜−8.2のH0値を有する触媒がとりわけ有利である;タングステンおよび助触媒を含有する適した触媒系は、例えばSiO2/H2WO4、Pd/H2/WO4、Pt/H2WO4、Pd/WOx/ZrO2、Cu/WOx/ZrO2、WOx/SiO2/ZrO2である。
【0023】
グリセリンの脱水によるアクロレインの製造法は、タングステン化合物を含有する<+2〜有利には−20のハメット酸度H0を有する固体触媒の存在下で実施され、該固体触媒は、金、銀、銅、バナジウム、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、サマリウム、セリウム、イットリウム、スカンジウム、ランタン、亜鉛、マグネシウム、鉄、コバルトまたはニッケルを含有する、有利にはそれらから成る元素の群の化合物またはそれらの混合物から選択される1つ以上の助触媒を含有する。場合により、付加的に元素のリチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムの化合物および/またはモンモリロナイトまたは酸性ゼオライトが含有されている。
【0024】
最後に挙げられた二つの化合物は、助触媒として、場合により0.1〜30質量%、有利には5〜25質量%の量で触媒中に存在している。
【0025】
脱水は、有利には酸素の不在下で行われる。一実施態様において、反応混合物の全量に対して、0.1〜10体積%、殊に0.5〜5体積%の量における水素の存在下でも行われる。脱水は、上記の触媒の存在下で実施される。
【0026】
反応混合物中のグリセリンの濃度は、有利には、選択される反応条件下で不活性の適したガス状化合物の混合によって下げられる。
【0027】
それによって、オリゴマー、ポリマーおよびその他の高沸点物を生じる副反応が最小にされる。当業者に公知の溶剤および希釈剤、例えば水、窒素、空気、二酸化炭素、メタンおよび/または水素、アルコール、例えばメタノールおよびエタノール、アセトン、トルエンまたはメチルイソブチルケトンが使用される。有利には、凝縮後に相分離によって簡単にアクロレインから単離することのできる希釈媒体が有利である。
【0028】
反応混合物中でのグリセリン濃度は、1〜100質量%、有利には1〜70質量%および殊に5〜40質量%である。
【0029】
本方法の一利点は、5〜40質量%の含有率を有するグリセリン溶液も使用可能な点にある。従って、いわゆる粗グリセリンが、事前の濃縮または精製なしに、アクロレインの合成に直接使用可能である。
【0030】
反応は、150〜450℃、有利には180〜350℃、とりわけ有利には220〜320℃の間の温度で実施される。通常、圧力は、0.1〜200bar、有利には0.5〜50bar、とりわけ有利には0.9〜10barの間である。
【0031】
本方法は、液相中または気相中で実施することができる。いずれの実施態様においても、原則的に、同じ酸性固体触媒を使用することができる;しかし、好ましくは気相中での脱水用の特定の触媒と、好ましくは液相中での脱水用のその他の触媒が適していることがわかった。
【0032】
気相中での反応はとりわけ有利である。なぜなら、グリセリン変換はほぼ完全であり(>95%)、かつ触媒を去るガス状反応混合物を、付加的に形成される副生成物を含有するアクロレイン水溶液の取得下で直接的に凝縮または吸収することができるからである;この凝縮物は、頻繁に直接的に加工してよい。反応混合物の分縮および/または吸収は、多段階において行ってよい。所望される場合は、反応混合物からアクロレインを、場合により一部の水と一緒に、分別凝縮、吸収、脱着および引き続く蒸留によって取得してよい。
【0033】
一部の水は循環処理され、その際、それは熱統合の利用下で蒸発および凝縮される。
【0034】
不活性ガスまたは希釈剤も循環処理することができる。
【0035】
液相中での反応に際して適しているのは、脱水を約15〜25%のグリセリン変換率になるまでしか実施しないことである。それというのも、変換率が上昇すると選択性が減少するからである。上記の変換率に達した後、形成されるアクロレインが、それ単独または一部の水と一緒に、公知の方法で、通常、蒸留またはN2ストリッピングによって反応混合物から分離される。アクロレインは、凝縮または水による洗浄によって単離することができる。アクロレインが取り除かれたグリセリン含有反応混合物は、脱水段階に返送される。気相中での脱水と比べた液相中での脱水の一利点は、エネルギー需要が比較的僅かな点にある。なぜなら、反応混合物から分離されたアクロレインならびにそれと共に留出する一部の水のみが蒸発されなければならないからである。
【0036】
気相中での脱水は、好ましくは240〜320℃の間の温度範囲内で行われ、液相中での脱水は、好ましくは250〜300℃の間の温度範囲内で行われる。液相脱水の場合、装置には、液相を維持するのに必要とされる少なくともそのような圧力が加えられる。
【0037】
脱水は、固定床反応器、流動層反応器、循環流動床を有する反応器、移動床反応器または再生器ライザー(−ダウナー)設計を有する反応器中で行われる。脱水は、連続的または非連続的に実施することができる。
【0038】
さらに、反応蒸留による出発材料処理もしくは生成物処理との反応の組み合わせが可能もしくは意味を持つ。それというのも、グリセリンとアクロレインとの沸点の差が非常に大きいからである。その際、触媒は、塔底および/または塔部分のいずれかに位置決めされる。導入された触媒は、例えば層、懸濁液またはコーティングの形で存在してよい。反応蒸留のさらに別の一利点は、高沸点不純物が、粗グリセリンから塔の底部で、副生成物として生じることがあり得るさらに別の高沸点物と一緒に排出される点にある。アクロレインおよび低沸点物が、次いで塔頂を介して取り出される。
【0039】
形成されたアクロレインは、公知の方法で、それ単独または溶媒あるいは希釈媒体の一部と一緒に、ストリッピング、蒸留または抽出によって反応混合物から分離することができる。反応しなかったグリセリンは、次いで反応段階に返送してよい。
【0040】
本発明により使用される触媒は、良好な再生可能性によっても際立つ。
【0041】
本発明の対象は、金、銀、銅、バナジウム、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、サマリウム、セリウム、イットリウム、ランタン、亜鉛、マグネシウム、ロジウム、鉄、コバルトまたはニッケルを含有する、有利にはそれらから成る元素の群の化合物またはそれらの混合物、場合により付加的に元素のリチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムの化合物および/またはモンモリロナイトまたは酸性ゼオライトから選択される1つ以上の助触媒を含有し、グリセリンからアクロレインへの脱水に際しての使用後に、この使用前より僅かな活性および/または選択性を有する、タングステン化合物を含有する<+2〜有利には−20のハメット酸度H0を有する固体触媒の再生法であって、その際、グリセリンの脱水からの反応物質が存在することなく、上記の触媒を再生のために酸化性または還元性雰囲気に曝す方法。
【0042】
その標準電位に依存して、個々の元素は触媒の再生後に還元性条件下で金属の形で触媒上に存在してよい。
【0043】
タングステンを含有する化合物は、タングステン酸アンモニウム、タングストリン酸、タングステン酸、タングストケイ酸、酸化タングステンまたは構成成分としてタングステンを有するヘテロリン酸の群から選択されている。とりわけ適しているのは、例えばPd/H2WO4、Pt/H2WO4、Pd/WOx/ZrO2、Ce/WOx/ZrO2である。
【0044】
有利には、触媒は、天然または合成のケイ酸塩のまたは酸化物の化合物を担体として含有する。
【0045】
一塩基、二塩基または多塩基の無機酸または無機酸の塩でコーティングされた担体材料を含有する触媒も適している。
【0046】
担体材料として、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、活性炭またはそれらの混合物を含有する触媒も有利である。
【0047】
再生は、一方では酸化条件下で、他方では水素化条件下で行ってよい。その際、いずれの場合においても、反応中に炭化水素の堆積によって触媒の表面上に形成されるコークスが部分的にまたは完全に除去される。触媒の構成成分である適した助触媒は、酸化による再生の場合、一般的に、炭化水素から酸化炭素への変換を促進する成分、例えば、場合により金属の形における金、銀、銅、バナジウムまたは白金であり、再生が水素化条件下で実施される場合、酸性触媒に、強い水素化作用を有する助触媒、例えばコバルト、ニッケル、パラジウム、白金、またはロジウムが添加される。
【0048】
再生は、グリセリンの変換と時間的にかまたは位置的に分けて行われる。時間的に分けられる場合、反応器中へのグリセリンの供給は停止され、それに続けて再生が実施され、その後に再び出発材料混合物が供給される。このプロセスは、次いで任意にしばしば周期的に繰り返される。この再生方法の実施には、連続的な生成物流が得られるように、殊に2つ以上の固定床反応器の一連の配置が適している。その際、反応器の少なくとも1つがアクロレインの製造に使用される一方で、反応器の1つが再生される。その際、反応および再生における時間間隔は、任意に選択することができる。有利には、2〜3000h、殊に4〜400hの時間間隔の範囲内でアクロレインの連続した製造が行われ、その後に触媒は、0.5〜100h、殊に1〜10hの時間間隔で再生される。
【0049】
再生が位置的に分けて行われる場合、触媒は、有利には2つの反応器の間で連続的に移動させられる。その際、反応器の1つで、連続的にアクロレインへのグリセリン変換が行われる。他方の反応器中では、触媒は連続的に再生される。その際、適した反応器設計は、移動床反応器または再生器ライザー(ダウナー)設計である。移動床は、触媒の比較的僅かな流量と比較的少ない触媒損耗とによって際立ち、この場合に有利である。
【0050】
そのつど再生と反応との間に、有利には窒素によるフラッシング工程を実施することが意味を持つ。再生に際して、100〜800℃、有利には200〜700℃、殊に300〜550℃の比較的高い温度が使用される。これらはグリセリン変換中の反応温度と同じである必要はない。次いで、相応する加熱工程および冷却工程が必要とされる。有利には、触媒の再生には、反応に際してより高い温度が使用される。再生に際しての圧力は、有利には0〜50bar、殊に0〜3barの間である。
【0051】
触媒の再生のために、少なくとも1つの添加物質が使用される。これは有利にはガス状である。酸化性条件下で再生される場合、それはガス状酸化剤である。有利には、空気または酸素が使用される。二酸化炭素またはその他の酸化剤も使用してよい。付加的に、水または水蒸気も添加してよい。水素化によって再生される場合、それはガス状還元剤である。有利には、その時に水素が使用される。コークスの発熱除去による触媒帯域中での高い超過温度を回避するために、還元性ガスが、有利には希釈して使用され、そのために、例えば窒素または水蒸気が使用される。触媒の再生の間、添加物質の濃度は、有利には段階的に高められる。触媒は、固体の不活性材料によって希釈され得、または種々の帯域中にも配置されていてよい。
【0052】
酸化剤および還元剤からの混合物を再生のために使用することも可能である。その際、しかしながら、有利には、使用される再生剤の1つは他のものと比べて過剰量で存在する。
【0053】
所望の触媒特性および/または触媒の酸機能は、再生によるタングステンおよび助触媒の使用によって、例えば、触媒失活にも一方でつながる、リン酸または塩酸といった古典的な酸の場合に観察されるように消失しない。
【0054】
実施例
比較例1:
特許文献DE4238493に記載の触媒を使用した:約4mmの直径を有する酸化ケイ素担体100gを、20質量%のリン酸25gと1時間混合した。次いで回転蒸発器を用いて、約70℃で過剰の水を取り去った。この触媒の18mlを、15mmの直径を有する固定床反応器中に充填した。次いで反応器を250℃の温度に加熱した。ポンプによって、20質量%のグリセリン水溶液を12.5g/hで、260℃に加熱された蒸発器を介して反応器中に導通した。ガスクロマトグラフィーによって、流を反応器出口にて分析した。その際、約15時間の運転時間まで、グリセリンの完全な変換を観察することができた。その際、選択性ひいては収率は79%であった。しかしながら、約15時間後に変換度ひいては収率は急勾配で低下し、そうして23時間後に変換度はわずかに20%のみであった。触媒を350℃の温度で5時間、もっぱら4Nl/hの水素流で貫流させた後、収率の改善(再生)を確認することはできなかった。触媒を350℃の温度で5時間、もっぱら4Nl/hの空気流で貫流させた後には、それどころか収率のさらなる悪化が確認され得た。
【0055】
比較例2:
比較例1を繰り返したが、その際、しかしながら、ペレットに圧縮されたモリブデン酸を触媒として使用した。250℃の反応器温度で、最初の5時間以内に9%の収率が達成され得た。再生は省いた。
【0056】
実施例1:
比較例1を繰り返したが、その際、しかしながら、ペレットに圧縮されたタングステン酸を触媒として使用した。260℃の反応器温度で、最初の5時間以内に完全な変換度と79%の収率とを達成することができた。次の運転時間内に、変換度と相応して収率とが明らかに減少した。さらなる経過において、10時間当たり約5%の収率の低下が確認された。触媒を350℃の温度で10時間、もっぱら4Nl/hの水素流で貫流させた後、触媒の活性を明らかに改善することができた。それに従って、グリセリン変換は開始時に再び完全なものであった。さらなる経過において、変換度と収率とは再生前のように減少した。グリセリン脱水と触媒の再生のこの一連の作業を、300時間以内に3回繰り返した。
未再生の触媒を取り外した後、これは黒色に着色していた。触媒の炭素含有率は22質量%で、このことは炭化が著しいことを示している。
【0057】
実施例2:
比較例1を繰り返したが、その際、しかしながら、ペレットに圧縮されたタングステン酸を触媒として使用した。この触媒を付加的にPd1質量%で含浸した。そのためにポアフィリング法によって酢酸鉛を使用した。260℃の反応器温度で、最初の5時間以内に完全な変換度と77%の収率とを達成することができた。次の運転時間内に、変換度と相応して収率とが明らかに減少した。触媒を350℃の温度で10時間、もっぱら4Nl/hの水素流で貫流させた後、触媒の活性を明らかに改善することができた。それに従って、グリセリン変換は開始時に再び完全なものであった。実施例1と比較して、脱水反応に際しての変換度の低下は再生後に明らかに小さくなって、かつ高い変換度水準をより長く保つことができた。
【0058】
実施例3:
比較例1を繰り返したが、その際、しかしながら、モンモリロナイト15質量%とWO3/ZrO285質量%(ZrO2上でのWO311質量%)とからのペレットに圧縮された粉末混合物を触媒として使用した。260℃の反応器温度で、最初の5時間以内に完全な変換度と79%の収率とを達成することができた。次の運転時間内に、変換度と相応して収率とが減少した。触媒を300℃の温度で5時間、もっぱら4Nl/hの空気流で貫流させた後、触媒の活性を明らかに改善することができた。再生の最初の時間の間、コークスの燃焼除去によって発熱を制限するために、空気を窒素で1:1に希釈した。グリセリン変換は、再生後の開始時に再び完全なものであった。脱水および再生の6回のサイクルを行った後、再生温度を390℃へと高めた。これはその次の脱水に際して変換度プロフィールの明らかな上昇につながり、その際、グリセリン変換率は、約20時間後になお90%を上回っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金、銀、銅、バナジウム、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、サマリウム、セリウム、イットリウム、スカンジウム、ランタン、亜鉛、マグネシウム、鉄、コバルトまたはニッケルを含有する、有利にはそれらから成る元素の群の化合物またはそれらの混合物、場合により付加的に元素のリチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムの化合物および/またはモンモリロナイトまたは酸性ゼオライトから選択される1つ以上の助触媒を含有し、グリセリンからアクロレインへの脱水法における使用後に、この使用前より僅かな活性および/または選択性を有する、タングステンを含有する<+2のハメット酸度H0を有する固体触媒の再生法であって、その際、前記触媒を、再生のために酸化性または還元性雰囲気に曝す方法。
【請求項2】
<+2〜−20のハメット酸度H0を有する触媒を再生する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
タングステンを含有する化合物が、タングステン酸アンモニウム、タングストリン酸、タングステン酸、タングストケイ酸または構成成分としてタングステンを有するヘテロポリ酸の群から選択されている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
天然または合成のケイ酸塩のまたは酸化物の化合物を含有する触媒を再生する、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
一塩基、または二塩基または多塩基の無機酸または無機酸の塩でコーティングされた担体材料を含有する触媒を再生する、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
担体材料として酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、活性炭またはそれらの混合物を含有する触媒を再生する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
金、銀、銅、バナジウムまたは白金の群から選択される助触媒を化合物または金属の形で含有する触媒を、酸化性条件下で再生する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
コバルト、ニッケル、パラジウム、ロジウムまたは白金の群から選択される助触媒を化合物または金属の形で含有する触媒を、還元性条件下で再生する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
グリセリンの脱水の間の前記触媒の再生時間が24時間未満である、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記触媒のグリセリンの脱水のための反応時間が10時間を上回る、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記触媒の再生温度が260℃から550℃までの間である、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
再生剤として空気を使用する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
再生剤として水素を使用する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
再生を、固定床反応器、流動層反応器、循環流動層を有する反応器、移動床反応器または再生器ライザー(−ダウナー)設計を有する反応器中で実施する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2010−516462(P2010−516462A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547556(P2009−547556)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064080
【国際公開番号】WO2008/092534
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】