説明

グリセロールからアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する方法

【課題】出発原料のグリセロールからでバイオベースのアクロレインおよびバイオベースのアクリル酸を製造する方法。特に、アクロレインとアクリル酸とを製造する方法。
【解決手段】グリセロールを脱水してアクロレインを製造し、この脱水反応の反応媒体から水がリッチな相を分離し、このアクロレインが少ない水相をグリセロールの脱水段階へ再循環する前に、上記水相の酸化段階を実行する。この酸化処理でプロセス中に蓄積する有機不純物の蓄積を防ぐことができ、水の消費および汚染水の排出を最少にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセロールを出発原料としたバイオ資源起源のアクロレインおよびバイオ資源起源のアクリル酸を製造する方法に関するものである。
本発明は特に、グリセロールの脱水してアクロレインにする反応を実行し、この脱水反応から来る反応混合物から分離した水リッチ相をグリセロール脱水段階へ再循環する前に酸化する段階を実行する、アクロレインおよびアクリル酸の製造方法にある。上記酸化処理は有機不純物がプロセス中に蓄積するのを防止するとともに、水の消費量および汚染水流の放出量を最少にする。
【背景技術】
【0002】
工業的に最も広く使われているアクリル酸の合成方法は酸素含有有混合物を使用したプロピレンの触媒反応を用いる方法である。この反応は一般に気相で実行され、大抵は2段階で行われる。第1段階はプロピレンをほぼ定量的に酸化して、アクリル酸がマイナー成分であるアクロレイン-リッチな混合物を作り、第2段階ではアクロレインの選択酸化を実行してアクリル酸にする。これら2つの段階は直列な2つの反応装置で実行されるか、単一の反応装置の二つの反応帯域で実行され、各々の反応条件は互いに異なっており、各々の反応に適した触媒を必要とする。
【0003】
メーカーはバイオ資源起源の出発原料を使用してアクロレインおよびアクリル酸を合成するプロセスの研究開発を行っている。これらの研究は温室化現像による地球温暖化の員となる化石原料、例えば石油由来のプロピレンを出発材料として使用することを将来は避けるという関心から始まったものである。さらに、世界の石油埋蔵鉱量は次第に減っていくので、そのコストは将来増加することになる。
【0004】
非化石原料から出発する代替プロセスの中では、グルコースまたは糖蜜の発酵によって得られる3-ヒドロキシプロピオン酸を出発原料として使用するプロセスを挙げることができる。
【0005】
また、植物油のメタノール分解でガスオイルおよび家庭用加熱オイルの燃料として使われるメチルエステルと同時に得られるグリセロール(グリセリンともよばれる)から出発するプロセスも挙げることができる。このグリセロールは「グリーンな」天然物であり、多量に入手でき、容易に貯蔵、輸送ができる。植物油または動物性脂肪のメタノール分解は種々の公知プロセス、特に均一触媒、例えば水酸化ナトリウムまたはナトリウムメトキシドのメタノール溶液を用いるか、不均一触媒を用いて実行できる。これに関しては非特許文献1を参照できる。
【0006】
出発原料として3-ヒドロキシプロピオン酸を用いた上記プロセスの主たる欠点は水中に高度希釈された条件下で実行する必要のある発酵反応を含むという経済的な観点からの欠点である。アクリル酸を得るためは多量の水を蒸留によって除去されなければならず、極めて高いエネルギーコストを必要とする。さらに、バイオ資源起源の出発原料からアクリル酸を製造するという初期の利点は化石原料から作ったエネルギで水を分離するためのエネルギとして消費されることで大きく失われる。この分野の問題に関しては、酵素ルート、特に、炭水化物から作ったアクリル酸からポリマーを製造するプロセス記載した特許文献1(国際特許第WO 2006/092271号公報)が参照できる。
【0007】
今日では、グリセロールはバイオ資源起源のアクロレインおよびバイオ資源起源のアクリル酸の工業的製造に適した出発原料として認められている。グリセロールからアクロレインを得るための反応は下記である:
℃H2OH℃HOH℃H2OH−>CH2=CH℃HO+2H2
【0008】
この段階の後にアクロレインを酸化してアクリル酸を得る段階が続く。グリセロールからアクロレインを合成するプロセスは種々の文献に記載されており、例としては特許文献2〜8を挙げることができる。
【0009】
特許文献9(欧州特許第EP 1 710 227号公報)には気相のグリセロールの脱水反応で得られた反応生成物を次の気相の酸化段階でアクリル酸にするプロセスが記載されている。このプロセスは各反応に適した触媒を有する直列な2つの反応装置で実行される。酸化反応を改良し、クリル酸を高収率で得るためには第2の反応装置を送るガス混合物に酸素を添加することが勧められている。この2段プロセスは純粋なグリセロールまたはグリセロールを50重量%以上含む水溶液を用いて実行される。水溶液の蒸発および汚水処理に関連するエネルギーコストを減らすために濃度したグリセロール溶液を使用することが有利である。しかし、グリセロールの濃度があまりに高いと、より多くの副反応が起こり、グリセロールエーテルのような多くの副生成物が生じ、得られたアクロレインまたは得られたアクリル酸とグリセリとの間の反応が起こる危険が増す。これらの重質副生成物は脱水触媒中に残る傾向があり、また、触媒のコーキングの原因となり、触媒を急速に失活させる結果となる。
【0010】
特許文献10(国際特許第WO 06/136336号公報)に記載のアクロレインおよびアクリル酸の合成プロセスでは、脱水反応後にアクロレイン-リッチな相とアクロレインが少ない相とに分離する段階を行い、後者のアクロレインが少ない相(水がリッチな相)を上流の脱水反応装置へ戻してグリセロールを希釈し、グリセロールを10重量%以下含む水相を得ている。この特許文献10は基本的に液相脱水プロセスに関するものであり、上記のアクロレインが少ない相(水がリッチな相)は脱水反応段階で形成された重質化合物を含み、この重質化合物は触媒を汚染し、それを失活させる。
【0011】
特許文献11(国際特許第WO 2006/092272号公報)には液相のグリセロールの脱水段階または気相のグリセリの脱水段階を含むアクリル酸の製造プロセスが記載されている。グリセロールの脱水反応で得られるアクロレインを含む反応生成物は酸化反応装置に送られる前に急冷ユニットで水と接触する。しかし、多量の水流の存在下ではアクロレインの酸化触媒がその有効性および機械強度を急速に失うという危険があるため、このプロセスは維持が難しい。この特許文献11の図5から、液相の脱水反応生成物は蒸留されて、アクロレインの沸点より低い沸点を有する軽質産物と、アクロレインの沸点より高い沸点を有する重質産物とに分離され、水を多く含むこの第2のフラクションはメンブレン分離装置で不純物が除去された後に反応段階へ戻される。しかし、このリサイクリング原則では水のループ中に不純物が蓄積し、メンブレンには選択性が無いため、ファウリング(汚れ)が生じる。
【0012】
特許文献12(国際特許第WO 08/087315号公報)にはグリセロールから2段階でアクリル酸を製造するプロセスが記載されている。このプロセスでは第1脱水段階からの流れに含まれる水および重質副生成物の少なくとも一部を凝縮してから酸化反応装置へ送る中間の段階を使用する。このプロセスでは希釈したグリセロール水溶性が使用でき、脱水反応に有利な効果が得られ、過度に多量な水の存在下でアクロレインを酸化する触媒の損傷が制限される。凝縮段階で生じた水流の全部または一部は精留塔へ送られて、存在する可能性のある軽質生成物を回収するか、排水処理ポートへ送られるが、後者の場合には多量の排水を自然環境中へ排出する前にコストのかかる処理を必要とするという欠点がある。また、この流れを加熱酸化装置で燃焼させることもできるが、この加熱酸化装置からのベントガスの使用については記載がない。また、上記水流れの一部を直接再循環してグリセロールを所望濃度に希釈することもできるが、この場合には、不純物が水ループ中に蓄積し、脱水触媒がコーキングするリスクがある。
【0013】
特許文献13(米国特許第US 6 348 638号明細書)には、プロピレンからアクリル酸を製造する際に生じたアクロレインを含むアクリル酸より沸点が低い副生成物を含むガス流を加熱酸化する方法が記載されている。この相は水およびグリセロールの脱水で生じるようアクロレインより沸点が高い重質副生成物を含まない。また、この文献には加熱酸化反応からベントガス処理中の再噴射(再利用)についての記載はない。ベントガスプロセス流との間の複数の熱交換を行ってエネルギを回収する。こうした複数の熱交換の使用はプロセスのコストを増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際特許第WO 2006/092271号公報
【特許文献2】フランス特許第FR 695931号公報
【特許文献3】米国特許第US 2558520号明細書
【特許文献4】国際特許第WO 99/05085号公報
【特許文献5】米国特許第US 5387720号明細書
【特許文献6】国際特許第WO 06/087083号公報
【特許文献7】国際特許第WO 06/087084号公報
【特許文献8】国際特許第WO 09/044081号公報
【特許文献9】欧州特許第EP 1710227号公報
【特許文献10】国際特許第WO 06/136336号公報
【特許文献11】国際特許第WO 2006/092272号公報
【特許文献12】国際特許第WO 08/087315号公報
【特許文献13】米国特許第US 6 348 638号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】D. Ballerini et al., l'Actualite℃himique, 2002, 11-12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、グリセロールを脱水してアクロレインにする最初の段階と、アクロレインを酸化してアクリル酸にする段階を有する上記アクリル酸製造プロセスの欠点を克服し、アクリル酸製造プロセスの下記の点を大きく改良することにある。
(1)水の消費を減らし、それと同時に水存在下でのグリセロール脱水反応を最適化し、
(2)汚染水の排出を減らし、
(3)エネルギー使用量を減らし、設備を小型化し、
(4)生成物のロスを減らし、反応生成物の回収を効率化し、
(5)脱水、酸化触媒のサイクル周期を増加させる。
【0017】
この目的のために、グリセロール脱水反応から来る水流をアクロレインがリッチな相(acrolein-rich phase)とアクロレインが少なく、水および重質副生成物がリッチな水相(aqueous phase depleted in acrolein)とに分離し、この水相をその少なくとも一部が脱水段階へ再循環される前に、酸化装置へ送ることで、水の消費と脱水触媒上での重質有機不純物の蓄積を減らし、水相中に含まれる有機不純物の酸化で生じる熱を回収する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一つの対象は、少なくとも下記(a)〜(c):
(a) グリセロールに脱水反応を行ってアクロレインを含む水溶液流を作り、
(b) 段階(a)で得られた水溶液流をアクロレインがリッチな相とアクロレインが少ない水相とに分離し、
(c) アクロレインが少ない水相の全部または一部を段階(a)へ再循環する、
段階を含むグリセロールからアクロレインを製造する方法において、
上記のアクロレインが少ない水相を段階(a)へ再循環する前に、酸素、酸素含有ガス、過酸化水素またはオゾンの存在下で、上記水相の酸化段階を実行することを特徴とする方法にある。
【0019】
本発明の他の対象は、少なくとも下記(a)〜(e):
(a) グリセロールに脱水反応を行ってアクロレインを含む水溶液流を作り、
(b) 段階(a)で得られた水溶液流をアクロレインがリッチな相とアクロレインが少ない水相とに分離し、
(c) アクロレインが少ない水相の全部または一部を段階(a)へ再循環し、
(d) アクロレインがリッチな相に触媒酸化反応を行ってアクリルを含む流れを作り、
(e) 段階(d)で得られた流れに一回または複数回の精製処理を行って精製したアクリル酸を回収する、
の段階を含むグリセロールからアクロレインを製造する方法において、
上記のアクロレインが少ない水相を段階(a)へ再循環する前に、酸素、酸素含有ガス、過酸化水素またはオゾンの存在下で、上記水相の酸化段階を実行することを特徴とする方法にある。
【0020】
本発明の上記以外の特徴および利点は添付の図面を参照した下記の詳細な説明からより良く理解できよう。しかし、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のアクロレイン製造プロセスのブロック線図。
【図2】本発明のアクリル酸製造プロセスのブロック線図。
【図3】本発明のアクロレイン製造プロセスの好ましくは実施例の詳細図。
【図4】本発明のアクリル酸製造プロセスの段階(d)および(e)の詳細な図。
【図5】本発明のアクリル酸製造プロセスの好ましくは実施例の詳細図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
アクロレインの製造
[図1]を使用して本発明プロセスを説明する。グリセロールの脱水段階(a)の反応装置(B)へはグリセロールと水から成る流れ(5)を送る。水/グリセロールの重量比は0.04/1〜9/1の間、好ましくは0.7/1〜5/1の間である。流れ(5)は酸素、窒素およびCO2をさらに含むことができる。この流れ(5)はグリセロールがリッチな流れ(1)を窒素、酸素、アルゴンおよびCO2を含む再循環水がリッチな相(3)と混合する段階(A)で得るのが有利である。この流れ(1)は例えば市販の天然グリセロール(グリセロール)にすることができる。商用グリセロールは一般に80%のグリセロールと、1〜10%の塩と、1〜4%の非グリセロール有機物(メタノールを含む)と、3〜15%の水とを含む。
【0023】
脱塩したグリセロールを使用するのが有利である。この脱塩グリセロールは減圧蒸留または減圧下のフラッシュ蒸留またはイオン交換樹脂を使用した分離等の当業者に公知の任意の手段で粗グリセロールから得ることができる。これに関しては例えば下記文献14に記載されている。
【特許文献14】欧州特許第EP1978009号公報
【0024】
また、不均一触媒を用いた触媒反応で鉱油のエステル交換反応プロセスで得られる脱塩グリセロールから出発することもできる。また、純度が98%、99%または99.5%以上の精製グリセロールを使用することもできる。さらに、グリセロールを20〜99重量%、好ましくは30〜80重量%含む水溶液を使用することもできる。
【0025】
脱水反応(段階a)は高温度で行うのが有利であり、一般には反応装置(B)で気相で触媒の存在下に150℃〜500℃、好ましくは250℃〜350℃の温度で、5×105Pa〜100×105Paの圧力で実行する。また、液相で実行することもできる。その場合は温度は150℃〜350℃、圧力は5×105〜100×105Paである。最初の段階は気相で実行するのが好ましい。
【0026】
また、下記文献15、16に記載のように、酸素または酸素含有ガスの存在下で実行することもできる。
【特許文献15】国際特許第WO 06/087083号公報
【特許文献16】国際特許第WO 06/114506号公報
【0027】
この場合の酸素の量はプラントの全ての位置が引火範囲外となる量を選択する。グリセロールに対する分子酸素のモル比は一般に0.1〜1.5、好ましくは0.3〜1.0である。酸素または酸素含有ガスの一部または全部を流れ(3)で供給することができる。
【0028】
脱水反応は酸である化合物、例えば、SO3、SO2またはNO2から選ばれる化合物を1〜3000ppm含む反応媒体中で気相で実行できる。脱水反応は気相または液相で実行される。
【0029】
グリセロールの脱水反応は一般に固体酸触媒上で実行される。適した触媒は反応媒体の不溶で、+2以下のハメット酸度(H0で表す)を有する均一物質または多相物質である。ハメット酸度は特許文献17および非特許文献2に記載のように、化学指示薬を使用したアミン滴定または気相塩基吸着法で決定できる。
【特許文献17】米国特許第US 5 387 720号明細書
【非特許文献2】K.田辺達「Study of Surface Science and Catalysis」、第51巻、1989、第1章および第2章
【0030】
触媒は天然または合成の珪酸含有物質または酸性ゼオライト、無機担体、例えば酸化物、モノ-、ジ-、トリ-またはポリ酸性無機酸、オキサイドまたは混合酸化物またはヘテロポリ酸またはヘテロポリ酸塩から選ぶことができる。この触媒は特に、ヘテロポリ酸のプロトンを元素周期律表の第I族〜第XVI族に属する元素から選択される少なくとも一つのカチオンで交換したヘテロポリ酸塩で構成できる。このヘテロポリ酸塩はW、MoおよびVから選ばれるから少なくとも一つの元素を有する。
【0031】
触媒の例としては鉄およびリンをベースにする混合酸化物およびセシウム、リンおよびタングステンをベースにする混合酸化物を挙げることができる。
【0032】
特に、触媒はゼオライト、ナフィオン[Nafion(登録商標)複合材料(フルオロポリマーのスルホン酸ベース)]、塩素化アルミナ、燐タングステン酸(phosphotungstic)および/または珪素タングステン酸(silicotungstic)および酸塩および酸基、例えばボレートBO3、サルフェートSO4、タングステートWO3、ホスフェートPO4、シリケートSiO2またはモリブデートMoO3基またはこれら化合物の混合物が含浸された金属酸化物、例えば酸化タンタルTa25、酸化ニオブNb25、アルミナAl23、酸化チタンTiO2、ジルコニアZrO2、酸化錫SnO2、シリカSiO2またはシリカアルミナSiO2/Al23を含むタイプの固形物の中から選択される。
【0033】
上記触媒はプロモータ、例えばAu、Ag、Cu、Pt、Rh、Pd、Ru、Sm、Ce、Yt、Sc、La、Zn、Mg、Fe、Co、Niまたはモンモリロナイトをさらに含むことができる。
【0034】
好ましい触媒は燐酸処理したジルコニア、タングステン酸処理したジルコニア、シリカ・ジルコニア、タングステン酸塩または燐タングステン酸塩またはシリコタングステート(silicotungstate)を含浸したチタンまたは錫の酸化物、燐酸処理したアルミナまたはシリカ、ヘテロポリ酸またはヘテロポリ酸塩、鉄ホスフェートおよびプロモータを含む鉄ホスフェートである。
【0035】
グリセロールの脱水反応を反応混合物に対して0.1〜10容積%の量の水素の存在下で実行することもできる。この場合には本出願人の下記特許文献18記載の触媒の存在下で行う。
【特許文献18】米国特許第US 2008/018319号明細書
【0036】
反応装置(B)は固定床、移動床、流動床または循環流動床またはモジュール(シートまたはパン)形状のものを使用できる。接触時間(秒で表される)は触媒ベッド容積と1秒間に送られるガス反応物の容積と比である。ベッド中の平均温度および圧力条件は触媒の種類、触媒ベッドの種類および触媒の寸法に従って変る。一般に、接触時間は0.1〜20秒、好ましくは0.3〜15秒である。
【0037】
段階(a)の完了後、液体または気体から成る水の流れ(6)が得られる。この流れ(6)は所望するアクロレインと、水と、未反応グリセロールと、副生成物、例えばヒドロキプロパン、プロパンアルデヒド、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アクリル酸、プロピオン酸、酢酸、蟻酸、アセトン、フェノール、グリセロールとアクロレインとの付加物、グリセロールの重縮合生成物または環状グリセロールエーテル物、軽質化合物、例えば窒素、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素およびアルゴンとを含む。これらの生成物の重質化合物の一部、その他は凝縮可能であり、他の軽質化合物は一般的な温度、圧力条件下では凝縮できない。
【0038】
反応装置(グリセロール原料)および(脱水)反応自体に入る流れ(5)の組成から、流れ(6)の含水率は高い。本発明プロセスの段階(b)ではこの流れ(6)をアクロレインリッチ相(9)とアクロレインが少なく水が多い相(10)とに分離する。この段階(b)では、例えば本出願人の特許文献19に記載のように、水の部分的凝縮な凝縮を行うか、特許文献20に記載のように分離を行う。その目的は、アクロレインの製造プロセスまたはアクロレインを酸化してアクリル酸にする段階、2段階でグリセロールからアクリル酸を製造するプロセスにおいて、アクロレインを含む流れを精製段階へ送る前に存在する大部分の水と重質副生成物とを除去することにある。
【特許文献19】国際特許第WO 08/087315号公報
【特許文献20】国際特許第WO 2006/136336号公報
【0039】
水を部分的に分離することでアクロレインを酸化してアクリル酸にする第2段階の触媒の損傷を避けることができ、後で多量の水を除去した時にかかる多額のコストを減らすことができ、アクリル酸のヤスを減すことができる。さらに、グリセロール脱水時に生じる「重質」不純物の一部を除去することができる。
【0040】
この段階(b)は分離装置(D)で実行される。段階(a)を気相で実行した場合には分離装置(D)は凝縮装置である。この凝縮装置は吸収塔にすることができる。この吸収塔には蒸発器、熱交換器、凝縮器、デフレグメータおよび水溶液の部分凝縮を行うことができる公知野任意の機器を連結することができる。この段階は流れ(6)中に存在する水の20〜95%、好ましくは40〜90%が液体流(10)中に除去されるような条件下で実行する。一般に、ガス流(9)は流れ(6)中に最初に存在していたアクロレインの80%以上、好ましくは90%以上から成る。この結果は温度を60〜120℃に下げることで得られる。
【0041】
段階(a)を加圧下で液相で実行した場合には、段階(b) の圧力を1〜4バールに下げて実行でき、必要に応じて熱交換器および気液分離、例えばフラッシュドラム、蒸留塔または当業者に公知の他の任意の装置を連結することができる。流れ(6)中に最初に存在した水の20〜95%、好ましくは40〜80%を含む液体の流れ(10)と流れ(6)中に最初に存在したアクロレインの80%以上、好ましくは90%以上を含むガス流(9)とを回収する。
【0042】
得られた凝縮相(10)は一般に90〜99%の水を含み、残りはアクロレインおよび不純物、例えばアクリル酸、グリセロール、酢酸、ヒドロキシプロパン、プロピオン酸、その他の重質有機化合物から成る。
【0043】
本発明プロセスの一つの目的は、脱水触媒に有害な重質不純物を取り除いた流れ(3)の形で反応段階へ少なくとも一部を再循環することができる水がリッチでアクロレインが少ない相(10)を得ることにある。
【0044】
本発明プロセスでは、水相(10)は、酸素、酸素含有ガス、過酸化水素またはオゾンの存在下、好ましくは酸素または酸素含有ガスの存在下で、酸化段階(J)を受けて、基本的に有機化合物の劣化による水、酸素または酸素含有ガスおよびCO2から成り、さらに窒素およびアルゴンを含むこともある流れ(15)になる。この流れ(15)は脱水触媒上に不純物を蓄積させる危険なしに全部または一部をグリセロール脱水段階(a)へ再循環されることができる。それによって脱水反応装置(B)へ送るグリセロールを含む流れ(5)の含水率を調整するこができる。流れ(15)の一部(18)はプロセスから除去するのが好ましい。流れ(18)は脱水反応および有機物の酸化反応で生じた水の一部と有機物の酸化で生じたCO2とから成る。この流れが汚染原物質を含まない場合には自然環境中に排出できる。
【0045】
酸化装置(J)から出た流れ(15)に含まれるエネルギの一部を同じ酸化装置(J)のフィード(10)および/または(13)の予熱に使うことかできる。さらに、脱水段階(a)に再循環される流れ(3)の形で酸化装置(J)を出る流れに含まれるエネルギの一部を利用して、反応の流を脱水反応装置(B)へ送る前に、混合段階(A)のグリセロール溶液を予熱することができる。脱水段階(a)を気相で実行する場合には、反応流を脱水反応装置(B)に送る前に、流れ(3)の形で酸化装置(J)を出た流れに含まれるエネルギを利用して混合段階(A)でグリセロール溶液を蒸発させることができる。この場合、流れ(3)のエネルギのグリセロール(1)への移送は2つの流れを混合するこげ行うことができ、熱交換器は不要である点に留意する必要がある。
【0046】
酸化段階(J)の基本は流れ(10)中に存在する不純物をCO2およびH2Oに変換することにあり、下記のような種々の方法で実行できる。
【0047】
本発明の第1の実施例では、熱酸化を熱酸化装置(またはoxidizer: 酸化装置)中で酸素の存在下、700℃以上の温度で、気相で実行する。熱酸化装置は一般に燃焼室から成り、この燃焼室はバーナーと、燃焼室の煙道ガス中に含まれるエネルギを使用して被処理流を予熱するための一次熱交換器とを備えている。流れを導入燃焼室に導入して温度を被酸化不純物の自己着火温度以上、一般には700℃以上、好ましくは750℃以上の温度に維持する。有機化合物の濃度が不充分な場合には燃焼を維持するために、必要に応じて天然ガス、プロパンまたは軽質油、中質油または重質油のような燃料を添加することもできる。反応に必要な酸素は純酸素、酸素リッチ空気または空気で与えられる。酸素と被処理流とはできるだけ均一な混合物を形成しなければならないので、酸化反応装置の上流側で酸素を加えるのが好ましい。上記温度でのガスの滞留時間は一般に約0.6〜2秒である。
【0048】
本発明の第2の実施例では、酸化を触媒の存在下で酸素の存在下、200℃〜500℃の温度で気相で実行する。酸化触媒としては一般に固体触媒を使用する。この固体触媒は無機担体、例えばアルミナまたはシリカまたは金属-セラミック担体上に沈着させた活性種から成る。この活性種は貴金属(白金、パラジウム、ロジウムまたはこれら金属の組合せ)またはクロム、鉄、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、銅またはニッケルをベースにした金属酸化物にすることができ、これらに貴金属をドープすることができる。触媒はビーズ、ペレット、粒、押出成形品、ブリックまたはモノリスの形にすることができる。空間速度(ガス流量/触媒体積比)は一般に10000〜50000 h-1にする。この酸化方法では、有機化合物の濃度が不充分な場合、天然ガスまたは軽油、中油または重油のような燃料を加えて燃焼を維持することができる。
【0049】
本発明の第3の実施例では、150℃以上の温度および5バール以上の圧力で湿式酸化(亜臨界酸化)または超臨界酸化を実行する。湿式酸化は150℃〜330℃の温度でおよび5〜150バールの圧力で実行される。反応装置中の滞留時間は一般に30分〜3時間である。分散した活性体、例えばPt、Pd、Rh、Ru、Cu、MnまたはCoを含む金属酸化物または混合酸化物をベースにした比表面積が10〜1000m2/gの不均一触媒を使用するのが有利である。空間速度(被処理ガスの流速を触媒容積で割ったもの)は一般に0.5〜10h-1である。反応装置または反応装置の上流側に酸素、酸素リッチ空気または空気を注入する。超臨界酸化は374℃以上の温度と221バール以上の圧力で実行する。
【0050】
本発明の第4の実施例では、酸化を過酸化水素またはオゾンまたはこれらの2つの反応物の組み合わせたもの存在下で液相で実行する。これらの反応物は例えば紫外線または鉄(II)塩のような触媒を使用して活性化できる。
【0051】
本発明の全ての実施例で、脱水触媒上に不純物を堆積させる危険性無しに、流れ(3)を完全または部分的にグリセロール脱水段階(a)に再循環することができるという利点がある。特に、この流れ(3)で脱水反応装置(B)へ送るグリセロール含む流れ(5)の含水率を調整することができる。
【0052】
本発明の全ての実施例で、酸化装置を出る流れに含まれるエネルギの少なくとも一部を使用して酸化装置に入る流れを予熱することができる。また、それを最初の反応段階に入る原料の流れ、例えばグリセロール、水および希ガスを予熱するために用いることもできる。
【0053】
気相反応および気相酸化装置の場合には、流れ(3)の高い熱レベルを使用してグリセロール流(1)を蒸発させることができ、それを非常に高い温度にすることができる。さらに、流れ(5)の反応に必要な水を高い熱レベルで気相で直接供給できる。これはエネルギの観点から非常に有利なことである。
【0054】
本発明の好ましい実施例では、気相の熱酸化または触媒酸化装置(J)は反応装置(B)より高い0.1〜5バール、好ましくは0.2〜2バールの圧力で運転される。本発明の他の好ましい実施例では、熱酸化または触媒酸化装置を大気圧で運転し、反応装置(B)に注入する前にガス流(3)を圧縮する。
【0055】
本発明の好ましい実施例(図1には図示せず)では、脱水段階(a)からの流れを分離する段階(b)からの重質副生成物および水の大部分を除いたアクロレインがリッチな相(9)を例えばプロピレンの酸化でアクロレイン流を製造する下記文献に記載のような吸収/蒸留段階から成る精製処理に送る。
【非特許文献3】Techniques de l'Ingenieur、Traitedes Procedes J 6 100 1-4
【0056】
一つ以上の熱交換器で冷却した後のアクロレインを含む流れ(9)の精製は一般に水または再循環水流の吸収から成り、その頂部からは非凝縮性生成物を取り出し、底でからアクロレインの希釈水溶液を回収する。この吸収は充填塔留プレートカラムで好ましくは連続的に実行することができる。凝縮性の軽質化合物、例えば窒素、酸素、一酸化炭素および二酸化炭素はカラムの最上位で除去するのが有利である。
【0057】
このアクロレイン水溶液は次いで蒸留によって分離する。これは例えば下記特許文献に記載の一連の蒸留塔または下記特許文献に記載の単一カラムで実行できる。
【特許文献21】米国特許第US 3 433 840号明細書
【特許文献22】欧州特許第EP 1 300 384号公報
【特許文献23】欧州特許第EP 1 474 374号公報
【0058】
この蒸留で主として水から成る流れ(一般にこの大部分は吸収段階へ再循環される)と、ガスまたは液体流(重量で80%、および好ましくは>94%のアクロレインを含み、水の含有量がアクロレインに対して15%以下、好ましくは<5%)とを回収することができる。
【0059】
アクロレインから成る流れ(9)は水による吸収なしに、蒸留で精製することができる。流れ(9)が非凝縮性気体をほとんど含まない場合には、この選択肢が有利には使われる。
【0060】
流れ(9)の精製段階の終わりに得られる液体または気体のアクロレイン流は触媒の存在下でメタンチオールとの反応でメチルメルカプトプロピオンアルデヒドMMP)の製造で用いることができる。必要に応じて精製した後、MMPを当業者に周知のBuchererまたStrecker合成法に従ってシアン化水素またはシアン化ナトリウムと反応させ、下記非特許文献4に記載のような反応生成物の転化後にメチオニンまたはメチオニンのヒドロキシ類似体にする。
【非特許文献4】Techniques de l'Ingenieur、Traite Geniedes procedes、J 6 410-1〜9
【0061】
[図3]は気相でのグリセロール脱水反応でアクロレインを製造する本発明方法の好ましい実施例の詳細図である。脱水反応装置(B)へ送られるガス流(5)は混和室(A)で得られる。この混和室(A)では、酸化装置(J)で実行した酸化処理後の水相再循環流(3)、必要に応じてさらに、酸化装置(J)から来るCO2を含んだガス流の再循環流(2)から来る高温気体を使用してグリセロールを蒸発させる。グリセロール流(1)は液体の形で、必要に応じて約100℃〜200℃の温度、最高で280℃に予熱された後に、並流または逆流のガス流でアトマイザーノズルを介して混和室に注入できる。アトマイザーノズルはメカニカルな調節(ノズルオリフィスの寸法および形状の変更)を行うことで、基本的に水、酸素およびCO2、さらには窒素から成る再循環流(3)と接触して細かな液滴を形成できる。再循環流(3)は気相の熱酸化処理後または液相の熱酸化の場合(図示せず)には蒸発後に気体の形をしている。
【0062】
アトマイザーノズルはガス、例えば流れ(2)をノズル中に射出して、一般にスプレーノズルで得られるものより小さい液滴サイズにすることができる。このシステムを用いることで1mm以下、好ましくは300μm以下の大きさの小さな液滴を作ることができる。寸法がより細かいものはより急速に液滴流(1)を蒸気にすることができる。
【0063】
本発明の他の実施例では、反応装置(B)に注入される前に液体のグリセロール流(1)と再循環流(3)との十分な混合がベンチュリ-ミクサーで実行される。
【0064】
[図3]に示した図では反応装置に入る流れ(5)を予熱するのに必要なエネルギが過熱流(3)および(2)によって与えられる。混合装置(A)と反応装置(B)との間に熱交換器を配置することもできる。
【0065】
脱水反応を促進する酸素、空気または酸素含有ガスを(4)で供給することもできる。
【0066】
反応装置から出る気体反応流(6)は熱交換器(C)で70℃〜200℃、好ましくは110℃〜180℃の温度まで冷却されてから凝縮器(E)を有する凝縮カラム(D)に入り、カラム(D)に再循環される主として水およびアクロレインから成る液相(8)を製造されたアクロレインから成るガス流(9)から分離する。この流れ(9)は一般にアクロレイン/水重量比で1/0.02〜1/3、好ましくは1/0.5〜1/2の水の他に、軽室副生成物、例えばアセトアルデヒド、プロパンアルデヒド、アセトンを含み、場合によってはO2および希ガスCOおよびCO2を含む。カラム(D)の底部に出る液体流(10)からアクロレインをストリップするために、カラム(D)の底部へ酸化装置(J)から来る主としてCO2から成るガス流(7)を送ることができる。この相の役目はアクロレインをストリップすることにある。窒素流またはスチーム流または設備の他の再循環流のような他のガス流体も適している。あるいは、カラム(D)の底部をリボイルするか、カラム最上部に液体流(10)を供給し、底部にガス流を供給するストリッピングカラムを追加してアクロレインをストリップすることもできる。
【0067】
吸収塔の底部から出る液体流(10)に必要に応じてグリセロールとグリセロール出発原料の精製で得られたメタノールとを含む水流(11)を加え、熱交換器(G)および(H)で蒸発させてガス形で酸化装置(J)へ送る。あるいは、この水流の一部だけを蒸発させ、大部分は水および軽質化合物にして、気体の形で酸化装置(J)に送る。水より重質の有機物が濃縮された液体の蒸発残さは酸化装置(J)へ液体の形で噴射するか、プロセスから除去する。
【0068】
酸化装置(J)の吸込み温度は有機物が正しく燃焼するように選択する。熱酸化の場合には一般に200℃〜1200℃、気相接触酸化の場合には500℃〜600℃にする。熱酸化に必要な酸素または酸素リッチな空気または空気を(13)で供給する。このループに有機不純物を含むガス流(12)を組み入れて、例えばアクロレイン製造工程の下流のアクリル酸精製装置から来る排ガスを焼却することもできる。熱交換器(H)によって酸化装置から出る煙道ガス(15)のエネルギを回収して、酸化装置の入口で流れ(14)を予熱することもできる。酸化装置の出口でガス流(16)の少なくとも一部を上記脱水段階(流れ3)へ再循環し、熱交換器(K)を通って残りの流れ(17)の液体の水(18)の一部をパージし、吸収塔(D)の底部にガス流体(7)の形で再循環するか、上記のように混合段階(A)の入口へガス流体(2)の形で再循環する。(20)でガスのパージをすることもできる。
【0069】
アクリル酸の製造
[図2]は本発明プロセスを実行する系を示し、脱水段階(a)からの流れを分離する段階(b)からから来る重質副生成物を含まず、水の大部分を除いたアクロレインがリッチな相(9)に反応装置(M)中で触媒酸化反応(d)を行って、所望のアクリル酸から成る流れ(22)を得る。その後、この流れに段階(e)で一回以上の精製処理(0)を行って精製済みアクリル酸(25)を回収する。
【0070】
アクロレインを酸化してアクリル酸を得るための反応は分子酸素または分子酸素を含む混合物の存在下で、化触媒の存在下で200℃〜350℃、好ましくは250℃〜320℃の温度、1〜5バールの圧力下で実行される。この反応には酸化触媒として当業者に周知の全てのタイプの触媒が使用できる。一般に金属の形または酸化物、硫酸塩またはリン酸塩の形をしたMo、V、W、Re、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Te、Sb、Bi、Pt、Pd、RuおよびRhの中から選択される少なくとも一種の元素から成る固形物を使用する。特に、Moおよび/またはVおよび/またはWおよび/またはCuおよび/またはSbおよび/またはFeを主成分とする配合物が使用される。
【0071】
酸化反応装置(M)は固定床、流動床または循環流動床で運転できる。また、例えば下記文献に記載の触媒をモジュール化したプレート熱交換器を使用することもできる。
【特許文献24】欧州特許第EP 995 491号公報
【特許文献25】欧州特許第EP 1 147 807号公報
【特許文献26】米国特許第US 2005/0020851号明細書
【0072】
酸化反応から出たガス混合物(22)はアクリル酸以外下記のような多様な化合物を含む:
(1)一般に使われる温度および圧力条件下で非凝縮性の気質化合物:最後の酸化で少量作られるか、プロセス中を再循環する、N2、未変換O2、CO、CO2
(2)凝縮可能な軽質化合物:特に、上記段階または脱水反応で生じるか、希釈剤中の残留水分、未反応アクロレイン、軽質アルデヒド、例えばホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、
(3)上記段階からの重質化合物残差:フルフラール、ベンズアルデヒド、マイレン酸、無水マレイン酸、安息香酸、フェノールまたはプロトアネモニン。
【0073】
所定グレードに対応するアクリル酸を得るために、上記混合物(22)を例えば、[図4]に示す少なくとも一回の精製工程を行う必要がある:
【0074】
この精製工程の最初の段階は向流吸収によるアクリル酸の抽出段階から成る。そのためにガス混合物(22)を、必要に応じて熱交換器(N)で冷却した後に、吸収塔(P)底部に導入し、カラム最上部から導入した溶剤(23)、一般に水と向流接触させる。一般に使う温度および圧力条件下(それぞれ50℃および2×105Pa下)で非凝縮性の軽質化合物はこの吸収塔の最上部から流れ(29)として除去される。このカラムで使用する溶剤(23)は水である。例えば、特許文献27、28および29に記載のような高沸点の疎水性溶剤で水を交換する。
【特許文献27】フランス特許第FR 2 146 386号公報
【特許文献28】米国特許第US 5 426 221号明細書
【特許文献29】フランス特許第FR 96/14397号公報
【0075】
この吸収で使われる溶剤の水はプロセスの外部供給源から与えることもできるが、その全部または一部をプロセスで生じる再循環水、例えば、分離装置(D)で分離した水または精製工程のオプションとして存在する共沸乾燥カラムの最上部流から回収した水にすることもできる。変形例では、水を吸収塔に加えない。この吸収段階の運転条件は以下の通り:
【0076】
気体反応混合物をカラム底部に130℃〜250℃の温度で導入する。水はカラム最上部に10℃〜60℃の温度で導入する。水および気体反応混合物のそれぞれの量は、水/アクリル酸重量比が1/1〜1/4の間になるようにする。運転は大気圧で実行する。
【0077】
吸収塔(P)を非常に軽質な化合物の蒸留カラムに連結できる。この非常に軽質の化合物は吸収塔の底部で回収したアクリル酸水の溶液中に低濃度で存在する基本的に反応で未変換または未回収のアクロレインである。この蒸留塔(Q)は6×103〜7×104Paの圧力下で運転され、最上部に上記吸収塔の底部からの流れ(24)を供給し、最上部でアクロレインがリッチなアクリル酸の流れ(26)を除去し、この流れ(26)は液体の流れ(27)の形で凝縮器を通して吸収塔の下部に少なくとも部分的に再循環され、この同じカラムの最上位で最終的に除去され、残留するガス流(28)はコンプレッサ(S)で再圧縮され、必要に応じてアクロレインの製造プロセスの酸化装置へ送られる。未変成アクロレインから取り出した精製段階後に得られるアクリル酸の水性混合物(25)(重量比1/1〜4/1)は「粗アクリル酸」と呼ばれる。
【0078】
所望するアクリル酸のグレードに従って、上記混合物は多くの特許に記載されている追加の処理、特に、水に不溶なアクリル酸の溶剤の存在下で実行される脱水段階へ送られる。この脱水段階は溶剤、水およびアクリル酸混合物の共沸蒸留で実行でき、溶剤/水共沸混合物を蒸留塔の最上部から取り出すことができる。アクリル酸は底部で回収され、それはさらに軽質化合物の蒸留(トッピング)および重質化合物の分離(テーリング)を受ける。それによって「テクニカルグレード(技術的等級)」と呼ばれるアクリル酸が得られる。その後、さらに精製、例えば分別結晶して、氷(glacial)グレードにすることができる。
【0079】
本発明プロセスのエネルギー最適化
本発明プロセスには冷却、凝縮しなければならない気体流および蒸発しなければならない液体流が存在する。圧縮システム、特にヒートポンプを使用して最も冷たい媒体から最も熱い媒体に熱を移すことで熱のロスを最少にすることができる。ヒートポンプは冷媒圧縮サイクルの原則に基づいて運転される熱力学器具である。圧縮して冷媒をガス状態から液体状態へ変えると発熱(凝縮)現象が起きて熱が生じる。逆に、減圧して冷媒液体状態からガス状態に変えると吸熱(蒸発)現象が起き、熱を吸収してクールダウンする。全ては閉回路中での状態変化をベースにする。
【0080】
本発明プロセスでは脱水反応装置の出口の反応流(6)の凝縮エネルギを回収し、段階(b)でアクロレインがリッチな相と分離されたアクロレインが少ない水相中の水を蒸発させるためにヒートポンプを使用してするのが有利である。このヒートポンプは水または当業者に公知の任意の適切な冷媒、例えば1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンまたは1,1,1,3,3-ペンタフルオロペンタンまたは少なくとも一種のハイドロクロロオレフィン、例えば1- クロル-3,3,3- リフルオロプロペンまたは2- クロル--3,3,3-トリフルオロプロピレンを副有する組成物または例えば下記文献に記載の1〜50重量%のメチルテトラハイドロフランと5〜99重量%の式C4F9ORのノナフルオロブチルアルキルエーテルとの組成物(Rは1〜4の炭素原子を有する)を用いて運転できる。
【特許文献30】フランス特許第FR 2 928 648号公報
【0081】
脱水反応を気相で実行した場合、流れ(6)は150℃〜550℃、好ましくは250℃〜400℃の温度のガス混合物の形で反応装置から出る。この流れは最初の熱交換器で150℃〜200℃の温度に冷却される。一般にこの熱交換器で低圧のスチームを作ってエネルギを回収できる。第2の熱交換器でこの流れを70℃〜120℃、好ましくは90℃〜110℃の温度へ冷却して吸収塔(D)へ送る。そこでアクロレインがリッチな気相(9)から分離されたアクロレインが少ない液相(10)が底部から出る。この液体流(10)は第3の熱交換器によって脱水反応装置の吸込み圧力より高い0.1〜3バールの圧力と110℃〜200℃、好ましくは130℃〜160℃の温度で蒸発され、得られた気相は酸素と混合され、高い温度に加熱されてから熱酸化装置に注入される。
【0082】
水、その他任意の冷媒で運転されるヒートポンプは上記の第2および第3の熱交換器に配置される。液体流は最初の熱交換器で蒸発され、コンプレッサで2〜30バール、好ましくは2〜8バールの圧力および110℃〜200℃の温度に圧縮される。得られる流れは第2の熱交換器で凝縮され、減圧され、冷却された液体流に戻される。すなわち、2つの熱交換器の間にループが形成ささる。
【0083】
この種のヒートポンプを使用した例は実施例3に詳細に記載されている。[図5]ではヒートポンプは点線で示してある。
【0084】
[図3]に示す他の配置では、反応は気相で実行され、脱水反応装置からの流れ(6)は最初の熱交換器(C)で130℃〜200℃、好ましくは150℃〜180℃の温度に冷却されてから凝縮カラム(D)に直接に注入される。アクロレインがリッチなガス相(9)が最上部から、また、アクロレインが少ない液相(10)が底部から出るように、熱交換器(E)で50℃〜100℃、好ましくは60〜90℃の温度に冷却してカラム(D)を熱平衡させる。液体流(10)は熱交換器(G)によって脱水反応装置の吸込み圧力より高い0.1〜3バールの圧力、120℃〜200℃、好ましくは130℃〜160℃の温度で蒸発させて気相にし、それを酸素と混合し、高い温度に昇温して熱酸化装置に注入する。熱交換器(E)(G)にヒートポンプを設置し、熱交換器(E)で冷媒を蒸発させ、その冷媒を圧縮し、熱交換器(G)で縮合し、次いで膨張させ、熱交換器(E)へ送る。
【0085】
[図3]に示す配置で圧縮システムを使うこともできる。その場合には脱水反応および酸化段階を気相で実行し、脱水反応装置から出たガス流(6)を一つ以上の熱交換器(C)で冷却し、コンプレッサ([図3]には図示せず)で再圧縮してから凝縮カラム(D)に注入する。カラム(D)および熱交換器(E)は反応装置(B)より高い少なくとも1バール、好ましくは少なくとも2バールの圧力で運転する。
底部から出た液体流(10)熱交換器(C)および(E)以下で酸化反応装置(J)より上の圧力の少なくとも0.5バール、好ましくは少なくとも1.5バールの圧力で運転される熱交換器(G)で蒸発させる。酸化反応装置(J)自体は反応装置(B)より上の圧力で運転する。
【0086】
上記条件下で、カラム(D)の最上位で起こる凝縮をポンプ(F)の出口での蒸発と組合せることができる。すなわち、カラムの最上部から出るガス流体をポンプ(F)を出る液体流で直接冷却できる。この液体流は再加熱される。換言すれば、段階(b)から来るアクロレインが少ない水相の少なくとも一部を熱交換器(または熱交換器)で蒸発させ、段階(a)および段階(b)の冷気を提供する。すなわち、熱交換器(C)(E)および(G)を連結できる。
【0087】
また、脱水反応装置から出るガス流(6)を熱交換器(C)で低温、一般に110℃〜160℃に冷却して熱交換器(C)でスチームを作り、そのスチームをアクロレインまたはアクリル酸を製造するプロセスの他の位置またはプロセス外で有利に使うこともできる。
【0088】
また、本発明プロセスで使用するヒートポンプで充分な温熱レベルのスチームを作り、プロセス中またはプロセス外で用いることもできる。
【0089】
従って、本発明プロセスは燃費および大気中へのCO2排出を減らすのに寄与する。
【0090】
本発明プロセスで得られるバイオ資源起源のアクリル酸はアクリル酸の重合で製造されるホモポリマーおよび必要に応じて他の不飽和モノマーとのコポリマーの製造で使用でき、例えば部分的に中和された酸の重合するか、上記酸を重合して得られたポリアクリル酸を不完全に中和することで超吸収ポリマーを製造することができる。
【0091】
また、本発明プロセスで得られるバイオ資源起源のアクリル酸はエステルまたはアミド形の上記酸の誘導体の重合でポリマーまたはコポリマーの製造で使うことができる。
【実施例】
【0092】
実験の部
本発明プロセスを示すためにASPENソフトウェアを使用した化学シミュレーションを行った。百分比は重量%を表す。1%以下の含有量のものは記載しない。圧力は絶対バールを表す。
【0093】
実施例1
グリセロールの気相脱水によるアクロレインの製造と、再循環した水相の気相熱酸化(図3)
200℃に予熱したグリセロールの液体流(1)(17.5t/h、98.4%のグリセロール、1.1%の水)とガス流(2)(2.1t/h、191℃、7バール、85.3%のCO2、9.4%の水、4.5%のO2)を、酸素流(4)(2.6t/h)と混合した再循環ガス流(3)(70.8t/h、491℃、2.8バール、49.5%の水、47.6%のCO2、2.5%のO2)中へスプレーノズル(A)を介して噴射した。グリセロール液滴としてスプレーすることで短距離で蒸発させることができる。得られたガス流体(5)(93.1t/h、320℃、2.7バール、18.5%のグリセロール、38.1%の水、4.8%の酸素、38.1%のCO2)は溶融塩浴に連結された35m3の不均質酸脱水触媒を収容した固定床反応塔(B)へ送られる。この反応装置を出るガス流体(6)は320℃、1.7バールで45.3%の水、3.8%の酸素、9.0%のアクロレイン、38.6%のCO2を含む。この流れを熱交換器(C)で160℃まで冷却してからへ送る。この吸収塔(D)の底部にはガス流(7)(9.0t/h、83℃、85.3%のCO2、9.4%の水、4.5%のO2)が噴射される。このカラムの最上部には凝縮器(E)がある。この凝縮器(E)を出た液相(8)(40.1t/h、70℃)はカラム(D)へ送られ、アクロレインがリッチなガス流(9)(64.3t/h)(67.9%のCO2、13.1%のアクロレイン、9.3%の水、6.2%のO2および1.1%のアセトアルデヒドから成る)は1.6バールの圧力下、70℃で取り出される。
【0094】
カラム(D)の底部から出るアクロレインが少ない液体流(10)(37.8t/h、77℃、97.9%の水、0.005%のアクロレイン、0.5%のグリセロール、0.4%の酢酸、0.3%のアクリル酸、0.4%のアセトール、0.5%の他の重質有機化合物)は、水流(11)(1.1t/h、96.8%の水、1.9%のメタノール、1.3%のグリセロール)と混合され、、ポンプ(F)を用いて野クラレ、ガス流(12)(57.7t/h、190℃、2.9バール、76.2%のCO2、18.8%の水、1.7%のO2、1.3%のCO)および酸素(13)(4.3t/h)と混合され、熱交換器(G)で186℃に加熱される。得られた流れ(14)(100.9t/h、2.8バール、48.4%の水、43.6%のCO2、5.3%のO2、1.5%の有機物、0.7%のCO)は熱交換器(H)で458℃に予熱され、アルミナ上に白金を付けた6m3の酸化触媒を収容した断熱接触酸化反応装置(J)中に噴射される。反応装置(J)を出た煙道ガス(15)(100.9t/h、700℃、2.8バール、49.5%の水、47.6%のCO2、2.5%のO2)は熱交換器(H)を通って491℃まで冷却される。得られた流れ(16)は上記の流れ(3)と流れ(17)(30.1t/h、491℃、2.8バール)とに分割される。流れ(17)は熱交換器(K)で83℃まで冷却される。液相(18)は99.9%の水から成り、除去される。気相(19)(83℃、2.7バール、85.3%のCO2、9.4%の水、4.5%のO2)は上記の流れ(7)と流れ(20)と上記流れ(21)とに分割される。流れ(20)は除去され、流れ(21)は圧縮され、上記の流れ(2)となる。
【0095】
実施例2
アクリル酸の製造(図4)
実施例1のガス流体(9)(64.3t/h、70℃、1.6バール、67.9%のCO2、13.1%のアクロレイン、9.3%の水、6.2%のO2、1.1%のアセトアルデヒド)を熱交換器(L)で160℃に加熱してから、酸化触媒を収容した第2の固定床式多管反応装置(M)中に噴射する。多管反応装置(M)は反応熱を除去するための溶融塩水浴に連結している。この反応装置を出たガス流体(22)(64.3t/h、68.4%のCO2、15.8%のアクリル酸、9.5%の水、1.6%の酸素、1.1%の一酸化炭素、1.0%の酢酸)は熱交換器(N)で160℃まで冷却されてから吸収塔(P)の底部に噴射される。このカラムの最上部には25℃の水流れ(23)が9t/hで噴射される。このカラムの底部からは液相(24)(16.6t/h、80℃、62.0%のアクリル酸、30.9%の水、4.0%の酢酸、2.4%の蟻酸)が回収される。この液相を減圧下で運転されるカラム(Q)へ送って、アクリル酸流(25)(15.6t/h、65%のアクリル酸、27.8%の水、4.2%の酢酸、2.6%の蟻酸)が回収できるようにする。ガス流体(26)(0.9t/h、69℃、0.3バール)はカラム(Q)の最上部から凝縮器へ送って、液相(27)を得る。この液相(27)はカラム(P)へ戻し、気相(28)は減圧装置(R)へ送る。この減圧装置からのベントはカラム(P)から気相(29)(57.7t/h、74℃、76.2%のCO2、18.8%の水、1.7%のO2、1.3%のCO)と合され、その合体流はコンプレッサ(S)で再圧縮され、実施例1に記載の流れ(12)を形成する。
【0096】
実施例3
グリセロールを気相脱水してアクロレインを製造し、それを酸化してアクリル酸を製造し、再循環水相を気相で熱酸化し、ヒートポンプを使用する(図5)
210℃に予熱したグリセロールの液体流(1)(17.4t/h、99.0%のグリセロール)をスプレーノズル(A)を用いて再循環されたガス流体(3)(62.5t/h、485℃、2.8バール、68.1%の水、28.7%のCO2、2.9%のO2)中に噴射して、酸素流(4)(2.6t/h)と混合する。グリセロールを液的でスプレーすることで短距離で蒸発させることができる。得られたガス流(5)(82.5t/h、320℃、2.8バール、20.8%のグリセロール、51.7%の水、5.3%の酸素、21.8%のCO2)を溶融塩水浴と連結された不均質脱水触媒を収容した固定床式多管反応塔(B)へ送る。この反応装置を出た320℃、1.8バールのガス流(6)(59.8%の水、4.2%の酸素、10.8%のアクロレイン、22.4%のCO2)は熱交換器(Cl)で160℃まで冷却されて、少量の液体重質物(6a)(68kg/h)と気相とが回収される。この気相は熱交換器(C2)を通って102℃に冷却されて、液相(6b)(26.7t/h、97%の水)と気相(6c)(42.1%の水、33.1%のCO2、6.3%のO2、14.7%のアクロレイン、1.3%のアセトアルデヒド、1.1%のCO)とが得られる。気相は吸収塔(D)へ送られる。このカラム(D)にはガス流体(7)(35.9t/h、123℃、76.3%のCO2、16.5%の水、3.0%のCO、1.9%のO2)が噴射される。カラム(D)の上部凝縮器(E)で液相(8)(22.6t/h、74℃、1.7バール)とアクロレインリッチガス流(9)(69.5t/h、74℃、1.7バール、65.9%のCO2、12.1%のアクロレイン、10.8%の水、6.0%のO2、2.4%のCO、1.3%のアセトアルデヒド)が得られる。液相(8)はカラム(D)へ戻す。
【0097】
上記ガス流(9)は熱交換器(L)で240℃に加熱された後、酸化触媒を収容した第2の固定床式多管反応装置(M)中に噴射される。多管反応装置(M)は反応熱を除去するための溶融塩水浴に連結されている。この反応装置を出るガス流体(22)(69.5t/h、66.4%のCO2、14.6%のアクリル酸、11.0%の水、2.6%の一酸化炭素、1.7%の酸素、1.1%の酢酸)は熱交換器(N)で160℃まで冷却された後、吸収塔(P)中に噴射される。このカラムの最上部には25℃の水流(23)が6.5t/hで注入される。カラムの底から取り出された液相(24)は減圧下に運転されるカラム(Q)に送られてアクリル酸流(25)(15.5t/h、64.9%のアクリル酸、26.7%の水、4.9%の酢酸、3.0%の蟻酸)が回収される。ガス流(26)(1.6t/h、72℃、0.3バール)はカラム(Q)の最上部から凝縮器を介してカラム(P)へ送られる。カラム(P)からの気相(29)(60.5t/h、72℃、1.1バール、76.3%のCO2、16.5%の水、1.9%のO2、3.0%CO)はコンプレッサ(S)で最高1.7バールまで部分的に再圧縮されて上記の流れ(7)を形成する。残りの部分はコンプレッサ(T)で2.9バールまで圧縮されて流れ(30)となる。
【0098】
カラム(D)の底部から出るアクロレインが少ない液体流(10)(22.2t/h、85℃、98.9%の水、0.03%のアクロレイン)はポンプ(F)によって流れ(6b)と混合されてから熱交換器(G1)(G2)で蒸発されてガス流(14a)(48.3t/h、135℃、2.9バール、98.2%の水)と液体流(14b)とになまる。液体流(14b)は流れ(6a)と混合されて熱酸化装置(J)に直接に噴射される。流れ(14a)および(30)は酸素流(32)(4.6t/h)と混合され、熱交換器(H)(K)を通って977℃に加熱されてから熱酸化装置に噴射される流れ(14c)となる。熱酸化装置から出た流れ(15)(79.3t/h、1199℃、68.1%の水、28.7%のCO2、2.9%のO2)は流れ(18a)(16.8t/h)と流れ(17)に分割され、流れ(18a)は熱交換器(H)を通って189℃まで冷却されてから除去される。流れ(17)は熱交換器(K)を通って485℃まで冷却されて上記の流れ(3)を形成する。
【0099】
熱交換器(C2)および(G1)に設置されたスチームで運転されるヒートポンプは点線で示す。液体の水の流れ(33)(26.2t/、25℃、h)は熱交換器(C2)(100℃、1バール)で蒸発され、コンプレッサ(R)で3.5バール、270℃に圧縮される。得られた流れ(35)は熱交換器(G1)で凝縮されてから、膨張され、冷却されて流れ(33)となる。
【0100】
実施例4(本発明)
脱水酸触媒は、300-500gmの粒径に粉砕した酸化チタン(15.4g)上の細孔容積に燐タングステン酸水溶液(5.7gの水中に3.9gの燐タングステン酸)を含浸して製造した。この触媒をベント付き乾燥器で110℃で乾燥し、次いで500℃で3時間か焼した。7ml容積の脱水触媒を、280℃に加熱されたオーブン中に垂直に配置された直径が13mmで容積が316リットルのステンレス鋼反応装置に導入した。
50重量%の純粋なグリセロールと50重量%の水とから成る溶液を15g/hの流速で酸素流と1.2および18Nl/hの窒素流とそれぞれ混合し、反応装置に接続した蒸発器へ送り、混合物を280℃に加熱した。
【0101】
反応装置を出る排出ガス流は、最初に0℃に冷却された120および80グラムの水を含む直列な2つのトラップへ送ってアクロレインを完全にトラップして物質収支をバランスさせるか、0℃に冷却されたタンクへ送って大部分の水と反応で生じた重質生成物とをトラップする。反応装置全体の圧力降下は実験全体で測定した。
【0102】
物質収支は直列な水-充填トラップで時間t=2時間から時間t =3時間30分までと、t =21時間からt = 22時間30分まで実行し、トラップしたグリセロールおよびアクロレインの含有量をガスクロマトグラフィで測定した。グリセロール転化およびアクロレイン収率は、次の式に従って計算される:
グリセロールの転化率(%)とアクロレインの収率は下記の式で計算した:
【0103】
グリセロールの転化率(%)=((物質収支中に反応装置に注入したグリセロールのモル数)−(2つのトラップで回収したモル数))/((物質収支中に反応装置に噴射したグリセロールのモル数)×100、
アクロレイン収率(%)=(2つのトラップで回収したアクロレインのモル数)/(物質収支中に反応装置に噴射したグリセロールのモル数)×100。
実験の結果は[表1]に示す。
【0104】
大部分の水と重質生成物は時間t =1時間とt =2時間の間および時間t =3時間30分と時間t =21時間との間、タンク中に集めた。この水溶液を30℃に加熱された部分真空回転乾燥機で2時間処理してアクロレインを蒸発させた。このタンク回収と蒸発は[図1]の階段(D)をシミュレーションするものである。
【0105】
[図1]の階段(J)(A)(B)をシミュレーションするために、脱水触媒を収容した反応装置に、1.5mlのHaldor Topsoe CK307酸化触媒を収容した第2の反応装置を連結した。回収した5.5g/hの水溶液の流れをそれぞれ2.4および18Nl/hの酸素流および窒素流と混合し、混合物を、酸化触媒を収容した反応装置に接続された300℃に加熱した蒸発器へ送った。酸化反応装置と脱水反応装置との間にグリセロールの80%水溶液流を9.4グラム/時で噴射した。酸化反応装置は300℃の帯域に維持し、脱水反応装置は280℃帯域に維持した。物質収支および結果は[表1]に示した。
【0106】
実施例5(比較例)
実施例4と同様に、グリセロール脱水反応を50重量%の純粋グリセロールと50重量%の水とから成る溶液で実行し、水および重質生成物の大部分は部分真空の回転乾燥機で30℃に2時間加熱してアクロレインを蒸発させ、タンクに集めた。
回収された水溶液は再循環される水と重質生成物の混合物を含み、それを純粋なグリセロールと直接混合して50%のグリセロール溶液を調製し、グリセロールの脱水実験を繰り返した。3時間30分で、反応装置全体の圧降下が0.1バール観測され、圧力はそれから次第に増加し、5時間後には0.3バールに達し、7時間後には1バールを超えた。圧力降下が指数関数的に増加したため実験は継続できなかった。
結果は[表1]に示してある。再循環される重質生成物を含む水を使用すると、圧力が非常に急速に上昇し、反応装置がブロックすることが観測された。
【0107】
【表1】

【0108】
実施例6
気相のグリセロールを脱水してアクロレインを製造し、それを酸化してはアクリル酸とし、再循環された水相を大気圧で熱酸化する
液体のグリセロール流(1)(17.4t/h、99.0%のグリセロール)を275℃に予熱し、空気流(4)(20.6t/h、172℃、3.0バール)および空気スチーム(4.3t/h、134℃、3.0バール)を混合した再循環されたガス流(3)(50.6t/h、442℃、3.0バール、59.1%の窒素、25.3%の水、12.1%のCO2、2.5%のO2、1.0%のアルゴン)中に、ベンチュリ・ミクサーを介して、噴射した。ベンチュリ-ミクサーは短距離でグリセロールを蒸発させることができる。
【0109】
得られたガス流体(5)(92.8t/h、240℃、2.8バール、18.5%のグリセロール、18.5%の水、6.4%の酸素、6.6%のCO2、49.0%の窒素)を不均質脱水触媒を収容し、溶融塩水浴に連結された固定床式多管反応塔(B)へ送った。この反応装置を出るガス流体(6)(49.0%の窒素、25.7%の水、5.4%の酸素、9.0%のアクロレイン、7.2%のCO2)は320℃、1.8バールである。この流れを熱交換器(Cl)で193℃まで冷却し、熱交換器(C2)で120℃に冷却し、そこから少量の液体重質生成物流(6b)(0.2t/h)と気相(6c)(92.6t/h、120℃、1.7バール、49.1%の窒素、25.8%の水、7.2%のCO2、5.4%のO2、9.1%のアクロレイン)とを回収し、この気相を吸収塔(D)へ送る。カラム(D)の頂部の凝縮器(E)で生じた液相(8)(14.3 t/h、74℃、1.7バール)はカラム(D)へ戻し、アクロレインがリッチなガス流(9)(79.4t/h、74℃、1.7バール)は8.4%のCO2、10.5%のアクロレイン、14.2%の水、6.3%のO2および57.3%の窒素を含む。ガス流(9)は上記熱交換器(Cl)で240℃に加熱されてから反応熱を除去するための溶融塩水浴に連結された酸化触媒を収容した第2の固定床式多管反応装置(M)中に噴射される。この反応装置を出るガス流(22)(79.4t/h、8.8%のCO2、12.7%のアクリル酸、14.4%の水、57.3%の窒素、2.6%の酸素)は熱交換器(N)で160℃まで冷却されてから吸収塔(P)中に噴射される。25℃の水流(23)が10.4t/hでこのカラムの最上部に注入される。カラム底部から回収した液相(24)は減圧運転されるカラム(Q)に送る。カラム(Q)の底部からアクリル酸流(25)(18.2t/h、55.1%のアクリル酸、38.6%の水、3.7%の酢酸、2.2%の蟻酸)を除去する。カラム(Q)の最上部からのガス流(26)は凝縮器、次いでカラム(P)に送る。カラム(P)からの気相(29)(71.6t/h、70℃、1.1バール)は9.8%のCO2、20.6%の水、2.9%のO2、1.0%のアルゴン、1.0%COおよび63.5%の窒素から成る。
【0110】
カラム(D)の底部を出るアクロレインが少ない液体流(10)(13.2t/h、89℃、95.4%の水、1.0%のヒドロキシ-プロパノン)は流れ(6b)およびアクリル酸流(25)の精製で生じた流れ(1.2t/h、100%の有機化合物)および再循環された水の流れ(1.2t/h)と混合される。この混合物は熱交換器(G)を通って蒸発されてガス流体(14a)(15.4t/h、133℃、1.9バール、88.4%の水、1.3%のアクリル酸、5.1%の酢酸、2.7%の蟻酸)にてる。液体流(14b)(0.4t/h)は熱酸化装置(J)中に直接に噴射される。流れ(14a)と(29)は空気流(32)(40.5t/h、1.2バール)および天然ガス(1.0t/h)と混合されて流れ(14c)が作られる。この流れ(14c)は熱交換器(H)を通して450℃に加熱されてから大気圧で運転される熱酸化装置に噴射される。熱酸化装置で得られた流れ(15)(128.9t/h、大気圧、1026℃、25.3%の水、12.1%のCO2、2.5%のO2、59.1%の窒素、1.0%のアルゴン)は上記熱交換器(H)によって702℃に冷却され、上記熱交換器(H1)によって670℃まで冷却されてから流れ(18a)(78.4t/h)と流れ(17)(50.6t/h)とに分割される。流れ(18a)は熱交換器(H2)(H3)で170℃に冷却され、ダクトを介して除去される。流れ(17)は熱交換器(K)を通って160℃まで冷却され、それから3.0バール、352℃に圧縮され、上記熱交換器(H1)で442℃に過熱されて上記の流れ(3)を形成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記(a)〜(c):
(a) グリセロールに脱水反応を行ってアクロレインを含む水溶液流を作り、
(b) 段階(a)で得られた水溶液流をアクロレインがリッチな相とアクロレインが少ない水相とに分離し、
(c) アクロレインが少ない水相の全部または一部を段階(a)へ再循環する、
の段階を含むグリセロールからアクロレインを製造する方法において、
上記のアクロレインが少ない水相を段階(a)へ再循環する前に、酸素、酸素含有ガス、過酸化水素またはオゾンの存在下で、上記水相の酸化段階を実行することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記アクロレインがリッチな相を吸収/蒸留によって精製処理する段階をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも下記(a)〜(e):
(a) グリセロールに脱水反応を行ってアクロレインを含む水溶液流を作り、
(b) 段階(a)で得られた水溶液流をアクロレインがリッチな相とアクロレインが少ない水相とに分離し、
(c) アクロレインが少ない水相の全部または一部を段階(a)へ再循環し、
(d) アクロレインがリッチな相に触媒酸化反応を行ってアクリルを含む流れを作り、
(e) 段階(d)で得られた流れに一回または複数回の精製処理を行って精製したアクリル酸を回収する、
の段階を含むグリセロールからアクロレインを製造する方法において、
上記のアクロレインが少ない水相を段階(a)へ再循環する前に、酸素、酸素含有ガス、過酸化水素またはオゾンの存在下で、上記水相の酸化段階を実行することを特徴とする方法。
【請求項4】
アクロレインが少ない水相に実行される上記酸化段階が、酸素の存在下、700℃以上の温度で気相で行う熱酸化である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アクロレインが少ない水相に実行する酸化段階が酸化触媒の存在下、酸素の存在下、200℃〜500℃の温度で、気相で行う接触酸化である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
アクロレインが少ない水相に実行する酸化段階が、酸素または空気の存在下で、150℃以上の温度かつ5バール以上の圧力で行う湿式酸化または臨界酸化である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アクロレインが少ない水相に実行する酸化段階が、過酸化水素またはオゾン、これら2つの反応物の組合せの存在下で液相で行う酸化であり、必要に応じて紫外線または鉄(II)塩のような触媒を使用して活性化する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
アクロレインが少ない水相の酸化段階からの流れに含まれるエネルギを使用して上記段階に入る流れを予熱する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
反応ガス流を脱水反応装置(B)へ送る前に、ガス流(3)の形で脱水段階(a)へ再循環される水相を用いて混合段階(A)のグリセロール流を蒸発させる請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
グリセロール流をスプレーまたはアトマイズ用ノズルを介して混合室(A)へ噴射し、アトマイズ用ノズルの場合にはアクロレインが少ない水相を酸化する段階から来る主としてCO2を含むガス流を含むグリセロール流を噴射する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
段階(a)を気相で行い、段階(a)から来る気相の反応流をヒートポンプを用いて凝縮し、段階(b)から分離されたアクロレイン-リッチな相を蒸発させる請求項1介して0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
段階(a)およびアクロレインが少ない相を酸化する段階を気相で実行し、段階(b)でのアクロレインが少ない相の縮合と段階(b)からのアクロレインが少ない相の蒸発にヒートポンプう用いる請求項1介して5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
段階(a)およびアクロレインが少ない相を酸化させる段階を気相で実行し、段階(b)から来るアクロレインが少ない相の少なくとも一部を熱交換器で蒸発させ、冷気を段階(a)から出る流れおよび段階(b)へ与える請求項1〜5および8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
段階(a)から出る流れおよび段階(b)の冷却を少なくとも0.5バール、好ましくは少なくとも1.5バール以上の圧力で行って、段階(b)から来るアクロレインが少ない相を揮発させる請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−513593(P2013−513593A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542608(P2012−542608)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052692
【国際公開番号】WO2011/080447
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】