説明

グリーンシートクリーニング装置

【課題】グリーンシートに付着している異物等を効率的かつ確実に除去することができるクリーニング装置を提供する。
【解決手段】クリーニング装置が、外周部分にブラシが設けられた1対のブラシローラがグリーンシートの搬送経路を挟んで対向配置されてなる第1クリーニング部と、外周面が粘着面とされてなる複数の第1粘着ローラからなる1対の第1粘着ローラ群が、搬送経路を挟んで対向配置されてなる第2クリーニング部とを備え、1対のブラシローラのそれぞれを第1の回転軸周りに回転させつつ、グリーンシートにブラシを接触させることによって第1クリーニング処理を行い、続いて、1対の第1粘着ローラ群をなす複数の第1粘着ローラのそれぞれを第2の回転軸周りに回転させながら、グリーンシートに粘着面を接触させることによって、第2クリーニング処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンシートプロセスによってセラミックデバイスを作製する工程においてグリーンシートをクリーニングする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサなどのセンサ素子を初めとする種々のデバイス(電子部品)などの製造手法として、セラミックス粉末と有機物との混合物であるスラリーを所定のフィルム上に塗布しその後乾燥させたうえで、所定のサイズにカットしたセラミックグリーンシート(以下、単にグリーンシートとも称する)を用いる手法(グリーンシートプロセス)が広く知られている。係るグリーンシートプロセスにおいては、複数枚のグリーンシートが用意され、必要に応じてそれぞれのグリーンシートにスクリーン印刷等によって所定の配線パターンを形成したりあるいはキャビティを形成したうえでそれらを積層し、これによって得られる積層体を焼結させ、得られた焼成体をカットすることにより積層型セラミックデバイス(積層型電子部品)を得る。
【0003】
グリーンシートプロセスによるデバイスの製造は、通常、クリーンルーム内で行われる。しかしながら、シート成形、印刷、キャビティ形成(パンチング)、積層などの工程の途中においてグリーンシート端部部分がわずかに欠けるなどして生じた微小なシートかすや、空気中を浮遊する繊維状その他の異物などが、グリーンシート表面に付着してしまうことがある。このようなシートかすや異物などの付着は、グリーンシートにしわ、すじ、ふくれ、汚れ、へこみなどの不良を生じさせる。係る不良が生じたグリーンシートを用いてデバイス作製を行うと、印刷パターンのかすれや積層剥がれなどが発生し、デバイスの特性不良や外観不良などの要因となる。従って、工程途中において、それらシートかすや異物をできるだけ除去する必要がある。
【0004】
グリーンシート表面に付着している浮遊異物を回転するロール状ブラシに接触させながら吸引除去する、集塵機付きブラシローラを用いたグリーンシートのクリーニング技術が既に公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−15111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているような集塵機付きブラシローラを用いるのみでは、グリーンシートに強固に付着している異物やシートかすを必ずしも除去しきれない場合がある。また、人間がブラシなどを用いて手作業で除去したり、あるいは、微視的な異物の有無を画像処理等で判定して除去処理を行う態様も考えられるが、精度やコスト、生産性などの面で、必ずしも十分でない場合もある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、グリーンシートに付着している異物等を効率的かつ確実に除去することができるグリーンシートクリーニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、セラミックグリーンシートをクリーニングするクリーニング装置であって、それぞれが長手方向に延在する第1の回転軸を回転中心として回転自在に設けられてなるとともに、外周部分にブラシが設けられた1対のブラシローラが、前記セラミックグリーンシートの搬送経路を挟んで対向配置されてなる第1クリーニング部と、それぞれが長手方向に延在する第2の回転軸を回転中心として回転自在に設けられてなるとともに、外周面が粘着面とされてなる複数の第1粘着ローラからなる1対の第1粘着ローラ群が、前記搬送経路を挟んで対向配置されてなる第2クリーニング部と、を備え、前記第1クリーニング部においては、前記1対のブラシローラのそれぞれを前記第1の回転軸周りに回転させつつ、前記搬送経路を第1の搬送方向に搬送されてなる前記セラミックグリーンシートに前記ブラシを接触させることによって、前記セラミックグリーンシートをクリーニングする第1クリーニング処理を行い、前記第2クリーニング部においては、前記第1クリーニング部における前記第1クリーニング処理に続いて、前記1対の第1粘着ローラ群をなす前記複数の第1粘着ローラのそれぞれを前記第2の回転軸周りに回転させながら、前記搬送経路を前記第1の搬送方向に搬送されてなる前記セラミックグリーンシートに前記粘着面を接触させることによって、前記セラミックグリーンシートをクリーニングする第2クリーニング処理を行う、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のクリーニング装置であって、前記複数の第1粘着ローラはそれぞれ、相反する2方向である第1の方向と第2の方向との双方に回転自在とされてなり、前記第1クリーニング処理を終えた後、前記搬送経路を前記第1の搬送方向に搬送されてきた一の前記セラミックグリーンシートに対し、前記複数の第1粘着ローラをそれぞれの前記第1の方向に回転させることによって、前記第1のクリーニング処理に連続する1度目の前記第2クリーニング処理を行った後、前記第1の搬送方向の反対方向である第2の搬送方向に搬送されてなる前記一の前記セラミックグリーンシートに対し、前記複数の第1粘着ローラをそれぞれの前記第2の方向に回転させることによって2度目の前記第2クリーニング処理を行う、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載のクリーニング装置であって、前記1対のブラシローラが、前記搬送経路に対し接近および離反自在に設けられてなり、前記1対のブラシローラの配置間隔は、前記第1クリーニング処理に際しては、前記ブラシが前記セラミックグリーンシートに接触するように設定され、前記第2クリーニング処理が行われた後、前記一の前記セラミックグリーンシートが前記第2の搬送方向に搬送されて前記1対のブラシローラの間を通過する際には、前記ブラシが前記セラミックグリーンシートに接触しないように設定される、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のクリーニング装置であって、前記第2クリーニング部が、それぞれが長手方向に延在する第3の回転軸を回転中心として回転自在に設けられてなるとともに、外周面が粘着面とされてなる複数の第2粘着ローラからなる1対の第2粘着ローラ群、をさらに備え、前記1対の第2粘着ローラ群は、前記搬送経路および前記1対の第1粘着ローラ群を挟んで対向配置されてなるとともに、前記複数の第2粘着ローラのそれぞれの粘着面は、前記複数の第1粘着ローラのそれぞれの粘着面よりも強い粘着性を備えており、前記第2クリーニング処理に際しては、前記1対の第2粘着ローラ群をなす前記複数の第2粘着ローラのそれぞれを前記第3の回転軸周りに回転させながら、連続的または断続的に、前記複数の第2粘着ローラのそれぞれを前記複数の第1粘着ローラのうち隣り合う前記第1粘着ローラに接触させる、ことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のクリーニング装置であって、クリーニングの対象となる前記セラミックグリーンシートの厚みを検知する厚み検知手段、をさらに備え、前記1対のブラシローラが、前記搬送経路に対し接近および離反自在に設けられてなり、前記1対の第1粘着ローラ群が、前記搬送経路に対し接近および離反自在に設けられてなり、前記1対のブラシローラの配置間隔が、前記厚み検知手段における検知結果に基づいて特定された前記セラミックグリーンシートの厚みに応じて設定される、ことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5に記載のクリーニング装置であって、前記クリーニングの対象となる前記セラミックグリーンシートを前記第1クリーニング部へと搬送する搬送手段が、複数の線状の無端ベルトを離間配置させることによって形成された搬送面を備え、前記厚み検知手段が、1対のレーザ式の厚み検知手段であり、1対のレーザ式の厚み検知手段が、出射したレーザ光が前記線状の無端ベルトの間を通過するように、前記搬送手段を挟んで対向配置されてなる、ことを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のクリーニング装置であって、前記搬送経路および前記1対のブラシローラを挟んで対向配置されてなるとともに、前記1対のブラシローラのそれぞれに隣接配置され、前記1対のブラシローラの近傍の空気を吸引する吸引手段、をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1ないし請求項7の発明によれば、ブラシローラによって異物等を除去する第1クリーニング処理を行った後、続けて、第1粘着ローラによって異物等を粘着除去する第1クリーニング処理を行うようになっている。これにより、第1クリーニング処理に際してブラシローラによって付着力は弱まったものの、除去まではしきれなかった異物等についても、第2クリーニング処理において第1粘着ローラにより確実に除去できる。よって、ブラシローラのみを用いて異物等を除去する場合に比して、グリーンシートをより清浄にすることができる。
【0016】
特に、請求項2および請求項3の発明によれば、異物除去効果を好適に確保しつつ、グリーンシートクリーニング装置を、グリーンシートを一方向にのみ搬送する構成のクリーニング装置よりもコンパクトな構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るグリーンシートクリーニング装置100の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1のA−A’断面(yz断面)図である。
【図3】クリーニングプロセスの途中の様子を示す図である。
【図4】クリーニングプロセスの途中の様子を示す図である。
【図5】クリーニングプロセスの途中の様子を示す図である。
【図6】クリーニングプロセスの途中の様子を示す図である。
【図7】クリーニングプロセスの途中の様子を示す図である。
【図8】クリーニングプロセスの途中の様子を示す図である。
【図9】センサ素子101の構造を模式的に示す断面図である。
【図10】実施例1において行ったクリーニング前後のグリーンシート表面の様子を示す光学顕微鏡像である。
【図11】実施例2において行ったクリーニングの結果を示す図である。
【図12】センサ素子101の製造工程における不良率の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<装置構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るグリーンシートクリーニング装置(以下、単にクリーニング装置とも称する)100の構成を概略的に示す図である。図2は、図1のA−A’断面(yz断面)図である。
【0019】
クリーニング装置1は、セラミックス粉末と有機物との混合物であるスラリーを所定のフィルム上に塗布しその後乾燥させたうえで、所定のサイズにカットしたセラミックグリーンシート(以下、単にグリーンシートとも称する)Sの表裏面を、クリーニングする装置である。具体的には、クリーニング装置1は、グリーンシートSの表裏面に付着しているシートかすや浮遊異物などの不要な付着物(以下、これらを異物等と総称する)を除去するためのものである。なお、厳密には、グリーンシートSとは、シート成形後にフィルムを剥離したものを指し示すが、本実施の形態においては、係る剥離を行う後の、より詳細にはグリーンシートS同士を熱圧着して積層体となっているものについても、クリーニング装置1によるクリーニングの対象となり得ることから、それらを区別せずに単にグリーンシートSと称するものとする。
【0020】
クリーニング装置1は、第1搬送部10と、第2搬送部20と、第3搬送部30と、第1クリーニング部40と、第2クリーニング部50とを主として備える。なお、第1搬送部10の一部および第3搬送部30の一部が外部に露出している他は、これらの各部は収容ボックス2に収容されている。また、クリーニング装置1には、装置各部の動作を制御する、図示を省略する制御部が備わっている。
【0021】
第1搬送部10と、第2搬送部20と、第3搬送部30とは、それぞれにおけるグリーンシートSの搬送方向が一直線状に位置するように、この順に水平方向に離間配置されてなる。本実施の形態においては、水平面内におけるこれら3つの搬送部の配列方向(つまりはグリーンシートSの搬送方向)をx軸方向とし、水平面内において当該配列方向に垂直な方向をy軸方向とし、鉛直方向をz軸方向とする右手系のxyz座標系を採用する。図1には、係る座標系を付している。
【0022】
概略的にいえば、第1搬送部10と、第2搬送部20と、第3搬送部30とは、互いに離間する複数の線(あるいは細長い面)状の無端ベルト(無端ワイヤー)からなる無端ベルト群がグリーンシートSの搬送を担うベルトコンベアである。
【0023】
具体的には、第1搬送部10は、それぞれがy軸方向に長手方向を有する円柱状をなしており、かつ、図1に示すようにx軸方向において離間配置されてなる第1ローラ11および第2ローラ12と、図2に示すようにy軸方向において離間配置された状態で、y軸方向において互いに離間する態様にて設けられ、それぞれが第1ローラ11と第2ローラ12との間で張設保持されてなる複数の無端ベルト13とを備える。また、第1ローラ11と第2ローラ12とは、図示しない駆動機構によって、y軸方向に延在するそれぞれの回転軸r11、r12を回転中心として図1の時計回りおよび反時計回りに回転自在とされてなる。
【0024】
グリーンシートSを複数の無端ベルト13からなる無端ベルト群の上に載置した状態で、第1ローラ11と第2ローラ12とを同期回転させることで、無端ベルト群にて下方から支持された状態のグリーンシートSをx軸正方向および負方向に搬送することができる。なお、以降においては、クリーニング装置100におけるx軸正方向へのグリーンシートSの搬送を順方向への搬送と称し、x軸負方向へのグリーンシートSの搬送を逆方向への搬送と称する。
【0025】
また、厳密にいえば、各搬送部では一の連続面に載置されてグリーンシートSが搬送されるわけではないが、本実施の形態においても、便宜上、無端ベルト群のうち、グリーンシートSが載置され、下方からこれを支持して搬送する箇所を、搬送面と称することとする。例えば、第1搬送部10の場合であれば、搬送面13aに載置されたグリーンシートSを搬送するということになる。
【0026】
第2搬送部20と第3搬送部30との構成および動作は、第1搬送部10と同様である。すなわち、第2搬送部20は、それぞれがy軸方向に長手方向を有するとともにx軸方向に離間して配置されてなる第1ローラ21と第2ローラ22とによって、複数の無端ベルト23からなる無端ベルト群をy軸方向において離間させつつ、張設保持させた構成を有する。第2搬送部20においては、グリーンシートSが該無端ベルト群からなる搬送面23aに載置された状態で、第1ローラ21と第2ローラ22とをy軸方向に延在する回転軸r21、r22を回転中心として回転させることで、グリーンシートをx軸正負方向に搬送できる。また、第3搬送部30は、それぞれがy軸方向に長手方向を有するとともにx軸方向に離間して配置されてなる第1ローラ31と第2ローラ32とによって、多数の無端ベルト33からなる無端ベルト群をy軸方向において離間させつつ、張設保持させた構成を有する。第3搬送部30においては、グリーンシートSが該無端ベルト群からなる搬送面33aに載置された状態で、第1ローラ31と第2ローラ32とをy軸方向に延在する回転軸r31、r32を回転中心として回転させることで、グリーンシートをx軸正負方向に搬送できる。
【0027】
なお、各搬送部において、第1ローラおよび第2ローラの外周面に、個々の無端ベルトに応じた複数の溝部が設けられ、それぞれの溝部に無端ベルトが巻き掛けられてなる態様であってもよい。これにより、無端ベルトのy軸方向への位置ズレが防止される。
【0028】
また、第1搬送部10における搬送面13aと、第2搬送部20における搬送面23aと、第3搬送部30における搬送面33aとは、z軸方向において同一の高さ位置に設けられる。そして、搬送面13aから搬送面23aを挟んで搬送面33aに至る水平面上の領域が、クリーニング装置1におけるグリーンシートSの搬送経路3となる。図1においては破線にて搬送経路3を示している。
【0029】
さらに、図1および図2に示すように、第1搬送部10の近傍には、一対のレーザ式の厚み検知手段15(15a、15b)が備わっている。厚み検知手段15a、15bは、第1搬送部10を挟む態様にてz軸方向上下に対向配置されてなる。厚み検知手段15a、15bは、第1搬送部10にて搬送されることによりグリーンシートSが両者の間を通過している間、それぞれからグリーンシートSに向けてレーザ光LBを出射するとともに、グリーンシートSからの反射光を受光する。それぞれの厚み検知手段15a、15bにおける出射光の出射タイミングと反射光の受光タイミングとの時間差に基づいて、グリーンシートSの厚みが特定される。なお、厚み検知手段15bは、図2に示すように、レーザ光LBの光路と無端ベルト13とが干渉しない位置に設けられる。
【0030】
第1クリーニング部40は、x軸方向において第1搬送部10と第2搬送部20との間に設けられてなる。第1クリーニング部40は、一対のブラシローラ41(41a、41b)と、一対の吸引機構42(42a、42b)とを主として備える。
【0031】
ブラシローラ41a、41bは、それぞれがy軸方向に長手方向を有する略円柱形状をなすとともに、その外周部分がブラシBRとなっている。ブラシローラ41a、41bは、第1搬送部10と第2搬送部20の間の搬送経路3を挟んでz軸方向上下に対向配置されてなる。なお、ブラシローラ41のブラシBR部分の材質は、クリーニングの対象とするグリーンシートSの種類(素材)や、グリーンシートSの表面における印刷パターンの有無などに応じて適宜に定められてよい。
【0032】
ブラシローラ41a、41bは、図示しない駆動機構によって、前者が図1の反時計回りに、後者が時計回りに、それぞれy軸方向に延在する回転軸r41a、r41bを回転中心として回転自在とされてなるとともに、それぞれがz軸方向に昇降自在とされてなる。なお、吸引機構42a、42bも併せて昇降自在とされていてもよい。なお、ブラシローラ41a、41bがz軸方向に昇降自在であるということは、ブラシローラ41a、41bが搬送経路3に対し接近および離反自在であるということでもある。
【0033】
第1クリーニング部40においては、ブラシローラ41a、41bを回転させた状態で、それぞれのブラシBRを、両者の間を移動するグリーンシートSの表裏面に接触させ、ブラシBRによってグリーンシートSの表裏面を掃くことで、グリーンシートSに付着した異物等が好適に除去されるようになっている。第1クリーニング部40におけるこのクリーニング動作を第1クリーニング処理と称する。
【0034】
第1クリーニング処理を行う際の、ブラシローラ41a、41bの間隔は、グリーンシートSの材質や、厚み検知手段15の作用に基づいて特定されたグリーンシートSの厚みに応じて設定される。例えば、ジルコニアをセラミック成分とするグリーンシートSの場合において、その厚みが250μm程度であれば、ブラシローラ41a、41bの間隔は、100μm程度とするのが好適である。同じくジルコニアをセラミック成分とするグリーンシートSにおいて、その厚みが500μm程度であれば、ブラシローラ41a、41bの間隔は、300μm程度とするのが好適である。
【0035】
また、第1クリーニング部40においては、鉛直上側のブラシローラ41aの上方に吸引機構42aが近接配置されてなり、鉛直下側のブラシローラ41bの下方には吸引機構42bが近接配置されてなる。それぞれの吸引機構42は、収容ボックス2外に設けられた集塵手段43に接続されている。第1クリーニング処理の際に、ブラシローラ41のブラシBRによってグリーンシートSから掃き取られてブラシBRに付着したかあるいは空気中へと飛散した異物等は、吸引機構42によってその近傍の空気ともども吸引されて、集塵手段43に集められる。
【0036】
なお、第1搬送部10と第2搬送部20の第1クリーニング部40側の上方部分にはそれぞれ、第1ガイド14および第2ガイド24が設けられている。第1ガイド14および第2ガイド24は、第1クリーニング処理の際にグリーンシートSが鉛直上方に持ち上がって搬送経路3からずれてしまうことを防ぐべく、第1クリーニング部40およびその前後に位置するグリーンシートSのz軸方向への変位を抑制するために設けられてなる。
【0037】
なお、第1ガイド14および第2ガイド24は、必ずしも、第1搬送部10あるいは第2搬送部20との間で、グリーンシートSを挟持する必要はない。第1ガイド14と第1搬送部10との間隔、および、第2ガイド24と第2搬送部20との間隔は、グリーンシートSの厚みに比して多少大きくてもよい。あるいは、ブラシローラ41の間隔と同様に、グリーンシートSの厚みに応じて調整可能とされていてもよい。
【0038】
第2クリーニング部50は、x軸方向において第2搬送部20と第3搬送部30との間に設けられてなる。第2クリーニング部50は、複数の第1粘着ローラ51(51a、51b、51c、51d、51e、51f)と、複数の第2粘着ローラ52(52a、52b、52c、52d)とを主として備える。
【0039】
第1粘着ローラ51と第2粘着ローラ52は、いずれも、y軸方向に長手方向を有する円柱状をなしているとともに、図示しない駆動機構によって、y軸方向に延在するそれぞれの回転軸r51a、r51b、r51c、r51d、r51e、r51f、r52a、r52b、r52c、r52dを回転中心として図1の時計回りおよび反時計回りに回転自在とされてなるとともに、それぞれがz軸方向に昇降自在とされてなる。なお、第1粘着ローラ51と第2粘着ローラ52がz軸方向に昇降自在であるということは、それぞれが搬送経路3に対し接近および離反自在であるということでもある。
【0040】
また、それぞれの第1粘着ローラ51と第2粘着ローラ52は、y軸方向に延在する外周面が、弾性および異物等に対する粘着性(少なくとも、グリーンシートSのシートかすに対する粘着性)を有するように、構成されてなる。これは例えば、第1粘着ローラ51と第2粘着ローラ52の外周部分をブチルゴムにて構成することで実現される。ただし、第1粘着ローラ51の外周面よりも第2粘着ローラ52の外周面の方が高い粘着性を有するように構成される。これは例えば、ブチルゴムの重合度及びブチルゴム中のハロゲン元素の種類を変更することで実現される。
【0041】
図1においては、搬送経路3を挟んで、第1粘着ローラ51が3つずつ(第1粘着ローラ51a、51b、51cと第1粘着ローラ51d、51e、51f)対向配置されている。換言すれば、1対の第1粘着ローラ群が対向配置されているともいえる。より具体的には、いずれも鉛直方向において、第1粘着ローラ51aと第1粘着ローラ51dとが対向配置され、第1粘着ローラ51bと第1粘着ローラ51eとが対向配置され、第1粘着ローラ51cと第1粘着ローラ51fとが対向配置されている。
【0042】
また、搬送経路3よりも鉛直上側に配置された第1粘着ローラ51a、51b、51cの上方には2つの第2粘着ローラ52(52a、52b)が配置され、搬送経路3よりも鉛直下側に配置された第1粘着ローラ51d、51e、51fの下方には2つの第2粘着ローラ52(52c、52d)が配置されている。より具体的には、第2粘着ローラ52a〜52dを動作させる際には、第2粘着ローラ52aはその外周面が第1粘着ローラ51a、51bの外周面と接触する態様にて配置され、第2粘着ローラ52bはその外周面が第1粘着ローラ51b、51cの外周面と接触する態様にて配置される。同様に、第2粘着ローラ52cはその外周面が第1粘着ローラ51d、51eの外周面と接触する態様にて配置され、第2粘着ローラ52dはその外周面が第1粘着ローラ51e、51fの外周面と接触する態様にて配置される。第2粘着ローラ52a〜52dを動作させないときには、それぞれの第2粘着ローラ52は、対応する第1粘着ローラ51と離間させて配置される。
【0043】
以降においては、搬送経路3よりも鉛直上側に位置する第1粘着ローラ51a〜51cと第2粘着ローラ52a、52bとを上側ローラ群50Aと称し、搬送経路3よりも鉛直下側に位置する第1粘着ローラ51d〜51fと第2粘着ローラ52c、52cとを下側ローラ群50Bと称する。上側ローラ群50Aと下側ローラ群50Bとはそれぞれ、図示しない駆動機構によってz軸方向に昇降自在とされてなる。より具体的には、それぞれに属する個々の第1粘着ローラ51と第2粘着ローラ52は独立に、z軸方向に昇降自在とされてなる。
【0044】
第2クリーニング部50においては、上側ローラ群50Aに属する第1粘着ローラ51と下側ローラ群50Bに属する第1粘着ローラ51とを同期的に回転させ、鉛直方向にて対向し合う第1粘着ローラ51同士の間にてグリーンシートSを順次に挟持させるようにする。これにより、第2搬送部20と第3搬送部30との間でグリーンシートSを搬送しつつ、第1粘着ローラ51の外周面に付与された粘着性によってグリーンシートSの表裏面に付着している異物等を除去する。第2クリーニング部50におけるこのクリーニング動作を第2クリーニング処理と称する。
【0045】
上側ローラ群50Aに属する第1粘着ローラ51と下側ローラ群50Bに属する第1粘着ローラ51とによるグリーンシートSの挟持は、バネによる付勢力によって実現されてなる。すなわち、搬送経路3を挟んで互いに対向する第1粘着ローラ51にはそれぞれ、該第1粘着ローラ51を回転可能な態様に保ちつつ支持する、図示しないバネ部材が設けられてなる。より詳細には、上下の第1粘着ローラ51は、グリーンシートSが両者の間を通過しないときにお互いが接触するように、かつ、搬送されてきたグリーンシートSが回転している両者の間に入り込んだときには、バネ部材による付勢力にてグリーンシートSを挟持しつつ搬送できるように設けられてなる。なお、それぞれの第1粘着ローラ51のバネ部材のバネ定数は、挟持搬送されている間にそのような付勢力にてグリーンシートSが薄く伸ばされてしまうことのない程度の値に、調整されてなる。
【0046】
また、第2クリーニング部50においては、連続的または断続的に、第2粘着ローラ52を第1粘着ローラ51に接触させた状態で第1粘着ローラ51の回転に同期させて回転させることで、グリーンシートSから除去されて第1粘着ローラ51に付着した異物等を、第2粘着ローラ52に転写させることができるようになっている。これにより、第2クリーニング処理を継続的に行うことに伴う第1粘着ローラ51の清浄性の低下が抑制されてなる。なお、第2粘着ローラ52の回転方向は、隣接する第1粘着ローラ51の回転方向とは逆に定められる。
【0047】
収容ボックス2は、少なくとも第1クリーニング部40および第2クリーニング部50を外部から遮断するために設けられてなる。これにより、グリーンシートSから除去された異物等が空気中を浮遊したとしても、収容ボックス2の外へ飛散して、クリーニング装置1の外部に存在するグリーンシートSなどに付着することが抑制される。なお、収容ボックス2に、内部の空気を排気する排気手段を設け、該排気手段によって連続的または断続的に、収容ボックス2内の空気を排気し、異物等の飛散をさらに抑制する態様であってもよい。
【0048】
<グリーンシートのクリーニングプロセス>
次に、上述のような構成を有するクリーニング装置1において行う、グリーンシートSのクリーニングのプロセスについて説明する。図3ないし図8は、係るクリーニングプロセスの途中の様子を順次に示す図である。
【0049】
まず、図1に示すように、第1搬送部10の搬送面13aにグリーンシートSが載置される。続いて、第1搬送部10の第1ローラ11および第2ローラ12を時計回りに回転させることでグリーンシートSの順方向への搬送が開始される。
【0050】
そして、図3に示すように、厚み検知手段15a、15bの間を通過する際に、厚み検知手段15a、15bからレーザ光LBが照射され、その反射光の受光タイミングに応じて、グリーンシートSの厚みが特定される。そして、係る特定結果に応じて、第1クリーニング部40のブラシローラ41a、41bの配置間隔が調整される。
【0051】
好ましくは、ブラシローラ41a、41bは、ブラシローラ41bの最上位置近傍の高さが第1搬送部10の搬送面13aおよび第2搬送部20の搬送面23aと概ね同じ高さとなるように配置される。また、第1粘着ローラ51a〜51fは、下側ローラ群50Bに属する第1粘着ローラ51d〜51fの最上位置近傍の高さが第2搬送部20の搬送面23aおよび第3搬送部30の搬送面33aと概ね同じ高さとなるように配置される。
【0052】
なお、狙い厚み(規格で定められた厚み)が同じ複数のグリーンシートSが連続してクリーニングの対象とされる場合には、個々のグリーンシートSの厚みをそれぞれ求め、それぞれの部位における配置間隔を都度調整する態様であってもよいが、最初に個々のグリーンシートSの厚みの誤差を見越した適切な配置間隔に設定し、以降は厚みの特定および配置間隔の設定を省略するようにしてもよい。なぜならば、ブラシローラ41に備わるブラシBRの個々の毛先は柔軟性のある自由端となっており、第1粘着ローラ51の外周面は弾性を有しているので、グリーンシートSの厚みに多少の誤差があっても、ともにその表裏面に接触が可能だからである。
【0053】
厚み検知手段15a、15bの位置を通過したグリーンシートSは、収容ボックス2内に到達し、第1搬送部10の+x軸方向の端部にて第1ガイド14にて案内されつつ、第1クリーニング部40のブラシローラ41a、41bの間へと搬送されて、第1クリーニング処理の対象となる。
【0054】
第1クリーニング処理に際し、グリーンシートSは、図4に示すように、反時計回りに回転しているブラシローラ41aと時計回りに回転しているブラシローラ41bとの間を通過する。このとき、反時計回りに回転しているブラシローラ41aのブラシBRがグリーンシートSの表面に存在する異物等を掃き取り、時計回りに回転しているブラシローラ41bのブラシBRがグリーンシートSの裏面に存在する異物等を掃き取る。掃き取られて空気中に浮遊した異物等は、吸引機構42a、42bによって吸引され、集塵手段43に集められる。
【0055】
第1クリーニング部40を通過したグリーンシートSは、第2搬送部20の−x軸方向の端部にて第2ガイド24にて案内されつつ、第2搬送部20の搬送面23aへと受け渡される。
【0056】
第2搬送部20においては、第1ローラ21および第2ローラ22を時計回りに回転させることで、グリーンシートSを順方向へ搬送する。そして、図5に示すように、グリーンシートSは、第2クリーニング部50へと受け渡されて、第2クリーニング処理の対象となる。
【0057】
第2クリーニング処理に際し、第2クリーニング部50においては、反時計回りに回転している第1粘着ローラ51a〜51cと時計回りに回転している第1粘着ローラ51d〜51fとの間にグリーンシートSが送られることで、グリーンシートが上下から挟持されつつ順方向へと搬送される。係る搬送に際して、それぞれの第1粘着ローラ51の外周面がグリーンシートSの表裏面に接触することで、第1クリーニング部40において除去しきれずに残存していた異物等が除去される。例えば、第1クリーニング部40においてブラシBRによって掃かれることで、グリーンシートSの表裏面に対する付着力は弱まったものの、除去まではされず、グリーンシートSの表裏面と接触はしつつも浮き上がった状態となっている異物等が、確実に除去される。
【0058】
それぞれの第1粘着ローラ51の外周面に付着した異物等は、第1粘着ローラ51に接触しつつ第1粘着ローラ51の回転に同期して回転する第2粘着ローラ52にて除去される。なお、第1粘着ローラ51が動作している間、第2粘着ローラ52を常に動作させておく必要はなく、第1粘着ローラ51の汚れの度合いに応じて適宜のタイミングで動作させるようにしてもよい。
【0059】
第2クリーニング部50を通過したグリーンシートSは、第3搬送部30の搬送面33aへと受け渡される。
【0060】
第3搬送部30においては、第1ローラ31および第2ローラ32を時計回りに回転させることで、グリーンシートSを順方向へ搬送する。これにより、図6に示すように、グリーンシートSはいったん収容ボックス2の外まで搬送される。
【0061】
グリーンシートSが係る位置に到達すると、第3搬送部30は一旦停止し、今度は、第1ローラ31および第2ローラ32を反時計回りに回転させることで、グリーンシートSを逆方向へ搬送する。そして、図7に示すように、グリーンシートSを再び第2クリーニング部50へと受け渡す。これにより、グリーンシートSは、再び第2クリーニング処理の対象となる。
【0062】
この2度目の第2クリーニング処理においては、時計回りに回転している第1粘着ローラ51a〜51cと反時計回りに回転している第1粘着ローラ51d〜51fとの間にグリーンシートSが送られることで、グリーンシートが上下から挟持されつつ逆方向へと搬送される。係る搬送に際して、それぞれの第1粘着ローラ51の外周面がグリーンシートSの表裏面に接触することで、再度、グリーンシートSからの異物等の除去が行われる。これにより、グリーンシートSに付着していた異物等は、より確実に除去される。このとき、図7に示すように、第2粘着ローラ52が動作していてもよい。
【0063】
この後、グリーンシートSは、第2搬送部20へと受け渡される。第2搬送部20においては、第1ローラ21および第2ローラ22を反時計回りに回転させることで、グリーンシートSを逆方向へ搬送する。
【0064】
一方、第3搬送部30からの逆方向への搬送が開始されて以降、グリーンシートSが第2搬送部20によって逆方向に搬送されるまでの間に、図7に矢印AR1、AR2にて示すように、第1クリーニング部40の2つのブラシローラ41a、41bは、互いに離反する方向に上昇または下降される。これにより、第2搬送部20を逆方向へと搬送されたグリーンシートSは、ブラシローラ41a、41bと接触することなく第2搬送部20から第1搬送部10へと受け渡される。なお、グリーンシートSが第1搬送部10に受け渡された後、次のグリーンシートSについてのクリーニングが開始されるまでの間に、ブラシローラ41a、41bは再び元の位置に配置される。あるいは、次のグリーンシートSについて厚みが特定された時点で、該厚みに対応する配置間隔にて配置されるようになっていてもよい。
【0065】
第1搬送部10においては、第1ローラ11および第2ローラ12を反時計回りに回転させることで、グリーンシートSを逆方向へ搬送する。係る逆方向の搬送に際しても、途中、グリーンシートSは厚み検知手段15a、15bの間を通過するが、このときには、レーザ光の照射および厚みの特定は行われない。グリーンシートSが、図8に示すように、収容ボックス2の外の、最初に載置した位置にまで搬送されることで、クリーニングプロセスは終了する。
【0066】
以上、説明したように、本実施の形態に係るグリーンシートクリーニング装置においては、ブラシローラによって異物等を除去する第1クリーニング処理を行った後、続けて、粘着ローラによって異物等を粘着除去する第1クリーニング処理を行うようになっている。これにより、第1クリーニング処理に際してブラシローラによって付着力は弱まったものの、除去まではしきれなかった異物等についても、第2クリーニング処理において粘着ローラにより確実に除去できる。よって、ブラシローラのみを用いて異物等を除去する場合に比して、グリーンシートをより清浄にすることができる。
【0067】
よって、グリーンシートプロセスにてデバイスを作製する場合に、シート打ち抜き(パンチング)、印刷、キャビティ形成、積層などの工程を実行する度に係るグリーンシートクリーニング装置を用いたクリーニングを行うようにすれば、グリーンシートにおいて印刷パターンのかすれや積層剥がれなどが発生することがより好適に抑制される。結果として、デバイスにおける特性不良や外観不良など発生が抑制され、製品歩留まりが向上する。
【0068】
また、本実施の形態に係るグリーンシートクリーニング装置は、グリーンシートを一の搬送経路にて往復搬送可能に構成されてなるとともに、最初に行う順方向への搬送時のみブラシローラによる第1クリーニング処理と粘着ローラによる第2クリーニング処理とを連続して行い、その後に行う逆方向への搬送に際しては、ブラシローラは搬送経路から離間させ、粘着ローラによる第2クリーニング処理のみを行うようになっている。これにより、粘着ローラの個数を一方向にのみ搬送可能な装置において必要な個数の1/2に減じたとしても、当該装置と同等の粘着除去効果を得ることができる。すなわち、本実施の形態に係るグリーンシートクリーニング装置は、グリーンシートを一方向にのみ搬送する構成のクリーニング装置よりもコンパクトな構成を有しつつ、異物除去を好適に行うことができる。
【0069】
<変形例>
上述の実施の形態においては、グリーンシートSを往復搬送し、逆方向への搬送に際しても第1粘着ローラ51における異物等の粘着除去を行うようにしているが、このことは、クリーニング装置1において順方向への搬送のみでクリーニング処理を完結する態様を除外するものではない。順方向のみの搬送で充分に異物等が除去可能である場合には、図6に示すように、第3搬送部30にて収容ボックス2の外へグリーンシートSが搬送された時点で、クリーニング処理を終了するようにしてもよい。
【実施例】
【0070】
以下の実施例では、上述したグリーンシートクリーニング装置1を用いることによる異物等の除去の効果について、実例に基づいて説明する。具体的には、ガスセンサの一種であるNOxセンサのセンサ素子101をグリーンシートプロセスにて製造する工程に、グリーンシートクリーニング装置1によるクリーニング処理を適用した結果について説明する。
【0071】
ここでいうNOxセンサとは、燃焼ガス等の被測定ガス中のNOx濃度を測定する装置である。また、センサ素子101は、係るNOxセンサの中心的な構成部品であって、ジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性を有する固体電解質セラミックスを構造材料として構成されており、素子内外に種々の電極あるいは配線パターンが形成されてなるものである。図9は、係るセンサ素子101の構造を模式的に示す断面図である。
【0072】
図9に示すセンサ素子101は、第一の内部空室102が第一の拡散律速部110、第二の拡散律速部120を通じて外部空間に開放されたガス導入口104と連通し、第二の内部空室103が第三の拡散律速部130を通じて第一の内部空室102と連通する構成を備える、いわゆる直列二室構造型のNOxセンサ素子である。NOxセンサにおいては、係るセンサ素子101を用い、以下のようなプロセスが実行されることで、被測定ガス中のNOxガス濃度が算出される。
【0073】
まず、第一の内部空室102に導入された被測定ガスは、センサ素子101の外面に設けられた外部ポンプ電極141と、第一の内部空室102に設けられた内部ポンプ電極142と、両電極の間のセラミックス層101aとによって構成される電気化学的ポンプセルである主ポンプセルのポンピング作用(酸素の汲み入れ或いは汲み出し)によって、酸素濃度が略一定に調整されたうえで、第二の内部空室103に導入される。第二の内部空室103においては、同じく電気化学的ポンプセルである、外部ポンプ電極141と、第二の内部空室103に設けられた補助ポンプ電極143と、両電極の間のセラミックス層101bとによって構成される補助ポンプセルのポンピング作用により、被測定ガス中の酸素が汲み出されて、被測定ガスが十分な低酸素分圧状態とされる。
【0074】
係る低酸素分圧状態の被測定ガス中のNOxは、第二の内部空室103に保護層144に被覆される態様にて設けられた測定電極145において還元ないし分解される。そして、係る還元ないし分解によって生じた酸素イオンが、測定電極145と、基準ガス導入口105に通じる多孔質アルミナ層146内に設けられた基準電極147と、両者の間のセラミックス層101cとによって構成される電気化学的ポンプセルである測定ポンプセルによって汲み出される。そして、その際に生じる電流(NOx電流)の電流値と、NOx濃度との間に線型関係があることに基づいて、被測定ガス中のNOx濃度が求められる。
【0075】
加えて、センサ素子101には、ヒータ(抵抗体)151が、例えば多孔質アルミナからなる絶縁層152に覆われる態様にて設けられており、上述したセンサ素子101の動作は、ヒータ151に通電することでセンサ素子101を600℃〜700℃程度の温度に加熱しつつ行われる。なお、絶縁層152は、ヒータ151の配線パターンを周囲から絶縁するために設けられてなる。
【0076】
係るセンサ素子101は、フィルム上に、ジルコニアをセラミックス主成分とし、その他、有機バインダー、可塑剤、及び、溶剤などの有機物を含むジルコニアスラリーを塗布して乾燥させたグリーンシートを複数枚用意し、それぞれのグリーンシートに対して、位置決め等に用いるパンチ穴や内部空所その他の空間形成となるキャビティを形成するためのパンチングや、電極やヒータその他の配線パターンの印刷などを行った後、それらを積層、圧着、焼成し、得られた焼成体をカットすることで作製される。
【0077】
(実施例1)
本実施例においては、ヒータ151を形成用の印刷パターンが形成された、ジルコニアをセラミックス主成分とするグリーンシートを対象に、従来のクリーニング装置と上述の実施の形態に係るクリーニング装置1とによって順次にクリーニングを行った。
【0078】
図10は、本実施例におけるクリーニング前後のグリーンシート表面の様子を示す光学顕微鏡像である。図10(a)は、クリーニングを行う前のグリーンシートの上面(印刷パターン形成面)の光学顕微鏡像である。図10(b)は、図10(a)に示したグリーンシートに対して、ブラシローラのみを備える従来のクリーニング装置を用いてクリーニングを行った後の、グリーンシートの上面の光学顕微鏡像である。図10(c)は、図10(c)に示したグリーンシートに対して、上述の実施の形態に係るクリーニング装置1を用いてクリーニングを行った後の、グリーンシートの上面の光学顕微鏡像である。なお、図10においては、グリーンシートの上面における異物等の付着箇所に円印を付している。なお、グリーンシートの厚みは510μmであったので、クリーニング装置1においては、ブラシローラ41a、41bの間隔は300μmに設定された。
【0079】
図10(a)に示すクリーニング前のグリーンシートにおいては、計11箇所に異物等の付着が確認されていた。係るグリーンシートに対して、従来のクリーニング装置によるクリーニングを行うと、図10(b)に示すように、数は減少したものの、依然として計3箇所に異物等が付着していた。異物等の種類としては、グリーンシートの端縁部分が外周方向に沿って局所的に欠落することによって生じたと見られるシートかすや、繊維状(針状)のものが多かった。なお、図10(b)に示すグリーンシートに付着している異物等の付着位置が図10(a)に示すグリーンシートにおける付着位置と異なるのは、当該異物等がクリーニングによっていったんは移動したものの、除去しきれなかったためであると考えられる。
【0080】
そこでさらに、図10(b)に示すグリーンシートに対して上述の実施の形態に係るクリーニング装置1を用いたクリーニングを行った。すると、図10(c)に示すように、異物等の付着は確認されなかった。このことは、クリーニング装置1によりクリーニングを行うことで、従来よりも確実に異物等を除去することができることを示す結果に他ならない。
【0081】
(実施例2)
本実施例においては、上述の実施の形態に係るクリーニング装置1における異物等の除去効果の安定性を調べた。具体的には、一のグリーンシートに対して相異なる印刷パターンでの印刷を4回行うとともに、各回の印刷が終わるごとにクリーニング装置1によるクリーニング処理を行って、それぞれのクリーニング処理ごとの異物等の除去率を評価した。また、比較例として、ブラシローラのみを備えた従来のクリーニング装置についても同様の評価を行った。
【0082】
図11は、それぞれの異物等の除去率を示す図である。ここで、除去率とは、クリーニング前のグリーンシート表面に存在していた異物等の個数に対する、クリーニング後のグリーンシート表面に存在していた異物等の個数の比である。クリーニング装置1を用いた場合、4回のクリーニング処理のいずれにおいても、最低でも80%以上の除去率が実現された。これに対して、比較例においては、除去率は最高でも70%弱に留まった。係る結果は、クリーニング装置1が、異物等の除去の確実性および安定性という点において、従来よりも優れていることを示している。
【0083】
(実施例3)
図10(a)や図10(b)に示すような異物等、特に繊維状の異物が付着したままのグリーンシートをヒータ151の形成に用いてセンサ素子101を作製してしまうと、素子表面と絶縁層152とを連通する欠陥(連通欠陥)が形成される。連通欠陥が存在すると、絶縁層152の絶縁状態が良好に保たれなくなるため、連通欠陥が形成されたセンサ素子は不良と判断される。
【0084】
係る連通欠陥の発生の有無は、浸透探傷法によって確認することができる。浸透探傷法は、概ね以下のような手順で行われる。まず、赤色その他の色に着色されているかあるいは蛍光性を有するとともに、強い浸透性を有する浸透液を、塗布あるいは浸漬などによって被検物体の表面に付着させる。その後、余剰の浸透液を除去し、物体を洗浄・乾燥する。続いて、被検物体に現像液や現像剤などを付着させる。このとき、被検物体にクラックなどの表面欠陥が存在していれば、欠陥部分に浸透していた浸透液が染み出し、被検物体の表面に赤色や蛍光などの指示模様を呈する。係る指示模様の有無により、欠陥の有無が判定できる。
【0085】
図12は、センサ素子101の製造工程において、クリーニング装置1を用いたクリーニングを、ヒータ151形成用の印刷パターンが形成されたグリーンシートに適用する以前と、適用した以後における、センサ素子101のロット単位の不良率の変化を示す図である。ここで、不良率とは、1ロット分のセンサ素子101の個数(具体的には3000個)に対する、浸透探傷法の適用によって不良があると判定されたセンサ素子101の個数の比である。また、クリーニング装置1を用いる前は、ブラシローラのみを備えた従来のクリーニング装置を用いていた。
【0086】
図12に示すように、クリーニング装置1を用いる前は2.35%であったロット間の平均不良率が、クリーニング装置1の適用を開始した以降は、0.88%減少して1.47%にまで低減された。すなわち、ロット間平均不良率は、クリーニング装置1の適用前の約2/3にまで低減された。係る結果は、クリーニング装置1の適用が、センサ素子101の不良率低減に効果があることを示している。
【符号の説明】
【0087】
1 (グリーンシート)クリーニング装置
2 収容部
3 搬送経路
10 第1搬送部
11、21、31 第1ローラ
12、22、32 第2ローラ
13、23、33 無端ベルト
13a、23a、33a 搬送面
14 第1ガイド
15(15a、15b) 厚み検知手段
20 第2搬送部
30 第3搬送部
40 第1クリーニング部
41(41a、41b) ブラシローラ
42(42a、42b) 吸引機構
43 集塵手段
50 第2クリーニング部
50A 上側ローラ群
50B 下側ローラ群
51(51a、51b、51c、51d、51e、51f) 第1粘着ローラ
52(52a、52b、52c、52d) 第2粘着ローラ
101 センサ素子
141 外部ポンプ電極
142 内部ポンプ電極
143 補助ポンプ電極
144 保護層
145 測定電極
147 基準電極
151 ヒータ
152 絶縁層
BR ブラシ
LB レーザ光
S グリーンシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックグリーンシートをクリーニングするクリーニング装置であって、
それぞれが長手方向に延在する第1の回転軸を回転中心として回転自在に設けられてなるとともに、外周部分にブラシが設けられた1対のブラシローラが、前記セラミックグリーンシートの搬送経路を挟んで対向配置されてなる第1クリーニング部と、
それぞれが長手方向に延在する第2の回転軸を回転中心として回転自在に設けられてなるとともに、外周面が粘着面とされてなる複数の第1粘着ローラからなる1対の第1粘着ローラ群が、前記搬送経路を挟んで対向配置されてなる第2クリーニング部と、
を備え、
前記第1クリーニング部においては、前記1対のブラシローラのそれぞれを前記第1の回転軸周りに回転させつつ、前記搬送経路を第1の搬送方向に搬送されてなる前記セラミックグリーンシートに前記ブラシを接触させることによって、前記セラミックグリーンシートをクリーニングする第1クリーニング処理を行い、
前記第2クリーニング部においては、前記第1クリーニング部における前記第1クリーニング処理に続いて、前記1対の第1粘着ローラ群をなす前記複数の第1粘着ローラのそれぞれを前記第2の回転軸周りに回転させながら、前記搬送経路を前記第1の搬送方向に搬送されてなる前記セラミックグリーンシートに前記粘着面を接触させることによって、前記セラミックグリーンシートをクリーニングする第2クリーニング処理を行う、
ことを特徴とするセラミックグリーンシートのクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクリーニング装置であって、
前記複数の第1粘着ローラはそれぞれ、相反する2方向である第1の方向と第2の方向との双方に回転自在とされてなり、
前記第1クリーニング処理を終えた後、前記搬送経路を前記第1の搬送方向に搬送されてきた一の前記セラミックグリーンシートに対し、前記複数の第1粘着ローラをそれぞれの前記第1の方向に回転させることによって、前記第1のクリーニング処理に連続する1度目の前記第2クリーニング処理を行った後、前記第1の搬送方向の反対方向である第2の搬送方向に搬送されてなる前記一の前記セラミックグリーンシートに対し、前記複数の第1粘着ローラをそれぞれの前記第2の方向に回転させることによって2度目の前記第2クリーニング処理を行う、
ことを特徴とするセラミックグリーンシートのクリーニング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のクリーニング装置であって、
前記1対のブラシローラが、前記搬送経路に対し接近および離反自在に設けられてなり、
前記1対のブラシローラの配置間隔は、前記第1クリーニング処理に際しては、前記ブラシが前記セラミックグリーンシートに接触するように設定され、前記第2クリーニング処理が行われた後、前記一の前記セラミックグリーンシートが前記第2の搬送方向に搬送されて前記1対のブラシローラの間を通過する際には、前記ブラシが前記セラミックグリーンシートに接触しないように設定される、
ことを特徴とするセラミックグリーンシートのクリーニング装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のクリーニング装置であって、
前記第2クリーニング部が、
それぞれが長手方向に延在する第3の回転軸を回転中心として回転自在に設けられてなるとともに、外周面が粘着面とされてなる複数の第2粘着ローラからなる1対の第2粘着ローラ群、
をさらに備え、
前記1対の第2粘着ローラ群は、前記搬送経路および前記1対の第1粘着ローラ群を挟んで対向配置されてなるとともに、
前記複数の第2粘着ローラのそれぞれの粘着面は、前記複数の第1粘着ローラのそれぞれの粘着面よりも強い粘着性を備えており、
前記第2クリーニング処理に際しては、前記1対の第2粘着ローラ群をなす前記複数の第2粘着ローラのそれぞれを前記第3の回転軸周りに回転させながら、連続的または断続的に、前記複数の第2粘着ローラのそれぞれを前記複数の第1粘着ローラのうち隣り合う前記第1粘着ローラに接触させる、
ことを特徴とするセラミックグリーンシートのクリーニング装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のクリーニング装置であって、
クリーニングの対象となる前記セラミックグリーンシートの厚みを検知する厚み検知手段、
をさらに備え、
前記1対のブラシローラが、前記搬送経路に対し接近および離反自在に設けられてなり、
前記1対の第1粘着ローラ群が、前記搬送経路に対し接近および離反自在に設けられてなり、
前記1対のブラシローラの配置間隔が、前記厚み検知手段における検知結果に基づいて特定された前記セラミックグリーンシートの厚みに応じて設定される、
ことを特徴とするセラミックグリーンシートのクリーニング装置。
【請求項6】
請求項5に記載のクリーニング装置であって、
前記クリーニングの対象となる前記セラミックグリーンシートを前記第1クリーニング部へと搬送する搬送手段が、複数の線状の無端ベルトを離間配置させることによって形成された搬送面を備え、
前記厚み検知手段が、1対のレーザ式の厚み検知手段であり、
1対のレーザ式の厚み検知手段が、出射したレーザ光が前記線状の無端ベルトの間を通過するように、前記搬送手段を挟んで対向配置されてなる、
ことを特徴とするセラミックグリーンシートのクリーニング装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のクリーニング装置であって、
前記搬送経路および前記1対のブラシローラを挟んで対向配置されてなるとともに、前記1対のブラシローラのそれぞれに隣接配置され、前記1対のブラシローラの近傍の空気を吸引する吸引手段、
をさらに備えることを特徴とするセラミックグリーンシートのクリーニング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−204526(P2012−204526A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66514(P2011−66514)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(509302663)エヌジーケイ・セラミックデバイス株式会社 (20)
【Fターム(参考)】