説明

グリーンシート移送方法及び移送装置

【課題】 グリーンシートを移送するにあたって、真空吸着式のコレットヘッドを用いると、グリーンシートには吸引穴ごとに上向き凸型の吸引跡(欠陥)が形成され易く、グリーンシートの変形・破損を招来するおそれがあるという問題を解消する。
【解決手段】 セラミック製グリーンシート5を水平な姿勢で搬送するシート搬送ライン2の上方に、昇降動可能なコレットヘッド7を、シート搬送ラインの下方に配置された受け台3とこれに隣接する載置台4との間を往復動可能に設ける。コレットヘッド7には、その下面に取り付けられた平板状の静電吸着板8と、当該静電吸着板8の帯電及び除電を行う静電気発生器とを備える。静電吸着板8の下面を平坦面にし、この平坦面に対してグリーンシート5を静電気力にて着脱可能に吸着するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば積層型セラミックコンデンサ等のような積層型電子部品を製造するにあたって、セラミック製グリーンシートを水平な姿勢で搬送する搬送手段とこれに隣接する載置台との間を往復動すると共に昇降動するコレットヘッドを用いて、前記搬送手段から前記載置台に、前記グリーンシートを1枚ずつ移送するグリーンシート移送方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、積層型電子部品の製造に際しては、その製造工程の途次において、セラミック製のグリーンシートを水平な姿勢で搬送する搬送コンベヤからこれに隣接する載置台に、グリーンシートを1枚ずつ移送することが行われている。
【0003】
この場合、従来のごく一般的なグリーンシート移送装置は、搬送コンベヤと載置台との間を往復動すると共に昇降動する真空吸着式のコレットヘッドを備えている。当該コレットヘッドの下面には多数個の吸引穴が形成されており、この下面を搬送コンベヤにおけるグリーンシートの上面に密着させたときに、各吸引穴から真空吸引することにより、搬送コンベヤ上のグリーンシートをコレットヘッドの下面に真空吸着する一方、コレットヘッドの下面に真空吸着したグリーンシートを載置台上に載置したときに、各吸引穴からの真空吸引を停止することにより、グリーンシートのコレットヘッドに対する真空吸着を解除するように構成されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平2−158306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の構成では、コレットヘッドの各吸引穴から真空吸引して、当該コレットヘッドの下面にグリーンシートを吸着保持するから、グリーンシートには吸引穴ごとに上向き凸型の吸引跡(欠陥)が形成され易く、グリーンシートの変形・破損を招来するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題を解消したグリーンシート移送方法及び移送装置を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するため、請求項1の発明に係るグリーンシート移送方法は、セラミック製グリーンシートを水平な姿勢で搬送する搬送手段とこれに隣接する載置台との間を往復動すると共に昇降動するコレットヘッドを用いて、前記搬送手段から前記載置台に、前記グリーンシートを1枚ずつ移送するグリーンシート移送方法であって、前記コレットヘッドの下面に設けられた平板状の静電吸着板の平坦な下面を前記搬送手段における前記グリーンシートの上面に密着させたとき、前記静電吸着板を帯電させることにより、前記グリーンシートを吸着する一方、前記静電吸着板の平坦な下面に吸着した前記グリーンシートを前記載置台上に載置したとき、前記静電吸着板を除電することにより、前記グリーンシートの吸着を解除するというものである。
【0007】
請求項2の発明に係るグリーンシート移送装置は、セラミック製グリーンシートを水平な姿勢で搬送する搬送手段の上方に、昇降動式のコレットヘッドを、前記搬送手段とこれに隣接する載置台との間を往復動するように設け、コレットヘッドには、その下面に取り付けられた平板状の静電吸着板と、当該静電吸着板の帯電及び除電を行う静電気発生器とを備え、前記静電吸着板の下面を平坦面にし、この平坦面に対して前記搬送手段における前記グリーンシートを静電気力にて着脱可能に吸着するように構成したというものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、コレットヘッドにおける静電吸着板の平坦な下面に対してグリーンシートを静電気力にて吸着保持したり吸着解除したりすることから、当該吸着中も、前記グリーンシートを、前記静電吸着板の下面と同様に平坦な状態に維持することができる。これにより、吸着に起因して前記グリーンシートが変形したり破損したりするのを確実に防止することができる。従って、前記グリーンシートの生産性の向上に寄与するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図6)に基づいて説明する。
【0010】
図1〜図3は本発明の第1実施形態を示している。図1は第1実施形態におけるグリーンシート移送装置を示す概略斜視図、図2は単位サイズのグリーンシートを切断する工程を示す側断面図、図3は載置台上にある移送済のグリーンシート群を積層方向にプレスする工程を示す側断面図である。
【0011】
第1実施形態のグリーンシート移送装置1は、セラミック製の帯状グリーンシート5が巻回された繰り出しリール(図示せず)から巻き取りリール(図示せず)に至る搬送手段としてのシート搬送ライン2と、このシート搬送ライン2の下方に配置された受け台3と、シート搬送ライン2の側方に配置された載置台4とを備えている(図1参照)。
【0012】
シート搬送ライン2における帯状グリーンシート5は、合成樹脂製の長尺フィルム6の上面にドクターブレード法にて形成されたものである。長尺フィルム6は帯状グリーンシート5と共に繰り出しリールに巻回されている。この長尺フィルム6は、繰り出しリールから一定ピッチPずつ間欠的に繰り出す一方、搬送下流側の巻き取りリールで長尺フィルム6に張力を付与しつつ巻き取るように構成されている。これにより、長尺フィルム6の上面に貼着された帯状グリーンシート5は、水平な姿勢で一定ピッチPずつ間欠的に搬送下流側に送られる。詳細は図示していないが、帯状グリーンシート5の上面には、導電ペーストを用いたスクリーン印刷にて内部電極が予め形成されている。
【0013】
シート搬送ライン2の上方には、昇降動式のコレットヘッド7が受け台3と載置台4との間を往復動するように設けられている。コレットヘッド7は、その下面に取り付けられた平板状の誘電体からなる静電吸着板8と、当該静電吸着板8内に埋め込まれた金属製の埋め込み電極9と、この埋め込み電極9に電圧を印加する配線回路10とを備えている。配線回路10の先端は外部電源11に接続されている。静電吸着板8内の埋め込み電極9及びこれに接続された配線回路10は、静電吸着板8の帯電及び除電を行うためのものであり、特許請求の範囲に記載した静電気発生器に相当する。
【0014】
第1実施形態の埋め込み電極9は、これと帯状グリーンシート5のうち静電吸着板8に重なり合うシート部分5a(後述する単位サイズのグリーンシート5bに相当する部分)との間で電位差を生じさせる単極型のものである。
【0015】
第1実施形態では、受け台3の上方にあるコレットヘッド7を下降動させ、静電吸着板8の平坦な下面を帯状グリーンシート5の上面に密着させた状態で、外部電源11から配線回路10を介して埋め込み電極9に正又は負の電圧を印加して、静電吸着板8を正又は負の極性に帯電させると共に、帯状グリーンシート5のうち静電吸着板8と重なり合うシート部分5aの上面を静電吸着板8の帯電極性と逆極性に、下面を静電吸着板8の帯電極性と同極性に分極させることにより、静電吸着板8とシート部分5aとの間に作用する静電気力にて、静電吸着板8の平坦な下面にシート部分5aを吸着保持するように構成されている。
【0016】
また、埋め込み電極9への電圧印加を停止したり吸着時とは逆極性の電圧を埋め込み電極9に印加したりして、静電吸着板8を除電すると共に、シート部分5aの分極状態を弱化又は消滅させることにより、静電吸着板8に対するシート部分5aの吸着を解除する(静電吸着板8からシート部分5aを離脱させる)ように構成されている。
【0017】
静電吸着板8とシート部分5aとの間に作用する静電気力としては、従来からよく知られるように、極性の異なる荷電粒子間に働くクーロン力と、微小な領域に電流が流れて電圧が集中印加されることにより生ずるジョンソン・ラーベック力とがある。
【0018】
コレットヘッド7のうち帯状グリーンシート5の送り方向Aに対して直角の方向に延びる二側面には、帯状グリーンシート5から単位サイズのグリーンシート5bを切り離すためのカッター刃12が、コレットヘッド7上の各エアシリンダ13から下向きに突出するロッド14を介して昇降動可能に取り付けられている。
【0019】
第1実施形態の両カッター刃12,12は、コレットヘッド7における静電吸着板8の下面を帯状グリーンシート5の上面に密着させた状態で、カッター刃12の先端が長尺フィルム6に食い込むまで押し込むように帯状グリーンシート5に向けて下降動したのち上昇動することにより、帯状グリーンシート5から単位サイズのグリーンシート5bを平面視四角形状に切り離すように構成されている(図2参照)。
【0020】
次に、第1実施形態のグリーンシート移送装置1を用いて、単位サイズのグリーンシート5bを1枚ずつシート搬送ライン2から載置台4に移送する手順の一例について説明する。
【0021】
まず、長尺フィルム6及びその上面の帯状グリーンシート5を、水平な姿勢で一定ピッチPだけ搬送下流側に繰り出してから、受け台3の上方にあるコレットヘッド7を下降動させ、静電吸着板8の平坦な下面を帯状グリーンシート5の上面に密着させる。
【0022】
次いで、この状態で外部電源11から配線回路10を介して静電吸着板8内の埋め込み電極9に負の電圧を印加することにより、静電吸着板8を負極性に帯電させると共に、帯状グリーンシート5のうち静電吸着板8と重なり合うシート部分5a(単位サイズのグリーンシート5bに相当する部分)の上面を正極性に、下面を負極性に分極させる。すると、静電吸着板8とシート部分5aの上面との間に作用する静電気力により、静電吸着板8の平坦な下面にシート部分5aが吸着保持される。
【0023】
次いで、この状態でコレットヘッド7に設けられた一対のカッター刃12,12を、その先端が長尺フィルム6に食い込むまで押し込むように帯状グリーンシート5に向けて下降動させたのち上昇動させることにより、帯状グリーンシート5から単位サイズのグリーンシート5bを、長尺フィルム6に貼着したままで平面視四角形状に切り離す(図2参照)。
【0024】
その後、コレットヘッド7を上昇動させ、単位サイズのグリーンシート5bを、静電吸着板8に吸着保持した状態で持ち上げることにより、長尺フィルム6から単位サイズのグリーンシート5bを剥離する。
【0025】
次いで、この状態でコレットヘッド7を載置台4の上方に移動させてから、コレットヘッド7を下降動させ、単位サイズのグリーンシート5bを、載置台4の上面又は載置台4上にある1枚以上の移送済グリーンシート5bの最上面に載せる。
【0026】
ここで、静電吸着板8内の埋め込み電極9への電圧印加を停止するか、又は吸着時とは逆極性の電圧(この例では正の電圧)を埋め込み電極9に印加することにより、静電吸着板8を除電すると共に、単位サイズのグリーンシート5bの分極状態を弱化又は消滅させる。すると、静電吸着板8に対する単位サイズのグリーンシート5bの吸着が解除され、静電吸着板8から単位サイズのグリーンシート5bが離脱する。
【0027】
上記のように、コレットヘッド7における静電吸着板8の下面を平坦面にし、この平坦面に対してシート搬送ライン2におけるシート部分5a(単位サイズのグリーンシート5bに相当する部分)を静電気力にて吸着保持したり吸着解除したりすれば、吸着中も、シート部分5aを、静電吸着板8の下面のように平坦な状態に維持することができる。これにより、吸着に起因してシート部分5aが変形したり破損したりするのを確実に防止することができる。従って、生産性の向上に寄与するという効果を奏する。
【0028】
単位サイズのグリーンシート5bを載置台4に始めて載せた場合(載置台4に1枚目のグリーンシート5bを載せる場合)は、次いで、コレットヘッド7を上昇動させてから受け台3の上方(シート搬送ライン2の上方)に戻し移動させる。
【0029】
一方、載置台4に2枚目以降のグリーンシート5bを載せる場合(移送済のグリーンシート5bを載置台4に1枚以上載せている場合)は、その後、上方のコレットヘッド7と下方の載置台4とで、単位サイズのグリーンシート5bと移送済のグリーンシート5bとを積層方向にプレスすることにより、単位サイズのグリーンシート5bを、移送済のグリーンシート5bの上面に仮圧着する(図3参照)。
【0030】
この場合、コレットヘッド7における静電吸着板8の下面を平坦面にしているから、当該静電吸着板8の平坦な下面と載置台4の上面とで、積層状に積み重ねられたグリーンシート5b群を積層方向に均一に加圧することができる。これにより、積層方向に隣接するグリーンシート5b相互間の密着性が高まり、デラミネーション(層間剥離)の抑制にも効果を発揮することができる。
【0031】
単位サイズのグリーンシート5bを移送済のグリーンシート5bの最上面に仮圧着した後は、コレットヘッド7を上昇動させてから受け台3の上方に移動させる。
【0032】
そして、前述した一連の動作を複数回繰り返すことにより、載置台4にグリーンシート5bが順次積層状に積み重ねられる。
【0033】
図4〜図6は本発明の第2実施形態を示している。図4は第2実施形態におけるグリーンシート移送装置を示す概略斜視図、図5は単位サイズのグリーンシートを切断する工程を示す側断面図、図6は載置台上にある移送済のグリーンシート群を積層方向にプレスする工程を示す側断面図である。なお、第2実施形態において構成及び作用が第1実施形態と変わらないものは、第1実施形態と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0034】
第2実施形態では、受け台3と載置台4との間を往復動すると共に昇降動するコレットヘッド27が下向きに開口した略箱型に形成されている。このコレットヘッド27の下面には、平板状の誘電体からなる静電吸着板28が前記下向き開口を塞ぐように取り付けられている。
【0035】
図5及び図6に示すように、コレットヘッド27内には、コロナ放電にてイオン化した空気を静電吸着板28の裏面(内面)に吹き付ける静電気発生器としてのイオン発生器29が設けられている。イオン発生器29は、静電吸着板28の裏面(内面)に向けて開口したノズル体30と、当該ノズル体30内に配置された電極針31と、この電極針31に電圧を印加する配線回路32とを備えている。配線回路32の先端は外部電源33に接続されている。
【0036】
第2実施形態では、受け台3の上方にあるコレットヘッド27を下降動させ、静電吸着板28の平坦な下面を帯状グリーンシート5の上面に密着させた状態で、外部電源33から配線回路32を介して電極針31に正又は負の電圧を印加して、コロナ放電を生じさせて電極針31周りの空気を正又は負のイオンにしてから、このイオン化した空気をノズル体30から静電吸着板28の裏面に吹き付けて、静電吸着板28を正又は負の極性に帯電させると共に、帯状グリーンシート5のうち静電吸着板28と重なり合うシート部分5aの上面を静電吸着板28の帯電極性と逆極性に、下面を静電吸着板28の帯電極性と同極性に分極させることにより、静電吸着板28の平坦な下面にシート部分5aを静電気力にて吸着保持するように構成されている。
【0037】
また、吸着時とは逆極性の電圧を電極針31に印加して、コロナ放電を生じさせて電極針31周りの空気を静電吸着板28の帯電極性と逆極性のイオンにしてから、このイオン化した空気をノズル体30から静電吸着板28の裏面に吹き付けて、静電吸着板28を除電すると共に、シート部分5aの分極状態を弱化又は消滅させることにより、静電吸着板28に対するシート部分5aの吸着を解除する(静電吸着板28からシート部分5aを離脱させる)ように構成されている。
【0038】
図4に示すように、シート搬送ライン2を挟んで載置台4の反対側には、帯状グリーンシート5のうち静電吸着板28と重なり合うシート部分5aを静電吸着板28の帯電極性と逆極性に帯電させるための補助イオン発生器35が設けられている。この補助イオン発生器35は、シート部分5aに向けて開口したノズル体36と、当該ノズル体36内に配置された電極針(図示せず)と、この電極針に電圧を印加する配線回路(図示せず)と備えている。配線回路の先端は外部電源(図示せず)に接続されている。
【0039】
第2実施形態では、受け台3の上方にあるコレットヘッド27を下降動させる前に、補助イオン発生器35におけるノズル体36内の電極針に電圧を印加して、コロナ放電を生じさせて電極針周りの空気を静電吸着板28の帯電極性と逆極性のイオンにしてから、このイオン化した空気をノズル体36からシート部分5aの上面に吹き付けて、シート部分5aを静電吸着板28の帯電極性と逆極性に帯電させるように構成されている。
【0040】
次に、第2実施形態のグリーンシート移送装置21を用いて、単位サイズのグリーンシート5bを1枚ずつシート搬送ライン2から載置台4に移送する手順の一例について説明する。
【0041】
まず、長尺フィルム6及びその上面の帯状グリーンシート5を、水平な姿勢で一定ピッチPだけ搬送下流側に繰り出す。
【0042】
次いで、補助イオン発生器35におけるノズル体36内の電極針に正の電圧を印加して、コロナ放電にて電極針周りの空気を正極性のイオンにし、このイオン化した空気をノズル体36から帯状グリーンシート5のうち静電吸着板28と重なり合うシート部分5a(単位サイズのグリーンシート5bに相当する部分)の上面に吹き付けることにより、シート部分5aを正極性に帯電させる。
【0043】
次いで、受け台3の上方にあるコレットヘッド27を下降動させ、静電吸着板28の平坦な下面を帯状グリーンシート5の上面に密着させたのち、この状態で外部電源33から配線回路32を介してイオン発生器29におけるノズル体30内の電極針31に負の電圧を印加して、コロナ放電にて電極針31周りの空気を負極性のイオンにし、このイオン化した空気をノズル体30から静電吸着板28の裏面(内面)に吹き付けることにより、静電吸着板28を負極性に帯電させる。すると、静電吸着板28が負極性に、シート部分5aが正極性に帯電しているので、これらの間に作用する静電気力により、静電吸着板28の平坦な下面にシート部分5aが吸着保持される。
【0044】
静電吸着板28の平坦な下面にシート部分5aを吸着保持した後、コレットヘッド7を上昇動させて、長尺フィルム6から単位サイズのグリーンシート5bを剥離し、次いで、この状態でコレットヘッド7を載置台4の上方に移動させてから、コレットヘッド7を下降動させ、単位サイズのグリーンシート5bを、載置台4の上面又は載置台4上にある1枚以上の移送済グリーンシート5bの最上面に載せるまでの手順は、第1実施形態の場合と同様である。
【0045】
次いで、吸着時とは逆極性の電圧(この例では正の電圧)をイオン発生器29の電極針31に印加して、コロナ放電にて電極針31周りの空気を正極性のイオンにし、このイオン化した空気をノズル体30から静電吸着板28の裏面(内面)に吹き付けることにより、静電吸着板28を除電して電気的に中和させる。すると、静電吸着板28に対する単位サイズのグリーンシート5bの吸着が解除され、静電吸着板28から単位サイズのグリーンシート5bが離脱する。
【0046】
上記のように、第2実施形態においても、コレットヘッド7における静電吸着板28の下面を平坦面にし、この平坦面に対してシート搬送ライン2におけるシート部分5a(単位サイズのグリーンシート5bに相当する部分)を静電気力にて吸着保持したり吸着解除したりするので、吸着中も、シート部分5aを静電吸着板28の下面と同様に平坦な状態に維持することができる。従って、第1実施形態と同様に、吸着に起因してシート部分5aが変形したり破損したりするのを確実に防止することができるという効果を奏する。
【0047】
ところで、例えば補助イオン発生器35を使わずに、イオン発生器29だけを用いて静電吸着板28を負極性に帯電させる一方、当該帯電にて生じた電場の作用でシート部分5aの上面を正極性に分極させることにより、静電吸着板28の平坦な下面にシート部分5aを吸着保持することもできるが、第2実施形態のように、補助イオン発生器35を用いてシート部分5aを正極性に帯電させれば、極性の異なる静電吸着板28とシート部分5aとを静電気力にて、前述の補助イオン発生器35を使わない場合よりも強固に密着させることができるという効果を奏する。また、この場合は、第1実施形態のように静電吸着板28を帯電させるために常時通電する必要がないので、ランニングコストの抑制を図ることも可能である。
【0048】
その後からコレットヘッド27を受け台3の上方に移動させるまでの手順も、第1実施形態と同様である。第2実施形態の場合も、前述した一連の動作を複数回繰り返すことにより、載置台4にグリーンシート5bを順次積層状に積み重ねるのである。
【0049】
本発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化することができる。例えば第1実施形態において、静電気発生器として採用した埋め込み電極9は、単極型のものに限らず、双極型であってもよい。第2実施形態において、静電気発生器として採用したイオン発生器29は、コロナ放電式のものに限らず、軟X線を用いた光照射式のものにしてもよい。
【0050】
その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1実施形態におけるグリーンシート移送装置を示す概略斜視図である。
【図2】単位サイズのグリーンシートを切断する工程を示す側断面図である。
【図3】載置台上にある移送済のグリーンシート群を積層方向にプレスする工程を示す側断面図である。
【図4】第2実施形態におけるグリーンシート移送装置を示す概略斜視図である。
【図5】単位サイズのグリーンシートを切断する工程を示す側断面図である。
【図6】載置台上にある移送済のグリーンシート群を積層方向にプレスする工程を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1,21 グリーンシート移送装置
2 シート搬送ライン
3 受け台
4 載置台
5 帯状グリーンシート
5a シート部分
5b 単位サイズのグリーンシート
6 長尺フィルム
7,27 コレットヘッド
8,28 静電吸着板
12 カッター刃
29 イオン発生器
31 電極針
35 補助イオン発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック製グリーンシートを水平な姿勢で搬送する搬送手段とこれに隣接する載置台との間を往復動すると共に昇降動するコレットヘッドを用いて、前記搬送手段から前記載置台に、前記グリーンシートを1枚ずつ移送するグリーンシート移送方法であって、
前記コレットヘッドの下面に設けられた平板状の静電吸着板の平坦な下面を前記搬送手段における前記グリーンシートの上面に密着させたとき、前記静電吸着板を帯電させることにより、前記グリーンシートを吸着する一方、
前記静電吸着板の平坦な下面に吸着した前記グリーンシートを前記載置台上に載置したとき、前記静電吸着板を除電することにより、前記グリーンシートの吸着を解除することを特徴とするグリーンシート移送方法。
【請求項2】
セラミック製グリーンシートを水平な姿勢で搬送する搬送手段の上方に、昇降動式のコレットヘッドを、前記搬送手段とこれに隣接する載置台との間を往復動するように設け、 コレットヘッドには、その下面に取り付けられた平板状の静電吸着板と、当該静電吸着板の帯電及び除電を行う静電気発生器とを備え、
前記静電吸着板の下面を平坦面にし、この平坦面に対して前記搬送手段における前記グリーンシートを静電気力にて着脱可能に吸着するように構成したことを特徴とするグリーンシート移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−289650(P2006−289650A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109916(P2005−109916)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】