説明

グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)をコードする修飾ヌクレオチド配列

ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)およびヒトプロインスリンリーダー配列とGLP-1間のフューリン切断部位をコードする単離されたキメラGLP-1核酸配列が提供される。ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)およびヒトプロインスリンリーダー配列とGLP-1間のフューリン切断部位をコードする単離された修飾キメラGLP-1核酸配列もまた提供される。組換え発現ベクター、トランスフェクトされたヒト細胞およびヒトGLP-1を構成的に産生する方法も提供され、前記トランスフェクトされた細胞を用い、グルコース依存的にGLP-1およびインスリンを産生する方法もまた提供される。II型糖尿病被験者を治療する方法、高血糖を起こしやすいか、または高血糖を起こしている被験者を治療する方法および被験者の体重を減少させる方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病、高血糖および体重減少の治療および予防のための、ヒトGLP-1ペプチドをコードする核酸構築物ならびにこの核酸構築物を発現してGLP-1ペプチドおよびインスリンを産生するように操作されたヒト細胞に関する。この核酸構築物は、天然のヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)をコードする天然または修飾ヌクレオチド配列を含む。修飾構築物は、最適化コドン使用頻度(コドン使用頻度データベース(Codon usage Database)は、www.kazusa.or.jp/codon/で利用できる)を利用して製造した。核酸フラグメントは商業的に合成された(Aptagen社)。好ましくは、構築物は、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)およびヒトプロインスリンリーダー配列とGLP-1間のフューリン切断部位をコードする天然または修飾キメラ核酸配列を含む。この構築物を含み、内因的に産生されたフューリンを利用することにより構成的に天然GLP-1を産生する操作されたヒト細胞株が提供される。構成的にGLP-1を産生する操作された細胞は、グルコース調節的に発現される、フューリンをコードする核酸構築物を有することもできる。GLP-1およびプロインスリンを共に構成的に発現し、フューリンをグルコース依存的に発現する操作されたヒト細胞であって、プロインスリンおよびGLP-1核酸配列は、それぞれフューリン切断部位もまたコードし、そのため、グルコース調節的な、すなわち血糖値上昇の存在下でのフューリン発現による、それぞれのフューリン切断部位でのフューリンによるプロインスリンおよびGLP-1キメラ配列の切断によりインスリンおよびGLP-1が産生される前記操作されたヒト細胞もまた提供される。両方の型の操作された細胞、すなわち、GLP-1を構成的に産生する細胞;およびGLP-1およびインスリンを構成的に同時産生し、フューリンをグルコース依存的に産生する細胞を、糖尿病、高血糖および体重減少の治療および予防のために使用できる。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は高血糖値を特徴とする疾患群である。インスリン依存型糖尿病(IDDM)または若年型糖尿病と以前呼ばれていたI型糖尿病は、血糖を調節するホルモンであるインスリンを作る細胞である膵臓β細胞を免疫系が破壊するとき発症する。インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)または成人発症型糖尿病と以前呼ばれていたII型糖尿病は、インスリン抵抗性、すなわち、肝グルコース産生の増加ならびに筋肉および脂肪組織レベルでのインスリン仲介グルコース輸送の減少として発症する。インスリンの必要性が増すに従って、膵臓はインスリンを産生するその能力を徐々に失う。糖尿病と診断される全症例の約90%〜95%はII型糖尿病である。この型の糖尿病は、高齢、肥満、糖尿病の家族歴、妊娠糖尿病歴、グルコース代謝異常、身体不活動および人種/民族性と関連する。妊娠糖尿病は妊娠中のグルコース不耐症を特徴とし、肥満女性および糖尿病の家族歴を有する女性の間でより頻繁に発症する。妊娠後、妊娠糖尿病を患った女性の一部はII型糖尿病を発症する恐れがある。他の種類の糖尿病は、遺伝性疾患または他の因子、例えば薬物、手術、栄養失調症、感染および他の疾患により発症する。
【0003】
インスリン分泌促進ホルモンであるGLP-1は、プレプログルカゴンのタンパク質分解産物として食後に消化管L細胞から分泌される。これはインクレチンの1つまたは消化管ホルモンとして知られている。GLP-1は多面発現的な生物学的作用を有し、その臨床的意義はII型糖尿病患者にとって大変重要である。GLP-1は、島細胞特異的遺伝子の転写誘導物質であることが示されている。GLP-1は、グルコース濃度の上昇に応じてβ細胞によるインスリン分泌を刺激し、またグルカゴン分泌抑制ならびに胃内容排出速度および酸分泌の低下に関与する。GLP-1は、導管細胞からのβ細胞新生を促進することにより、島細胞重量を増加させることが示されている。耐糖能におけるGLP-1の役割および糖尿病の病因におけるこのペプチドホルモンの関与の可能性により、GLP-1は、II型糖尿病を有する人々のための新規治療剤候補となっている。糖尿病患者において、薬理学的濃度、すなわち治療上有効な濃度のGLP-1(50〜100pM)を注射することにより、インスリン分泌の著しい誘導および食後高血糖の改善が達成されてきた。著しい高血糖状態にあったII型糖尿病患者の空腹時にGLP-1を静脈内注入することにより、彼らの血糖値は完全に改善された。このように、GLP-1は、II型糖尿病を有する患者における高血糖を調節するための優れた治療剤と考えられる。しかしながら、このペプチドは経口投与できず、in vivoで半減期(約5分以下)が短いため、新規治療剤としてのその可能性は限定されている。
【0004】
GLP-1は、消化管L細胞および脳におけるグルカゴン前駆体プログルカゴンの翻訳後プロセシングの産物である。プログルカゴン由来の他のペプチドホルモンは、グルカゴン(膵臓における)およびオキシントモジュリンおよびGLP-2(腸および脳における)を含む。完全長N末端GLP-1にはGLP-1(1-37)およびGLP-1(1-36)アミドの2つの形がある。2つの形とも活性であり、GLP-1ポリペプチドが切断され、最初の6アミノ酸が除去され、31アミノ酸を有する活性ペプチドGLP-1(7-37)および30アミノ酸を有するGLP-1(7-36)アミドが生じることにより産生される。循環する生物活性GLP-1の大部分は、アミド化形であるGLP-1(7-36)アミドにおいて見出され、より少量の生物活性非アミド化GLP-1(7-37)もまた検出される。活性GLP-1は、循環するジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)により、最初の2つのアミノ酸(His1-Ala2)のN末端切断による急速な分解を受けるので、GLP-1の半減期は短い。
【0005】
米国食品・医薬品局は、2005年4月29日に、よく使われる2つの経口糖尿病薬、メトホルミンおよび/またはスルホニル尿素では血糖調節が不十分であるII型糖尿病患者の補助療法として、最初のインクレチン模倣薬であるBYETTA(登録商標)(エキセナチド)注射剤を認可した。BYETTA(登録商標)は、II型糖尿病患者の単独療法としても指示される。製造業者によれば、血糖の調節において、BYETTA(登録商標)はヒトインクレチンホルモンGLP-1と同様な効果の多くを示す。エキセナチドは、アミノ酸配列H-His-Gly-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-Met-Glu-Glu-Glu-Ala-Val-Arg-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-NH2を有する39アミノ酸からなるペプチドアミドである、天然に存在するホルモンであるエキセンディン-4の合成バージョンである。エキセナチドのアミノ酸配列はヒトGLP-1のアミノ酸配列と部分的に重なるが、天然GLP-1よりも長い半減期を有する。エキセナチドは、in vitroで既知のヒトGLP-1受容体に結合し、活性化することが示されている。
【0006】
GLP-1アナログ、例えばエキセンディン-4または第2アミノ酸残基としてグリシン(Gly)を含む変異GLP-1は、強いインスリン分泌促進作用を示し、GLP-1よりも長い半減期を有する。しかしながら、これらの分子は異種であるため、天然GLP-1のように体内で急速に分解することができない。その結果として、高血糖治療薬の分野において、特にII型糖尿病患者ばかりでなく過体重状態の患者においても、正常血糖を達成し、インスリン産生を刺激する必要のないときには産生されたGLP-1が分解されるための、ヒトGLP-1を構成的に発現する核酸構築物および前記構築物を含む操作された細胞が求められている。ヒトGLP-1を含む核酸配列を構成的に発現し、プロインスリンを含む核酸構築物を構成的に発現する核酸構築物ならびにグルコースの濃度上昇がフューリン産生を刺激するようにグルコース依存的にフューリンを発現し、それぞれの核酸構築物のフューリン切断部位での切断をもたらし、GLP-1およびインスリンを産生する核酸構築物は、高血糖、糖尿病および過体重状態の治療薬を提供すると考えられる。また、ヒトGLP-1およびインスリンを同時発現する核酸構築物を含む操作された細胞もまた、前述の疾患および/または代謝性疾患のもう1つの治療手段を提供すると考えられる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)およびヒトプロインスリンリーダー配列とGLP-1配列間のフューリン切断部位をコードする単離された修飾キメラGLP-1核酸配列を提供する。一実施形態において、修飾キメラ核酸配列は配列番号8で示される。本発明はまた、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)およびヒトプロインスリンリーダー配列とGLP-1配列間のフューリン切断部位をコードする単離されたキメラGLP-1核酸配列もまた提供する。一実施形態において、単離されたキメラ核酸配列は配列番号6で示される。
【0008】
本発明はまた、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、修飾キメラGLP-1核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離された修飾キメラGLP-1核酸配列を含む組換え発現ベクターを提供する。一実施形態において、修飾キメラ核酸配列は配列番号8で示される。他の実施形態において、組換え発現ベクターは、さらに、ヒトフューリンおよび、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列の発現を亢進するグルコース調節性プロモーター、例えばTGF-αプロモーターをコードするヌクレオチド配列を含むことができる。他の実施形態において、コードされるGLP-1はGLP-1(7-36)であることができる。
【0009】
(a)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、修飾キメラGLP-1核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離された修飾キメラGLP-1核酸配列を含む組換え発現ベクター;(b)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(c)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたヒト細胞もまた本発明により提供される。前記のヒト細胞は、グルコース調節的にフューリンを発現するように操作され、それによって、(a)同時発現させた、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位をコードする単離されたキメラGLP-1核酸配列のフューリン切断部位でのグルコース応答性の切断による活性GLP-1(7-37)の産生ばかりでなく、(b)ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位でのプロインスリンのフューリン切断によるインスリンの同時発現が可能となる。前記細胞は、グルコース依存的にGLP-1(7-37)を産生し、本明細書では“グルコース調節”または“グルコース依存性”GLP-1産生細胞と呼ぶ。本明細書においては、この細胞を、グルコース調節GLP-1およびインスリン同時産生細胞またはグルコース依存性GLP-1およびインスリン同時産生細胞とも呼ぶ。一実施形態において、修飾キメラ核酸配列は配列番号8で示される。別の実施形態において、コードされるGLP-1はGLP-1(7-36)であることができる。
【0010】
加えて、本発明は、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離された修飾キメラGLP-1核酸配列を含む組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたヒト細胞を提供する。前記細胞は、細胞内で内因的に産生されたフューリンがフューリン切断部位を切断するとき、GLP-1を構成的に産生し、本明細書においては構成的GLP-1産生細胞と呼ぶ。一実施形態において、修飾キメラ核酸配列は配列番号8で示される。他の実施形態において、コードされるGLP-1はGLP-1(7-36)であることができる。
【0011】
本発明はまた、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、キメラGLP-1核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離されたキメラGLP-1核酸配列を含む組換え発現ベクターを提供する。この発現ベクターは、ヒトフューリンおよび、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース依存的発現を亢進するグルコース調節性プロモーター、例えばTGF-αプロモーターをコードするヌクレオチド配列をさらに含むことができる。この実施形態において、周囲のグルコース濃度よりも高い濃度で細胞内に存在するグルコースの存在下で発現されたグルコース調節性フューリンが、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-3)間のフューリン切断部位を切断するとき、GLP-1(7-37)がグルコース調節的に産生される。あるいは、コードされるGLP-1はGLP-1(7-36)であることができる。
【0012】
(a)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、単離されたキメラGLP-1核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離されたキメラGLP-1核酸配列を含む組換え発現ベクター;(b)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(c)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたヒト細胞が本発明によりさらに提供される。前記のヒト細胞は、グルコース調節的にフューリンを発現するように操作され、それによって、(a)同時発現させた、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位をコードする単離されたキメラGLP-1核酸配列のフューリン切断部位でのグルコース応答性の切断による活性GLP-1(7-37)の産生ばかりでなく、(b)ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位でのプロインスリンのフューリン切断によるインスリンの同時発現が可能となる。前記細胞は、グルコース依存的にGLP-1を産生し、本明細書では“グルコース調節性”または“グルコース依存性”GLP-1産生細胞とも呼ぶ。本明細書においては、この細胞を、グルコース調節性GLP-1およびインスリン同時産生細胞またはグルコース依存性GLP-1およびインスリン同時産生細胞とも呼ぶ。一実施形態において、単離されたキメラ核酸配列は配列番号6で示される。他の実施形態において、コードされるGLP-1はGLP-1(7-36)である。
【0013】
加えて、本発明は、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離されたキメラGLP-1核酸配列を含む組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたヒト細胞を提供する。前記細胞は、細胞内で内因的に産生されたフューリンがフューリン切断部位を切断するとき、GLP-1(7-37)を構成的に産生し、本明細書においては構成的GLP-1産生細胞とも呼ぶ。一実施形態において、単離されたキメラ核酸配列は配列番号6で示される。
【0014】
他の実施形態において、本発明は、アミノ酸配列が配列番号5から修飾される単離されたキメラペプチドであって、アミノ酸配列LLATMGがアミノ酸配列X1X2X3X4X5X6により置換され、X1、X2、X3、X4、X5およびX6のそれぞれがそれぞれA、R、N、D、C、E、Q、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、YおよびVからなる群から選択されるアミノ酸である前記単離されたキメラペプチドをコードする単離されたキメラ核酸であって、前記キメラヌクレオチド配列がヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)およびヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位をコードする前記単離されたキメラ核酸を提供する。他の実施形態において、GLP-1はGLP-1(7-36)であることができる。
【0015】
他の実施形態において、配列が配列番号6で示される単離されたキメラヌクレオチド配列であって、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)およびヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位をコードする前記キメラヌクレオチド配列において、アミノ酸配列LLATMGをコードするヌクレオチドが、N1-N18からなる群から選択されるヌクレオチドにより置換され、Nのそれぞれが、GCA/C/G/T、AAC/T、GAC/T、TGC/T、GAC/T、GAA/G、TTC/T、GGA/C/G/T、CAC/T、ATA/C/T、AAA/G、CTA/C/G/T、TTA/G、ATG、AAC/T、CCA/C/G/T、CAA/G、AGA/G、CGA/C/G/T、AGC/T、TCA/C/G/T、ACA/C/G/T、GTA/C/G/T、TGG、TAA/G、TGA、TAC/T、CAA/GおよびGAA/Gからなる群から選択されるコドンによりコードされる前記キメラヌクレオチド配列が提供される。他の実施形態において、GLP-1はGLP-1(7-36)である。
【0016】
本発明はまた、アミノ酸配列が配列番号5から修飾される単離されたキメラペプチドであって、アミノ酸配列LLATMGがアミノ酸配列X1X2X3X4X5X6により置換され、X1、X2、X3、X4、X5およびX6のそれぞれがそれぞれA、R、N、D、C、E、Q、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、YおよびVからなる群から選択されるアミノ酸である前記単離されたキメラペプチドをコードする単離されたキメラ核酸であって、前記キメラヌクレオチド配列がヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)およびヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位をコードする前記単離されたキメラ核酸を含む組換え発現ベクターを提供する。他の実施形態において、GLP-1はGLP-1(7-36)である。
【0017】
本発明は、さらに、(a)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1間のフューリン切断部位、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位、および単離されたキメラGLP-1核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離されたキメラGLP-1核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、コードされるキメラアミノ酸配列が配列番号5から修飾され、アミノ酸配列LLATMGがアミノ酸配列X1X2X3X4X5X6により置換され、X1、X2、X3、X4、X5およびX6のそれぞれがそれぞれA、R、N、D、C、E、Q、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、YおよびVからなる群から選択されるアミノ酸である前記組換え発現ベクター;(b)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(c)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたヒト細胞を提供する。発現ベクターは、さらに、ヒトフューリンおよび、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース依存的発現を亢進するグルコース調節性プロモーター、例えばTGF-αプロモーターをコードするヌクレオチド配列を含むことができる。この実施形態において、周囲のグルコース濃度よりも高い濃度で細胞内に存在するグルコースの存在下で発現されたグルコース調節性フューリンが、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-3)間のフューリン切断部位を切断するとき、GLP-1(7-37)がグルコース調節的に産生される。他の実施形態において、GLP-1はGLP-1(7-36)である。
【0018】
本発明は、(a)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクターまたは(b)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクターで単離されたヒト細胞を安定的にトランスフェクトすることにより、単離されたヒト細胞においてヒトGLP-1を構成的に産生する方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、単離されたヒト細胞においてグルコース依存的にヒトGLP-1およびインスリンを産生する方法であって、(a)単離されたヒト細胞を、(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトし;(b)グルコース濃度が周囲のグルコース濃度より高いグルコースで前記細胞を刺激することを含む前記方法を提供する。
【0020】
本発明はさらに、単離されたヒト細胞においてグルコース依存的にヒトGLP-1およびインスリンを産生する方法であって、(a)単離されたヒト細胞を、(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、単離されたキメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリンであって、プロインスリンリーダー配列、インスリン配列およびヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位で構成される前記プロインスリンならびにプロインスリンをコードする核酸配列の発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトし;(b)グルコース濃度が周囲のグルコース濃度より高いグルコースで前記細胞を刺激することを含む前記方法を提供する。
【0021】
本発明の他の実施形態において、II型糖尿病被験者を治療する方法であって、被験者に、免疫隔離デバイス(immunoisolatory device)であって、(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、修飾キメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクター;(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含む前記デバイスを移植することを含む前記方法において、単離された安定的にトランスフェクトされた細胞が、被験者の血液中のグルコース濃度での刺激により、治療的有効量のGLP-1およびインスリンをグルコース依存的にGLP-1発現し、刺激グルコース濃度が周囲のグルコース濃度よりも高い前記方法が提供される。
【0022】
本発明のさらなる実施形態は、II型糖尿病被験者を治療する方法であって、被験者に、免疫隔離デバイスであって、(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、キメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクター;(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含む前記デバイスを移植することを含む前記方法において、単離された安定的にトランスフェクトされた細胞が、被験者の血液中のグルコース濃度での刺激により、治療的有効量のGLP-1およびインスリンをグルコース依存的にGLP-1発現し、刺激グルコース濃度が周囲のグルコース濃度よりも高い前記方法である。
【0023】
本発明のさらなる実施形態は、高血糖を起こしやすいか、または高血糖を起こしている被験者を治療する方法であって、被験者に、免疫隔離デバイスであって、(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含む前記デバイスを移植することを含む前記方法において、単離された安定的にトランスフェクトされた細胞が、被験者の血液中のグルコース濃度での刺激により、治療的有効量のGLP-1およびインスリンをグルコース依存的に発現し、刺激グルコース濃度が周囲のグルコース濃度よりも高く、それによってグルコースの血中濃度を低下させる前記方法である。
【0024】
あるいは、本発明は、高血糖を起こしやすいか、または高血糖を起こしている被験者を治療する方法であって、被験者に、免疫隔離デバイスであって、(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、キメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含む前記デバイスを移植することを含む前記方法において、単離された安定的にトランスフェクトされたヒト細胞が、被験者の血液中のグルコース濃度での刺激により、治療的有効量のGLP-1およびインスリンをグルコース依存的にGLP-1発現し、刺激グルコース濃度が周囲のグルコース濃度よりも高く、それによってグルコースの血中濃度を低下させる前記方法を提供する。
【0025】
他の実施形態において、被験者の体重を減少させる方法であって、被験者に免疫隔離デバイスを移植することを含む前記方法において、前記デバイスが(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含み、単離された安定的にトランスフェクトされたヒト細胞が、被験者の血液中のグルコース濃度での刺激により、治療的有効量のGLP-1およびインスリンをグルコース依存的に発現し、刺激グルコース濃度が周囲のグルコース濃度よりも高く、GLP-1およびインスリンの発現が被験者の体重を減少させる前記方法が提供される。
【0026】
本明細書において、被験者の体重を減少させる方法であって、を含む前記方法において、前記デバイスが、(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、キメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含み、単離された安定的にトランスフェクトされたヒト細胞が、被験者の血液中のグルコース濃度での刺激により、治療的有効量のGLP-1およびインスリンをグルコース依存的に発現し、刺激グルコース濃度が周囲のグルコース濃度よりも高く、GLP-1およびインスリンの発現が被験者の体重を減少させる前記方法が提供される。
【0027】
本発明の他の実施形態において、下記のように、II型糖尿病被験者を治療する方法、高血糖を起こしやすいか、または高血糖を起こしている被験者を治療する方法および被験者の体重を減少させる方法であって、被験者に、構成的GLP-1産生細胞を含む免疫隔離デバイスを移植することを含む前記方法が提供される。この細胞は、GLP-1の治療的有効量を構成的に産生する。
【0028】
II型糖尿病被験者を治療する方法であって、被験者に免疫隔離デバイスを移植することを含む前記方法において、前記デバイスが、(a)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクターまたは(b)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、キメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含み、前記細胞が内因性フューリンを産生する前記方法。他の実施形態において、GLP-1は、GLP-1(7-37)であるよりもGLP-1(7-36)であるほうがよい。
【0029】
高血糖を起こしやすいか、または高血糖を起こしている被験者を治療する方法であって、被験者に免疫隔離デバイスを移植することを含む前記方法において、前記デバイスが、(a)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクターまたは(b)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、キメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含み、前記細胞が内因性フューリンを産生する前記方法。他の実施形態において、GLP-1は、GLP-1(7-37)であるよりもGLP-1(7-36)であるほうがよい。
【0030】
膵臓β細胞によるインスリン産生は、患者におけるグルコースの血中濃度の増加時に構成的に産生されるGLP-1により刺激される。好都合には、本治療方法は、フューリンおよびインスリンを共発現する操作された細胞の移植(GLP-1を発現する移植細胞に加えて)を含むこともできる。これもまた、グルコース調節的にインスリンを産生することができる。操作された細胞のインスリンは、内因性インスリンが十分ではない糖尿病患者のための、また、インスリン産生膵臓β細胞が、分泌されたGLP-1に応答するまでの臨界期を保護するための追加の治療の利点を提供すると考えられる。インスリン産生の効果は、被験者におけるグルコースの血中濃度が低下することであり、それによってII型糖尿病または高血糖が治療されることである。
【0031】
他の実施形態において、被験者の体重を減少させる方法であって、被験者に免疫隔離デバイスを移植することを含む前記方法において、前記デバイスが、(a)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクターまたは(b)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、キメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含み、前記細胞が内因性フューリンを産生する前記方法が提供される。他の実施形態において、GLP-1は、GLP-1(7-37)であるよりもGLP-1(7-36)であるほうがよい。インスリン産生の効果は、被験者の体重の減少である。
【0032】
本発明の他の側面、特徴および利点は、以下の詳細な説明を読み理解することにより当業者に明らかになるであろう。
【0033】
発明の詳細な説明
本明細書において、“遺伝子”は、特定の機能産物(すなわちタンパク質またはRNA分子)をコードする特定の染色体(DNA)上の特定の位置に位置するヌクレオチドの順序づけられた配列である。本明細書において、“ヌクレオチド”は、窒素塩基(DNA中のアデニン、グアニン、チミジンまたはシトシン;RNA中のアデニン、グアニン、ウラシルまたはシトシン)、リン酸塩分子および糖分子からなるDNAまたはRNAのサブユニットである。ヌクレオチドの結合によりDNAまたはRNA分子が形成される。ヌクレオチド3つは、タンパク質配列中の1つのアミノ酸をコードする“コドン”を形成する。
【0034】
本明細書において、“開始コドン”は、限定するものもではないが、通常、タンパク質に翻訳される遺伝子配列の初めの部分を示すATG(mRNAにおいてはAUG)である。このコドンは、アミノ酸であるメチオニン(Met)をコードする。“コザック配列”は、mRNAの翻訳のための開始シグナルATG(AUG)周辺のDNA配列である。コザックコンセンサス配列は、最初、コザックにより、プレプロインスリン遺伝子の翻訳に対する開始コドン(AUG)周辺の単一変異の影響の分析後にACCAUGGと定義された(Kozak, M. Cell 44, 283 (1986)。その後の変異誘発研究および699の脊椎動物mRNAの検査により翻訳開始のコンセンサス配列がGCCGCCACCAUGGに延長された。
【0035】
本明細書において、“センス”鎖は、RNA合成の鋳型鎖としての機能を果たす二本鎖DNAの鎖の1つである。一般的には、1つの遺伝子に対して、そのセンス鎖から読み取られた遺伝子産物1つのみが産生される。
【0036】
本明細書において、“アンチセンス”鎖は、標的DNA/RNAに対する相補配列で構成されるDNAまたはRNAであり、塩基対形成により標的DNAまたはRNAに結合し、DNA/RNAフラグメントが新たなタンパク質の合成に利用されることを妨げる(すなわち標的遺伝子の発現を妨げる)。本明細書において、“アンチセンスオリゴヌクレオチド”は、メッセンジャーRNA(mRNA)に結合し、遺伝子発現のプロセスを妨げることができる短い配列のヌクレオチドである。本明細書において、“相補的DNA”(cDNA)は、逆転写酵素を用いてmRNAからコピーされたDNA鎖である。
【0037】
本明細書において、“遺伝子構築物”は、プロモーター、目的遺伝子(1以上の天然または非天然のタンパク質(単数または複数)をコードする核酸)および調節因子を含むDNA配列である。本明細書においては、“遺伝子構築物”は“核酸構築物”と同義で使用される。遺伝子構築物は、それぞれの遺伝子がそれ自身のプロモーターおよび調節因子を有する、2以上の目的遺伝子を含むことができる。本明細書において、“キメラ核酸”は、2以上の供給源由来の、2以上のそれぞれのアミノ酸配列をコードする、2以上の核酸配列を含む核酸配列である。例えば、前記核酸配列は、ある遺伝子の核酸配列中に天然には同時に存在しない、かつ/または天然に存在する1つの核酸配列から同時に発現されない。さらに、キメラ核酸に存在するそれぞれの核酸配列は、1つの動物の2以上の異なる細胞型由来のものであることができ、かつ/または2以上の異なる種由来のものであることもできる。キメラ核酸中の2以上の核酸は、同じ種の2つの異なる遺伝子または細胞由来のものであることができる。キメラ核酸を構成する各核酸配列は、それ自身のプロモーター配列(すなわち、前記プロモーターをコードする核酸)および、それぞれのコードされるアミノ酸配列、すなわち、ペプチド(単数または複数)またはタンパク質(単数または複数)の発現に必要な他の核酸配列を有する。例えば、単離されたキメラ核酸配列は、ヒトプロインスリンリーダーアミノ酸配列、天然GLP-1ペプチド配列およびヒトプロインスリンリーダーアミノ酸配列と天然GLP-1ペプチド配列間のフューリン切断部位をコードするキメラ配列であることもでき、ヒトプロインスリンリーダーアミノ酸配列、最適化GLP-1およびヒトプロインスリンリーダーアミノ酸配列と最適化GLP-1ペプチド配列間のフューリン切断部位をコードする修飾キメラ配列であることもできる。キメラおよび修飾キメラ配列は、GLP-1(7-37)またはGLP-1(7-36)であるGLP-1をコードすることができる。
【0038】
本明細書において、“レポーター遺伝子”は、その表現型発現のモニターが容易で、遺伝子発現、例えば、プロモーター活性の研究に用いられる遺伝子である。組換えDNA構築物、遺伝子工学により製造したDNA構築物は、特に興味があるプロモーターに結合されたレポーター遺伝子であって、構築物が細胞にトランスフェクトされた後に、プロモーター機能をアッセイするためにレポーター遺伝子の発現を使用できる前記レポーター遺伝子を含むことができる。例えば、抗生物質耐性を付与し、抗生物質を含有する培地中で細胞を増殖させるとき、宿主細胞を特定の抗生物質に耐性を示すようにする産物をコードする遺伝子は、“選択マーカー”またはプロモーター活性のレポーターとして役立つことができる。
【0039】
ゼオシン(登録商標)は、ブレオマイシンファミリーの抗生物質であり、例えば、細菌、真核微生物、植物および動物細胞に対して広い活性スペクトルを有し、ゼオシン(登録商標)耐性遺伝子を有するベクターを含む細胞の選択マーカーとして有用である(http://www.cayla.com/support/datasheets/zeotech.pdf)。抗生物質に結合することによりゼオシン(登録商標)を不活化するタンパク質をコードするゼオシン(登録商標)耐性遺伝子(Zeor、すなわちSh ble遺伝子)の発現により、遺伝子導入後の薬剤耐性細胞の選択が可能になる。ゼオシン(登録商標)は、他の選択剤、すなわち、G-418、ハイグロマイシンB、ブラストサイジンまたはピューロマイシンに耐性を示す細胞の選択にも使用できる。なぜなら、他の現在使われている薬剤耐性マーカーに対する交差耐性が存在しないからである。抗生物質のアンピシリンを不活化する酵素であるβ-ラクタマーゼを発現するアンピシリン耐性遺伝子(ampr)および、ネオマイシン-カナマイシン抗生物質に対する耐性を付与するネオマイシン耐性遺伝子(Neor)を含むが限定されない他の薬剤耐性遺伝子を使用できる。
【0040】
本明細書において、“アミノ酸”は、タンパク質の基本的な合成ブロックである窒素含有酸である。すべてのアミノ酸は、アミノ(NH2)末端、カルボキシル末端(COOH)および側基(R)を含有する。タンパク質において、アミノ酸のNH2基が隣接アミノ酸のCOOH基と結合を形成するとき、アミノ酸は連結される。動物およびヒトにおいて、共通のアミノ酸は20存在する。アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンである。
【0041】
本明細書において、“ペプチド”または“ポリペプチド”は、鎖を形成する約50までのアミノ酸の結合である。“タンパク質”は、50アミノ酸よりも長いアミノ酸の鎖である。アミノ酸は、ペプチド結合(1つのアミノ酸の窒素原子ともう1つのカルボキシル炭素原子との結合による結合)で連結されている。
【0042】
本明細書において、GLP-1は、活性ヒトグルカゴン様ペプチド-1、すなわちアミノ酸配列がHAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG[配列番号9]であるGLP-1(7-37)またはアミノ酸配列がHAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR[配列番号10]であるGLP-1(7-36)またはそれらのバリアントを意味する。好ましくは、GLP-1はGLP-1(7-37)またはそのバリアントである。他の実施形態において、GLP-1はGLP-1(7-36)アミドまたはそのバリアントである。本明細書において、GLP-1の“バリアント”は、GLP-1の活性を変化させることなく、アミノ酸残基の1以上の置換、欠失または挿入により、天然配列から1以上のアミノ酸が変えられたアミノ酸配列を意味する。すなわち、“GLP-1バリアント”は、GLP-1活性にとって重要なアミノ酸残基またはこれらの重要な残基の1以上と置換できる残基を有するために、例えば膵臓β細胞によるインスリン分泌の刺激において、天然GLP-1配列と同じ活性を有する1以上のアミノ酸残基の欠失を有し、従ってGLP-1(7-36)よりも短い、すなわちGLP-1のフラグメントであることができる。図2の、下線を施した残基H、G、F、T、D、FおよびIを参照されたい。例えば、GLP-1バリアントにおいて、イソロイシン、すなわち中性非極性アミノ酸残基は、ロイシンまたはバリンなどの、分枝鎖炭化水素側鎖を有する他の非極性アミノ酸と置換することができる。他のアミノ酸残基によりアミノ酸残基が置換できるかどうかは、異なる側鎖によって決定されるアミノ酸の4つの異なるクラス:(1)中性非極性、(2)中性極性、(3)酸性極性、(4)塩基性極性の1つにおけるその分類に基づいて、当業者により容易に決定される。
【0043】
本明細書において、“インスリン”は、膵臓ランゲルハンス島β細胞により産生される生物活性ペプチドホルモンを意味する。その活性形において、インスリンは2つの異なる鎖、A鎖およびB鎖で構成され、それらはそれぞれ21および30アミノ酸からなり、3つのジスルフィド架橋が存在し、2つはA鎖B鎖間であり、もう1つある。インスリンは、“プレプロインスリン”として知られる1つの不活性なペプチドとして合成され、リーダー(またはシグナル)配列、B鎖、連結“C”ペプチドおよびA鎖を有する。リーダー配列は、プロインスリンを細胞外に搬出するシグナルを細胞に提供する。プレプロインスリンのリーダー配列は、粗面小胞体に運ばれたとき、ペプチダーゼにより切断され、次いで3つのジスルフィド架橋のうち2つが形成されてプロインスリンとなる。2番目のペプチダーゼによりCペプチドが切断され、内部ジスルフィド架橋が形成されてインスリンが産生される。内因性インスリンの半減期は約4分であり、Cペプチドの半減期は約30分である。
【0044】
本明細書において、ヒト“プロインスリンリーダー”は、アミノ酸配列がMALWMRLLPLLALLALWGPDPAAAであるプレプロインスリンシグナル配列を意味する。
【0045】
本明細書において、“発現ベクター”は、cDNAからのタンパク質の発現を可能にするように操作されたクローニングベクターである。すなわち、そのコード配列が正確に転写され、そのRNAが翻訳される。発現ベクターは、転写開始のための適切なプロモーター配列およびcDNAの挿入を可能にする制限部位を提供する。“プラスミド”は、細胞内での自律複製が可能な小さな環状DNA分子であり、クローニングベクターとして一般的に用いられる。プロモーター、クローニング部位および抗生物質耐性遺伝子を有するプラスミドを含む種々のプラスミドが市販されている。例えば、プラスミドベクターpcDNA3.1(+)およびpcDNA3.1(-)は、哺乳動物宿主における高濃度の安定な一時的発現のために設計されている。これらのベクターは、広範囲の哺乳動物細胞における高濃度発現のためのヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、クローニングを容易にする、順方向(+)および逆方向(-)のマルチクローニング部位、安定細胞系の選択のためのネオマイシン耐性遺伝子ならびに、SV40に潜伏感染した細胞クローンまたはSV40ラージT抗原を発現する細胞クローン、例えば、COS-1およびCOS-7におけるエピゾームの複製を含む(www.invitrogen.com)。同様にInvitrogen(登録商標)から入手できるプラスミドpcDNA3.1/Zeoは、特に、CMVプロモーター、SV40プロモーターおよび複製起点、ゼオシン(登録商標)耐性遺伝子、blaプロモーターならびにアンピシリン(bla)耐性遺伝子を有する(http://www.invitrogen.com/content/sfs/vectors/pcdna3.1zeo_map.pdf)。
【0046】
本明細書において、用語“修飾核酸配列”および“最適化核酸配列”は同義で使用され、特定の種のゲノム、例えばヒトゲノムに用いられている、特定のアミノ酸をコードする好ましいコドンを選択するためのアルゴリズムを用いてそのコドンが合成された核酸配列を意味するものとする。遺伝コードの縮重により、1つのアミノ酸は、核酸レベルで、それをコードする2以上のコドンを有することができる。タンパク質、例えばアミノ酸配列がヒト配列タンパク質に基づく天然に存在しないタンパク質をコードする核酸は、発現が困難な可能性がある。天然に存在するタンパク質のための最適化非天然型核酸配列は、それが天然に存在するタンパク質の過剰発現を可能にする可能性があるので有利である。
【0047】
本明細書において“構成的”は、非調節性に発現する遺伝子を意味する。すなわち、例えばグルコース濃度にかかわらず構成的に産生されるGLP-1のように、すべての生理条件下で細胞によりタンパク質が産生されるとき、酵素または他のタンパク質の産生は構成的である。CMVプロモーターは“構成的プロモーター’である。すなわち、その調節下では、核酸配列の発現は、トリガー物質、すなわち誘導物質に依存しない。対照的に、“誘導性”または“調節性”または“誘導物質依存”転写は、例えば栄養素の摂取後に血糖が上昇するとき、“グルコース依存的”すなわち調節的/誘導的に産生されるGLP-1などのように、これらの遺伝子の調節配列に作用することができる小分子である誘導因子により引き起こされる。
【0048】
本明細書において、“トランスフォーミング成長因子α”(TGF-α)は、EGFと35%の配列の相同性を示す、50アミノ酸の分泌ポリペプチドである。TGF-αは、EGF受容体に結合し、EGFと同様に、いつくかの細胞型に対する強力なマイトジェンである。TGF-α転写産物(すなわち、DNAから合成されたメッセンジャーRNA)の5’末端は、単一の転写開始部位に限局されてきた。TGF-αプロモーター配列において、CCAAT配列もTATA配列も存在せず、このことは、前記配列モチーフを持たないプロモーターからの唯一の特定の位置で転写を開始できることを示唆している(Jakobovits, et al. Mol. Cell. Biol. Dec. 1988, Vol. 8, No. 2, 5549-5554)。TGF-αプロモーターは、好ましいグルコース調節性プロモーターであり、ヒトズブチリシン様プロテアーゼ、例えばフューリンのグルコース調節発現に有用であることが見出されている(Tatakeら、米国特許出願公開第2003/0032144号(2003年2月13日)、現在米国特許第7,045,346号)。
【0049】
本明細書において、“形質転換”細胞は、外因性、すなわち“異種”または生物もしくは細胞外部に由来する遺伝物質(DNAまたはRNA)の導入、取り込みおよび発現により遺伝子改変された細胞である。
【0050】
本明細書において、“フューリン”は、多くの構成発現されたタンパク質前駆体の切断に関与する哺乳動物の酵素である、遍在するズブチリシン様プロタンパク質転換酵素を意味する。最小“フューリン切断部位”はArg-X-X-Arg’である。しかしながら、この酵素は部位Arg-X-(Lys/Arg)-Arg’のほうを好む。
【0051】
本明細書において、用語“移植”は、被験者に細胞を移植または導入し、移植後ある期間、例えば≧14日間細胞が“機能的”であることを意味する。移植された細胞は、免疫隔離デバイス内で1年まで機能的であることが可能である(Long-term erythropoietin gene expression from transduced cells in bioisolator devices. Hum. Gene Ther. 2003 Nov 20;14(17);1587-93 を参照のこと)(参照により、その全体が本願に組み込まれる)。用語“機能的”は、所望の機能を遂行することを意味する。例えば、本細胞は、細胞に形質転換した発現ベクターからタンパク質、例えば構成的プロモーターまたは基質依存性プロモーター、例えばグルコース依存性プロモーターにより発現が駆動されるGLP-1、インスリンおよび/またはフューリンを発現する。導入細胞は、好ましくは核酸構築物で形質転換された細胞である。好ましくは、構築物は、タンデム配列のプロインスリンリーダー/フューリン切断部位/GLP-1をコードする組換え核酸を含む。より好ましくは、核酸配列は、タンデム配列のプロインスリンリーダー/フューリン切断部位/GLP-1をコードする最適化核酸配列である。
【0052】
本明細書において、“免疫隔離デバイス”は、治療用ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を分泌する機能的細胞が合成膜に封入されたビヒクルであり、該合成膜は免疫抑制を用いずに免疫系拒絶反応から細胞を守るが、栄養素がデバイス内に拡散し、細胞によって分泌される治療剤、例えばタンパク質がデバイス外に拡散することを可能にする。デバイスは、細胞を除去し、同一または異なる治療剤を産生する新鮮細胞でそれを置換するのに適したものであることが好ましい。デバイスは生体適合性である。すなわち、デバイスは損傷を引き起こさず、それが移植される生体組織、例えば人体に毒性を示さず、免疫反応をなんら生じない。好ましくは、細胞は同種であり、組換え治療用タンパク質(単数または複数)を分泌するように遺伝子組換えされている。例えば、Dionneへの米国特許第5,869,077号またはPowersらへのPCT/US99/08628に記載されているように、細胞は、分散されているか、マトリックスに固定化されているか、または液体培地に懸濁されていることができる。TheraCyte(登録商標)は、皮下で機能し、長期同種細胞移植を可能にするように設計された、回収可能チャンバーを有する市販の免疫隔離デバイスである(www.theracyte.com)。前記デバイスは、非免疫抑制ヒトにおいて、2年以上同種組織を保護したばかりでなく、糖尿病(NOD)マウスにおけるインスリン分泌細胞ならびに胸腺欠損マウスおよびラットにおける第IX因子分泌ヒト細胞を1年まで保護した(http://www.gtmb.org/gene-therapy-confefrences/ abstracts_2001/ Abstract_ Loudovaris.htm)。
【0053】
本明細書において、“治療”は、疾患または障害を、例えばその症状を軽減することにより改善するかまたは治療を提供することを意味する。本明細書において、“糖尿病”は、インスリン非依存性糖尿病であるII型糖尿病を意味し、糖尿病被験者は、糖尿病の症状の一部または全部を示すことにより糖尿病を患う被験者である。糖尿病の症状は、高血糖値を含む。126mg/dL(7.00mmol/L)以上の空腹時血糖(8時間の断食後)は、糖尿病の古典的症状、例えば渇き増加、空腹感増大、頻尿、体重減少または霧視が伴うとき、I型またはII型糖尿病のいずれかに一致する。100mg/dL(5.55mmol/L)〜125mg/dL(6.94mmol/L)の空腹時血糖は、アメリカ人成人約1600万人を襲っている前糖尿病状態を示している可能性がある。本明細書において、“前糖尿病”は、血糖値が正常より高いが、真性糖尿病の診断が確定する126mg/dL以上の値には至っていないときに生じる耐糖能異常である。“前糖尿病”被験者は、前記の耐糖能異常を示すが、糖尿病の空腹時グルコース濃度に至っていない被験者である。現在では、正常空腹時血糖値は、99mg/dL以下、すなわち、70ミリグラム/デシリットル(mg/dL)(すなわち3.88ミリモル/リットル(mmol/L))〜99mg/dLである。正常血糖値は、その人の性別、年齢、体重、食事および健康状態に依存し、個体により異なる。
【0054】
II型糖尿病由来の高血糖を治療しないと、心筋梗塞または脳卒中を引き起こすばかりでなく、腎不全、盲または、切断術をもたらしうる血栓を発症するリスクが顕著に増加する。よって、本明細書において、糖尿病の治療または治療方法は、治療前値または糖尿病患者と比較して血糖値が低下することを含む。糖尿病の治療は、心疾患(心血管疾患)、高血圧、末梢血管疾患、冠動脈疾患、脳血管疾患、盲(網膜症)、緑内障、神経障害(ニューロパチー)、腎障害(腎症)および歯周(歯肉)疾患を含むが限定されない、糖尿病と関連する疾患または合併症の治療を含む。
【0055】
非糖尿病患者における、すなわち高血糖状態における高グルコース濃度の治療は、高血糖値から正常血糖値(すなわち70〜99mg/dL)への低下または高値から低血糖症より上の値までの低下を意味する。
【0056】
本明細書において、“治療的有効量”は、病状を改善するかまたは疾患と関連する1以上の症状を改善するのに十分な量を意味する。
【0057】
本明細書において、“過体重”は、体重と身長の比率、すなわちボディマス指数(BMI)が25〜29.9kg/m2であることを意味する。本明細書において、“肥満”は、高い体脂肪量を有し、ボディマス指数(BMI)が30kg/m2以上であることを意味する。肥満および過体重患者の治療は、それぞれのBMIを上記の範囲以下に低下させること、すなわち、肥満BMIから過体重または普通BMIへ、または過体重BMIから普通BMIへ低下させることを意味する。
【0058】
本発明は、遺伝子組換え細胞ならびに、糖尿病、非糖尿病もしくは前糖尿病患者における高血糖の治療のためばかりでなく糖尿病、前糖尿病および非糖尿病患者における体重減量のための前記細胞の使用に関する。本明細書において、提供される治療方法は、活性ヒトGLP-1の産生のための遺伝子組換え細胞を前述の被験者に移植することを含む。
【0059】
遺伝子組換え細胞は、タンデム配列のヒトプロインスリンリーダー/フューリン切断部位/グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)をコードする単離されたキメラGLP-1最適化(修飾)核酸配列を含む。すなわち、フューリン切断部位はヒトプロインスリンリーダー配列とGLP-1間である。好ましくは、細胞を操作するために使用される単離された修飾キメラ核酸配列は、GLP-1ペプチドであるGLP-1(7-37)[配列番号9](図2で示される)またはGLP-1(7-36)[配列番号10](図2で示される配列と同様な配列を有するが、残基7-36を有し、最後のグリシン残基を欠く(すなわち、GLP-1(7-37)に存在するアミノ酸残基37を欠く))をコードする。一実施形態において、単離された修飾キメラタンパク質配列は配列番号7である。一実施形態において、単離された修飾キメラ核酸配列は配列番号8である。別の実施形態において、単離された修飾キメラ修飾タンパク質配列は配列番号7と同様な配列を有するが、コードされるGLP-1はGLP-1(7-36)[配列番号10]であり、GLP-1(7-37)の最後のグリシン残基を欠く。グリシンをコードするコドンGGAを欠くGLP-1(7-36)をコードする核酸配列を含む修飾キメラ核酸配列もまた提供される。
【0060】
他の実施形態において、遺伝子組換え細胞は、タンデム配列のヒトプロインスリンリーダー/フューリン切断部位/天然グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)をコードする単離されたキメラ(天然)GLP-1核酸配列を含む。すなわち、フューリン切断部位はヒトプロインスリンリーダー配列と天然GLP-1間である。好ましくは、細胞を操作するために使用される単離されたキメラ核酸配列は、天然GLP-1ペプチド、すなわちGLP-1(7-37)またはGLP-1(7-36)をコードする。一実施形態において、単離されたキメラ天然GLP-1タンパク質配列は配列番号5である。他の実施形態において、単離されたキメラ(天然)GLP-1核酸配列は配列番号6である。別の実施形態において、単離されたキメラ(天然)タンパク質配列は配列番号5と同様な配列を有するが、コードされるGLP-1はGLP-1(7-36)[配列番号10]であり、GLP-1(7-37)の最後のグリシン残基を欠く。グリシンをコードするコドンGGAを欠くGLP-1(7-36)をコードする核酸配列を含むキメラ核酸配列もまた提供される。
【0061】
天然GLP-1構築物の製造方法は、図3に図示されている。GLP-1をコードする核酸配列の中間点に、N末端およびC末端フラグメントを与えるXhoI制限部位を付加した。GLP-1のN末端フラグメントの5’末端に、フューリン切断部位、コザック配列およびNheI制限部位を挿入した。C末端フラグメントの3’末端にBamHI制限部位を付加した。すべてのオリゴヌクレオチドをリン酸化した。
【0062】
実施例1に記載されているように、pCDNA3.1発現ベクターを用いてN末端およびC末端フラグメントをサブクローニングした。ヒトプロインスリンリーダーをコードする核酸をPCR増幅し、図3Dに示すように、フューリン切断部位の上流にサブクローニングした。
【0063】
図4は、ヒトプロインスリンリーダー、フューリン切断部位および天然GLP-1を含むキメラタンパク質をコードする、得られた天然GLP-1構築物のベクターマップである。pCDNA-hIL-GLP-1(11.11)で表されるプラスミドは、構成的CMVプロモーター、ヒトプロインスリンリーダーおよびGLP-1をコードする核酸を含む。すなわち、ヒトプロインスリンリーダー配列およびGLP-1(7-37)をそれぞれコードするcDNAであって、それらの間のフューリン切断部位、blaプロモーターおよびこのプロモーターにより駆動されるアンピシリン(bla)耐性遺伝子、選択マーカー遺伝子でありネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードする配列であるNeoRおよびそのプロモーターSV40を有する前記cDNAを含む。CMV以外の構成的プロモーターを使用できる。
【0064】
GLP-1(7-37)を構成的に産生するようにヒト細胞を操作するために、本発明は、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位およびCMVプロモーターをコードする単離されたキメラGLP-1最適化核酸配列を含む組換え発現ベクターを提供する。ヒト細胞は、フューリンを内因的に産生し、フューリン切断部位を切断してGLP-1を産生する。好ましくは、発現ベクターはプラスミドである。好都合には、発現ベクターは、GLP-1を構成的に産生する。すなわち、GLP-1を非調節性に常に発現する(基質調節性プロモーターの調節下にない、例えばグルコースなどの基質により調節されない)。GLP-1産生発現ベクターなどを含む安定的にトランスフェクトされた細胞を患者に移植してGLP-1を産生させることができる。操作された細胞により産生され、使用されないGLP-1、すなわち、正常血糖において(すなわち正常な血糖値の間)身体がインスリン産生を刺激する必要のないときのGLP-1は、すべて身体の天然DPPIVにより分解される。上記の組換え発現ベクターを用いて、ヒト細胞を安定的にトランスフェクトすることができる。代替実施形態において、コードされるGLP-1はGLP-1(7-37)またはGLP-1(7-36)であることができる。好ましくは、発現ベクターはプラスミドである。トランスフェクトされた細胞がフューリンをなんら産生しないか、または不十分な内因性フューリン量しか産生しない場合、構成的または調節的にフューリンを発現する(すなわち、グルコース調節的の場合、グルコース濃度の上昇によって発現される、すなわち、フューリンは細胞内の周囲のグルコース濃度よりも高い濃度にまで発現される)第2ベクターで細胞を同時トランスフェクトすることができる。
【0065】
GLP-1発現ベクターでトランスフェクトされていることができる操作されたヒト細胞は、インスリンを産生するためのフューリン切断可能プロインスリンを発現する発現ベクターであらかじめ安定的にトランスフェクトされており、フューリンがグルコース依存的に発現される細胞であることができる(Tatakeら、米国特許出願公開US2003/0032144;米国特許第7,045,346号を参照のこと(参照により、その全体が本願に組み込まれる))。従って、これらの操作された細胞は、インスリンおよびGLP-1の両方をグルコース調節的に産生する能力を有する。これらのトランスフェクトされた細胞の両方、すなわち、GLP-1発現ベクターでトランスフェクトされた細胞またはGLP-1発現ベクターおよびインスリン同時発現ベクターでトランスフェクトされた細胞を、糖尿病、高血糖および過体重状態の治療のために、組み合わせて使用することができる。
【0066】
図5は、pCIneo真核発現ベクターにサブクローニングされた最適化GLP-1構築物のベクターマップである。このベクターは、ヒトプロインスリンリーダー、フューリン切断部位およびGLP-1を含むキメラタンパク質[配列番号7]をコードする修飾キメラ核酸配列hI-GLP-1(opt)[配列番号8]を含み、GLP-1は最適化され、フューリン切断部位の前にアミノ酸配列LLATMGを含まない。pCDNA3.1Zeo(-)GLP-1(BI1.2)で表されるプラスミドは、修飾キメラ核酸配列の発現のためのCMVプロモーター、Zeo耐性遺伝子およびそのEM7プロモーター、アンピシリン(bla)耐性遺伝子のためのblaプロモーターおよびT7プロモータープライミング部位を含む。
【0067】
本発明は、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位およびキメラGLP-1核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離されたキメラGLP-1核酸配列を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0068】
本発明はまた、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位およびキメラGLP-1核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離されたキメラGLP-1核酸配列を含む組換え発現ベクターを提供する。この発現ベクターは、ヒトフューリンおよびヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース依存的発現を亢進するグルコース調節性プロモーター、例えばTGF-αプロモーターをコードするヌクレオチド配列をさらに含むことができる。この実施形態において、周囲のグルコース濃度よりも高い濃度で細胞内に存在するグルコースの存在下で発現されたグルコース調節フューリンが、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位を切断するとき、GLP-1(7-37)がグルコース調節的に産生される。あるいは、組換え発現ベクターは、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-36)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-36)間のフューリン切断部位およびキメラGLP-1核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離されたキメラGLP-1核酸配列を含む。
【0069】
好ましくは、ヒト細胞は上記の発現ベクターで安定的にトランスフェクトされている。さらにまた、構成的にGLP-1を発現する組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたヒト細胞は内因的にフューリンを産生する。トランスフェクトされた細胞がフューリンを天然に産生しないか、または細胞によるGLP-1の構成的産生に十分な内因性フューリン量を産生しない場合、ヒトフューリンおよびグルコース依存的にフューリンの発現を調節するグルコース調節性プロモーター、すなわちTGF-αプロモーターを発現する第2組換え発現ベクターで細胞を同時トランスフェクトすることができる。グルコース調節的にフューリンを発現する同時トランスフェクトされた細胞において、周囲のグルコース濃度、すなわち培地または細胞シグナル周辺の環境に存在するグルコースと比較してグルコース濃度が上昇することにより、TGF-αプロモーターにシグナルが伝達され、ヒトフューリンの発現増加が駆動され、次いでそれがフューリン切断部位で構成発現されたプロインスリン/フューリン切断部位/GLP-1組換えタンパク質を切断してGLP-1を産生する。好ましくは、発現ベクターは共にプラスミドである。下記のように、ヒトフューリンおよび、グルコース依存的にヒトフューリンの発現を亢進するグルコース調節性プロモーター、例えばTGF-αプロモーターをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターでヒト細胞をトランスフェクトすることもできる。
【0070】
加えて、本発明は、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離されたキメラGLP-1核酸配列を含む組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたヒト細胞を提供する。前記細胞は、細胞内で内因的に産生されたフューリンがフューリン切断部位を切断するとき、GLP-1(7-37)を構成的に産生し、本明細書においては、構成的GLP-1産生細胞とも呼ぶ。一実施形態において、単離されたキメラ核酸配列は配列番号6で示される。他の実施形態において、ヒト細胞は、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-36)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-36)間のフューリン切断部位およびキメラGLP-1核酸配列の構成的発現を駆動する構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離されたキメラGLP-1核酸配列を含む組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされている。一実施形態において、単離されたキメラ核酸配列は配列番号6よりも短い配列、すなわちGLP-1(7-37)のグリシン(残基37)をコードするコドンGGAを欠くキメラ核酸配列内の核酸配列をコードするGLP-1を有し、従って単離されたキメラ核酸配列は配列番号10で示されるGLP-1(7-36)ペプチドをコードする。
【0071】
本発明により、さらに、(a)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、単離されたキメラGLP-1核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離されたキメラGLP-1核酸配列を含む組換え発現ベクター;(b)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(c)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたヒト細胞が提供される。前記のヒト細胞はグルコース調節的にフューリンを発現するように操作され、それによって、(a)同時発現させた、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位をコードする単離されたキメラGLP-1核酸配列のフューリン切断部位でのグルコース応答性の切断による活性GLP-1(7-37)の産生ばかりでなく、(b)ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位でのプロインスリンのフューリン切断によるインスリンの同時発現が可能となる。前記細胞は、グルコース依存的にGLP-1を産生し、本明細書においては、“グルコース調節性”または“グルコース依存性”GLP-1産生細胞とも呼ぶ。周囲のグルコース濃度と比較してのグルコース濃度の増加により、ヒトフューリン発現の増加と、それに次ぐ発現されたプロインスリン/フューリン切断部位/GLP-1組換えタンパク質のフューリン切断部位での切断が刺激され、GLP-1が産生される。前記の組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたヒト細胞はヒトフューリンを発現し、それと共にグルコース依存的にGLP-1を発現する。本明細書においては、この細胞を“グルコース調節性GLP-1およびインスリン同時産生細胞”または“グルコース依存性GLP-1およびインスリン同時産生細胞”とも呼ぶ。一実施形態において、GLP-1(3-37)をコードする単離されたキメラ核酸配列は配列番号6で示される。別の実施形態において、単離されたキメラ核酸配列は、配列番号6で示される配列よりも短い。すなわち、それは、GLP-1(7-37)のアミノ酸残基37であるグリシンをコードするコドンGGAを欠く。一実施形態において、単離されたキメラタンパク質配列はコードされるGLP-1がGLP-1(7-37)である配列番号5である。別の実施形態において、単離されたキメラタンパク質配列は、アミノ酸残基37であるグリシンを欠くことにより配列番号5よりも短く、コードされるGLP-1はGLP-1(7-36)である。
【0072】
本発明はまた、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および修飾キメラGLP-1核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離された修飾キメラGLP-1核酸配列を含む組換え発現ベクターを提供する。一実施形態において、修飾キメラ核酸配列は配列番号8で示される。他の実施形態において、組換え発現ベクターは、ヒトフューリンおよび、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース依存的発現を亢進するグルコース調節性プロモーター、例えばTGF-αプロモーターをコードするヌクレオチド配列をさらに含むことができる。別の実施形態において、組換え発現ベクターは、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-36)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-36)間のフューリン切断部位およびキメラGLP-1核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離された修飾キメラGLP-1核酸配列を含む。
【0073】
加えて、本発明は、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離された修飾キメラGLP-1核酸配列を含む組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたヒト細胞を提供する。前記細胞は、細胞内で内因的に産生されたフューリンがフューリン切断部位を切断するとき、GLP-1を構成的に産生し、本明細書においては構成的GLP-1産生細胞と呼ぶ。一実施形態において、修飾キメラ核酸配列は配列番号8で示される。他の実施形態において、コードされるGLP-1はGLP-1(7-36)であることができる。すなわち、この核酸配列は、GLP-1(7-37)におけるアミノ酸グリシンをコードするコドンであるコドンGGAを欠くことにより、配列番号8で示される配列よりも短い。
【0074】
本発明により、(a)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、修飾キメラGLP-1核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターをコードする単離された修飾キメラGLP-1核酸配列を含む組換え発現ベクター;(b)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(c)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたヒト細胞もまた提供される。前記のヒト細胞はグルコース調節的にフューリンを発現するように操作され、それによって、(a)同時発現させた、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位をコードする単離された修飾キメラGLP-1核酸配列のフューリン切断部位でのグルコース応答性の切断による活性GLP-1(7-37)の産生ばかりでなく、(b)ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位でのプロインスリンのフューリン切断によるインスリンの同時発現が可能となる。前記細胞は、グルコース依存的にGLP-1(7-37)およびインスリンを産生し、本明細書においては、“グルコース調節性”または“グルコース依存性”GLP-1産生細胞と呼ぶ。本明細書においては、この細胞を、グルコース調節性GLP-1およびインスリン同時産生細胞またはグルコース依存性GLP-1およびインスリン同時産生細胞とも呼ぶ。一実施形態において、修飾キメラ核酸配列は配列番号8で示される。別の実施形態において、コードされるGLP-1は配列番号10で示されるGLP-1(7-36)であることができ、この修飾キメラ核酸配列は、配列番号8よりもコドンGGA1つ少ない。すなわち、それは、GLP-1(7-37)で見られるアミノ酸残基37であるグリシンをコードしない。
【0075】
実施例4に記載されているように、ヒト細胞がグルコース調節的にGLP-1を産生するように操作された。グルコース応答性インスリン分泌細胞(GRIS)、すなわちGRISクローンは、2003年2月13日に公開された米国特許出願第2003/003214号(現在米国特許第7,045,346号)(参照によりその全体が本願に組み込まれる)記載のベクターで安定的にトランスフェクトされたU2OS細胞由来である。安定的にトランスフェクトされた親U2OS細胞は、フューリン切断可能プロインスリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターの調節下にあるヒトフューリンをコードする核酸配列を有するベクターを含み、フューリンを産生し、これがプロインスリンを切断してグルコース依存的にインスリンを産生する。
【0076】
GRIS細胞をGLP cDNAで安定的にトランスフェクトした。DPPIV阻害薬の存在下および非存在下、高または低グルコースの存在下で、GLP-1産生に関してクローンを試験した。図13に示されるように、天然GLP-1をコードする核酸を含む構築物およびヒトフューリンをコードする核酸を有する構築物で安定的に同時トランスフェクトしたGRIS細胞は、対照U2OS細胞と比較して、RIN-5F細胞によるインスリン産生を増加させた。この新規なGLP-1産生細胞株を作成するために親U2OSを使用したが、これらのGLP-1産生GRIS細胞はインスリンをコードしない。
【0077】
図14は、最適化GLP-1構築物で安定的にトランスフェクトされた2つのクローン、4-17および5-4からのグルコース誘導性GLP-1産生を示す図である。アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から公に入手可能なU2OS細胞由来のグルコース応答性インスリン分泌細胞(GRIS細胞)にGLP-1構築物をトランスフェクトした。グルコース調節性TGF-αプロモーターの調節下にあるヒトフューリンを発現するベクターで安定的にトランスフェクトされたGRIS細胞は、高グルコースの存在下でGLP-1を同時発現する(すなわち、GLP-1キメラ構築物がフューリン切断部位でフューリンにより切断されるとき)。低グルコースと共にインキュベートしたクローンと比較して、高グルコースの存在下ではクローンにおけるGLP-1産生は高かった。2つのクローン、4-17および5-4はGRIS細胞の子孫である。
【0078】
本明細書に記載のヒト細胞のいずれかの好ましい実施形態において、ヒト細胞は、293T、HeLa、SHP77またはU2OS細胞であることができる。
【0079】
293T細胞をGLP-1構築物で一過性にトランスフェクトし、GLP-1産生量を測定した。図7に、一過性にトランスフェクトされた293T細胞において、GLP-1構築物BI-1.2(最適化)および11.11(天然)を用いて産生された活性および全GLP-1量(pM)を示す。最適化GLP-1でトランスフェクトされた細胞は、天然GLP-1でトランスフェクトされた細胞よりも多量のGLP-1を産生した。
【0080】
図8の棒グラフに示すように、Ala2の部位でGLP-1を切断するペプチダーゼの阻害薬であるDPPIV阻害薬の存在下で、一過性にトランスフェクトされた細胞をインキュベートしたとき、阻害薬の非存在下よりも、より分解の抑制が強かった。
【0081】
本発明は、(a)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクターまたは(b)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクターで単離されたヒト細胞を安定的にトランスフェクトすることにより、単離されたヒト細胞においてヒトGLP-1を構成的に産生する方法を提供する。ヒトGLP-1を構成的に産生する方法の別の実施形態において、組換え発現ベクターは、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-36)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-36)間のフューリン切断部位およびGLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む。この実施形態において、修飾キメラ核酸配列は配列番号8で示される配列よりも短い。すなわち、この配列は、GLP-1(7-37)に見られる最後のグリシン(残基37)をコードするコドンGGAを欠き、コードされるGLP-1は配列番号10の配列を有する。さらなる代替実施形態において、組換え発現ベクターは、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-36)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-36)間のフューリン切断部位およびGLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む。この後者の実施形態において、単離されたキメラ核酸配列は配列番号6で示される配列よりも短い。すなわち、この配列は、コドンGGAを欠き、GLP-1(7-37)に見られるグリシン(残基37)をコードしない。
【0082】
本発明はまた、単離されたヒト細胞においてグルコース依存的にヒトGLP-1およびインスリンを産生する方法であって、(a)単離されたヒト細胞を、(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトし;(b)グルコース濃度が周囲のグルコース濃度より高いグルコースで前記細胞を刺激することを含む前記方法を提供する。別の実施形態において、修飾キメラ核酸配列は、コドンGGAを欠くことにより配列番号8で示される配列よりも短く、GLP-1(7-37)に見られるグリシン(残基37)をコードしない。他の実施形態において、コードされるGLP-1は配列番号10で示されるGLP-1(7-36)である。
【0083】
本発明はさらに、単離されたヒト細胞においてグルコース依存的にヒトGLP-1およびインスリンを産生する方法であって、(a)単離されたヒト細胞を、(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、単離されたキメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリンであって、プロインスリンリーダー配列、インスリン配列およびヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位で構成される前記プロインスリンならびにプロインスリンをコードする核酸配列の発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトし;(b)グルコース濃度が周囲のグルコース濃度より高いグルコースで前記細胞を刺激することを含む前記方法を提供する。別の実施形態において、キメラ核酸配列は、コドンGGAを欠くことにより配列番号6で示される配列よりも短く、GLP-1(7-37)に見られるグリシン(残基37)をコードしない。他の実施形態において、コードされるGLP-1は配列番号10で示されるGLP-1(7-36)である。
【0084】
GLP-1を産生するか、またはGLP-1およびインスリンを同時発現するための上記の発現ベクターでトランスフェクトすることができる細胞の例は、293T、HeLa、SHP77またはU2OS細胞などのヒト細胞である。
【0085】
実施例3に記載されているように、GLP-1 cDNAでヒト骨肉腫細胞株U2OSを安定的にトランスフェクトした。DPPIV阻害薬の存在下または非存在下で、トランスフェクトされた細胞のGLP-1を産生する能力を試験した。図9に示すように、DPPIVは活性GLP-1の分解を阻害し、最適化および天然GLP-1構築物でトランスフェクトされた細胞により同等量のGLP-1が産生された。
【0086】
図10は、ラット膵島腫瘍細胞であるRIN-5F細胞によるグルコース誘導性インスリン産生を示す。グルコースに応答して用量依存的により高濃度のラットインスリンが産生された。実施例5に記載されているように、GLP-1ペプチド、GLP-1でトランスフェクトされた細胞(GLP-1(7-37)もしくはGLP-1(7-36)アミドからの上清または種々の濃度の外因的に添加されたグルコースの存在下もしくは非存在下での対照上清でRIN-5F細胞を培養した。24時間インスリンを産生させた後、これらの培養物からの上清を採取した。図11に示すように、外因的に添加された10mMのグルコースの存在下でGLP-(7-37)またはGLP-1(7-36)アミドのいずれかで処理したとき、グルコースなしのGLP-1(7-36)またはグルコース単独での培地で培養した細胞と比較して、RIN-5F細胞において、ラットインスリンの産生が劇的に増加した。図12は、種々のグルコース濃度でのGLP-1のインスリン分泌促進作用を示す。より高いグルコース濃度において、インスリン産生の増加が見られた。
【0087】
ヒトGLP-1を産生する上記の方法のいずれかの好ましい実施形態において、II型糖尿病を有する被験者にトランスフェクトされたヒト細胞が移植される。他の好ましい実施形態において、トランスフェクトされたヒト細胞は免疫隔離デバイスに入れて被験者に移植されるが、ここで被験者は、高血糖を起こしやすいか、または高血糖を起こしている被験者であり、非糖尿病過体重被験者、非糖尿病肥満被験者または前糖尿病被験者である。前述の実施形態のいずれかにおいて、移植細胞は生体適合性免疫隔離デバイスに入れられている。
【0088】
図15は、操作された細胞によるGLP-1の産生を示す。GLP-1構築物をU2O-25細胞にトランスフェクトし、TheraCyte(登録商標)デバイス内で、in vitroでトランスフェクトされた細胞を増殖させた。トランスフェクトされた細胞のすべては、少なくともGLP-1を8週間産生し、3つの異なる濃度の細胞は、GLP-1を10週間産生した。これらの実験は、免疫隔離デバイス内で移植されたGLP-1を産生する操作された細胞の生存性および機能性を裏付けている。
【0089】
本発明の他の実施形態において、II型糖尿病被験者を治療する方法であって、被験者に、免疫隔離デバイスであって、(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、修飾キメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクター;(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含む前記デバイスを移植することを含む前記方法において、単離された安定的にトランスフェクトされた細胞が、被験者の血液中のグルコース濃度での刺激により、治療的有効量のGLP-1およびインスリンをグルコース依存的にGLP-1発現し、刺激グルコース濃度が周囲のグルコース濃度よりも高い前記方法が提供される。本治療方法の別の実施形態において、配列番号10で示されるGLP-1(7-36)は、単離された修飾キメラ核酸配列によりコードされ、上記の発現ベクターにより産生される。代替実施形態において、単離された修飾キメラ核酸配列は、コドンGGAを欠くことにより、配列番号8で示される配列よりも短く、GLP-1(7-37)に見られるグリシン(残基37)をコードしない。
【0090】
本発明のさらなる実施形態は、II型糖尿病被験者を治療する方法であって、被験者に、免疫隔離デバイスであって、(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、キメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクター;(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含む前記デバイスを移植することを含む前記方法において、単離された安定的にトランスフェクトされた細胞が、被験者の血液中のグルコース濃度での刺激により、治療的有効量のGLP-1およびインスリンをグルコース依存的にGLP-1発現し、刺激グルコース濃度が周囲のグルコース濃度よりも高い前記方法である。本治療方法の他の実施形態において、配列番号10で示されるGLP-1(7-36)は、単離されたキメラ核酸配列によりコードされ、上記の発現ベクターにより産生される。代替実施形態において、単離されたキメラ核酸配列は、コドンGGAを欠くことにより配列番号6で示される配列よりも短く、GLP-1(7-37)に見られるグリシン(残基37)をコードしない。
【0091】
本発明のさらなる実施形態は、高血糖を起こしやすいか、または高血糖を起こしている被験者を治療する方法であって、被験者に、免疫隔離デバイスであって、(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含む前記デバイスを移植することを含む前記方法において、単離された安定的にトランスフェクトされた細胞が、被験者の血液中のグルコース濃度での刺激により、治療的有効量のGLP-1およびインスリンをグルコース依存的に発現し、刺激グルコース濃度が周囲のグルコース濃度よりも高く、それによってグルコースの血中濃度を低下させる前記方法である。
【0092】
あるいは、本発明は、高血糖を起こしやすいか、または高血糖を起こしている被験者を治療する方法であって、被験者に、免疫隔離デバイスであって、(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、キメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含む前記デバイスを移植することを含む前記方法において、単離された安定的にトランスフェクトされたヒト細胞が、被験者の血液中のグルコース濃度での刺激により、治療的有効量のGLP-1およびインスリンをグルコース依存的にGLP-1発現し、刺激グルコース濃度が周囲のグルコース濃度よりも高く、それによってグルコースの血中濃度を低下させる前記方法を提供する。
【0093】
高血糖を起こしやすいか、または高血糖を起こしている上記の被験者の治療方法の他の実施形態において、それぞれの組換え発現ベクターは、配列番号10で示されるGLP-1(7-36)をコードし、GLP-1(7-36)を産生する単離された修飾キメラ核酸配列を含むか、または前記組換え発現ベクターはGLP-1(7-36)をコードする単離されたキメラ核酸配列を含む。これらの代替実施形態の1つにおいて、GLP-1(7-36)は、配列番号8よりも短い、すなわちコドンGGAを欠き、GLP-1(7-37)におけるこのコドンによりコードされるグリシン(残基37)をコードしない単離された修飾キメラ核酸配列によりコードされる。これらの代替実施形態のもう1つにおいて、GLP-1(7-36)は、配列番号6よりも短い、すなわち、コドンGGAを欠き、GLP-1(7-37)に見られるグリシン(残基37)を欠くペプチドを発現する単離されたキメラ核酸配列によりコードされる。
【0094】
他の実施形態において、被験者の体重を減少させる方法であって、被験者に免疫隔離デバイスを移植することを含む前記方法において、前記デバイスが(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含み、単離された安定的にトランスフェクトされたヒト細胞が、被験者の血液中のグルコース濃度での刺激により、治療的有効量のGLP-1およびインスリンをグルコース依存的に発現し、刺激グルコース濃度が周囲のグルコース濃度よりも高く、GLP-1およびインスリンの発現が被験者の体重を減少させる前記方法が提供される。他の実施形態において、組換え発現ベクターは、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-36)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-36)間のフューリン切断部位および、GLP-1(7-36)をコードする核酸配列の構成発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む。すなわち、この核酸配列はグリシン(GLP-1(7-37)における残基37)をコードするコドンGGAを欠くことにより配列番号8よりも短く、コードされるGLP-1は配列番号10で示されるGLP-1(7-36)である。
【0095】
本明細書において、被験者の体重を減少させる方法であって、を含む前記方法において、前記デバイスが、(i)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、キメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含み、単離された安定的にトランスフェクトされたヒト細胞が、被験者の血液中のグルコース濃度での刺激により、治療的有効量のGLP-1およびインスリンをグルコース依存的に発現し、刺激グルコース濃度が周囲のグルコース濃度よりも高く、GLP-1およびインスリンの発現が被験者の体重を減少させる前記方法が提供される。他の実施形態において、組換え発現ベクターは、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-36)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-36)間のフューリン切断部位および、GLP-1(7-36)をコードする核酸配列の構成発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む。すなわち、この核酸配列は、グリシン(GLP-1(7-37)における残基37)をコードするコドンGGAを欠くことにより配列番号6よりも短く、コードされるGLP-1は配列番号10で示されるGLP-1(7-36)である。
【0096】
本発明の他の実施形態において、II型糖尿病被験者を治療する方法、高血糖を起こしやすいか、または高血糖を起こしている被験者を治療する方法および被験者の体重を減少させる方法であって、被験者に、構成的GLP-1産生細胞を含む免疫隔離デバイスを移植することを含む前記方法が提供される。この細胞は、GLP-1の治療的有効量を構成的に産生する。
【0097】
一実施形態において、II型糖尿病被験者を治療する方法であって、被験者に免疫隔離デバイスを移植することを含む前記方法において、前記デバイスが、(a)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクターまたは(b)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、キメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含み、前記細胞が内因性フューリンを産生する前記方法が提供される。さらなる代替実施形態において、発現されるGLP-1は、GLP-1(7-37)であるよりもGLP-1(7-36)であるほうがよい。それぞれの代替実施形態において、グリシン(GLP-1(7-37)における残基37)をコードするコドンGGAを欠くことにより、それぞれ、修飾キメラ核酸配列は配列番号8よりも短く、キメラ核酸配列の配列は配列番号6よりも短い。従って、コードされるGLP-1は配列番号10で示されるGLP-1(7-36)である。
【0098】
他の実施形態において、本発明は、高血糖を起こしやすいか、または高血糖を起こしている被験者を治療する方法であって、被験者に免疫隔離デバイスを移植することを含む前記方法において、前記デバイスが、(a)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクターまたは(b)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、キメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含み、前記細胞が内因性フューリンを産生する前記方法を提供する。他の実施形態において、GLP-1は、GLP-1(7-37)であるよりもGLP-1(7-36)であるほうがよい。前記それぞれの代替実施形態において、それぞれ、グリシン(GLP-1(7-37)における残基37)をコードするコドンGGAを欠くことにより、修飾キメラ核酸配列は配列番号8よりも短く、キメラ核酸配列は配列番号6よりも短い。従って、コードされるGLP-1は配列番号10で示されるGLP-1(7-36)である。
【0099】
本発明の他の実施形態において、被験者の体重を減少させる方法であって、被験者に免疫隔離デバイスを移植することを含む前記方法において、前記デバイスが、(a)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクターまたは(b)ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、キメラ核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含み、前記細胞が内因性フューリンを産生する前記方法が提供される。他の実施形態において、GLP-1は、GLP-1(7-37)であるよりもGLP-1(7-36)であるほうがよい。それぞれの代替実施形態において、それぞれ、グリシン(GLP-1(7-37)における残基37)をコードするコドンGGAを欠くことにより、修飾キメラ核酸配列は配列番号8よりも短く、キメラ核酸配列は配列番号6よりも短い。従って、コードされるGLP-1は配列番号10で示されるGLP-1(7-36)である。インスリン産生の効果は、被験者の体重の減少である。
【0100】
II型糖尿病治療する上記の方法の実施形態において、(a)治療食、(b)メトホルミン、スルホニル尿素もしくはエキセナチドまたは(c)それらの組み合わせと同時にII型糖尿病被験者を治療することができる。高血糖を有する非糖尿病被験者の治療方法の実施形態において、被験者は過体重被験者、非糖尿病肥満被験者または前糖尿病であることができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】プレプログルカゴンおよびその主要タンパク質分解フラグメントを示す図である。GLP-1は、プレプログルカゴンのタンパク質分解フラグメントとして消化管L細胞から分泌される。膵臓α細胞内で、プレプログルカゴンは、3つと2つの主要フラグメントに切断される。すなわち、GRPP(グリセンチン関連ポリペプチド)、グルカゴンおよびMPF(主要プログルカゴンフラグメント)である。他方では、消化管L細胞においては、切断産物は異なり、グリセンチン、GLP-1、GLP-2およびオキシントモジュリンを含む。位置78にある単一のアルギニン残基部位でのタンパク質切断によりGLP-1の活性形が生成する。
【図2】活性GLP-1ペプチドのアミノ酸配列を示す図である。強調表示された残基は、GLP-1のインスリン分泌促進作用に必要である。
【図3】GLP-1のクローニング戦略の概略図である。
【図4】天然GLP-1構築物のベクターマップである。
【図5】ヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)をコードする修飾ヌクレオチド配列を含むGLP-1構築物のベクターマップである。
【図6】天然(GLP-1-11.11)および修飾(GLP-1BI1.2)GLP-1構築物の配列のアラインメントを示す図である。各配列のアミノ酸残基の上部または下部の数値は、個々のコドンが用いられる割合を示す(参照:コドン使用頻度データベース(www.kazusa.or.jp/codon/))。より高頻度のコドン使用頻度割合が強調表示されている。
【図7】一過性にトランスフェクトされた293T細胞により産生される活性および全GLP-1を示す図である。活性GLP-1はELISAにより検出し、全GLP-1はラジオイムノアッセイ(LINCO Diagnostic社)により検出した。修飾GLP-1構築物でトランスフェクトされた細胞は、天然GLP-1構築物でトランスフェクトされた細胞よりも多量のGLP-1を産生した。
【図8】DPPIV阻害薬の存在下での、一過性にトランスフェクトされた293T細胞による活性GLP-1産生を示す図である。DPPIV阻害薬は、トランスフェクトされた細胞により産生される活性GLP-1ペプチドの分解を阻害した。
【図9】DPPIV阻害薬の存在下または非存在下での、一過性にトランスフェクトされたU2OS細胞における活性GLP-1産生を示す図である。DPPIV阻害薬は、トランスフェクトされた細胞により産生される活性GLP-1ペプチドの分解を阻害した。修飾GLP-1または天然GLP-1構築物でトランスフェクトされた細胞は、同等量のGLP-1を産生した。
【図10】RIN-5F細胞によるグルコース誘導性インスリン産生を示すグラフである。RIN-5F細胞は、グルコースに応答して、用量依存的により高濃度のインスリンを産生した。
【図11】RIN-5F細胞に対するGLP-1のインスリン分泌促進作用を示す図である。GLP-1は、RIN-5F細胞において、グルコース誘導性インスリン産生を増加させた。
【図12】種々のグルコース濃度でのGLP-1のインスリン分泌促進作用を示す図である。より高いグルコース濃度で、インスリン産生増加はより顕著である。
【図13】操作された細胞により分泌されるGLP-1のインスリン分泌促進作用を示す図である。天然GLP-1構築物およびヒトフューリンで安定的に同時トランスフェクトした、U2OS細胞由来のGLP-1産生U2OS-25クローン(任意名称である)からの上清は、RIN5F細胞によるインスリン産生を増加させた。
【図14】修飾GLP-1構築物で安定的にトランスフェクトされた、4-17および5-4(任意名称である)と呼ぶ2つのクローンからのグルコース誘導性GLP-1産生を示す図である。修飾GLP-1構築物は、U2OS細胞由来のグルコース応答性インスリン分泌細胞(GRIS細胞)に安定的にトランスフェクトされている(U2OSは、発現がグルコース調節性TGF-αプロモーターの調節下にある、ヒトプロインスリンをコードするヌクレオチド配列を含む構築物およびヒトフューリンをコードする第2構築物で安定的にトランスフェクトされている)。修飾GLP-1構築物でトランスフェクトされたU2OS由来GRIS細胞は新規GLP-1産生細胞株である。このGLP-1産生細胞はインスリンをコードしない。修飾GLP-1構築物は、フューリン切断部位を含む最適化核酸プロインスリンリーダー配列およびGLP-1核酸配列を含む。最適化配列の発現はCMVプロモーターにより駆動される。ヒトフューリンをコードする構築物は、グルコース調節性TGF-αプロモーターの調節下にある。グルコースはフューリンの発現を活性化し、フューリンはフューリン切断部位で最適化核酸配列を切断し、それによってコードされるGLP-1を産生する。高グルコース濃度の存在は、低グルコース濃度の存在下で発現されるGLP-1の量と比較して、両方のクローンにおいて、より多量のGLP-1産生を誘導した。
【図15】TheraCyte(登録商標)デバイス中、in vitroで10週間増殖させた操作された細胞によるGLP-1の構成的産生を示すグラフである。
【実施例】
【0102】
実施例1
GLP-1構築物
遺伝子組換え細胞から分泌GLP-1の生物活性形を得るために、以下の戦略を用いてGLP-1核酸構築物を製造する。活性GLP-1(7-37)ペプチドは31残基で構成される。よって、好都合には、これらの残基に対応するヌクレオチド配列を半分に分割して、2つの異なるフラグメントを製造する。すなわち、図3-Bに示すN末端およびC末端フラグメントである。下記の修飾を用いて、これらのアミノ酸に対応する相補的オリゴヌクレオチドを合成する。これらのオリゴヌクレオチドの配列を、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4に示す。
【0103】
アミノ酸配列を変えずに、分割部位にXhoI制限部位を付加する。図3-BおよびCに示すように、N末端フラグメントの5’末端に、フューリン切断部位(RQK’R)およびコザック配列およびNheI制限部位のオーバーハングに対応する塩基を付加する。図3-BおよびCに示すように、C末端フラグメントの3’末端に、BamHIのオーバーハングに対応する塩基を付加する。すべてのオリゴヌクレオチドは、5’末端でリン酸化されている。
【0104】
N末端およびC末端フラグメントの相補的オリゴヌクレオチドをアニーリングさせ、N末端フラグメントにはNheIおよびXhoIクローニング部位を用い、C末端フラグメントにはXhoIおよびBamHI部位を用いてpCDNA3.1発現ベクターに別々にサブクローニングする。
【0105】
XhoIおよびBamHIを用いてC末端フラグメントを切り取り、図3-Cに示すように、これらの同じ制限部位を用いてN末端フラグメントの下流にサブクローニングする。
【0106】
ヒトプロインスリンリーダー配列をPCR増幅し、図3-Dに示すように、フューリン切断部位のすぐ上流にサブクローニングする。キメラタンパク質ならびにプロインスリンリーダー配列、フューリン切断部位および天然GLP-1を含む前記キメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、それぞれ配列番号5および配列番号6に示す。このキメラ核酸構築物のベクターマップを図4に示す。
【0107】
コドン使用頻度によるプロインスリンリーダー/GLP-1配列の修飾
ヒトプロインスリンリーダー配列、フューリン切断部位およびGLP-1配列を含むキメラタンパク質配列(配列番号7)を、修飾ヌクレオチド配列(配列番号8)の合成に用いる。これは、修飾キメラ“ヒトプロインスリンリーダー-フューリン切断部位-GLP-1”配列(配列番号7)をコードする。この修飾ヌクレオチド配列は、販売元により合成される。例えば、配列番号8の修飾核酸配列は、Aptagen社と呼ばれる会社によって製造された。Aptagen社は、コドン使用頻度に基づく自身のアルゴリズムを用いてこの配列に到達した。図5に示すように、プロインスリンリーダー/フューリン切断部位/GLP-1をコードする修飾ヌクレオチド配列を、pCIneo真核発現ベクターにサブクローニングした。
【0108】
図6に、天然GLP-1を含むキメラヌクレオチド配列(上部)および最適化GLP-1配列を含むキメラヌクレオチド配列(下部)の配列のアラインメントならびにそれぞれコードされるアミノ酸配列を示す。修飾キメラ核酸配列、すなわち各アミノ酸残基に対応したコドンがアルゴリズムプログラムに基づく好ましいコドンである修飾キメラ核酸配列は、フューリン切断部位の上流のアミノ酸LLATMG[配列番号5における]が除去された、プロインスリンリーダー/フューリン切断部位/GLP-1の修飾キメラアミノ酸配列をコードする。
【0109】
実施例2
一過性にトランスフェクトされた細胞において分泌されるGLP-1の評価
種々のヒト細胞株(293T、HeLa、SHP77、U2OS)をGLP-1構築物で一過性にトランスフェクトし、培地へのGLP-1の産生を評価する。トランスフェクションは以下のように行う。
【0110】
2.5X105細胞/60mm皿で培地4.0mlに細胞をプレーティングする。終夜細胞を接着させる。終夜培養後、細胞は40〜60%集密的になる。細胞から培地を除き、プレートに1.5ml残るようにする。
【0111】
滅菌マイクロチューブにDNA 1μgを加え、全部でDNA縮合緩衝液を150μlにする(EC緩衝液、Effecteneトランスフェクションキット(Qiagen社))。DNA/EC緩衝液にエンハンサー溶液(enhancer solution)(8μl l)を加え、1秒間ボルテックスし、室温で2〜5分間インキュベートする。各チューブにEffectene 25μlを加え、10秒間ボルテックスする。各チューブを室温で5〜10分間そのままにする。このトランスフェクション混合物を培地1.0mlで希釈し、細胞上に滴下する。皿を回転させ、細胞を37℃/5%CO2に戻す。4時間目に複合体、すなわちトランスフェクトされた細胞を除き、この細胞に新鮮培地2.0mlを与える。24時間目に上清を採取し、48時間目にGLP-1分泌を評価する。活性GLP-1は、活性GLP-1 ELISAキット(LINCO Diagnostic Services社)を用いて測定し、全GLP-1はラジオイムノアッセイ(LINCO Diagnostic Services社)により検出する。
【0112】
図7は、一過性にトランスフェクトされた293T細胞が産生する活性および全GLP-1量を示す。修飾GLP-1構築物(GLP-1 BI-1.2)でトランスフェクトされた細胞は、天然GLP-1構築物(GLP-1 11.11)でトランスフェクトされた細胞よりも多量のGLP-1を産生する。
【0113】
DPPIV阻害薬の存在下で、活性GLP-1の産生に関して一過性にトランスフェクトされた293T細胞を試験する。図8は、天然GLP-1(GLP-1 11.11)または修飾GLP-1構築物(GLP-1 I-1.2)のいずれかでトランスフェクトされた細胞により産生される活性GLP-1ペプチドの分解をDPPIV阻害薬が阻害することを示す。修飾構築物でトランスフェクトされた細胞は、天然GLP-1構築物でトランスフェクトされた細胞よりも、DPPIV阻害薬の有り無しでより多くの活性GLP-1を産生する。
【0114】
実施例3
GLP-1を産生するヒトU2OS細胞の操作
以下のプロトコルを用いて、ATCCから入手できるヒト骨肉腫細胞株U2OSをGLP-1 cDNAで安定的にトランスフェクトする。ベクターをBglIIで線状化する。ヒトフューリンを発現するpCDNA-huフューリンで細胞を同時トランスフェクトする。pCDNA-huフューリンは、MfeIを用いて線状化する。前日に、プレート当たり2.5X105個のU2OS細胞を10cmプレートに播種する。リン酸カルシウム(Promega社)を用いて細胞をトランスフェクトする。
【0115】
トランスフェクションの3日後、培地に1000μg/mlジェネティシンを添加する。コロニーが明確になれば、細胞を6ウェルプレートに広げ、活性GLP-1 ELISAキット(Linco Diagnostic Services社)によりGLP-1の発現を試験する。1細胞/ウェルでの限界希釈により、高濃度のGLP-1を産生する細胞集団をさらにクローニングする。DPPIV阻害薬の存在下および非存在下でクローンのGLP-1を産生する能力を試験する。
【0116】
DPPIV阻害薬の存在下または非存在下での、天然GLP-1または修飾GLP-1で一過性にトランスフェクトされたU2OS細胞における活性GLP-1の産生(実施例2参照)を図9に示す。DPPIV阻害薬は、天然GLP-1でトランスフェクトされた細胞および修飾GLP-1でトランスフェクトされた細胞の両方により産生される活性GLP-1ペプチドの分解を阻害する。修飾または天然GLP-1構築物でトランスフェクトされた細胞は同等量のGLP-1を産生する。
【0117】
実施例4
グルコース調節性産生のGLP-1を産生するヒト細胞の操作
グルコース応答性インスリン分泌細胞(GRIS細胞)をGLP-1 cDNAで安定的にトランスフェクトすることにより細胞を作成する。GRIS細胞クローン4-17および5-4を図14に示す。GRIS細胞は、もともと、2003年2月13日に公開された米国特許出願第2003/003214号(現在米国特許第7,045,346号)(参照によりその全体が本願に組み込まれる)に記載されている方法により、グルコース調節性TGF-αプロモーターの調節下にあるプロインスリンおよびヒトフューリンでの安定なトランスフェクションによりU2OS細胞から誘導された。このU2OS細胞は、ネオマイシンおよびハイグロマイシン耐性である。従って、上記で製造されたGLP-1構築物は、GLP-1産生細胞の選択マーカーとしてゼオシンを用いるpCDNA3.1-Zeoベクターにサブクローニングされる。pCDNA3.1(-)ZeoでのGRIS細胞の安定なトランスフェクションのために、以下のプロトコルを用いる。
【0118】
PvuIでこのベクターを線状化する。非線状化ベクターを用いてトランスフェクションを行うこともできる。10cmプレートにプレート当たり2x106、4x106、6x106、8x106または106個のGRIS細胞を播種する。リン酸カルシウム(Promega社)を用いてこの細胞をトランスフェクトする。
【0119】
トランスフェクションの2日後、培地に100μg/mlゼオシン(他の薬剤を用いないで)を添加し、1週間後に200μg/μlゼオシンに増加させる。コロニーが明確になれば、細胞を広げ、活性GLP-1 ELISAキット(Linco Diagnostic Services社)によりGLP-1の発現を試験する。限界希釈により、高濃度のGLP-1を産生する集団をさらにクローニングする。DPPIV阻害薬の存在下または非存在下、高または低グルコースの存在下でクローンのGLP-1産生を試験する。
【0120】
DPPIV阻害薬の存在下または非存在下での、天然GLP-1構築物で一過性にトランスフェクトされた細胞と比較しての、修飾GLP-1構築物で一過性にトランスフェクトされたU2OS細胞における活性GLP-1の産生を図9に示す。活性GLP-1ペプチドの分解は、天然GLP-1-構築物でトランスフェクトされた細胞および修飾GLP-1-構築物でトランスフェクトされた細胞の両方においてDPPIV阻害薬により阻害される。修飾または天然GLP-1構築物のいずれかで一過性にトランスフェクトされた細胞は、同等量のGLP-1を産生する。
【0121】
2つのGRIS細胞クローン、すなわち4-17および5-4(これらは共に本明細書に記載の修飾GLP-1構築物で安定的にトランスフェクトされている)によるグルコース誘導性GLP-1産生を図14に示す。低グルコース濃度でインキュベートしたときよりも高グルコース濃度でインキュベートしたときのほうがより多量のGLP-1を発現することで例証されるように、2つのクローンともグルコース調節的にGLP1を発現し分泌する。
【0122】
実施例5
RIN-5F細胞によるインスリン産生に対するGLP-1のインスリン分泌促進作用
6ウェルプレートに5X105/ウェルで完全培地5mlに(または24ウェルプレートに1X105/ウェルで完全培地2mlに)RIN-5F細胞をプレーティングし、終夜培養してウェルに接着させる。完全培地を無グルコース培地(無グルコースRPMI+10%透析FBS)2mlと置換する。無グルコース培地中、37℃で少なくとも6時間細胞をインキュベートする。無グルコース培地で細胞を1回洗浄する。培養物に無グルコースRPMI+10%透析FBSを与え、さらにGLP-1ペプチド、GLP-1(7-37)でトランスフェクトされた細胞およびGLP-1(7-36)アミドでトランスフェクトされた細胞からの上清または種々の濃度の外因的に添加されたグルコースの存在下もしくは非存在下での対照上清を添加する。最終容量を2mlに調節する。24時間後、ラットインスリンの産生に関して、これらの培養物からの上清を採取する。
【0123】
図10は、RIN-5F細胞によるグルコース誘導性インスリン産生を示す。このインスリン産生は一般に用量依存的である。すなわち、より高いグルコース濃度において、より多くのインスリンが産生される。
【0124】
図11は、以下のインキュベーション条件:無グルコース(GF)培地、GLP-1(7-36)アミド、グルコース、グルコース+GLP-1(7-36)アミドおよびグルコース+GLP-1(7-36)での、RIN-5F細胞に対する商業的に入手したGLP-1のインスリン分泌促進作用を示す。高グルコース(10mM)の存在下で、GLP-1は、(7-36)アミドまたは(7-37)のいずれも、RIN-5F細胞において、GLP(7-36)アミドまたはグルコース単独での培地を与えたRIN-5F細胞により産生されるインスリン量よりも顕著にグルコース誘導性インスリン産生を増加させる。
【0125】
図12は、GLP-1(7-37)の有り無しでの、種々のグルコース濃度におけるRIN-5F細胞によるラットインスリン産生を示すグラフである。市販のGLP-1(7-37)は、インスリン分泌促進作用を示す。
【0126】
種々の濃度のグルコースおよび固定濃度1μg/mlのGLP-1(7-37)の存在下でラットRIN-5F細胞のインスリン産生を試験する。GLP-1単独(グルコースなし)では、RIN5F細胞によるインスリン産生を少し誘導したが、これは低グルコース(1mM)では変化しなかった。高グルコース濃度(5および10mM)では、GLP-1のインスリン分泌促進作用が観察される。
【0127】
本発明の教示から逸脱することのない修飾、改変および置換が当業者により考えられ期待されることは理解されなければならない。よって、以下の特許請求の範囲は、広くかつ本発明の趣旨と範囲に合致する方法で解釈されることが適切である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)およびヒトプロインスリンリーダーとGLP-1間のフューリン切断部位をコードする単離されたキメラGLP-1核酸。
【請求項2】
配列が配列番号6で示される単離されたキメラヌクレオチド配列であって、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)およびヒトプロインスリンリーダーとGLP-1間のフューリン切断部位をコードする前記キメラヌクレオチド配列において、アミノ酸配列LLATMGをコードするヌクレオチドが、N1-N18からなる群から選択されるヌクレオチドにより置換され、Nのそれぞれが、GCA/C/G/T、AAC/T、GAC/T、TGC/T、GAC/T、GAA/G、TTC/T、GGA/C/G/T、CAC/T、ATA/C/T、AAA/G、CTA/C/G/T、TTA/G、ATG、AAC/T、CCA/C/G/T、CAA/G、AGA/G、CGA/C/G/T、AGC/T、TCA/C/G/T、ACA/C/G/T、GTA/C/G/T、TGG、TAA/G、TGA、TAC/T、CAA/GおよびGAA/Gからなる群から選択されるコドンによりコードされる前記キメラヌクレオチド配列。
【請求項3】
配列が配列番号6で示される単離されたキメラヌクレオチド配列であって、ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)およびヒトプロインスリンリーダーとGLP-1間のフューリン切断部位をコードする前記キメラヌクレオチド配列。
【請求項4】
配列が配列番号11で示される、ヒトGLP-1であるGLP-1(7-37)をコードする単離された修飾核酸または配列番号11が最後のグリシン残基(G)をコードするコドンGGAを欠く、GLP-1(6-37)をコードする単離された修飾核酸。
【請求項5】
アミノ酸配列が配列番号5で示される単離されたキメラペプチド。
【請求項6】
アミノ酸配列が配列番号5から修飾される単離されたキメラペプチドであって、アミノ酸配列LLATMGがアミノ酸配列X1X2X3X4X5X6により置換され、X1、X2、X3、X4、X5およびX6のそれぞれがそれぞれA、R、N、D、C、E、Q、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、YおよびVからなる群から選択されるアミノ酸である前記単離されたキメラペプチド。
【請求項7】
ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された修飾キメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、修飾キメラ核酸配列が配列番号8で示される前記組換え発現ベクター。
【請求項8】
(a)請求項7記載の組換え発現ベクター、(b)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(c)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたヒト細胞。
【請求項9】
ヒトプロインスリンリーダー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)(7-37)、ヒトプロインスリンリーダーとGLP-1(7-37)間のフューリン切断部位および、GLP-1をコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離されたキメラ核酸配列を含む組換え発現ベクターであって、キメラ核酸配列が配列番号6で示される前記組換え発現ベクター。
【請求項10】
(a)請求項9記載の組換え発現ベクター、(b)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(c)プロインスリンであって、プロインスリンリーダー配列、インスリン配列およびヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位を有する前記プロインスリンならびにプロインスリンをコードする核酸配列の発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたヒト細胞。
【請求項11】
請求項9記載の組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたヒト細胞であって、内因的にフューリンを産生する前記ヒト細胞。
【請求項12】
ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする核酸配列をさらに含む請求項9記載の組換え発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記発現ベクター。
【請求項13】
単離されたヒト細胞において構成的にヒトGLP-1を産生する方法であって、内因性フューリンを産生する単離されたヒト細胞を請求項9記載の組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトすることを含む前記方法。
【請求項14】
単離されたヒト細胞においてグルコース依存的にヒトGLP-1およびインスリンを産生する方法であって、(a)単離されたヒト細胞を、(i)請求項9記載の組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトし;(b)グルコース濃度が周囲のグルコース濃度より高いグルコースで前記細胞を刺激することを含む前記方法。
【請求項15】
II型糖尿病被験者を治療する方法であって、被験者に、免疫隔離デバイスであって、(i)請求項9記載の組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含む前記デバイスを移植することを含む前記方法において、単離された安定的にトランスフェクトされたヒト細胞が、被験者の血液中のグルコース濃度での刺激により、治療的有効量のGLP-1およびインスリンをグルコース依存的にGLP-1発現し、刺激グルコース濃度が周囲のグルコース濃度よりも高い前記方法。
【請求項16】
高血糖を起こしやすいか、または高血糖を起こしている被験者を治療する方法であって、被験者に、免疫隔離デバイスであって、(i)請求項9記載の組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含む前記デバイスを移植することを含む前記方法において、単離された安定的にトランスフェクトされたヒト細胞が、被験者の血液中のグルコース濃度での刺激により、治療的有効量のGLP-1およびインスリンをグルコース依存的にGLP-1発現し、刺激グルコース濃度が周囲のグルコース濃度よりも高く、それによってグルコースの血中濃度を低下させる前記方法。
【請求項17】
被験者の体重を減少させる方法であって、を含む前記方法において、前記デバイスが、(i)請求項9記載の組換え発現ベクター、(ii)ヒトフューリンおよびグルコース調節性TGF-αプロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第2発現ベクターであって、前記プロモーターが、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列のグルコース調節的発現を亢進する前記第2発現ベクターならびに(iii)プロインスリン、ヒトプロインスリンリーダー配列とインスリン配列間のフューリン切断部位および、プロインスリンをコードする核酸配列の構成的発現を亢進する構成的プロモーターをコードする単離された核酸配列を含む第3発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含み、単離された安定的にトランスフェクトされたヒト細胞が、被験者の血液中のグルコース濃度での刺激により、治療的有効量のGLP-1およびインスリンをグルコース依存的に発現し、刺激グルコース濃度が周囲のグルコース濃度よりも高く、GLP-1およびインスリンの発現が被験者の体重を減少させる前記方法。
【請求項18】
II型糖尿病被験者を治療する方法であって、被験者に免疫隔離デバイスを移植することを含む前記方法において、前記デバイスが、請求項9記載の組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含み、前記細胞が内因性フューリンを産生する前記方法。
【請求項19】
高血糖を起こしやすいか、または高血糖を起こしている被験者を治療する方法であって、被験者に免疫隔離デバイスを移植することを含む前記方法において、前記デバイスが、請求項9記載の組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含み、前記細胞が内因性フューリンを産生する前記方法。
【請求項20】
被験者の体重を減少させる方法であって、被験者に免疫隔離デバイスを移植することを含む前記方法において、前記デバイスが、請求項9記載の組換え発現ベクターで安定的にトランスフェクトされた単離されたヒト細胞を含み、前記細胞が内因性フューリンを産生する前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−528614(P2010−528614A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510474(P2010−510474)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/065015
【国際公開番号】WO2008/150821
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】