説明

グルコシルヘスペリジン含有組成物

【課題】本発明は、グルコシルヘスペリジンを含有する製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性を向上する方法、及びグルコシルヘスペリジン含有製剤からのグリコシルヘスペリジンの溶出性を向上させるグルコシルヘスペリジン含有組成物を提供する。
【解決手段】グルコシルヘスペリジン及び水溶性賦形剤を含有する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性を向上する方法、及び製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性が向上した、グルコシルヘスペリジンを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘスペリジンは、みかんの皮に含まれるポリフェノールの1種であり、ビタミンPの1種としても知られ、その作用として毛細血管の強化作用、血中脂質の改善作用、血流改善作用、抗アレルギー作用、発癌抑制作用等を有する極めて有用な物質である(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
しかし、ヘスペリジンは難溶性のため消化管内で不溶化してしまい、体内で吸収されずに排出される可能性が高いという問題があった。これを解決するために、ヘスペリジンに糖を結合させたグルコシルヘスペリジンが開発、製造されている(例えば、特許文献1参照)。該グルコシルヘスペリジンは、従来のヘスペリジンに比べて、水への溶解性が10000倍以上も向上することや、小腸等消化管からの吸収性が約3倍向上することが知られている(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、グルコシルヘスペリジンを含有する製剤を水等に溶解した時のグルコシルヘスペリジンの溶出性は、まだ十分とは言えず、更なる改善が望まれている。
【0004】
これまでに、製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性を向上する方法や、製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性が向上した組成物は知られていないが、グルコシルヘスペリジンを含有する組成物として以下のものが知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、グルコシルヘスペリジン及びマルトースを含有する錠剤が開示されているが、本発明を示唆するものではない。
【0006】
また、特許文献2には、グルコシルヘスペリジン等の糖転移ビタミンP及びトレハロースを含有する錠剤が開示されているが、本発明を示唆するものではない。
【非特許文献1】江崎グリコ株式会社ホームページ、“素材豆知識”、[平成18年8月10日検索]、インターネット<http://www.ezaki−glico.net/sozai/index.html>
【非特許文献2】江崎グリコ株式会社ホームページ、“食品添加物 αGヘスペリジン”、[平成18年8月10日検索]、インターネット<http://www.ezaki−glico.net/material/hes_2.html>
【特許文献1】特許第3060227号明細書
【特許文献2】特開平11−255655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、グルコシルヘスペリジンを含有する製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性を向上する方法、及び製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性が向上した、グルコシルヘスペリジンを含有する組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、製剤中において、グルコシルヘスペリジンに水溶性賦形剤を配合することにより、グルコシルヘスペリジンを含有する製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性が格段に向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、
1.グルコシルヘスペリジン及び水溶性賦形剤を含有する組成物、
2.水溶性賦形剤がマルチトール、エリスリトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、乳糖、白糖及び還元乳糖からなる群より選ばれる1種又は2種以上である1に記載の組成物、
3.水溶性賦形剤が、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、乳糖、白糖及び還元乳糖からなる群より選ばれる1種又は2種以上である1に記載の組成物、
4.水溶性賦形剤が、エリスリトールである1に記載の組成物、
5.グルコシルヘスペリジンが、α−モノグルコシルヘスペリジンである1〜4のいずれか1に記載の組成物、
6.グルコシルヘスペリジンと水溶性賦形剤の配合比が、グルコシルヘスペリジン1重量部に対して、水溶性賦形剤0.1〜10重量部である1〜5のいずれか1に記載の組成物、
7.医薬用又は食品用である1〜6のいずれか1に記載の組成物、
8.剤形が経口製剤である1〜7のいずれか1に記載の組成物、
9.剤形が固形製剤又は半固形製剤である1〜8のいずれか1に記載の組成物、
10.剤形が錠剤である1〜9のいずれか1に記載の組成物、
11.グルコシルヘスペリジンを含有する製剤に、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、乳糖、白糖及び還元乳糖から選ばれる1種又は2種以上を配合することを特徴とする、グルコシルヘスペリジンを含有する製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性を向上する方法、
12.グルコシルヘスペリジンを含有する製剤に、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、乳糖、白糖及び還元乳糖からなる群より選ばれる1種又は2種以上を配合することを特徴とする、グルコシルヘスペリジンを含有する製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性を向上する方法、
13.グルコシルヘスペリジンを含有する製剤に、エリスリトールを配合することを特徴とする、グルコシルヘスペリジンを含有する製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性を向上する方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性を格段に向上させた。本発明の組成物を含有する製剤を服用又は摂取した場合、消化管における該製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性を向上させることができる。すなわち、製剤中に含まれるグルコシルヘスペリジンのうち、消化管中に放出されるグルコシルヘスペリジンの割合が高まるので、グルコシルヘスペリジンの体内への吸収が向上する。従って、本発明の組成物を含有する製剤を服用又は摂取することにより、グルコシルヘスペリジンの優れた薬理作用による望ましい効果をさらに高めることができる。
【0011】
以上より、本発明の組成物は、毛細血管の強化、血中脂質の改善、血流改善、アレルギー疾患の改善、発癌抑制、ビタミンP補充等を目的とした医薬用又は食品用として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るグルコシルヘスペリジンは、ヘスペリジンに糖を結合させた糖転移ヘスペリジンである。当該グルコシルヘスペリジンとしては、例えば、α−モノグルコシルヘスペリジン、α−ジグルコシルヘスペリジン、α−トリグルコシルヘスペリジン、α−テトラグルコシルヘスペリジン及びα−ペンタグルコシルヘスペリジン等を挙げることができる。本発明においては、α−モノグルコシルヘスペリジンが好ましい。これらのグルコシルヘスペリジンは、市販のものを用いてもよく、公知の方法(例えば特許文献1参照)を用いて製造したものを用いてもよい。市販のものとしては、例えば、(株)林原生物化学研究所から林原ヘスペリジン(登録商標)S(α−モノグルコシルヘスペリジンの含量として70%以上のもの)として購入できる。
【0013】
本発明に係る水溶性賦形剤としては、水に溶けやすい賦形剤であれば特に限定されるものではない。ここで「溶けやすい」とは、第15改正日本薬局方に記載された「溶けやすい」又は「極めて溶けやすい」に規定された溶解性をいう。本発明に係る水溶性賦形剤としては、例えば、マルチトール、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコール類、乳糖、白糖、還元乳糖、トレハロース等の糖類等を挙げることができる。これらの水溶性賦形剤は、市販のものを用いてもよく、公知の方法により製造したものを用いてもよい。また、これらの水溶性賦形剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明において、水溶性賦形剤としては、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、乳糖、白糖及び還元乳糖から選ばれる1種又は2種以上を用いるのが好ましく、マルチトール、マンニトール、エリスリトールが溶出率の面から、特に好ましい。
【0014】
また、本発明の組成物は、健康食品用として使用されるので、本発明に係る水溶性の賦形剤としては、ノンカロリーの賦形剤、すわなち、糖アルコールであることがより好ましい。具体的には、マルチトール、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールがより好ましい。
【0015】
以上の点を考慮すると、本発明に係る水溶性賦形剤としてはエリスリトールが最も好ましい。
【0016】
本発明において、グルコシルヘスペリジンと水溶性賦形剤の配合比は、グルコシルヘスペリジン1重量部に対し、水溶性賦形剤0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。
【0017】
グルコシルヘスペリジンの1回あたりの服用又は摂取量は、適応症や年齢により異なるが、通常100mg〜2000mgであり、これを1日に、1〜3回服用又は摂取する。
【0018】
本発明の組成物の剤形が固形又は半固形製剤の場合、1回量中に含有されるグルコシルヘスペリジンの含有量は、通常100mg〜1000mgであり、200mg〜500mgが好ましい。
【0019】
本発明の組成物には、必要に応じてHMG−CoAリダクターゼ阻害剤等の血中脂質低下剤、各種降圧剤、各種抗ヒスタミン剤、抗癌剤、生薬類又は各種健康食品素材等を本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
【0020】
本発明の組成物の具体的な形態(剤形)としては、経口製剤であることが好ましく、固形製剤又は半固形製剤であることが好ましい。本発明の組成物の剤形としては、例えば、錠剤、咀嚼錠剤、顆粒剤、散剤(細粒を含む)、カプセル剤等を挙げることができる。本発明の組成物を用いて製剤を製造するにあたっては、各剤形に適した医薬品添加物、食品添加物、基材等を適宜使用し、日本薬局方等に記載された通常の方法に従い、製造することができる。
【0021】
例えば、本発明の組成物の剤形が錠剤の場合、賦形剤としては本発明のものを、結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール等を、滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム、タルク等を使用することができる。
【0022】
また、本発明の組成物の剤形が散剤及びカプセル剤の場合、賦形剤としては本発明のものを、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール等を使用することができる。その他、各形態(剤形)において、必要に応じ、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース等の崩壊剤、ポリソルベート等の界面活性剤、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸等の吸着剤、三二酸化鉄やカラメル等の着色剤、安息香酸ナトリウム等の安定剤、pH調節剤、香料、及びその他の食品添加物等を配合することができる。
【0023】
本発明の組成物は、毛細血管の強化、血中脂質の改善、血流改善、アレルギー疾患の改善、発癌抑制、又は栄養素としてのビタミンPの補充等を目的に服用又は摂取される。従って、本発明の組成物は、医薬用又は食品用として利用することができる。
【実施例】
【0024】
以下に本発明をより詳細に説明するために実施例を記載するが、本発明はこれらのみに限られるものではない
(実施例1)
乳鉢にグルコシルヘスペリジン18.7g〔林原ヘスペリジン(登録商標)S(林原生物化学研究所社製)として25g〕、マルチトール(東和化成社製)14.7gを量り採り、良く混合した後、精製水を適量滴下し、攪拌造粒した。次に、この造粒物を乾燥器で乾燥(80℃、約1時間)した。この乾燥した造粒物を30メッシュの篩で篩過し、ステアリン酸マグネシウム0.3gを添加して良く混合した。得られた打錠用造粒物を用いて、以下の条件で打錠し、実施例1の錠剤を得た。
【0025】
単発打錠機:岡田精工株式会社製 N−30D
臼杵:10.0mmΦ2段R
1錠あたりの重量:400mg
打錠圧:700〜900kg/杵
(実施例2)
実施例1のマルチトールをエリスリトール(日研化学社製)に換え、実施例1と同様にして錠剤を得た。
(実施例3)
実施例1のマルチトールをマンニトール(東和化成社製)に換え、実施例1と同様にして錠剤を得た。
(実施例4)
実施例1のマルチトールをソルビトール(東和化成社製)に換え、実施例1と同様にして錠剤を得た。
(実施例5)
実施例1のマルチトールをキシリトール(東和化成社製)に換え、実施例1と同様にして錠剤を得た。
(実施例6)
実施例1のマルチトールを乳糖(DMVジャパン社製)に換え、実施例1と同様にして錠剤を得た。
(実施例7)
実施例1のマルチトールを白糖(新三井製糖社製)に換え、実施例1と同様にして錠剤を得た。
(実施例8)
実施例1のマルチトールを還元乳糖(東和化成社製)に換え、実施例1と同様にして錠剤を得た。
(比較例1)
実施例1のマルチトールをトウモロコシデンプン(日本食品化工社製)に換え、実施例1と同様にして錠剤を得た。
(比較例2)
実施例1のマルチトールを結晶セルロース(アビセルTMPH−101、旭化成ケミカルズ社製)に換え、実施例1と同様にして錠剤を得た。
(比較例3)
実施例1のマルチトールを低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(日本酢ピ・ポバール社製)に換え、実施例1と同様にして錠剤を得た。
(比較例4)
実施例1のマルチトールをカルメロース(NS−300、五徳薬品社製)に換え、実施例1と同様にして錠剤を得た。
(比較例5)
実施例1のマルチトールを沈降炭酸カルシウム(備北粉化工業社製)に換え、実施例1と同様にして錠剤を得た。
(比較例6)
実施例1のマルチトールをリン酸水素カルシウム(協和化学工業社製)に換え、実施例1と同様にして錠剤を得た。
(比較例7)
実施例1のマルチトールをカルメロースカルシウム(ECG−505、五徳薬品社製)に換え、実施例1と同様にして錠剤を得た。
(比較例8)
実施例1のマルチトールをクロスポビドン(BASFジャパン社製)に換え、実施例1と同様にして錠剤を得た。
(試験例)グルコシルヘスペリジンの溶出試験
(1)試験方法
第15改正日本薬局方一般試験法溶出試験法のパドル法に準じ、水及び第15改正日本薬局方一般試験法の試薬・試液に記載の溶出試験第1液(以下、第1液と称す)を試験液として、実施例1〜6及び比較例1〜4の錠剤におけるグルコシルヘスペリジンの溶出試験を行なった(n=6)。37±0.5℃に暖めた試験液900mLを規定された容器(溶出ビーカー)に量り、溶出試験機(NTR-6100A、富山産業社製)にセットした。この液に、錠剤1錠を入れ、分光光度計(UV-1700、島津製作所社製)にて経時的に吸光度を測定した。試料溶液のサンプリングは、サンプリングチューブノズル先端部にフィルター(0.45μm:ミリポア社製 MILLEX−LH)を装着し、自動的にサンプリング・ろ過した(サンプリングした液は、試料溶液中に戻るように設定した。)。別に、林原ヘスペリジン(登録商標)S69.5mgを正確に量り、水を加えて正確に250mLとした液の吸光度値を100%溶出率の吸光度値として入力し、経時的な溶出率を算出した。測定条件を以下に示す。
【0026】
測定波長:280nm
測定セル:1mmセル
パドルの回転数:50rpm
サンプリング時間:3分、5分、10分、15分、20分、30分、45分、60分
(2)試験結果
試験液が水の場合の試験結果を図1〜図3に、試験液が第1液の場合の試験結果を図4〜図6に示した。
【0027】
グルコシルヘスペリジンの15分後の溶出率は、試験液が水の場合、水溶性賦形剤(乳糖)を用いた錠剤(実施例6)は74.3%であり、水に不溶な賦形剤(以下、水不溶性賦形剤と称す)(トウモロコシデンプン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスポビドン)を用いた錠剤(比較例1〜4)は14.4〜46.9%であった(図1)。他の水溶性賦形剤(マルチトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール)を用いた錠剤(実施例1〜5)においては、60.9〜95.2%であった(図2)。さらにその他の水溶性賦形剤(白糖、還元乳糖)と水に不要な賦形剤(沈降炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム)を用いた錠剤についても実施した(図3)。
【0028】
また、試験液が第1液の場合、水溶性賦形剤(乳糖)を用いた錠剤(実施例6)は71.2%であり、水不溶性賦形剤(トウモロコシデンプン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース)を用いた錠剤(比較例1〜4)は14.4〜46.9%であった(図4)。他の水溶性賦形剤(マルチトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール)を用いた錠剤(実施例1〜5)においては、56.1〜96.4%であった(図5)。さらにその他の水溶性賦形剤(白糖、還元乳糖)と水に不要な賦形剤(カルメロースカルシウム、クロスポビドン)を用いた錠剤についても実施した(図6)。
【0029】
また、グルコシルヘスペリジンの30分後の溶出率は、試験液が水の場合、水溶性賦形剤(乳糖)を用いた錠剤(実施例6)は97.3%であり、水不溶性賦形剤(トウモロコシデンプン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース)を用いた錠剤(比較例1〜4)は21.1〜74.6%であった(図1)。他の水溶性賦形剤(マルチトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール)を用いた錠剤(実施例1〜5)においては、75.9〜100.8%であった(図2)。
【0030】
また、試験液が第1液の場合、水溶性賦形剤(乳糖)を用いた錠剤(実施例6)は95.8%であり、水不溶性賦形剤(トウモロコシデンプン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース)を用いた錠剤(比較例1〜4)は20.0〜65.7%であった(図4)。他の水溶性賦形剤(マルチトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール)を用いた錠剤(実施例1〜5)においては、72.2〜101.2%であった(図5)。
【0031】
これらのことから、グルコシルヘスペリジンに水溶性賦形剤を配合することにより、製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性が格段に向上することが分かった。
【0032】
特に水溶性賦形剤として、マルチトール、エリスリトール、マンニトールを用いた場合のグルコシルヘスペリジンの溶出率は、溶出試験開始後60分で、いずれも99%以上であり、これらの水溶性賦形剤を用いた場合には、製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性が、極めて優れていることがわかった。
(製剤例)
下記の製剤例1〜7に記載された成分及び分量を取り、第14改正日本薬局方製剤総則散剤の記載に準じて、散剤(細粒)を製した。
(製剤例1)散剤(細粒)
1包中(mg)
林原ヘスペリジン(登録商標)S 500
(グルコシルヘスペリジンとして 375)
乳糖 130
エリスリトール 300
軽質無水ケイ酸 50
ヒドロキシプロピルセルロース 10
ステアリン酸マグネシウム 10
合計 1000
(製剤例2)散剤(細粒)
1包中(mg)
林原ヘスペリジン(登録商標)S 500
(グルコシルヘスペリジンとして 375)
マンニトール 130
マルチトール 300
軽質無水ケイ酸 50
ポリビニルアルコール 10
ステアリン酸マグネシウム 10
合計 1000
(製剤例3)散剤(細粒)
1包中(mg)
林原ヘスペリジン(登録商標)S 500
(グルコシルヘスペリジンとして 375)
マンニトール 130
エリスリトール 300
微粒二酸化ケイ素 50
ポリビニルアルコール 10
ステアリン酸マグネシウム 10
合計 1000
(製剤例4)散剤(細粒)
1包中(mg)
林原ヘスペリジン(登録商標)S 500
(グルコシルヘスペリジンとして 375)
還元乳糖 100
トレハロース 300
微粒二酸化ケイ素 50
ショ糖脂肪酸エステル 50
合計 1000
(製剤例5)散剤(細粒)
1包中(mg)
林原ヘスペリジン(登録商標)S 500
(グルコシルヘスペリジンとして 375)
マンニトール 112
マルチトール 130
軽質無水ケイ酸 40
ポリビニルアルコール 10
ステアリン酸マグネシウム 8
合計 800
(製剤例6)散剤(細粒)
1包中(mg)
林原ヘスペリジン(登録商標)S 500
(グルコシルヘスペリジンとして 375)
マンニトール 102
エリスリトール 150
微粒二酸化ケイ素 30
ヒドロキシプロピルセルロース 10
ステアリン酸マグネシウム 8
合計 800
(製剤例7)散剤(細粒)
1包中(mg)
林原ヘスペリジン(登録商標)S 500
(グルコシルヘスペリジンとして 375)
還元乳糖 100
トレハロース 150
微粒二酸化ケイ素 30
ショ糖脂肪酸エステル 20
合計 800
下記の製剤例8に記載された成分及び分量を取り、第14改正日本薬局方製剤総則カプセル剤の記載に準じて、硬カプセル剤を製した。
(製剤例8)硬カプセル剤
4カプセル中(mg)
林原ヘスペリジン(登録商標)S 500
(グルコシルヘスペリジンとして 375)
乳糖 102
エリスリトール 150
軽質無水ケイ酸 40
ステアリン酸マグネシウム 8
合計 800
下記の製剤例9に記載された成分及び分量を取り、実施例1と同様に錠剤を製した。
(製剤例9)錠剤
2錠中(mg)
林原ヘスペリジン(登録商標)S 500
(グルコシルヘスペリジンとして 375)
エリスリトール 89
微粒二酸化ケイ素 6
ステアリン酸マグネシウム 5
合計 600
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により、グルコシルヘスペリジンを含有する製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性を格段に向上させるので、本発明の組成物を含有する製剤を服用又は摂取した場合、消化管における該製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性を向上させることができる。結果、製剤中に含まれるグルコシルヘスペリジンのうち、消化管中に放出されるグルコシルヘスペリジンの割合が高まるので、グルコシルヘスペリジンの体内への吸収が向上する。従って、本発明の組成物を含有する製剤を服用又は摂取することにより、グルコシルヘスペリジンの優れた薬理作用による望ましい効果をさらに高めることができる。
【0034】
したがって、本発明の組成物は、毛細血管の強化、血中脂質の改善、血流改善、アレルギー疾患の改善、発癌抑制、ビタミンP補充等を目的とした医薬用又は食品用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】グルコシルヘスペリジンの水における溶出率を、賦形剤として水溶性賦形剤(乳糖)を用いた場合と、水に不溶な賦形剤〔トウモロコシデンプン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(低置換度HPC)、カルメロース〕を用いた場合とを比較したグラフである。
【図2】グルコシルヘスペリジンの水における溶出率を、賦形剤として様々な水溶性賦形剤(マルチトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール)を用いた場合において比較したグラフである。
【図3】グルコシルヘスペリジンの水における溶出率を、賦形剤として水溶性賦形剤(白糖、還元乳糖)を用いた場合と、水に不溶な賦形剤(沈降炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム)を用いた場合において比較したグラフである。
【図4】グルコシルヘスペリジンの第1液における溶出率を、賦形剤として水溶性賦形剤(乳糖)を用いた場合と、水に不溶な賦形剤〔トウモロコシデンプン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(低置換度HPC)、カルメロース)〕を用いた場合とを比較したグラフである。
【図5】グルコシルヘスペリジンの第1液における溶出率を、賦形剤として様々な水溶性賦形剤(マルチトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール)を用いた場合において比較したグラフである。
【図6】グルコシルヘスペリジンの第1液における溶出率を、賦形剤として水溶性賦形剤(白糖、還元乳糖)を用いた場合と、水に不溶な賦形剤(カルメロースカルシウム、クロスポビドン)を用いた場合とを比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコシルヘスペリジン及び水溶性賦形剤を含有する組成物。
【請求項2】
水溶性賦形剤がマルチトール、エリスリトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、乳糖、白糖及び還元乳糖からなる群より選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
水溶性賦形剤が、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、乳糖、白糖及び還元乳糖からなる群より選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
水溶性賦形剤が、エリスリトールである請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
グルコシルヘスペリジンが、α−モノグルコシルヘスペリジンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
グルコシルヘスペリジンと水溶性賦形剤の配合比が、グルコシルヘスペリジン1重量部に対して、水溶性賦形剤0.1〜10重量部である請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
医薬用又は食品用である請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
剤形が経口製剤である請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
剤形が固形製剤又は半固形製剤である請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
剤形が錠剤である請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
グルコシルヘスペリジンを含有する製剤に、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、乳糖、白糖及び還元乳糖から選ばれる1種又は2種以上を配合することを特徴とする、グルコシルヘスペリジンを含有する製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性を向上する方法。
【請求項12】
グルコシルヘスペリジンを含有する製剤に、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、乳糖、白糖及び還元乳糖からなる群より選ばれる1種又は2種以上を配合することを特徴とする、グルコシルヘスペリジンを含有する製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性を向上する方法。
【請求項13】
グルコシルヘスペリジンを含有する製剤に、エリスリトールを配合することを特徴とする、グルコシルヘスペリジンを含有する製剤からのグルコシルヘスペリジンの溶出性を向上する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−74838(P2008−74838A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214256(P2007−214256)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【Fターム(参考)】