説明

グルテンベースの焼成製品の製造方法

本発明は、グルテン、少なくとも15%の水、品質改良剤、及び任意に膨張剤を含む生地を形成する工程、この生地を混捏する工程、任意に前記生地を放置して膨張させる工程、前記生地を焼いて焼成製品を得る工程を含む、焼成製品の製造方法に関する。本発明は、焼こうとする前記生地が、生地の重量に対して3乃至15重量%の、マルトデキストリン類、ピロデキストリン類、ポリデキストロース、及び多糖類を単独または混合物として含む群より選択される品質改良剤、及び0.005乃至1重量%の、システイン、グルタチオン、失活化ドライイースト、亜硫酸水素塩、及びプロテアーゼ類を含む群より選択される減衰剤を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の品質改良剤を用いる、グルテンを含む焼成製品の製造方法に関する。前記方法はとりわけ、それ自体で供給されるまたは粉として供給されるグルテンを含む全製品、例えばとりわけ膨張させた生地もしくは活性化させた生地の焼成製品、とりわけ伝統的なフランスパン(バゲット類)、ソフトローフ類、イングリッシュローフ類、ブリオシュ類、ロールパン類、甘い生地で作られるペストリー類、ケーキ類、ピッツァペストリー、バンズ、冷凍ペストリー、膨張させないペストリー、ヒト及び動物の栄養のための加工製品に関する。
【背景技術】
【0002】
パンもしくは焼成製品の製造には、小麦粉から得られる澱粉及びグルテンとイーストとの3つの成分が必要であり、その作用は相補的且つ分離不可能である。小麦はグルテンを含む唯一の穀物であり、これは以下の特徴を有する:水と混合されると、小麦粉は引き伸ばし可能な弾性の塊を形成する。小麦粉が、引き伸ばし、成形し、さらに焼くことで様々な種類のパンを製造可能な生地を形成することができるのは、この能力のためである。グルテンの粘弾特性が、製パンにおけるその重要性の理由である。グルテン前駆体は、小麦粉中に分散しており、これらをまとめるために、大々的な機械的作業による撹拌が必要である。これが混捏の役割である。混捏の目的は、成分の混合であるが、それにも増してグルテンを結合させて生地を塊にすることである。製パンに用いられる小麦粉は、いわゆる製パン用小麦から得られる小麦粉である。製パン用小麦は、比較的に高いタンパク質含量を有する。したがって、これらは、所望の形状及び構成を有する生地塊を製造するために十分な割合のグルテンを含むことから、主に製パンに使用される。ベーカリー用途向けの小麦の適合性は、グルテンの量及び質によって決定される。
【0003】
製パンにおけるグルテンの3つの重要な特性がある。第一に、これは水の吸収に優れた性能を有する。小麦粉及び水を混合することにより生地塊が得られる。グルテン中のタンパク質は、生地の形成に十分な水を吸収することができ、かくして生地は撹拌工程において十分な抵抗を示す。グルテンはまた、伸長性であるという特性を示す。パン生地中において、発酵の間、すなわち生地が膨張する間というのは、パン種が糖を吸収した後に反応が起き、この吸収により二酸化炭素気体及びアルコールが生成する。生地中で発生した気体は、グルテン基質を伸長させ、気泡を形成し、生地を膨らませる。グルテンが十分に弾性でない場合は、気泡が破裂して生地が膨らまないということになろう。
【0004】
グルテンはまた、幾分の抵抗を示すはずである。加熱調理工程によって生地の構造が確立するまでは、この抵抗によって生地中に気体が維持されるのである。この抵抗なしには、生地は崩壊する。優良品質のグルテンには、弾性と伸長性との優れたバランスが必要とされる。
【0005】
小麦粉の物理特性が不適当である場合は、通常は品質改良剤が使用される。アスコルビン酸がもっとも一般的に使用されるが、のみならず、グルテンネットワークに作用してこれを強化する臭素酸カリウムまたはジアセチル酒石酸のモノグリセリド類もしくはジグリセリド類のメチルエステル類(DATEM:モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル類)などの乳化剤及び/または過剰量のグルテンが小麦粉に添加される。化学的品質改良剤、とりわけアスコルビン酸の使用を避ける試みがますますなされているが、依然として適切な解決策は見つかっていない。
【特許文献1】欧州特許公報0463935B1
【特許文献2】日本国特許2001-045960
【特許文献3】仏国特許出願2822643
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在の技術水準に鑑みて、出願人は、グルテンを含有し、化学的品質改良剤の添加に関連するこれらの問題を伴わない焼成製品を開発するという目標を設け、通常の条件もしくは簡便化した条件においてさえ製造可能であって、複雑な操作は一切必要とせず、しかも従来の製品と同等もしくはより優れてさえいる、十分な品質を示す製品の提供を企図する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
多数の試験の後に、出願人は、成分を混合する最初の工程から出発し、マルトデキストリン類、デキストリン類、及び/または多糖類を含む特定の品質改良剤を使用するならば、上記目標が達成可能であることを見いだした。
【0008】
デキストリン類もしくはマルトデキストリン類の、とりわけ製パンにおける使用に関しては、かなりの誤解が存在する。実際には、これらが生地に望ましからぬ作用を及ぼし、これらを加えると生地が結合力に乏しくなることが判明している。
【0009】
この理由のため、欧州特許公報0463935B1には、非消化性デキストリン類の、製パン方法の特定の段階、すなわち生地が50%混捏された時点でのパンへの添加(当業者には「中種」と一般に呼称される技術)を提唱しているが、この添加に対して設けられた技術的制限は、製造にかなりの制約が伴うことを意味する。
【0010】
非消化性デキストリン類へのセルロールの添加もまた、日本国特許2001-045960に記載の通り既知である。セルロースを添加する主たる目的は、生地から水を吸収してそのテクスチャーを調整することであるが、生地がこの上なく扱い難くなる。さらにまた、セルロースは比較的に高価な添加剤である。イヌリン及びセルロース、並びにタンパク質及び無機塩類を含むチコリ粉末の使用もまた開示されている。
【0011】
本出願人所有の仏国特許出願2822643には、6.5重量%の分枝状マルトデキストリン類を含むパンが提唱されているが、このパンの良好な条件での製造は、所定の混合時間の後に、また、脂肪中のマルトデキストリン類のペーストを製造して適当なグルテンネットワークが得られた場合にのみ達成可能である。さらにまた、生地の形成は、長い混合時間を必然的に要する。
【0012】
高分子量の多糖類、より一般的には水溶性であるか否かによらない食物繊維のパンへの添加は、一定の問題を伴っており、その解決のためには既に多くの方法が提唱されているが、様々に複雑な予備処理を施す必要性、取り扱いにおける問題並びにとりわけ製造過程中の添加に関連して課せられる制約などの困難が存在し、食物繊維の添加により生じる問題の解決のために、真に十分な方法は依然として皆無であることがわかる。
【0013】
したがって、本発明は、
・グルテン、水、品質改良剤、及び任意に膨張剤を含む生地を形成する工程、
・この生地を混捏する工程、
・任意に前記生地を放置して膨張させる工程、
・前記生地を焼いて焼成製品を得る工程、
を含み、
焼こうとする前記生地が、生地の重量に対して0.1乃至3重量%、好ましくは0.5乃至2重量%の、マルトデキストリン類、ピロデキストリン類、及び多糖類を含む群より選択される品質改良剤を含むことを特徴とする、焼成製品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
全く予期せぬことに、出願人は、まさに製造開始時にこの特定の品質改良剤を添加することにより、少量(すなわち小麦粉の重量に対して0.1乃至3重量%の割合)で存在するグルテンの水和反応の速度が改善され、グルテンが水和を経て非常に迅速に結合し、弾性ネットワークを形成することを見いだした。然るに、本発明はパン種(「中種」)を使用する技術を特定的に排除する。特にアスコルビン酸などのグルテンネットワークを強化するための作用剤の使用は、もはや不要であり、該ネットワークはいっそう優れた水和を示して十分に形成され、オーブン中で起こる過程は、酵素類を要しないものである。
【0015】
従って、処方により、必要ならば薄力(低グルテン)小麦粉を使用し、且つ/または添加するグルテンの量を低減し、且つ/または化学的品質改良剤(アスコルビン酸、酵素類、乳化剤類)を使用せずに済ますことが可能となり、当該製品は優れた保存性並びに低温凍結に対するより優れた耐性を有する。したがって、これら全てが従来技術に比べて非常に有利な改善を構成する。
【0016】
この量を超えると、すなわち3重量%を超えると、グルテンの水和は自発的であり、グルテンは結合する代わりに凝集を起こし、処方にいくらかの修正を行う必要性、すなわち該処方中のグルテンの割合を低減するかまたは低グルテン粉を使用するかまたはグルテン低減剤(重亜鉛酸、システイン、失活化ドライイースト等)を使用してグルテンネットワークの凝集を軽減する必要性が出てくる。所定の場合には、生地に混入する水を僅かに高い温度で使用して、グルテンの凝固を制限することもできる。これらの生地では、別の非常に興味深い特性:混捏時間の短縮並びに活性化時間の短縮が表れ、得られる製品は最大限の柔らかさを示す。15重量%を超えると、適当な生地を得ることはもはや不可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
したがって、本発明はまた、グルテンベースの焼成製品及びその製造方法に関し、前記製品は生地の重量に対して3乃至15重量%の、マルトデキストリン類、ピロデキストリン類、ポリデキストロース、及び多糖類含む群よりを単独または混合物として選択される品質改良剤、及び0.005乃至1重量%の、システイン、グルタチオン、失活化ドライイースト、亜硫酸水素塩、及びプロテアーゼ類を含む群より選択される減衰剤を含む。当業者であれば当然に、選択した作用剤の性質及び減衰活性に関連して減衰剤の用量を調節するであろう。
【0018】
マルトデキストリン類は、標準マルトデキストリン類、例えば出願人によって市販されるGLUCIDEX(登録商標)マルトデキストリン類等を含んで良い。
【0019】
本発明の好ましい変形によれば、分枝状マルトデキストリン類、例えば出願人所有の欧州特許出願1006128に記載のものなどが使用される。これらの分枝状マルトデキストリン類のさらなる利点は、これらが代謝及び腸内平衡に有用な食物繊維の源であることである。とりわけ、15乃至35%の1-6-グリコシド結合、10%未満の還元糖含量、4000乃至6000g/molの分子量Mw、及び2000乃至4000g/molの数平均分子量Mnを有する分枝状マルトデキストリン類は、品質改良剤として使用することができる。これらの分枝状マルトデキストリン類は、澱粉のアルファ化温度を変化させず、従って生地の粘度が増大しないことから、本発明においてはいっそう興味深い。さらにまた、前記マルトデキストリン類を添加した場合には、水の吸収に変化がない。
【0020】
前記出願に開示される分枝状マルトデキストリン類の所定のサブファミリーもまた、本発明に従って使用可能である。このことは特に、5乃至20%の還元糖含量及び2000g/mol未満の分子量Mnを有する低分子量の分枝状マルトデキストリン類に該当する。
【0021】
これらマルトデキストリン類は、むろん単独でまたは本発明による別の品質改良剤との混合物として使用可能である。
【0022】
ピロデキストリン類は、酸または塩基性触媒の存在下にて、低水分含量で澱粉を加熱することによって得られる生成物であり、一般的に1000乃至6000ダルトンの分子量を有する。最も一般的に酸の存在下における、澱粉のこうした乾燥焙焼により、澱粉の解重合と得られる澱粉フラグメントの再配列との両方が起こり、非常に分枝した分子の生成がもたらされる。この定義は、とりわけ、2000ダルトンのオーダーの平均分子量を有する、いわゆる非消化性デキストリン類に該当する。
【0023】
「多糖類」は、とりわけガラクト-オリゴサッカライド、フルクト-オリゴサッカライド、及びオリゴフルクトース、アラビアゴム、耐性澱粉、豆澱粉を意味する。好ましくは、本発明による生地は、付加的なセルロースを含まない。
【0024】
本発明による焼成製品とは、出発小麦粉と水とを混捏することにより調製され、必要に応じて、特にイースト、塩、砂糖、甘味料、乳製品、脂肪、乳化剤、香辛料、乾燥果物、風味剤、澱粉分解酵素等の通常使用される他の添加剤を添加可能である生地の、例えばオーブン中、水中での、押出焼成による加熱処理によって適切に製造された物品を指定する。本発明による焼成製品の製造に使用される生地は、好ましくは15重量%より多量の水を含む。
【0025】
本発明の有利な変形によれば、本発明による品質改良剤が通常使用される脂肪に部分的にまたは完全に置き換わるというさらなる利点を有することから、該生地は脂肪を含まない。さらには、低脂肪製品の製造を試みる場合、一般的に製品は、とりわけブリオシュの場合には、柔らかさを失う。本発明による、また本発明の条件の下での品質改良剤の使用によれば、補足の添加剤をもし使用するとしてもごく僅かで、脂肪含量の低い製品の柔らかさの喪失が補償されるという利点がもたらされる。
【0026】
「出発小麦粉」は一般的に小麦粉を示し、これは特にライ麦、トウモロコシ、及び米の粉によって補足されても、または部分的に置き換えられてもよい。「小麦粉」とは、精白粉から全粒粉までの伝統的な製粉された粉を意味する。
【0027】
本発明は、活性化生地もしくは膨張させた生地であるか否かによらない、あらゆる種類の生地に区別なく応用される。膨張生地から得られる製品は、例えばパン、特別のパン、ウィーンパン、ブリオシュ、ピッツァ、ハンバーガー用パンである。活性化生地から得られる製品は、例えばビスケット、クッキー、マフィン、フルーツケーキ及び他のケーキ、並びにパフペストリーに基づく製品である。非膨張生地は、とりわけ、硬質または軟質の小麦粉から製造されるあらゆる形状のパスタ(スパゲッティ、タリアテッレ、マカロニ、麺等)である。本発明はまた、押出製品、例えばスナック、朝食用シリアル、クラッカー、並びにグルテンを含むあらゆる型押し製品に応用される。
【0028】
本発明はまた、グルテンの粘弾性指数向上のための、マルトデキストリン類、ピロデキストリン類、及び多糖類を含む群より選択される品質改良剤の使用にも関する。実際に、本発明による品質改良剤を使用する場合には、グルテンは推奨割合において、すなわち小麦粉の重量に対して0.1乃至3重量%にていっそう凝集性である。
【0029】
本発明は、詳説を意図し、非限定的である、以下の実施例及びこれらに関連する図表を参照することでよりよく理解されるであろう。
【実施例】
【0030】
(実施例1:グルテンの粘弾特性の改善、パンの製造)
Leforest小麦粉に基づき、下記の分析値を有するフランスパン用の処方に従って、ローフを製造する。
・水分含量 15.6%
・タンパク質 10.7%
・気泡特性(アルベオグラム(alveogram)) P78、W272、P/L0.71
【0031】
斜軸混捏器を使用し、生地を、5分間に亘り速度1にて、次いで12分間に亘り速度2にて、さらに塩を加えて5分間に亘り速度2にて混捏する。
活性化を、24℃で湿度75%の環境において行う。
焼成を、24分間に亘り240℃にて行う。
【0032】
評価は以下の試験に基づく。
生地について:成形台の上で伸長させた後の生地塊の長さ(cm)が生地の粘り強さを示す。
パンについて:2時間30分及び3時間に亘り活性化させた後に、生地塊を焼成する。2時間30分に亘る活性化後のローフ及び3時間に亘る活性化後のローフの体積を、体積計で測定する。平均体積(ml)を示す(図1参照)。
【0033】
試験は以下の方法で標準小麦粉に対して行った。
水和60%の生地(試験1乃至6)、1.00%のグルテンを含む処方と比較して、0.68−1.34−1.99%の分枝状マルトデキストリン類を含む処方(パーセンテージは62.7%の乾燥物質を含む最終生成物について算出)。
【0034】
水和61%の生地(試験5、7、8)、1.00及び1.33%のグルテンを含む処方と比較して、1.34%の分枝状マルトデキストリン類を含む処方。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
(標準小麦粉No.1、試験2、3、及び4)
本発明による品質改良剤は、生地の粘り強さを向上させて1.34または1.99%の場合に最大とし(水和の選択的条件下で)、2時間30分膨張させたローフの体積は、0.68%の分枝状マルトデキストリン類を添加した場合に1600から1800mlに増大する。1.34%の分枝状マルトデキストリン類を含むローフの体積は、3時間の活性化の後にも増大しない。
【0038】
本発明による品質改良剤を1.34%含む生地では、より高度の水和によって生地は柔軟になり、ローフの体積は増大されない(試験3及び5)。
【0039】
(標準小麦粉No.1、試験6、7、及び8)
グルテンは、分枝状マルトデキストリン類に採用される濃度より高濃度である場合にのみ、生地の粘り強さを増大させ、且つローフ体積を増大させる。グルテンの水和の増大により、グルテンがその役割を完全に果たしてローフ体積を増大させることができ、0.68%の分枝状マルトデキストリン類を含むローフ(60%の水を含む生地、試験2)の体積は、1.33%のグルテンを含むローフ(61%の水を含む生地、試験8)の体積と同等である(図1参照)。
【0040】
本発明による別の品質改良剤を試験した:オリゴフルクトース、標準マルトデキストリン類GLUCIDEX(登録商標)2及びGLUCIDEX(登録商標)28。
【0041】
オリゴフルクトースの作用は、他の品質改良剤の作用と同等である。マルトデキストリン類は、分枝状マルトデキストリン類もしくはオリゴフルクトースの場合に比べて僅かに制限された程度に生地の粘り強さを低減し、且つローフの体積を増大させる。
【0042】
結論:本発明による品質改良剤は、以下の効果を有する。
最終製品に基づいて0.68%の用量では、これらは生地に粘り強さを付与し、且つローフの体積を10%より多量に増大させる。これらの効果は、発明者の操作条件下で1.34%の用量につき、体積増大が14%の最大の効果を得るまで品質改良剤の濃度と共に増大する。生地の水和度は増大されない。
【0043】
グルテンを用いると、効果は同様であるが水和度を増大させねばならず、同様の効果を得るためにはより多量のグルテンが必要である。0.68%の分枝状マルトデキストリン類を含み、水和60%であるローフの体積は、グルテン1.33%及び水和61%であるローフの体積と同等である。
【0044】
(実施例2:ブリオシュの製造)
下記より選択される本発明の品質改良剤を用いてブリオシュを製造する。
・標準マルトデキストリン類(GLUCIDEX(登録商標)1、2、または6)
・分枝状マルトデキストリン類、オリゴフルクトース、Raftilose(登録商標)
【0045】
【表3】

【0046】
従来技術におけるブリオシュ製造のための標準的処方によれば、重要な制限、例えば生地への導入前に脂肪とマルトデキストリン類とのペーストを準備する必要性、及び混合時間のかなりの増大(マルトデキストリン類に伴い15乃至45分間)等が見られる。さらにまた、該生地にはアスコルビン酸の添加が必須である。
【0047】
前述の欠点を有しないブリオシュの製造のためには、本発明により以下:
・小麦粉の重量に対して0.1乃至3重量%の含量にマルトデキストリン類の量を低減する操作(この場合、この操作によりグルテンの添加量を低減することができる)、または
・3%より多い量を維持するが、配合からグルテンを除去するか、水和水の温度を上昇させるか、またはシステイン(0.2重量部)を添加して生地の生成を改善する操作、
を行う必要があり、こうすると最大限の柔軟性が得られる。
【0048】
結果:
本発明による品質改良剤は、生地の粘り強さの増大及び最終製品の体積の向上という、同様の効果を奏するが、オリゴフルクトースを用いて得られる結果は他のものに劣る。柔軟性は、品質改良剤の用量が5%より大なる場合にコントロールより優れると判断される。
【0049】
標準的マルトデキストリン類は、生地の伸長性及びブリオシュの体積を増大させる。これらが生地の粘り強さに及ぼす効果は、他の品質改良剤の効果ほど顕著ではない。体積も目に見えて増大するが、得られる柔らかさが幾分劣る。
アスコルビン酸は使用せずとも良く、酵素もまた然りである。
【0050】
(実施例3:糖を加えないハンバーガーロールの製造)
A−処方
【表4】

【0051】
B−方法
・システインを30℃の水に溶解させる。
・粉末を混合し、水を加える。
・スパイラルニーダー中で30秒間、速度1にて撹拌し、次いで7分間、速度2にて撹拌する(最終温度は32℃)。
・15分間休ませる。
・60gに切り分け、ボールに丸め、平らにし、成形する。
・40℃、95%RH にて60分間発酵させる。
・205℃のオーブンで11分間焼成する。
【0052】
単純な方法により、従来の製品に匹敵する感覚受容特性を備えたロールが得られる。ロールの発熱量を算出すれば、209.40kcal/100gである。
【0053】
(実施例4:脂肪及び糖を添加しないハンバーガーロールの製造)
A−処方
【表5】

【0054】
B−方法
・システインを30℃の水に溶解させる。
・粉末を混合し、水を加える。
・スパイラルニーダー中で30秒間、速度1にて撹拌し、次いで7分間、速度2にて撹拌する(最終温度は32℃)。
・15分間休ませる。
・60gに切り分け、ボールに丸め、平らにし、成形する。
・40℃、95%RH にて60分間発酵させる。
・205℃のオーブンで11分間焼成する。
【0055】
減衰剤の存在下における、高水分含量を有する生地中での本発明の品質改良剤の使用は、該処方からは脂肪が排除可能であることを有利に示すが、脂肪がないことによる柔らかさの喪失を補う。
【0056】
然るに、脂肪を含むロールよりも発熱量が低いが、十分な感覚受容特性を維持するハンバーガー用ロールパンを処方することができる。算出される発熱量は、実施例3の処方による209.40kcal/100gに対して199.56kcal/100gである。
【0057】
(実施例5:本発明によるフランスパンの製造)
A−処方
【表6】

【0058】
B−方法
・システインを30℃の水に溶解させる。
・粉末を混合し、水を加える。
・スパイラルニーダー中で30秒間、速度1にて撹拌し、次いで8分間、速度2にて撹拌する(最終温度は26℃)。
・10分間休ませる。
・100gに切り分け、ボールに丸める。
・成形する。
・25℃、75%RH にて1時間45分間発酵させる。
・215℃のオーブンで13分間焼成する。
【0059】
本発明によれば、非常に満足できる品質のフランスパンが、アスコルビン酸を添加せずに得られる。
【0060】
(実施例6:本発明によるビスケットの製造)
以下の処方を用いて、水素添加されたまたは水素添加されていない様々な分子量の分枝状マルトデキストリン類と、品質改良剤としてポリデキストロース(Litesse(登録商標)Ultra)とを、豆繊維と組み合わせて使用し、本発明に従ってビスケットを製造する。
【0061】
試験1:分子量Mw=5000及びMn=2650の分枝状マルトデキストリン
試験2:分子量Mw=3820及びMn=1110の分枝状マルトデキストリン
試験3:分子量Mw=2125及びMn=600の分枝状マルトデキストリン
試験4:精製ポリデキストロース(Litesse(登録商標)Ultra)
試験5:試験1のマルトデキストリン(水素添加)
【0062】
【表7】

【0063】
最高で7%の豆繊維の使用によって、ビスケットはより柔らかく、且つ砕けやすく(friable)なり、脂肪の低減が補われる。
全てのビスケットが同等の感覚受容特性を有するが、試験3のビスケットが幾分より砕けやすい(crunchy)ことから好ましい。
【0064】
(実施例7:本発明による低発熱量のローフの製造)
本発明による低発熱量のローフを、分枝状マルトデキストリン類またはポリデキストロース(Litesse(登録商標)Ultra)を品質改良剤として用いる以下の処方で製造する。
試験1:分子量Mw=5000及びMn=2650の分枝状マルトデキストリン
試験2:精製ポリデキストロース(Litesse(登録商標)Ultra)
【0065】
【表8】

【0066】
混捏が完了したところで、500グラムの塊に分割し、ボールに丸め、即座に成型器に移して油を塗った型に入れ、35℃、相対湿度80%の発酵チャンバに60-90分間入れる。
その後、該ローフを回転式オーブン中220℃にて焼成する。
【0067】
結果:3%より高濃度で使用した場合は、本発明による品質改良剤は生地を分裂させる作用を及ぼすが、これはシステインなどの減衰剤を使用することによって是正可能である。発酵時間は、ポリデキストロースが使用される場合はより長い(膨張体積は低減)。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、2時間30分及び3時間に亘る、活性化後のローフの体積を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・グルテン、少なくとも15%の水、品質改良剤、及び任意に膨張剤を含む生地を形成する工程、
・この生地を混捏する工程、
・任意に前記生地を放置して膨張させる工程、
・前記生地を焼いて焼成製品を得る工程、
を含み、
焼こうとする前記生地が、生地の重量に対して3乃至15重量%の、マルトデキストリン類、ピロデキストリン類、ポリデキストロース、及び多糖類を単独または混合物として含む群より選択される品質改良剤、及び0.005乃至1重量%の、システイン、グルタチオン、失活化ドライイースト、亜硫酸水素塩、及びプロテアーゼ類を含む群より選択される減衰剤を含むことを特徴とする、焼成製品の製造方法。
【請求項2】
前記生地が、付加的なセルロースを含まないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記品質改良剤が、15乃至35%の1-6-グリコシド結合、10%未満の還元糖の含量、4000乃至6000g/molの分子量Mw、及び2000乃至4000g/molの数平均分子量を有する分枝状マルトデキストリン類を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
グルテンと、マルトデキストリン類、ピロデキストリン類、ポリデキストロース、及び多糖類を含む群より単独または混合物として選択される3乃至15重量%の品質改良剤と、システイン、グルタチオン、失活化ドライイースト、亜硫酸水素塩、及びプロテアーゼ類を含む群より選択される0.005乃至1重量%の減衰剤とを含む、焼成製品。
【請求項5】
ブリオシュまたはハンバーガーロールであることを特徴とする、請求項4に記載の焼成製品。

【図1】
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【公表番号】特表2007−521827(P2007−521827A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552657(P2006−552657)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000288
【国際公開番号】WO2005/079584
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(592097428)ロケット・フルーレ (58)
【Fターム(参考)】