グロメット
【課題】グロメットの留め付け状態を一層安定的なものにする。
【解決手段】軸体1と、スリーブ体2と、頭部31を備えると共にこの頭部31側から押し込まれる前記軸体1により脚先端30a側を内側から押圧されて弾性変形により拡開される脚部30を備えたグロメット本体3と備えている。スリーブ体2は、軸体1を内側に通し且つこの軸体1を中心とした回動可能にグロメット本体3内に支持されている。軸体1とスリーブ体2とには軸体1の前記押し込みによりスリーブ体2を所定量回動させるカム手段が備えられている。スリーブ体2の外側にはこのスリーブ体2の前記回動により脚部30の脚先端30a側よりも頭部31側において前記拡開されたこの脚部30の内側に入り込んでこの脚部30を支持する突部20bが備えられている。
【解決手段】軸体1と、スリーブ体2と、頭部31を備えると共にこの頭部31側から押し込まれる前記軸体1により脚先端30a側を内側から押圧されて弾性変形により拡開される脚部30を備えたグロメット本体3と備えている。スリーブ体2は、軸体1を内側に通し且つこの軸体1を中心とした回動可能にグロメット本体3内に支持されている。軸体1とスリーブ体2とには軸体1の前記押し込みによりスリーブ体2を所定量回動させるカム手段が備えられている。スリーブ体2の外側にはこのスリーブ体2の前記回動により脚部30の脚先端30a側よりも頭部31側において前記拡開されたこの脚部30の内側に入り込んでこの脚部30を支持する突部20bが備えられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はグロメットの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
軸体(特許文献1ではピン部材)とこの軸体の押し込まれる本体(特許文献1ではグロメット)とよりなるピングロメットなどとも称されるグロメット(特許文献1ではクリップ)がある。(特許文献1参照)かかるグロメットは、留め付け対象物に形成された貫通穴に本体の脚部を挿通させた状態から、この本体内に軸体を押し込むことにより、かかる脚部を拡開させて、かかる留め付け対象物に留め付く構造を備えている。拡開された脚部と軸体との間には間隔が形成される。留め付け対象物の貫通穴からグロメットの本体を抜け出せる向きの力が作用されるとかかる間隔を狭める向きの力が脚部に作用され、この力に抗する脚部の弾性力がグロメットの留め付け力をもたらしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−249073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のグロメットの留め付け状態を一層安定的なものにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、グロメットを、軸体と、スリーブ体と、頭部を備えると共にこの頭部側から押し込まれる前記軸体により脚先端側を内側から押圧されて弾性変形により拡開される脚部を備えたグロメット本体と、を少なくとも備えており、
前記スリーブ体は、軸体を内側に通し且つこの軸体を中心とした回動可能にグロメット本体内に支持されており、
前記軸体とスリーブ体とには軸体の前記押し込みによりスリーブ体を所定量回動させるカム手段が備えられていると共に、
スリーブ体の外側にはこのスリーブ体の前記回動により前記脚部の脚先端側よりも前記頭部側において前記拡開されたこの脚部の内側に入り込んでこの脚部を支持する突部が備えられているものとした。
【0006】
軸体をグロメット本体内に押し込むと、グロメット本体の脚部が拡開すると共に、スリーブ体が回動して、このスリーブ体に設けた突部が拡開された脚部をその内側から支持する。そして、これにより、拡開された脚部をその脚先端側において軸体により内側から支持すると共に、これよりも頭部側においてかかる突部により支持する。グロメット本体にこれを留め付け対象物の貫通穴から抜け出させる向きの力が作用された場合、拡開された脚部にはこれを内向きに撓み込ませる力が作用されることとなるが、かかる脚部はグロメット本体の頭部側においても前記突部によって支持されることから、かかる力の作用により脚部を内向きに撓み込み難くすることができる。これにより、留め付け対象物に対するグロメットの留め付け状態を安定的に維持させることができる。特に、この実施の形態にかかるグロメットにあっては、グロメット本体の脚部の弾性力がクリープ現象に起因して経時的に低下しても、グロメットの前記留め付け状態を長期に亘り安定的に維持させることができる。
【0007】
前記カム手段を、軸体の軸中心線を巡る仮想の螺旋に沿ったカム溝とこのカム溝に案内される摺動突部とを備えてなり、このカム溝及び摺動突部のいずれか一方を軸体に備えさせ、これらの他方をスリーブ体に備えさせてなるものとすることが、好ましい態様の一つである。
【0008】
また、前記グロメット本体の脚部を複数の弾性脚片から構成すると共に、隣り合う弾性脚片間に軸体の押し込みによる回動を生じる前のスリーブ体の突部を位置させるようにしておくことが、好ましい態様の一つである。
【0009】
また、グロメット本体の脚部を四つの弾性脚片から構成させ、スリーブ体にはこれら四つの弾性脚片に対応して突部を四箇所に設け、この四箇所の突部のうちの対向位置にある二箇所の突部をその余の二つの突部よりやや大きく突きだしたものとし、しかも、軸体をグロメット本体に押し込みきった状態から所定量スリーブ体共々回動できるようにしておくこともある。
【0010】
留め付け対象物の厚さが比較的薄い場合、軸体の押し込みにより弾性脚片はその基部、つまり頭部との連接部に近い側を中心として弾性変形されることから、軸体と拡開された弾性脚片との間には比較的広い隙間が形成される。このときは突きだし寸法の大きい二箇所の突部を対応する弾性脚片の内面にそれぞれ接しさせ支持する。一方、留め付け対象物の厚さが比較的厚い場合、軸体の押し込みによる弾性脚片の弾性変形の中心は前者の場合に比べその脚先端側に近い側となるため、軸体と拡開された弾性脚片との間の隙間は前者の場合より狭くなる。このため、この場合には、押し込みきった軸体をさらに回動させて前記突きだし寸法の大きい突部を弾性脚片の内側に確実に入り込ませることができる。
【0011】
また、軸体にスリーブ体に設けた開放部を通じて隣り合う弾性脚片間に入り込むガイド部を備えさせておくことが、好ましい態様の一つである。
【0012】
また、スリーブ体に、軸体の押し込みによるこのスリーブ体の回動により、グロメット本体の被係合部に係合してスリーブ体の逆転を阻止する係合部を備えさせておくこともある。
【0013】
このようにした場合、前記所定量の回動をして突部を拡開した脚部の内側に位置させてこの脚部を支持したスリーブ体のこの支持状態を安定的に維持させることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、留め付け対象物に対するグロメットの留め付け状態を長期に亘り安定的に維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1はグロメットの側面図である。
【図2】図2はグロメットの平面図である。
【図3】図3は図2におけるA−A線位置での断面図である。
【図4】図4は図2におけるB−B線位置での断面図である。
【図5】図5は図1におけるC−C線位置でグロメット本体を破断して示した端面図である。
【図6】図6は図1におけるD−D線位置でグロメット本体を破断して示した端面図である。
【図7】図7は図1の状態からグロメット本体内に軸体を押し込みきった状態を図6と同じ位置で示した端面図である。
【図8】図8は図1におけるE−E線位置でグロメット本体を破断して示した端面図である。
【図9】図9は図1の状態からグロメット本体内に軸体を押し込みきった状態を図8と同じ位置で示した端面図である。
【図10】図10はグロメット本体内に軸体を押し込みきった状態から軸体をスリーブ体共々回動させた状態を図8と同じ位置で示した端面図である。
【図11】図11は留め付け対象物にグロメットを留め付けた状態を示した断面図である。
【図12】図12は図11の留め付け対象物よりも板厚を厚くする留め付け対象物にグロメットを留め付けた状態を示した断面図である。
【図13】図13はグロメット本体の平面図である。
【図14】図14はグロメット本体の側面図である。
【図15】図15は図14と異なる向きから見たグロメット本体の側面図である。
【図16】図16はスリーブ体の平面図である。
【図17】図17は図16におけるF−F線断面図である。
【図18】図18はスリーブ体の側面図である。
【図19】図19は図18と異なる向きから見たスリーブ体の側面図である。
【図20】図20は軸体の平面図である。
【図21】図21は軸体の側面図である。
【図22】図22は図21と異なる向きから見た軸体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図22に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるグロメットは、軸体1とスリーブ体2とこの軸体1の押し込まれるグロメット本体3とよりなり、留め付け対象物Pに形成された貫通穴Paにグロメット本体3の脚部30を挿通させた状態から、このグロメット本体3内に軸体1を押し込むことにより、かかる脚部30を拡開させて、かかる留め付け対象物Pに留め付くものである。典型的には、かかるグロメットは、前記貫通穴Paをそれぞれ備えた複数の留め付け対象物Pを、この貫通穴Paを連通させ合わせるように重なり合わせた状態から、これらの貫通穴Paにグロメット本体3の脚部30を挿通させて前記拡開をなすことにより、かかる複数の留め付け対象物Pをグロメットを介して留め合わせるように用いられる。
【0017】
スリーブ体2の内側に軸体1が通される。また、このスリーブ体2はグロメット本体3内に回動可能に納められる。すなわち、グロメット本体3の内側にスリーブ体2が位置され、このスリーブ体2の内側に軸体1が位置される。この実施の形態にかかるグロメットにあっては、このように位置される軸体1をグロメット本体3内に押し込むと、グロメット本体3の脚部30が拡開すると共に、スリーブ体2が回動して、このスリーブ体2に設けた後述の突部20bが拡開された脚部30をその内側から支持するようになっている。そして、これにより、拡開された脚部30をその脚先端30a側において軸体1により内側から支持すると共に、これよりもこの脚部30の基部側、つまりグロメット本体3の頭部31側においてかかる突部20bにより支持するようになっている。
【0018】
グロメット本体3にこれを留め付け対象物Pの貫通穴Paから抜け出させる向きの力が作用された場合、拡開された脚部30にはこれを内向きに撓み込ませる力が作用されることとなるが、かかる脚部30はグロメット本体3の頭部31側においても前記突部20bによって支持されることから、かかる力の作用により脚部30を内向きに撓み込み難くすることができる。これにより、留め付け対象物Pに対するグロメットの留め付け状態を安定的に維持させることができる。特に、この実施の形態にかかるグロメットにあっては、グロメット本体3の脚部30の弾性力がクリープ現象に起因して経時的に低下しても、グロメットの前記留め付け状態を長期に亘り安定的に維持させることができる。
【0019】
軸体1は、その軸中心線xに直交する向きの断面外郭形状を、この軸体1の長さ方向の各位置において概ね略円形とする軸芯部10を有している。図示の例では、この軸芯部10がスリーブ体2内に挿通されるようになっている。軸芯部10の軸一端は円板状部11の一面の中央に一体に連接されている。この円板状部11はスリーブ体2内に入り込まない大きさを備えている。軸芯部10の長さはスリーブ体2の長さよりも大きく、軸体1はその他端、つまり軸先端10aをスリーブ体2の一端から突き出させ、かつ、その円板状部11とスリーブ体2の他端との間に距離を開けた状態で、スリーブ体2に挿通・組み合わされるようになっている。図示の例では、円板状部11の他面には工具の先端の差し込み凹所11aが形成されている。
【0020】
軸芯部10の軸先端10a側には、周回溝部10bが形成されている。この周回溝部10bと軸先端10aとの間は前記軸中心線xを円錐の中心軸とした截頭円錐状をなすように形成されている。周回溝部10bにおける軸先端10a側の溝壁10cは前記軸中心線xに直交している。一方、周回溝部10bの他方の溝壁10dは軸先端10a側に向かうに連れて軸芯部10を次第に細めるように傾斜している。この他方の溝壁10d側の周回溝部10bの溝口部には周回隆起部10eが形成されており、この周回隆起部10eにおいて軸芯部10の外径は最大となっている。
【0021】
軸芯部10の円板状部11に連接された軸一端から軸芯部10の長さ方向略中程の位置までの間には、一端を円板状部11の一面に一体に連接させて前記軸中心線xに沿って延びるリブ状部10fが形成されている。このリブ状部10fは軸芯部10の直径方向両側にそれぞれ形成されている。このリブ状部10fは後述のようにグロメット本体3の脚部30を構成する隣り合う弾性脚片30b、30b間に入り込みこのグロメット本体3に対する軸体1の押し込みを案内するガイド部として機能する。
【0022】
また、軸芯部10の軸一端側であって、前記軸中心線xを巡る向きにおいて一対のリブ状部10f、10fの間に位置される箇所にはそれぞれ、短寸円柱状をなす摺動突部10gが形成されている。この摺動突部10gは後述のカム手段を構成する。
【0023】
スリーブ体2は、軸体1の軸芯部10を内側に通し且つこの軸体1を中心とした回動可能にグロメット本体3内に支持される。図示の例では、スリーブ体2は、筒両端を共に開放させた筒状をなす主体部20を備えている。この主体部20の内径は前記軸体1の軸芯部10の円板状部11と周回溝部10bとの間に位置される箇所の外径よりもやや小さくなっている。また、この主体部20の外径は後述するグロメット本体3の頭部31に形成された脚部30内に連通する円形の連通穴31aの穴径と略等しくなっている。
【0024】
図示の例では、スリーブ体2の筒一端2’、すなわち前記主体部20の一端は外鍔21により縁取られている。この外鍔21の外径はグロメット本体3の連通穴31aの穴径よりも大きく、スリーブ体2はその筒他端2”を先にしてグロメット本体3内にこの連通穴31aを通じて外鍔21をこの連通穴31aの穴縁部に突き当てる位置まで入れ込まれてグロメット本体3と組み合わされるようになっている。
【0025】
スリーブ体2の主体部20の直径方向両側位置にはそれぞれ、主体部20の内外を連通させる窓穴状をなす開放部20aが形成されている。また、外鍔21におけるかかる開放部20aの直上に位置される箇所にはかかる開放部20aに連通した割り欠き部21aが形成されている。この割り欠き部21aを通じて軸体1の前記リブ状部10fが開放部20aに入り込むようになっている。軸体1の前記軸中心線xを巡る向きのリブ状部10fの厚さ寸法よりも割り欠き部21a及び開放部20aの幅寸法は大きくなっている。
【0026】
スリーブ体2の筒他端2”には、外側に突き出す突部20bが形成されている。図示の例では、かかる突部20bはスリーブ体2の周回方向において、隣り合う突部20bとの間に略等しい間隔を開けて、四箇所に設けられている。
【0027】
また、図示の例では、スリーブ体2の筒他端2”側には、開放部20aの一つとこの筒他端2”間に亘る割溝20dが形成されている。図示の例では、スリーブ体2はこの割溝20dの溝幅を広げる弾性変形によりその内側への軸体1の挿通を許容するようになっている。外鍔21側からスリーブ体2内へ前記周回隆起部10eをスリーブ体2の筒他端2”より先に位置させる位置まで軸体1を挿通すると、スリーブ体2側の弾性復帰によりこの周回隆起部10eにかかる筒他端2”が引っかかってスリーブ体2からの軸体1の抜け出しが阻止されるようになっている。
【0028】
スリーブ体2の主体部20の内側であって、一対の開放部20a、20aの形成箇所の間となる箇所にはそれぞれ、カム溝20eが形成されている。このカム溝20eは前記摺動突部10gと協働して軸体1の前記押し込みによりスリーブ体2を所定量回動させるカム手段として機能するようになっている。かかるカム溝20eは、スリーブ体2に通される軸体1の前記軸中心線xを巡る仮想の螺旋に沿うようにして形成されている。また、かかるカム溝20eの溝一端20fはスリーブ体2の一端において外部に開放されている。
【0029】
軸体1は、その円板状部11とスリーブ体2の筒一端2’との間に距離を開けた状態から、この円板状部11をスリーブ体2の筒一端2’に突き当てる位置までグロメット本体3内に押し込むことができるようになっている。この押し込みをなすと、二箇所の前記カム溝20eにそれぞれ対応する前記摺動突部10gが摺接してスリーブ体2はグロメット本体3内において所定量回動されるようになっている。
【0030】
グロメット本体3は、頭部31を備えると共に、この頭部31側から押し込まれる前記軸体1により脚先端30a側を内側から押圧されて弾性変形により拡開される脚部30を備えている。
【0031】
図示の例では、グロメット本体3の頭部31は円盤状をなすように構成されている。この頭部31の中央には、頭部31の一面と他面とに亘る連通穴31aが貫通状態に形成されている。脚部30は頭部31の一面に筒一端を一体に連接させて且つ筒内空間を前記連通穴31aに連通させた円筒状体をその筒軸方向に沿った複数の割溝30fにより分割させ、分割された各箇所をそれぞれ弾性脚片30bとしてなる。具体的には、前記円筒状体の筒軸を巡る方向において隣り合う割溝30fとの間に略等しい間隔を開けて4箇所の割溝30f、30f…が形成されており、これによりグロメット本体3の脚部30は四つの弾性脚片30b、30b…に区分されている。
【0032】
各弾性脚片30bはいずれも、脚部30の脚先端30a側において、脚部30の内方に突き出す当接部30cを備えている。これにより脚部30の内部空間の大きさはこの当接部30cの形成位置においては軸体1の周回溝部10bの形成箇所の太さと略等しくなっている。かかる当接部30cにおける頭部31側に向けられた面は当接部30cの頂部30dに向かうに連れて次第に内方に近づく傾斜面30eとなっている。
【0033】
頭部31の他面には、スリーブ体2の外鍔21の直径と略等しい円形の凹所31bが形成されている。この凹所31b内に前記連通穴31aが設けられている。頭部31の他面にはこの凹所31bを囲繞するように周回状隆起部31gが形成されている。軸体1をグロメット本体3内に押し込みきるとこの軸体1の円板状部11はこの周回状隆起部31g内に収まるようになっている。この周回状隆起部31gは図中符号31hで示す分断部で分断されている。押し込みきった軸体1を抜き出す必要が生じたときはこの分断部31hを利用して円板状部11下に工具の先端をなどを押し込むことができるようになっている。
【0034】
スリーブ体2と軸体1とを組み合わせた状態、つまり、軸体1の周回隆起部10eがスリーブ体2の主体部20の筒他端2”より先に位置され、かつ、軸体1のリブ状部10fがスリーブ体2の開放部20aに入り込み、さらに、軸体1の摺動突部10gがスリーブ体2のカム溝20eに入り込むようにした状態から、スリーブ体2を外鍔21の形成側と反対の筒他端2”側から先にグロメット本体3の連通穴31aに入れ込むことで、スリーブ体2、軸体1、グロメット本体3の三者が組み合わされる。スリーブ体2の外鍔21は前記凹所31b内に収まる。スリーブ体2の外鍔21の形成側と反対の筒他端2”は脚部30の当接部30cよりも頭部31側に位置される。スリーブ体2の四箇所の突部20bはそれぞれ弾性脚片30b間に位置される。(図8)軸体1のリブ状部10fも弾性脚片30b間に位置される。(図5)弾性脚片30bの当接部30cは軸体1の周回溝部10bに納まる。(図3)具体的には、グロメット本体3に前記のように組み合わせたスリーブ体2及び軸体1を入れ込む過程で軸体1の軸先端10aが当接部30cを押圧して各弾性脚片30bは外向きに一旦撓み出され、この後に軸先端10aが当接部30cを乗り越えた位置で各弾性脚片30bは弾性復帰して周回溝部10bに入り込む。
【0035】
このように構成されたグロメットのグロメット本体3の脚部30を、この脚部30を挿通可能でその頭部31を挿通不能とする大きさの留め付け対象物Pの貫通穴Paに挿通させる。次いで、軸体1の円板状部11がスリーブ体2の外鍔21及びグロメット本体3の頭部31に接する位置までこの軸体1を押し込むと、周回溝部10bから当接部30cが抜け出し軸体1の外周面によって各弾性脚片30bは外側に拡開、つまり撓み出される。また、前記のようにリブ状部10fの厚さ寸法よりもスリーブ体2の開放部20a及び割り欠き部21aの幅寸法は大きくなっていることから、かかる軸体1の押し込みによって前記カム手段によりスリーブ体2は回動され、その突起を撓み出された弾性脚片30bの内側に入り込ませる。すなわち、スリーブ体2の突起は前記回動により前記脚部30の脚先端30a側よりも前記頭部31側において前記拡開されたこの脚部30の内側に入り込んでこの脚部30を支持する。図示の例では、軸体1を前記のように押し込むとスリーブ体2がこの軸体1の軸中心線xを中心として約20度回動されるようになっている。(図8から図9)
【0036】
また、この実施の形態にあっては、前記スリーブ体2に、軸体1の押し込みによるこのスリーブ体2の前記回動により、グロメット本体3の被係合部31eに係合してスリーブ体2の逆転を阻止する係合部21bが備えられている。図示の例では、スリーブ体2の外鍔21に平面視の状態で略三角形の山状をなす係合部21bが一箇所設けられている。また、この係合部21bとスリーブ体2の中心との間において、外鍔21に肉抜き部21cが形成されており、外鍔21におけるこの肉抜き部21cと係合部21bとの間にある箇所が弾性変形できるようになっている。一方、グロメット本体3の頭部31には、かかる係合部21bを納める追加凹所31cが前記凹所31bに連通するように形成されている。この追加凹所31cを構成する軸体1の軸中心線xを巡る向きにある壁部にはスリーブ体2の前記所定量の回動位置で係合部21bを受け入れる平面視の状態で谷状をなす被係合部31eが二箇所の山状突部31f、31f間に形成されている。スリーブ体2の回動の過程で係合部21bが山状突部31fに突き当たり前記箇所は一旦弾性変形され係合部21bはこの山状突部31fを乗り越える。そして、被係合部31eに係合部21bは入り込んだ位置での前記箇所の弾性復帰により被係合部31eに係合部21bが係合されるようになっている。(図7)これによりこの実施の形態にあっては、前記所定量の回動をして突部20bを拡開した脚部30、つまり弾性脚片30bの内側に位置させてこの弾性脚片30bを支持したスリーブ体2のこの支持状態を安定的に維持できるようになっている。
【0037】
また、この実施の形態にあっては、スリーブ体2の四箇所の突部20b、20b…のうちの対向位置にある二箇所の突部20b、20bがその余の二つの突部20b、20bよりやや大きく突きだしている。それと共に、軸体1をグロメット本体3に押し込みきった状態から所定量この軸体1をスリーブ体2共々回動できるようにしてある。図示の例では、前記リブ状部10fの納まる隣り合う弾性脚片30b、30b間の間隔はリブ状部10fの厚さ寸法よりも大きくなっている。(図5)また、前記被係合部31eは前記軸中心線xを巡る向きにおいて追加凹所31cの中間位置に設けてあり、この被係合部31eに係合部21bを係合させた位置からさらに一定角度分、図示の例では約10度、スリーブ体2は回動可能となっている。(図9から図10)
【0038】
留め付け対象物Pの厚さが比較的薄い場合、軸体1の押し込みにより弾性脚片30bはその基部、つまり頭部31との連接部に近い側を中心として弾性変形されることから、軸体1と拡開された弾性脚片30bとの間には頭部31側において比較的広い隙間が形成される。(図11)この実施の形態にあっては、このときは突きだし寸法の大きい二箇所の突部20bを対応する弾性脚片30bの内面にそれぞれ接しさせ支持するようにしている。(図9)一方、留め付け対象物Pの厚さが比較的厚い場合、軸体1の押し込みによる弾性脚片30bの弾性変形の中心は前者の場合に比べその脚先端30a側に近い側となるため、軸体1と拡開された弾性脚片30bとの間の頭部31側の隙間は前者の場合より狭くなる。(図12)このため、この場合には、押し込みきった軸体1をさらに回動させて前記突きだし寸法の大きい突部20bを弾性脚片30bの内側に確実に入り込ませることができるようにしている。この場合には、四箇所の突部20b、20b…のそれぞれが対応する弾性脚片30bの内面にそれぞれ接してこれを支持することとなる。(図10)押し込みきった軸体1の回動操作は前記差し込み凹所11aを利用してなすことができ、この操作をすると前記カム手段を介してスリーブ体2も軸体1と一緒に回動される。図示の例では、スリーブ体2の突部20bは、前記軸体1の軸中心線xに直交する向きの断面において、頂部を挟んだ両側を傾斜させた山状をなすように形成されており、かかる押し込みきった軸体1の回動により拡開量の少ない弾性脚片30bの内側にこの突部20bがスムースに入り込めるようにしてある。かかる押し込みきった軸体1の回動操作は隣り合う脚部30間の間隔の範囲を限度としてなされ、この操作によりスリーブ体2の突部20bが弾性脚片30bの内側から外れ出すことはない。
【0039】
以上に説明したグロメットにおける弾性変形特性を備えるべき箇所へのこの特性の付与は、かかるグロメットを合成樹脂の成形品とすることで、容易になすことができる。
【符号の説明】
【0040】
1 軸体
2 スリーブ体
20b 突部
3 グロメット本体
30 脚部
30a 軸先端
31 頭部
【技術分野】
【0001】
この発明はグロメットの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
軸体(特許文献1ではピン部材)とこの軸体の押し込まれる本体(特許文献1ではグロメット)とよりなるピングロメットなどとも称されるグロメット(特許文献1ではクリップ)がある。(特許文献1参照)かかるグロメットは、留め付け対象物に形成された貫通穴に本体の脚部を挿通させた状態から、この本体内に軸体を押し込むことにより、かかる脚部を拡開させて、かかる留め付け対象物に留め付く構造を備えている。拡開された脚部と軸体との間には間隔が形成される。留め付け対象物の貫通穴からグロメットの本体を抜け出せる向きの力が作用されるとかかる間隔を狭める向きの力が脚部に作用され、この力に抗する脚部の弾性力がグロメットの留め付け力をもたらしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−249073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のグロメットの留め付け状態を一層安定的なものにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、グロメットを、軸体と、スリーブ体と、頭部を備えると共にこの頭部側から押し込まれる前記軸体により脚先端側を内側から押圧されて弾性変形により拡開される脚部を備えたグロメット本体と、を少なくとも備えており、
前記スリーブ体は、軸体を内側に通し且つこの軸体を中心とした回動可能にグロメット本体内に支持されており、
前記軸体とスリーブ体とには軸体の前記押し込みによりスリーブ体を所定量回動させるカム手段が備えられていると共に、
スリーブ体の外側にはこのスリーブ体の前記回動により前記脚部の脚先端側よりも前記頭部側において前記拡開されたこの脚部の内側に入り込んでこの脚部を支持する突部が備えられているものとした。
【0006】
軸体をグロメット本体内に押し込むと、グロメット本体の脚部が拡開すると共に、スリーブ体が回動して、このスリーブ体に設けた突部が拡開された脚部をその内側から支持する。そして、これにより、拡開された脚部をその脚先端側において軸体により内側から支持すると共に、これよりも頭部側においてかかる突部により支持する。グロメット本体にこれを留め付け対象物の貫通穴から抜け出させる向きの力が作用された場合、拡開された脚部にはこれを内向きに撓み込ませる力が作用されることとなるが、かかる脚部はグロメット本体の頭部側においても前記突部によって支持されることから、かかる力の作用により脚部を内向きに撓み込み難くすることができる。これにより、留め付け対象物に対するグロメットの留め付け状態を安定的に維持させることができる。特に、この実施の形態にかかるグロメットにあっては、グロメット本体の脚部の弾性力がクリープ現象に起因して経時的に低下しても、グロメットの前記留め付け状態を長期に亘り安定的に維持させることができる。
【0007】
前記カム手段を、軸体の軸中心線を巡る仮想の螺旋に沿ったカム溝とこのカム溝に案内される摺動突部とを備えてなり、このカム溝及び摺動突部のいずれか一方を軸体に備えさせ、これらの他方をスリーブ体に備えさせてなるものとすることが、好ましい態様の一つである。
【0008】
また、前記グロメット本体の脚部を複数の弾性脚片から構成すると共に、隣り合う弾性脚片間に軸体の押し込みによる回動を生じる前のスリーブ体の突部を位置させるようにしておくことが、好ましい態様の一つである。
【0009】
また、グロメット本体の脚部を四つの弾性脚片から構成させ、スリーブ体にはこれら四つの弾性脚片に対応して突部を四箇所に設け、この四箇所の突部のうちの対向位置にある二箇所の突部をその余の二つの突部よりやや大きく突きだしたものとし、しかも、軸体をグロメット本体に押し込みきった状態から所定量スリーブ体共々回動できるようにしておくこともある。
【0010】
留め付け対象物の厚さが比較的薄い場合、軸体の押し込みにより弾性脚片はその基部、つまり頭部との連接部に近い側を中心として弾性変形されることから、軸体と拡開された弾性脚片との間には比較的広い隙間が形成される。このときは突きだし寸法の大きい二箇所の突部を対応する弾性脚片の内面にそれぞれ接しさせ支持する。一方、留め付け対象物の厚さが比較的厚い場合、軸体の押し込みによる弾性脚片の弾性変形の中心は前者の場合に比べその脚先端側に近い側となるため、軸体と拡開された弾性脚片との間の隙間は前者の場合より狭くなる。このため、この場合には、押し込みきった軸体をさらに回動させて前記突きだし寸法の大きい突部を弾性脚片の内側に確実に入り込ませることができる。
【0011】
また、軸体にスリーブ体に設けた開放部を通じて隣り合う弾性脚片間に入り込むガイド部を備えさせておくことが、好ましい態様の一つである。
【0012】
また、スリーブ体に、軸体の押し込みによるこのスリーブ体の回動により、グロメット本体の被係合部に係合してスリーブ体の逆転を阻止する係合部を備えさせておくこともある。
【0013】
このようにした場合、前記所定量の回動をして突部を拡開した脚部の内側に位置させてこの脚部を支持したスリーブ体のこの支持状態を安定的に維持させることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、留め付け対象物に対するグロメットの留め付け状態を長期に亘り安定的に維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1はグロメットの側面図である。
【図2】図2はグロメットの平面図である。
【図3】図3は図2におけるA−A線位置での断面図である。
【図4】図4は図2におけるB−B線位置での断面図である。
【図5】図5は図1におけるC−C線位置でグロメット本体を破断して示した端面図である。
【図6】図6は図1におけるD−D線位置でグロメット本体を破断して示した端面図である。
【図7】図7は図1の状態からグロメット本体内に軸体を押し込みきった状態を図6と同じ位置で示した端面図である。
【図8】図8は図1におけるE−E線位置でグロメット本体を破断して示した端面図である。
【図9】図9は図1の状態からグロメット本体内に軸体を押し込みきった状態を図8と同じ位置で示した端面図である。
【図10】図10はグロメット本体内に軸体を押し込みきった状態から軸体をスリーブ体共々回動させた状態を図8と同じ位置で示した端面図である。
【図11】図11は留め付け対象物にグロメットを留め付けた状態を示した断面図である。
【図12】図12は図11の留め付け対象物よりも板厚を厚くする留め付け対象物にグロメットを留め付けた状態を示した断面図である。
【図13】図13はグロメット本体の平面図である。
【図14】図14はグロメット本体の側面図である。
【図15】図15は図14と異なる向きから見たグロメット本体の側面図である。
【図16】図16はスリーブ体の平面図である。
【図17】図17は図16におけるF−F線断面図である。
【図18】図18はスリーブ体の側面図である。
【図19】図19は図18と異なる向きから見たスリーブ体の側面図である。
【図20】図20は軸体の平面図である。
【図21】図21は軸体の側面図である。
【図22】図22は図21と異なる向きから見た軸体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図22に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるグロメットは、軸体1とスリーブ体2とこの軸体1の押し込まれるグロメット本体3とよりなり、留め付け対象物Pに形成された貫通穴Paにグロメット本体3の脚部30を挿通させた状態から、このグロメット本体3内に軸体1を押し込むことにより、かかる脚部30を拡開させて、かかる留め付け対象物Pに留め付くものである。典型的には、かかるグロメットは、前記貫通穴Paをそれぞれ備えた複数の留め付け対象物Pを、この貫通穴Paを連通させ合わせるように重なり合わせた状態から、これらの貫通穴Paにグロメット本体3の脚部30を挿通させて前記拡開をなすことにより、かかる複数の留め付け対象物Pをグロメットを介して留め合わせるように用いられる。
【0017】
スリーブ体2の内側に軸体1が通される。また、このスリーブ体2はグロメット本体3内に回動可能に納められる。すなわち、グロメット本体3の内側にスリーブ体2が位置され、このスリーブ体2の内側に軸体1が位置される。この実施の形態にかかるグロメットにあっては、このように位置される軸体1をグロメット本体3内に押し込むと、グロメット本体3の脚部30が拡開すると共に、スリーブ体2が回動して、このスリーブ体2に設けた後述の突部20bが拡開された脚部30をその内側から支持するようになっている。そして、これにより、拡開された脚部30をその脚先端30a側において軸体1により内側から支持すると共に、これよりもこの脚部30の基部側、つまりグロメット本体3の頭部31側においてかかる突部20bにより支持するようになっている。
【0018】
グロメット本体3にこれを留め付け対象物Pの貫通穴Paから抜け出させる向きの力が作用された場合、拡開された脚部30にはこれを内向きに撓み込ませる力が作用されることとなるが、かかる脚部30はグロメット本体3の頭部31側においても前記突部20bによって支持されることから、かかる力の作用により脚部30を内向きに撓み込み難くすることができる。これにより、留め付け対象物Pに対するグロメットの留め付け状態を安定的に維持させることができる。特に、この実施の形態にかかるグロメットにあっては、グロメット本体3の脚部30の弾性力がクリープ現象に起因して経時的に低下しても、グロメットの前記留め付け状態を長期に亘り安定的に維持させることができる。
【0019】
軸体1は、その軸中心線xに直交する向きの断面外郭形状を、この軸体1の長さ方向の各位置において概ね略円形とする軸芯部10を有している。図示の例では、この軸芯部10がスリーブ体2内に挿通されるようになっている。軸芯部10の軸一端は円板状部11の一面の中央に一体に連接されている。この円板状部11はスリーブ体2内に入り込まない大きさを備えている。軸芯部10の長さはスリーブ体2の長さよりも大きく、軸体1はその他端、つまり軸先端10aをスリーブ体2の一端から突き出させ、かつ、その円板状部11とスリーブ体2の他端との間に距離を開けた状態で、スリーブ体2に挿通・組み合わされるようになっている。図示の例では、円板状部11の他面には工具の先端の差し込み凹所11aが形成されている。
【0020】
軸芯部10の軸先端10a側には、周回溝部10bが形成されている。この周回溝部10bと軸先端10aとの間は前記軸中心線xを円錐の中心軸とした截頭円錐状をなすように形成されている。周回溝部10bにおける軸先端10a側の溝壁10cは前記軸中心線xに直交している。一方、周回溝部10bの他方の溝壁10dは軸先端10a側に向かうに連れて軸芯部10を次第に細めるように傾斜している。この他方の溝壁10d側の周回溝部10bの溝口部には周回隆起部10eが形成されており、この周回隆起部10eにおいて軸芯部10の外径は最大となっている。
【0021】
軸芯部10の円板状部11に連接された軸一端から軸芯部10の長さ方向略中程の位置までの間には、一端を円板状部11の一面に一体に連接させて前記軸中心線xに沿って延びるリブ状部10fが形成されている。このリブ状部10fは軸芯部10の直径方向両側にそれぞれ形成されている。このリブ状部10fは後述のようにグロメット本体3の脚部30を構成する隣り合う弾性脚片30b、30b間に入り込みこのグロメット本体3に対する軸体1の押し込みを案内するガイド部として機能する。
【0022】
また、軸芯部10の軸一端側であって、前記軸中心線xを巡る向きにおいて一対のリブ状部10f、10fの間に位置される箇所にはそれぞれ、短寸円柱状をなす摺動突部10gが形成されている。この摺動突部10gは後述のカム手段を構成する。
【0023】
スリーブ体2は、軸体1の軸芯部10を内側に通し且つこの軸体1を中心とした回動可能にグロメット本体3内に支持される。図示の例では、スリーブ体2は、筒両端を共に開放させた筒状をなす主体部20を備えている。この主体部20の内径は前記軸体1の軸芯部10の円板状部11と周回溝部10bとの間に位置される箇所の外径よりもやや小さくなっている。また、この主体部20の外径は後述するグロメット本体3の頭部31に形成された脚部30内に連通する円形の連通穴31aの穴径と略等しくなっている。
【0024】
図示の例では、スリーブ体2の筒一端2’、すなわち前記主体部20の一端は外鍔21により縁取られている。この外鍔21の外径はグロメット本体3の連通穴31aの穴径よりも大きく、スリーブ体2はその筒他端2”を先にしてグロメット本体3内にこの連通穴31aを通じて外鍔21をこの連通穴31aの穴縁部に突き当てる位置まで入れ込まれてグロメット本体3と組み合わされるようになっている。
【0025】
スリーブ体2の主体部20の直径方向両側位置にはそれぞれ、主体部20の内外を連通させる窓穴状をなす開放部20aが形成されている。また、外鍔21におけるかかる開放部20aの直上に位置される箇所にはかかる開放部20aに連通した割り欠き部21aが形成されている。この割り欠き部21aを通じて軸体1の前記リブ状部10fが開放部20aに入り込むようになっている。軸体1の前記軸中心線xを巡る向きのリブ状部10fの厚さ寸法よりも割り欠き部21a及び開放部20aの幅寸法は大きくなっている。
【0026】
スリーブ体2の筒他端2”には、外側に突き出す突部20bが形成されている。図示の例では、かかる突部20bはスリーブ体2の周回方向において、隣り合う突部20bとの間に略等しい間隔を開けて、四箇所に設けられている。
【0027】
また、図示の例では、スリーブ体2の筒他端2”側には、開放部20aの一つとこの筒他端2”間に亘る割溝20dが形成されている。図示の例では、スリーブ体2はこの割溝20dの溝幅を広げる弾性変形によりその内側への軸体1の挿通を許容するようになっている。外鍔21側からスリーブ体2内へ前記周回隆起部10eをスリーブ体2の筒他端2”より先に位置させる位置まで軸体1を挿通すると、スリーブ体2側の弾性復帰によりこの周回隆起部10eにかかる筒他端2”が引っかかってスリーブ体2からの軸体1の抜け出しが阻止されるようになっている。
【0028】
スリーブ体2の主体部20の内側であって、一対の開放部20a、20aの形成箇所の間となる箇所にはそれぞれ、カム溝20eが形成されている。このカム溝20eは前記摺動突部10gと協働して軸体1の前記押し込みによりスリーブ体2を所定量回動させるカム手段として機能するようになっている。かかるカム溝20eは、スリーブ体2に通される軸体1の前記軸中心線xを巡る仮想の螺旋に沿うようにして形成されている。また、かかるカム溝20eの溝一端20fはスリーブ体2の一端において外部に開放されている。
【0029】
軸体1は、その円板状部11とスリーブ体2の筒一端2’との間に距離を開けた状態から、この円板状部11をスリーブ体2の筒一端2’に突き当てる位置までグロメット本体3内に押し込むことができるようになっている。この押し込みをなすと、二箇所の前記カム溝20eにそれぞれ対応する前記摺動突部10gが摺接してスリーブ体2はグロメット本体3内において所定量回動されるようになっている。
【0030】
グロメット本体3は、頭部31を備えると共に、この頭部31側から押し込まれる前記軸体1により脚先端30a側を内側から押圧されて弾性変形により拡開される脚部30を備えている。
【0031】
図示の例では、グロメット本体3の頭部31は円盤状をなすように構成されている。この頭部31の中央には、頭部31の一面と他面とに亘る連通穴31aが貫通状態に形成されている。脚部30は頭部31の一面に筒一端を一体に連接させて且つ筒内空間を前記連通穴31aに連通させた円筒状体をその筒軸方向に沿った複数の割溝30fにより分割させ、分割された各箇所をそれぞれ弾性脚片30bとしてなる。具体的には、前記円筒状体の筒軸を巡る方向において隣り合う割溝30fとの間に略等しい間隔を開けて4箇所の割溝30f、30f…が形成されており、これによりグロメット本体3の脚部30は四つの弾性脚片30b、30b…に区分されている。
【0032】
各弾性脚片30bはいずれも、脚部30の脚先端30a側において、脚部30の内方に突き出す当接部30cを備えている。これにより脚部30の内部空間の大きさはこの当接部30cの形成位置においては軸体1の周回溝部10bの形成箇所の太さと略等しくなっている。かかる当接部30cにおける頭部31側に向けられた面は当接部30cの頂部30dに向かうに連れて次第に内方に近づく傾斜面30eとなっている。
【0033】
頭部31の他面には、スリーブ体2の外鍔21の直径と略等しい円形の凹所31bが形成されている。この凹所31b内に前記連通穴31aが設けられている。頭部31の他面にはこの凹所31bを囲繞するように周回状隆起部31gが形成されている。軸体1をグロメット本体3内に押し込みきるとこの軸体1の円板状部11はこの周回状隆起部31g内に収まるようになっている。この周回状隆起部31gは図中符号31hで示す分断部で分断されている。押し込みきった軸体1を抜き出す必要が生じたときはこの分断部31hを利用して円板状部11下に工具の先端をなどを押し込むことができるようになっている。
【0034】
スリーブ体2と軸体1とを組み合わせた状態、つまり、軸体1の周回隆起部10eがスリーブ体2の主体部20の筒他端2”より先に位置され、かつ、軸体1のリブ状部10fがスリーブ体2の開放部20aに入り込み、さらに、軸体1の摺動突部10gがスリーブ体2のカム溝20eに入り込むようにした状態から、スリーブ体2を外鍔21の形成側と反対の筒他端2”側から先にグロメット本体3の連通穴31aに入れ込むことで、スリーブ体2、軸体1、グロメット本体3の三者が組み合わされる。スリーブ体2の外鍔21は前記凹所31b内に収まる。スリーブ体2の外鍔21の形成側と反対の筒他端2”は脚部30の当接部30cよりも頭部31側に位置される。スリーブ体2の四箇所の突部20bはそれぞれ弾性脚片30b間に位置される。(図8)軸体1のリブ状部10fも弾性脚片30b間に位置される。(図5)弾性脚片30bの当接部30cは軸体1の周回溝部10bに納まる。(図3)具体的には、グロメット本体3に前記のように組み合わせたスリーブ体2及び軸体1を入れ込む過程で軸体1の軸先端10aが当接部30cを押圧して各弾性脚片30bは外向きに一旦撓み出され、この後に軸先端10aが当接部30cを乗り越えた位置で各弾性脚片30bは弾性復帰して周回溝部10bに入り込む。
【0035】
このように構成されたグロメットのグロメット本体3の脚部30を、この脚部30を挿通可能でその頭部31を挿通不能とする大きさの留め付け対象物Pの貫通穴Paに挿通させる。次いで、軸体1の円板状部11がスリーブ体2の外鍔21及びグロメット本体3の頭部31に接する位置までこの軸体1を押し込むと、周回溝部10bから当接部30cが抜け出し軸体1の外周面によって各弾性脚片30bは外側に拡開、つまり撓み出される。また、前記のようにリブ状部10fの厚さ寸法よりもスリーブ体2の開放部20a及び割り欠き部21aの幅寸法は大きくなっていることから、かかる軸体1の押し込みによって前記カム手段によりスリーブ体2は回動され、その突起を撓み出された弾性脚片30bの内側に入り込ませる。すなわち、スリーブ体2の突起は前記回動により前記脚部30の脚先端30a側よりも前記頭部31側において前記拡開されたこの脚部30の内側に入り込んでこの脚部30を支持する。図示の例では、軸体1を前記のように押し込むとスリーブ体2がこの軸体1の軸中心線xを中心として約20度回動されるようになっている。(図8から図9)
【0036】
また、この実施の形態にあっては、前記スリーブ体2に、軸体1の押し込みによるこのスリーブ体2の前記回動により、グロメット本体3の被係合部31eに係合してスリーブ体2の逆転を阻止する係合部21bが備えられている。図示の例では、スリーブ体2の外鍔21に平面視の状態で略三角形の山状をなす係合部21bが一箇所設けられている。また、この係合部21bとスリーブ体2の中心との間において、外鍔21に肉抜き部21cが形成されており、外鍔21におけるこの肉抜き部21cと係合部21bとの間にある箇所が弾性変形できるようになっている。一方、グロメット本体3の頭部31には、かかる係合部21bを納める追加凹所31cが前記凹所31bに連通するように形成されている。この追加凹所31cを構成する軸体1の軸中心線xを巡る向きにある壁部にはスリーブ体2の前記所定量の回動位置で係合部21bを受け入れる平面視の状態で谷状をなす被係合部31eが二箇所の山状突部31f、31f間に形成されている。スリーブ体2の回動の過程で係合部21bが山状突部31fに突き当たり前記箇所は一旦弾性変形され係合部21bはこの山状突部31fを乗り越える。そして、被係合部31eに係合部21bは入り込んだ位置での前記箇所の弾性復帰により被係合部31eに係合部21bが係合されるようになっている。(図7)これによりこの実施の形態にあっては、前記所定量の回動をして突部20bを拡開した脚部30、つまり弾性脚片30bの内側に位置させてこの弾性脚片30bを支持したスリーブ体2のこの支持状態を安定的に維持できるようになっている。
【0037】
また、この実施の形態にあっては、スリーブ体2の四箇所の突部20b、20b…のうちの対向位置にある二箇所の突部20b、20bがその余の二つの突部20b、20bよりやや大きく突きだしている。それと共に、軸体1をグロメット本体3に押し込みきった状態から所定量この軸体1をスリーブ体2共々回動できるようにしてある。図示の例では、前記リブ状部10fの納まる隣り合う弾性脚片30b、30b間の間隔はリブ状部10fの厚さ寸法よりも大きくなっている。(図5)また、前記被係合部31eは前記軸中心線xを巡る向きにおいて追加凹所31cの中間位置に設けてあり、この被係合部31eに係合部21bを係合させた位置からさらに一定角度分、図示の例では約10度、スリーブ体2は回動可能となっている。(図9から図10)
【0038】
留め付け対象物Pの厚さが比較的薄い場合、軸体1の押し込みにより弾性脚片30bはその基部、つまり頭部31との連接部に近い側を中心として弾性変形されることから、軸体1と拡開された弾性脚片30bとの間には頭部31側において比較的広い隙間が形成される。(図11)この実施の形態にあっては、このときは突きだし寸法の大きい二箇所の突部20bを対応する弾性脚片30bの内面にそれぞれ接しさせ支持するようにしている。(図9)一方、留め付け対象物Pの厚さが比較的厚い場合、軸体1の押し込みによる弾性脚片30bの弾性変形の中心は前者の場合に比べその脚先端30a側に近い側となるため、軸体1と拡開された弾性脚片30bとの間の頭部31側の隙間は前者の場合より狭くなる。(図12)このため、この場合には、押し込みきった軸体1をさらに回動させて前記突きだし寸法の大きい突部20bを弾性脚片30bの内側に確実に入り込ませることができるようにしている。この場合には、四箇所の突部20b、20b…のそれぞれが対応する弾性脚片30bの内面にそれぞれ接してこれを支持することとなる。(図10)押し込みきった軸体1の回動操作は前記差し込み凹所11aを利用してなすことができ、この操作をすると前記カム手段を介してスリーブ体2も軸体1と一緒に回動される。図示の例では、スリーブ体2の突部20bは、前記軸体1の軸中心線xに直交する向きの断面において、頂部を挟んだ両側を傾斜させた山状をなすように形成されており、かかる押し込みきった軸体1の回動により拡開量の少ない弾性脚片30bの内側にこの突部20bがスムースに入り込めるようにしてある。かかる押し込みきった軸体1の回動操作は隣り合う脚部30間の間隔の範囲を限度としてなされ、この操作によりスリーブ体2の突部20bが弾性脚片30bの内側から外れ出すことはない。
【0039】
以上に説明したグロメットにおける弾性変形特性を備えるべき箇所へのこの特性の付与は、かかるグロメットを合成樹脂の成形品とすることで、容易になすことができる。
【符号の説明】
【0040】
1 軸体
2 スリーブ体
20b 突部
3 グロメット本体
30 脚部
30a 軸先端
31 頭部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、
スリーブ体と、
頭部を備えると共に、この頭部側から押し込まれる前記軸体により脚先端側を内側から押圧されて弾性変形により拡開される脚部を備えたグロメット本体と、 を少なくとも備えており、
前記スリーブ体は、軸体を内側に通し且つこの軸体を中心とした回動可能にグロメット本体内に支持されており、
前記軸体とスリーブ体とには軸体の前記押し込みによりスリーブ体を所定量回動させるカム手段が備えられていると共に、
スリーブ体の外側にはこのスリーブ体の前記回動により前記脚部の脚先端側よりも前記頭部側において前記拡開されたこの脚部の内側に入り込んでこの脚部を支持する突部が備えられていることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
カム手段は、軸体の軸中心線を巡る仮想の螺旋に沿ったカム溝とこのカム溝に案内される摺動突部とを備えてなり、このカム溝及び摺動突部のいずれか一方を軸体に備えさせ、これらの他方をスリーブ体に備えさせてなることを特徴とする請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
グロメット本体の脚部は複数の弾性脚片から構成されていると共に、隣り合う弾性脚片間に軸体の押し込みによる回動を生じる前のスリーブ体の突部が位置されるようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
グロメット本体の脚部は四つの弾性脚片から構成されていると共に、スリーブ体にはこれら四つの弾性脚片に対応して突部が四箇所に設けてあり、
この四箇所の突部のうちの対向位置にある二箇所の突部がその余の二つの突部よりやや大きく突きだしており、
しかも、軸体をグロメット本体に押し込みきった状態から所定量スリーブ体共々回動できるようにしてあることを特徴とする請求項3に記載のグロメット。
【請求項5】
グロメット本体の脚部は複数の弾性脚片から構成されていると共に、軸体にスリーブ体に設けた開放部を通じて隣り合う弾性脚片間に入り込むガイド部が備えられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のグロメット。
【請求項6】
スリーブ体に、軸体の押し込みによるこのスリーブ体の回動により、グロメット本体の被係合部に係合してスリーブ体の逆転を阻止する係合部が備えられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のグロメット。
【請求項1】
軸体と、
スリーブ体と、
頭部を備えると共に、この頭部側から押し込まれる前記軸体により脚先端側を内側から押圧されて弾性変形により拡開される脚部を備えたグロメット本体と、 を少なくとも備えており、
前記スリーブ体は、軸体を内側に通し且つこの軸体を中心とした回動可能にグロメット本体内に支持されており、
前記軸体とスリーブ体とには軸体の前記押し込みによりスリーブ体を所定量回動させるカム手段が備えられていると共に、
スリーブ体の外側にはこのスリーブ体の前記回動により前記脚部の脚先端側よりも前記頭部側において前記拡開されたこの脚部の内側に入り込んでこの脚部を支持する突部が備えられていることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
カム手段は、軸体の軸中心線を巡る仮想の螺旋に沿ったカム溝とこのカム溝に案内される摺動突部とを備えてなり、このカム溝及び摺動突部のいずれか一方を軸体に備えさせ、これらの他方をスリーブ体に備えさせてなることを特徴とする請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
グロメット本体の脚部は複数の弾性脚片から構成されていると共に、隣り合う弾性脚片間に軸体の押し込みによる回動を生じる前のスリーブ体の突部が位置されるようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
グロメット本体の脚部は四つの弾性脚片から構成されていると共に、スリーブ体にはこれら四つの弾性脚片に対応して突部が四箇所に設けてあり、
この四箇所の突部のうちの対向位置にある二箇所の突部がその余の二つの突部よりやや大きく突きだしており、
しかも、軸体をグロメット本体に押し込みきった状態から所定量スリーブ体共々回動できるようにしてあることを特徴とする請求項3に記載のグロメット。
【請求項5】
グロメット本体の脚部は複数の弾性脚片から構成されていると共に、軸体にスリーブ体に設けた開放部を通じて隣り合う弾性脚片間に入り込むガイド部が備えられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のグロメット。
【請求項6】
スリーブ体に、軸体の押し込みによるこのスリーブ体の回動により、グロメット本体の被係合部に係合してスリーブ体の逆転を阻止する係合部が備えられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のグロメット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図13】
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【図19】
【図20】
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【公開番号】特開2011−196506(P2011−196506A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65974(P2010−65974)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
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