説明

グローブボックスのロック装置

【課題】簡単な構造であり、リッドの開閉操作性が良好な車両用のグローブボックスのロック装置を提供する。
【解決手段】グローブボックスのロック装置40は、車両のインストルメントパネルに設けられた収納空間を開閉可能なリッド20をロック・アンロックするための押圧操作部材30と、押圧操作部材の押圧操作方向とは平行な支軸12を回動中心として回動する揺動レバー41とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両室内に配設されたグローブボックスのロック装置に関する。
【0002】
自動車等の車両の車両室内前方に位置するインストルメントパネルには、小物や貴重品等を密閉収納する収納空間に開閉可能なリッドを有するグローブボックスが設けられている。
【0003】
このグローブボックスのロック装置としては、インストルメントパネルのグローブボックス近傍位置に、プッシュボタンのプッシュ操作により、リモートコントロールケーブルを介してグローブボックスをロックするラッチ機構をアンラッチ作動するオープナーを配設した構成が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−338500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載のロック装置においては、リッドの開操作が可能であり、リッドの閉操作については講じられていない。
【0006】
従って、本発明の目的は、簡単な構造でリッドの開閉操作性が良好な車両用のグローブボックスのロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明は、上記目的を達成するため、車両のインストルメントパネルに設けられた収納空間を開閉可能なリッドを有するグローブボックスと、前記リッドをロック・アンロックするための押圧操作部材と、前記押圧操作部材の押圧操作方向とは平行な支軸を回動中心として回動する揺動機構とを備えてなることを特徴とするグローブボックスのロック装置を提供する。
【0008】
[2]上記[1]記載の揺動機構は、前記インストルメントパネルに設けられ、前記押圧操作部材に加わる押圧操作力を揺動力に変換する揺動レバーを有し、前記揺動レバーは、一端部に前記リッドをロックするロック部と、他端部に前記押圧操作部材の押圧操作により前記支軸を回動中心として前記ロック部を回動させ、前記ロック部のロック状態を解除するロック解除部とを有してなることを特徴とする。
【0009】
[3]上記[2]記載のロック部は、前記リッドに形成された係合部材に弾性的に係止する係止部材を有し、前記押圧操作部材の押圧操作に連動して、前記係止部材と前記係合部材とが互いに係合及び係合解除する構成を有してなることを特徴とする。
【0010】
[4]前記インストルメントパネルに設けられ、前記押圧操作部材の押圧操作に連動して車両下方向に摺動する摺動部材を備え、上記[2]記載のロック解除部は、前記押圧操作部材の押圧操作力を前記摺動部材による摺動力に変換することにより、前記揺動レバーの揺動を許容する構成を有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な構造でリッドの開閉操作性が良好な車両用のグローブボックスのロック装置が効果的に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係るグローブボックスのロック装置を備えた車両の運転席前方車内を示す概略部分図である。
【図2】グローブボックスのロック装置を裏面側からみた概略部分図であり、(a)は斜視図であり、(b)は裏面図であり、(c)は側面図である。
【図3】グローブボックスのロック装置を説明するための概略部分拡大図であり、(a)は図2の実線で囲まれた部分の裏面拡大図であり、(b)は側面拡大図である。
【図4】グローブボックスのロック装置の開動作を説明するための概略部分拡大図であり、(a)は図2の実線で囲まれた部分の裏面拡大図であり、(b)は側面拡大図である。
【図5】グローブボックスのロック装置の閉動作を説明するための概略部分側面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
【0014】
[実施の形態]
(グローブボックスリッドの構成)
図1において、車両1の前部座席の前方には、計器類や助手席用エアバッグなどが装着された合成樹脂製のインストルメントパネル10が車幅方向に配置されている。このインストルメントパネル10の助手席2側には、合成樹脂製のグローブボックスの蓋体となるリッド20が取り付けられている。このリッド20は、下端が図示しないヒンジ機構によりインストルメントパネル10に揺動可能に連結されている。
【0015】
(操作ボタンの構成)
このインストルメントパネル10のリッド20の近傍位置には、図1に示すように、リッド20を開閉操作させる押圧操作部材である操作ボタン30が設けられている。この操作ボタン30は、図2に示すように、インストルメントパネル10の背面に形成されたフレーム11に車両前後方向に往復動可能な状態で取り付けられている。操作ボタン30は、車両前方向に操作ノブを押圧操作することでリッド20を閉鎖状態から開放状態に変換させ、操作ノブの押圧操作を解除して初期の位置に自己復帰するようになっている。
【0016】
(ロック装置の構成)
このインストルメントパネル10のフレーム11には、図2に示すように、リッド20をロック・アンロックするロック装置40が設けられている。この実施の形態に係るロック装置40は、図2及び図3に示すように、リッド20の閉状態を保持するとともに、リッド20に対する開操作によりリッド開動作を許容する揺動レバー41を備えている。この揺動レバー41は、操作ボタン30の押圧操作力を揺動力に変換する揺動機構の一部を構成しており、両端部が互いに直交して屈曲した外観構成を有している。
【0017】
この揺動レバー41の一端部は、図2及び図3に示すように、リッド20をロック・アンロックするロック部42からなる。このロック部42は、インストルメントパネル10のフレーム11に突出形成された支軸12を回動中心として回動可能に取り付けられている。揺動レバー41の重心位置は、支軸12より先端側のロック部42に配設されている。そのロック部42の先端部寄りは、インストルメントパネル10のフレーム11に設けられた自動復帰用の圧縮コイルバネ13の弾力により車両上下方向へ向けて弾性的に揺動するようになっている。
【0018】
このロック部42の先端部は、図3に示すように、ケース形状に形成されている。そのケース43の内部には、リッド20をロック・アンロックするロックピン(係止部材)44と、そのロックピン44を車両下方向へ向けて弾性的に押し付けるロック用の圧縮コイルバネ45とが収容されている。このロックピン44の先端には、リッド20側に上傾斜したロック側テーパ傾斜面44aが形成されている。ロック用の圧縮コイルバネ45は、自動復帰用の圧縮コイルバネ13とは平行に配置されている。
【0019】
リッド20の裏面には、図3に示すように、リッド20を閉鎖可能又は開放可能とする筒状のロックピン挿入部(係合部材)21が延出されている。このロックピン挿入部21の内部には係脱孔22が形成されている。その係脱孔22にロックピン44を圧縮コイルバネ45の弾力により弾性的に係合又は係合解除させることで、リッド20が閉鎖したり、開放したりするようになっている。
【0020】
一方、揺動レバー41の他端部には、図3に示すように、ロック部42のロック状態を解除するロック解除部46が形成されている。そのロック解除部46の先端には、操作ボタン30の押圧操作により、支軸12を回動中心としてロック部42を回動させる押圧片47が操作ボタン30の対向面側に向けて延出している。
【0021】
インストルメントパネル10のフレーム11には、図3に示すように、揺動レバー41を揺動させるスライドピース48が図示しないガイドに沿って車両上下方向に摺動可能に設けられている。操作ボタン30の裏面には、スライドピース48に向けて延びる操作突出部である軸部31が突出して形成されている。その軸部31の先端には、スライドピース48側に上傾斜したノブ側テーパ傾斜面31aが形成されている。
【0022】
操作ボタン30を押圧操作することで、その軸部31のノブ側テーパ傾斜面31aが、図4に示すように、スライドピース48に当接する。その軸部31が操作最大位置に到達すると同時に、操作ボタン30による車両前方向の押圧操作力をスライドピース48による車両下方向の摺動力に変換することにより、揺動レバー41による車両上方向の揺動が許容される。この実施の形態では、操作ボタン30の操作最大位置は、約4mm程度に設定されている。
【0023】
操作ボタン30の軸部31による押圧操作に基づきスライドピース48が圧縮コイルバネ13の弾力に抗して車両下方向に摺動することで、揺動レバー41のロックピン44は、図4に示すように、リッド20の係脱孔22から離脱する。これにより、ロック装置40がアンロック状態となり、リッド20の自重によりリッド20を開くことが可能となる。
【0024】
開状態のリッド20を閉操作するには、図5に示すように、リッド20を閉じる最終操作過程において、図3に示すように、リッド20がロック状態となる揺動レバー41のロック姿勢を維持したままの状態で、リッド20のロックピン挿入部21の先端縁が揺動レバー41のロックピン44を車両上方向に押し上げる。そのロックピン44は、ロックピン挿入部21の先端縁を乗り越えたときにロックピン挿入部21の係脱孔22内に係合する。これにより、ロック装置40がロック状態となり、リッド20を閉鎖状態に戻すことが可能になる。
【0025】
この典型的な実施の形態にあっては、ロック部42の車両上下方向の荷重は、自動復帰用の圧縮コイルバネ13の弾力により付与される。リッド20を開放状態から閉鎖状態に戻すとき、図3に示すように、リッド20が閉鎖したときの揺動レバー41のロック姿勢を維持したままの状態で、図5に示すように、揺動レバー41のロックピン44を圧縮コイルバネ45の弾力に抗して車両上方向に向けて移動させることが可能となる。なお、揺動レバー41の自重又は/及び自動復帰用の圧縮コイルバネ13の弾力によりロック部42の押圧荷重を付与することができることは勿論である。
【0026】
次に、上記のごとく構成された実施の形態におけるロック装置40の動作を図3〜図5に基づいて説明する。
【0027】
(ロック解除動作)
いま、操作ボタン30を車両前方向に向けて押す。すると、操作ボタン30の押圧操作力により、スライドピース48は、図3及び図4に示すように、操作ボタン30の軸部31に形成されたノブ側テーパ傾斜面31aに沿って車両下方向に押される。操作ボタン30の押圧操作力がスライドピース48の摺動力に変換される。スライドピース48は、図示しないガイドに沿って操作ボタン30の軸部31に連動して車両下方向に向けて摺動する。
【0028】
操作ボタン30の押圧操作に伴いスライドピース48が揺動レバー41の押圧片47に当接して下降すると、揺動レバー41は、図4に示すように、圧縮コイルバネ13を押圧して弾性変形させる。その圧縮コイルバネ13の弾力に抗して、揺動レバー41は、支軸12を回動中心として車両上方向に向けて回動する。
【0029】
操作ボタン30が操作最大位置に到達すると同時に、揺動レバー41のロックピン44が、リッド20に形成されたロックピン挿入部21の係脱孔22の上端縁を越えて、ロック装置40のロックが解除される。それと同時に、ロック装置40によるロックが解除されたアンロック状態で、リッド20は自重により車両下方向に向けて開く。
【0030】
操作ボタン30の押圧操作を解除すると、揺動レバー41は、支軸12を回動中心として圧縮コイルバネ13の弾力により車両下方向に向けて回動し、図3に示すように、元のロック位置に復帰する。そして、操作ボタン30は、図3に示すように、初期の位置に復帰する。以上の操作により、ロック装置40はロック解除される。
【0031】
(ロック動作)
開状態にあるリッド20を閉じるとき、リッド20をインストルメントパネル10側へ回動させる。リッド20のロックピン挿入部21の先端が、図5に示すように、揺動レバー41のロックピン44に当接すると、揺動レバー41のロックピン44は、圧縮コイルバネ45の弾力に抗して車両上方向に向けて移動する。このとき、揺動レバー41は、図3に示すように、ロック位置の姿勢を維持したままの状態にある。
【0032】
このロックピン44の先端が、ロックピン挿入部21の係脱孔22の上端縁を乗り越えると同時に、圧縮コイルバネ45の弾力により、ロック装置40のロックピン44とロックピン挿入部21の係脱孔22とが互いに弾性的に係合する。以上の操作により、リッド20はロック装置40によるロック状態で閉じる。
【0033】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態に係るグローブボックスのロック装置40によれば、操作ボタン30に加わる押圧操作力を揺動力に変換することで、リッド20のロック解除を簡易的に行うことができるようになる。操作ボタン30に連動する揺動レバー41を簡易的なロック解除機構として効果的に使用できるので、構成部品点数の削減や外観構成の小型化を実現することができる。
【0034】
以上の説明からも明らかなように、本発明のグローブボックスのロック装置を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態、及び図示例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。本発明にあっては、例えば次に示すような他の変形例も可能である。
【0035】
(1)圧縮コイルバネ13,45は、同じバネ定数を有していてもよく、バネ定数の異なる圧縮コイルバネであってもよい。バネ特性の度合いを設定することにより、ロック装置40の最適なリッド開閉操作性が得られる。
(2)揺動レバー41の設定長さ、及び支軸12の配置位置等を適切に選定することにより、ロック装置40の最適なリッド開閉操作性が得られる。
(3)係止部材であるロックピン44と係合部材であるロックピン挿入部21とは、雄部材と雌部材とによる他の嵌脱自在の固定手段を用いてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…車両、2…助手席、10…インストルメントパネル、11…フレーム、12…支軸、13,45…圧縮コイルバネ、20…リッド、21…ロックピン挿入部、22…係脱孔、30…操作ボタン、31…軸部、31a…ノブ側テーパ傾斜面、40…ロック装置、41…揺動レバー、42…ロック部、43…ケース、44…ロックピン、44a…ロック側テーパ傾斜面、46…ロック解除部、47…押圧片、48…スライドピース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインストルメントパネルに設けられた収納空間を開閉可能なリッドを有するグローブボックスと、
前記リッドをロック・アンロックするための押圧操作部材と、
前記押圧操作部材の押圧操作方向とは平行な支軸を回動中心として回動する揺動機構とを備えてなることを特徴とするグローブボックスのロック装置。
【請求項2】
前記揺動機構は、前記インストルメントパネルに設けられ、前記押圧操作部材に加わる押圧操作力を揺動力に変換する揺動レバーを有し、
前記揺動レバーは、一端部に前記リッドをロックするロック部と、他端部に前記押圧操作部材の押圧操作により前記支軸を回動中心として前記ロック部を回動させ、前記ロック部のロック状態を解除するロック解除部とを有してなることを特徴とする請求項1に記載のグローブボックスのロック装置。
【請求項3】
前記ロック部は、前記リッドに形成された係合部材に弾性的に係止する係止部材を有し、
前記押圧操作部材の押圧操作に連動して、前記係止部材と前記係合部材とが互いに係合及び係合解除する構成を有してなることを特徴とする請求項2に記載のグローブボックスのロック装置。
【請求項4】
前記インストルメントパネルに設けられ、前記押圧操作部材の押圧操作に連動して車両下方向に摺動する摺動部材を備え、
前記ロック解除部は、前記押圧操作部材の押圧操作力を前記摺動部材による摺動力に変換することにより、前記揺動レバーの揺動を許容する構成を有してなることを特徴とする請求項2に記載のグローブボックスのロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−230736(P2011−230736A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105180(P2010−105180)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】