説明

ケイ素の製造方法

本発明は、新規の高純度グラファイト成形、特にグラファイト電極を使用するケイ素、有利にはソーラーシリコンの製造のための改良した方法に、及び新規のグラファイト成形体の製造のための工業的方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の高純度グラファイト成形体、特にグラファイト電極を使用するケイ素、有利にはソーラーシリコンの製造のための改良した方法に、及びそれらの製造のための工業的方法に関する。
【0002】
高温での二酸化ケイ素及び炭素からのソーラーシリコンの製造が公知である。この方法は、有利には、光アーク炉中で、グラファイト電極を用いて実施される。ソーラーシリコンが非常に高純度であるべきであるために、電極又は他の炉構成要素は、あらゆる不純物をケイ素溶融物中に導入してはならない。電極に加えて、炉の多くの他の構成要素が、従って、グラファイトからも製造される。
【0003】
グラファイト電極の主な構成要素は、典型的に、鉱油からの蒸留残留物から製造される石油コークスである。さらに、グラファイト、硬質炭からのコークス、及びカーボンブラックも使用される。使用されるバインダーは、ピッチ、或いはフェノール樹脂及びフルフラール樹脂である。充填剤は、バインダーと激しく及び均一に混合され、そして押出機中で又は等方加工プレスで未処理体に成形される。これは、600〜1200℃の温度で酸素の排除で未処理体の焼結、及び1800〜3000℃の温度範囲でのグラファイト化に続き、実質的に全ての不純物が蒸発するために金属の純度が著しく増加する。電極の性質は、
− 選択される原材料、すなわち、調合物におけるそれらのタイプ及び粒子サイズ+特性、
− バインダーのタイプ、量、及び状態、
− 焼成及びグラファイト化中の加熱速度及び温度、
− 焼成及びグラファイト化した材料の含浸
によって決定される。
【0004】
電極材料に加えて、還元剤は、二酸化ケイ素からのソーラーシリコンの製造において要求される。この目的のために、不純物の低い割合を有する還元剤としての糖の使用(US 4,294,811、WO 2007/106860)又はバインダーとしての糖の使用(US 4,247,528)は公知である。糖は、その場で炉中で、又は前の工程で熱分解される。
【0005】
例えばUS 5,882,726は、炭素−炭素配合物を製造するための方法を開示しており、低融点の糖の熱分解を実施している。
【0006】
GB 733 376は、糖溶液を精製し、かつ300〜400℃で熱分解するための方法を開示している。
【0007】
糖を、電子伝導性物質を得るために高温で熱分解することができることが同様に公知である(WO 2005/051840)。
【0008】
炭水化物の工業規模の熱分解において、しかしながら、それらは、管理及びプロセスの操作を著しく中断しうるカラメル化及び泡形成の結果として問題があってよい。従って、本発明の目的は、二酸化ケイ素の炭素での還元によってケイ素を製造するための方法を改良することであった。特定の目的は、装置の特性を改良することであり、その結果要求される高純度の装置構成要素の製造のための費用は減少するが、しかし不純物は、同様の時間保持で、少なくとも公知の方法と同様のレベルであった。さらに特定の目的は、高純度装置の構成要素のための新規の材料及びそれらの製造方法を開発することであった。
【0009】
明確に挙げられていないさらなる課題は、以下の発明の詳細な説明、実施例及び特許請求の範囲の全体の脈絡から明らかである。
【0010】
前記目的は、発明の詳細な説明、実施例及び特許請求の範囲による発明に従って達せられる。
【0011】
驚くべきことに、炭水化物の熱分解は、得られる、炉、特に光アーク炉のための高純度グラファイト成形体からの炭素材料を得ることができることを見出した。
【0012】
出発材料としての炭水化物、有利には糖は、実質的にどこでも、世界で、同様の純度に近い十分な量で得られる利点を有する。さらに、糖は、その性質によって、ホウ素及び燐による非常に低い汚染を有する。従って、反応物の精製の複雑さは、先行技術において使用される反応物と比較して著しく減少する。最終的に、糖は、化石原材料と比較して、再生可能であり、かつ従って今後十分な量で利用可能でもある非常に安価な原材料である。
【0013】
特定の一実施態様において、炭水化物、有利には糖は、酸化ケイ素、有利にはSiO2、特に沈降シリカ及び/又はフュームドシリカ及び/又はシリカゲルの存在で熱分解される。この方法の1つの利点は、酸化ケイ素は、熱分解において泡の形成効果を抑制し、かつ従って、炭水化物の熱分解のための産業的方法を、厄介な泡形成なしに単純で経済的な実施可能な方法で現在操作することができることである。
【0014】
さらに、カラメル化の低減も、本発明による方法の実施中に観察された。
【0015】
酸化ケイ素、有利には二酸化ケイ素の存在における炭水化物の熱分解において、熱分解生成物(以下で熱分解物ともいわれる)が、特に有利な方法で、さらにグラファイト成形体、有利にはグラファイト電極に加工されて得られることも見出されている。これは、酸化ケイ素、有利には二酸化ケイ素、及び/又は炭化ケイ素でドープしたグラファイト電極を提供する。特定の理論に束縛されることなく、適用は、ドープが、光アーク炉の溶融における炭化ケイ素の調合物上でのケイ素の選択的な形成、及び従って、さらに高純度を有するケイ素の高い収率の達成の可能性をもたらす。
【0016】
本発明の方法は、従って、二酸化ケイ素の炭素での還元による、ケイ素、有利にはソーラーシリコンの製造方法であって、光アーク炉中で実施され、炉又は電極の少なくとも一部が、少なくとも1つの炭水化物、有利には少なくとも1つの糖の熱分解によって得られる炭素材料から順に得られるグラファイト材料から製造されることを特徴とする、製造方法を提供する。
【0017】
グラファイト成形体の残りの割合は、通常かかる部品の製造のために使用される材料からなってよく、それらの材料は、有利には高純度の形であり、その結果グラファイト成形体は、有利には以下で定義された不純物のスペクトルを有する。
【0018】
本発明は、同様に、前記の方法を提供するが、しかし炭水化物の熱分解が、少なくとも1つの酸化ケイ素の存在で実施することを特徴とする。
【0019】
本発明は、グラファイト成形体、有利には光アーク炉の成形体、より有利にはグラファイト電極も提供し、それらが、酸化ケイ素、有利には二酸化ケイ素、及び/又はSiCでドープされていることを特徴とする。特定の一実施態様において、それらは、次の不純物の分布を有する高純度グラファイト成形体である:
a. 5ppm以下、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に3ppm〜0.0001ppt、有利には0.8ppm〜0.0001ppt、より有利には0.6ppm〜0.0001ppt、さらにより良好には0.1ppm〜0.0001ppt、さらにより有利には0.01ppm〜0.0001ppt、さらにより好ましくは1ppb〜0.0001pptのアルミニウム、
b. 10ppm未満〜0.0001ppt、特に5ppm〜0.0001pptの範囲、有利には3ppm〜0.0001pptの範囲又はより有利には10ppb〜0.0001pptの範囲、さらにより有利には1ppb〜0.0001pptの範囲のホウ素、
c. 2ppm以下、有利には2ppm〜0.0001ppt、特に0.3ppm〜0.0001ppt、有利には0.01ppm〜0.0001ppt、より有利には1ppb〜0.0001pptのカルシウム、
d. 20ppm以下、有利には10ppm〜0.0001ppt、特に0.6ppm〜0.0001ppt、有利には0.05ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt、及び最も有利には1ppb〜0.0001pptの鉄、
e. 10ppm以下、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に0.5ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのニッケル、
f. 10ppm未満〜0.0001ppt、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に3ppm未満〜0.0001ppt、有利には10ppb〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのリン、
g. 2ppm以下、有利には1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.6ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのチタン、
h. 3ppm以下、有利には1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.3ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptの亜鉛。
【0020】
不純物を、例えば、排他的にではなく、ICP−MS/OES(誘導結合分光分析−質量分析/光学電子分光分析)及びAAS(原子吸光分光分析法)によって測定できる。
【0021】
本発明のグラファイト成形体は、有利には、400:0.1〜0.4:1000、より有利には400:0.4〜4:10;さらにより有利には400:2〜4:1.3及び特に400:4〜40:7の炭素とケイ素(二酸化ケイ素として算出)の比を有する。
【0022】
本発明による方法は、より特にグラファイト成形体が、少なくとも1つの炭水化物、有利には少なくとも1つの糖によって得られる炭素材料から製造され、その際好ましい異形における熱分解が、少なくとも1つの酸化ケイ素の存在で実施されることに注目する。
【0023】
本発明による方法は、非常に低い温度で実施されるべき炭水化物の熱分解を可能にする。従って、特に省エネルギー(低温モード)のために、本発明による方法において上は1600℃〜1700℃から下は800℃未満までの熱分解温度を下げることが利点である。例えば、本発明による方法は、第一の好ましい一実施態様において、有利には250〜800℃、より有利には300〜800℃、さらにより有利には350〜700℃及び特に有利には400〜600℃の温度で操作される。この方法は、極めてエネルギー効率がよく、かつさらに、カラメル化を低減し、そしてガス状反応生成物の取扱いが容易である利点を有する。
【0024】
しかしながら、原則として、第二の一実施態様において、800〜1700℃、より有利には900〜1600℃、さらにより有利には1000〜1500℃、及び特に1000〜1400℃で反応を実施することも可能である。一般に、グラファイト化のために続く消費を減少又は除いた、より高いグラファイト含有率を有する熱分解生成物が得られる。
【0025】
本発明による方法は、有利には、保護ガス下で及び/又は減圧(真空)下で実施される。例えば、本発明による方法は、有利には、1mbar〜1bar(雰囲気圧)、特に1〜10mbarの圧力で実施される。
【0026】
適切には、使用される熱分解装置を、熱分解の開始前に乾燥し、そして実際には、不活性ガス、例えば窒素又はアルゴン又はヘリウムでのパージングによって酸素を有さないためにパージする。本発明による方法における熱分解時間は、該熱分解時間で、一般に1分〜48時間、有利には15分〜18時間、特に30分〜12時間であり、所望の熱分解時間に到達するまでの加熱時間は、さらに同様の大きさの程度の範囲内、特に15分〜8時間であってよい。本発明の方法は、一般的に、バッチ式で実施されるが、しかし、連続的にも実施することができる。
【0027】
本発明に従って得られるA−Cを基礎とする熱分解生成物は、特にグラファイトの割合で、及び特定の実施態様において二酸化ケイ素の割合で木炭を含む。熱分解生成物は、場合により、他の炭素の形、例えばコークスの割合を含み、不純物、例えばB、P、As及びAlの化合物において特に低い。熱分解生成物のAl、B、Ca、Fe、Ni、P、Ti及びZnの不純物の分布は、最も有利には、グラファイト成形体に関して前記で定義された割合までの化合物に対応する。
【0028】
本発明による方法において使用される炭水化物混合物の成分は、有利には、単糖、すなわちアルドース又はケトース、例えばトリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、特にグルコース及びフルクトース、しかし前記モノマー、例えばいくつか挙げただけでもラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、又はそれらの誘導体を基礎とし、及びデンプンを含み、アミロース及びアミロペクチンを含み、いくつか多糖を挙げただけでもグリコーゲン、グリコサン及びフルクトサンを基礎とする相応するオリゴ糖及び多糖である。
【0029】
特定の純粋な熱分解生成物を要求する場合に、本発明による方法は、有利には、前記炭水化物を、イオン交換体を使用する処理によってさらに精製することによって改良される。この場合炭水化物を、適した溶剤、有利には水、より有利には脱イオン水又は脱塩水中で溶解し、そしてイオン交換樹脂、有利にはアニオン又はカチオン樹脂で満たしたカラムを介して通過し、得られた溶液を、例えば加熱によって(特に減圧下で)溶剤成分を除去することによって濃縮し、そして有利には結晶型で精製した炭水化物を、例えば溶液を冷却して、そして結晶成分を濾過又は遠心処理を含む方法によって取り除くことによって得る。当業者は、異なるイオンを取り除くための種々のイオン交換体を承知している。原則的に、糖溶液の所望の純度に達するために連続してイオン交換工程の十分な数を結合することが可能である。イオン交換体による精製の代わりに、しかしながら、炭水化物出発材料を精製するために当業者に公知の他の方法を使用することができる。ここでの例は、錯化剤の添加、電気化学的精製法、クロマトグラフ法を含む。
【0030】
しかしながら、本発明による方法において、少なくとも2つの前記炭水化物の混合物を、炭水化物又は炭水化物成分として使用することも可能である。本発明による方法において、経済的に実施可能な量で使用可能な結晶糖、例えばそれ自体公知の方法でサトウキビもしくはビーツからの溶液又はジュースの結晶化によって得られるような糖、すなわち通常の結晶糖、例えば精製糖、有利には物質の特定の融点/軟化点範囲及び1μm〜10cm、有利には10μm〜1cm、特に100μm〜0.5cmの平均粒子サイズを有する結晶糖を提供することが特に好ましい。粒子サイズを、例えば(しかし排他的にではなく)スクリーン解析、TEM、SEM又は光学顕微鏡によって測定することができる。しかしながら、溶解した形で、例えば(しかし排他的にではなく)水溶液で、炭水化物を使用することも可能であり、この場合、溶剤は、明白に、多かれ少なかれ急速に、実際の熱分解温度の達成前に蒸発する。最も有利には、炭水化物成分のAl、B、Ca、Fe、Ni、P、Ti及びZnの不純物の分布は、グラファイト成形体に関して前記で定義された割合に対応する。
【0031】
本発明の記載内容における酸化ケイ素は、SiOx、[式中、x=0.5〜2.5である]、有利にはSiO、SiO2、酸化ケイ素(水和物)、水性又は水含有SiO2、フュームドシリカ又は沈降シリカの形、湿潤、乾燥又は焼成したシリカ、例えばAerosil(登録商標)もしくはSipernat(登録商標)、又はシリカゾルもしくはシリカゲル、多孔質もしくは密なシリカガラス、ケイ砂、石英グラスファイバー、例えば光ガイドファイバー、石英ガラスビーズ、又は前記成分の少なくとも2つの混合物である。前記材料は、最も有利には二酸化ケイ素である。
【0032】
本発明による方法において、0.1〜600m2/g、より有利には10〜500m2/g、特に50〜400m2/gの内部表面積を有する二酸化ケイ素を使用することが好ましい。内部又は比表面積は、例えばBET法(DIN ISO 9277)によって測定されてよい。
【0033】
10nm〜1mm、特に1〜500μmの平均粒子サイズを有する二酸化ケイ素を使用することが好ましい。ここで、粒子サイズを測定するための方法は、TEM(透過型電子顕微鏡)、SEM(走査型電子顕微鏡)又は光学顕微鏡を含む。
【0034】
本発明による方法において使用される酸化ケイ素は、高い(99%)〜非常に高い(99.9999%)純度を有し、かつ不純物、例えばB、P、As及びAlの化合物の合計含有率が、有利には、≦10ppm(質量)、特に≦1ppm(質量)であるべきである。特に有利には、使用される二酸化ケイ素は、Al、B、Ca、Fe、Ni、P、Ti及びZnに関して、グラファイト成形体に関して前記で定義された分布に対応する不純物の分布を有する。
【0035】
本発明による方法の特定の一実施態様において、炭水化物を、1000:0.1〜0.1:1000の質量比で、SiO2として算出された消泡剤、すなわち、酸化ケイ素成分に比例して使用することができる。炭水化物成分と酸化ケイ素成分との質量比は、有利には、800:0.4〜1:1、より有利には500:1〜100:13、最も有利には250:1〜100:7に調整されうる。
【0036】
炭水化物成分、又は炭水化物成分と酸化ケイ素成分は、有利には粉末の形又は混合物として熱分解されてよい。しかしながら、炭水化物又は炭水化物と酸化ケイ素との混合物を、熱分解前に、成形加工を受けることも可能である。この目的のために、当業者に公知の全ての成型方法が使用される。適した方法、例えばブリケッティング、押出、プレス成形、タブレット化、ペレット化、顆粒化、及びそれ自体公知の他の方法は、当業者に十分によく知られている。安定な成形体を得るために、例えば炭水化物溶液又は糖蜜又はリグノスルホネート又は"ペンタラウゲ(pentalauge)"(ペンタエリトリトール生成物からの廃液)又はポリマー分散液、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、スチレン−ブタジエン、スチレン−アクリレート、天然ラテックス、又はそれらの混合物をバインダーとして添加することができ、高純度バインダーを使用することが好ましい。
【0037】
本発明による方法の熱分解工程の実施のために使用される装置は、例えば、誘導加熱真空反応器であってよく、この場合、該反応器は、ステンレス鋼で構成されてよく、かつ反応に関して、適した不活性物質、例えば高純度SiC、Si33、高純度石英ガラス又はシリカガラス、高純度炭素又はグラファイト、セラミックで覆われるか又は内張りされていてよい。しかしながら、他の適した反応容器、例えば対応する反応るつぼ又は反応バットの収容のための真空チャンバーを備えた導入オーブンを使用することもできる。
【0038】
一般に、本発明による方法の熱分解工程を、以下の用に実施する。
【0039】
反応内部及び反応容器を、適切に乾燥し、そして例えば室温〜300℃の温度まで加熱してよい不活性ガスでパージする。続いて、熱分化されるべき炭水化物又は炭水化物混合物、又は特定の実施態様においてさらに消泡剤成分として酸化ケイ素を、粉末として又は成形体として、熱分解装置の反応チャンバー又は反応容器中に導入する。供給材料を、密接に事前に混合し、減圧下で脱ガスし、そして保護ガス下で製造した反応物中に移す。反応器は、既にわずか予め加熱してもよい。続いて、温度を、連続して又は段階的に所望の熱分解温度に操作してよく、そして圧力を、できるだけ急速に反応混合物から逃げるガス状の分解生成物を除去することが可能であるために減少してよい。特に、酸化ケイ素の添加の結果として、非常に実質的に反応混合物の泡形成を妨げることが利点である。熱分解反応が終了した後、熱分解生成物を、有利には1000〜1500℃の範囲の温度で、一定の時間熱的に後処理してよい。
【0040】
一般に、これは、高純度炭素を含む熱分解生成物又は組成物を提供する。
【0041】
さらに、熱分解生成物は、400:0.1〜0.4:1000、より有利には400:0.4〜4:10;さらにより有利には400:2〜4:1.3及び特に400:4〜40:7の炭素とケイ素(二酸化ケイ素として算出)の比を有してよい。
【0042】
熱分解生成物のグラファイト含有率によって、熱分解生成物は、さらに当業者に公知の方法によって成形体に直接加工されてよく、又は熱分解前に成形する場合に既に成形体の形である。
【0043】
しかしながら、グラファイト化工程を実施することも必要であってよい。この工程は、当業者に公知の方法によって同様に実施されてよい。
【0044】
有利には、熱分解生成物は、場合により、バインダー及び/又は他の成分と共に混合され、そして成形を受ける。糖成形体の製造のための前記で特定された全ての方法を使用することができる。押出機中で又は等方加工プレスで又はダイプレスで又は押出プレスで未処理体を成形することが好ましい。熱分解生成物のグラファイト含有率によって、600〜1200℃の温度で酸素の排除で未処理体の任意の焼結、及び/又は1800〜3000℃の温度範囲での任意のグラファイト化がある。
【0045】
適したバインダーは、有利には、300〜800℃の温度でコークス化するもの、例えばアルギネート、セルロース誘導体又は他の炭水化物、有利には単糖、例えばフルクトース、グルコース、ガラクトース及び/又はマンノース、及びより有利にはオリゴ糖、例えばスクロース、マルトース及び/又はラクトース、しかしポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、スチレン−ブタジエン、スチレン−アクリレート、天然ラテックス、又はそれらの混合物、又はオルガノシランである。Al、B、Ca、Fe、Ni、P、Ti及びZnに関して、グラファイト成形体に関して前記で定義された分布に対応する不純物の分布を有する高純度成形体、すなわちバインダーを使用することが好ましい。
【0046】
グラファイト成形体は、30〜100質量%の範囲までのグラファイトからなってよく、すなわち熱分解生成物が、完全にグラファイト化される必要はない。炭素源としてのグラファイト成形体は、もっぱら、完全に又は部分的にグラファイト化された熱分解生成物を含むが、しかしさらにグラファイト化した又はグラファイト化していない炭素源を、バインダーを介して又はさらなる成分を介して添加することも可能である。従って、さらなる成分は、有利には、本発明の熱分解生成物と異なる少なくとも1つの炭素源を含む。これは、例えば、カーボンブラック又は活性炭又はコークス異形又は木炭異形、又はグラファイト又は成形体の焼成中に又はグラファイト化中にコークスに転化される他の炭素化合物を含んでよい。最も有利には、グラファイト成形体の全ての構成要素は、Al、B、Ca、Fe、Ni、P、Ti及びZnに関して、グラファイト成形体に関して前記で定義された分布に対応する不純物の分布を有する。
【0047】
SiO2含有熱分解生成物のグラファイト化において、SiO2は、完全に又は部分的に炭素と反応して、SiO又はSiCを得ることができ、その結果この方法で、酸化ケイ素及び/又は炭化ケイ素でドープした生成物を得ることができる。
【0048】
成形体は、有利には、電極又は電極構成要素、又は炉の構成要素であり、有利には、溶融物と接触する構成要素である。
【0049】
要約すると、ソーラーシリコンを製造するための本発明による方法は、従って、有利には、次の工程d)及び場合により工程a)〜c)及びe)〜f)の1つ以上を含む:
a)少なくとも1つの前記の炭水化物溶液又は炭水化物を精製する工程、
b)少なくとも1つの炭水化物溶液と、少なくとも1つの酸化ケイ素、有利には少なくとも1つの二酸化ケイ素とを混合する工程、
c)前記の炭水化物又は炭水化物と酸化ケイ素から成形体を製造する工程、
d)前記の炭水化物溶液を熱分解する工程、
e)熱分解した炭水化物から成形体、有利には電極を製造する工程、
f)前記をグラファイト化する工程。
【0050】
冶金学的ケイ素及びソーラーシリコンの定義は、一般に公知である。例えば、ソーラーシリコンは、99.999質量%以上のケイ素含有率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1からの熱分解生成物の電子顕微鏡写真を示す図。
【0052】
本発明を、以下の実施例及び比較例によって詳細に例示及び説明するが、本発明の目的を制限するものではない。
【0053】
実施例
比較例1
市販の精製糖を、石英ボトル中で、保護ガス下で溶融し、そして約1600℃まで加熱した。この工程において、反応混合物は著しく泡立ち、そして漏れた。カラメル化が同様に観察され、残った熱分解生成物は、反応容器の壁に張り付いていた。
【0054】
実施例1
市販の精製糖を、SiO2(Sipernat(登録商標)160)と、20:1(糖:SiO2)の質量比で混合し、溶融し、そして約800℃まで加熱した。カラメル化は観察されず、あらゆる泡形成も生じなかった。観察されたものは、グラファイトを含有した粒子状の熱分解生成物であり、有利には、実質的に反応容器の壁に付着していなかった。図1は、実施例1からの熱分解生成物の電子顕微鏡写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ケイ素の炭素での還元による、ケイ素、有利にはソーラーシリコンの製造方法であって、光アーク炉中で実施され、炉又は電極の少なくとも一部が、少なくとも1つの炭水化物、有利には少なくとも1つの糖の熱分解によって得られる炭素材料から順に得られるグラファイト材料から製造されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記炭水化物の熱分解を、有利には二酸化ケイ素の、より有利にはフュームドシリカ又は沈降シリカ又はシリカゲルの形の少なくとも1つの酸化ケイ素の存在で実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用する炭水化物成分が、少なくとも1つの結晶糖であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記炭水化物と酸化ケイ素(それぞれ合計で算出)を、1000:0.1〜0.1:1000の質量比で使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記熱分解を、酸素を排除した反応器中で実施することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱分解を、800℃未満の温度で、有利には300〜800℃で、さらにより有利には350〜700℃で及び特に有利には400〜600℃で、又は800〜1700℃、より有利には900〜1600℃、さらにより有利には1000〜1500℃及び特に1000〜1400℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱分解を、1mbar〜1barの圧力で、及び/又は不活性ガス雰囲気で実施することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記炭水化物又は炭水化物混合物又は炭水化物と酸化ケイ素との混合物が、熱分解前に、成形加工、有利にはブリケッティング、押出、圧縮、タブレット化、ペレット化、顆粒化を受け、そして得られた成形体を熱分解することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記炭水化物が、熱分解前に、有利には少なくとも1つのイオン交換体によって少なくとも1つの精製工程を受けることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記炭水化物成分及び/又は酸化ケイ素成分を、純粋な又は高純度の形で、有利には以下:
a. 5ppm以下、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に3ppm〜0.0001ppt、有利には0.8ppm〜0.0001ppt、より有利には0.6ppm〜0.0001ppt、さらにより良好には0.1ppm〜0.0001ppt、さらにより有利には0.01ppm〜0.0001ppt、さらにより好ましくは1ppb〜0.0001pptのアルミニウム、
b. 10ppm未満〜0.0001ppt、特に5ppm〜0.0001pptの範囲、有利には3ppm〜0.0001pptの範囲又はより有利には10ppb〜0.0001pptの範囲、さらにより有利には1ppb〜0.0001pptの範囲のホウ素、
c. 2ppm以下、有利には2ppm〜0.0001ppt、特に0.3ppm〜0.0001ppt、有利には0.01ppm〜0.0001ppt、より有利には1ppb〜0.0001pptのカルシウム、
d. 20ppm以下、有利には10ppm〜0.0001ppt、特に0.6ppm〜0.0001ppt、有利には0.05ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt、及び最も有利には1ppb〜0.0001pptの鉄、
e. 10ppm以下、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に0.5ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのニッケル、
f. 10ppm未満〜0.0001ppt、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に3ppm未満〜0.0001ppt、有利には10ppb〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのリン、
g. 2ppm以下、有利には1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.6ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのチタン、
h. 3ppm以下、有利には1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.3ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptの亜鉛
の含有率で使用し、
かつ、より有利には、10ppm未満、有利には5ppm未満、より有利には4ppm未満、さらにより有利には3ppm未満、特に有利には0.5〜3ppm及び非常に特に有利には1ppm〜3ppmの前記不純物の合計で使用することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
酸化ケイ素、有利には二酸化ケイ素、及び/又は炭化ケイ素でドープされていることを特徴とする、グラファイト成形体、有利には光アーク炉の成形体、より有利にはグラファイト電極。
【請求項12】
前記グラファイト成形体が、以下の不純物の割合:
a. 5ppm以下、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に3ppm〜0.0001ppt、有利には0.8ppm〜0.0001ppt、より有利には0.6ppm〜0.0001ppt、さらにより良好には0.1ppm〜0.0001ppt、さらにより有利には0.01ppm〜0.0001ppt、さらにより好ましくは1ppb〜0.0001pptのアルミニウム、
b. 10ppm未満〜0.0001ppt、特に5ppm〜0.0001pptの範囲、有利には3ppm〜0.0001pptの範囲又はより有利には10ppb〜0.0001pptの範囲、さらにより有利には1ppb〜0.0001pptの範囲のホウ素、
c. 2ppm以下、有利には2ppm〜0.0001ppt、特に0.3ppm〜0.0001ppt、有利には0.01ppm〜0.0001ppt、より有利には1ppb〜0.0001pptのカルシウム、
d. 20ppm以下、有利には10ppm〜0.0001ppt、特に0.6ppm〜0.0001ppt、有利には0.05ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt、及び最も有利には1ppb〜0.0001pptの鉄、
e. 10ppm以下、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に0.5ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのニッケル、
f. 10ppm未満〜0.0001ppt、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に3ppm未満〜0.0001ppt、有利には10ppb〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのリン、
g. 2ppm以下、有利には1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.6ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのチタン、
h. 3ppm以下、有利には1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.3ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptの亜鉛
を有することを特徴とする、請求項11に記載のグラファイト成形体。
【請求項13】
前記グラファイト成形体が、400:0.1〜0.4:1000、より有利には400:0.4〜4:10;さらにより有利には400:2〜4:1.3及び特に400:4〜40:7の炭素とケイ素(二酸化ケイ素として算出)の比を有することを特徴とする、請求項11又は12に記載のグラファイト成形体。

【図1】
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【公表番号】特表2013−510796(P2013−510796A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539260(P2012−539260)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066833
【国際公開番号】WO2011/057947
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】