説明

ケイ素を含む階層的な多孔度を有する材料

【課題】 組織化されたメソ細孔構造およびミクロ結晶骨格の両方の利点を有するアルミノケイ酸塩材料を提供する。
【解決手段】 階層的な多孔度を有する材料が記載され、この材料は、少なくとも2つの球状基本粒子によって構成され、該球状粒子のそれぞれは、細孔サイズが0.2〜2nmであるゼオライトナノ結晶と、ケイ素酸化物をベースとするマトリクスを含み、該マトリクスは、メソ構造化され、かつ、細孔サイズが1.5〜30nmであり、厚さ1〜20nmの非晶質壁を有し、該球状基本粒子は、10μmの最大直径を有する。ケイ素酸化物をベースとするマトリクスは、アルミニウムを含んでもよい。前記材料の製造も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素を含む材料、特にメタロケイ酸塩材料、より詳細にはミクロ多孔度およびメソ多孔度領域の分野において階層的な多孔度を有するアルミノケイ酸塩材料の分野に関する。本発明はまた、「エアゾール」合成技術を用いて得られる前記材料の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
非常に広範囲にわたって、ミクロ細孔材料からマクロ細孔材料へ階層的な多孔度を有する材料を用いて明確に規定された多孔度、すなわち、種々のサイズの細孔を有する材料を生成するための新規な合成戦略が、1990年代半ば以来科学界において広く開発された(非特許文献1)。細孔サイズが制御された材料が得られる。特に、「緩和な化学」方法を用いる合成の開発によって、低い温度で水溶液または極性溶媒中に無機前駆体をテンプレート、概して、イオン性または非荷電の分子または超分子の界面活性剤と共存させることによりメソ構造化された材料が生成されるようになった。無機前駆体の加水分解/凝集反応と共に無機前駆体とテンプレートとの間の静電相互作用または水素結合を制御することによって、無機マトリクスにおいて制御された均一なサイズの界面活性剤のミセル凝集を生じて有機および無機相が協調して組織化される。とりわけテンプレートの濃度によって支配されるこの共同的自己組織化現象は、テンプレートの濃度が臨界ミセル濃度より低い試薬溶液の連続的な蒸発によって誘発されてもよく、このことは、基板上に堆積する場合にはメソ構造化された薄膜を形成する(浸漬被覆)かまたは溶液が霧化される場合にはメソ構造化された粉体を形成する(エアゾール技術)かのいずれかにつながる。例として、特許文献1は、浸漬被覆技術を用いたメソ構造化された有機−無機混成薄膜の形成を開示し、同一の著者は、純粋なシリカのメソ構造化された材料を生成するためにエアゾール技術も用いている(非特許文献2)。次いで、細孔は、界面活性剤を除去することによって解放され、これは通常化学抽出または熱処理によって行われる。
【0003】
いくつかのクラスのメソ構造化された材料が、異なる性質の採用される無機前駆体およびテンプレート並びに課される操作条件を用いて開発された。例として、Mobilによって最初に開発されたM41Sクラス(非特許文献3)は、第4級アンモニウム塩等のイオン性界面活性剤を用いて得られたメソ細孔材料によって構成され、概して、六方晶系、立方晶系またはラメラ構造、1.5〜10nmの均一なサイズの細孔および1〜2nm程度の厚さを有する非晶質壁を有しており、これは広く研究されている。続いて、前記材料に比較して酸−塩基特性を向上させつつ水熱安定性を高めるために、直接合成または合成後処理によってアルミニウム元素を非晶質シリカ骨格に組み込むことが特に注目され、得られたアルミノケイ酸塩材料のSi/Alモル比は1〜1000である(非特許文献4〜5)。このようなアルミノケイ酸塩によって開発された水熱安定性および酸−塩基特性は、それらが精製処理または石油化学において工業スケールで用いられることを許容していないが、しかしながら、それらは、ブロック共重合体タイプの脂肪族巨大分子等の新規なテンプレートの使用に着実につながっており、これら最近になって生成されたメソ構造化された材料は、一般に六方晶系、立方晶系またはラメラ構造を有し、4〜50nmの均一なサイズの細孔および3〜7nmの厚さの非晶質壁を有している。最終のメソ構造化された材料の構造および所望の組織化程度に応じて、採用される合成方法は、酸性媒体(pH約1)中(特許文献2)または中性媒体中(特許文献3)で行われ得、用いられるテンプレートの性質も重要な役割を果たす。得られたメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料の水熱安定性特性は他のテンプレートを用いて合成されたそれらの同族体と比較して増大するが、それらの酸−塩基特性は、非常に類似したままである(1<Si/Al<1000)(非特許文献6〜7)。
【0004】
上記に説明される非常に多くの仕事がメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料の水熱安定性および酸−塩基特性を改良することを目標とするにも関わらず、それらは、工業スケールで未だ開発されていない。主たる理由は、それらの酸性度に関連するそれらの触媒としての挙動が、結晶ゼオライトアルミノケイ酸塩よりも非晶質アルミノケイ酸塩に近いことにある。したがって、非常に多くの仕事は、組織化されたメソ細孔構造およびミクロ結晶骨格の両方の利点を有するアルミノケイ酸塩材料を生成することを約束していない。このため、混合された材料すなわちメソ構造化された/ゼオライト組成物を生成するためのいくつかの合成技術が公開文献において記録された。最初の合成技術は、上記に説明された従来方法を用いてメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料を合成する第1工程と、次いで、前記材料を、ゼオライト材料を合成するために通常用いられるテンプレートに含浸させる第2工程とからなる。適切な水熱処理により、出発時のメソ構造化されたアルミノケイ酸塩の非晶質壁がゼオライト化する(特許文献4)。第2の合成技術は、ゼオライト種結晶のコロイド溶液に、最終材料のメソ構造化を行うために通常用いられるテンプレートを加える工程からなる。組織化されたメソ多孔度を有する無機マトリクスを生成すること、およびそのマトリクス中でゼオライト種結晶を成長させて結晶壁を有するメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料を得ることは同時に起こることである(非特許文献8〜9)。これら2つの技術の変形は、最初に2つのテンプレートの存在下にアルミニウムおよびケイ素前駆体の混合物を製造する工程からなっており、テンプレートのうちの1つはゼオライト系を発生させ得、テンプレートのうちの他方は、メソ構造化を生じさせ得る。次いで、この溶液は可変の水熱処理条件を用いる2回の結晶化工程を経る。最初の工程により、組織化された多孔度を有するメソ細孔性構造が形成され、第2の工程により、非晶質壁がゼオライト化する(非特許文献10)。これら合成方法は全て、ゼオライト種結晶の成長または壁のゼオライト化が完全には制御されない場合にはメソ細孔構造が損傷され、かつ、これにより、メソ細孔構造の利点を失うという不利益を蒙り、これにより、このような技術が実行し難いものとなっていた。メソ構造化された/ゼオライト組成物を直接生成することによってそのような現象を避けることが可能である。これは、ゼオライト種結晶の溶液およびメソ構造化されたアルミノケイ酸塩種結晶の溶液の混合物を熱処理すること(非特許文献11)によって、または、予め合成されたメソ構造化されたアルミノケイ酸塩の表面上にゼオライトの層を成長させること(非特許文献12)によって達成される。実験上の観点から、上記の浸漬被覆またはエアゾール技術とは対照的に、規定されたような階層的多孔度を有するアルミノケイ酸塩材料は、溶液中の無機前駆体およびテンプレート(単数または複数)の連続的濃縮によって得られず、従来においては、水溶液または極性溶媒中でテンプレートの臨界ミセル濃度の値を調節することによって直接析出させることによって得られる。さらに、析出によって得られるこのような材料の合成は、上澄み中に見出されかもしれないので、オートクレーブ内で成熟させる工程を必要とする。通常得られる基本粒子は、形状が規則的になっておらず、一般的には200〜500nmであり、それよりも大きい場合もあるサイズによって概して特徴付けられる。
【特許文献1】米国特許第6,387,453号明細書
【特許文献2】国際公開第99/37705号パンフレット
【特許文献3】国際公開第96/39357号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6,669,924号明細書
【非特許文献1】シー・サンチェス(C Sanchez),ビー・レビュー(B Lebeau),ジェイ・パタリン(J Patarin)著,「ジー・ジェイ・デ・エー・エー・ソラー・イリア(G J de A A Soler-Illia)」,ケミカル・レビュー(Chem Rev),2002年,第102巻,p4093
【非特許文献2】シー・ジェイ・ブリンカ(C J Brinker)、ワイ・リュ(Y Lu)、エイ・セリンジャ(A Sellinger)、エイチ・ファン(H Fan)著、「アドゥヴ・マター(Adv Mater)」,1999年,第11巻,第7号
【非特許文献3】ジェイ・エス・ベック(J S Beck),ジェイ・シー・ヴァーチュリ(J C Vartuli),ダブリュー・ジェイ・ローズ(W J Roth),エム・イー・レノビッツ(M E Leonowicz),シー・ティー・クレスゲ(C T Kresge),ケー・ディー・シュミッツ(K D Schmitt),シー・ティー−ダブリュー・チュ(C T-W Chu),ディー・エイチ・オルソン(D H Olson),イー・ダブリュー・シェパード(E W Sheppard),エス・ビー・マッククレン(S B McCullen),ジェイ・ビー・ヒギンズ(J B Higgins),ジェイ・エル・シュレンカー(J L Schlenker)著,「ジャーナル・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ(J Am Chem Soc)」,1992年,第114巻,第27号,p10834
【非特許文献4】エス・カウィ(S Kawi),エス・シー・チェン(S C Chen)著,「スタド・サーフ・ソサイ・キャタル(Stud Surf Sci Catal),2000年,第129巻,p227
【非特許文献5】アール・モカヤ(R Mokaya),ダブリュー・ジョーンズ(W Jones)著,「ケミカル・コミュニケーション(Chem Commun)」,1997年,p2185
【非特許文献6】ディー・ザホ(D Zaho),ジェイ・フェン(J Feng),キュー・ヒュオ(Q Huo),エヌ・メロシュ(N Melosh),ジー・エイチ・フレドリクソン(G H Fredrickson),ビー・エフ・シュメルケ(B F Chmelke),ジー・ディー・スタッキー(G D Stucky)著,「サイエンス(Science)」,1998年,第279巻,p548
【非特許文献7】ワイ−エイチ ユ(Y-H Yue),エイ・ゲデオン(A Gedeon),ジェイ−エル ボナルデット(J-L Bonardet),ジェイ・ビー・エスピノース(J B d’Espinose),エヌ・メロシュ(N Melosh),ジェイ・フライサード(J Fraissard)著,「スタド・サーフ・ソサイ・キャタル(Stud Surf Sci Catal)」,2000年,第129巻,p209
【非特許文献8】ゼット・チャン(Z Zhang),ワイ・ハン(Y Han),エフ・シャウ(F Xiao),エス・チウ(S Qiu),エル・ジュー(L Zhu),アール・ワン(R Wang),ワイ・ユ(Y Yu),ゼット・チャン(Z Zhang),ビー・ゾウ(B Zou),ワイ・ワン(Y Wang),エイチ・サン(H Sun),ディー・ジャウ(D Zhao),ワイ・ウェイ(Y Wei)著,「ジャーナル・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ(J Am Chem.Soc)」,2001年,第123巻、p5014
【非特許文献9】ワイ・リュ(Y Liu),ダブリュー・チャン(W Zhang),ティー・ジェイ・ピナバイア(T J Pinnavaia),「ジャーナル・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ(J Am Chem Soc),2000年,第122巻、p8791
【非特許文献10】エイ・カールソン(A Karlsson),エム・ステッカー(M Stocker),アール・シュミット(R Schmidt),「ミクロポール・メソポール・マター(Micropor Mesopor Mater)」,1999年,第27巻,p181
【非特許文献11】ピー・プロケソヴァ(P Prokesova),エス・ミントヴァ(S Mintova),ジェイ・セツカ(J Cejka),「ミクロポール・メソポール・マター(Micropor Mesopor Mater)」,2003年,第64巻,第64号,p165
【非特許文献12】ディー・ティー・オン(D T On),エス・カリアジ(S Kaliaguine),「アンゲバント・ケミー・インター・エド(Angew Chem Int Ed)」,2002年,第41巻,p1036
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、組織化されたメソ細孔構造およびミクロ結晶骨格の両方の利点を有するアルミノケイ酸塩材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、階層的(hierarchical)な多孔度を有し、かつ、少なくとも2つの球状基本(elementary)粒子によって構成された材料であって、該球状粒子のそれぞれは、0.2〜2nmの細孔サイズを有するゼオライトナノ結晶とケイ素酸化物をベースとするマトリクスとを含み、該マトリクスはメソ構造化され、細孔サイズは1.5〜30nmであり、かつ、厚さ1〜20nmの非晶質壁を有し、該球状粒子は、10μmの最大直径を有する材料に関する。ケイ素酸化物をベースとする前記マトリクスは、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、リン、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタルおよびイットリウムによって構成された群から、好ましくは、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、ゲルマニウムおよびガリウムによって構成された群から選ばれる、より好ましくはアルミニウムである少なくとも1種の元素Xをさらに含んでもよい。本発明はまた、本発明の材料の製造に関する。本発明の材料を製造するための第1の方法は、a)テンプレートの存在下に、300nmの最大ナノメータ寸法を有するゼオライトナノ結晶を合成して、該ナノ結晶が分散されたコロイド溶液を得る工程と、b)溶液中で、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種のシリカ前駆体、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、リン、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタルおよびイットリウムによって構成された群から選択された少なくとも1種の元素Xの少なくとも1種の随意の前駆体、および工程a)により得られた少なくとも1種のコロイド溶液を混合する工程と、c)工程b)で得られた該溶液をエアゾール霧化して、200μm未満の直径を有する球状液滴を形成する工程と、d)該液滴を乾燥する工程と、e)該テンプレートおよび該界面活性剤を除去して、階層的多孔度を有する材料を得る工程とを包含する。本発明による材料を製造する第2の方法は、a’)溶液中で、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種のシリカ前駆体、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、リン、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタルおよびイットリウムによって構成された群から選択された少なくとも1種の元素Xの少なくとも1種の随意の前駆体、および300nmの最大ナノメータ寸法を有するナノ結晶の形態で該溶液中に分散するゼオライト結晶を混合する工程と、b’)工程a’)で得られた該溶液をエアゾール霧化して、200μm未満の直径を有する球状液滴を形成する工程と、c’)該液滴を乾燥する工程と、d’)少なくとも該界面活性剤を除去する工程とを包含する。本発明の材料のマトリクスの秩序化された構造は、エアゾール技術により誘発された蒸発によるミセル化または自己組織化現象に対して連続的である。
【0007】
本発明の材料は、メソ構造化された無機マトリクスを含み、該無機マトリクスは、ケイ素酸化物をベースとし、非晶質壁を有し、この非晶質壁中にゼオライトナノ結晶が捕捉され、ゼオライトクラスからの材料およびケイ素酸化物をベースとする材料、より正確には、メソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料の構造、表面組織および酸−塩基特性を同時に示す。メソ構造化されたケイ素/ゼオライトをベースとする複合材料のナノメータスケールでの製造により、結果として、同一の球状粒子内にミクロ細孔性およびメソ細孔性の区域の偶発的な組合せを生じる。さらに、本発明の材料は球状基本粒子によって構成されるので、前記粒子の直径は、有利には50nm〜10μm、好ましくは50〜300nmであり、前記粒子の制限された寸法およびそれらの均一の形状によって、非均一形状、すなわち、不規則で、かつ500nmをはるかに超える寸法を有する形状の基本粒子の形態の既知従来技術の材料と比較して、潜在的な工業用途において、本発明の材料を使用する間に試薬のより良好な分散および反応生成物が得られる。さらに、本発明の材料を製造する方法は、好ましくは酸媒体中で、少なくとも1種のイオン性または非イオン性の界面活性剤を、少なくとも1種のシリカ前駆体、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、リン、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタルおよびイットリウムによって構成された群から選択された、好ましくは、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、ゲルマニウムおよびガリウムによって構成された群から選択された少なくとも1種の元素X、より好ましくはアルミニウムの少なくとも1種の随意の前駆体、および300nmの最大ナノメートル寸法を有するゼオライトナノ結晶が存在するコロイド溶液あるいは溶液(好ましくは酸性)中に300nmの最大ナノメートル寸法を有するナノ結晶の形態で分散するナノ結晶のいずれかと相互作用させることからなる。材料の秩序化された構造はエアゾール技術により誘発された蒸発によるミセル化または自己組織化現象に対して連続的であるので、メソ構造化された形態の性質またはゼオライト相の性質に損傷を与えることなく、階層的な多孔度を有する材料を容易に生成ことができ、最初の合成方法に関わらず広範囲のゼオライトナノ結晶を用いて操作することができる。実際に、300nmよりはるかに大きい寸法を有するゼオライト結晶が、溶液中、特に酸性溶液中、より好ましくは、水−有機系酸性溶液中で、300nmの最大ナノメートル寸法を有するナノ結晶の形態で分散することができるとの条件で用いられ得る。さらに、メソ構造化されたアルミノケイ酸塩のための既知の合成と比較して、本発明の材料の生成は、連続的に行われ、製造時間が短縮される(オートクレーブを行うことによる12〜24時間に対して数時間)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、階層的な多孔度を有する材料であって、少なくとも2つの球状基本粒子によって構成され、該球状粒子のそれぞれは、0.2〜2nmの細孔サイズを有するゼオライトナノ結晶とケイ素酸化物をベースとするマトリクスを含み、該マトリクスは、メソ構造化され、1.5〜30nmの細孔サイズを有し、1〜20nmの厚さを有する非晶質壁を有し、該球状基本粒子は、10μmの最大直径を有する材料を提供する。
【0009】
本発明において用いられるような用語「階層的な多孔度材料」は、前記球状粒子のそれぞれのスケールに関して二重の多孔度:メソ多孔度およびゼオライトタイプのミクロ多孔度を有する材料を意味する。メソ多孔度は、メソ細孔スケールで組織化された多孔度であり、2.5〜30nm、好ましくは1.5〜10nmの均一な寸法を有し、前記粒子のそれぞれ内に均一かつ規則的な方法で分配される(メソ構造化)。ゼオライトタイプのミクロ多孔度(ゼオライト構造型、ゼオライト性骨格の化学的組成物)の特徴は、ゼオライトナノ結晶の選択の機能にある。本発明の材料はまた、特に表面組織のマクロ多孔度を有する。ミクロ細孔性の多孔度も、本発明の材料の製造の間に用いられた界面活性剤の取り込みに由来し、本発明の前記材料の無機成分のメソ構造化の間に有機−無機界面のところの無機壁が発達されることが留意されるべきである。本発明によると、ゼオライトナノ結晶は、0.2〜2nm、好ましくは0.2〜1nm、より好ましくは0.2〜0.6nmの細孔サイズを有する。前記ナノ結晶は、本発明の材料を構成する球状基本粒子のそれぞれ中にミクロ多孔度を生ずる。
【0010】
本発明の材料を構成する球状粒子のそれぞれの中に含まれるケイ素酸化物をベースとするマトリクスはメソ構造化される。:本マトリクスは、1.5〜30nm、好ましくは1.5〜10nmの均一なサイズを有し、均等かつ規則的に前記粒子のそれぞれに分散されるメソ細孔を有する。前記球状粒子のそれぞれのメソ細孔間にある材料は、非晶質であり、壁を形成し、この壁の厚さは1〜20nmである。壁の厚さは、1つの細孔を他の細孔から分離する距離に対応する。記載されたメソ多孔度の組織化により、ケイ素酸化物をベースとするマトリクスが構造化し、このマトリクスは、六方晶系、虫食い(vermicular)または立法晶系であってよく、好ましくは虫食い状である。
【0011】
本発明の材料の特定の実施形態によると、ケイ素酸化物をベースとし、メソ構造化されたマトリクスは全体的にケイ酸含有性である。本発明の材料のさらなる特定の実施形態によると、メソ構造化されたケイ素酸化物をベースとするマトリクスは、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、リン、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタルおよびイットリウムによって構成された群から、好ましくはアルミウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、ゲルマニウムおよびガリウムから構成された群から選択された、より好ましくはアルミニウムの少なくとも1種の元素Xをさらに含む。好ましくは、元素Xはアルミニウムであり、この場合、本発明の材料のマトリクスはアルミノケイ酸塩である。前記アルミノケイ酸塩のSi/Alモル比は少なくとも1であり、好ましくは1〜1000であり、より好ましくは1〜100である。
【0012】
本発明によると、ゼオライトナノ結晶は、有利には、本発明の材料の0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%を示す。任意のゼオライトが可能であり、特に、ただし、限定はされないが、Ch Baerlocher,W M Meier,D H Olson,「Atlas of zeolite framework types」,第5改訂版,2001年に列挙されたものが、本発明の材料を構成する球状基本粒子のそれぞれに存在するゼオライトナノ結晶に用いられてよい。ゼオライトナノ結晶は、好ましくは、ZSM−5、ZSM−48、ZSM−22、ZSM−23、ZBM−30、EU−2、EU−11、シリカライト、ベータ、ゼオライトA、ホージャサイト、Y、USY、VUSY、SDUSY、モルデナイト、NU−87、NU−88、NU−86、NU−85、IM−5、IM−12、苦土沸石(ferrierite)およびEU−1のゼオライトから選択された少なくとも1種のゼオライトを含む。より好ましくは、ゼオライトナノ結晶は、構造型MFI、BEA、FAUおよびLTAを有するゼオライトから選択された少なくとも1種のゼオライトを含む。異なるゼオライト、特に異なる構造型を有するゼオライトのナノ結晶が本発明の材料を構成する球状粒子のそれぞれに存在してもよい。特に、本発明の材料を構成する球状粒子のそれぞれは、有利には、少なくとも第1のゼオライトナノ結晶および少なくとも第2のゼオライト結晶を含んでもよい。第1のゼオライトナノ結晶のゼオライトは、ZSM−5、ZSM−48、ZSM−22、ZSM−23、ZBM−30、EU−2、EU−11、シリカライト、ベータ、ゼオライトA、ホージャサイト、Y、USY、VUSY、SDUSY、モルデナイト、NU−87、NU−88、NU−86、NU−85、IM−5、IM−12、苦土沸石およびEU−1のゼオライトから、好ましくは、構造型MFI、BEA、FAUおよびLTAを有するゼオライトから選択され、第2のゼオライトナノ結晶のゼオライトは、第1のゼオライトナノ結晶のゼオライトとは異なり、ZSM−5、ZSM−48、ZSM−22、ZSM−23、ZBM−30、EU−2、EU−11、シリカライト、ベータ、ゼオライトA、ホージャサイト、Y、USY、VUSY、SDUSY、モルデナイト、
NU−87、NU−88、NU−86、NU−85、IM−5、IM−12、苦土沸石およびEU−1のゼオライトから、好ましくは構造型MFI、BEA、FAUおよびLTAを有するゼオライトから選択される。有利には、ゼオライトナノ結晶は、全体的にシリカであるか、またはケイ素に加えてアルミニウム、鉄、ホウ素、インジウムおよびガリウムから選択される、好ましくはアルミニウムである少なくとも1種の元素Tを含むかのいずれかの少なくとも1種のゼオライトを含む。
【0013】
本発明によると、本発明の材料を構成する前記球状基本粒子の直径は、有利には50〜10μm、好ましくは50〜300nmである。より詳細には、それらは、凝集物の形態で本発明の材料中に存在する。
【0014】
本発明の材料の比表面積は、有利には100〜1100m/g、より有利には400〜800m/gである。
【0015】
本発明はまた、本発明の材料の製造に関する。本発明は、本発明の材料を製造するための2つの方法を提案する。本発明の材料を製造するための方法の第1の実施(以降、「本発明の第1の製造方法」と称する)は、a)テンプレートの存在中に、300nmの最大ナノメートル寸法を有するゼオライトナノ結晶を合成して、該ナノ結晶が分散されたコロイド溶液を得る工程と、b)溶液中で、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種のシリカ前駆体、随意のアルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、リン、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタルおよびイットリウムによって構成された群から選択された少なくとも1種の元素Xの少なくとも1種の前駆体、および工程a)によって得られた少なくとも1種のコロイド溶液を混合する工程と、c)工程b)で得られた該溶液をエアゾール霧化して、200μm未満の直径を有する球状液滴を形成させる工程と、d)該液滴を乾燥する工程と、e)該テンプレートおよび該界面活性剤を除去して、階層的な多孔度を有する材料を得る工程とを包含する。
【0016】
本発明の第1の製造方法の工程a)によると、ゼオライトナノ結晶は、当業者に知られた操作プロトコールを用いて合成される。特に、ベータゼオライトナノ結晶の合成は、T Beinらの「Micropor Mesopor Mater」,2003年,第64巻、p165によって記載されている。Yゼオライトナノ結晶の合成は、T J Pinnavasiaらの「J Am Chem Soc」,2000年,第122巻,p8791によって記載されている。ホージャサイトゼオライトナノ結晶の合成は、Kloetstraらの「Microporous Mater」,1996年、第6巻、p287によって記載されている。ZSM−5ゼオライトナノ結晶の合成は、R Mokayaらの「J Mater Chem」,2004年,第14巻,p863によって記載されている。シリカライトナノ結晶の合成(すなわち構造型MFIの合成)は、R de Ruiterらの「Synthesis of Microporous Materiala,Vol 1,M L Occelli,H E Robson(eds),Van Nostrand Reinhold,New York,1992,167によって記載され、本出願の実施例1において与えられる。
【0017】
一般に、ゼオライトナノ結晶は、少なくとも1つのケイ素源、随意のアルミニウム、鉄、ホウ素、インジウムおよびガリウムから選択される少なくとも1種の元素Tの少なくとも1つの供給源、好ましくは、アルミニウムの少なくとも1つの供給源および少なくとも1種のテンプレートを含む反応混合物を製造することによって合成される。反応混合物は、水性または水−有機系、例えば水−アルコール混合物である。反応混合物は、有利には、自発圧下、場合によってはガス、例えば窒素を加えることにより、50〜200℃、好ましくは60〜170℃、より好ましくは、120℃を超えない温度で、ゼオライトナノ結晶が形成されるまで、水熱処理条件下に置かれる。前記水熱処理の終了時に、ナノ結晶が分散された状態にあるコロイド溶液が得られる。テンプレートは、合成されるべきゼオライトに応じてイオンまたは非荷電であってよい。リスト:窒素含有有機カチオン、アルカリ金属(Cs、K、Na等)からの元素、クラウンエーテル、ジアミンおよび当業者に公知の任意の他のテンプレートのリストのテンプレートを用いることが通常であるが、前記リストの例は無尽蔵である。
【0018】
本発明の第1の製造方法の工程b)では、元素Xは、好ましくは、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、ゲルマニウムおよびガリウムによって形成された群から選択されるが、より好ましくは、Xはアルミニウムである。
【0019】
本発明の材料を製造するための方法の第2の実施(以降、「本発明の第2の製造方法」と称する)では、溶液中、例えば酸性の水−有機系溶液中に300nmの最大ナノメートル寸法を有するナノ結晶の形態で分散する特徴を有するゼオライト結晶が最初に用いられる。本発明の第2の製造方法は、a’)溶液中で、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種のシリカ前駆体、随意のアルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、リン、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタルおよびイットリウムによって構成された群から選択された少なくとも1種の元素Xの少なくとも1種の前駆体、および前記溶液中に分散して300nmの最大ナノメートル寸法を有するナノ結晶を形成するゼオライト結晶を混合する工程と、b’)工程a’)で得られた該溶液をエアゾール霧化して、200μm未満の直径を有する球状液滴を形成する工程と、c’)該液滴を乾燥する工程と、d’)少なくとも該界面活性剤を除去する工程とを包含する。
【0020】
本発明の第2の製造方法の工程a’)では、ゼオライト結晶が用いられる。当業者に知られ、溶液中、例えば酸性の水−有機系溶液中に、300nmの最大ナノメートル寸法を有するナノ結晶の形態で分散する特性を有する任意の結晶ゼオライトが工程a’)を行うのに適している。前記ゼオライト結晶は、当業者に知られた方法を用いて合成される。工程a’)において用いられるゼオライト結晶は、すでにナノ結晶の形態にあってもよい。300nmを超える、例えば300nm〜200μmの寸法を有するゼオライト結晶もまた、溶液中、例えば水−有機系溶液中、好ましくは酸性の水−有機系溶液中に、300nmの最大ナノメートル寸法を有するナノ結晶の形態で分散すれば有利に用いられ得る。300nmの最大ナノメートル寸法を有するナノ結晶の形態で分散するゼオライト結晶はまた、ナノ結晶表面を官能基化することによって得られ得る。元素Xは、好ましくは、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、ゲルマニウムおよびガリウムによって構成された群から選択され、より好ましくは、Xはアルミニウムである。用いられるゼオライト結晶は、それらの合成された際の形態、すなわち、依然としてテンプレートを含有する形態、または、それらの焼成された際の形態、すなわち、テンプレートを含まない形態のいずれかである。用いられるゼオライト結晶がそれらの合成された際の形態にある場合、前記テンプレートは、本発明の第2の製造方法の工程d’)の間に除去される。
【0021】
本発明の材料を製造するための2つの方法によると、本発明の第1の製造方法の工程b)において用いられるシリカ前駆体および随意の少なくとも1種の元素Xのための前駆体、好ましくはアルミナ前駆体は、当業者に公知の無機酸化物の前駆体である。シリカ前駆体は、ケイ素の任意の供給源から、有利には、式SiO,NaOHを有するケイ酸ナトリウム前駆体から、式SiClを有する塩素含有前駆体から、式Si(OR)(式中、R=H、メチル、エチル)を有する有機金属前駆体から、または式Si(OR)4−xCl(式中、R=H、メチル、エチルであり、xは0〜4である)を有するクロロアルコキシド前駆体から得られる。シリカ前駆体はまた、有利には、式Si(OR)4−xR’(式中、R=H、メチル、エチルであり、R’はアルキル鎖または官能基(例えばチオール、アミノ、βジケトンまたは硫酸基)化されたアルキル鎖であり、xは0〜4である)を有する有機金属前駆体であってよい。元素Xのための前駆体は、溶液中、例えば水−有機系溶液中、好ましくは酸性の水−有機溶液中に活性な形態で前記元素を遊離させ得る元素Xを含む任意の化合物であってよい。Xがアルミニウムである好ましい場合には、アルミナ前駆体は、有利には、式AlZ(ZはハロゲンまたはNO基)を有する無機アルミニウム塩である。好ましくはZは塩素である。アルミナ前駆体はまた、式Al(OR’’)(式中、R’’=エチル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチルまたはt−ブチル)を有する有機金属前駆体またはキレートされた前駆体、例えばアルミニウム・アセチルアセトネート(Al(CH)でもよい。アルミナ前駆体はまた、アルミニウムの酸化物または水酸化物であってもよい。
【0022】
本発明の第1の製造方法の工程b)または本発明の第2の製造方法の工程a’)の混合物を製造するために用いられる界面活性剤は、イオン性または非イオン性の界面活性剤またはこの2つの混合物である。好ましくは、イオン性界面活性剤は、ホスホニウムまたはアンモニウムイオンから、より好ましくは臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)等の第4級アンモニウム塩から選択される。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、脂肪族高分子特性もたらす極性が異なる少なくとも2つの部分を有する任意の共重合体であってよい。前記共重合体は、フッ素化共重合体(−[CH−CH−CH−CHO−CO−R1、式中、R1=C、C17等)、生物学的共重合体、例えば、ポリアミノ酸(ポリリジン、アルギナート等)等、デンドリマー、ポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成されたブロック共重合体および当業者に知られた両親媒性を有する任意の他の共重合体の共重合体クラスのリストに含まれてもよい(S Forster、M Antionnetti,「Adv Mater,1998,10,195-217,S Forster,T Plantenberg,「Angew Chem Int Ed,2002,41,688-714,H Colfen,「Macromol Rapid Commun,2001,22,219-252)が、これらリストは無尽蔵である。
【0023】
好ましくは、本発明の関連において、ポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成されたブロック共重合体が用いられる。前記ブロック共重合体は、好ましくは、2、3または4ブロックを有し、各ブロックが1つのポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成されるブロック共重合体である。2ブロックの共重合体について、ブロックの一方は、親水性のポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成され、他方のブロックは、疎水性のポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成される。3ブロックの共重合体について、ブロックの2つは親水性のポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成される一方で、他のブロックは、親水性部分を有する2つのブロックの間に配され、疎水性のポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成される。好ましくは、3ブロックの共重合体の場合には、親水性のポリ(アルキレンオキシド)の鎖は、ポリ(エチレンオキシド)鎖(PEO)および(PEO)であり、疎水性のポリ(アルキレンオキシド)鎖は、ポリ(プロピレンオキシド)鎖(PEO)、ポリ(ブチレンオキシド)鎖または各鎖がいくつかのアルキレンオキシドモノマーの混合である混合鎖である。より好ましくは、3ブロック共重合体の場合には、式(PEO)(PPO)(PEO)(式中、xは5〜106であり、yは33〜70であり、zは5〜106である)を有する化合物が用いられる。好ましくは、xおよびzの値は同一である。一層有利には、x=20、y=70およびz=20である化合物(P123)が用いられ、x=106、y=70およびz=106である化合物(F127)が用いられる。プルロニック(BASF)、テトロニック(BASF)、トリトン(Sigma)、Tergitol(UnionCarbide)、Brij(Aldrich)として知られる市販の非イオン界面活性剤が本発明の第1の製造方法の工程b)または本発明の第2の方法の工程a’)において非イオン界面活性剤として用いられ得る。4ブロックの共重合体について、ブロックの2つは親水性のポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成され、2つの他のブロックは疎水性のポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成される。
【0024】
少なくとも1種のシリカ前駆体、随意の少なくとも1種の元素Xの少なくとも1種の前駆体、好ましくはアルミナ前駆体、少なくとも1種の界面活性剤、および、本発明の第1の製造方法の工程b)の場合には、前記合成されたゼオライトナノ結晶が分散されるコロイド溶液または本発明の第2の製造方法の工程a’)場合には300nmの最大ナノメートル寸法を有するナノ結晶の形態で溶液中に分散されるゼオライト結晶が混合される溶液は、酸性、中性、または塩基性であってよい。好ましくは、前記溶液は酸性であり、pHは最大2であり、より好ましくは0〜2である。2の最大pHを有する酸性溶液を得るために用いられる酸の例は無限であるが、例えば、塩酸、硫酸および硝酸が挙げられる。前記溶液は、水性であってもよく、あるいは、水−有機系溶媒の混合物であってもよく、有機溶媒は好ましくは極性溶媒、特にアルコール、好ましくはエタノールである。前記溶液はまた、実質的に有機性であり、好ましくは実質的にアルコール性であり、水の量は、無機前駆体の加水分解が確実になされるようにする(化学当論量)。より好ましくは、少なくとも1種のシリカ前駆体、随意の少なくとも1種の元素Xの少なくとも1種の前駆体、好ましくはアルミナ前駆体、少なくとも1種の界面活性剤、および本発明の製造方法の工程b)の場合には前記合成されたゼオライトナノ結晶が分散されるコロイド溶液または本発明の第2の製造方法の工程a’)の場合には300nmの最大ナノメートル寸法を有するナノ結晶の形態で溶液中に分散されるゼオライト結晶が混合される前記溶液は、水−有機系の酸混合物、より好ましくは酸性の水−アルコール混合物である。
【0025】
本発明の材料のマトリクスがアルミニウムを含む好ましい場合では、本発明の第1の製造方法の工程b)または本発明の第2の製造方法の工程a’)でのシリカおよびアルミナ前駆体の濃度は、モル比Si/Alによって規定され、これは、少なくとも1であり、好ましくは1〜1000であり、より好ましくは1〜100である。本発明の第1の製造方法の工程b)間に導入されたコロイド溶液中に分散されたゼオライトナノ結晶の量、または本発明の第2の製造方法の工程a’)の間に導入されたゼオライト結晶の量は、ゼオライトナノ結晶が有利には本発明の材料の0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%を示すようにされる。
【0026】
本発明の第1の製造方法の工程b)または本発明の第2の製造方法の工程a’)の混合物に導入される界面活性剤の最初の濃度は、cによって規定される。cは、当業者に公知の臨界ミセル濃度(cmc)に対して規定される。cmcは、これを超えると溶液中の界面活性剤の分子の自己配列が起こる限界濃度である。濃度cは、cmc未満でも、cmcに等しくても、cmcを超えてもよいが、好ましくは、cmc未満である。本発明の方法の一方または他方の好ましい実施では、濃度cはcmc未満であり、本発明の第1の製造方法の工程b)または本発明の第2の製造方法の工程a)’における前記溶液は、酸性の水−アルコールの酸性混合物である。
【0027】
本発明の第1の製造方法の工程c)または本発明の第2の製造方法の工程b’)における混合物を霧化するための工程によって、好ましくは2〜200μmの直径を有する球状液滴が生成される。前記液滴のサイズ分布は、対数正規分布型である。用いられるエアゾール発生器は、TSIによって供給された市販モデル3078装置である。溶液は、チャンバ内で霧化され、このチャンバ内には、ベクトルガス(O/N混合物、乾燥空気)が、1.5バールの圧力Pで送られる。本発明の第1の製造方法の工程d)または本発明の第2の製造方法の工程c’)において、前記液滴は乾燥される。乾燥は、ベクトルガス(O/N混合物)を介してガラス管内に前記液滴を移すことによって行われ、これにより、結果として、溶液、例えば、水−有機系の酸溶液が連続的に蒸発し、球状基本粒子が生成する。乾燥は、前記粒子をオーブンに通過させることによって完了され、その温度は通常は50〜600℃、好ましくは80〜400℃に調節され得、オーブン内の前記粒子の滞留時間は3〜4秒程度である。次いで、粒子はフィルタで採取され、本発明の材料を構成する。ポンプが回路の終了位置に配置され、このポンプが粒子種(species)を実験のエアゾールデバイスに経路を定める。
【0028】
本発明の第1の製造方法の工程b)または本発明の第2の製造方法の工程a’)における溶液が水−有機系溶液混合物(好ましくは酸性)である場合には、本発明の製造方法の工程b)または本発明の第2の製造方法の工程a’)の間にマトリクスのメソ構造化の開始時の界面活性剤の濃度が臨界ミセル濃度未満であり、前記水−有機系溶液(好ましくは酸性)の蒸発が、エアゾール技術を用いる本発明の第1の製造方法の工程c)または本発明の第2の製造方法の工程b’)の間にミセル化または自己配列の現象を誘発して、本発明の第1の製造方法の工程c)およびd)または本発明の第2の製造方法の工程b’)およびc’)の間に形態およびサイズの未変化を維持するゼオライトナノ結晶の周囲にある本発明の材料のマトリクスのメソ構造化につながることが必須である。c<cmcである場合、各液滴中のシリカ前駆体、随意の元素Xのための前駆体、好ましくはアルミナ前駆体、および界面活性剤が、界面活性剤の濃度cの水−有機系溶液(好ましくは酸性)の蒸発に起因してcmcの濃度になるまで連続的に濃縮された後、上記に記載された方法の1つを用いて製造された本発明のマトリクスがメソ構造化する。
【0029】
一般に、シリカ前駆体および可能性のある元素Xのための前駆体、好ましくはアルミナ前駆体、および界面活性剤を合わせた濃度が高くなることによって、自己配列された界面活性剤周囲でシリカ前駆体および随意の元素Xのための前駆体、好ましくはアルミナ前駆体の析出が惹起され、その結果、本発明の材料のマトリクスが構造化する。無機/無機相、有機/有機相および有機/無機相の相互作用により、界面活性剤の周囲にシリカ前駆体および随意の元素Xのための前駆体、好ましくはアルミナ前駆体の加水分解/凝集と協同的な自己配列機構が生じる。前記自己組織化現象の間に、ゼオライトナノ結晶がケイ素酸化物をベースとし、メソ構造化され、かつ、本発明の材料を構成する球状基本粒子のそれぞれの中に含まれたマトリクス中に捕捉される。最初の溶液中に存在する試薬が共に相互作用することを強制し、溶媒、すなわち、溶液、好ましくは水溶液(好ましくは酸性であり、場合により極性溶媒により補充される)以外の材料を損失する恐れがなく、最初に存在するケイ素、随意の元素X、およびゼオライトナノ結晶の全体が、本発明の方法のそれぞれを通して完全に維持されるので、エアゾール技術は本発明の第1の製造方法の工程c)または本発明の第2の製造方法の工程b’)を行うのに特に有利である。これは、当業者に知られた従来の合成方法において行われるろ過工程および洗浄の間に除去される可能性があるのとは異なっている。本発明の第1の製造方法の工程d)または本発明の第2の製造方法の工程c’)の液滴の乾燥は、有利には、50〜150℃の温度でオーブンに通すことによって行われる。階層的な多孔度を有する本発明の材料を得るための本発明の第1の製造方法の工程e)でのテンプレートおよび界面活性剤の除去または本発明の第2の製造方法の工程d’)での少なくとも界面活性剤の除去は、有利には、化学抽出または熱処理すること、好ましくは空気中で300〜1000℃、より精密には500〜600℃の温度で1〜24時間、好ましくは2〜6時間の期間焼成することによって行われる。
【0030】
本発明の階層的な多孔度を有する材料は、粉体、ビーズ、ペレット、顆粒または押出物の形態で得られてもよく、その形成操作は、当業者に知られた従来の技術を用いて行われる。好ましくは、本発明の階層的な多孔度を有する材料は10μmの最大直径を有する球状基本粒子によって構成された粉体の形態で得られ、この粒子は、潜在的な工業用途において本発明の材料を使用する場合に試薬の任意の分散を促進する。
【0031】
階層的な多孔度を有する本発明の材料は、いくつかの分析技術、特に、小角X線回折(小角XRD)、広角X線回折(large angle X ray diffraction:XRD)、窒素吸着等温線、透過型電子顕微鏡(TEM)および蛍光X線回折分析を用いて特徴付けられる。
【0032】
広角X線回折(5〜70°の2θ)は、分子スケールの単位格子(unit cell)の繰り返しによって規定される結晶固体を特徴付けるために用いられ得る。以下の論議では、X線分析は、粉体について、銅放射線(波長1.5406Å)によるバックモノクロメータを備えた反射で操作する回折計を用いて行われる。角2θの所与の値に対応する回折図上に通常観察されるピークは、ブラッグの関係式:2dhkl・sin(θ)=n・λによって材料の構造上の対称性の特徴である面間隔dhkl(hklは逆格子(reciprocal lattice)のミラー指数である)に結び付けられる。この指数化により、骨格の格子パラメータ(a,b,c)を直接決定することができる。このため、広角XRD分析は、本発明の材料を構成する球状基本粒子のそれぞれの中に存在するゼオライトナノ結晶の構造の特徴化に適している。特に、広角XRD分析は、ゼオライトナノ結晶の細孔寸法への接近方法を提供する。同一の原理を用いて、小角X線回折技術(0.5〜3°の角2θの値)が本発明の材料のケイ素酸化物をベースとするメソ構造化されたマトリクスの組織化されたメソ多孔度によって発生されるナノ結晶スケールの周期性を特徴付け得る。格子パラメータ(a,b,c)の値は、得られる六方晶系、立法晶系または虫食い構造の写像(function)である。例として、ZSM−5(MFI)型ゼオライトのゼオライトナノ結晶によって構成された本発明の方法の1つを用いて得られた階層的な多孔度を有する材料の広角または小角X線回折図が示され、そこでは、メソ構造化されたマトリクスが、純粋なシリカであり、かつ、特定のブロック共重合体であるポリ(エチレンオキシド)106−ポリ(プロピレンオキシド)70−ポリ(エチレンオキシド)106(PEO106−PPO70−PEO106すなわちF127)を用いて得られ、広角または正覚X線回折図は、広角ではZSM−5ゼオライトのPnma(n°62)対称グループに結びつく回折図を、小角ではメソ構造化されたマトリクスの虫食い構造に結びつくことが完全に解明され細孔間の相関距離dに対応する相関ピークをそれぞれ有する。XRD回折図上で得られる角によって、ブラッグの規則:2d・sin(θ)=n・λを用いて相関距離dを導き出すことができる。
【0033】
ゼオライトナノ結晶の特徴付けのために得られた格子パラメータの値a、b、cは、当業者に公知のZSM−5型ゼオライト(MFI)について得られた値(「Collection of simukated XRD powder pattern for zeolites」,4th edition,2001,M M J Treacy,J B Higgins)に適合する。
【0034】
一定の温度で圧力を連続的に高くする際の材料の細孔中の窒素分子の物理的な吸着に対応する窒素吸着等温線分析は、本発明の材料に特有の表面組織上の特徴(細孔直径、多孔度型、比表面積)に関する情報を提供する。特に、窒素吸着等温線分析は、材料の比表面積およびメソ細孔分布への接近方法を提供する。用語「比表面積」は、定期刊行の「The Journal of the American Society」,60,309,(1938)に記載されたBRUNAUER−EMMETT−TELLER法を用いて確立される米国標準ASTM D−3663−78による窒素吸着によって決定されるBET比表面積SBET(m/g)を意味する。1.5〜50nmを中心とするメソ細孔の占有率(population)を表す細孔分布がバレット−ジョイナー−ハレンダ(Barrett-Joyner-Halenda:BJH)モデルを用いて決定される。BJHモデルを用いる窒素吸着−脱着等温線は、E P Barrett、L G JoynerおよびP P Halendaによって著された定期刊行の「The Journal of the American Society」,73,373(1951)に記載されている。以下の記載では、所与のメソ構造化されたマトリクス中のメソ細孔直径φは、該当する直径未満の全細孔が窒素等温線の脱着線(desorption arm)上で測定された細孔容積(Vp)の50%を構成する直径として規定される窒素脱着の平均直径に対応する。さらに、窒素吸着等温線およびヒステリシスループ(hysteresis loop)の形状は、ゼオライトナノ結晶およびメソ多孔度の性質に関連するミクロ多孔度の存在に関する情報を提供する。例として、ZSM−5型(MFI)のゼオライトナノ結晶によって構成された本発明の方法の一方または他方を用いて得られた階層的な多孔度を有する材料の窒素吸着等温線が挙げられ、そこでは、メソ構造化されたマトリクスは、純粋にシリカであり、特定のブロック共重合体であるポリ(エチレンオキシド)106−ポリ(プロピレンオキシド)70−ポリ(エチレンオキシド)106(PEO106−PPO70−PEO106すなわちF127)を用いて得られ、上記窒素吸着等温線は、P/P0(ここで、P0は、温度Tにおける飽和蒸気圧)の低い値に対して、ミクロ細孔材料の特徴であるタイプIの等温線を有し、P/Poのより高い値に対して、タイプIVの等温線およびタイプH1のヒステリシスループを有し、関連する細孔分布曲線は、1.5〜50nmを中心とする均一サイズを有するメソ細孔の占有率を表す。メソ構造化されたマトリクスに関して、細孔直径φの値と上記に記載された小角XRDによって規定される細孔間の相関距離dとの間の差は、寸法e(ここで、e=d−φであり、本発明のメソ構造化されたマトリクスの非晶質壁の厚さの特徴である)への接近方法を提供する。
【0035】
透過型電子顕微鏡(TEM)分析も、本発明のメソ構造化されたマトリクスを特徴付けるために広く用いられている技術である。透過型電子顕微鏡(TEM)分析により、研究されている固体の画像の形成が可能になり、観察されるコントラストが観察される粒子のゼオライト/メソ構造組成物の構造的な組織化、表面組織または形態の特徴であり、分解能は最大で0.2nmに達する。以下の記載では、TEM画像は、本発明の材料の球状基本粒子の部分を視覚化するためにサンプルの顕微鏡用に薄片化された部分から生成される。例として、ZSM−5型ゼオライトナノ結晶(MFI)によって構成された本発明の方法の一方または他方を用いて得られた階層的な多孔度を有するアルミノケイ酸塩材料のために得られたTEM画像が挙げられ、このTEM画像では、メソ構造化されたマトリクスが純粋にシリカであり、特定のブロック共重合体F127を用いて得られ、上記TEM画像は、同一の球状粒子(材料は暗色区域によって規定される)内に虫食いメソ構造を有し、同一の球状粒子内に、メソ構造化されたマトリクス中に捕捉されたゼオライトナノ結晶を示す実質的に球状の不透明の物体が見られ得る。画像の分析はまた、上記に規定されたメソ構造化されたマトリクスの特徴であるパラメータd、φおよびeへの接近方法を提供する。上記の不透明な物体の代わりにナノ結晶の格子面を同一記録上に視覚化し、これにより、ゼオライトの構造を導き出すことも可能である。
【0036】
基本粒子の形態および寸法分布は、SEM(scanning electron microscopy:走査型電子顕微鏡)によって得られた画像の分析から確立された。
【0037】
本発明のメソ構造化された材料の構造は、テンプレートとして選択された界面活性剤の性質に応じて虫食い、立方晶系または六方晶系型の構造であってよい。
【0038】
以下、本発明は、下記実施例によって例示される。
【0039】
(実施例)
下記実施例では、用いられたエアゾール技術は、本発明の記載において上記に記載されたものである。
【0040】
(実施例1(本発明):最終材料の重量の3.7%の量のシリカライト型(MFI)のゼオライトナノ結晶と、純粋なシリカでメソ構造化されたマトリクスとによって構成された階層的な多孔度を有する材料の製造)
6.0gのTEOS(tetraethylorthosilicate:オルトケイ酸塩テトラエチル)を、10.4mlの水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH,20%)中で加水分解した。次いで、1.5mlの水を加え、溶液を攪拌して、透明な溶液を得た。溶液をT=80°で4日間オートクレーブに入れた。一旦合成が完了すると、遠心分離する(20000rpmで1時間)ことによって結晶を回収し、水中に再度分散させ(超音波)、次いで、再分散後の溶液のpHが7近くになるまで再度遠心分離した。次いで、0.1%のアンモニア性溶液を加えることによってシリカライト−1ナノ結晶のコロイド懸濁液のpHを9.5に調整した。平均シリカライト結晶サイズは100nmであった。次いで、400μlの前記溶液を30gのエタノール、15mlの水、4.5gのTEOS、0.036mlのHClおよび1.4gのF127界面活性剤を含有する溶液に加えた。溶液のpHを2に調整した。集合物を上記に記載されたようなエアゾール発生器の霧化チャンバに送り、圧力(P=1.5バール)下に導入されたベクトルガス(乾燥空気)の作用の下に微細な液滴の形態に溶液を霧化した。上記記載の本発明に記載されたプロトコールを用いて液滴を乾燥した。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。次いで、粉体を採取し、この粉体を空気中でT=550℃で5時間焼成した。小角および広角XRD、窒素吸着等温線、TEMおよび蛍光X線によって固体を特徴付けた。TEM分析は、最終物質が虫食い構造によって特徴付けられる組織化されたメソ多孔度を有する純粋なシリカマトリクス中に捕捉されたシリカライトゼオライトナノ結晶によって構成されることを示した。窒素吸着等温線分析により、最終材料中の比表面積SBET=480m/gおよび純粋なシリカのメソ構造化されたマトリクスの特徴であるメソ細孔直径φ=6.2nmが得られた。広角XRDにより、シリカライトゼオライトの特徴である回折図が得られた(0.55nm程度のXRDによって測定されたミクロ細孔寸法)。小角XRDは、メソ構造化されたマトリクスの虫食い状の組織化と結びつく相関ピークを示した。ブラッグの関係式2d・sin(0.3)=1.5406により、d=15nmが得られた。e=d−φによって規定された純粋なシリカ性のメソ構造化されたマトリクスの非晶質壁の厚さeは9nmであった。得られた球状基本粒子のSEM画像は、粒子サイズが50〜700nmの直径によって特徴付けられ、粒子サイズ分布が300nmを中心とすることを示した。
【0041】
(実施例2(本発明):最終材料重量の3.7%の量のZSM−5型(MFI)のゼオライトナノ結晶と、純粋なシリカのメソ構造化されたマトリクスとによって構成された階層的多孔度を有する材料の製造)
0.14gのアルミニウムsec−ブトキシドを、7gの水酸化テトラプロピルアンモニウム溶液(TPAOH,20%)、4.3mlの水および0.0092gの水酸化ナトリウムを含有する溶液に加えた。次いで、6gのTEOSをこの溶液に加え、これを周囲温度で攪拌し、透明な溶液を得た。溶液を、T=95℃で18時間オーブン内に配置した。130nmの平均寸法を有するZSM−5ゼオライトナノ結晶を含有する乳白色のコロイド懸濁液が得られた。図1は、ZSM−5ナノ結晶の回折図を示す。次いで、400μlの前記溶液を、30gのエタノール、15mlの水、4.5gのTEOS、0.036mlのHClおよび1.4gのF127界面活性剤を含有する溶液に加えた。溶液のpHを、HClを用いて2に調整した。集合物を、上記に記載されたようなエアゾール発生器の霧化チャンバに送り、上記に記載されたような圧力(P=1.5バール)下に導入されたベクトルガス(乾燥空気)の作用の下で微細な液滴の形態に溶液を霧化した。上記の本発明において記載されたプロトコールを用いて液滴を乾燥した。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。次いで、粉体を採取し、この粉体を空気中T=550℃で5時間焼成した。小角(図2)および広角(図3)XRD、窒素吸着等温線、TEMおよび蛍光X線によって固体を特徴付けた。TEM分析(図4)は、虫食い構造によって特徴付けられる組織化されたメソ多孔度を有する純粋なシリカマトリクス中に捕捉されたZSM−5ゼオライトのナノ結晶によって最終材料が構成されることを示した。窒素吸着等温線分析により、最終材料中の比表面積SBET=480m/gおよび純粋なシリカのメソ構造化されたマトリクスの特徴であるメソ細孔直径φ=6.2nmが得られた。広角XRDにより、ZSM−5ゼオライトの特徴である回折図が得られた(0.55nm程度のXRDによって測定されたミクロ細孔寸法)。小角XRDは、メソ構造化されたマトリクスの虫食い状組織化に関連する相関ピークを示した。ブラッグの関係式2d・sin(0.3)=1.5406により、d=15nmを得た。これにより、e=d−φによって規定された純粋なシリカのメソ構造化されたマトリクスの非晶質壁の厚さeは、9nmであった。得られた球状基本粒子のSEM画像は、粒子サイズが50〜700nmの直径によって特徴付けられ、粒子サイズの分布が300nm前後を中心とすることを示した。
【0042】
(実施例3(本発明):最終材料重量の10%の量のZSM−5型(MFI)(Si/Al=50)のゼオライトナノ結晶と、アルミノケイ酸塩のメソ構造化されたマトリクス(Si/Al=4)とによって構成された階層的多孔度を有するアルミノケイ酸塩材料の製造)
0.14gのアルミニウム・トリ−s−ブトキシドを、3.5mlのTPAOH、0.01gの水酸化ナトリウムNaOHおよび4.3mlの水を含有す溶液に加えた。アルミニウムアルコキシドを溶解させた後、6gのTEOSを加えた。周囲温度で5時間溶液を攪拌し、T=95℃で12時間オートクレーブに入れた。得られた白色溶液は、135nmのZSM−5ナノ結晶を含んでいた。溶液を、2000rpmで30分間遠心分離した。水中に固体を再分散させ、次いで、2000rpmで30分間再度遠心分離した。この洗浄を2回行った。ナノ結晶はゲルを形成し、このゲルを60℃で終夜オーブン乾燥した。0.461gのこれらの結晶を、30gのエタノール、15mlの水、3.59gのTEOS、1.03gのAlCl・6HO、0.036mlのHClおよび1.4gのP123界面活性剤を含有する溶液中に、24時間の超音波攪拌によって再分散させた。集合物を、上記に記載されたようなエアゾール発生器の霧化チャンバに送り、上記に記載された方法を用いて圧力(P=1.5バール)下に導入されたベクトルガス(乾燥空気)の作用の下で微細な液滴の形態に溶液を霧化した。上記に記載された本発明に記載されたプロトコールを用いて液滴を乾燥した。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。次いで、粉体を採取し、この粉体を空気中T=550℃で5時間焼成した。小角および広角(図5)XRD、窒素吸着等温線、TEMおよび蛍光X線によって固体を特徴付た。TEM分析は、虫食い状構造によって特徴付けられる組織化されたメソ多孔度を有する純粋なシリカのマトリクス中に捕捉されたZSM−5ゼオライトのナノ結晶によって最終材料が構成されることを示した。窒素吸着等温線分析により、最終材料における比表面積SBET=478m/gおよびメソ構造化されたアルミノケイ酸塩マトリクスの特徴であるメソ細孔直径φ=4nmが得られた。広角XRDにより、ZSM−5ゼオライトの特徴である回折図が得られた(0.55nm程度のミクロ細孔寸法)。小角XRDは、メソ構造化されたマトリクスの虫食い状組織化に関連する相関ピークを示した。ブラッグの関係式2d・sin(0.4)=1.546により、d=11nmが与えられた。これにより、e=d−φによって規定されたアルミノケイ酸塩のメソ構造化されたマトリクスの非晶質壁の厚さeは7nmであった。得られた球状基本粒子のSEM画像は、粒子サイズが50〜700nmの直径によって特徴付けられ、粒子サイズの分布が300nm前後を中心とすることを示した。
【0043】
(実施例4(本発明):最終材料重量の3.7%の量のタイプAゼオライトナノ結晶(LTA)(SI/Al=6)と、純粋なシリカのメソ構造化されたマトリクスとによって構成された階層的多孔度を有するアルミノケイ酸塩材料の製造)
2.19gのアルミニウムイソプロポキシドを、3.5mlの水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)、0.01gの水酸化ナトリウムNaOHおよび28mlの水を含有する溶液に加えた。アルミニウムアルコキシドを溶解させた後、6gのTEOSを加えた。周囲温度で5時間溶液を攪拌し、T=95℃で12時間オートクレーブに入れた。白色溶液が得られ、これは、140nmのLTAナノ結晶を含んでいた。次いで、400μlのこの溶液を、30gのエタノール、15mlの水、4.5gのTEOS、0.036mlのHClおよび1.4gのF127界面活性剤を含有する溶液に加えた。溶液のpHを2に調整した。集合物をエアゾール発生器の霧化チャンバに送り、上記に記載された方法を用いて圧力(P=1.5バール)下に導入されたベクトルガス(乾燥空気)の作用の下に微細な液滴の形態に溶液を霧化した。上記の本発明に記載されたプロトコールを用いて液滴を乾燥した。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。粉体を採取し、次いで、これを空気中5時間T=550℃で焼成した。小角および広角XRD、窒素吸着等温線、TEMおよび蛍光X線によって固体を特徴付けた。TEM分析は、虫食い状構造によって特徴付けられる組織化されたメソ多孔度を有する純粋なシリカのマトリクス中に捕捉されたタイプAゼオライトのナノ結晶によって最終材料が構成されることを示した。窒素吸着等温線分析により、最終材料における比表面積SBET=478m/gおよび純粋なシリカののメソ構造化されたマトリクスの特徴であるメソ細孔直径φ=6nmが得られた。広角XRDにより、LTAゼオライトの特徴である回折図が得られた。小角XRDは、多孔度の虫食い組織化に関連する相関ピークを示した。ブラッグの関係式2d・sin(0.3)=1.546により、d=15nmが得られた。これにより、e=d−φによって規定される純粋なシリカのメソ構造化されたマトリクスの非晶質壁の厚さeは9nmであった。得られた球状基本粒子のSEM画像は、粒子サイズが50〜700nmの直径によって特徴付けられ、粒子サイズの分布が300nm前後を中心とすることを示した。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例2のZSM−5ナノ結晶の回折図を示す。
【図2】実施例2の小角XRDを示す。
【図3】実施例2の広角XRDを示す。
【図4】実施例2のTEM分析を示す。
【図5】実施例3の広角XRDを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階層的な多孔度を有し、かつ、少なくとも2つの球状基本粒子によって構成された材料であって、該球状粒子のそれぞれは、細孔サイズが0.2〜2nmであるゼオライトナノ結晶と、ケイ素酸化物をベースとし、メソ構造化されたマトリクスとを含み、該マトリクスは、細孔サイズが1.5〜30nmであり、厚さ1〜20nmの非晶質壁を有し、該球状基本粒子は、10μmの最大直径を有する、材料。
【請求項2】
前記ゼオライトナノ結晶の細孔寸法は0.2〜0.6nmである、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記メソ構造化されたマトリクスの細孔サイズは1.5〜10nmである、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
前記メソ構造化されたマトリクスは、六方晶系、立方晶系または虫食い状構造を有する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の材料。
【請求項5】
ケイ素酸化物をベースとする前記マトリクスは全体的にシリカである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の材料。
【請求項6】
ケイ素酸化物をベースとする前記マトリクスはアルミニウム、チタン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウムおよびニオブによって構成された群から選択された少なくとも1種の元素Xを含む、請求項1〜4のいずれか1つに記載の材料。
【請求項7】
元素Xはアルミニウムである、請求項6に記載の材料。
【請求項8】
前記マトリクスのSi/Al比は少なくとも1である、請求項7に記載の材料。
【請求項9】
ゼオライトナノ結晶は構造型MFI、BEA、FAUまたはLTAを有するゼオライトから選択された少なくとも1種のゼオライトを含む、請求項1〜8のいずれか1つに記載の材料。
【請求項10】
前記ゼオライトナノ結晶は少なくとも1種の全体的にシリカのゼオライトを含む、請求項1〜9のいずれか1つに記載の材料。
【請求項11】
前記ゼオライトナノ結晶は少なくとも1種のケイ素およびアルミニウムを含有するゼオライトを含む、請求項1〜9のいずれか1つに記載の材料。
【請求項12】
比表面積が100〜1100m/gである、請求項1〜11のいずれか1つに記載の材料。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つに記載の材料を製造する方法であって、
a)テンプレートの存在下に、300nmの最大ナノメートル寸法を有するゼオライトナノ結晶を合成して、該ナノ結晶が分散されたコロイド溶液を得る工程と、
b)溶液中で、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種のシリカ前駆体、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、リン、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタルおよびイットリウムによって構成された群から選択された少なくとも1種の元素Xの少なくとも1種の随意の前駆体、および工程a)により得られた少なくとも1種のコロイド溶液を混合する工程と、
c)工程b)で得られた該溶液をエアゾール霧化して、200μm未満の直径を有する球状液滴を形成させる工程と、
d)該液滴を乾燥する工程と、
e)該テンプレートおよび該界面活性剤を除去して、階層的な多孔度を有する材料を得る工程と、
を包含する、方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1つに記載の材料を製造する方法であって、
a’)溶液中で、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種のシリカ前駆体、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、リン、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタルおよびイットリウムによって構成された群から選択された少なくとも1種の元素Xの少なくとも1種の随意の前駆体、および300nmの最大ナノメートル寸法を有するナノ結晶の形態で該溶液中に分散するゼオライト結晶を混合する工程と、
b’)工程a’)で得られた該溶液をエアゾール霧化して、200μm未満の直径を有する球状液滴を形成させる工程と、
c’)該液滴を乾燥する工程と、
d’)少なくとも該界面活性剤を除去する工程と、
を包含する、方法。
【請求項15】
元素Xはアルミニウムである、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記界面活性剤は3ブロックの共重合体であり、各ブロックはポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成される、請求項13〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記3ブロックの共重合体は2つのポリ(エチレンオキシド)鎖および1つのポリ(プロピレンオキシド)鎖によって構成される、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−8510(P2006−8510A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185055(P2005−185055)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(591007826)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (261)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT FRANCAIS DU PETROL
【Fターム(参考)】