説明

ケイ素含有微粒子及びそれを含む電気泳動型表示素子

【課題】誘電率の小さい溶媒中でも凝集しない電気泳動型表示素子用の表示用粒子、その粒子を含む表示液及びその表示液を用いた電気泳動型表示素子を提供する。
【解決手段】(a)一般式(1)で表される少なくとも1種の片末端反応性ポリオルガノシロキサンと(b)一般式(2)で少なくとも1種のテトラアルコキシシランを溶液中で共加水分解反応して得られるケイ素含有微粒子である。




ここで、R、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に同一または異なる1価の有機基であり、nは4〜1100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動を利用した表示素子に使用する表示用粒子として有用なケイ素含有微粒子、その粒子を含む表示液及びその表示液を使用した電気泳動型表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気泳動を利用した表示素子が知られている。それは少なくとも一方がITO電極のような透光性の2枚の基板が、ある間隔をもって対向し、その間に電気泳動粒子を分散媒に分散させてなる懸濁液を封入し、その電極板間に電圧を印加することにより電気泳動粒子を透明電極板側またはその反対側へ移動させて、電気泳動粒子のコントラストを透明電極板側から認識させることによる電気泳動型表示素子が開発されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
このような電気泳動型表示素子は、電圧を印加したときに電極間に電流が流れ、これによって電気分解反応などが起こることを防ぐために、誘電率の小さい分散媒を使うことが求められている。しかし、誘電率の低い分散媒は、一般的に水に不溶性の溶媒であることが多い。
【0004】
一方において、電気泳動型表示素子に利用できるような粒子は、表面が親水性であり水やアルコールには容易に分散されるものの、水に不溶性の溶媒中では凝集する傾向がある。粒子が凝集を起こすと見かけ上の粒径が大きくなり、沈降ないしは浮上する現象が起こり易い。電気泳動型表示素子で表示を行なった後、電極近傍に集まった粒子が沈降や浮上を起こすことは、表示の保存性が維持できない原因となる。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−244095号公報
【特許文献2】特開平1−86116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、誘電率の小さい溶媒中でも凝集しない電気泳動型表示素子用の表示用粒子、その粒子を含む表示液及びその表示液を用いた電気泳動型表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明者は、特定の片末端反応性ポリオルガノシロキサンと特定のテトラアルコキシシランを共加水分解して得られるケイ素含有微粒子が上記課題を解決することを見いだし本発明を完成した。本発明は下記の項よりなる。
【0008】
1.(a)一般式(1)で表される少なくとも1種の片末端反応性ポリオルガノシロキサンと(b)一般式(2)で表される少なくとも1種のテトラアルコキシシランを溶液中で共加水分解反応して得られるケイ素含有微粒子。



ここで、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル、炭素数4〜10のシクロアルキルまたは炭素数6〜10のアリール若しくはアリール置換炭化水素基であり;R及びRは炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル、炭素数6〜10のアリール若しくはアリール置換炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキルオキシ、炭素数4〜10のシクロアルキルオキシまたは炭素数6〜10のアリールオキシ置換炭化水素基であり;R9はフェニルまたは炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖アルキルであり;nは4〜1100である。
【0009】
2.一般式(2)において、Rがフェニルまたは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖アルキルである項1に記載のケイ素含有微粒子。
【0010】
3.一般式(1)で表わされる化合物が下記一般式(1−1)で表わされる化合物である項1または2に記載のケイ素含有微粒子。

ここで、R、R、R、R、R、R及びnは前述の通りである。
【0011】
4.一般式(1)で表わされる化合物が下記一般式(1−2)で表わされる化合物である項1または2に記載のケイ素含有微粒子。

ここで、R、R、R、R、R、R及びnは前述の通りである。
【0012】
5.一般式(1)で表わされる化合物が下記一般式(1−3)で表わされる化合物である項1または2に記載のケイ素含有微粒子。

n1+n2=n、1≦n1≦n−1
ここで、R、R、R、R、R、R及びnは前述の通りであり、合計n個の構成単位(−O−Si(Ph)−)と(−O−Si(Me)−)の配列は任意である。
【0013】
6.R、R及びRが独立してメチルまたはフェニルである項1〜5の何れか1項に記載のケイ素含有微粒子。
【0014】
7.R及びRが独立してメチルまたはフェニルである項1〜6の何れか1項に記載のケイ素含有微粒子。
【0015】
8.Rが炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖アルキルである項1〜7の何れか1項に記載のケイ素含有微粒子。
【0016】
9.一般式(1)で表わされる化合物が下記一般式(1−1)で表わされる化合物であり、一般式(2)において、Rがフェニルまたは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖アルキルである項1に記載のケイ素含有微粒子。




ここでR、R及びRが独立してメチルまたはフェニルである;R及びRが独立してメチルまたはフェニルである;Rが炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖アルキルである;nは4〜400である。
【0017】
10.一般式(1)で表わされる化合物が下記一般式(1−2)で表わされる化合物であり、一般式(2)において、Rがフェニルまたは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖アルキルである項1に記載のケイ素含有微粒子。



ここでR、R及びRが独立してメチルまたはフェニルである;R及びRが独立してメチルまたはフェニルである;Rが炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖アルキルである;nは4〜150である。
【0018】
11.一般式(1)で表わされる化合物が下記一般式(1−3)で表わされる化合物であり、一般式(2)において、Rがフェニルまたは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖アルキルである項1に記載のケイ素含有微粒子。



n1+n2=n、1≦n1≦n−1
ここでR、R及びRが独立してメチルまたはフェニルである;R及びRが独立してメチルまたはフェニルである;Rが炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖アルキルである;nは4〜400である。合計n個の構成単位(−O−Si(Ph)−)と(−O−Si(Me)−)の配列は任意である。
【0019】
12.一次粒子の平均粒子径が50〜1,000nmである項1〜11の何れか1項に記載のケイ素含有微粒子。
【0020】
13.項1〜12の何れか1項に記載のケイ素含有微粒子と、分散媒を含む電気泳動表示装置用表示液。
【0021】
14.分散媒が飽和炭化水素である項13に記載の電気泳動表示装置用表示液。
【0022】
15.少なくとも一方が透明な一組の対向配置した電極板間に項13に記載の表示液を封入してなる電気泳動表示装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明のケイ素含有微粒子は水に不溶性の有機溶媒に対して親和性のあるジオルガノポリシロキサン部分が化学的に結合しているために、水に不溶性の有機溶媒中でも凝集を起こさず安定に分散される。また、カプセルに封じ込めるなどの処理に対しても、妨害成分を含有していないので、これらの処理が容易であるという特徴も持っている。したがって、このような微粒子を含む本発明の電気泳動表示装置用表示液は安定した懸濁液であり、このような表示液を用いた本発明の電気泳動型表示素子は、表示安定性に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
前記一般式(1)におけるR、R、R、R、R、R、R及びRの好ましい具体例についてのべる。炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖アルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどがあげられる。炭素数4〜10のシクロアルキルとしてはシクロペンチル、シクロヘキシルなどがあげられる。また炭素数6〜10のアリール若しくはアリール置換炭化水素基としてはフェニル、トルイル、キシリル、エチルフェニル、ベンジル、フェネチルなどがあげられる。好ましいR、R、R、R、R及びRは、メチルまたはフェニル、Rはメチル、ブチルまたはフェニルであり、Rはメチルまたはエチルである。
【0025】
前記一般式(2)のRにおけるフェニルまたは炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖アルキルとしては好ましくはフェニルまたは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖アルキルである。
その具体例として、テトラフェノキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトラブトキシシランを挙げることができる。
【0026】
本発明で使用される一般式(1)で表わされる片末端反応性ポリオルガノシロキサンは、例えば、下記の反応式(1)に従って、片末端にSiH基をもつポリオルガノシロキサンと、アルコールとから触媒の存在下または非存在下で反応させることにより得られる。
【0027】
反応式(1)

【0028】
この反応において、触媒の存在は必須ではない。加熱などによって脱水素反応は自発的に起こる。ただし、触媒が存在しない系では反応速度が遅すぎて、実用的とはいえない。そこで、反応速度を実用的な速さにし、長時間の反応による好ましくない副生成物の生成を抑制するために、一般的には触媒を入れて反応することが好ましい。このような触媒の例として、酸性を示す化合物や、塩基性を示す化合物が挙げられる。この触媒となる化合物は、一種類でもよく、二種類以上をあわせて使用しても良い。このような触媒として、貴金属錯体が有効である。具体的には、塩化白金酸やウイルキンソン錯体、白金0価錯体などを挙げることができる。
【0029】
この反応において、前記片末端ヒドロシリル含有シリコーンと前記アルコールが均一に混合されることが必要である。一般にシリコーンは平均分子量が大きくなるにつれ、アルコール類を溶解しなくなる。そこで、このような不均一な反応系を避けるため、前記片末端ヒドロシリル含有シリコーンと前記アルコールが均一に混合されるような溶媒を使用する。このような溶媒は、反応を阻害しなければどのようなものでも良い。反応を阻害するようなものとは、1)窒素原子に水素原子が共有結合しているアミン類、2)ヒドロオキシカルボニルを持っているようなカルボン酸類、である。
【0030】
使用できる溶剤として、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼンなどの芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などの塩素含有化合物、アセトン、メチルエチルケトン、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を挙げることができる。また、これらの溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0031】
反応温度は任意に選択することができる。一般には冷却する必然性はなく、また、溶媒の沸点を超えるような温度で反応する必然性もない。好ましくは、20℃〜200℃であり、更に好ましくは、40℃〜150℃である。
【0032】
本発明で用いられる一般式(1)で表わされる片末端反応性ポリオルガノシロキサンにおいて、nは4〜1100であり、好ましくは4〜800である。さらに好ましいnの範囲について、片末端反応性ポリオルガノシロキサンの構造別に詳しく説明する。片末端反応性ポリオルガノシロキサンが一般式(1−1)で表される化合物である場合は4〜400であり、片末端反応性ポリオルガノシロキサンが一般式(1−2)で表される化合物である場合は4〜150であり、片末端反応性ポリオルガノシロキサンが一般式(1−3)で表される化合物である場合は4〜400である。このnの範囲は一般式(2)で表されるテトラアルコキシシランと一緒に使用する場合に扱い易いと考えられる片末端反応性ポリオルガノシロキサンの数平均分子量をもとに選択されたものである。
【0033】
本発明で用いられる一般式(1)で表わされる片末端反応性ポリオルガノシロキサンは、後述する方法で測定された数平均分子量が500〜500,000であり、好ましくは500〜120,000である。さらに好ましい数平均分子量の範囲について、片末端反応性ポリオルガノシロキサンの構造別に詳しく説明する。片末端反応性ポリオルガノシロキサンが一般式(1−1)で表される化合物である場合は500〜30,000であり、片末端反応性ポリオルガノシロキサンが一般式(1−2)で表される化合物である場合は1,000〜30,000であり、片末端反応性ポリオルガノシロキサンが一般式(1−3)で表される化合物である場合は500〜30,000である。この分子量範囲は一般式(2)で表されるテトラアルコキシシランと一緒に使用する場合の扱い易さをもとに選択されたものである。
【0034】
本発明の片末端反応性ポリオルガノシロキサンの好ましい態様は前記式(1−1)〜(1−3)で表わされる化合物であり、これらの式において、R、R、R、R、R及びRは独立にメチルまたはフェニルがより好ましく、及びRはメチル、ブチルまたはフェニルがより好ましく、式(1)において、R、R、R、R、R、R及びR全てがメチルであるのが最も好ましい。Rは炭素数1〜4の直鎖または分岐アルキルが好ましい。
【0035】
本発明のケイ素含有微粒子は片末端反応性ポリオルガノシロキサンとテトラアルコキシシランの加水分解を有機溶媒の存在下にて行なうことにより得られる。加水分解の反応の形式は特に限定されないが、水を含む有機溶媒中に片末端反応性ポリオルガノシロキサンとテトラアルコキシシランを同時に滴下する方法、有機溶媒中に水と片末端反応性ポリオルガノシロキサンとテトラアルコキシシランを同時に滴下する方法、片末端反応性ポリオルガノシロキサンとテトラアルコキシシランを含む有機溶媒中に水を滴下する方法などが挙げられる。反応温度は、−20〜50℃であり、好ましくは−10〜30℃である。反応時間は、数十分〜数十時間であり、好ましくは30分〜5時間である。
【0036】
本発明で使用される全アルコキシシラン中、片末端反応性ポリオルガノシロキサンの比率は、0.01〜50重量%であり、好ましくは5〜25重量%である。ここで全アルコキシシランとは、片末端反応性ポリオルガノシロキサンとテトラアルコキシシランの総和のことである。
片末端反応性ポリオルガノシロキサンの比率が0.01重量%以上である場合には、粒子表面を形成するジアルキルポリシロキサンの比率が小さすぎず、その結果、粒子の親溶媒性の性質が維持される。
また、片末端反応性ポリオルガノシロキサンが50重量%以下の場合には、粒子表面を形成するジアルキルポリシロキサン部分の比率が大きすぎず、片末端反応性ポリオルガノシロキサンだけの単独縮合物が形成されることはなく、更に、粒子の親水性の性質が維持される。
【0037】
本発明で使用される水の量は全アルコキシシラン1モルに対し、好ましくは0.5モル以上200モル以下であり、より好ましくは20モル以下である。0.5モル以上であると加水分解反応が進行し易くなるためである。また、200モルを以下であると各原料の分散性が向上するためである。なお、使用に供される前記水としては、イオン交換などによって充分精製され、不純物を除去したものが好ましい。
【0038】
また、本発明の方法においては前記水と共に触媒を使用することができる。好適に使用することができる触媒としては水のpHを変更させるものであれば特に制限がなく、具体的には、酸としては例えば硝酸、シュウ酸、酢酸など、アルカリとしては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、エチレンジアミンなどを挙げることができる。使用する量は特に限定されない。
【0039】
加水分解に使用できる溶媒は特に限定はないが、反応中に水を溶解するものが好ましい。このような例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のようなアルコール、酢酸エチルまたは酢酸ブチル等のような酢酸エステル、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のようなエ−テル、アセトン、メチルエチルケトン、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のようなケトンが挙げられる。また、反応の極性を調整するために、これら溶媒を2種類以上を組み合わせて使用することもでき、これらの溶媒にトルエン、キシレン、n−ヘキサン及びシクロヘキサン等の炭化水素を組み合わせることもできる。
【0040】
ケイ素含有微粒子の平均粒子径は反応工学的な手法によって制御できる。具体的には、触媒の添加量の調整、滴下液の滴下速度の調整などによってである。Z平均粒子径が50nm以上であると粒径が光の波長以上になり、光の反射が容易になる。また、Z平均粒子径が1000nm以下になると粒子の沈降を防ぐことができ、安定な分散を維持することができる。このため、表示用の粒子としては、Z平均粒子径は50〜1000nmが好ましく、100〜500nmがより好ましい。尚、本発明でいうZ平均粒子径とは後述する方法で測定されたメタノール中で測定された一次粒子のZ平均粒子径である。このようにして、本発明のケイ素含有微粒子が得られる。
【0041】
本発明の電気泳動型表示素子は電気泳動粒子であるケイ素含有微粒子およびそれを含む表示液に特徴があり、それ以外は通常の構成を有する。すなわち、少なくとも一方がITO電極のような透光性を有する2枚の基板が、ある間隔をもって対向し、その間にケイ素含有微粒子を分散媒に分散させてなる表示液を封入し、その電極板間に電圧を印加することによりケイ素含有微粒子を透明電極板側またはその反対側へ移動させて、電気泳動粒子のコントラストを透明電極板側から認識させる。
【0042】
電気泳動表示装置用表示液に用いられる分散媒は飽和炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、ハロゲン化炭化水素、シリコーン、オリーブ油、やし油、ひまし油または流動パラフィンである。これら化合物の任意の混合物を使用することもできる。これらの中で好ましいのは飽和炭化水素であり、その具体例としてn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等のパラフィン、イソオクタン、Isopar C、Isopar E、Isopar G、Isopar L、Isopar M、Isopar H、Isopar J、Isopar K、Isopar L、Isopar P、Isopar V (何れもExxon社の登録商標)等のイソパラフィン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等のシクロパラフィンを挙げることができる。また、本発明の目的を損なわない程度に少量の弱い極性基を有する溶媒を添加することもできる。
【0043】
このようにして調製したケイ素含有微粒子は、分子中に二酸化ケイ素の部分を有するために水、及び有機溶媒に対して不溶性であり、これらの液体中では粒子の形状を保持することができる。また、この二酸化ケイ素の部分は水に対して親和性を示し、同時にこの微粒子の分子中に存在するジオルガノポリシロキサン部分は水に不溶性の有機溶媒に対して親和性を示す。このように本発明の微粒子は相反する特性を持つ基が化学的に結合してなる分子により構成される。
そのため、本発明の微粒子は水から水に不溶性の有機溶媒に至る広い範囲の液体中で凝集することなく分散されるのである。
【0044】
一方、電気泳動型表示素子は、電極間に電流が流れ、これによって電気分解反応などが起こることを防ぐために、誘電率の小さい分散媒を使うことが求められている。分散媒の誘電率は、一般的に疎水性と関係があり、誘電率が小さいものほど疎水性の程度が大である。したがって、電気泳動型表示素子に使用する表示粒子は、疎水性溶媒に分散されることが求められる。このために、本発明の微粒子は、有機溶媒に不溶性であるため有機溶媒中で粒子の形状を維持し、かつ、有機溶媒に安定に分散され、凝集を起こすことがないという特徴を持った粒子であるため、表示用粒子として、好適に使用されるのである。
【0045】
さらに、本発明のケイ素含有微粒子を含む表示液は、従来の界面活性剤や分散剤を添加して安定な懸濁液を作成する方法とは異なり、界面活性剤や分散剤などの第三成分を含むことなく安定に分散されているので、例えばカプセルに封じ込めるなどの処理を行なう際にも、何ら妨害を起こさないという利点を持っている。
【0046】
以下、本発明を実施例により具体的かつ詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。容量の単位リットルは記号Lで表す。
【0047】
微粒子の一次粒径は、電界放射走査電子顕微鏡(JSM−6700F、日本電子株式会社製)で観測した粒子10個から求めたZ平均粒子径である(顕微鏡法)。
【0048】
これとは別に誘電率の異なる溶媒に対する粒子の親和性をみるため両溶媒中での粒子の粒子径を測定した。即ち、誘電率大の溶媒としてメタノール(誘電率32.6)、誘電率小の溶媒としてテトラヒドロフラン(THF、誘電率7.6)を用い、サンプルを揮発分濃度10〜100ppmになるまで希釈して、マルバーン社製ゼータ電位・粒度分布測定装置(ゼータサイザー3000HS)により、測定し、Z平均粒子径で表わした。
【0049】
数平均分子量は試料濃度1重量%のトルエン溶液20μLを分析サンプルとして、カラム:Shodex LF804(昭和電工(株)製)(直列に2本接続)、カラム温度:40℃、検出器:RI、溶離液:トルエン、及び溶離液流速:1.0mL毎分で測定した。
【0050】
赤外線吸収スペクトル(IRスペクトル)は、日本分光(株)製フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR-660-plusを使用し、測定サンプルは岩塩単結晶板に挟んで測定した。
【0051】
核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)は、DRX500(ブルカー・バイオスピン(株)製)を使用し、測定サンプルは重クロロホルムに溶解して測定した。
【0052】
参考例1
磁気攪拌子、温度計、コンデンサを取り付けた50mLの三ッ口フラスコに、分子量1,400の片末端ヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサン10g、メタノール10g、トルエン10g、白金触媒1.2μLを入れた。フラスコ内温を40℃に昇温し、水素泡の発生がなくなるまで4時間攪拌した。室温まで冷却した後、減圧下にメタノールとトルエンを溜去し、9.85gの無色透明な粘稠性液体を得た。
この物質のIRスペクトルを測定すると、原料の片末端ヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサンに見られるSiHに基因する2127cm-1の吸収が消失していた。1H−NMRスペクトルではメトキシシリル基のメチルプロトンに基因する3.40ppmのピークが生じていた。GPCを測定した結果、ポリスチレン換算で数平均分子量1,400、分散度1.22のポリマーであった。
【実施例1】
【0053】
100mLの攪拌機付き反応器に、THF30mLを投入した。滴下タンクAにテトラメトキシシラン2.4mLと参考例1のシリコーン0.60gとn−ヘキサン2.0mLの混合液を充填した。滴下タンクBに水0.5mL、濃アンモニア水0.5mL、メタノール4.0mLの混合液を充填した。
反応器内を攪拌しながら室温下で、滴下タンクAの溶液と、滴下タンクBの溶液を1時間かけて滴下した。生成した液は乳白色の均一な懸濁液であった。
生成した微粒子の顕微鏡法で測定された一次粒子径は、126nmであった。この微粒子の粒度分布をメタノール中で測定したところ、Z平均粒子径は129nmであった。また、THF中で測定したところ、Z平均粒子径は111nmであった。従って、算術平均値である顕微鏡法で測定された一次粒子径と、溶媒中で測定されたZ平均粒子径がほぼ同一であることは、この微粒子は誘電率に大差のある両溶媒でも凝集することなく分散されており、かつ粒子径が均一であることを示している。
【実施例2】
【0054】
100mLの攪拌機付き反応器に、THF25mLとn−ヘキサン5mLを投入した以外は実施例1と同じ操作で、乳白色の均一な懸濁液を得た。
生成した微粒子の顕微鏡法で測定された一次粒子径は、280nmであった。この微粒子の粒度分布をメタノール中で測定したところ、平均粒子径は178nmであった。また、THF中で測定したところ、平均粒子径は230nmであった。従って、この微粒子は両溶媒中で凝集することなく分散されており、かつ粒子径が均一であることを示している。
【実施例3】
【0055】
100mLの攪拌機付き反応器に、THF20mLとn−ヘキサン10mLを投入した以外は実施例1と同じ操作で、乳白色の均一な懸濁液を得た。
生成した微粒子の顕微鏡法で測定された一次粒子径は、454nmであった。この微粒子の粒度分布をメタノール中で測定したところ、平均粒子径は444nmであった。また、THF中で測定したところ、平均粒子径は344nmであった。従って、この微粒子は両溶媒中で凝集することなく分散されており、かつ粒子径が均一であることを示している。
【0056】
比較例1
比較例1
滴下タンクAにテトラメトキシシラン5.4mLとテトラヒドロフラン3.6mLの混合液を入れ、滴下タンクBに水0.9mL、濃アンモニア水0.9mL及びメタノール7.2mLの混合液を入れた以外は実施例1と同じ操作で、乳白色の均一溶液を得た。
生成した微粒子の粒度分布をメタノール中で測定したところ、平均粒子径は113nmであった。また、THF中で測定しようとしたが、測定中に粒子径が徐々に大きくなって測定できなかった。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式(1)で表される少なくとも1種の片末端反応性ポリオルガノシロキサンと(b)一般式(2)で表される少なくとも1種のテトラアルコキシシランを溶液中で共加水分解反応して得られるケイ素含有微粒子。



ここで、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル、炭素数4〜10のシクロアルキルまたは炭素数6〜10のアリール若しくはアリール置換炭化水素基であり;R及びRは炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル、炭素数6〜10のアリール若しくはアリール置換炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキルオキシ、炭素数4〜10のシクロアルキルオキシまたは炭素数6〜10のアリールオキシ置換炭化水素基であり;R9はフェニルまたは炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖アルキルであり;nは4〜1100である。
【請求項2】
一般式(2)において、Rがフェニルまたは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖アルキルである請求項1に記載のケイ素含有微粒子。
【請求項3】
一般式(1)で表わされる化合物が下記一般式(1−1)で表わされる化合物である請求項1または2に記載のケイ素含有微粒子。

ここで、R、R、R、R、R、R及びnは前述の通りである。
【請求項4】
一般式(1)で表わされる化合物が下記一般式(1−2)で表わされる化合物である請求項1または2に記載のケイ素含有微粒子。

ここで、R、R、R、R、R、R及びnは前述の通りである。
【請求項5】
一般式(1)で表わされる化合物が下記一般式(1−3)で表わされる化合物である請求項1または2に記載のケイ素含有微粒子。

n1+n2=n、1≦n1≦n−1
ここで、R、R、R、R、R、R及びnは前述の通りであり、合計n個の構成単位(−O−Si(Ph)−)と(−O−Si(Me)−)の配列は任意である。
【請求項6】
、R及びRが独立してメチルまたはフェニルである請求項1〜5の何れか1項に記載のケイ素含有微粒子。
【請求項7】
及びRが独立してメチルまたはフェニルである請求項1〜6の何れか1項に記載のケイ素含有微粒子。
【請求項8】
が炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖アルキルである請求項1〜7の何れか1項に記載のケイ素含有微粒子。
【請求項9】
一般式(1)で表わされる化合物が下記一般式(1−1)で表わされる化合物であり、一般式(2)において、Rがフェニルまたは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖アルキルである請求項1に記載のケイ素含有微粒子。




ここでR、R及びRが独立してメチルまたはフェニルである;R及びRが独立してメチルまたはフェニルである;Rが炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖アルキルである;nは4〜400である。
【請求項10】
一般式(1)で表わされる化合物が下記一般式(1−2)で表わされる化合物であり、一般式(2)において、Rがフェニルまたは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖アルキルである請求項1に記載のケイ素含有微粒子。



ここでR、R及びRが独立してメチルまたはフェニルである;R及びRが独立してメチルまたはフェニルである;Rが炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖アルキルである;nは4〜150である。
【請求項11】
一般式(1)で表わされる化合物が下記一般式(1−3)で表わされる化合物であり、一般式(2)において、Rがフェニルまたは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖アルキルである請求項1に記載のケイ素含有微粒子。



n1+n2=n、1≦n1≦n−1
ここでR、R及びRが独立してメチルまたはフェニルである;R及びRが独立してメチルまたはフェニルである;Rが炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖アルキルである;nは4〜400である。合計n個の構成単位(−O−Si(Ph)−)と(−O−Si(Me)−)の配列は任意である。
【請求項12】
一次粒子の平均粒子径が50〜1,000nmである請求項1〜11の何れか1項に記載のケイ素含有微粒子。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載のケイ素含有微粒子と、分散媒を含む電気泳動表示装置用表示液。
【請求項14】
分散媒が飽和炭化水素である請求項13に記載の電気泳動表示装置用表示液。
【請求項15】
少なくとも一方が透明な一組の対向配置した電極板間に請求項13に記載の表示液を封入してなる電気泳動表示装置。

【公開番号】特開2006−342219(P2006−342219A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167697(P2005−167697)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「ナノテクノロジープログラム(ナノ加工・計測技術)機能性カプセル活用フルカラーリライタブルペーパープロジェクト)に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】