説明

ケイ酸塩およびカーボンの粒子を含有する医療用デバイス

本発明の一態様によれば、ケイ酸塩粒子および炭素粒子を含んでなる1以上の粒子含有領域を含む、移植可能かつ挿入可能な医療用デバイスが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸塩粒子および炭素粒子を含んでなる医療用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
粒子を含めることにより、様々な材料に改変された特性が提供されることが知られている。例えば、粘土に見出されるような層状のケイ酸塩は、例えばスポーツ用ボールのような膨張し得る物品のバリアコーティングとして使用可能なポリマー組成物の透水性を低減するために用いられてきた。例えばフィーニー(Feeney)らの特許文献1を参照のこと。そのような粒子は、医療用品のポリマー含有領域からの治療薬送達とも関連して説明されている。リチャード(Richard) の特許文献2およびチョン(Zhong) の特許文献3を参照されたい。別例として、カーボンナノチューブを、特にバルーンのような医療用デバイスのために薄く、可撓性を有し、高強度の多層要素を作成する際に使用することについて報告されている。チェン(Chen)らの特許文献4を参照のこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,232,389号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0181014号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0181015号明細書
【特許文献4】国際公開第2005/115496号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ケイ酸塩粒子および炭素粒子を含んでなる医療用デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要約)
本発明の一態様によれば、ケイ酸塩粒子と炭素粒子とを含んでなる1以上の粒子含有領域を含む医療用デバイスが提供される。医療用デバイスは対象者の体内に移植または挿入されるように構成される。
【0006】
上記およびその他の態様、ならびに本発明の様々な実施形態および利点は、以下の開示内容を読めば当業者には直ちに明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】従来技術のケイ酸塩に担持されたカーボンナノチューブを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一態様によれば、ケイ酸塩粒子および炭素粒子(互いに結合しているか結合していないかにかかわらず本明細書中では「ケイ酸塩/炭素粒子」と総称する)を含んでなる1以上の粒子含有領域を含む、移植可能または挿入可能な医療用デバイスが提供される。
【0009】
粒子含有領域は、典型的には、ケイ酸塩粒子および炭素粒子以外の1以上の補助材料、例えば、数多くの可能性がある中でも特にポリマー系補助材料および/またはセラミックス系補助材料をさらに含んでなる。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明の医療用デバイスは1以上の任意選択の治療薬をさらに含んでなるが、他の実施形態では含んでいない。「治療薬」、「薬物」、「生理活性物質」、「薬理活性物質」およびその他の関連用語は、本明細書中では互換的に使用可能である。
【0011】
本発明の利益を享受する医療用デバイスの例は広く様々であり、移植可能または挿入可能な医療用デバイス、例えばステント(冠状動脈ステント、末梢血管ステント、脳ステント、尿道ステント、尿管ステント、胆管ステント、気管ステント、胃腸管ステントおよび食道ステントなど)、ステントカバー、ステントグラフト、血管グラフト、腹部大動脈瘤(AAA)デバイス(例えばAAAステント、AAAグラフト)、血管アクセスポート、透析ポート、カテーテル(例えばバルーンカテーテルおよび様々な中心静脈カテーテルのような、泌尿器科用カテーテルまたは血管カテーテル)、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ(例えば、大静脈フィルタおよび蒸発防止デバイスのメッシュフィルタ)、脳動脈瘤充填コイルを含む塞栓デバイス(グリエルミ(Guglielmi) 着脱式コイルおよび金属コイルを含む)、中隔欠損閉鎖デバイス、動脈内配置に適した薬物デポーであって該デバイスより末梢側の動脈の部分を治療するためのデポー、心筋プラグ、パッチ、ペースメーカー、ペースメーカーのリードを含むリード、除細動器のリードおよびコイル、左心室補助人工心臓およびポンプを含む左心室補助デバイス、完全人工心臓、シャント、心臓弁および血管弁を含む弁、吻合用クリップおよびリング、人工内耳、組織充填デバイス、ならびに軟骨、骨、皮膚およびその他の生体内組織再生用の組織工学的足場、縫合材、縫合用アンカー、手術部位の組織用ステープルおよび結紮クリップ、カニューレ、金属ワイヤ結紮糸、尿道スリング、ヘルニア用「メッシュ」、人工靱帯、靭帯結合および半月板修復用の鋲、人工関節、脊椎円板および脊髄核、整形外科用人工器官(例えば骨移植片、骨プレート、フィンおよび融合デバイス)、整形外科用固定デバイス(例えば足首領域、膝領域、および手の領域の干渉スクリュー、骨折固定用のロッドおよびピン)、頭蓋顎顔面治療用のスクリューおよびプレート、歯科インプラント、または体内に移植もしくは挿入されるその他のデバイス、が挙げられる。
【0012】
本発明の医療用デバイスには、例えば、移植可能かつ挿入可能な医療用デバイスであって全身的な治療または診断に使用されるもの、ならびに任意の哺乳動物の組織または器官の局所的な治療または診断に使用されるものが含まれる。非限定的な例は、腫瘍;器官、例えば心臓、冠状血管系および末梢血管系(総称して「血管系」と呼ばれる)、泌尿生殖器系、例えば腎臓、膀胱、尿道、尿管、前立腺、膣、子宮および卵巣、目、耳、脊椎、神経系、脳、肺、気管、食道、腸、胃、肝臓および膵臓、骨格筋、平滑筋、乳房、皮膚組織、軟骨、歯および骨である。
【0013】
本明細書中で使用される場合、「治療」とは、疾患もしくは病気の予防、疾患もしくは病気に関連した症状の緩和もしくは除去、または疾患もしくは病気の実質的なもしくは完全な除去を指す。対象は、脊椎動物、より典型的には哺乳類、例えばヒト、ペットおよび家畜である。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明の医療用デバイスにおいて使用される粒子含有領域は、医療用デバイス全体に相当する。別の実施形態では、粒子含有領域は医療用デバイスの1つ以上の部分に相当する。例えば、粒子含有領域は、医療用デバイスの構成要素の形態としてもよいし、医療用デバイスに組み込まれる1以上のファイバーの形態としてもよいし、医療用デバイスまたはその構成要素に対応する下層をなす基材の全体またはごく一部の上に形成された1以上の層の形態などとしてもよい。層は下層をなす基材上の様々な位置に、様々な形状またはパターンで(例えば一連の矩形、縞状または他の任意の連続的もしくは非連続的なパターンの形態で)提供可能である。本明細書中で使用される場合、所与の材料の「層」とは、その材料の領域であって、厚さが該領域の長さおよび幅と比較して小さい(例えば10%以下である)領域である。本明細書中で使用される場合、層は平面状である必要はなく、例えば下層をなす基材の輪郭を呈していてもよい。層は不連続的であってもよい(例えば、パターン化されてもよい)。「薄膜」、「層」および「コーティング」のような用語は、本明細書中では互換的に使用可能である。
【0015】
本発明による粒子含有領域のための基材材料は、広く様々な組成であってよく、特定の材料に限定されない。基材材料は、一連の生体安定性材料(すなわち体内に置かれても該デバイスについて予想される留置期間の間ほぼ最初の状態を維持する材料)および生体分解性材料(すなわち体内に置かれると、予想される留置期間の間に溶解し、分解し、再吸収され、かつ/またはその他の方法で留置部位から除去される材料)、例えば(a)有機材料(すなわち、有機化学種を典型的には50重量%以上、例えば50重量%〜75重量%、〜90重量%、〜95重量%、〜97.5重量%、〜99重量%またはそれ以上含んでいる材料)、例えばポリマー材料および生物材料(biologies )、(b)無機材料(すなわち、無機化学種を典型的には50重量%以上、例えば50重量%〜75重量%、〜90重量%、〜95重量%、〜97.5重量%、〜99重量%またはそれ以上含んでいる材料)、例えば金属材料(すなわち、金属を典型的には50重量%以上、例えば50重量%〜75重量%、〜90重量%、〜95重量%、〜97.5重量%、〜99重量%またはそれ以上含んでいる材料)および非金属の無機材料(すなわち、非金属の無機材料を典型的には50重量%以上、例えば50重量%〜75重量%、〜90重量%、〜95重量%、〜97.5重量%、〜99重量%またはそれ以上含んでいる材料)(例えば、炭素、半導体、ガラスおよびセラミックスであって、特に様々な金属酸化物および非金属酸化物、様々な金属窒化物および非金属窒化物、様々な金属炭化物および非金属炭化物、様々な金属ホウ化物および非金属ホウ化物、様々な金属リン酸塩および非金属リン酸塩、ならびに様々な金属硫化物および非金属硫化物)、ならびに(c)ハイブリッド材料(例えば、有機‐無機ハイブリッド材料、例えばポリマー/金属無機ハイブリッドおよびポリマー/非金属無機ハイブリッド)、から選択可能である。
【0016】
無機の非金属材料の具体例は、例えば、下記すなわち:金属酸化物セラミックス、例えば酸化アルミニウムおよび遷移金属酸化物(例えばチタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、レニウム、鉄、ニオブ、イリジウムなどの酸化物);ケイ素;ケイ素系セラミックス、例えば窒化ケイ素、炭化ケイ素および酸化ケイ素を含むもの(ガラスセラミックスと呼ばれる場合もある);リン酸カルシウムセラミックス(例えばハイドロキシアパタイト);炭素;ならびに炭素系セラミックス類似材料、例えば窒化炭素、のうち1つ以上を含有している材料から選択可能である。
【0017】
金属材料の具体例は、例えば、数多い中でも特に、金、鉄、ニオブ、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ロジウム、チタン、タンタル、タングステン、ルテニウムおよびマグネシウムのような金属、ならびに合金、特に、鉄およびクロムを含んでなる合金(例えばステンレス鋼、例えば放射線不透過性の白金富化ステンレス鋼)、ニオブ合金、チタン合金、ニッケルおよびチタンを含んでなる合金(例えばニチノール)、コバルトおよびクロムを含んでなる合金、例えばコバルト、クロムおよび鉄を含んでなる合金(例えばelgiloy(登録商標)合金)、ニッケル、コバルトおよびクロムを含んでなる合金(例えばMP35N)、コバルト、クロム、タングステンおよびニッケルを含んでなる合金(例えばL605)、ニッケルおよびクロムを含んでなる合金(例えばインコネル合金)、ならびに生体分解性の合金、例えばマグネシウム、亜鉛および鉄のうち少なくともいずれかの合金(例えばこれらを互いに組み合わせた合金およびCe、Ca、Zr、Liなどと組み合わせた合金)、から選択可能である。
【0018】
有機材料の具体例には、粒子含有領域中の補助材料として使用するために後述されるものから選択可能なポリマーが挙げられる。
上述のように、一態様では、本発明は、ケイ酸塩粒子および炭素粒子(上記においても述べたように、互いに結合しているか結合していないかにかかわらず本明細書中では「ケイ酸塩/炭素粒子」と総称する)を含んでなる1以上の粒子含有領域を含む移植可能および挿入可能な医療用デバイスを提供する。
【0019】
粒子含有領域内のケイ酸塩/炭素粒子の量は広く様々であってよく、例えば、粒子含有領域の1重量%以下〜2重量%、〜5重量%、〜10重量%、〜25重量%、〜50重量%、〜75重量%、〜90重量%、〜95重量%、〜98重量%、〜99重量%またはそれ以上であってよい。
【0020】
本発明による炭素粒子には、典型的には幅が1000nm以下であるカーボンナノファイバーおよびカーボンナノチューブが挙げられる。カーボンナノチューブは、大部分がsp混成型(すなわち、「グラフェン(grapheme)炭素格子」と呼ばれる場合もある、炭素原子が大部分は格子構造内の他の3つの炭素原子に接続している構造)である分子炭素を含んでなると考えられている粒子である。例えば、グラファイト分子はsp混成型炭素の平面状シートを含むが、カーボンナノチューブは、中空のチューブの形態をなしたsp混成型炭素の湾曲状シートとして説明されている。このようにカーボンナノチューブは、チューブ状に形成された1以上のグラファイトシートと見なすことが可能であり、実際に、グラファイト表面にレーザを当ててグラファイトからいくつかのシートを移動させ、移動したシートがその後反応してナノチューブを形成することにより作られてきた。ナノチューブの具体例には、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)および多層カーボンナノチューブ(MWCNT)(すなわち2以上の炭素層の厚さを有する側壁を備えたナノチューブ)が含まれる。SWCNTは、典型的な内径が0.25nm〜0.5nm、〜1nm、〜2.5nm、〜5nm、典型的な長さが最大で100ミクロン(100μm)またはそれ以上、例えば長さ10nm〜100nm、〜1ミクロン(1μm)、〜10ミクロン(10μm)、〜100ミクロン(100μm)またはそれ以上である。MWCNTは、典型的な内径が2.5nm〜5nm、〜10nm、外径が5nm〜10nm、〜25nm、〜50nm、典型的な長さが最大で100ミクロン(100μm)以下またはそれ以上、例えば長さ10nm〜100nm、〜1ミクロン(1μm)、〜10ミクロン(10μm)、〜100ミクロン(100μm)またはそれ以上である。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「ケイ酸塩」とは、1種類以上の対イオンの存在によって相殺される正味の負電荷を有する、共有結合したケイ素と酸素とを含む粒子である。ケイ酸塩鉱物を含む多くのケイ酸塩では、ケイ素原子は4つの酸素原子とともに四面体配位をとっている。様々な鉱物において、この四面体は様々な度合いで連なり、例えば単体(例えばカンラン石)、対(例えば緑簾石)、ならびにより大きな有限クラスター、例えば環(例えば電気石群)、鎖(例えば輝石群)、2本鎖(例えば角閃石群)およびシート状の粒子(例えば雲母および粘土のようなフィロケイ酸塩)を生じる。多くの実施形態では、本発明の実施において使用されるケイ酸塩粒子はフィロケイ酸塩であり、該フィロケイ酸塩は剥離状でもよいし、非剥離状(例えば積み重ねられたケイ酸塩シートの形態)でもよい。本明細書中で使用される場合、「ケイ酸塩シート」とは、その厚さがその長さおよび幅と比較して小さい(例えば10%以下の)ケイ酸塩である。
【0022】
非剥離状フィロケイ酸塩粒子内部で隣接する層の間の間隔は、一般に5〜20Aの範囲にある。本発明を実施するためのフィロケイ酸塩粒子は、以下の天然物および合成物、すなわち:(a)アロフェン;(b)魚眼石;(c)バニスタ−石;(d)カーレトン石;(e)カバンシ石;(f)珪孔雀石;(g)粘土群に属するもの、例えば:(i)緑泥石群に属するもの、例えばベイリークロア(baileychlore)、シャモサイト、緑泥石、クリノクロア、クーカイト、ニマイト、ペナンタイト、苦土緑泥石、須藤石、(ii)海緑石、(iii)マイト(Mite)、(iv)カオリナイト、(v)モンモリロナイト、(vi)パリゴルスカイト、(vii)葉蝋石、(viii)ソーコナイト、(ix)滑石および(x)バーミキュライト;(h)デルヘイエル石(delhayelite );(i)エルピド石;(j)フェドライト;(k)フランクリンファーネス鉱(franklinfurnaceite);(l)フランクリンフィライト(franklinphilite );(m)ゴニヤライト(gonyerite );(n)ギロル石;(o)リューコスフェン石;(p)雲母群に属するもの、例えば(i)黒雲母、(ii)レピドライト、(iii)白雲母、(iv)ソーダ雲母、(v)金雲母および(vi)チンワルド雲母;(q)ミネヒルライト(minehillite );(r)ノルダイト(nordite );(s)ペンタゴン石;(t)ペタライト;(u)葡萄石;(v)蛇紋石群に属するもの、例えば(i)アンチゴライト、(ii)単斜クリソタイル石、(iii)リザルダイト、(iv)斜方クリソタイル石および(v)蛇紋石;(w)ローデサイト(rhodesite );(x)サンボーン石;(y)ウィッケンバーグ石;(z)ゼオフィル石;ならびにこれらの混合物から選択可能である。
【0023】
本発明を実行するためのさらなるフィロケイ酸塩粒子は、必ずしも上記を除外するものではないが、以下の天然物および合成物、すなわち:アルイエット石(aliettite )、スウィネフォーダイト(swinefordite)、ヤコントバイト(yakhontovite)、ボルコンスコアイト(volkonskoite)、ステベンス石、ヘクトライト、マガディアイト、ケニヤアイト、レディカイト(ledikite)、laponite(R)、サポナイト、ソーコナイト、モンモリロナイト、ベントナイト、ノントロナイト、バイデライト、ヘクトライト、他のスメクタイト群粘土、およびこれらの混合物から選択可能である。
【0024】
本発明を実施するためのさらなるフィロケイ酸塩粒子は、必ずしも上記を除外するものではないが、以下の天然物および合成物、すなわち:(a)平板状の含水フィロケイ酸塩、例えば蛇紋石‐カオリン群、滑石‐葉蝋石群、スメクタイト群、バーミキュライト群、純雲母(フレキシブルマイカ)群、脆雲母群または緑泥石群に属するもの、例えば、リザルダイト、ベルチェリン、アメサイト、クロンスティダ石(cronstedtite)、ヌポア石(nepouite)、ケリー石、フライポンタイト(fraipontite )、ブレンドリーアイト(brindleyite )、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト(平板状)、オディナイト(odinite )、滑石、ウィレムサイト(willemseite )、ケロライト(kerolite)、ピメライト(pimelite)、葉蝋石、フェリパイロフィライト(ferripyrophyllite )、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、ステベンス石、スウィネフォーダイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ボルコンスコアイト、3八面体型バーミキュライト、2八面体型バーミキュライト、黒雲母、金雲母、レピドライト、白雲母、イライト、海緑石、セラドナイト、ソーダ雲母、クリントン石、木下石、ビティ石(bityite )、アナンダイト、マーガライト、クリノクロア、シャモサイト、ペナンタイト、ニマイト、ベイリークロア、ドンバサイト(donbassite)、クーク石、須藤石、コレンサイト(corrensite)、アルイエット石、加水黒雲母、クルケアイト(kulkeite)、レクトライトまたはトスダイト、および(b)非平板状の含水フィロケイ酸塩、例えばアンチゴライト、ベメンタイト(bemenitite)、グリーナ石、カリオピライト、パイロスマライト、マンガンパイロスマライト、フェロパイロスマライト(feropyrosmatite )、フリーデライト、マックギル鉱(mcgillite )、チャルライト(schallerite )、ネレナイト(nelenite)、ミネソタアイト(minnesotaite)、ガノフィル石、エグレトナイト(eggletonite )、ザスメナイト(zussmanite)、パーセッテンス石、スティルプノメレン、フェロスティルプノメレン、フェリスティルプノメレン、レニレナッペアイト(lennilenapeite)、バニスタ−石、ゴニヤライト、セピオライト、ラフリナイト、ファルコンドアイト、パリゴルスカイト、ヨーフォチエール石(yofortierite)、クリソタイル、ペコラ石またはハロイサイト(非平板状)、から選択可能である。
【0025】
多くの実施形態では、炭素粒子はケイ酸塩粒子に結合している。具体的な例では、本発明のケイ酸塩/炭素粒子は、ケイ酸塩粒子と該粒子から延びるカーボンナノチューブとを含んでいる。そのようなケイ酸塩/炭素粒子は、本明細書では「ケイ酸塩に担持されたカーボンナノチューブ」(SSCNT)と呼ばれ、以下に議論されるように、適切な触媒が結合しているケイ酸塩粒子上でカーボンナノチューブを成長させることにより形成することができる。
【0026】
例えば、多層カーボンナノチューブは、適切な金属触媒(例えばFe3+またはNi2+)を含有しているケイ酸塩粒子上で成長させることができる。例としては、触媒を多く含む天然フィロケイ酸塩(例えば鉄を多く含んだモンモリロナイトなど)および触媒を装荷した天然または合成のフィロケイ酸塩が挙げられる。例えば、適切な金属触媒(例えばFe3+またはNi2+であって、例えばメタロセン、硝酸塩または塩化物のような適切な塩の形態、例えば特にフェロセン、硝酸鉄(III)または塩化ニッケル)の水溶液に粒子を1回以上曝露して、触媒イオンと、元々フィロケイ酸塩中に見られるカチオン(例えばナトリウムイオンなど)とを交換することにより、モンモリロナイトまたは別のフィロケイ酸塩に触媒を装荷することができる。触媒含有フィロケイ酸塩粒子を加熱した反応装置に入れ、アセチレン(C)のような炭素含有ガスに曝露して、カーボンナノチューブを形成することができる。このタイプの製法は、例えばモンモリロナイト上での多層カーボンナノチューブの堆積をもたらすことが報告されている。さらなる情報については、例えばK-t. Lau et al., "Cobalt hydroxide colloidal particles precipitation on nanoclay layers for the formation of novel nanocomposites of carbon nanotubes/nanoclay," Composites Science and Technology 66 (2006) 450-458およびA. Bakandritsos et al., "Iron changes in natural and Fe(III) loaded montmorillonite during carbon nanotube growth," Nanotechnology 17 (2006) 1112-1117を参照のこと。前者の著者らは後に、生じるナノチューブがナノクレイの層間空間によって凝集から保護される一方で、モンモリロナイトがその層間空間内でのナノチューブの成長に起因するケイ酸塩シートへの剥離を示すことを報告している。例えば、M. Lu et al., "Enhancement of Vickers hardness of nanoclay-supported nanotube reinforced novel polymer composites," Carbon 44 (2006) 381-392を参照されたい。そのようなSSCNTは図1に概略的に示されており、同図は、モンモリロナイト粘土粒子から生じるケイ酸塩シート110の形態のケイ酸塩粒子表面上の触媒中心130から延びる、カーボンナノチューブ120を示している。K-t. Lau et al., Composites Science and Technology 66 (2006) 450-458を参照されたい。本発明では、従来のようなナノクレイ(ケイ酸塩粒子)担持体の除去を行わずにSSCNTをそのまま使用することができる。
【0027】
本発明に従って、ケイ酸塩/炭素粒子を、移植可能および挿入可能な医療用デバイスの諸特性を増強するために使用することができる。考えられる利点としては、特に下記すなわち:(a)特に平板状のケイ酸塩粒子が使用される場合、ケイ酸塩粒子の存在により浸透性が分子拡散まで低減されること、(b)ケイ酸塩粒子の存在により細胞増殖が増大すること(例えば10%のナノクレイ装荷における内皮細胞の刺激について報告しているAprajita Mattoo et al., "Cell Growth on Polymer-Clay Surfaces," Materials Research Society Fall 2005 meeting Boston MA USA, Session K5: Poster Session II: Engineered Biointerfaces, poster K5.18 を参照のこと)、(c)炭素粒子、特にカーボンナノファイバーおよびカーボンナノチューブの存在により引張強さが増大すること、(d)SSCNTが使用される場合、所与のマトリックス材料内における連結を促進しうる粒子の複雑な形状により、引張強さが増大すること、(e)硬さが増大し、したがって耐スクラッチ性および耐久性が増大すること(例えば、SSCNTがSSCNT‐ポリマー複合材料の硬さを増強することについて報告しているM. Lu et al, Carbon 44 (2006) 383-386 を参照)、(f)SSCNTが使用される加工処理の観点からは、SSCNTのケイ酸塩粒子部分がカーボンナノチューブ部分の凝集を抑制することができる一方で、カーボンナノチューブ部分も同様にケイ酸塩粒子部分の凝集を抑制することができること;(g)任意選択の薬物が供給される実施形態では、ケイ酸塩粒子は薬物のリザーバとして作用しうること;ならびに(h)任意選択の薬物が供給される実施形態では、ナノチューブは加熱可能であるため、薬物送達を促進するためにナノチューブを使用することができること、のうち1つ以上を挙げることができる。例えば、カーボンナノチューブは誘導加温によって加熱されてもよい(D. Lupu et al., Carbon 42 (2004) 503-507およびT. Gennett et al., Mat. Res. Soc. Symp. Proc, Vol. 633 (2001) A2.3.1-A2.3.6 )。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、炭素粒子は単純な有機および無機の官能基で誘導体化されてもよい。例えば、カルボキシル、アミノ、ハロゲン(例えばフルオロ)、ヒドロキシル、イソシアナート、塩化アシル、アミド、エステルおよびOの官能基を用いたカーボンナノチューブの官能基化について、特に報告がなされている。例えば、K. Balasubramanian and M. Burghard, "Chemically Functionalized Carbon Nanotubes," Small 2005, 1, No. 2, 180-192 ;T. Ramanathan et al., "Amino-Functionalized Carbon Nanotubes for Binding to Polymers and Biological Systems," Chem. Mater. 2005, 17, 1290-1295;C. Zhao et al., "Functionalized carbon nanotubes containing isocyanate groups," Journal of Solid State Chemistry, 177 (2004) 4394-4398;およびS. Banerjee et al., "Covalent Surface Chemistry of Single-Walled Carbon Nanotubes," Adv. Mater. 2007, 17, No. 1, January 6, 17-29 を参照のこと。そのような基は、例えば、各種液体中におけるカーボンナノチューブの懸濁性の改善、周囲のマトリックス材料との相互作用の改善、何らかの任意選択の治療薬との相互作用の改善などのために提供可能である。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、炭素粒子はポリマーで誘導体化される。例えば、ポリマーで誘導体化されたカーボンナノチューブは、いわゆる「grafting to 」法および「grafting from 」法を用いて形成されている。
【0030】
「grafting from 」技法は、典型的には(a)炭素粒子表面への重合開始剤の付着と、その後の(b)得られた粒子を基盤としたマクロ開始剤からのモノマーの重合と、を含む。合成技術には、カチオン重合およびアニオン重合ならびにラジカル重合技術、例えば、特に原子移動ラジカル重合(ATRP)、安定フリーラジカル重合(SFRP)、ニトロキシドを介した方法(NMP)、および退化的連鎖移動(例えば可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT))法が含まれる。
【0031】
「grafting to 」技法に適した結合化学は、数多い中でも特に以下すなわち:(a)アミノ基を含んでいるポリマー(例えば、数多い中でも特にアミノ末端を有するポリマー)がカルボキシル、塩化アシル、イソシアナートまたはフッ素で誘導体化された炭素粒子に結合される結合化学;(b)ヒドロキシル基を含んでいるポリマー(例えば、数多い中でも特にヒドロキシル末端を有するポリマー)がカルボキシル、塩化アシル、イソシアナート、またはフッ素で誘導体化された炭素粒子に結合される結合化学;(c)カルボキシル基を含んでいるポリマー(例えば、数多い中でも特にカルボキシル末端を有するポリマー)がアミノおよびイソシアナートで誘導体化された炭素粒子に結合される結合化学、ならびに(d)グリニャール基またはアルキルリチウム基を含んでいるポリマー(例えば、数多い中でも特にグリニャール末端またはアルキルリチウム末端を有するポリマー)がハロゲンで誘導体化された炭素粒子に結合される結合化学、から選択可能である。
【0032】
ポリマーを用いた炭素粒子(特にナノチューブ)の誘導体化に関するさらに詳しい情報については、例えばC. Wang et al, "Polymers containing fullerene or carbon nanotube structures, Prog. Polym. Sci. 29(2004) 1079-1141 、米国特許出願第11/368,738号明細書、および同文献において引用されている参照文献を参照されたい。
【0033】
上記およびその他の技術を使用して、カーボンナノチューブなどの炭素粒子を様々なホモポリマーおよびコポリマーで誘導体化することができる。本発明で使用される炭素粒子に連結(例えば、「grafting to 」または「grafting from 」)させることが可能なホモポリマーおよびコポリマーの例には、補助材料として使用される以下に述べる適切なポリマー、例えば、数多い中でも特に、ポリエチレンオキシドのようなポリアルキレンオキシドが含まれる。
【0034】
いくつかの実施形態では、炭素粒子に連結されるホモポリマーおよびコポリマーは、実用的である限り厳密に、関連するマトリックス材料の特性と一致するように選択される。
具体例として、ポリ(ビニル芳香族‐co‐アルケン)ポリマーがマトリックス材料の例として本明細書中に記載されており、この場合、ポリアルケン、ポリ(ビニル芳香族)、またはポリアルケン‐ブロック‐ポリ(ビニル芳香族)を用いて粒子を誘導体化することが望ましい場合がある。これらのポリマーのいくつかの例が本明細書中に別記されている。ポリアルケンの具体例には、ポリアルケンホモポリマーおよびコポリマー、例えば下記すなわち:数多い中でも特にエチレン、ブチレンおよびイソブチレン、のうち1つ以上を含んでいるものが挙げられる。ポリ(ビニル芳香族)の具体例には、ポリ(ビニル芳香族)ホモポリマーおよびコポリマー、例えば下記すなわち:数多い中でも特にスチレンおよびα‐メチルスチレン、のうち1つ以上を含んでいるものが挙げられる。
【0035】
別の具体例として、ポリエーテル‐ブロック‐ポリアミドがマトリックス材料の例として記載されており、この場合、ポリエーテル、ポリアミド、またはポリエーテル‐ブロック‐ポリアミドを用いて粒子を誘導体化することが望ましいかもしれない。これらのポリマーのいくつかの例が本明細書中に別記されている。ポリエーテルの具体例には、ポリエーテルホモポリマーおよびコポリマー、例えば下記すなわち:数多い中でも特にエチレンオキシド、トリメチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびテトラメチレンオキシド、のうち1つ以上を含んでいるものが挙げられる。ポリアミドの具体例には、ポリアミドホモポリマーおよびコポリマー、例えば特にナイロン6、ナイロン4/6、ナイロン616、ナイロン6/10、ナイロン6/12、ナイロン11およびナイロン12が挙げられる。
【0036】
別の具体例として、セラミックス材料、例えば、特にアルミナ、ジルコニア、ガラスセラミックス、リン酸カルシウムまたはこれらの組み合わせ、を含んでなるセラミックス材料は、本明細書中においてマトリックス材料として使用可能であり、この場合、親水性ポリマー、例えば、特に先の段落で述べたもののようなポリエーテルを用いて、炭素粒子を誘導体化することが望ましいかもしれない。
【0037】
別の具体例として、炭素粒子は、カチオン性、アニオン性および両性イオン性の高分子電解質のような高分子電解質化学種で、または高分子電解質化学種を含んでなる両親媒性ポリマーで誘導体化されて、該粒子が正電荷、負電荷または混合電荷を有するようになされてもよい。例えば、Kong et al., Polymer, 46 (2005) 2472-2485 およびV.A. Sinani et al., J. Am. Chem. Soc, 127 (2005) 3463-3472を参照のこと。炭素粒子の親水性を高めることに加えて、そのような誘導体化ステップにより、他の化学種(例えば荷電した治療薬および荷電したマトリックス材料)と静電気学的に相互作用することができる炭素粒子も生じることになる。さらに、そのような粒子を、以下に詳しく議論されるように交互積層法(layer-by-layer)による堆積工程に加えることも可能であり、以下の議論においては、炭素粒子を誘導体化するのに適した多くの高分子電解質について説明する。
【0038】
他の例では、カーボンナノチューブは生理活性分子を用いて官能基化される(例えば、共有結合または非共有結合によりコンジュゲート化される)。例としては、タンパク質・カーボンナノチューブコンジュゲート、酵素・カーボンナノチューブコンジュゲート、およびDNA・カーボンナノチューブコンジュゲートが挙げられる。N.W.S. Kam et al., Angew. Chem. Int. Ed, 44 (2005) 1-6、L. Dai et al., Nanotechnology, 14 (2003) 1081-1097、およびA. Merkoci et al., Trends in Analytical Chemistry, Vol. 24, No. 9, 2005, 826-838を参照。さらに別の例では、炭素は、薬物とともにコンジュゲート化された高分子電解質またはその他の親水性ポリマー、例えばN‐(2‐ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)コポリマー‐ドキソルビシン、HPMAコポリマー‐パクリタキセル、HPMAコポリマー‐カンプトテシン、ポリエチレングリコール(PEG)‐カンプトテシン、ポリグルタミン酸‐パクリタキセル、HPMAコポリマー‐白金酸塩、およびガラクトサミンをさらに担持しているHPMAコポリマー‐ドキソルビシンコンジュゲート、を用いて官能基化される。R. Duncan et al., Journal of Controlled Release 1A (2001) 135-146 を参照のこと。
【0039】
多くの実施形態では、ケイ酸塩粒子および炭素粒子は1以上の補助材料(例えばマトリックス材料など)を用いて適所に保持される。好適な補助材料は、有機材料、無機材料およびこれらのハイブリッドを含む様々な材料から選択可能である。
【0040】
補助材料の量は大幅に変化させることが可能であり、存在する場合には、例えば粒子含有領域の0.1重量%〜0.2重量%、〜0.5重量%、〜1重量%、〜2重量%、〜5重量%、〜10重量%、〜25重量%、〜50重量%、〜75重量%、〜90重量%、〜95重量%、〜98重量%、〜99重量%に相当することができる。
【0041】
好適な有機補助材料の具体例には、ポリマー材料(生体安定性を有するかまたはその他のもの)およびその他の有機材料が含まれる。本明細書中で使用される場合、「ポリマー(系)」材料とは、ポリマーを含有する材料、典型的にはポリマーを50重量%以上、例えば50重量%〜75重量%、〜90重量%、〜95重量%、〜97.5重量%、〜99重量%またはそれ以上含有する材料である。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「ポリマー」とは、一般にモノマーと呼ばれる1以上の構成単位の複製物を複数(例えば複製物をおよそ5〜10、〜50、〜100、〜1000、〜10,000個またはそれ以上)含んでいる分子である。
【0043】
ポリマーはいくつかの構造をとることが可能であり、該構造は、例えば環状構造、直鎖構造および分枝構造から選択可能である。分枝構造には、星型構造(例えば3本以上の鎖が単一の分岐点から伸びる構造)、櫛型構造(例えば主鎖と複数の側鎖とを有する構造)、樹状構造(例えば樹枝状および高分岐ポリマー)などが含まれる。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「ホモポリマー」とは、単一の構成単位の複製物を複数含んでいるポリマーである。「コポリマー」とは、少なくとも2つの相違する構成単位の複製物を複数含んでいるポリマーであり、その具体例にはランダムコポリマー、統計コポリマー、グラジエントコポリマー、周期(例えば、交互)コポリマーおよびブロックコポリマーが挙げられる。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「ブロックコポリマー」とは、例えばあるポリマーブロックに別のポリマーブロックでは見られない構成単位(すなわちモノマー)が見出されるという理由により組成が異なる、2以上のポリマーブロックを含んでいるコポリマーである。本明細書中で使用される場合、「ポリマーブロック」とは、構成単位の集団(単位数は例えば5〜10、〜25、〜50、〜100、〜250、〜500、〜1000個またはそれ以上)である。ブロックは分岐していても分岐していなくてもよい。ブロックは、1種類の構成単位を含むことも可能であるし(本明細書中では「ホモポリマーブロック」とも呼ばれる)、例えばランダム分布、統計的分布、グラジエント分布、または周期的分布(例えば、交互分布)として提供可能な複数種類の構成単位を含むことも可能である(本明細書中では「コポリマーブロック」とも呼ばれる)。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「鎖」とは直線状の(分岐していない)構成単位集団である。
有機材料は、例えば、数多い中でも特に下記の好適な材料すなわち:ポリカルボン酸ポリマーおよびコポリマー、例えばポリアクリル酸;アセタールポリマーおよびコポリマー;アクリル酸系およびメタクリル酸系ポリマーおよびコポリマー(例えばメタクリル酸n‐ブチル);セルロース系ポリマーおよびコポリマー、例えば酢酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロハン、レーヨン、レーヨントリアセテート、ならびにカルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロースのようなセルロースエーテル;ポリオキシメチレンポリマーおよびコポリマー;ポリイミドポリマーおよびコポリマー、例えばポリエーテルブロックイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミドおよびポリエーテルイミド;ポリスルホンポリマーおよびコポリマー、例えばポリアリールスルホンおよびポリエーテルスルホン;ポリアミドポリマーおよびコポリマー、例えばナイロン6,6、ナイロン12、ポリエーテル‐ブロック co‐ポリアミドポリマー(例えばPebax(登録商標)樹脂)、ポリカプロラクタムおよびポリアクリルアミド;樹脂、例えばアルキド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アリル樹脂およびエポキシド樹脂;ポリカーボネート;ポリアクリロニトリル;ポリビニルピロリドン(架橋型およびその他);ビニルモノマーのポリマーおよびコポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルのようなポリハロゲン化ビニル、エチレン‐酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルメチルエーテルのようなポリビニルエーテル、ビニル芳香族ポリマーおよびコポリマー、例えばポリスチレン、スチレン‐無水マレイン酸コポリマー、ビニル芳香族‐炭化水素コポリマー、例えばスチレンブタジエンコポリマー、スチレン‐エチレン‐ブチレンコポリマー(例えばポリスチレン‐ポリエチレン/ブチレン‐ポリスチレン(SEBS)コポリマー、Kraton(登録商標)Gシリーズポリマーとして入手可)、スチレン‐イソプレンコポリマー(例えばポリスチレン‐ポリイソプレン‐ポリスチレン)、アクリロニトリル‐スチレンコポリマー、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレンコポリマー、スチレン‐ブタジエンコポリマーおよびスチレン‐イソブチレンコポリマー(例えばSIBSのようなポリイソブチレン‐ポリスチレンブロックコポリマー)、ポリビニルケトン、ポリビニルカルバゾール、ならびにポリ酢酸ビニルのようなポリビニルエステル);ポリベンズイミダゾール;アイオノマー;ポリアルキルオキシドポリマーおよびコポリマー、例えばポリエチレンオキシド(PEO);ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラートおよび脂肪族ポリエステル、例えばラクチド(乳酸ならびにd‐ラクチド、l‐ラクチドおよびメソラクチドが含まれる)のポリマーおよびコポリマー、ε‐カプロラクトン、グリコリド(グリコール酸を含む)、ヒドロキシブチラート、ヒドロキシバレラート、パラ‐ジオキサノン、トリメチレンカルボナート(およびそのアルキル誘導体)、1,4‐ジオキセパン‐2‐オン、1,5‐ジオキセパン‐2‐オン、および6,6‐ジメチル‐1,4‐ジオキサン‐2‐オン(ポリ乳酸とポリカプロラクトンとのコポリマーは1つの具体例である);ポリエーテルポリマーおよびコポリマー、例えばポリアリールエーテル、例えばポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;ポリイソシアナート;ポリアルキレンを含めたポリオレフィンポリマーおよびコポリマー、例えばポリプロピレン、ポリエチレン(低密度および高密度、低分子量および高分子量)、ポリブチレン(ポリブト‐1‐エンおよびポリイソブチレン)、ポリオレフィンエラストマー(例えばsantoprene(登録商標))、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、ポリ‐4‐メチル‐ペン‐1‐エン、エチレン‐α‐オレフィンコポリマー、エチレン‐メタクリル酸メチルコポリマーおよびエチレン‐酢酸ビニルコポリマー;フッ素系ポリマーおよびコポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン‐co‐ヘキサフルオロプロペン)(FEP)、変性エチレン‐テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF);シリコーンポリマーおよびコポリマー;ポリウレタン;p‐キシリレンポリマー;ポリイミノカーボネート(polyiminocarbonate);コポリ(エーテル‐エステル)、例えばポリエチレンオキシド‐ポリ乳酸コポリマー;ポリホスファジン(polyphosphazine );ポリアルキレンオキザラート;ポリオキサアミド(polyoxaamide)およびポリオキサエステル(polyoxaester)(アミンおよび/またはアミド基を含むものなど);ポリオルトエステル;バイオポリマー、例えばポリペプチド、タンパク質、多糖類および脂肪酸(およびそのエステル)、例えばフィブリン、フィブリノーゲン、コラーゲン、エラスチン、キトサン、ゼラチン、デンプン、ヒアルロン酸のようなグリコサミノグリカン;様々なワックス;ならびに上記のもののブレンドおよびさらなるコポリマー、から選択可能である。
【0047】
特定の実施形態では、本発明で使用される補助ポリマー材料は、少なくとも部分的には、該材料のTg(ガラス転移温度)に基づいて選択される。Tgは一般に、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定することができる(ただしポリマーのTgが該ポリマーの溶融温度または分解温度を上回る場合などのような少数の例外が存在する)。上昇した、または「高いTgのポリマー」とは、体温を上回る、より典型的には50℃〜75℃、〜100℃、〜125℃またはそれ以上のガラス転移温度を示すポリマーである。「低いTgのポリマー」とは、体温より低い、より典型的には約25℃〜0℃、〜−25℃、〜−50℃またはそれ以下のガラス転移温度を示すポリマーである。本明細書中で使用される場合、体温とは37℃である。典型的には、低いTgを示すポリマーは体温において軟質で弾性を有するが、高いTgを示すポリマーは体温において剛体である。
【0048】
特定の実施形態では、マトリックス材料には、1以上のブロックコポリマーであって、(a)1以上の低いTgのポリマーブロック(下記に「L」で示す)と(b)1以上の高いTgのポリマーブロック(下記に「H」で示す)とを含むブロックコポリマーが挙げられる(この場合もTgは一般にDSCによって測定可能である)。ブロックコポリマーの構造は広く様々であり、例えば以下の構造が挙げられる(該構造においては、異なる特徴を有する他の鎖を代用とすることが明らかに可能であっても、説明のためにH鎖およびL鎖が使用されている):(a)ブロックコポリマーであって(HL)型、L(HL)型およびH(LH)型(mは1以上の正の整数である)の交互になった鎖を含んでいるもの、(b)星型ブロックコポリマーであってX(LH)n>およびX(HL)のような分岐した(多腕の)幾何構造を含んでいるもの(nは2以上の正の整数、Xは中心化学種(例えば開始剤分子残基、予め形成されたポリマー鎖を結合させる分子残基など))、ならびに(c)櫛型コポリマーであって、L鎖骨格と複数のH側鎖とを有するもの、およびH鎖骨格と複数のL側鎖とを有するもの。留意すべきなのは、ブロックコポリマー、例えばトリブロックコポリマーHLHとして一般に表されるHL‐X‐LHのブロックコポリマーについて述べる際の中心化学種のような、非ポリマー部分の存在は、無視するのが一般的であることである。
【0049】
ブロックコポリマーのより具体的な例には、1以上の低いTgのポリエーテルブロック(すなわち複数のC‐O‐C結合を含んでいるポリマーブロック)と、1以上の高いTgのポリアミドブロック(すなわち複数の‐NH‐CO‐結合を含んでいるポリマー鎖)とを含んだポリエーテル‐ポリアミドブロックコポリマーが挙げられる。そのようなブロックコポリマーは一般に医療用デバイスにおいて、例えば、特にバルーン、カテーテルおよび内視鏡において使用される。より詳細には、例えば、ワン(Wang)らの米国特許第5,556,383号明細書を参照のこと。多くのポリエーテル‐ポリアミドブロックコポリマーが優れた機械的性質を有しており、安定であり、かつ加工(例えば溶融または溶解加工によるもの)が容易である。ポリエーテル‐ポリアミドブロックコポリマーのさらなる具体例には、(a)ポリエチレンオキシド、ポリ(トリメチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)およびポリテトラメチレンオキシドのようなホモポリマーブロック、ならびにエチレンオキシド、トリメチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびテトラメチレンオキシドのうち2以上を含むコポリマーブロックのようなコポリマーブロック、から選択された1以上のポリエーテルブロック、(b)ナイロン6、ナイロン4/6、ナイロン6/6、ナイロン6/10、ナイロン6/12、ナイロン11およびナイロン12のようなナイロンのホモポリマーブロックおよびコポリマーブロックから選択された1以上のポリアミドブロック、を含んでいるものが挙げられる。例えば、ポリテトラメチレンオキシド‐ナイロン12ブロックコポリマーはPEBAX(登録商標)としてエルフアトケム(Elf Atochem )から入手可能である。
【0050】
ブロックコポリマーのさらなる具体例には、ポリアルケン‐ポリ(ビニル芳香族)ブロックコポリマーであって、1以上の低いTgのポリアルケンブロックと1以上の高いTgのポリ(ビニル芳香族)ブロックとを含むもの、例えば(a)1以上のポリアルケンホモポリマーまたはコポリマーブロックであって、例えば、特に1以上のエチレン、ブチレンおよびイソブチレンを含むブロックと、(b)1以上のポリ(ビニル芳香族)ホモポリマーまたはコポリマーブロックであって、例えば、特に1以上のスチレンおよびα‐メチルスチレンを含むことができるブロックと、を含むものがさらに含まれる。例えば、ポリイソブチレン‐ポリスチレンブロックコポリマー、例えばポリスチレン‐ポリイソブチレン‐ポリスチレントリブロックコポリマー(SIBS)を使用することが可能であり、該ブロックコポリマーについてはピンチャック(Pinchuk )らの米国特許第6,545,097号明細書に記載されている。
【0051】
ブロックコポリマーのさらなる具体例には、1以上の高いTgのポリ(メタ)アクリラートブロックと1以上の低いTgのポリ(メタ)アクリラートブロックとを有するブロックコポリマーがさらに含まれる(ここで「(メタ)アクリラート」はアクリラートまたはメタクリラートを示す)。
【0052】
低いTgの(メタ)アクリラートブロックは、下記(各ホモポリマーの報告されているTgと共に示す):(1)低いTgのアクリル酸モノマー、例えば:(a)アクリル酸アルキル、例えばアクリル酸メチル(Tg 10℃)、アクリル酸エチル(Tg −24℃)、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル(Tg −11℃、アイソタクチック)、アクリル酸ブチル(Tg −54℃)、アクリル酸セカンダリ‐ブチル(Tg −26℃)、アクリル酸イソブチル(Tg −24℃)、アクリル酸シクロヘキシル(Tg 19℃)、アクリル酸2‐エチルヘキシル(Tg −50℃)、アクリル酸ドデシル(Tg −3℃)およびアクリル酸ヘキサデシル(Tg 35℃)、(b)アクリル酸アリールアルキル、例えばアクリル酸ベンジル(Tg 6℃)、(c)アクリル酸アルコキシアルキル、例えばアクリル酸2‐エトキシエチル(Tg −50℃)およびアクリル酸2‐メトキシエチル(Tg −50℃)、(d)アクリル酸ハロアルキル、例えばアクリル酸2,2,2‐トリフルオロエチル(Tg −10℃)ならびに(e)アクリル酸シアノアルキル、例えばアクリル酸2‐シアノエチル(Tg 4℃)ならびに(2)低いTgのメタクリル酸モノマー、例えば(a)メタクリル酸アルキル、例えばメタクリル酸ブチル(Tg 20℃)、メタクリル酸ヘキシル(Tg −5℃)、メタクリル酸2‐エチルヘキシル(Tg −10℃)、メタクリル酸オクチル(Tg −20℃)、メタクリル酸ドデシル(Tg −65℃)、メタクリル酸ヘキサデシル(Tg 15℃)およびメタクリル酸オクタデシル(Tg −100℃)ならびに(b)メタクリル酸アミノアルキル、例えばメタクリル酸ジエチルアミノエチル(Tg 20℃)およびメタクリル酸2‐ターシャリ‐ブチルアミノエチル(Tg 33℃)、のうち1つ以上のホモポリマーブロックおよびコポリマーブロックから選択することができる。
【0053】
高いTgの(メタ)アクリラートブロックは、下記(各ホモポリマーの報告されているTgと共に示す):(1)高いTgのメタクリル酸モノマー、例えば(i)メタクリル酸アルキル、例えばメタクリル酸メチル(Tg 105〜120℃)、メタクリル酸エチル(Tg 65℃)、メタクリル酸イソプロピル(Tg 81℃)、メタクリル酸イソブチル(Tg 53℃)、メタクリル酸t‐ブチル(Tg 118℃)およびメタクリル酸シクロヘキシル(Tg 92℃)、(ii)芳香族系メタクリル酸、例えばメタクリル酸フェニル(Tg 110℃)および芳香族系メタクリル酸アルキル、例えばメタクリル酸ベンジル(Tg 54℃)、(iii)メタクリル酸ヒドロキシアルキル、例えばメタクリル酸2‐ヒドロキシエチル(Tg 57℃)およびメタクリル酸2‐ヒドロキシプロピル(Tg 76℃)、(iv)さらなるメタクリル酸、例えばメタクリル酸イソボルニル(Tg 110℃)およびメタクリル酸トリメチルシリル(Tg 68℃)ならびに(2)高いTgのアクリル酸モノマー、例えば(a)ある種のアクリル酸エステル、例えばアクリル酸ターシャリ‐ブチル(Tg 43〜107℃)、アクリル酸ヘキシル(Tg 57℃)およびアクリル酸イソボルニル(Tg 94℃);ならびに(b)他のアクリル酸誘導体、例えばアクリロニトリル(Tg 125℃)、のうち1つ以上のホモポリマーブロックおよびコポリマーブロックから選択することができる。
【0054】
好ましい(メタ)アクリラートポリマーの一例は、ポリ(メタクリル酸メチル‐Z?‐アクリル酸ブチル‐Z>‐メタクリル酸メチル)である。
本発明の特定の実施形態では、本発明の粒子含有領域は治療薬をさらに含んでなる。
【0055】
治療薬の性質、ケイ酸塩粒子の性質、炭素粒子の性質、および任意の補助材料(例えば、ポリマーおよび/またはセラミックスのマトリックス材料など)の性質に応じて、治療薬を、多くの機構のうち任意のものにより、例えば非共有結合性相互作用、例えばファンデルワールス相互作用、親水性/疎水性相互作用、静電的相互作用(例えばイオン‐イオン相互作用、イオン‐双極子相互作用および水素結合を含む双極子相互作用)などにより、層状のケイ酸塩粒子と結合した状態に維持することができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、例えば、治療薬および粒子含有層の1以上の他の構成成分(例えばケイ酸塩粒子、炭素粒子および/または補助材料)がいずれも比較的親水性が高い(またはいずれも比較的疎水性が高い)場合、治療薬はその1以上の他の構成成分と容易に結合することになる。例えば、ケイ酸塩粒子と結合したアニオンは、極性および/またはカチオン性の分子に対して、したがって極性および/またはカチオン性の特徴を有する治療薬に対して、強い誘引力を示すことができる。別例として、カーボンナノチューブなどの炭素粒子は、該炭素粒子の治療薬に対する親和性を増大させるために、様々な化学種(例えば荷電基、荷電ポリマー、例えばカチオン性高分子電解質、アニオン性高分子電解質または両性イオン性高分子電解質、極性ポリマー、無極性ポリマーなど)で誘導体化されてもよい。同様に、1以上のポリマーマトリックス材料が提供される場合、マトリックス材料は、ケイ酸塩粒子および/または炭素粒子との適合性だけでなく治療薬との適合性にも基づいて選択可能である。
【0057】
いくつかの実施形態では、例えば、治療薬の疎水性が比較的高い場合、ケイ酸塩粒子は、ケイ酸塩粒子と結合した無機カチオンが正電荷と疎水性ドメインとの両方を有する1以上の化学種に交換されることにより、さらに疎水性が高められてもよい。この目的に使用されてきた化学種の例には、アルキルアンモニウムイオン、例えば第三級および第四級アルキルアンモニウムイオン、例えばトリメチルアンモニウムイオンおよびヘキサデシルトリメチルアンモニウム(HDTMA)イオンが含まれる。これらの化学種で、ケイ酸塩粒子に結合した無機カチオンが交換されることによって、ケイ酸塩粒子はより疎水性が高まり、その結果として比較的疎水性の高い治療薬とケイ酸塩粒子との間の結合が増強される。
【0058】
典型的には、本発明による粒子含有領域は、本明細書中に記載のケイ酸塩粒子および炭素粒子(上述のように、互いに結合しているか結合していないかにかかわらず本明細書中では「ケイ酸塩/炭素粒子」と総称する)を含有する懸濁液から形成される。
【0059】
粒子懸濁液の例としては、特に、ポリマー溶融物中の懸濁液(例えば熱可塑性を有するポリマーがマトリックス材料として使用される場合)、ポリマー溶液中の懸濁液(例えば水性溶媒、有機溶媒または水性/有機溶媒に溶解可能なポリマーがマトリックス材料として使用される場合)、硬化性ポリマーシステムにおける懸濁液(例えば、化学硬化を起こすエポキシシステムのようなシステム、ならびにUV光および熱などの放射への曝露で硬化するシステムをベースとするポリマーが、マトリックス材料として使用される場合)、セラミックスマトリックス材料の前駆体を含む懸濁液、ならびにマトリックス材料を含んでいない懸濁液が挙げられる。
【0060】
本発明の粒子が長尺状である(例えば、ケイ酸塩/炭素粒子がカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよび/または長尺状ケイ酸塩粒子を含んでなる)実施形態では、該粒子は、典型的には懸濁液中において整列する可能性がある。例えば、長尺状粒子が本発明の粒子含有領域の形成時に存在する剪断力によって整列する場合、該粒子が本発明の粒子含有領域の形成時における電場の印加によって整列する場合などがある。一旦粒子が整列してしまえば、必要な場合には長尺状粒子をその新しい配向に固定するために液体懸濁物を凝固させることができる。
【0061】
一例として、強度を高めるために長尺状粒子をバルーンまたはバルーンコーティングに組み込むことができる。この場合には、強度をさらに増強するために長尺状粒子を最初に応力ベクトルの方向に(例えば周方向の向きに)整列させることが望ましいかもしれない。別例として、長尺状粒子を含有する多層、例えば第1層がある方向に整列した長尺状粒子を有し、該方向は上に重なる第2層の中の長尺状粒子に対して垂直である多層を提供することが望ましいかもしれない。別例として、長尺状粒子(特にカーボンナノチューブ)が粒子含有領域の電気伝導度および/または熱伝導度を増強してもよい。これらの特性のいずれかが異方性であることは、医療用デバイス内において非常に有用な場合がある。例えば、心臓発作の後で組織損傷を最小限にするために周囲組織を冷却する目的で流す冷却液を通すカテーテルが知られている。そのようなカテーテルでは、カテーテルの先端側部分においてカテーテルから周囲組織への熱伝導度をできる限り高めることが望ましいであろう。カーボンナノチューブはポリマーマトリックスの熱伝導度を増大させることが知られている。そのようなナノ粒子が(例えばカテーテルシャフトに対して)径方向に外側に向かって整列すると、他の非ランダムおよびランダムな空間分布に比べて高い伝導度を達成することができる。
【0062】
上記のように、いくつかの実施形態では、長尺状粒子は本発明の粒子含有領域の形成時に電場の印加によって整列する。背景としては、非荷電の分極化可能な粒子(例えば非荷電の分極化可能な誘電体粒子、半導電性粒子または導電性粒子であってよい)が電場に置かれると、粒子の一方の側に誘導された正電荷が存在し、粒子の反対側に、その誘導された正電荷と同じ大きさの誘導された負電荷が存在することになる。正電荷は第1の力を受け;負電荷は第1の力とは反対方向に第2の力を受けることになる。これにより、長尺状粒子については、粒子を電場に対して整列させる傾向を有するトルクが粒子上にもたらされる。例えば、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーはいずれもエポキシシステム(特に、ビスフェノールA樹脂およびアミン硬化剤をベースとしたエポキシシステム)において導電性フィラーとして使用されており、そのようなシステムにおいて整列したカーボンナノチューブ/ナノファイバーネットワークの形成を引き起こすためにAC電場が使用されてきた。DC電場も、AC電場を用いて達成されるほど均一ではなく十分には配列されないものの、整列したカーボンナノチューブネットワークの形成を引き起こすことが示された。ナノチューブネットワークの質および複合材料について得られるバルク導電率は、電場強度の増大とともに高まった。さらに、ナノファイバーを含有する複合材料中には電気的異方性が観察され、またナノチューブを含有する複合材料中には、電場によって誘導されたナノチューブネットワークについて観察された配向に基づいた電気的異方性が存在すると予想された。さらに詳しい情報については、T. Prasse, "Electric anisotropy of carbon nanofibre/epoxy resin composites due to electric field induced alignment," Composites Science and Technology 63 (2003) 1835-1841およびC.A. Martin et al, "Electric field-induced aligned multi-wall carbon nanotube networks in epoxy composites," Polymer 46 (2005) 877-886を参照のこと。
【0063】
本発明に従って、長尺状の炭素粒子を含んだ懸濁液を基材に塗布して多層とすることにより、層ごとに粒子の方向を変化させることが可能となる。例えば、交互になっている層の中の粒子が互いに垂直に整列するように、層同士の間の電場の方向を変更することができる。当然ながら、単層または多層について単一の優先方向を採用することもできる。
【0064】
長尺状の炭素粒子が実効電荷を有する場合、(例えば粒子の電極集塊を防止するために)懸濁液内の粒子の移動を最小限にするかまたは移動させないように、AC電場を使用することが望ましい場合もある。他方では、長尺状粒子の密度ならびに粒子の整列におけるグラジエントを促進することが望ましい場合もあり、この場合には、DC電場、またはDC電場およびAC電場の組み合わせ(例えば、DCバイアスされた交流電圧を印加することによる)を使用することができる。
【0065】
ウェーバー(Weber )らの米国特許出願第11/368,738号明細書には様々な電極配置が記載されており、該配置により長尺状粒子を(a)平板状の粒子含有領域内に整列させること(例えば整列の方向を層によって変えることができるように直交する電極を使用した配置)、および、(b)管状/環状の粒子含有領域内に(例えば、管状/環状の領域の軸に沿って、管状/環状の領域の周に沿って、管状/環状の領域に対して径方向に、等として)整列させることができる。
【0066】
粒子が本発明の粒子含有領域の形成時にうまく整列したかどうかは、例えば、粒子含有領域の断面の(例えば、透過型電子顕微鏡を使用した)顕微鏡分析によって判断することができる。いくつかの実例では、粒子の整列は、電気的、機械的またはその他の物理的計測における、例えば少なくとも20%〜50%、〜100%またはそれ以上の方向の違いを示す顕著な異方性から推測することができる。
【0067】
本発明に従って医療用デバイスを形成するための様々な具体的な技術について説明する。
いくつかの実施形態では、ポリマー加工技術が使用される。ポリマー加工技術の例には、溶液(例えば溶剤ベースの加工が使用される場合)、溶融物(例えば熱可塑性加工が使用される場合)、またはその他の液状ポリマーベースの組成物(例えば硬化可能な組成物が使用される場合)をベースとしたケイ酸塩/炭素粒子懸濁液が基材に適用される技術が挙げられる。例えば、基材は、層が付与される医療用物品の表面全体に相当していても、一部に相当していてもよい。基材はさらに、例えばモールドのような鋳型であってもよく、粒子含有領域は形成後に該鋳型から分離される。他の実施形態、例えば押出成形技術および共押出成形技術では、粒子含有領域は基材の助けを用いずにそのような懸濁液から形成可能である。ポリマー加工技術のいくつかの具体例には、モールド成形技術、キャスティング技術およびコーティング技術、例えば射出成形、ブロー成形、溶媒キャスティング、浸漬コーティング、スピンコーティング、吹付コーティング、アプリケータを用いた(例えばローラまたはブラシによる)コーティング、ウェブコーティング、スクリーン印刷、およびインクジェット印刷、ならびに押出加工および共押出加工によってシート、ファイバー、ロッド、チューブおよび様々な長さの他の断面プロファイルとすることが挙げられる。
【0068】
これらの実施形態のうち一部においては、懸濁液中の長尺状粒子を整列させるために電場が印加されてから、例えば、該懸濁液のポリマー成分を(例えば冷却、溶媒の蒸発、硬化/架橋などの結果として)凝固させることにより粒子が固定化される。
【0069】
本発明による粒子含有領域は、荷電物質を使用して静電自己集合により様々な基材をコーティングすることができる、交互積層法として一般に知られる製法によって作成することも可能である。交互積層法では、第1の表面電荷を有する第1層が、典型的には、下層をなす基材(例えば、医療用デバイスまたはその一部、モールドのような鋳型であって粒子含有領域が形成後に該鋳型から分離されるものなど)の上に堆積され、その後第1層の表面電荷とは逆の符号の第2の表面電荷を有する第2層が続く、などである。外側層の電荷は、連続する各層が堆積される毎に逆転する。一般に、所望の厚さに応じて、5〜10、〜25、〜50、〜100、〜200層またはそれ以上の層がこの技法において付与される。
【0070】
交互積層法は一般に、高分子電解質とも呼ばれる荷電したポリマー化学種を使用する。高分子電解質カチオン(ポリカチオンとしても知られている)の具体例には、数多い中でも特に、硫酸プロタミンポリカチオン、ポリ(アリルアミン)ポリカチオン(例えばポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH))、ポリジアリルジメチルアンモニウムポリカチオン、ポリエチレンイミンポリカチオン、キトサンポリカチオン、ゼラチンポリカチオン、スペルミジンポリカチオンおよびアルブミンポリカチオンが挙げられる。高分子電解質アニオン(ポリアニオンとしても知られている)の具体例には、数多い中でも特に、ポリ(スチレンスルホン酸)ポリアニオン(例えばポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PSS))、ポリアクリル酸ポリアニオン、アルギン酸ナトリウムポリアニオン、eudragit(登録商標)ポリアニオン、ゼラチンポリアニオン、ヒアルロン酸ポリアニオン、カラギーナンポリアニオン、コンドロイチン硫酸ポリアニオン、およびカルボキシメチルセルロースポリアニオンが挙げられる。
【0071】
交互積層法に関するさらなる情報は、例えばアタナソスカ(Atanasoska)らの米国特許出願公開第2007/0154513号明細書およびウェーバー(Weber )らの米国特許出願公開第2005/0208100号明細書に記載されている。
【0072】
本発明では、交互積層法は、全体で負電荷または正電荷を有するケイ酸塩/炭素粒子も用いる。具体例として、負に荷電したSSCNTの懸濁液(懸濁液中にアニオン性高分子電解質を伴うかどうかにかかわらない)は、1以上の負に荷電した層を堆積するために使用可能である。これに代えて(またはこれに加えて)、正に荷電したSSCNTの懸濁液(カチオン性高分子電解質を伴うかどうかにかかわらない)は、1以上の正に荷電した層を堆積するために使用可能である。例えば、SSCNTが上述のようにして形成され、その後、カーボンナノチューブの分野で知られているように、アニオン性化学種またはカチオン性化学種(ポリマーでも非ポリマーでもよいが、好ましくはアニオン性またはカチオン性の高分子電解質化学種)でカーボンナノチューブが官能基化されてもよい。これらの実施形態では、高分子電解質を含んでなるポリマー性「マトリックス」がSSCNTを適所に保持する。特定の実施形態では、電場の印加により堆積工程の際にカーボンナノチューブの整列が行われてもよい。
【0073】
これまで議論してきたように、ポリマーのような有機材料に加えて、本発明で使用される補助材料の例にはセラミックス材料などの無機材料も含まれる。セラミックス加工は、セラミックス粒子およびケイ酸塩/炭素粒子の懸濁液が加工(例えばコロイドベースの加工)される技法のような様々な技法によって進めることが可能である。懸濁液をベースとしたセラミックス加工技術の好適な例は、例えば、コーティング技術、例えば浸漬コーティング、吹付コーティング、アプリケータを用いた(例えばローラまたはブラシによる)コーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷またはスクリーン印刷、ならびに様々なキャスティング/モールド成形技術、例えばスリップキャスティング、テープキャスティング、直接凝固キャスティング、電気泳動キャスティング、ゲルキャスティング、加水分解を利用した凝固、水性射出成形(aqueous injection molding )、および温度によって誘発される成形から選択可能である。上記技術と同じように、懸濁液は続いて凝固される。いくつかの実施形態では、懸濁液内の長尺状粒子は懸濁液の凝固に先立って電場を使用して整列が行われてもよい。このように、これらの技術は、典型的には医療用デバイスもしくはその一部分のような基材、または粒子含有領域が形成後に分離されるモールドのような鋳型と連携して、本発明による粒子含有領域を形成するために使用可能である。
【0074】
固体セラミックス粒子の懸濁液をベースとした他の技術を含む他のセラミックス加工技術も使用可能であるという了解のもとで、ここでゾルゲル法についてより詳細に説明する。ゾルゲル材料に関するさらに詳しい情報は、例えばViitala R. et al., "Surface properties of in vitro bioactive and non-bioactive sol-gel derived materials," Biomaterials, 2002 Aug; 23(15):3073-86 において見出すことができる。
【0075】
典型的なゾルゲル法では、無機金属塩および半金属塩、金属および半金属の錯体/キレート化合物、金属水酸化物および半金属水酸化物、ならびに金属アルコキシドおよびアルコキシシランのような有機金属化合物および有機半金属化合物から一般に選択される前駆体材料が、加水分解および縮合反応(重合反応と呼ばれる場合もある)に供されることによって「ゾル」(すなわち液体中の固体粒子の懸濁物)が形成される。
【0076】
例えば、選択した半金属または金属(ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、スズ、ハフニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、レニウム、イリジウムなど)の選択したアルコキシド(メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、te/T‐ブトキシドなど)を、好適な溶媒、例えば1以上のアルコールに溶解させることができる。続いて、水または他の水性溶液、例えば酸性または塩基性の水溶液(この水溶液はアルコールのような有機溶媒種をさらに含むことができる)が添加され、その結果加水分解および縮合が生じる。望ましい場合には、追加の薬剤、例えばゾルの粘性および/または表面張力を制御する薬剤が添加されてもよい。さらに、本発明に従って、ケイ酸塩/炭素粒子もゾル内に提供される。
【0077】
ゾルをさらに加工することによって、固体材料を様々な異なる形態に作製することができる。例えば、基材上にゾルの吹付コーティング、アプリケータを用いた(例えばローラまたはブラシによる)コーティング、スピンコーティング、浸漬コーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷などを行うことにより、基材上にコーティングを作成することが可能であり、これによって「湿潤ゲル」が形成される。例えばゾルをモールドまたは他の型(例えばシート)の中または上に置くことにより、単一体の湿潤ゲルが形成されてもよい。湿潤ゲル内の粒子は、湿潤ゲルの段階で、本明細書中他所で議論されたようにして整列させることができる。その後、湿潤ゲルは乾燥される。次いで該構造物を、任意選択で、例えば約150℃〜約600℃またはそれ以上の範囲に及ぶ温度に加熱して、熱処理された粒子含有領域を形成することもできる。この範囲の下限では、セラミックス成分は熱処理工程の結果として固化かつ強化されるが、この温度は十分に低いので多くの治療薬(存在する場合)が損なわれずに維持されることになる。より高温ではより強く固化する。
【0078】
本発明の一態様では、ゾルゲル法が交互積層法と併用される。交互積層法/ゾルゲル法に関するさらに詳しい情報については、例えばColloids and Colloid Assemblies, Wiley-VCH, edited by Frank Caruso, ISBN 3-527-30660-9, pp. 266-269 、D. Wang and F. Caruso, Chem. Mater. 2002, 14, 1909-1913 、D. Wang et al, "Synthesis of Macroporous Titania and Inorganic Composite Materials from Coated Colloidal Spheres A Novel Route to Tune Pore Morphology," Chem. Mater. 2001,73, 364-371およびカルーソー(Caruso)の国際公開第02/074431号を参照されたい。
【0079】
例えば、上述のようにして、(a)本発明による荷電したケイ酸塩/炭素粒子(例えば高分子電解質などのような荷電化学種とコンジュゲートしたナノチューブを含んでなるもの)と(b)1以上の高分子電解質とを含む多層の粒子含有領域が最初に形成されてもよい。具体例として、多層領域は数多くの可能性の中でも特に:(a)ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)のような正に荷電した高分子電解質と負に荷電したSSCNTとの組み合わせ、(b)ポリ(4‐スチレンスルホン酸ナトリウム)(PSS)のような負に荷電した高分子電解質と正に荷電したSSCNTとの組み合わせ、または(c)正および負の両方に荷電した高分子電解質(例えばPAHおよびPSS)と、正に荷電したSSCNT、負に荷電したSSCNT、もしくは正および負の両方に荷電したSSCNTとの組み合わせ、を含むことができる。
【0080】
次のステップでは、高分子電解質層内でゾルゲル型の加工が行なわれる。例えば、先の段落で述べたもののような多層の粒子含有領域を含んでなる/該領域で構成される構造物は、無水アルコール溶媒中または高アルコール度の水‐アルコール溶媒中(すなわち水の濃度が低すぎるため加水分解・縮合反応が生じることができない溶媒)の半金属または金属アルコキシドのゾルゲル前駆体溶液(酸性または塩基性化学種をさらに含む場合もある)の中に浸漬可能である。1つの具体例では、そのような構造物はゾルゲル前駆体溶液中に数時間(例えば10〜20時間)浸漬される。この目的に適したゾルゲル前駆体溶液の一例は、2gのテトラエトキシシラン(TEOS)を100mLのエタノール(無水、変性)と併せて混合し、続いて10mLのDI水および1mLの水酸化アンモニウム(25%水溶液)を追加し、その後さらに混合したものである。
【0081】
動作理論に束縛されることは望むものではないが、高分子電解質群の高い荷電密度は、多層の粒子含有領域に、(例えば、ゾルゲル前駆体溶液からの水分子の誘引および/または先行の加工処理中における水分子の保持により)周囲のゾルゲル前駆体溶液より高い水濃度をもたせると考えられる。多層の粒子含有領域の中へ拡散すると、ゾルゲル前駆体は、加水分解および縮合が生じることのできる高い水濃度の環境に遭遇する。その後、層内でのゾルゲル前駆体のその場での反応により、多層の粒子含有領域が膨張する。しかしながら膨張により電荷密度も減少し、その結果水の濃度の低下を引き起こし、最終的にはゾルゲル反応を停止させる。正確な機構がどうであれ、結果として得られる、高分子電解質/セラミックス/SSCNTハイブリッド領域である多層の粒子含有領域は、厚さが比較的均一であり、かつその厚さは、高分子電解質コーティング内の層の数に依存する(層が多いと厚いコーティングが得られる)。
【0082】
ゾルゲル溶液と接触させた後、次に構造物を任意選択で、例えば約150℃〜約600℃またはそれ以上の範囲に及ぶ温度に加熱して、熱処理された粒子含有領域を形成することもできる。この範囲の上限においては、粒子含有領域は、セラミックス化学種およびSSCNTを高い割合で(例えば、これらの化学種を90重量%以上、例えば95重量%〜98重量%、〜99重量%、〜99.5重量%、〜99.9重量%またはそれ以上まで)有し、コーティングのほぼ全ての高分子電解質成分は時に焼成とも呼ばれる加工処理において該構造物から脱ガスされる。下限においては、セラミックス成分は熱処理工程の結果として固化かつ強化されるが、この温度は十分に低いので多くの高分子電解質(および存在する場合は多くの治療薬)が損なわれずに維持されることになる。
【0083】
さらに別の実施形態では、高分子電解質およびケイ酸塩/炭素粒子が交互積層方式で構成されていない粒子含有領域が、上述のように処理される。例えば、高分子電解質および本発明による粒子、ならびに必要に応じて任意選択の治療薬を含んでなる溶液が、基材上にコーティングされてもよいし、所望の形状にキャスティング成形されてもよいし、押出成形によりファイバー、ロッド、チューブなどにされてもよい。乾燥後、得られた構造物は次に上述のようにして処理(例えば、ゾルゲル前駆体溶液への浸漬および任意選択の熱処理)される。具体例では、1以上の高分子電解質化学種、本発明によるケイ酸塩/炭素粒子、および1以上の任意選択の治療薬を含む押出成形領域が、米国特許出願公開第2007/0067882号明細書に記載されているような技術を使用して形成され、続いて上述の処理が行われる。
【0084】
上記に示したように、本発明の特定の実施形態では、1以上の治療薬が粒子含有領域を覆って、該領域の内部に、または該領域の下に組み込まれうる。いくつかの実施形態では、治療薬は粒子含有領域の内部に提供され、この場合、治療薬は、粒子含有領域の形成時に(例えば凝固に先立ってケイ酸塩/炭素粒子含有懸濁液に少なくとも1つの治療薬を加えることにより)、または該領域の形成後に(例えば治療薬が粒子含有領域によって取り込まれるように、形成された粒子含有領域を1以上の治療薬を含有する溶液に曝露することなどにより)粒子含有領域に組み込まれうる。
【0085】
「治療薬」、「製剤」、「薬理活性物質」、「薬物」およびその他の関連用語は、本明細書中において互換的に使用可能であり、該用語には遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬および細胞が含まれる。治療薬は、単独で使用されてもよいし、組み合わせて使用されてもよい。治療薬は、例えば非イオン性でもよいし、本来アニオン性かつ/またはカチオン性であってもよい。種々様々の治療薬、例えば種々様々の疾患および病気の治療(すなわち疾患または病気の予防、疾患または病気に関連した症状の緩和もしくは除去、または疾患または病気の実質的もしくは完全な除去)に使用される治療薬を、本発明と共に使用することができる。
【0086】
本発明に関連して使用するための典型的な治療薬には、(a)抗血栓剤、例えばヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、クロピドグレルおよびPPack(デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニン・クロロメチルケトン);(b)抗炎症剤、例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジンおよびメサラミン;(c)抗新生物剤/抗増殖剤/抗有糸分裂薬(anti-miotic agent) 、例えばパクリタキセル、5‐フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞の増殖の阻害能を有するモノクローナル抗体、およびチミジンキナーゼ阻害剤;(d)麻酔薬、例えばリドカイン、ブピバカインおよびロピバカイン;(e)抗凝血剤、例えばD‐Phe‐Pro‐Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、抗血小板薬およびダニ抗血小板ペプチド;(f)血管細胞増殖促進物質、例えば増殖因子、転写活性化因子および翻訳プロモータ;(g)血管細胞増殖阻害剤、例えば増殖因子阻害剤、増殖因子受容体拮抗薬、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、増殖因子に対する抗体、増殖因子と細胞毒素とで構成される二機能分子、抗体と細胞毒素とで構成される二機能分子;(h)タンパク質キナーゼおよびチロシンキナーゼ阻害剤(例えばチルホスチン、ゲニステイン、キノキサリン);(i)プロスタサイクリン類似体;(j)コレステロール降下剤;(k)アンギオポエチン;(l)抗菌物質、例えばトリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシドおよびニトロフラントイン;(m)細胞毒性薬、細胞増殖阻害薬、および細胞増殖の影響因子;(n)血管拡張剤;(o)内在性血管作動機構阻害薬;(p)白血球動員の阻害剤、例えばモノクローナル抗体;(q)サイトカイン;(r)ホルモン;(s)HSP90タンパク質(すなわち熱ショックタンパク質。熱ショックタンパク質は分子シャペロンまたはハウスキーピングタンパク質であり、細胞の増殖および生存を担う他のクライアントタンパク質/情報伝達タンパク質の安定性および機能に必要とされる)の阻害剤、例えばゲルダナマイシン、(t)平滑筋弛緩薬、例えばα受容体拮抗薬(例えばドキサゾシン、タムスロシン、テラゾシン、プラゾシンおよびアルフゾシン)、カルシウムチャネル遮断薬(例えばベラピミルverapimil) 、ジルチアゼム、ニフェジピン、ニカルジピン、ニモジピンおよびベプリジル)、β受容体作用薬(例えばドブタミンおよびサルメテロール)、β受容体拮抗薬(例えばアテノロール、メタプロロール(metaprolol)およびブトキサミン)、アンギオテンシンII受容体拮抗薬(例えばロサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン、エプロサルタンおよびテルミサルタン)、および鎮痙剤/抗コリン薬(例えば塩化オキシブチニン、フィアボキサート(fiavoxate )、トルテロジン、硫酸ヒヨスチアミン、ジクロミン(diclomine ))、(u)bARKct阻害剤、(v)ホスホランバン阻害剤、(w)Serca2遺伝子/タンパク質、(x)免疫応答修飾剤、例えばアミノキゾリン(aminoquizoline)、例えばレシキモドおよびイミキモドのようなイミダゾキノリン、(y)ヒトのアポリポタンパク質(apolioprotein) (例えばAI、AII、AIII、AIV、AVなど)、(z)選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)、例えばラロキシフェン、ラソフォキシフェン、アルゾキシフェン、ミプロキシフェン、オスペミフェン、PKS3741、MF101およびSR16234、(aa)PPAR作用薬、例えばPPARα、γおよびδ作用薬、例えばロシグリタゾン、ピオグリタゾン、ネトグリタゾン、フェノフィブラート、ベキサオテン(bexaotene )、メタグリダセン、リボグリタゾンおよびテサグリタザル、(bb)プロスタグランジンE作用薬、例えばアルプロスタジルまたはONO8815LyのようなPGE2アゴニスト、(cc)トロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP)、(dd)バソペプチダーゼ阻害剤、例えばベナゼプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラミプリル、イミダプリル、デラプリル、モエキシプリルおよびスピラプリル、(ee)チモシンβ4、(ff)リン脂質、例えばホスホリルコリン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルコリン、(gg)VLA‐4拮抗薬およびVCAM‐I拮抗薬、が挙げられる。
【0087】
必ずしも上記に列挙されたものを除外するものではないが、多数の治療薬が、血管の治療レジメンの候補として、例えば再狭窄を対象とした薬剤(再狭窄防止剤)として確認されている。そのような薬剤は本発明の実施に有用であり、該薬剤には以下:(a)Caチャネル遮断薬、例えば、ジルチアゼムおよびクレンチアゼムのようなベンゾチアザピン(benzothiazapine )類、ニフェジピン、アムロジピンおよびニカルダピン(nicardapine )のようなジヒドロピリジン類、ならびにベラパミルのようなフェニルアルキルアミン類、(b)セロトニン経路モジュレータ、例えば:ケタンセリンおよびナフチドロフリルのような5‐HT拮抗薬、ならびにフルオキセチンのような5‐HT取り込み阻害剤、(c)環状ヌクレオチドの経路作用物質、例えば、シロスタゾールおよびジピリダモールのようなホスホジエステラーゼ阻害剤、ホルスコリンのようなアデニル酸/グアニル酸シクラーゼ刺激剤、ならびにアデノシン類似体、(d)カテコールアミンモジュレータ、例えば、プラゾシンおよびブナゾシン(bunazosine)のようなa‐拮抗薬、プロプラノロールのようなP‐拮抗薬、ならびにラベタロールおよびカルベジロールのようなa/P‐拮抗薬、(e)エンドセリン受容体拮抗薬、例えばボセンタン、シタキセンタンナトリウム、アトラセンタン、エンドネンタン(endonentan)、(f)一酸化窒素供与体/放出分子、例えばニトログリセリン、硝酸イソソルビドおよび亜硝酸アミルのような有機硝酸塩/亜硝酸塩、ニトロプルシドナトリウムのような無機ニトロソ化合物、モルシドミンおよびリンシドミンのようなシドノンイミン類、ジアゼニウムジオラートおよびアルカンジアミンのNO付加物のようなNONOアート、S‐ニトロソ化合物の低分子量化合物(例えばカプトプリル、グルタチオンおよびN‐アセチルペニシラミンのS‐ニトロソ基誘導体)および高分子化合物(例えばタンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖、合成ポリマー/オリゴマーおよび天然ポリマー/オリゴマーのS‐ニトロソ基誘導体)、ならびにC‐ニトロソ化合物、O‐ニトロソ化合物、N‐ニトロソ化合物およびL‐アルギニン、(g)アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、例えばシラザプリル、フォシノプリルおよびエナラプリル、(h)ATII受容体拮抗薬、例えばサララシンおよびロサルチン(losartin)、(i)血小板接着阻害剤、例えばアルブミンおよびポリエチレンオキシド、(j)血小板凝集阻害剤、例えばシロスタゾール、アスピリンおよびチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)、ならびにGP IIb/IIIa阻害剤、例えばアブシキシマブ、エピチフィバチド(epitifibatide )およびチロフィバン、(k)凝固経路モジュレータ、例えばヘパリン、低分子量ヘパリン、デキストラン硫酸およびP‐シクロデキストリンテトラデカスルファートのようなヘパリノイド、ヒルジン、ヒルログ、PPACK(D‐phe‐L‐プロピル‐L‐arg‐クロロメチルケトン)およびアルガトロバンのようなトロンビン阻害物質、アンチスタチン(antistatin)およびTAP(ダニ抗凝固ペプチド)のようなFXa阻害剤、ワルファリンのようなビタミンK阻害剤、ならびに活性化プロテインC、(l)シクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、例えばアスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシンおよびスルフィンピラゾン(sulfmpyrazone) 、(m)天然および合成コルチコステロイド、例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、メトプレドニゾロン(methprednisolone)およびヒドロコルチゾン、(n)リポキシゲナーゼ経路阻害剤、例えばノルジヒドログアヤレチック酸(nordihydroguairetic acid)およびカフェ酸、(o)ロイコトリエン受容体拮抗薬、(p)E‐セレクチンおよびP‐セレクチンの拮抗薬、(q)VCAM‐1およびICAM‐1相互作用の阻害剤、(r)プロスタグランジンおよびその類似体、例えばPGE1およびPGI2のようなプロスタグランジン、ならびにシプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロストおよびベラプロストのようなプロスタサイクリン類似体、(s)マクロファージ活性化防止剤、例えばビスホスホネート類、(t)HMG‐CoA還元酵素阻害剤、例えばロバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチンおよびセリバスタチン、(u)魚油およびω3‐脂肪酸、(v)フリーラジカル捕捉剤/抗酸化物質、例えばプロブコール、ビタミンCおよびビタミンE、エブセレン、トランスレチノイン酸、SOD(オルゴテイン)およびSOD模倣体、ベルテポルフム(verteporfm)、ロスタポルフム(rostaporfm)、AGI1067およびM40419、(w)様々な増殖因子に作用する薬剤、例えばbFGF抗体およびbFGFキメラ融合タンパク質のようなFGF経路作用物質、トラピジルのようなPDGF受容体拮抗薬、アンギオペプチンおよびオクレオチド(ocreotide )のようなソマトスタチン類似体などのIGF経路作用物質、ポリアニオン性物質(ヘパリン、フコイジン)、デコリン、およびTGF‐p抗体のようなTGF‐P経路作用物質、EGF抗体、EGF受容体拮抗薬およびEGFキメラ融合タンパク質のようなEGF経路作用物質、サリドマイドおよびその類似体のようなTNF‐a経路作用物質、スロトロバン(sulotroban)、バピプロスト、ダゾキシベンおよびリドグレルのようなトロンボキサンA2(TXA2)経路モジュレータ、ならびにチルホスチン、ゲニステインおよびキノキサリン誘導体のようなタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、(x)マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)経路阻害剤、例えばマリマスタット、イロマスタット、メタスタット、バチマスタット、ペントサンポリスルファート、レビマスタット(rebimastat)、インサイクリニド(incyclinide )、アプラタスタット(apratastat)、PG116800、RO1130830またはABT518、(y)細胞運動阻害剤、例えばサイトカラシンB、(z)抗増殖薬/抗新生物薬、例えばプリン類似体(例えば6‐メルカプトプリンまたは塩素化プリンヌクレオシド類似体であるクラドリビン)、ピリミジン類似体(例えばシタラビンおよび5‐フルオロウラシル)およびメトトレキサートのような代謝拮抗物質、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、エチレンイミン、抗生物質(例えばダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソ尿素、シスプラチン、微小管動態に作用する薬剤(例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、EpoD、パクリタキセルおよびエポチロン)、カスパーゼ活性化剤、プロテアソーム阻害剤、血管新生阻害剤(例えばエンドスタチン、アンギオスタチンおよびスクアラミン)、オリムス(olimus)系薬物(例えばシロリムス、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムスなど)、セリバスタチン、フラボピリドールおよびスラミン、(aa)マトリックス沈着/構築経路阻害剤、例えばハロフジノンまたはその他のキナゾリノン誘導体、ピルフェニドンおよびトラニラスト、(bb)内皮化(endothelialization)促進剤、例えばVEGFおよびRGDペプチド、(cc)血液レオロジーモジュレータ、例えばペントキシフィリン、ならびに(dd)グルコース架橋切断薬、例えば塩化アラゲブリウム(ALT‐711)、のうちの1つ以上が含まれる。
【0088】
いくつかの好ましい治療薬には、特に、タキサン、例えばパクリタキセル(例えば微粒子型パクリタキセル、例えば、アルブミンと結合したパクリタキセルナノ粒子(例えばABRAXANE(登録商標))のようなタンパク質結合型パクリタキセル粒子)、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス、EpoD、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、塩化アラゲブリウム(ALT‐711)、ABT‐578(アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories ))、トラピジル、liprostin(商標)、アクチノムシン(Actinomcin)D、Resten‐NG(登録商標)、Ap‐17、アブシキシマブ、クロピドグレル、リドグレル、β‐遮断薬、bARKct阻害剤、ホスホランバン阻害剤、Serca2遺伝子/タンパク質、イミキモド、ヒトのアポリポタンパク質(例えばAI−AV)、増殖因子(例えばVEGF‐2)、および先に挙げたものの誘導体が挙げられる。
【0089】
本発明の実施に有用なさらにいくつかの治療薬が、クンツ(Kunz)の米国特許第5,733,925号明細書にも開示されており、該文献の全開示内容は参照により組込まれる。
【実施例1】
【0090】
100グラムのCloisite(登録商標)3 OB(第四級アンモニウム塩で修飾された天然のモンモリロナイト;米国テキサス州ゴンザレス チャーチ・ストリート1212所在のサザン・クレイ・プロダクツ(Southern Clay Products))を、空気中250℃で1時間乾燥させる。乾燥したCloisite(登録商標)および160gの鉄(III)アセチルアセトナート(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich ))を石英リアクタに入れ、アルゴン雰囲気下にて150℃に30分間加熱する。続いて、リアクタを窒素流の中で室温まで冷却する。堆積された鉄アセチルアセトナートで修飾されたCloisite(登録商標)を水素およびアルゴン(体積比1:1)のフローに450℃で2.5時間曝露することにより、鉄が石英リアクタ内で還元されて、モンモリロナイト表面上に鉄ナノ粒子が作成される。この修飾ナノクレイを次いで石英リアクタに入れ、C流に700℃で1時間曝露して、シリカ/鉄構造物上にカーボンナノ構造体を作成する。このように修飾されたCloisite(登録商標)粒子1グラムを、1リットルのトルエンの中で1グラムの治療薬(パクリタキセル)および5グラムのトリブロックコポリマー(M. Gyor et al., J. of Macromolecular Scl, Pure and Applied Chem., 1992, A29(8), 639 およびピンチャック(Pinchuk )らの米国特許出願第2002/0107330号明細書に記載されているようなポリ[スチレン‐6‐イソブチレン‐6‐スチレン])と混合する。その後、この溶液をExpress(登録商標)ステント(米国マサチューセッツ州ナティック所在のボストン・サイエンティフィック(Boston Scientific ))の上に吹付けて、改変型の薬物溶出コーティングとして機能するように、該ステント上に厚さ10μmの薄膜を作成する。
【実施例2】
【0091】
カーボンナノチューブで修飾されたCloisite(登録商標)粒子は、実施例1に記載されるようにして作成される。その後、そのように修飾されたCloisite(登録商標)粒子1グラムおよび1グラムの治療薬(パクリタキセル)を、エタノール中3%のポリエーテルブロックアミド(例えばPebax(登録商標)2533、Pebax(登録商標)3533またはこれらの組み合わせ)の溶液1リットルと混合することにより溶液を作成して、次いでPebax(登録商標)またはナイロンのバルーン上に吹付ける。
【0092】
本発明の様々な実施形態が本明細書中で具体的に例証かつ説明されているが、当然ながら、上記の教示内容には、本発明の改変形態および変形形態が本発明の趣旨および意図された範囲を逸脱することなく包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸塩粒子と長尺状炭素粒子とを含んでなる粒子含有領域を含んでなる、移植可能または挿入可能な医療用デバイス。
【請求項2】
前記医療用デバイスはバルーン、カテーテルおよびステントから選択される、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
前記粒子含有領域の少なくとも一部は独立している、請求項1または2に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記粒子含有領域の少なくとも一部は基材上に配置されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
前記基材はバルーン、カテーテルチューブおよびステントから選択される、請求項4に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
前記基材は金属の基材およびポリマーの基材から選択される、請求項4に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
複数の粒子含有領域を含んでなる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
基材と、該基材を覆って配置される第1の粒子含有層と、第1の粒子含有層を覆って配置される第2の粒子含有層とを含んでなる、請求項7に記載の医療用デバイス。
【請求項9】
粒子含有領域は補助材料をさらに含んでなる、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項10】
補助材料はセラミックス材料である、請求項9に記載の医療用デバイス。
【請求項11】
セラミックス材料は、ケイ素、アルミニウム、イリジウム、ジルコニウムおよびこれらの組み合わせのうち1以上の酸化物から選択される、請求項10に記載の医療用デバイス。
【請求項12】
補助材料はポリマー材料である、請求項9に記載の医療用デバイス。
【請求項13】
ポリマー材料はブロックコポリマーを含んでなる、請求項12に記載の医療用デバイス。
【請求項14】
ブロックコポリマーは、(a)ポリアルケンブロックとポリ(ビニル芳香族)ブロックとを含んでなるブロックコポリマー、(b)ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含んでなるブロックコポリマー、および(c)高いTgのポリ(メタ)アクリラートブロックと低いTgのポリ(メタ)アクリラートブロックとを含んでなるブロックコポリマーから選択される、請求項13に記載の医療用デバイス。
【請求項15】
前記ポリマー材料は高分子電解質を含んでなる、請求項12に記載の医療用デバイス。
【請求項16】
前記粒子含有領域は、第1の電荷を有するカーボンナノチューブと、前記第1の電荷とは反対の第2の電荷を有する高分子電解質とを含んでなる、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項17】
粒子含有領域は、ケイ酸塩粒子に結合したカーボンナノチューブを含んでなる、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項18】
ケイ酸塩粒子はケイ酸塩シートの形態である、請求項17に記載の医療用デバイス。
【請求項19】
ケイ酸塩シートは天然または合成のフィロケイ酸塩粒子から形成される、請求項18に記載の医療用デバイス。
【請求項20】
フィロケイ酸塩粒子はモンモリロナイト粒子である、請求項19に記載の医療用デバイス。
【請求項21】
粒子含有領域は誘導体化されたカーボンナノチューブを含んでなる、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項22】
誘導体化されたカーボンナノチューブはポリマーで誘導体化されたカーボンナノチューブである、請求項21に記載の医療用デバイス。
【請求項23】
誘導体化されたカーボンナノチューブは高分子電解質で誘導体化されたカーボンナノチューブである、請求項21に記載の医療用デバイス。
【請求項24】
粒子含有領域は治療薬を含んでなる、請求項1乃至23のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項25】
治療薬は荷電した治療薬である、請求項24に記載の医療用デバイス。
【請求項26】
治療薬は再狭窄防止剤である、請求項24に記載の医療用デバイス。
【請求項27】
長尺状炭素粒子は電気的に整列されている、請求項1乃至26のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項28】
粒子含有領域は軸を有する環状の粒子含有領域であり、長尺状粒子は環状の粒子含有領域の軸に平行に整列されるか、環状の粒子含有領域の軸に対して径方向に整列されるか、または環状の粒子含有領域の軸に対して周方向に整列されている、請求項27に記載の医療用デバイス。

【図1】
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【公表番号】特表2010−537793(P2010−537793A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524199(P2010−524199)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/075475
【国際公開番号】WO2009/033082
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】