説明

ケトプロフェンリジン塩を含有する水性貼付剤

【課題】ケトプロフェンを含有する水性貼付剤において、製造の作業効率を向上させるばかりでなく、ケトプロフェンの保存安定性および経皮吸収性に優れた水性貼付剤を提供すること。
【解決手段】支持体と支持体に積層された粘着剤(膏体)層とを備えた貼付剤であって、グリセリンを含有せず、平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールを配合した膏体中に、主薬成分としてケトプロフェンリジン塩を完全に溶解した状態で配合したことを特徴とするケトプロフェンリジン塩含有水性貼付剤であって、平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600及びポリエチレングリコール1000から成る群から選択された1種或いは2種以上のポリエチレングリコールであるケトプロフェンリジン塩含有水性貼付剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分としてケトプロフェンリジン塩を含有する水性貼付剤に係わり、詳細には、水に対する溶解度が高いケトプロフェンのリジン塩を活性成分とし、膏体基剤として、平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールを使用した水性貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
活性成分として抗炎症活性を有するケトプロフェンを含有する水性貼付剤がいくつか知られている(特許文献1及び2)。しかしながら、活性成分であるケトプロフェン自体は、水に対する溶解度が低いため、水性貼付剤として膏体基剤中に配合する場合には溶解剤或いは分散剤を用い、膏体中に溶解或いは分散されている。
【0003】
そのような溶解剤としては、難溶解性薬物に対する溶解剤として知られているクロタミトン、脂肪酸、脂肪酸エステル、精油類、多価アルコール、界面活性剤、N−置換−o−トルイジン誘導体等、特定の溶解剤があげられる(特許文献3)。また、分散剤を用いる方法としては、ケトプロフェンを液状の分散剤に分散してから酸性粘着剤基剤と混合する手段が採用されている(特許文献4)。
【0004】
これらの製造方法にあっては、ケトプロフェン自体の水に対する溶解性が低いため、その製造法に何らかの工夫をする必要があり、製造の作業効率が悪いという基本的な欠点を有していた。
すなわち、ケトプロフェンを溶解するために使用するこれらの特定の溶解剤は、一般に親油性の溶解剤が多く、水性貼付剤の製造時において、これらの溶解剤を他の膏体成分に添加する際、注意して行わないと、親水性高分子の不溶、或いは親油性の溶媒の分離等、貼付剤の物性に対して好ましくない影響を与える可能性がある。
【0005】
また、基剤成分としてグリセリンを高濃度に配合した従来のケトプロフェン含有水性貼付剤の場合には、基剤に対するケトプロフェンの溶解性が不十分であるため経皮吸収性が低く、その上、分子中にカルボン酸基を有するケトプロフェンと水酸基を有する多価アルコール(例えばグリセリン)、低級アルコール、メントール等の溶解剤との間で、水性貼付剤の基剤成分である有機酸、ポリアクリル酸等の弱酸が触媒となり、比較的低い温度でもエステル化反応が進行し、保存安定性が低いという問題があった。
【0006】
特許文献5においては、分子中にカルボン酸基を有するケトプロフェンを含む非ステロイド消炎鎮痛剤を、グリセリンおよび炭素数3〜30のグリコールに溶解もしくは分散せしめることにより、安定化する提案がなされている。しかしながら、特許文献5に記載の従来の貼付剤であっても、活性成分としてケトプロフェンを配合する場合、基剤成分としてグリセリンを用いているため、長期安定性を考えた場合、エステル化反応による保存安定性の低下が懸念される。
【0007】
また、一般的に、貼付剤膏体中に薬物が分散状態で存在すると、その保存安定性が高くなるが、その反面、薬物自体の経皮吸収性が低くなる。したがって、活性成分としてケトプロフェンを含有し、保存安定性と経皮吸収性が共に良好な、更なる改良品が望まれている。
【特許文献1】特開昭58−083623号公報
【特許文献2】特開昭61−275212号公報
【特許文献3】国際公開W096/11022号公報
【特許文献4】特開2006-104170号公報
【特許文献5】特開2002−193793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題点を解決するものであり、ケトプロフェンを含有する水性貼付剤において、製造の作業効率を向上させるばかりでなく、ケトプロフェンの保存安定性および経皮吸収性に優れた水性貼付剤を提供することを課題とする。
【0009】
本発明者は、かかる課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、活性成分(有効成分)として、ケトプロフェンの塩又は誘導体の中でも水に対する溶解度が高いケトプロフェンリジン塩を選択し、更に、グリセリンを使用することなく、相互作用が小さい平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールを基剤成分として含有する膏体中に溶解させることにより、製造上の作業効率が高く、ケトプロフェンの経皮吸収性を損なうことなく、また、グリセリンを含有しないことで保存安定性が良好な、水性貼付剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の基本的態様は、支持体と支持体に積層された粘着剤(膏体)層とを備えた貼付剤であって、グリセリンを含有せず、平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールを配合した膏体中に、活性成分としてケトプロフェンリジン塩を、完全に溶解した状態で配合したことを特徴とするケトプロフェンリジン塩含有水性貼付剤である。
【0011】
より好ましくは、平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600及びポリエチレングリコール1000から成る群から選択された1種或いは2種以上のポリエチレングリコールであるケトプロフェンリジン塩含有水性貼付剤である。
【0012】
さらに好ましくは、平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールの配合量が2〜30%であるケトプロフェンリジン塩含有水性貼付剤であり、より好ましい本発明は、膏体成分が、ケトプロフェンリジン塩0.1〜5重量%、水30〜80重量%、平均分子量が1000以下のポリエチレングリコール2〜30重量%、水溶性高分子3〜20重量%、保湿剤10〜30重量%、多価金属化合物0.001〜1重量%からなるものであるケトプロフェンリジン塩含有水性貼付剤である。
【0013】
すなわち、最も好ましい本発明の貼付剤は、膏体成分としてグリセリンを含有せず、平均分子量が1000以下のポリエチレングリコール2〜30重量%、水溶性高分子3〜20重量%、保湿剤10〜30重量%、多価金属化合物0.001〜1重量%及び水30〜80重量%からなり、活性成分であるケトプロフェンリジン塩0.1〜5重量%を配合したものであるケトプロフェンリジン塩含有水性貼付剤である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、活性成分として水に対する溶解度が高いケトプロフェンリジン塩を使用し、膏体成分としてグリセリンを含有することなく、平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールを配合した膏体中に溶解させることによって、製造作業が簡便になり、かつ、安定的にケトプロフェンリジン塩を配合する水性貼付剤が提供される。
本発明により、従来の溶解型、或いは分散型の水性貼付剤では成し得なかった、高いケトプロフェンの経皮吸収性、及び保存安定性を兼ね備えた水性貼付剤を提供することが可能となった。
【0015】
本発明が提供するケトプロフェンリジン塩を含有する水性貼付剤は、40℃以上の高温といった苛酷な条件であっても長期保存安定性に優れている。さらに、ケトプロフェンの経皮吸収性にも優れている。
このような優れた効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、膏体成分として使用する平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールは、他の多価アルコール等の保湿剤を配合した製剤と比較し、膏体中に生じたフリー体(分子型)のケトプロフェンを溶解する能力が高く、pH3.5〜6.5の酸性領域であってもケトプロフェンに対する反応性が低いために、ケトプロフェンを安定化させていると考えられる。
すなわち、本発明は、一般的に水性貼付剤に使用されているグリセリンを配合せず、ポリエチレングリコールを含む酸性粘着剤基剤にケトプロフェンリジン塩を混合することによって、ケトプロフェンを溶解状態で安定的に配合することができ、その結果、保存安定性に優れていると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明が提供する水性貼付剤において、活性成分として使用されるケトプロフェンリジン塩は、ケトプロフェンの分子内のカルボキシル基が塩基性のリジンと塩結合したものであり、ケトプロフェンと比較して水に対する溶解性が非常に高く、水に直接溶解することができるため、製造の作業効率が高いという特徴がある。
本発明の水性貼付剤へのケトプロフェンリジン塩の配合量は、0.1〜5.0重量%が好ましく、より好ましくは0.3〜3.0重量%である。すなわち、配合量が0.1重量%未満では十分な薬効が得られず、他方、配合量が5.0重量%を超えると、過剰投与による皮膚刺激等の弊害の発現や経済性の面から不適当である。
【0017】
本発明の水性貼付剤においては、ケトプロフェンリジン塩を溶解させるためには水が好ましく使用される。水の含有量は、膏体重量に対して30〜80重量%、好ましくは40〜70重量%である。含水量が80重量%を超えた場合には、膏体粘度の低下による保形性の悪化、及びべとつき現象が見られる。また、粘着力が著しく低下し、貼付部位への接着性が十分に得られず好ましくない。他方、30重量%未満では、膏体粘度が高くなりすぎて膏体を支持体及びライナーに展延して貼付剤化する時の作業性が悪くなる。また、粘着力が強くなりすぎるために剥がす時に痛みや皮膚刺激が生じ好ましくない。
【0018】
本発明においては、活性成分であるケトプロフェンリジン塩を水溶性基剤中に安定的に配合するために、平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールの単独、又は2種以上の組み合わせが用いられる。
そのような平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000が好ましい。より好ましくは、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600である。
【0019】
本発明においては、膏体成分としてグリセリンを使用することなく、平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールを使用するのが一つの特徴である。平均分子量が1000より大きいポリエチレングリコールを配合した場合には、その融点が40℃を超えるため、膏体成分として配合する水溶性高分子を十分に分散することができず、膏体中にままこが生じる等の問題があるため好ましくない。
【0020】
前記ポリエチレングリコールの膏体組成中への含有量は、2〜30重量%が好ましく、より好ましくは5〜20重量%である。すなわち、含有量が2重量%未満では、水性貼付剤中に生じたフリー体のケトプロフェンを十分に溶解することができない。他方、30重量%を超えるとゲル表面に保持できなくなったポリエチレングリコールが浮きだし現象を起こし、貼付時にべとつきが生じるといった問題が発生する。
【0021】
これらのポリエチレングリコールを特に上記の配合量で用いることにより、グリセリンを使用することなく、ケトプロフェンを水溶性基剤中に安定的に溶解させ、かつ膏体の流動性が高くなり、展延性に優れた、初期粘着力が良好なケトプロフェンリジン塩含有水性貼付剤を形成することできる。
【0022】
本発明が提供するケトプロフェンリジン塩を含有する含水性貼付剤を構成する基剤成分は、一般的に含水性貼付剤を製造する場合に用いられる基剤成分であれば特に限定はなく、例えば、水溶性高分子、保湿剤、賦形剤、安定化剤、架橋剤、抗酸化剤、清涼化剤等を適宜配合することができる。
【0023】
水溶性高分子としては例えば、ゼラチン、加水分解ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、ポリアクリル酸デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルメロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、N−ビニルアセトアミド共重合体、キサンタンガム、アラビアガム等を単独又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0024】
前記水溶性高分子の膏体組成中における含有量は、3〜20重量%が好ましく、より好ましくは、5〜15重量%である。含有量が3重量%未満では、膏体粘度が低すぎて膏体のダレ現象が発生し貼付剤として成形することが難しくなる。他方、20重量%を越えると水溶性高分子が膏体中で均一に溶解せず、良好な膏体が形成されないため、好ましくない。
【0025】
また、保湿剤としては、グリセリンを除く、例えば、D−ソルビトール液、ピロリドンカルボン酸塩等を単独又は2種以上の組み合わせで用いることができ、その含有量は10〜30重量%が好ましい。
賦形剤としては例えば、カオリン、酸化チタン、無水ケイ酸、酸化亜鉛、ベントナイト等を単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
安定化剤としては例えば、エデト酸塩、酒石酸、クエン酸、亜硫酸水素ナトリウム等を単独又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0026】
膏体組成のpHは、皮膚刺激性の点からpH3.5〜6.5の範囲が好ましく、さらにはpH4.0〜5.5の範囲がより好ましい。
【0027】
架橋剤としては例えば、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等の多価金属化合物等を単独又は2種以上の組み合わせで用いることができる。その含有量は、その種類に応じて異なるが、0.001〜1重量%が好ましい。
【0028】
抗酸化剤としては例えば、酢酸トコフェロール、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール等を単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
清涼化剤としてはカンフル、チモール、l−メント−ル、N−エチル−p−メンタン−カルボキシアミド、p−メンタン−3,8−ジオール、l−イソプレゴール、l−メンチルグリセリルエーテル等のl−メント−ル誘導体等が挙げられ、これらは1種単独で、又は2種類以上を適宜組み合わせて使用することができる。また、必要に応じて防腐剤、可塑剤、乳化剤、界面活性剤等を配合することができる。
【0029】
本発明が提供する水性貼付剤の膏体の厚みは、250〜1400μmであることが好ましく、より好ましくは300〜1000μmである。なお、前記の膏体の厚みが250μm未満では粘着性や付着性の持続が低減する傾向にあり、他方、前記の膏体の厚みが1400μmを超えると凝集力や保型性が低下する傾向がある。
【0030】
膏体組成表面を被覆するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、剥離紙等の単独あるいは貼り合わせたものを用いることができ、さらにはこれらの表面にシリコーン処理、コロナ放電処理、凹凸処理、プラズマ処理等を施したものを用いることができる。
一方、含水性貼付剤の支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、レーヨン等の多孔体、発泡体、織布、不織布、さらにはフィルムまたはシートと多孔体、発泡体、織布、不織布とのラミネート品等を用いることができる。
【0031】
本発明が提供する水性貼付剤の製造方法は、特に限定はなく公知の製造方法で製造することができる。例えば、前記の様な構成で組成された膏体組成を支持体上に展延し、膏体組成表面をプラスチックフィルムで被覆することにより、ケトプロフェンリジン塩を含有する水性貼付剤を成形することができる。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1
下記表1に記載した実施例1の膏体組成に基づき、以下の手順に従い、実施例1の貼付剤を作製した。
ヒドロキシプロピルセルロース0.5g、メチルパラベン0.15g、エデト酸ナトリウム0.06g、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート0.06g、酒石酸0.5g、カルメロースナトリウム4.5g、20%ポリアクリル酸水溶液20g、ポリアクリル酸部分中和物4g、ポリソルベート80 0.2g、70%D−ソルビトール液25g、ポリエチレングリコール200 15g、メントール0.5g、酢酸トコフェロール0.5g、ポリビニルアルコール0.5g、精製水適量を均一に混合して含水ゲルを調製した。
次に精製水適量にケトプロフェンリジン塩1.5gを溶解した後、先に調製した含水ゲル中に均一になるように混合し、貼付剤用膏体を得た。
この膏体を、ポリエチレンフィルムとレーヨン繊維のラミネート不織布からなる支持体に、膏体重量が300g/mになるように塗布し、粘着面をポリエステルフィルムで被覆し、7×10cmの長方形に打ち抜き、貼付剤を作製した。
【0034】
実施例2〜4及び比較例1〜3
下記表1に記載の組成に基づいて、実施例1と同様の手順に従い、実施例2〜4及び比較例1〜3の貼付剤を作製した。
比較例1〜3の貼付剤にあっては、ポリエチレングリコールに代え濃グリセリンを使用したものである。
なお、ポリエチレングリコール1500は、疎水性が高いため貼付剤に配合することができなかった。
【0035】
【表1】

【0036】
試験例1
上記の実施例1〜4及び比較例1〜3で調製した各貼付剤を、5枚一袋としてアルミニウム袋に密封した後、40℃及び50℃条件下で1ヶ月間保存し、保存後の各製剤中におけるケトプロフェン含有量、及び分解生成物であるケトプロフェングリセリンエステルの比率を、高速液体クロマトグラフィ-により測定した。
得られた結果を下記表2及び表3に示した。
【0037】
表2:各製剤中の初期値に対するケトプロフェン含有量(%)
【0038】
【表2】

【0039】
表3:各製剤中の分解生成物であるケトプロフェングリセリンエステルの百分率(%)
【0040】
【表3】

【0041】
表2及び表3に示した結果から明らかなように、ポリエチレングリコールを用いた本発明の水性貼付剤(実施例1〜4)は、グリセリンを用いた貼付剤(比較例1〜3)に比べて苛酷な条件下における保存安定性が顕著に優れていることが示された。
【0042】
比較例4
特開2002−193793号公報(特許文献5)に記載の実施例2を参考にし、単位面積当たりのケトプロフェン含量が30mg/140cm(ケトプロフェンの換算量としてケトプロフェンリジン塩が47mg/140cm)となるように、表4に記載の組成に基づいて、実施例1と同様の手順に従い、貼付剤を作製した。
比較例5
有効成分としてケトプロフェン(0.3重量%含有)を配合した、塗工重量が714g/mの水性貼付剤(市販品)を用いた。
【0043】
実施例5及び6
比較例4及び5と同様に、単位面積あたりのケトプロフェン含量が30mg/140cm(ケトプロフェンの換算量としてケトプロフェンリジン塩含量が47mg/140cm)となるように、実施例5及び6の膏体を、表4に記載の組成に基づいて、実施例1と同様の手順に従い作製し、この膏体をポリエチレンフィルムとレーヨン繊維のラミネート不織布からなる支持体に塗布し、粘着面をポリエステルフィルムで被覆し、10×14cmの長方形に打ち抜き、各貼付剤を作製した。
【0044】
【表4】

【0045】
試験例2
ウイスター系雄性ラット(6〜7週齢)の腹部摘出皮膚を、フランツ型拡散セルに装着し、実施例5と6、及び比較例4と5の製品をそれぞれ直径16mmの円形(ケトプロフェンとして0.43mg含有)に打ち抜いた試験片を拡散セルのラット皮膚上部に貼付した。
レセプター側には、リン酸緩衝生理食塩水を用い、一定時間毎にレセプター液を採取して、HPLCを用いて、採取液中のケトプロフェン濃度を測定し、ラット皮膚を通過する薬物量を求めた。
試験結果を図1に示す。
その結果から判明するように、実施例5及び6の水性貼付剤は、市販のパップ剤である比較例5よりも高い薬物透過量を示しており、同等以上の良好な薬物放出の持続性が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上記載のように、本発明により、水に対する溶解度が高いケトプロフェンリジン塩を活性成分として、グリセリンを含有することなく、平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールを配合した膏体中に溶解させることによって、製造作業が簡便になり、かつ、安定的にケトプロフェンリジン塩を配合した水性貼付剤が提供される。
本発明が提供する水性貼付剤は、従来の溶解型或いは分散型の水性貼付剤では成し得なかった、高いケトプロフェンの経皮吸収性、及び保存安定性を兼ね備えたものであり、その医療上の有用性は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の試験例2に従う、in vitroによるケトプロフェンの皮膚透過量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンを含有せず、平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールを配合した膏体中に、活性成分としてケトプロフェンリジン塩を溶解状態で配合したことを特徴とするケトプロフェンリジン塩含有水性貼付剤。
【請求項2】
平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600及びポリエチレングリコール1000から成る群から選択された1種或いは2種以上のポリエチレングリコールである請求項1に記載のケトプロフェンリジン塩含有水性貼付剤。
【請求項3】
平均分子量が1000以下のポリエチレングリコールの配合量が2〜30%である請求項1又は2に記載のケトプロフェンリジン塩含有水性貼付剤。
【請求項4】
膏体成分としてグリセリンを含有せず、平均分子量が1000以下のポリエチレングリコール2〜30重量%、水溶性高分子3〜20重量%、保湿剤10〜30重量%、多価金属化合物0.001〜1重量%及び水30〜80重量%からなり、活性成分であるケトプロフェンリジン塩0.1〜5重量%を配合したものである請求項1〜3のいずれかに記載のケトプロフェンリジン塩含有水性貼付剤。

【図1】
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【公開番号】特開2009−227640(P2009−227640A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78486(P2008−78486)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000215958)帝國製薬株式会社 (44)
【Fターム(参考)】