説明

ケミカルヒートポンプ

【課題】従来よりも小型の設備で脱水素反応と水素化反応を利用して熱エネルギーを利用するケミカルヒートポンプを提供する。
【解決手段】ケミカルヒートポンプ50は、外部から供給された熱エネルギーにより、含水素化合物の脱水素反応を行い、脱水素化合物及び水素を生成する脱水素反応部を有する脱水素反応器1と、脱水素反応器1によって生成した脱水素化合物および水素を導入して脱水素化合物の水素化反応を行い、含水素化合物を生成し、発生した反応熱を熱エネルギーとして出力する水素化反応器21と、水素化反応器から送出された、未反応の水素および脱水素化合物を共に透過する分離膜44を有する分離部41と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水素反応と水素化反応を利用して熱エネルギーを活用するケミカルヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
水素を含む有機化合物の含水素化合物から脱水素反応により脱水素化合物と水素を生成し、逆に、脱水素化合物と水素から水素化反応により含水素化合物を生成する可逆的な反応が知られている。脱水素反応は、吸熱反応であるのに対し、水素化反応は、発熱反応である。これを利用して、価値の低い低温熱源で脱水素反応を起こし、水素化反応で価値の高い高温熱源に変換してエネルギーの利用価値を高めるケミカルヒートポンプが知られている。
【0003】
特許文献1では、2−プロパノールの脱水素反応とアセトンの水素化反応とを組み合わせ、50〜120℃の低温熱源を利用して150〜200℃の高温熱源が得られる、2−プロパノール/アセトン・水素系のケミカルヒートポンプが開示されている。2−プロパノールの脱水素反応は液相状態で行っている。
【0004】
非特許文献1にも、2−プロパノール/アセトン・水素系ケミカルヒートポンプが開示されている。2−プロパノールの脱水素反応は気相状態で行っている。
【0005】
非特許文献2にも、2−プロパノール/アセトン・水素系ケミカルヒートポンプが開示され、2−プロパノールの脱水素反応は液相状態で行うこと、反応蒸留を用いて、最終的には、アセトン蒸気及び水素ガスの混合物(気体)と液相の2−プロパノールに分離されることが開示されている。
【0006】
一方、2−プロパノールとアセトンの分離例として、非特許文献3には、2−プロパノールの脱水素反応における、多孔質ガラス(商品名:Vycor)製の膜を用いた膜反応器が開示されている。従来の膜反応器と同様に原料(2−プロパノール)供給側のみに触媒を設けた構成では、膜透過側のアセトン濃度は膜残留側のアセトン濃度(原料供給側(=膜残留側)に設けられた触媒による脱水素化反応に伴い発生したアセトンの濃度)とほとんど変化が無いことが記載されている。
【0007】
2−プロパノールとアセトンの分離例として、非特許文献4には、2−プロパノールとアセトンの混合液体を、有機物から構成される浸透気化膜(セルロース製有機膜)を用いて、浸透分離(パーベーパレーション分離)したところ、アセトンではなく、2−プロパノールが弱い選択性(選択透過性=2)をもって選択透過することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−116252号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of Chemical Engineering of Japan, 26, 580−583 (1993)
【非特許文献2】Journal of Chemical Engineering of Japan, 31, 440−444 (1998)
【非特許文献3】Journal of Chemical Engineering of Japan, vol34, pp1065−1068 (2001)
【非特許文献4】Journal of Membrane Science, 36, pp315−329 (1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、非特許文献1〜2では、蒸留塔を用いる必要があり、装置設備が大きくなり、不便であった。
【0011】
一方、非特許文献3では、2−プロパノールとアセトンの混合蒸気を、多孔質ガラス(商品名:Vycor)製の膜を透過させているが、透過側の蒸気組成は、供給側(残留側)とほとんど変化無い。つまり、2−プロパノールとアセトンの混合蒸気を分離できない。ここで、当該多孔質ガラスは、その細孔径が4nm以上であることは、当業者の間では良く知られている。また、細孔径が4nm以上である多孔質膜においては、浸透気化や分子篩メカニズムによるガス分離は起こらないことも、当業者には良く知られている。
【0012】
また、非特許文献4では、2−プロパノールとアセトンの混合液体を、有機物から構成される浸透気化膜であるところのセルロース製有機膜を用いて、浸透分離(パーベーパレーション分離)しているが、2−プロパノールとアセトンの混合液体を効率的には分離できない。
【0013】
本発明の課題は、従来よりも小型の設備で脱水素反応と水素化反応を利用して熱エネルギーを活用するケミカルヒートポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、脱水素化合物及び水素を共に選択的に透過する分離膜を用いて、含水素化合物から、脱水素化合物、及び水素分離することにより、効率よく脱水素反応及び水素化反応を行うことで、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下のケミカルヒートポンプが提供される。
【0015】
[1] 外部から供給された熱エネルギーにより、含水素化合物の脱水素反応を行い、脱水素化合物及び水素を生成する脱水素反応部を有する脱水素反応器と、前記脱水素反応器によって生成した前記脱水素化合物および前記水素を導入して前記脱水素化合物の水素化反応を行い、前記含水素化合物を生成し、発生した反応熱を熱エネルギーとして出力する水素化反応器と、前記水素化反応器から送出された、未反応の前記水素および前記脱水素化合物を共に透過する分離膜を有する分離部と、を備えるケミカルヒートポンプ。
【0016】
[2] 前記脱水素反応器または前記水素化反応器から排出された前記含水素化合物、前記脱水素化合物および前記水素を導入し、前記脱水素化合物および前記水素を前記含水素化合物から分離する分離装置を備える前記[1]に記載のケミカルヒートポンプ。
【0017】
[3] 前記脱水素反応器と前記水素化反応器との間に備えられ、前記脱水素反応器から排出される気液混合物を前記脱水素反応器から導入し、前記脱水素化合物および前記水素を前記含水素化合物から蒸留分離し、また、前記水素化反応器によって生成された前記含水素化合物と未反応の前記脱水素化合物および前記水素のうち、前記分離膜を透過しなかったものを導入し、前記脱水素化合物および前記水素を前記含水素化合物から蒸留分離し、前記蒸留分離された前記含水素化合物を前記脱水素反応器へ送出し、前記蒸留分離された前記脱水素化合物および前記水素を前記水素化反応器へ送出する蒸留塔を前記分離装置として備える前記[2]に記載のケミカルヒートポンプ。
【0018】
[4] 前記分離部と前記蒸留塔との間に備えられ、前記水素化反応器によって生成された前記含水素化合物と未反応の前記脱水素化合物および前記水素のうち、前記分離膜を透過しなかったものを前記分離部から導入し、前記含水素化合物を凝縮して前記脱水素化合物および前記水素を前記含水素化合物から分離し、前記含水素化合物を前記蒸留塔へ送出し、前記脱水素化合物および前記水素を前記水素化反応器へ送出する凝縮器を前記分離装置として備える前記[3]に記載のケミカルヒートポンプ。
【0019】
[5] 前記分離部の前記分離膜は、無機材料から構成される浸透気化膜またはガス分離膜である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のケミカルヒートポンプ。
【0020】
[6] 前記分離部の前記分離膜は、炭素膜、ゼオライト膜、及びシリカ膜からなる群から選ばれるいずれかである前記[1]〜[5]のいずれかに記載のケミカルヒートポンプ。
【発明の効果】
【0021】
脱水素化合物及び水素を共に選択的に透過する分離膜を用いることにより、水素化反応に必要な成分を効率よく分離することができる。このため、大掛かりな装置設備である蒸留塔および分縮器を省略できる。あるいは少なくとも、従来技術に比べ大幅に小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のケミカルヒートポンプの一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の分離部の一実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明のケミカルヒートポンプの他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0024】
図1に本発明のケミカルヒートポンプ50の一実施形態を示す。ケミカルヒートポンプ50は、外部から供給された熱エネルギーにより、含水素化合物の脱水素反応を行い、脱水素化合物及び水素を生成する脱水素反応部を有する脱水素反応器1と、脱水素反応器1によって生成した脱水素化合物および水素を導入して脱水素化合物の水素化反応を行い、含水素化合物を生成し、発生した反応熱を熱エネルギーとして出力する水素化反応器21と、水素化反応器から送出された、未反応の水素および脱水素化合物を共に透過する分離膜44を有する分離部41と、を備える。
【0025】
含水素化合物とは、水素を含む有機化合物であり、脱水素反応により、水素を生成する化合物である。脱水素化合物とは、含水素化合物の脱水素反応で得られる化合物である。含水素化合物と脱水素化合物の例として、2−プロパノールとアセトン(以下、2−プロパノール/アセトン・水素系ということがある)、シクロヘキサンとベンゼン(以下、シクロヘキサン/ベンゼン・水素系ということがある)等が挙げられる。
【0026】
脱水素反応は、吸熱反応であるため、脱水素反応を外部から熱エネルギーを供給することにより行うことが好ましい。これにより、脱水素反応を促進させることができる。外部から供給する熱エネルギーとしては、廃熱等を利用することが好ましい。このようにすることにより、不要な熱エネルギーを反応に利用することができる。
【0027】
また、ケミカルヒートポンプ50は、脱水素反応器1と水素化反応器21との間に蒸留塔32を備える。蒸留塔32は、脱水素反応器1から排出される水素化合物と当該含水素化合物の脱水素反応により生成した脱水素化合物及び水素との気液混合物を脱水素反応器1から導入し、脱水素化合物および水素を含水素化合物から蒸留分離する蒸留装置であり分離装置である。また、水素化反応器21によって生成された含水素化合物と未反応の脱水素化合物および水素のうち、分離膜44を透過しなかったものを導入し、脱水素化合物および水素を含水素化合物から蒸留分離する。そして、蒸留分離された含水素化合物を脱水素反応器へ送出し、蒸留分離された脱水素化合物および水素を水素化反応器21へ送出する。
【0028】
分離部41には、分離膜44が備えられている。図2に、分離部41の一実施形態の模式図を示す。分離部41は、水素を含む有機化合物である含水素化合物を導入する導入口42と、分離部41内に備えられ、且つ、脱水素化合物及び水素を共に選択的に透過する機能を有する分離膜44と、分離膜44を透過してくる脱水素化合物及び水素を回収する回収口46と、分離部41内に分離膜44を透過しないで残留する含水素化合物を主成分とする残留物を排出する排出口47と、を備える。本明細書において主成分とは、残留物内に最も多く含まれる成分である。
【0029】
分離膜44は、無機材料から構成される浸透気化膜またはガス分離膜であることが好ましい。浸透気化膜・ガス分離膜としては、脱水素反応において、水素及び脱水素化合物(蒸気)をよく透過し、供給原料である含水素化合物(蒸気・液体)をあまり透過しないものであれば、何でも良いが、含水素化合物および脱水素化合物は一般に有機溶媒であり且つ反応温度も高温であることから、耐有機溶媒性を有する無機材料で構成された浸透気化膜・ガス分離膜が好ましい。例示するなら、セラミック多孔体を支持体としたゼオライト膜、炭素膜、シリカ膜等である。炭素膜、ゼオライト膜(特にMFI型ゼオライト膜およびFAU型ゼオライト膜)、シリカ膜等の無機材料から構成される浸透気化膜・ガス分離膜は、分子径の差がほとんどない含水素化合物と脱水素化合物とを分離することができる。
【0030】
例えば、2−プロパノールは、分子径0.47nm、アセトンは、分子径0.469nmで分子径はほとんど差がないが、無機材料から構成される浸透気化膜・ガス分離膜は、アセトン(蒸気)を非常によく透過し、2−プロパノール(蒸気、液体)をあまり透過しないため、結果として、2−プロパノールとアセトンを効率よく分離できる。炭素膜やゼオライト膜(特にMFI型ゼオライト膜)は、小さな分子径を有する水素もよく透過するので、結果として、2−プロパノール/アセトン・水素系にて、2−プロパノールと、生成物であるアセトン及び水素を、効率よく分離することができる。
【0031】
また、シクロヘキサンは、分子径0.6nm、ベンゼンは、分子径0.565nmで分子径はほとんど差が無いが、炭素膜、ゼオライト膜(特にFAU型ゼオライト膜)、シリカ膜等の浸透気化膜・ガス分離膜は、ベンゼン(蒸気)をよく透過し、シクロヘキサン(蒸気、液体)をあまり透過せず、小分子径である水素(ガス)をよく透過するため、結果として、シクロヘキサン/ベンゼン・水素系にて、シクロヘキサンと、生成物であるベンゼン及び水素を、効率よく分離することができる。
【0032】
2−プロパノール/アセトン・水素系とシクロヘキサン/ベンゼン・水素系のそれぞれに好適な分離膜44について、さらに具体的に説明する。
【0033】
(1)2−プロパノール/アセトン・水素系に用いられるゼオライト膜:
2−プロパノール/アセトン・水素系にて、2−プロパノールと、生成物であるアセトン及び水素を分離する分離膜44としては、ゼオライト膜が挙げられる。ゼオライト膜としては、例えば、LTA、MOR、AFI、BEA、FER、FAU、DDR等が挙げられるが、特にMFI型ゼオライト膜が好ましい。以下、MFI型ゼオライト膜を例として、説明する。
【0034】
(1−1)種結晶生成工程:
ゼオライト膜は、多孔質材料である支持体14上に形成されることが好ましい。支持体14は、ゼオライト種結晶を表面に生成し、ゼオライト膜を形成することができれば特に限定されない。支持体14を構成する材料としては、例えば、アルミナ(α−アルミナ、γ−アルミナ、陽極酸化アルミナ等)、ジルコニア等のセラミックスあるいはステンレスなどの金属等を挙げることができ、支持体14の作製、入手の容易さの点から、アルミナが好ましい。
【0035】
ゼオライト種結晶を生成させるために、まず、上記支持体14と種付け用ゾルを耐圧容器内に入れ、耐圧容器を加熱し、水熱合成により支持体14の表面にゼオライト種結晶を生成させる。
【0036】
種付け用ゾルは、水中にシリカ微粒子が分散したシリカゾルであり、その中に少なくとも構造規定剤を含有するものである。この種付け用ゾルは、所定濃度のシリカゾルと、濃度調整用の水と、所定濃度の構造規定剤水溶液とを、それぞれ所定量混合することにより得られる。
【0037】
シリカゾルとしては、市販のシリカゾル(例えば、商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製、固形分濃度30質量%)を好適に用いることができる。ここで、固形分とはシリカのことをいう。但し、シリカ微粉末を水に懸濁させることにより調製したもの、或いはアルコキシシランを加水分解することにより調製したものを用いてもよい。
【0038】
MFI型ゼオライトの構造規定剤としては、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)を生じ得る、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)やテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)を用いることができる。
【0039】
シリカゾルとして、シリカ微粒子の他、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物を含有するものを用いることも好ましい。MFI型ゼオライトの構造規定剤として用いられるTPAOHは比較的高価な試薬であるが、この方法によれば、比較的安価なTPABrとアルカリ金属等の水酸化物とからTPA源とアルカリ源を得ることができる。即ち、この方法では高価なTPAOHを使用する必要がないため、原料コストを低減させることができ、ゼオライトを安価に生産することが可能となる。
【0040】
(1−2)膜形成工程:
膜形成用ゾルは、原料としては、上述した種付け用ゾルに含有されるシリカゾル、構造規定剤及び水と同じものを使用し、種付け用ゾルの場合より水を多く使用して、種付け用ゾルより濃度を薄くしたものを使用することが好ましい。
【0041】
種結晶生成工程にて支持体14の表面に析出したゼオライト種結晶を水熱合成により成長させて、支持体14の表面に、膜状に成長したゼオライト結晶からなるゼオライト膜を形成する。得られるゼオライト膜の膜厚は、20μm以下であることが好ましく、1〜20μmであることが更に好ましく、1〜15μmであることが特に好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。この範囲とすることにより、分離膜44として使用したときに、分離効率を向上させることができる。
【0042】
水熱合成により支持体14の表面にゼオライト膜を形成した後には、支持体14を水を使用して煮沸洗浄することが好ましい。これにより、ゼオライト膜上に余分なゼオライト結晶が付着することを防止することができる。
【0043】
上記方法により得られた、支持体14の表面に形成されたゼオライト膜を加熱処理(活性化処理)することにより、テトラプロピルアンモニウムを除去し、最終的にゼオライト膜を形成する。加熱温度は、400〜600℃が好ましく、加熱時間は1〜60時間が好ましい。以上により、支持体14の表面に、支持体14の表面に垂直な方向にc軸配向したMFI型ゼオライト結晶が得られ、これを分離膜44として用いることができる。
【0044】
(2)2−プロパノール/アセトン・水素系に用いられる炭素膜:
2−プロパノール/アセトン・水素系にて、2−プロパノールと、生成物であるアセトン及び水素を分離する分離膜44としては、炭素膜が挙げられる。以下、炭素膜について説明する。
【0045】
炭素膜は、多孔質材料である支持体14上に形成されることが好ましい。支持体14は、平均粒子径10〜100μm及び平均細孔径1〜30μmの基材と、基材の平均細孔径より小さな一次粒子を有する凝集体で構成され厚さ10〜100μm及び平均細孔径0.1〜3μmの中間層と、厚さ1〜100μm及び平均細孔径0.01〜0.5μmの表面層と、で構成されることが好ましい。そして、ゾル層を形成することなく、表面層の上(表面)に、直に、分離膜44である炭素膜が形成されることが好ましい。
【0046】
基材の多孔質材料(セラミック粒子の材料)としては、耐食性と温度変化による細孔径の変化が少ない点や充分な強度が得られる点から、例えば、アルミナを用いることが可能であり、それ以外にコーディエライト、ムライト、炭化珪素、チタニア等を使用することができる。
【0047】
中間層及び表面層の多孔質材料(セラミック粒子の材料)としては、基材と同様の材料を用いることができる。
【0048】
上記支持体14の表面(表面層の表面)に、炭素膜(分離膜44)を形成する。まず、のちに炭素膜となる前駆体溶液を支持体14の表面に接触をさせ、その表面に製膜する。製膜(前駆体溶液の堆積と乾燥)は、1回以上、複数回に分けて行ってもよい。そして、窒素雰囲気下で、概ね500〜900℃、好ましくは700℃前後で、炭化させることによって炭素膜を形成することができる。炭化は、窒素雰囲気の他に、真空状態で、又は、アルゴン、ヘリウム等の還元雰囲気下で行ってもよい。500℃以上の温度で炭化を行うことにより、十分に炭化させ、分子ふるい膜としての選択性や透過速度を向上させることができる。一方、900℃未満で炭化することにより、細孔径が収縮して透過速度が減少することを防止することができる。
【0049】
(3)シクロヘキサン/ベンゼン・水素系に用いられる炭素膜:
シクロヘキサン/ベンゼン・水素系にて、シクロヘキサンと、生成物であるベンゼン及び水素を分離する分離膜44としては、炭素膜が挙げられる。炭素膜は、上述の2−プロパノール/アセトン・水素系の分離膜44の炭素膜と同じである。
【0050】
(4)シクロヘキサン/ベンゼン・水素系に用いられるゼオライト膜:
シクロヘキサン/ベンゼン・水素系にて、シクロヘキサンと、生成物であるベンゼン及び水素を分離する分離膜44としては、ゼオライト膜が挙げられる。ゼオライト膜としては、例えば、LTA、MOR、AFI、BEA、FER、DDR、MFI等が挙げられるが、特にFAU型ゼオライト膜が好ましい。以下、FAU型ゼオライト膜を例として、説明する。
【0051】
(4−1)種結晶生成工程:
ゼオライト膜は、多孔質材料である支持体14上に形成されることが好ましい。支持体14は、ゼオライト種結晶を表面に生成し、ゼオライト膜を形成することができれば特に限定されるものではなく、その材質、形状及び大きさは用途等に合わせて適宜決定することができる。支持体14を構成する材料としては、アルミナを主成分として含有する多孔質体が好ましい。アルミナとしては、α−アルミナ、β−アルミナ及びγ−アルミナが挙げられるが、物理的、化学的に安定であることから、α−アルミナが好ましい。また、支持体14には、ムライト、シリカ、チタニア、ジルコニア、ステンレススチール、ニッケル等が含有されていてもよい。
【0052】
ゼオライト種結晶を生成させるために、まず、上記支持体14に、USY型ゼオライト結晶を種結晶として付着させる。これにより、結晶性及び均質性が高く、剥離しにくいFAU型ゼオライト結晶の分離膜44を形成することができる。
【0053】
USY型結晶の平均粒径は、好ましくは1nm〜1μmであり、より好ましくは1nm〜0.4μmである。このような範囲とすることにより、均質なゼオライト層となりやすく、USY型結晶が支持体14に付着しやすい。
【0054】
USY型結晶を支持体14に付着させた後、USY型結晶を乾燥させる。
【0055】
(4−2)膜形成工程:
種結晶生成工程の後には、支持体14と、ケイ素及びアルミニウムを含有する反応液とを接触させ、更に反応液を加熱する膜形成工程を実施する。
【0056】
反応液は、ゼオライトの原料を含有する液体である。反応液は、ケイ素及びアルミニウムを含有する。反応液中における、アルミニウムに対するケイ素のモル比(Si/Al)としては、1.8〜12.5が好ましい。
【0057】
反応液は、シリカ源とアルミナ源との混合物を溶媒(例えば、水)に加え、撹拌することによって調製することができる。シリカ源としては、ケイ酸ナトリウム、水ガラス、ケイ酸カリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩の他、シリカ粉末、ケイ酸、コロイダルシリカ、酸性白土、カオリン、ケイ素アルコキシド(例えば、アルミニウムイソプロポキシド)等が挙げられる。また、アルミナ源としては、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム等のアルミニウム塩の他、アルミナ粉末、コロイダルアルミナ等が挙げられる。
【0058】
反応液は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を更に含有してもよい。また、反応液は、結晶化促進剤等の添加剤を更に含有してもよい。結晶化促進剤としては、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルヒドロキシド、テトラメチルヒドロキシド、テトラエチルヒドロキシド等が挙げられる。
【0059】
上記反応液に支持体14を浸漬して支持体14と反応液とを接触させる。そして反応液を加熱して所定温度とし、その温度で反応液を2時間以上保持する。ここで、所定温度は、40℃より高い温度であり、反応液の組成、性状等に応じて、適宜決定されるが、通常、好ましくは90〜130℃である。そして、反応液から支持体14を取り出し、得られたゼオライト分離膜を洗浄する。上記工程により、FAU型ゼオライト膜を形成することができる。
【0060】
(5)シクロヘキサン/ベンゼン・水素系に用いられるシリカ膜:
シクロヘキサン/ベンゼン・水素系にて、シクロヘキサンと、生成物であるベンゼン及び水素を分離する分離膜44としては、シリカ膜が挙げられる。以下、シリカ膜について説明する。
【0061】
シリカ膜は、多孔質材料である支持体14上に形成されることが好ましい。支持体14である多孔質基材は、無数の細孔を有し、この細孔内に流体を流すことができる。そのため、シリカ膜を透過した物質が多孔質基材の内部を通過することや、シリカ膜に供給される物質が多孔質基材の内部を通過してシリカ膜の表面上まで到達することが可能になる。多孔質基材としては、アルミナ、チタニア、シリカ、コージェライト、ジルコニア、ムライトなどを主成分とする多孔質セラミックスからなるものを用いることが望ましい。上記したアルミナなどを主成分とするセラミックスをからなる多孔質基材は、耐熱性、耐薬品性、耐衝撃性などに優れている。
【0062】
多孔質基材の表面には、無数の細孔が開口している。シリカ膜を透過する物質の透過流束を高くする観点や多孔質基材の開口部をシリカ膜で完全に充填するという観点から、シリカ膜が設けられている部分の表面には、平均細孔径が0.001μm〜5μm(1nm〜5000nm)の細孔が開口していることが好ましい。多孔質基材は、単層構造であっても、複層構造であってもよい。
【0063】
シリカ膜は、Heガス透過量とNガス透過量との比(He透過量/N透過量、以下、「He/N比」という)が7以下、かつ、Nガス透過量とSFガス透過量との比(N透過量/SF透過量、以下、「N/SF比」という)が1.5以上であることが好ましい。
【0064】
シリカ膜は、アリール基を含有していてもよい。ここでアリール基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基などを挙げることができる。シリカ膜は、アリール基を1種のみ含有していても、2種以上のアリール基を含有していてもよい。シリカ膜がアルキル基を含有していてもよい。さらに、シリカ膜が含有するアルキル基は、芳香族選択性能やアルコール選択性能を高める観点から、アルキル基が炭素数2〜8であることが好ましい。
【0065】
シリカ膜は、シリカ化合物を加水分解および重縮合させることにより前駆体ゾルを作製し、この前駆体ゾルを膜状にし、さらに膜状の前駆体ゾルを熱処理することにより製造したものであることが望ましい。また、前駆体ゾルを作製するための原料には、シリカ化合物以外の物質が含まれていてもよく、例えば、シリコン以外の金属元素を含んでいてもよい。ここで、シリカ化合物とは、構造中にシリコン原子(Si)を1個または2個以上含有している化合物のことである。
【0066】
シリカ膜の製造方法について説明する。シリカ化合物と有機溶媒と水とを含む原料を40〜150℃で攪拌しながら、シリカ化合物を加水分解および重縮合させて前駆体ゾルを含有する前駆体溶液を得る前駆体溶液調製工程、前駆体溶液を多孔質基材の表面上に接触させ、前駆体溶液の自重による流下によって、前駆体ゾルを多孔質基材の表面上に塗布する塗布工程、多孔質基材の表面上に塗布された前駆体ゾルを乾燥し、次いで300〜600℃にて熱処理する乾燥・熱処理工程を行うことにより、シリカ膜が得られる。
【0067】
(5−1)前駆体溶液調製工程:
前駆体溶液調製工程では、シリカ化合物と有機溶媒と水とを含む原料を40〜150℃で攪拌してシリカ化合物を加水分解および重縮合をさせる。これにより、シリカ化合物の重合が促進されて成膜に適当な大きさの前駆体ゾルを作製することができる。また、原料を攪拌する際に、原料の温度と原料を攪拌する時間を調整することによって、前駆体ゾルの大きさを調整することができる。前駆体ゾルが大きい場合、続く塗布工程において前駆体ゾルが多孔質基材の表面から細孔内に侵入しにくくなる。その結果、シリカ膜は多孔質基材の表面から細孔内に侵入した分の厚みを小さくすることができる。したがって、大きな前駆体ゾルを用いることにより、薄い膜厚のシリカ膜を作製することが可能になる。そして、シリカ膜を薄くすることにより、シリカ膜を透過することができる物質の透過流束が高いシリカ膜を作製することが可能になる。
【0068】
有機溶媒としては、シリカ原料及び水と混和可能なアルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類、芳香族類などを用いることができる。例えば、エタノール、イソプロパノール、N−メチル−2ピロリドンなどを用いることができる。
【0069】
前駆体溶液の原料は、例えば、まずフェニルトリメトキシシラン(シリカ化合物)とエタノール(有機溶媒)とを混ぜて攪拌し、次いで酸触媒と水とを混ぜて攪拌する方法によって調製できる。
【0070】
(5−2)塗布工程:
塗布工程では、前駆体溶液を多孔質基材の支持体14の表面上に接触させて、前駆体溶液の自重による流下によって、前駆体溶液に含まれた前駆体ゾルを多孔質基材の表面上に塗布することが好ましい(この塗布の方法を、以下、流下法という)。流下法によって多孔質基材上に前駆体ゾルを塗布した場合には、前駆体ゾルが適度な応力を受けつつ短時間で多孔質基材の細孔を閉塞するため、結果として、膜厚が薄くかつ細孔径がベンゼン選択透過性(脱水素化合物選択透過性)を発現するのに適したシリカ膜を得やすくなる。
【0071】
塗布工程では、最終的なシリカ膜の細孔径をベンゼン選択透過性(脱水素化合物選択透過性)を発現するのに適したものにする限りにおいては、いかなる塗布法も用いることができるが、シリカ膜の細孔径をベンゼン選択透過性(脱水素化合物選択透過性)を発現するのに適したものにするのが容易であるという観点から、流下法が望ましい。
【0072】
(5−3)乾燥・熱処理工程:
多孔質基材の表面上に塗布された前駆体ゾルを乾燥し、次いで300〜600℃にて熱処理する。
【0073】
以上の工程により、多孔質基材の支持体14の表面に設けられたシリカ膜を形成することができる。
【0074】
上記の分離膜44を有する分離部41を用いることにより、脱水素化合物及び水素を共に選択的に透過させて、含水素化合物から、脱水素化合物及び水素を分離し、効率よく脱水素反応及び水素化反応を行うことができる。
【0075】
水素化反応器21は、触媒を備え、導入された脱水素化合物と水素から水素化反応により含水素化化合物を生成する。このとき、発生する反応熱を高温熱エネルギーとして回収することができる。そして、生成された含水素化合物と、未反応の脱水素化合物及び水素を脱水素反応器1へ送出する。
【0076】
ケミカルヒートポンプ50は、熱交換器31を備えていてもよい。熱交換器31では、水素化反応器21から送出されたガスの熱が水素化反応器21へと導入されるガスへ熱交換される。
【0077】
ケミカルヒートポンプ50に利用することのできる系としては、含水素化合物が、2−プロパノール、脱水素化合物が、アセトンの系が挙げられる。この系では、80〜90℃の低温熱エネルギーを150〜200℃の高温熱エネルギーへ変換することができる。また、含水素化合物が、シクロヘキサン、脱水素化合物が、ベンゼンの系も利用することができる。この系では、200〜250℃の低温熱エネルギーを250〜400℃の高温熱エネルギーへ変換することができる。これらの系は、発熱反応で発生する熱が、吸熱反応で利用する熱よりも高い系である。したがって、不要な低温熱エネルギーを高温熱エネルギーに変換して使用することができる。
【0078】
次に、図1に示す構成のケミカルヒートポンプ50の作動(運転制御方法)について、含水素化合物が2−プロパノール、脱水素化合物がアセトンの場合を例として以下説明する。まず、80〜90℃の工場等の廃熱が熱エネルギー供給手段8によって脱水素反応器1の反応室3内に熱エネルギーとして供給されると、脱水素反応器1の反応室3内において、2−プロパノールは、触媒により脱水素反応が起こり、脱水素化合物のアセトンと水素を生成する。すなわち、2−プロパノール→アセトン+水素の反応が起こる。生成したアセトンと水素は、外に排出され、蒸留塔32に導入される。
【0079】
ここで、脱水素反応は、完全に進行するわけではないため、未反応のガスおよび液体の2−プロパノールが残留する。未反応の2−プロパノールは、アセトン、水素とともに混合物(気液混合物)として蒸留塔32へ導入される。
【0080】
蒸留塔32に導入された混合物のガスは上昇して分縮器33に至る。分縮器33では、冷却水によりガスの2−プロパノールが冷却されて凝縮し、ガスのアセトンと水素から分離して、脱水素反応器1から蒸留塔32に送出された液体の2−プロパノールと共に、蒸留塔32の底部に溜まり、脱水素反応器1に戻される。ガスのアセトンと水素分縮器33から排出されて、熱交換器31を通過することにより加熱され、水素化反応器21に導入される。
【0081】
また、蒸留塔32において、脱水素反応器1からの混合物のみならず、後述する水素化反応器21から分離部41、および必要に応じて凝縮器34(図3参照)を経た2−プロパノールを主成分とする混合物も、蒸留塔32に戻される。
【0082】
水素化反応器21では、蒸留塔32および分縮器33から導入されたガスのアセトンと水素が触媒の存在のもとで水素化反応により発熱してガスの2−プロパノールとなる。すなわち、アセトン+水素→2−プロパノールの発熱反応である水素化反応が行われる。この時、この発熱反応によって150〜200℃の反応熱が発生し、高温熱エネルギーとして回収される。
【0083】
そして、ガスの2−プロパノールと未反応のアセトンガスと水素ガスは、熱交換器31を通過することにより、その熱の一部を失い、約75℃の温度になって分離部41へ流入する。
【0084】
なお、熱交換器31では、水素化反応器21へ向かう配管の混合ガスおよび水素化反応器21からの配管を流れる混合ガスの間で熱交換が行われる。水素化反応器21へ向かう混合ガスは、水素化反応器21からの混合ガスから熱エネルギーを受けることによって、その温度が上昇し、その後水素化反応器21へ導入される。その一方、水素化反応器21からの混合ガスは、水素化反応器21へ向かう混合ガスへ熱エネルギーを与えることによって、その温度が降下し、それから分離部41へ流入する。
【0085】
分離部41は、無機材料から構成される分離膜44を備え、水素化反応器21から送出された、未反応の水素および脱水素化合物のアセトンを共に透過して、水素化反応器21に戻す。また、分離膜44を透過しなかった含水素化合物の2−プロパノールと、少量のアセトンおよび水素を蒸留塔32に導入する。
【0086】
このようにして、脱水素反応器1および水素化反応器21において、脱水素反応(吸熱反応)、および水素化反応(発熱反応)が連続的に行われ、低温熱エネルギーが高温熱エネルギーに変換される。
【0087】
図1に示す実施形態のケミカルヒートポンプ50は、分離膜44を備える分離部41を有することにより、含水素化合物、脱水素化合物および水素の混合物から脱水素化合物および水素を分離することができる。このため、ケミカルヒートポンプ50の蒸留塔32および分縮器33を従来に比べて小型化することができる。したがって、従来に比べ、ケミカルヒートポンプ50の設備に必要なコストを削減することができる。
【0088】
図3に本発明のケミカルヒートポンプ50の他の実施形態を示す。本実施形態のケミカルヒートポンプ50は、分離装置である凝縮器34を、脱水素反応器1と水素化反応器21との間に備える。凝縮器34は、水素化反応器21によって生成された含水素化合物と未反応の脱水素化合物および水素とを水素化反応器21から導入し、含水素化合物を凝縮して脱水素化合物および水素を含水素化合物から分離する。そして、含水素化合物を脱水素反応器1へ送出し、脱水素化合物および水素を水素化反応器21へ送出する。
【0089】
より具体的には、本実施形態のケミカルヒートポンプ50は、凝縮器34を、分離部41と蒸留塔32との間に備える。水素化反応器21によって生成され、分離部41で分離されなかった含水素化合物と未反応の脱水素化合物および水素とを分離部41から導入し、含水素化合物を凝縮して脱水素化合物および水素を含水素化合物から分離する。そして、含水素化合物を蒸留塔32へ送出し、脱水素化合物および水素を水素化反応器21へ送出する。つまり、凝縮器34では、分離部41の分離膜44を通過しなかった2−プロパノールと、アセトン、水素の混合物を凝縮し、アセトンと水素をガスとして水素化反応器21に導入する。また、2−プロパノールを蒸留塔32に戻す。ガスの2−プロパノールは蒸留塔32で凝縮され、脱水素反応器1へ戻される。
【0090】
図3に示す実施形態のケミカルヒートポンプ50に分離膜44を有する分離部41を備えることにより、含水素化合物、脱水素化合物および水素の混合物から脱水素化合物および水素を分離することができるため、ケミカルヒートポンプ50の設備を従来に比べて簡略化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の脱水素反応の促進方法、脱水素反応器、及びケミカルヒートポンプは、価値の低い低温熱源で脱水素反応を起こし、水素化反応で価値の高い高温熱源に変換するエネルギーの利用に用いることができる。
【符号の説明】
【0092】
1:脱水素反応器、3:反応室、8:熱エネルギー供給手段、14:支持体、21:水素化反応器、31:熱交換器、32:蒸留塔、34:凝縮器、41:分離部、42:導入口、44:分離膜、46:回収口、47:排出口、50:ケミカルヒートポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給された熱エネルギーにより、含水素化合物の脱水素反応を行い、脱水素化合物及び水素を生成する脱水素反応部を有する脱水素反応器と、
前記脱水素反応器によって生成した前記脱水素化合物および前記水素を導入して前記脱水素化合物の水素化反応を行い、前記含水素化合物を生成し、発生した反応熱を熱エネルギーとして出力する水素化反応器と、
前記水素化反応器から送出された、未反応の前記水素および前記脱水素化合物を共に透過する分離膜を有する分離部と、を備えるケミカルヒートポンプ。
【請求項2】
前記脱水素反応器または前記水素化反応器から排出された前記含水素化合物、前記脱水素化合物および前記水素を導入し、前記脱水素化合物および前記水素を前記含水素化合物から分離する分離装置を備える請求項1に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項3】
前記脱水素反応器と前記水素化反応器との間に備えられ、
前記脱水素反応器から排出される気液混合物を前記脱水素反応器から導入し、前記脱水素化合物および前記水素を前記含水素化合物から蒸留分離し、
また、前記水素化反応器によって生成された前記含水素化合物と未反応の前記脱水素化合物および前記水素のうち、前記分離膜を透過しなかったものを導入し、前記脱水素化合物および前記水素を前記含水素化合物から蒸留分離し、
前記蒸留分離された前記含水素化合物を前記脱水素反応器へ送出し、前記蒸留分離された前記脱水素化合物および前記水素を前記水素化反応器へ送出する蒸留塔を前記分離装置として備える請求項2に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項4】
前記分離部と前記蒸留塔との間に備えられ、
前記水素化反応器によって生成された前記含水素化合物と未反応の前記脱水素化合物および前記水素のうち、前記分離膜を透過しなかったものを前記分離部から導入し、前記含水素化合物を凝縮して前記脱水素化合物および前記水素を前記含水素化合物から分離し、
前記含水素化合物を前記蒸留塔へ送出し、前記脱水素化合物および前記水素を前記水素化反応器へ送出する凝縮器を前記分離装置として備える請求項3に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項5】
前記分離部の前記分離膜は、無機材料から構成される浸透気化膜またはガス分離膜である請求項1〜4のいずれか1項に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項6】
前記分離部の前記分離膜は、炭素膜、ゼオライト膜、及びシリカ膜からなる群から選ばれるいずれかである請求項1〜5のいずれか1項に記載のケミカルヒートポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−83060(P2012−83060A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231218(P2010−231218)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】