説明

ケーキ類

【課題】 ケーキ類の体積、食感、冷凍・冷蔵保存時経時的劣化等を改善するために、これまでにも物理的方法、乳化剤の添加、澱粉の添加等、各種の方法が試みられているが、依然として充分な結果は得られていない。
【解決方法】 米澱粉に代表される小粒子澱粉を原料とする、膨潤度が0.3以上1.5ml未満、好ましくは0.8以上1.4ml未満である膨潤抑制処理、エーテル化またはエステル化膨潤抑制処理を施した加工澱粉を使用小麦粉の10〜70質量%、好ましくは40〜60質量%置換させることで、内相のきめに優れ、しっとりとしていて口溶けが良く、ソフトな食感を有し、冷凍・冷蔵保存時の経時的劣化が改善されたケーキ類を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小粒子の澱粉を原料とした膨潤抑制澱粉を用いて製造したケーキ類に関するものである。より詳しくは、ケーキ類の製造に於いて、膨潤抑制澱粉を小麦粉の10〜70質量%、好ましくは40〜60質量%置き換えて使用することにより、体積が大きく、しっとりとしていて口溶けが良く、ソフト感のある好適な食感を有し、冷凍・冷蔵保存時の経時劣化が改善されたケーキ類を得ることに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーキ類には、小麦粉(主として薄力粉)、卵、砂糖、油脂などを主原料としたスポンジケーキ類、さらに油脂を添加したバターケーキ類などがある。
【0003】
これらのケーキ類は蛋白質の少ない薄力粉を用いて、卵、砂糖を多量に使用し、卵の気泡性や安定性を利用してスポンジ状に焼成したものである。一般にケーキ類は体積が大きく、内相のきめや食感に優れ、冷凍・冷蔵保存時に経時的な食感の変化が少ない製品が望まれている。更に、近年では、しっとりとして口溶けが良く、ソフト感を有するものが好まれる傾向にある。
【0004】
しかしながら、ソフトで口溶けを良くするために卵、油脂の含量を多くすると弾力がなくなり、反対に弾力を出すために水分を減じると、ぱさついて口溶けが悪くなる等の問題が生じる。また、ケーキ生地の比重を下げ、比容積の大きいケーキを作ってもソフト感は出るが、しっとり感のないぱさついた食感となる。さらに、これらの卵や油脂の多いケーキや比容積の大きいケーキは総じて沈みや生焼けという現象が起こりやすい。
【0005】
上記問題点を改善する方法として、焼成後の沈みの防止に、焼成直後のケーキにショックを与える物理的方法、乳化剤の添加、澱粉の添加等、各種の方法が試みられている。
【0006】
乳化剤や乳化油脂の添加は、食感を改善し、ある程度の経時変化の防止効果が得られるので広く利用されている。しかし、体積を大きくすることが困難な上に食感を重くさせ、充分な効果を発揮する程度に添加すると、乳化剤の味および臭いが残り、風味を低下させる欠点がある。
【0007】
澱粉を添加する方法としては、(A)未加工の小麦澱粉、コーンスターチで置換し、焼成後の体積を改善する方法や、(B)α化澱粉を配合する方法(特開平1−218538号、特開平8−224057号、特開平11−155482号)が提案されている。また、(C)特定の膨潤抑制澱粉で置換する方法では、特にタピオカを原料とした架橋澱粉の効果が最も優れており、好ましいとされている。(特開平7−75479号)。さらに、しっとり感を出すために、特定置換度のエーテル化およびエステル化膨潤抑制澱粉等を用いた方法も提案されている(特開平8−242752号、特開平10−276661号)。
【0008】
しかしながら、(A)の方法では、焼成後の沈みが大きく、しっとりした食感は得られず、経時変化防止効果も乏しいという問題、(B)の方法では、α化澱粉は甘味料として液糖を用いることにより増加した水分の吸収のための使用されており、澱粉による直接改善ではなかったり、常温で糊化するα化澱粉を直接あるいは水中油滴乳化物としてケーキ生地に使用するため、均一に分散されない現象を生じたり、起泡性を低下させる等の問題が生じる。(C)の方法においても、体積や経時的劣化の点で改善は見られるものの、焼成後および冷蔵・冷凍後の食感にしっとり感が不足する傾向を残している。また、エーテル化およびエステル化膨潤抑制澱粉を用いた場合も、若干のねちゃつきが感じられ、充分な結果は得られていない。
【特許文献1】特開平1−218538号公報
【特許文献2】特開平8−224057号公報
【特許文献3】特開平11−155482号公報
【特許文献4】特開平7−75479号公報
【特許文献5】特開平8−242752号公報
【特許文献6】特開平10−276661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、内相のきめに優れ、しっとりとしていて口溶けが良く、ソフトな食感を有し、冷凍・冷蔵保存時の経時的劣化が改善されたケーキ類を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、かかる課題を解決するため、鋭意研究の結果、ケーキ類の材料として、米澱粉に代表される小粒子澱粉を原料とする、特定範囲の膨潤抑制澱粉を用いることで、総合的にこの課題を著しく改善できることを発見し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0011】
以上説明してきたように、本発明によれば、原料として、米澱粉に代表される小粒子澱粉を特定範囲に膨潤抑制した加工澱粉を用いることにより、内相のきめに優れ、しっとりとしていて口溶けが良く、ソフトな食感を有し、冷凍・冷蔵保存時の経時的劣化が改善されたケーキ類を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に於けるケーキ類とは、小麦粉、砂糖、卵を主原料とし、更に場合によっては油脂類をこれに含めた主原料に、種々の副原材料および適量の水を加えて撹拌混合した生地を、焼く又は蒸すという加熱処理を施して製造されるものの総称であって、通常その水分含量が15質量%以上の菓子類である。
【0013】
具体的には、デコレーションケーキ、ショートケーキ、ロールケーキなどのスポンジケーキ類、パウンドケーキ、バウムクーヘン、フルーツケーキ、マドレーヌなどのバターケーキ類、その他、ワッフル、ホットケーキ、ブッセなどが挙げられる。また、どら焼き、今川焼き、たい焼き、カステラなど、さらに蒸しケーキ、蒸しカステラ、饅頭(特にその皮)などが例示できる。
【0014】
本発明に使用する小粒子の加工澱粉とは、未加熱時の澱粉平均粒径が10μm以下、好ましくは5μm以下である加工澱粉である。具体的には、糯米澱粉、粳米澱粉などの米澱粉、アマランサス澱粉、里芋澱粉、小粒子小麦澱粉などの加工澱粉が挙げられ、好ましくは粳米澱粉、里芋澱粉、小粒子小麦澱粉が挙げられる。加工方法としては、膨潤抑制処理が挙げられる。
【0015】
上記の加工小粒子澱粉は、米澱粉、里芋澱粉、小粒子小麦澱粉などを原料として、澱粉を加熱糊化した際に澱粉粒子の膨潤が抑制されるように何らかの方法で処理した加工澱粉である。膨潤抑制処理の種類としては、特に限定されないが、架橋処理、老化処理、湿熱処理、乳化剤処理などの公知の方法が挙げられる。
【0016】
架橋澱粉はトリメタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、オキシ塩化リン、エピクロロヒドリンなどの常用の架橋剤を用いて、澱粉を架橋することによって得られる。膨潤度は架橋剤の添加量により調整できる。
【0017】
老化澱粉は澱粉を糊化した後、冷蔵或いは冷凍解凍の繰り返しなどによって澱粉を老化させ(この老化の程度により膨潤度は異なる)、次いで乾燥、粉砕して得られ、その具体例としては市販の春雨を粉砕したものが挙げられる。
【0018】
湿熱処理澱粉は、澱粉を糊化するには不十分な水分の存在下で、加熱処理した澱粉であり、例えば澱粉の水分を20〜25%程度に調整し、これを約100〜130℃で0.5〜5時間程度加熱処理して得られる。この際、糊化しない範囲で水分を多くし、加熱温度を高くして処理時間を長くすると、膨潤度はより抑制される。
【0019】
乳化剤処理澱粉は、脂肪酸モノグリセライド、蔗糖脂肪酸エステルなどの乳化剤が澱粉分子内に取り込まれるように処理した澱粉であり、例えば澱粉を30〜40%の水懸濁液とし、これに乳化剤を加えて数時間撹拌後、脱水、乾燥して得られる。
【0020】
上記の加工小粒子澱粉の膨潤抑制処理の程度は、膨潤度として検知でき、好ましくは膨潤度が0.3以上1.5ml未満、より好ましくは0.8以上1.4ml未満の条件を満たすものである。又、この条件を満たす限り、膨潤抑制処理と他のエーテル化、エステル化、酸化処理などの加工を組み合わせたものを使用することができる。
【0021】
本発明に於ける膨潤度とは、澱粉の膨潤抑制の度合いを測定する方法で、その測定法を以下に述べる。試料澱粉を無水換算150mg精秤し、試験管に移す。その中へ後述する試験用液15mlを正確に加え、よく振とう分散させ、直ちに沸騰水浴中に入れ5分間加熱後、急冷し室温程度に戻した後、再度振とう均一化して10mlメスシリンダーに試験管内溶液を10ml移し、20℃程度で18時間静置して、その沈降した量を測定した値である。試験用液の調製方法:塩化亜鉛300g、塩化アンモニウム780g、イオン交換水1875gを加温溶解後冷却し、19ボーメ(15℃)に合わす。この液10mlを取り、ブロムフェノールブルー液を2滴加え、0.1N−HClで紫から黄色に変わる点を終点として滴定を行い、塩酸度を求める(塩酸度=HClのファクター×滴定に要したml数)。塩酸度が3.9±0.1になるようにアンモニア水、塩酸を用いて調整する。調整後、再度塩酸度を確認して、最後にろ過して用いる。
【0022】
本発明に使用する小粒子澱粉以外の澱粉、例えばコーンスターチやタピオカデンプンなどからの加工澱粉では、粉っぽさやぱさつきが感じられ、口溶けが悪く、目的とするケーキ類の食感にはなり得ない。
【0023】
加工小粒子澱粉の膨潤度は好ましくは0.3以上1.5ml未満、より好ましくは0.8以上1.4ml未満が良い。膨潤度が0.8以上1.4ml未満の加工小粒子澱粉を用いた場合、体積が大きく、内相のきめに優れ、しっとりとしていて口溶けが良く、ソフトな食感を有するケーキ類が得られる。膨潤度が0.3以上0.8ml未満ではケーキ類の体積の減少が生じ、口溶けは良いにも拘らず、しっとり感が強く、やや重い食感となる。膨潤度が1.4以上1.5未満の場合は、ケーキ類に若干のぱさつきが感じられる。膨潤度が1.5ml以上では体積の減少が生じ、ざらつきが出て、口溶けも悪く、好ましい食感のケーキ類が得られない。
【0024】
本発明の菓子類の製造に於いては、通常行われている方法で良く、その中で使用される小麦粉を上記範囲内で膨潤抑制澱粉と置換するだけでよい。
【0025】
その置換量が10質量%未満では効果は認められるが顕著ではなく、上記加工小粒子澱粉を使用小麦粉の10〜70質量%、好ましくは40〜60質量%の範囲で置換して使用する時、効果が顕著で好ましい。
【0026】
これにより、容易に体積が大きくて食感に優れると共にしっとりとした食感を有し、冷凍・冷蔵保存時の経時劣化の少ない菓子類が得られる。この際、加工小粒子澱粉は予め小麦粉と混合したプレミックスとして使用することもできるし、それぞれを別々に添加することもできる。
【0027】
又、菓子類には小麦粉、卵、砂糖、場合によっては油脂類の主原料の他に、種々の副材料が用いられている。例えば、乳化油脂、乳化剤、膨張剤、香料、色素、水あめ、オリゴ糖、デキストリン、人工甘味料、リキュール、各種トッピング材などで従来と同様に用いることができる。但し、この場合、添加量が多くなると体積増大作用を抑制する傾向があるので、悪影響がない程度に添加量は制限する必要がある。
【0028】
又、バッター粘度の調節およびレーズン、ナッツなどのトッピング材の均一な分散などの目的で、α化澱粉、天然ガムなどを添加することもできる。
【0029】
以下、本発明を参考例、実施例にて更に詳しく説明する。尚、参考例、実施例における部および%は質量部および質量%を表す。
【実施例1】
【0030】
水120部に水酸化ナトリウム1.2部、塩化ナトリウム35部を溶解した溶液を表1に示す試料番号毎に用意し、米澱粉100部、架橋剤としてエピクロルヒドリンを表1の通り添加して、撹拌下30℃で24時間反応した。その後、酸でpHを5.0に中和し、脱水、洗浄、乾燥を行い、エピクロルヒドリン架橋米澱粉(試料番号1)を得た。膨潤度およびその原料のアミロース含量などを表1に示す。
【実施例2】
【0031】
水120部に水酸化ナトリウム1.2部、塩化ナトリウム35部を溶解した溶液を表1に示す試料番号毎に用意し、米澱粉100部、架橋剤としてトリメタリン酸ナトリウムを表1の通り添加して、撹拌下30℃で24時間反応した。その後、酸でpHを5.0に中和し、脱水、洗浄、乾燥を行い、トリメタリン架橋米澱粉(試料番号2〜7、9,10)を得た。同様にして、米澱粉をタピオカ澱粉に置換して反応を行い、トリメタリン酸架橋タピオカ澱粉(試料番号11)を得た。膨潤度およびその原料のアミロース含量などを表1に示す。
【0032】
【表1】

【実施例3】
【0033】
表1の各試料澱粉を用いて、下記の表2処方で、全卵、砂糖、水を秤取り、撹拌して生地比重が0.25になるまで起泡した後、篩を通した小麦粉および試料澱粉(試料番号1〜11)を添加し、気泡をつぶさないよう均一に混合した。この生地360gを直径20cmの焼型に移し、電気オーブン170℃で25分間焼成してスポンジケーキ試料を得た。又、対照として小麦粉のみを用いて同様にスポンジケーキを調製した。得られたスポンジケーキの評価を下記に示す基準により判定した。その結果を表3に示す。
【0034】
<厚み測定>
室温1日後のスポンジケーキの直径上を底面に対して垂直に切断後、その中心の厚みを測定した。スポンジケーキの体積の大きさを測定する尺度として用いたもので、この厚みが大きいほど体積は大きい。
【0035】
<内相>
◎:きめが非常に細かい
○:きめが細かい
△:きめが少し粗い
×:きめが粗い
【0036】
食感評価
<しっとり感>
◎:非常に良い
○:良い
△:少し悪い
×:悪い
<ソフト感>
◎:ふんわりとした弾力があり、非常に柔らかい。
○:ふんわりとした弾力があり、柔らかい。
△:弾力はあるがやや硬い、もしくは柔らかいがややもろい。
×:弾力があり硬い、もしくは柔らかいがもろい。
<口溶け>
◎:非常によい。
○:良い。
△:少し悪い。
×:悪い。
【0037】
<経時安定性>
スポンジケーキをラップに包み、1週間冷凍庫内(約−18℃)に保存後、室温で解凍して、食感の変化を冷凍前と比較して判定。
◎:非常に良い。
○:良い。
△:少し悪い。
×:悪い。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
試料番号2〜4(膨潤度0.8〜1.2ml)を用いて得られたスポンジケーキは、対照に比べ、体積が大きく、内相のきめに優れ、ふんわりとした弾力のあるソフトな食感を有し、しっとりとしていて口溶けが良く、冷凍・冷蔵保存時の経時変化の少なかった。上記膨潤度範囲内であれば、アミロース含量が異なる米澱粉を原料とした架橋澱粉(試料番号9、10)(膨潤度0.8ml)を用いてスポンジケーキを調製した場合も、同様に好ましいスポンジケーキが得られる。試料番号1(膨潤度0.3ml)を用いた場合は、スポンジケーキの体積の減少が生じ、口溶けは良いにも拘らず、しっとり感が強く、やや重い食感となる。一方、試料番号5(膨潤度1.4ml)はスポンジケーキに若干のぱさつきが感じられた。試料番号6〜8(膨潤度1.5、2.0、10.0ml)においては体積の減少が生じ、ざらつきが出て、口溶けも悪く、好ましい食感のスポンジケーキが得られなかった。小粒子澱粉以外の澱粉を原料とした架橋澱粉(試料番号11)(膨潤度1.0ml)で調製したスポンジケーキは、粉っぽさやぱさつきが感じられ、口溶けも悪く、目的とする食感にはなり得なかった。
【実施例4】
【0041】
試料番号3を用いて、下記の表4の処方で実施例3と同様の処方で、スポンジケーキを得た。又、得られたスポンジケーキの評価を表5に示す。
【0042】
【表4】

【0043】
【表5】

【0044】
使用小麦粉の10〜70%(処方1、3〜6)、好ましくは40〜60%(処方1、5)置換させることで、対照に比べ、体積が大きく、内相のきめに優れ、しっとりとしていて口溶けが良く、ソフトな食感を有し、冷凍・冷蔵保存時の経時的劣化が改善されたスポンジケーキが得られた。置換量が10%未満(処方2)であると、硬く、口溶けの悪い食感となり、置換量が70%を越える(処方7、8)とソフトではあるが、非常にもろい食感となり、好ましいスポンジケーキが得られなかった。
【実施例5】
【0045】
表1の試料番号3を用い、下記の基本処方(表6)により蒸しケーキを調製した。即ち、全卵、砂糖を秤取り、撹拌して起泡した後、篩を通した小麦粉、試料澱粉、ベーキングパウダーを合わせ、更にサラダ油を加えて、気泡をつぶさないように均一に混ぜ合わせた。この生地をカップケーキ型に50g流し込み、92〜100℃の蒸し器内で12分間蒸して、蒸しケーキを調製した。この蒸しケーキについて、室温1日保存後の外観および食感について評価した。更に、4日間冷蔵庫内(約4℃)および1週間冷凍庫内(約−18℃)に保存して経時変化を評価した。
【0046】
【表6】

【0047】
得られた本発明の蒸しケーキは対照例に比べて体積が大きく、内相のきめに優れ、しっとりして口溶けが良く、ソフトな食感を有していた。冷凍・冷蔵時の経時変化も小さく、好適であった。
【実施例6】
【0048】
表1の試料番号3を用い、下記の基本処方(表7)により、どら焼きの皮を調製した。即ち、卵白を撹拌して起泡させた後、全量の1/3の水に溶いたベーキングパウダー、クリーム状にした卵黄、砂糖、はちみつを均一に混ぜ合わせる。更に、篩を通した小麦粉、試料澱粉を混ぜ合わせ、30分間置いた。この生地をフライパンで焼き、表面が半乾きで気泡が浮いてきたところで反転し、表面が乾く程度に焼いた後、室温で放冷した。このどら焼きについて、室温1日保存後の外観および食感について評価した。更に、冷蔵庫内(約4℃)に1週間保存して経時変化を評価した。
【0049】
【表7】

【0050】
得られた本発明のどら焼きの皮は、対照例に比べふんわりとした弾力のあるソフトな食感を有し、しっとりとして口溶けも良好であった。冷蔵時の経時変化も小さく、好適であった。
【実施例7】
【0051】
水120部に水酸化ナトリウム1.2部、硫酸ナトリウム35部を溶解した溶液を表8に示す試料番号毎に用意し、米澱粉100部、エーテル化剤としてプロピレンオキサイド、架橋剤としてトリメタリン酸ナトリウムを表1の通り添加して、撹拌下40℃で24時間反応した。その後、酸でpHを5.0に中和し、脱水、洗浄、乾燥を行い、架橋ヒドロキシプロピル化米澱粉を得た。置換度、膨潤度およびその原料のアミロース含量などを表8に示す。
【0052】
【表8】

【実施例8】
【0053】
表8の各試料澱粉を用いて、実施例3と同様の処方で、スポンジケーキを得た。又、得られたスポンジケーキの評価を表9に示す。
【0054】
【表9】

【0055】
架橋ヒドロキシプロピル化米澱粉(試料番号12、13)を用いて得られたスポンジケーキは体積が大きく、ふんわりとした弾力のあるソフトな食感を有し、しっとりとして口溶けも良好であった。冷蔵時の経時変化も小さく、好適であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小粒子澱粉を原料とする膨潤抑制澱粉を含有することを特徴とするケーキ類。
【請求項2】
小粒子澱粉を原料とするエーテル化またはエステル化膨潤抑制澱粉を含有することを特徴とするケーキ類。
【請求項3】
前記膨潤抑制澱粉、エーテル化またはエステル化膨潤抑制澱粉が米澱粉を原料とし、膨潤度が0.3以上1.5ml未満、好ましくは0.8以上1.4ml未満である請求項1〜2記載のケーキ類。
【請求項4】
前記膨潤抑制澱粉、エーテル化またはエステル化膨潤抑制澱粉の使用小麦粉に対する置換量が10〜70質量%、好ましくは40〜60質量%である請求項1〜3記載のケーキ類。

【公開番号】特開2006−129789(P2006−129789A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322879(P2004−322879)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000227272)日澱化學株式会社 (23)
【Fターム(参考)】