説明

ケースを有する食品

ケース入り食品の製造方法として、ケースで被覆されるべき材料の外側に、アルギン酸塩と難溶性カルシウム塩から構成されたケース用ペーストを付与して共押し出し製品をつくり、次いでカルシウムイオンを含む溶液を前記共押し出し製品に接触させてアルギン酸塩をゲル化させる方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースを有する食品およびケースを有する食品の製造方法及びこのような食品に使用される組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ケース入りの有する食品は、たとえば、ケース用材料と、たとえば豚肉、牛肉、羊肉、鶏肉、魚、果物やその他の野菜などの食用塊(dough)との共押し出し成形により製造されうる。食用塊は、共押し出し成形機の同心円パイプを通って、共押し出し成形機から押し出されるときに、押し出された食用塊はケース用材料の薄い膜で覆われる。ケース用材料は、適した化学処理が施され、強いケース用材料に変化する。1つの知られた方法として、ケース用材料としてアルギン酸塩を含む材料を使用する方法がある。ケース用材料は、食用塊の周りに共押し出され、そして強いケースにするためにカルシウム槽の中でゲル化される。たとえば、特許文献1は、連続した長さのソーセージを形成するために、ソーセージ肉とアルギン酸塩を含む溶液を共押し出し成形し、それからアルギン酸塩にゲル化を引き起こす塩化カルシウムを含む溶液槽を通り抜けさせることを述べている。
【0003】
特許文献2では、2〜7wt%のアルギン酸塩とガラクトマンナンを含む組成物が、食品の周りに共押し出し成形され、そしてゲル化剤と接触させて食用ケースを形成することを記述している。
【0004】
これらの方法は強いケースを製造するが、たとえばソーセージのような食品は、冷蔵庫の温度で保存された時から時間が経過するにつれ、ケースが弱くなっていく。1つの考えられる可能性としては、ナトリウムイオンとリン酸イオンが食品塊からケースへ移行し、ケースはアルギン酸塩からカルシウムイオンの離脱を生じさせ、アルギン酸塩カルシウムがゲル化するのと反対方向へ導く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】英国特許第807863号明細書
【特許文献2】欧州特許第1311165号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述の問題点を軽減する改良された食品を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、このような食品の製造方法を提供することである。
【0008】
さらに、本発明の目的は、前記食品の製造工程で使用するために改良されたアルギン酸塩の組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの観点によると、アルギン酸塩及び難溶性カルシウム塩を含むケース用ペーストを共押し出しによりケースによって被覆されるべき材料の外側に付与して共押し出し製品をつくり、そして共押し出し製品をカルシウムイオンを含有する溶液と接触させてアルギン酸塩をゲル化させることを特徴とするケースに入れた食品の製造方法が提供される。
【0010】
このように本発明は、ケース中のカルシウムイオンの枯渇を阻止するのを助け、カルシウムイオンの源として機能し、よってアルギン酸カルシウムのゲルを維持し、時間が経過しても弱くなることが少ない難溶性カルシウム塩を備えるケースに入れた食品の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るケース用ペーストを製造するための装置の構成概略図である。
【図2】ケース用ペースト材料を容器へ供給する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
カルシウム塩が難溶性と記述されるとき、カルシウム塩は低い溶解度の製品であることを意味する。溶解性生成物とは、水における塩の飽和溶液の、イオンのモル濃度が平衡な生成物である。難溶性カルシウム塩は、摂氏25度において、溶解度積が10−2以下であり、好ましくは溶解度積が10−3以下、さらに好ましくは溶解度積が10−4以下のものを用いる。難溶性カルシウム塩は、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫化カルシウム、酒石酸カルシウム、およびそれらの混合物からなる群から選択することが好ましい。難溶性カルシウム塩は、硫酸カルシウムであることが特に好ましい。
【0013】
ここで使用される「ケース用ペースト」の用語は、本発明の方法でケースで包まれるべき材料の外部に付与(塗布)するのに適した難溶性カルシウム塩を含む任意のアルギン酸塩の組成物で構成される。
【0014】
ケース用ペーストは、必要に応じて、押し出し成形の正しい粘弾性をもたらすように増粘剤を含んで構成されてもよい。増粘剤として、デンプン、加工デンプン、セルロースガム、セルロースゲル、グアーガム、タラガム、キサンタンガム、カラギーナン、およびそれらの混合物からなる群から選択することが好ましい。
【0015】
ケース用ペーストは、さらに、乳タンパク質、動物性タンパク質、植物性タンパク質およびそれらの混合物等のタンパク質を含んでもよい。これらタンパク質は、調理前と後の両方の、ケースの外観や特性を形成するのに用いられる。
【0016】
さらに、ケース用ペーストは、さらに、単糖モノマー(たとえばデキストロース)や、オリゴマー(たとえばデキストリン)のような低分子量である物質を、ケースの外観を変性させるために用いてもよい。
【0017】
好ましくは、本発明方法は、アルギン酸塩ペーストを製造する工程と、アルギン酸塩ペーストと難溶性カルシウム塩を混合してケース用ペーストをつくる工程と、を備える。
【0018】
ここで使用される「アルギン酸塩ペースト」の用語は、アルギン酸塩と水を含む組成物をいう。
【0019】
アルギン酸塩ペーストは、通常、1つ以上のアルギン酸塩を含む材料と水と、所望により、増粘剤などの他の成分を一緒にしてつくられうる。増粘剤は、所望により水と混合する前に、アルギン酸塩を含む材料に混ぜられる。
【0020】
ケース用ペーストは、共押し出し成形により、ケースで包まれるべき材料の外部に付与される。代表的な共押し出し成形機は、ケースで包まれるべき材料のための内側のノズルと、ケース用ペーストのための外側のノズルから構成される。内側のノズルは、外側のノズルの内部に配置される。たとえばノズルは、同軸に置かれる。このような場合、たとえば、内側の円は丸形で、外側は同心円の環で形成されうる。
【0021】
本発明の方法を用いるケース入り食品の製造に適した装置としては、既に市販されたものが適用可能であり、たとえばコラーゲン系のペーストを用いて共押し出し成形のケースの形成に使用されている装置でもよい。コラーゲン系のケースを強くするために、インライン混合によって、コラーゲン系ペーストを共押し出し成形ヘッドに入れる直前に、たとえば蒸気煙の形状で、アルデヒドのような化学物質をコラーゲンペーストに混合する。このような装置は、本発明の方法によってアルギン酸塩系のケースを強くする際にも用いうる。本発明方法に用いる装置は、たとえば以下のように構成されてもよい。
難溶性カルシウム塩を含む第1貯蓄タンク
アルギン酸塩ペーストを含む第2貯蓄タンク
第1と第2の貯蓄タンクの下流側に備えたインライン混合装置
インライン混合装置の下流側に備えた外側のノズル
外側のノズルの内部に配置された内側のノズル、及びノズルを介して押し出された製品をカルシウムイオンを含む溶液と接触させる手段。
操作は次のように行われる:第1の貯蓄タンクの難溶性カルシウム塩と、第2の貯蓄タンクのアルギン酸塩ペーストとを、ケース用ペーストを形成するためにインライン混合装置で混合させ、そして、内側のノズルを介してケースで包まれるべき材料を、また外部のノズルを介してケース用ペーストを連続的に押し出し、押し出された製品はカルシウムイオンを含む溶液と接触させられ、それによってアルギン酸塩のゲル化が引き起こされる。
【0022】
第2の貯蓄タンクにあるアルギン酸塩ペーストは所望により金属イオン封鎖剤を含んでいてもよい。
【0023】
カルシウムイオンを含む溶液は、たとえば共押し出し製品を通す槽に含まれていてもよい。カルシウムイオンを含む溶液は、代わりにもしくは追加して、共押し出し製品に噴霧してもよい。溶液は、所定時間でアルギン酸塩をゲル化するのに充分な濃度に溶解したカルシウムイオンを含む。溶液は、1つ以上の溶解したカルシウム塩を含んでいてもよい。溶液に含まれるカルシウムイオンは、たとえば、塩化カルシウムなどの溶液であってもよい。
【0024】
ケース用ペーストがケースで包まれるべき材料の外部に付与される前に、実質的にアルギン酸塩のゲル化を生じないことが大切である。したがって、ケース用ペーストを形成するために難溶性カルシウム塩とアルギン酸塩ペーストを混合するのと、ケースで包まれるべき材料の外部となるケース用ペーストを付与するまでの時間は制限することが望ましい。ケース用ペーストを形成するために難溶性カルシウム塩とアルギン酸塩ペーストを混合するときから、ケース用ペーストを付与するまでの時間は、たとえば20分以上ではなく、好ましくは多くて5分、より好ましくはせいぜい2分である。ケース用ペーストを形成するために難溶性カルシウム塩とアルギン酸塩ペーストを混合するときから、ケース用ペーストを付与するまでの時間は、通常少なくとも5秒、任意であれば30秒かけてもよい。ケース用ペーストの付与からカルシウムイオンを含む溶液と製品を接触させるまでの時間は、実施可能な限り短い方が好ましいことが理解されるべきである。
【0025】
金属イオン封鎖剤もまた、ケース用ペーストを供給する前のアルギン酸塩のゲル化を妨げるのを補助する。金属イオン封鎖剤は、カルシウムと高い親和性を有するキレート化剤である。金属イオン封鎖剤は、アルギン酸塩との親和性よりも、カルシウムと高い親和性を有する。このように、金属イオン封鎖剤はカルシウムイオンで飽和状態に達するまで、金属イオン封鎖剤はアルギン酸塩カルシウムのゲル化を妨げるであろう。
【0026】
したがって、ケース用ペーストは、追加して金属イオン封鎖剤を含んで構成してもよい。金属イオン封鎖剤は、たとえば、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、カルシウムジナトリウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グルコノデルタラクトン、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択する。グルコン酸ナトリウムは金属イオン封鎖剤として最も好ましい。
【0027】
所望により、難溶性カルシウム塩はアルギン酸塩ペーストに混合するより前に、水に分散させておく。本実施形態では、アルギン酸塩ペーストは金属イオン封鎖剤を含む。
【0028】
代わりに、難溶性カルシウム塩は、アルギン酸塩ペーストに混合するより前に、水と混和しない溶液に分散させておいてもよい。本実施形態では、難溶性カルシウム塩と金属イオン封鎖剤は、水と混和しない溶液に溶解せず、したがって前もってアルギン酸塩ペーストと混合すると難溶性カルシウム塩はカルシウムイオンが飽和しないので、金属イオン封鎖剤は水と混和しない溶液に分散させる。難溶性カルシウム塩の懸濁液は安定しており、大体において、沈殿発生もないので、グアーガムのような増粘剤が適している。アルギン酸塩ペーストに混合するより前に、一度、難溶性カルシウム塩と金属イオン封鎖剤を水と混和しない溶液に分散させておくと、難溶性カルシウム塩と金属イオン封鎖剤は、水と混和しない溶液からアルギン酸塩ペーストの中へ移行する。もちろん、難溶性カルシウム塩が水と混和しない溶液に分散する際に、アルギン酸塩ペーストは、金属イオン封鎖剤を含んで構成してもよい。
【0029】
水と混和しない溶液としては、たとえば、植物油がある。
【0030】
金属イオン封鎖剤の量は、難溶性カルシウム塩の溶解度積や、アルギン酸塩ペーストに難溶性カルシウム塩を混合するときからケース用ペーストを付与するまでの時間や、用いた金属イオン封鎖剤のタイプ等の多くの要因に依存するが、それらには限られない。もし、金属イオン封鎖剤の使用が少量であれば、付与する前に飽和するかもしれない。もし、金属イオン封鎖剤の使用が過多であれば、難溶性カルシウム塩が枯渇し、アルギン酸塩のために追加したカルシウムイオンが残らないかもしれない。ケース用ペースト中の金属イオン封鎖剤の濃度は、通常は少なくとも0.01wt%であり、好ましくは0.1wt%以上である。また、ケース用ペースト中の金属イオン封鎖剤の濃度は、通常は多くても2wt%であり、好ましくは0.5wt%以下である。
【0031】
ケース用ペースト中のアルギン酸塩の濃度は、通常は少なくとも0.5wt%であり、好ましくは2wt%以上、より好ましくは3.5wt%以上である。また、ケース用ペースト中の金属イオン封鎖剤の濃度は、通常は多くても15wt%であり、好ましくは10wt%以下、より好ましくは7wt%以下である。
【0032】
ケース用ペースト中の難溶性カルシウム塩の濃度は、硫酸カルシウムとして換算して、通常は少なくとも0.1wt%であり、好ましくは0.2wt%以上である。また、ケース用ペースト中の金属イオン封鎖剤の濃度は、硫酸カルシウムに換算すると、通常は多くても10wt%であり、好ましくは4wt%以下、より好ましくは1wt%以下である。ここで使用される「硫酸カルシウムとして換算して」とは、カルシウムイオンの濃度が、全てのこれらカルシウムイオンを備えたペーストに含まれた硫酸カルシウムの重量%で表現する意味である。上述の数値は硫酸カルシウムとして換算して記載したが、いずれの難溶性カルシウム塩も本発明で用いうることは理解されるべきである。
【0033】
本発明のさらなる観点によると、水と混合して押し出しに適したアルギン酸塩ペーストを形成するのに適したアルギン酸塩の組成物が提供される。該組成物はアルギン酸塩、増粘剤および金属イオン封鎖剤から構成される。
【0034】
組成物は所望により、粉末であることが好ましい。
【0035】
組成物は、所望により、水分含有15%以下の、乾燥状態であることが好ましい。
【0036】
増粘剤は、所望により、低温可溶性の増粘剤であることが好ましい。
【0037】
増粘剤は、たとえば、ガラクトマンナンでありうる。
【0038】
増粘剤は、たとえば、デンプン、加工デンプン、セルロースガム、セルロースゲル、グアーガム、タラガム、キサンタンガム、カラギーナン、およびそれらの混合物からなる群から選択することが好ましい。
【0039】
金属イオン封鎖剤は、たとえば、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、カルシウムジナトリウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グルコノデルタラクトン、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0040】
組成物は、所望により少なくとも20wt%、好ましくは30wt%以上、より好ましくは40wt%以上のアルギン酸塩を含む。また、組成物は、所望により多くても75wt%であり、好ましくは65wt%以下、より好ましくは60wt%以下のアルギン酸塩を含む。
【0041】
組成物は、所望により乳製品からなるタンパク質や、動物性タンパク質、植物性タンパク質やその混合したものなどのタンパク質を、追加して含んでもよい。
【0042】
組成物は、所望により金属イオン封鎖剤を多くて25wt%含んでもよい。
【0043】
組成物は、所望により金属イオン封鎖剤を少なくて0.1wt%含んでもよい。
【0044】
wt%で記述されている組成物は、アルギン酸塩ペーストを形成するために、水と混合する前の、その組成物の重量パーセントに言及していると理解されるべきである。
【0045】
押し出しに適したと記述されるアルギン酸塩ペーストは、本発明の方法にしたがって連続押し出しできる粘弾性、たとえば粘度、をもつペーストを意味する。
【0046】
水と混合するのに適したアルギン酸塩ペーストを形成すると記述される組成物は、ここに定義しているアルギン酸塩ペーストを形成するために、水と混合できる組成物を意味する。組成物は、たとえば、水と植物油を一緒に混合されうる。
【0047】
このように形成されたアルギン酸塩ペーストは、たとえば、ここに述べられたケースを有する食品の製造方法に用いられる。アルギン酸塩ペーストを形成するために組成物を水と混合する工程の例を下記する。
【0048】
アルギン酸塩ペーストに含まれる乾燥物質は、所望により少なくとも6wt%であり、好ましくは7wt%以上、より好ましくは8wt%以上である。また、アルギン酸塩ペーストに含まれる乾燥物質は、所望により多くても20wt%であり、好ましくは15wt%以下、より好ましくは10wt%以下である。
【0049】
本発明の1つの観点によると、難溶性カルシウム塩とゲル化されたアルギン酸塩を含むケースに入れた食品を提供される。
【0050】
難溶性カルシウム塩は、所望により、摂氏25度において、溶解度が10−2以下であり、好ましくは溶解度が10−3以下、さらに好ましくは溶解度が10−4以下のものを用いる。
【0051】
難溶性カルシウム塩は、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫化カルシウム、酒石酸カルシウム、およびそれらの混合物からなる群から選択することが好ましい。難溶性カルシウム塩は、硫酸カルシウムであることが特に好ましい。
【0052】
本発明で製造される製品は、可食性ケースに入れた食品塊で構成される。食品塊は、たとえばソーセージ肉のような肉製品であってもよい。食品はソーセージであってもよい。肉ソーセージの食品は、たとえば豚肉を含んでもよい。食品は、野菜ソーセージであってもよい。食品は、調理済みでも調理済みでなくてもよい。当業者であれば、上記は本発明で製造可能な製品の一例であり、本発明の範囲を制限するものではないことを理解するであろう。
【0053】
ここで述べた発明の1つの観点に関するいくつかの特徴について、発明の他の観点にも適用しうる。たとえば、食品の特徴を製造方法に部分的に適用してもよい。ここに示す特徴のいくつかの組み合わせも本発明の範囲にあることが理解されるべきである。
【0054】
実施例として、本発明の実施形態について、図面を用いて記述する。
図1は、本発明の実施の形態に係るケース用ペーストを製造するための装置の構成概略図である。
図2は、ケース用ペースト材料を容器へ供給する様子を示す図である。
【0055】
図1にあるように、第1の貯蓄タンク1は、第1のポンプ2を介して直列の混合機3と接続される。第2の貯蓄タンク4もまた、第2のポンプ5を介して直列の混合機3と接続される。そして、本実施形態では、直列の混合機3の排出口は、共押し出し成形開口部6と接続される。工程として、第1の貯蓄タンク1は、分散した難溶性カルシウム塩7を含み、第2の貯蓄タンク4は、アルギン酸塩、低温可溶性の増粘剤および金属イオン封鎖剤で構成された乾燥粉末の組成物を水と混合して作られたアルギン酸塩ペースト8を含む。分散した難溶性カルシウム塩7とアルギン酸塩ペースト8は、ケース用ペーストを形成するためにそれらを一緒に混合する直列の混合機(直列の混合機3)を通って押し出され、本実施形態における共押し出し成形開口部6に届けられる。分散した難溶性カルシウム塩7は、第2のポンプ5により押し出され、アルギン酸ペースト8は、第1のポンプ2により押し出される。ケース用ペースト中の難溶性カルシウム塩の濃度は、流入比率の変化により制御される。
【0056】
図2にあるように、外側のノズル9と、外側のノズル9の内側に配置された内側のノズル10とで構成された、共押し出し成形開口部6により、ケース用ペースト21をケースで包まれるべき材料22に塗布して構成される。共押し出し成形開口部6の下流側11で、共押し出しされた製品23とカルシウムイオンを含む溶液12とが接触する。下流側11は、貯蓄タンク14、ポンプ15を介して噴霧器16と接続する放出口19とで構成され、ポンプ18を介して貯蓄タンク14の注入口20と接続する採集トレー17をさらに含めて構成される。共押し出し成形品23を成形するために、アルギン酸塩と難溶性カルシウム塩で構成されたペースト21は、外側のノズル9を通って押し出され、同時に、食品塊22は、内側のノズル10を通って押し出される。押し出し成形品23は、噴霧器16の下を通り、噴霧器16から噴き出されるカルシウムイオンを含む溶液12と接触し、それにより、アルギン酸塩はゲル化を生じ、ケース24を形成する。採集トレー17に集められた超過な溶液は、ポンプ18を介して貯蓄タンク14へ再循環される。
【0057】
(実施例)
本発明のさらなる実施形態について例として記述する。
【0058】
(実施例A)
以下に示す組成物の、肉塊を準備する。
豚肩肉24.0%、豚腹肉46.8%、水18.5%、ラスク5.0%、大豆分離物2.0%、塩2.0%、スパイス0.26%、アスコルビン酸ナトリウム0.04%、砂糖0.4%、デキストロース0.5%、リン酸塩0.5%、合計100%
肉塊は、以下の工程で準備する。
・4mmプレートを介して全ての肉を挽く。
・挽肉材料に、水とラスク以外の乾燥した材料を加えて、ボールの中で細かく切り刻む
・低速回転刃を用いて2−3分よく混ぜる。
・ラスクを加える。
・みじん切りしたボールのまま、1周か2周、低速回転刃を回し入れる。
・低速回転刃を用いて2−3分よく混ぜる。
【0059】
2水和硫酸カルシウムを2、ピロリン酸塩四ナトリウムを1、植物油を3の重量比でプロペラ攪拌して、植物油に2水和硫酸カルシウムとピロリン酸塩四ナトリウムを含む懸濁液を作った。
【0060】
ペーストは、本明細書に記述された濃度の範囲にしたがって、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、加工デンプン、デキストロースを含んで作られた。ペーストの乾燥物質は9.5%であり、固まりがなくなりなめらかになるまでボールでみじん切りされる工程が行われた。それからペーストは、空気にふれないようにステファンやかんに、最低限度90%の真空状態で30分間入れられる。
【0061】
ソーセージ(長さ100mm、直径25mm、重さ50g)は、オランダのストークタウンセンドB.V.社(Stork Townsend B.V.(NL))の商業用QX(commercial QX)共押し出し成形機を使用して製造された。共押し出し成形機は、肉ポンプは18rpm、ペーストポンプは50rpm、直列混合機はペーストに1.5%の懸濁液を混合、の条件で設定された。ソーセージに対するケースの量は、4.5%とした。一連つなぎのソーセージに、最初は、7.5wt%の塩化カルシウムを噴霧し、その後は、7.5wt%の塩化カルシウムの容器を通した。保持時間は大体1秒だった。
【0062】
(実施例B)
2水和硫酸カルシウムと水の懸濁液を、1:2の割合で作った。懸濁液を安定させるために、その0.5%濃度でグアーガムが加えた。
【0063】
肉塊は実施例Aで準備したのと同様に準備し、ペーストは、アルギン酸塩ナトリウム、グアーガム、加工デンプン、スキムミルク粉末とリン酸塩ナトリウムとを含んで、実施例Aと同じように準備した。さらに、植物油は、上述の粉末を混合する前の、みじん切りするボールに水を加えるときに加えた。植物油は、不透明になってゲル化を引き起こし、天然のケースの外観とよく似ている。
【0064】
ソーセージ(長さ100mm、直径25mm、重さ50g)は、オランダのストークタウンセンドB.V.社(Stork Townsend B.V.(NL))の商業用QX(commercial QX)共押し出し成形機を使用して製造した。共押し出し成形機は、肉ポンプは18rpm、ペーストポンプは50rpm、直列混合機はペーストに0.75−4.5%の懸濁液を混合、の条件で設定した。ソーセージに対するケースの量は、5%とした。一連つなぎのソーセージに、最初は、7.5wt%の塩化カルシウムを噴霧し、その後、7.5wt%の塩化カルシウムの容器を通した。保持時間は大体1秒だった。ソーセージは、5度に維持された大気環境下で2−3週間おかれても、ケースの充分な強さを維持することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸塩及び難溶性カルシウム塩を含むケース用ペーストを共押し出しによりケースによって被覆されるべき材料の外側に付与して共押し出し製品をつくり、そして共押し出し製品をカルシウムイオンを含有する溶液と接触させてアルギン酸塩をゲル化させることを特徴とするケースに入れた食品の製造方法。
【請求項2】
アルギン酸塩ペーストを製造して、前記アルギン酸塩ペーストと難溶性カルシウム塩を混合して前記ケース用ペーストを形成する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ケース用ペーストが、金属イオン封鎖剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記難溶性カルシウム塩が、摂氏25度において、10−2以下の溶解度積をもつことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記難溶性カルシウム塩が、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫化カルシウム、酒石酸カルシウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記難溶性カルシウム塩の濃度が、カルシウム硫酸塩として換算して、前記ケース用ペースト当たりに0.1wt%から10wt%であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記難溶性カルシウム塩と前記アルギン酸塩ペーストの混合と前記ケース用ペーストの付与との間の時間が20分以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
押し出し成形に適したアルギン酸塩ペーストを形成するために水と混合するのに適したアルギン酸塩組成物であって、アルギン酸塩、増粘剤及び金属イオン封鎖剤を含んで構成されることを特徴とするアルギン酸塩組成物。
【請求項9】
前記組成物が、乾燥粉末であることを特徴とする請求項8に記載のアルギン酸塩組成物。
【請求項10】
前記組成物が、前記金属イオン封鎖剤を0.1wt%から25wt%の範囲で含むことを特徴とする請求項8または9に記載のアルギン酸塩組成物。
【請求項11】
前記ケースが、ゲル化されたアルギン酸塩とさらに難溶性カルシウム塩とを含んで構成されており、前記食品が、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の製造方法で製造されていることを特徴とするケースにいれた食品。
【請求項12】
前記難溶性カルシウム塩が、摂氏25度において、10−2以下での溶解度積をもつことを特徴とする請求項11に記載の食品。
【請求項13】
前記難溶性カルシウム塩が、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫化カルシウム、酒石酸カルシウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の食品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−525115(P2011−525115A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514839(P2011−514839)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/047946
【国際公開番号】WO2009/155511
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(391022452)エフ エム シー コーポレーション (74)
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
【Fターム(参考)】