説明

ケース及びその製造方法

【課題】収納空間に内容物を接着部材と不接触で挿入する。
【解決手段】シート1,2として、凸部3が突出形成されたシートと凸部3が突出形成されないシート、又は凸部3が突出形成されたシート同士を重ね合わせ、これらシート1,2の周縁部1b,2bの間で凸部3の外側に形成される空所部4に、接着部材5を充填することにより、接着部材5が凸部3を乗り越えず、それよりも内側の収納空間Sに入り込むことなく硬化して、周縁部1b,2b同士が接着部材5で接着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばIDカード、名札、乗車券、厚紙などのカード類、又はメモ用紙や便箋などの書類、若しくはその他のシート状物品からなる内容物を挟み込んで保持するためのケースと、そのようなケースを生産するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のケースとして、2枚の四角い透明板材の3辺を有機溶剤で接着してケースを形成し、この透明板材同士の間に形成された収納部に、メモ用紙や便箋などの書類を挟持状態に収納するカードケースや、透明樹脂製の透明板材を重ね合わせ、この透明板材の周縁部の止着部同士を接着溶剤で止着したカードケースがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−32823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来のケースでは、平坦な透明板材の周縁部同士を有機溶剤や接着溶剤で止着しているが、有機溶剤や接着溶剤がその硬化後も粘着性を有するため、収納部に内容物を挿入した時に、ベタ付いて内容物が汚れたり、接着して破損するおそれがあり、さらに収納部に対して内容物をスムーズに出し入れできないという問題があった。
そこで、硬化後にベト付き難い完全硬化タイプの接着剤を用いることが考えられる。
しかし、この場合には、透明板材の曲げ変形に伴って接着部位が変形すると、硬化後の接着剤が割れ易くて破損の原因になるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、収納空間に内容物を接着部材と不接触で挿入することが可能なケースを提供すること、収納空間に接着部材がはみ出すことなくシートの周縁部同士を相互に貼り合わせることが可能なケースの製造方法を提供すること、などを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために本発明によるケースは、互いに対向して重ね合うように設けられるシートと、前記シートの外周のいずれか一方又は両方に沿ってそれと対向する前記シートの内面と当接するように突出形成される凸部と、前記シートの周縁部の間で前記凸部の外側に区画形成される空所部と、前記空所部に充填され硬化することで前記周縁部同士を接着する接着部材とを備え、前記シートの対向する前記内面の間で前記凸部の内側に、内容物が挿入される収納空間を形成したことを特徴とする。
【0007】
また本発明によるケースの製造方法は、前記ケースを製造するに際し、前記シートのいずれか一方を載置し、その外周に沿って形成される前記凸部の外側の前記空所部に前記接着部材を充填し、その後、前記凸部の先端面が前記シートにおいて他方の内面と当接するとともに、前記シートにおいて一方の前記周縁部との間に前記接着部材が挟まれるように前記シートの他方を重ね合わせて、前記シートの前記周縁部同士を前記接着部材で接着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
前述した特徴を有する本発明によるケースは、互いに対向するシートとして、凸部が突出形成されたシートと凸部が突出形成されないシートとを重ね合わせるか、又は凸部が突出形成されたシート同士を重ね合わせ、これらシート周縁部の間で凸部の外側に形成される空所部に、接着部材を充填することにより、接着部材が凸部を乗り越えず、それよりも内側の収納空間に入り込むことなく硬化して、周縁部同士が接着部材で接着されるので、収納空間に内容物を接着部材と不接触で挿入することができる。
その結果、平坦な透明板材の周縁部同士を有機溶剤や接着溶剤で止着する従来のものに比べ、収納空間に収納した内容物が汚れたり破損することがなく、収納空間に対して内容物をスムーズに出し入れできる。
さらに、接着部材として硬化後にベト付き易いが弾力性に優れた接着剤を用いることができるため、シートの曲げ変形に伴って接着部位が変形しても接着部材が割れず、曲げ変形に強くて使用勝手が良いとともに、長期に亘り使用できて経済的である。
【0009】
また、前述した特徴を有する本発明によるケースの製造方法は、シートのいずれか一方を載置した後に、その外周に沿って形成される凸部の外側の空所部に接着部材を充填し、その後、凸部の先端面がシートにおいて他方の内面と当接するとともに、シートにおいて一方の周縁部との間に接着部材が挟まれるようにシートの他方を重ね合わせることにより、充填した接着部材がシートの重ね合わせによって凸部を乗り越えず、凸部よりも内側の収納空間に入り込むことなく硬化して、シートの周縁部同士が接着部材で接着されるので、収納空間に接着部材がはみ出すことなくシートの周縁部同士を相互に貼り合わせることができる。
その結果、透明板材の3辺に沿って有機溶剤や接着溶剤を充填した後にもう一枚の透明板材を重ね合わせて貼り合わせる従来のケースの製造方法に比べ、接着部材の充填精度やシートの重ね合わせ圧力の精度に関係なく、矩形の収納空間を確実に作製できる。
それにより、低コストで均一なケースを大量生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るケースを示す説明図であり、(a)が外観斜視図、(b)が分解斜視図である。
【図2】要部を一部切欠した拡大縦断側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るケースの製造方法を示す説明図であり、(a)〜(d)が製造工程順に示した斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るケースを示す要部の部分拡大縦断側面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るケースを示す要部の部分拡大縦断側面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るケースを示す要部の部分拡大縦断側面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るケースを示す要部の部分拡大縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るケースAは、図1〜図7に示すように、互いに対向して重ね合うように設けられるシート1,2と、これらシート1,2の外周のいずれか一方又は両方に沿って突出形成される凸部3と、シート1,2の周縁部1b,2bの間で凸部3の外側に形成される空所部4と、空所部4に充填され硬化することでシート1,2の周縁部1b,2b同士を接着する接着部材5を備えている。
【0012】
シート1,2は、透明又は着色料が添加された半透明の変形可能な軟質合成樹脂で矩形などの所望形状に形成され、これら両者をそれらの内面1a,2aがほぼ平行に対向するように配置している。
シート1,2を構成する軟質合成樹脂の具体例としては、例えばポリエステル系樹脂やオレフィン系樹脂や塩化ビニル樹脂などが挙げられる。さらに、ポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などを用いることが好ましい。オレフィン系樹脂としては、例えばポリプロピレン(PP)などを用いることが好ましい。塩化ビニル樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)などを用いることが好ましい。
さらに、シート1,2は、単一の軟質合成樹脂のみの単層シート、又は複数の軟質合成樹脂を一体に積層した複層シートが用いられる。その具体例としては、A−PETの単層シートやPP又はPVCの単層シート、或いはPET−G/A−PET/PET−Gの三層シートなどが挙げられる。
また、シート1,2において互いに対向する周縁部1b,2bのいずれか一方又は両方には、その外周に沿って凸部3が、それと対向するシート1,2の内面1a,2aと当接するように突出形成され、凸部3の外側に空所部4を区画形成している。
【0013】
凸部3は、シート1,2の周縁部1b,2bにその外周縁から所定間隔を空けて、直線状に形成される。凸部3の厚さ寸法は、後述する収納空間Sに挿入される内容物Bの厚さ寸法と同じ又はそれよりも若干厚くなるように形成されている。
凸部3の具体例として、シート1,2の正面形状が矩形である場合には、その一辺を除く連続する三辺の周縁部1b,2bに沿って正面形状がコの字形に形成される。
凸部3の先端面3aは、接着面積を広く確保するために平坦な帯状に形成することが好ましい。
さらに、凸部3の断面形状としては、その正面から見て帯状となるように、例えば真空成形などの成形法により、シート1,2と同一厚さのまま断面コの字形など、シート1,2の外面に中空状の凹部3bが開口するように屈曲成形することが好ましい。
【0014】
空所部4は、シート1,2の周縁部1b,2b同士を接着するために接着部材5が充填される空間である。充填された接着部材5の硬化に伴ってシート1,2の周縁部1b,2b同士を接着することにより、シート1,2の対向する内面1a,2aの間で凸部3の内側には、内容物Bを挿入するための収納空間Sが形成される。
【0015】
接着部材5は、空所部4への充填時には液状であり、硬化することでシート1,2の周縁部1b,2bにそれぞれ接着して、周縁部1b,2b同士を所定間隔で貼り合わせる接着剤や接合剤や糊などからなる。
接着部材5の具体例としては、ゴム系や熱可塑性樹脂を主成分としたホットメルトや、その他の種類の接着剤などが挙げられ、硬化することで透明か又は着色料が添加された半透明になる接着剤を用いることが好ましい。さらに、硬化後に弾力性がある接着剤や高粘度なゼリー状タイプの接着剤を用いることが好ましい。
【0016】
さらに必要に応じて、図5〜図7に示すように、シート1,2の外周縁1c,2cのいずれか一方又は両方において凸部3の外側には、これら外周縁1c,2c及び凸部3に沿って外周凸部6が、それと対向するシート1,2の内面1a,2aと当接するようにほぼ平行に突出形成され、外周凸部6と凸部3との間に空所部4を区画形成することも可能である。
外周凸部6は、凸部3の断面形状と同様に、その正面から見て帯状となるように、例えば真空成形などの成形法により、シート1,2と同一厚さのまま断面コの字形など、シート1,2の外面に中空状の凹部6bが開口するように屈曲成形することが好ましい。
【0017】
このような本発明の実施形態に係るケースAによると、互いに対向するシート1,2として、図1〜図3及び図5に示されるように、凸部3が突出形成されたシートと凸部3が突出形成されないシートとを重ね合わせるか、又は図4、図6及び図7に示されるように、凸部3が突出形成されたシート同士を重ね合わせることで、これらシート1,2の周縁部1b,2bの間で凸部3の外側に空所部4が形成される。この空所部4に接着部材5を充填すると、接着部材5は凸部3の先端面3aを乗り越えず、凸部3よりも内側の収納空間Sに入り込むことなく硬化して、シート1,2の周縁部1b,2b同士が接着部材5で接着される。
それにより、収納空間Sに対して内容物Bを、硬化された接着部材5と不接触で出し入れすることができる。
【0018】
特に、シート1,2のいずれか一方又は両方においてその一部を同一厚さのまま屈曲成形して凸部3が、その外面に中空状の凹部3bを開口するように形成される場合には、凸部3がリブ構造となってシート1,2の曲げ強度が向上する。
それにより、凸部3による補強構造でシート1,2全体を薄くすることができる。
その結果、ケースA全体の軽量化と材料費の低減化が図れる。
【0019】
さらに、図5〜図7に示されるように、シート1,2の外周縁1c,2cのいずれか一方又は両方に沿ってそれと対向するシート1,2の内面1a,2aと当接するように外周凸部6を、凸部3の外側に突出形成し、外周凸部6と凸部3との間に空所部4を突出形成した場合には、空所部4に接着部材5を充填することにより、接着部材5が外周凸部6を乗り越えてシート1,2の外周縁1c,2cからはみ出ることがないとともに、外周凸部6がリブ構造となってシート1,2の曲げ強度が向上する。
それにより、ケースAの外端面からの接着部材5の露出を防止しながら、外周凸部6による補強構造でシート1,2全体を薄くすることができる。
その結果、接着部材5のはみ出しによるベト付きなどがなく外観も優れるための商品価値を向上させることができ、さらにケースA全体の軽量化と材料費の低減化も図れる。
【0020】
そして、本発明の実施形態に係るケースAを生産するための製造方法の具体例としては、図3(a)〜(c)に示すように、シート1,2のいずれか一方、つまり凸部3が突出形成された一方のシート1を所定位置に載置する配置工程と、一方のシート1の凸部3の外側に形成される空所部4に接着部材5を充填する充填工程と、一方のシート1の周縁部1aとの間に接着部材5を挟んで他方のシート2の周縁部2aを重ね合わせる重ね合わせ工程とを含んでいる。
さらに必要に応じて、図3(d)に示すように、前述した重ね合わせ工程の後工程として、重ね合わされた両シート1,2の周縁部1b,2b及び接着部材5を所定圧力で加圧する加圧工程を含むことが好ましい。
【0021】
配置工程は、図3(a)に示されるように、例えば定盤などの平坦な加工面C上に、一方のシート1を、その外周に沿って突出形成された凸部3が上向きとなるように載置して、例えば真空吸着手段(図示しない)によって移動不能に位置決めしている。
この際、搬送用ロボットなどの移送手段(図示しない)を用いて、シート1の供給源から所定位置へ向けて自動的に搬入することも可能である。
【0022】
接着部材5の充填工程は、図3(b)に示されるように、配置工程により位置決めされたシート1において凸部3よりも外側の空所部4に、接着部材5を凸部3の外側面に沿って帯状に塗布するなどして充填している。
この際、接着部材5の充填量としては、空所部4の容量とほぼ同量に相当し、後述する重ね合わせ工程で他方のシート2の周縁部2aが重ね合わされた際に、少なくとも接着部材5が凸部3の先端面3aを乗り越えて収納空間S内にはみ出すことない量に設定している。
【0023】
重ね合わせ工程は、図3(c)に示されるように、充填工程で充填された接着部材5が硬化する前に、凸部3の先端面3aが他方のシート2の内面2aと当接するとともに、一方のシート1の周縁部1aとの間に接着部材5が挟まれるように、他方のシート2の周縁部2aを重ね合わせている。
この際、搬送用ロボットなどの移送手段(図示しない)を用いて、シート2の供給源からシート1上の所定位置へ向けて自動的に搬入することも可能である。
その後、接着部材5が自然冷却などによりその充填形状のまま硬化すると、シート1,2の周縁部1b,2b同士が接着部材5を挟んで接着される。
それによって、シート1,2の対向する内面1a,2aの間で凸部3の内側にカード収納空間Sが、それに挿入するカードBの厚さ寸法と同じ又はそれよりも若干厚くなるように区画形成される。
【0024】
加圧工程では、図3(d)に示されるように、重ね合わせ工程により重ね合わされた両シート1,2の周縁部1b,2b及び接着部材5を、加工面Cに向け所定圧力で加圧すると、凸部3の先端面3aが他方のシート2の内面2bに密着し、この密着状態のまま接着部材5が冷却などで硬化すると、シート1,2の周縁部1b,2b同士が接着部材5を挟んで接着される。
【0025】
このような本発明の実施形態に係るケースAの製造方法によると、充填した接着部材5がシート1,2の重ね合わせによって凸部3を乗り越えず、凸部3よりも内側の収納空間Sに入り込むことなく硬化して、シート1,2の周縁部1b,2b同士が接着部材5で接着される。
それにより、収納空間Sに接着部材5がはみ出すことなくシート1,2の周縁部1b,2b同士を相互に貼り合わせることができる。
特に、重ね合わせ工程の後工程として、重ね合わされた両シート1,2の周縁部1b,2b及び接着部材5を所定圧力で加圧する加圧工程を含む場合には、周縁部1b,2bを平行に接着することができる。
次に、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0026】
この実施例1は、図1〜図3に示すように、ケースAが、その収納空間Sに内容物Bとして、例えばIDカードや名札などのカードを挿入し保持するカードケースか、又はメモ用紙や便箋などの書類若しくはその他のシート状物品を挿入し保持するシートケースであり、シート1,2がほぼ同じ大きさの矩形に形成され、その三辺の周縁部1b,2bの間で凸部3の外側が接着部材5により接着されて、残る一辺を内容物Bが出し入れされる開口としている。
【0027】
さらに、一方(下方)のシート1として凸部3が突出形成されたシートと、他方(上方)のシート2として特別な加工が必要ない平坦なシートとを、凸部3の先端面3aが他方のシート2の内面2bと当接するように重ね合わせることにより、これらシート1,2の周縁部1b,2bの間で且つ凸部3の外側に、接着部材5が充填される空所部4を区画形成している。
【0028】
図1〜図3に示される例では、凸部3がシート1と同一厚さのまま断面コの字形に、シート1の外面に中空状の凹部3bが開口するように屈曲成形している。
また、その他の例として図示しないが、凸部3を断面コの字形に代えて断面台形状や断面円弧状などそれ以外の形状に変更したり、外面に中空状の凹部3bが開口しない中実状に一体形成したり、別個に形成された部材を固着することで中実となるように形成することも可能である。
【0029】
さらに、図2に実線で示される例では、接着部材5をその外側端面5aがシート1,2の外周縁1d,2dとほぼ面一になるように充填して、その硬化により、シート1,2の内面1a,2a同士のみを貼り合わせている。
また、図2に二点鎖線で示される例では、接着部材5の充填量を増やして、接着部材5をその外側端面5aがシート1,2の外周縁1d,2dからはみ出るように充填して、その硬化により、シート1,2の内面1a,2a及び外周縁1d,2d同士を貼り合わせている。
【0030】
このような本発明の実施例1に係るケースAによると、特別な加工が必要ない平坦なシート2を用いるため、材料コストを低減化できるという利点がある。
さらに、図2に二点鎖線で示されるように、接着部材5の外側端面5aがシート1,2の外周縁1d,2dからはみ出るように充填されて、シート1,2の内面1a,2a及び外周縁1d,2d同士を貼り合わせる場合には、図2に実線で示されるシート1,2の内面1a,2a同士のみを貼り合わせるものに比べ、接着強度が高くなって、衝撃や曲げ変形などに対する強度が向上し、破損し難くなるという利点がある。
【0031】
そして、この実施例1に係るケースAの製造方法は、接着部材5の充填工程において、図3(b)に示されるように接着部材5を塗布し、加圧工程において、図3(d)に示されるように押圧手段Fで、両方のシート1,2を全面的に平面加圧している。
【0032】
図3(b)に示される例では、例えばディスペンサなどの液体定量吐出機Dを用い、この液体定量吐出機DをNC(数値制御)装置(図示しない)などで、凸部3の外側と対向するコの字形の軌道Eに沿って移動させることにより、接着部材5が均一な厚さで塗布されている。その際に用いられる接着部材5としては、ゴム系で例えば100〜145℃程度に加熱溶融された接着剤を塗布することが好ましい。
また、その他の例として図示しないが、NC装置を用いず、例えば手動などにより液体定量吐出機Dをコの字形の軌道Eに沿って移動させたり、例えばスクリーン印刷などの周知な印刷機を用いて、接着部材5を均一な厚さで印刷することで充填することも可能である。
【0033】
図3(d)に示される例では、例えば油圧シリンダなどの押圧手段Fにより、他方のシート2を一方のシート1へ向けて直接押圧すると同時に、自然冷却などで接着部材5を硬化させている。押圧手段Fとしては、その伸縮量が調整可能で、更に冷却機能があるものを用いることが好ましい。
また、その他の例として図示しないが、押圧手段Fと他方のシート2との間にシート1,2よりも大きな平板状の冷却ブロック(図示しない)を挟み込んで、他方のシート2の全体が均等に押圧されると同時に、接着部材5を強制的に冷却したり、押圧手段Fや冷却ブロックなどに代えて金属などからなる重り(図示しない)を他方のシート2の上に載せることにより、他方のシート2の全体を均等に押圧すると同時に、接着部材5を強制的に冷却することも可能である。
【0034】
このような本発明の実施例1に係るケースAの製造方法によると、製造工程が簡素化して、ケースAを安価に製造することができるという利点がある。
特に、押圧手段Fに冷却機能があるものを用いた場合には、加工速度を上げることができ、それによりケースAのコストを更に低減化できるという利点がある。
また、図3(a)〜(d)に示される例では、1つのケースAを製造する場合を示しているが、複数のケースAを同時に製造することも可能である。
この場合には、ケースAを量産化できるため、更なるコストの低減化が可能になるという利点がある。
【実施例2】
【0035】
この実施例2は、図4に示すように、両方のシート1,2として凸部3(3c)がそれぞれ突出形成されたシートを、凸部3(3c)の先端面3a同士が互いに当接するように重ね合わせることにより、これらシート1,2の周縁部1b,2bの間で且つ凸部3の外側に、接着部材5が充填される空所部4を区画形成した構成が、図1〜図3に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1〜図3に示した実施例1と同じものである。
【0036】
図4に示される例では、凸部3(3c)がシート1,2と同一厚さのまま断面コの字形に、シート1,2の外面に中空状の凹部3bが開口するようにそれぞれ屈曲成形している。
また、その他の例として図示しないが、凸部3(3c)を断面コの字形に代えて断面台形状や断面円弧状などそれ以外の形状に変更したり、外面に中空状の凹部3bが開口しない中実状に一体形成したり、別個に形成された部材を固着することで中実となるように形成することも可能である。
【0037】
このような本発明の実施例2に係るケースAによると、凸部3(3c)が突出形成された同形状のシート1,2を用いるため、接着作業が容易になるとともにシート1,2の在庫管理が容易になるという利点がある。
【実施例3】
【0038】
この実施例3は、図5に示すように、一方(下方)のシート1として凸部3と外周凸部6が突出形成されたシートと、他方(上方)のシート2として特別な加工が必要ない平坦なシートとを、凸部3の先端面3a及び外周凸部6の先端面6aが他方のシート2の内面2bと当接するように重ね合わせることにより、これらシート1,2の周縁部1b,2bの間で且つ凸部3と外周凸部6との間に、接着部材5が充填される空所部4を区画形成した構成が、図1〜図3に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1〜図3に示した実施例1と同じものである。
【0039】
図5に示される例では、凸部3及び外周凸部6がシート1と同一厚さのまま断面コの字形に、シート1の外面に中空状の凹部3b,6bが開口するように屈曲成形している。
また、その他の例として図示しないが、凸部3及び外周凸部6を断面コの字形に代えて断面台形状や断面円弧状などそれ以外の形状に変更したり、外面に中空状の凹部3b,6bが開口しない中実状に一体形成したり、別個に形成された部材を固着することで中実となるように形成することも可能である。
【0040】
このような本発明の実施例3に係るケースAによると、空所部4の容量と同量の接着部材5を充填することで、他方のシート2の周縁部2aが重ね合わされた際に、接着部材5が凸部3の先端面3a及び外周凸部6の先端面6aをそれぞれ乗り越えて収納空間SやケースAの外端面からはみ出すことがないため、接着部材5のはみ出しによるベト付き防止と外観の向上を両立でき、しかも特別な加工が必要ない平坦なシート2を用いるため、材料コストを低減化できるという利点がある。
【実施例4】
【0041】
この実施例4は、図6に示すように、一方(下方)のシート1として凸部3が突出形成されたシートと、他方(上方)のシート2として外周凸部6が突出形成されたシートとを、凸部3の先端面3aが他方のシート2の内面2bと当接すると同時に、外周凸部6の先端面6aが一方のシート1の内面1bと当接するように重ね合わせることにより、これらシート1,2の周縁部1b,2bの間で且つ凸部3と外周凸部6との間に、接着部材5が充填される空所部4を区画形成した構成が、図1〜図3に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1〜図3に示した実施例1と同じものである。
【0042】
図6に示される例では、凸部3及び外周凸部6がシート1,2と同一厚さのまま断面コの字形に、シート1の外面に中空状の凹部3b,6bが開口するように屈曲成形している。
また、その他の例として図示しないが、凸部3及び外周凸部6を断面コの字形に代えて断面台形状や断面円弧状などそれ以外の形状に変更したり、外面に中空状の凹部3b,6bが開口しない中実状に一体形成したり、別個に形成された部材を固着することで中実となるように形成することも可能である。
【0043】
このような本発明の実施例4に係るケースAによると、空所部4の容量と同量の接着部材5を充填することで、他方のシート2の周縁部2aが重ね合わされた際に、接着部材5が凸部3の先端面3a及び外周凸部6の先端面6aをそれぞれ乗り越えて収納空間SやケースAの外端面からはみ出すことがないため、接着部材5のはみ出しによるベト付き防止と外観の向上を両立できるという利点がある。
【実施例5】
【0044】
この実施例5は、図7に示すように、両方のシート1,2として凸部3(3c)と外周凸部6(6c)がそれぞれ突出形成されたシートを、凸部3(3c)の先端面3a及び外周凸部6(6c)の先端面6a同士がそれぞれ当接するように重ね合わせることにより、これらシート1,2の周縁部1b,2bの間で且つ凸部3(3c)と外周凸部6(6c)との間に、接着部材5が充填される空所部4を区画形成した構成が、図1〜図3に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1〜図3に示した実施例1と同じものである。
【0045】
図7に示される例では、凸部3(3c)及び外周凸部6(6c)がシート1,2と同一厚さのまま断面コの字形に、シート1,2の外面に中空状の凹部3b,6bが開口するようにそれぞれ屈曲成形している。
また、その他の例として図示しないが、凸部3(3c)及び外周凸部6(6c)を断面コの字形に代えて断面台形状や断面円弧状などそれ以外の形状に変更したり、外面に中空状の凹部3b,6bが開口しない中実状に一体形成したり、別個に形成された部材を固着することで中実となるように形成することも可能である。
【0046】
このような本発明の実施例5に係るケースAによると、空所部4の容量と同量の接着部材5を充填することで、他方のシート2の周縁部2aが重ね合わされた際に、接着部材5が凸部3(3c)の先端面3a及び外周凸部6(6c)の先端面6aをそれぞれ乗り越えて収納空間SやケースAの外端面からはみ出すことがないため、接着部材5のはみ出しによるベト付き防止と外観の向上を両立でき、しかも凸部3(3c)及び外周凸部6(6c)が突出形成された同形状のシート1,2を用いるため、接着作業が容易になるとともにシート1,2の在庫管理が容易になるという利点がある。
【0047】
なお、前示実施例では、ケースAが、内容物Bとしてカードを挿入保持するカードケースやその他のシート状物品を挿入保持するシートケースである場合を示したが、これに限定されず、シート1,2の開口側などに対し、環状の糸や紐などからなる懸吊具(図示しない)を取り付けるなどして、首から吊り下げるように使用しても良い。
また、例えば特開2003−116616号公報に記載されるようなブックカバーなどの二つ折り式のケースにすることも可能である。
これらの場合には、目的用途に応じて、シート1,2の形状や大きさを変化させることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
A ケース 1,2 シート
1a,2a 内面 1b,2b 周縁部
1c,2c 外周縁 3 凸部
3a 先端面 4 空所部
5 接着部材 6 外周凸部
B 内容物 S カード収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して重ね合うように設けられるシートと、
前記シートの外周のいずれか一方又は両方に沿ってそれと対向する前記シートの内面と当接するように突出形成される凸部と、
前記シートの周縁部の間で前記凸部の外側に区画形成される空所部と、
前記空所部に充填され硬化することで前記周縁部同士を接着する接着部材とを備え、
前記シートの対向する前記内面の間で前記凸部の内側に、内容物が挿入される収納空間を形成したことを特徴とするケース。
【請求項2】
前記凸部は、前記シートの一部を同一厚さのまま屈曲成形して形成されることを特徴とする請求項1記載のケース。
【請求項3】
前記シートの外周縁のいずれか一方又は両方に沿ってそれと対向する前記シートの前記内面と当接するように外周凸部を、前記凸部の外側に突出形成し、前記外周凸部と前記凸部との間に前記空所部を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のケース。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のケースを製造するに際し、
前記シートのいずれか一方を載置し、その外周に沿って形成される前記凸部の外側の前記空所部に前記接着部材を充填し、
その後、前記凸部の先端面が前記シートにおいて他方の内面と当接するとともに、前記シートにおいて一方の前記周縁部との間に前記接着部材が挟まれるように前記シートの他方を重ね合わせて、前記シートの前記周縁部同士を前記接着部材で接着したことを特徴とするケースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−205747(P2012−205747A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73666(P2011−73666)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(594010249)株式会社アイールインターナショナル (3)
【Fターム(参考)】