説明

ケーブル、パイプまたはチューブ等の少なくとも1つの輸送装置が挿通された、壁中の開口部を封止するためのシステムおよび方法

【課題】壁中開口部用の良好な封止システムおよび方法を提供する。
【解決手段】ケーブル、パイプ、チューブ等少なくとも1つの輸送装置が挿通された、または挿通される、壁中開口部を少なくとも一時的に耐火封止するための複数の第1および第2の耐火部品を備えるシステムである。前記第1および第2の部品は各々、少なくとも部分的に前記開口部内に配置可能であり、前記第1の部品は前記輸送装置を少なくとも部分的に覆うように形成され、前記第2の部品は、前記第1の部品相互間および/または前記第1の部品と前記開口部の内壁との間に配置され、少なくとも実質的に完全に前記開口部を封止するよう形成され、前記第1の部品は実質的に耐火性ゴムおよび/または耐火性サーモプラスチックで略形成され、前記第2の部品は略閉じたセル構造を備えるエラストマーフォームベースの耐火材料で形成され、該フォームは少なくとも1種類のクラスト形成性難燃材料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル、パイプ、またはチューブ等の少なくとも1つの輸送装置が挿通された、または挿通される、壁中開口部を少なくとも一時的に耐火封止するための複数の第1および第2の耐火部品を備えるシステムであって、前記複数の第1および前記第2の耐火部品は各々、少なくとも部分的に前記開口部内に設置可能であり、前記複数の第1の耐火部品は、前記輸送装置を少なくとも部分的に覆うように形成され、前記複数の第2の耐火部品は、前記複数の第1の耐火部品相互間および/または前記複数の第1の耐火部品と前記開口部の内壁との間に設置され、少なくとも実質的に完全に前記開口部を封止するよう形成され、前記複数の第1の耐火部品は、実質的に耐火性ゴムおよび/または耐火性サーモプラスチックで略形成されるシステムに関する。
【0002】
本発明はさらに、ケーブル、パイプまたはチューブ等の少なくとも1つの輸送装置が挿通された、壁中に延在する開口部を備える壁に関する。かかる装置の使用中には、物質および/またはエネルギが装置中を通過する。したがって、輸送装置という代わりに、「通過装置」という語を使用することもでき、また、パイプという語がケーブルまたはチューブも意味すると理解するのであれば、単に「パイプ」という語を使用することもできる。
【0003】
本発明はさらに、封止された貫通部を備える壁に関する。
【0004】
本発明はさらに、ケーブル、パイプまたはチューブ等の少なくとも1つの輸送装置が挿通された、壁中に延在する開口部を封止するための方法に関する。
【0005】
最後に、本発明は、壁内に延在する封止された開口部を通るよう、ケーブル、パイプまたはチューブ等の輸送装置を挿通するための方法に関する。
【0006】
本明細書中、「壁」とは、二つの空間の間の仕切りすべてを意味するものと理解される。したがって、本明細書においては、間仕切り、床、ベランダ、または天井も、壁という語に包含される。
【背景技術】
【0007】
かかるシステムは、壁の一方側に位置する1つの空間内で発生した火事が、当該壁の他方側に位置する空間に広がることを防止するため、壁内の開口部を封止するためにしばしば使用される。
【0008】
【特許文献1】欧州特許第0534563B1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のごときシステムは、欧州特許第0534563号に記載される。公知のシステムでは、第1および第2の耐火部品は各々、同様のゴムで形成された部品から構成される。また、第1および第2の耐火部品は同一形状に形成されることが多い。開口部中に延在する輸送装置は各々、その使用中は、耐火ゴム部で覆われる。被覆のため、耐火部はホース形状に形成されることが多い。また、開口部に残った自由空間にもゴムの耐火部が装填される。多くの場合には、上記のごとき封止で十分であるが、より良好な封止が好ましい場合もあることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、ケーブル、パイプ、またはチューブ等の少なくとも1つの輸送装置が挿通される、壁中の開口部を少なくとも一時的に耐火封止するための、代替的かつ好ましく、改良されたシステムを提供することである。複数の第2の耐火部品が、略閉じたセル構造を備えるエラストマーフォームベースの耐火材料で形成されており、該フォームが少なくとも1種類のクラスト形成性難燃材料を含むことを特徴とする本発明にかかるシステムにより当該目的が達成される。複数の第2の部品は、ゴム製の第1の部品よりも圧縮性の高いフォーム材料で形成されるため、簡単にかつ比較的迅速に適当な封止を確実に行うことができる。仮にゴム製の第1の部品のみを使用したとすれば、はるかに封止の手間がかかる。特に、輸送装置を挿通した後、比較的大量の部分を封止する必要がある開口部の場合には、手間がかかる。第2の部品である圧縮可能部品は、封止の際に若干圧縮された状態で開口部に残った空間に配置できるため、かかる労力を低減できる。第2の部品は、圧縮状態から回復する際開口部中の他の部品を押圧するため、貫通部において第1の部品に引っかからないという利点がある。
【0011】
さらに、第2の部品(以下、適宜フォーム部とも称する)の閉じたセル構造内に空気/気体が閉じ込められるため、ゴム製の第1の部品内に閉じ込められた空気に比べ、熱にさらされた際の膨張がより漸進的になるという利点がある。貫通部での膨張が不均衡であるため、貫通部に過度の高圧力がかかることが防がれる。過度の高圧力がかかることは望ましくない。過度の高圧力がかかることが望ましくない理由は、貫通部の外側に塗布される可能性のあるセメント層が剥離しかねないからである。セメント層については後述する。
【0012】
さらに、第2の部品には、特に、ゴム製の第1の部品に比べはるかに良好な絶縁性を持つという利点がある。また、これによって、閉じ込められた空気が許容不能な程度にまで膨張することが防止される。
【0013】
さらに、上記フォーム構造は、火にさらされた場合も長期間維持される。フォーム部である第2の部品はゴム製の第1部品に比べ良好な絶縁作用を有すること、フォーム部はゴム製の第1部品に比べ軽量であることから、貫通部を軽量に設計することができ、特に、貫通方向は比較的短い寸法で十分である。かかる利点は、造船および海上で特に重要である。
【0014】
上述のとおり、また以下にさらに詳細に述べるとおり、外側に封止用セメント層を塗布することができる。第2のフォーム部は、セメントに対して良好な接着性を持つ表面を有する。特に、ゴム製の第1部品がホース状形状を持つ場合、ホース形状のゴム製第1部品によってではなく、フォーム部によって、開口部に残った部分を封止することができるという利点がある。また、当該システムにゴム製の第1の部品しか含まれない場合と比べ、封止用のセメントのため接着表面は増加するものの、使用される封止用のセメントは少なくなる。当該システムにゴム製の第1の部品しか含まれない場合、封止用セメントが中空のホース形状の第1の部品の中、および第1の部品相互間に入りこんでしまうことがあるためである。すなわち、本発明にかかるシステムでは、封止用セメントが節約される。
【0015】
また、エラストマーフォームは、火から遠ざかる方向に膨張する。その結果、必要な作用のための材料がより長く残り使用可能である。この効果については後述する。
【0016】
実際には、フォームは、閉じたセルの形成に適した、いかなるポリマー材料からでも形成できる。ここでは、ハロゲンを含まない耐火材料でフォームを形成することが好ましい。より具体的には、天然ゴム、スチレンブタヂエンゴム、ニトリルブタジエンゴム等の不飽和ポリマーからフォームを形成することができる。また、EPDMゴム等の飽和ポリマーからフォームを形成することもでき、エチレン酢酸ビニール(EVA)からフォームを形成することも好ましい。これらのポリマーからフォームを形成するためには、ポリマーを架橋せねばならないが、不飽和ポリマーは、たとえば硫黄および硫黄供与体と適切に架橋することができ、他方、飽和ポリマーは、たとえば過酸化物と適切に架橋することができる。上記ポリマー材料に化学発泡剤を添加し、膨張させることによって、特にアゾジカーボンおよびヒドラジン等の窒素系の発泡剤を添加することによって、略閉じたセル構造を持つフォーム構造を得ることができる。本明細書および添付の特許請求の範囲では、「略閉じたセル構造」は、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%のセルが閉じている、セル構造を意味する。EVAベースの場合には、閉じたセルを80%より多く含む材料を得ることができる。
【0017】
フォームには、少なくとも1種類のクラスト形成性難燃材料が含まれねばならない。そのため、従来、難燃剤としてホウ酸塩類が使用され、また、柔軟剤であるトリアルキルおよびリン酸トリアリール類等の有機リン酸塩類、特にリン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、およびリン酸ヂフェニルクレシルが使用され、また、固形難燃剤であるポリリン酸アンモニウム、たとえばアンチブレーズMC(登録商標)等が使用されており、特にポリリン酸メラミン(メラプール200)の使用が適当である。実施の形態においては、クラスト形成性難燃剤は、ポリリン酸アンモニウムまたはリン酸メラミンである。なお、リン酸メラミンを使用することが最も好ましい。これらのクラスト形成剤は、難燃性クラストを形成するよう多量に存在する必要がある。当業者は、かかる量を知っているため当然量を決定することができるが、指針としては、かかる剤の量は、フォームの重量を基準として2〜20重量%の範囲内にあることが推奨される。なお、使用されるクラスト形成剤の好ましい量は3〜10重量%であり、もっとも好ましい量は4〜8重量%である。
【0018】
また、フォームには、pH中和性黒鉛材料が含まれる。黒鉛材料は、200度を超える温度で膨張するものでよい。
【0019】
一般に、膨張性黒鉛は、黒鉛のインターカレーションによって得られ、その場合(多くの場合)、黒鉛格子の間に窒素または硫黄化合物が挿入される。たとえば、ドイツ、ハウゼンベルグのGK クロップミュールの「ブレーグラファイト」が市販されている。この材料は、たとえば、黒鉛を硫酸または硝酸で処理することで調製される。インターカレーションを経た黒鉛のpH中和によって、確実にフォームが形成され、さらに、フォーム材料自体にもいかなる酸残基の悪影響を受けさせないようにできる。他方、フォームに接触する可能性のある、腐食に弱いいかなる材料にも腐食の問題が発生しない。たとえば、pH中和は、極めて徹底的に洗浄するか、または十分な量の基材を添加することによって行われる。このような黒鉛としては、クリーンラインの製品のうち、カーボフォイルという名称のものが利用できる。
【0020】
通常、フォームの重量を基準とした場合、使用される黒鉛材料の量は5〜20重量%であるが、8〜15重量%のほうがさらに好ましく、10〜12重量%が最も好ましい。
【0021】
必須の難燃性成分または耐火性成分のほかに、他の難燃物質を含んでもよい。これらの難燃物質もハロゲンを含まないことが非常に好ましい。ポリマー材料とこれら他の難燃物質との比が1:2を超えない限り、たとえば、アルミニウム三水和物、たとえば、フーバーのHN336またはアピラル2E(登録商標)を大量に含んでよく、60重量%まで含まれてもよく、好ましくは、25〜50重量%含まれてもよい。
【0022】
好ましい組成では、フォームは、架橋されたEVAポリマー、20〜40重量%の水酸化アルミニウム、5〜20重量%のpH中和性黒鉛、2〜20重量%のポリリン酸アンモニウムまたはポリリン酸メラミン、最高10重量%の柔軟剤、分散剤、潤滑剤、着色剤、抗酸化剤、架橋剤、および他の従来からの補助剤を含む。
【0023】
さらに、フォーム中の添加物はすべて、フォームの閉じたセル構造に対して適合性のある性質および形状で元来存在するものでなければならない。すなわち、添加物は、ポリマー・マトリクスに対して攻撃的に作用してはならず、また、フォームの構造を乱すような形状、たとえば大きすぎる粒子の形状で元来存在してはならない。
【0024】
いかなる理論に限定されるものでもないが、本発明のフォームは、一方で、火のある側にクラストを形成する化学反応により、他方で、火に関連した熱展開の影響下での閉じたセル構造に閉じ込められた気体の膨張およびありうる黒鉛の膨張により、その作用を得る。膨張によって、クラスト形成物の後部が熱から絶縁される。このように、フォーム材料は、熱絶縁層としても作用する、経時的に火のある側から遠ざかる方向に移動する材料である。実質的に火のある側に膨張しないため、本発明の難燃性フォームは、そのまま残り、長期間にわたって効果を発揮する。
【0025】
フォーム中、膨張による多量の煙気体の形成はほとんどないか、まったくない。また、フォームの作用は、煙の展開によるものでもない。フォームの煙の量は少なく、通常、形成されたとしても気体は、たとえばポリウレタン等をベースとするフォームなど熱膨張性作用を持つフォームによって生じる気体に比べ、はるかに毒性が低い。
【0026】
略閉じたセル構造により、フォームは実質的にまったく水を吸収しない。したがって、フォーム上に周囲からフォームを封止するための層を設ける必要がない。
【0027】
フォームは、従来使用されているスポンジ状のポリウレタン材料に比べ、はるかに高い自己燃焼性を有するポリマー材料から形成されうる。さらに、本発明のフォームは、はるかに高い機械強度を有するため、良好に、建築材料に加工することができる。たとえば、当該材料は、切り欠きのあるプレートの形にうまく形成でき、かかる切り欠きによって、切片を割ったり裂いたりすることが可能である。かかる材料はもちろん、壁内の貫通部の充填剤としても好ましく、少なくとも処理を簡単にする。
【0028】
さらに、閉じたセル構造は、より良好な機械記憶効果を持つため、フォーム部の圧縮によって貫通部内に蓄積された圧力は、開いた孔構造を持つフォームを使用した場合と比べはるかに長く維持される。
【0029】
貫通部内に設置した後、必須ではないものの、フォームに任意に耐火性セメントの層を設けて仕上げすることができ、これによって、完全に気密液密の耐火貫通部を得ることができる。
【0030】
複数の第2の部品のうち少なくとも1つを板状または梁状形状の部材として形成することが好ましい。かかる部品の製造設計工程には、たとえば、熱圧縮または射出成型工程が含まれる。かかる部材は、単に開口部に設置することができることも多い。また、2つの部品の少なくとも1つを板状材料の部分として形成し、板状材料に設けられた弱め線に沿って板状材料から2つの部材の少なくとも一方を切り離すことができる。これは第2の部品の輸送および配達のために便利な態様であり、これによって第2の部品を開口部への配置に適したものにする。
【0031】
複数の第1の部品の少なくとも1つは、輸送装置上に当該第1の部品を配置できるようスロットが設けられたスリーブの形状に形成されることが好ましい。この場合、第1の部品を極めて容易に輸送装置の周りに配置することができる。
【0032】
さらに、複数の第1の部品の1つを、材料圧力の影響を用いて、スロットの長手方向端縁が常に互いに重なりあうような状態にすることができる。この場合、第1の部品と輸送装置の接続が良好に行われる。特に後述の実施の形態においては、第1の部品を前もって輸送装置の周りに配置することができるが、輸送装置を開口部内に位置づけた後に第1の部品を配置することもできる。
【0033】
さらに、複数の第1の部品の少なくとも2つ、3つまたは4つを、これらの第1の部品が組み合わさってスリーブを形成し、輸送装置の周りにスリーブが配置されるように形成することもできる。かかる形状には、単にスロットを備えたスリーブ状の第1部品を輸送装置の周りに配置するのではなく、たとえば、ケーブルが延出してケーブル間の空間にはスリーブ状の第1部品を配置することができないような場合に、極めて簡単に輸送装置を被覆することができるという利点がある。
【0034】
さらに、本発明のシステムは、第1および/または第2の部品の各々の表面に塗布することができる潤滑剤を備えることが好ましい。潤滑剤の塗布により、特に、開口部内にすでに配置された部品の間に最後に挿入するべき部品を配置して、封止を完了することが容易になる。これは、生じる可能性がある高い摩擦力の発生を、潤滑剤が防止するためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【0036】
図1に、壁1および開口部2の例を示す。図中、開口部2には、ケーブル3およびチューブ4を含む複数の輸送装置が挿通されている。ケーブルおよびチューブに代えてパイプを開口部に挿通することもできる。開口部は、第1の耐火部品5および第2の耐火部品6により封止される。第1および第2の耐火部品の全体または部分が、開口部内に位置づけられる。第1の耐火部品5は各々、少なくとも一つの輸送装置を少なくとも部分的に覆うように形成される。第2の部品は、第1の耐火部品相互間、および/または第1の耐火部品と開口部2の内壁との間に位置づけられて、少なくとも実質的に完全に開口部2を封止するよう形成される。ここで、「封止するよう形成」されるとは、寸法および形状が適当であることを意味する。第1の耐火部品は各々、実質的に耐火性ゴムで形成される。上記のような第1の耐火部品の例は、ニュージーランド特許第1018722号および欧州特許第0534563B1号に記載されている。このようなゴム製の部品は、難燃剤として膨張性黒鉛およびポリリン酸塩を含んでもよい。
【0037】
第2の耐火部品6は各々、略閉じたセル構造を持つエラストマーフォームベースの難燃性材料で形成される。フォーム中には、少なくとも1種類のクラスト形成性難燃材料が含まれる。また、フォーム中に、pH中和性材料が含まれることが好ましい。また、黒鉛材料は、200度を超える温度で膨張することが好ましい。クラスト形成性難燃材料は、リン酸ポリアンモニウムおよびリン酸メラミンのいずれかから選択することができる。第2の耐火部品6は板状または梁状に形成されることが好ましい。ここで、少なくとも1つの第2の耐火部品6を、板状材料の一部分として形成し、板状材料7(図3を参照)を板状材料7に設けられた弱め線8に沿って割ることで、少なくとも1つの第2の耐火部品6を切り離すことができる。少なくとも1つの第1の耐火部品は、スロット9を有するスリーブ形状(図2aを参照)に形成されて、ケーブルまたはチューブの1つの周りに位置づけられることが好ましい。また、図2bに示す実施例のように、材料圧力の影響によって、第1の耐火部品5内のスロット9の長手方向端縁10a、10bが互いに重なり合うような形状にすることができる。
【0038】
また、少なくとも2つ、3つまたは4つの第1の耐火部品を、輸送装置の周りに位置づけることができるスリーブと一体に形成することができる。図2cから図2fは、かかる第1の耐火部品の実施例を示す。第1の耐火部品が使用される時には、曲線部12が、ケーブル、パイプまたはチューブの円筒状ケーシングに当接するように第1の耐火部品が配置されることが好ましいことは明らかであろう。さらに、第1および第2の耐火部品を開口部内に配置する前に、第1および/または第2の耐火部品各々の表面に潤滑剤を塗布することができる。かかる潤滑剤によって、部品を配置することが容易になる。特に、封止がほぼ完了している段階での部品の配置が容易になる。図1は、ケーブルまたはチューブ等の少なくとも1つの輸送装置が挿通されて延在する開口部を備える壁を示しているが、貫通部(フィードスルー)、すなわち、少なくとも一時的に封止する必要がある、ケーブル、パイプ、またはチューブがまだ挿通されていない開口部のみを備える壁に対しても本発明のシステムを適用することができる。
【0039】
以下に、ケーブル、パイプまたはチューブ等少なくとも1つの輸送装置が挿通されて、壁の中に延在する開口部を封止するための、本発明のシステムの使用例を説明する。輸送装置を少なくとも部分的に覆うよう耐火性ゴムで形成された1または2以上の第1の耐火部品を、輸送装置の少なくとも一部の周りに配置する。さらに、輸送装置を少なくとも部分的に覆うよう耐火性ゴムで形成された1または2以上の第1の耐火部品を、壁の開口部内に配置する。そして、第1の耐火部品と開口部の内壁との間に第2の耐火部品を配置する。第2の耐火部品は、略閉じたセル構造を持つエラストマーフォームベースの耐火材料から形成され、少なくとも実質的に完全に開口部を封止する。上記フォームには、少なくとも1つのクラスト形成性難燃材料が含まれる。また、上記フォームはpH中和性黒鉛剤を含むことが好ましい。
【0040】
基本的には、まず第1の耐火部品で輸送装置を覆った後、輸送装置を開口部内に位置づければよい。しかし、その逆であってもよい。すなわち、まず輸送装置を開口部に挿通した後、第1の耐火部品を開口部内の輸送装置のまわりに配置してもよい。
【0041】
壁を通って伸びる開口部は、略閉じたセル構造を持つエラストマーフォームベースの難燃性材料で形成されたフォーム部で封止されるが、以下のようにして、ケーブル、パイプまたはチューブ等の輸送装置を開口部に挿通する。なお、フォームには、少なくとも1種類のクラスト形成性難燃材料が含まれる。また、フォームがpH中和性黒鉛材料を含むことが好ましい。まず始めに、開口部がフォーム部によって封止されていると仮定する。封止された部分から少なくとも1つのフォーム部を取り除く。次に、1または2以上の耐火性ゴム部品を、輸送装置の周りに少なくとも部分的に配置する。これらの耐火性ゴム部品は、輸送装置の周りを少なくとも部分的に覆うように形成される。ここで「輸送装置の周りを少なくとも部分的に覆うように形成される」とは、たとえば、ケーブル、パイプまたはチューブを含む輸送装置と耐火性ゴム部品とが良好に接続されるように形成されるという意味である。そして、輸送装置を開口部に挿通し、1または2以上の耐火性ゴム部品を輸送装置とともに開口部内に配置する。あるいは、1または2以上の耐火性ゴム部品を、別個に後から開口部内に配置する。このとき、フォームがpH中和性黒鉛材料を含むことが好ましい。
【0042】
必ずしも、輸送装置の被覆のためにのみ、第1の耐火部品を使用する必要はない。開口部に隙間が残っている場合、かかる隙間に第1の耐火部品を嵌め込むことも可能である。
【0043】
当業者であれば、数量または体積ベースでの、第1の耐火部品と第2の耐火部品との数量比率を、決定することができる。各場合に最適の比率は、開口部の形、要求される封止の質等も考慮して決定される。
【0044】
図1に示すように、本発明のシステムはまた、耐熱性および/または撥水性封止セメント11を含んでもよい。
【0045】
セメント11としては、良好な接着性を有し平均的空気湿度において24時間以内にゴム状材料を硬化させるものが選択される。また、セメント11は、火にさらされた際に膨張する性質を持つことが好ましい。耐熱性および/または撥水性セメント11を設けることによって、電気ケーブル3のための液密性気密性貫通部が確実に提供される。図1では、不要な煩雑さを避けるため、封止用セメント11の一部を取り除いた形で図示している。セメントにはしばしば、オキシム硬化セメントが含まれる。所望の粘性を得るために油を混合してもよい。充填剤としては、しばしば石灰の粉末が使用される。また、セメントは膨張性黒鉛およびポリリン酸塩を難燃剤として含むことが好ましい。
【0046】
なお、「壁」は、船内の仕切り、海上作業台船上の仕切り、または建築構造をも意味する。さらに、本明細書では、床および天井も「壁」に包含される。
【0047】
なお、第1の耐火部品各々の形は、基本的に自由に決定できる。円形断面の輸送装置ではなく、たとえば、矩形断面の輸送装置が壁内の開口部に挿通される場合には、第1の耐火部品も直角部分を備えてよい。また、かかるフォーム部は、スリーブ形状でもよいし、または、円筒状の第1の耐火部品に接続できるように、外側は矩形に内側は円形になった梁のような形状に形成してもよい。また、上記の部品は、長手方向スロットを備えた単一の部品として形成してもよいし、複数の長手方向に延びた部品から組み立ててもよい。
【0048】
第2の耐火部品についても、その形状は基本的に自由に決定できる。円形の開口部に対して使用する場合には、第2の耐火部品も曲線部を備えるように形成して、円形の開口部に接続できるようにしてもよい。また、ゴム製の第1の耐火部品は、その内側にケーブル、パイプまたはチューブ等の円筒状ケーシングが接続する一方で、その外側は矩形状となるように形成してもよく、具体的には梁状のスリーブを備えてもよい。第1の耐火部品をこのように変形した場合も、長手方向にスロットを設けることもできるし、複数の長手方向に延びた部品を組み合わせて第1の耐火部品を組み立てることもできる。
【0049】
上記のごとき変形はいずれも、本発明の範囲内に包含されるものと理解されねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態にかかるシステムを設けた開口部を備える壁の図である。
【図2】本発明にかかるシステムの第1の部品の断面図であり、(a)は第1の部品の実施例1の断面図、(b)は第1の部品の実施例2の断面図、(c)は第1の部品の異なる部分の実施例3の断面図、(d)は第1の部品の実施例4の断面図、(e)は第1の部品の実施例5の断面図、(f)は第1の部品の実施例6の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかるシステムの第2の部品を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 壁
2 開口部
3 ケーブル
4 チューブ
5 第1の耐火部品
6 第2の耐火部品
7 板状材料
8 弱め線
9 スロット
10a、10b 長手方向端縁
11 セメント
12 曲線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル、パイプ、またはチューブ等の少なくとも1つの輸送装置が挿通された、または挿通される、壁中開口部を少なくとも一時的に耐火封止するための複数の第1および第2の耐火部品を備えるシステムであって、
前記複数の第1および前記第2の耐火部品は各々、少なくとも部分的に前記開口部内に設置可能であり、前記複数の第1の耐火部品は、前記輸送装置を少なくとも部分的に覆うように形成され、前記複数の第2の耐火部品は、前記複数の第1の耐火部品相互間および/または前記複数の第1の耐火部品と前記開口部の内壁との間に設置され、少なくとも実質的に完全に前記開口部を封止するよう形成され、前記複数の第1の耐火部品は、実質的に耐火性ゴムおよび/または耐火性サーモプラスチックで略形成され、
前記システムにおいて、前記複数の第2の耐火部品は、略閉じたセル構造を備えるエラストマーフォームベースの耐火材料で形成され、該フォームは、少なくとも1種類のクラスト形成性難燃材料を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記フォームは、pH中和性黒鉛材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記黒鉛材料は、摂氏200度を超える温度で膨張することを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記クラスト形成性難燃材料は、リン酸ポリアンモニウムおよびリン酸メラミンから選択されることを特徴とする請求項1、2、または3に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数の第2の耐火部品の少なくとも1つは、板状または梁状の部材として形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項の記載のシステム。
【請求項6】
前記複数の第2の耐火部品の少なくとも1つは、板状材料の一部であって、前記複数の第2の耐火部品の少なくとも1つは、該板状材料中の弱め線に沿って該板状材料を割ることによって切り離すことができることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数の第1の耐火部品の少なくとも1つはスリーブ形状であり、前記輸送装置を軸としてその周りに当該第1の耐火部品を配置することができるようにスロットが形成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数の第1の耐火部品の少なくとも1つは、前記スロットの長手方向端縁が材料応力により常に相互に重なり合うような状態にすることができることを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数の第1の耐火部品の少なくとも2つ、3つ、または4つは、該第1の耐火部品によって、前記輸送装置の周りに設置可能なスリーブを形成することができるよう形成されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記複数の第1および/または第2の耐火部品各々の表面上に塗布することができる潤滑剤をさらに備えることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のシステムにより封止された開口部を備えることを特徴とする、ケーブル、パイプまたはチューブ等の少なくとも1つの輸送装置が挿通された、壁中に延在する開口部を備える壁。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載のシステムにより少なくとも1時的に封止された貫通部を備えることを特徴とする、封止された貫通部を備える壁。
【請求項13】
ケーブル、パイプまたはチューブ等の少なくとも1つの輸送装置が挿通された、壁中に延在する開口部を封止するための方法であって、
少なくとも部分的に前記輸送装置を覆うように耐火ゴムで形成された1または2以上の第1の部品を、少なくとも部分的に前記輸送装置の周りに配置するステップと、
少なくとも部分的に前記輸送装置を覆うように耐火ゴムで形成された1または2以上の第1の部品を、前記開口部中に配置するステップと、
少なくとも実質的に完全に前記開口部を封止するよう、略閉じたセル構造を持ち、少なくとも1種類のクラスト形成性難燃材料を含むエラストマーフォームベースの耐火材料で形成された第2の部品を、前記第1の部品相互間および/または前記第1の部品と前記開口部の内壁との間に配置するステップとを含む方法。
【請求項14】
前記開口部内に配置された前記第1および/または前記第2の部品の自由表面に仮封セメントを塗布するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
壁内に延在する開口部を通るよう、ケーブル、パイプまたはチューブ等の輸送装置を挿通するための方法であって、前記開口部は複数のフォーム部で封止され、該フォーム部は略閉じたセル構造を持つエラストマーフォームベースの耐火材料で形成され、該フォームは少なくとも1種類のクラスト形成性難燃材料を含み、前記方法は、
前記複数のフォーム部の少なくとも1つを取り除くステップと、
前記輸送装置を少なくとも部分的に覆うように形成された1または2以上の耐火ゴム部を、前記輸送装置の周りに少なくとも部分的に設置するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記フォームは、pH中和性黒鉛材料を含むことを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項17】
前記開口部に配置された前記複数のフォーム部および/またはゴム部の自由表面に仮封セメントを塗布するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項15または16に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−522416(P2007−522416A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553071(P2006−553071)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000099
【国際公開番号】WO2005/078884
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(594005599)ビール エンジニアリング ビー.ブイ. (3)
【Fターム(参考)】