説明

ケーブルスプールの自動点検のための方法及び装置

本発明は、撚り合わせ/ゴム引きプロセスを出たケーブル上に見える突起を、スプール(4)のコアに巻き付けられた多数のターンによって形成されているケーブルの層の画像のディジタル処理によって、検出して評価する方法に関する。この方法は、次のステップ、即ち、A)リニアカメラ(1)を用いてスプールの丸一回転にわたるケーブルの層の表面の生のディジタル画像を撮影するステップ、B)生画像を平らに表示して照明及びワイヤの輝度のばらつきの影響を制限するステップ、C)平らにされた画像をセグメント化して突起領域を含む暗い領域を明らかにするステップ、D)一連の形態学的処理操作を用いてセグメント化された画像を処理して突起を示している見込みのある形状及び影を示している見込みのある領域を分離して選択するステップ及びE)評価値を得られた最終の画像に割り当て、評価値をしきい値と比較するステップを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてタイヤ業界向きの補強コード又はケーブルの製造分野に関する。
【0002】
テキスタイル又は金属性状のこれらコードは、通常、互いに平行な細線又はワイヤを含み、周方向に対して角度をなすプライ又は製造中、タイヤブランク上に直接被着されるコードの束の形態でタイヤの製造の際に用いられている。コードは、個々の細線又はワイヤを組み合わせることにより得られ、これら個々の細線又はワイヤは、連続した層をなして互いに組み立てられると共に最初のコードに所望の機械的強度及び弾性を与えるよう撚り合わされる。
【0003】
本発明は、コードに追加の耐摩耗性及び耐腐食性を与えるようゴムコンパウンドがワイヤの層相互間に注入されたコード、本質的に金属コードに関する。コードは、ゴムコンパウンドがコードの構造体内に細く取り込まれるよう組み立て手段とゴム引き手段の組み合わせによって得られる。
【背景技術】
【0004】
この種の方法は、例えば、国際公開第2005/071157号パンフレットに記載されている。
【0005】
しかしながら、この方法の実施にあたり、ゴムコンパウンドの要素がコードの表面に付着したままであることが分かっている。コードの表面上に存在するこれら突起は、これらが下流側のコード製造プロセスに導入する外乱的効果に鑑みて望ましくない凝集体を構成する。さらに、これら突起は、補強コードの裏面に付着しているコンパウンドの追加の厚さの局所領域を構成し、圧延作業中にこれらコードに被着されるゴムコンパウンドの厚さの制御を困難にする。
【0006】
国際公開第2009/083213号パンフレットは、例えば、3+N型のコードにおいて問題の突起を減少させることができる改良方法を記載している。関連性の薄い技術分野においては、仏国特許第2925918号明細書は、金属合金、例えば核燃料棒を被覆するために用いられる合金中に存在する水素化物の比率を点検する方法及び装置を記載しており、この装置は、画像処理手段を有するが、その構成は取り組まれている課題を解決するには適していない。同様に、米国特許出願公開第2001/0037694号明細書は、医療用途に用いられるステントの壁厚を点検する方法を記載しており、かかる方法では、測定領域を選択するために画像処理手段も又必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/071157号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2009/083213号パンフレット
【特許文献3】仏国特許第2925918号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2001/0037694号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明の一要旨は、自動点検手段によって、製造されたコードが仕様に適合するようにする点検方法にある。
【0009】
ケーブル点検は、撚り合わせ/ゴム引きプロセスから来たコードを巻き付けるスプールで行われる。
【0010】
本発明の方法は、画像処理ステップに関し、かかる方法は、次のステップ、即ち、
A.リニアカメラを用いてスプールの丸一回転にわたるコードの層の表面の生のディジタル画像を撮影するステップ、
B.生画像を平らに表示して照明及びワイヤの輝度のばらつきの影響を制限するステップ、
C.平らにされた画像をセグメント化して突起領域を含む暗い領域を明らかにするステップ、
D.一連の形態学的処理操作を用いてセグメント化された画像を処理して突起を示している見込みのある形状及び影を示している見込みのある領域を分離して選択するステップ、及び
E.評価値を得られた最終の画像に割り当て、評価値をしきい値と比較するステップを有する。
【0011】
このように、製造品質の評価は、僅かに後で得られ、オペレータは、ゴム引き/撚り合わせプロセスを左右するパラメータを調節することができ、それにより視覚的点検を実施するオペレータの注意力にむらのあることによって生じる評価のばらつきをなくす。
【0012】
また、分類グリッドを用いると、スプールへの装填をいったん行うと、全体的な評価値をコードのスプールに割り当て、このスプールを製造プロセス中の回路のうちの1つに送ることが可能である。
【0013】
以下の説明は、図1〜図10に基づいている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】評価装置の略図である。
【図2】ワイヤ層の展開面の生の画像を示す図である。
【図3】扁平化ステップ中に得られた画像を示す図である。
【図4】扁平化ステップ中に得られた画像を示す図である。
【図5】セグメント化ステップ後に得られた画像を示す図である。
【図6】一モルフォロジカル処理ステップ中に得られた画像を示す図である。
【図7】別のモルフォロジカル処理ステップ中に得られた画像を示す図である。
【図8】別のモルフォロジカル処理ステップ中に得られた画像を示す図である。
【図9】別のモルフォロジカル処理ステップ中に得られた画像を示す図である。
【図10】別のモルフォロジカル処理ステップ中に得られた画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、画像を撮影してこれを処理する装置を示している。
【0016】
リニアカメラ1がゴム引き及び撚り合わせプロセス(図示せず)から来たスプール4のコアXX′に巻き付けられた多数のターンから成るコードの層により形成された筒体の母線GG′の画像を撮影する。
【0017】
同軸型の照明手段2が視準された光ビームを半反射板3の方に放出する。有益には、線状に配列された発光ダイオードを照明手段として用いることができる。半反射板3は、光ビームをワイヤのスプール4の方に差し向ける。
【0018】
本装置は、カメラ1により生じたディジタル画像を処理するディジタル処理手段5を更に有する。この処理手段の出力は、画像のディジタル変換、例えば以下の段落において説明する変換を実施することができるのに好適である。
【0019】
以下の説明は、ターンの層上に存在する突起の寸法及び数を検出して評価するために実施されるステップの全ての詳細に関する。
【0020】
スプールの1回転でカメラ1により生じる直線画像を加算することにより、図2に示されているように、ターンの層の展開面を表すディジタル画像が与えられる。
【0021】
図は、GG′に沿ってカメラによって記録されたグレーレベルを示し、x軸は、母線GG′を表し、y軸は、グレーレベルを表している(値0は、黒色に割り当てられている)。
【0022】
矢印は、オペレータにより製品上に視覚的に観察された望ましくない突起dの位置を正確に示している。これら突起は、一般に、ワイヤ上に投げられた影とは区別される。というのは、かかる影は、一般に、細長い形状をしているからであり、これに対し、突起は、選択的な方向に沿ってそれほど顕著に細長くはない形状をしているからである。
【0023】
画像処理方法の目的は、突起を画像上に見える他の暗いスポットから区別することにあり、これらは、ワイヤ相互間に選択的に配置された影の領域から成る。
【0024】
平坦化ステップと呼ばれる本発明の方法の第1ステップでは、画像を照明源の光レベル及び過剰に明るいスポットと無関係にする。この操作は、低域アナログフィルタの使用に類似している。
【0025】
この目的のため、画像の各画素は、周囲画素(図3参照)のグレーレベルの平均値に割り当てられ、この値は、元の画素の生画像のグレーレベルから差し引かれる。この第1の画像処理ステップの結果として得られる画像が図4に示されている。
【0026】
次のステップは、先のステップの結果として得られた平坦化された画像をセグメント化して図5に示されているように白黒画像を得ることであり、かかる白黒画像中のしきい値を超えるグレーレベルを有する画素は、白色を有し、黒色は、グレーレベルがこのしきい値を下回る画素に割り当てられる。
【0027】
しきい値は、第1のステップの結果として得られる平坦化画像のグレーレベルの分散状態に従って計算される。
【0028】
次のステップでは、モルフォロジカル(又はモルフォロジー)処理演算(morphological processing operation)と呼ばれる一連の演算(処理)を実施して影として明らかにされている全体として細長い形状を突起として明らかにされている選択的方向にそれほど伸長されていない他の形状から区別する。
【0029】
これを行うため、正方形の形状の構造化要素を用いてモルフォロジカルオープニング演算(morphological opening operation )を実施することにより第1の又は最初の画像処理操作を実施し、かかる構造化要素のサイズは、明らかにされることが望ましい最も小さな突起の画像の分解能及びサイズに関して実験的に求められる。この処理操作を実施するための数学的アルゴリズムは、例えば、ジーン・セラ(Jean Serra)著,「イメージ・アナリシス・アンド・マスマティカル・モルフォロジー(Image Analysis and Mathematical Morphology)」,英国ロンドン,アカデミック・プレス(Academic Press),1982年という文献に記載されている。この操作は、黒色領域の輪郭の凸凹をなくす作用効果を有し、この作業により、突起を示している見込みのあるよりコンパクトな領域を本質的にワイヤ相互間に存在する多少顕著な影の領域から分離することができる。この処理操作後に得られる画像が図6に示されている。
【0030】
この第1のモルフォロジカルオープニング処理操作に距離変換と呼ばれる第2の変換を追加することが可能であり、かかる距離変換後、細い又は細長い物体とサイズの小さな形状が識別される。そのようにするため、グレーレベルを輪郭から漸増する増分で黒色領域の内部に向かって変化させ、かかるグレーレベルは、かかる黒色領域の内部に更に侵入すると白色に向かって進む。
【0031】
あらゆる方向に同一に広がった広い領域(図7参照)は、これらの中心に、幅の狭い又は小さな領域よりも明るい領域を有することになる。
【0032】
この場合、大きく且つ僅かに細長い領域(図8参照)を識別して選択するために所与のしきい値を下回る最小グレーレベルを有する領域をなくすだけで十分である。この場合、これら領域は、図9に示されているようにこれらの元の形態に再構成される。
最終の処理ステップでは、残りの形状の各々に関して最大幅と最小幅の比に等しいアスペクト比を計算することにより形状判断基準を適用する。実際には、このしきい値は、2.2以上である。
【0033】
所与のしきい値よりも大きな比を有する形状は、影として明らかにされた細長い領域として識別され、これらは、除去される。
【0034】
したがって、残りの形状は、図10に示されているように突起として明らかにされる。
【0035】
再び図2に示されている元の画像を参照すると、4つの突起のうちの3つは、画像処理ソフトウェアによって識別されていることが理解できる。影の領域と直接接触関係をなす突起は、間違いにより除去されている。
【0036】
ディジタル処理の最終ステップでは、評価値を得られた画像に適用し、検出された突起の面積及び数を計算し、そしてこれらの値を前もって作成された評価表に入れる。
【0037】
評価グリッドに応じて、所望ならば、警報をトリガし、ゴム引き及び撚り合わせプロセスパラメータを調節する責任を担うオペレータに数値を与え、得られたワイヤのスプールの行き先を決定グリッドに基づいて定めることが可能であり、スプールに関し、スプールのコアに巻き付けられたワイヤの層の各々について計算された評価値を加えることにより最終の評価値を計算することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚り合わせ及びゴム引きプロセスから来たコード上に見える突起(d)を、スプール(4)のコアに巻き付けられた多数のターンによって形成されているコードの層の画像のディジタル処理によって、検出して評価する方法であって、前記方法は、
A)リニアカメラ(1)を用いて前記スプールの丸一回転にわたる前記コードの層の表面の生のディジタル画像を撮影するステップと、
B)前記生画像を平らに表示して照明及び前記ワイヤの輝度のばらつきの影響を制限するステップと、
C)前記平らにされた画像をセグメント化して突起領域を含む暗い領域を明らかにするステップと、
D)一連の形態学的処理操作を用いて前記セグメント化された画像を処理して突起を示している見込みのある形状及び影を示している見込みのある領域を分離して選択するステップと、
E)評価値を得られた最終の画像に割り当て、前記評価値をしきい値と比較するステップとを有する、方法。
【請求項2】
ステップDで実施される前記画像処理は、前記ワイヤ相互間に存在する前記影の領域の突起(d)を示す見込みのある最もコンパクトな領域を得るために正方形の形状の構造化要素を用いたモルフォロジカルオープニング演算を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ステップDで実施される前記画像処理は、細かい物体及び小さなサイズの物体を識別する距離変換操作を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
影を示す見込みのある前記領域は、長い細幅の領域として明らかにされ、該領域のアスペクト比は、所与のしきい値よりも大きい、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記アスペクト比は、2.2以上である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
撚り合わせ及びゴム引きプロセスから来たコード上に見える突起(d)を、スプール(4)のコアに巻き付けられた多数のターンによって形成されているコードの層の画像のディジタル処理によって、検出して評価する装置であって、前記装置は、
‐前記コードの層により形成された筒体の母線(GG′)のディジタル画像を撮影することができるリニアカメラ(1)を有し、
‐視準された光ビームを半反射板(3)に向かって放出する同軸形式の照明手段(2)を有し、前記半反射板は、前記光ビームを前記スプール(4)の方に差し向け、
‐前記カメラ(1)により生じた前記ディジタル画像を処理するディジタル処理手段(5)を有し、該手段は、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の前記ディジタル処理操作を実施することができるプログラムを含む、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−506854(P2013−506854A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532556(P2012−532556)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064737
【国際公開番号】WO2011/042386
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】