説明

ケーブルハーネス及びその製造方法

【課題】 ケーブル相互間、高周波領域等における優れたシールド性能を有し、しかも高生産性で製造できると共に大幅なコストの削減を図ることができるケーブルハーネス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 中心導体21と中心導体21の周囲に設けられた絶縁体層22とからなる被覆電線を少なくとも有する複数本のケーブル20により構成されるケーブル群20Aと、ケーブル群20Aの長手方向の少なくとも一端部近傍に絶縁材料で形成されて複数本のケーブル20全体を一体的に固定する固定部30とを具備し、固定部30にはケーブル群20Aの一端部に対応する複数本のケーブル20の中心導体21がそれぞれ露出されて外部端子との接続部となる接続端子32が設けられ、固定部30から突出した複数本のケーブル20と固定部30の接続端子32に対応する部分以外の部分とがシールド用の外部導体40によって連続的に被覆されたケーブルハーネス10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等の各端子の相互間を電気的に接続するのに好適に用いられるケーブルハーネス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス産業の分野においては、例えば、電子機器の小型軽量化、高機能化等が急速に進んでおり、これに伴って電子機器の各端子同士を接続する際に使用する電気ケーブルについても細線化、省スペース化等が求められている。ここで、電気ケーブルとしては、例えば、ノート型パソコンのパソコン本体と液晶ディスプレイとの接続部(屈曲部)、折り畳み型等の携帯電話機の折り曲げ部等で使用されるフレキシブルプリント回路(FPC)基板が周知である。
【0003】
ところで、最近では、回転型の携帯電話、具体的には液晶ディスプレイと携帯本体との接続部が回転自在に設けられた携帯電話等が市場に流通しているが、このような回転型の携帯電話の接続部においては、上述したFPC基板を適用することが困難な状況となってきている。その理由としては、FPC基板全体がフィルム形状であるので、接続部において物理的に収容するのが難しいことがある。また、携帯電話等の電子機器に対しては、今後、益々小型化への要望が高まることが予想され、このような電子機器の各端子間の接続部にFPC基板を用いるのには限界があるという問題がある。
【0004】
そこで、このようなフィルム状のFPC基板では対応できない接続部においては、同軸ケーブルが用いられるようになってきた。同軸ケーブルとしては、例えば、中心導体の外周に絶縁体を形成し、この絶縁体の外周に金属細線の編組、横巻き、金属箔の巻回等による外部導体を設け、この外部導体の外周に保護被覆層を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような同軸ケーブルは、端部を揃えて所定のピッチで整列した後、同軸ケーブルの並設方向に亘って保護被覆層を所定幅で部分的に除去し、露出した外部導体にグランドバーが接続される。また、各同軸ケーブルの端部は、絶縁体、外部導体及び保護被覆層を除去することで、所定の長さの中心導体が露出するように加工される。
【0006】
そして、このような同軸ケーブルの端部には、外部端子と接続するためのコネクタが装着される(例えば、特許文献2参照)。具体的には、この公報に開示された電気コネクタは、U字形の溝であるスロットが並設されたハウジングを具備しており、これら各スロットに各同軸ケーブルの端部を挿入し、各同軸ケーブルの中心導体とハウジングに設けられたコンタクト部とを接続することで、同軸ケーブル付き電気コネクタとなる。
【0007】
このような同軸ケーブル付き電気コネクタは、同軸ケーブルと電気コネクタとをそれぞれ個別に製造し、その後、両者を組み立てる際に電気的に接続する工程、具体的には、各同軸ケーブルを電気コネクタに挿入して電気的に接続する工程や、グランドバーと電気コネクタとを電気的に接続する工程等が必要であり、生産性が非常に悪いという問題がある。
【0008】
また、同軸ケーブルは、ケーブル外径の超極細化が進んでおり、同軸ケーブルの設計に応じて、専用の電気コネクタを製造しなければならないため、非常にコストがかかってしまうという問題もある。
【0009】
なお、FPC基板は、一般的に、基板上に配線が設けられた構造であるため、各配線間の電磁波の相互干渉を防止することは困難である。
【0010】
【特許文献1】特開平7−272553号公報(従来の技術、第6図)
【特許文献2】特開2005−19342号公報(第1図〜第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような事情に鑑み、ケーブル相互間、高周波領域等における優れたシールド性能を有し、しかも高生産性で製造できると共に大幅なコストの削減を図ることができるケーブルハーネス及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための本発明の第1の態様は、中心導体と該中心導体の周囲に設けられた絶縁体層とからなる被覆電線を少なくとも有する複数本のケーブルにより構成されるケーブル群と、前記ケーブル群の長手方向の少なくとも一端部近傍に絶縁材料で形成されて前記複数本のケーブル全体を一体的に固定する固定部とを具備し、前記固定部には前記ケーブル群の一端部に対応する前記複数本のケーブルの前記中心導体がそれぞれ露出されて外部端子との接続部となる接続端子が設けられ、前記固定部から突出した前記複数本のケーブルと前記固定部の前記接続端子に対応する部分以外の部分とに連続的に設けられたシールド用の外部導体を有することを特徴とするケーブルハーネスにある。
【0013】
かかる第1の態様では、ケーブル及び固定部が外部導体によって連続的に被覆されているので、例えば、ケーブル相互間、高周波領域等での優れたシールド性能を有するケーブルハーネスとなる。また、接続端子を有する固定部とケーブル群とが一体的に設けられたケーブルハーネスを低コスト且つ高生産性で製造することができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記ケーブル群の一端部は前記複数本のケーブルが所定のピッチで並設された状態で前記固定部により固定され、前記固定部はフィルム形状を有していることを特徴とするケーブルハーネスにある。
【0015】
かかる第2の態様では、固定部に形成された接続端子が所定のピッチで並設され且つ固定部がフィルム形状となり、このような接続端子を有する固定部が外部端子との電気的接続を行うためのコネクタ部となる。
【0016】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記固定部から突出した前記複数本のケーブルのそれぞれは前記外部導体によって個別に覆われていることを特徴とするケーブルハーネスにある。
【0017】
かかる第3の態様では、ケーブル相互間での優れたシールド性能を有するケーブルハーネスとなる。
【0018】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記外部導体は金属メッキ層からなることを特徴とするケーブルハーネスにある。
【0019】
かかる第4の態様では、ケーブル相互間の所望のシールド性能を確保しつつ、ケーブルの耐屈曲性を高めることができる。
【0020】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記外部導体の厚さは0.5μm〜6μmであることを特徴とするケーブルハーネスにある。
【0021】
かかる第5の態様では、ケーブル相互間の所望のシールド性能を確保しつつ、ケーブルの耐屈曲性をより高めることができる。
【0022】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、少なくとも前記外部導体上には外被覆層が設けられていることを特徴とするケーブルハーネスにある。
【0023】
かかる第6の態様では、外被覆層によって固定部とケーブルとが一体的に覆われるため、ケーブルハーネス全体の強度が向上する。
【0024】
本発明の第7の態様は、第6の態様において、前記固定部から突出した前記複数本のケーブルのそれぞれは前記外被覆層によって前記外部導体を介して個別に覆われていることを特徴とするケーブルハーネスにある。
【0025】
かかる第7の態様では、複数のケーブル(同軸ケーブル)が個々独立するため、複数のケーブルを束ねたり捻ったりして省スペース化を図ることができる。これにより、例えば、回転型の携帯電話等における接続部のようなFPC基板は物理的に収容するのが困難な部分であっても、複数のケーブルを束ねる等して確実に収容することができる。
【0026】
本発明の第8の態様は、第1〜7の何れかの態様において、前記絶縁体層はABS樹脂からなることを特徴とするケーブルハーネスにある。
【0027】
かかる第8の態様では、各ケーブルの耐屈曲性を高めることができる。
【0028】
本発明の第9の態様は、中心導体と該中心導体の周囲に設けられる絶縁体層とからなる被覆電線を少なくとも有する複数本のケーブルにより構成されるケーブル群の長手方向の少なくとも一端部近傍に絶縁材料で前記複数本のケーブル全体を一体的に被覆することで前記複数本のケーブルを固定する固定部を形成する工程と、前記固定部と前記固定部から突出した前記複数本のケーブルとをシールド用の外部導体によって連続的に被覆する工程と、前記ケーブル群の一端部に対応する前記固定部の一部及び前記複数本のケーブルの一部を前記中心導体がそれぞれ露出するように除去することで外部配線との接続部となる接続端子を形成する工程とを少なくとも有することを特徴とするケーブルハーネスの製造方法にある。
【0029】
かかる第9の態様では、ケーブルの中心導体を外部端子との接続端子とすることで、従来の電気コネクタと同軸ケーブルとの電気的な接続工程が不要となり、ケーブルハーネスを低コスト且つ高生産性で製造することができる。
【0030】
本発明の第10の態様は、第9の態様において、前記固定部を形成する工程では、前記複数本のケーブルを所定のピッチで整列させた状態で行うことを特徴とするケーブルハーネスの製造方法にある。
【0031】
かかる第10の態様では、固定部に形成された接続端子が所定のピッチで並設され且つ固定部がフィルム形状となるため、このような接続端子を有する固定部を外部端子との電気的な接続を行うためのコネクタ部とすることができる。
【0032】
本発明の第11の態様は、第9又は10の態様において、前記外部導体を形成する工程では、前記外部導体を前記固定部から突出した前記複数本のケーブルのそれぞれが個別に被覆されるように形成することを特徴とするケーブルハーネスの製造方法にある。
【0033】
かかる第11の態様では、外部導体によって固定部と個々のケーブルとが一体的に被覆されるので、ケーブル相互間、高周波領域等における優れたシールド性能を有するケーブルハーネスとなる。
【0034】
本発明の第12の態様は、第9〜11の何れかの態様において、前記外部導体を形成する工程では、前記外部導体として、無電解メッキ、又は無電解メッキと電気メッキとを組み合わせて金属メッキ層を形成することを特徴とするケーブルハーネスの製造方法にある。
【0035】
かかる第12の態様では、所望の厚さの外部導体を効率よく形成することができる。
【0036】
本発明の第13の態様は、第9〜12の何れかの態様において、前記外部導体を形成する工程の後に、少なくとも前記外部導体上に外被覆層を形成する工程を行うことを特徴とするケーブルハーネスの製造方法にある。
【0037】
かかる第13の態様では、外被覆層によって固定部とケーブルとが一体的に覆われるため、ケーブルハーネス全体の強度が向上する。
【0038】
本発明の第14の態様は、第13の態様において、前記外被覆層を形成する工程では、前記外被覆層を前記固定部から突出した前記複数本のケーブルのそれぞれが前記外部導体を介して個別に被覆されるように形成することを特徴とするケーブルハーネスの製造方法にある。
【0039】
かかる第14の態様では、複数のケーブル(同軸ケーブル)が個々独立するため、複数のケーブルを束ねたり捻ったりして省スペース化を図ることができる。これにより、例えば、回転型の携帯電話等における接続部のようなFPC基板では物理的に収容するのが困難な部分であっても、複数のケーブルを束ねる等して確実に収容することができる。
【0040】
本発明のケーブルハーネスは、複数本のケーブルと、これらのケーブル群の少なくとも一端部近傍を固定する固定部とを備えている。ここで、本発明においてケーブルとは、中心導体とこの中心導体の周囲に設けられた絶縁体層とからなる被覆電線を少なくとも有するものであり、例えば、被覆電線の周囲に外部導体(シールド)を設けたケーブルや、このような被覆電線の外部導体を外被覆層で被覆したケーブルを含むものである。
【0041】
ここで、このようなケーブルに含まれる中心導体(導線)は、所定の直径を有する単線、例えば、直径30μm〜0.1mm程度の線材を単独で用いたものでもよいし、多心線、例えば、直径10〜80μm程度の極細線を複数本集合させたものでもよい。また、中心導体の周囲に絶縁体層を施したケーブルの構造としては、単線に絶縁体層を被せた構造でも、多心線に絶縁体層を被せた構造でもよい。
【0042】
本発明では、中心導体としては、例えば、スズ含有銅合金、クロム−ジルコニウム含有銅合金又はその場繊維強化銅合金からなるものを挙げることができるが、その場繊維強化銅合金からなる中心導体が耐屈曲性の点では好ましい。また、中心導体をその場繊維強化銅合金からなる単線とする場合には、中心導体の抗張力が高められ、その結果、中心導体が断線し難いケーブルハーネスを実現することができる。
【0043】
ここで、その場繊維強化銅合金からなる導線は、繊維で強化された銅マトリックスであり、特に、繊維をその場で、すなわち、線材を形成する工程で形成した線材をいう。例えば、銅マトリックス中に、最大径2.5μm以下で平均径が1.0μm以下のその場形成繊維状銀を含む線材等をいう。
【0044】
かかるその場繊維強化銅合金からなる導線は、例えば、銀含有率1〜25重量%で残部が実質的に銅からなる合金材料を、必要に応じてスエージ加工し、次いで第1の冷間伸線加工を施し、次いで溶体化処理し、しかる後に第2の冷間伸線加工を施すことにより、銅マトリックス中で繊維状銀をその場形成して線材を得、該線材を少なくとも一本用いて導線を形成することにより得られる。なお、材料となる合金材料としては、上述したものに限定されず、例えば、銀含有率1〜25重量%で、ジルコニウムの含有率が0.01〜8重量%で残部が実質的に銅からなる合金材料も用いることができる。
【0045】
このような複合材料からなる線材は、高導電性は電流が銅マトリックス中を流れることで確保でき、且つ機械的強度は繊維強化で確保でき、高機械的強度と高導電率という相反する特性を併せもつものとなる。
【0046】
また、本発明で中心導体上に設けられる絶縁体層としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリエステル、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などによるコーティング層を挙げることができ、また、エナメルコーティングなどを挙げることができる。低誘電率で細径化に好ましく且つ耐屈曲性の点ではフッ素系樹脂、又はポリエチレン、フッ素系樹脂が好適であり、ABS樹脂が最も好適である。なお、このように絶縁体層を形成する材料としてABS樹脂を用いる場合には、ABS樹脂の単体で用いてもよいが、このABS樹脂以外に、例えば、各種の樹脂、具体的にはポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ナイロン(PA)等を加えたものを用いてもよいし、この他に、硬化剤、増粘剤等の各種添加剤を加えたものを用いてもよい。
【0047】
そして、本発明のケーブルハーネスは、上述したケーブルを複数本集めてケーブル群とし、このケーブル群の長手方向の一端部近傍に絶縁材料で形成されてこれらケーブル全体を一体的に固定する固定部を具備する。ここで、「ケーブル全体を一体的に固定」した状態とは、絶縁材料が複数本のケーブルのそれぞれの外周面に密着して、各ケーブル相互間の動きが規制(固定)された状態をいう。このような固定部は、例えば、成型加工技術によって所定形状となるように比較的容易に形成することができる。このため、ケーブルハーネスの製造工程を簡略化することができる。
【0048】
また、本発明では、複数本のケーブルを所定のピッチ、例えば、0.2mmピッチで整列し、その状態でケーブル全体が固定部により固定され、これによって、固定部は、ケーブルの並設方向に亘って延設されてフィルム形状となる。この固定部の厚さは、ケーブルの外径によっても異なるが、好ましくは、約1mm以下、より好ましくは、約0.5mm以下であるのがよい。これにより、固定部は、その厚さが非常に薄い形状となる。また、この固定部は、絶縁材料(例えば、樹脂等)により形成されているので可撓性を有する。
【0049】
さらに、本発明では、ケーブル群の少なくとも一端部を固定する固定部と、ケーブルとが、金属を含む材質からなる外部導体で被覆されている。この外部導体は、例えば、各ケーブル相互間、高周波領域等におけるシールドとしての役割がある。特に、本発明では、ケーブルハーネスを構成する固定部とケーブルとを外部導体によって連続的に被覆することで、各ケーブルが個別に外部導体で被覆され、また固定部の表面も外部導体で覆われるため、優れたシールド性能を有するケーブルハーネスを実現することができる。
【0050】
また、本発明では、このような外部導体として、金属メッキ層を形成するのが好ましい。所望のシールド性能(約20dB以上)を確保しつつ、ケーブル自体の耐屈曲性を向上したケーブルハーネスを実現することができるからである。このように外部導体として金属メッキ層を形成する場合には、金属メッキ層を形成する前に、少なくとも絶縁体層の表面に所定の表面処理を施すのが好ましい。勿論、固定部の表面にも同様の表面処理を施してもよい。
【0051】
ここで、所定の表面処理としては、表面を粗し、表面の濡れ性を向上させて、絶縁体層に対するシールドの付着力を向上させるものであれば特に限定されないが、大気圧プラズマ処理、あるいはエッチング処理等が挙げられる。例えば、絶縁体層の材料にABS樹脂を用いた場合には、無水クロム酸を用いたクロム酸エッチングによる表面処理を施すのが好ましい。これにより、ABS樹脂からなる絶縁体層の表面の濡れ性が高まり、この上に形成する金属メッキ層(シールド)との密着性が向上することになる。
【0052】
また、本発明では、絶縁体層の周囲に形成する外部導体として、金属メッキ層を形成するのが好ましく、この金属メッキ層は、無電解メッキのみで形成しても、無電解メッキと電気メッキとを組み合わせて形成してもよい。かかる金属メッキ層としては、銅、銀、ニッケル、金など、又はこれらの複合メッキや合金メッキを挙げることができる。このようにして形成される金属メッキ層の厚さは、好ましくは、0.5μm〜6μm、より好ましくは2μm〜6μmであるのがよい。これより厚いと耐屈曲性の面で問題となるからである。
【0053】
そして、本発明では、上述したように外部導体によって固定部とケーブルとを連続的に被覆しているので、この外部導体とグランド端子とを電気的に接続することにより、固定部がグランドバーとしての役割も果たすため、従来品のようなグランドバーが不要となる。但し、ケーブルハーネスにグランドバーを別途設けてもよい。
【0054】
さらに、本発明のケーブルハーネスとしては、少なくとも外部導体上、好ましくは固定部及び各ケーブルの外部導体を含む表面上に、外被覆層(シース)が設けられているのがよく、より好ましくは、外被覆層によって固定部と各ケーブルとが一体的に被覆されているのがよい。ケーブルハーネス全体の強度が向上するからである。ここで、外被覆層の材料としては、フッ素系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ABS樹脂、ポリイミド等を挙げることができる。
【0055】
また、本発明では、各ケーブルについては、外部導体によって個別に被覆され、その上から外被覆層で個別に被覆されているのが好ましい。これにより、複数のケーブルが個々独立することになり、複数のケーブルを束ねたり捻ったりして省スペース化を図ることができる。したがって、例えば、回転型の携帯電話等における接続部のようなFPC基板では物理的に収容するのが困難な部分であっても、複数のケーブルを束ねる等して確実に収容することができる。
【0056】
一方、このような本発明のケーブルハーネスは、中心導体とこの中心導体の周囲に設けられる絶縁体層とを少なくとも有する複数本のケーブルにより構成されるケーブル群の長手方向の少なくとも一端部近傍に絶縁材料で複数本のケーブル全体を一体的に被覆することで複数本のケーブルを固定する固定部を形成し、この固定部から突出した複数本のケーブルと固定部とを外部導体によって連続的に被覆した後に、ケーブル群の一端部に対応する固定部の一部及び複数本のケーブルの一部を中心導体がそれぞれ露出するように除去することで外部配線との接続部となる接続端子を形成することで製造される。
【0057】
このように、本発明では、同軸ケーブルと、コネクタ部となる固定部とを同一ライン上で連続的に製造するので、従来のように同軸ケーブルと電気コネクタとを個別に製造する場合と比べて、製造コストを大幅に低減することができる。また、従来のように同軸ケーブルと電気コネクタとを電気的に接続する工程が不要となるので、ケーブルハーネスを高生産性で製造することができる。なお、同軸ケーブルは、被覆電線の周囲に外部導体を設けたケーブル又はこのケーブルの外部導体を外被覆層で被覆したケーブルのことを言う。
【0058】
なお、本発明では、ケーブルと固定部とを外部導体で被覆した後に、接続端子を形成しているが、勿論、接続端子を形成した後に、ケーブルと固定部とを外部導体で被覆してもよい。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、ケーブル群の一端部を絶縁材料で被覆して固定し、その固定部にケーブルの中心導体を露出させることで接続端子を形成しているので、ケーブルハーネスを低コストで且つ高生産性で提供することができる。また、ケーブル及び固定部が外部導体によって連続的に被覆されているので、ケーブル相互間、高周波領域等における優れたシールド性能を有するケーブルハーネスを実現することができる。特に、複数のケーブルを個々独立させることで、複数のケーブルを束ねたり捻ったりして省スペース化を図ることができる。すなわち、例えば、回転型の携帯電話等における接続部のようなFPC基板では物理的に収容するのが困難な部分であっても、複数のケーブルを束ねる等して確実に収容することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0061】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るケーブルハーネスを示す概略図であって、(a)が平面図であり、(b)が端部の拡大図であり、(c)が端面の拡大図である。図2は、図1の要部拡大断面図であって、(a)がA−A′断面図であり、(b)がB−B′断面図であり、(c)がC−C′断面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態のケーブルハーネス10は、中心導体21とこの中心導体21の周囲に設けられる絶縁体層22とを有する複数本のケーブル(被覆電線)20を具備する。これら各ケーブル20のそれぞれは、その幅方向に約0.2mmピッチで並設されている。ここで、ケーブル20としては、本実施形態では、その場銀繊維強化銅合金(銀含有量約10%)からなる外径約0.03mmの中心導体21の外周に、押し出し成形によって、ABS樹脂からなる絶縁体層22を形成して、外径を約0.08mmとしたものである。
【0062】
また、このような各ケーブル20により構成されるケーブル群20Aの長手方向の両端部近傍には、絶縁材料で形成されて各ケーブル20全体を一体的に固定する固定部30が設けられている。この固定部30は、本実施形態では、ケーブル20の並設方向に沿って形成され、且つ厚さが約0.5mmであり、全体的にフィルム形状となっている。
【0063】
さらに、固定部30の端部、すなわち、ケーブル群20Aの両端部に対向する上端部には、ケーブル20の並設方向に沿って連続的に除去されることで、凸部31が設けられている。より詳細には、固定部30の上端部と各ケーブル20の一部とが、ケーブル20の並設方向に沿って連続的に除去されて、各ケーブル20の中心導体21がそれぞれ露出しており、このように露出した各ケーブル20の中心導体21が、図示しない外部端子との接続部である接続端子32となる。そして、接続端子32は、その幅方向に並設される。これにより、固定部30の凸部31は、外部端子に接続されるコネクタ部として機能する。なお、凸部31は、そのまま接続部としてもよいが、上下から押圧して所望の厚さとなるまでつぶして接続部としてもよい。
【0064】
このように、本実施形態では、各ケーブル20と固定部30とが一体的に設けられ、且つ固定部30に接続端子32が設けられているので、従来のような同軸ケーブルと電気コネクタとを電気的に接続する工程等の組み立て作業が不要となるだけでなく、全体構造が一体的であるので、強度を高めることができる。
【0065】
また、本実施形態では、各ケーブル20の外周面と、固定部30の凸部31の上面及び先端面を除いた表面とは、金属メッキ層からなる厚さ約2μmの外部導体40によって連続的に被覆されている。そして、各ケーブル20のそれぞれは、外部導体40によって個別に被覆されることで同軸ケーブル25となり、固定部30の表面上に形成される外部導体40を介して電気的に接続されている。この外部導体40は、図示しないグランド端子に電気的に接続されている。このため、固定部30は、グランドバーとしての役割を果たす。したがって、本実施形態のケーブルハーネス10では、固定部30とは別にグランドバーを設けなくてもよいので、部品点数を低減でき、コストの削減を図ることができる。
【0066】
一方、このような外部導体40は、電磁波シールドとしての役割もある。具体的には、各ケーブル20は、外部導体40によって個別に被覆されているので、隣接するケーブル20間での電磁波の相互干渉を高レベルで防止することができ、且つ高周波領域でも十分な電磁波シールド性能(約25dB以上)が得られる。
【0067】
ここで、このような外部導体40は、電磁波シールド効果を高めるためには厚く形成するのが好ましい。但し、外部導体40の材料によって異なるが、外部導体40が厚すぎると剛性が大きくなって耐屈曲性の面では好ましくない。このため、外部導体(金属メッキ層)40の厚さは、好ましくは0.5μm〜6μmの範囲、より好ましくは2μm〜6μmの範囲内とするのがよい。本実施形態では、無電解メッキによって形成された銀からなる厚さ2.0μmの金属メッキ層からなる外部導体40を設けた。これにより、電磁波シールド効果を確保しつつ、各同軸ケーブル25の耐屈曲性を最大限に高めることができる。
【0068】
また、本実施形態では、各同軸ケーブル25及び固定部30は、ポリウレタンからなる外被覆層(シース)50により覆われている。具体的には、外被覆層50は、各ケーブル20及び固定部30を被覆する外部導体40の表面上に形成され、且つ、固定部30と同軸ケーブル25とを連続的に覆っている。これにより、ケーブルハーネス10全体の強度を向上することができる。より詳細には、各ケーブル20は、外部導体40によって個別に被覆され、その上から外被覆層50で個別に被覆されている。これにより、複数の同軸ケーブル25が個々独立することになり、各同軸ケーブル25を束ねたり捻ったりして省スペース化を図ることができる。したがって、例えば、回転型の携帯電話等における接続部のようなFPC基板では物理的に収容するのが困難な部分であっても、複数の同軸ケーブル25を束ねる等して確実に収容することができる。
【0069】
以下、図3及び図4を参照して、上述したケーブルハーネス10の製造方法の一例を説明する。なお、図3及び図4は、本発明の実施形態1に係るケーブルハーネスの製造工程の一例を示す概略図である。
【0070】
まず、図3(a)に示すように、中心導体21と絶縁体層22とからなるケーブル20を所定のピッチ幅、例えば、本実施形態では、約0.2mmピッチ幅で複数本引き出す。ここでは、中心導体21の周囲に絶縁体層22を形成したケーブル20を予め用意して複数本引き出してもよいし、押し出し成型によって中心導体21の周囲に絶縁体層22を形成してケーブル20を製造しながら、これに連続して各ケーブル20を引き出してもよい。
【0071】
次に、図3(b)に示すように、整列されたケーブル群20Aの長手方向の両端部(ここではケーブル群20Aの一端部を図示して説明する)近傍を樹脂材料で被覆(モールディング)し、ケーブル20全体をその並設方向に沿って一体的に固定する。なお、本実施形態では、このように複数本のケーブル20を固定した固定部30は、ここでは成型加工技術により形成した。
【0072】
次いで、図3(c)に示すように、固定部30の先端面を除いた表面と、各ケーブル20のそれぞれの表面とを、例えば、金属メッキ層からなる外部導体40で被覆する。本実施形態では、外部導体40として、無電解メッキにより厚さ2.0μmの銀からなる金属メッキ層を形成した。これにより、各ケーブル20は、外部導体40で個別に被覆されることで、同軸ケーブル25となる。このように、本実施形態では、個々のケーブル20が外部導体40で個別に被覆されるので、隣接するケーブル20相互間のシールド性能が得られ、且つ高周波領域においても優れたシールド性能を得ることができる。
【0073】
続いて、図4(a)に示すように、固定部30の先端面を除いた表面と、各同軸ケーブル25のそれぞれの表面とをポリウレタンからなる外被覆層50で被覆する。例えば、本実施形態では、ディッピングにより外被覆層50を形成した。また、ここでは、外被覆層50によって同軸ケーブル25の周囲を個別に被覆するようにした。これにより、同軸ケーブル25が個々独立した状態となる。
【0074】
その後、図4(b)に示すように、固定部30の端部、具体的には、ケーブル群20Aの一端部に対向する上端部を、同軸ケーブル25の並設方向に沿って除去(切削等)することで、同軸ケーブル25の中心導体21をそれぞれ露出させる。これにより、固定部30に外部端子との接続部となる接続端子32が形成され、固定部30がコネクタ部となる。そして、同軸ケーブル25の中心導体21を接続端子32とし、且つ固定部30がグランドバーとして機能すると共に、ケーブル群20Aと固定部30とが一体的に設けられたケーブルハーネス10が完成する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態1に係るケーブルハーネスを示す概略図であって、(a)が平面図であり、(b)が端部の拡大図であり、(c)が端面の拡大図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るケーブルハーネスの要部拡大断面図であって、(a)がA−A′断面図であり、(b)がB−B′断面図であり、(c)がC−C′断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係るケーブルハーネスの製造工程の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の実施形態1に係るケーブルハーネスの製造工程の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0076】
10 ケーブルハーネス
20 ケーブル
20A ケーブル群
21 中心導体
22 絶縁体層
25 同軸ケーブル
30 固定部
31 凸部
32 接続端子
40 外部導体
50 外被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体と該中心導体の周囲に設けられた絶縁体層とからなる被覆電線を少なくとも有する複数本のケーブルにより構成されるケーブル群と、前記ケーブル群の長手方向の少なくとも一端部近傍に絶縁材料で形成されて前記複数本のケーブル全体を一体的に固定する固定部とを具備し、前記固定部には前記ケーブル群の一端部に対応する前記複数本のケーブルの前記中心導体がそれぞれ露出されて外部端子との接続部となる接続端子が設けられ、前記固定部から突出した前記複数本のケーブルと前記固定部の前記接続端子に対応する部分以外の部分とに連続的に設けられたシールド用の外部導体を有することを特徴とするケーブルハーネス。
【請求項2】
請求項1において、前記ケーブル群の一端部は前記複数本のケーブルが所定のピッチで並設された状態で前記固定部により固定され、前記固定部はフィルム形状を有していることを特徴とするケーブルハーネス。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記固定部から突出した前記複数本のケーブルのそれぞれは前記外部導体によって個別に覆われていることを特徴とするケーブルハーネス。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記外部導体は金属メッキ層からなることを特徴とするケーブルハーネス。
【請求項5】
請求項4において、前記外部導体の厚さは0.5μm〜6μmであることを特徴とするケーブルハーネス。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかにおいて、少なくとも前記外部導体上には外被覆層が設けられていることを特徴とするケーブルハーネス。
【請求項7】
請求項6において、前記固定部から突出した前記複数本のケーブルのそれぞれは前記外被覆層によって前記外部導体を介して個別に覆われていることを特徴とするケーブルハーネス。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかにおいて、前記絶縁体層はABS樹脂からなることを特徴とするケーブルハーネス。
【請求項9】
中心導体と該中心導体の周囲に設けられる絶縁体層とからなる被覆電線を少なくとも有する複数本のケーブルにより構成されるケーブル群の長手方向の少なくとも一端部近傍に絶縁材料で前記複数本のケーブル全体を一体的に被覆することで前記複数本のケーブルを固定する固定部を形成する工程と、前記固定部と前記固定部から突出した前記複数本のケーブルとをシールド用の外部導体によって連続的に被覆する工程と、前記ケーブル群の一端部に対応する前記固定部の一部及び前記複数本のケーブルの一部を前記中心導体がそれぞれ露出するように除去することで外部配線との接続部となる接続端子を形成する工程とを少なくとも有することを特徴とするケーブルハーネスの製造方法。
【請求項10】
請求項9において、前記固定部を形成する工程では、前記複数本のケーブルを所定のピッチで整列させた状態で行うことを特徴とするケーブルハーネスの製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10において、前記外部導体を形成する工程では、前記外部導体を前記固定部から突出した前記複数本のケーブルのそれぞれが個別に被覆されるように形成することを特徴とするケーブルハーネスの製造方法。
【請求項12】
請求項9〜11の何れかにおいて、前記外部導体を形成する工程では、前記外部導体として、無電解メッキ、又は無電解メッキと電気メッキとを組み合わせて金属メッキ層を形成することを特徴とするケーブルハーネスの製造方法。
【請求項13】
請求項9〜12の何れかにおいて、前記外部導体を形成する工程の後に、少なくとも前記外部導体上に外被覆層を形成する工程を行うことを特徴とするケーブルハーネスの製造方法。
【請求項14】
請求項13において、前記外被覆層を形成する工程では、前記外被覆層を前記固定部から突出した前記複数本のケーブルのそれぞれが前記外部導体を介して個別に被覆されるように形成することを特徴とするケーブルハーネスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−278188(P2006−278188A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96934(P2005−96934)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(592106007)吉野川電線株式会社 (8)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】