説明

ケーブル接続端子構造およびこれを用いたヘッドフォン

【課題】 通常の使用時には確実に接続が可能であり、ヘッドフォンのハウジング部に接続したケーブルに不慮の力が加わる場合にも、ケーブルが抜けてケーブルの断線を防止することができるケーブル接続端子構造およびこれを用いるヘッドフォンを提供する。
【解決手段】 ケーブル接続端子構造は、ケーブルの挿入端子部が、複数の接続線とそれぞれ電気的に接続する複数の挿入端子を有し、筐体の被挿入側端子部が、ケーブルの挿入端子部と係合するフレーム部と、フレーム部内に回転可能に軸支されてケーブルの複数の挿入端子と接触する複数の導通性のローラーと、フレーム部内に固定されてその一部が複数のローラーと接触する複数の内部端子と、を有し、ケーブルの複数の接続線が、筐体の複数の内部端子と、それぞれローラーを介して導通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像・音声信号等を伝送するケーブルを映像・音響機器等の電子機器に接続する場合に用いるケーブル接続端子構造に関し、特に、ステレオの音声信号を左右のドライバーを含むハウジング部に供給して使用者の両耳付近で音声を再生するヘッドフォンに適し、ヘッドフォンのハウジング部に接続したケーブルに不慮の力が加わる場合にも、ケーブルが抜けてケーブルの断線を防止するのに適するケーブル接続端子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
音声を再生するオーディオ機器の中でも、使用者の頭部に載置するヘッドフォン、あるいは、使用者の両耳付近に左右のドライバーを含むハウジング部を固定するヘッドフォンにおいては、ケーブルにより音声信号等を伝送する場合が多くある。ヘッドフォンのケーブルは、使用者の動きに対応した上でケーブルが何か不測の対象物に引っかかったりする結果、引っ張られて強い力が加わる場合にも断線を防止する必要があるので、ケーブル長に余裕を持たせたり、柔らかい披覆素材を用いたり、カールコードを用いたりする場合がある。
【0003】
例えば、ヘッドフォンを装着した使用者がケーブル長を越える範囲で移動を行う場合には、引っ張られたケーブルを剪断させる力が働く恐れがあるので、従来には、ヘッドフォンのハウジング部側にコネクタおよびプラグからなるケーブル接続端子構造を設け、ケーブル先端のプラグが抜けることで断線を回避するように図るヘッドフォンがある。
【0004】
また、従来には、ヘッドフォン体内に収容された電気音響変換ユニットと外部接続コードとが着脱自在に接続されたヘッドフォンにおいて、前記電気音響変換ユニットと外部接続コードとを接続する円筒状のコネクタと、前記ヘッドフォン体内に連通し、前記コネクタを軸方向に移動可能にかつ回転は不可能に挿入支持する前記ヘッドフォン本体に一体的に設けられた中空体の外周からその一部が突出するようにかつ回転可能に前記中空体に挿入された回転ナットとを有し、この回転ナットを回転させることにより前記コネクタがその軸方向に移動することを特徴とするヘッドフォンがある(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】実公平5−40635号公報 (第1図、第2図)
【0006】
しかしながら、従来技術のヘッドフォンのケーブル接続端子構造では、いずれも充分ではない。ヘッドフォンのハウジング部側にコネクタおよびプラグからなるケーブル接続端子構造を設けた場合では、コネクタとプラグとの着脱方向が一方向に定まるので、この着脱方向と異なる角度でケーブルに力が加わると、ケーブル先端のプラグが抜けずに、接続端子構造にダメージを生じて、実質的にケーブルが抜けてケーブルの断線を防止するという機能を果たさない場合があるという問題がある。また、特許文献1に記載のヘッドフォンでは、回転ナットでケーブルをヘッドフォン側に固定するので、上記と同様の問題を生じるおそれがある、という問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ヘッドフォンのケーブル接続端子構造に関し、通常の使用時には確実に接続が可能であり、ヘッドフォンのハウジング部に接続したケーブルに不慮の力が加わる場合にも、ケーブルが抜けてケーブルの断線を防止することができるケーブル接続端子構造およびこれを用いるヘッドフォンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のケーブル接続端子構造は、複数の接続線を含むケーブルの一端に設けられる挿入端子部と、筐体に設けられてケーブルが接続される被挿入側端子部と、を含むケーブル接続端子構造であって、ケーブルの挿入端子部が、複数の接続線とそれぞれ電気的に接続する複数の挿入端子を有し、筐体の被挿入側端子部が、ケーブルの挿入端子部と係合するフレーム部と、フレーム部内に回転可能に軸支されてケーブルの複数の挿入端子と接触する複数の導通性のローラーと、フレーム部内に固定されてその一部が複数のローラーと接触する複数の内部端子と、を有し、ケーブルの複数の接続線が、筐体の複数の内部端子と、それぞれローラーを介して導通する。
【0009】
好ましくは、本発明のケーブル接続端子構造は、ケーブルの挿入端子部が、挿入方向に沿った断面形状が連続する凹凸を含む波形状に形成された挿入端子を有し、筐体の被挿入側端子部が、挿入端子の波形状に対応する凹凸形状を外周面に形成されたローラーと、ローラーの凹凸形状に対応する凸部または凹部をその一部に形成された内部端子と、を有する。
【0010】
また、好ましくは、本発明のケーブル接続端子構造は、ケーブルの挿入端子部を筐体の被挿入側端子部に挿入/抜去する動作時に、挿入端子と接触するローラーが回転し、ケーブルの接続線と筐体の内部端子との導通を保つ。
【0011】
また、好ましくは、本発明のケーブル接続端子構造は、ケーブルを引っ張った場合に、所定の力よりも大きく、かつ、ケーブルを剪断する力よりも小さい力がケーブルの挿入端子部に加わった場合に、挿入端子と接触するローラーが回転してケーブルの挿入端子とローラーとが接触しなくなり、挿入端子部が被挿入側端子部から抜去される。
【0012】
また、好ましくは、本発明のヘッドフォンは、上記のケーブル接続端子構造を含み、筐体がヘッドフォンハウジングの一部を構成する。
【0013】
以下、本発明の作用について説明する。
【0014】
本発明のケーブル接続端子構造は、複数の接続線を含むケーブルの一端に設けられる挿入端子部と、筐体に設けられてケーブルが接続される被挿入側端子部と、を含むケーブル接続端子構造である。ケーブルは、その挿入端子部が、複数の接続線とそれぞれ電気的に接続する複数の挿入端子を有する。また、筐体は、その被挿入側端子部が、ケーブルの挿入端子部と係合するフレーム部と、フレーム部内に回転可能に軸支されてケーブルの複数の挿入端子と接触する複数の導通性のローラーと、フレーム部内に固定されてその一部が複数のローラーと接触する複数の内部端子と、を有する。ケーブルの複数の接続線は、筐体の複数の内部端子と、それぞれローラーを介して導通する。
【0015】
したがって、被挿入側端子部が設けられる筐体が、ヘッドフォンハウジングの一部を構成する場合には、このケーブル接続端子構造を用いて音声信号を伝送するケーブルを挿入/抜去するヘッドフォンを構成することができる。ケーブルの挿入端子部を筐体の被挿入側端子部に挿入/抜去する動作時には、挿入端子と接触するローラーが回転し、ケーブルの接続線と筐体の内部端子との導通を保つことができる。このケーブル接続端子構造では、通常の使用時には確実に接続が可能であり、ヘッドフォンのハウジング部に接続したケーブルに不慮の力が加わる場合にも、ケーブルが抜けてケーブルの断線を防止することができる。
【0016】
特に、ケーブルの挿入端子部が、挿入方向に沿った断面形状が連続する凹凸を含む波形状に形成された挿入端子を有している場合には、筐体の被挿入側端子部が、挿入端子の波形状に対応する凹凸形状を外周面に形成されたローラーと、ローラーの凹凸形状に対応する凸部または凹部をその一部に形成された内部端子と、を有する。つまり、ケーブルの接続線と、筐体の内部端子と、を導通させるローラーの外周面が凹凸形状を有する場合には、連続する凹凸を含む波形状に形成された挿入端子と、凸部または凹部をその一部に形成された内部端子とによってケーブル接続端子構造を構成し、それぞれの凹部と凸部とが係合する位置でローラーが静止する。その結果、ケーブルに不慮の力が加わる場合にも、その力が挿入端子と被挿入側端子部のローラーとが係合して、所定の力以下であればローラーが回転しないので、ローラーが導通を維持させることができる。
【0017】
一方で、このケーブル接続端子構造では、ケーブルを引っ張った場合に、所定の力よりも大きく、かつ、ケーブルを剪断する力よりも小さい力がケーブルの挿入端子部に加わった場合には、挿入端子と接触するローラーが回転してケーブルの挿入端子とローラーとが接触しなくなり、挿入端子部が被挿入側端子部から抜去される。つまり、ヘッドフォンのハウジング部に接続したケーブルに、ケーブルを剪断するおそれがあるような強い不慮の力が加わる場合には、このケーブル接続端子構造のローラーが回転し、ケーブルが抜けて、ケーブルの断線を防止することができる。
【0018】
また、このケーブル接続端子構造では、筐体の被挿入側端子部が、挿入端子に対応するローラーを有しているので、従来のコネクタとプラグとの着脱方向が一方向に定まる場合に比較して、挿入/抜去する方向と異なる角度でケーブルに力が加わっても、接続端子構造にダメージを生じにくいという利点がある。特に、挿入端子が挿入方向に沿った断面形状が連続する凹凸を含む波形状を有し、ローラーが波形状に対応する凹凸形状を外周面に有していれば、挿入/抜去する方向と異なる角度方向に柔軟性を発揮するので、内部端子の凸部または凹部とローラーの凹部または凸部との係合の具合を調整するだけで、ケーブルに加わる力が所定値以下であればローラーが回転せずに接続状態を維持することができ、所定値以上であればローラーが回転してケーブルが抜けてケーブルの断線を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のケーブル接続端子構造およびこれを用いたヘッドフォンは、通常の使用時には確実に接続が可能であり、ヘッドフォンのハウジング部に接続したケーブルに不慮の力が加わる場合にも、ケーブルが抜けてケーブルの断線を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるケーブル接続端子構造10を含むヘッドフォン1について説明する図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態によるケーブル5および挿入端子部6について説明する図である。(実施例1)
【図3】本発明の好ましい実施形態による被挿入側端子部11について説明する図である。(実施例1)
【図4】本発明の好ましい実施形態によるケーブル接続端子構造10について説明する断面図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態によるケーブル接続端子構造およびこれを用いたヘッドフォンについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるケーブル接続端子構造10を含むヘッドフォン1を説明する図である。具体的には、図1は、ヘッドフォン1の一方のハウジング部の一部拡大図であり、ケーブル接続端子構造10によってケーブル5を挿入/抜去する動作を説明する展開図である。また、図2は、ケーブル5および挿入端子部6について説明する一部拡大断面図であり、図3は、被挿入側端子部11について説明する一部拡大断面図である。さらに、図4は、挿入端子部6と被挿入側端子部11とが接続する様子を説明する拡大断面図である。なお、後述するように、説明に不要なヘッドフォン1の一部の構造や、内部構造等は、図示を省略している。
【0023】
ヘッドフォン1は、使用者の頭部に載置して使用者の両耳付近に左右のドライバーを含むハウジング部を固定する(図示しない)ヘッドバンドを備えるオーバーヘッド型のヘッドフォンであり、図1は、ヘッドフォン1の左右のハウジング部のうち、一方側のみの構成を示している。ハウジング部は、(図示しない)ドライバーを内側に固定するハウジング2と、ハウジング2に取り付けられて使用者の頭部および耳介に当接する柔軟性を有するパッド3と、ハウジング2および(図示しない)ヘッドバンドに連結してハウジング2の位置および角度調整ができるようにハウジング2を軸支するハンガー4と、ハウジング2に設けられてケーブル5が接続される被挿入側端子部11と、を含む。なお、被挿入側端子部11は、ハウジング2の底面側に設けられており、図1では図示しない。
【0024】
被挿入側端子部11は、ケーブル5の先端に設けられる挿入端子部6と接続して、ケーブル接続端子構造10を構成する。したがって、このヘッドフォン1では、ケーブル5を挿入/抜去する方向は、図1の矢印に示すような上下方向である。このヘッドフォン1は、左右のドライバーそれぞれにステレオ音声信号のうちの左信号、並びに、右信号を供給するように、左右のハウジング部にそれぞれ左信号、並びに、右信号を供給する別個のケーブル5が接続される構成を有する。
【0025】
図2に図示するように、本実施例のケーブル5は、正負信号を通すシールド線であって、その先端に樹脂で形成される挿入端子部6を備える。挿入端子部6は、ケーブル5および2つの挿入端子8を固定する。挿入端子8は、挿入方向に沿った断面形状が連続する凹凸を含む波形状に形成された金属片であり、シールド線の内部の接続線7が、2つの挿入端子8とそれぞれ電気的に接続して、音声信号を供給する。2つの挿入端子8は同一形状であり、それらの凹凸形状が同じ方向に揃って配置されるように挿入端子部6に固定される。
【0026】
図3に図示するように、本実施例の被挿入側端子部11は、ハウジング2の一部として一体に形成されるフレーム部12と、フレーム部12に設けられる端子挿入口13と、フレーム部12に設けられる軸14と、軸14により回転可能に軸支される導通性の2つのローラー15と、ローラー15とそれぞれ接触する2つの内部端子16と、を含んで構成される。フレーム部12は、ハウジング2と連結する他の部品として形成されていてもよく、非道通性の樹脂等で形成されて、図4に図示するように、ケーブル5の2つの挿入端子8が挿入される2つの端子挿入口13を有する。
【0027】
導通性のローラー15は、端子挿入口13の中央部分にその下面側が露出し、かつ、回転可能になるように、フレーム部12に設けられる軸14によって軸支される。ローラー15は、例えば、銅や、真鍮等の銅を含む合金、または、錫等によるそれらのメッキ品によって外周面に凹凸形状を有するように形成される部材である。ローラー15の外周面の凹凸形状は、ケーブル5の挿入端子8の凹凸形状に対応する形状であって、本実施例の場合には、挿入端子8の凸形状とローラー15の凹形状とが係合する対応寸法を有している。もちろん、挿入端子8の凹形状とローラー15の凸形状とが係合する対応寸法を有していてもよい。
【0028】
また、内部端子16は、挿入端子8と同様の材料で形成される金属片であって、ハウジング2の内部に固定される(図示しない)ドライバーと(図示しない)コード等で電気的に接続される。内部端子16は、その両端部分がフレーム部12に固定されており、その中央部分にローラー15と接触する凸部を有している。本実施例の場合には、内部端子16の凸部の凸形状とローラー15の凹形状とが係合する対応寸法を有しているが、内部端子16の中央部分に凹形状を設け、この凹形状とローラー15の凸形状とが係合する対応寸法を有していてもよい。
【0029】
したがって、図4に図示するように、本実施例のヘッドフォン1では、ケーブル接続端子構造10によってケーブル5をハウジング2に挿入して、ケーブル5の正負信号をハウジング2の(図示しない)ドライバーに供給できる。ケーブル5の正負の接続線7は、1組の挿入端子8および内部端子16と、それぞれローラー15を介して導通する。また、ヘッドフォン1では、ケーブル接続端子構造10によってケーブル5をハウジング2から抜去してケーブル5を取り外すことができ、ケーブルの断線を防止することができる。
【0030】
このケーブル接続端子構造10において、ケーブル5の挿入端子部6の挿入端子8をハウジング2の被挿入側端子部11に挿入/抜去する動作を説明する。挿入端子8を被挿入側端子部11の端子挿入口13に対して図4に図示するX方向に挿入/抜去する場合には、挿入端子8の凸形状とローラー15の凹形状とが係合する関係になるので、挿入端子8と接触するローラー15が回転することになる。
【0031】
このとき、内部端子16の凸部とローラー15の凹形状とが係合する力は、ローラー15の回転を抑制するように働くものの、内部端子16はその両端がフレーム部12に固定されているので、中央部分の凸部が図示するZ方向に反るように変形する。したがって、そのままローラー15に回転する方向に所定以上の力が加わると、内部端子16の凸部とローラー15の凹形状との係合は解除されて、ローラー15が回転する。ローラー15に加わる力が所定の値以下であれば、一方側で挿入端子8の凸形状のいずれかとローラー15の凹形状とが係合し、かつ、他方側で内部端子16の凸部とローラー15の凹形状とが係合する位置で、ローラー15は回転せずに静止する。このケーブル接続端子構造10では、適度なクリック感をもってケーブル5の挿入端子部6をハウジング2の被挿入側端子部11に挿入/抜去させることができる。
【0032】
このケーブル接続端子構造10では、挿入端子部6を抜去しようとする大きな力がケーブル5に作用しない通常の使用時には、ローラー15は回転せずに静止して確実に接続が可能になり、ケーブル5の接続線7とハウジング2の内部端子16との導通を保つことができる。また、一方で、ヘッドフォン1のハウジング2の被挿入側端子部11に接続したケーブル5に不慮の大きな力が加わる場合には、ローラー15が回転して挿入端子8が端子挿入口13から出てしまうので、その結果ケーブル5が抜けてケーブル5の断線を防止することができる。
【0033】
本実施例のように、ケーブル5の挿入端子部6が、挿入方向に沿った断面形状が連続する凹凸を含む波形状に形成された挿入端子8を有している場合には、対応するローラー15および内部端子16の凹凸形状を適切に設計に行なうことにより、ケーブルに不慮の力が加わる場合にも、その力がケーブル5を剪断するおそれがないような弱いものであれば、ローラー15が回転しないので音声信号の導通を維持させることができ、また、その力がケーブル5を剪断するおそれがあるような強いものであれば、ローラー15が回転してケーブル5の挿入端子8が抜けるようにして、ケーブル5の断線を防止することができる。
【0034】
また、このケーブル接続端子構造10では、被挿入側端子部11が、挿入端子8に対応するローラー15を有しているので、本来に挿入/抜去するX方向と異なるYまたはZ方向の力がケーブル5に加わる場合にも、ダメージを生じにくいという利点がある。このケーブル接続端子構造10では、挿入端子8とローラー15との係合により接続を維持しているので、例えば、Z方向の力がケーブル5に加わる場合にも、Z方向の力が、挿入端子部6が移動しやすいX方向の力に変換されて、その結果、ローラー15が回転して挿入端子8が端子挿入口13から出てしまう。Y方向についても同様であり、ケーブル5の断線を防止することができる。
【0035】
もちろん、ケーブル5の挿入端子部6の挿入端子8が、挿入方向に沿った断面形状が連続する凹凸を含む波形状に形成されていない場合にも、対応するローラー15およびこれに接触する内部端子16の摩擦を適切に設計することにより、本実施例と同様の効果を発揮させることができる。つまり、挿入端子8が凹凸を有しない平坦な形状であっても、対応するローラー15およびこれに接触する内部端子16は、本実施例と同様の形状であっても良い。ケーブルに不慮の力が加わる場合にも、その力がケーブル5を剪断するおそれがないような弱いものであれば、ローラー15が回転しないので音声信号の導通を維持させることができ、また、その力がケーブル5を剪断するおそれがあるような強いものであれば、ローラー15が回転してケーブル5の挿入端子8が抜けるようにして、ケーブル5の断線を防止することができる。
【0036】
なお、本発明のケーブル接続端子構造10は、正負の2つの信号線を接続するように2つずつの挿入端子8とローラー15と内部端子16とで構成している。つまり、1つずつの挿入端子8とローラー15と内部端子16とを1組にして、これを2組用いている。ただし、ヘッドフォン10が、左右いずれかのハウジング部の一方にのみケーブル5を接続するような構成にする場合には、ケーブル5にステレオ左右信号を導通させる必要があるので、ケーブル接続端子構造10は、1つずつの挿入端子8とローラー15と内部端子16とを1組にして、これを4組用いて構成してもよい。
【0037】
あるいは、1つずつの挿入端子8とローラー15と内部端子16との組み合わせを4組用いて構成する代りに、ステレオ左右信号のうち、左信号の正側に対応する1組(1つずつの挿入端子8とローラー15と内部端子16)と、右信号の正側に対応する1組と、左右信号それぞれに共通する負(接地)信号に対応する1組と、の合計3組を用いて構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のケーブル接続端子構造は、上記実施例の場合のようなヘッドフォンに適用するものに限定されず、ケーブルを接続する接続端子構造を備える映像音響機器、あるいは、ノートPC等に代表される電子計算機、または、これらを接続するケーブル・コネクタ、等にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ヘッドフォン
2 ハウジング
3 パッド
4 ハンガー
5 ケーブル
6 挿入端子部
7 接続線
8 挿入端子
10 ケーブル接続端子構造
11 被挿入側端子部
12 フレーム部
13 端子挿入口
14 軸
15 ローラー
16 内部端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の接続線を含むケーブルの一端に設けられる挿入端子部と、筐体に設けられて該ケーブルが接続される被挿入側端子部と、を含むケーブル接続端子構造であって、
該ケーブルの該挿入端子部が、複数の該接続線とそれぞれ電気的に接続する複数の挿入端子を有し、
該筐体の該被挿入側端子部が、該ケーブルの該挿入端子部と係合するフレーム部と、該フレーム部内に回転可能に軸支されて該ケーブルの複数の該挿入端子と接触する複数の導通性のローラーと、該フレーム部内に固定されてその一部が複数の該ローラーと接触する複数の内部端子と、を有し、
該ケーブルの複数の該接続線が、該筐体の複数の該内部端子と、それぞれ該ローラーを介して導通する、
ケーブル接続端子構造。
【請求項2】
前記ケーブルの前記挿入端子部が、挿入方向に沿った断面形状が連続する凹凸を含む波形状に形成された前記挿入端子を有し、
前記筐体の前記被挿入側端子部が、該挿入端子の該波形状に対応する凹凸形状を外周面に形成された前記ローラーと、該ローラーの該凹凸形状に対応する凸部または凹部をその一部に形成された前記内部端子と、を有する、
請求項1に記載のケーブル接続端子構造。
【請求項3】
前記ケーブルの前記挿入端子部を前記筐体の前記被挿入側端子部に挿入/抜去する動作時に、前記挿入端子と接触する前記ローラーが回転し、該ケーブルの前記接続線と該筐体の前記内部端子との導通を保つ、
請求項1または2に記載のケーブル接続端子構造。
【請求項4】
前記ケーブルを引っ張った場合に、所定の力よりも大きく、かつ、該ケーブルを剪断する力よりも小さい力が該ケーブルの前記挿入端子部に加わった場合に、前記挿入端子と接触する前記ローラーが回転して該ケーブルの該挿入端子と該ローラーとが接触しなくなり、該挿入端子部が該被挿入側端子部から抜去される、
請求項1から3のいずれかに記載のケーブル接続端子構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のケーブル接続端子構造を含み、
前記筐体がヘッドフォンハウジングの一部を構成するヘッドフォン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−169067(P2012−169067A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27314(P2011−27314)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(710014351)オンキヨー株式会社 (226)
【Fターム(参考)】