説明

ケーブル放電を弱める方法および装置類

【課題】ケーブルの静電放電を弱める方法および装置類を提供する。
【解決手段】ケーブルの静電放電を弱める方法および装置類が開示される。実施態様は、コネクタと、ケーブルの複数の導体と相互接続して導体上に蓄積された静電気を弱めるかまたは放電させる、コネクタ中に一体化された放電素子とを備えるとよい。いくつかの実施態様では、コネクタを別のコネクタと結合させてケーブルを例えばコンピュータと相互接続させる際、複数の導体をアースに一時的に接続させる。さらに別の実施態様では、放電素子は、ケーブルの複数の導体と相互接続して静電気を再分配し、それによって、ケーブルをコンピュータなどのエレクトロニクス・システムと結合するとき、放電の影響を最小限にする。別の実施態様は、ケーブルをコネクタ中に挿入する際、ケーブルの複数の導体を接地させる放電素子を有するオス・コネクタを含む。複数の導体がコネクタと結合する際、放電素子は、複数の導体の進路から押し退けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、同日出願の「静電放電保護を改善するアダプタのための方法および装置類」と題する代理人文書番号AUS920050657US1(4141)の米国特許出願第11/295301号と関連している。
【0002】
本発明は、エレクトロニクス・システム用のケーブル接続の分野におけるものである。より詳しくは、本発明は、ケーブルの静電気を、コンピュータ・システムなどのエレクトロニクス・システム上のコネクタに接続する前に弱める方法および装置類に関する。
【背景技術】
【0003】
ケーブルをコンピュータ・システムに接続する(例えばUSB、ファイヤ・ワイヤ(FireWire)またはその他の共通入出力ポートを通して)ときにはいつでも、ケーブル放電現象(Cable Discharge Event,CDE)によってシステムが損傷を受ける危険がある。CDEは、ケーブル上に蓄積され、ケーブルをコンピュータ・システムに接続するときコンピュータ・システムに放電される静電気が原因となって起こる。例えば、多くの職場の運営で、人員の仕事の割り当てを変えるため、場所を移動させるためなどで、一つの場所から別の場所に人員を移動させることがある。移動する人員用のコンピュータは人員とともに移動し、新しい場所でネットワークに再接続される。ピンおよびシールドを切り離してケーブルを動かすと、多くの場合、ケーブルは互いに擦り合い、カーペットまたは壁と擦り合い、あるいはケーブル中で材料が互いに擦れ合うことさえあり、静電気が蓄積されやすい。
【0004】
ケーブル上に蓄積される静電気の電圧は、相対湿度および関与する材料によって著しく変化し得る。例えば、相対湿度が約65%から90%のとき、カーペット敷き区域を歩いて横切るだけで、通常、1,500ボルトの静電気が発生し得る。相対湿度が約10%から20%湿気のとき同じカーペット敷き区域を歩いて横切ると、35,000ボルトの静電気が発生し得る。
【0005】
エレクトロニクス・システムでは、静電放電(ESD)は重大な問題である。静電気を帯びたケーブルを静電放電鋭敏(ESDS)エレクトロニクス・システムに接続すると、静電気がエレクトロニクス・システム中の鋭敏回路を通って放電されることがある。高電圧によって絶縁材料が損傷されるかまたは劣化し、静電放電に十分なエネルギーがあれば、局所過熱によって損傷が起こり得る。一般に、微細な構造物を有するデバイスほど、ESDによる損傷を受けやすい。
【0006】
特に、集積回路(IC)は、世代交替のたびにより小さな構造物のICを構築する勢いを考えると、ESDの影響を特に受けやすい。ICは、シリコンなどの半導体材料と、二酸化ケイ素などの絶縁材料とから作られ、これらの材料は、高電圧を加えられると壊れやすい。ICの製造業者および使用者は、この問題に会わないよう用心しなければならない。そのような対策としては、適切な包装材料、作業者の身体に高電圧が蓄積しないようにする導電性リスト・ストラップおよびフット・ストラップの着用、有害な電荷を作業区域から外部に誘導する静電防止マット、および湿度制御がある。
【0007】
コンピュータ・システムの設計者は、通常、自分たちのシステムで用いられる構成部品に静電放電(ESD)保護構造物を組み込むことによって、自分たちの製品をCDE損傷から保護しようと試みる。これらのESD保護構造物は、CDE発生の場合、電荷をケーブルからアースに導き、ひいては被保護構成部品への損傷を回避または軽減するように設計されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、実際には、構成部品にESD保護デバイスを使用しても、限られた保護しか提供されない。個々のESD構造物がESD現象を処理する能力はさまざまであり、ESD現象を処理することによって、時間とともに劣化することもある。重大なCDEは、最善のESD保護構造物の能力さえ簡単に凌駕し、コンピュータ・システムに即時破滅的損傷を引き起こしてしまう。例えば、多くのESD保護デバイスは約2,000ボルトまでは対処できるが、これより高い電圧のESDの場合には損傷される。
【0009】
コンピュータ・システムが製造され、販売されると、コンピュータ・システムの内部設計または構造を変化させてCDEに対する抵抗力を高めるための実行可能な選択肢は皆無である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記で特定した問題は、大部分、ケーブルからエレクトロニクス・システムへの静電放電を弱める方法および構成によって対処される。一実施態様は、ケーブルからの静電放電を弱める装置を提供する。この装置は、ケーブルと結合してケーブルの導体を放電素子と接続させる放電素子とコネクタとを備えることができる。ケーブルの導体をエレクトロニクス・システムの導体と接続させる前に、ケーブルを放電素子と接続させることによって、ケーブルの導体上の静電気を減らすことができる。
【0011】
別の実施態様は、ケーブルからの静電放電を弱めるエレクトロニクス・システムを提供する。このシステムは、回路および接地構造物を含む筐体と、ケーブルの導体を接地構造物と接続させる放電素子と、筐体と結合してケーブルの導体を放電素子と接続させるコネクタとを備えることができる。ケーブルの導体を回路と接続させる前に、ケーブルを放電素子と結合させることによって、ケーブルの導体上の静電気を減らすことができる。
【0012】
さらに別の実施態様は、ケーブルからエレクトロニクス・システムへの静電放電を弱める方法を提供する。この方法は、ケーブルの導体の挿入路に放電素子を配置してケーブルをエレクトロニクス・システムのコネクタと結合させる工程と、ケーブルをコネクタと結合させるに際して、ケーブルの導体と放電素子とが接触すると、ピンをエレクトロニクス・システムの接地に放電させる工程と、ケーブルの導体をエレクトロニクス・システムの回路と接続させる前にケーブルの導体を放電素子から切り離す工程を含む。
【0013】
以下の詳細な説明を読み、添付の図面を参照すれば、本発明の利点は自明である。添付の図面において、同じ参照記号は同様な素子を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下は、添付の図面に示される本発明の実施態様の詳細な説明である。これらの実施態様は、本発明を明確に伝達するように詳細に記載されている。しかし、開示される詳細の量によって、予想される実施態様の変化形を限定する意図はない。反対に、添付の請求項によって定められる本発明の技術思想および範囲に属するすべての変更形、均等物および代替物を包含することを意図する。下記の詳細な説明は、そのような実施態様を確実に当業者に明らかにするように構成されている。
【0015】
全体的に言えば、ケーブルの静電放電を弱める諸方法および装置類を対象とする。実施態様は、ケーブルの導体を相互接続させて導体上に蓄積された静電気を弱めるかまたは放電させる、コネクタとコネクタに一体化された放電素子とを含む。いくつかの実施態様では、コネクタを別のコネクタと結合してケーブルを例えばコンピュータと相互接続させるとき、導体をアースに一時的に接続する。さらに別の実施態様では、放電素子はケーブルの導体と相互接続して静電気を再分配し、それによって、ケーブルをコンピュータなどのエレクトロニクス・システムと結合するとき放電の影響を最小限にする。例えば、一実施態様は放電素子を有するメス・コネクタを含み、放電素子はケーブルをコネクタの中に挿入するときケーブルの各導体を接地させる。別の実施態様は放電素子を有するオス・コネクタを含み、放電素子はケーブルをコネクタの中に挿入するときケーブルの導体を接地させる。導体をコネクタと接続させるとき、放電素子は導体の進路から押し退けられる。
【0016】
そのような実施態様は、ケーブル放電現象(CDE)の危険性を都合よく弱めるか、または取り除くことさえでき、比較的低コストで実装することができる。さらに、そのような実施態様は、下流構成部品の静電放電(ESD)保護に頼ることがなく、末端使用者からは見えず、末端使用者側の知識も対策も必要としない。実施態様は確実でもあり、無効になることや誤作動することも実質的になく、非常に信頼性が高くほとんど劣化しない。
【0017】
下記で、特定の回路およびピンまたは導体装置類を参照して特定の実施態様を説明するが、他の実質的に均等な装置類、ならびに任意の数のピンまたは導体を用いて本発明の実施態様を有利に実装することができることは、当業者に自明である。
【0018】
次に、図面を参照すると、図1は、コンピュータ110、外付けディスプレイ150、およびプリンタ180を備えるシステム100の一実施態様を示す。ケーブル135および165は、外部ディスプレイ150およびプリンタ180をコンピュータ110とそれぞれ相互接続させるようになっている。例えば、システム100を使用するように割り当てられた従業員が新しい業務またはプロジェクトを開始するために新しい場所に移動することがある。従業員は、推奨されている帯電防止デバイスおよびバッグを用いてケーブル135および165上への静電気の蓄積を予防することなく、システム100を梱包し、次に新しい場所でシステム100を組み立て直すことがある。従業員がパラレル・ケーブル135をコンピュータ110のコネクタ115に結合させると、コネクタ115はケーブル135の導体を筐体125と一時的に接続させて、静電気を導体から放電させることができる。導体が放電したら、導体をコネクタ115の対応する導体と接続させて、外部ディスプレイ150とコンピュータ110との間の通信を可能にする。
【0019】
コンピュータ110は、ケーブル135および165などのケーブルからの静電放電に対して鋭敏なことがある内部回路を有するエレクトロニクス・システムを備える。本実施態様では、コンピュータ110をラップトップとして示しているが、コンピュータ110はデスクトップ、ワークステーション、サーバ、パーソナル・ディジタル・アシスタント(PDA)、ステレオ・システム、ディジタル音楽プレーヤ、携帯電話、または任意のその他のエレクトロニクス・システムであってよく、これらは、静電放電に対して鋭敏なことがある回路を備え、例えばケーブルによる外部デバイスとの相互接続を容易にするコネクタを備える。
【0020】
コンピュータ110は、筐体125、パラレル・コネクタ115およびシリアル・コネクタ120を備える。筐体125は、筐体中に一体化され、筐体の内部に取り付けられた電気伝導性の接地構造物または類似物を備えることがある。接地構造物は、回路を損傷せずにケーブル135および165から静電気を放電させるための接地として作用することができる。
【0021】
パラレル・コネクタ115は、任意の種類の電気的なパラレル接続器具であってよく、一つまたはそれ以上のブラシ、フィラメントまたは類似物を有するコネクタを備えてよい。ブラシ、フィラメントおよび/または類似物は、ケーブル135上の静電気を放電させる経路を提供するとよい。経路は、コネクタにおいて空気より導電性が高いか、あるいは空気を通るコネクタ115への火花放電を弱めるかまたは除去するのに十分な導電性を有する。例えば、パラレル・コネクタ115は、コネクタ130用の挿入路内に配置され、コネクタ130をパラレル・コネクタ115の中に挿入するとき、ケーブル135の導体と接触するブラシを備えるとよい。ブラシは、ケーブル135から筐体125の接地構造物などの接地システムに静電気を実質的に放電させるのに十分に長く、ケーブル135の導体と接触し続けるとよい。次いで、ブラシをケーブル135の導体から切り離して、ケーブル135の導体とコネクタ115の導体との接続を可能にするとよい。
【0022】
同様に、シリアル・コネクタ120は、円形または矩形の5ピン、7ピンまたは12ピンのシリアル・コネクタなど、任意の種類の電気的シリアル接続器であってよい。例えば、シリアル・コネクタ120は、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)コネクタおよび/またはファイヤワイヤ・コネクタなど、知的所有権の対象となるシリアル・コネクタを含んでもよい。シリアル・コネクタ120は、放電素子と、コネクタ160をシリアル・コネクタ120と結合させるとき放電素子をケーブル165の導体と接続させるようになっているコネクタとを備える。
【0023】
いくつかの実施態様では、コネクタ130をコンピュータ110に結線する前にコネクタ140を外部ディスプレイ150に結線する場合、ディスプレイ150は、ケーブル135を放電させるように、パラレル・コネクタ115などのパラレル・コネクタを備えるとよい。同様に、プリンタ180は、コネクタ170をプリンタ180上のシリアル・コネクタに挿入するときケーブル165上の静電気をすべて放電させるように、シリアル・コネクタ120などのシリアル・コネクタを備えるとよい。
【0024】
さらに別の実施態様では、コネクタ160および/または170など、ケーブル135および/または165の一つまたはそれ以上のコネクタは、エレクトロニクス・デバイスとの接続の前に、ケーブル135および/または165の導体を少なくとも一時的に一緒に接続させるブラシ、フィラメントまたは類似物を備えるとよい。導体を一緒に接続させると、ケーブル135および/または165の導体の間で静電気を再分配して、静電放電によってもたらされるエレクトロニクス・デバイスへの損傷を弱めることができる。これらの実施態様のいくつかでは、コネクタ120などのエレクトロニクス・デバイスのコネクタは、例えばコネクタ160の接地結線を通して電荷をアースに放電させるようになっている。
【0025】
図2の(A)〜(C)は、ケーブル上の静電気を弱めるようになっているメス・コネクタ200の例を示す。メス・コネクタ200は、アース220と結合されたハウジング210、取り付け板215、放電素子230および240、導体235および245、ならびにアイソレータ255(図2の(B)および図2の(C)に示される)を備える。図2の(A)および図2の(B)は、メス・コネクタ200の前面図および側面図の例をそれぞれ示す。図2の(C)は、ケーブル・コネクタ290をメス・コネクタ200と結合させているときの別の側面図の例を示す。
【0026】
ハウジング210によって、メス・コネクタ200をエレクトロニクス・デバイス用のアースと結合させるとよい。例えば、ハウジング210をエレクトロニクス・デバイスの筐体と結合させるとよい。いくつかの実施態様では、ハウジング210は、メス・コネクタ200を非互換ケーブルと結合させないように、結合用の独自の形状を定めるソケットを備えるとよい。さらに別の実施態様では、ハウジング210は、接続が確定したら、ケーブルとメス・コネクタ200との間の相互接続を一緒に保持するような形状のソケットを形成するとよい。
【0027】
取り付け板215は、放電素子230および240と結合して、最初にケーブル接続(図2の(C)に例が示される)を確定する際、放電素子を定位置に保持する。取り付け板215は、導体235および245をケーブルの導体から絶縁して、エレクトロニクス・デバイスの回路への静電放電を防ぐかまたは弱めるとよい。
【0028】
放電素子230および240の位置は、放電素子230および240をケーブル・コネクタ290のオス・ピン295の通路に保持し、これによって、ケーブル・コネクタ290をハウジング210に挿入するとき、放電素子230および240をオス・ピン295と接触させる。放電素子230および240は、オス・ピン295と接触する一方、放電素子230および240はアイソレータ255(図2の(B)および(C)に示される)と接触してピン295上の静電気をアース220に放電させる。
【0029】
本実施態様では、放電素子230および240がオス・ピン295と接触した後、放電素子は、図2の(C)に示されるように、オス・ピン295と導体235および245との間の接続の通路から押し退けられる。さらに別の実施態様では、放電素子230および240をアース220から切り離してもよい。
【0030】
その他の実施態様では、メス・コネクタ200をケーブルの一つまたはそれ以上の末端と永続的または一時的に結合させ、ケーブルの対応する導体の間で静電気を再分配させて放電現象の大きさを弱めるとよい。電荷の再分配によって、1秒の何分の一など、十分な時間があれば、各導体上の静電気は等しくなるはずである。そのような実施態様では、メス・コネクタ200を図1のコンピュータ110などのエレクトロニクス・デバイスに結合させた後、ハウジング210をアース220と接続させなくても、またはアース220と接続させてもよい。
【0031】
図の多くは、簡単にして分りやすくするために、ケーブルとコネクタとの間の二つの導体の接続の例を示している点にも注意すること。しかし、実施態様は一つまたはそれ以上の導体を有してよい。例えば、USB1.1および2.0互換コネクタは、4つの導体と1つのシールドとを有する。そのような実施態様は、4つの導体の通路に一つまたはそれ以上の放電素子を含み、導体を少なくとも一時的に接地させる。いくつかの実施態様では、同様な方法で、5番目の導体であるシールドを接地させる。
【0032】
図3の(A)〜(C)は、ケーブル上の静電気を弱めるようになっているメス・コネクタ300の例を示す。メス・コネクタ300は、アース320に結合されたハウジング310、取り付け板315、放電素子330および340、導体335および345、ならびにバネ350と結合されたアイソレータ360(図3の(B)および(C)に示される)を備える。図3の(A)および図3の(B)は、メス・コネクタ300の前面図および側面図の例をそれぞれ示す。図3の(C)は、ケーブル・コネクタ390をメス・コネクタ300と結合させているときの別の側面図の例を示す。
【0033】
ハウジング310は、ハウジング210と同様に、メス・コネクタ300をエレクトロニクス・デバイスのアースと結合させることができる。取り付け板315は、ケーブル・コネクタ390(図3の(C)に例が示される)をメス・コネクタ300と結合する際、放電素子330および340と結合して放電素子を定位置に保持する。取り付け板215とは異なり、取り付け板315は、ケーブルを結合するとき動かない。その代わり、アイソレータ360は、オス・ピン395を実質的に放電させた後、ケーブル・コネクタ390と接触して放電素子330および340をアース320から切り離すようになっている。
【0034】
図3の(C)に例が示されるように、本実施態様では、ボタン380を押して(またはスイッチを起動して)接触ケーブル・コネクタ390がメス・コネクタ300の導体335および345と物理的に接触できるようにすることが必要な場合がある。ボタン380を押すと、回転運動によって部材385が通り道から退けられるだけで接触できるようになる。ボタン380にバネをつないで、ケーブルを切り離したら、ボタンが所定の位置に自動的に戻ってケーブルとの接続を妨げるようにするとよい。
【0035】
バネ350は、ケーブル・コネクタ390をメス・コネクタ300から切り離した後、アイソレータ360と結合して放電素子330および340をアース320と再び結合させる。さらに別の実施態様では、取り付け板315とアイソレータ360との間に結合され、アイソレータ360と放電素子330および340とを再び接触させるバネ350などのバネを含むとよい。
【0036】
図4の(A)〜(C)は、ケーブル上の静電気を弱めるようになっているオス・コネクタ400の例を示す。オス・コネクタ400は、アース420と結合されたハウジング410、取り付け板415、放電素子430および440、導体435および445、ならびにバネ450および455と結合されたアイソレータ460(図4の(B)および(C)に示される)を備える。図4の(A)および図4の(B)は、オス・コネクタ400の前面図および側面図の例をそれぞれ示す。図4の(C)は、ケーブル・コネクタ490をオス・コネクタ400と結合させているときの別の側面図の例を示す。
【0037】
ハウジング410は、ハウジング210と同様に、オス・コネクタ400をエレクトロニクス・デバイスのアースと結合させ、ケーブル・コネクタ490と形状を合わせて誤った導体間の相互接続を防止する形状を定めることができる。取り付け板415は、放電素子430および440と結合して、最初にケーブル接続(図4の(C)に例が示される)を確定する際、放電素子430および440を定位置に保持する。取り付け板415は、放電素子430および440がケーブル導体495と接触して、これらの放電素子がケーブル・コネクタ490と導体435および445との間の相互接続の通り道から退けられた後、ケーブル・コネクタ490の部材497と接触する。
【0038】
ケーブル・コネクタ490をオス・コネクタ400から切り離すと、バネ450および455がアイソレータ460と結合して放電素子430および440を導体495の挿入路に再び配置する。さらに別の実施態様では、部材497は、取り付け板415を回転させて放電素子430および440を接続路から移動させるか、または他の方法で放電素子430および440を導体495から切り離すか、または絶縁する。
【0039】
その他の実施態様では、オス・コネクタ400を永続的または一時的にケーブルの一つまたはそれ以上の末端と結合させ、ケーブルの対応する導体の間で静電気を再分配して放電現象の大きさを弱める。そのような実施態様では、オス・コネクタ400を図1のコンピュータ110などのエレクトロニクス・デバイスと結合させるとき、ハウジング410は、アース420と結合しなくてもよく、またはアース420と結合してもよい。
【0040】
図5の(A)〜(C)は、ケーブル上の静電気を弱めるようになっているオス・コネクタ500の例を示す。オス・コネクタ500は、アース520と結合されたハウジング510、取り付け板515、放電素子530および540、導体535および545、ならびにバネ550および555と結合されたアイソレータ560および565(図5の(B)および図5の(C)に示される)を備える。図5の(A)および図5の(B)は、オス・コネクタ500の前面図および側面図の例をそれぞれ示す。図5の(C)は、ケーブル・コネクタ590をオス・コネクタ500と結合させているときの別の側面図の例を示す。
【0041】
ハウジング510は、オス・コネクタ500をエレクトロニクス・デバイスのアース520と結合させることができる。取り付け板515は、ケーブル・コネクタ590(図5の(C)に例が示される)を挿入する際、放電素子530および540と結合して放電素子530および540を定位置に保持する。アイソレータ部材560は、放電素子530および540がケーブル導体595と接触し、放電素子530および540がアース520から切り離された後、ケーブル・コネクタ590と接触する。詳しくは、放電素子530および540をアイソレータ部材565から切り離すケーブル・コネクタ590がアイソレータ部材565を押すと、アイソレータ部材560がアイソレータ部材565を回転させる。
【0042】
ケーブル・コネクタ590をオス・コネクタ500から切り離すと、バネ550および555がアイソレータ部材565と結合して放電素子530および540をアース520と再び結合させる。回転ヒンジを介してアイソレータ部材565を取り付け板515と結合させるとよい。いくつかの実施態様では、回転ヒンジを介してアイソレータ部材560をアイソレータ部材565と結合させるとよい。
【0043】
図6の(A)〜(C)は、ケーブル上の静電気を弱めるようになっているオス・コネクタ600の例を示す。オス・コネクタ600は、アース620と結合されたハウジング610、取り付け板615、放電素子630および640、導体635および645、ならびにバネ650および655と結合されたアイソレータ660および665(図6の(B)および図6の(C)に示される)を備える。図6の(A)および図6の(B)は、オス・コネクタ600の前面図および側面図の例をそれぞれ示す。図6の(C)は、ケーブル・コネクタ690をオス・コネクタ600と結合させているときの別の側面図の例を示す。
【0044】
ハウジング610は、オス・コネクタ600をエレクトロニクス・デバイスのアース620と結合させることができる。取り付け板615は、放電素子630および640と結合して、ケーブル接続690(図6の(C)に例が示される)を挿入する際、放電素子630および640を定位置に保持する。アイソレータ部材660は、放電素子630および640がケーブル導体695と接触して、放電素子630および640がアース620から切り離され、導体635および645が導体630および640とそれぞれ結合された後、ケーブル・コネクタ690と接触する。詳しくは、ケーブル・コネクタ690を挿入すると、アイソレータ部材660がアイソレータ部材665を回転させ、それによって、放電素子630および640がアース620から切り離される。
【0045】
ケーブル・コネクタ690をオス・コネクタ600から切り離すと、バネ650および655がアイソレータ部材665と結合して放電素子630および640をアース620と再び結合させる。回転ヒンジを介してアイソレータ部材665を取り付け板615と結合するとよい。
【0046】
次に図7を参照すると、ケーブルの静電気を弱める実施態様のフローチャート700が示される。フローチャート700は、ケーブルの導体の挿入路中に放電素子を配置してケーブルをエレクトロニクス・システムのコネクタと結合させる工程(工程710)から始まる。放電素子を挿入路中に配置する工程は、挿入路中の放電素子の位置を維持すること、または放電素子が挿入路中に残るように放電素子を取り付けることを伴うことがある。例えば、放電素子を取り付け板と結合させて放電素子を保持するとよい。放電素子が互換性ケーブル・コネクタの導体と接触した後、導体がエレクトロニクス・デバイスの導体に接触するように、取り付け板を一時的または永続的に設置すればよい。
【0047】
いくつかの実施態様では、一つまたはそれ以上のバネを取り付け板と結合させて、取り付け板を定位置に一時的に保持してもよい。多くのそのような実施態様では、取り付け板は、ケーブルをエレクトロニクス・デバイスに接続する際、放電素子を挿入路から退かせて、ケーブルとエレクトロニクス・デバイスとの間の確実な結合を容易にすることができる。そのような実施態様では、ケーブルをエレクトロニクス・デバイスから切り離す際、放電素子を挿入路に戻すとよい。
【0048】
フローチャート700では、放電素子を配置した後、ケーブルの導体と放電素子とが接触すると、導体からエレクトロニクス・システムのアースに放電させる工程(工程715)が続く。詳しくは、導体を放電させる工程は、ケーブルの導体およびケーブルの他の導体をエレクトロニクス・システムの接地構造物と相互接続させればよい。例えば、ケーブル・コネクタをエレクトロニクス・デバイス上のコネクタと結合させる際、ケーブル・コネクタの挿入路中の放電素子は、ケーブルの導体と接触するとよい。放電素子と接触すると、導体上に蓄積された静電気はすべて放電素子を通ってアースに放電し始める。
【0049】
多くの実施態様では、導体を放電素子から切り離す前にケーブルの導体を徹底的に放電させるようになっている。いくつかの実施態様では、ケーブルをエレクトロニクス・デバイスと結合させる前に静電気のすべてではなく一部を放電させればよい。
【0050】
ケーブルの導体を放電させた後、放電素子をケーブルの導体から切り離す(工程720)。いくつかの実施態様では、ケーブルの導体をエレクトロニクス・デバイスの導体と接続する前に、放電素子を切り離す。さらに別の実施態様では、ケーブルの導体をエレクトロニクス・デバイスの導体と接続したまま、放電素子を切り離す。他の実施態様では、ケーブルの導体をエレクトロニクス・デバイスの導体と接続した後、放電素子を切り離す。
【0051】
放電素子をケーブルの導体から切り離す工程は、放電素子と結合された部材を移動させることを含んでもよい。例えば、放電素子をアースと結合させるアイソレータ部材を配置し直して、放電素子をアースから切り離し、および/または放電素子をエレクトロニクス・システムの導体と結合させてもよい。
【0052】
本開示を利用する当業者には、本発明がケーブルの静電気を弱める方法および構成を意図することは自明である。詳細な説明および図面中で示し、説明した本発明の形は、単に例としてのみ解釈すべきものと理解される。添付の請求項は広義に解釈され、開示された実施態様の例のすべての変化形を包括するものと意図される。
【0053】
いくつかの実施態様について、本発明および本発明の利点のいくつか詳細に説明してきたが、添付の請求項によって定められる本発明の技術思想および範囲から逸脱することなく、本明細書にさまざまな変化、置き換えおよび変更を施すことができると理解すべきである。本発明の実施態様によってさまざまな目的を実現することができるが、添付の請求項の範囲に属するすべての実施態様が、すべての目的を実現するというわけではない。さらに、本出願の範囲は、本明細書中で説明したプロセス、機械、製造法、材料の組成、手段、方法および工程の特定の実施態様に限定されるものではない。本発明の開示から当業者が容易に理解するように、本発明によれば、本明細書で説明した対応する実施態様と実質的に同じ機能を実行するか、または実質的に同じ結果を実現する現在存在するかまたは将来開発されるプロセス、機械、製造法、材料の組成、手段、方法または工程を利用することができる。従って、添付の請求項は、そのようなプロセス、機械、製造法、材料の組成、手段、方法または工程を範囲内に含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】コンピュータと、外部ディスプレイと、プリンタとを備えるシステムの一実施態様を示す。
【図2】メス・コネクタの一実施態様を示す。
【図3】メス・コネクタの別の一実施態様を示す。
【図4】オス・コネクタの一実施態様を示す。
【図5】オス・コネクタの別の一実施態様を示す。
【図6】オス・コネクタのさらに別の一実施態様を示す。
【図7】ケーブルの静電放電を弱める一実施態様のフローチャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルからエレクトロニクス・システムへの静電放電を弱める装置であって、
放電素子と、
前記ケーブルの導体を前記エレクトロニクス・システムの導体と結合させる前に、前記ケーブルと結合して前記ケーブルの前記導体を前記放電素子と結合させ、前記ケーブルの前記導体上の静電気を減少させるコネクタと、
を含む装置。
【請求項2】
前記放電素子は、電荷を伝導するブラシを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コネクタは、前記コネクタおよび前記ケーブルに対して或る位置で前記ブラシと結合する取り付け板を備え、前記位置は、前記ケーブルが前記コネクタと結合する際、前記ブラシと前記ケーブルの前記導体との間の接触を開始させて前記ケーブルの前記導体を実質的に放電させるようになっている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記放電素子は、前記ケーブルの他の複数の導体と結合して、前記ケーブルの前記導体と前記ケーブルの前記他の複数の導体との間で前記静電気を再分配させるようになっている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記放電素子は、前記ケーブルを前記コネクタと結合させる際、前記ケーブルの前記導体から前記エレクトロニクス・システムの前記導体への前記静電気の放電を回避するのに十分な電気伝導率を有する材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記放電素子は、前記エレクトロニクス・システムのアースと結合されるようになっている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記コネクタは、前記ケーブルと前記コネクタとを結合させると前記ケーブルの前記導体を前記放電素子と結合させ、少なくとも前記ケーブルの前記導体を前記放電素子から切り離すまで、前記ケーブルの前記導体を前記エレクトロニクス・システムの前記導体から絶縁するソケットを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記コネクタは、前記ケーブルの一端との実質的に永続的な接続を含み、前記実質的に永続的な接続は、前記ケーブルの前記導体と前記ケーブルの他の複数の導体との電荷を実質的に均等化させるようになっている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記コネクタは、前記ケーブルの前記導体を前記エレクトロニクス・システムの前記導体と結合させる前に、前記エレクトロニクス・システム上の対応する接地接続と結合して、前記静電気をアースに放電させる接地接続を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記コネクタは、前記エレクトロニクス・システムとの実質的に永続的な接続を含み、前記実質的に永続的な接続は、前記静電気を前記エレクトロニクス・システムの筐体に実質的に放電させるようになっている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
ケーブルからの静電放電を弱めるエレクトロニクス・システムであって、
回路および接地構造物を備える筐体と、
ケーブルの導体を前記接地構造物と結合させる放電素子と、
前記ケーブルの前記導体を前記回路と結合させる前に、前記ケーブルの前記導体を前記放電素子と結合させて前記ケーブルの前記導体上の静電気を減少させる、前記筐体と結合されたコネクタと、
を含むシステム。
【請求項12】
前記放電素子は、前記ケーブルの前記導体から前記接地構造物に電荷を伝導する一つまたはそれ以上のブラシを備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記コネクタは、前記ケーブルの挿入位置に対して或る位置に前記ブラシを結合する取り付け板を備え、前記位置は、前記ケーブルを前記コネクタと結合させる際、前記一つまたはそれ以上のブラシと前記ケーブルの前記導体との間の接触を開始し、前記ケーブルの前記導体と前記回路とが電気的に接触する前に、前記ケーブルの前記導体から前記ブラシを切り離すようになっている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記コネクタは、第一の位置では前記放電素子を介して前記ケーブルの前記導体および前記ケーブルの他の複数の導体を前記接地構造物と相互接続させ、別の位置では前記放電素子を前記ケーブルの前記複数の導体から分離する、前記放電素子と結合された部材を備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
ケーブルの静電放電を弱める方法であって、
放電素子をケーブルの導体の挿入路に配置して前記ケーブルをエレクトロニクス・システム用のコネクタと結合させる工程と、
前記ケーブルを前記コネクタと結合させる際、前記ケーブルの前記導体と前記放電素子とが接触すると前記導体から前記エレクトロニクス・システムの接地に放電させる工程と、
を含む方法。
【請求項16】
前記ケーブルの前記導体を前記エレクトロニクス・システムの回路と結合させる前に、前記ケーブルの前記導体を前記放電素子から切り離す工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記放電素子を配置する工程は、前記挿入路中の前記放電素子の位置を維持することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
放電させる工程は、前記ケーブルの前記導体および前記ケーブルの他の複数の導体を前記エレクトロニクス・システムの接地構造物と相互接続させることを含む、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−157710(P2007−157710A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319326(P2006−319326)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】