説明

ケーブル用コネクタ

【課題】簡易な構成で、ケーブルの電気的な絶縁が十分に確保されるケーブル用コネクタ、を提供する。
【解決手段】ケーブル用コネクタ10は、先端部24を有する被覆電線21と、被覆電線21の外周上に配置される編組線31と、先端部24が延出する開口端37を有し、編組線31の外周上を覆う絶縁性のコルゲート管36と、開口端37と距離を隔てて向かい合う開口端42を有し、先端部24の外周上に配置されるコネクタハウジング41と、先端部24の外周上で開口端42を塞ぐように設けられるセパレートゴム栓71とを備える。セパレートゴム栓71は、開口端42から開口端37まで延び、被覆電線21と編組線31との間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、ケーブル用コネクタに関し、より特定的には、編組線によるシールド構造を備えたケーブルに利用されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のケーブル用コネクタに関して、たとえば、特開2003−264040号公報には、シールド性能の低下を防止することを目的としたシールド電線が開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示されたシールド電線には、3本の絶縁電線が備えられる。絶縁電線の先端には、インバータ装置から連なる機器側端子と接続されるコネクタが設けられている。コネクタよりも後退した位置には、絶縁電線を一括して包囲する筒状の編組導体が設けられている。
【0003】
また、特開2006−4755号公報には、電線の導体が短絡することを回避して電気的な信頼性を維持することを目的としたシールドコネクタが開示されている(特許文献2)。特許文献2に開示されたシールドコネクタにおいては、3本の電線が、筒状のシールド部材により一括して包囲されている。シールド部材は、多数本の金属細線をメッシュ状に編み込んだ編組線からなり、軸線方向および径方向のいずれにおいても伸縮自在な柔軟性を有する。シールド部材の外周には、シースが装着されている。
【0004】
また、特開2007−87874号公報には、ハウジングの成形時に生じる外周面の凹状反り部と保護部材との間の隙間から水が浸入することを防ぐためのシールドコネクタが開示されている(特許文献3)。特許文献3に開示されたシールドコネクタは、樹脂製のハウジングと、ハウジングから導出される電線と、電線を包囲する筒状の可撓性シールド部材と、可撓性シールド部材を包囲するとともに一端がハウジングの外周面に外嵌される筒状のゴムブッシュとを有する。
【0005】
また、特開2002−329557号公報には、シールド部材とシールドシェルとの固着作業の作業性を向上させることを目的とした機器用シールドコネクタが開示されている(特許文献4)。特許文献4に開示された機器用シールドコネクタにおいては、電線の端末部が、カシメ付けにより電線側端子に対して導通可能に固着されている。電線側端子と、その電線側端子に固着された電線の端末部とは、絶縁性樹脂材料からなるホルダによって覆われている。
【0006】
また、特開2003−234144号公報には、絶縁被覆を保護することを目的としたコネクタが開示されている(特許文献5)。また、特開2006−313698号公報には、筒状部材をハウジングに保持する機能の信頼性向上を目的としたシールドコネクタが開示されている(特許文献6)。また、国際公開第2008/69208号パンフレットには、放熱性を向上させることを目的としたシールド導電体が開示されている(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−264040号公報
【特許文献2】特開2006−4755号公報
【特許文献3】特開2007−87874号公報
【特許文献4】特開2002−329557号公報
【特許文献5】特開2003−234144号公報
【特許文献6】特開2006−313698号公報
【特許文献7】国際公開第2008/69208号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献に開示されるように、ケーブルを外部端子に接続するために様々なコネクタ構造が利用されており、たとえば、特許文献1に開示されたシールド電線においては、電気ノイズの外部漏洩を防ぐために絶縁電線を包囲する編組導体が設けられている。しかしながら、シールド電線に過大な外力が加わった場合を想定すると、編組導体が絶縁電線の被覆に食い込み、編組導体と絶縁電線との間の電気的な絶縁が十分に確保されない懸念が生じる。一方、このような懸念に対して、補強部材を絶縁電線の外周上に巻いてテープで固定する手段も考えられるが、この場合、コネクタの構造が複雑になる。
【0009】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、簡易な構成で、ケーブルの電気的な絶縁が十分に確保されるケーブル用コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従ったケーブル用コネクタは、先端部を有する電線と、電線の外周上に配置される編組線と、先端部が延出する第1開口端を有し、編組線の外周上を覆う絶縁性の管部材と、第1開口端と距離を隔てて向かい合う第2開口端を有し、先端部の外周上に配置されるハウジングと、先端部の外周上で第2開口端を塞ぐように設けられるシール部材とを備える。シール部材は、第2開口端から第1開口端まで延び、電線と編組線との間に配置される。
【0011】
このように構成されたケーブル用コネクタによれば、コネクタに過大な外力が加わった場合に、管部材が配置されない第1開口端および第2開口端の間において編組線が電線を直接押し付ける現象を、電線と編組線との間に配置されるシール部材によって防止できる。この際、ハウジングの第2開口端を塞ぐためのシール部材を利用するため、コネクタの構造が複雑になることを回避できる。結果、簡易な構成で、ケーブルの電気的な絶縁を十分に確保することができる。
【0012】
また好ましくは、シール部材には、先端部が挿入される挿入孔が形成される。シール部材は、第1開口端に近接するほど挿入孔の開口面積が増大する笠部を有する。このように構成されたケーブル用コネクタによれば、電線の先端部を笠部側から挿入孔に挿入する際に、その作業性を向上させることができる。
【0013】
また好ましくは、シール部材は、第1開口端と第2開口端との間で先端部を覆う筒状部と、筒状部から径方向外側に張り出し、編組線を電線の外周上に支持するリブ部とを有する。このように構成されたケーブル用コネクタによれば、コネクタに過大な外力が加わった場合に、編組線が電線を直接押し付ける現象をより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したように、この発明に従えば、簡易な構成で、ケーブルの電気的な絶縁が十分に確保されるケーブル用コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ハイブリッド自動車のモータジェネレータ制御に関する構成を示す回路図である。
【図2】この発明の実施の形態におけるケーブル用コネクタを示す断面図である。
【図3】図2中のケーブル用コネクタに設けられたセパレートゴム栓を示す斜視図である。
【図4】図2中のケーブル用コネクタに設けられたセパレートゴム栓を示す別の斜視図である。
【図5】比較のためのケーブル用コネクタを示す断面図である。
【図6】図2中のセパレートゴム栓の第1変形例を示す斜視図である。
【図7】図2中のセパレートゴム栓の第2変形例を示す断面図である。
【図8】図2中のセパレートゴム栓の第3変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0017】
図1は、ハイブリッド自動車のモータジェネレータ制御に関する構成を示す回路図である。本実施の形態では、本発明における端子台の組み付け構造が、ハイブリッド自動車に搭載されるパワー制御ユニット(PCU:Power Control Unit)に適用される。図1を参照して、まず、ハイブリッド自動車のモータジェネレータ制御に関して説明する。
【0018】
ハイブリッド自動車は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と、充放電可能な2次電池(バッテリ)から電力供給されるモータとを動力源とする。
【0019】
ハイブリッド自動車は、バッテリユニット140と、車両用駆動装置120と、図示しないエンジンとを有する。車両用駆動装置120は、モータジェネレータMG1,MG2と、図示しないエンジンおよびモータジェネレータMG1,MG2の間で動力を分配する動力分割機構126と、モータジェネレータMG1,MG2の制御を行なうパワー制御ユニット121とを有する。
【0020】
モータジェネレータMG1は、主にジェネレータとして機能し、エンジンの出力により発電を行なう。また、モータジェネレータMG1は、エンジン始動時にはスタータとして作動する。モータジェネレータMG2は、主にモータとして機能し、エンジンの出力を補
助し、駆動力を高める。また、モータジェネレータMG2は、回生制動時には発電を行ない、バッテリBを充電する。
【0021】
バッテリユニット140には端子141,142が設けられている。PCU121にはDC端子143,144が設けられている。端子141とDC端子143との間および端子142とDC端子144との間は、それぞれ、ケーブル106およびケーブル108によって電気的に接続されている。
【0022】
バッテリユニット140は、バッテリBと、バッテリBの正極と端子141との間に接続されるシステムメインリレーSMR2と、バッテリBの負極と端子142との間に接続されるシステムメインリレーSMR3と、バッテリBの正極と端子141との間に直列に接続される、システムメインリレーSMR1および制限抵抗Rとを有する。システムメインリレーSMR1〜SMR3は、後述の制御装置130から与えられる制御信号SEに応じて導通/非導通状態が制御される。
【0023】
バッテリユニット140は、バッテリBの端子間の電圧VBを測定する電圧センサ110と、バッテリBに流れる電流IBを検知する電流センサ111とを有する。バッテリBとしては、ニッケル水素、リチウムイオン等の2次電池や、燃料電池などを用いることができる。バッテリBに代わる蓄電装置として、電気二重層コンデンサ等の大容量キャパシタを用いることもできる。
【0024】
パワー制御ユニット121は、モータジェネレータMG1,MG2にそれぞれ対応して設けられるインバータ122,114と、インバータ122,114に共通して設けられる昇圧コンバータ112と、制御装置130とを有する。
【0025】
昇圧コンバータ112は、DC端子143,144間の電圧を昇圧する。昇圧コンバータ112は、一方端が端子143に接続されるリアクトル132と、昇圧用IPM(Intelligent Power Module)113と、平滑用コンデンサ133とを有する。昇圧用IPM113は、昇圧後の電圧VHを出力する昇圧コンバータ112の出力端子間に直列に接続されるIGBT素子Q1,Q2と、IGBT素子Q1,Q2にそれぞれ並列に接続されるダイオードD1,D2とを有する。平滑用コンデンサ133は、昇圧コンバータ112によって昇圧された電圧を平滑化する。
【0026】
リアクトル132の他方端は、IGBT素子Q1のエミッタおよびIGBT素子Q2のコレクタに接続されている。ダイオードD1のカソードは、IGBT素子Q1のコレクタと接続され、ダイオードD1のアノードは、IGBT素子Q1のエミッタと接続されている。ダイオードD2のカソードは、IGBT素子Q2のコレクタと接続され、ダイオードD2のアノードは、IGBT素子Q2のエミッタと接続されている。
【0027】
インバータ114は、車輪を駆動するモータジェネレータMG2に対して昇圧コンバータ112の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。インバータ114は、回生制動に伴い、モータジェネレータMG2において発電された電力を昇圧コンバータ112に戻す。このとき、昇圧コンバータ112は、降圧回路として動作するように制御装置130によって制御される。
【0028】
インバータ114は、走行用IPM118を構成するU相アーム115、V相アーム116およびW相アーム117を有する。U相アーム115,V相アーム116およびW相アーム117は、昇圧コンバータ112の出力ライン間に並列に接続されている。
【0029】
U相アーム115は、直列接続されたIGBT素子Q3,Q4と、IGBT素子Q3,Q4とそれぞれ並列に接続されるダイオードD3,D4とを有する。ダイオードD3のカソードは、IGBT素子Q3のコレクタと接続され、ダイオードD3のアノードは、IGBT素子Q3のエミッタと接続されている。ダイオードD4のカソードは、IGBT素子Q4のコレクタと接続され、ダイオードD4のアノードは、IGBT素子Q4のエミッタと接続されている。
【0030】
V相アーム116は、直列接続されたIGBT素子Q5,Q6と、IGBT素子Q5,Q6とそれぞれ並列に接続されるダイオードD5,D6とを有する。ダイオードD5のカソードは、IGBT素子Q5のコレクタと接続され、ダイオードD5のアノードは、IGBT素子Q5のエミッタと接続されている。ダイオードD6のカソードは、IGBT素子Q6のコレクタと接続され、ダイオードD6のアノードは、IGBT素子Q6のエミッタと接続されている。
【0031】
W相アーム117は、直列接続されたIGBT素子Q7,Q8と、IGBT素子Q7,Q8とそれぞれ並列に接続されるダイオードD7,D8とを有する。ダイオードD7のカソードは、IGBT素子Q7のコレクタと接続され、ダイオードD7のアノードは、IGBT素子Q7のエミッタと接続されている。ダイオードD8のカソードは、IGBT素子Q8のコレクタと接続され、ダイオードD8のアノードは、IGBT素子Q8のエミッタと接続されている。
【0032】
各相アームの中間点は、モータジェネレータMG2の各相コイルの各相端に接続されている。すなわち、モータジェネレータMG2は、三相の永久磁石同期モータであり、U,V,W相の3つのコイルは各々一方端が中性点に共に接続されている。U相コイルの他方端は、IGBT素子Q3,Q4の接続ノードに接続されている。V相コイルの他方端は、IGBT素子Q5,Q6の接続ノードに接続されている。W相コイルの他方端は、IGBT素子Q7,Q8の接続ノードに接続されている。
【0033】
電流センサ125は、モータジェネレータMG1に流れる電流をモータ電流値MCRT1として検出し、モータ電流値MCRT1を制御装置130に出力する。電流センサ124は、モータジェネレータMG2に流れる電流をモータ電流値MCRT2として検出し、モータ電流値MCRT2を制御装置130に出力する。
【0034】
インバータ122は、昇圧コンバータ112に対してインバータ114と並列的に接続される。インバータ122は、モータジェネレータMG1に対して昇圧コンバータ112の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。インバータ122は、昇圧コンバータ112から昇圧された電圧を受けてたとえばエンジンを始動させるためにモータジェネレータMG1を駆動する。
【0035】
また、インバータ122は、エンジンのクランクシャフトから伝達される回転トルクによってモータジェネレータMG1で発電された電力を昇圧コンバータ112に戻す。このとき、昇圧コンバータ112は降圧回路として動作するように制御装置130によって制御される。なお、インバータ122の内部の構成はインバータ114と同様であるため、詳細な説明は繰返さない。
【0036】
制御装置130は、トルク指令値TR1,TR2、モータ回転数MRN1,MRN2、電圧VB,VL,VH、電流IBの各値、モータ電流値MCRT1,MCRT2および起動信号IGONを受ける。
【0037】
ここで、トルク指令値TR1,モータ回転数MRN1およびモータ電流値MCRT1は、モータジェネレータMG1に関するものであり、トルク指令値TR2,モータ回転数M
RN2およびモータ電流値MCRT2は、モータジェネレータMG2に関するものである。電圧VBは、バッテリBの電圧であり、電流IBは、バッテリBに流れる電流である。電圧VLは、昇圧コンバータ112の昇圧前電圧であり、電圧VHは、昇圧コンバータ112の昇圧後電圧である。
【0038】
制御装置130は、昇圧コンバータ112に対して昇圧指示を行なう制御信号PWU,降圧指示を行なう制御信号PWDおよび動作禁止を指示する信号CSDNを出力する。
【0039】
制御装置130は、インバータ114に対して昇圧コンバータ112の出力である直流電圧をモータジェネレータMG2を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI2と、モータジェネレータMG2で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ112側に戻す回生指示PWMC2とを出力する。制御装置130は、インバータ122に対して直流電圧をモータジェネレータMG1を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI1と、モータジェネレータMG1で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ112側に戻す回生指示PWMC1とを出力する。
【0040】
続いて、図1中のパワー制御ユニット121およびモータジェネレータMG1,MG2間を繋ぐケーブルに用いられるコネクタの構造について説明する。
【0041】
図2は、この発明の実施の形態におけるケーブル用コネクタを示す断面図である。図2を参照して、本実施の形態におけるケーブル用コネクタ10は、図1中のパワー制御ユニット121の外装をなすインバータケース12に接続されている。ケーブル用コネクタ10は、被覆電線21と、編組線31と、コルゲート管36と、コネクタハウジング41とを有する。
【0042】
被覆電線21は、電線部23および被覆部22から構成されている。電線部23は、通電可能な導体部分であり、銅合金やアルミニウム合金などの金属線から形成されている。電線部23は、単芯線または複数本の細線を螺旋状に撚り合わせた撚り線から形成されている。
【0043】
被覆部22は、ポリエチレンなどの絶縁性の樹脂材料から形成されている。被覆部22は、電線部23の外周を覆うように設けられている。被覆部22は、電線部23の先端部のうち所定の長さだけ露出させるように設けられている。被覆部22から露出する電線部23には、金属製の端子26が接続されている。端子26は、インバータケース12に収容されたケース側端子14に接続されている。
【0044】
なお、図2中には、1本の被覆電線21のみが示されているが、実際には、モータのU相、V相およびW相に対応する3本の被覆電線21が紙面の奥行き方向に並んで設けられている。
【0045】
編組線31は、被覆電線21の外周上に配置されている。編組線31は、多数本の金属細線をメッシュ状に編み込んで形成されている。一例を挙げれば、編組線31は、銅にスズメッキを施した細線から形成されている。編組線31を形成する細線は、たとえば、0.2〜0.5mmの直径を有する。編組線31は、被覆電線21の軸線方向および径方向のいずれにおいても伸縮自在な柔軟性を有する。編組線31は、高電圧機器を電気的に接続する被覆電線21で発生した電磁界ノイズが外部に漏れ出すことを防ぐシールドとして設けられている。
【0046】
コルゲート管36は、絶縁性の樹脂材料から形成されている。コルゲート管36は、編組線31の外周上をさらに覆うように設けられている。すなわち、被覆電線21の外周上には、編組線31およびコルゲート管36が挙げた順に内側から外側に並んで配置されている。コルゲート管36は、被覆電線21を保護するための保護部材として設けられている。コルゲート管36は、蛇腹形状の管壁を有し、被覆電線21の変形に追随して自在に湾曲する。
【0047】
コルゲート管36は、開口端37を有する。コルゲート管36は、管形状を有し、その一端の開口端37で開口している。被覆電線21は、インバータケース12に接続される側の一端がコルゲート管36の開口端37から突出する形態により設けられている。被覆電線21は、開口端37から延出する先端部24を有する。
【0048】
コネクタハウジング41は、樹脂材料から形成されている。コネクタハウジング41は、被覆電線21の先端部24の外周上に配置されている。コネクタハウジング41は、図2中に示す位置で先すぼみの断面形状を有し、先すぼみする先端には、端子挿入孔43が形成されている。端子26は、端子挿入孔43を通じてコネクタハウジング41からインバータケース12に向けて延出し、その先でケース側端子14に接続されている。
【0049】
端子26には、係止孔27が形成されている。係止孔27は、コネクタハウジング41の内部に配置されている。コネクタハウジング41には、係止用突起部44が一体に成形されている。係止用突起部44が係止孔27に係合することによって、端子26がコネクタハウジング41内に保持されている。
【0050】
コネクタハウジング41は、開口端42を有する。コネクタハウジング41は、端子挿入孔43が形成された端部とは反対側の端部の開口端42で開口している。開口端42と、コルゲート管36の開口端37とは、互いに距離を隔てて向かい合っている。開口端42と開口端37とは、被覆電線21の軸線方向において互いに距離を隔てて対峙している。すなわち、被覆電線21は、開口端42と開口端37との間でコネクタハウジング41およびコルゲート管36のいずれによっても覆われていない。開口端42は、開口端37よりも大きい開口面積を有する。
【0051】
インバータケース12には、その内外を連通させる接続孔13が形成されている。コネクタハウジング41は、接続孔13に挿入されている。接続孔13の内壁とコネクタハウジング41との間には、インバータケース12内への水や異物の侵入を防ぐためのゴムリング15が介挿されている。
【0052】
ケーブル用コネクタ10は、シェル56と、加締め用リング61と、セパレートゴム栓71と、バックリテーナ51とをさらに有する。
【0053】
シェル56は、コネクタハウジング41の外周上に嵌合されている。シェル56が図示しないボルトを用いてインバータケース12の側面に締結されることによって、ケーブル用コネクタ10がインバータケース12に固定されている。
【0054】
編組線31は、開口端37を通じてコルゲート管36から引き出され、シェル56の外周上に嵌装されている。編組線31は、縮径部32と、テーパ部33と、拡径部34とから構成されている。縮径部32は、コルゲート管36の内側に配置されている。拡径部34は、シェル56の外周上に配置されている。テーパ部33は、縮径部32と拡径部34との間に配置されている。テーパ部33は、縮径部32から拡径部34に向けて徐々に広がるように形成されている。
【0055】
加締め用リング61は、シェル56の外周上に配置されている。加締め用リング61とシェル56との間には、編組線31の拡径部34が挟持されている。加締め用リング61が加締められることによって、編組線31の拡径部34がシェル56の外周上に固定されている。
【0056】
図3は、図2中のケーブル用コネクタに設けられたセパレートゴム栓を示す斜視図である。図4は、図2中のケーブル用コネクタに設けられたセパレートゴム栓を示す別の斜視図である。
【0057】
図1から図3を参照して、セパレートゴム栓71は、弾性体から形成されている。セパレートゴム栓71は、開口端42においてコネクタハウジング41と被覆電線21との間の隙間を埋めるシール部材としての機能を有する。本実施の形態におけるケーブル用コネクタ10では、さらに、セパレートゴム栓71が、その開口端42からコルゲート管36の開口端37まで延びている。
【0058】
セパレートゴム栓71の構造についてより具体的に説明すると、セパレートゴム栓71は、全体として、被覆電線21の軸線方向に延びる筒形状を有する。セパレートゴム栓71には、被覆電線21の軸線方向に貫通する挿入孔77が形成されている。被覆電線21の先端部24は、挿入孔77に挿入されている。
【0059】
セパレートゴム栓71は、シール部72と、筒状部73と、鍔状部76と、リブ部74とから構成されている。
【0060】
シール部72は、先端部24の外周上に位置決めされ、コネクタハウジング41の開口端42を塞ぐように設けられている。シール部72は、コネクタハウジング41の内周面と被覆電線21の被覆部22とに接触して設けられている。コネクタハウジング41および被覆電線21に対するシール部72の接触面は、水や異物の侵入を防ぐためのリップ形状に形成されている。
【0061】
筒状部73は、筒形状を有し、被覆電線21の軸線方向においてシール部72に連設されている。筒状部73は、シール部72からコルゲート管36に向けて筒状に延びている。筒状部73は、開口端42と開口端37との間で延びている。開口端42と開口端37との間において、被覆電線21の先端部24の外周上には筒状部73が配置され、さらに筒状部73の外周上には編組線31のテーパ部33が配置されている。筒状部73は、コルゲート管36に向けて延びる先端で、編組線31を介して開口端37に当接している。
【0062】
鍔状部76は、筒状部73から半径方向外側に向けて鍔状に広がっている。鍔状部76は、被覆電線21の軸線方向において開口端42と隣接して配置されている。鍔状部76は、鍔状に広がる先端で編組線31の拡径部34と接触し、編組線31を被覆電線21の外周上に支持している。
【0063】
リブ部74は、筒状部73から径方向外側に張り出して形成されている。リブ部74は、鍔状部76から被覆電線21の軸線方向に張り出して形成されている。複数のリブ部74が、被覆電線21の軸線を中心とする周方向において互いに間隔を隔てて設けられている。被覆電線21の軸線方向から見た場合に、複数のリブ部74は、筒状部73の外周面から放射状に延びて形成されている。
【0064】
リブ部74は、筒状部73から張り出す先端にテーパ面74aを有する。テーパ面74aは、被覆電線21の軸線に対して傾斜して形成されている。テーパ面74aは、被覆電線21とテーパ面74aとの間の長さが、被覆電線21の軸線方向において鍔状部76から離れるに従って小さくなるように形成されている。複数のリブ部74は、テーパ面74aで編組線31のテーパ部33と接触し、編組線31を被覆電線21の外周上に支持している。
【0065】
筒状部73には、笠部73pが形成されている。笠部73pは、シール部72からコルゲート管36に向けて延びる筒状部73の先端に配置されている。笠部73pは、被覆電線21の軸線方向において開口端37に近づくほど挿入孔77の開口面積が増大するように形成されている。笠部73pは、被覆電線21の軸線方向において径方向外側に広がりながら開口端37に向けて筒状に延びている。笠部73pは、コルゲート管36の開口端37に当接している。
【0066】
ケーブル用コネクタ10をインバータケース12に接続する際、被覆電線21の先端部24を笠部73p側から挿入孔77に挿入する工程が想定される。この工程時、笠部73pは、上記の先広がりの形状を有するため、被覆電線21の先端部24を容易に挿入孔77に挿入することができる。
【0067】
なお、笠部73pを、開口端37よりも奥まったコルゲート管36の内側に配置してもよい。しかしながら、セパレートゴム栓71の取り付け時の笠部73pとコルゲート管36との干渉を考慮すると、笠部73pが開口端37に当接するように設けられる構成が好ましい。
【0068】
バックリテーナ51は、リング形状を有する。バックリテーナ51は、筒状部73の外周上であって、被覆電線21の軸線方向においてシール部72と鍔状部76との間に配置されている。バックリテーナ51は、開口端42に隣り合う位置でコネクタハウジング41の内周面に係止されている。
【0069】
続いて、図2中のケーブル用コネクタ10によって奏される作用、効果について説明する。
【0070】
図5は、比較のためのケーブル用コネクタを示す断面図である。図5を参照して、本比較例では、図2中のセパレートゴム栓71に替えて、セパレートゴム栓90が設けられている。セパレートゴム栓90は、コネクタハウジング41の開口端42を塞ぐためのシール部72のみから構成されている。
【0071】
車両衝突時、ケーブル用コネクタ10が、車両上にパワー制御ユニットとともに収められた他機器や、車両ボディなどから外圧を受ける場合が想定される。この際、コネクタハウジング41の開口端42とコルゲート管36の開口端37との間で、編組線31が被覆電線21に押し付けられて被覆電線21の被覆部22に食い込む懸念がある。また、被覆電線21の外周上に補強クロスをテープで固定するという対策も考えられるが、この場合、ケーブル用コネクタ10の部品点数が増えたり、補強クロスを固定するための工程が新たに生じたりする。
【0072】
また、収容する被覆電線21に合わせてコルゲート管36の大きさが決定されるため、コルゲート管36を延長して大径のコネクタハウジング41を覆うことはできない。一方、コネクタハウジング41に合わせてコルゲート管36も大径にすると、配索経路の全体に渡ってケーブルが大径化し、配索スペースが余計に必要となる。
【0073】
図2を参照して、これに対して、本実施の形態では、コルゲート管36によって覆うことができないコネクタハウジング41の周辺で、編組線31と被覆電線21との間にセパレートゴム栓71が配置される。このような構成により、車両衝突時に仮に編組線31が被覆電線21に向けて変形したとしても、編組線31がセパレートゴム栓71に接触することによって、編組線31が被覆電線21を直接押し付ける現象を防止できる。この際、コネクタハウジング41の開口端42を塞ぐためのセパレートゴム栓71を利用するため、部品点数が増えたり、新たな工程が必要になったりしない。
【0074】
特に本実施の形態におけるケーブル用コネクタ10においては、複数のリブ部74によって編組線31が被覆電線21の外周上に支持されている。このような構成により、車両衝突時に編組線31から加わる衝撃を複数のリブ部74で効率的に吸収して、被覆電線21を適切に保護することができる。また、笠部73pは、セパレートゴム栓71の端部で内側から外側に突っ張る形状を有するため、編組線31と被覆電線21との接触をより確実に防ぐことができる。
【0075】
続いて、図2中のセパレートゴム栓71の各種変形例について説明する。図6は、図2中のセパレートゴム栓の第1変形例を示す斜視図である。
【0076】
図2および図6を参照して、本変形例では、筒状部73の外周上に、図3中に示す複数のリブ部74に替えて、円錐部81が設けられる。円錐部81は、図3中において互いに隣り合うリブ部74間を中実にした形状を有する。セパレートゴム栓71には、円錐部81の周面としてテーパ面81aが形成されている。円錐部81は、テーパ面81aで編組線31のテーパ部33と接触し、編組線31を被覆電線21の外周上に支持する。
【0077】
図7は、図2中のセパレートゴム栓の第2変形例を示す断面図である。図7を参照して、本変形例では、上記に説明した円錐部81に、複数の中空部82が形成されている。中空部82は、被覆電線21の軸線(図中に示す中心線)方向においてシール部72側に開口して形成されている。複数の中空部82は、被覆電線21の軸線周りの周方向に間隔を隔てて形成されている。
【0078】
図8は、図2中のセパレートゴム栓の第3変形例を示す断面図である。図8を参照して、本変形例では、上記に説明した円錐部81に、複数の周回溝86が形成されている。周回溝86は、テーパ面81aから凹み、被覆電線21の軸線周りの周方向に延びて形成されている。複数の周回溝86は、被覆電線21の軸線方向に互いに間隔を隔てて形成されている。
【0079】
これら各種のセパレートゴム栓71を用いた場合にも、車両衝突時に編組線31から加わる衝撃を効率的に吸収することができる。
【0080】
以上に説明した、この発明の実施の形態におけるケーブル用コネクタの構造についてまとめて説明すると、本実施の形態におけるケーブル用コネクタ10は、先端部24を有する電線としての被覆電線21と、被覆電線21の外周上に配置される編組線31と、先端部24が延出する第1開口端としての開口端37を有し、編組線31の外周上を覆う絶縁性の管部材としてのコルゲート管36と、開口端37と距離を隔てて向かい合う第2開口端としての開口端42を有し、先端部24の外周上に配置されるハウジングとしてのコネクタハウジング41と、先端部24の外周上で開口端42を塞ぐように設けられるシール部材としてのセパレートゴム栓71とを備える。セパレートゴム栓71は、開口端42から開口端37まで延び、被覆電線21と編組線31との間に配置される。
【0081】
このように構成された、この発明の実施の形態におけるケーブル用コネクタ10によれば、コルゲート管36によって覆うことができないコネクタハウジング41の周辺で、編組線31と被覆電線21との間にセパレートゴム栓71を配置することによって、車両衝突時に編組線31が被覆電線21を直接押し付ける現象を防止する。これにより、ケーブル用コネクタ10の構造や接続時の工程を簡易としたまま、ケーブルの電気的な絶縁の信頼性を向上させることができる。
【0082】
なお、本実施の形態では、パワー制御ユニット121およびモータジェネレータMG1,MG2間を繋ぐケーブルに本発明を適用したが、これに限られず、たとえば、図1中において、バッテリユニット140およびパワー制御ユニット121間を繋ぐケーブルにも適用することができる。
【0083】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0084】
この発明は、たとえば、モータやインバータといった高電圧機器のケーブルに利用される。
【符号の説明】
【0085】
10 ケーブル用コネクタ、12 インバータケース、13 接続孔、14 ケース側端子、15 ゴムリング、21 被覆電線、22 被覆部、23 電線部、24 先端部、26 端子、27 係止孔、31 編組線、32 縮径部、33 テーパ部、34 拡径部、36 コルゲート管、37,42 開口端、41 コネクタハウジング、43 端子挿入孔、44 係止用突起部、51 バックリテーナ、56 シェル、61 加締め用リング、71,90 セパレートゴム栓、72 シール部、73 筒状部、73p 笠部、74 リブ部、74a,81a テーパ面、76 鍔状部、77 挿入孔、81 円錐部、82 中空部、86 周回溝、106,108 ケーブル、110 電圧センサ、111 電流センサ、112 昇圧コンバータ、113 昇圧用IPM、114,122 インバータ、115 U相アーム、116 V相アーム、117 W相アーム、118 走行用IPM、120 車両用駆動装置、121 パワー制御ユニット、124,125 電流センサ、126 動力分割機構、130 制御装置、132 リアクトル、133 平滑用コンデンサ、140 バッテリユニット、141,142 端子、143,144 DC端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部を有する電線と、
前記電線の外周上に配置される編組線と、
前記先端部が延出する第1開口端を有し、前記編組線の外周上を覆う絶縁性の管部材と、
前記第1開口端と距離を隔てて向かい合う第2開口端を有し、前記先端部の外周上に配置されるハウジングと、
前記先端部の外周上で前記第2開口端を塞ぐように設けられるシール部材とを備え、
前記シール部材は、前記第2開口端から前記第1開口端まで延び、前記電線と前記編組線との間に配置される、ケーブル用コネクタ。
【請求項2】
前記シール部材には、前記先端部が挿入される挿入孔が形成され、
前記シール部材は、前記第1開口端に近接するほど前記挿入孔の開口面積が増大する笠部を有する、請求項1に記載のケーブル用コネクタ。
【請求項3】
前記シール部材は、前記第1開口端と前記第2開口端との間で前記先端部を覆う筒状部と、前記筒状部から径方向外側に張り出し、前記編組線を前記電線の外周上に支持するリブ部とを有する、請求項1または2に記載のケーブル用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−252908(P2012−252908A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125414(P2011−125414)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】