説明

ケーブル配索構造

【課題】複数本のケーブルを少ない部品によってトレーリングアームの上面に保持することが可能なケーブル配索構造を提供する。
【解決手段】フットブレーキ用駆動伝達軸8と、ABSセンサケーブル10と、パーキングブレーキケーブル12とを、車輪支持部材4から車両前後方向に延在するトレーリングアーム2の上面側に配策するケーブル配索構造であって、フットブレーキ用駆動伝達軸8を保持するフットブレーキクランプ16に、ABSセンサケーブル10を挿通させた挿通部材28を取り付け、ABSセンサケーブル10のうち挿通部材28よりも車輪支持部材4から離れた部分をABSクランプ30に保持し、フットブレーキ用駆動伝達軸8のうちフットブレーキクランプ16よりも車輪支持部材4から離れる方向に延在する部分を、上向きに傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション装置が備えるトレーリングアームの上面側に、フットブレーキ用駆動伝達軸、ABSセンサケーブル及びパーキングブレーキケーブルを配策するケーブル配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トーションビーム式サスペンション等、トレーリングアームを備えるサスペンション装置では、アンチロック・ブレーキ・システムが有するABSセンサケーブル等、複数本のケーブルを、トレーリングアームの上面側に配策する場合が多い。これは、各ケーブルと路面との間に生じる干渉を回避するためである。なお、上述したトレーリングアームは、車輪を回転自在に支持する車輪支持部材(アクスル)と、サスペンションメンバ等の車体側部材とを連結する部材であり、車輪支持部材から車両前後方向に延在する部材である。
【0003】
このようなサスペンション装置としては、例えば、特許文献1に記載されているものがある。
このサスペンション装置は、コイルスプリングを取り付ける支持ブラケットが、所定間隔を空けて離間させた一対の連結部を備えており、これら一対の連結部を、トレーリングアームに連結している。そして、トレーリングアームにおける一対の連結部間に位置する部分に、ケーブル配置用の孔部を備える。
【特許文献1】特開2006−182141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているサスペンション装置を含め、トレーリングアームを備えるサスペンション装置では、上記の理由により、コイルスプリングとタイヤとの間に、ABSセンサケーブル等、複数本のケーブルを配策する場合が多い。
このため、各ケーブル同士に生じる干渉や、各ケーブルと、排気ダクト等、サスペンション装置の周辺部材に生じる干渉を抑制するために、各ケーブル同士、及び各ケーブルとサスペンション装置の周辺部材との間に、隙間を確保する必要がある。
したがって、各ケーブルを、トレーリングアームの上面に固定した複数のクランプを用いて保持する必要があり、各ケーブルを保持するための部品点数が増加するという問題が生じるおそれがある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、複数本のケーブルを、少ない部品によってトレーリングアームの上面側に保持することが可能な、ケーブル配索構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、フットブレーキ装置用の駆動力を伝達するフットブレーキ用駆動伝達軸、アンチロック・ブレーキ・システム用のABSセンサケーブル及びパーキングブレーキ装置用のパーキングブレーキケーブルを、車輪を回転自在に支持する車輪支持部材から車両前後方向に延在するトレーリングアームの上面側に配策するケーブル配索構造であって、
前記トレーリングアームの上面に固定したフットブレーキクランプに、前記フットブレーキ用駆動伝達軸を保持し、
前記ABSセンサケーブルを、前記フットブレーキクランプよりも前記車輪支持部材から離れた位置で前記トレーリングアームの上面に固定したABSクランプに保持し、且つ前記トレーリングアームの上面側に配置した挿通部材に挿通させ、
前記フットブレーキクランプに、前記挿通部材を取り付け、
前記ABSクランプよりも前記車輪支持部材から離れた位置で前記トレーリングアームの上面に固定したパーキングクランプに、前記パーキングブレーキケーブルを保持し、
前記フットブレーキ用駆動伝達軸のうち前記フットブレーキクランプよりも前記車輪支持部材から離れる方向に延在する部分を、上向きに傾斜させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、各ケーブル同士に生じる干渉、及び各ケーブルとサスペンション装置の周辺部材に生じる干渉を抑制するとともに、各ケーブルを、少ない部品によってトレーリングアームの上面側に保持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
(構成)
まず、図1から図3を参照して、本実施形態のケーブル配索構造を用いて形成した車両Cの構成を説明する。
図1は、ケーブル配索構造を用いて形成した車両Cの一部を示す図であり、車両Cを上方から見た(上面視)図である。また、図2は、図1のII線矢視図であり、車両Cの一部を側方から見た(側面視)図である。また。図3は、図2のIII線矢視図であり、車両Cの一部を前方から見た(前面視)図である。
【0008】
図1から図3中に示すように、本実施形態のケーブル配索構造を用いて形成した車両Cは、サスペンション装置1として、トーションビーム式サスペンション、すなわち、トレーリングアーム2を備えるサスペンション装置を用いる。なお、図1から図3中に示すサスペンション装置1は、後輪用のサスペンション装置である。
トレーリングアーム2は、車輪(図示せず)を回転自在に支持する車輪支持部材4(アクスル)から車両前後方向に延在する部材であり、車輪支持部材4と車体側部材6とを連結する部材である。なお、本実施形態では、車体側部材6を、サスペンションメンバとする。
【0009】
ケーブル配索構造は、トレーリングアーム2の上面側に、複数本のケーブルを配策する構造である。
複数本のケーブルは、フットブレーキ装置用の駆動力を伝達するフットブレーキ用駆動伝達軸8と、アンチロック・ブレーキ・システム用のABSセンサケーブル10と、パーキングブレーキ装置用のパーキングブレーキケーブル12とする。すなわち、ケーブル配索構造は、トレーリングアーム2の上面側に、フットブレーキ用駆動伝達軸8、ABSセンサケーブル10及びパーキングブレーキケーブル12を配策する構造である。
【0010】
フットブレーキ用駆動伝達軸8は、車室内に配置したブレーキペダル(図示せず)の操作に応じて車輪に制動力を与えるためのケーブルであり、ABSセンサケーブル10と比較して、大径及び高剛性である。フットブレーキ用駆動伝達軸8の一方の端部は、車輪のブレーキユニット14が備えるシリンダ(図示せず)に接続させてあり、フットブレーキ用駆動伝達軸8の他方の端部は、マスタシリンダ(図示せず)に接続している。これにより、フットブレーキ用駆動伝達軸8は、サスペンション装置1に上下ストロークが生じると、この上下ストロークに伴って、上下方向に揺動する。なお、図中では、フットブレーキ用駆動伝達軸8のうち、両端部間の一部のみを記載している。
【0011】
フットブレーキ用駆動伝達軸8の両端部間の一部は、トレーリングアーム2の上面に固定した、フットブレーキクランプ16に保持する。
フットブレーキクランプ16は、鋼板等、板状の金属材料を用いて形成してあり、共にトレーリングアーム2の上面に対して垂直に延在する、フットブレーキ用駆動伝達軸保持部18及び挿通部材取り付け部20を備えている。
【0012】
フットブレーキ用駆動伝達軸保持部18は、車幅方向に延在しており、フットブレーキ用駆動伝達軸8を保持する保持孔22を有する。保持孔22は、車両前後方向に貫通する孔であり、フットブレーキ用駆動伝達軸8の両端部間の一部を挿通させる。保持孔22にフットブレーキ用駆動伝達軸8の両端部間の一部を挿通させた状態では、フットブレーキ用駆動伝達軸保持部18がフットブレーキ用駆動伝達軸8を保持することとなる。フットブレーキクランプ16のフットブレーキ用駆動伝達軸8に対する保持力は、フットブレーキ用駆動伝達軸8の軸線方向への、フットブレーキ用駆動伝達軸8とフットブレーキクランプ16との相対変位を抑制する強さとする。
【0013】
挿通部材取り付け部20は、フットブレーキ用駆動伝達軸保持部18と連続するとともに、フットブレーキ用駆動伝達軸保持部18に対し、トレーリングアーム2の形状に倣うように傾斜して、車両前後方向に延在する。また、挿通部材取り付け部20は、車幅方向に貫通する取り付け孔24を有する。
フットブレーキ用駆動伝達軸8の両端部間のうち、フットブレーキクランプ16よりも車輪支持部材4から離れる方向に延在する部分は、上向きに傾斜させてある。これにより、フットブレーキ用駆動伝達軸8の両端部間のうち、フットブレーキクランプ16よりも車輪支持部材4から離れる方向に延在する部分の軸線を、パーキングブレーキケーブル12の軸線に対して0°以上の角度で傾斜させる。
【0014】
ABSセンサケーブル10は、車輪の回転速度を検出するためのケーブルであり、パーキングブレーキケーブル12及びフットブレーキ用駆動伝達軸8と比較して、小径及び低剛性である。ABSセンサケーブル10の一方の端部は、車輪支持部材4に固定したアクスルクランプ26に保持させてあり、ABSセンサケーブル10の他方の端部は、アンチロック・ブレーキ・システムのコントロールユニット(図示せず)に接続している。なお、図中では、ABSセンサケーブル10のうち、両端部間の一部と、車輪支持部材4に固定した端部とを記載している。
【0015】
ABSセンサケーブル10の両端部間の一部は、トレーリングアーム2の上面側に配置した挿通部材28に挿通させてある。
挿通部材28は、プラスチック等の樹脂材料を用いて形成してあり、ABSセンサケーブル10に対する拘束力が、挿通部材28に対してABSセンサケーブル10が摺動可能な強さとなるように形成してある。具体的には、挿通部材28を、挿通部材28に対してABSセンサケーブル10が摺動可能な強さとなるように、ABSセンサケーブル10との接触面積や、ABSセンサケーブル10に対する押圧力となるように形成する。
【0016】
また、挿通部材28は、ABSセンサケーブル10を挿通させる部分よりも車幅方向内方の部分を、挿通部材取り付け部20が有する取り付け孔24に挿通させて、挿通部材取り付け部20に取り付けてある。これにより、挿通部材28を、フットブレーキクランプ16に取り付けてある。
また、ABSセンサケーブル10の両端部間のうち、挿通部材28よりも車輪支持部材4から離れた部分は、トレーリングアーム2の上面に固定した、ABSクランプ30に保持させてある。ABSクランプ30を固定する位置は、トレーリングアーム2の上面のうち、フットブレーキクランプ16よりも車輪支持部材4から離れた位置である。
【0017】
ABSクランプ30は、フットブレーキクランプ16と同様、鋼板等、板状の金属材料を用いて形成してあり、トレーリングアーム2の上面に対して垂直に延在する面に、ABSセンサケーブル10を保持する。ABSクランプ30のABSセンサケーブル10に対する保持力は、ABSセンサケーブル10の軸線方向への、ABSセンサケーブル10とABSクランプ30との相対変位を抑制する強さとする。
また、ABSセンサケーブル10の両端部間のうち、挿通部材28とABSクランプ30との間の部分は、パーキングブレーキケーブル12よりも車幅方向内方、且つ側面視でパーキングブレーキケーブル12と重なる位置に配置する。
【0018】
ABSセンサケーブル10の両端部間のうち、挿通部材28よりも車輪支持部材4に近い位置には、この位置を撓ませることにより、湾曲部32を形成している。これにより、ABSセンサケーブル10の両端部間のうち、挿通部材28とABSクランプ30との間の部分を、直線状または略直線状としている。すなわち、本実施形態では、ABSセンサケーブル10の挿通部材28よりも車輪支持部材4に近い位置に、ABSセンサケーブル10の両端部間のうち、挿通部材28とABSクランプ30との間の部分が直線状または略直線状となるように、湾曲部32を形成する。
【0019】
ABSセンサケーブル10に湾曲部32を形成する際には、まず、ABSセンサケーブル10の両端部間を、挿通部材28に挿通させるとともに、ABSクランプ30に保持させる。そして、ABSセンサケーブル10の両端部間のうち、挿通部材28よりも車輪支持部材4に近い部分を、車輪支持部材4側へ引っ張る。これにより、ABSセンサケーブル10の両端部間のうち、挿通部材28とABSクランプ30との間の部分を、直線状または略直線状とする。これに加え、湾曲部32を、ABSセンサケーブル10の両端部間のうち、挿通部材28よりも車輪支持部材4に近い位置に形成する。
【0020】
湾曲部32を形成したABSセンサケーブル10は、ABSセンサケーブル10自身の反力により、挿通部材28とABSクランプ30との間の部分を直線状または略直線状とした状態を保持する。
また、湾曲部32は、パーキングブレーキケーブル12よりも車幅方向内方、且つ側面視でパーキングブレーキケーブル12と重なる位置に配置する。
なお、上述した湾曲部32は、例えば、アンチロック・ブレーキ・システムのコントロールユニットから、各車輪が備えるアクスルクランプ26までの長さに、ばらつきが発生している場合に形成する。しかしながら、ABSセンサケーブル10の長さを、上記コントロールユニットからアクスルクランプ26までの長さに合わせて調節することにより、ABSセンサケーブル10が湾曲部32を有していない構成としてもよい。
【0021】
パーキングブレーキケーブル12は、車室内に配置したパーキングレバー(図示せず)の操作状態に応じて車輪(後輪)をロックさせるためのケーブルであり、ABSセンサケーブル10と比較して、大径及び高剛性である。パーキングブレーキケーブル12の一方の端部は、車輪支持部材4に固定してあり、パーキングブレーキケーブル12の他方の端部は、パーキングレバーに接続している。なお、図中では、パーキングブレーキケーブル12のうち、両端部間の一部と、車輪支持部材4に固定した端部とを記載している。
【0022】
パーキングブレーキケーブル12の両端部間の一部は、トレーリングアーム2の上面において、ABSクランプ30よりも車輪支持部材4から離れた位置に固定した、パーキングクランプ34に保持する。
パーキングクランプ34は、挿通部材28と同様、プラスチック等の樹脂材料を用いて形成してあり、パーキングブレーキケーブル12の両端部間の一部を包囲した状態で、パーキングブレーキケーブル12を保持する。パーキングクランプ34のパーキングブレーキケーブル12に対する保持力は、パーキングブレーキケーブル12の軸線方向への、パーキングブレーキケーブル12とパーキングクランプ34との相対変位を抑制する強さとする。
【0023】
(第一実施形態の効果)
(1)本実施形態のケーブル配索構造では、ABSセンサケーブルのうち挿通部材よりも車輪支持部材から離れた部分を、トレーリングアームの上面に固定したABSクランプに保持する。さらに、パーキングブレーキケーブルを、挿通部材及びABSクランプよりも車輪支持部材から離れた位置で、トレーリングアームの上面に固定した、パーキングクランプに保持する。
このため、ABSセンサケーブルとパーキングブレーキケーブルとの間、及びABSセンサケーブルとフットブレーキ用駆動伝達軸との間に確保する、互いの干渉を抑制するための隙間を減少させることが可能となる。
【0024】
また、フットブレーキ用駆動伝達軸のうちフットブレーキクランプよりも車輪支持部材から離れた部分を、車輪支持部材から離れるにつれて上方へ傾斜させる。
このため、サスペンション装置の上下ストロークに伴って、フットブレーキ用駆動伝達軸が上下方向へ揺動する隙間を、確保することが容易となる。
その結果、ABSセンサケーブル、パーキングブレーキケーブル及びフットブレーキ用駆動伝達軸と、サスペンション装置の周辺部材との間に確保する隙間を、増加させることが可能となる。
【0025】
また、トレーリングアームの上面に固定し、且つフットブレーキ用駆動伝達軸を保持するフットブレーキクランプに、ABSセンサケーブルを挿通させた挿通部材を取り付ける
このため、各ケーブルをトレーリングアームの上面側に保持するための部品点数を、減少させることが可能となる。
以上により、各ケーブル同士に生じる干渉、及び各ケーブルとサスペンション装置の周辺部材に生じる干渉を抑制することが可能となり、複数本のケーブルを、少ない部品によってトレーリングアームの上面側に保持することが可能となる。これにより、車両の製造コストを低減することが可能となる。
【0026】
(2)また、本実施形態のケーブル配索構造では、挿通部材のABSセンサケーブルに対する拘束力を、挿通部材に対してABSセンサケーブルが摺動可能な強さとする。
このため、ABSセンサケーブルを挿通部材に挿通させた状態においても、ABSセンサケーブルの湾曲状態等、ABSセンサケーブルの配置状態を調節することが容易となる。
その結果、ABSセンサケーブルの取り付け作業における作業効率を向上させることが可能となる。
【0027】
(3)また、本実施形態のケーブル配索構造では、ABSセンサケーブルのうち挿通部材よりも車輪支持部材に近い位置に、ABSセンサケーブルのうち挿通部材とABSクランプとの間の部分が直線状または略直線状となるように撓ませた湾曲部を形成する。
このため、ABSセンサケーブルのうち、挿通部材とABSクランプとの間の部分が変位することを抑制可能となり、挿通部材とABSクランプとの間において、ABSセンサケーブルとパーキングブレーキケーブルとの隙間を確保することが容易となる。
その結果、挿通部材とABSクランプとの間において、ABSセンサケーブルとパーキングブレーキケーブルとの干渉を抑制することが可能となり、ABSセンサケーブルとパーキングブレーキケーブルとの隙間を減少させることが可能となる。
【0028】
(4)また、本実施形態のケーブル配索構造では、ABSセンサケーブルが有する湾曲部を、パーキングブレーキケーブルよりも車幅方向内方、且つ側面視でパーキングブレーキケーブルと重なる位置に配置する。
このため、車両走行時等において、ABSセンサケーブルのうち、特に変位を生じやすい湾曲部を、ABSセンサケーブルよりも大径及び高剛性のパーキングブレーキケーブルによって、車両外部から侵入する泥や雪等から保護することが可能となる。
その結果、ABSセンサケーブルを保護する別部材を必要とせずに、ABSセンサケーブルが有する湾曲部への、泥や雪等の付着を抑制することが可能となり、ABSセンサケーブルが有する湾曲部の変位を抑制することが可能となる。これにより、ABSセンサケーブルとパーキングブレーキケーブル及びフットブレーキ用駆動伝達軸との干渉や、ABSセンサケーブルとサスペンション装置の周辺部材との干渉を抑制することが可能となる。
【0029】
(5)また、本実施形態のケーブル配索構造では、ABSセンサケーブルの挿通部材とABSクランプとの間の部分を、パーキングブレーキケーブルよりも車幅方向内方、且つ側面視でパーキングブレーキケーブルと重なる位置に配置する。
このため、車両走行時等において、ABSセンサケーブルのうち直線状または略直線状とした部分を、パーキングブレーキケーブルによって、車両外部から侵入する泥や雪等から保護することが可能となる。
その結果、ABSセンサケーブルを保護する別部材を必要とせずに、ABSセンサケーブルのうち直線状または略直線状とした部分への、泥や雪等の付着を抑制することが可能となり、ABSセンサケーブルの変位を抑制することが可能となる。
【0030】
(応用例)
(1)なお、本実施形態のケーブル配索構造では、挿通部材のABSセンサケーブルに対する拘束力を、挿通部材に対してABSセンサケーブルが摺動可能な強さとするが、これに限定するものではない。すなわち、挿通部材のABSセンサケーブルに対する拘束力を、挿通部材に対してABSセンサケーブルが摺動しない強さとしてもよい。もっとも、本実施形態のケーブル配索構造のように、挿通部材のABSセンサケーブルに対する拘束力を、上記の強さとすることが、ABSセンサケーブルの取り付け作業における作業効率を向上させることが可能となるため、好適である。
【0031】
(2)また、本実施形態のケーブル配索構造では、ABSセンサケーブルのうち挿通部材よりも車輪支持部材に近い位置に、ABSセンサケーブルのうち挿通部材とABSクランプとの間の部分が直線状または略直線状となるように撓ませた湾曲部を形成する。しかしながら、これに限定するものではなく、例えば、ABSセンサケーブル全体を湾曲させてもよい。もっとも、本実施形態のケーブル配索構造のように、湾曲部を挿通部材よりも車輪支持部材に近い位置に形成することが、ABSセンサケーブルとパーキングブレーキケーブルとの隙間を減少させることが可能となるため、好適である。
【0032】
(3)また、本実施形態のケーブル配索構造では、ABSセンサケーブルが有する湾曲部を、パーキングブレーキケーブルよりも車幅方向内方、且つ側面視でパーキングブレーキケーブルと重なる位置に配置する。しかしながら、これに限定するものではなく、湾曲部を、例えば、側面視でパーキングブレーキケーブルと重ならない位置に配置してもよい。もっとも、本実施形態のケーブル配索構造のように、湾曲部を上記の位置に配置することが、ABSセンサケーブルとサスペンション装置の周辺部材との干渉を抑制することが可能となるため、好適である。
【0033】
(4)また、本実施形態のケーブル配索構造では、ABSセンサケーブルの挿通部材とABSクランプとの間の部分を、パーキングブレーキケーブルよりも車幅方向内方、且つ側面視でパーキングブレーキケーブルと重なる位置に配置する。しかしながら、これに限定するものではなく、ABSセンサケーブルの挿通部材とABSクランプとの間の部分を、例えば、側面視でパーキングブレーキケーブルと重ならない位置に配置してもよい。もっとも、本実施形態のケーブル配索構造のように、ABSセンサケーブルの挿通部材とABSクランプとの間の部分を、上記の位置に配置することが、ABSセンサケーブルの変位を抑制することが可能となるため、好適である。
【0034】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
(構成)
まず、図4から図6を参照して、本実施形態のケーブル配索構造の構成を説明する。
図4は、本実施形態のケーブル配索構造を用いて形成した車両Cの一部を示す図であり、車両Cを上方から見た(上面視)図である。また、図5は、図4のV線矢視図であり、車両Cの一部を側方から見た(側面視)図である。また。図6は、図5のVI線矢視図であり、車両Cの一部を前方から見た(前面視)図である。なお、図中では、フットブレーキ用駆動伝達軸8、ABSセンサケーブル10及びパーキングブレーキケーブル12のうち、両端部間の一部と、車輪支持部材4に固定した端部とを記載している。
【0035】
図4から図6中に示すように、本実施形態のケーブル配索構造の構成は、フットブレーキクランプ16、ABSセンサケーブル10及び挿通部材28を除き、上述した第一実施形態と同様の構成である。このため、以下の説明は、フットブレーキクランプ16、ABSセンサケーブル10及び挿通部材28を中心に記載する。
フットブレーキクランプ16は、トレーリングアーム2の上面に対して垂直に延在するフットブレーキ用駆動伝達軸保持部18と、トレーリングアーム2の上面に対して平行に延在する挿通部材取り付け部20とを備えている。
【0036】
フットブレーキ用駆動伝達軸保持部18は、車幅方向に延在する板状部材であり、フットブレーキ用駆動伝達軸8を保持する保持孔22を有する。保持孔22は、車両前後方向に貫通する孔であり、フットブレーキ用駆動伝達軸8の両端部間の一部を挿通させた状態で、フットブレーキ用駆動伝達軸8を保持する。フットブレーキクランプ16のフットブレーキ用駆動伝達軸8に対する保持力は、フットブレーキ用駆動伝達軸8の軸線方向への、フットブレーキ用駆動伝達軸8とフットブレーキクランプ16との相対変位を抑制する強さとする。
【0037】
挿通部材取り付け部20は、車両前後方向に延在する板上部材であり、フットブレーキ用駆動伝達軸保持部18に固定してある。また、挿通部材取り付け部20は、挿通部材28を取り付ける取り付け孔24を有する。取り付け孔24は、上下方向に貫通する貫通孔であり、挿通部材28全体を挿通させる。これにより、フットブレーキクランプ16に挿通部材28を取り付ける。なお、本実施形態では、フットブレーキクランプ16に挿通部材28を取り付ける高さを、側面視でパーキングブレーキケーブル12よりも高い位置としている。これにより、ABSセンサケーブル10のうち挿通部材28とABSクランプ30との間の部分の一部を、側面視でパーキングブレーキケーブル12と重ならない位置に配置する。
【0038】
ABSセンサケーブル10の両端部間には、二箇所の湾曲部32a,32bを形成している。
二箇所の湾曲部32a,32bは、ABSセンサケーブル10の両端部間のうち、挿通部材28に挿通させた部分を境にして形成する。なお、図中及び以降の説明では、二箇所の湾曲部32のうち、挿通部材28よりも車輪支持部材4から離れた湾曲部32を、湾曲部32aと記載し、挿通部材28よりも車輪支持部材4に近い湾曲部32を、湾曲部32bと記載する。
挿通部材28は、ABSセンサケーブル10の軸線が上下方向へ向くように、フットブレーキクランプ16に取り付けてある。
【0039】
具体的には、ABSセンサケーブル10の湾曲部32aを形成した部分を挿通部材28よりも下方、且つABSセンサケーブル10の湾曲部32bを形成した部分を挿通部材28よりも上方に配置するように、フットブレーキクランプ16に取り付けてある。すなわち、ABSセンサケーブル10の挿通部材28よりも車輪支持部材4から離れた部分を、挿通部材28よりも下方に配置している。また、ABSセンサケーブル10の挿通部材28よりも車輪支持部材4に近い部分を、挿通部材28よりも上方に配置している。
【0040】
また、挿通部材28は、ABSセンサケーブル10の両端部間のうち、挿通部材28に挿通した部分における軸線と、アクスルクランプ26に保持した部分における軸線が、互いに所定の角度で傾斜するように、フットブレーキクランプ16に取り付けてある。
具体的には、ABSセンサケーブル10のうち挿通部材28に挿通した部分の軸線L1に対する、ABSセンサケーブル10のうちアクスルクランプ26に保持した部分の軸線L2の角度を、前面視で直角または略直角とする。
【0041】
また、挿通部材28は、ABSセンサケーブル10の両端部間のうち、挿通部材28に挿通した部分における軸線と、ABSクランプ30に保持した部分における軸線が、互いに所定の角度で傾斜するように、フットブレーキクランプ16に取り付けてある。
具体的には、ABSセンサケーブル10のうち挿通部材28に挿通した部分の軸線L1に対する、ABSセンサケーブル10のうちABSクランプ30に保持した部分の軸線L3の角度を、側面視で直角または略直角とする。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0042】
(第二実施形態の効果)
(1)本実施形態のケーブル配索構造では、ABSセンサケーブルのうち挿通部材に挿通した部分の軸線に対する、ABSセンサケーブルのうちABSクランプに保持した部分の軸線の角度を、側面視で直角または略直角とする。
また、ABSセンサケーブルのうち挿通部材に挿通した部分の軸線に対する、ABSセンサケーブルのうちアクスルクランプに保持した部分の軸線の角度を、前面視で直角または略直角とする。
【0043】
このため、ABSセンサケーブル全体の張力を増加させた状態で、ABSセンサケーブルを挿通部材に挿通させるとともに、ABSクランプ及びアクスルクランプに保持することが可能となる。
その結果、ABSセンサケーブルの変位を抑制することが可能となり、ABSセンサケーブルとパーキングブレーキケーブル及びフットブレーキ用駆動伝達軸との干渉や、ABSセンサケーブルとサスペンション装置の周辺部材との干渉を抑制することが可能となる。
【0044】
(応用例)
(1)なお、本実施形態のケーブル配索構造では、ABSセンサケーブルのうち挿通部材とABSクランプとの間の部分の一部を、側面視でパーキングブレーキケーブルと重ならない位置に配置するが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、フットブレーキクランプに挿通部材を取り付ける高さを、側面視でパーキングブレーキケーブルよりも低い位置とするとともに、ABSセンサケーブルをパーキングブレーキケーブルに沿って湾曲させる。これにより、ABSセンサケーブルのうち挿通部材とABSクランプとの間の部分を、側面視でパーキングブレーキケーブルと重なる位置に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第一実施形態のケーブル配索構造を用いて形成した車両Cの一部を示す図である。
【図2】図1のII線矢視図である。
【図3】図2のIII線矢視図である。
【図4】本発明の第二実施形態のケーブル配索構造を用いて形成した車両Cの一部を示す図である。
【図5】図4のV線矢視図である。
【図6】図5のVI線矢視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 サスペンション装置
2 トレーリングアーム
4 車輪支持部材
6 車体側部材
8 フットブレーキ用駆動伝達軸
10 ABSセンサケーブル
12 パーキングブレーキケーブル
14 ブレーキユニット
16 フットブレーキクランプ
18 フットブレーキ用駆動伝達軸保持部
20 挿通部材取り付け部
22 保持孔
24 取り付け孔
26 アクスルクランプ
28 挿通部材
30 ABSクランプ
32 湾曲部
34 パーキングクランプ
C 車両
L1 ABSセンサケーブル10のうち挿通部材28に挿通した部分の軸線
L2 ABSセンサケーブル10のうちアクスルクランプ26に保持した部分の軸線
L3 ABSセンサケーブル10のうちABSクランプ30に保持した部分の軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を回転自在に支持する車輪支持部材から車両前後方向に延在するトレーリングアームの上面側に、フットブレーキ装置用の駆動力を伝達するフットブレーキ用駆動伝達軸、アンチロック・ブレーキ・システム用のABSセンサケーブル及びパーキングブレーキ装置用のパーキングブレーキケーブルを配策するケーブル配索構造であって、
前記フットブレーキ用駆動伝達軸を、前記トレーリングアームの上面に固定したフットブレーキクランプに保持し、
前記ABSセンサケーブルを、前記トレーリングアームの上面側に配置した挿通部材に挿通させ、且つ前記フットブレーキクランプよりも前記車輪支持部材から離れた位置で前記トレーリングアームの上面に固定したABSクランプに保持し、
前記挿通部材を、前記フットブレーキクランプに取り付け、
前記パーキングブレーキケーブルを、前記ABSクランプよりも前記車輪支持部材から離れた位置で前記トレーリングアームの上面に固定したパーキングクランプに保持し、
前記フットブレーキ用駆動伝達軸のうち前記フットブレーキクランプよりも前記車輪支持部材から離れる方向に延在する部分を、上向きに傾斜させることを特徴とするケーブル配索構造。
【請求項2】
前記挿通部材の前記ABSセンサケーブルに対する拘束力を、前記挿通部材に対して前記ABSセンサケーブルが摺動可能な強さとすることを特徴とする請求項1に記載したケーブル配索構造。
【請求項3】
前記ABSセンサケーブルのうち前記挿通部材よりも前記車輪支持部材に近い位置に、前記ABSセンサケーブルのうち前記挿通部材と前記ABSクランプとの間の部分が直線状または略直線状となるように撓ませた湾曲部を形成することを特徴とする請求項1または2に記載したケーブル配索構造。
【請求項4】
前記ABSセンサケーブルを、前記パーキングブレーキケーブルよりも車幅方向内方に配置し、
前記湾曲部を、側面視で前記パーキングブレーキケーブルと重なる位置に配置することを特徴とする請求項3に記載したケーブル配索構造。
【請求項5】
前記挿通部材を、前記ABSセンサケーブルの軸線が上下方向へ向くように前記フットブレーキクランプに取り付け、
前記ABSセンサケーブルの前記車輪支持部材側の端部を、前記車輪支持部材に固定したアクスルクランプに保持し、
前記ABSセンサケーブルの前記アクスルクランプから離れた部分を、前記挿通部材に上方から挿通させ、
前記ABSセンサケーブルのうち前記挿通部材に挿通させた部分の軸線に対する、前記ABSセンサケーブルのうち前記アクスルクランプに保持した部分の軸線の角度を、前面視で直角または略直角とし、
前記ABSセンサケーブルのうち前記挿通部材に挿通させた部分の軸線に対する、前記ABSセンサケーブルのうち前記ABSクランプに保持した部分の軸線の角度を、側面視で直角または略直角とすることを特徴とする請求項1または2に記載したケーブル配索構造。
【請求項6】
前記ABSセンサケーブルを、前記パーキングブレーキケーブルよりも車幅方向内方に配置し、
前記ABSセンサケーブルのうち前記挿通部材と前記ABSクランプとの間の部分を、側面視で前記パーキングブレーキケーブルと重なる位置に配置することを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載したケーブル配索構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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