説明

ケーブル

【課題】咬害対策を実現できるとともに、ケーブル敷設時の作業性を向上できるケーブルを提供する。
【解決手段】ケーブルコアの外周に、外被が形成されてなるケーブルであって、ケーブルコアの外径が25.4mm以下であり、外被の厚さを2.3mm以上とすることにより、ケーブル外径が30mm以上となるようにする。これにより、咬害対策を実現できるとともに、ケーブル敷設時の作業性等を向上することができる。また、金属製の外装を用いていないので、雷害地域での敷設に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、げっ歯目動物による咬害を抑制できるケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
鼠やモモンガ等のげっ歯目に属する動物(以下、げっ歯目動物)には、成長し続ける門歯を、硬いものを齧ることにより磨耗させるという習性がある。そのため、通信ケーブルや電力ケーブル等のケーブルを、げっ歯目動物の生息域(例えば屋外の地下や管路内又は屋内の天井裏など)に敷設する場合、げっ歯目動物による咬害が問題となる。そこで、咬害によりケーブルが損傷し、漏電や火災等の事故が発生するのを未然に防ぐべく、種々の咬害対策が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ケーブルコアの外周に、引張強さが35MPa以上の熱可塑性樹脂材料を用いて、表面の中心線平均粗さ(Ra値)が0.4μm以下となるように外被を形成するようにしている。また、ケーブルの外被にカプサイシン等の防鼠剤を含有させたり、外被の外側に金属遮蔽等の外装を設けたりすることも行われている(例えば特許文献2,3)つまり、特許文献1〜3では、ケーブル自体を、げっ歯目の動物が好んで齧らない構成とすることにより、咬害を防止している。
また、特許文献4では、ケーブルコアの外周に外被を形成した本ケーブルに隣接して、外被の引張強さ/中心線平均粗さが本ケーブルのそれよりも小さいダミーケーブルを配置するようにしている。つまり、特許文献4では、げっ歯目の動物にダミーケーブルを齧らせることにより、本ケーブルに咬害が及ぶのを防止している。
また、特許文献5では、管壁にカプサイシン等の防鼠剤を含有させた保護管にケーブルを敷設することにより、咬害を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−157470号公報
【特許文献2】特開平10−223058号公報
【特許文献3】特許第4202206号公報
【特許文献4】特開2010−160918号公報
【特許文献5】特開2002−271934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3の技術は、耐咬害性の向上には効果的であるが、ケーブルの外被が改質されるために、ケーブルを敷設する際の作業性(取り回し)が低下する虞がある。また、外装に金属遮蔽を設けた構造では、曲げ剛性が高くなり作業性が低下する上、雷害地域で落雷を誘導しやすいという問題がある。
また、特許文献4に記載の技術では、引張強さ/中心平均粗さの規定を満足する材料を選定する必要があり、要件を満たす材料を余計に保有しなければならない。
また、特許文献5に記載の技術では、保護管の端部などからげっ歯目動物が侵入した場合に、咬害を防ぐことができない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、咬害対策を実現できるとともに、ケーブル敷設時の作業性を向上できるケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ケーブルコアの外周に、外被が形成されてなるケーブルであって、
前記ケーブルコアの外径が25.4mm以下であり、前記外被の厚さを2.3mm以上とすることにより、ケーブル外径が30mm以上となっていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のケーブルにおいて、
前記ケーブル外径が、50mm以上であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のケーブルにおいて、
前記外被の一部が空洞化されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のケーブルにおいて、
前記外被の少なくとも一部が、樹脂材料の発泡体で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、咬害対策を実現できるとともに、ケーブル敷設時の作業性を向上することができる。また、本発明では金属製の外装を用いていないので、雷害地域での敷設に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係るケーブルの構成を示す断面図である。
【図2】ケーブルを太径化する手法の他の例を示す図である。
【図3】ケーブルを太径化する手法の他の例を示す図である。
【図4】ケーブルを太径化する手法の他の例を示す図である。
【図5】ケーブルを太径化する手法の他の例を示す図である。
【図6】ケーブルを太径化する手法の他の例を示す図である。
【図7】ケーブルを太径化する手法の他の例を示す図である。
【図8】ケーブルを太径化する手法の他の例を示す図である。
【図9】図8に示すケーブルの斜視図である。
【図10】ケーブルを太径化する手法の他の例を示す図である。
【図11】図10に示すケーブルの長手断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施形態に係るケーブルの構成を示す断面図である。図1に示すように、実施形態に係るケーブル1は、ケーブルコア11の外周に外被12が形成されたスロット型光ファイバケーブルである。
ケーブル1のケーブルコア11は、光ファイバテープ心線112を収容したスロットロッド111の外周に、押え巻きテープ113が巻回された構成を有している。スロットロッド111は、例えば、高密度ポリエチレン等の樹脂からなる線状部材であり、中心部に張力を負担するテンションメンバ(例えば鋼より線)114が軸方向に設けられている。スロットロッド111の外周面には、軸方向に沿って複数条のスロット111aが一方向の螺旋状に形成されており、それぞれのスロット111aに複数枚の光ファイバテープ心線112が積層状態で収容されている。光ファイバテープ心線112には、例えば、被覆外径250μmの光ファイバ心線を8本並列に配列し、これをUV硬化樹脂等の被覆材で一括被覆したものが用いられる。
つまり、このケーブル1のケーブルコア11は、テンションメンバ114と、スロットロッド111と、光ファイバテープ心線112と、押え巻きテープ113とを備えている。なお、スロット111aの螺旋形成方向は、SZ撚りの何れでもよい。
そして、実施形態のケーブル1のケーブルコア11の外径は25.4mm以下である。
【0014】
ここで、ケーブルコア11とは下記のように定義でき、ケーブルの中心部に配設されている。
(1)導体を撚り合わせたり束ねたりしたもの、あるいはそれらを一体にまとめるために導体束の周囲に不織布やPET等のフィルムやテープで押え巻きを施したもの。
(2)溝付きロッドの溝内に導体を収容したもの、あるいは導体を収容した溝付きロッドの周囲に押え巻きを施したもの。
(3)導体束の周囲に緩衝層としてヤーンやクッション材を撚り合わせたり束ねたりしたもの、あるいはその緩衝層の周囲に押え巻きを施したもの。
なお、ここで言う導体とは、光を導く光ファイバや、電気を導く金属線などであり、伝送すべき光や電気などを導く媒体である。
また、導体自体における被覆の有無は問わない
また、押え巻きは一般的に、1〜3枚(1〜3層)程度施される。また、押え巻きが横巻きである場合、ギャップの有無は問わない。また、押え巻きが縦添えである場合、それが広がらないように押えるバインドの有無は問わない。
【0015】
外被12は、ポリエチレン系の合成樹脂材料で構成され、押出成形によりケーブルコア11の外周に形成される。実施形態では、外被12を2.3mm以上の厚さで形成することにより、ケーブル1の外径が30mm以上となっている。単純に外被12の寸法を変更するだけなので、従来と同様の製造設備を利用することができ、実現も容易である。
【0016】
通常、光ファイバケーブルにおいては、外被12は2mm程度の厚さで形成され、ケーブル外径は10〜20mmとなっている。例えば、市販されている光ファイバケーブルはスロットが一方向の螺旋状に形成されている1000心型でもケーブル外径は30mm未満である。特に、FTTH等で利用されるような100心以下の光ファイバを収容したものは、ケーブル外径が15mm以下である。この外径は、げっ歯目動物が齧り易い、すなわち咬害を受け易い寸法といえる。
これに対して、実施形態のケーブル1では、ケーブル外径が30mm以上であり、げっ歯目動物が齧りにくい構成となっているので、咬害を効果的に防止することができる。また、従来の咬害対策のように金属遮蔽等の外装体を設ける必要もないので、雷害地域での使用にも好適である。
【0017】
なお、ケーブル外径が大きいほど、咬害の抑止効果は高くなると考えられるが、ケーブル1を敷設する際の作業性や製造コストを考慮した場合、ケーブル外径は50mm以下であることが好ましい。より好ましくは40mm以下であり、より30mmに近付けて設計することが望ましい。
【0018】
以下に、ケーブル外径の防鼠効果への影響を調査するために行った咬害実験について説明する。まず、咬害実験用のサンプルとして、ポリエチレン系の合成樹脂材料を用いて長さ300mm、外径5〜50mmの管状サンプルを2本ずつ作製した。そして、クマネズミ50匹の飼育部屋において、サンプルの両端50mmずつを約2kgのコンクリート固定台に挿入し、床面からサンプル中心までの高さがおよそ30mmとなるように、すべての管状サンプルを配置した。また、各サンプルは、鼠の巣穴入口付近と餌箱の間に配置し、乱数表に従って1週間ごとに配列を変更した。このような環境において、クマネズミにより咬害を受けた長さを測定した。評価結果を表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
表1に示すように、外径を30mmとした場合には咬害を効果的に抑制することができ、外径を50mmとした場合には咬害跡が全く観察されなかった。一方、外径が30mm未満である場合には、28日経過時で5mm以上の咬害が観察されたことから、防鼠効果はほとんどないことがわかった。
このように、外径と防鼠効果には密接な関係が認められた。すなわち、ケーブル1において、外径を大きくする、具体的には30mm以上とすることで高い防鼠効果が得られる。望ましくは、外径を50mm以上とすることで、げっ歯目動物による咬害を確実に防止することができる。
【0021】
図2〜図11は、ケーブル1を太径化する手法の他の例を示す図である。
図2に示す例では、外被12A自体の厚さを厚くすることでケーブル1を太径化するが、外被12Aが樹脂材料の発泡体(いわゆる発泡シース)で構成されており、外被12Aの一部が空洞化されている。
これにより、ケーブル外径を30mm以上とするために外被12Aの厚さを厚くしても、従来のケーブルに対する重量増加は抑制される。したがって、ケーブル1の重量増加に伴い作業性が低下するのを防止できる。
【0022】
図3に示す例では、樹脂材料の発泡体(いわゆる発泡シース)で構成された外被12Aの表面を、外被の一部として機能するスキン層12Cで被覆した二重構造を有している。
これにより、ケーブル外径を30mm以上とするために外被12Aの厚さを厚くしても、従来のケーブルに対する重量増加は抑制される。したがって、ケーブル1の重量増加に伴い作業性が低下するのを防止できる。また、発泡体の外被12Aを非発泡性樹脂材料のスキン層12Cで覆っているので、発泡体の発泡倍率を高めに設定することができる。
【0023】
図4に示す例では、外被12B自体の厚さを厚くすることでケーブル1を太径化するが、外被12Bが外側外被121と内側外被122からなる二重構造を有しており、外側外被121の内側外被122と接する部分に長手方向に沿って空洞部123が形成されている。例えば、外側外被121を押出成形するためのダイスの内周面に突起を設けることにより、空洞部123を容易に形成することができる。
これにより、ケーブル外径を30mm以上とするために外被12Bの厚さを厚くしても、従来のケーブルに対する重量増加は抑制される。したがって、ケーブル1の重量増加に伴い作業性が低下するのを防止できる。また、外被12Bの形成に要する材料を低減できるので、ケーブル外径を大きくすることによるコスト増加を抑制できる。
なお、図4では、周方向の4箇所に空洞部123を均等配置しているが、空洞部123の形成態様は寸法を含めて適宜変更可能である。
【0024】
上述した例では、外被12自体の厚さを厚くすることで、ケーブル1の外径が30mm以上になるようにしているが、ケーブルコア11と外被12の間に介装体13を介在させた構成としてもよい。なお、介装体13は外被の一部として機能する。
図5に示す例では、押え巻きテープを何層にも巻回することにより、厚さ0.5mm以上の介装体13Aが形成されている。そして、介装体13Aの上には、外被12が約2mmの厚さで形成されている。これにより、外被12の目付け量を低減することができる。また、外被12自体を厚くするよりもケーブル内部が軟らかいので、ケーブル1の可とう性を向上できるとともに、軽量化を図ることができる。
【0025】
図6に示す例では、内側外被132と押え巻きテープ131の積層体により介装体13Bが構成されている。ここでは、ケーブルコア11の上に0.5〜2.0mmの厚さで内側外被132が形成され、その上に0.5mmの厚さで押え巻きテープ131が巻回されている。また、介装体13Bの上には、外被12が約2mmの厚さで形成されている。
図5に示すように押え巻きテープを厚く巻回して介装体13Aを構成する場合、形状の保持が困難となる虞がある。これに対して、図6に示す例では、押え巻きテープ131と内側外被132を交互に形成するので、形状を容易に保持しながら、ケーブル1を製造することができる。また、ケーブル1の可とう性を向上できるとともに、軽量化を図ることができる。
【0026】
なお、図6では、介装体13Bが、押え巻きテープ131と内側外被132をそれぞれ一層ずつ形成した二層構造となっているが、押え巻きテープ131と内側外被132をそれぞれ複数層ずつ形成した多層構造としてもよい。
【0027】
図7に示す例では、ケーブルコア11の上に縦添えに配設された長尺の線状部材133と、その上に形成された押さえ巻きテープ131により介装体13Cが構成されている。すなわち、介装体13Cに、長手方向に沿って線状部材133が内装されている。線状部材133は、例えば、ポリエチレン製であり、パイプ状であってもよいし、中実状であってもよい。線状部材133の外径は0.5〜11mmであることが望ましい。また、介装体13Cの上には、外被12が約2mmの厚さで形成されている。
これにより、外被12の目付け量を低減することができるとともに、ケーブル1の軽量化を図ることができる。
【0028】
図8、9に示す例では、ケーブルコア11の上に形成された内側外被132と、その上に長手方向に沿って螺旋状に巻回された隔壁134と、その上に巻回された押さえ巻きテープ131により介装体13Dが構成されている。すなわち、隔壁134により当該介装体13Dの内部に空洞135が形成されている。隔壁134は、例えばポリエチレン製であり、0.5mm以上の高さを有していることが望ましい。また、介装体13Dの上には、外被12が約2mmの厚さで形成されている。
これにより、外被12の目付量を低減することができるとともに、ケーブル1の軽量化を図ることができる。
【0029】
図10、11に示す例では、ケーブルコア11の外側に配された蛇腹管136と、その蛇腹管136によってもたらされた空洞137とにより介装体13Eが構成されている。すなわち、蛇腹管136とケーブルコア11の間および蛇腹管136と外被12の間にそれぞれ空洞137が形成されている。蛇腹管136は、例えばポリエチレン製であり、0.5mm以上の高さを有していることが望ましい。また、介装体13Eの上には、外被12が約2mmの厚さで形成されている。
これにより、外被12の目付量を低減することができるとともに、ケーブル1の軽量化を図ることができる。
【0030】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上述したケーブル1を太径化する手法は適宜組み合わせて適用することができる。また、実施形態では、スロット型光ファイバケーブルについて説明したが、本発明は、ケーブルコアの外周に外被が形成された構成を有するケーブルに適用できる。すなわち、スロットレス型光ファイバケーブルやメタル通信ケーブル、又は電力ケーブル等、げっ歯目動物による咬害を受け得る広範なケーブルに適用できる。
【0031】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0032】
1 ケーブル
11 ケーブルコア
111 スロットロッド
111a スロット
112 光ファイバテープ心線
113 押え巻きテープ
114 テンションメンバ
12 外被
13 介装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルコアの外周に、外被が形成されてなるケーブルであって、
前記ケーブルコアの外径が25.4mm以下であり、前記外被の厚さを2.3mm以上とすることにより、ケーブル外径が30mm以上となっていることを特徴とするケーブル。
【請求項2】
前記ケーブル外径が、50mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記外被の一部が空洞化されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記外被の少なくとも一部が、樹脂材料の発泡体で構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−220856(P2012−220856A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88721(P2011−88721)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】