説明

ゲニポシド酸誘導体

【課題】杜仲葉含有の新規化合物を含む肥満等の疾患の治療や予防用医薬組成物の提供。
【解決手段】式(I)(式中、R〜R、R11〜R14は特定の置換基を表す。)の化合物、またはその塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なゲニポシド酸誘導体、および当該化合物を含む医薬組成物および食品に関する。
【背景技術】
【0002】
杜仲(Eucommia ulmoides oliver)は、中国中央部起源のトチュウ科トチュウ属の一科一属一種に分類される落葉性木本類で、樹高が20mに達する喬木である。杜仲は、一般にお茶と称するツバキ科の植物と比較し、カフェインを全く含んでいないほか、含有物も異なる。杜仲葉は、1980年代から飲料としての用途が普及している。
【0003】
天然物由来の食品や漢方薬は、一般に副作用が少ないなどの利点を有することから、近年において発生が増加している生活習慣病に対してのその有用性が注目されている。上述の杜仲に関しても、杜仲葉の成分のリパーゼ阻害活性について検討した例もいくつかの報告がされている(特許文献1〜5を参照)。杜仲葉に含まれる天然成分としては、アスペルロサイド、アウクビン、クロロゲン酸およびゲニポシド酸などが知られており、このうち杜仲葉に特徴的な成分であるゲニポシド酸は、体内に吸収されると、副交感神経に作用し、動脈の筋肉(平滑筋)を弛緩させることにより、血圧降下作用を示すことが知られている(非特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−289950号公報
【特許文献2】特開2005−289951号公報
【特許文献3】特開2003−342185号公報
【特許文献4】特開2002−179586号公報
【特許文献5】特開2002−275077号公報
【非特許文献1】Natural Medicines 59(3),117〜120
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
杜仲葉は漢方薬として種々の効能が知られており、医薬品探索の観点から杜仲葉に含まれる成分には興味関心が寄せられていた。特に、杜仲葉には微量成分として未知の化合物が含まれると考えられており、成分の化学構造の特定および有機合成による製造により、薬効を有する新規化合物を見いだす可能性がある。
【0005】
したがって、本発明は、杜仲葉に含まれる化合物、特に新規な化合物を提供すること目的とする。さらに、本発明は、当該化合物を含む医薬組成物、食品および飲料を提供することを目的とする。さらに、本発明は、当該化合物を含む肥満またはそれと関連する疾患の治療または予防のための医薬組成物、肥満またはそれと関連する疾患の症状を改善するための食品および飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題解決のために鋭意研究を進めたところ、杜仲葉に含まれる化合物およびその類縁体が抗肥満作用を有することを見いだし、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の1つの側面によれば、式(I):
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、Rは、水素原子、C1−6アルキルまたはC7−14アラルキルであり;
は、水素原子またはC1−6アルキルであり、前記アルキルはアリールまたはヘテロシクリルにより置換されていてもよく、前記アリールおよびヘテロシクリルは、ヒドロキシ、C1−6アルキルカルボニルオキシ、C1−6アルコキシまたはC7−14アラルキルオキシから選択される置換基により置換されていてもよく;
は、水素原子またはC1−6アルキルであり;
は、水素原子、C1−6アルキルカルボニルまたはC7−14アラルキルであり;
11、R12、R13およびR14は、独立に、水素原子、C1−6アルキルカルボニルまたはC7−14アラルキルから選択される]
の化合物、またはその塩が提供される。
【0009】
の例としては、水素原子、メチル、ヒドロキシメチル、イソプロピル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、ベンジル(フェニルメチル)および(4−ヒドロキシフェニル)メチルなどが挙げられ、特に、ベンジルまたはインドール−3−イルメチルが好ましい。
【0010】
本発明の別の側面において、上記式(I)の化合物またはその塩を含む医薬組成物が提供される。1つの態様において、前記医薬組成物は、肥満、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、高血圧および高脂質血症から選択される疾患の治療または予防に使用される。
【0011】
本発明のさらに別の側面において、上記式(I)の化合物またはその塩を含む食品または飲料が提供される。1つの態様において、前記食品および飲料は、機能性食品、健康食品、健康補助食品、栄養補助食品、保健機能食品、特定保健用食品または栄養機能食品として使用される。
【0012】
本発明のさらに別の側面において、式(II):
【0013】
【化2】

【0014】
[式中、R、R11、R12、R13およびR14は、請求項1に定義したとおりである]
の化合物を、式(III):
【0015】
【化3】

【0016】
[式中、R、RおよびRは、請求項1に定義したとおりである]
と反応させる工程を含む、請求項1に記載の化合物の製造方法が提供される。
【本発明の具体的な態様】
【0017】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
本明細書において「C1−6アルキル」とは、炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状、環状または部分的に環状のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、3−メチルブチル、2−メチルブチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、4−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−メチルペンチル、1−メチルペンチル、3−エチルブチル、および2−エチルブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロプロピルメチルなどが含まれ、例えば、C1−4アルキルおよびC1−3アルキルなども含まれる。
【0018】
本明細書において「アリール」とは、6〜10員芳香族炭素環基を意味し、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなどが含まれる。
本明細書において「ヘテロシクリル」とは、5〜10員の飽和、部分飽和または芳香族のヘテロ環基を意味し、例えば、インドリル、イミダゾリル、ピロリルなどが含まれる。
【0019】
本明細書において「C7−14アラルキル」とはアリール基を含む炭素数が7〜14のアリールアルキル基を意味し、例えば、ベンジル、1−フェネチル、2−フェネチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチルなどが含まれる。
【0020】
本明細書において「C7−14アラルキルオキシ」とは、基−O(C7−14アラルキル)を表し、ここで当該C1−6アラルキルは既に定義したとおりである。
本明細書において「C1−6アルキルカルボニル」とは、基−CO(C1−6アルキル)を表し、ここで当該C1−6アルキルは既に定義したとおりである。
【0021】
本明細書において「C1−6アルキルカルボニルオキシ」とは、基−OCO(C1−6アルキル)を表し、ここで当該C1−6アルキルは既に定義したとおりである。
本発明の化合物の塩とは、有機化学において通常使用されうる塩であれば特に限定されない。本発明化合物が塩基と形成する塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基との塩;メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基との塩などが挙げられる。
【0022】
本発明の化合物は、例えば、以下の方法により調製することができる。
【0023】
【化4】

【0024】
[式中、R、R、R、R、R11、R12、R13、およびR14は、本明細書において既に定義したとおりである]
式(II)のゲニポシド酸誘導体を、適当な縮合剤の存在下、適当な溶媒中で、式(III)のアミノ酸エステルによりアミド化することにより、式(I)の化合物を調製することができる。本反応で使用される適当な溶媒としては、非プロトン性溶媒、例えば、DMF、DMSO、HMPA、アセトニトリル、プロピオニトリル、THF、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタンなどが挙げられる。本反応で使用される適当な縮合剤としては、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(以下、WSCとも称する)、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物や、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスフォニウムヘキサフルオロホスフェート、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル−)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリンなどが挙げられる。本反応においては、必要に応じて反応促進性の添加剤を使用してもよい。反応促進性の添加剤としては、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−カルボキシミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(以下、HOBtとも称する)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、などの活性エステル剤や、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミンなどのpH調整剤、またはブタノールなどが挙げられる。この工程は、特に限定はされないが、例えば0℃〜50℃、好ましくは室温の反応温度、および例えば0.1〜48時間の反応時間で行うことができる。
【0025】
式(III)のアミノ酸エステルとして光学活性体(S体またはR体)を使用することにより、光学活性な式(I)の化合物を調製することができる。当該アミノ酸エステルの具体例としては、例えば、フェニルアラニンのエステル(例えば、メチルエステル)、水酸基が保護基により保護されたチロシンエステル(例えば、メチルエステル)、ヘテロ環内の窒素原子が保護基により保護されたヒスチジンのエステル(例えば、メチルエステル)、ヘテロ環内の窒素原子が保護基により保護されたトリプトファンのエステル(例えば、メチルエステル)等が挙げられる。ここで、適切な保護基の選択、保護基の導入および脱離は、有機化学の技術分野に属する当業者によって容易になされる事項である。
【0026】
上記反応により得られた式(I)の化合物をさらに変換することにより、別の式(I)の化合物に誘導することもできる。前記変換の例としては、エステルの加水分解、水酸基の脱保護、または保護基の導入などが挙げられ、これらの変換は有機化学の技術常識に基づいて容易に行うことができる。
【0027】
本発明の化合物は、杜仲葉に含まれる成分を精製することにより入手することもできる。当該精製により、例えば以下の化合物を得ることができる。
【0028】
【化5】

【0029】
本発明の医薬組成物は、種々の剤形、例えば、経口投与のためには、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁液、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤などとすることができ、例えば、経口投与のための錠剤、顆粒、散剤またはカプセル剤などとすることができるが、これらには限定されない。当該医薬組成物は、一般に用いられる各種成分を含みうるものであり、例えば、1種もしくはそれ以上の薬学的に許容され得る賦形剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助剤、防腐剤、緩衝剤、結合剤、安定剤、コーティング剤等を含みうる。また本発明の医薬組成物は、持続性または徐放性剤形であってもよい。
【0030】
本発明の分画物は、例えば錠剤の成分として使用することができる。当該錠剤は、医薬製剤の分野において通常使用される製造方法により製造され、例えば、結晶セルロース、二酸化ケイ素、ショ糖脂肪酸エステル、酵母細胞壁、グリセリンなどの添加剤を使用することができる。また、賦形剤(例えば、麦芽糖、デキストリン、サイクロデキストリン、寒天、トウモロコシたん白、リン酸三カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、植物油脂、グリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム)を使用してもよい。
【0031】
例えば上記錠剤の成分として使用することができる。当該錠剤は、医薬製剤の分野において通常使用される製造方法により製造され、例えば、結晶セルロース、二酸化ケイ素、ショ糖脂肪酸エステル、酵母細胞壁、グリセリンなどの添加剤を使用することができる。
【0032】
本発明の抗肥満剤の投与量は、患者の体型、年齢、体調、疾患の度合い、発症後の経過時間等により、適宜選択することができ、本発明の医薬組成物は、治療有効量および/または予防有効量の抗肥満剤を含むことができる。例えば本発明の杜仲葉粉砕物またはその水抽出物として、一般に10〜50000mg/日/成人、好ましくは100〜5000mg/日/成人の用量で使用される。当該医薬組成物の投与は、単回投与または複数回投与であってもよく、例えば他の抗肥満剤などの他の薬剤と組み合わせて使用することもできる。
【0033】
本発明に係る食品および飲料の例としては、抗肥満効果を有する機能性食品、健康食品、健康補助食品、栄養補助食品(栄養ドリンク等)、保険機能食品、特定保険用食品、栄養機能食品、一般食品(ジュース、菓子、加工食品等)などが含まれる。本発明の食品または飲料は、任意の添加物として、鉄およびカルシウムなどの無機成分、種々のビタミン類、オリゴ糖およびキトサンなどの食物繊維、大豆抽出物などのタンパク質、レシチンなどの脂質、ショ糖および乳糖などの糖類を含むことができる。本発明の食品または飲料を使用することにより、本発明の肥満改善効果を有する当該食品または飲料の日常的および継続的な摂取が可能となり、肥満の効果的な改善、および肥満に関連する疾患(例えば、高血圧症、高脂質血症、糖尿病、メタボリックシンドロームなど)の効果的な予防が可能となる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に言及がなければ、使用した溶離液は容積%で表すものとする。
【0035】
[実施例1] 乾燥杜仲葉水抽出物からの本発明の化合物の単離
乾燥杜仲葉水抽出物から式(IV)の化合物(式(I)において、Rがベンジルであり、R、R、R、R11、R12、R13、およびR14が、水素原子である。以下、化合物1と称する)を単離した。
【0036】
プラスチック樹脂製容器(10L)に特開2005−287469号公報の実施例4の記載に基づいて製造される乾燥杜仲葉(577.6g)を入れ,蒸留水(4.6L)を加え、65℃で10時間加熱した。その後、綿栓およびろ紙にて、ろ過し、葉を取り除き、ろ液をDiaion HP20(三菱化学社製)を充填したカラム(直径570x長さ3100mm)に付した。カラムから溶出する水溶液を回収し、さらに水(3.0L)および30%MeOH水溶液(2.5L)にて溶出後、30%MeOH水溶液(0.5L)にて目的の化合物を含むフラクションを溶出させ、減圧濃縮して3.78gの画分を得た。得られた画分を、Chromatorex ODS(富士シリシア化学)を充填したカラムクロマトグラフィー(MeOH:HO=15:85→30:70→50:50→100:0)で精製し、目的の化合物を含むフラクション(701.4mg)を得た。この画分をさらにChromatorex ODSを充填したカラムクロマトグラフィー(MeOH:HO=0:100→5:95→10:90→15:85→100:0)で精製し、化合物1(13.0mg)を白色粉末として得た。
【0037】
H−NMR(CDOD、500MHz)1.88(1H、dd、J=7.9、15.9Hz、H−6a)、2.50(1H、dd、J=7.9、15.3Hz、H−6b)、2.72(1H、dd、J=9.2、9.2Hz、H−9)、3.09(1H、dd、J=7.3、14.0Hz、H−7’a)、3.20(1H、m、H−5)、3.22−3.31(4H、m、グルコースH−2、4、5、H−7’b)、3.39(1H、dd、J=9.2,9.2Hz、グルコースH−3)、3.65(1H、dd、J=5.5、12.2Hz、グルコースH−6a)、3.85(1H、dd、J=1.8、12.2Hz、グルコースH−6b)、4.16(1H、d、J=14.0Hz、H−10a)、4.29(1H、d、J=14.0Hz、H−10b)、4.60(1H、m、H−8’)、4.69(1H、d、J=7.3Hz、グルコースH−1)、5.10(1H、d、J=7.3Hz、H−1)、5.69(1H、s、H−7)、7.14(1H、d、J=1.2Hz、H−3)、7.17−7.25(5H、m、H−2’、 3’、4’、 5’、 6’)。
【0038】
13C−NMR(CDOD、125MHz)36.2(C−5),38.7(C−7’)、39.2(C−6)、47.4(C−9)、56.7(C−8’) 、61.4(C−10)、62.7(グルコースC−6)、71.6(グルコースC−4)、74.9(グルコースC−2)、77.8(グルコースC−3)、78.3(グルコースC−5)、97.8(C−1)、100.3(グルコースC−1)、115.8(C−4)127.4(C−4’)、127.9(C−7)、129.2(C−3’、−5’)、130.7(C−2’、−6’)、139.8(C−1’) 、144.8(C−8)、148.6(C−3)、168.9(C−11)、177.0(C−9’)。
【0039】
ポジティブFAB−MS m/z:522[M+H]
[実施例2] 乾燥杜仲葉水抽出物からの本発明の化合物の単離
乾燥杜仲葉水抽出物から式(IV)の化合物(化合物1)および式(V)の化合物(式(I)において、Rがインドール−3−イルメチルであり、R、R、R、R11、R12、R13、およびR14が、水素原子である。以下、化合物2と称する)を単離した。
【0040】
実施例1と同様の手法により、乾燥杜仲葉(578g)から、Diaion HP20を30%MeOH水溶液で溶出させて得られる画分(4g)を得た。当該画分をChromatorex ODSで精製して得られる画分(実施例1と同じ条件)のうち、化合物1を含む画分(701mg)をさらにChromatorex ODSで精製し(実施例1と同じ条件)、化合物1(12mg)および化合物2(4mg)を得た。
【0041】
さらに、最初のChromatorex ODSで精製して得られる画分のうち、アスペルロサイドとして得られた画分(2g)以外の画分(134mg)をシリカゲルカラムで精製し(関東化学製のシリカゲル60(球状);CHCl:MeOH:HO=15:1:0→10:2:0.1)、式(VI)の化合物(3mg)を得た。
【0042】
化合物2
H−NMR(CDOD、500MHz)1.63(1H、dd、J=7.9、15.9Hz、H−6a)、2.24(1H、dd、J=7.9、15.3Hz、H−6b)、2.67(1H、dd、J=9.2、9.2Hz、H−9)、3.13(1H、m、H−5)、3.18−3.21(2H、m、グルコースH−2、H−10’a)、3.26−3.27(2H、m、グルコースH−4、5)、3.37(1H、m、グルコースH−3)、3.43(1H、dd、J=4.3、14.7Hz、H−10’b)、3.63(1H、dd、J=5.5、11.6Hz、グルコースH−6a)、3.84(1H、dd、J=1.8、12.2Hz、グルコースH−6b)、4.12(1H、d、J=14.7Hz、H−10a)、4.29(1H、d、J=14.7Hz、H−10b)、4.61(1H、d、J=6.7Hz、H−11’)、4.65(1H、d、J=7.9Hz、グルコースH−1)、5.06(1H、d、J=7.3Hz、H−1)、5.58(1H、s、H−7)、6.98(1H、dd、J=7.3、7.9Hz、H−5’)、 7.06(1H、dd、J=7.3、7.9Hz、H−6’)、 7.09(1H、s、H−2’)、 7.11(1H、s、H−3)、7.30(1H、d、J=8.6Hz、H−7’)、 7.57(1H、d、J=7.9Hz、H−4’)。
【0043】
13C−NMR(CDOD、125MHz)28.3(C−10’)、36.0(C−5),38.8(C−6)、47.4(C−9)、57.5(C−11’) 、61.3(C−10)、62.7(グルコースC−6)、71.6(グルコースC−4)、74.9(グルコースC−2)、77.9(グルコースC−3)、78.4(グルコースC−5)、97.7(C−1)、100.3(グルコースC−1)、111.8(C−3’)、112.2(C−7’)、115.5(C−4)、119.6(C−4’)、119.8(C−5’)、122.4(C−6’)、124.4(C−2’)、127.9(C−7)、129.0(C−8’) 、138.1(C−9’)、144.7(C−8)、150.2(C−3)、169.9(C−11)、180.0(C−12’)。
【0044】
ネガティブ ESI LC−MS m/z:559[M−H]
式(VI)の化合物
H−NMR(CDOD、500MHz)2.07(3H、s、Ac)、3.18(1H、m、H−9)、3.20(1H、m、H−4)、3.37(2H、m、グルコースH−4、5)、3.42(1H、dd、J=1.8、0.6Hz、グルコースH−2)、3.57(1H、m、グルコースH−3)、3.64(1H、d、J=1.8Hz、H−5)、3.68(1H、dd、J=4.3、12.0Hz、グルコースH−6a)、3.88(1H、d、J=12.0Hz、グルコースH−6b)4.66(1H、d、J=14.0Hz、H−10a)、4.79(1H、d、J=14.0Hz、H−10b)、4.93(1H、d、J=7.9Hz、グルコースH−1)、5.32(1H、d、J=2.4Hz、H−3)、5.55(1H、d、J=1.8Hz、H−1)、5.60(1H、dd、J=1.2、7.9Hz、H−6)、5.90(1H、br d、J=1.8Hz、H−7)。
【0045】
13C−NMR(CDOD、125MHz)20.0(OCO)、36.1(C−5),38.9(C−4)、46.2(C−9)、61.8(C−10)、62.6(グルコースC−6)、71.2(グルコースC−4)、75.9(グルコースC−3)、79.3(グルコースC−5)、80.0(グルコースC−2)、88.3(C−6)、92.9(C−1)、96.5(C−3)、99.3(グルコースC−1)、130.0(C−7) 、144.7(C−8)、172.1(OOCH)、180.2(C−11)。
【0046】
ネガティブ ESI LC−MS m/z:413[M−H]
[実施例3] N−[(1S)−2−フェニル−1−カルボキシエチル]−ゲニポシド酸アミド(化合物1)の合成
(工程1)N−[(1S)−2−フェニル−1−メトキシカルボニルエチル]−ゲニポシド酸アミド
ゲニポシド酸(30.0mg、0.080mmol)をDMF(2mL)に溶解し、L−フェニルアラニンメチルエステル(27.7mg、0.128mmol)を加え、その後、トリエチルアミン(0.030mL,0.215mmol)、WSC(40.0mg、0.209mmol)およびHOBt(23.5mg、0.174mmol)を加え、室温で17時間攪拌した。その後、減圧濃縮後、CHCl(1.5mL)に溶解し、silica gel(富士シリシア化学)を充填したカラムクロマトグラフィー(CHCl:MeOH:HO=14:2:0.1)で精製することにより、表題の化合物を白色粉末として得た(42.0mg、収率98%)。
【0047】
H−NMR(CDOD、500MHz)1.91(1H、m、H−6a)、2.56(1H、dd、J=8.5、15.9Hz、H−6b)、2.71(1H、m、H−9)、3.01(1H、m、H−7’a)、3.19−3.39(6H、m、H−5、グルコースH−2、3、4、5、H−7’b)、3.64(1H、m、グルコースH−6a)、3.71(3H、s、OCH)、3.85(1H、dd、J=1.8、11.6Hz、グルコースH−6b)、4.16(1H、d、J=14.0Hz、H−10a)、4.29(1H、d、J=14.0Hz、H−10b)、4.68(1H、d、J=7.9、Hz、グルコースH−1)、4.71(1H、dd、J=5.5、9.2Hz、H−8’)、5.10(1H、d、J=7.3Hz、H−1)、5.72(1H、s、H−7)、7.10(1H、s、H−3)、7.21-7.30(5H、m、H−2’、3’、4’、5’、6’)。
【0048】
13C−NMR(CDOD、125MHz)36.1(C−5),38.0(C−7’)、39.0(C−6)、47.3(C−9)、52.7(OCH)、55.3(C−8’) 、61.4(C−10)、62.7(グルコースC−6)、71.6(グルコースC−4)、74.9(グルコースC−2)、77.9(グルコースC−3)、78.4(グルコースC−5)、97.3(C−1)、100.3(グルコースC−1)、115.8(C−4)、127.9(C−4’、C−7)、129.5(C−3’、−5’)、130.2(C−2’、−6’)、138.4(C−1’)、144.8(C−8)、148.7(C−3)、170.2(C−11)、173.9(C−9’)。
【0049】
ポジティブESI−MS m/z:558[M+Na]
(工程2)N−[(1S)−2−フェニル−1−カルボキシエチル]−ゲニポシド酸アミド
N−[(1S)−2−フェニル−1−メトキシカルボニルエチル]−ゲニポシド酸アミド(42.0mg、0.079mmol)を0.5N水酸化ナトリウムのメタノール溶液(1.0mL)に溶解し、室温で5時間攪拌した。その後、Sephadex LH20(ファルマシア社製)を充填したカラムクロマトグラフィー(MeOH)で精製することにより、表題の化合物を白色粉末として得た(18.8mg、46%)。
【0050】
H−NMR(CDOD、500MHz)1.86(1H、m、H−6a)、2.48(1H、dd、J=7.9、16.5Hz、H−6b)、2.70(1H、dd、J=7.3、7.3Hz、H−9)、3.08(1H、dd、J=7.3、13.4Hz、H−7’a)、3.21(1H、m、H−5)、3.28−3.32(4H、m、グルコースH−2、4、5、H−7’b)、3.38(1H、m、グルコースH−3)、3.64(1H、m、グルコースH−6a)、3.85(1H、dd、J=1.8、12.2Hz、グルコースH−6b)、4.15(1H、d、J=14.0Hz、H−10a)、4.28(1H、d、J=14.7Hz、H−10b)、4.60(1H、m、H−8’)、4.68(1H、d、J=2.4、7.9Hz、グルコースH−1)、5.10(1H、d、J=2.4、7.3Hz、H−1)、5.68(1H、s、H−7)、7.13(1H、d、J=1.2Hz、H−3)、7.15-7.25(5H、m、H−2’、3’、4’、5’、6’)。
【0051】
13C−NMR(CDOD、125MHz)36.2(C−5),38.7(C−7’)、39.2(C−6)、47.4(C−9)、56.8(C−8’) 、61.4(C−10)、62.7(グルコースC−6)、71.6(グルコースC−4)、75.0(グルコースC−2)、77.9(グルコースC−3)、78.4(グルコースC−5)、97.9(C−1)、100.4(グルコースC−1)、115.8(C−4)、127.5(C−4’)、127.9(C−7)、129.3(C−3’、−5’)、130.7(C−2’、−6’)、139.3(C−1’) 、144.9(C−8)、148.8(C−3)、169.2(C−11)、175.0(C−9’)。
【0052】
ポジティブESI−MS m/z:544[M+Na]
[実施例4] N−[(1R)−2−フェニル−1−カルボキシエチル]−ゲニポシド酸アミドの合成
(工程1)N−[(1R)−2−フェニル−1−メトキシカルボニルエチル]−ゲニポシド酸アミド
出発物質としてゲニポシド酸(28.9mg、0.077mmol)およびD−フェニルアラニンメチルエステル(28.0mg、0.130mmol)を使用して、実施例1、工程1と同様の手法により、表題の化合物を白色の粉末として得た(35.0mg、85%)。
【0053】
H−NMR(CDOD、500MHz)1.89(1H、m、H−6a)、2.59(1H、dd、J=8.5、15.9Hz、H−6b)、2.73(1H、m、H−9)、3.04(1H、m、H−7’a)、3.18−3.38(6H、m、H−5、グルコースH−2、3、4、5、H−7’b)、3.64(1H、m、グルコースH−6a)、3.70(3H、s、OCH)、3.85(1H、dd、J=1.8、11.6Hz、グルコースH−6b)、4.16(1H、d、J=14.7Hz、H−10a)、4.29(1H、d、J=15.3Hz、H−10b)、4.68(1H、dd、J=2.4、7.9、HzグルコースH−1)、4.73(1H、dd、J=5.5、9.2Hz、H−8’)、5.12(1H、dd、J=2.4、7.3Hz、H−1)、5.72(1H、s、H−7)、7.17-7.27(6H、m、H−3,H−2’、3’、4’、5’、6’)。
【0054】
13C−NMR(CDOD、125MHz)36.1(C−5),38.2(C−7’)、39.1(C−6)、47.4(C−9)、52.7(OCH)、56.1(C−8’) 、61.3(C−10)、62.7(グルコースC−6)、71.6(グルコースC−4)、74.9(グルコースC−2)、77.9(グルコースC−3)、78.4(グルコースC−5)、97.7(C−1)、100.3(グルコースC−1)、115.9(C−4)、127.8(C−4’)、128.2(C−7)、129.5(C−3’、−5’)、130.2(C−2’、−6’)、138.4(C−1’)、144.8(C−8)、148.3(C−3)、169.8(C−11)、173.7(C−9’)。
【0055】
ポジティブESI−MS m/z:558[M+Na]
(工程2)N−[(1R)−2−フェニル−1−カルボキシエチル]−ゲニポシド酸アミド
出発物質としてN−[(1R)−2−フェニル−1−メトキシカルボニルエチル]−ゲニポシド酸アミド(35.0mg、0.065mmol)を使用して、実施例1、工程2と同様の手法により、表題の化合物を白色の粉末として得た(25.0mg、収率73%)。
【0056】
H−NMR(CDOD、500MHz)1.94(1H、m、H−6a)、2.68(1H、dd、J=7.9、7.9Hz、H−9)、3.08(1H、m、H−7’a)、3.11(1H、m、H−6b)、3.21(1H、m、H−5)、3.26−3.31(4H、m、グルコースH−2、4、5、H−7’b)、3.38(1H、m、グルコースH−3)、3.63(1H、m、グルコースH−6a)、3.84(1H、dd、J=1.2、11.6Hz、グルコースH−6b)、4.16(1H、d、J=14.7Hz、H−10a)、4.28(1H、d、J=14.7Hz、H−10b)、4.55(1H、m、H−8’)、4.68(1H、d、J=3.1、7.9、Hz、グルコースH−1)、5.10(1H、d、J=2.4、7.3Hz、H−1)、5.72(1H、s、H−7)、7.12-7.25(6H、m、H−3、H−2’、3’、4’、5’、6’)。
【0057】
13C−NMR(CDOD、125MHz)36.5(C−5),39.0(C−7’)、39.3(C−6)、47.4(C−9)、57.2(C−8’) 、61.5(C−10)、62.7(グルコースC−6)、71.6(グルコースC−4)、75.0(グルコースC−2)、77.9(グルコースC−3)、78.4(グルコースC−5)、98.0(C−1)、100.3(グルコースC−1)、116.2(C−4)127.4(C−4’)、128.0(C−7)、129.2(C−3’、−5’)、130.7(C−2’、−6’)、139.5(C−1’)、145.0(C−8)、148.1(C−3)、169.2(C−11)、178.5(C−9’)。
【0058】
ポジティブFAB−MS m/z:544[M+Na]
HPLCによる化合物1の構造確認
実施例1、3および4で得られた化合物について、以下の条件によるHPLC分析を行った。
【0059】
カラム:Cosmosil 5C18−MS−II
移動相 A:メタノール
B:20mMリン酸バッファー(pH2.5)
グラジエント設定 A:B=15:85→50:50(0〜30分)
→50:50(30から35分)
温度:30℃
検出:SPD−MXA(240nm)
その結果、実施例1の化合物1の保持時間は29.3分、実施例3のS体は29.3分、実施例4のR体は29.6分であった。実施例1の化合物1の保持時間は実施例3のS体のものとよく一致し、化合物1が実施例3のS体であることが確認された。
【0060】
[実施例5] ラット褐色脂肪細胞を用いた抗肥満作用試験
(1)褐色脂肪前駆細胞の培養
ラット褐色脂肪細胞培養キット(タカラバイオ、MK422)を使用して、褐色脂肪前駆細胞の培養を行った。前記脂肪細胞は、増殖・凍結保存後、3代目で分化誘導して試験に用いた。
【0061】
増殖培地(DMEM 500mL、アスコルビン酸 1mL、ビオチン 1mL、パントテン酸 1mL、トリヨードチロニン 0.5mL、オクタン酸 1mL、牛胎児血清 50mL、抗生物質 1mL)、維持培地(増殖培地 100mL、インシュリン 1mL)、分化培地(増殖培地 100mL、インシュリン 1mL、デキサメタゾン 0.5mL、3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)0.1mL)を調製した。
【0062】
ラット褐色脂肪前駆細胞(凍結細胞、>1.8×10cells/vial)を融解した。細胞接種密度は2.5−5×10cells/cmとなるように、融解サンプルを45mLの増殖培地に接種し、接種した増殖培地を75cmデッシュに10mLずつ分注した。37℃、5%インキュベーターで24時間培養した後に、DMSOおよび未接着の細胞を除くために増殖培地を交換し、48時間培養した(70%コンフルエンス状態となった)。培養細胞を、上記培養キットに付属の説明書に従い、凍結保存した。
【0063】
(2)脂肪細胞における脂肪燃焼量の測定
凍結した培養細胞の融解サンプル(10μL)を500μLの増殖培地(24穴プレート)に播種し、24時間培養した。その後、培地交換を行い、さらに48時間培養した(90%コンフルエンス)。さらに培地を分化培地に交換し48時間培養し、その後維持培地に交換して2日間培養した。得られた培養液に化合物1(実施例3の方法により調製)を100μg/mLになるように添加し、3日間培養した。
【0064】
各ウェルに培地の1/5量の10%グルタルアルデヒドを添加し、30分間静置した。その後、培地およびグルタルアルデヒド溶液を除去し、200μLの10%グルタルアルデヒドを添加し、60分間静置した。グルタルアルデヒドを除去後、水で2回洗浄し、200μLのOil O Red調整液を加え、60分間静置し、各ウェルを水で3回洗浄した。各ウェルに200μLの2−プロパノールを添加し、Oil O Red色素を抽出し、抽出液をOD570で測定した。
【0065】
なお、Oil O Red調整液は、Oil O Red(0.08g)/2−プロパノール(10mL)溶液:水が3:2となるように混合し、10分後に0.45μmフィルターにて濾過することにより調製した。
【0066】
試験結果のグラフを以下に示す。
【0067】
【化6】

【0068】
上記の結果は、化合物1が、脂肪細胞における脂肪の燃焼を促進する効果を有することを示すものであり、化合物1が抗肥満効果を有することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、Rは、水素原子、C1−6アルキルまたはC7−14アラルキルであり;
は、水素原子またはC1−6アルキルであり、前記アルキルはアリールまたはヘテロシクリルにより置換されていてもよく、前記アリールおよびヘテロシクリルは、ヒドロキシ、C1−6アルキルカルボニルオキシ、C1−6アルコキシまたはC7−14アラルキルオキシから選択される置換基により置換されていてもよく;
は、水素原子またはC1−6アルキルであり;
は、水素原子、C1−6アルキルカルボニルまたはC7−14アラルキルであり;
11、R12、R13およびR14は、独立に、水素原子、C1−6アルキルカルボニルまたはC7−14アラルキルから選択される]
の化合物、またはその塩。
【請求項2】
が結合する炭素原子の立体化学がSである、請求項1に記載の化合物、またはその塩。
【請求項3】
がベンジルまたはインドール−3−イルメチルである、請求項1に記載の化合物、またはその塩。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含む医薬組成物。
【請求項5】
肥満、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、高血圧および高脂質血症から選択される疾患の治療または予防に使用される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物を含む食品または飲料。
【請求項7】
機能性食品、健康食品、健康補助食品、栄養補助食品、保健機能食品、特定保健用食品または栄養機能食品である、請求項6に記載の食品または飲料。
【請求項8】
式(II):
【化2】

[式中、R、R11、R12、R13およびR14は、請求項1に定義したとおりである]
の化合物を、式(III):
【化3】

[式中、R、RおよびRは、請求項1に定義したとおりである]
を反応させる工程を含む、請求項1に記載の化合物の製造方法。

【公開番号】特開2008−106008(P2008−106008A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291553(P2006−291553)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月1日 社団法人 日本薬学会発行の「第1回食品薬学シンポジウム講演要旨集」に発表
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】