説明

ゲル低減方法

【課題】ゲルが少ない樹脂混練物を高い生産性で製造する製造方法を提供する。
【解決手段】ゲルが含まれた混練済みの樹脂が内部を流通する樹脂流路5の途中位置で常に樹脂に8.8MPaG以上の圧力損失ΔPを付与して、樹脂中のゲルを低減することを特徴とするものである。具体的には、ゲルが含まれた混練済みの樹脂混練物が流通する樹脂流路5の内部に、樹脂混練物に圧力損失ΔPを付与可能な圧力損失付加装置1を設けておくのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は混練樹脂中に存在するゲルを低減させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多種多様な用途のプラスチック製品に対して、その要求品質を満足させるために、粘度差が大きな樹脂成分同士を混練押出設備で混練するニーズが増加している。このように粘度差が大きな樹脂成分同士を混練する際には、高粘度の成分が低粘度の成分中に充分に分散されずにゲルとして混練後の樹脂(以降、樹脂混練物という)に残り、この樹脂混練物をフィルムとして成形した場合にゲルがフィッシュアイなどの外観不良の原因となったり、製品の機械的特性を低下させる原因になったりする場合がある。そこで、混練機や押出機などの混練押出設備には、樹脂混練物中のゲルをスクリーンなどを用いて低減させる技術が採用されるようになってきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、スクリーンフィルタを有する濾過装置を用いてポリオレフィンの樹脂混練物中のゲルを低減させる方法が提案されている。この濾過装置に用いられるフィルタは、70〜200μmのメッシュサイズを有しており、平方インチあたり1時間に5〜100ポンドの濾過能力でゲルを濾し取ることができるとされている。
また、特許文献2には、スリット状の濾過装置を用いて溶融プラスチック原料(樹脂混練物)中のゲルを低減させる方法が提案されている。この特許文献2の濾過装置は、スリットを通過するゲルに大きな剪断力を与えてゲルを破壊して低減するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7393916号明細書
【特許文献2】特開2004−276451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の濾過装置は、樹脂混練物中の異物などを濾過するスクリーンフィルタをゲルの低減に転用したものである。この場合のスクリーンフィルタは、ゲルを捕集する能力が主に備わったものであり、捕集されたゲルにより時間経過とともに圧力損失が上昇し、スクリーンフィルタの交換頻度が高くなってしまうので、生産性が損なわれているのが実情である。
【0006】
一方、特許文献2の濾過装置は、スリットを通過する樹脂混練物に大きな剪断力を与えてゲルを破壊して低減するものである。ただ、この発明では、濾過装置を通過する段階の樹脂混練物は、上行程において混練押出機で被混練物が混練される際に既に大きな剪断力が与えられた後のものであるため、そのようなものに対して再度剪断力を与えて樹脂混練物中のゲルを破壊しようとしても、十分にゲルを低減できる可能性は低い。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、ゲルが少ない樹脂混練物を生産性良く製造することができるゲル低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のゲル低減方法は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明のゲル低減方法は、ゲルが含まれた混練済みの樹脂が内部を流通する樹脂流路の途中位置で常に当該樹脂に8.8MPaG以上の圧力損失を付与して、当該樹脂中のゲルを低減することを特徴とするものである。
また、本発明のゲル低減方法は、ゲルが含まれた混練済みの樹脂が内部を流通する樹脂流路の途中位置に当該樹脂に所定の圧力損失を生じさせる圧力損失付加装置を設けておき、前記圧力損失付加装置で前記樹脂に常に8.8MPaG以上の圧力損失を付与して、前記樹脂中のゲルを低減することを特徴とするものである。
【0009】
本発明者は、樹脂混練物に大きな剪断力を付与するのではなく、ゲルごと樹脂混練物に大きな圧力損失を生じるようにすれば、ゲルを含んだ樹脂混練物が引き伸ばされるように流動し、ゲルが破壊されてその低減が可能になるのではないかと考えた。そして、樹脂混練物に8.8MPaG以上の圧力損失を付与すれば、ゲルが少ない樹脂混練物を生産性良く製造することができることを知見して本発明を完成させたのである。
【0010】
なお、前記樹脂に付与される圧力損失が25.0MPaG以下であるのが好ましい。
また、前記樹脂が、190℃に加熱した際のメルトインデックスが0.01〜10g/10minのHDPEであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゲル低減方法によれば、ゲルが少ない樹脂混練物を高い生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は本発明の圧力損失付加装置が設けられた混練押出設備の正面図であり、(b)は圧力損失付加装置で生じる圧力損失を示す図である。
【図2】(a)は第1実施形態の圧力損失付加装置であり、(b)は第2実施形態の圧力損失付加装置であり、(c)は第3実施形態の圧力損失付加装置である。
【図3】圧力損失付加装置で生じる圧力損失(圧力損失上昇)と白斑面積率の減少度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「第1実施形態」
まず、本発明の圧力損失付加装置1を説明するにあたり、圧力損失付加装置1が設置される混練押出設備2を簡単に説明する。
図1(a)は、本発明の圧力損失付加装置1が設置された混練押出設備2の一例(混練機を用いる場合の例)を示したものである。
【0014】
図例の混練押出設備2は、バレル3内に挿通された一対の混練スクリュ(図示略)で樹脂材料を混練する混練機を備えたものである。このバレル3の一方の端部(図中のバレル3の左端)にはバレル3内に材料を供給可能なホッパ4が設けられており、またもう一方の端部(図中の右端)には混練済みの樹脂材料(以下、樹脂混練物という)を混練機外に搬出する樹脂流路5が設けられている。
【0015】
この樹脂流路5の先端には樹脂混練物をストランド(線状材)として押し出すストランドダイ6が設けられており、また樹脂流路5の中途部(途中位置)には樹脂混練物をストランドダイ6へと押し出すギヤポンプ7が配備されている。
そして、このギヤポンプ7とストランドダイ6との間の樹脂流路5には、圧力損失付加装置1が配備されている。この圧力損失付加装置1は、樹脂流路5を流れる樹脂混練物が通過する際にその樹脂混練物に常に8.8〜25.0MPaGの範囲の圧力損失を付与するものである。なお、圧力損失の単位に付加する「G」は、ゲ−ジ圧を示すものである。
【0016】
この8.8〜25.0MPaGという圧力損失の範囲は、混練押出設備2を通常の運転条件で運転させるだけでは樹脂流路の途中で生じることがないような大きな圧力となっており、本発明ではこの圧力損失付加装置1を用いて、流下する樹脂混練物にあえて大きな圧力損失を定常的に付与する構成となっている。このような大きな圧力損失を樹脂混練物に付与するのは、圧力損失を生じさせるには樹脂流路の面積が制限されることを利用して、材料を引き伸ばすような伸長流を樹脂混練物に発生させたいからであり、樹脂混練物をゲルごと引き伸ばすことによりゲルを低減するためである。それ故、この圧力損失付加装置1により樹脂混練物に付与される圧力損失ΔPは、常に8.8〜25.0MPaGの範囲に維持されているのが好ましい。
【0017】
具体的には、第1実施形態の圧力損失付加装置1は以下のような構成となっている。
図2(a)に示すように、第1実施形態の圧力損失付加装置1は、樹脂混練物を透過できないような中実の金属板などの板部材で形成されており、樹脂流路5の面積を制限して樹脂混練物の流れに対して抵抗となるように樹脂流路5に設けられている。この板部材には樹脂流路5より小さい流路断面積を有する絞り流路8が少なくとも1つ以上、図例では9箇所に亘って設けられている。
【0018】
絞り流路8は、上流側から下流側に向けて板部材を板厚方向に(樹脂流れ方向に)貫通するように形成されており、圧力損失付加装置1の上流側の樹脂混練物を下流側に案内できるようになっている。本実施形態の絞り流路8は、樹脂混練物が絞り流路8内に滞留(停滞)しないように凹凸がない円筒面を備えた貫通孔(円形貫通孔)として形成されているが、上記した所定の圧力損失を生じさせるものであれば、勿論、多角形の貫通孔でもよい。
【0019】
この圧力損失付加装置1に設けられた絞り流路8はいずれも(9つとも)同じ流路断面積とされており、その流路断面積は樹脂流路5の流路断面積より小さく形成されている。具体的には、各絞り流路8がミリオーダの寸法(即ちミクロンオーダの寸法であるゲルが通過するに十分過ぎる寸法)で形成されており、より詳しくは各絞り流路8の直径dが1(mm)以上でその流路断面積はπd2/4(mm2)以上に相当する面積となるようになっている。このようにすることよりゲルによる流路の閉塞を防止しつつ樹脂混練物に対して所定の圧力損失を与えることのできるよう絞り流路を形成することができる。なお、樹脂流路5の流路断面積をS2とした場合に、絞り流路8の流路断面積の総和であるS1が所定の絞り比S1/S2となるようにすることが好ましい。
【0020】
この絞り比S1/S2は、具体的には、以下の式(1)の関係を満たすものである。

S1/S2≧44 ・・・(1)
ただし、S1:樹脂流路の流路断面積、S2:絞り流路の流路断面積の総和

なお、絞り比S1/S2を44より小さい値だと所望の圧力損失を得難くなり、202より大きい値だと圧力損失が必要十分以上となりやすい。そのため、S1/S2は44〜202の範囲内とすることがより好ましい。
【0021】
上述のような樹脂流路5よりも狭い流路断面積を有する絞り流路8に樹脂混練物を案内すれば、絞り流路8を通過する際に樹脂混練物の流路が急激に絞られ、絞り流路8に流れ込む前と後とで樹脂混練物の圧力(樹脂流路内圧)に大きな差が発生することになる。つまり、絞り流路8の上流側では樹脂混練物の圧力はP0、下流側ではP1となって、両者間に8.8〜25.0MPaGという圧力損失ΔP(=P0−P1)が発生する。
【0022】
そして、このような圧力損失ΔPが発生するような流路断面積の絞り流路8を通過する際には、樹脂混練物が樹脂流れ方向に沿って伸長し、この樹脂混練物の引き延ばしに伴ってゲルも引き伸ばされるため、ゲルの分散化が進行して樹脂混練物に含まれるゲルを確実に低減することが可能となるのである。
ところで、従来からあるメッシュスクリーンなどを用いたゲルを濾し取るフィルタの場合は、使用した時間が長くなって目が詰まってくると新しいものに交換されるが、仮に交換しないまま使用し続けると圧力損失が上昇し続ける可能性が考えられる。しかしながら、本発明の圧力損失付加装置1は、後述するように目詰まりのない絞り流路8を用いているため、使用した時間が長くなっても目が詰まりにくく又絞り流路分の流路面積は確保されることとなり、圧力損失ΔPの範囲を常に8.8〜25.0MPaGに維持することが可能となる。すなわち、従来からあるゲルを濾し取るメッシュスクリーンなどは、圧力損失の範囲を常に8.8〜25.0MPaGに維持することはできない。
【0023】
なお、上述した8.8〜25.0MPaGという圧力損失ΔPを発生可能とするような圧力損失付加装置1には、以下の実施形態(第2実施形態、第3実施形態)に示すようなさまざまな形状や構造を有するものが考えられる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の圧力損失付加装置1を説明する。
【0024】
図2(b)に示すように、第2実施形態の圧力損失付加装置1は、表面に絞り流路8を4つ備えた板部材を2枚組み合わせたものである。
具体的には、第2実施形態の圧力損失付加装置1は、上流側に設けられた第1板部材9と、下流側に設けられた第2板部材10との2枚の板部材を、樹脂混練物の流れ方向に距離を空けて備えている。上流側に設けられた第1板部材9の絞り流路81と、下流側に設けられた第2板部材10の絞り流路82とは樹脂流れ方向に見て非連通状態となっており、両板部材の絞り流路81、82同士が樹脂流路5の軸心を中心として周方向に45°だけずれた位置関係となっている。
【0025】
また、第1板部材9の絞り流路81は、この第1板部材9の絞り流路81に入る前と後とでΔP1という圧力損失を発生可能な流路断面積を有している。また、第2板部材10の絞り流路82は、この第2板部材10の絞り流路82に入る前と後とでΔP2という圧力損失を発生可能な流路断面積を有している。そして、第1板部材9で発生する圧力損失ΔP1と第2板部材10で発生する圧力損失ΔP2との和が上述した8.8〜25.0MPaGという数値になっている。
【0026】
このような第2実施形態の圧力損失付加装置1は、例えば1枚の板部材からなる圧力損失付加装置1では所定の圧力損失が得られないような場合であっても、このような板部材を複数枚組み合わせることで全体として8.8〜25.0MPaGの圧力損失を発生可能なものである。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の圧力損失付加装置1を説明する。
【0027】
図2(c)に示すように、第3実施形態の圧力損失付加装置1は、第1実施形態や第2実施形態のように中実の板部材を用いたものでなく、メッシュのような多孔状の部材11を板状に形成しておいて、この多孔状の部材11に更に、多孔状の各孔よりも相対的かつ十分に大きな孔からなる絞り流路8を形成したものと、その下流側に、中実の板部材に絞り流路8よりも更に大きな複数の孔を形成したものを、絞り流路8を塞がないように重ね合わせたものである。
【0028】
具体的には、第3実施形態の圧力損失付加装置1は、絞り流路8を通過させるだけでなく多孔状の板部材11そのものを透過することでも樹脂混練物を通過させることができるようになっている。つまり、第3実施形態の圧力損失付加装置1の上流側と下流側との間に発生する圧力損失ΔPには、絞り流路8を通過して流れる樹脂混練物に作用する圧力損失だけでなく、多孔状の板部材11中を通って流れる樹脂混練物の圧力損失なども作用しており、これら圧力損失の総和として、常に8.8〜25.0MPaGの圧力損失ΔPが発生するようにしている。
【0029】
第3実施形態の圧力損失付加装置1は、例えば中実な板部材でなくメッシュのように樹脂混練物から異物を濾過できる多孔状の部材11を用いても、メッシュに実質的な目詰まりを起こさないような流路を形成する工夫をすることで常に8.8〜25.0MPaGという範囲の圧力損失が発生できることを示しており、このような多孔状の部材11からなる圧力損失付加装置1を用いても、高い生産性を維持しつつゲルの低減が可能であることを示している。
【0030】
本実施形態では、多孔状の部材11として単層のメッシュに実質的な目詰まりを起こさないような流路を形成する工夫を施したものを例示しているが、多孔状の部材11は、メッシュを積層したもの或いは多孔質のセラミック等に実質的な目詰まりを起こさないような流路を形成する工夫を施したものであってもよい。
【実施例】
【0031】
次に、実施例及び比較例を用いて、本発明のゲル低減方法の作用効果をさらに詳しく説明する。
実施例及び比較例は、実際に圧力損失付加装置1を装着した混練押出設備2を用いて樹脂混練物を生産する実験をした際に、樹脂混練物中にゲルが確認されるかどうかを確認したものである。
【0032】
この実施例及び比較例は、いずれも第1実施形態で示した絞り流路8を有する中実の板部材から構成された圧力損失付加装置1において、絞り流路8の流路径及び設置数を変えることにより、絞り流路8の流路断面積を変化させたものである。
この実施例及び比較例に用いた混練押出設備2は、いずれも二軸混練機(LCM50)からギヤポンプ7を経由してストランドダイ6に樹脂混練物を搬送する樹脂流路5上に、図1(b)および図2(a)〜(c)に例示されるような圧力損失付加装置支持体1bによって外周が支持された圧力損失付加装置1を装着したものである。二軸混練機から排出される樹脂混練物は、高密度ポリエチレン(密度=0.945g/cm3、メルトインデックス=0.08g/10min、 190℃、2.16kg荷重;JIS K 7210)を母材として、この母材に分散確認用粒子としてカーボンブラックを2.3%混合したものである。この混練押出設備2には高密度ポリエチレンとカーボンブラックとがドライ状態で供給され、混練押出設備2で混練された樹脂混練物が樹脂流路5を通じて装置外に送り出されている。
【0033】
表1は、圧力損失付加装置1の絞り流路8について、その口径を1mm、1.15mm、1.5mm、2mm、絞り流路8なしの5水準で変化させると共に、圧力損失付加装置1に設置される絞り流路8の設置数を0箇所、4箇所、6箇所、9箇所、16箇所の5水準で変化させて圧力損失に変化をつけたものであり、圧力損失に応じて後述する白斑面積率及び白斑面積率の減少度がどのように変化するかを示したものである。
【0034】
【表1】

【0035】
なお、白斑面積率は、ストランドダイ6から押し出された樹脂混練物中に、どの程度混練が不十分な部分、つまりゲルが観察されるかを面積比で示したものである。つまり、上述した組成では、混練により分散されるべきゲル成分が十分に分散されない場合、押し出された樹脂混練物中にカーボンブラックにより着色されない透明部分(ゲルが存在する部分)がゲルの面積率として観察される。
【0036】
それゆえ、押し出された樹脂混練物をミクロトーム法を用いて20μmの薄片に切り出し、切り出された薄片中に透明部分がどの程度存在するかを計測すれば、ゲルの低減度合いを評価することができる。なお、この面積率の計測は、光学顕微鏡の200倍の視野に対して、二値化処理を行って求めたものである。
また、白斑面積率の減少度は、圧力損失付加装置の圧力損失が0MPaGの時、言い換えれば圧力損失付加装置を用いない時の白斑面積率を基準(減少度0%)として、各圧力損失における白斑面積率が基準からどの程度減少したかを百分率で表示したものである。
【0037】
図3は、白斑面積率の減少度を圧力損失に対してプロットしたものである。図3に示すように、圧力損失付加装置1の上流側と下流側との間に発生する圧力損失が0MPaG→5.9MPaG→8.8MPaGと大きくなっていくと、白斑面積率の減少度も0%→52.1%→79.2%と大きくなっていき、圧力損失に合わせて白斑面積率も徐々に減少する。
【0038】
しかし、圧力損失付加装置による圧力損失を8.8MPaGを超えて増加させても、白斑面積率の減少度は14.2MPaGで83.3%、19.6MPaGで85.4%となり、80%強のままを維持して、それ以上減少度が大きくなることがなくなる。つまり、圧力損失付加装置1を設けて混練樹脂に8.8MPaG以上の圧力損失を付与できれば、白斑面積率の減少度を安定して高く維持した樹脂混練物を得ることが可能となる。特に、圧力損失が10MPaGを超えると白斑面積率の減少度が80%以上で安定するため、10MPaGより大きくすることがより好ましい。
【0039】
なお、圧力損失を8.8MPaG以上にすれば良いからと言って、圧力損失を大きくしすぎると押出装置(単軸あるいは2軸押出機、ギヤポンプ7など)の軸受に設計上の限界を超える圧力が作用して軸受の耐久性が下がったり、ケーシングに設計上の耐圧限界値を超えて圧力が作用してケーシングの破損が起こったりするので好ましくない。例えば、上述した混練押出設備2においてHDPE(メルインデックス=0.01〜10/10min、190℃、2.16kg、密度=0.930〜0.970g/cm3)の樹脂混練物を押し出す場合であれば、この樹脂混練物に加えることのできる装置強度に起因する圧力の限界は設計上35MPaG程度であり、樹脂の押し出しに必要な加工圧の分として10MPaGを差し引くと、圧力損失付加装置1として樹脂混練物に付与できるものは25MPaG程度が実質的な限界となる。
【0040】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
なお、上述した混練押出設備2には混練機が用いられているが、本発明の圧力損失付加装置1は押出機に設けられていても良いし、押出機や混練機以外のものであってゲルが含まれた樹脂混練物を扱う設備に設けられていても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 圧力損失付加装置
1b圧力損失付加装置支持体
2 混練押出設備
3 バレル
4 ホッパ
5 樹脂流路
6 ストランドダイ
7 ギヤポンプ
8 絞り流路
9 第1板部材
10 第2板部材
11 多孔状の部材
ΔP 圧力損失

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルが含まれた混練済みの樹脂が内部を流通する樹脂流路の途中位置で常に当該樹脂に8.8MPaG以上の圧力損失を付与して、当該樹脂中のゲルを低減することを特徴とするゲル低減方法。
【請求項2】
ゲルが含まれた混練済みの樹脂が内部を流通する樹脂流路の途中位置に当該樹脂に所定の圧力損失を生じさせる圧力損失付加装置を設けておき、
前記圧力損失付加装置で前記樹脂に常に8.8MPaG以上の圧力損失を付与して、前記樹脂中のゲルを低減することを特徴とするゲル低減方法。
【請求項3】
前記樹脂に付与される圧力損失25.0MPaG以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のゲル低減方法。
【請求項4】
前記樹脂が、190℃に加熱した際のメルトインデックスが0.01〜10g/10minのHDPEであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゲル低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−187858(P2012−187858A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54230(P2011−54230)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】