説明

ゲル状組成物の製造方法

【課題】比較的簡易なプロセスによって、水系溶媒を含むゲル化反応系を均質かつ直接ゲル化することによって相分離等の問題が生じないゲル状組成物を得るための方法を提供すること。
【解決手段】ポリエチレンイミン系ポリマーからなる水溶性ポリマーを、水系溶媒中において、均一ゲル化条件下で架橋反応させることによって、前記水系溶媒を含む反応系を、実質的に均質相からなるゲル状物質に直接ゲル化させることを特徴とする、ゲル状組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲル状組成物に関し、特に水系溶媒を用いるゲル状組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゲルないしゲル状組成物は、物理化学的には分散系の一種であって、分散質のネットワークによって高い粘性とともに流動性を失った半固形状態の物質系を意味し、広義には固体分散媒のコロイドであるソリッドゾルを包含する。
【0003】
また、材料系によってゲルを分類した場合、分散質が高分子であって架橋等によって網目構造となったゲルを高分子ゲルと呼び、分散媒が水のゲルをヒドロゲル、分散媒が有機溶媒のゲルの場合をオルガノゲルと通常呼ばれている。
【0004】
上記の内でも水系溶媒を分散媒とする高分子ゲルは、ヒドロゲルであるという特性から筆記具用のインク組成物や各種電気化学的測定用の半電池の電極用材料をはじめ広範囲な用途への適用が期待されている。
【0005】
従来、水溶液を架橋型アクリル重合体などによって部分的にゲル化させてゲル状物質を析出させる技術が知られている。たとえば、特開2001−181354号公報(特許文献1)には、洗浄剤組成物の分野において、特定の四級カチオン基を含有する重合性カチオン性モノマーとポリオキシエチレン鎖含有の重合性モノマーとを共重合させて得られる組成物を水で希釈させることによってゲル状物質が析出することが知られている。
【0006】
さらに、特開2001−139828号公報(特許文献2)、特開2002−500247号公報(特許文献3)ならびに特開2002−138147号公報(特許文献4)には、使い捨ておむつ等の吸収性材料に好適な水膨潤性架橋重合体組成物ないし吸水性ポリマーが開示されている。
【0007】
一方、特開2001−255298号公報(特許文献5)ならびに特許第4413514号公報(特許文献6)には、電気化学的測定用の電極材料に用いられる特定のヒドロゲルが開示されている。
【0008】
しかしながら、従来のいわゆるヒドロゲル系の高分子ゲルの製造技術においては、水系溶媒を含むゲル化反応系を均質に直接ゲル化することが困難であり、特に液相とゲル相の相分離や液相の滲出等に起因する不均質ゲルになるという問題があり、このような傾向は、特に電解質水溶液をゲル化する際に顕著であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−181354号公報
【特許文献2】特開2001−139828号公報
【特許文献3】特開2002−500247号公報
【特許文献4】特開2002−138147号公報
【特許文献5】特開2001−255298号公報
【特許文献6】特許第4413514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来技術における状況に鑑みてなされたものであって、比較的簡易なプロセスによって、水系溶媒を含むゲル化反応系を均質かつ直接ゲル化することによって相分離等の問題が生じないゲル状組成物を得るための方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明に係るゲル状組成物の製造方法は、ポリエチレンイミン系ポリマーからなる水溶性ポリマーを、水系溶媒中において、均一ゲル化条件下で架橋反応させることによって、前記水系溶媒を含む反応系を、実質的に均質相からなるゲル状物質に直接ゲル化させることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の好ましい態様においては、前記水系溶媒が、イオン交換水もしくは比較的高濃度の電解質水溶液からなり、さらに好ましくは電解質水溶液が、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液からなり、特に好ましくは、該電解質水溶液が、飽和塩化カリウム水溶液からなる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様においては、前記水溶性ポリマーが、数平均分子量300〜100000のポリエチレンイミンからなり、さらに好ましくは、ポリエチレンイミンをグリシジルエーテル系架橋剤によって架橋させる工程を含む。
【0014】
さらに本発明の好ましい態様においては、ポリエチレンイミンを水溶性のポリグリシジルエーテル類、好ましくはポリグリコールジグリシジルエーテルからなる架橋剤によって架橋させる工程を含む。
【0015】
さらに本発明は、上記の方法によって得られたゲル状組成物を包含するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法によれば、比較的簡易なプロセスによって、水系溶媒を含むゲル化反応系を均質かつ直接ゲル化することによって相分離等の問題が生じないゲル状組成物を得ることができ、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るゲル状組成物の製造方法の好ましい実施態様につき説明する。
【0018】
本発明に係るゲル状組成物の製造方法は、ポリエチレンイミン系ポリマーからなる水溶性ポリマーを、水系溶媒中において、均一ゲル化条件下で架橋反応させることによって、前記水系溶媒を含む反応系を、実質的に均質相からなるゲル状物質に直接ゲル化させることを特徴とするものである。
【0019】
ヒドロゲルを構成する水系溶媒としては、水、好ましくはイオン交換水、もしくは電解質水溶液が用いられ得る。本発明の好ましい態様においては、前記水系溶媒が、イオン交換水もしくは比較的高濃度の電解質水溶液からなり、さらに好ましくは電解質水溶液が、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液からなる。このようなアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどが好ましく用いられ得る。
【0020】
上記電解質水溶液の濃度は、目的とする用途に応じて適宜選択することができるが、本発明は特に高濃度の電解質水溶液についても均質なゲル化できることが特徴であり、好ましくは、3mol/l〜飽和水溶液の範囲においても均質なゲル状組成物を得ることができる点でも従来にない特徴を有している。
【0021】
特に従来の電解質水溶液を溶媒とするゲル状組成物においては、相分離のない良好な均質性を具備する組成物を得ることは困難であったが、本発明によれば高濃度ないし飽和電解質水溶液を溶媒系として用いた場合においても均質なゲル状組成物を得ることができる点で有用である。
【0022】
また、本発明において使用する水溶性ポリマーとしては、好ましくは数平均分子量 300〜100000の範囲、さらに好ましくは600〜80000の範囲のポリエチレンイミン、特に好ましくは1800〜70000の範囲のからなるポリエチレンイミンを用いることが望ましい。
【0023】
本発明は、上述した水系溶媒とともに上記水溶性ポリマーを架橋剤によって架橋させることが好ましい。このような架橋剤としては、エチレンポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、プロピレンポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系架橋剤が好ましく、これらの架橋剤は1種または2種以上が用いられ得る。
【0024】
本発明において、上記の水溶性ポリマーの配合比は、使用する水溶性ポリマーに応じて適宜最適範囲を選択することができるが、通常、水系溶媒に対して0.1〜50質量%、が好ましく、さらに好ましくは1〜30質量%の範囲である。
【0025】
さらに、本発明において、上記の架橋剤は、使用する水溶性ポリマーに応じて適宜最適範囲を選択することができるが、通常、水溶性ポリマー1質量部に対して0.1質量部〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは0.3質量部〜8質量部の範囲である。
【0026】
本発明に係るゲル状組成物の製造方法においては、上記のポリエチレンイミン系ポリマーを水系溶媒に溶解させて、さらに架橋剤を添加して、たとえば20〜80℃の温和な加熱温度範囲で架橋反応ないし変性反応を起こさせることによって、反応系全体が均質な状態で直接ゲル化される。
【0027】
このようにして得られたゲル状組成物は、反応系の全体が直接かつ均質な状態にゲル化されたものであり、液相や固相の析出や相分離は実質的に認められない。また、上記本発明の方法によれば、得られるゲル状組成物は、比較的光透過性が高く、透明から白色の範囲のゲル状組成物を比較的簡易かつ熱負荷の少ない工程で得ることができる。
【0028】
本発明によってこのような均質なゲル状組成物が得られる理由は必ずしも明らかではなく、また本発明はいかなる理論にも拘束されるものではないが、以下のように推測される。
【0029】
水系溶媒に対する水溶性ポリマーと架橋剤からなる架橋体ポリマーのゲル化能は溶媒中における架橋体ポリマー分子の親和性と自由度に起因すると考えられる。溶媒と架橋体ポリマーの親和性と自由度が高すぎると、架橋体ポリマーはゲルを生じず溶媒に対して溶解状態となり、物性変化を生じないか増粘程度の変化に留まる。また、架橋体ポリマーの自由度や溶媒との親和性が低すぎれば、重合物は溶媒と相互状態を形成することができなくなり、沈殿や濃厚相などの相分離または一部のゲル化程度に留まると考えられる。従って溶媒を均質にゲル化するためには、架橋体ポリマーが溶媒と親和性を維持しつつ、ゲル化するための分子の適度な強制力が必要となる。架橋体ポリマーに溶媒に対し適度な親和性を与えるために、架橋体ポリマーに溶媒と親和性を示す親水部と強制力の基となる架橋部を適度に導入する。親水部はアミノ基、イミノ基、三級アミノ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基などの親水性官能基、架橋部は架橋剤の分子鎖サイズと官能基数などを因子として考えることができる。ポリエチレンイミンは分子内に親水性であり反応性に富むアミノ基、イミノ基を多数含有しているため、これらの設計に適しており好適に利用することが可能である。導入する官能基や比率、架橋度などは用いる水系溶媒に併せて適宜設計すれば良い。特に比較的高濃度の電解質水溶液は大量の無機塩を溶質として含むため、高い塩析効果を考慮する必要がある。このように適宜設計された水溶性ポリマーと架橋剤を用いて架橋反応を進行させると、溶媒を自己の巨大分子中に含みながら架橋、変性が進行していくため、相分離することなくネットワークを形成していき、架橋体ポリマーは実質的に均質なゲルを形成すると考えられる。
【0030】
したがって、本発明において均質なゲル状組成物を得るための均一ゲル化条件とは、水溶性ポリマーが、水系溶媒中に均一に溶解した状態で架橋反応を起こさせることを意味するが、より具体的には、本発明において、均一ゲル化条件とは、溶媒と上記架橋体ポリマーが適度な親和性を維持し、この親和性を最適状態に制御することによって、相分離の生じない均質なゲル化を実現する条件を意味する。
【0031】
本発明は、上記のゲル状組成物を含んでなる筆記用具用インク組成物に適用することができる。
【0032】
具体的には、たとえば、上記本発明の筆記用インキ組成物は、少なくとも前記ゲル組成物および着色剤を含む構成を最少の構成とすることができる。
【0033】
本発明の筆記用インキ組成物における水溶性ポリマーと架橋剤からなる架橋体ポリマーの配合比としては、筆記用インキ組成物全量に対して、0.1質量%〜20質量%であることが好ましい。
【0034】
本発明の筆記用インキ組成物に用いる着色剤としては、染料、顔料などを用いることができる。前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料などが用いられる。具体的には、酸性染料としては、アシッドオレンジ56、アシッドイエロー3、アシッドイエロー23、アシッドレッド18、アシッドレッド51、アシッドレッド52、アシッドレッド73、アシッドレッド87、アシッドレッド92、アシッドレッド94、アシッドブルー9、アシッドブルー62、アシッドブルー90、アシッドブルー103、アシッドブラック2などが挙げられ、塩基性染料としては、ローダミン、メチルバイオレット、ビクトリアブルーFBなどが挙げられ、直接染料としては、ダイレクトブラック19、ダイレクトブラック154、ダイレクトイエロー44、ダイレクトブルー3、ダイレクトブルー71、ダイレクトブルー86、ダイレクトオレンジ6などが挙げられる。
【0035】
前記染料は、一種または、二種以上を適宜混合して配合することができ、その配合比としては、筆記用インキ組成物全量に対して、1〜40質量%であることが好ましい。
【0036】
前記顔料としては、有機顔料、無機顔料などを用いられる。具体的には、有機顔料としては、銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー、アゾ系の顔料などが挙げられ、無機顔料としては、カーボンブラック、群青、二酸化チタンなどの白色顔料、アルミニウムなどの金属粉顔料、天然雲母、アルミナ、ガラス片、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料などが挙げられる。
【0037】
また、予め水媒体中に分散された水分散顔料製品などを用いることもできる。具体的には、山陽色素(株)社製のSandye Superシリーズ、富士色素(株)社製のFuji SPカラーシリーズ、御国色素(株)社製のチチカカカラーシリーズ、大日精化工業(株)社製のTC Colorシリーズなどが挙げられる。
【0038】
また、極性カーボン、酸性カーボン、グラフトカーボンや、顔料を分散性樹脂で表面加工をした易分散性の加工顔料も用いることができる。
【0039】
さらに、蛍光顔料として、各種蛍光染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した微粒子状の蛍光顔料なども使用することができる。具体的には、日本蛍光(株)社製のルミコールNKWシリーズ、シンロイヒ(株)社製のSWシリーズ、SPシリーズ、SFシリーズ、御国色素(株)社製のビクトリアカラーシリーズなどが挙げられる。
【0040】
前記顔料は、一種または、二種以上を適宜混合して配合することができ、その配合比としては、筆記用インキ組成物全量に対して、1〜40質量%であることが好ましい。
【0041】
本発明に用いる着色剤としては、前記染料と前記顔料を併用しても良い。
【0042】
本発明の筆記用インキ組成物は、必要に応じて、各種水溶性有機溶剤を用いることができる。水溶性有機溶剤としては、水や電解質水溶液などに相溶性のある従来汎用の溶剤が用いられ、具体的には、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオプレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、などの多価アルコール類、チオジエチレングリコールなどのチオグリコール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールアルキルエーテル類およびその誘導体、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類およびその誘導体などが挙げられる。
【0043】
前記水溶性有機溶剤は、一種または二種以上を併用することができ、その配合比としては、筆記用インキ組成物全量に対して、2〜60質量%であることが好ましい。
【0044】
その他必要に応じて、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、湿潤剤、防錆剤、潤滑剤、界面活性剤などの各種添加剤を配合することができる。
【0045】
本発明の筆記用インキ組成物の製造方法としては、予め本発明のゲル組成物を得た後に、着色剤、必要に応じて、水溶性有機溶剤やその他各種添加剤を配合し、混合攪拌することによって筆記用インキ組成物を得る方法や、ポリエチレンイミンと架橋剤とを水系溶媒に溶解させて、着色剤、必要に応じて水溶性有機溶剤や各種添加剤を配合した後、均質な状態で直接ゲル化すると同時に、筆記用インキ組成物を得る方法などが挙げられる。
【0046】
さらにまた、本発明は、上記のゲル状組成物を含んでなる電極や洗浄用組成物に好適に適用することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実際の製造例について、その製造方法ならびに結果を含めて具体的に説明する。(下記の例において、例3〜7、17〜22、24〜26、28〜32は本発明の実施例であり、例1、2、8〜16、23、27は比較例である。)
【0048】
製造例1
下記表1に示す配合比で、30質量%ポリエチレンイミン水溶液((株)日本触媒製、商品名エポミンP−1000、数平均分子量70000)10質量部を水系溶媒(3.3M−塩化カリウム電解質水溶液またはイオン交換水)へ溶解させた。次いで、これに下記表1に示す架橋剤を加え均一に溶解させて、反応組成物を調製した。
【0049】
得られた反応組成物をガラス管へ充填し、60℃、20時間の条件で熱処理を行い、さらに架橋反応させることによってゲル化反応を生じさせるようにした。ゲル状物質の生成の有無を含むゲル化評価の結果を表1に示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0050】
製造例2
下記表2に示す配合比で、ポリエチレンイミン((株)日本触媒製、)3質量部を水系溶媒(3.3M−塩化カリウム電解質水溶液)へ溶解させた。次いで、これに下記表5に示す架橋剤を加え均一に溶解させて、反応組成物を調製した。
【0051】
得られた反応組成物をガラス管へ充填し、60℃、20時間の条件で熱処理を行い、さらに架橋反応させることによってゲル化反応を生じさせるようにした。ゲル状物質の生成の有無を含むゲル化評価の結果を表2に示す。
【表5】

【0052】
<ゲル化の評価方法>
ゲル化の状態観察を目視にて行い、以下の基準で評価した。
◎:無色透明〜微白色透明の均質なゲルであり、相分離は見られない。
△:一部ゲル化は見られるが、水溶液の一部が相分離しており、均質なゲルが得られていない。
×:ゲル化が生じなかった。
【0053】
なお、上記の結果によれば、ジグリシジルエーテルのエチレンオキサイドの長さが、n=2以下の場合には、生成ゲル中に一部収縮が見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンイミン系ポリマーからなる水溶性ポリマーを、水系溶媒中において、均一ゲル化条件下で架橋反応させることによって、前記水系溶媒を含む反応系を、実質的に均質相からなるゲル状物質に直接ゲル化させることを特徴とする、ゲル状組成物の製造方法。
【請求項2】
前記水系溶媒が、比較的高濃度の電解質水溶液からなる、請求項1に記載のゲル状組成物の製造方法。
【請求項3】
前記電解質水溶液が、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液からなる、請求項2に記載のゲル状組成物の製造方法。
【請求項4】
前記電解質水溶液が、飽和塩化カリウム水溶液からなる、請求項2に記載のゲル状組成物の製造方法。
【請求項5】
前記水系溶媒が、イオン交換水からなる、請求項1に記載のゲル状組成物の製造方法。
【請求項6】
前記水溶性ポリマーが、数平均分子量300〜100000のポリエチレンイミンからなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のゲル状組成物の製造方法。
【請求項7】
ポリエチレンイミンをグリシジルエーテル系架橋剤によって架橋させる工程を含む、請求項6に記載のゲル状組成物の製造方法。
【請求項8】
ポリエチレンイミンをポリグリコールジグリシジルエーテルからなる架橋剤によって架橋させる工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のゲル状組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法によって得られたゲル状組成物。
【請求項10】
水系溶媒と、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルとを含む実質的に均質相からなるゲル状組成物であって、前記ポリエチレングリコールジグリシルエーテルが、下記一般式で表されることを特徴とするゲル状組成物。
【化1】

(式中nは4〜22)
【請求項11】
請求項9または10に記載のゲル状組成物を含んでなる筆記用具用インク組成物。

【公開番号】特開2012−116944(P2012−116944A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267648(P2010−267648)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】