説明

ゲートウェイ装置および情報共有システムおよび方法

【課題】
情報共有に伴う識別情報を隠匿することにより安全性を確保して情報共有を行うことができるようにしたゲートウェイ装置および情報共有システムおよび方法を提供する。
【解決手段】
情報提供を受ける側のネットワークのエッジ部分に設けられたゲートウェイ装置で同ネットワークに設けられた印刷装置のポート番号を仮のポート番号へと変換し、変換した仮のポート番号とIPアドレスを宛て先の情報として、情報共有処理を行う情報提供ソフトウェアとともに、情報提供を行う提供元のネットワークへと転送する。情報提供元のネットワークで情報提供ソフトウェアを実行することで宛て先の情報として指定されたIPアドレスと仮のポート番号へデジタル情報を送信する。この送信時に、所定のアルゴリズムを適用することにより仮のポート番号から変換前の正規のポート番号へと変換して送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の情報を相互ネットワーク間で共有するゲートウェイ装置および情報共有システムおよび方法に関し、特に、情報共有後のセキュリティを確保できるようにしたゲートウェイ装置および情報共有システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子文書などの情報を複数のユーザで共有する場合、その共有するユーザが共通的にアクセスできる装置、例えば、文書管理サーバなどを設けることにより情報共有を行うことができる。また、不特定多数の人に情報を提供する場合には、Webコンテンツを提供するWebサーバなどを立ち上げることで第三者への情報提供を行うことができる。
【0003】
その中でも、特定のユーザ間で情報を共有する場合には、単純に電子メール機能やP2P(Peer to Peer)機能などを用いてその情報を送信することによって共有することが一般的である。
【0004】
情報提供を受けた被情報提供者(利用者)は、その提供内容を参照することによって情報共有することができるが、その提供された情報の内容の問い合わせを情報提供者に対して行う場合、例えば、電話、ファクシミリ、電子メール、掲示板などの方法を用いて問い合わせることができる。この場合、情報提供を行った提供者からみると、ある特定の情報を提供している場合には、その情報に対する問い合わせであることが容易に判断が付くが、しかし、さまざまな情報の提供を行っている場合には、その問い合わせ対象となる情報を特定するまでに時間を要することになる。
【0005】
また、その問い合わせに対して情報提供者は、必要に応じて更なる情報をその問い合わせを行ってきたユーザに提供する場合がある。このような場合において、即座に情報提供を行うには、その問い合わせを常時監視する必要があるほか、その提供する情報を予め用意しておく必要がある。
【0006】
情報を提供する技術の一例として、情報提供元と提供先とが遠距離にあり、提供先に設置されたプリンタに対してその情報を出力する印刷サービスを提供できるようにした従来技術が特許文献1に開示されている。
【0007】
この特許文献1に開示された従来技術においては、IPP(Internet Printing Protocol)でファイアウォールを越えられないプリントサーバに対してIPPで通信できるプロキシ装置を設け、そのプロキシ装置にプリントサーバのサーバサイトを開設することでプリントサーバをインターネット上で公開されたIPPサーバと見なし、印刷サービス要求、レスポンスをやり取りできるようにしている。
【0008】
このような技術を用いることにより、情報提供元と提供先とで必要な情報が容易に共有することができるようになるが、近年急速に発展した技術を悪用した脅威(リスク)が発生していることも事実であり、これらの脅威からその共有するデジタル情報を保護する必要がある。
【0009】
その脅威には内的要因、外的要因として区別される多くの原因があるが、特に、共有するデジタル情報が盗聴、改ざんされてしまうという脅威により第三者に情報が漏洩されてしまうばかりではなく、当事者間であっても間違った情報が提供されてしまうという可能性がある。
【0010】
特に、個人情報や課金情報などの機密性、秘匿性が高い情報の場合には、盗聴や改ざんなどによって被る損害が大きくなり情報の安全性、信頼性が低下してしまうという問題がある。
【0011】
コンテンツに対する課金情報など、秘匿性を有する情報をプリント要求データに含めて端末から送出する際に、その秘匿性が高い情報を閲覧不可能にすることにより安全性の高いシステムを提供した従来技術として、特許文献2に開示されたものがある。
【0012】
この特許文献2に示す従来技術では、プリント要求データにコンテンツに関する秘匿性を有する情報(課金情報など)を直接的に送出せずに、コンテンツに関する秘匿性を有する情報(課金情報など)を取得するための情報(例えば、コンテンツ情報管理サーバの識別情報)を送出するようにし、プリント要求管理サーバが、端末から受け取ったコンテンツに関する秘匿性を有する情報を取得するための情報(例えば、コンテンツ情報管理サーバの識別情報)に基づき、コンテンツに関する秘匿性を有する情報(課金情報など)を取得するようにしている。
【特許文献1】特開2003−58459
【特許文献2】特開2002−259092
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に示された従来技術においては、プロキシ装置を設けることでファイアウォールを越えて通信できるようにしているが、情報提供先のプリンタの詳細情報を予め知っておく必要があり、不特定多数の提供先との情報共有を行うことができないという問題がある。
【0014】
また、この従来技術では、プロキシ装置を新たに設ける必要があるためそのシステムの構築に多くの時間と多額のコストを要することとなる。
【0015】
さらに、特許文献2に示された従来技術においては、コンテンツ情報管理サーバの識別情報や出力先の識別情報が特定されてしまえば、外部の第三者から意図しない情報が強制的に送られてきてしまうことになり、さらに、これを防止するためにユーザ認証を都度行う必要がある。
【0016】
これでは、情報共有における処理が複雑になるばかりでなく、即座に情報が共有することが難しいという問題がある。
【0017】
そこで、本発明は、情報共有に伴う識別情報を隠匿することにより安全性を確保して情報共有を行うことができるようにしたゲートウェイ装置および情報共有システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、複数の地点と接続し、各地点に設けられた電話機同士の通話セションを確立し、当該通話セションの相手先とのディジタル通信を制御するゲートウェイ装置において、前記各地点に設けられたノードに設定されたネットワーク識別情報と当該ノードの機能を示すポート番号とを取得する取得手段と、前記取得手段により取得した前記ポート番号を所定のアルゴリズムを適用することにより仮のポート番号へ変換する変換手段と、当該仮のポート番号から変換前のポート番号へと変換を行うソフトウェアに前記取得手段で取得したネットワーク識別情報と前記変換手段で変換した仮のポート番号とを関連付ける関連付け手段と、前記関連付け手段によってネットワーク識別情報と仮のポート番号を関連付けした前記ソフトウェアを前記通話セションが確立された相手先に対して通知する通知手段と、前記通知手段で通知した相手先のノードとの通信を前記電話機による通話とともに行う通信手段とを具備することを特徴とする。
【0019】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記通知手段は、前記ネットワーク識別情報と前記仮のポート番号を関連付けしたソフトウェアを暗号化して通知することを特徴とする。
【0020】
また、請求項3の発明は、各地点をゲートウェイ装置によって接続し、前記ゲートウェイ装置を介したディジタル通信における電話機同士の通話セションを確立した相手先との情報の共有を行う情報共有システムにおいて、前記ゲートウェイ装置は、前記各地点に設けられたノードに設定されたネットワーク識別情報と当該ノードの機能を示すポート番号とを取得する取得手段と、前記取得手段により取得した前記ポート番号を所定のアルゴリズムを適用することにより仮のポート番号へ変換する変換手段と、当該仮のポート番号から変換前のポート番号へと変換を行うソフトウェアに前記取得手段で取得したネットワーク識別情報と前記変換手段で変換した仮のポート番号とを関連付ける関連付け手段と、前記関連付け手段によってネットワーク識別情報と仮のポート番号を関連付けした前記ソフトウェアを前記通話セションが確立された相手先に対して通知する通知手段とを具備し、前記通知手段で通知した相手先のノードとの通信を前記電話機による通話とともに行うことを特徴とする。
【0021】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記ノードは、画像形成装置であって、前記通知手段により前記前記画像形成装置へのアクセス情報を受けた相手先の地点に設けられたノードから前記ソフトウェアによって変換されたポート番号が指定された画像形成要求を受信し、該画像形成要求に基づいて前記画像形成装置で画像形成を行うことを特徴とする。
【0022】
また、請求項5の発明は、請求項3または4の発明において、前記ゲートウェイ装置は、前記電話機を含むことを特徴とする。
【0023】
また、請求項6の発明は、請求項3乃至5のいずれかの発明において、前記ゲートウェイ装置は、前記画像形成装置を含むことを特徴とする。
【0024】
また、請求項7の発明は、複数の地点と接続し、各地点に設けられた電話機同士の通話セションを確立し、当該通話セションの相手先とのディジタル通信を制御するゲートウェイ装置における制御方法において、前記各地点に設けられたノードに設定されたネットワーク識別情報と当該ノードの機能を示すポート番号とを取得手段で取得し、前記取得手段により取得した前記ポート番号を所定のアルゴリズムを適用することにより仮のポート番号へ変換手段で変換し、当該仮のポート番号から変換前のポート番号へと変換を行うソフトウェアに前記取得手段で取得したネットワーク識別情報と前記変換手段で変換した仮のポート番号とを関連付け手段で関連付け、前記関連付け手段によってネットワーク識別情報と仮のポート番号を関連付けした前記ソフトウェアを前記通話セションが確立された相手先に対して通知手段で通知し、前記通知手段で通知した相手先のノードとの通信を前記電話機による通話とともに行うことを特徴とする。
【0025】
また、請求項8の発明は、各地点をゲートウェイ装置によって接続し、前記ゲートウェイ装置を介したディジタル通信における電話機同士の通話セションを確立した相手先との情報の共有を行う情報共有システムにおける情報共有方法において、前記各地点に設けられたノードに設定されたネットワーク識別情報と当該ノードの機能を示すポート番号とを前記ゲートウェイ装置の取得手段で取得し、前記取得手段により取得した前記ポート番号を所定のアルゴリズムを適用することにより仮のポート番号へ変換手段で変換し、当該仮のポート番号から変換前のポート番号へと変換を行うソフトウェアに前記取得手段で取得したネットワーク識別情報と前記変換手段で変換した仮のポート番号とを関連付け手段で関連付け、前記関連付け手段によってネットワーク識別情報と仮のポート番号を関連付けした前記ソフトウェアを前記通話セションが確立された相手先に対して通知手段で通知し、前記通知手段で通知した相手先のノードとの通信を前記電話機による通話とともに行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、被情報提供者側のネットワークに設置された印刷装置の印刷出力機能を示すポート番号を仮のポート番号へと変更し、変更後の仮のポート番号とIPアドレスを情報共有ソフトウェアとともに情報提供元のネットワークに送信するように構成し、さらに、情報提供元のネットワークで実行した情報共有ソフトウェアがその仮のポート番号とIPアドレスを宛て先にして、相互間で共有するデジタル情報を送信する処理を行い、送信時に所定のアルゴリズムを適用することで送信先の仮のポート番号を変更前の正規のポート番号へと変換して送信するように構成したので、通話サービスの利用とともに情報共有を簡単に行うことができ、また同時に、宛て先の情報を不正利用して意図しない不必要な情報が印刷装置から印刷出力されてしまうのを防止できるようになるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係わるゲートウェイ装置および情報共有システムおよび方法の一実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
なお、以下の実施例に示す情報共有システムでは、遠隔地にある地点同士を通信回線を介して接続して双方の地点で情報共有を行った例を示しているが、これに限定されることなく、LANなどの閉域ネットワーク内で適用することもできる。
【0029】
また、情報提供元のネットワークと上記通信回線で接続された情報提供先のネットワークは複数の地点を設定することができる。
【0030】
さらに、以下の実施例では、情報提供を受ける地点のネットワークに画像形成装置の一例としてプリンタを接続し、そのプリンタから印刷出力することにより情報共有を行うような構成にしているが、情報の提供を受けるネットワークにクライアントPCを接続し、そのクライアントPCの表示画面にデータを表示することで情報共有を行うようにしてもよい。このときの画像形成装置の他の例として、複合機やインターネットファクシミリ装置などを示す。
【実施例】
【0031】
図1は、本発明に係わるゲートウェイ装置および情報共有システムおよび方法を適用して構成したネットワーク構成図である。
【0032】
図1において、この情報共有システムは、通信回線を用いた音声通信、映像やチャットなどのブロードバンド通信に代表される通信サービスの利用により、所定のディジタルデータの情報をその通信サービスの通信相手と相互に共有するシステムであって、情報提供後に、情報提供元から情報提供先の装置に対して処理の指示を行えないようにすることで安全性を確保したシステムである。
【0033】
このときの音声通信として、例えばVoIP(Voice over Internet Protocol)技術を用いたIP電話があり、また、ブロードバンド通信としてネットワークカメラを用いたリアルタイム動画配信やビデオチャットなどがある。
【0034】
このような通信サービスを用いて通信状態にある相手と情報共有を行う。また、相互間で共有する情報を「デジタル情報」という。
【0035】
なお、以下では通信サービスとして「IP電話」を用いた場合の例を説明する。
【0036】
この情報共有システムは、IP電話で呼を受け付けてデジタル情報を提供する情報提供元ネットワーク10、情報提供元ネットワーク10へとIP電話を用いて呼を発信することで情報提供を受ける情報提供先ネットワーク20から構成され、情報提供元ネットワーク10と接続された情報提供先ネットワーク20は1つ以上のネットワークから構成される。
【0037】
情報提供元ネットワーク10と情報提供先ネットワーク20は、通信回線によって接続されており、例えば、インターネット接続のほか、VPN(Virtual Private Network)や広域イーサネット(登録商標)サービスに代表される公衆回線や専用線を用いて接続する。もちろん、これらのWAN(Wide Area Network)接続だけでなくLANケーブルを用いた閉域ネットワーク内の接続であってもよい。この場合、情報提供元ネットワーク10と情報提供先ネットワーク20とが同一のネットワーク内(LAN内)にあることを示す。
【0038】
情報提供元ネットワーク10は、ゲートウェイ装置11、IP電話機12、クライアントPC13を具備して構成され、情報提供先ネットワーク20は、ゲートウェイ装置21、IP電話機22、プリンタ23を具備して構成される。これらのネットワークを接続して構成するこの情報共有システムでは、情報提供元ネットワーク10に設置されたクライアントPC13の記憶領域で保存されたデジタル情報を情報提供先ネットワーク20に設置されたプリンタ23で印刷出力することによって相互間で情報共有する。
【0039】
また、各ネットワークに属するそれぞれの装置は、全てがLANケーブルによって接続されたノードであって相互通信が可能である。
【0040】
情報提供先ネットワーク20では、プリンタ23を識別するIPアドレスとプリンタ23の機能を識別するポート番号のうち、ポート番号を所定のアルゴリズムによって仮のポート番号へと変換し、変換後の仮のポート番号とIPアドレスを転送先のプリンタの識別情報と設定してこの識別情報を含んだ情報提供ソフトウェアを情報提供元ネットワーク10に転送する。
【0041】
このときの情報提供ソフトウェアは、「自動起動プログラム」、「情報提供プログラム」、「自己排除プログラム」の各種プログラムから構成され、また同時にIPアドレスと仮のポート番号が設定された識別情報が含まれる。これらの各種プログラムと識別情報は暗号化され、情報提供元ネットワーク10に転送することで復号されて実行される。
【0042】
このときの暗号化、復号化における処理は、例えば、公開鍵暗号方式や共通鍵暗号方式、ハイブリッド方式を用いて行うことができる。
【0043】
そして、情報提供ソフトウェアに含まれる自動起動プログラムは、情報提供元ネットワーク10に設けられたクライアントPC13の記憶領域に記憶されると自動的に情報提供プログラムを呼び出して実行するプログラムである。
【0044】
また、情報提供プログラムは、自動起動プログラムから呼び出されて実行され、識別情報によって指定されたIPアドレスとポート番号のプリンタ23に対してデジタル情報を送信するプログラムである。ちなみに、このときのポート番号は、情報提供先ネットワーク20で変換された仮のポート番号であって、デジタル情報の送信時に、指定されているポート番号(仮のポート番号)を正規のポート番号へと変換する処理を行い、転送先のポート番号を正規のポート番号へと書き換えて送信する。
【0045】
すなわち、送信前のクライアントPC13には、転送先の情報として仮のポート番号が指定されたデジタル情報を一時的に記憶した状態となる。
【0046】
そして、自己排除プログラムは、情報提供プログラムによってデジタル情報を情報提供先ネットワーク20へ転送後、自身のプログラムを除く情報提供ソフトウェアを削除するプログラムである。すなわち、クライアントPC13の所定の記憶領域に格納された自動起動プログラム、情報提供プログラム、識別情報を削除し、また、情報提供に用いた一時的なデータを削除する。
【0047】
なお、自己排除プログラム自体は、情報提供ソフトウェアが格納されたクライアントPC13の一時格納領域にテンポラリファイルとして記憶しているため、クライアントPC13をリブート若しくはログオフすることでクライアントPC13のOS(Operating System)によって削除される。
【0048】
これにより、クライアントPC13上に情報提供ソフトウェアが残ることがなくなる。さらに、ログやレジストリとして残った情報を用いて再送を行った場合であっても転送先のポート番号が仮のポート番号であるため、情報提供を行えないようになる。
【0049】
次に、各ネットワークを構成するノードについて説明する。
【0050】
まず、情報提供元ネットワーク10において、ゲートウェイ装置11は、デフォルトゲートウェイの役割を担うネットワークインターフェース装置であってルータなどによって構成される。このゲートウェイ装置11は、接続された各ノードへの経路情報を保有し、転送するデータの種類により転送先の装置を切り替えることができる。例えば、そのデータが音声通信による音声データである場合にはIP電話機12へと転送し、ブロードバンド通信による音声データ以外の他のデータ(以下、「処理データ」という)である場合にはクライアントPC13へと転送する。ちなみに、デジタル情報は処理データに分類される。
【0051】
また、IP電話機12を用いた通信相手との通信を確立するとともに終了トリガを受信するまでその通信の状態を保持する。
【0052】
さらに、その通信ではIP電話機同士の「音声セション」と同時に処理データの「データセション」を確立することができ、音声データに加えて処理データの通信路が確立される。すなわち、IP電話機による音声セションの通信相手を処理データの通信相手と特定することで、新たにその通信先までの経路を確立する処理を行う必要がなくなる。IP電話機によって通話状態にある各ネットワークのゲートウェイ装置同士がそれぞれお互いを認識でき、そのゲートウェイ装置が記憶する経路情報に基づいてデジタル情報の転送先が決定する。
【0053】
このIP電話を実現するVoIP技術では、音声データを送信元IPアドレス、送信先IPアドレスなどの識別情報でカプセル化した音声パケットを情報提供先ネットワーク20のIP電話機22から受信するので、VoIP技術を用いて通信状態にあるネットワーク同士の識別情報を特定することができる。
【0054】
IP電話機12は、音声をパケット化した音声データを相手先まで伝送することで音声通信を実現する。もちろん、SIP(Session Initiation Protocol)サーバなどに代表される音声データを処理する処理サーバを介して行われる(図示せず)。
【0055】
また、デジタル情報が情報提供元ネットワーク10を構成する複数のクライアントPCのうち、いずれのクライアントPCに保存してあるかを情報提供者がボタン操作することによっても指定できる。
【0056】
この場合、IP電話機12からゲートウェイ装置11に対して、ボタン操作によって指定されたクライアントPCが、デジタル情報を保存しているか確認する情報確認要求が転送され、ゲートウェイ装置11がこの情報確認要求を指定されたクライアントPCに転送することで、デジタル情報が保存されていることを確認する。そして、デジタル情報が保存されている場合には、ゲートウェイ装置11が情報の提供が可能である旨を情報提供先ネットワーク20のゲートウェイ装置21に転送する。(図9に示すシーケンス図の(910)〜(914)を参照。)
もちろん、情報提供者がボタン操作を行うのではなく、デジタル情報を保存したクライアントPCを予め設定しておき、ゲートウェイ装置が音声データを受信することでデジタル情報が設定されたクライアントPCに保存されているかを確認するようにしてもよい。(図5に示すシーケンス図の(505)〜(510)を参照。)
クライアントPC13は、情報提供元ネットワーク10に複数台、設置することができ、インストールされた所定のアプリケーションを用いてデジタル情報を作成する。このクライアントPC13には作成された複数のデジタル情報が保存され、情報提供者がユーザインターフェース(キーボードやポインティングデバイスなど)を用いて予めデジタル情報を指定しておく。
【0057】
また、ゲートウェイ装置11を介したIP電話機12からの情報確認要求に対して、情報提供者によって予め指定されたデジタル情報がある場合に情報提供が可能である旨を送信する。
【0058】
さらに、情報提供先ネットワーク20からゲートウェイ装置11を介して「情報提供ソフトウェア」を受信し、そのソフトウェアを実行することで情報提供処理を行う。このときの情報提供ソフトウェアにおける詳細な処理内容を図8のフローチャートで示す。
【0059】
次に、情報提供先ネットワーク20において、ゲートウェイ装置21は、情報提供元ネットワーク10のゲートウェイ装置11と同様、デフォルトゲートウェイの役割を行うネットワークインターフェース装置であって情報提供先ネットワーク20内のノードへの経路情報を保有する。また、IP電話機22による音声パケットの中継を行う。
【0060】
このゲートウェイ装置21は、情報提供元ネットワーク10のゲートウェイ装置11とネゴシエーションすることにより音声セションと同時にデータセションを確立する。そのデータセションが確立された通信路によってデジタル情報を受け付けると、保有する経路情報を参照して所定の装置にそのデジタル情報を転送する。図1に示された情報提供先ネットワーク20では、経路情報としてプリンタ23が示されているので、そのデジタル情報をプリンタ23に転送する。
【0061】
また、このゲートウェイ装置21では、情報提供元ネットワーク10から提供されたデジタル情報を印刷出力するプリンタ23のポート番号を仮のポート番号に変換する「変換処理」を行う。さらに、情報提供元ネットワーク10から情報提供を受けるためにその情報提供元ネットワークへと転送する情報提供ソフトウェアに変換処理によって変換した仮のポート番号とプリンタ23のIPアドレスとを関連付けて暗号化する「プレ通信処理」を行う。
【0062】
この変換処理の詳細な処理の流れを図6のフローチャートで示し、プレ通信処理の詳細な処理の流れを図7のフローチャートで示す。
【0063】
IP電話機22は、音声をパケット化した音声パケットを作成し、LANケーブルによって相手先まで伝送することによってIP電話機同士で音声通信を行う。
【0064】
また、IP電話機22では、テンキーを押下することで情報提供元ネットワーク10に対して情報提供の要求を行うことができ、また、同時にIP電話機22が属する情報提供先ネットワーク20のゲートウェイ装置21にも情報提供要求を行ったことを通知する。これにより、上記するようなプレ通信処理がゲートウェイ装置21によって実行される。
【0065】
プリンタ23は、正規のポート番号が指定されたデジタル情報を受け付けることにより印刷出力を行う。受信したデジタル情報の宛て先に正規のポート番号が指定されていない場合には、そのデジタル情報の印刷出力を行わず処理を終了する。このときのデジタル情報は、メモリから破棄してメモリの有効利用を行う。
【0066】
このポート番号は、プリンタ23における機能を特定する番号であって、印刷出力の指示を行う番号や印刷設定内容を参照する番号などである。
【0067】
プリンタ23によって印刷出力されたデジタル情報が示す原稿を被情報提供者が確認することで、デジタル情報を相互ネットワーク間で共有することになる。
【0068】
以上に示すような構成により、情報提供先ネットワーク20のプリンタ23の不正利用を防止することができる。
【0069】
そして、図1ネットワーク構成からなる情報共有システムでは、ネットワークのエッジ部分にゲートウェイ装置(11、21)を設けるように構成しているが、この構成に限定されることなく、以下の図2、図3に示すようなネットワーク構成であってもよい。
【0070】
図2に示すネットワーク構成では、ネットワークのエッジ部分にIP電話機(12、22)を設け、このIP電話機(12、22)に図1に示すゲートウェイ装置(11、21)の機能を持たせることで実現している。
【0071】
また、図3に示すネットワーク構成では、情報提供先ネットワーク20のエッジ部分にプリンタ23を設け、このプリンタが図1に示すゲートウェイ装置(11、21)の機能を持つように構成している。
【0072】
このように構成することで、簡単なネットワーク構成によって情報の共有を行うことができるようになる。
【0073】
図4は、図1に示すゲートウェイ装置の構成を示すブロック図である。
【0074】
図4に示す構成からなるゲートウェイ装置は、ネットワークのエッジに設置され、ネットワーク内外のブリッジ機能を有する装置であって、IP電話機を用いた音声通話の音声データ、クライアントPCからプリンタへのデジタル情報を転送する機能を有する。
【0075】
さらに、ネットワークのノードへのアクセス経路を示す経路情報を保持し、経路情報に基づいて音声データ、デジタル情報などの処理データを転送する。
【0076】
ゲートウェイ装置は、通話制御部401、状態確認部402、変換処理部403、データ生成部404、暗号処理部405、保存部406、通信部408、データ制御部409、確認部410を具備して構成され、音声データを通話制御部401で受信し、処理データをデータ制御部409で受信する。
【0077】
このゲートウェイ装置は、図1〜図3で示す情報提供元ネットワーク10、情報提供先ネットワーク20のいずれのネットワークにも設置され、それぞれのネットワークに設置されたゲートウェイ装置の処理内容を以下に示す。
【0078】
まず、情報提供先ネットワーク20に設置されたゲートウェイ装置21において、音声データを受信した通話制御部401では、IP電話機を用いた音声通話サービスを制御することによってIP電話機間で音声セションを確立する。
【0079】
この通話制御部401では、IP電話機より受け付けた音声データをデータ生成部404に転送し、データ生成部404では、保存部406に保存された経路情報を元に音声データの転送先IPアドレスを指定して通信部408に音声データを転送する。このときの経路情報は、転送先の処理サーバ、例えば、DNS(Domain Name Server)サーバやSIP(Session Initiation Protocol)サーバなどのIPアドレスが指定された情報であって、各処理サーバで順次処理されて通話相手のIP電話機まで音声データを転送する。
【0080】
この音声データの転送処理に対する応答が通話相手のIP電話機から通知されることによって相互ネットワークのIP電話機間で音声セションが確立される。
【0081】
さらに、この通話制御部401では、IP電話機より音声データを受け付けるとその旨を状態確認部402に通知する。状態確認部402では、通話制御部401からIP電話機による音声データを受け付けた旨が通知されると、本ゲートウェイ装置21が設置されたネットワーク(情報提供先ネットワーク)に設置されたプリンタノードに対して動作状態の確認を行うために、通信部408を介して状態確認要求をプリンタノードに送信する。この状態確認要求は、プリンタノードだけに限定されることなくネットワークを構成する全てのノードに転送するように構成してもよい。
【0082】
この動作確認で送信した状態確認要求に対して、データ制御部409でプリンタ23からIPアドレス、印刷出力を行うポート番号の各情報を受信する。これにより、そのプリンタ23が正常な動作状態にあると判断する。また、一定の時間、待機してもIPアドレスやポート番号が通知されない場合にはプリンタ23が正常な動作状態にないと判断する。
【0083】
このデータ制御部409は、音声データ以外の処理データを受け付けて処理を行うが、プリンタ23からIPアドレス、ポート番号の情報を受信した場合には、受信したIPアドレス、ポート番号を変換処理部403に通知してポート番号の変換処理を指示する。また、データ制御部409でIPアドレスやポート番号以外の処理データを受信した場合には、保存部406で保存された経路情報を参照してその処理データの転送先のアドレスを設定した後に、通信部408へその処理データを転送する。
【0084】
そして、データ制御部409からポート番号の情報を受信した変換処理部403では、保存部406に保存された変換アルゴリズムを適用することにより受信したポート番号を仮のポート番号へと変換する処理を行う。変換された仮のポート番号はデータ制御部409によってIPアドレスと関連付けて保存部406に保存する。
【0085】
保存部406に保存した仮のポート番号とIPアドレスの情報は、音声セションがIP電話機同士で確立されることにより、データ制御部409によって保存部406に予め記憶された情報提供ソフトウェアとともに暗号処理部405で暗号化される。
【0086】
また、音声セションが確立されることにより行うのではなく、情報提供元ネットワークに設置されたIP電話機の特定のボタン、例えば、「#」ボタンを押下するなどの操作によって情報提供ソフトウェアとともに暗号化されるようにしてもよい。
【0087】
なお、この情報提供ソフトウェアは、図1で説明したように、デジタル情報が保存された装置(情報提供ネットワークのクライアントPC)で実行することによって相互ネットワーク間で情報共有を行うソフトウェアである。
【0088】
そして、データ制御部409は、暗号処理部405によって暗号化された仮のポート番号とIPアドレスを含む情報提供ソフトウェアを通信部408に転送し、通信部408が情報提供元ネットワークへと転送する。
【0089】
以上に示すような処理が情報提供先ネットワーク20のゲートウェイ装置21で行われる。
【0090】
次に、情報提供元ネットワーク10に設置されたゲートウェイ装置11において、通話制御部401が音声データを受け付けると、通信部408を介してその音声データをIP電話機に転送し、また同時に、データ生成部404に音声データが転送されてきたことを通知してデータ生成部404で生成した情報確認要求を通信部408を介してクライアントPC13に転送する。
【0091】
このときの情報確認要求は、予め指定された若しくは情報提供者によって指定されたクライアントPCの記憶領域にデジタル情報が格納されているかを確認する要求であって、その応答として情報確認応答をデータ制御部409で受け付け、その情報確認応答を通信部408を介して情報提供先ネットワークのゲートウェイ装置に転送する。
【0092】
さらに、データ制御部409によって、仮のポート番号とIPアドレスを含む情報提供ソフトウェアを受け付けると、暗号処理部405によって暗号化された情報提供ソフトウェアを復号し、復号した情報提供ソフトウェアを確認部410に転送する。
【0093】
確認部410では、受信した情報提供ソフトウェアが改ざんされていないかを確認するとともに、その情報提供ソフトウェアの転送元を確認する。これらは、例えば、ハッシュ関数を用いたハッシュ値を算出することにより行うことができる。
【0094】
確認部410によって正常な情報提供ソフトウェアであることが確認できると、通信部408を介してクライアントPC13に送信する。
【0095】
そして、クライアントPC13で情報提供ソフトウェアが実行され、相互ネットワーク間で共有するデジタル情報をデータ制御部409で受け付けると、転送先として指定された情報提供先ネットワーク20に送信する。
【0096】
以上に示すような処理が情報提供先ネットワーク10のゲートウェイ装置11で行われる。
【0097】
これにより、ゲートウェイ装置(11、21)は、音声データ、処理データをそれぞれ処理し、相互ネットワーク間で共有するデジタル情報を適切なノードへと転送できる。
【0098】
図5は、本願発明の情報共有システムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
【0099】
図5では、図1に示す情報提供システムにおいて、相互ネットワーク間で共有するデジタル情報を提供する側のネットワークである情報提供元ネットワークと、デジタル情報の提供を受ける側のネットワークである情報提供先ネットワークにおける処理遷移を示している。
【0100】
図5において、情報提供先ネットワークと情報提供元ネットワークのエッジ部分に設けられたゲートウェイ装置同士が通信回線若しくは無線での接続が確認された状態で、情報提供先ネットワークのゲートウェイ装置に接続されたノードであるIP電話機から情報提供元ネットワークのIP電話機の呼出を行う(501、502)。
【0101】
呼出が行われると、まず、情報提供先ネットワークのゲートウェイ装置は、同ネットワーク内のプリンタに対して状態確認要求を行うことで動作状態の確認を行う(509)。
【0102】
プリンタからIPアドレスとポート番号の情報を含む状態確認応答を受け付けた(510)ゲートウェイ装置では、プリンタの正常動作が確認され、続いて、受信したポート番号の変換処理(511)と、情報提供を受けるために行う通信の前処理であるプレ通信処理を行う(512)。この変換処理では、ポート番号を仮のポート番号へと変換する処理を行い、また、プレ通信処理では、変換処理で変換した仮のポート番号とIPアドレスを関連付けるとともに、情報提供ソフトウェアを暗号化して情報提供元ネットワークへと転送する準備を行う。
【0103】
この変換処理とプレ通信処理の詳細な処理の流れを図6、図7のフローチャートに示す。
【0104】
そして、情報提供先ネットワークのIP電話機から呼出を受けた情報提供元ネットワークのゲートウェイ装置は、ネットワーク上のクライアントPCに対して正常な稼動状態であるか、相互ネットワーク間で共有するデジタル情報が格納されているか、を確認するために情報確認要求を転送する(504)。また、その応答として、情報確認応答を受け付ける(505)。
【0105】
さらに、呼出が行われているIP電話機で情報提供者がその呼出を受けると、IP電話機からゲートウェイ装置にACK信号が通知され(506)、また、電話の発信元である情報提供先ネットワークのIP電話機にそのACK信号が転送される(507、508)。
【0106】
これにより、相互ネットワークのIP電話機同士で音声セションが確立される。さらに、その音声セションの確立時に際し、動作確認を行った情報提供先ネットワークのプリンタと、情報確認を行った情報提供元ネットワークのクライアントPCとの間にデータセションが確立される。
【0107】
すなわち、音声データ以外の処理データを送受信するための経路が確立された状態になる。
【0108】
そして、情報提供先ネットワーク(プリンタ)と情報提供元ネットワーク(クライアントPC)との間にデータセションが確立された状態で、情報提供先ネットワークのゲートウェイ装置から情報提供元ネットワークのゲートウェイ装置に対して変換処理で変換した仮のポート番号とIPアドレスとを含む情報提供ソフトウェアを転送する(513)。
【0109】
情報提供元ネットワークではゲートウェイ装置でその情報提供ソフトウェアの確認処理を行う(514)。この確認処理では、その情報提供ソフトウェアが転送中に改ざんされていないか、また、その情報提供ソフトの送信元が特定することができるかなどのセキュリティ検査を行う。
【0110】
この確認処理によって、情報提供ソフトウェアが正常であることが確認できた場合に、ネットワーク内のクライアントPCに対してその情報提供ソフトウェアを転送する(515)。そして、情報提供ソフトウェアを受け付けたクライアントPCは、その情報提供ソフトウェアを所定の記憶領域に記憶する。記憶した情報提供ソフトウェアは、自動起動プログラムによって情報提供処理が行われる(516)。
【0111】
この情報提供処理では、共有するデジタル情報の転送先を情報提供ソフトウェアに含まれる識別情報のIPアドレスと仮のポート番号とし、その転送先を宛て先とした転送データを作成する。そして、その転送データの送信時にその仮のポート番号を正規のポート番号に変換してゲートウェイ装置に転送する(517)。この情報提供処理の詳細な流れを図8のフローチャートに示す。
【0112】
情報提供元ネットワークのゲートウェイ装置は、その転送データに指定されたIPアドレスと正規のポート番号を元に情報提供先ネットワークのプリンタへそのデジタル情報を転送する(518、519)。
【0113】
デジタル情報を受信したプリンタは、ポート番号を参照し、印刷出力を指定したポート番号が指定されていることを確認してそのデジタル情報の印刷出力を行う(520)。プリンタによって正常に印刷出力ができたことを示す完了通知をそのデジタル情報の転送元であるクライアントPCに転送する(521、522、523)。
【0114】
以上のシーケンスによって、クライアントPCに格納されたデジタル情報をプリンタから出力した原稿として相互ネットワーク間で共有することができる。
【0115】
そして、IP電話機を操作して切断操作を行うと、切断要求が相手のIP電話機に転送されて切断される(524、525、526)。
【0116】
図6は、図5のシーケンス図で示す変換処理の詳細な処理の流れを示したフローチャートである。
【0117】
図6に示す変換処理は、情報提供を受ける情報提供先ネットワークのゲートウェイ装置によって行われる処理である。
【0118】
まず、同ネットワークのプリンタから受信したIPアドレスとポート番号の情報を元に、所定のアルゴリズムを適用することでポート番号を仮のポート番号へと変換する処理を行う(601)。ポート番号は、プリンタにおける機能を特定する識別情報であり、例えば、印刷出力機能を行うには「61番」と指定し、印刷出力設定の一覧を参照するには「39番」と指定する。
【0119】
所定のアルゴリズムを適用することによって、印刷出力機能のポート番号「61番」を仮のポート番号「1090番」へと変換する。
【0120】
そして、変換した仮のポート番号とIPアドレスを保存する(602)。
【0121】
これにより、変換処理では、正規のポート番号を仮のポート番号へと変換できる。
【0122】
図7は、図5のシーケンス図で示すプレ通信処理の詳細な処理の流れを示したフローチャートである。
【0123】
図7に示すプレ通信処理は、図6に示す変換処理と同様、情報提供を受ける情報提供先ネットワークのゲートウェイ装置によって行われる処理である。
【0124】
変換処理が行われた後にIP電話機による呼出が行われた場合、若しくはIP電話機を用いたボタン操作が行われた場合に処理が開始され、予め保存された情報提供ソフトウェアを取り出し(701)、この情報提供ソフトウェアからの参照情報として、変換処理で保存した状態にある仮のポート番号とIPアドレスを関連付ける(702)。
【0125】
そして、関連付けられた仮のポート番号とIPアドレスを示す識別情報と、情報提供ソフトウェアを暗号化する(703)。暗号化された識別情報を含む情報提供ソフトウェアを一時的に保存する(704)。
【0126】
これにより、プレ通信処理では、仮のポート番号が指定された情報提供ソフトウェアの転送準備を行うことができる。
【0127】
図8は、図5のシーケンス図で示す情報提供処理の詳細な処理の流れを示したフローチャートである。
【0128】
図8に示す情報提供処理は、情報提供を行う情報提供元ネットワークのクライアントPC上に記憶された情報提供ソフトウェアによって実行される処理である。
【0129】
クライアントPC上に記憶された情報提供ソフトウェアを復号化し(801)、復号化して平文になった情報提供ソフトウェアに含まれる自動起動プログラムが実行される(802)。この自動起動プログラムは、能動的に動作するプログラムであり、情報提供プログラムを呼び出す。
【0130】
次に、自動起動プログラムによって呼び出された情報提供プログラムが実行され、予めクライアントPC上の指定された記憶領域に格納されたデジタル情報を取得する(803)。取得後、情報提供ソフトウェアに含まれる識別情報のIPアドレスとポート番号(仮のポート番号)とを宛て先に指定した転送データを作成する(804)。
【0131】
この転送データは、転送前にクライアントPCの記憶領域に記憶された状態にあるデジタル情報に仮のポート番号とIPアドレスを宛て先として指定したデータである。この転送データを送信する処理を行うことで、送信時に所定のアルゴリズムが適用されて仮のポート番号から正規のポート番号へと変換され(805)、正規のポート番号が指定された転送データが送信される(806)。
【0132】
また、転送データの転送先のプリンタから完了通知を受信する(807)ことで、正常に印刷出力が行われて情報共有が完了したことを確認すると、情報提供ソフトウェアに含まれる自己排除プログラムを呼び出して情報提供ソフトウェア、識別情報を削除する(808)。
【0133】
このときの自己排除プログラムは、クライアントPC上の一時記憶領域に展開されて実行されるプログラムであって、実行することで情報提供ソフトウェアの自動起動プログラム、情報提供プログラム、識別情報を削除する。そして、自己排除プログラム自身は、クライアントPCのリブートやログオフ処理を行うことによりOSによって削除される。
【0134】
このような処理により、情報提供元ネットワークのゲートウェイ装置から受信して実行した情報提供ソフトウェアのプログラムや情報を確実に削除することができ、これらのプログラムや情報の再利用を防止できる。
【0135】
図9は、本願発明の情報共有システムにおける処理の流れを示す他のシーケンス図である。
【0136】
図9に示すシーケンス図は、図5に示すシーケンス図の変形例である。図5に示すシーケンス図では、IP電話機による通話状態の確立とともに情報共有の処理を開始するような処理遷移であるが、図9に示すシーケンス図では、デジタル情報の提供を受ける側である情報提供先ネットワークのIP電話機を用いてユーザ操作を行うことで情報提供の依頼を行う。また、デジタル情報を提供する側の情報提供元ネットワークでは、IP電話機を操作することで提供するデジタル情報を確認するともに、デジタル情報が格納されたクライアントPCを指定する。
【0137】
これにより、情報提供元ネットワークに複数のクライアントPCが接続された環境で、情報提供先に合ったさまざまな情報を指定して提供する処理遷移を示す。
【0138】
まず、情報提供先ネットワークのIP電話機から呼出を行うと、情報提供元ネットワークのIP電話機の呼出が行われる(901)と同時に、情報提供先ネットワークのゲートウェイ装置が同ネットワークのプリンタの状態確認を状態確認要求を送信することで行う(902)。
【0139】
状態確認要求を受けたプリンタでは、正常稼動時には設定されたIPアドレスと印刷出力機能を示すポート番号をゲートウェイ装置に状態確認応答として応答する(903)。
【0140】
情報確認応答を受けたゲートウェイ装置では、続いて、ポート番号の変換処理を行う(904)。この変換処理は、図5を用いて説明したフローチャートの処理である。
【0141】
そして、IP電話機で呼出を受けた情報提供元ネットワークのIP電話機を情報提供者が操作することで呼出を受けると、情報提供元ネットワークのIP電話機を用いて情報提供者が同ネットワークのゲートウェイ装置若しくはクライアントPCを特定するIPアドレスを設定する(905)。これによって、呼出に対する応答を行う(906、907)。すなわち、情報提供先ネットワークのゲートウェイ装置は、その呼出に対する応答に含まれるIPアドレスを参照することによりデジタル情報が記憶されたクライアントPCを識別できる。
【0142】
以上のような処理により、IP電話機同士間で音声セションが確立される。
【0143】
次に、情報提供先ネットワークのIP電話機を被情報提供者が操作、例えば「#」を押下するなどの操作を行うと、そのボタン操作の内容が情報提供元ネットワークのIP電話機へと通知される(908)。ちなみに、この操作では情報共有を行いたい旨を情報提供元へ通知することを示し、これを受けた情報提供元ネットワークでは、情報提供にかかる処理を行う。
【0144】
通知された情報提供元ネットワークのIP電話機は、同ネットワーク内のゲートウェイ装置に操作を受け付けた旨を通知するとともに(909)、情報提供者によりデジタル情報を指定する指定操作を受け付ける(910)。指定されたデジタル情報を確認するために指定操作を受け付けたことをゲートウェイ装置に通知して(911)、ゲートウェイ装置が指定されたクライアントPCにそのデジタル情報が格納されているか情報確認要求を送ることにより確認する(912)。デジタル情報が確認できた場合に情報確認応答をゲートウェイ装置に応答することで、ゲートウェイ装置が情報提供先ネットワークのゲートウェイ装置に情報確認ができた旨を通知する(914)。
【0145】
これによって、情報提供先ネットワークのプリンタと情報提供元ネットワークのクライアントPCとの間にデータセションが確立される。
【0146】
データセションが確立されると、情報提供先ネットワークのゲートウェイ装置から情報提供元ネットワークのゲートウェイ装置に対して情報提供ソフトウェアを転送する(917)。このときの転送先のアドレスは、情報提供者によって指定された情報提供元ネットワークのクライアントPCである。また、この情報提供ソフトウェアには、変換処理によって変換した仮のポート番号とIPアドレスの識別情報を含む。
【0147】
情報提供元ネットワークのゲートウェイ装置では、受信した情報提供ソフトウェアの確認処理を行う(918)。この確認処理では、その情報提供ソフトウェアが転送中に改ざんされていないか、また、その情報提供ソフトの送信元が特定することができるかなどのセキュリティ検査を行う。
【0148】
確認処理が行われた情報提供ソフトウェアは、宛て先で指定されたクライアントPCに転送され(919)、クライアントPCの記憶領域に格納される。
【0149】
クライアントPCに格納された情報提供ソフトウェアによって情報提供処理が行われる(920)。情報提供処理が行われることによってデジタル情報を情報提供先ネットワークのプリンタに対して転送する(921、922、923)。デジタル情報を受信したプリンタでは、ポート番号を確認して印刷出力を行う(924)。
【0150】
印刷出力が完了すると、デジタル情報の送信元であるクライアントPCに対して完了通知を転送する(925、926、927)。
【0151】
これにより、デジタル情報を相互ネットワーク間で共有することができるようになる。
【0152】
そして、IP電話機を操作して切断操作を行うと、切断要求が相手のIP電話機に転送されて切断される(928、929、930)。
【0153】
従って、本発明を適用することにより、仮のポート番号とIPアドレスに対してデジタル情報を転送するように指示することができる。
【0154】
これにより、転送先の情報を再利用できなくすることができ、不正利用を防止することが可能となる。
【0155】
本発明は、上記し、且つ図面に示す実施例に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は、ディジタル通信状態にある通信相手との間で情報共有を行うシステムに適用可能であり、特に、情報共有における情報提供先の装置の不正利用を防止できるようにするのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】本発明に係わるゲートウェイ装置および情報共有システムおよび方法を適用して構成したネットワーク構成図。
【図2】本発明に係わるゲートウェイ装置および情報共有システムおよび方法を適用して構成した他のネットワーク構成図。
【図3】本発明に係わるゲートウェイ装置および情報共有システムおよび方法を適用して構成した第3のネットワーク構成図。
【図4】図1に示すゲートウェイ装置の構成を示すブロック図。
【図5】本願発明の情報共有システムにおける処理の流れを示すシーケンス図。
【図6】図5のシーケンス図で示す変換処理の詳細な処理の流れを示したフローチャート。
【図7】図5のシーケンス図で示すプレ通信処理の詳細な処理の流れを示したフローチャート。
【図8】図5のシーケンス図で示す情報提供処理の詳細な処理の流れを示したフローチャート。
【図9】本願発明の情報共有システムにおける処理の流れを示す他のシーケンス図。
【符号の説明】
【0158】
10 情報提供元ネットワーク
11 ゲートウェイ装置
12 IP電話機
13 クライアントPC
20 情報提供先ネットワーク
21 ゲートウェイ装置
22 IP電話機
23 プリンタ
401 通話制御部
402 状態確認部
403 変換処理部
404 データ生成部
405 暗号処理部
406 保存部
408 通信部
409 データ制御部
410 確認部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の地点と接続し、各地点に設けられた電話機同士の通話セションを確立し、当該通話セションの相手先とのディジタル通信を制御するゲートウェイ装置において、
前記各地点に設けられたノードに設定されたネットワーク識別情報と当該ノードの機能を示すポート番号とを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した前記ポート番号を所定のアルゴリズムを適用することにより仮のポート番号へ変換する変換手段と、
当該仮のポート番号から変換前のポート番号へと変換を行うソフトウェアに前記取得手段で取得したネットワーク識別情報と前記変換手段で変換した仮のポート番号とを関連付ける関連付け手段と、
前記関連付け手段によってネットワーク識別情報と仮のポート番号を関連付けした前記ソフトウェアを前記通話セションが確立された相手先に対して通知する通知手段と、
前記通知手段で通知した相手先のノードとの通信を前記電話機による通話とともに行う通信手段と
を具備することを特徴とするゲートウェイ装置。
【請求項2】
前記通知手段は、
前記ネットワーク識別情報と前記仮のポート番号を関連付けしたソフトウェアを暗号化して通知する
ことを特徴とする請求項1記載のゲートウェイ装置。
【請求項3】
各地点をゲートウェイ装置によって接続し、前記ゲートウェイ装置を介したディジタル通信における電話機同士の通話セションを確立した相手先との情報の共有を行う情報共有システムにおいて、
前記ゲートウェイ装置は、
前記各地点に設けられたノードに設定されたネットワーク識別情報と当該ノードの機能を示すポート番号とを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した前記ポート番号を所定のアルゴリズムを適用することにより仮のポート番号へ変換する変換手段と、
当該仮のポート番号から変換前のポート番号へと変換を行うソフトウェアに前記取得手段で取得したネットワーク識別情報と前記変換手段で変換した仮のポート番号とを関連付ける関連付け手段と、
前記関連付け手段によってネットワーク識別情報と仮のポート番号を関連付けした前記ソフトウェアを前記通話セションが確立された相手先に対して通知する通知手段と
を具備し、
前記通知手段で通知した相手先のノードとの通信を前記電話機による通話とともに行う
ことを特徴とする情報共有システム。
【請求項4】
前記ノードは、
画像形成装置であって、
前記通知手段により前記前記画像形成装置へのアクセス情報を受けた相手先の地点に設けられたノードから前記ソフトウェアによって変換されたポート番号が指定された画像形成要求を受信し、該画像形成要求に基づいて前記画像形成装置で画像形成を行う
ことを特徴とする請求項3記載の情報共有システム。
【請求項5】
前記ゲートウェイ装置は、
前記電話機を含むことを特徴とする請求項3乃至4のいずれかに記載の情報共有システム。
【請求項6】
前記ゲートウェイ装置は、
前記画像形成装置を含むことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の情報共有システム。
【請求項7】
複数の地点と接続し、各地点に設けられた電話機同士の通話セションを確立し、当該通話セションの相手先とのディジタル通信を制御するゲートウェイ装置における制御方法において、
前記各地点に設けられたノードに設定されたネットワーク識別情報と当該ノードの機能を示すポート番号とを取得手段で取得し、
前記取得手段により取得した前記ポート番号を所定のアルゴリズムを適用することにより仮のポート番号へ変換手段で変換し、
当該仮のポート番号から変換前のポート番号へと変換を行うソフトウェアに前記取得手段で取得したネットワーク識別情報と前記変換手段で変換した仮のポート番号とを関連付け手段で関連付け、
前記関連付け手段によってネットワーク識別情報と仮のポート番号を関連付けした前記ソフトウェアを前記通話セションが確立された相手先に対して通知手段で通知し、
前記通知手段で通知した相手先のノードとの通信を前記電話機による通話とともに行う
ことを特徴とするゲートウェイ装置における制御方法。
【請求項8】
各地点をゲートウェイ装置によって接続し、前記ゲートウェイ装置を介したディジタル通信における電話機同士の通話セションを確立した相手先との情報の共有を行う情報共有システムにおける情報共有方法において、
前記各地点に設けられたノードに設定されたネットワーク識別情報と当該ノードの機能を示すポート番号とを前記ゲートウェイ装置の取得手段で取得し、
前記取得手段により取得した前記ポート番号を所定のアルゴリズムを適用することにより仮のポート番号へ変換手段で変換し、
当該仮のポート番号から変換前のポート番号へと変換を行うソフトウェアに前記取得手段で取得したネットワーク識別情報と前記変換手段で変換した仮のポート番号とを関連付け手段で関連付け、
前記関連付け手段によってネットワーク識別情報と仮のポート番号を関連付けした前記ソフトウェアを前記通話セションが確立された相手先に対して通知手段で通知し、
前記通知手段で通知した相手先のノードとの通信を前記電話機による通話とともに行う
ことを特徴とする情報共有システムにおける情報共有方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−281685(P2007−281685A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103170(P2006−103170)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】