説明

コアシェル型のナノ粒子及びその製造方法

本発明は、金属又は半導体からなるナノ粒子コア及び前記ナノ粒子コアの表面に形成された結晶質の金属酸化物からなるシェルを含むコアシェル型のナノ粒子及びその製造方法を提供する。
本発明は、コアの表面に金属酸化物をエピタキシャル成長させて結晶質の金属酸化物からなるシェルを形成することで、結晶質の金属酸化物からなるシェルを有するコアシェルナノ粒子を製造することができ、結晶質の金属酸化物のシェルによって金属又は半導体からなるコアナノ粒子の優れた化学的、機械的安定性を確保することができ、金属コアと金属酸化物結晶のシェルとの間の相互作用による、新しい特性を期待することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属又は半導体からなるナノ粒子コア及び前記ナノ粒子コアの表面に形成された結晶質の金属酸化物からなるシェルを含むコアシェル型のナノ粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子とは、ナノスケールの大きさを有する粒子であって、電子遷移に必要なエネルギーが物質の大きさに応じて変化する量子閉じ込め効果(Quantum Confinement effect)及び広い比表面積によって、バルク状態の物質とは全く異なった光学的、電気的、磁気的特性を呈する。従って、このような特性から、触媒分野、電気磁気分野、光学分野、医学分野などにおける利用可能性に対して多くの関心が集中されている。ナノ粒子は、バルクと分子との中間体と言えるので、両方向からのアプローチ、即ち、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチとの両方でナノ粒子の合成が可能である。トップダウンアプローチは、バルク物質を小片に切って作る方法で、ナノ粒子の大きさを容易に制御することができるという長所があるが、50nm以下のナノ粒子を作ることは困難であるという問題点がある。それで、最近は、ボトムアップアプローチ、即ち、原子又は分子のレベルから組み立ててナノ粒子を作る方法が脚光を浴びており、化学的な分子又は原子の前駆物質を経る場合、主にコロイド合成法で製造される。
【0003】
金属ナノ粒子の合成は、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、鉄、銅、コバルト、カドミウム、ニッケル、シリコンなどの金属ナノ粒子の合成が報告されているが、このような金属ナノ粒子は、それだけでは不安定で経時的に凝集が起こり、ナノ粒子としての性質を失ってしまうため、溶液中及び乾燥後でも安定したナノ粒子の合成を行うには、これらナノ粒子の凝集を防ぐ方法及びナノ粒子表面の酸化現象を防止できる方法が求められている。
【0004】
なお、ナノ粒子をコアとし、その表面に他の物質によるコートを施した、所謂、コアシェル型のナノ粒子は、シェル部でコア物質に対する化学的、機械的な保護層を形成し、さらには、コア及びシェルの構成物質のそれぞれの固有性質を維持しながら多機能性を備えるか、両方の性質が互いに作用して新しい特性を示すようになり、触媒、光電デバイスなどのような様々な分野に適用可能であるが、多層をなす構造体をナノスケールで具現することが容易でない。
【0005】
このようなコアシェルを用いた例としては、化学的エッチング、燃焼、光溶解などでコア物質を完全に除去して中空構造とし、又は、部分的にコア物質を除去して特異的な構造を有する物質を製造する前駆体として使用されるものなどがある。また、光触媒機能を有するTiO、CeOなどをコアとし、表面に抗菌作用を有するAg、Cuなどの金属をコートした例もある。金属をコアとし、無機金属酸化物をシェル物質としてコートを施した例は、磁性物質であるNiにSiOをコートして化学的、磁気的安定性を図り、または、Au、Agなどの金属ナノ粒子にSiOをコートして化学的安定性を図る場合などがある。特に、SiOをシェルとしてコートを施す場合は、シリコンの有機金属化合物であるTEOS(TetraEthyl OrthoSilicate)などを前駆物質として加水分解−縮合反応を経てコートする方法が知られている。但し、このような反応を用いて金属コア−酸化物シェルナノ粒子を製造する場合、表面にコートされる酸化物は、非結晶質の状態であるため、結晶質の場合に比べて化学的、機械的安定性が落ちるという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、金属又は半導体化合物のナノ粒子の表面に金属酸化物のコートを施すに当って、その反応速度を調節することで前記ナノ粒子の表面において金属酸化物がエピタキシャル成長するようにし、常温で短時間で結晶質のシェルを形成できることを見出した。
【0007】
従って、本発明の目的は、金属又は半導体からなるナノ粒子コアの表面に形成される結晶質の金属酸化物からなるシェルを含むコアシェル型のナノ粒子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、a)周期表の3〜15族に属する金属、半金属(metalloid)、ランタニド族金属、アクチニド族金属、これら元素の少なくとも2種の合金及び半導体化合物からなる群から選択される物質からなるナノ粒子コア及びb)前記ナノ粒子コアの表面に形成された結晶質のシェルからなるシェルを含むコアシェル型のナノ粒子を提供する。
【0009】
また、本発明は、a)周期表の3〜15族に属する金属、半金属、ランタニド族金属、アクチニド族金属、これら元素の少なくとも2種の合金及び半導体化合物からなる群から選択される物質のナノ粒子コアを、水と第1の有機溶媒との混合溶媒に分散させるステップ、及びb)第2の有機溶媒に溶解された金属酸化物の前駆物質を前記a)のステップで製造された溶液に滴下して前記ナノ粒子コアの表面に形成された結晶質の金属酸化物からなるシェルを含むコアシェル型のナノ粒子を形成するステップを含んでなる、前述のコアシェル型のナノ粒子を製造する方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、a)周期表の3〜15族に属する金属、半金属、ランタニド族金属、アクチニド族金属、これら元素の少なくとも2種の合金及び半導体化合物からなる群から選択される物質のナノ粒子コアと金属酸化物の前駆物質とを第1の有機溶媒に分散、溶解させるステップ、及びb)水と第2の有機溶媒との混合溶媒を前記a)ステップで製造された溶液に滴下して前記ナノ粒子コアの表面に形成された結晶質の金属酸化物からなるシェルを含むコアシェル型のナノ粒子を形成するステップを含んでなる、前述のコアシェル型のナノ粒子を製造する方法を提供する。
【0011】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0012】
なお、本発明において、金属酸化物とは、周期表の1〜15族に属する金属元素の酸化物のみを意味するのではなく、半金属元素の酸化物さえも含む概念である。
【0013】
本発明において、コアとして使用し得るナノ粒子としては、周期表の3〜15族に属する金属、半金属、ランタニド族金属、アクチニド族金属、これら元素の少なくとも2種の合金及び半導体化合物などが挙げられ、その非制限的な例としては、Au、Ag、Pt、Pd、Co、Ni、Fe、これら金属元素の少なくとも2種の合金、CdSe、ZnS、CdSなどがある。本発明においてコアとして使用されるナノ粒子は、当業者に周知の方法で製造でき、その製法は、特別な制限はない。上記のようなコアとして使用し得る金属又は半導体ナノ粒子は、結晶構造を有するものであって、それによってシェルのエピタキシャル成長が可能であるものであれば、本発明においてはいずれも等価物と見なされる。
【0014】
本発明においてコアとして使用されるナノ粒子の大きさは、3nm〜200nmの範囲であり、50nm〜150nmの範囲がより好ましいが、必ずしもこれに限定されない。
【0015】
また、本発明において、コアの表面にコートされたシェルは、金属酸化物であり得るが、その非制限的な例としては、SiO、ZrO、TiO、ZnO及びSnOなどが挙げられる。
【0016】
前記シェルとなり得る金属酸化物は、後述の製造方法のように、金属酸化物の前駆物質から溶液相で合成できるもので、それにより、追加の熱処理を行うことなく常温又は低温で結晶質の金属酸化物を形成することができるものであれば、本発明においてはいずれも等価物と見なされる。
【0017】
コアの表面に形成されたシェルの厚さは、3nm〜50nmの範囲であり、10nm〜25nmの範囲が好ましいが、必ずしもこれに限定されない。このようなシェルの厚さは、本発明の製造方法で形成及び調節することができる。
【0018】
本発明において、コアの表面にコートされたシェルは、非晶質の状態でなく、結晶質であることに特徴がある。このような結晶質の金属酸化物からなるシェルは、後述の製造方法で金属又は半導体物質のナノ粒子の表面でエピタキシャル成長することで得られるもので、このような結晶成長は、常温で比較的短時間で済む。本発明の方法で製造できる結晶質の金属酸化物からなるシェルは、TiOの場合、ブルッカイト、ルチル、アナターゼ構造となることができ、また、SiOの場合、クォーツ、クリストバライト、トリディマイトなどとなることができるが、必ずしもこれに限定されず、金属酸化物の結晶質形態を有するものであれば使用可能である。本発明の実施例で開示したように、Agナノ粒子コアにTiOのコートを施す場合、ルチル構造のTiOが形成されることができる。このような結晶質の金属酸化物からなるシェルは、非晶質のシェルに比べて化学的耐久性及び機械的強度が優れているため、コアの物性に影響を与える様々な因子から効果的にコアを保護することができ、よって、光学的な特性や電気的な特性などの保全可能であるという長所がある。また、コア物質とシェル物質との間の相互作用による新しい特性が期待される。
【0019】
なお、結晶質のシェルを形成するには、必ずしも高温の熱処理過程を経る必要があるという問題点があり、熱処理の過程でコアとシェルの物性が変化するおそれもあるが、本発明の製法によれば、常温で反応が完結するため、熱処理の過程を経る必要がないため、このような問題点が発生するおそれがない。
【0020】
本発明による金属又は半導体からなるナノ粒子コアの表面に形成された結晶質の金属酸化物からなるシェルを含むコアシェル型のナノ粒子は、下記のような2つの方法で製造することが可能である。
【0021】
<第1の方法>
ナノ粒子コアの分散液に水を予め添加した後、金属酸化物の前駆物質溶液を滴下する方法。
【0022】
<第2の方法>
ナノ粒子コアと金属酸化物の前駆物質とを共に含む溶液に水を滴下する方法。
【0023】
上記の<第1の方法>は、次のように、
a)周期表の3〜15族に属する金属、半金属、ランタニド族金属、アクチニド族金属、これら元素の少なくとも2種の合金及び半導体化合物からなる群から選択される物質のナノ粒子コアを、水と第1の有機溶媒との混合溶媒に分散させるステップ、及び
b)第2の有機溶媒に溶解された金属酸化物の前駆物質を前記a)のステップで製造された溶液に滴下して前記ナノ粒子コアの表面に形成された結晶質の金属酸化物からなるシェルを含むコアシェル型のナノ粒子を形成するステップ、
を含むことができる。
【0024】
また、上記の<第2の方法>は、次のように、
a)周期表の3〜15族に属する金属、半金属、ランタニド族金属、アクチニド族金属、これら元素の少なくとも2種の合金及び半導体化合物からなる群から選択される物質のナノ粒子コアと金属酸化物の前駆物質とを第1の有機溶媒に分散、溶解させるステップ、及び
b)水と第2の有機溶媒との混合溶媒を前記a)ステップで製造された溶液に滴下して前記ナノ粒子コアの表面に形成された結晶質の金属酸化物からなるシェルを含むコアシェル型のナノ粒子を形成するステップ、
を含むことができる。
【0025】
さらに、選択的に、上記<第1の方法>及び<第2の方法>の両方において、前記b)ステップで得られたコアシェル型のナノ粒子分散液からナノ粒子を分離するステップをさらに含むことが可能である。
【0026】
次に、<第1の方法>について説明する。
a)ステップは、公知の方法などで予め製造された貴金属、遷移金属、半導体物質からなるナノサイズのコアを用いて水と第1の有機溶媒とが混合されている溶媒に分散させるステップである。なお、第1の有機溶媒は、加水分解の速度を調節する役割を果たす。例えば、水と第1の有機溶媒との混合溶媒を使用することなく水のみを溶媒として使用する場合は、b)ステップで金属酸化物の前駆物質の加水分解反応速度があまりにも速くなりすぎてコア表面で金属酸化物のシェルが不均一なコート状態となってしまい、金属酸化物の凝集が起こって別個の粒子を形成するおそれがあるため、加水分解に用いられる水の濃度を薄くするため、本発明のコアシェルナノ粒子を形成するに当たって、第1の有機溶媒との混合溶媒として使用することが良い。さらに、金属ナノ粒子コアの表面に金属酸化物のシェルがエピタキシャル成長して結晶性を有するシェルを形成するため、加水分解の速度があまり速くならないように調節するのが望ましい。
【0027】
第1の有機溶媒として使用できるものとしては、アルコール類、アミド類、ニトリル類などがあり、その非制限的な例としては、イソプロピルアルコール、エタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)などが挙げられ、水と第1の有機溶媒との混合比は、1:3〜1:10000であることが好ましい。
【0028】
なお、金属酸化物の前駆物質は、第2の有機溶媒に溶解し、この溶液を、a)ステップで製造されたコアナノ粒子の分散液にゆっくり滴下する。金属酸化物の前駆物質の非制限的な一例としては、M−(OR)の形態を有する金属アルコキシドがあり、ここで、Mは、金属元素、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、nは、Mの酸化数である。金属有機化合物であるアルコキシドM(OR)は、X−OHと下記の反応式1のように反応する。この反応は、Xの化学的な性質によって変化する。
【0029】
[反応式1]
(1) X=Hの時、加水分解反応
M−OR+HO−H → M−OH+ROH
(2) X=Mの時、縮合反応
M−OR+HO−M → M−O−M+ROH
(3) X=R'の時、化学的置換反応
M−OR+M−OR' → M−OR'+ROH
【0030】
上記のように、金属酸化物シェルの形成は、金属アルコキシドの加水分解と縮合反応によるが、金属酸化物の前駆物質が必ずしも金属アルコキシドのみに限定されるのではなく、金属カルボキシレート、金属ハライドなどを金属酸化物の前駆物質として使用することもできる。
【0031】
本発明において使用される第2の有機溶媒は、金属酸化物の前駆物質を溶解できる有機溶媒であって、アルコール類、アミド類、ニトリル類などを使用することができ、その非制限的な例としては、イソプロピルアルコール、エタノール、DMFなどが挙げられる。
【0032】
本発明の特徴である結晶性を有する金属酸化物のシェルを具現するには、金属ナノ粒子コアの表面から金属酸化物のシェルがエピタキシャル成長するようにする必要がある。特に、本発明は、常温で比較的短時間でエピタキシャル成長が可能であることに特徴がある。これは、一次的に合成される種のナノ粒子が成長核の役割を果たすため、ゆっくり滴下する金属酸化物の前駆体から種の表面に結晶質のシェルが形成されると考えられる。
【0033】
本発明において、結晶質の金属酸化物からなるシェルのエピタキシャル成長を起こすための加水分解反応は、常温で起こり、好ましくは5℃〜40℃の温度範囲で起こることができる。
【0034】
エピタキシャル成長のためには、加水分解反応速度を極力低くする必要があり、そのためには、a)ステップで水と第1の有機溶媒との混合比を調節し、b)ステップで滴下速度を調節する必要がある。先ず、水と第1の有機溶媒との混合溶媒内で水の体積比を極力小さくすることが有利であるが、1:3〜1:10000程度が好ましい。また、b)ステップにおける滴下速度は、同じく極力低くし、本発明においては、ナノ粒子コア100mg当たり5μl/sec.〜1ml/sec.であることが好ましい。
【0035】
また、前述の全ての加水分解反応速度は、経済性などを考慮すれば、1〜60分間内に反応を完結することが好ましい。
【0036】
このように滴下速度を低くする理由は、金属酸化物からなるシェルのエピタキシャル成長を行わせるためであるが、また、前述のように金属酸化物ナノ粒子がコア物質と関係なく別に発生したり、コアの表面にシェルが不均一に凝集する現象を防止することで、コア表面へのシェルの均一なコートを可能とするためでもある。
【0037】
さらに、本発明では、反応速度を調節するため、前述した製造方法の中で、a)ステップ又はb)ステップにおいて反応速度を調節可能な添加剤をさらに添加することもできる。反応速度を調節可能な添加剤は、カルボン酸、β−ジケトン類などを使用でき、アセチルアセトンなどのキレート剤が好ましい。このような添加剤を添加すると、シェルの前駆物質にキレートすることで加水分解速度を低くするようになり、このため、コート速度の調節が可能である。
【0038】
b)ステップにおいて、金属酸化物の前駆物質が加水分解した後、金属ナノ粒子コアの表面に金属酸化物が一様にコートされることで、結晶質の金属酸化物からなるシェルを含むコアシェルナノ粒子の分散された分散液を得ることができ、分散液からナノ粒子を分離して乾燥状態のコアシェルナノ粒子を得る方法は、噴霧乾燥、凍結乾燥、沈殿濾過、遠心分離方法などのような、当業者に周知の方法で行うことができる。
【0039】
<第2の方法>は、基本的な作用原理及び使用物質の種類、量などはいずれも同様である。但し、<第1の方法>では、
a)ステップで水を含み、
b)ステップで金属酸化物の前駆物質を第2の有機溶媒と共に溶液状で滴下し、
加水分解速度を調節するため、水と第1の有機溶媒との体積比を調節する。
【0040】
これに対し、<第2の方法>では、
a)ステップで水の代わりに金属酸化物の前駆物質を含み、
b)ステップで水と第2の有機溶媒との混合溶媒を滴下し、
加水分解速度を調節するため、水と第2の有機溶媒との体積比を調節する、
ことに差異がある。
【0041】
要するに、<第1の方法>と<第2の方法>とは、水と金属酸化物の前駆物質との投入位置及び順序が違うだけで基本的な反応原理は同一である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
次に、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0043】
[実施例1]
a)平均直径(d50)が100nmである銀(Ag)ナノ粒子30mgを蒸留水5mlとイソプロピルアルコール15mlとの混合溶媒に入れて良く攪拌し、分散させてコアの分散液を作り、b)チタンイソプロポキシド6μlをアセチルアセトン2μlとイソプロピルアルコール10mlとが混合された溶媒に溶解させた溶液を作った後、この溶液をa)のコア分散液に5μl/sec.の速度でゆっくり滴下した。滴下が終わると、加水分解反応が完結し(所要時間およそ35分間)、生成されたコアシェルナノ粒子の分散液にトルエンを入れ、これを遠心分離してコアシェルナノ粒子を得た。合成されたコアシェルナノ粒子は、SEM、TEMを用いて微細構造を観察し、その結果を図1及び図2に示した。なお、図4から図2の下部のTEM写真の左側部分がAg金属結晶のコア部分であることを確認し、また、図5のHRTEMによる結晶性分析結果に示されているように、シェルを形成するTiOがルチル構造であることが確認された。また、図6に示されているように、TiOシェルは、Agコアの表面からエピタキシャル結晶成長していることがわかった。
【0044】
[比較例1]
a)DMF3.8mM、硝酸銀(AgNO)0.8Mに蒸留水を添加して全体容量5mlを作った。b)エタノールにTi(OC5.75mM、アセチルアセトン5.75mMを添加して全体容量20mlを作った。c)前記a)溶液と前記b)溶液とを混ぜた後、攪拌しながら90分間還流し、得られた分散液をトルエン洗浄、遠心分離を経てコアシェルナノ粒子を得た。合成されたコアシェルナノ粒子は、SEM、TEMを用いて分析し、その結果は、図3に示されている。図3からわかるように、TiOシェルがAgコアの表面に不均一にコートされており、また、コアとは別に凝集されていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、金属又は半導体からなるナノ粒子コアの表面に金属酸化物をエピタキシャル成長させて結晶性金属酸化物のシェルを形成することで、金属又は半導体のコアと結晶性金属酸化物のシェルとからなるコアシェル型のナノ粒子を製造することができ、結晶質形態の金属酸化物のシェルが得られるため、既存の非晶質金属酸化物のシェルを備えるコアシェルナノ粒子に比べて優れた化学的機械的安定性を確保することができると共に、金属コアと金属酸化物結晶シェルとの間の相互作用による新しい特性を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、シェル形成前のコア粒子(左)及び実施例1によるシェル形成後のコアシェル粒子(右)のSEM写真である。
【図2】図2は、実施例1の方法で合成されたコアシェルナノ粒子のTEM写真である。
【図3】図3は、比較例1の方法で合成されたコアシェルナノ粒子のTEM写真である。
【図4】図4は、実施例1の方法で合成されたコアシェルナノ粒子の中でAgコア部分に対するHRTEM(高分解能透過電子顕微鏡)を用いた結晶性分析結果を示した図である。
【図5】図5は、実施例1の方法で合成されたコアシェルナノ粒子の中でTiOシェル部分に対するHRTEMを用いた結晶性分析結果を示した図である。
【図6】図6は、実施例1の方法で合成されたコアシェルナノ粒子の中でコアとシェルとの境界部に対するHRTEMを用いた結晶性分析結果を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)周期表の3〜15族に属する金属、半金属、ランタニド族金属、アクチニド族金属、これら元素の少なくとも2種の合金及び半導体化合物からなる群から選択される物質からなるナノ粒子コア、及び
b)前記ナノ粒子コアの表面に形成された結晶質の金属酸化物又は半金属酸化物からなるシェル、
を含むコアシェル型のナノ粒子。
【請求項2】
前記ナノ粒子コアは、Au、Ag、Pt、Pd、Co、Ni、Fe、これら金属元素の少なくとも2種の合金、CdSe、ZnS、CdSからなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1に記載のコアシェル型のナノ粒子。
【請求項3】
前記シェルは、SiO、ZrO、TiO、ZnO及びSnOからなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1に記載のコアシェル型のナノ粒子。
【請求項4】
前記シェルは、前記コアの表面にエピタキシャル結晶成長して形成されるものであることを特徴とする請求項1に記載のコアシェル型のナノ粒子。
【請求項5】
前記ナノ粒子コアの平均粒径は、3nm〜200nmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のコアシェル型のナノ粒子。
【請求項6】
前記シェルの厚さは、3nm〜50nmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のコアシェル型のナノ粒子。
【請求項7】
a)周期表の3〜15族に属する金属、半金属、ランタニド族金属、アクチニド族金属、これら元素の少なくとも2種の合金及び半導体化合物からなる群から選択される物質のナノ粒子コアを、水と第1の有機溶媒との混合溶媒に分散させるステップ、及び
b)第2の有機溶媒に溶解された金属酸化物又は半金属酸化物の前駆物質を前記a)のステップで製造された溶液に滴下して前記ナノ粒子コアの表面に形成された結晶質の金属酸化物又は半金属酸化物からなるシェルを含むコアシェル型のナノ粒子を形成するステップ、
を含む、請求項1乃至6のいずれか1つに記載のコアシェル型のナノ粒子を製造する方法。
【請求項8】
a)周期表の3〜15族に属する金属、半金属、ランタニド族金属、アクチニド族金属、これら元素の少なくとも2種の合金及び半導体化合物からなる群から選択される物質のナノ粒子コアと金属酸化物又は半金属酸化物の前駆物質とを、第1の有機溶媒に分散、溶解させるステップ、及び
b)水と第2の有機溶媒との混合溶媒を前記a)ステップで製造された溶液に滴下して前記ナノ粒子コアの表面に形成された結晶質の金属酸化物又は半金属酸化物からなるシェルを含むコアシェル型のナノ粒子を形成するステップ、
を含む、請求項1乃至6のいずれか1つに記載のコアシェル型のナノ粒子を製造する方法。
【請求項9】
前記結晶質の金属酸化物又は半金属酸化物のシェルは、5℃〜40℃の温度で形成されることを特徴とする請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
水と第1の有機溶媒との体積比を1:3〜1:10000に調節することで、金属酸化物又は半金属酸化物の前駆物質の加水分解反応が1〜60分間の範囲で完結するように反応速度を調節することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項11】
水と第2の有機溶媒との体積比を1:3〜1:10000に調節することで、金属酸化物又は半金属酸化物の前駆物質の加水分解反応が1〜60分間の範囲で完結するように反応速度を調節することを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第1の有機溶媒又は第2の有機溶媒は、アルコール類、アミド類及びニトリル類からなる群から選択されることを特徴とする請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項13】
前記金属酸化物又は半金属酸化物の前駆物質は、金属又は半金属のアルコキシド、カルボキシレート及びハライドからなる群から選択されることを特徴とする請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項14】
前記a)又はb)のステップにおいて反応速度調節用の添加剤をさらに添加することを特徴とする請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項15】
前記反応速度調節用の添加剤は、カルボン酸類、β−ジケトン類又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記b)ステップでは、金属酸化物又は半金属酸化物がナノ粒子コアの表面においてシェルを均一に形成してエピタキシャル結晶成長することができるように滴下速度を低くすることを特徴とする請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項17】
前記b)ステップにおける滴下速度は、ナノ粒子コア100mg当り5μl/sec.〜1ml/sec.の範囲であることを特徴とする請求項7又は8に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−519374(P2009−519374A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544243(P2008−544243)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【国際出願番号】PCT/KR2006/005165
【国際公開番号】WO2007/066934
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】