説明

コアシェル型酸化セリウム微粒子又はそれを含有する分散液及びそれらの製造方法

【課題】コアシェル型酸化セリウム微粒子、それを含有する分散液及びそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】粒子径の平均が30−200nmであるコアシェル型酸化セリウム微粒子であって、該微粒子の変動係数が0.25以下で、コア部分の二次粒子の形状が球状であり、その表面に高分子が付着している、前記微粒子、該酸化セリウム微粒子の分散液、該酸化セリウム微粒子分散液の乾燥粉体、及び、セリウムの塩と高分子を有機溶媒に混合して混合物を得る工程と、その混合物を所定の温度で加熱・還流してコアシェル型酸化セリウム微粒子を析出する工程とを有する、コアシェル型酸化セリウム微粒子又はその分散液の製造方法であって、前記セリウムの塩が、硝酸セリウムであり、かつ、前記高分子の分子量の大きさによって前記微粒子の粒径を制御することからなるコアシェル型酸化セリウム微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル型酸化セリウム微粒子又はそれを含有する分散液及びそれらの製造方法に関するものであり、更に詳しくは、触媒、フォトニック結晶、ガスセンサ、化学的機械的研磨剤、紫外線遮蔽剤などに応用可能な、コアシェル型酸化セリウム微粒子及びそれを含む分散液を製造するための当該酸化セリウム微粒子及びそれを含む分散液の製造方法及びその製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、微粒子を用いたフォトニック結晶が注目されている(非特許文献1)。これは、微粒子により発光や光の伝搬を人工的に制御できるためである。フォトニック結晶用の微粒子として必要な性能は、球状、粒径が50〜200nm程度、粒径分布(粒径の標準偏差)が小さい、高屈折率(n>2)、液中での良好な分散性、である。これまで、これらの条件を満たす微粒子は、報告されていなかった。しかるに、酸化セリウムは、屈折率が2.1と高く(非特許文献2、3)、フォトニック結晶として好適な材料である。
【0003】
また、酸化セリウムは、紫外線遮蔽剤としても有名な材料であり、例えば、先行文献には、酸化セリウムを使った紫外線遮蔽剤について開示されている(特許文献1)。紫外線遮蔽剤は、化粧品に使われるものであって、人の皮膚に触れるものである。従って、その成分は、化学的に不活性であることが望まれる。酸化セリウムの化学的な活性を抑制するために、シリカを被覆させたものがこれまでに報告されている。このように、酸化セリウム微粒子表面に化学的に不活性な無機物や有機物を被覆させたものは、紫外線遮蔽剤として有望な候補となり得る。
【0004】
これまで、酸化セリウムのナノ粒子の合成については幾つか報告されている(非特許文献4−7、特許文献2)が、液中での分散性に関する記述及び微粒子の粒径のばらつきに関する記述は見当たらない。すなわち、粒径は30〜200nm程度、粒径分布(粒径の標準偏差)が小さく、球状、液中での分散性が良好である酸化セリウム微粒子又は酸化セリウム微粒子分散液に関する報告は見当たらない。
【0005】
上記用途用の酸化セリウム微粒子分散液を作製する場合、通常の方法により、単に乾燥した酸化セリウム微粒子を分散媒に分散させるだけでは、安定した分散液を得ることができない。これは、安定した分散液を得るためには、一度凝集した酸化セリウム微粒子の凝集を解く必要があるためである。ナノ粒子の合成方法が、気相プロセス、液相プロセスいずれの場合であっても、ナノ粒子が生成した後、凝集を抑制しない限り、一般に、強固に凝集してしまう。一度、ナノ粒子が強固に凝集すると、凝集を解くための処理を行っても、凝集を解くことは一般に困難である。
【0006】
先行文献には、セラミックビーズを使って機械的に凝集を解く技術が開示されているが(特許文献3)、この場合、問題点として、不純物の混入が考えられる。また、溶媒に、分散剤を添加する必要が有る。以上のことから、凝集を解く方法が、機械的な手法でなく、また、分散剤の添加を必要としないで、分散しやすい(凝集しにくい)酸化セリウム微粒子を合成する必要がある。
【0007】
ナノ粒子が一度凝集してしまうと、乖離が困難なことから、凝集する前、すなわち、ナノ粒子の生成と同時に、凝集を抑制する処理を施せば、分散しやすい酸化セリウム微粒子が得られるはずである。このとき、高分子が溶解した分散媒を反応場として使用すれば、酸化セリウム微粒子生成と同時に凝集を抑制でき、それにより、安定な酸化セリウム微粒子分散液を得られる。また、酸化セリウム微粒子分散液を乾燥させたとしても、凝集抑制処理を行っているため、それを再度分散媒に再分散させれば、容易に分散することが予想される。
【0008】
酸化セリウムに関する報告ではないが、このようなコンセプトをゾルゲル法あるいは加水分解法に適用した例が報告されている(非特許文献8−11、特許文献4)。しかしながら、これまで、このようなコンセプトを酸化セリウム微粒子を析出させる還流法に適用した事例は見当たらない。
【0009】
また、先行文献には、それぞれ、金属酸化物超微粒子とその製造方法、及び金属酸化物微粒子が開示されている(特許文献5、6)が、上記先行文献には、例えば、粒径は30〜200nm程度、金属酸化物の粒径分布(粒径の標準偏差)が小さく、1から3nm程度の金属酸化物の一次粒子が集合した球状二次粒子であり、液中での分散性が良好であるコアシェル型の酸化セリウム微粒子又はコアシェル型酸化セリウム微粒子分散液に関する記述は何もない。
【0010】
【特許文献1】特開2004−35632号公報
【特許文献2】特開2002−255515号公報
【特許文献3】特開2004−35632号公報
【特許文献4】特開平2−92810号公報
【特許文献5】特開平6−218276号公報
【特許文献6】特開2006−8629号公報
【非特許文献1】柴田修一、セラミックス41(2006)334
【非特許文献2】M.G.Krishna,A.Hartridge,A.K.Bhattacharya,Materials Science and Engineering B55(1998)14
【非特許文献3】M.Mogensen,N.M.Sammes,G.A.Tompsett,Solid State Ionics129(2000)63
【非特許文献4】C.Ho,J.C.Yu,T.Kwong,A.C.Mak,S. Lai,Chem.Mater.,17(2005)4514
【非特許文献5】N.Uekawa,M.Ueta,Y.J.Wu,K.Kakegawa,J.Mater.Res.,19(2004)1087
【非特許文献6】X.Chu,W.Chung,L.D.Scmidt,J.Am.Ceram.Soc.,76(1993)2115
【非特許文献7】W.P.Hsu,L.Ronnquist,E.Matijevic,Langmuir,4(1988)31
【非特許文献8】H.Yang,C.Huang,X.Su,Materials Letters,60(2006)3714
【非特許文献9】Z.T.Zhang,B.Zhao,L.M.Hu,J.Solid State Chem.,121(1996)105
【非特許文献10】D.L.Tao,F.Wei,Mater.Lett.58(2004)3226
【非特許文献11】G.C.Xi,Y.Y.Peng,L.Q.Xu,M.Zhang,W.C.Yu,Y.T.Qian Inorg.Chem.Commun.7(2004)607
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、ナノ粒子の凝集を抑制して、長期安定性を保持したナノサイズの酸化セリウム微粒子及びその分散液を製造する方法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、還流法を用いることで、有機溶媒が使える、反応開始剤を必要としない場合があるなど、有利な点が多いこと、原料としては、高価なアルコキシドでなく、安価な硝酸塩が好適に使用できること、それにより、ナノ粒子の凝集を抑制したコアシェル型酸化セリウム微粒子及びその分散液を調製できること、などの新規知見を見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、以上のことを踏まえて、(1)コアシェル型酸化セリウム微粒子であって、その粒径は50〜200nm程度、粒径分布(粒径の標準偏差)が小さく、球状であり、コア部分の二次粒子も球状で大きさが揃っており、液中での分散性が良好であるコアシェル型酸化セリウム微粒子及び当該酸化セリウム微粒子分散液を提供すること、及び、(2)還流法を上記コンセプトに適用させた、前記コアシェル型酸化セリウム微粒子及び当該酸化セリウム微粒子分散液の製造方法を提供すること、を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)コアシェル型酸化セリウム微粒子であって、1)そのコア部分は酸化セリウムの一次粒子が球状に集合した二次粒子であり、2)その二次粒子の形状は揃っており、3)その二次粒子表面にシェル部分となる高分子の層が存在し、4)該微粒子の粒径の平均が30nmから200nmであり、5)該微粒子の粒径の変動係数が0.25より小である、ことを特徴とするコアシェル型酸化セリウム微粒子。
(2)前記高分子の層が、1)ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)又はこれらの関連高分子で構成され、2)その層が洗浄してもコア部分の二次粒子から分離することがない、かつ、3)その層が15wt%から25wt%の割合で存在している、前記(1)に記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子。
(3)一次粒子径が1から3nmである、前記(1)に記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子。
(4)前記(1)から(3)のいずれかに記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子を含有する乾燥粉体であって、1)分散剤を添加していない分散媒に良好に分散する性質を有する、2)分散媒中で1日以上静置させても沈降が認められない、3)熱処理を加えても分散性が良好である、ことを特徴とするコアシェル型酸化セリウム微粒子粉体。
(5)前記(4)に記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子粉体に、300℃から500℃の温度で熱処理を加えてなる、1)分散剤を添加していない分散媒に良好に分散する性質を有すること、2)分散媒中で1日以上静置させても沈降が認められないこと、を特徴とする酸化セリウム微粒子粉体。
(6)前記(1)から(4)のいずれかに記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子又はコアシェル型酸化セリウム微粒子粉体が分散媒中に分散したことを特徴とするコアシェル型酸化セリウム微粒子分散液。
(7)前記(5)に記載の酸化セリウム微粒子粉体を、分散媒に再分散したことを特徴とする酸化セリウム微粒子分散液。
(8)前記分散媒が、水、エタノール、テルピネオール、エチレングリコールのいずれか一つ、あるいは、複数混合している混合溶液である、前記(6)又は(7)に記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子分散液又は酸化セリウム微粒子分散液。
(9)前記(1)から(8)のいずれかに記載の微粒子、微粒子粉体又は微粒子分散液を含有することを特徴とする紫外線遮蔽作用を有する化粧品。
(10)前記(1)から(8)のいずれかに記載の微粒子、微粒子粉体又は微粒子分散液を分散させたことを特徴とする紫外線遮蔽作用を有する樹脂又は繊維。
(11)前記(1)から(8)のいずれかに記載の微粒子、微粒子粉体又は微粒子分散液を原料として用いてなる酸化セリウム多孔質厚膜を有することを特徴とするガスセンサ。
(12)前記(1)から(3)のいずれかに記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子が、三次元的に集積したことを特徴とする酸化セリウム微粒子集積体、酸化セリウム微粒子フォトニック結晶又は酸化セリウムコロイド結晶。
(13)前記(1)から(8)のいずれかに記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子、酸化セリウム微粒子粉体又は酸化セリウム微粒子分散液を製造する方法であって、セリウムの塩と高分子を高沸点有機溶媒に混合して混合物を得る工程と、その混合物を110℃以上の温度で加熱・還流して酸化セリウム微粒子を析出する工程とを有することを特徴とする、コアシェル型酸化セリウム微粒子、酸化セリウム微粒子粉体又は酸化セリウム微粒子分散液の製造方法。
(14)前記セリウムの塩が、硝酸セリウムである、前記(13)に記載の酸化セリウム微粒子の製造方法。
(15)前記高分子の濃度(単位有機溶媒体積当たりに添加した高分子重量)が、80kg/mから120kg/mである、前記(13)又は(14)に記載の製造方法。
(16)前記高分子のポリエチレングリコール換算での平均分子量が、4000から20000である、前記(13)から(15)のいずれかに記載の製造方法。
(17)高分子の平均分子量を大きくすることにより、酸化セリウム微粒子の粒径を小さくする、前記(13)から(16)のいずれかに記載の製造方法。
(18)前記高分子が、PVP又はHPCである、前記(13)から(17)のいずれかに記載の製造方法。
(19)前記有機溶媒が、エチレングリコールである、前記(13)から(18)のいずれかに記載の製造方法。
【0014】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明で云うコアシェル型酸化セリウム微粒子とは、酸化セリウムの一次粒子が球状に集合した二次粒子表面に高分子層が存在する微粒子を意味するものとして定義されるものであり(図8参照)、一次粒子又は一次粒子が不規則に凝集した二次粒子の表面に高分子が存在するものとは異なる。特許文献6には、一次粒子又は凝集体の表面に高分子化合物が被覆した複合粒子が開示されているが、この一次粒子又は凝集体は、球状ではなく、不均一な形状をしている。それというのも、上記文献に開示されている製造方法では、予め合成された金属酸化物微粒子をビーズミルなどの分散機を使って分散及び解砕しているためである。
【0015】
この分散工程では、一次粒子あるいは一次粒子の凝集粒子に解砕されるが、解砕後の一次粒子の凝集粒子は、球状で、大きさが揃うことは有り得ない。更に、被覆する高分子の割合は25wt%以上であることが上記文献に記載されているが、本発明では、後述するように、15から25wt%であって、高分子の層が25wt%より少ない。これは、遊離しやすい高分子は洗浄により取り除かれているためである。このことも、上記文献の複合粒子とは大きく異なる点である。コア部分の直径が85nmのときシェル部分の層の厚さは約10nmである。
【0016】
本発明は、コアシェル型酸化セリウム微粒子の粒径の平均が30nmから200nmであるコアシェル型酸化セリウム微粒子であって、コアシェル型酸化セリウム微粒子の変動係数が0.25以下であり、かつ、コア部分である二次粒子の形状が球状であること、その二次粒子の形状は球状であって、大きさが揃っていること、酸化セリウム二次粒子表面に、シェル部分である高分子が付着していること、を特徴とするものである。また、本発明は、コアシェル型酸化セリウム微粒子分散液であって、上記のコアシェル型酸化セリウム微粒子が分散媒中に分散したこと、を特徴とするものである。
【0017】
また、本発明は、上記のコアシェル型酸化セリウム微粒子粉液であって、1日以上静置させても沈降が認められないこと、分散剤を添加していない分散媒に良好に分散する性質を有すること、熱処理を加えても分散性が良好であること、を特徴とするものである。更に、本発明は、コアシェル型酸化セリウム微粒子の製造方法であって、セリウムの塩と高分子を高沸点有機溶媒に混合して混合物を得る工程と、その混合物を110℃以上の温度で加熱・還流して酸化セリウム微粒子を析出する工程とを有する、酸化セリウム微粒子又は酸化セリウム微粒子分散液の製造方法であって、前記セリウムの塩が、硝酸セリウムであり、かつ、前記高分子の分子量の大きさによって酸化セリウム微粒子の粒径を制御すること、を特徴とするものである。
【0018】
ここで、コアシェル型酸化セリウム微粒子分散液とは、分散質であるコアシェル型酸化セリウム微粒子が分散媒に分散したものであり、分散液の代わりに、懸濁液、ゾル、サスペンジョンとも言うことが可能である。また、粘度が高い場合は、ペーストとも言う。まず、本発明のコアシェル型酸化セリウム微粒子分散液の製造方法について説明すると、出発原料となるのは、硝酸セリウム、高沸点有機溶媒、及び高分子である。これらのうち、硝酸セリウムは、市販されているものでよく、一般には、水和物である。
【0019】
金属イオンを添加した酸化セリウム微粒子を得る場合は、硝酸セリウムの他に、金属硝酸塩を添加する。また、高沸点有機溶媒としては、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、グリセリンなどであり、より好ましくはエチレングリコールである。更に、高分子としては、有機溶媒に溶解するものが好ましく、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリエチレングリコール(PEG)などであり、より好ましくは、ポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0020】
これらの原料を混合し、溶解させる。これが、セリウムの塩と高分子を高沸点有機溶媒に混合して混合物を得る工程である。このとき、硝酸セリウムの濃度は、0.4kmol/m以上であることが好ましい。これは、得られる分散液に含まれる酸化物の割合が増えるためであり、歩留まりが向上することとなる。高分子の濃度は、80kg/mから120kg/mであることが好ましい。ここで、高分子の濃度とは、単位溶媒体積当たりに添加した高分子の重量と定義される。80kg/mから120kg/mの範囲である理由は、これより少な過ぎると、酸化セリウム微粒子が凝集し易くなるためであり、コアシェル型でないためである。また、上記範囲より多過ぎると、酸化セリウムの核生成反応が進行しないためである。
【0021】
次に、上記混合物を110から190℃までの温度で加熱・還流する。これが、所定の温度で加熱・還流して酸化セリウムを析出する工程である。一般に、酸化物を析出させる場合、水酸化ナトリウム、アンモニアなどのアルカリなどを加えるが、本発明は、それを必要としないことが特徴である。水酸化ナトリウムなど加えると、最終的に得られるナノ粒子にナトリウムなどが混入する恐れがあるが、本発明では、アルカリなどを必要としないため、そのような不純物の混入は有り得ない。
【0022】
加熱・還流時間は、10分から120分ほどである。加熱・還流時間が短いと、未反応のセリウムイオンが多く残留する可能性があり、逆に長過ぎると、セリウムの有機化合物が生成する可能性がある。このため、10分から120分間ほどの加熱・還流時間が好ましく、より好ましくは、30〜120分間である。加熱・還流中に、混合液は、濁りを増す。所定の時間加熱・還流を行い、冷却する。こうして、高分子が溶解した有機溶媒に、コアシェル型酸化セリウム微粒子が分散した、コアシェル型酸化セリウム微粒子分散液が得られる。
【0023】
コアシェル型金属酸化物微粒子の生成メカニズムは、以下のように考えられる。
1.高分子が均一に溶解している高沸点有機溶媒(ポリオール)中に酸化セリウムの一次粒子が核生成。
2.一次粒子が球状に凝集。このときも、絶えず一次粒子が核生成。
3.凝集粒子(二次粒子)の表面に核生成した一次粒子が球状に集まってくる。
4.このとき、二次粒子の表面で酸化セリウムが触媒として働き高分子及び/又は有機溶媒が、架橋反応を生じて強固な高分子層が形成される。
5.強固な高分子層が十分発達すると、凝集ができなくなり、コアシェル型酸化セリウム微粒子となる。
【0024】
本発明において、コアシェル型酸化セリウム微粒子は、1)そのコア部分は酸化セリウムの一次粒子が球状に集合した二次粒子であり、2)その二次粒子の形状は揃っており、3)その二次粒子表面にシェル部分となる高分子の層が存在し、4)該微粒子の粒径の平均が30nmから200nmであり、5)該微粒子の粒径の変動係数が0.25より小である、ことを特徴付けられるものとして定義される。シェル部分の高分子層は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)又はこれらの関連高分子で構成されたものである。関連高分子とは、PVP同士で架橋した高分子、HPC同士で架橋した高分子、PVPやHPCとポリオールとが架橋した高分子、ポリオール同士が架橋した高分子などである。このような高分子が種々含まれたものである。
【0025】
酸化セリウムが触媒作用を引き起こすには、熱が必要と考えられ、このために、110℃以上の温度での加熱・還流が必要となる。加熱・還流温度が低い場合、例え、一次粒子が生成したとしても、コアシェル型とはならない。一次粒子が凝集しなければ、本発明で云うコアシェル型酸化セリウム微粒子とならない。この場合、未反応の高分子が多く存在するため、溶媒を揮発させると、高分子マトリックス中に一次粒子が取り残された酸化セリウム高分子複合組成物となるが、これは明らかにコアシェル型酸化セリウム微粒子とは異なる。
【0026】
また、例え、凝集が生じても、酸化セリウム表面での触媒反応が無いため、高分子層が形成できず、形態が不均一な凝集粒子となる。特許文献5には、このような金属酸化物高分子複合組成物が開示されているが、これと、本発明とは本質的に異なる。後記する実施例で示すように、ある臨界となる温度より低いとコアシェル型酸化セリウム微粒子が生成しないため、高温での加熱・還流が不可欠である。
【0027】
このとき、上記高分子の分子量を変えることにより、得られるコアシェル型酸化セリウム微粒子の粒径を制御可能である。高分子のゲルパーミッションクロマトグラフィーにより求めたポリエチレングリコール換算の平均分子量が4000から20000の間で、分子量が大きくなるにつれ、酸化セリウムの粒径は小さくなる。高分子の分子量と、酸化セリウムの粒径の相関関係を予め求めておき、所望の粒径の酸化セリウム微粒子を含む分散液を作製することが可能である。
【0028】
上記加熱・還流の直後に得られる、コアシェル型酸化セリウム微粒子分散液では、分散媒は、加熱・還流に用いた有機溶媒となる。すなわち、エチレングリコール(EG)で加熱・還流を行えば、分散媒は、エチレングリコール(EG)である。分散媒を任意の分散媒に変更したい場合は、分散媒の置換を行えばよい。例えば、遠心分離などで、分散媒と分散質とを分離し、分散媒を取り除き、所望の分散媒を加えることにより、分散媒の置換を行うことが可能である。このとき、シェル部分の高分子は洗浄によって、分離するものではなく、コアと不可分のものである。
【0029】
上記加熱・還流で用いた高分子は、分散媒中に残留しており、また、未反応のCeイオンも残っていることが考えられる。このため、余分な高分子などは、遠心分離を施し、溶媒置換を繰り返すことで、除去することが可能である。上記方法より得られる分散液の分散質であるコアシェル型酸化セリウム微粒子は、球状であり、粒径は、ほぼそろっている。ここでの粒径とは、コアシェル型酸化セリウム微粒子の粒子径であり、走査電子顕微鏡(SEM)観察で求められる粒径である。コア部分の二次粒子は、一次粒子の集合体であり、一次凝集体と言う場合もある。一次粒子径は、3nm以下である。コア部分の球状の酸化セリウム微粒子の1つ1つの粒子は、二次粒子であり、一次粒子ではない。また、酸化セリウム微粒子は、1価〜5価の金属イオンが添加されたものであってもよい。例えば、Na、Ca、Y、Gd、Zr、Hf、Nbなどである。
【0030】
酸化セリウム微粒子の形状及び粒径などは、以下の方法で確認できる。加熱・還流直後の分散液について、動的光散乱(DLS)法により、粒径を求めることができる。この粒径は、分散媒のなかで独立して存在する粒子の粒径である。この粒径は、一般には、SEMなどで観察される微粒子の粒子径とは異なる。その理由は、分散媒中で微粒子が更に凝集していることが多く、この場合、微粒子が凝集した粒子の大きさが、結果として現れるからである。
【0031】
二次粒子(微粒子)が凝集したものを二次凝集体と言う場合もある。動的光散乱(DLS)法では、分散媒の屈折率と分散媒の粘度が必要であるが、分散媒の屈折率は文献値を用いることができる。また、分散媒の粘度は、分散液の粘度と同一として、分散液の粘度を測定し、それを使用する。このようにして、平均粒径(daverage)及び標準偏差(s)を求め、変動係数c(=s/daverage)を計算する。また、上記方法より得られる分散液を遠心分離と水やエタノールへの再分散を3回程度行い、例えば、80℃で乾燥させることで、乾燥粉体が得られる。これについて、SEMで観察し、形状、平均粒径、標準偏差を求める。
【0032】
コアシェル型酸化セリウム微粒子の平均粒径は、30nmから200nmであり、その変動係数は0.25以下、好ましくは0.16以下である。これは、乾燥粉体のSEM観察で確認できる。また、分散媒中での粒径は、コアシェル型酸化セリウム微粒子の2倍以下であり、好ましくは1.5倍以下、より好ましくは、1.3倍以下である。分散媒中では、コアシェル型酸化セリウム微粒子は、ほとんど凝集せずに存在することが示される。
【0033】
また、コアシェル型酸化セリウム微粒子の表面には当然ながらシェル部分に高分子層が存在している。これは、上記乾燥粉体について、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)分析及び熱重量(TG)分析で調査し、確認することができる。上記乾燥粉体は、遠心分離と水やエタノールへの再分散を3回程度行っていることから、コアシェル型酸化セリウム微粒子と無関係な、余分な高分子は除去されている。また、乾燥を行っていることから、分散媒も十分除去されている。高分子層の割合は15から25wt%が好ましく、より好ましくは、19から22wt%である。
【0034】
よって、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)で観察される酸化セリウム以外の吸収ピークは、酸化セリウム微粒子表面に存在するものに起因するものであり、それは、高分子の吸収と似ていること、及び、分散媒の沸点よりも高温で重量変化が存在することにより、酸化セリウム微粒子の表面に高分子が付着しているとの結論が導かれる。ここで、高分子としては、例えば、PVP、HPC、PVP同士で架橋した高分子、HPC同士で架橋した高分子、PVPやHPCとポリオールとが架橋した高分子、ポリオール同士が架橋した高分子又はそれらと酸化セリウムとが反応したものが好ましい。微粒子表面の高分子は、透過電子顕微鏡(TEM)でも確認できることがある。
【0035】
高分子が酸化セリウム表面に付着していることにより、本発明で得られる酸化セリウム微粒子は、化学的に不活性であることが考えられる。紫外線遮蔽剤としては、直接、人間等の皮膚に触れるため、微粒子は、化学的に不活性であることが望まれる。よって、本発明で得られる酸化セリウム微粒子は、紫外線遮蔽剤として優れていると考えられる。特に、PVPは、人体に対して安全無害であることが知られており、PVPを表面に被覆した酸化セリウム微粒子分散液は、紫外線遮蔽剤として有望である。
【0036】
紫外線遮蔽効果のある酸化セリウム微粒子を樹脂などに分散させ、繊維状、バルク状など任意に成形したものなども紫外線遮蔽の効果が期待される。酸化セリウム微粒子分散液は、非常に安定であるので、それから容易に酸化セリウム多孔質厚膜が形成しやすく、しかも、その厚膜は粒径の揃った球状微粒子から構成されたものが得られる。この微細構造によりガスセンサとして有効に機能する。
【0037】
乾燥粉体を分散媒に再分散しても容易に分散する。これは、一般の粉体と異なる特性である。一般には、粉体を一度乾燥させると、強固に凝集するため、粉体を再分散させようとしても容易に分散しない。しかし、本発明の乾燥粉体は、例えば、超音波ホモジナイザーを使うだけで、分散剤は必要としないで、容易に分散させることができる。
【0038】
このときの分散媒は、任意であり、好適には、例えば、水、エタノール、テルピネオール、エチレングリコールのいずれか一つ、あるいは、複数混合している混合溶液、である。これらの分散媒に、上記コアシェル型酸化セリウム微粒子を再分散させても、分散媒中での粒径は、SEM観察で求めた粒子径の2倍以下、好ましくは1.5倍以下、より好ましくは、1.3倍以下であり、コアシェル型酸化セリウム微粒子は、凝集せずに存在する。このような、再分散容易性は、コアシェル型酸化セリウム微粒子のシェル部分に高分子が存在していることに起因すると考えられる。また、乾燥粉体に、300℃から500℃で熱処理を加えても、良好な分散性は保持される。これは、熱処理を加えても、酸化セリウム微粒子の表面に高分子又は有機化合物がわずかに存在していることに起因すると考えられる。
【0039】
更に、500℃より更に高温で焼成すると、シェル部分に相当する高分子が完全に除去される。こうなると、球状の酸化セリウム微粒子となる。この酸化セリウム微粒子は、一次粒子が球状に集積した二次粒子であり、これらがガスセンサのガス検出部を構成すれば、ガスの拡散が容易になり、ガスセンサの感度が上がることが期待される。酸化セリウムの一次粒子が高分子マトリックス内に単に含有した微粒子の場合、焼成した後は、酸化セリウムの一次粒子だけが残り、これが凝集したとしても、球状になりえない。これを用いてガスセンサを作製しても、上記構造のガスセンサを作製できない。従って、コアシェル型酸化セリウム微粒子と酸化セリウム高分子複合組成物とは本質的に構造が全く異なるものである。酸化セリウム微粒子が三次元的に集積した集積体は、自己組織的に構造化する。また、この集積体の微粒子が周期的に配列すれば、集積体そのものがフォトニック結晶であり、様々な光学的な機能を有する集積体となる。
【0040】
集積体が、フォトニック結晶であるかどうかは、紫外可視近赤外分光により確認することができる。フォトニック結晶には、フォトニックバンドギャップが存在し、それに起因する反射が存在する。周期構造に起因する反射が紫外可視近赤外分光により確認できれば、集積体がフォトニック結晶である可能性が極めて高くなる。本発明により得られる集積体の紫外可視近赤外分光の結果、周期構造に起因すると考えられる反射が観察され、集積体は、フォトニック結晶と考えられる。微粒子が周期的に配列した集積体は、コロイド結晶とも呼ばれている。
【0041】
このような結果から、逆に、コア部分である二次粒子が球状で粒径が揃っていることが示された。それは、例え、コアシェル全体として球状単分散であっても、コア部分がそうでない場合、このような現象は見られないためである。
【発明の効果】
【0042】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)粒径が50nmから200nm程度、粒径分布(粒径の標準偏差)が小さく、球状、液中での分散性が良好であるコアシェル型酸化セリウム微粒子及びその分散液を提供することがでる。
(2)容易に再分散するコアシェル型酸化セリウム微粒子の乾燥粉体を提供することがでる。
(3)本発明のコアシェル型酸化セリウム微粒子分散液は、熱処理を加えても、良好な分散性が保持される。
(4)任意の分散媒に分散したコアシェル型酸化セリウム微粒子分散液を提供できる。
(5)高粘度であるコアシェル型酸化セリウム微粒子分散液、すなわち、コアシェル型酸化セリウム微粒子ペーストを提供できる。
(6)コアシェル型酸化セリウム微粒子及び当該酸化セリウム微粒子の分散液の簡便な製造方法を提供できる。
(7)微粒子分散液の製造時に添加する高分子の分子量を変えることにより、製造される微粒子の平均粒径を任意に制御することができる。
(8)高濃度の酸化セリウム微粒子分散液が得られる。
(9)焼成して、高分子を酸化除去することにより、球状の酸化セリウム微粒子が得られる。
(10)球状の酸化セリウム微粒子はフォトニック結晶の原料となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
30cmのエチレングリコール(EG)(和光純薬製)に、ポリビニルピロリドン(PVP)及びCeの塩を加え、撹拌した。加えたPVPの濃度は、16kg/m又は120kg/mとした。平均分子量がカタログ値で10000、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)による分析値で4350(ポリエチレングリコール換算)のPVP(シグマアルドリッチ製)を用いた。Ceの塩は、(NHCe(NO(和光純薬製)又はCe(NO・6HO(高純度化学製)を用い、その濃度は0.080、0.400、0.600kmol/mとした。
【0045】
混合物を加熱し、190℃で所定の時間加熱・還流した。実験条件を表1に示す。加熱・還流実験中に、茶色のガスが発生し、その後、溶液は、白濁した。所定時間加熱・還流後、白濁した混合溶液が得られた。次に、未反応物や、余分なPVPを除去するために、白濁した溶液の一部を3000から10000rpmの条件で遠心分離し、水及びエタノールで洗浄した。洗浄後、80℃で乾燥させ、粉体を得た。得られた粉体について、X線回折(XRD)により生成物を同定した。
【0046】
また、表1に、XRDで同定した生成物を示す。サンプル1−1から1−3の生成物は、酸化セリウムであった。サンプル1−4には、酸化セリウムだけでなく、Ce(HCOO)も存在した。サンプル1−6,7は、酸化セリウムではなかった。このことから、酸化セリウムを得るための必要条件として、セリウムの塩としては、Ce(NO・6HOが好適であることが分かった。酸化セリウムのみが得られたのは、サンプル1−1,2,3,5であった。
【0047】
原料濃度は、高い方が好ましい。これは、1回の実験で得られる酸化物微粒子が多い方が好ましいためである。よって、硝酸セリウムの濃度が0.400kmol/m以上を前提に考えると、PVP濃度が120kg/mであること又は加熱・還流時間が10〜20分間と短いことは、酸化セリウムを得るための十分条件であることが分かった。加熱・還流時間については、短いと、未反応のセリウムイオンが存在するため、できるだけ長い方が好ましい。ただし、長過ぎると、酸化セリウムがエチレングリコールなどと反応し、Ce(HCOO)などが生成するため、好適な加熱・還流時間が存在する。実施例1での実験条件では、加熱・還流時間は10分から120分間が好ましいという結論が得られた。
【0048】
【表1】

【実施例2】
【0049】
30cmのEG(和光純薬製)に、平均分子量がカタログ値で10000、GPCによる分析値で4350(ポリエチレングリコール換算)のPVP(シグマアルドリッチ製)及びCe(NO・6HO(高純度化学製)を加え、撹拌した。加えたPVPの濃度は16kg/mから160kg/mとした(表2を参照)。Ce(NO・6HOの濃度は、0.400kmol/mとした。混合物を加熱し、190℃で10〜20分間加熱・還流した。ただし、サンプル2−4は、加熱・還流時間を120minまで延ばしても、次に示す反応が生じなかった。
【0050】
サンプル2−1は、実施例1で示したサンプル1−2と同じものである。サンプル2−1から3では、加熱・還流実験中に、茶色のガスが発生し、その後、溶液は、白濁した。所定時間加熱・還流後、白濁した混合溶液(分散液)が得られた。次に、未反応物及び余分なPVPを除去するために、白濁した溶液の一部を3000rpmから10000rpmの条件で遠心分離し、水及びエタノールで洗浄した。これを80℃で乾燥させ、粉体を得た。
【0051】
分散液の粒度分布をDLS法により調べた。DLS法では、粒径を求めるために、溶媒の粘度及び屈折率が必要である。B型粘度計を用いて、分散液の粘度を調べ、それを溶媒の粘度として用いた。B型粘度計は、コーンアンドプレートタイプであった。また、屈折率として、エチレングリコールの値(1.429)を用いた。平均粒径は、キュムラント解析法により求めた。80℃で乾燥した粉体については、XRD、SEMによりキャラクタリゼーションした。また、分散液の長期安定性については、容器にサンプルを入れ、放置し、観察した。表2に実験条件及び実験結果を示す。
【0052】
前述の通り、サンプル2−4は、白濁せず、分散液が得られなかった。サンプル2−1から3では、生成物は、酸化セリウムであった。サンプル2−1では、分散質の平均粒径は1330nmと大きく、SEM観察の結果もそれを支持し、しかも、すぐに沈殿した。一方、サンプル2−2,3では、分散質の平均粒径は、約110nmであった。サンプル2−2,3のSEM写真を、それぞれ図1、2に示す。粒径が約110nmの球状の微粒子が観察され、DLSで求められた平均粒径と一致した。このことから、粒径110nmの球状のコアシェル型酸化セリウム微粒子が独立して分散液中に分散していることが明らかとなった。
【0053】
また、PVP濃度が小さいと、安定な分散液が得られないこと及びPVP濃度が大きいと、反応が生じないことが分かり、安定なコアシェル型酸化セリウム微粒子分散液を得るための好適なPVP濃度が存在することが分かった。この実施例から、その十分条件として、PVP濃度は、80kg/mから105.6kg/mであることが示された。また、次に示す実施例から、PVP濃度は、120kg/mであることも安定な酸化セリウム微粒子分散液を得るための十分条件であることが示された。
【0054】
【表2】

【実施例3】
【0055】
30cmのEG(和光純薬製)に、種々の平均分子量のPVPを加え、撹拌した。PVPの平均分子量のカタログ値とGPCによる分析値(ポリエチレングリコール換算)を表3に示す。PVPのAからFの順に、GPC分析による平均分子量は増大した。加えたPVPの濃度は、120kg/mとした。Ce(NO・6HOの濃度は、0.600kmol/mとした。混合物を加熱し、190℃で10〜30分間加熱・還流した。
【0056】
表4に示す全てのサンプルで、加熱・還流実験中に、茶色のガスが発生し、その後、溶液は、白濁した。所定時間加熱・還流後、白濁した混合溶液(分散液)が得られた。分散液については、エチレングリコール(EG)で10倍に希釈したものも作製した。次に、未反応物及び余分なPVPを除去するために、白濁した溶液の一部を3000rpmから10000rpmの条件で遠心分離し、水及びエタノールで洗浄した。これを80℃で乾燥させ、粉体を得た。
【0057】
実施例2に示した方法と同様の方法で、分散液の平均粒径、粘度、長期安定性を評価した。変動係数(c)については、DLS法で平均粒径(d)と標準偏差(s)をContin法によるヒストグラム解析で求め、c=s/dで求めた。また、粉体については、SEM観察結果から、粒子形状、平均粒径、変動係数cを求めた。生成物の同定は、実施例1、2と同様の方法で行った。平均粒径dは、SEM写真に撮影された90個以上の微粒子の粒径の平均値とした。変動係数(c)は、粒径の分布を求め、それの標準偏差sを求め、c=s/dで求めた。生成物は、XRDにより確認した。
【0058】
サンプル3−1から6の生成物は、全てCeOであった。微粒子の形状は、SEM観察により、サンプル3−1のみ不均一な形状であり、それ以外は球状であることが分かった(図3から7)。サンプル3−6のSEM写真では、粒子と粒子の間に繊維状のものが観察された。球状であるサンプルについて、SEM写真から平均粒径を求めると、表4のようになった。
【0059】
分子量(GPC分析値)が18000までは、分子量が増えるにつれ、平均粒径が小さくなることが分かった。分子量(GPC分析値)が18000を超えると、逆に粒径は大きくなった。変動係数については、サンプル3−2から6まで全て0.15以下であり、粒径分布が狭い、すなわち、ほぼ単分散であることが分かった。よって、PVPの分子量を制御することにより、ほぼ単分散であるコアシェル型酸化セリウム微粒子の平均粒径を自由に変えることが可能であることが示された。
【0060】
次に、分散液の特性について説明すると、サンプル3−1から6の分散液の粘度は、分子量とともに増加した。DLSで求めた平均粒径は、サンプル3−1と6を除き、SEM観察結果から求めた平均粒径とほぼ一致した。よって、球状のコアシェル型酸化セリウム微粒子が独立して分散液中に分散していることが、実施例3においても示された。
【0061】
サンプル3−1は、平均粒径が大きかった。これは、微粒子の形状が不均一で凝集体であることと一致した。また、これらは、すぐ沈殿し、分散液として安定性がなかった。サンプル3−6については、SEM観察結果からの平均粒径よりDLSで求めた平均粒径の方が大きかった。これは、図7に示したように、粒子と粒子が繊維状のもので結合されたものが存在するため、平均粒径として大きくなったと考えられる。
【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
◎ 一ヶ月経過しても沈殿物が認められない
○ 一ヶ月経過でわずかに沈殿物が認められる
△ 一ヶ月経過で多くの沈殿物が認められる
× 2,3日ほどで沈殿物が認められる
*原液での測定結果は、高粘度のため正確に求められなかった。このため、EG(エチレングリコール)で10倍に希釈したデータを用いた。
【実施例4】
【0065】
実施例3で示したサンプル3−2と同じ方法で、分散液を作製し、次に、分散媒置換の実験を以下の手順で行った。遠心分離で分散媒と分散質を分離し、分離後の分散質にテルピネオールを加え、超音波ホモジナイザーを使い分散させた。分散時間は、4minであり、冷却しながら、分散させた。
【0066】
分散媒置換後の分散液について、DLSにより平均粒径を求めた。その結果を表5に示す。粒径は、サンプル3−2とほぼ同じであった。よって、分散媒置換しても、酸化セリウム微粒子は、凝集なしに分散していることが確認できた。また、非常に安定しており、10日以上放置しても分離しなかった。
【0067】
【表5】

【実施例5】
【0068】
実施例3で示したサンプル3−2の粉体(分散液から分離後の粉体)及びエチレングリコールの体積は異なるが硝酸セリウムやPVPの濃度がサンプル3−2と同じ条件で作製した粉体について、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)、熱重量(TG)及び透過電子顕微鏡(TEM)によりキャラクタリゼーションを行った。TGの結果、220℃付近で15%近い重量減少が認められた。すなわち、分散媒の沸点(190℃)よりも高温で重量減少が生じた。
【0069】
乾燥粉体を900℃まで加熱することにより、22wt%の重量減少があった。作製日が異なる別のサンプルでは19wt%の重量減少であり、おおよそ19から22wt%の重量減少があることが分かった。また、FTIRの結果、酸化セリウムに起因するピーク以外のピークが観察された。上記乾燥粉体は、遠心分離と水やエタノールへの再分散を3回行っていることから、酸化セリウム微粒子と無関係な余分な高分子は除去されている。また、乾燥を行っていることから、分散媒も十分除去されている。
【0070】
それによって、FTIRで観察された酸化セリウム以外の吸収ピークは、コアシェル型酸化セリウム微粒子表面に存在するものに起因するものであること、及び、それは高分子の吸収と似ていること、が示された。また、TEM観察の結果を図8に示す。粒子表面(シェル部分)に、5nm程度の高分子の層らしいものが観察された。これは、長時間のTEM観察により層が減少することも明らかになっており、電子線により分解していることも示唆された。以上のことから総合的に考えて、酸化セリウム微粒子の表面に高分子が存在していること、すなわち、コアシェル型であることが明らかとなった。
【0071】
サンプル3−2の粉体のXRDパターンのピークの半値幅から、Hallの式を使って結晶子(一次粒子)の大きさを求めると、約3nm程度であることが分かった。TEM観察の結果からも、一次粒子の大きさは1から2nm程度であることが確認された。また、一次粒子間には隙間などなく、高密度に一次粒子が集合した二次粒子であることが分かった。酸化セリウム微粒子の表面にPVPが付着していることから、酸化セリウムが、直接人体と触れることがなく、化学的に不活性な紫外線遮蔽剤であることが予想される。
【実施例6】
【0072】
実施例3で示したサンプル3−2の粉体(分散液から分離後の粉体)を、水、エタノール、テルピネオール、エチレングリコールに再分散した。再分散に用いた粉体は、乾燥後の粉体である。粉体と分散媒の割合は、0.1gの粉体に対して5cmの分散媒とした。粉体を分散媒に入れ、超音波ホモジナイザーを使って、分散させた。分散時間は、3から10minであり、冷却しながら、分散させた。このとき、分散剤は、用いなかった。
【0073】
分散後の分散液中のコアシェル型酸化セリウム微粒子の粒径について、DLS法を用いて調べた。その結果を表6に示す。測定前には、手で二、三度振って撹拌した。分散後1及び8日経過後の粒径は、115〜135nmであり、サンプル3−2の粉体の粒径と同じかわずかに大きいだけであった。このことから、乾燥後の粉体であっても、再分散が容易であり、再分散後の酸化セリウム微粒子の平均粒径は、SEM観察で求めた粒子径の1から1.3倍であることが分かった。
【0074】
すなわち、球状の酸化セリウム微粒子がほぼ凝集することなしに、分散していることが分かった。7日間静置しても、テルピネオールに分散したサンプル6−3では、分離が認められなかった。水やエタノールに分散したサンプル6−1,2についても、わずか上部に透明層があるだけであった。手で二、三度軽く振るだけで、すぐに均一になった。このことから、乾燥粉体を再分散した分散液は、長期安定性があると判断された。
【0075】
【表6】

【実施例7】
【0076】
30cmのEG(和光純薬製)に、PVP(表3のPVP B)及びCe(NO・6HO(高純度化学製)を加え、撹拌した。加えたPVPの濃度は、120kg/mとした。Ce(NO・6HOの濃度は、0.600kmol/mとした。混合物を加熱し、190℃で120分間加熱・還流した。実施例1のサンプル1−5と同じ作製条件である。加熱・還流実験中に、茶色のガスが発生し、その後、溶液は、白濁した。所定時間加熱・還流後、白濁した混合溶液(分散液)が得られた。次に、未反応物及び余分なPVPを除去するために、白濁した溶液の一部を18000rpmの条件で遠心分離し、水及びエタノールで洗浄した。これを80℃で乾燥させ、粉体を得た。
【0077】
実施例2及び3に示した方法と同様の方法で、表7の各結果を求めた。生成物は、実施例1でも示したように、酸化セリウムであった。DLS法で求められた平均粒径は、110nmであった。一方、SEM観察から求めた平均粒径は、約130nmであり、DLS法で求めた粒径とほぼ同じであった。このことから、コアシェル型酸化セリウム微粒子の球状の微粒子は、凝集せず存在することが分かった。
【0078】
加熱・還流時間が30min以下であっても、120minであっても、わずかに粒径が大きくなる程度で得られる微粒子の特性としてほとんど違いがなかった。ただし、得られる微粒子の重量は、前者のほうが少なかった。すなわち、歩留まりが良くなかった。加熱・還流時間を延ばすことにより、未反応のセリウムイオンを少なくし、かつ、得られる微粒子の重量が増えた。
【0079】
実験条件とその結果得られる微粒子及び分散液の関係を示したのが図9である。硝酸セリウム濃度が0.400kmol/m以上の条件において、得られる微粒子が酸化セリウムであって、かつ、分散性に優れているための必要条件は、PVP濃度が80kg/m以上である。得られる微粒子が酸化セリウムであって、かつ、分散性に優れていて、かつ、歩留まりが良いための必要条件は、PVP濃度が80kg/m以上、かつ加熱・還流時間が30分より大きい、という条件である。
【0080】
【表7】

【実施例8】
【0081】
実施例7で得られた粉体を水に再分散させた再分散液(サンプル8−1)と、実施例7で得られた粉体を一度300℃4時間空気中で熱処理をした粉体を水に再分散させた再分散液(サンプル8−2)の分散液中での平均粒径を、DLS法により求めた。この結果を表8に示す。分散液は、粉体0.1gを水5cmに加え、超音波ホモジナイザーを用いて10minの条件で分散させ得た。
【0082】
サンプル8−1及び8−2の分散液中での平均粒径は、いずれも、SEM観察で求めた粒子径の1.2倍以下であり、分散液中でコアシェル型酸化セリウム微粒子の凝集はほとんどないことが分かった。このことから、熱処理しても粉体の良好な分散性は保持されることが分かった。300℃又は500℃4時間空気中での熱処理を加えた粉体のFTIR結果から、300℃又は500℃4時間空気中の熱処理をした粉体の表面にも、熱処理を加えていない粉体とほぼ同じ構造を有する高分子又は有機化合物の極薄い層が付着していることが示唆された。この付着した高分子又は有機化合物の存在が、分散性の保持に起因していると推察された。
【0083】
【表8】

【実施例9】
【0084】
30cmのEG(和光純薬製)に、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(分子量:15000から30000(和光純薬製))及びCe(NO・6HO(高純度化学製)を加え、撹拌した。加えたHPCの濃度は120kg/mとした。Ce(NO・6HOの濃度は0.600kg/mとした。混合物を加熱し、190℃で10分間加熱・還流した。加熱・還流実験中に、茶色のガスが発生し、その後、溶液は、白濁した。所定時間加熱・還流後、白濁した混合溶液(分散液)が得られた。次に、未反応物及び余分なHPCを除去するために、白濁した溶液の一部を18000rpmの条件で遠心分離し、水及びエタノールで洗浄した。これを80℃で乾燥させ、粉体を得た。
【0085】
実施例2及び3に示した方法と同様の方法で表9の各結果を求めた。生成物は、酸化セリウムであることがXRDにより確認できた。粉体のSEM観察(図10)から微粒子の形状は球状であることが確認できた。また、平均粒径は、90.1nmであり、その変動係数は0.223であった。分散液の平均粒径は170.6nmであり、SEM観察から求められる平均粒径の約1.89倍であった。以上のことから、PVPの代わりに、HPCを用いて合成しても、分散液中での粒径はPVPを使った場合と比べ大きいが、安定性のある分散液が得られることが分かった。
【0086】
【表9】

【実施例10】
【0087】
実施例6で示した6−2を50℃に加熱して、エタノールを蒸発させ、針状の結晶状サンプル(サンプル10−1)を得た。これを光学顕微鏡で観察した結果を図11に、SEMで観察した結果を図12に示す。酸化セリウム微粒子が三次元的に集積していることが図11及び12から分かる。また、図11では、重なっている下側の集積体の亀裂が上側の集積体を通してみることができる。このことから、この集積体は可視光の透過性を有すると結論できた。
【0088】
サンプル10−1について、紫外可視光域での反射率を顕微紫外可視近赤外分光光度計により測手した結果を図13に示す。333nm付近にピークが存在する。これは、酸化セリウム微粒子の周期配列に起因するピークと考えられる。よって、サンプル10−1は、フォトニック結晶である可能性が高いことが示された。
【実施例11】
【0089】
実施例8で用いたサンプル8−1と同じ方法で作製した分散液を使って、石英ガラス上に薄膜を作製し、それについて紫外可視光の吸収スペクトルを測定した結果を図14に示す。紫外線領域の400nm以下の光をほとんど透過しない、すなわち、吸収していることが分かる。これによって、酸化セリウム微粒子は、紫外線遮蔽効果を有することが確認された。
【実施例12】
【0090】
酸化セリウム微粒子分散液からスクリーン印刷用ペーストを作製し、それをスクリーン印刷により基板上に厚膜を形成した。得られた厚膜を1000℃で焼成し、基板上に形成された焼成厚膜を得た。焼成厚膜の微細構造を図15に示す。粒径の揃った粒子の多孔質厚膜であることが分かる。
【0091】
基板には予め電極が設けており、焼成厚膜を所定の温度に加熱し、空気中での焼成厚膜の抵抗を測定した。次に、一酸化炭素ガスを含む空気を導入し、抵抗変化を調べた。その結果を図16に示す。一酸化炭素ガスを含む空気を導入するとすぐに抵抗が減少した。また、次に、一酸化炭素を含まない空気に切り替えるとすぐにもとの抵抗に戻った。このことから、本発明のコアシェル型酸化セリウム微粒子を原料として作製した多孔質厚膜は、ガスセンサとして機能することが確認できた。
【実施例13】
【0092】
実施例3のサンプル3−2と加熱・還流時間以外は同じ方法で作製した粉体(加熱・還流時間120min)を800℃2時間空気中で熱処理を加えたサンプル13−1のSEM観察結果を図17に示す。この温度では、ほとんどの高分子層が燃焼しており、粉体にほとんど残留していない。このため、コアシェルではなく、ほぼコアだけの酸化セリウム微粒子のSEM像であり、球状で大きさがほぼ揃っていることが分かった。
【実施例14】
【0093】
30cmのEG(和光純薬製)に、平均分子量がカタログ値で10000のPVP(シグマアルドリッチ製)及びCe(NO・6HO(高純度化学製)を加え、撹拌した。加えたPVPの濃度は、120kg/mとした。Ce(NO・6HOの濃度は、0.600kmol/mとした。
【0094】
混合物を加熱し、種々の温度で加熱・還流した。実験条件を表10に示す。サンプル14−1から14−5までは、加熱・還流後の液は白濁していたため、実施例2とほぼ同様の方法で、分散液から微粒子を分離し、SEMやXRDによるキャラクタリゼーションを行った。サンプル14−6、14−7は加熱・還流後も白濁しなかったため、サンプル14−6について、150℃で乾燥機を使って乾燥又は80℃でエバポレータによる乾燥を行い、SEMやXRDによるキャラクタリゼーションを行った。150℃では、すぐに溶媒が揮発し、乾燥体が得られた。
【0095】
【表10】

【0096】
表10で明らかなように、加熱・還流温度が110℃以上と100℃以下では、明らかに異なる結果が得られた。表10の通り、加熱・還流温度が190℃より低くなるにつれ、白濁が開始するのに時間がかかった。また、濁りが強くなるのも温度が低いほうが時間がかかった。110℃以上の加熱・還流温度では、全て球状の粒子が観察され、コアシェル型の微粒子が得られることが示された。
【0097】
一方、100℃以下では、22時間加熱・還流しても白濁しなかった。加熱・還流後の溶液(分散液)は透明感が有り、白濁とはいえなかった。サンプル14−6を150℃で乾燥させた粉体のXRDパターンは酸化セリウム(CeO)の回折ピークが見られ、また、エバポレータを使った80℃で乾燥させた粉体のXRDパターンにも酸化セリウム(CeO)の回折ピークがわずかであるが見られた。
【0098】
これによって、粉体には酸化セリウムが含有することが確認できた。サンプル14−6を150℃で乾燥させた粉体のSEM観察の結果、コアシェル型の粒子は観察されなかった。これによって、得られた粉体は、酸化物と高分子の複合組成物と考えられる。以上のことから、加熱・還流温度が110℃より低い場合は、コアシェル型の微粒子は得られないことが分かった。逆に言い換えると、コアシェル型の酸化セリウム微粒子を得るには、110℃以上の温度が必要であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上詳述したように、本発明は、コアシェル型酸化セリウム微粒子又はそれを含有する分散液及びそれらの製造方法に係るものであり、本発明により、粒径が50nmから200nm程度、粒径分布(粒径の標準偏差)が小さく、球状、液中での分散性が良好であるコアシェル型酸化セリウム微粒子及びその分散液を提供することができる。また、本発明により、上記コアシェル型酸化セリウム微粒子及び当該コアシェル型酸化セリウム微粒子の分散液の簡便な製造方法を提供できる。本発明は、例えば、触媒、フォトニック結晶、ガスセンサ、化学的機械的研磨剤、紫外線遮蔽剤などに応用可能な、酸化セリウム微粒子、それを含む分散液及びその製造方法を提供するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】サンプル2−2のSEM像を示す。
【図2】サンプル2−3のSEM像を示す。
【図3】サンプル3−2のSEM像を示す。
【図4】サンプル3−3のSEM像を示す。
【図5】サンプル3−4のSEM像を示す。
【図6】サンプル3−5のSEM像を示す。
【図7】サンプル3−6のSEM像を示す。
【図8】サンプル3−2の粉体のTEM像、及びエチレングリコールの体積は異なるが硝酸セリウムやPVPの濃度がサンプル3−2と同じ条件で作製した粉体のTEM像を示す。下の図は、高倍率像である。
【図9】実験条件とその結果得られる微粒子及び分散液の関係を示す。
【図10】サンプル9−1のSEM像を示す。
【図11】サンプル10−1の光学顕微鏡像を示す。
【図12】サンプル10−1のSEM像を示す。
【図13】サンプル10−1の顕微紫外可視近赤外分光光度計による測定結果を示す。
【図14】サンプル8−1の分散液から作製した石英ガラス上の薄膜の紫外可視近赤外分光光度計による測定結果を示す。
【図15】焼成厚膜の微細構造を示す。
【図16】雰囲気を空気から一酸化炭素を含む空気に切り換えたときの焼成厚膜の抵抗変化を示す。
【図17】サンプル13−1のコア部分だけの酸化セリウム微粒子(二次粒子のみ)のSEM像を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシェル型酸化セリウム微粒子であって、1)そのコア部分は酸化セリウムの一次粒子が球状に集合した二次粒子であり、2)その二次粒子の形状は揃っており、3)その二次粒子表面にシェル部分となる高分子の層が存在し、4)該微粒子の粒径の平均が30nmから200nmであり、5)該微粒子の粒径の変動係数が0.25より小である、ことを特徴とするコアシェル型酸化セリウム微粒子。
【請求項2】
前記高分子の層が、1)ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)又はこれらの関連高分子で構成され、2)その層が洗浄してもコア部分の二次粒子から分離することがない、かつ、3)その層が15wt%から25wt%の割合で存在している、請求項1に記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子。
【請求項3】
一次粒子径が1から3nmである、請求項1に記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子を含有する乾燥粉体であって、1)分散剤を添加していない分散媒に良好に分散する性質を有する、2)分散媒中で1日以上静置させても沈降が認められない、3)熱処理を加えても分散性が良好である、ことを特徴とするコアシェル型酸化セリウム微粒子粉体。
【請求項5】
請求項4に記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子粉体に、300℃から500℃の温度で熱処理を加えてなる、1)分散剤を添加していない分散媒に良好に分散する性質を有すること、2)分散媒中で1日以上静置させても沈降が認められないこと、を特徴とする酸化セリウム微粒子粉体。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子又はコアシェル型酸化セリウム微粒子粉体が分散媒中に分散したことを特徴とするコアシェル型酸化セリウム微粒子分散液。
【請求項7】
請求項5に記載の酸化セリウム微粒子粉体を、分散媒に再分散したことを特徴とする酸化セリウム微粒子分散液。
【請求項8】
前記分散媒が、水、エタノール、テルピネオール、エチレングリコールのいずれか一つ、あるいは、複数混合している混合溶液である、請求項6又は7に記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子分散液又は酸化セリウム微粒子分散液。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の微粒子、微粒子粉体又は微粒子分散液を含有することを特徴とする紫外線遮蔽作用を有する化粧品。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の微粒子、微粒子粉体又は微粒子分散液を分散させたことを特徴とする紫外線遮蔽作用を有する樹脂又は繊維。
【請求項11】
請求項1から8のいずれかに記載の微粒子、微粒子粉体又は微粒子分散液を原料として用いてなる酸化セリウム多孔質厚膜を有することを特徴とするガスセンサ。
【請求項12】
請求項1から3のいずれかに記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子が、三次元的に集積したことを特徴とする酸化セリウム微粒子集積体、酸化セリウム微粒子フォトニック結晶又は酸化セリウムコロイド結晶。
【請求項13】
請求項1から8のいずれかに記載のコアシェル型酸化セリウム微粒子、酸化セリウム微粒子粉体又は酸化セリウム微粒子分散液を製造する方法であって、セリウムの塩と高分子を高沸点有機溶媒に混合して混合物を得る工程と、その混合物を110℃以上の温度で加熱・還流して酸化セリウム微粒子を析出する工程とを有することを特徴とする、コアシェル型酸化セリウム微粒子、酸化セリウム微粒子粉体又は酸化セリウム微粒子分散液の製造方法。
【請求項14】
前記セリウムの塩が、硝酸セリウムである、請求項13に記載の酸化セリウム微粒子の製造方法。
【請求項15】
前記高分子の濃度(単位有機溶媒体積当たりに添加した高分子重量)が、80kg/mから120kg/mである、請求項13又は14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記高分子のポリエチレングリコール換算での平均分子量が、4000から20000である、請求項13から15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
高分子の平均分子量を大きくすることにより、酸化セリウム微粒子の粒径を小さくする、請求項13から16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
前記高分子が、PVP又はHPCである、請求項13から17のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
前記有機溶媒が、エチレングリコールである、請求項13から18のいずれかに記載の製造方法。

【図9】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図16】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図15】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2008−115370(P2008−115370A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262578(P2007−262578)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】