説明

コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子

【課題】外殻部が有機基を有するケイ素化合物により構成され、平均細孔径が8nm以下のメソ細孔構造を有する、コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子、及びその効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】〔1〕外殻部がメソ細孔構造を有するコアシェル構造のシリカ粒子であって、該外殻部の平均厚みが5〜700nmであり、該粒子の平均粒子径が0.05〜10μmであり、該外殻部が有機基を有するケイ素化合物により構成され、その内部に水不溶性物質(a)を包含してなり、かつ該メソ細孔の平均細孔径が1〜8nmである、コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子、及び〔2〕水不溶性物質、第四級アンモニウム塩、及び有機基を有しかつ加水分解によりシラノール化合物を生成するシリカ源を含有する分散液を調製し、10〜100℃で撹拌して、第四級アンモニウム塩とシリカを含む複合体を析出させ、該複合体から第四級アンモニウム塩を除去する、コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質構造をもつ物質は高い表面積を有するため、触媒担体、酵素や機能性有機化合物等の固定化担体として広く使用されている。特に、多孔質構造を形成する細孔の細孔径の分布がシャープである場合、分子篩としての作用が発現し、構造選択性を有する触媒担体としての利用や、物質分離剤、徐放性担体への応用が可能となる。かかる応用のために、均一で微細な細孔を有する多孔体が求められている。
均一で微細な細孔を有する多孔体として、メソ領域の細孔を有するメソポーラスシリカが開発され、前記用途の他に、ナノワイヤー、半導体材料、光エレクトロニクスへの応用等の分野での利用が注目されている。
【0003】
メソ細孔構造を有するシリカとして、外殻がメソ細孔構造を有し内部が中空のシリカ粒子が知られている。
非特許文献1及び2にはトリメチルベンゼンの乳化滴を利用した中空メソポーラスシリカ粒子が開示されているが、メソ細孔構造規定剤として中性のポリマーを用いているため、細孔構造の規則性が低く、BET比表面積も小さい。
非特許文献3及び4の中空メソポーラスシリカ粒子は、反応初期に酸で中和することで粒子形成反応を止めて合成されているため、粒子径の分布がブロードである。
また、ケイ素原料として、非特許文献1及び2では水ガラスを使用し、非特許文献3及び4ではテトラエトキシシランを使用しているため、粒子外殻に有機基は存在しない。
一方、非特許文献5には、外殻部が有機基を有し、かつ平均細孔径10.2nm以上のメソ細孔構造を有するコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子が開示されているが、コアが液体のトリメチルベンゼンである。また、非特許文献5の方法では、メソ細孔構造規定剤として中性のトリブロックコポリマーを使用しているため、平均細孔径が10nm以下のメソポーラスシリカ粒子を得ることは困難である。
【0004】
【非特許文献1】Qianyano Sun他、Adv.Mater.、第15巻、第1097頁(2003年)
【非特許文献2】Nicole E.Botterhuis他,Chem.Eur.J.,第12巻、第1448頁(2006年)
【非特許文献3】Puyam S.Singh他,Chem.Lett.,第101頁(1998年)
【非特許文献4】Christabel E.Fowler他,Chem.Commun.,第2028頁(2001年)
【非特許文献5】Xufeng Zhou他、Chem.Mater.,2007,19,1870−1876
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、外殻部が有機基を有するケイ素化合物により構成され、平均細孔径が8nm以下のメソ細孔構造を有する、コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の〔1〕及び〔2〕を提供する。
〔1〕外殻部がメソ細孔構造を有するコアシェル構造のシリカ粒子であって、該外殻部の平均厚みが5〜700nmであり、該粒子の平均粒子径が0.05〜10μmであり、該外殻部が有機基を有するケイ素化合物により構成され、その内部に水不溶性物質(a)を包含してなり、かつ該メソ細孔の平均細孔径が1〜8nmである、コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子。
〔2〕下記工程(I)、(II)及び(III)を含む、外殻部がメソ細孔構造を有し、水不溶性物質(a)を包含してなるコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子の製造方法。
工程(I):水不溶性物質(a)を0.01〜20質量%、下記一般式(1)及び(2)で表される第四級アンモニウム塩から選ばれる1種以上(b)を0.1〜100ミリモル/L、及び有機基を有しかつ加水分解によりシラノール化合物を生成するシリカ源(c)を0.1〜100ミリモル/L含有する分散液を調製する工程
[R1(CH33N]+- (1)
[R12(CH32N]+- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、Xは1価の陰イオンを示す。)
工程(II):工程(I)で得られた分散液を10〜100℃の温度で撹拌して、第四級アンモニウム塩とシリカを含む複合体を析出させる工程
工程(III):工程(II)で得られた複合体から第四級アンモニウム塩を除去する工程
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外殻部が有機基を有するケイ素化合物により構成され、平均細孔径が8nm以下のメソ細孔構造を有する、コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子、及びその効率的な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子]
本発明のコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子(以下、「コアシェルシリカ粒子」ともいう)は、外殻部がメソ細孔構造を有するコアシェル構造のシリカ粒子であって、該外殻部の平均厚みが5〜700nmであり、該粒子の平均粒子径が0.05〜10μmであり、該外殻部が有機基を有するケイ素化合物により構成され、その内部に水不溶性物質(a)を包含してなり、かつ該メソ細孔の平均細孔径が1〜8nmであることを特徴とする。
ここで、「ケイ素化合物」とは、シラノール(HnSi(OH)4-n)が重合して構成される化合物であって、ケイ素酸化物及びケイ素水酸化物を意味する。また、「有機基を有するケイ素化合物」とは、シラノールのケイ素に直接結合する有機基を持つ化合物が重合して構成される化合物を意味する。
本発明のコアシェルシリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)測定のパターンにおいて、結晶格子面間隔(d)=2〜12nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを有する。このピークは、メソ領域に規則的な周期性を有する物質であることを意味する。なお、規則性が高くなるとピークは明瞭化され、高次ピークが見られる場合がある。
本発明のコアシェル構造は、コア部が外殻部と連続的に繋がった構造であってもよく、コア部と外殻部の間に空間のあるような鈴構造等も包含する。
【0009】
(コアシェルシリカ粒子の外殻部)
本発明のコアシェルシリカ粒子は、粒子外殻部が有機基を有するケイ素化合物により構成されている。この構造は、後述する有機基を有するシリカ源を用いて合成することにより形成することができる。
ケイ素化合物のケイ素に直接結合する有機基は、炭化水素の水素原子の一部がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数1〜22の炭化水素基が好ましい。炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6のアルカンジイル基、及びフェニレン基から選ばれる1種以上が好ましい。
炭素数1〜22のアルキル基としては、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種エイコシル基等が挙げられる。
炭素数1〜6のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。
【0010】
コアシェルシリカ粒子の外殻部は、有機基を有するケイ素化合物により構成されているが、ケイ素以外に他の元素、例えばAl、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mn、Fe等の金属やB、P、N、S等の非金属元素を含有するアルコキシ塩やハロゲン化塩等を製造時又は製造後に添加することで、該金属または非金属元素をシリカ粒子の外殻部に存在させることができる。本発明は、これらの他元素を担持した形態、又はシリカの一部が他元素で置換された形態を包含する。
ケイ素化合物中の有機基は核磁気共鳴測定を用いた炭素原子の測定(13C−NMR)や元素分析により確認することができる。
外殻部の一部を構成する有機基の炭素元素数はケイ素元素数あたり10〜70%であることが好ましい。コアシェルシリカ粒子に含まれる有機基の炭素元素数は、製造時のシリカ源の種類や配合率等から求めることができるし、また、元素分析や熱重量分析によっても確認することができる。
【0011】
(コアシェルシリカ粒子の外殻部のメソ細孔)
本発明のコアシェルシリカ粒子の外殻部のメソ細孔の平均細孔径は1〜8nmであり、好ましくは1〜5nmである。メソ細孔構造を有する外殻部と粒子内部に包含されている水不溶性物質(a)の構造、外殻部の細孔径、細孔規則性は、透過型電子顕微鏡(TEM)により確認することができる。
本発明のコアシェルシリカ粒子のメソ細孔構造は、メソ細孔径が揃っていることが特徴の1つである。すなわちコアシェルシリカ粒子のメソ細孔の70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上が、平均細孔径の±30%以内に入る。ここで、メソ細孔の平均細孔径及び細孔径の分布の程度は、窒素吸着測定を行い、窒素吸着等温線からBJH法により求めることができる。
【0012】
(コアシェルシリカ粒子のコア部)
本発明のコアシェルシリカ粒子のコア部は、後述する水不溶性物質(a)によって構成される。このため、コア部の大きさは、基本的に水不溶性物質(a)の大きさによって決まる。例えば、有機高分子化合物や水不溶性の無機化合物を用いる場合は、合成に用いる固体の大きさに等しくなり、疎水性有機溶剤を用いる場合は、その液滴の大きさに依存する。しかしながら、凝集等により水不溶性物質(a)が2次粒子を形成する場合は、コア部はその大きさになる。
【0013】
(コアシェルシリカ粒子の粒子径)
コアシェルシリカ粒子の平均粒子径は、数平均粒子径で表されるものであって、0.05〜10μm、好ましくは0.05〜5μm、より好ましくは0.05〜3μmである。コアシェルシリカ粒子の平均粒子径が0.05〜0.1μmのときのメソ細孔の平均細孔径は好ましくは1〜5nmであり、平均粒子径が0.1〜10μmのときのメソ細孔の平均細孔径は好ましくは1〜8nmである。
コアシェルシリカ粒子は、好ましくは粒子全体の80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が平均粒子径±30%以内の粒子径を有しており、非常に揃った粒子径の粒子群から構成されていることが望ましい。従来、本発明のような粒子サイズのそろったものは得られていない。(例えば、上記非特許文献1、2、5参照)
【0014】
(コアシェルシリカ粒子の比表面積)
コアシェルシリカ粒子のBET比表面積は、吸着特性の観点から、好ましくは200m2/g以上、より好ましくは300m2/g以上、更に好ましくは400m2/g以上である。
【0015】
(コアシェルシリカ粒子のその他の特徴)
本発明のコアシェルシリカ粒子は、TEM観察において、粒子全体の好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上がコアシェル型粒子であることが好ましい。TEM観察は、倍率5万倍で、視野内に見出される粒子の個数を数えることにより行い、これを画面を変えて5回行った平均とする。
また、本発明のコアシェルシリカ粒子は、TEM観察によるメソ細孔の平均細孔間隔距離がX線回折により得られた構造周期と±30%の範囲で一致することが好ましい。具体的には、観察された細孔の中心間距離に√3/2を乗じた値とX線回折により得られた最も低角のピークに対応する面間隔が±30%の範囲で一致することが好ましい。
【0016】
コアシェルシリカ粒子における外殻部の平均厚みは、数平均で表されるものであって、5〜700nmであり、10〜500nmであることが好ましく、20〜400nmであることがより好ましい。
また、〔外殻部の厚み/平均粒子径〕の比は、0.01〜0.6であることが好ましく、0.05〜0.5であることがより好ましく、0.1〜0.4であることが更に好ましい。
なお本発明において、コアシェルシリカ粒子の平均粒子径及びその分布の程度、並びに外殻部の厚みは、TEM観察により測定する。具体的には、TEM観察下で、20〜30個の粒子が含まれる視野中の全粒子の直径及び外殻厚みを写真上で実測する。この操作を、視野を5回変えて行う。得られたデータから平均粒子径及びその分布の程度、並びに平均外殻厚みを求める。TEM観察時の倍率の目安は1万〜10万倍であるが、シリカ粒子の大きさによって適宜調節される。しかしながら、画面中の粒子のうち、メソ細孔を有するコアシェルシリカ粒子の割合が、30%以下の場合は、観察のための視野を広げて、すなわち倍率を下げて、少なくとも10個の粒子からデータを得るものとする。
【0017】
[コアシェルシリカ粒子の製造方法]
本発明の、外殻部がメソ細孔構造を有し、水不溶性物質(a)を包含してなるコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子の製造方法は、下記工程(I)、(II)及び(III)を含むことを特徴とする。
工程(I):水不溶性物質(a)を0.01〜20質量%、下記一般式(1)及び(2)で表される第四級アンモニウム塩から選ばれる1種以上(b)を0.1〜100ミリモル/L、及び有機基を有しかつ加水分解によりシラノール化合物を生成するシリカ源(c)を0.1〜100ミリモル/L含有する分散液を調製する工程
[R1(CH33N]+- (1)
[R12(CH32N]+- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、Xは1価の陰イオンを示す。)
工程(II):工程(I)で得られた分散液を10〜100℃の温度で撹拌して、第四級アンモニウム塩とシリカを含む複合体を析出させる工程
工程(III):工程(II)で得られた複合体から第四級アンモニウム塩を除去する工程
以下、各工程及びそこで用いる各成分について説明する。
【0018】
工程(I)
工程(I)は、水不溶性物質(a)を0.01〜20質量%、一般式(1)及び(2)で表される第四級アンモニウム塩から選ばれる1種以上(b)を0.1〜100ミリモル/L、有機基を有しかつ加水分解によりシラノール化合物を生成するシリカ源(c)を0.1〜100ミリモル/L含有する分散液を調製する工程である。
(水不溶性物質(a))
工程(I)で用いられる水不溶性物質(a)としては、液体状態の物質よりも、固体状態の物質の方がより望ましい。具体的には、(i)疎水性有機溶剤、(ii)有機高分子化合物、及び(iii)無機化合物から選ばれる1種以上が好ましく、(ii)有機高分子化合物及び(iii)無機化合物から選らばれる1種以上がより好ましく、(ii)有機高分子化合物が最も好ましい。水不溶性物質(a)には水への溶解性の低い水難溶性の物質も含まれる。例えば、有機高分子化合物や無機化合物等の固体物質については、20℃の水への溶解度が1%以下のものも含まれる。
【0019】
(i)疎水性有機溶剤は、水に対する溶解性が低く、水と分相を形成するものを意味する。好ましくは、後述する第四級アンモニウム塩の存在下で分散可能な溶剤である。このような疎水性有機溶剤としては、LogPOWが1以上、好ましくは2〜25の化合物が挙げられる。ここで、LogPとは、化学物質の1−オクタノール/水分配係数であり、logKOW法により計算で求められた値をいう。具体的には、化合物の化学構造を、その構成要素に分解し、各フラグメントの有する疎水性フラグメント定数を積算して求められる(Meylan, W.M. and P.H. Howard. 1995. Atom/fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients. J. Pharm. Sci. 84: 83-92参照)。かかる疎水性有機溶剤としては、例えば、炭化水素化合物、エステル化合物、炭素数6〜22の脂肪酸、炭素数6〜22のアルコール及びシリコーンオイル等の油剤や、香料成分、農薬用基材、医薬用基材等の機能性材料を挙げることができる。
【0020】
(ii)有機高分子化合物としては、カチオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー及び両性ポリマーから選ばれる1種以上のポリマーが挙げられ、エチレン性不飽和モノマーを乳化重合してなるポリマーが好ましく、実質的に水不溶性のポリマーが用いられる。
上記ポリマーの中では、カチオン性ポリマー及びノニオン性ポリマーが好ましく、シリカ粒子の形成し易さの観点から、カチオン性ポリマーがより好ましい。
カチオン性ポリマーとしては、陽イオン界面活性剤の存在下で、カチオン性基を有するエチレン性不飽和モノマー(混合物を含む)を乳化重合して得られるものが好ましい。
カチオン性モノマーとしては、ジアルキルアミノ基又はトリアルキルアンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、炭素数1〜5のアルキル基を有するジアルキルアミノ基又はトリアルキルアンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましい。
カチオン性ポリマーは、前記カチオン性モノマー由来の構成単位を有するが、カチオン性モノマー由来の構成単位以外に、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン等の疎水性モノマー(水に対する溶解性が低く、水と分相を形成する重合性モノマー)に由来する構成単位を含有することができる。
【0021】
(iii)無機化合物としては、例えば、シリカ、金属、金属化合物等が挙げられる。
シリカとしては粒子状シリカが好ましく、メソポーラスシリカ粒子でもよい。例えば、別途調製した中空メソポーラスシリカ粒子やコアシェル型メソポーラスシリカ粒子をコアとして利用することができる。
金属又は金属化合物を形成する金属としては、特に制限はなく、周期律表第3族〜第15族の金属元素から選ばれる1種以上が含まれる。
金属の具体的としては、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、アクチノイドの第3族金属、ランタノイドとしてはランタン、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウムが挙げられる。チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の第4族金属、バナジウム、ニオブ、タンタル等の第5族金属、クロム、モリブデン、タングステン等の第6族金属、マンガン、レニウム等の第7族金属、鉄、ルテニウム、オスミニウム等の第8族金属、コバルト、ロジウム、イリジウム等の第9族金属、ニッケル、パラジウム、白金等の第10族金属、銅、銀、金等の第11族金属、亜鉛、カドミウム、水銀等の第12族金属、アルミニウム、ガリウム、インジウム等の第13族金属、錫、鉛等の第14族金属、アンチモン、ビスマス等の第15属金属等が挙げられる。
これらの中では、触媒作用、製造上等の観点から、周期律表第3〜12族、特に第4〜11族の遷移金属が好ましく、具体的にはチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅等が好ましく、チタン、鉄、ニッケル、銅がより好ましい。
金属化合物としては、上記金属の酸化物、水酸化物、塩化物の他、アンモニウム塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩等の塩が挙げられる。これらの中では、汎用性、製造上等の観点から、金属酸化物が好ましく、特に酸化チタン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅が好ましい。
上記の水不溶性物質(a)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
水不溶性物質(a)は、コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子のコア部を形成することになるが、その大きさは、コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子の使用目的に応じて適宜決定することができる。コア部の大きさの調整は、水不溶性物質(a)として固体物質を用いる場合は、基本的にはその大きさで調整することができるが、固体物質の凝集や疎水性有機溶剤を用いる場合は、混合時の撹拌力、溶液の温度等の物理的因子の他に、その物質の種類、場合により界面活性剤、水溶性有機溶剤の添加等によって適宜調整することができる。水不溶性物質(a)として粒状体を用いる場合は、レーザー回折・散乱法粒子径分布測定装置によって測定した体積換算平均粒子径が、0.01〜10μmのものが好ましく、0.05〜5μmのものがより好ましく、粒度分布がシャープなものを用いることによって粒子径の揃ったコアシェルシリカ粒子を得ることができる。
工程(I)において水不溶性物質(a)は撹拌により液滴又は固体粒子として分散された状態になるので、その液滴径や固体粒子径を調整することにより、最終的に得られるコアシェルシリカ粒子の大きさを調整することができる。
水不溶性物質(a)の中では、得られるコアシェル粒子の平均粒子径の均一性の観点から、(ii)有機高分子化合物及び(iii)無機化合物から選ばれる1種以上が好ましく、(ii)有機高分子化合物が最も好ましい。
【0023】
(一般式(1)及び(2)で表される第4級アンモニウム塩(b))
[R1(CH33N]+- (1)
[R12(CH32N]+- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、Xは1価の陰イオンを示す。)
一般式(1)及び(2)におけるR1及びR2は、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数8〜16の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。炭素数4〜22のアルキル基としては、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種エイコシル基等が挙げられる。
一般式(1)及び(2)におけるXは、高い結晶性を得るという観点から、好ましくはハロゲンイオン、水酸化物イオン、硝酸化物イオン等の1価陰イオンから選ばれる1種以上である。Xとしては、より好ましくはハロゲンイオンであり、更に好ましくは塩素イオン又は臭素イオンであり、特に好ましくは臭素イオンである。
【0024】
一般式(1)で表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩としては、ブチルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ブチルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
一般式(2)で表されるジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジブチルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキシルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキシルジメチルアンモニウムブロミド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロミド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
これらの第四級アンモニウム塩(b)の中では、規則的なメソ細孔を形成させる観点から、特に一般式(1)で表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましく、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド又はクロリドがより好ましい。
上記の第四級アンモニウム塩(b)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
(シリカ源(c))
シリカ源(c)としては、有機基を有しかつ加水分解によりシラノール化合物を生成するシリカ源が用いられる。その好適的としては、下記一般式(3)〜(6)で表される化合物から選ばれる1種以上が挙げられる。
3SiY3 (3)
32SiY2 (4)
33SiY (5)
3Si−R4−SiY3 (6)
(式中、R3はそれぞれ独立して、ケイ素原子に直接炭素原子が結合している有機基を示し、R4は炭素原子を1〜4個有する炭化水素基又はフェニレン基を示し、Yは加水分解によりヒドロキシ基になる1価の加水分解性基を示す。)
より好ましくは、一般式(3)〜(6)において、R3がそれぞれ独立して、水素原子の一部がフッ素原子に置換していてもよい炭素数1〜22の炭化水素基であり、具体的には炭素数1〜22、好ましくは炭素数4〜18、より好ましくは炭素数6〜18、特に好ましくは炭素数8〜16のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基であり、R4が炭素数1〜4のアルカンジイル基(メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等)又はフェニレン基であり、Yが炭素数1〜22、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基、又はフッ素を除くハロゲン基である。
シリカ源(c)は一般式(3)〜(6)で表される化合物から選ばれる1種以上であるが、更に下記一般式(7)で表される化合物を併用することが好ましい。
SiY4 (7)
【0026】
シリカ源(c)の好適例としては、次の化合物が挙げられる。
・一般式(3)又は(4)において、R3がフェニル基、ベンジル基、又は水素原子の一部がフッ素原子に置換されている炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基であるトリアルコキシシラン又はジアルコキシシラン、例えばフェニルトリエトキシシラン、1,1,1−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン。
・一般式(3)〜(6)において、R3が炭素数1〜22、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基である化合物。
・一般式(6)において、Yがメトキシ基又はエトキシ基であって、R4がメチレン基、エチレン基又はフェニレン基である化合物、例えばビストリエトキシシリルエタン。
・一般式(7)において、Yが炭素数1〜3のアルコキシ基であるか、又はフッ素を除くハロゲン基であるシラン化合物、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン。
これらの中では、一般式(6)で表される化合物と一般式(7)で表される化合物を併用すること特に好ましい。
【0027】
工程(I)の分散液中の水不溶性物質(a)、第四級アンモニウム塩(b)、シリカ源(c)の含有量は次のとおりである。
(a)成分の含有量は、0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜15質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。
(b)成分の含有量は、0.1〜100ミリモル/L、好ましくは1〜100ミリモル/L、より好ましくは5〜80ミリモル/Lであり、(c)成分の含有量は、0.1〜100ミリモル/L、好ましくは1〜100ミリモル/L、より好ましくは5〜80ミリモル/Lである。
(a)〜(c)成分を含有させる順序は特に制限はないが、水を撹拌しながら(a)成分の懸濁液、(b)成分、(c)成分を順次添加する方法が好ましい。
工程(I)で得られる分散液の分散媒は、大半が水であるが、本発明のコアシェルシリカ粒子の形成を阻害しない限り、その他の成分として、メタノール、エタノール、アセトン、プロパノール、イソプロパノール等の水溶性有機溶剤や、無機化合物等の他の成分を添加してもよく、前記のように、シリカや有機基以外の他の元素を担持したい場合は、それらの金属を含有するアルコキシ塩やハロゲン化塩等の金属原料を製造時又は製造後に添加することもできる。
【0028】
工程(II)
工程(II)は、工程(I)で得られた分散液を10〜100℃の温度で撹拌して、第四級アンモニウム塩とシリカを含む複合体を析出させる工程である。なお、分散液を調整する工程において、複合体を析出させる工程が一部進行していてもよい。
工程(I)で得られた分散液を10〜100℃、好ましくは10〜80℃の温度で所定時間撹拌した後、静置することで、水不溶性物質(a)の表面に、第四級アンモニウム塩(b)とシリカ源(c)によりメソ細孔が形成され、内部に水不溶性物質(a)を包含した、第四級アンモニウム塩とシリカからなるコアシェル構造の複合体を析出させることができる。
処理時間は温度によって異なるが、通常10〜80℃で0.1〜24時間、好ましくは1〜10時間撹拌し、必要に応じて更に1〜30時間、好ましくは2〜20時間熟成させることにより前記複合体が形成される。
【0029】
工程(III)
工程(III)は、工程(II)で得られた複合体から第四級アンモニウム塩を除去する工程である。
工程(III)では、第四級アンモニウム塩を除去する前に、工程(II)で得られた複合体をろ過又は遠心分離等の操作で取り出した後、水洗し、乾燥することが好ましい。次いで、得られた第四級アンモニウム塩とシリカとの複合体から第四級アンモニウム塩を除去する。第四級アンモニウム塩を除去する方法としては、抽出処理と焼成処理が挙げられる。
抽出処理は、好ましくはpH1〜5、より好ましくはpH1.2〜4.0、更に好ましくはpH1.5〜3.5で、好ましくは10〜100℃、より好ましくは40〜90℃の酸性水溶液中に、該複合体を浸漬して撹拌することにより、第四級アンモニウム塩を抽出除去し、コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子を得ることができる。
用いる酸性水溶液としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等の有機酸、カチオン交換樹脂等を水やエタノール等に加えた酸性水溶液が挙げられるが、塩酸がより好ましい。得られたコアシェルシリカ粒子は、水不溶性物質(a)が揮発ないし消失し過ぎない程度の温度で乾燥させてもよい。
焼成処理を行う場合は、外殻部を構成するケイ素化合物が有する有機基と水不溶性物質(a)の焼失・分解温度が、第四級アンモニウム塩の焼失・分解温度よりも高い場合、該ケイ素化合物が有する有機基と水不溶性物質(a)の焼失・分解温度と第四級アンモニウム塩の焼失・分解温度の間の温度で焼成処理することにより、第四級アンモニウム塩を除去することができる。
【0030】
なお、コアシェルシリカ粒子の平均粒子径は、陽イオン界面活性剤や疎水性有機溶剤の選択、混合時の撹拌力、原料の濃度、溶液の温度等によって調整することができる。コアシェルシリカ粒子の製造工程において、陽イオン界面活性剤を使用する場合は、陽イオン界面活性剤がコアシェルシリカ粒子の内部、メソ細孔内、又はシリカ粒子表面に残留する可能性がある。陽イオン界面活性剤が残留しても問題ない場合は除去する必要はないが、残留する陽イオン界面活性剤の除去を望む場合は、水や酸性水溶液で洗浄処理して置換したり、ケイ素化合物が有する有機基と水不溶性物質(a)の焼失・分解温度が、第四級アンモニウム塩の焼失・分解温度よりも高い場合、用いるケイ素化合物が有する有機基と水不溶性物質(a)の焼失・分解温度と第四級アンモニウム塩の焼失・分解温度の間の温度で焼成処理したりすることにより除去することができる。
本発明の製造方法によれば、全分散液100重量部に対して、製造されるメソポーラスシリカ粒子の割合は、好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは1〜10重量部であり、工業的に有利である。
【実施例】
【0031】
実施例及び比較例で得られたシリカ粒子の各種測定は、以下の方法により行った。
(1)コアシェル構造の確認
コアシェルシリカ粒子を乳鉢ですりつぶし、外殻部を破損させたものを電解放射型走査電子顕微鏡(日立製作所製 商品名:FE‐SEM S‐4000)を用いて測定を行い、粒子内にポリマー粒子が内包されていることを確認した。
(2)平均粒子径及び平均外殻厚みの測定
日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡(TEM)JEM−2100を用いて加速電圧160kVで測定を行い、それぞれ20〜30個の粒子が含まれる5視野中の全粒子の直径及び外殻厚みを写真上で実測して、平均粒子径及び平均外殻厚みを求めた。観察に用いた試料は高分解能用カーボン支持膜付きCuメッシュ(200−Aメッシュ、応研商事株式会社製)に付着させ、余分な試料をブローで除去して作成した。
(3)BET比表面積、平均細孔径の測定
株式会社島津製作所製、比表面積・細孔分布測定装置、商品名「ASAP2020」を使用し、液体窒素を用いて多点法でBET比表面積を測定し、パラメータCが正になる範囲で値を導出した。平均細孔径の導出にはBJH法を採用し、そのピーク値の細孔径を平均細孔径とした。前処理は250℃で5時間行った。
(4)粉末X線回折(XRD)測定
理学電機工業株式会社製、粉末X線回折装置、商品名「RINT2500VPC」を用いて、X線源:Cu-kα、管電圧:40mA、管電流:40kV、サンプリング幅:0.02°、発散スリット:1/2°、発散スリット縦:1.2mm、散乱スリット:1/2°、受光スリット:0.15mmの条件で粉末X線回折測定を行った。走査範囲は回折角(2θ)1〜20°、走査速度は4.0°/分で連続スキャン法を用いた。なお、試料は、粉砕した後、アルミニウム板に詰めて測定した。
【0032】
製造例1(カチオン性ポリマー粒子の製造)
1L−セパラフルフラスコにイオン交換水600部、メタクリル酸メチル99.5部と塩化メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム0.5部をいれ、内温70℃まで昇温させた。次いで水溶性開始剤として2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬株式会社製のV−50)0.5部をイオン交換水5部に溶かした溶液を添加し、3時間加熱撹拌を行った。その後さらに75℃で3時間過熱撹拌を行うことで、カチオン性ポリマー粒子の懸濁液を得た(固形分(有効分)含有量13.8%、体積換算平均粒子径0.28μm)。
【0033】
実施例1
1Lビーカーに水300g、メタノール100g、1M水酸化ナトリウム水溶液2.3g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド1.75g、製造例1で得られたカチオン性のポリマー粒子懸濁液1.63gを入れ攪拌した。その水溶液にテトラメトキシシラン0.88gとビストリエトキシシリルエタン1.02gを混合してからゆっくりと加え、25℃、5時間攪拌後、攪拌を止めて12時間熟成させた。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗後、乾燥した。乾燥粉末をエタノール100mLに分散し、1M塩酸を用いてpH2に調整し、80℃で一晩撹拌した。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗後、乾燥して、カチオン性ポリマー粒子を内包し、外殻部がメソ細孔を有するコアシェルシリカ粒子を得た。
得られた外殻部がメソ細孔構造を有するコアシェルシリカ粒子の主な性状を表1に示す。また、平均粒子径の±30%以内(0.55±0.17μm)の粒子の量は100質量%であり、外殻部の厚みは75mmであり、平均粒子径に対する外殻部の厚みは0.14であった。なお、このコアシェルシリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)のパターンにおいて、結晶格子面間隔(d)=3.3nmに相当する回折角(2θ)に1本のピークを有していた。結果を図1に示す。
また、コアシェルシリカ粒子中にカチオン性ポリマー粒子が内包されていることの確認は、得られたサンプルを乳鉢ですりつぶし、外殻部を破損させたものを走査型電子顕微鏡で測定することによって、粒子内にポリマー粒子が内包されていることを確認した。
【0034】
実施例2
1Lビーカーに水300g、メタノール100g、1M水酸化ナトリウム水溶液2.3g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド1.75g、カチオン性のポリマー粒子懸濁液1.63gを入れ攪拌した。その水溶液にテトラメトキシシラン0.88gとフェニルトリメトキシシラン1.14gを混合してからゆっくりと加え、25℃、5時間攪拌後、攪拌を止めて12時間熟成させた。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗後、乾燥した。乾燥粉末をエタノール100mLに分散し、1M塩酸を用いてpH2に調整し、80℃で一晩撹拌した。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗後、乾燥して、カチオン性ポリマー粒子を内包し、外殻部がメソ細孔を有するコアシェルシリカ粒子を得た。
得られた外殻部がメソ細孔構造を有するコアシェルシリカ粒子の性状を表1に示す。また、平均粒子径の±30%以内(0.41±0.12μm)の粒子の量は100質量%であり、外殻部の厚みは50mmであり、平均粒子径に対する外殻部の厚みは0.12であった。なお、このコアシェルシリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)のパターンにおいて、結晶格子面間隔(d)=2.8nmに相当する回折角(2θ)に1本のピークを有していた。
得られたサンプルを乳鉢ですりつぶし、外殻部を破損させたものを走査型電子顕微鏡にて測定を行い、粒子内にポリマー粒子が内包されていることを確認した。
【0035】
実施例3
1Lビーカーに水300g、メタノール100g、1M水酸化ナトリウム水溶液2.3g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド1.75g、カチオン性のポリマー粒子懸濁液1.63gを入れ攪拌した。その水溶液にテトラメトキシシラン0.88gと3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン1.25gを混合してからゆっくりと加え、25℃、5時間攪拌後、攪拌を止めて12時間熟成させた。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗後、乾燥した。乾燥粉末をエタノール100mLに分散し、1M塩酸を用いてpH2に調整し、80℃で一晩撹拌した。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗後、乾燥して、カチオン性ポリマー粒子を内包し、外殻部がメソ細孔を有するコアシェルシリカ粒子を得た。
得られた外殻部がメソ細孔構造を有するコアシェルシリカ粒子の性状を表1に示す。また、平均粒子径の±30%以内(0.42±0.13μm)の粒子の量は100質量%であり、外殻部の厚みは55mmであり、平均粒子径に対する外殻部の厚みは0.13であった。なお、このコアシェルシリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)のパターンにおいて、結晶格子面間隔(d)=2.8nmに相当する回折角(2θ)に1本のピークを有していた。
得られたサンプルを乳鉢ですりつぶし、外殻部を破損させたものを走査型電子顕微鏡にて測定を行い、粒子内にポリマー粒子が内包されていることを確認した。
【0036】
比較例1
1Lビーカーに水300g、メタノール100g、1M水酸化ナトリウム水溶液2.3g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド175g、カチオン性のポリマー粒子懸濁液1.63gを入れ攪拌した。その水溶液にテトラメトキシシラン0.88gとビストリエトキシシリルエタン1.02gを混合してからゆっくりと加え、25℃、5時間攪拌後、攪拌を止めて12時間熟成させた。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗後、乾燥した。乾燥粉末をエタノール100mLに分散し、1M塩酸を用いてpH2に調整し、80℃で一晩撹拌した。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗後、乾燥した。XRD測定やSEM測定、TEM測定、窒素吸着測定による細孔分布の測定から、メソ細孔は確認されたが、カチオン性ポリマー粒子を内包したコアシェルシリカ粒子は得られなかった。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
なお、非特許文献5の報告によれば、外殻部が有機基を有し、かつメソ細孔構造を有するコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子が開示されているが、メソ細孔の平均細孔径は10.2nmであり、本願発明とは明らかに異なるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のコアシェルシリカ粒子は、例えば構造選択性を有する触媒担体、吸着剤、物質分離剤、酵素や機能性有機化合物の固定化担体等としての利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1で得られたコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子のXRD測定結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻部がメソ細孔構造を有するコアシェル構造のシリカ粒子であって、該外殻部の平均厚みが5〜700nmであり、該粒子の平均粒子径が0.05〜10μmであり、該外殻部が有機基を有するケイ素化合物により構成され、その内部に水不溶性物質(a)を包含してなり、かつ該メソ細孔の平均細孔径が1〜8nmである、コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子。
【請求項2】
有機基が、その水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜22のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、アルカンジイル基、及びフェニレン基から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子。
【請求項3】
水不溶性物質(a)が、有機高分子化合物である、請求項1又は2に記載のコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子。
【請求項4】
粉末X線回折測定において、結晶格子面間隔(d)=2〜12nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを有する、請求項1〜3のいずれかに記載のコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子。
【請求項5】
下記工程(I)、(II)及び(III)を含む、外殻部がメソ細孔構造を有し、水不溶性物質(a)を包含してなるコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子の製造方法。
工程(I):水不溶性物質(a)を0.01〜20質量%、下記一般式(1)及び(2)で表される第四級アンモニウム塩から選ばれる1種以上(b)を0.1〜100ミリモル/L、及び有機基を有しかつ加水分解によりシラノール化合物を生成するシリカ源(c)を0.1〜100ミリモル/L含有する分散液を調製する工程
[R1(CH33N]+- (1)
[R12(CH32N]+- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、Xは1価の陰イオンを示す。)
工程(II):工程(I)で得られた分散液を10〜100℃の温度で撹拌して、第四級アンモニウム塩とシリカを含む複合体を析出させる工程
工程(III):工程(II)で得られた複合体から第四級アンモニウム塩を除去する工程
【請求項6】
シリカ源(c)が、下記一般式(3)〜(6)で表される化合物から選ばれる1種以上である、請求項5に記載のコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子の製造方法。
3SiY3 (3)
32SiY2 (4)
33SiY (5)
3Si−R4−SiY3 (6)
(式中、R3はそれぞれ独立して、ケイ素原子に直接炭素原子が結合している有機基を示し、R4は炭素原子を1〜4個有する炭化水素基又はフェニレン基を示し、Yは加水分解によりヒドロキシ基になる1価の加水分解性基を示す。)

【図1】
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【公開番号】特開2009−263171(P2009−263171A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115172(P2008−115172)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】